前掲の各装置は、ピックアップロータおよび回転ベルトの位置が固定であるため、ピックアップロータの羽根板先端が最も下方に位置するときの当該先端と地表面の間隔、または回転ベルトのブラシの最下端と地表面との間隔が、それぞれ一定となり、回収すべき(掻き揚げるべき)物体を大きさ(ボールの大きさ)が異なる場合には、その間隔を調整することができず、一種類の物体のみを回収するものであった。また、物体が放置される地表面が平滑でない場合には、これらの間隔が変化し、回収不能の状況も懸念されるものとなっていた。
他方、回収すべき物体の大きさや地表面の起伏を考慮した回収装置が開発されている(特許文献3)。この装置は、コイルスプリングの弾性変形により球体を当該コイルスプリングの内側に収容し、その後コイルスプリング一端の開口部からさらに回収容器(荷台)へ搬送する構成となっていた。しかしながら、球体をコイルスプリングの内側へ収容するためには、コイルスプリングが球体に乗り上げる必要があり、そのコイルスプリングを弾性変形させるためには強く押さえなければならず、大重量かつ大型の装置とならざるを得なかった。
さらに、上述の各従来技術は、回収容器に球体を収容させることを最終目的とするものであるため、回収容器が満杯となった場合には、一旦回収を中断し、回収した球体を最終収集場所(ステーション)に移すことが必要となり、また、回収容器からステーションへのボール移動は、人為的方法に頼ることとなり、球体の拾得から最終的な回収までが全て自動となっているものではなかった。
本発明は、上記諸点にかんがみてなされたものであって、その目的とするところは、拾得すべき物体の種類を問うことなく各種物体の回収を可能とする装置を提供すること、さらに最終収集場所への収集作業をも自動化し得る回収装置を提供することである。
そこで、本発明は、少なくとも左右両側に各1個の駆動車輪を有する移動体と、この移動体に搭載される適宜容量の回収容器と、物体を拾得するとともに前記回収容器に向かって搬送する搬送部とを備える物体回収装置であって、前記搬送部は、前記移動体の両側において、前記移動体に支持されつつ前記駆動車輪から駆動力の伝達を受けて略水平な軸線を中心とする回転を可能とする駆動部と、この駆動部よりも下位において該駆動部から適宜間隔を保持されつつ略水平な軸線を中心として回転自在に設けられた従動部と、前記駆動部と従動部との間に懸架され、両者間を循環移動する無端の伝達部とをそれぞれ備え、さらに、左右に配置される前記伝達部に両端が支持され、該伝達部とともに循環移動する複数の板状のブレードと、このブレードが従動部から駆動部に向かって移動する範囲において該ブレードの端縁の移動軌跡から適宜間隔を有するガイド部とを備えることを特徴とするものである。
上記構成によれば、無端の伝達部の移動に伴って同様に移動する板状のブレードが、物体を拾い上げ、ガイド部に沿って従動部から駆動部へ向かって搬送させることとなり、このブレードの板面の大きさの範囲で物体の搬送が可能となる。ガイド部は、ブレードの端縁の移動軌跡から適宜間隔を有しており、微細な物体を排除し、回収すべき対象物を回収することができる。搬送部は、無端伝達部が循環移動する範囲の長さに相当する搬送距離を得ることができるため、駆動部の近傍に回収容器を設置することにより、当該回収容器までの搬送が可能となる。なお、駆動部および従動部は、略水平な軸線を中心とする回転が可能となっているため、無端伝達部は、駆動部から従動部へ向かう往路と、従動部から駆動部へ向かう復路が上下方向に異なる高さで形成されることから、回収すべき物体を搬送させるべきガイド部は、復路に設けられることとなり、この復路を下側とする場合には、ガイド部は無端伝達部の下位に設けられることとなる。
本発明は、上記構成において、さらに、前記搬送部は、前記駆動部と前記従動部とを連結するとともに前記ガイド部との連結を可能にする連結フレームと、この連結フレームに接続され、前記従動部の近傍において該従動部の高さを調整する支持部とを備え、前記支持部の下端には補助車輪が設けられている構成とすることができる。
