以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は原則的に繰返さないものとする。
[実施の形態1]
(電力変換器の回路構成)
図1は、実施の形態1に従う電源システムの構成を示す回路図である。
図1を参照して、実施の形態1に従う電源システム5は、直流電源B1,B2と、電力変換器50と、制御装置40とを備える。電力変換器50は、高電圧側の電力線PLおよび低電圧側の電力線GLを経由して、直流電源B1,B2と負荷30との間に接続される。電力線GLは、代表的には、接地配線で構成される。
電力変換器50は、直流電源B1,B2と負荷30(電力線PL,GL)との間のDC/DC変換によって、負荷30と接続された電力線PL,GL間の直流電圧VH(以下、「出力電圧VH」とも称する)を電圧指令値VH*に従って制御する。
負荷30は、電力変換器50の出力電圧VHを受けて動作する。たとえば、出力電圧VHの電圧指令値VH*は、負荷30の動作に適した電圧に設定される。たとえば、電圧指令値VH*は、負荷30の状態に応じて可変に設定されてもよい。さらに、負荷30は、回生発電等によって、直流電源B1および/またはB2の充電電力を発生可能に構成されてもよい。
電力変換器50は、電力用半導体スイッチング素子(以下、単に「スイッチング素子」とも称する)S1〜S4と、リアクトルL1,L2とを含む。スイッチング素子としては、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、電力用MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタあるいは電力用バイポーラトランジスタ等を用いることができる。スイッチング素子S1〜S4に対しては、逆並列ダイオードD1〜D4が配置されている。
また、スイッチング素子S1〜S4は、制御信号SG1〜SG4にそれぞれ応答して、オンオフを制御することが可能である。すなわち、スイッチング素子S1〜S4は、制御信号SG1〜SG4が論理ハイレベル(以下、「Hレベル」)のときにオンする一方で、論理ローレベル(以下、「Lレベル」)のときにオフする。
スイッチング素子S1は、高電圧側の電力線PLおよびノードN1の間に電気的に接続される。スイッチング素子S2はノードN1およびN2の間に電気的に接続される。スイッチング素子S3は、ノードN2およびN3の間に電気的に接続される。スイッチング素子S4は、ノードN3および低電力側の電力線GLの間に電気的に接続される。電力線GLは、負荷30および、直流電源B1の負極端子に対して電気的に接続される。
リアクトルL1は、ノードN2および電力線GLの間に電気的に、直流電源B1と直列に接続される。リアクトルL2は、ノードN1およびノードN3の間に電気的に、直流電源B2と直列に接続される。
図1から理解されるように、電力変換器50は、直流電源B1および直流電源B2の各々に対応して昇圧チョッパを備えた構成となっている。すなわち、直流電源B1に対しては、スイッチング素子S1,S2を上アーム素子とする一方で、スイッチング素子S3,S4を下アーム素子とする電流双方向の第1の昇圧チョッパが構成される。直流電源B2に対しては、スイッチング素子S1,S4を上アーム素子とする一方で、スイッチング素子S2,S3を下アーム素子とする電流双方向の第2の昇圧チョッパが構成される。
この第1および第2の昇圧チョッパを並列動作させるとき(後述のパラレル昇圧モード)には、第1の昇圧チョッパによって直流電源B1および電力線PL,GLの間に形成される第1の電力変換経路と、第2の昇圧チョッパによって直流電源B2および電力線PL,GLの間に形成される第2の電力変換経路との両方に、スイッチング素子S1〜S4の各々が含まれる。さらに、リアクトルL1およびL2は、上記第1および第2の電力変換経路にそれぞれ含まれる。
制御装置40は、たとえば、図示しないCPU(Central Processing Unit)およびメモリを有する電子制御ユニット(ECU)によって構成される。制御装置40は、メモリに記憶されたマップおよびプログラムに基づいて、各センサによる検出値を用いた演算処理を行なうように構成される。あるいは、制御装置40の少なくとも一部は、電子回路等のハードウェアにより所定の数値・論理演算処理を実行するように構成されてもよい。
制御装置40は、負荷30への出力電圧VHを制御するために、スイッチング素子S1〜S4のオンオフを制御する制御信号SG1〜SG4を生成する。なお、図1では図示を省略しているが、直流電源B1の電圧(以下、V1と表記する)および電流(以下、I1と表記する)、直流電源B2の電圧(以下、V2と表記する)および電流(以下、I2と表記する)、ならびに、出力電圧VHの検出器(電圧センサ,電流センサ)が設けられている。さらに、直流電源B1およびB2の温度(以下、T1およびT2と表記する)の検出器(温度センサ)についても配置することが好ましい。これらの検出器の出力は、制御装置40へ与えられる。
図1の構成において、電力線PLは「第1の電力線」に対応し、電力線GLは「第2の電力線」に対応する。さらに、スイッチング素子S1〜S4は、「第1のスイッチング素子」〜「第4のスイッチング素子」にそれぞれ対応し、リアクトルL1およびL2は、「第1のリアクトル」および「第2のリアクトル」にそれぞれ対応する。
図2は、負荷30の構成例を示す概略図である。
図2を参照して、負荷30は、たとえば電動車両の走行用電動機を含むように構成される。負荷30は、平滑コンデンサCHと、インバータ32と、モータジェネレータ35と、動力伝達ギヤ36と、駆動輪37とを含む。
モータジェネレータ35は、車両駆動力を発生するための走行用電動機であり、たとえば、複数相の永久磁石型同期電動機で構成される。モータジェネレータ35の出力トルクは、減速機や動力分割機構によって構成される動力伝達ギヤ36を経由して、駆動輪37へ伝達される。駆動輪37に伝達されたトルクにより電動車両が走行する。また、モータジェネレータ35は、電動車両の回生制動時には、駆動輪37の回転力によって発電する。この発電電力は、インバータ32によってAC/DC変換される。この直流電力は、電源システム5に含まれる直流電源B1,B2の充電電力として用いることができる。なお、図2の構成例は、出力電圧VHは、モータジェネレータ35に生じる誘起電圧よりも高い電圧に制御することが必要である。
モータジェネレータの他にエンジン(図示せず)が搭載されたハイブリッド自動車では、このエンジンおよびモータジェネレータ35を協調的に動作させることによって、電動車両に必要な車両駆動力が発生される。この際には、エンジンの回転による発電電力を用いて直流電源B1,B2を充電することも可能である。
このように、電動車両は、走行用電動機を搭載する車両を包括的に示すものであり、エンジンおよび電動機により車両駆動力を発生するハイブリッド自動車と、エンジンを搭載しない電気自動車および燃料電池車との両方を含むものである。
(電力変換器の動作モード)
電力変換器50は、特許文献1および2にも記載されたように、直流電源B1,B2と負荷30(電力線PL,GL)との間でのDC/DC変換の態様が異なる複数の動作モードを有する。特に、実施の形態1では、特許文献1,2での「シリーズ接続モード」と同様に、直流電源B1およびB2が電力線PL,GL間に直列に電気的に接続される期間を有する、シリーズモードについて説明する。本実施の形態に従うシリーズモードは、特許文献1,2でのシリーズ接続モードとは異なり、(V1+V2)>VHの電圧範囲においても適用可能である。以下では、本実施の形態に従うシリーズモードを「全電圧シリーズモード」とも称する。
本実施の形態に従う全電圧シリーズモードでは、出力電圧VHの範囲に応じて、DC/DC変換の回路動作が異なる。以下では、VH≧(V1+V2)を高電圧範囲と称し、VH<(V1+V2)を低電圧範囲と称する。
図3および図4は、全電圧シリーズモードの高電圧範囲におけるDC/DC変換の回路動作を説明する回路図である。高電圧範囲におけるDC/DC変換の回路動作では、図3に示す電流経路が形成される回路状態と、図4に示す電流経路が形成される回路状態とが繰り返されるように、スイッチング素子S1〜S4のオンオフが制御される。
図3の回路状態では、スイッチング素子S2〜S4がオンされる一方で、スイッチング素子S1はオフされる。
スイッチング素子S3,S4のオンにより、直流電源B1に対して、直流電源B1からの電流によってリアクトルL1にエネルギを蓄積する電流経路170が形成される。すなわち、直流電源B1に対しては、昇圧チョッパの下アーム素子がオンされた状態となる。
スイッチング素子S2,S3のオンにより、直流電源B2に対して、直流電源B2からの電流によってリアクトルL2にエネルギを蓄積する電流経路171が形成される。すなわち、直流電源B2に対しても、昇圧チョッパの下アーム素子がオンされた状態となる。
このように、図3の回路状態では、直流電源B1およびB2の両方に対して、昇圧チョッパの下アーム素子をオンした状態が形成される。以下では、図3の回路状態を「パラレル下アームオン状態」とも称する。
一方で、図4の回路状態では、スイッチング素子S1,S3がオンされる一方で、スイッチング素子S2,S4はオフされる。これにより、直列接続された直流電源B1およびB2に対して、電流経路172が形成される。電流経路172によって、直列接続された直流電源B1およびB2、ならびに、リアクトルL1およびL2が、ダイオードD1(または、スイッチング素子S1)を経由して、電力線PLおよびGL間に直列に接続される。
この結果、直列接続された直流電源B1,B2からのエネルギと、リアクトルL1,L2に蓄積されたエネルギとの和が、電力線PL,GLを経由して負荷30へ供給される。すなわち、直列接続された直流電源B1,B2の両方に対して、昇圧チョッパの上アーム素子をオンした状態が形成される。以下では、図4の回路状態を「シリーズ上アームオン状態」とも称する。
図4の回路状態では、スイッチング素子S1をオンすることによって、回生電流(電流経路172上の逆方向の電流)についても経路を確保することができる。すなわち、スイッチング素子S1,S3をオンすることにより、スイッチングパターンを切換えることなく、力行電流(B1,B2の放電)および回生電流(B1,B2の充電)の両方に対応することができる。
なお、図3の回路状態から図4の回路状態へ移行するときに、リアクトルL1,L2の電流値がそれぞれ異なると、電流経路173または174を介してリアクトル電流の差分が流れた後、電流経路172が形成される。たとえば、直流電源B1,B2間でV1,V2が異なるとき、あるいは、リアクトルL1,L2のインダクタンス値が異なるときに、上記差電流が生じる。
図5は、本実施の形態に従う全電圧シリーズモードにおける回路状態を概念的に説明する回路図である。
図5(a)を参照して、図3に示したパラレル下アームオン状態では、直流電源B1は、電力線PLおよびGLからは切り離された状態で、リアクトルL1との間でループ状の電流経路170を形成する。同様に、直流電源B2は、電力線PLおよびGLからは切り離された状態で、リアクトルL2との間でループ状の電流経路171を形成する。
図5(b)を参照して、図4に示したシリーズ上アームオン状態では、直列接続された直流電源B1およびB2を含む電流経路172が形成される。電流経路172では、電力線PLおよびGLの間に、直流電源B1およびB2、ならびに、リアクトルL1およびL2が直列に電気的に接続される。
全電圧シリーズモードの高電圧範囲におけるDC/DC変換では、図5(b)の状態において、(V1+V2)<VHであることから、リアクトル電流が減少する。したがって、リアクトルL1およびL2にエネルギを蓄積するパラレル下アームオン状態の期間(図5(a))と、負荷30へエネルギを伝送するシリーズ上アームオン状態の期間(図5(b))とを繰り返すことによって、出力電圧VHを電圧指令値VH*(VH*≧(V1+V2))に制御することができる。すなわち、全電圧シリーズモードの高電圧範囲における回路動作は、特許文献1および2でのシリーズ接続モードと同様である。
しかしながら、VH<(V1+V2)の場合には、図5(b)の状態でも、リアクトル電流は増加してしまう。このため、高電圧範囲と同等の回路動作では、出力電圧VHを低電圧範囲(VH<(V1+V2))に制御することはできない。
したがって、低電圧範囲における全電圧シリーズモードでは、図6に示された回路状態を組み合わせることによって、出力電圧VHを制御する。具体的には、所定期間を有する各スイッチング周期が、シリーズ上アームオン状態(図5(b))の動作期間と、パラレル上アームオン状態(図5(c))の動作期間とに時分割されるとともに、当該時分割における期間比(デューティ比)が制御される。
図6は、全電圧シリーズモードの低電圧範囲で適用されるDC/DC変換の回路動作を説明する回路図である。
図6の回路状態では、スイッチング素子S3がオフされる。スイッチング素子S3のオフにより、下アーム素子のオン時に形成される、直流電源B1に対する電流経路170(図3)および直流電源B2に対する電流経路171(図3)が遮断される。
これにより、直流電源B1に対して、ダイオードD1,D2(または、スイッチング素子S1,S2)を経由して、リアクトルL1に蓄積されたエネルギおよび直流電源B1からのエネルギを、電力変換器50から負荷30へ供給する電流経路175を形成することができる。
さらに、直流電源B2に対して、ダイオードD1,D4(または、スイッチング素子S1,S4)を経由して、リアクトルL2に蓄積されたエネルギおよび直流電源B2からのエネルギを、電力変換器50から負荷30へ供給する電流経路176を形成することができる。
図6の回路状態では、スイッチング素子S1,S2,S4をオンすることによって、回生電流(電流経路175,176上の逆方向電流)についても経路を確保することができる。すなわち、スイッチング素子S1,S2,S4をオンすることにより、スイッチングパターンを切換えることなく、力行電流(B1,B2の放電)および回生電流(B1,B2の充電)の両方に対応することができる。
このように、図6の回路状態では、直流電源B1およびB2は、リアクトルL1およびL2をそれぞれ経由して、電力線PLおよびGLの間に並列に接続される。すなわち、直流電源B1およびB2の両方に対して、昇圧チョッパの上アーム素子をオンした状態が形成される。以下では、図6の回路状態を「パラレル上アームオン状態」とも称する。
図5(c)を参照して、図6に示したパラレル上アームオン状態では、直流電源B1およびB2と負荷30との間に、電流経路175および176が形成される。これにより、直流電源B1およびB2は、電力線PLおよびGLの間に、リアクトルL1およびL2をそれぞれ経由して並列に電気的に接続される。
パラレル上アームオン状態では、並列接続された直流電源B1およびB2から負荷30へエネルギが伝送される。しかしながら、VH<(V1+V2)であっても、VH<V1およびVH<V2であれば、リアクトル電流は減少する。
一方で、VH<(V1+V2)であれば、直列接続された直流電源B1およびB2から負荷30にエネルギを伝送するシリーズ上アームオン状態(図5(b))において、リアクトル電流が増加する。
したがって、低電圧範囲における全電圧シリーズモードでは、シリーズ上アームオン状態(図5(b))の動作期間と、パラレル上アームオン状態(図5(c))の動作期間とを繰り返すことによって、出力電圧VHを電圧指令値VH*(VH*<(V1+V2))に制御することができる。具体的には、所定期間を有する各スイッチング周期が、シリーズ上アームオン状態(図5(b))の動作期間と、パラレル上アームオン状態(図5(c))の動作期間とに時分割されるとともに、当該時分割での期間比(デューティ比)が制御される。
すなわち、シリーズ上アームオン状態(図5(b))の動作期間(以下、「シリーズ上アームオン期間」とも称する)は「第1の動作期間」に対応する。同様に、パラレル上アームオン状態(図5(c))の動作期間(「パラレル上アームオン期間」とも称する)は「第2の動作期間」に対応し、パラレル下アームオン状態(図5(a))の動作期間(以下、「パラレル下アームオン期間」とも称する)は「第3の動作期間」に対応する。
図3〜図6に示されるように、電力変換器50は、スイッチング素子S1〜S4のオンオフ制御によって、リアクトルL1,L2を経由する電流(リアクトル電流)の経路を切換えるように構成されている。
(全電圧シリーズモードでのデューティ制御)
全電圧シリーズモードでは、低電圧範囲および高電圧範囲の各々において、デューティ制御が実行される。以下で説明するように、全電圧シリーズモードでのデューティ制御は、一般的な昇圧チョッパでのデューティ制御を応用することによって実行される。
図7は、一般的な昇圧チョッパの動作を説明するための回路図であり、図8は図7に示した昇圧チョッパにおけるデューティ比制御を説明するための波形図である。
図7を参照して、昇圧チョッパCHPは、上アームを構成するスイッチング素子Suと、下アームを構成するスイッチング素子Slと、リアクトルLとを有する。ダイオードDuおよびDlは、上アームのスイッチング素子Suおよび下アームのスイッチング素子Slにそれぞれ逆並列接続される。
昇圧チョッパCHPでは、下アーム(スイッチング素子Sl)のオン期間およびオフ期間が交互に設けられる。下アームのオン期間には、直流電源B−リアクトルL1−下アーム素子Sl(オン)を経由する電流経路101が形成される。これにより、リアクトルLにエネルギが蓄積される。
下アームのオフ期間には、直流電源B−リアクトルL−ダイオードDu(またはスイッチング素子Su)−負荷30を経由した電流経路102が形成される。これにより、下アーム素子Slのオン期間でリアクトルLに蓄えられたエネルギと、直流電源Bからのエネルギとが、負荷30に供給される。この結果、負荷30への出力電圧は、直流電源Bの出力電圧よりも昇圧される。
図8を参照して、昇圧チョッパCHPでは、パルス幅変調(PWM)制御によって、スイッチング素子のオンオフ制御を実行できる。具体的には、下アームのスイッチング素子Suのオン期間およびオフ期間の比(デューティ比)DT(0≦DT<1.0)を制御することによって、出力電圧VHを制御することができる。デューティ比DTは、スイッチング周期To(オン期間+オフ期間)に対する下アームのオン期間比率(時間比)で定義される。
たとえば、キャリア波CWおよびデューティ比DTとの電圧比較に従って、下アームをオンオフするための制御パルス信号SDが生成される。キャリア波CWは、スイッチング周期Toと同一周期を有する。たとえば、キャリア波CWには、三角波が用いられる。キャリア波CWの周波数は、スイッチング素子Sl(Su)のスイッチング周波数に相当する。キャリア波CWの電圧幅(ピークトゥピーク)は、DT=1.0に対応する電圧に設定される。
下アームのスイッチング素子Slのオンオフは、制御パルス信号SDに従って制御される。制御パルス信号SDは、デューティ比DTを示す電圧が、キャリア波CWの電圧よりも高いときにHレベルに設定される一方で、キャリア波CWの電圧よりも低いときにLレベルに設定される。制御パルス信号/SDは、制御パルス信号SDの反転信号である。
下アームのスイッチング素子Slは、制御パルス信号SDのHレベル期間にオン状態に制御される一方で、制御パルス信号SDのLレベル期間にはオフ状態に制御される。上アームのスイッチング素子Suは、制御パルス信号/SDに従って、下アームのスイッチング素子Slと相補的かつ周期的にオンオフ制御することができる。
下アームオン期間には、リアクトルLを流れるリアクトル電流ILが上昇し、下アームオフ期間(上アームオン期間)には、リアクトル電流ILが低下する。したがって、下アームオン期間の比率を上昇させることによって、出力電圧VHが上昇する。