このような構成によれば、搬送部を構成する駆動部、従動部およびガイド部は、連結フレームによって一体的に構成され、移動体の駆動車輪から駆動力の伝達を受ける駆動部の位置を固定とする場合、この駆動部を中心に、搬送部全体が回動自在な状態となる。すなわち、駆動部は駆動車輪から駆動力の伝達を受けるため、駆動車輪との距離は一定となっており、伝達される駆動力は、無端の伝達部を介して従動部を回転させるものであるから、駆動部の軸線回りに従動部とともに回動させる場合には、多少の搬送速度に変化を生じさせるとしても回動に支障を生じさせることがないのである。また、駆動部を中心に回動する場合、その軸線が略水平であるため、従動部が上下に移動する方向へ回動させることとなる。さらに、従動部の近傍には支持部が設けられ、その下端に補助車輪が設けられていることから、補助車輪が接地する状態で従動部の位置が決定することとなり、地表面に起伏がある場合においても、前記搬送部全体の回動により、地表面と従動部との間には安定した間隔を維持させることができる。
また、本発明は、上記各構成において、前記移動体が、車体フレームを備え、この車体フレームは、前記駆動部の高さを維持しつつ該駆動部を回動可能に支持する支柱を備える構成とすることができる。
上記構成によれば、駆動部は、移動体の一部に適宜高さで支持されることとなり、移動体の所定の位置まで物体を搬送させることができる。ここで、車体フレームとは、移動体の駆動車輪を支持して移動体の基本的な構造を形成するものであり、さらに、駆動源や回収容器などを設置するための領域を形成している。従って、回収容器を備える移動体に対して、搬送部を所定の状態で支持できることとなり、駆動部の高さを維持させることにより、従動部から搬送される物体は駆動部の高さまで揚上されるように設けることができるのである。
さらに、本発明は、上記構成における前記搬送部が、前記移動体の進行方向前方に配置されており、前記車体フレームは、前記駆動車輪よりも前方かつ前記搬送部の下方に配置された延出部を備え、該延出部は、前記搬送部の一部を当接可能にしてなる構成とすることができる。
上記構成の場合には、搬送部が、駆動部を適宜高さに維持させつつ、従動部側が斜め下向きの斜状に配置することができる。すなわち、駆動部は車体フレームの支柱によって支持され、この駆動部を中心に回動自在な状態となっており、搬送部の一部が、車体フレームの延出部に当接することにより、搬送部の下向きの回動は制限されることとなるから、搬送部が当該延出部に当接することによって、搬送方向は適当な角度による斜状となるものである。なお、従動部近傍に設けられる支持部との関係は、常に支持部(特に補助車輪)によって従動部の高さを調整することも可能であるが、常時は、延出部によって支持されつつ、特に必要がある場合に支持部によって従動部側を上昇させるように、二段階で高さ調整させるようにしてもよい。
また、本発明は、前記延出部が、前記移動体の進行方向前方から後方に向かって外方に突出するガード部材を備える構成であってもよい。
この構成によれば、延出部は、移動体の駆動車輪よりも前方に配置されることから、駆動車輪が転動する位置よりも先に延出部が、回収すべき物体が放置される地表面を通過するため、この位置にガード部材を設けることにより、回収できなかった物体に駆動車輪が乗り上げることを回避させることができるのである。なお、ガード部材は、延出部から後方に向かって外方に突出するものであり、棒状部材で構成する場合のほかに板状部材で構成することができる。また、外方への突出長は、後続の駆動車輪がガード部材の内側に位置する程度でよく、大きく突出させる必要はない。
さらに、本発明は、上記各構成の発明において、前記駆動車輪と前記駆動部とが、それぞれスプロケットを備える構成とし、両スプロケットに駆動力伝達チェーンが懸架されることによって駆動力が伝達され、駆動車輪側のスプロケットは、ラチェット機構により、正転方向への回転駆動力のみの伝達を可能とするように構成してもよい。
上記構成によれば、移動体を走行させるための駆動車輪と、搬送部におけるブレードを搬送方向へ移動させるための駆動部とを、チェーンによって同期させることができる。さらに、駆動車輪のスプロケットにラチェット機構が使用されることにより、駆動車輪が正転時の場合にのみ搬送が可能であり、逆転時には、搬送部のブレードを停止させることができることから、搬送される物体が逆走することを回避することができる。また、移動体が走行方向を変換する場合のように、左右の駆動車輪の回転数に差を生じ、伝達部の循環移動の状態が左右で異なる状態となるときは、両方の伝達部に跨がって設置される複数のブレードが他方を牽引し、牽引される側は、駆動力を受けることなく同期して移動することとなる。このとき、牽引される側においては、駆動力を付与する側のスプロケットがラチェット機構により空回りの状態となる。