図7において、直流電源Bからの出力電力と負荷30への伝送電力とが等しいとすると(伝送効率=100(%))、リアクトル電流の平均値をIとして、下記(1)式が得られる。
Vi×I=(1−DT)×VH×I …(1)
(1)式の左辺は、直流電源Bからは、下アームオン期間および上アームオン期間を通じて電流が出力されていることを示す。一方で、(1)式の右辺は、負荷30に対しては、下アームのオフ期間(上アームオン期間)のみで電力が伝送されることを示している。
(1)式を変形することにより、図7の昇圧チョッパでの下アームオン期間のデューティ比DTは、下記(2)式によって示される。
DT=1−(Vi/VH) …(2)
一方で、上アームオン期間(下アームオフ期間)のデューティ比は、下記(3)式によって示される。
1−DT=(Vi/VH) …(3)
次に、全電シリーズモードの高電圧範囲での回路動作(以下、「シリーズ昇圧動作」とも称する)におけるデューティ比を導出する。
シリーズ昇圧動作では、パラレル下アームオン期間と、シリーズ上アーム期間とが繰り返される。パラレル下アームオン期間およびシリーズ上アーム期間の和(すなわち、スイッチング周期)に対する、シリーズ上アームオン期間の時比率をデューティ比DC(0≦DT<1.0)と表記する。したがって、パラレル下アームオン期間のデューティ比は(1−DC)で示される。
直流電源B1,B2の各々は、パラレル下アームオン期間およびシリーズ上アーム期間を通じて電流を出力している。したがって、簡単のために、リアクトルL1,L2の電流が同等であるとすると、リアクトル電流の平均値Iを用いて、直流電源のB1,B2からの出力電力は、V1×I+V2×I=(V1+V2)×Iとされる。
一方で、負荷30に対しては、シリーズ上アーム期間のみで電力が伝送される。したがって、負荷30への伝送電力はDC×VH×Iで示される。
以上より、伝送効率を100%とすると、下記(4)式が成立する。
(V1+V2)×I=DC×VH×I …(4)
(4)式を変形して、シリーズ昇圧動作でのデューティ比DCは下記(5)式で示される。
DC=(V1/VH)+(V2/VH) …(5)
式(3)から理解されるように、式(5)中の(V1/VH)は、直流電源B1の出力制御における、上アームオン期間のデューティ比に相当する。同様に、式(5)中の(V2/VH)は、直流電源B2の出力制御における上アームオン期間のデューティ比に相当する。式(5)から理解されるように、同一の直流電圧VHに対しては、直流電源B1,B2の電圧V1,V2の増加に従って、シリーズ昇圧動作でのシリーズ上アームオン期間のデューティ比DCが増加する。
したがって、シリーズ昇圧動作、すなわち、高電圧範囲の全電圧シリーズモードにおける、シリーズ上アームオン期間のデューティ比DCは、直流電源B1,B2のそれぞれに対する昇圧チョッパの出力制御における、上アームオン期間のデューティ比の和に従って設定すればよいことが理解される。
同様に、全電シリーズモードの低電圧範囲での回路動作(以下、「シリーズ降圧動作」とも称する)におけるデューティ比を導出する。
シリーズ降圧動作では、シリーズ上アーム期間とパラレル上アームオン期間とが繰り返される。シリーズ降圧動作においても、スイッチング周期に対するシリーズ上アームオン期間の時比率をデューティ比DC(0≦DT<1.0)とする。したがって、パラレル上アームオン期間のデューティ比は(1−DC)で示される。
シリーズ降圧動作において、負荷30に対しては、シリーズ上アーム期間およびパラレル上アームオン期間の両方で電力が伝送される。シリーズ上アーム期間では、リアクトルL1およびL2が直列接続されたリアクトル電流が負荷30へ供給される。したがって、シリーズ上アーム期間での負荷30への伝送電力は、DC×VH×Iである。
一方で、パラレル上アーム期間では、リアクトルL1およびL2から並列にリアクトル電流が負荷30へ供給される。したがって、シリーズ上アーム期間での負荷30への伝送電力は、(1−DC)×VH×2×Iで示される。
シリーズ降圧動作においても、シリーズ上アーム期間およびパラレル上アームオン期間を通じた、直流電源B1,B2からの出力電力は、(V1+V2)×Iとなる。したがって、伝送効率を100%とすると、下記(6)式が成立する。
(V1+V2)×I=DC×VH×I+(1−DC)×VH×2×I …(6)
(6)式を変形すると、(V1+V2)=VH×(2−DC)となり、(2−DC)=(V1/VH)+(V2/VH)が得られる。さらに変形すると、シリーズ降圧動作でのデューティ比DCは、最終的に下記(7)式で与えられる。
DC=(1−(V1/VH))+(1−(V2/VH)) …(7)
式(2)から理解されるとおり、式(7)中の1−(V1/VH)および1−(V2/VH)は、それぞれ、直流電源B1,B2の出力制御における下アームオン期間のデューティ比に相当する。したがって、シリーズ降圧動作における、すなわち、低電圧範囲の全電圧シリーズモード(シリーズ降圧動作)におけるシリーズ上アームオン期間のデューティ比は、直流電源B1,B2のそれぞれに対する昇圧チョッパの出力制御における、下アームオン期間のデューティ比の和に従って設定すればよいことが理解される。式(7)から理解されるように、同一の直流電圧VHに対しては、直流電源B1,B2の電圧V1,V2の低下に従って、シリーズ降圧動作でのシリーズ上アームオン期間のデューティ比DCが増加する。
このように本実施の形態に従う全電圧シリーズモードにおけるデューティ比の制御は、直流電源B1,B2のそれぞれに対する出力制御の組合せの態様で設定できる。
図9は、本実施の形態に従う電源システムにおける電力変換器制御のための機能ブロック図である。なお、図9を始めとする以下の機能ブロック図中に示される各ブロックの機能は、制御装置40において、所定のプログラムの実行によるソフトウェア処理および/または専用の電子回路等によるハードウェア処理によって実現されるものとする。
図9に示した電力変換器50の制御構成は、全電圧シリーズモードにおいて、高電圧範囲(シリーズ昇圧動作)および低電圧範囲(シリーズ降圧動作)の両方に共通に適用できる。さらに、後程説明するように、図9に示した制御構成は、全電圧シリーズモード以外の他の動作モードにおいても共通に適用することができる。
図9を参照して、制御装置40は、直流電源B1の出力を制御するための出力制御部300と、直流電源B2の出力を制御するための出力制御部310とを有する。出力制御部300は、直流電源B1の出力を制御するためのデューティ比DT1を生成する。出力制御部310は、直流電源B2の出力を制御するためのデューティ比DT2を出力する。デューティ比DT1およびDT2は、直流電源B1およびB2の出力制御における下アームオン期間のデューティ比にそれぞれ相当する。
たとえば、出力制御部300は、直流電源B1の出力を、出力電圧VHを電圧指令値VH*に設定するように制御する。出力制御部300は、偏差演算部302と、PI制御部305と、加算部307とを有する。
偏差演算部302は、電圧指令値VH*に対する出力電圧VHの電圧偏差ΔVH(ΔVH=VH*−VH)を算出する。PI制御部305は、電圧偏差ΔVHに対するPI(比例積分)制御によってフィードバック制御量を設定する。加算部307は、PI制御部305からのフィードバック制御量と、フィードフォワード制御量Dff1とを加算してデューティ比DT1を算出する。
フィードフォワード制御量Dff1は、出力電圧VHと直流電源B1の電圧V1との電圧比により(8)式に従って設定される。すなわち、Dff1は、昇圧チョッパの理論昇圧比に従って設定されるデューティ比を示している。
Dff1=1−(V1/VH*) …(8)
このように、直流電源B1からの出力を制御するためのデューティ比DT1は、直流電圧VHに対する直流電源B1の電圧V1の比が低くなる程、大きく設定されることが理解される。
たとえば、出力制御部310は、直流電源B2の出力を、電流指令値Io*に従って制御する。出力制御部310は、偏差演算部312と、PI制御部315と、加算演算部317とを有する。
偏差演算部312は、電流指令値Io*に対する電流Ioの電流偏差ΔIo(ΔIo=Io*−Io)を算出する。たとえば、図9のように、直流電源B2を電流制御する構成では、電流Io=I2である。
PI制御部315は、電流偏差ΔIoに対するPI(比例積分)制御によってフィードバック制御量を設定する。加算演算部317は、PI制御部315からのフィードバック制御量と、フィードフォワード制御量Dff2とを加算してデューティ比DT2を算出する。
フィードフォワード制御量Dff2は、出力電圧VHと直流電源B2の電圧V2との電圧比により(9)式に従って設定される。すなわち、Dff2は、昇圧チョッパの理論昇圧比に従って設定されるデューティ比を示している。
Dff2=1−(V2/VH*) …(9)
このように、直流電源B2からの出力を制御するためのデューティ比DT2は、定性的には、直流電圧VHに対する直流電源B2の電圧V2の比が低くなる程、大きく設定されることが理解される。
なお、本実施の形態における全電圧シリーズモードは、特許文献1,2でのシリーズ接続モードと同様に、直流電源B1およびB2が電力線PL,GL間に直列に接続される期間を有する。この結果、直流電源B1,B2の出力電力を完全に独立に制御することができない。したがって、全電圧シリーズモードにおいては、出力制御部310において、PI制御部315によるフィードバック制御はオフされて、フィードバック制御量=0に固定される。したがって、全電圧シリーズモードにおいては、デューティ比DT2は、フィードフォワード制御量Dff2によって決定されることになる。
なお、直流電源B1およびB2の出力制御は、図9での例示に限定されず、デューティ比DT1,DT2の算出は、出力電圧VHを電圧指令値VH*に制御する機能を有する限り、任意の態様で実行することができる。
アレンジの一例として、出力電圧VHを電圧指令値VH*に制御するために電力変換器50から入出力される必要電力Prの算出に基づいて、直流電源B1,B2の出力を電力制御(電流制御)することも可能である。具体的には、当該必要電力Prを直流電源B1,B2の間で配分した電力指令値P1*,P2*に従って、直流電源B1およびB2の出力電力を制御することが可能である(Pr=P1*+P2*)。この場合には、図9の制御構成において、出力制御部300,310は、電力指令値P1*,P2*から求められた、電流指令値I1*(I1*=P1*/V1)およびI2*(I2*=P2*/V2)を基準値とする電流I1,I2のフィードバック制御によって、デューティ比DT1,DT2を算出することができる。ただし、全電圧シリーズモードでは、直流電源B1およびB2間での電力配分比は、電圧比に従ってP1*:P2*=V1:V2に固定する必要がある。
キャリア波発生部410は、直流電源B1の制御に用いるキャリア波CW1および直流電源B2の制御に用いるCW2を発生する。キャリア波CW1およびCW2は、スイッチング周波数に相当する同一周波数を有する。PW制御部400は、デューティ比DT1,DT2およびキャリア波CW1,CW2から制御信号SG1〜SG4を生成する。
図10は、PWM制御部400の構成をさらに説明するための機能ブロック図である。
図10を参照して、PWM制御部400は、電圧比較部402と、論理演算部405とを有する。
電圧比較部402は、デューティ比DT1およびキャリア波CW1の電圧比較に基づくPWM制御によって、制御パルス信号SD1を生成する。具体的には、DT1>CW1の期間では、制御パルス信号SD1がHレベルに設定される一方で、DT1<CW1の期間では、制御パルス信号SD1がLレベルに設定される。
この結果、制御パルス信号SD1のHレベル期間の時比率は、デューティ比DT1と同等となる。したがって、制御パルス信号SD1は、直流電源B1の下アーム素子のオンオフ信号として用いることができる。具体的には、制御パルス信号SD1のHレベル期間が、直流電源B1の下アーム素子のオン期間に相当し、制御パルス信号SD1のLレベル期間が、直流電源B1の上アーム素子のオン期間(下アーム素子のオフ期間)に相当する。
同様に、電圧比較部402は、デューティ比DT2およびキャリア波CW2の電圧比較に基づくPWM制御によって、制御パルス信号SD2を生成する。具体的には、DT2>CW2の期間では、制御パルス信号SD2がHレベルに設定される一方で、DT2<CW2の期間では、制御パルス信号SD2がLレベルに設定される。
この結果、制御パルス信号SD2のHレベル期間の時比率は、デューティ比DT2と同等となる。したがって、制御パルス信号SD2は、直流電源B2の下アーム素子のオンオフ信号として用いることができる。具体的には、制御パルス信号SD2のHレベル期間が、直流電源B2の下アーム素子のオン期間に相当し、制御パルス信号SD2のLレベル期間が、直流電源B1の上アーム素子のオン期間(下アーム素子のオフ期間)に相当する。
論理演算部405は、制御パルス信号SD1,SD2に基づいて、制御信号SG1〜SG4を生成する。制御信号SG1〜SG4は、制御パルス信号SD1,SD2から制御信号SG1〜SG4を求めるための、動作モード毎に予め定められたゲート論理式に従って生成される。
以下では、図11〜図18を用いて、全電圧シリーズモードにおけるゲート論理式の導出を説明する。
まず、高電圧範囲(シリーズ昇圧動作)におけるスイッチング素子S1〜S4のオンオフ制御について説明する。
図11および図12は、全電圧シリーズモードの高電圧範囲における回路状態の制御を説明するための波形図および図表である。
図11を参照して、パラレル下アームオン状態およびシリーズ上アームオン状態が繰り返されるシリーズ昇圧動作では、上述のように、直流電源B1,B2の上アームオン期間のデューティ比の和に従って、シリーズ上アーム期間のデューティ比DTが設定される。したがって、制御パルス信号SD1およびSD2のそれぞれのLレベル期間長の和に従って、スイッチング素子S1,S3がオンされるシリーズ上アーム期間の長さが設定される。一方で、シリーズ上アーム期間以外は、スイッチング素子S2〜S4がオンされるパラレル下アームオン期間とされる。
上記のLレベル期間の和を取る処理のため、制御パルス信号SD1およびSD2の位相は、図11に示されるように、制御パルス信号SD1の立下がりエッジ(HレベルからLレベルへの遷移タイミング)と、制御パルス信号SD2の立上がりエッジ(LレベルからHレベルへの遷移タイミング)とが同一タイミングとなるように制御することが必要である。あるいは、制御パルス信号SD1の立上がりエッジと、制御パルス信号SD2の立下がりエッジとが同一タイミングとなるように、制御パルス信号SD1およびSD2の位相が制御されてもよい。
上記の位相制御を行うことにより、図12に示した図表に従って回路状態を切換えることによって、図11に示した回路状態の制御が実現される。
図12を参照して、制御パルス信号SD1またはSD2がLレベルのときに、シリーズ上アームオン状態とする一方で、制御パルス信号SD1およびSD2の両方がHレベルのときに、パラレル下アームオン状態とするように、スイッチング素子S1〜S4のオンオフが制御される。なお、シリーズ昇圧動作では、VH>(V1+V2)のため、DT1+DT2>1.0となるので、制御パルス信号SD1およびSD2の両方がLレベルとなる期間は考慮しなくてもよい。
本実施の形態では、PWM制御に用いられるキャリア波CW1,CW2間の位相差の制御(以下、「キャリア位相差制御」とも称する)によって、図11で説明した、制御パルス信号SD1,SD2の位相状態が実現される。
図13は、キャリア波CW1,CW2間の位相差をゼロとしたときのPWM制御の波形図である。
図13を参照して、直流電源B1の出力を制御するための制御パルス信号SD1は、キャリア波CW1とデューティ比DT1との電圧比較に基づいて、Hレベル期間およびLレベル期間が設定される。同様に、直流電源B2の出力を制御するための制御パルス信号SD2は、キャリア波CW2とデューティ比DT2との電圧比較に基づいて、Hレベル期間およびLレベル期間が設定される。
上述のように、デューティ比DT1,DT2の上昇に応じて、制御パルス信号SD1,SD2のHレベル期間、すなわち、下アームのオン期間が長くなる。この結果、デューティ比DT1,DT2の上昇に応じて直流電源B1,B2の出力が増加する一方で、デューティ比DT1,DT2の低下に応じて直流電源B1,B2の出力が減少する。
図14には、キャリア波CW1,CW2間に位相差を設けた場合のPWM制御の波形図が示される。
図14を参照して、キャリア波CW1およびキャリア波CW1は、同一周波数であるが、両者の間には位相差φが設けられている。
図13と同様に、キャリア波CW1およびデューティ比DT1の比較、および、キャリア波CW2およびデューティ比DT2の比較に基づいて、制御パルス信号SD1,SD2が生成される。
図14において、デューティ比DT1,DT2は図13と同一値である。したがって、図14の制御パルス信号SD1は、図13の制御パルス信号SD1と比較して、位相は異なるもののHレベル期間の長さは同じである。同様に、図14の制御パルス信号SD2は、図13の制御パルス信号SD2と比較して、位相は異なるもののHレベル期間の長さは同じである。
このように、キャリア波CW1,CW2間に位相差φを設けることにより、制御パルス信号SD1,SD2について、Hレベル期間およびLレベル期間の比を変えることなく、両者の位相関係、すなわち、立ち上がりエッジおよび立下りエッジの位相差を変えることができる。したがって、位相差φを変えることにより、直流電源B1,B2からの出力を同一値のデューティ比DT1,DT2に従って制御する下で、制御パルス信号SD1およびSD2の位相差を変えることができる。なお、制御パルス信号SD1,SD2を変えることにより、リアクトルL1,L2の電流の位相も変化する。
この結果、位相差φ=φ*としたときに、制御パルス信号SD1がHレベルからLレベルへ遷移するタイミング(立下りエッジ)と、制御パルス信号SD2がLレベルからHレベルへ遷移するタイミング(立ち上がり)とが同位相となる(時刻ta)。以下では、このような位相関係をもたらす位相差を、最適位相差φ*とも称する。
図13および図14からも理解されるように、制御パルス信号SD1,SD2は、デューティ比DT1,DT2によって変化する。したがって、最適位相差φ*についても、デューティ比DT1,DT2に応じて決定されることが理解できる。このため、デューティ比DT1,DT2と、キャリア位相制御による最適位相差φ*の関係を予め求めるとともに、その対応関係を予めマップ(位相差マップ)あるいは関数式(位相差算出式)として作成することが可能である。
再び図9を参照して、キャリア波発生部410は、上記位相差マップまたは位相差算出式に従って、出力制御部300,310によって設定されたデューティ比DT1,DT2から最適位相差φ*を算出する。さらに、キャリア波発生部410は、PWM制御部400へ入力されるキャリア波CW1,CW2を、両者の位相差が最適位相差φ*となるように生成する。この結果、PWM制御部400でのPWM制御において、制御パルス信号SD1およびSD2を、それぞれに立ち上がりエッジおよび立下りエッジが一致する位相状態(図11)に維持することができる。この結果、制御パルス信号SD1およびSD2から、それぞれのLレベル期間長の和を取る処理が可能となる。
次に、低電圧範囲(シリーズ降圧動作)におけるスイッチング素子S1〜S4のオンオフ制御について説明する。
図15および図16は、全電圧シリーズモードの低電圧範囲(シリーズ降圧動作)における回路状態の制御を説明するための波形図および図表である。