そこで、上記各構成の発明において、前記走行体の左右の駆動車輪は、異なる駆動源によって独立して駆動されるものとすることができる。
上記構成のように、左右の駆動車輪が異なる駆動源(例えば、モータ等のアクチュエータ)によって独立して回転駆動されることにより、駆動源から付与される回転駆動力を調整することによって直進のみならず方向変換も可能となる。なお、左右の駆動車輪から駆動部に駆動力が伝達されることから、直進の際には、左右の駆動部が同様に回転し、ブレードを均等に移動させることとなる。また、左右の駆動源から付与される回転力が異なる場合には、前述のラチェット機構を備えることにより、回転数の大きい駆動部に同期させて同様の回転数を生じさせることも可能となる。
本発明は、上記各構成において、前記駆動部および前記従動部はスプロケットによって構成され、前記伝達部は、チェーンによって構成されており、前記ブレードは、左右両側のチェーンのリンクプレートに支持される構成とすることができる。
上記構成によれば、駆動部の回転数に伴ってチェーンの移動量が所望の状態となり、ブレードが、このチェーンのリンクプレートに支持されることにより、チェーンの移動量と同期して移動することとなる。そのため、ブレードの移動の状態は、駆動部の回転数によって調整可能となり、この駆動部の回転数の調整は、駆動車輪が駆動源から付与される駆動力によって可能となる。従って、駆動源の出力調整により、ブレードの移動状態を調整することができるのである。
さらに、本発明は、上記各構成において、前記ガイド部が、前記ブレードが従動部から駆動部へ移動する方向に沿って配置された複数のレール部材によって形成されたものとすることができる。
上記構成によれば、ガイド部材は、板状の平面を有する構成ではなく、物体が搬送させる方向にスリットが形成された形態となる。そのため、第1に、このスリットよりも小さいものは、スリットから落下し、搬送しないようにすることができ、所定の大きさのみを搬送可能としている。従って、回収すべき対象物でない物を排除できる。特に固定ゴミを回収する場合などにあっては、不必要に小さなゴミの回収を回避し、回収すべき対象物に限定して拾得することができる。第2に、回収対象物(特に球体)は、スリット部分において両側のレール部材に支持された状態で移動することとなる。これにより、回収対象物は、レール部材に接しながら転動できることとなり、その移動を円滑にすることができる。
また、本発明は、上記のいずれかに記載の物体回収装置において、さらに、前記回収容器は、該回収容器内の物体を揚上させる揚上コンベアと、この揚上コンベアの上端において前記物体を回収する第2の回収容器とを備え、前記揚上コンベアは、前記回収容器の底面部に立設されたスクリュ軸と、このスクリュ軸のスクリュ羽根の周辺に適宜間隔を有しつつ前記スクリュ軸の軸線に平行に立設された複数のガイド柱と、前記スクリュ軸およびガイド柱を包囲するとともに上端および下端の近傍において開口部を有する略円筒状のカバーとを備えていることを特徴とする。
上記構成によれば、揚上コンベアによって、回収対象物を所定の高さまで揚上させることができる。また、揚上コンベアは、スクリュ軸のスクリュ羽根周辺にガイド柱が設けられているため、揚上される回収対象物は、スクリュ羽根の表面に整列することなく、ガイド柱の間において当該ガイド柱に沿って真上に向かって押し上げられることとなる。これにより、回収対象物の重量は、それぞれのガイド柱の間に位置する回収対象物ごとに個別にスクリュ羽根に作用することとなり、複数の回収対象物の重量が一個所に集中することがない。そして、揚上された回収対象物は、第2の回収容器に収容されることとなり、異なる位置の二個所において回収対象物を収容させることができる。
本発明は、上記構成の物体回収装置において、前記スクリュ軸の下端から適宜範囲のスクリュ羽根が、回収された物体を前記カバーの内方へ誘導するために、該スクリュ羽根の上側表面を凹状に形成してなる案内部を有する構成とすることができる。
このような構成の場合には、回収容器に収容される回収対象物のうち、揚上コンベアによって揚上される物は、揚上コンベア内において、スクリュ羽根の案内部によってスクリュ羽根の上側表面に確実に載置されることとなり、揚上コンベアに移動した後逆流することを回避できる。なお、この案内部が形成される適宜範囲とは、スクリュの1/2ピッチ相当以上であればよい。これは、揚上すべき回収対象物の大きさを考慮してカバー下端の開口部の高さが設定されることから、その1/2ピッチに相当する高さまで揚上されれば、物体全体がカバーの開口部を半分以上通過することができるため、開口部から落下する恐れがないからである。当然であるが、これよりも長い範囲に案内部を有する構成としてもよい。
本発明は、上記のような揚上コンベアを備える構成において、さらに、第2の回収容器が、部分的に開放された開口部を備え、この開口部から物体を外方へ放出するための放出手段が設置される構成としてもよい。
上記構成によれば、第2の回収容器は、回収対象物を収容するのみでなく、外部へ放出することが可能となり、この放出すべき方向を制御することにより、移動体が最終収容場所へ移動することなく、当該最終収容場所に回収対象物を投入することが可能となる。最終収集場所への投入は、移動体による回収の後に、所定位置において放出手段を作動させることによる場合のほか、移動体による回収工程と同時に放出手段を作動させて、常に最終収集場所へ投入させる場合とがあり得る。
ここで、前記放出手段は、2個の回転体が周縁を相互に接近しつつ対向して配置され、かつ少なくとも一方が回転駆動され、前記第2の回収容器に回収された物体を順次挟持しつつ回転体の回転力によって放出可能とすることができる。
上記構成の場合には、回収された物体が、対向する2個の回転体に挟まれることにより、回転体の回転力から噴出力が付与されることとなり、適度な初速をもって任意の方角へ噴出されることとなる。なお、2個の回転体のうちの一方のみを回転駆動させる場合には、他方の回転体はテンションローラとして機能させるものであり、放出すべき物体を適度な圧力によって挟持させるものである。また、2個の回転体は、双方ともに回転駆動される構成でもよく、この場合、両者の回転数を調整することにより、双方から物体に噴出力を作用させることができる。この場合において、2つの回転体を上下に配置するときには、敢えて回転力に差違を設けることにより、放出するときの飛び出し角度を変化させることができ、放出距離に応じて当該角度を調整することが可能となる。
また、本発明は、前記第2の回収容器に放出出段を有する前記各構成において、前記揚上コンベアが、前記回収容器の底面に設けられるテーブル上に設置され、該テーブルが前記揚上コンベアの軸回りに回転可能であり、該揚上コンベアの軸回りの回転は、前記放出手段による放出方向を変更するように構成することができる。
上記構成によれば、回収容器の底面に設けられるテーブルの回転により、揚上コンベアと、これに付随する第2の回収容器および放出手段とが、一体として揚上コンベアの軸回りに回転することができることとなり、この回転により放出手段から放出される物体の放出方向が移動体全体との間で相対的に変化し、移動体の向きにかかわらず、放出方向を最終収集場所に向けることができる。
本発明は、上記構成において、さらに、前記移動体が、回収された物体の最終収集場所の位置を検知する検知手段を備え、前記放出手段の回転が、前記検知手段により検知された最終収集場所に向かって変更するように構成することができる。
上記構成によれば、移動体が移動しつつ向きを変更した場合であっても、最終収集場所の位置を検知しつつ、その場所へ向かって放出手段に向きをセットすることができることとなる。このとき、最終収集場所までの距離を同時に計測させ、その距離に応じて前記放出手段による噴射速度を変更させることにより、移動体が最終収集場所へ移動することなく、回収対象物を最終収集場所に回収させることが可能となる。