図15を参照して、シリーズ上アームオン状態およびパラレル上アームオン状態が繰り返されるシリーズ降圧動作では、上述のように、直流電源B1,B2の下アームオン期間のデューティ比の和に従って、シリーズ上アーム期間のデューティ比DTが設定される。したがって、制御パルス信号SD1およびSD2のそれぞれのHレベル期間長の和に従って、スイッチング素子S1,S3がオンされるシリーズ上アーム期間の長さが設定される。一方で、シリーズ上アーム期間以外は、スイッチング素子S1,S2,S4がオンされるパラレル上アームオン期間とされる。
上記のHレベル期間の和を取る処理のため、制御パルス信号SD1およびSD2の位相は、図11と同様に、制御パルス信号SD1およびSD2の間で、立上がりエッジと、立上がりエッジとが同一タイミングとなるように、キャリア位相差制御を実行することが必要である。すなわち、出力制御部300,310によって設定されたデューティ比DT1,DT2に従って、キャリア波CW1,CW2間の位相差φが最適位相差φ*に制御される(φ=φ*)。
このようなキャリア位相制御を行うことにより、図16に示した図表に従って回路状態を切換えることによって、図15に示した回路状態の制御が実現される。
図16を参照して、制御パルス信号SD1またはSD2がHレベルのときに、シリーズ上アームオン状態とする一方で、制御パルス信号SD1およびSD2の両方がLレベルのときに、パラレル上アームオン状態とするように、スイッチング素子S1〜S4のオンオフが制御される。なお、シリーズ降圧動作(VH<(V1+V2))では、DT1+DT2<1.0となるので、制御パルス信号SD1およびSD2の両方がHレベルとなる期間は考慮しなくてもよい。
図12および図16を比較すると、制御パルス信号SD1,SD2のいずれかがLレベルである場合は、高電圧範囲および低電圧範囲で共通に、シリーズ上アームオン状態が適用される。一方で、制御パルス信号SD1,SD2の両方がHレベルとなる場合は、シリーズ昇圧動作(高電圧範囲)でしか発生しない。同様に、制御パルス信号SD1およびSD2の両方がLレベルとなるのは、シリーズ降圧動作(低電圧範囲)でしか存在しない。
したがって、図12および図16を統合することにより、高電圧範囲および低電圧範囲に共通に、すなわち、全電圧範囲に適用可能な回路動作の制御として、図17を得ることができる。
図17を参照して、制御パルス信号SD1またはSD2の一方がLレベルであるときには、シリーズ上アームオン状態が適用されることで、図12および図16と同等に回路状態を制御することができる。また、制御パルス信号SD1およびSD2の両方がHレベルであるときには、パラレル下アームオン状態を適用することにより図12と同等に回路状態を制御することができる。さらに、制御パルス信号SD1およびSD2の両方がLレベルであるときには、パラレル上アームオン状態を適用することにより、図16と同等に回路状態を制御することができる。
図17に従って、制御パルス信号SD1,SD2に応じて、シリーズ上アームオン状態、パラレル下アームオン状態および、パラレル上アームオン状態を選択的に適用することにより、共通の論理演算によって、高電圧範囲(シリーズ昇圧動作)および低電圧範囲(シリーズ降圧動作)の両方におけるスイッチング素子S1〜S4のオンオフ制御を実現することができる。
図18は、図17に従った回路状態の制御を実現するためのスイッチング素子S1〜S4のオンオフ制御のためのゲート論理式を示す図表である。すなわち、図18は、電力変換器50の全電圧シリーズモードにおけるスイッチング素子のオンオフ制御のためのゲート論理式を示す図表である。すなわち、図9のPWM制御部400は、シリーズモードにおいては、図18に示されるゲート論理式に従って、制御信号SG1〜SG4を生成する。
図18を参照して、制御信号SG1は、制御パルス信号/SD1および/SD2の論理和(OR)演算によって求められる。また、制御信号SG3は、制御パルス信号SD1およびSD2の論理和(OR)演算によって求められる。
さらに、制御信号SG2およびSG4は、制御パルス信号SD1およびSD2の否定排他的論理和(XNOR)演算によって求められる。したがって、制御パルス信号SD1およびSD2の論理レベルが同じであるときには、制御信号SG2およびSG4はHレベルに設定される。一方で、SD1およびSD2の論理レベルが異なるときには、制御信号SG2およびSG4はLレベルに設定される。
ここで、図17および図18を参照して、制御パルス信号SD1,SD2のレベルの組み合わせに対する、スイッチング素子S1〜S4のオンオフ制御を確認する。
制御パルス信号SD1およびSD2がともにHレベルであるときには、図18に示した論理演算式より、制御信号SG3=Hレベルとなる一方で、/SD1=/SD2=Lレベルのため制御信号SG1=Lレベルとなる。また、SD1およびSD2のレベルが一致しているので、制御信号SG2=SG4=Hレベルとなる。
この結果、スイッチング素子S2〜S4がオンされる一方で、スイッチング素子S1がオフされるので、図3に示されたパラレル下アームオン状態が適用される。すなわち、図17に従って、SD1=SD2=Hレベルのときには、パラレル下アームオン状態が選択される。
反対に、制御パルス信号SD1およびSD2がともにLレベルであるときには、図18に示した論理演算式より、制御信号SG3=Lレベルとなる一方で、/SD1=/SD2=Hレベルのため制御信号SG1=Hレベルとなる。一方で、SD1およびSD2のレベルが一致しているので、制御信号SG2=SG4=Hレベルとなる。
この結果、スイッチング素子S1,S2,S4がオンされる一方で、スイッチング素子S3がオフされるので、図6に示されたパラレル上アームオン状態が適用される。すなわち、図17に従って、SD1=SD2=Lレベルのときには、パラレル上アームオン状態が選択される。
また、制御パルス信号SD1およびSD2がそれぞれHレベルおよびLレベルのときには、SD1およびSD2の一方、ならびに、/SD1および/SD2の一方がHレベルであるので、制御信号SG1=SG3=Hレベルとなる。また、SD1およびSD2のレベルが異なるので、制御信号SG2=SG4=Lレベルとなる。制御パルス信号SD1およびSD2がそれぞれLレベルおよびHレベルのときにも、同様に、制御信号SG1=SG3=Hレベルとなり、制御信号SG2=SG4=Lレベルとなる。
この結果、スイッチング素子S1,S3がオンされる一方で、スイッチング素子S2,S4がオフされるので、図4に示されたシリーズ上アームオン状態が適用される。すなわち、図17に従って、SD1=Hレベル,SD2=Lレベルのとき、および、SD1=Lレベル,SD2=Hレベルのときには、シリーズ上アームオン状態が選択される。
このように、本実施の形態1に従う電源システムでは、電力変換器50において、低電圧範囲(VH<(V1+V2))においてもシリーズモードを適用することが可能となる。これにより、VH>V1,V2の全電圧範囲において、直流電源B1,B2が負荷30(電力線PL,GL間)に直列接続される動作期間(シリーズ上アームオン)期間を含むシリーズモードを、出力電圧VHを電圧指令値VH*に制御するためのDC/DC変換を実行することができる。
これにより、昇圧比の抑制によってリアクトルL1,L2での電力損失が低減された高効率のDC/DC変換を実現するシリーズモードを、特許文献1,2では適用できなかった低電圧範囲においても実現することが可能となる。これにより、当該電圧範囲での電源システム5の効率化が期待される。
さらに、図18に示したゲート論理式によって、PWM制御部400(図6)によるスイッチング素子S1〜S4のオンオフ制御ロジックを全電圧範囲で共通化することができる。すなわち、出力電圧VHの高電圧範囲および低電圧範囲の両方に対して、共通のゲート論理式(図18)を用いて、シリーズ降圧動作およびシリーズ昇圧動作を自動的に切換えた全電圧シリーズモードを実現することが可能となる。
[実施の形態1の変形例]
実施の形態1で説明した電力変換器50については、特許文献1および2にも記載されるように、全電圧シリーズモードとはDC/DC変換の態様が異なる、他の動作モードを適用することができる。
図19には、電力変換器50が有する複数の動作モードの一覧が示される。
図19を参照して、動作モードは、全電圧シリーズ(SR)モードに加えて、パラレル昇圧(PB)モードと、「直流電源B1による単独昇圧モード(以下、aBモード)」と、「直流電源B2による単独昇圧モード(以下、bBモード)」とをさらに含む。
PBモードでは、直流電源B1および負荷30(電力線PL,GL)の間でのDC/DC変換と、直流電源B2および負荷30(電力線PL,GL)の間でのDC/DC変換とが並列に実行される。PBモードは、特許文献1,2での「パラレル接続モード」に相当する。したがって、PBモードにおけるスイッチング素子S1〜S4の制御は、特許文献1,2のパラレル接続モードと同様に実行することができる。
aBモードでは、直流電源B1のみを用いてDC/DC変換(昇圧)が実行される。aBモードでは、出力電圧VHが直流電源B2の電圧V2よりも高く制御されている限りにおいて、直流電源B2は、電力線PLと電気的に切り離された状態を維持されて不使用とされる。
同様に、bBモードでは、直流電源B2のみを用いてDC/DC変換(昇圧)が実行される。bBモードでは、出力電圧VHが直流電源B1の電圧V1よりも高く制御されている限りにおいて、直流電源B1は、電力線PLと電気的に切り離された状態を維持されて不使用とされる。
SRモード、PBモード、aBモードおよびbBモードでは、たとえば、図9の制御構成を共有して、直流電源B1および/またはB2の出力が制御される。出力制御のためのPWM制御に従ってスイッチング素子S1〜S4の周期的なオンオフ制御を実行することによって、出力電圧VHは電圧指令値VH*に従って制御される。
再び、図9を参照して、PBモードでは、直流電源B1,B2間の電力配分を制御することができるので、出力制御部310によって制御される直流電源B2については、電力指令値P2*を設定することができる。これにより、電力変換器50から負荷30へ入出力される必要電力Prに対する、直流電源B1,B2間の配分を制御することが可能となる。このとき、図9の構成例では、電流指令値Io*=P2*/V2により設定することができる。
あるいは、図9のアレンジとして説明したように、電力変換器50からの必要電力Prを直流電源B1,B2の間で配分して電力指令値P1*,P2*を設定することも可能である。PBモードでは、全電圧シリーズモードとは異なり、電力指令値P1*,P2*間の配分を自由にすることができる。
このように、本実施の形態1に従う電源システムでは、効率に優れるSRモード(シリーズモード)と、直流電源B1,B2間の電力配分を直接制御可能なPBモードとを、全電圧範囲において自由に選択することができるので、直流電源B1およびB2の利用効率を高めることができる。
aBモードでは、電力変換器50において、スイッチング素子S3およびS4を下アーム素子として共通にオンオフ制御する。さらに、スイッチング素子S1およびS2についても、上アーム素子として共通にオンオフ制御することができる。
したがって、aBモードでは、図9の構成において、出力制御部310の動作をオフして、出力制御部300によって、VH制御のためのデューティ比DT1が算出される。さらに、デューティ比DT1を用いたPWM制御による制御パルス信号SD1に従って、下アーム素子(スイッチング素子S3,S4)のオン期間およびオフ期間(スイッチング素子S1,S2のオン期間)を、繰り返し設けることによって、出力電圧VHを電圧指令値VH*に従って制御することができる。
bBモードにおいても同様に、図9の構成において、出力制御部310によって算出されたデューティ比を、直流電源B2の出力を制御するためのデューティ比DT2として用いることで、出力電圧VHを電圧指令値VH*に従って制御することができる。さらに、電力変換器50において、スイッチング素子S2およびS3を下アーム素子として共通にオンオフ制御するとともに、スイッチング素子S1およびS4について、上アーム素子として共通にオンオフ制御することができる。したがって、デューティ比DT2を用いたPWM制御による制御パルス信号SD2に従って、下アーム素子(スイッチング素子S2,S3)のオン期間およびオフ期間(スイッチング素子S1,S4のオン期間)を、繰り返し設けることによって、出力電圧VHを電圧指令値VH*に従って制御することができる。
再び、図19を参照して、複数の動作モードは、スイッチング素子S1〜S4のオンオフを固定する「直結モード」をさらに含む。直結モードには、「並列直結モード(以下、PDモード)」と、「シリーズ直結モード(以下、SDモード)」と、「直流電源B1の直結モード(以下、aDモード)」と、「直流電源B2の直結モード(以下、bDモード)」とが含まれる。
PDモードでは、スイッチング素子S1,S2,S4をオンに固定する一方で、スイッチング素子S3がオフに固定される。これにより、直流電源B1およびB2を負荷30(電力線PL,GL間)に並列に接続した状態が維持される。この結果、出力電圧VHは、直流電源B1,B2の出力電圧V1,V2(厳密にはV1,V2のうちの高い方の電圧)と同等となる。V1,V2間の電圧差は直流電源B1,B2に短絡電流を生じさせるので、当該電圧差が小さいときに限定して、PDモードを適用することができる。
SDモードでは、スイッチング素子S2,S4がオフに固定される一方で、スイッチング素子S1,S3がオンに固定される。これにより、直流電源B1およびB2を負荷30(電力線PL,GL間)に直列に接続した状態が維持される。この結果、出力電圧VHは、直流電源B1,B2の出力電圧V1,V2の和と同等となる(VH=V1+V2)。
aDモードでは、スイッチング素子S1,S2がオンに固定される一方で、スイッチング素子S3,S4がオフに固定される。これにより、直流電源B2は電力線PLから切り離された状態となり、出力電圧VHは、直流電源B1の電圧V1と同等となる(VH=V1)。aDモードでは、直流電源B2は、電力線PLと電気的に切り離された状態を維持されて不使用とされる。なお、V2>V1の状態でaDモードを適用すると、スイッチング素子S2を介して直流電源B1からB2に短絡電流が生じる。このため、aDモードの適用には、V1>V2が必要条件となる。
同様に、bDモードでは、スイッチング素子S1,S4がオンに固定される一方で、スイッチング素子S2,S3がオフに固定される。これにより、直流電源B1は電力線PLから切り離された状態となり、出力電圧VHは、直流電源B2の電圧V2と同等となる(VH=V2)。bDモードでは、直流電源B1は、電力線PLと電気的に切り離された状態を維持されて不使用とされる。なお、V1>V2の状態でbDモードを適用すると、ダイオードD2を介して直流電源B1からB2に短絡電流が生じる。このため、bDモードの適用には、V2>V1が必要条件となる。
直結モードに含まれる、PDモード、SDモード、aDモードおよびbDモードの各々では、出力電圧VHは、直流電源B1,B2の電圧V1,V2に依存して決まるため、直接制御することができなくなる。このため、直結モードに含まれる各モードでは、出力電圧VHが負荷30の動作に適した電圧に設定できなくなることにより、負荷30での電力損失が増加する虞がある。
一方で、直結モードでは、スイッチング素子S1〜S4がオンオフされないため、電力変換器50の電力損失が大幅に抑制される。したがって、負荷30の動作状態によっては、直結モードの適用によって、負荷30の電力損失増加量よりも電力変換器50での電力損失減少量が多くなることにより、電源システム5全体での電力損失が抑制できる可能性がある。
この結果、本実施の形態1に従う電源システム5では、全電圧シリーズ(SR)モードを含む、図19に示された複数の動作モードを、負荷30および/または電力変換器50の動作状態に応じて適切に切換えることによって、DC/DC変換を実行できる。この結果、電力損失の小さい全電圧シリーズ(SR)モードの他、他の動作モードを適切に選択することによって、電源システム5全体での高効率化を図ることができる。
(電力変換器の回路構成アレンジ)
図20は、実施の形態1に従う電力変換器の回路構成の変形例を示す回路図である。
図20を参照して、電力変換器50♯は、図1に示された電力変換器50と比較して、直流電源B1およびリアクトルL1が、ノードN2および電力線GLの間ではなく、電力線PLおよびノードN2の間に直列に接続される点で異なる。電力変換器50♯のその他の構成は、電力変換器50と同様であるのでその説明は繰返さない。
電力変換器50♯においては、電力変換器50と比較した回路の対称性から、直流電源B1に対する上アーム素子と下アーム素子とを入れ替えても、電力変換器50と同様のDC/DC変換を実行できることが理解される。
具体的には、電力変換器50♯では、スイッチング素子S1,S2を直流電源B1の下アーム素子とし、スイッチング素子S3,S4を直流電源B1の上アーム素子とするように制御することが必要である。この結果、電力変換器50♯の各動作モードにおいて、スイッチング素子S1は、電力変換器50のスイッチング素子S4と同等のパターンでオンオフ制御され、スイッチング素子S2は、電力変換器50のスイッチング素子S3と同等のパターンでオンオフ制御される。同様に、電力変換器50♯のスイッチング素子S3は、電力変換器50のスイッチング素子S2と同等のパターンでオンオフ制御され、スイッチング素子S4は、電力変換器50のスイッチング素子S1と同等のパターンでオンオフ制御される。
このようにすると、電力変換器50♯についても、電力変換器50と同様に、全電圧シリーズ(SR)モードを含む図19に示された複数の動作モードを選択的に適用して、電力変換器50と同等のDC/DC変換を実行することができる。
たとえば、電力変換器50♯の全電圧シリーズモードでは、スイッチング素子S1〜S4は下記のように制御される。図11および図20を参照して、電力変換器50においてスイッチング素子S1,S3がオンされるシリーズ上アームオン期間において、電力変換器50♯ではスイッチング素子S2,S4がオンされる。同様に、電力変換器50においてスイッチング素子S1,S2,S4がオンされるパラレル上アームオン期間において、電力変換器50♯ではスイッチング素子S1,S3,S4がオンされる。また、電力変換器50においてスイッチング素子S2,S3,S4がオンされるパラレル下アームオン期間において、電力変換器50♯ではスイッチング素子S1,S2,S3がオンされる。
以上説明したように、実施の形態1に従う電源システムでは、電力変換器50,50♯を包括すると、スイッチング素子S1〜S4に対して、直流電源B1およびリアクトルL1は、電力線PLまたはGLと、ノードN2との間に直列に電気的に接続される。一方で、直流電源B2およびリアクトルL2は、ノードN1とN3との間に直列に電気的に接続される。
また、電力変換器50,50♯の各々において、リアクトルL1および直流電源B1の接続順序を入れ換えても、電気的には等価な回路構成が維持される。同様に、リアクトルL2および直流電源B2の接続順序を入れ換えても、電気的には等価な回路構成が維持される。
[実施の形態2]
実施の形態2では、電力変換器50,50♯とは異なる構成を有する電力変換器に対して、実施の形態1で説明した全電圧シリーズモードを適用する技術について説明する。
(電力変換器の回路構成)
図21は本発明の実施の形態に従う電源システム5♯の構成を説明する回路図である。
図21を図1と比較して、実施の形態2に従う電源システム5♯は、図1に示された電源システム5と比較して、電力変換器50に代えて電力変換器10を備える点で異なる。電源システム5♯の、その他の部分の構成は、電源システム5と同様である。
すなわち、電源システム5♯についても、負荷30と接続された電力線PLおよびGLと、直流電源B1およびB2との間で、DC/DC変換を実行するように構成される。
電力変換器10についても電力変換器50と同様に、負荷30への出力電圧VHを、電圧指令値VH*に従って制御する。