本発明によれば、板状ブレードが物体を押し上げるようにして搬送することから、当該板状ブレードの平面の大きさの範囲内において、その大きさを問うことなく回収することができる。従って、拾得すべき物体が、ゴルフボールやテニスボールのように大きさの異なる球体であっても回収可能であり、また、この種のボールに限らず固形のゴミなども収集することができる。さらに、搬送部のうち、駆動部において駆動力の伝達を受けるため固定的であるが、その他の部分は駆動部に従属するものとなるため、搬送部全体が駆動部の軸心を中心に回動自在となり、搬送部の下端(従動部側)と地表面との間隙を調整することができることから、起伏を有する地表面においても物体を回収することが可能となる。
また、揚上コンベアを有する構成の場合には、物体を回収容器から第2の回収容器へ移動させることができ、回収容器よりも高い位置まで揚上できることから、回収容器よりも高位置において開口する第2の回収容器とともに分割して収容させることができる。しかも、放出手段を備える構成の場合には、第2の回収容器から最終収集場所へ向けて物体を放出することが可能となり、特に、最終収集場所の方向へ向きを変更し得る構成にあっては、移動体の向きにかかわらず最終収集場所への投棄が可能となり、最終収集場所への収集作業が自動化することができる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1および図2は、本発明の第1の実施形態について、その概要を示した図である。図1は全体の状態を示し、図2は、主たる構成部分を分解した状態を示している。これらの図に示されるように、本実施形態の物体回収装置Aの概略は、移動体1と、この移動体1に搭載される回収容器2と、移動体1の進行方向前方に配置される搬送部3とで構成されている。なお、移動体1の公報には、電源用のバッテリおよび制御装置を搭載するための制御ボックス4が設置されている。
移動体1は、その骨格を構成する車体フレーム11に、二つの前輪12,13および一つの後輪14が設けられている。前輪12,13は、モータ等のアクチュエータ15,16によって駆動力が付与される駆動車輪である。両方の駆動車輪12,13が個別のアクチュエータ15,16によって駆動されていることから、両者の駆動力に際を設けることにより、進行方向へ変更することができるようになっている。他方、後輪14は、駆動力が付与されておらず、駆動車輪12,13によって走行する際に追随する従動車輪である。なお、この従動車輪14は、オフセットの位置に設けられる鉛直軸を中心に水平方向へ回動自在となっており、駆動車輪12,13の作動により進行方向が左右に変化する場合に、その方向に合わせて回動することができるものである。
また、車体フレーム11の前部には、搬送部3の一部が当接される延出部11aが設けられている。この延出部11aは、搬送部3の下方に位置しており、搬送部3の搬送経路を斜状とするときの下部を支持することができるものである。なお、この延出部11aの左右の両端縁部分には、前方から後方に向けて外方に突出する棒状部材17,18が取り付けられている(図2参照)。この棒状部材17,18は、地表面よりも僅かに上位において軸線を水平にしており、後方端部は、駆動車輪12,13の外側端縁部よりも外方に達する長さになっている。この棒状部材17,18によって、搬送部3によって拾得できなかった物体が駆動車輪12,13に接近することを防護している。つまり、この棒状部材17,18は、駆動車輪を防護するガード部材として機能しているのである。
回収容器2は、図2に示されているように、底面部21の周囲を壁面部材22,23,24,25で包囲され、適宜容量を有するように構成されている。底面部21は、いわゆるパンチングメタルで構成され、微細な貫通孔が複数設けられている。この貫通孔は、回収容器2に収容される物体に付着する微細なゴミや水滴などを回収容器2から下部外方へ排出するためのものである。従って、この底面部21は、パンチングメタルに限定されることなく、格子面を有する構成のものでもよく、また、ゴミ等の排除が不要な場合は、平板部材で構成してもよい。
この底面部21の周囲を包囲する壁面部材22〜25は、二種類のタイプを例示している。一方22,23は、平板部材であり、他方24,25は格子部材である。これらの構成についても、特別に限定されるものではなく、全てをパンチングメタルで構成することができるほか、全体を平板部材で構成してもよい。