図21を参照して、電力変換器10は、高電圧側の電力線PLおよび低電圧側の電力線GLの間の直流電圧(出力電圧)VHを制御するように構成される。電力線GLは、代表的には、接地配線で構成される。
電力変換器10は、スイッチング素子Q1〜Q5と、リアクトルL1,L2とを含む。スイッチング素子Q1〜Q5は、制御装置40からの制御信号SQ1〜SQ5にそれぞれ応答して、オンオフを制御することが可能である。具体的には、スイッチング素子Q1〜Q5は、制御信号SQ1〜SQ5がHレベルのときにオン状態となって、電流経路を形成可能な状態となる。一方で、スイッチング素子Q1〜Q5は、制御信号SQ1〜SQ5がLレベルのときにオフ状態となって、当該電流経路を遮断する状態となる。
スイッチング素子Q1〜Q4に対しては、逆並列ダイオードD11〜D14がそれぞれ配置されている。ダイオードD11〜D14は、順バイアス時に、電力線GLから電力線PLへ向かう方向(図中、下から上へ向かう方向)の電流経路を形成するように配置される。一方で、ダイオードD11〜D14は、逆バイアス時には、当該電流経路を非形成とする。具体的には、ダイオードD11は、ノードN1から電力線PLへ向かう方向を順方向とするように接続され、ダイオードD12は、電力線GLからノードN11へ向かう方向を順方向とするように接続される。同様に、ダイオードD13は、電力線GLからノードN12へ向かう方向を順方向とするように接続され、ダイオードD14は、ノードN12から電力線PLへ向かう方向を順方向とするように接続される。
スイッチング素子Q1は、電力線PLおよびノードN11の間に電気的に接続される。リアクトルL1および直流電源B1は、ノードN11および電力線GLの間に直列に、電気的に接続される。たとえば、リアクトルL1は、直流電源B1の正極端子およびノードN11の間に電気的に接続されるとともに、直流電源B1の負極端子は、電力線GLと電気的に接続される。スイッチング素子Q2は、ノードN11および電力線GLの間に電気的に接続される。なお、リアクトルL1および直流電源B1の接続順序を入れ換えても、電気的には等価な回路構成が維持される。
スイッチング素子Q3は、ノードN12および電力線GLの間に電気的に接続される。スイッチング素子Q4は、電力線PLおよびノードN12の間に電気的に接続される。スイッチング素子Q5は、ノードN11およびN12の間に電気的に接続される。リアクトルL2および直流電源B2は、電力線PLおよびノードN12の間に直列に、電気的に接続される。たとえば、リアクトルL2は、直流電源B2の正極端子および電力線PLの間に電気的に接続されるとともに、直流電源B2の負極端子は、ノードN12と電気的に接続される。なお、リアクトルL2および直流電源B2の接続順序を入れ換えても、電気的には等価な回路構成が維持される。
図21の構成例では、ノードN11は「第1のノード」に対応し、ノードN12は「第2のノード」に対応する。さらに、スイッチング素子Q1およびダイオードD1は「第1の半導体素子」に対応し、スイッチング素子Q2およびダイオードD2は「第2の半導体素子」に対応し、スイッチング素子Q3およびダイオードD3は「第3の半導体素子」に対応する。さらに、スイッチング素子Q4およびダイオードD4は「第4の半導体素子」に対応し、スイッチング素子Q5は、「第5の半導体素子」に対応する。また、リアクトルL1およびL2は、「第1のリアクトル」および「第2のリアクトル」にそれぞれ対応する。図1の例では、スイッチング素子Q1〜Q5のオンオフ制御により、第1〜第5の半導体素子の各々において、電流経路の形成および遮断を制御することができる。
(全電圧シリーズモード)
次に、実施の形態2に従う電力変換器10に対する、実施の形態1と同様の全電圧シリーズモードの適用について説明する。
図22〜図24は、図21に示された電力変換器10の全電圧シリーズモードにおける回路動作を説明するための回路図である。
以下の説明で明らかになるように、電力変換器10の全電圧シリーズモードにおいても、実施の形態1と同様に、低電圧範囲(VH<(V1+V2))と、高電圧範囲(VH≧(V1+V2))とのそれぞれにおいて、実施の形態1と同様に、パラレル下アームオン状態、シリーズ上アームオン状態およびパラレル上アームオン状態が適宜切換えて実行される。
図22、図23および図24には、電力変換器10でのパラレル下アームオン状態、シリーズ上アームオン状態、および、パラレル上アームオン状態の回路動作がそれぞれ示される。
図22を参照して、パラレル下アームオン状態では、スイッチング素子Q2およびQ4がオンされる。スイッチング素子Q2のオンにより、直流電源B1からの電流によってリアクトルL1にエネルギを蓄えるための電流経路180が形成される。同様に、スイッチング素子Q4のオンにより、直流電源B2からの電流によってリアクトルL2にエネルギを蓄えるための電流経路181が形成される。
すなわち、直流電源B1は、電力線PLおよびGLからは切り離された状態で、リアクトルL1との間でループ状の電流経路180を形成する。同様に、直流電源B2は、電力線PLおよびGLからは切り離された状態で、リアクトルL2との間でループ状の電流経路181を形成する。これにより、電力変換器10においても、図5(a)に示された、パラレル下アームオン状態が形成される。
図23を参照して、シリーズ上アームオン状態では、スイッチング素子Q2,Q4をオフするとともに、スイッチング素子Q5がオンされる。これにより、電力線PLおよびGLの間に、直流電源B1およびB2、ならびに、リアクトルL1およびL2を直列に接続する電流経路182が形成される。
したがって、電力変換器10においても、図5(b)に示された、シリーズ上アームオン状態が形成される。
図24を参照して、パラレル上アーム状態では、スイッチング素子Q2,Q4,Q5がオフされるとともに、スイッチング素子Q1,Q3がオンされる。スイッチング素子Q2およびQ5をオフすることにより、直流電源B1に対しては、上アーム素子のオン時に相当する電流経路183が形成される。電流経路183によって、ダイオードD11(または、スイッチング素子Q1)を経由して、リアクトルL1に蓄積されたエネルギおよび直流電源B1からのエネルギを、電力変換器50から負荷30へ供給することができる。
同様に、スイッチング素子Q4,Q5をオフすることにより、直流電源B2に対しては、上アーム素子のオン時に相当する電流経路184が形成される。電流経路184によって、ダイオードD13(または、スイッチング素子Q3)を経由して、リアクトルL2に蓄積されたエネルギおよび直流電源B2からのエネルギを、電力変換器50から負荷30へ供給することができる。
電流経路183,184により、直流電源B1およびB2は、リアクトルL1およびL2をそれぞれ経由して、電力線PLおよびGLの間に並列に接続される。これにより、電力変換器10においても、図5(c)に示された、パラレル上アームオン状態が形成される。
図22〜図24から理解されるように、電力変換器10においても、実施の形態1で説明した電力変換器50と同様に、図5(a)〜(c)に示された、パラレル下アーム状態、シリーズ上アームオン状態、および、パラレル上アームオン状態のそれぞれの動作期間を、スイッチング素子Q1〜Q5のオンオフ制御によって、選択的に設けることができる。また、電力変換器10についても、スイッチング素子Q1〜Q5のオンオフ制御によって、リアクトルL1,L2を経由する電流(リアクトル電流)の経路を切換えるように構成されていることが理解される。
図25は、電力変換器10の全電圧シリーズモードの高電圧範囲における回路状態の制御を説明するための波形図である。
図25を参照して、電力変換器10においても、全電圧シリーズモードの高電圧範囲におけるシリーズ昇圧動作では、電力変換器50のシリーズ昇圧動作(図11)と同様に、スイッチング素子Q2,Q4がオンされるパラレル下アームオン期間(図22)と、スイッチング素子Q5がオンされるシリーズ上アームオン期間(図23)とが繰り返される。
電力変換器10においても、シリーズ昇圧動作では、シリーズ上アームオン期間のデューティ比DTが、直流電源B1,B2の上アームオン期間のデューティ比の和に従って設定される。一方で、シリーズ上アームオン期間以外は、パラレル下アームオン期間とされる。すなわち、図11で説明したのと同様に、直流電源B1の出力制御のための制御パルス信号SD1と、直流電源B2の出力制御のための制御パルス信号SD2とに従って、パラレル下アームオン期間およびシリーズ上アームオン期間の一方を選択的に設けることができる。
図26は、電力変換器10の全電圧シリーズモードの低電圧範囲における回路状態の制御を説明するための波形図である。
図26を参照して、電力変換器10においても、全電圧シリーズモードの低電圧範囲におけるシリーズ降圧動作では、電力変換器50のシリーズ降圧動作(図15)と同様に、スイッチング素子Q5がオンされるシリーズ上アームオン期間(図23)と、スイッチング素子Q1,Q3がオンされるパラレル上アームオン期間(図24)とが繰り返される。
電力変換器10においても、シリーズ降圧動作では、シリーズ上アームオン期間のデューティ比DTが、直流電源B1,B2の下アームオン期間のデューティ比の和に従って設定される。一方で、シリーズ上アーム期間以外は、パラレル上アームオン期間とされる。すなわち、図15で説明したのと同様に、直流電源B1の出力制御のための制御パルス信号SD1と、直流電源B2の出力制御のための制御パルス信号SD2とに従って、シリーズ上アームオン期間およびパラレル上アームオン期間の一方を選択的に設けることができる。
なお、電力変換器50の全電圧シリーズモードにおいても、低電圧範囲および高電圧範囲を通じて、制御パルス信号SD1およびSD2は、たとえば、図14に示したキャリア位相制御(φ=φ*)を適用した上で、図9の制御構成によって得ることができる。
このように、電力変換器10においても、図17に示した図表に従って回路状態を制御することによって、電力変換器10と同様の全電圧シリーズモードによって、出力電圧VHを制御することができる。すなわち、図17の図表は、電力変換器10のシリーズモードにおいても、高電圧範囲および低電圧範囲に共通に、すなわち、全電圧範囲に適用することができる。
図27は、図17に従った回路状態の制御を電力変換器10で実現するためのスイッチング素子Q1〜Q5のオンオフ制御のためのゲート論理式を示す図表である。すなわち、図27は、電力変換器10の全電圧シリーズモードにおけるスイッチング素子のオンオフ制御のためのゲート論理式を示す図表である。すなわち、図9のPWM制御部400は、シリーズモードにおいて、図27に示されるゲート論理式に従って、制御信号SQ1〜SQ4を生成する。
図27を参照して、電力変換器10の全電圧シリーズモードにおいて、スイッチング素子Q1,Q3を制御する制御信号SQ1,SQ3は、制御パルス信号/SD1および/SD2の論理積(AND)によって求められる。
また、スイッチング素子Q2,Q4の制御信号SQ2,SQ4は、制御パルス信号SD1およびSD2の論理積(AND)によって求めることができる。さらに、スイッチング素子Q5の制御信号SQ5は、制御パルス信号SD1およびSD2の排他的論理和(XOR)で示される。すなわち、制御信号SQ5は、制御パルス信号SD1およびSD2の論理レベルが異なるときにはHレベルに設定される。SD1およびSD2の論理レベルが同一であるときには、制御信号SQ5は、Lレベルに設定される。
ここで、図17および図27を参照して、制御パルス信号SD1,SD2のレベルの組み合わせに対する、スイッチング素子Q1〜Q5のオンオフ制御を確認する。
制御パルス信号SD1およびSD2がともにHレベルであるときには、図27に示した論理演算式より、制御信号SQ2=SQ4=Hレベルとなる一方で、/SD1=/SD2=Lレベルのため、制御信号SQ1=SQ3=Lレベルとなる。また、SD1およびSD2のレベルが一致しているので、制御信号SQ5=Lレベルとなる。
この結果、スイッチング素子Q2,Q4がオンされる一方で、スイッチング素子Q1,Q3,Q5がオフされる。これにより、図22に示されたパラレル下アームオン状態が適用される。すなわち、図17に従って、SD1=SD2=Hレベルのときには、パラレル下アームオン状態が選択される。
反対に、制御パルス信号SD1およびSD2がともにLレベルであるときには、図18に示した論理演算式より、制御信号SQ2=SQ4=Lレベルとなる一方で、/SD1=/SD2=Hレベルのため制御信号SQ1=SQ3=Hレベルとなる。一方で、SD1およびSD2のレベルが一致しているので、制御信号SQ5=Lレベルとなる。
この結果、スイッチング素子Q1,Q3がオンされる一方で、スイッチング素子Q2,Q4,Q5がオフされる。これにより、図24に示されたパラレル上アームオン状態が適用される。すなわち、図17に従って、SD1=SD2=Lレベルのときには、パラレル上アームオン状態が選択される。
また、制御パルス信号SD1およびSD2がそれぞれHレベルおよびLレベルのときには、SD1およびSD2の一方、ならびに、/SD1および/SD2の一方がLレベルであるので、制御信号SQ1=SQ2=SQ3=SQ4=Lレベルとなる。さらに、SD1およびSD2のレベルが異なるので、制御信号SQ5=Hレベルとなる。
制御パルス信号SD1およびSD2がそれぞれLレベルおよびHレベルのときにも、同様に、制御信号SQ1=SQ2=SQ3=SQ4=Hレベルとなり、制御信号SQ5=Lレベルとなる。
この結果、スイッチング素子Q1〜Q4がオフされる一方で、スイッチング素子Q5がオンされるので、図23に示されたシリーズ上アームオン状態が適用される。すなわち、図17に従って、SD1=Hレベル,SD2=Lレベルのとき、および、SD1=Lレベル,SD2=Hレベルのときには、シリーズ上アームオン状態が選択される。
このように、本実施の形態2に従う電源システムにおいても、電力変換器10において、低電圧範囲(VH<(V1+V2))においてもシリーズモードを適用することが可能となる。これにより、VH>V1およびVH>V2の全電圧範囲において、直流電源B1,B2が負荷30(電力線PL,GL間)に直列接続される動作期間(シリーズ上アームオン)期間を含むシリーズモードを、出力電圧VHを電圧指令値VH*に制御するためのDC/DC変換を実行することができる。
これにより、電力変換器50においても、特許文献1,2のシリーズ接続モードとは異なり、低電圧範囲においてもシリーズモードを適用することによって、電源システム5の効率化が期待される。また、電力変換器50のシリーズモードにおいても、図27に示したゲート論理式によって、PWM制御部400(図9)によるスイッチング素子Q1〜Q5のオンオフ制御ロジックを全電圧範囲で共通化することができる。すなわち、出力電圧VHの高電圧範囲および低電圧範囲の両方に対して、共通のゲート論理式(図27)を用いて、シリーズ降圧動作およびシリーズ昇圧動作を自動的に切換えた全電圧シリーズモードを実現することが可能となる。
[実施の形態2の変形例1]
実施の形態に従う電力変換器10についても、実施の形態2で説明した全電圧シリーズモードとはDC/DC変換の態様が異なる他の動作モードを、スイッチング素子Q1〜Q5のオフ制御によって選択的に適用することができる。実施の形態2の変形例1では、その他の動作モードについて説明する。
図28には、電力変換器10が有する複数の動作モードの一覧が示される。
図28を参照して、電力変換器10の動作モードは、実施の形態2で説明した全電圧シリーズ(SR)モードに加えて、パラレル昇圧(PB)モードと、「直流電源B1による単独昇圧モード(aBモード)」と、「直流電源B2による単独昇圧モード(bBモード)」とをさらに含む。
さらに、電力変換器10の動作モードは、スイッチング素子Q1〜Q5のオンオフを固定する「直結モード」をさらに含む。直結モードには、「並列直結モード(PDモード)」と、「シリーズ直結モード(SDモード)」と、「直流電源B1の直結モード(aDモード)」と、「直流電源B2の直結モード(bDモード)」とが含まれる。
(パラレル昇圧モードの回路動作)
上記の動作モードのうち、まず、PBモードの回路動作および制御について詳細に説明する。以下の説明で明らかになるように、電力変換器10は、パラレル昇圧モードにおけるスイッチング素子での損失が電力変換器50よりも小さいという特徴を有する。
電力変換器10は、パラレル昇圧モードにおいては、直流電源B1およびB2の各々に対して2つの昇圧チョッパを並列に動作させる態様により動作する。すなわち、電力変換器10は、特許文献1,2でのパラレル接続モードと同様に、直流電源B1およびB2と電力線PL,GL(負荷30)との間で並列なDC/DC変換を行なうことにより、電圧指令値VH*に従って出力電圧VHを制御する。
再び図21を参照して、電力変換器10においては、スイッチング素子Q5をオンした場合と、オフした場合との間で、直流電源B1およびB2に対して形成される昇圧チョッパが異なることが特徴である。
電力変換器10において、スイッチング素子Q5のオフ時には、ノードN11およびN12が電気的に切り離される。このときの電力変換器10の等価回路が図29に示される。
図29を参照して、スイッチング素子Q5のオフ時には、直流電源B1に対して、スイッチング素子Q2およびダイオードD12を下アーム素子とし、スイッチング素子Q1およびダイオードD11を上アーム素子とする昇圧チョッパが形成される。同様に、直流電源B2に対して、スイッチング素子Q4およびダイオードD14を下アーム素子とし、スイッチング素子Q3およびダイオードD13を上アーム素子とする昇圧チョッパが形成される。
図30には、図29に示した等価回路図において、直流電源B1,B2の下アームオン時における電流経路が示される。
図30を参照して、スイッチング素子Q2をオンすることにより、直流電源B1の出力によりリアクトルL1にエネルギを蓄積するための電流経路191が形成される。同様に、スイッチング素子Q4をオンすることにより、直流電源B2の出力によりリアクトルL2にエネルギを蓄積するための電流経路192が形成される。
図31には、図30に示した等価回路図において、直流電源B1,B2の上アームオン時における電流経路が示される。
図31を参照して、スイッチング素子Q2をオフすることにより、スイッチング素子Q1またはダイオードD11を経由して、リアクトルL1の蓄積エネルギを直流電源B1からのエネルギとともに電力線PLへ出力するための電流経路193が形成される。ここで、スイッチング素子Q1およびQ2を相補的にオンオフすることにより、スイッチング素子Q2のオフ期間にスイッチング素子Q1がオンされる。スイッチング素子Q1は、直流電源B1に対応して形成される昇圧チョッパの上アームに相当する。
同様に、スイッチング素子Q4をオフすることにより、スイッチング素子Q3またはダイオードD13を経由して、リアクトルL2の蓄積エネルギを直流電源B2からのエネルギとともに電力線PLへ出力するための電流経路194が形成される。スイッチング素子Q3およびQ4を相補的にオンオフすることにより、スイッチング素子Q4のオフ期間にスイッチング素子Q3がオンする。スイッチング素子Q3は、直流電源B2に対応して形成される昇圧チョッパの上アームに相当する。
図30および図31から理解されるように、電流経路191および193を交互に形成することによって、直流電源B1および電力線PL,GLの間のDC/DC変換が実行される。同様に、電流経路192および194を交互に形成することによって、直流電源B2および電力線PL,GLの間のDC/DC変換が実行される。
以下では、直流電源B1に対応して形成される昇圧チョッパの上アームを「B1Uアーム」とも称し、下アームを「B1Lアーム」と称する。同様に、直流電源B2に対応して形成される昇圧チョッパの上アームを「B2Uアーム」とも称し、下アームを「B2Lアーム」とも称する。