搬送部3は、地表面付近から回収容器2までの範囲を斜め上方に搬送するものであり、そのために、搬送経路が斜状となるように設置されている。搬送部3の詳細な構成については後述するが、駆動車輪12,13の回転駆動力がチェーン31,32で伝達されるものであり、この駆動力により、全体としてベルトコンベアのようにブレード33を循環移動させ、徐々に上方へ物体を搬送させるものである。
ここで、搬送部3の詳細について説明する。図3は、搬送部3を複数の部材に分解した状態を示し、図4は、搬送部3の一部をさらに分解した状態を示している。この図3に示されるように、搬送部3の概略は、コンベア部5とガイド部6とで構成されている。コンベア部5とガイド部6とは、両側の連結板34,35によって連結されるものであり、ガイド部6は、コンベア部5の搬送経路に平行に設けられる。コンベア部5において循環移動するブレード33は、上側が下方へ、下側が上方へ移動するものであり、ガイド部6が、このブレード33の下側を移動する軌跡から適宜間隔を有して配置されることによって、回収すべき物体をガイド部6の表面に沿って、ブレード33の移動に伴って搬送できるようになっている。従って、両者の適宜間隔とは、回収すべき物体よりも狭い間隔ということであり、この間隔が適当に設けられることにより、不要な微細なゴミ等は、当該隙間から排除され得ることとなる。なお、上記間隔を大きくすることによって、大きい物体を搬送させることも可能となり、また、場合によっては、ブレード33を突出長の異なるものに付け替えることにより、適宜調整可能である。さらに、ガイド部6をコンベア部5に連結する連結板34,35には、補助車輪36,37を有する支持部38,39が設けられており、搬送部3の下部の高さを維持させるようになっている。
本実施形態のガイド部6は、図3に示されているように、長尺な棒状部材61が長手方向を搬送経路に一致させつつ、適宜間隔を有して並列に複数配置されており、この複数の棒状部材61によって、多数のレールを形成させている。このことを明確にするため、以下において、上記棒状部材61をレール部材と称する。このレール部材61が適宜間隔で平行に設けられることにより、回収すべき物体を隣接する二本のレール部材61の間に誘導し、この二本のレール部材61に沿って搬送経路を確実に移動させることができる。なお、複数のレール部材61における間隔を維持させるため、直交方向に軸線を有する横ビーム62を設け、全体的に格子状としているが、この横ビーム62は、レールが形成される裏面側(下側)に配置し、物体の移動を阻害しないようにしている。
ところで、本実施形態のコンベア部5は、図4に示されているように、連結フレーム7に各種部材を装着することによって構成されるものである。連結フレーム7は、二本の横軸71,72と、二本の縦軸73,74によって、全体が略四辺形状になっており、一方(上位)の横軸71は、駆動部8を支持し、他方(下位)の横軸72は、従動部9を支持するものである。なお、縦軸73,74は、中間に長さ調整部75,76が設けられている。この長さ調整部75,76は、ターンバックルのように、両側にネジを刻設したものであり、ネジの螺進によって全体の長さを調整可能としている。また、縦軸73,74は、前述の連結板34,35が連結可能であり、当該連結板34,35が縦軸73,74に連結されることにより、ガイド部6を一体的に連結できるようにしている。連結板34,35を縦軸73,74に装着する場合には、縦軸73,74を貫通する固定ネジが使用される。
駆動部8は、上位の横軸71の両側に配置されたスプロケット81,82と、さらに外方に延出する駆動軸83,84とを有し、この駆動軸83,84は、軸受けを内蔵する支持アーム85,86によって支持されるものである。さらに駆動軸83,84の先端には、異なるスプロケット87,88が装着される構成となっている。このスプロケット87,88には、前述のチェーン31,32が懸架され、移動体1の駆動車輪12,13の駆動のための駆動力から、回転駆動力の伝達を可能にするものである。そのために駆動車輪12,13の内側には、当該チェーン31,32が噛合するスプロケット91,92が設けられている(図2参照)。