なお、図30から理解されるように、B1LアームおよびB2Lアームの形成時には、ノードN12からN11へ向かう電流経路が形成されると、電力線PLから電力線GLへの短絡経路が形成されてしまうため、当該電流経路を遮断する必要がある。同様に、図31から理解されるように、B1UアームおよびB2Uアームの形成時には、ノードN11からN12へ向かう電流経路が形成されると、電力線PLから電力線GLへの短絡経路が形成されてしまうため、当該電流経路を遮断する必要がある。したがって、B1LアームおよびB2Lアームの形成時、および、B1UアームおよびB2Uアームの形成時の各々では、スイッチング素子Q5をオフすることによって、上記短絡経路の形成を回避することができる。
一方で、電力変換器10では、スイッチング素子Q5のオン時には、ノードN11およびN12が電気的に接続される。このときの電力変換器10の等価回路が図32に示される。
図32を参照して、直流電源B1に関して、スイッチング素子Q5によってノードN12がノードN11と電気的に接続されるので、ノードN12および電力線GLの間に接続されたスイッチング素子Q3を、直流電源B1の下アーム(B1Lアーム)として昇圧チョッパを形成することができる。同様に、ノードN12および電力線PLの間に電気的に接続されたスイッチング素子Q4を直流電源B1の上アーム(B1Uアーム)として、昇圧チョッパを形成することができる。
また、直流電源B2に対しては、ノードN11および電力線PLの間に接続されたスイッチング素子Q1を下アーム(B2Lアーム)とし、スイッチング素子Q2を上アーム(B2Uアーム)とした昇圧チョッパを形成することができる。
図33には、図32に示した等価回路図において、直流電源B1,B2の下アームオン時における電流経路が示される。
図33(a)を参照して、スイッチング素子Q3,Q5をオンすることにより、直流電源B1の出力によりリアクトルL1にエネルギを蓄積するための電流経路195が形成される。一方で、図33(b)に示されるように、スイッチング素子Q1,Q5をオンすることにより、直流電源B2の出力によりリアクトルL2にエネルギを蓄積するための電流経路196が形成される。
図34には、図32に示した等価回路図において、直流電源B1,B2の上アームオン時における電流経路が示される。
図34(a)を参照して、直流電源B1に関して、スイッチング素子Q5がオンされた状態でスイッチング素子Q3をオフすることにより、スイッチング素子Q4またはダイオードD14を経由してリアクトルL1の蓄積エネルギを直流電源B1からのエネルギとともに電力線PLへ出力するための電流経路197が形成される。上述のように、スイッチング素子Q3およびQ4は相補的にオンオフされるので、スイッチング素子Q3によってB1Lアームを形成するとともに、スイッチング素子Q4によってB1Uアームを形成することができる。
図34(b)を参照して、直流電源B2に関しては、スイッチング素子Q5がオンされた状態でスイッチング素子Q1をオフすることにより、スイッチング素子Q2またはダイオードD12を経由してリアクトルL2の蓄積エネルギを直流電源B2からのエネルギとともに電力線PLへ出力するための電流経路198が形成される。上述のように、スイッチング素子Q1およびQ2は相補的にオンオフされるので、スイッチング素子Q1によってB2Lアームを形成するとともに、スイッチング素子Q2によってB2Uアームを形成することができる。
図35には、スイッチング素子Q5のオフ時およびオン時にそれぞれ形成される昇圧チョッパの各アームとスイッチング素子のオンオフとの対応関係が示される。
図35を参照して、スイッチング素子Q5のオフ時(図29〜図31)に形成される昇圧チョッパにおける各アームを「第1アーム」と称し、スイッチング素子Q5のオン時(図32〜図34)に形成される昇圧チョッパの各アームを「第2アーム」と称することとする。
スイッチング素子Q5のオフ時、すなわち第1アームの形成時には、直流電源B1に対して、上述のように、スイッチング素子Q2のオンによってB1Lアームがオンされる一方で、スイッチング素子Q1のオン(スイッチング素子Q2のオフ)によってB1Uアームがオンされる。また、直流電源B2に対しては、スイッチング素子Q4のオンによってB2Lアームがオンされる一方で、スイッチング素子Q3のオン(スイッチング素子Q4のオフ)によってB2Uアームがオンされる。
一方で、スイッチング素子Q5のオン時、すなわち第2アームの形成時には、直流電源B1に対して、上述のように、スイッチング素子Q3のオンによってB1Lアームがオンされる一方で、スイッチング素子Q4のオン(スイッチング素子Q3のオフ)によってB1Uアームがオンされる。また、直流電源B2に対しては、スイッチング素子Q1のオンによってB2Lアームがオンされる一方で、スイッチング素子Q2のオン(スイッチング素子Q1のオフ)によってB2Uアームがオンされる。
このように、第1アームおよび第2アームのいずれにおいても、スイッチング素子Q1およびQ2を相補的にオンオフするとともに、スイッチング素子Q3およびQ4を相補的にオンオフすることにより、直流電源B1およびB2の各々に対して、上アームおよび下アームが交互にオンオフすされるように制御することができる。
実施の形態2に従う電力変換器10のパラレル昇圧モードでは、図35に示された第1アームおよび第2アームを併用してDC/DC変換を実行する。ただし、図35に示したように、各スイッチング素子Q1〜Q5は、直流電源B1,B2の一方に対して第1アームとして動作するとともに、直流電源B1,B2の他方に対して第2アームとして動作する。このような、第1アームおよび第2アーム間の干渉により、第2アームを適用できる期間が限定される点に留意する必要がある。
具体的には、直流電源B1,B2の一方について第2アームをオンすると、直流電源B1,B2の他方に対しては、上下反対側の第1アームがオンされることになる。たとえば、スイッチング素子Q3,Q5をオンして第2アームのうちのB1Lアームをオンすると(図33(a))、スイッチング素子Q3のオンに応じて、図31と同様に、直流電源B2に対しては第1アームのうちのB2Uアームがオンされる。反対に、スイッチング素子Q4,Q5のオンによって第2アームのうちのB1Uアームをオンすると(図34(a))、図30と同様に、直流電源B2に対しては第1アームのうちのB2Lアームがオンする。
図33(a),(b)からも理解されるように、第2アームの形成時に、B1LアームおよびB2Lアームの両方をオンした場合には、オン状態のスイッチング素子Q1,Q3,Q5を経由して、電力線PLおよびGL間に短絡経路が形成されてしまう。このため、上述のように、B1LアームおよびB2Lアームの両方をオンする場合には、スイッチング素子Q5のオフによって、第1アーム(図30,図31)を適用することが必要である。
同様に、図34(a),(b)からも理解されるように、第2アームの形成時に、B1UアームおよびB2Uアームの両方をオンした場合には、オン状態のスイッチング素子Q4,Q5,Q2を経由して、電力線PLおよびGL間に短絡経路が形成されてしまう。このため、上述のように、B1LアームおよびB2Lアームの両方をオンする場合には、スイッチング素子Q5のオフによって、第1アーム(図30,図31)を適用することが必要である。
したがって、第2アームを使用できる期間は、直流電源B1,B2の間で、上アームへの指令(オン/オフ)と下アームへの指令(オン/オフ)とが異なる期間に限定される。すなわち、直流電源B1に対して上アームオンが指令されている一方で直流電源B2に対して下アームオンが指令されている期間、または、直流電源B1に対して下アームオンが指令されている一方で直流電源B2に対して上アームオンが指令されている期間に限って、第2アームを使用することができる。
図36には、電力変換器10のパラレル昇圧モードにおけるスイッチング素子Q1〜Q5の各々についてのオンオフ制御のためのゲート論理式が示される。
電力変換器10のパラレル昇圧モードでは、スイッチング素子Q2は、制御パルス信号SD1に対応してオンオフ制御されるとともに、スイッチング素子Q1は、制御パルス信号/SD1に応答してオンオフされる。さらに、スイッチング素子Q4は、制御パルス信号SD2に応じてオンオフ制御されるとともに、スイッチング素子Q3は制御パルス信号/SD2に応答してオンオフされる。さらに、スイッチング素子Q5は、制御パルス信号SD1およびSD2の排他的論理和(XOR)に従ってオンオフ制御される。
制御パルス信号SD1およびSD2の論理レベルが等しいとき(すなわち、SD1=SD2=Hレベル、または、SD1=SD2=Lレベル)である場合には、スイッチング素子Q5はオフされる。すなわち、スイッチング素子Q2,Q4のオンオフ状態が同一であるときには、スイッチング素子Q5がオフされる。このとき、直流電源B1,B2のそれぞれに対して、第1アームを用いた昇圧チョッパが構成される。
したがって、第1アームを用いる場合には、制御パルス信号SD1およびSD2の論理レベルが等しいので、スイッチング素子Q2,Q4は共通にオンオフされることが理解される。さらに、スイッチング素子Q1,Q3についても共通にオンオフされる。さらに、スイッチング素子Q1,Q3のペアと、スイッチング素子Q2,Q4のペアとは、相補的にオンオフされることになる。したがって、スイッチング素子Q1およびQ2の相補的なオンオフ、ならびに、スイッチング素子Q3およびQ4の相補的なオンオフは確保されている。
一方で、制御パルス信号SD1およびSD2の論理レベルが異なる場合(すなわち、SD1=Hレベル,SD2=Lレベル、または、SD1=Lレベル,SD2=Hレベル)には、スイッチング素子Q5がオンされる。すなわち、スイッチング素子Q2,Q4のオンオフ状態が異なるときには、スイッチング素子Q5がオンされる。このとき、直流電源B1,B2のそれぞれに対して、第2アームを用いた昇圧チョッパが構成される。
したがって、第2アームを用いる場合には、スイッチング素子Q2,Q3が共通にオンオフされるとともに、スイッチング素子Q1,Q4が共通にオンオフされる。そして、スイッチング素子Q1,Q3のペアと、スイッチング素子Q2,Q4のペアとは、相補的にオンオフされることになる。したがって、第2アームの使用時にも、スイッチング素子Q1およびQ2の相補的なオンオフ、ならびに、スイッチング素子Q3およびQ4の相補的なオンオフは確保されている。
このように、図36に示した論理演算式に従って、スイッチング素子Q1〜Q5のオンオフを、制御パルス信号SD1,SD2に応じて制御することにより、第1アームを用いる昇圧チョッパと、第2アームを形成する用いる昇圧チョッパとを自動的に選択しながら、パラレル昇圧モードにおけるDC/DC変換を実行することができる。特に、スイッチング素子Q5によるノードN11,N12間の電流経路の形成/遮断の制御によって、電力線PL,GL間に短絡経路が形成されることを回避しながら、第1アームおよび第2アームを切換えることができる。
なお、制御パルス信号SD1(/SD1),SD2(/SD2)は、電力変換器10のPBモードと同様に、図9の制御構成によって生成することができる。さらに、PWM制御部400(図9)が図36に示されたゲート論理式に従って、制御信号SQ1〜SQ5を生成する。
図37には、電力変換器10のパラレル接続モードにおける制御動作を説明するための波形図が示される。
図37を参照して、直流電源B1に対して、制御パルス信号SD1(/SD1)は、図13および図14と同様に、キャリア波CW1とデューティ比DT1との電圧比較に基づくPWM制御によって生成される。図36のゲート論理式に示されたように、直流電源B1の出力制御のための制御パルス信号SD1,/SD1に基づいて、スイッチング素子Q1,Q2のオンオフが制御される。
同様に、直流電源B2に対しても、デューティ比DT2とキャリア波CW2との電圧比較に基づくPWM制御よって、制御パルス信号SD2(/SD2)が生成される。図36のゲート論理式に示されたように、直流電源B2の出力制御のための制御パルス信号SD2,/SD2に基づいて、スイッチング素子Q3,Q4のオンオフ期が制御される。
制御信号SQ1〜SQ5は、図36に示されたゲート論理式に従って、上記PWM制御によって得られた制御パルス信号SD1(/SD1),SD2(/SD2)に応じて生成される。ここで、制御パルス信号SD1のH/Lレベルと、制御パルス信号SD2のH/Lレベルとの組合せに応じて、スイッチング素子Q1〜Q5のオンオフの組み合わせ(スイッチングパターン)は、図38に示す4通りに限定される。
図38は、パラレル昇圧モードにおけるスイッチング素子Q1〜Q5のスイッチングパターンの一覧を示す図表である。
図37を参照して、時刻t0〜t1間では、SD1=SD2=Hレベルである。このとき、図38に示されるように、制御信号SQ1=SQ3=SQ5=Lレベルとなる一方で、SQ2=SQ4=Hレベルとなる。したがって、スイッチング素子Q5がオフされて、第1アームを用いた昇圧チョッパが形成される下で、スイッチング素子Q1,Q3がオフする一方で、スイッチング素子Q2,Q4がオンする。
このとき、図35から理解されるように、第1アームのうちのB1LアームおよびB2Lアームがオンされる。すなわち、直流電源B1およびB2の各々に対して下アームオンが指令される。したがって、時刻t0〜t1間では、リアクトル電流IL1およびIL2の両方が上昇する。なお、電力変換器10の回路構成から明らかなとおり、リアクトル電流IL1は直流電源B1の電流I1に相当し、リアクトル電流IL2は直流電源B1の電流I2に相当する。
再び図37を参照して、時刻t1において制御パルス信号SD2がHレベルからLレベルへ変化するため、時刻t1〜t2間では、SD1=Hレベル、かつ、SD2=Lレベルである。このとき、図15に示されるように、制御信号SQ2=SQ3=SQ5=Hレベルとなる一方で、SQ1=SQ4=Lレベルとなる。したがって、スイッチング素子Q5がオンされて、第2アームを用いた昇圧チョッパが形成される下で、スイッチング素子Q2,Q3がオンする一方で、スイッチング素子Q1,Q4がオフする。
このとき、図35から理解されるように、第1アームのうちのB1LアームおよびB2Uアームがオンされる。すなわち、直流電源B1に対して下アームオンが指令される一方で、直流電源B2に対して上アームオンが指令される。したがって、時刻t1〜t2間では、リアクトル電流IL1が上昇する一方で、リアクトル電流IL2は低下する。
再び図37を参照して、時刻t2において制御パルス信号SD1がHレベルからLレベルへ変化するため、時刻t2〜t3間では、SD1=SD2=Lレベルである。このとき、図38に示されるように、制御信号SQ2=SQ4=SQ5=Lレベルとなる一方で、SQ1=SQ3=Hレベルとなる。したがって、スイッチング素子Q5がオフされて第1アームを用いる昇圧チョッパが形成される下で、スイッチング素子Q1,Q3がオンする一方で、スイッチング素子Q2,Q4がオフする。
このとき、図35から理解されるように、第1アームのうちのB1UアームおよびB2Uアームがオンされる。すなわち、直流電源B1およびB2の各々に対して上アームオンが指令される。したがって、時刻t2〜t3間では、リアクトル電流IL1およびIL2の両方が低下する。
再び図37を参照して、時刻t3において制御パルス信号SD1がLレベルからHレベルへ変化するため、時刻t3〜t4間では、SD1=Hレベル、かつ、SD2=Lレベルである。したがって、時刻t0〜t1間におけるスイッチングパターンが再現されることにより、第1アームの使用下で、リアクトル電流IL1が上昇する一方で、リアクトル電流IL2が低下するように、スイッチング素子Q1〜Q5が制御される。
なお、図37の動作例では、DT1>DT2であるため、時刻t0〜t1間とは反対にSD1=Lレベル、かつ、SD2=Hレベルとなる期間が存在していないが、当該期間においては、図38に示されるように、制御信号SQ1=SQ4=SQ5=Hレベルとなる一方で、SQ2=SQ3=Lレベルとなる。したがって、スイッチング素子Q5がオンされて、第2アームを用いる昇圧チョッパが形成される下で、スイッチング素子Q1,Q4がオンする一方で、スイッチング素子Q2,Q3がオフする。
このとき、図35から理解されるように、第2アームのうちのB1UアームおよびB2Lアームがオンされる。すなわち、直流電源B2に対して下アームオンが指令される一方で、直流電源B1に対して上アームオンが指令される。したがって、当該期間では、リアクトル電流IL2が上昇する一方で、リアクトル電流IL1が低下するように、スイッチング素子Q1〜Q5が制御されることが理解される。
図37での時刻t4以降についても、デューティ比DT1,DT2に応じたPWM制御によって、図38に示されたスイッチングパターンに従って、スイッチング素子Q1〜Q5を同様に制御することができる。
このように、実施の形態2に従う電力変換器10によれば、パラレル昇圧(PB)モードにおいて、直流電源B1,B2の出力制御のデューティ比DT1およびDT2に応じて、図36に示したゲート論理式に従って、スイッチング素子Q1〜Q5がオンオフ制御される。これにより、第1アームを用いる昇圧チョッパが形成される期間と、第2アームを用いる昇圧チョッパが形成される期間とを自動的に切換えながら、直流電源B1およびB2が、電力線PL,GLに対して並列にDC/DC変換を実行することができる。
特に、電力変換器10のPBモードにおいても、電力変換器50と同様に、直流電源B1およびB2間の電力配分を制御するとともに、出力電圧VHを電圧指令値VH*に制御することができる。
(パラレル昇圧モードにおける電力変換器の電力損失)
次に、電力変換器10のパラレル昇圧モードにおける電力損失低減効果について詳細に説明する。
電力変換器10は、スイッチング素子Q5のオフ時、すなわち、第1アームを用いる昇圧チョッパが形成されている場合には、図29に示したように、2個の昇圧チョッパを並列接続した回路構成となる。このときのスイッチング素子Q1〜Q5による電力損失は、昇圧チョッパ2個分の電力損失と同等であることが理解される。
一方で、電力変換器50(図1)では、特許文献1,2のパラレル接続モードと同様のパラレル昇圧(PB)モードにおいて、一部のスイッチング素子に2つの直流電源のDC/DC変換の電流が重畳して流れることにより、導通損失が増加することが懸念される。すなわち、電力変換器50のパラレル接続モードでは、スイッチング素子での電力損失が、昇圧チョッパ2個分の電力損失よりも高くなってしまう虞がある。
これに対して、電力変換器10では、以下に説明するように、上述した第2のアームを用いる昇圧チョッパが形成される期間が設けられることにより、スイッチング素子の導通損失を低減することができる。
再び図38を参照して、電力変換器10においてスイッチング素子Q5がオンされる場合、すなわち、第2のアームを用いる昇圧チョッパが形成される期間には、スイッチング素子Q2,Q3,Q5がオン(Q1,Q4はオフ)されるパターンと、スイッチング素子Q1,Q4,Q5がオン(Q2,Q3はオフ)されるパターンとの2つのパターンのみが存在する。すなわち、第2アームを用いる場合には、直流電源B1,B2の間で、異なるアームがオンされる。
図32から理解されるように、スイッチング素子Q1,Q4,Q5がオンされた場合(第2アーム使用時)には、スイッチング素子Q1およびQ4は、直流電源B1の上アームとして、スイッチング素子Q5を経由して、ノードN11および電力線PLの間に電気的に並列接続される構成となる。さらに、スイッチング素子Q1およびQ4は、直流電源B2の下アームとしては、スイッチング素子Q5およびリアクトルL2を経由して、直流電源B2の正極端子および負極端子間に電気的に並列接続される。