なお、駆動部8を支持するための支持アーム85,86は、車体フレーム11の駆動車輪12,13の近傍に立設されている支柱93,94(図2)に挿入されるものであり、この支柱93,94に装着されることによって、全体として、駆動軸83,84を回動可能な状態で支持されるものである。そして、支柱93,94は、全体が筒状に構成され、下端に雌ネジが刻設されたものであり、下端からボルトを螺入できる構成となっている。この支柱93,94の下端から螺入したボルトの先端に前記支持アーム85,86の先端(下端)が当接することにより、当該支持アーム85,86が所定の高さに支持される構成となっている。従って、支柱93,94の下端に装着されるボルトの螺入の状態を変更することにより、支持アーム85,86の高さを変更することができ、また、両者に懸架されるチェーン31,32のテンションを調整することができるものである。また、作用については後述するが、移動体1に設けられるスプロケット91,92は、ラチェット機能を有するものが使用されている。
他方、従動部は、下位の横軸72の両側に設けられたスプロケット9a,9bで構成されている。このスプロケット9a,9bと、前述の駆動部8のスプロケット81,82との間には、それぞれ無端の伝達部(チェーン)90a,90bが懸架されることにより、駆動部8の回転駆動力が従動部9に伝達されるようになっている。つまり、駆動部8の駆動軸83,84が回転することにより、駆動部8のスプロケット81,82が回転し、従動部9のスプロケット9a,9bが同期して回転することとなるのである。また、チェーン90a,90bは無端縁であるため、駆動部8が回転することによって移動するチェーンは、従動部9を回転させつつ、当該従動部9まで到達した後向きを変えて戻る方向へ移動し、全体として循環移動するのである。
上記のチェーン90a,90bに跨がるように、すなわち両端が二つのチェーン90a,90bに固定されるように、複数のブレード33が設置されているのである。このブレード33は、チェーン90a,90bから外向きに突出する平面を有するものであり、本実施形態では、本体部分が断面形状略L字状としつつ、両端に遮蔽面部を設けた構成としている。これらの形状は、物体の搬送途中において、当該物体が振動等によってブレード33から逸脱しないためのものである。従って、特に必須の構成ではないが、このような構成とすることにより、不測の事態を招かないことができる。
なお、上記ブレード33の両端は、チェーン90a,90bを構成するリンクプレートに固定されている。リンクプレートには、略L字状の連結基部が設けられており、この連結基部に締着部材で固着することができる。この締着部材による固着の方法によることで、ブレード33のみの交換が容易となる。また、この連結基部の位置を左右両側のチェーン90a,90bで一致させることにより、ブレード33の長手方向を水平方向(搬送方向に対し直交方向)にしつつ、複数の全てのブレード33の長手方向を平行な状態で装着することができる。
次に、本実施形態の作動態様について説明する。図5は、本実施形態による物体(図はボールを例示している)Xの搬送状態を示し、(a)は搬送部3の上位先端部を、(b)は搬送部3の下位先端部を、それぞれ示したものである。この図に示されるように、地表面GLに散乱する物体Xは、移動体1の移動とともに、ブレード33がチェーン90a,90bの循環移動に伴って、チェーン90a,90bと同様に循環移動する。そして、下位の従動部側から下向きに突出するブレード33が、物体Xに当接すると、これをガイド部6の上面に誘導する。さらに、このガイド部6の上面に沿ってブレード33が斜め上方へ誘導することにより、物体Xを順次かつ徐々に上方へ搬送させることとなる(図5(b)参照)。
そして、搬送部3の上位においては、チェーン90a,90bは、駆動部において再び向きを変更することから、ブレード33はガイド部6から離間することとなる。この離間により、物体Xの誘導(搬送)は終了すこととなるが、この位置においてガイド部6の上端に到達しており、物体Xは、自由落下により回収容器2の内側に投入されることとなる。このように、順次搬送される物体Xは、ガイド部6の範囲を下端から上端まで移動することにより、確実に回収作業が行われる。