また、スイッチング素子Q2,Q3,Q5がオンされた場合には、スイッチング素子Q2およびQ3は、直流電源B2の上アームとして、スイッチング素子Q5を経由して、ノードN2および電力線GLの間に電気的に並列接続される構成となる。さらに、スイッチング素子Q2およびQ3は、直流電源B1の下アームとしては、スイッチング素子Q5およびリアクトルL1を経由して、直流電源B1の正極端子および負極端子間に電気的に並列接続される。
このため、スイッチング素子Q1〜Q5が、線形特性を有する半導体素子、たとえば、立上がり電圧が0であり、かつ、オン状態における順方向電流−電圧特性が線形である、電界効果トランジスタやショットキバリアダイオードで構成される場合には、B1Lアーム、B1Uアーム、B2LアームおよびB2Uアームの各々について、2個のスイッチング素子による電流経路が並列に存在することになる。この結果、並列回路における分流効果によって、各スイッチング素子の通過電流が、第1のアーム形成を有する昇圧チョッパの形成時、すなわち、各アームが1個のスイッチング素子で構成される場合と比較して低減する。これにより電流量に依存する、スイッチング素子の導通損失を低減することができる。
一方で、スイッチング素子Q1〜Q5が、ダイオードやIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)のような非線形特性を有する半導体素子で構成される場合には、単純な分流効果によらないメカニズムで導通損失の低減が実現される。以下では、そのメカニズムについて詳細に説明する。
上述のように、第2アームを用いる場合には、スイッチング素子Q1,Q4,Q5がオン(Q2,Q3はオフ)されるパターンと、スイッチング素子Q2,Q3,Q5がオン(Q1,Q4はオフ)されるパターンとの2つのパターンしか存在しない。電力変換器10の回路構成の対称性から、上記のいずれのパターンでも生じる現象は同じであるので、以下では、スイッチング素子Q2,Q3,Q5がオン(Q1,Q4はオフ)されるパターン、すなわち、B1LアームおよびB2Uアームがオンされる場合の動作について説明する。
まず比較のために、第1アームを用いる昇圧チョッパにおいて、B1LアームおよびB2Uアームをオンする場合を考える。この場合には、スイッチング素子Q1,Q3,Q5がオフされる一方で、スイッチング素子Q2およびQ3がオンされる。図39には、このときの等価回路図が示される。
図39を参照してスイッチング素子Q2およびQ3は、対応の制御信号SQ2およびSQ3がHレベルに設定されることにより電流経路を形成可能な状態に制御されている。すなわち、スイッチング素子Q2,Q3は、双方向にダイオードが並列接続された状態と等価である。一方で、スイッチング素子Q5はオフ状態とされているため、ノードN11およびN12間の電流経路は遮断されている。
図40は、図39中の点線で囲まれた部分の拡大図である。
図40を参照して、スイッチング素子Q2によるB1Lアームのオンに応じて、直流電源B1からリアクトルL1を通過したリアクトル電流IL1は、スイッチング素子Q2によって形成された、ノードN11から電力線GLへの電流経路を流れる。
また、スイッチング素子Q3によるB2Uアームのオンに応じて、直流電源B2からリアクトルL2を通過したリアクトル電流IL2は、スイッチング素子Q3によって形成された、電力線GLからノードN12への電流経路を流れる。このように、第1アーム形成時(Q5オフ時)においてB1LアームおよびB2Uアームがオンされる場合には、スイッチング素子Q2にリアクトル電流IL1が流れ、スイッチング素子Q3に電流IL2が流れる。
図41は、第2アームを用いる昇圧チョッパにおいてB1LアームおよびB2Uアームがオンされた場合の等価回路図である。
図41を参照して、第2アームを用いる場合には、制御信号SQ2,SQ3,SQ5がHレベルに設定されることにより、スイッチング素子Q2,Q3,Q5の各々は、双方向に電流経路を形成可能な状態、すなわち、双方向にダイオードが並列接続された状態となる。
図42は、図41における点線で囲んだ部分の等価回路図である。
図42を参照して、第2アームが用いられる場合には、図40とは異なり、スイッチング素子Q5によってもノードN11およびN12間に電流経路を形成することが可能である。したがって、リアクトル電流IL1およびIL2の経路は、ノードN11,N12の電位関係によって変化する。
図40および図42にも示したように、非線形特性を有するスイッチング素子(たとえばIGBT)は、オン状態では、ダイオードと同等の特性を有する。一般的に知られているように、ダイオードは電流−電圧特性が非線形であり、電流が流れる導通状態に遷移するためには、立上がり電圧以上の順方向電圧が印加されることが必要になる。
また、ダイオードにおいて、電流増加に対する順方向電圧増加の感度は低く、立上がり電圧の2倍以上の順方向電圧を生じさせるには、大きな電流が必要であることが知られている。すなわち、導通して電流が通流されている状態のダイオードの各々には、ほぼ同じ大きさの順方向電圧が発生している。
ダイオードの上記性質のため、図42に示した等価回路において、ループ状に接続されたスイッチング素子Q2,Q3,Q5のすべてに電流が流れている状態(導通状態)は発生しない。なぜなら、ほぼ同等の3つの電圧がループ状の閉路を形成するとすれば、それぞれの電圧がどのような向きであっても、キルヒホッフ電圧則が成立しないからである。
したがって、図42に示された等価回路中において、スイッチング素子Q2,Q3,Q5のうちの少なくとも2つのスイッチング素子までしか導通状態となることができない。したがって、図42の等価回路では、スイッチング素子Q2,Q3,Q5間の単純な分流効果による導通損失の低減は期待することができない。
しかしながら、スイッチング素子Q2,Q3,Q5の導通パターンの組合せ毎に導通損失は異なるため、最も損失の低い組み合わせに従う導通経路を選択することで、導通損失を低減することが可能である。特に、電力変換器10では、上記のような導通損失を低減するための導通経路の選択は、センサ等を用いた制御を行なうことなく、スイッチング素子Q2,Q3,Q5のすべてをオンしておくだけで、自動的に損失が最小となる導通経路が選択される点が特徴である。以下、この損失低減メカニズムをさらに詳細に説明する。
まず、電力変換器10において、リアクトル電流IL1およびIL2の方向の組合せは、図43に示す4通りに区別される。
図43を参照して、リアクトル電流IL1およびIL2の正/負の組合せから、電力変換器10の動作領域は、直流電源B1およびB2の両方が力行動作する領域(IL1>0,IL2>0)と、直流電源B1が回生動作する一方で直流電源B2が力行動作する領域(IL1<0,IL2>0)と、直流電源B1,B2の両方が回生動作をする領域(IL1<0,IL2<0)と、直流電源B1が力行動作する一方で直流電源B2が回生動作する領域(IL1>0,IL2<0)に分けられる。
まず、直流電源B1およびB2の両方が力行動作する場合、すなわち図43の第1象限における電力変換器10の動作を説明する。この場合における、リアクトル電流IL1およびIL2の波形例が図44に示される。
図44を参照して、リアクトル電流IL1およびIL2が正であって(IL1>0,IL2>0)、かつ、B1Lアームがオン(SD1=Hレベル)される一方で、B2Uアームがオフ(SD2=Lレベル)される期間T0における電流波形が示される。すなわち、期間T0において、制御パルス信号SD1=HレベルおよびSD2=Lレベルであるから、スイッチング素子Q2,Q3,Q5がオンされている。
したがって、期間T0では、リアクトル電流IL1が上昇する一方で、リアクトル電流IL2が低下する。期間T0は、リアクトル電流IL1およびIL2の大小が逆転する時刻tyを境界として、IL2>IL1である期間T1および、IL1>IL2である期間T2に分割される。
上述のように、スイッチング素子Q2,Q3,Q5をオンする場合にも、スイッチング素子Q2,Q3,Q5のすべてが同時に導通状態とはならない。したがって、図42の等価回路で形成され得る電流経路は、図45の(a)〜(c)の3通りのいずれかとなる。
図45(a)を参照して、スイッチング素子Q2およびQ3が導通状態となるときには、電流経路121が形成される。電流経路121は、リアクトル電流IL1がスイッチング素子Q2を流れる電流経路と、リアクトル電流IL2がスイッチング素子Q3を流れる電流経路とを含む。この結果、スイッチング素子Q2,Q3,Q5による導通損失の和Pls1は、下記(10)式で示される。
Pls1=Vfe×(|IL1|+|IL2|)… (10)
式(10)において、Vfeは、オン状態のスイッチング素子に相当する各ダイオードの順方向電圧である。Vfeは、正の一定値とみなすことができる。
図45(b)を参照して、スイッチング素子Q2およびQ5が導通状態となるときには、電流経路122が形成される。電流経路122は、スイッチング素子Q2を電流(IL1−IL2)が流れる電流経路と、リアクトル電流IL2がスイッチング素子Q5を流れる電流経路とを含む。このときのスイッチング素子Q2,Q3,Q5による導通損失Pls2は、下記(11)式で示される。
Pls2=Vfe×(|IL2|+|IL1−IL2|)… (11)
図45(c)を参照して、スイッチング素子Q3およびQ5が導通状態となるときには、電流経路123が形成される。電流経路123は、スイッチング素子Q3を電流(IL2−IL1)が流れる電流経路と、リアクトル電流IL1がスイッチング素子Q5を流れる電流経路とを含む。このときのスイッチング素子Q2,Q3,Q5による導通損失Pls3は、下記(12)式で示される。
Pls3=Vfe×(|IL1|+|IL2−IL1|)… (12)
図45(a)に示された電流経路121は、図40に示された、第1アームを用いる昇圧チョッパにおいてB1LアームおよびB2Uアームをオンするときの電流経路と同じである。したがって、図45(a)における導通損失は、第1アームの形成時と同等である。
図46は、図45(a)〜(c)に示された電流経路121〜123のそれぞれにおける導通損失Pls1〜Pls3の推移を示す波形図である。
図46を参照して、図44に示されるようにリアクトル電流IL1およびIL2が推移することに伴い、導通損失Pls1〜Pls3は、いずれも正であるIL1およびIL2の変化に応じて、式(10)〜(12)に従って変化する。
IL2>IL1である期間T1では、式(10)〜式(12)の比較から理解されるとおり、電流経路123(図45(c))が形成されるときにおける導通損失Pls3が、電流経路121,122が形成されるときの導通損失Pls1,Pls2よりも小さくなる。
これに対して、IL1>IL2となる期間T2においては、電流経路122(図45(b))による導通損失Pls2が電流経路121,123を形成したときの導通損失Pls1およびPls3よりも小さくなる。
ここで、期間T1(IL1<IL2)に形成され得る電流経路について考察する。まず、図45(a)に示された電流経路121の場合、スイッチング素子Q5に、スイッチング素子Q2およびQ5の順方向電圧の和が印加されることになる。この順方向電圧の和は、スイッチング素子Q5の立上がり電圧を超えてしまうため、この現象は、スイッチング素子Q3が導通していない事象と矛盾する。したがって、期間T1において、図45(a)に示された電流経路121が形成されることはない。
図45(b)に示された電流経路122の場合、スイッチング素子Q2を流れる電流は、図示した方向とは反対方向になり、スイッチング素子Q3に、スイッチング素子Q2およびQ5の順方向電圧の和が印加されることになる。この順方向電圧の和は、スイッチング素子Q3の立上がり電圧を超えてしまう。したがって、期間T1において、スイッチング素子Q3が非導通となる電流経路122が形成されることはない。
一方、図45(c)に示される電流経路123の場合、スイッチング素子Q2に印加される電圧は、スイッチング素子Q3およびQ5の順方向電圧の差となり、ほとんど0となる。この現象は、スイッチング素子Q2が導通していない事象と一致する。言い換えると、期間T1では、図42に示された等価回路において、常に、図45(c)に示された電流経路123が形成される。図46に示されたように、期間T1においては、電流経路123による導通損失Pls3が最小である。
次に、期間T2(IL1>IL2)に形成され得る電流経路について考察する。まず、図45(a)に示された電流経路121の場合、スイッチング素子Q5にスイッチング素子Q2およびQ3の順方向電圧の和が印加されることになる。したがって、期間T2において、スイッチング素子Q5が非導通となる電流経路122が形成されることはない。
図45(c)に示された電流経路123では、スイッチング素子Q3を流れる電流は図示方向とは反対方向になり、スイッチング素子Q2にスイッチング素子Q3およびQ5の順方向電圧の和が印加されることになる。この順方向電圧の和は、スイッチング素子Q2の立上がり電圧を超えてしまう。したがって、期間T2において、スイッチング素子Q2が非導通となる電流経路123が形成されることはない。
一方で、図45(b)に示された電流経路122の場合、スイッチング素子Q3に印加される電圧は、スイッチング素子Q5およびQ2の順方向電圧の差となり、ほとんど0である。この事象は、スイッチング素子Q3が導通していない事象と一致する。言い換えると、期間T2では、図42に示された等価回路において、常に、図45(b)に示された電流経路122が形成される。図46に示されたように、期間T2においては、電流経路122による導通損失Pls2が最小である。
このように、リアクトル電流IL1およびIL2の大小が逆転する時刻tyを境に、スイッチング素子Q2,Q3,Q5によって形成される電流経路が自動的に選択されることが理解される。さらに、自動的に選択された電流経路は、図45に示された3通りの電流経路のうちの、オンされるスイッチング素子Q2,Q3,Q5における導通損失が最小となる。
図47は、電力変換器10において図44および図46中の期間T1に形成される電流経路を説明するための回路図である。
図47を参照して、期間T1では、オンされたスイッチング素子Q2,Q3,Q5に対して、図45(c)に示された電流経路123が形成される。すなわち、スイッチング素子Q2はオン状態とされるものの電流は通過しない。一方で、スイッチング素子Q5をリアクトル電流IL1が通過する一方で、スイッチング素子Q3には電流(IL1−IL2)が通過することになる。
図44に示されるように、期間T1では、リアクトル電流IL2が低下する一方で、リアクトル電流IL1が上昇する。したがって、スイッチング素子Q3を流れる電流(IL2−IL1)は徐々に減少する。そして、時刻ty(図44)でIL1=IL2となると、スイッチング素子Q3の電流が0となる。これにより、図45(b)に示される、スイッチング素子Q3に電流が流れない電流経路122が形成される。
図46には、電力変換器10において図44および図46中の期間T2に形成される電流経路が示される。
図46を参照して、時刻ty以降の期間T2では、スイッチング素子Q3がリアクトル電流IL2を通流させる一方で、スイッチング素子Q3の電流が0を維持するように、すなわち、図45(b)の回路状態が維持されるように、ノードN12の電位が変化することになる。
このようなノードN12の電位変化は、リアクトル電流IL1がスイッチング素子Q2およびQ3に分流し、かつ、その分流比が変化することによって生じる。すなわち、期間T2において、スイッチング素子Q3では、リアクトル電流IL1の分流電流と、リアクトル電流IL2とが相殺されることにより、通過電流が0となる。
言い換えると、期間T2では、リアクトル電流IL1の分流比は、スイッチング素子Q3の電流が0となる状態が維持されるように、リアクトル電流IL2に応じて自動的に変化する。これにより、期間T2では、図45(b)に示した電流経路122が継続的に形成される。
図48の状態(期間T2)では、スイッチング素子Q3では導通損失が生じない。さらに、式(11)にも示されるように、スイッチング素子Q5には、リアクトル電流IL2に応じた導通損失が生じる一方で、スイッチング素子Q2には、リアクトル電流IL1が分流されることにより、IL1よりも小さい|IL1−IL2|に応じた導通損失しか生じない。
一方で、第1アームを用いた昇圧チョッパでBILアームおよびB2Uアームをオンした場合(図39)におけるスイッチング素子Q2,Q4の導通損失Pls0は、式(10)〜(12)に従えば、式(13)で示される。
Pls0=Vfe×(|IL1|+|IL2|)… (13)
式(11)および式(13)を比較すると、IL1およびIL2が同符号であることから、(|IL2|+|IL1−IL2|)<(|IL1|+|IL2|)であることが理解される。このように、第2アームを用いる昇圧チョッパでは、第1アームを用いる昇圧チョッパと比較して、スイッチング素子の導通損失が抑制される。
次に、図45〜図46で説明した第2アームを用いた昇圧チョッパにおける導通損失を、電力変換器50(図1)のPBモードにおける導通損失と比較する。
図49は、電力変換器50において、B1Lアーム(直流電源B1)およびB2Uアーム(直流電源B2)をオンするときの電流経路を説明するための回路図である。すなわち、図49では、実施の形態1に従う電力変換器50が、パラレル昇圧(PB)モードにおいて、図41と同等に動作したときの電流経路が示される。
図49を参照して、電力変換器50では、スイッチング素子S3およびS4が直流電源B1の下アームとして機能する一方で、スイッチング素子S1およびS4が直流電源B2の上アームとして機能する。したがって、BILアームおよびB2Uアームのオン時には、両者の論理和に従って、スイッチング素子S1,S3およびS4がオンされる。
この状態では、リアクトル電流IL1は、スイッチング素子S3およびS4を経由する電流経路を形成する。一方で、リアクトル電流IL2は、スイッチング素子S1およびS4を経由する電流経路を形成する。
したがって、電力変換器50では、スイッチング素子S3においてリアクトル電流|IL1|に応じた導通損失が生じるとともに、スイッチング素子S1においてリアクトル電流|IL2|に応じた導通損失が生じる。さらに、スイッチング素子S4では、|IL1−IL2|に応じた導通損失が生じる。
このときのスイッチング素子S1,S3,S4での導通損失Pls♯は、式(10)〜(13)に従えば、式(14)で示される。
Pls♯=Vfe×(|IL1|+|IL2|+|IL1−IL2|)… (14)
式(13)および(14)の比較から、Pls0<Pls♯であるから、実施の形態1に従う電力変換器50は、PBモードでの動作時には、スイッチング素子の導通損失が、電力変換器10において第1アームを用いる昇圧チョッパを形成した場合と比較して、大きいことが理解される。
整理すると、実施の形態2に従う電力変換器10において、第1アームを用いた昇圧チョッパでの導通損失は、2個の昇圧チョッパが並列動作する際の導通損失と同等であり、かつ、電力変換器50のPBモードにおける導通損失よりも低い。
さらに、式(11),(13),(14)から、Pls2<Pls0<Pls♯である。したがって、電力変換器10のパラレル昇圧(PB)モードおいて、直流電源B1,B2の各々が力行動作する場合には、第2アームを用いる昇圧チョッパが形成される期間では、第1アームを用いる昇圧チョッパ形成される場合よりも、スイッチング素子の導通損失が低減される。
再び図43を参照して、直流電源B1およびB2の両方が回生動作する場合、すなわち、IL1<0およびIL2<0の場合にも、図45(a)〜(c)に示した電流経路121〜123が、電流方向が反転されて形成される。したがって、この場合においても、直流電源B1およびB2の両方が力行動作するときと同様のメカニズムで、リアクトル電流IL1およびIL2の変化に応じて、スイッチング素子の導通損失が最小となる電流経路が自動的に選択される。すなわち、直流電源B1およびB2の両方が回生動作する場合においても、第2アームを用いて昇圧チョッパを構成する期間(スイッチング素子Q5のオン期間)におけるスイッチング素子の導通損失は、第1アームを用いて昇圧チョッパが形成される場合よりも低い。
次に、第2アームの使用時に、直流電源B1,B2の一方が力行動作するとともに、他方が回生動作するときの電力変換器10の回路動作について説明する。一例として、直流電源B1が力行動作する一方で、直流電源B2が回生動作するとき、すなわち、IL1>0かつIL2<0のときの電力変換器10の動作について説明する。この場合における、リアクトル電流IL1およびIL2の波形例が図27に示される。
図50を参照して、リアクトル電流IL1が正である一方でIL2が負であって(IL1>0,IL2<0)、かつ、B1Lアームがオン(SD1=Hレベル)される一方で、B2Uアームがオン(SD2=Lレベル)される期間T3における電流波形が示される。この場合にも図37に示されたように、制御パルス信号SD1=HレベルおよびSD2=Lレベルであるから、スイッチング素子Q2,Q3,Q5がオンされている。このため、期間T3においても図42に示した等価回路が形成される。
期間T3においても、期間T0と同様に、リアクトル電流IL1が上昇する一方で、リアクトル電流IL2が低下する。なお、リアクトル電流IL1およびIL2の向きが異なるため、期間T0とは異なり、期間T3を通じてIL1>IL2である。
図51には、期間T3におけるスイッチング素子Q2,Q3,Q5をオンした等価回路(図42)における電流経路が示される。このときに形成され得る電流経路は、図22(a)〜(c)と同様に、図51(a)〜(c)の3通りのいずれかとなる。
図51(a)では、図45(a)と同様に、スイッチング素子Q2およびQ3が導通状態となる。すなわち、リアクトル電流IL1がスイッチング素子Q2を流れるともに、スイッチング素子Q3をリアクトル電流IL2(IL2<0)が流れるように、電流経路124が形成される。電流経路124によるスイッチング素子Q2,Q3,Q5での導通損失の合計は、式(10)で示したPls1と同等である。
図51(b)では、図45(b)と同様に、スイッチング素子Q2およびQ5が導通状態となる。すなわち、スイッチング素子Q2を電流(IL1−IL2)が流れるとともに、リアクトル電流IL2(IL2<0)がスイッチング素子Q5を流れるように電流経路125が形成される。電流経路125によるスイッチング素子Q2,Q3,Q5での導通損失の合計は、式(11)で示したPls2と同等である。
図51(c)では、図45(c)と同様に、スイッチング素子Q3およびQ5が導通状態となる。すなわち、スイッチング素子Q3を電流(IL1−IL2)が流れるとともに、リアクトル電流IL1(IL1>0)がスイッチング素子Q5を流れるように電流経路126が形成される。電流経路126によるスイッチング素子Q2,Q3,Q5での導通損失の合計は、式(12)で示したPls3と同等である。
次に、期間T3(IL1>0,IL2<0)における電流経路124〜126について考察する。
まず、図51(a)に示された電流経路124の場合、スイッチング素子Q5には、スイッチング素子Q2およびQ3の順方向電圧の差が印加される。すなわち、スイッチング素子Q5に印加される電圧はほとんど0となるため、スイッチング素子Q5が導通していない事象と一致する。
これに対して、図51(b)に示された電流経路125の場合、スイッチング素子Q3には、スイッチング素子Q2およびQ5の順方向電圧の和が印加されることになる。この順方向電圧の和は、スイッチング素子Q3の立上がり電圧を超えてしまうため、この現象は、スイッチング素子Q3が導通していない事象と矛盾する。したがって、期間T3において、図51(b)に示された電流経路125が形成されることはない。
同様に、図51(c)に示された電流経路126の場合、スイッチング素子Q2には、スイッチング素子Q3およびQ5の順方向電圧の和が印加されることになる。この順方向電圧の和は、スイッチング素子Q2の立上がり電圧を超えてしまうため、この現象は、スイッチング素子Q2が導通していない事象と矛盾する。したがって、期間T3において、図51(c)に示された電流経路126が形成されることはない。
図52には、図45に示した電流経路124〜126の期間T3における導通損失の比較が示される。
図52を参照して、期間T3中は、リアクトル電流IL1およびIL2の方向(極性)が反対であるので、|IL1−IL2|の項は、|IL1|および|IL2|のいずれよりも大きくなる。
従って、式(10)〜(12)の比較から理解されるように、期間T3を通じて、Pls1〜Pls3のうちでは、Pls1が最小となる。一方で、期間T3では、図51(a)〜(c)で説明したように、自動的に電流経路124が選択的に形成される。したがって、期間T3を通じて、オン状態のスイッチング素子Q2,Q3,Q5では、自動的に導通損失が最小となる電流経路124が形成されることが理解される。
再び図47を参照して、上記の例とは反対に、直流電源B1が回生動作する(IL1<0)一方で、直流電源B2が力行動作する(IL2>0)場合には、図51(a)〜(c)に示した電流経路124〜126が、電流方向が反転されて形成される。したがって、この場合においても、直流電源B1が力行動作する一方で直流電源B2が回生動作するときと同様のメカニズムで、スイッチング素子の導通損失が最小となる電流経路124が自動的に選択される。
このように、電力変換器10では、第2アームの使用時に、直流電源B1,B2の一方が力行動作するとともに、他方が回生動作するときにも、オン状態のスイッチング素子Q2,Q3,Q5において、導通損失が最小となる電流経路が自動的に選択される。このときの導通損失Plsは、第1アームを用いた昇圧チョッパにおける導通損失と同等である。
また、第2アームが使用されるパターンには、図44〜図52で説明したのと反対に、B1UアームおよびB2Lアームがオンされる、すなわち、スイッチング素子Q1,Q4,Q5がオン(Q2,Q3はオフ)されるパターンが存在する。ただし、電力変換器10の回路構成の対称性から、B1UアームおよびB2Lアームがオンされるときの回路動作は、上述したB1LアームおよびB2Uアームがオンされるパターンのときと同様である。
したがって、電力変換器10では、第2アームを用いる昇圧チョッパにおいて、直流電源B1およびB2の一方ずつが力行動作および回生動作する場合には、スイッチング素子の導通損失は、第1アームを用いる昇圧チョッパ(2個の昇圧チョッパの並列動作時)における導通損失と同等である。
したがって、第2アームを用いた昇圧チョッパが形成される全期間を通じて、直流電源B1およびB2の力行/回生動作が異なる場合においても、スイッチング素子の導通損失は、第1アームを用いた昇圧チョッパでの導通損失と同等となる。そして、少しでも、直流電源B1およびB2の各々が力行動作または回生動作する期間が存在すれば、第2アームを用いた昇圧チョッパでのスイッチング素子の導通損失は、第1アームを用いた昇圧チョッパよりも低減される。
以上より、実施の形態2に従う電力変換器10では、パラレル昇圧モードにおいて、第1アームを用いる昇圧チョッパと、第2アームを用いて昇圧チョッパとを自動的に併用するように、直流電源B1およびB2が、電力線PL,GL(負荷30)に対して並列にDC/DC変換を実行することができる。
そして、第2アームを用いて昇圧チョッパを形成する期間(スイッチング素子Q5のオン期間)が設けられることによって、スイッチング素子の導通損失を、第1アームを用いた昇圧チョッパでの導通損失よりも小さくすることができる。このため、電力変換器10のパラレル昇圧モードでは、実施の形態1に従う電力変換器50よりもスイッチング素子の導通損失を抑制することによって、DC/DC変換を高効率化することができる。
なお、上述のように、実施の形態1に従う電力変換器10では、第2アームを用いる昇圧期間を設けることによって、スイッチング素子の導通損失が低減される。一方で、図35,図36等から理解されるように、第2のアームを有する昇圧チョッパが形成されるのは、制御パルス信号SD1およびSD2のレベルが異なる期間に限られる。
したがって、デューティ比DT1およびDT2が一定の下で、制御パルス信号SD1およびSD2の論理レベルが異なる期間をなるべく長くとることによって、導通損失をさらに抑制することができる。
したがって、実施の形態1で電力変換器10に適用した、最適位相差でのキャリア位相制御(φ=φ*)をさらに組み合わせると、電力変換器10の導通損失をさらに低減することができる。
図53は、実施の形態2に従う電力変換器50に対してキャリア位相制御の適用を説明するための波形図である。
図53を参照して、キャリア波CW1およびCW2の位相差φを最適位相差φ*に制御することによって、制御パルス信号SD1がHレベルからLレベルへ遷移するタイミング(立下りエッジ)と、制御パルス信号SD2がLレベルからHレベルへ遷移するタイミング(立上がりエッジ)とが同一タイミングとなる。
このとき、制御パルス信号SD1およびSD2の論理レベルが異なる期間、すなわち、制御信号SQ5のHレベル期間を最も長く確保することができる。これにより、電力変換器10のパラレル昇圧モードの導通損失をさらに低減して、DC/DC変換をさらに高効率化できる。
なお、制御パルス信号SD1,SD2の論理レベルが遷移するタイミングは、リアクトル電流IL1,IL2の変曲点(極大点または極小点)に対応する。したがって、上記のように、第2アームの使用期間が最大となるように、制御パルス信号SD1およびSD2の論理レベルの遷移タイミングを一致させるように位相差φ=φ*に設定すると、リアクトル電流IL1およびIL2の変曲点も同一タイミングとなる。この現象は、実施の形態1に従う電力変換器10において、φ=φ*となるようにキャリア位相制御を実行したときも同様である。
以上のように、実施の形態2に従う電力変換器10では、直流電源B1,B2間での直流電源B1,B2間の電力配分を直接制御可能なPBモードを、電力変換器10よりも高効率で実行することができる。
したがって、本実施の形態2に従う電源システムにおいても、効率に優れるSRモード(シリーズモード)と、直流電源B1,B2間の電力配分を直接制御可能なPBモードとを、全電圧範囲において自由に選択することができるので、直流電源B1およびB2の利用効率を高めることができる。
(電力変換器10のその他の動作モード)
再び図28を参照して、実施の形態2に従う電力変換器10について、SRモードおよびPBモード以外の動作モードについてさらに説明する。
直流電源B1のみを用いるaBモードでは、直流電源B2は、出力電圧VHがV2よりも高く制御されている限りにおいて、電力線PLと電気的に切り離された状態を維持されて不使用とされる。aBモードでは、直流電源B1に対する昇圧チョッパ(第1アーム)のみが構成される。
したがって、スイッチング素子Q5のオフ固定によってノードN11およびN12間の電流経路が遮断された状態で、スイッチング素子Q3,Q4をオフに固定する一方で、スイッチング素子Q1およびQ2が、直流電源B1の出力を制御するためのデューティ比DT1に基づく、制御パルス信号/SD1およびSD1にそれぞれ応じてオンオフ制御される。
同様に、直流電源B2のみを用いるbBモードでは、直流電源B1は、出力電圧VHがV1よりも高く制御されている限りにおいて、電力線PLと電気的に切り離された状態を維持されて不使用とされる。bBモードでは、直流電源B2に対する昇圧チョッパ(第1アーム)のみが構成される。
したがって、スイッチング素子Q5のオフ固定によってノードN11およびN12間の電流経路が遮断された状態で、スイッチング素子Q1,Q2をオフに固定する一方で、スイッチング素子Q3およびQ4が、直流電源B2の出力を制御するためのデューティ比DT2に基づく、制御パルス信号/SD2およびSD2にそれぞれ応じてオンオフ制御される。なお、aBモードおよびbBモードでは、デューティ比DT1またはDT2は、出力電圧VHを電圧指令値VH*に従って制御(電圧制御)するように算出される。このように、昇圧モードに属する動作モードの各々では、出力電圧VHは、電圧指令値VH*に従って制御される。
直流電源B1のみを用いるaD直結モードでは、スイッチング素子Q5のオフ固定によってノードN11およびN12間の電流経路が遮断された状態で、スイッチング素子Q1がオンに固定される一方で、スイッチング素子Q2〜Q4がオフに固定される。これにより、直流電源B2は、電力線PL,GL間から切り離された状態となるため、不使用とされる。したがって、出力電圧VHは、直流電源B1の電圧V1と同等となる(VH=V1)。
aDモードでは、直流電源B2は、電力線PL,GL間から電気的に切り離された状態を維持されて不使用とされる。なお、V2>V1の状態でaDモードを適用すると、スイッチング素子Q1およびダイオードD13を経由して、直流電源B2からB1へ短絡電流が生じる。このため、aDモードの適用には、V1>V2が必要条件となる。
同様に、直流電源B2のみを用いるB2直結モードでは、スイッチング素子Q5のオフ固定によってノードN11およびN12間の電流経路が遮断された状態で、スイッチング素子Q3がオンに固定される一方で、スイッチング素子Q1,Q2,Q4がオフに固定される。これにより、直流電源B1は、電力線PL,GL間から切り離された状態となって不使用とされる。したがって、出力電圧VHは、直流電源B2の電圧V2と同等となる(VH=V2)。
なお、V1>V2の状態でB1直結モードを適用すると、ダイオードD1およびスイッチング素子Q3を経由して、直流電源B1からB2へ短絡電流が生じる。このため、B2直結モードの適用には、V2>V1が必要条件となる。
なお、V1およびV2が同等である場合には、直流電源B1およびB2を電力線PL,GL間に電気的に並列接続した状態を維持するPDモードを選択することも可能である。パラレル直結モードでは、スイッチング素子Q5のオフ固定によってノードN11およびN12間の電流経路が遮断された状態で、スイッチング素子Q1,Q3をオンに固定する一方で、スイッチング素子Q2,Q4がオフに固定される。これにより、出力電圧VHは、V1,V2と同等となる。V1およびV2間の電圧差は、直流電源B1およびB2間に短絡電流を生じさせるので、当該電圧差が小さいときに限定して、PDモードを適用することができる。
さらに、SDモードでは、直流電源B1およびB2を、電力線PL,GL間に電気的に直列接続した状態が維持される。具体的には、スイッチング素子Q5のオン固定によってノードN11およびN12間の電流経路が形成された状態で、スイッチング素子Q1〜Q4がオフに固定される。これにより、出力電圧VHは、直流電源B1およびB2の電圧V1およびV2の和と同等となる(VH=V1+V2)。
直結モード(aDモード、bDモード、PDモード、および、SDモード)の各々では、出力電圧VHは、直流電源B1,B2の電圧V1,V2に依存して決まるため、直接制御することができなくなる。このため、直結モードに含まれる各動作モードでは、出力電圧VHが負荷30の動作に適した電圧に設定できなくなることにより、負荷30での電力損失が増加する可能性がある。
一方で、直結モードでは、各スイッチング素子Q1〜Q5がオンオフされないため、電力変換器10での電力損失(オンオフに伴うスイッチング損失)が抑制される。したがって、負荷30の動作状態によっては、直結モードの適用によって、負荷30の電力損失増加量よりも電力変換器10での電力損失減少量が多くなることにより、電源システム5全体での電力損失が抑制できる可能性がある。
この結果、本実施の形態2に従う電源システムにおいても、全電圧シリーズ(SR)モードを含む、図28に示された複数の動作モードを、負荷30および/または電力変換器50の動作状態に応じて適切に切換えることによって、DC/DC変換を実行できる。この結果、電力損失の小さい全電圧シリーズ(SR)モードの他、他の動作モードを適切に選択することによって、電源システム5全体での高効率化を図ることができる。
[実施の形態2の変形例2]
実施の形態2の変形例2では、実施の形態2で説明した電力変換器50の回路構成の変形例について説明する。
(双方向スイッチの配置による変形)
図54は、実施の形態2の変形例2の第1の例に従う電力変換器11の構成を説明するための回路図である。
図54を参照して、電力変換器11は、図21に示された電力変換器10と比較すると、ノードN11およびN12の間に接続される半導体素子として、スイッチング素子Q5に代えて、双方向スイッチQB5を有する点で異なる。すなわち、双方向スイッチQB5は、「第5の半導体素子」に対応する。電力変換器11のその他の構成は、電力変換器10と同様であるので、詳細な説明は繰り返さない。
双方向スイッチQB5は、ノードN1およびN2の間に電気的に直列接続された、ダイオードD15aおよびスイッチング素子Q5aを有する。ダイオードD15aは、ノードN11からノードN12へ向かう方向を順方向として、ノードN11およびN12の間に電気的に接続される。
双方向スイッチQB5は、ノードN11およびN12の間に電気的に直列接続された、ダイオードD15bおよびスイッチング素子Q5bをさらに有する。ダイオードD15bおよびスイッチング素子Q5bは、ノードN11およびN12間に、ダイオードD15aおよびスイッチング素子Q5aに対して並列に接続される。ダイオードD15bは、ノードN12からノードN11へ向かう方向を順方向として、ノードN11,N12間に電気的に接続される。
スイッチング素子Q5a,Q5bは、制御装置40(図21)からの制御信号SQ5a,SQ5bにそれぞれ応じてオンオフ制御される。
双方向スイッチQB5では、スイッチング素子Q5aがオンすると、ダイオードD15aにより、ノードN11からN12に向かう方向に電流経路が形成される。一方で、スイッチング素子Q5aがオフすると、ノードN11からN12に向かう方向の電流経路は遮断される。
また、スイッチング素子Q5bがオンすると、ダイオードD15bにより、ノードN12からN11に向かう方向に電流経路が形成される。一方で、スイッチング素子Q5bがオフすると、ノードN12からN11に向かう方向の電流経路は遮断される。
このように、双方向スイッチQB5において、スイッチング素子Q5aをオンする一方でスイッチング素子Q5bをオフすると、ノードN11からN12に向かう電流経路が形成される一方で、ノードN12からN11に向かう電流経路は遮断される。反対に、スイッチング素子Q5bをオンする一方でスイッチング素子Q5aをオフすると、ノードN12からN11に向かう方向に電流経路が形成される一方で、ノードN11からN12に向かう電流経路は遮断される。
双方向スイッチQB5を有する電力変換器11では、全電圧シリーズモード(SR)において、図55に示すゲート論理式に従って、スイッチング素子Q1〜Q4,Q5a,Q5bのオンオフを制御することができる。
図55を参照して、スイッチング素子Q1〜Q4のオンオフは、電力変換器10と同様に制御することができる。したがって、制御信号SQ1〜SQ4を生成するためのゲート論理式は、図27と同様である。
一方で、スイッチング素子Q5に代わる、スイッチング素子Q5a,Q5bについては、パラレル下アームオン状態(図22)、シリーズ上アームオン状態(図23)および、パラレル上アームオン状態(図24)において、下記のように制御される必要がある。
再び図23を参照して、シリーズ上アームオン状態では、ノードN11およびN12の間に電流経路を形成する必要がある。特に、力行電流(直流電源B1,B2の放電)および回生電流(直流電源B1,B2の放電)の両方に対応するために、スイッチング素子Q5a,Q5bの両方をオンすることが好ましい。
再び図22を参照して、パラレル下アームオン状態では、スイッチング素子Q2およびQ4がオン状態であるため、ノードN12が電力線PLと接続されるとともに、ノードN11は電力線GLと接続される。したがって、ノードN12からノードN11へ向かう電流経路がさらに形成されると、電力線PLおよびGL間に短絡経路が形成されてしまう。したがって、パラレル下アームオン状態では、ノードN12からノードN11へ向かう電流経路を遮断するために、スイッチング素子Q5bをオフすることが必要である。
一方で、スイッチング素子Q5aについては、パラレル下アームオン状態が適用されるシリーズ昇圧動作時には、シリーズ上アームオン期間およびパラレル下アームオン期間を通じてオンを維持することが好ましい。これにより、電流力行時(直流電源B1,B2の放電時)には、ダイオードD11およびD13のリカバリ損失を発生することなく、パラレル下アームオン状態(図22)からシリーズ上アームオン状態(図23)へ遷移することができる。
再び図24を参照して、パラレル上アームオン状態では、スイッチング素子Q1およびQ3がオン状態であるため、ノードN11が電力線PLと接続されるとともに、ノードN12は電力線GLと接続される。したがって、ノードN11からノードN12へ向かう電流経路がさらに形成されると、電力線PLおよびGL間に短絡経路が形成されてしまう。したがって、パラレル上アームオン状態では、ノードN11からノードN12へ向かう電流経路を遮断するために、スイッチング素子Q5aをオフすることが必要である。
一方で、スイッチング素子Q5bについては、パラレル上アームオン状態が適用されるシリーズ降圧動作時には、シリーズ上アームオン期間およびパラレル上アームオン期間を通じてオンを維持することが好ましい。これにより、電流回生時(直流電源B1,B2の充電時)には、ダイオードD12およびD14のリカバリ損失を発生することなく、パラレル上アームオン状態(図24)からシリーズ上アームオン状態(図23)への遷移することができる。
以上より、電力変換器11の全電圧シリーズモードでは、パラレル下アームオン期間では、スイッチング素子Q5aをオンする一方でスイッチング素子Q5bをオフし、シリーズ上アームオン期間では、スイッチング素子Q5bをオンする一方でスイッチング素子Q5aをオフし、シリーズ上アーム期間では、スイッチング素子Q5aおよびQ5bをオンする。
全電圧シリーズモードでの電力変換器10および11の動作を包括すると、ノードN11およびN12の間について、シリーズ上アームオン期間では双方向の電流経路が形成され、パラレル下アームオン期間では、少なくともノードN12からノードN11へ向かう電流経路が遮断され、パラレル上アームオン期間では、少なくともノードN11からノードN12へ向かう電流経路が遮断されるように、スイッチング素子Q5またはQ5a,Q5bが制御されることが理解される。
次に、スイッチング素子Q5a,Q5bのオンオフ制御のためのゲート論理式を説明する。
再び、図55を参照して、スイッチング素子Q5aの制御信号SQ5aは、制御パルス信号SD1およびSD2の論理和(OR)演算によって求められる。さらに、スイッチング素子Q5bの制御信号SQ5bは、制御パルス信号/SD1および/SD2の論理和(OR)演算によって求められる。
このゲート論理式に従えば、制御パルス信号SD1およびSD2がLレベルに設定されるパラレル上アームオン状態では、スイッチング素子Q5aがオフされる一方で、スイッチング素子Q5bはオンされる。さらに、制御パルス信号SD1およびSD2がHレベルに設定されるパラレル下アームオン状態では、スイッチング素子Q5aがオンされる一方で、スイッチング素子Q5bはオフされる。また、制御パルス信号SD1およびSD2が異なるレベル(H/L)に設定されるシリーズ上アームオン期間では、スイッチング素子Q5a,Q5bがオンされる。これにより、上述した、全電圧シリーズモードでのスイッチング素子Q5a,Q5bのオンオフ制御が実現される。
このように、実施の形態2の変形例2の第1の例に従う電力変換器11においても、図55に示されたゲート論理式を全電圧範囲で共通に用いて、シリーズ降圧動作(低電圧範囲)およびシリーズ昇圧動作(高電圧範囲)の両方に適応できる全電圧シリーズモードを実現できる。
なお、電力変換器11に対して、電力変換器10と同様の他のモードを適用することも可能である。
図56には、電力変換器11のPBモードにおけるスイッチング素子Q1〜Q4,Q5a,Q5bをオンオフ制御するためのゲート論理式が示される。
図56を参照して、スイッチング素子Q1〜Q4は、電力変換器10のPBモードでの図36と共通のゲート論理式に従ってオンオフ制御される。
すなわち、スイッチング素子Q2が制御パルス信号SD1に応じてオンオフされる一方で、スイッチング素子Q1は制御パルス信号/SD1に応じてオンオフされる。同様に、スイッチング素子Q3は制御パルス信号SD2に応じてオンオフされる一方で、スイッチング素子Q4は制御パルス信号/SD2に応じてオンオフされる。
スイッチング素子Q5a,Q5bは、電力変換器10のスイッチング素子Q5と共通のゲート論理式に従って、共通にオンオフすることができる。すなわち、スイッチング素子Q5のオン期間において、スイッチング素子Q5a,Q5bをともにオンする一方で、スイッチング素子Q5のオフ期間において、スイッチング素子Q5a,Q5bをともにオフする制御が可能である。
また、PBモードにおいて、ノードN11およびN12間の電流経路は、B1Lアーム(スイッチング素子Q2オン)およびB2Lアーム(スイッチング素子Q4)の両方を形成する場合には、図30に示したパラレル下アームオン状態と同様の電流経路が形成されるので、ノードN12からN11へ向かう電流経路を遮断する必要がある。同様に、B1Uアーム(スイッチング素子Q1)およびB2Uアーム(スイッチング素子Q3)の両方を形成する場合には、図31に示したパラレル上アームオン状態と同様の電流経路が形成されるので、ノードN11からN12へ向かう電流経路を遮断する必要がある。
したがって、スイッチング素子Q5a,Q5bの各々をスイッチング素子Q5と共通に制御する制御の他、スイッチング素子Q5a,Q5bについては、図55に示されたSRモードでのゲート論理式に従って、SBモードでのオンオフを制御することも可能である。すなわち、電力変換器11では、スイッチング素子Q5a,Q5bのオンオフ制御のゲート論理式を、SRモードおよびPBモード間で共通化できる。
このように、電力変換器11(図54)についても、電力変換器50と同様に、効率に優れるSRモード(シリーズモード)および、直流電源B1,B2間の電力配分を直接制御可能なPBモードを全電圧範囲において自由に選択することができるので、直流電源B1およびB2の利用効率を高めることができる。
再び、図28を参照して、電力変換器11に対しても、SRモードおよびPBモード以外の動作モード(aBモード、bBモード、aDモード、bBモード、PDモードおよびSDモード)を適用することが可能である。
電力変換器11においても、電力変換器10においてスイッチング素子Q5がオフ固定されるこれらの動作モードでは、スイッチング素子Q5a,Q5bについてもオフ固定される。また、スイッチング素子Q1〜Q4については、電力変換器10と同様に制御することができる。
以上のように、図54に示された電力変換器11においても、全電圧シリーズ(SR)モードを含む、図28に示された複数の動作モードを、負荷30および/または電力変換器50の動作状態に応じて適切に切換えることによって、DC/DC変換を実行できる。この結果、電力損失の小さい全電圧シリーズ(SR)モードの他、他の動作モードを適切に選択することによって、電源システム全体での高効率化を図ることができる。
(簡素化のための変形例)
ここまで、実施の形態2およびその変形例に従う電力変換器10,11では、「第1の半導体素子」〜「第4の半導体素子」の各々について、スイッチング素子Q1〜Q4および逆並列ダイオードD11〜D14のペアによって構成する例を説明した。
また、「第5の半導体素子」については、逆並列ダイオードが設けられないスイッチング素子Q5(図21)または、双方向スイッチを構成するためのスイッチング素子Q5a,Q5bのペア(図54)によって構成する例を示した。すなわち、「第1の半導体素子」〜「第5の半導体素子」の全てが、電流経路の形成(オン)および遮断(オフ)を制御可能なスイッチング素子を備えた構成を例示した。これらの構成例では、直流電源B1,B2の両方に対して回生充電を適用できる。
しかしながら、直流電源B1およびB2の一方ないし両方を回生充電しない構成では、「第1の半導体素子」から「第4の半導体素子」の一部について、スイッチング素子もしくはダイオードのどちらかを省略することで構造を簡素化することができる。すなわち、「第1の半導体素子」から「第5の半導体素子」の一部のみが、上記スイッチング素子を有する構成とすることも原理上可能である。
たとえば、直流電源B1を回生充電せず、放電(力行)のみで使用する場合には、図21に示された電力変換器10に代えて、図57に示される電力変換器12aの構成を用いることができる。
図57を参照して、電力変換器12aでは、図21に示された電力変換器10と比較して、直流電源B1への回生を制御するためのスイッチング素子Q1の配置を省略することができる。すなわち、ノードN11および電力線PLの間の「第1の半導体素子」をダイオードD11のみで構成することができる。電力変換器12aにおいても、スイッチング素子Q2〜Q5のオンオフは、図27(SRモード)、図36(PBモード)または、図28(その他のモード)に従って制御することができる。さらに、電力変換器12aでは、主に、直流電源B1への回生電流の経路を確保するために配置されるダイオードD12についても省略できる可能性がある。
同様に、直流電源B2を回生充電せず、放電(力行)のみで使用する場合には、図58に示される電力変換器13aの構成を用いることができる。
図58を参照して、電力変換器13aでは、図21に示された電力変換器10と比較して、直流電源B2への回生を制御するためのスイッチング素子Q3の配置を省略することができる。すなわち、ノードN12および電力線GLの間の「第3の半導体素子」をダイオードD13のみで構成することができる。
電力変換器13aにおいても、スイッチング素子Q1,Q2,Q4,Q5のオンオフは、図27(SRモード)、図36(PBモード)または、図28(その他のモード)に従って制御することができる。さらに、電力変換器13aでは、主に、直流電源B2への回生電流の経路を確保するために配置されるダイオードD14についても省略できる可能性がある。
さらに、直流電源B1およびB2の両方を回生充電せず、放電(力行)のみで使用する場合には、図59に示される電力変換器14aの構成を用いることができる。
図59を参照して、電力変換器14aでは、図21に示された電力変換器10と比較して、直流電源B1,B2への回生を制御するためのスイッチング素子Q1,Q3の配置を省略することができる。すなわち、ノードN11および電力線PLの間の「第1の半導体素子」をダイオードD11のみで構成することができるとともに、ノードN12および電力線GLの間の「第3の半導体素子」をダイオードD13のみで構成することができる。
電力変換器14aにおいても、スイッチング素子Q2,Q4,Q5のオンオフは、図27(SRモード)、図36(PBモード)または、図28(その他のモード)に従って制御することができる。さらに、電力変換器14aでは、主に、直流電源B1,B2への回生電流の経路を確保するために配置されるダイオードD12,D14についても省略できる可能性がある。
また、図54に示された電力変換器11において、SRモードに関しては、直流電源B1およびB2のいずれか一方でも回生不能な場合には、力行動作に限定されるため、スイッチング素子Q5bについては省略することができる。
また、PBモードに関しても、たとえば、直流電源B1およびB2の両方が回生不能で力行動作に限定される場合には、スイッチング素子Q5bが通流させる方向には電流が生じない。あるいは、直流電源B1およびB2の一方のみが回生不能で力行動作する場合には、スイッチング素子Q5には電流が流れない。また、図28に示したように、aBモード、bBモード、aDモードおよび、bDモードのいずれにおいても、スイッチング素子Q5(スイッチング素子Q5a,Q5b)には電流が流れない。
したがって、図54に示された電力変換器11において、直流電源B1およびB2のいずれか一方でも回生充電しない場合には、ノードN12からN11へ向かう電流経路は常時不要であるので、スイッチング素子Q5bおよびダイオードD15bを省略することが可能である。すなわち、「第5の半導体素子」についても、ノードN11からN12へ向かう電流経路をオンオフする機能のみを持たせるように構成することが可能である。
したがって、直流電源B1を回生充電せず、放電(力行)のみで使用する場合には、図54に示された電力変換器11に代えて、図60に示される電力変換器12bの構成を用いることも可能である。
図60を参照して、電力変換器12bでは、図57に示された電力変換器12aと比較して、スイッチング素子Q5に代えて、ノードN11からN12に向かう電流経路の形成/遮断を制御するためのスイッチング素子Q5aおよびダイオードD15aが配置される。すなわち、電力変換器12bでは、図54に示された電力変換器11の構成と比較して、直流電源B1への回生を制御するためのスイッチング素子Q1の配置が省略されるとともに、「第5の半導体素子」に関してスイッチング素子Q5bおよびダイオードD15bが省略されている。
また、ダイオードD12についても、電力変換器12a(図57)と同様に省略することが可能である。電力変換器12bにおいて、スイッチング素子Q2〜Q4,Q5aのオンオフは、電力変換器11での図54(PBモード)、図55(SRモード)または、図28(その他のモード)に従って制御される。
また、直流電源B2を回生充電せず、放電(力行)のみで使用する場合には、図54に示された電力変換器11に代えて、図61に示される電力変換器13bの構成を用いることも可能である。
図61を参照して、電力変換器13bでは、図58に示された電力変換器13aと比較して、スイッチング素子Q5に代えて、ノードN11からN12に向かう電流経路の形成/遮断を制御するためのスイッチング素子Q5aおよびダイオードD15aが配置される。すなわち、電力変換器13bでは、図54に示された電力変換器11の構成と比較して、直流電源B2への回生を制御するためのスイッチング素子Q3の配置が省略されるとともに、「第5の半導体素子」に関してスイッチング素子Q5bおよびダイオードD15bが省略されている。
また、ダイオードD14についても、電力変換器13a(図58)と同様に省略することが可能である。なお、電力変換器13bにおいても、スイッチング素子Q1,Q2,Q4,Q5aのオンオフは、図54(PBモード)、図55(SRモード)または、図28(その他のモード)に従って制御することができる。
同様に、直流電源B1およびB2の両方を回生充電せず、放電(力行)のみで使用する場合には、図54に示された電力変換器11に代えて、図62に示される電力変換器14bの構成を用いることも可能である。
図62を参照して、電力変換器14bでは、図59に示された電力変換器14aと比較して、スイッチング素子Q5に代えて、ノードN11からN12に向かう電流経路の形成/遮断を制御するためのスイッチング素子Q5aおよびダイオードD15aが配置される。すなわち、電力変換器14bでは、図54に示された電力変換器11の構成と比較して、直流電源B1,B2への回生を制御するためのスイッチング素子Q1,Q3の配置が省略されるとともに、「第5の半導体素子」に関してスイッチング素子Q5bおよびダイオードD15bが省略されている。
また、ダイオードD12,D14についても、電力変換器14a(図59)と同様に省略することが可能である。なお、電力変換器14bにおいても、スイッチング素子Q2,Q4,Q5aのオンオフは、図54(PBモード)、図55(SRモード)または、図28(その他のモード)に従って制御することができる。
なお、直流電源B1,B2の両方を回生充電しない電力変換器14b(図62)は、「第1の半導体素子」をダイオードD11で構成し、「第2の半導体素子」をスイッチング素子Q2で構成し、「第3の半導体素子」をダイオードD13で構成し、「第4の半導体素子」をスイッチング素子Q4で構成し、さらに、「第5の半導体素子」を少なくともノードN11からN12へ向かう電流経路をオンオフする機能のみを持たせるように構成したものである。この構成は、直流電源B1,B2と電力線PL,GLとの間で、複数の動作モードを切換えて直流電力変換(DC/DC変換)を実行するための必要最小限の構成に相当する。なお、図59の電力変換器14aでは、「第5の半導体素子」は、ノードN11からN12へ向かう電流経路に加えて、ノードN12からN11へ向かう電流経路についても共通にオンオフできる機能を有するように構成されている。
電力変換器14a(図59)および電力変換器14b(図62)の構成に対して、「第1の半導体素子」にスイッチング素子Q1をさらに設けることによって直流電源B1を回生充電することが可能となる(図58,図61)。この場合には、図58,図61にも示されるように、スイッチング素子Q2に対してダイオードD12を逆並列接続することが好ましい。
また、電力変換器14a(図59)および電力変換器14b(図62)の構成に対して、「第3の半導体素子」にスイッチング素子Q3をさらに設けることによって直流電源B2を回生充電することが可能となる(図57,図60)。この場合には、図57,図60にも示されるように、スイッチング素子Q4に対してダイオードD14を逆並列接続することが好ましい。
なお、電力変換器10(図21)または電力変換器11(図54)のように、「第1の半導体素子」から「第4の半導体素子」の各々をスイッチング素子およびダイオードの組によって構成するとともに、「第5の半導体素子」を両方向の電流(ノードN11からN12へ向かう電流およびノードN12からN11へ向かう電流)についての遮断機能を有することにより、直流電源B1,B2の両方に対して回生充電を適用できる。
なお、実施の形態1,2およびその変形例では、電力変換器10,11の構成について、スイッチング素子S1〜S4,Q1〜Q5(QB5)およびリアクトルL1,L2の接続関係を図示して説明したが、電力変換器10,11,50の構成要素が、これらの素子のみに限定されることを意味するものではない。すなわち、本実施の形態において、構成要素同士が「電気的に接続される」との記載は、両要素間に他の回路要素やコネクタ端子が存在し、当該他の回路要素を経由して上記構成要素間に電気的な接続が確保されることを含むものとする。
たとえば、図21または図54に例示された構成において、直流電源B1,リアクトルL1,スイッチング素子Q1,Q2、およびダイオードD11,D12によって構成される一般的な昇圧チョッパに対して、残りの回路部分(スイッチング素子Q3〜Q5、ダイオードD13,D14、リアクトルL2,および直流電源B2を別ユニット化し、上記昇圧チョッパに対して当該ユニットをコネクタ端子によって電気的接続するような構成とした場合にも、図示された回路要素間の電気的接続関係が同様であれば、本実施の形態に従う電力変換器および電源システムが構成されることとなる。
また、電源システムの負荷30は、電力変換器によって制御される直流電圧によって動作する機器であれば、任意の機器によって構成できる点について確認的に記載する。すなわち、本実施の形態では、電動車両の走行用電動機を含むように負荷30が構成される例を説明したが、本発明の適用はこのような負荷に限定されるものではない。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。