なお、物体Xがボールのような球体の場合には、ガイド部6の表面(現実にはレール部材61の表面を転動しながら移動することとなる。また、図は一つのブレード33によって1個の物体Xが搬送される状態を示しているが、紙面鉛直方向にブレード33の長手方向が連続することから、同時に多数の物体Xが搬送されることとなる。また、一つのブレード33と、その前後のブレード33(先行するものと後続のもの)との間には、十分な間隔を有している場合には、前後のブレード33の間において、搬送方向に沿って複数の物体Xが入り得る。この場合には、二本のレール部材による一つのレールによって、同時に複数の物体Xを搬送することも可能である(この状態は図5(a)中に例示している)。
ところで、搬送部3は、斜状の搬送経路が維持されている。この状態を図6に示す。図6(a)に示すように、平坦な地表面を移動する際には、基本的に、搬送部3は移動体1の車体フレームの延出部11aによって支持される。これは、連結フレームを構成する連結板33の下端縁の一部が延出部11aに当接した状態となっているからである。
これに対し、図6(b)に示すように、地表面が起伏している場合、または傾斜している場合には、支持部38,39の下端に設けられている補助車輪36,37が当該起伏または傾斜に沿って上昇することとなり、この支持部38,39の上昇に伴って、搬送部3の下端縁も上昇するようになっている。このとき、搬送部3は、駆動部8を中心に回動することにより、角度を変化させているのである。前述のように、駆動部8は、移動体の駆動車輪から駆動力の伝達を受けているが、駆動部8を中心に回動することは、チェーン90a,90bの移動速度を若干変更することとなるのみであり、回動は自在な状態となっている。従って、物体Xの回収途中であっても、搬送部3の角度変更は自在となるのである。このように、搬送部3の下端縁が起伏等に応じて上昇することにより、地表面との接触を回避できるのである。
なお、平坦な地表面を移動する場合には、前述のように、基本的には延出部11aによって支持することも可能であるが、搬送部3の下端縁の位置を常時(平坦な場合を含め)支持部によって支持させてもよい。この場合、補助車輪36,37は、常に地表面上を転動することとなる。
また、図示の支持部38,39の上端には、第2の転動部材Caが設けられている。これは後述する装置カバーCを装着した場合に、この装置カバーCを同時に上昇させるためのものである。この装着カバーCを装着する状態を図7および図8に示す。これらの図に示されるように、装着カバーCは、本体部用のカバーCAと搬送部用のカバーCBとに区分され、両者が接合部において蝶番Cb,Ccで連結されている。この蝶番Cb,Ccによる連結により、カバーCBが回動可能となっており、前述のように、搬送部3が回動する際にもカバーCBを同時に回動させるようになっているのである。
図8に示すように、装置カバーCA,CBによって覆われた状態では、作動中の搬送部3が外部に露出しないようになっており、不意に人体の一部が巻き込まれることを介している。また、回収容器2も覆われており、回収すべき物体以外のものが混入しないように防護することができるものである。
なお、前述のように、移動体側に設けられるスプロケットには、ラチェット機構が設けられていることから、移動体が後退(後方へ移動)する場合には、搬送部3のチェーン90a,90bはラチェット機構により後退しないこととなる。そのため、チェーン90a,90bに装着されるブレード33も後退しないことから、回収途中の物体Xが逆方向へ移動することも回避できるのである。これは、左右の駆動部8(駆動車輪)の回転数が異なる場合(移動方向の変更の場合)においても、両者をのうち回転数が大きい方に併せて他方は空回りすることとなり、左右のチェーン90a,90bの移動の状態が同期させることとなるのである。
本実施形態は、上記のような構成であるから、移動体1を移動させながら、地表面に散乱する物体を順次回収することができる。そして、ブレード33の循環移動によって、ガイド部6に沿った搬送が可能となり、確実な回収を可能とするものである。さらに、回収すべき物体が球体である場合に限らず、想定される所定の大きさの物体を回収することができる。そして、大きさが想定よりも小さいものを排除させることも可能となる。
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図9は、本実施形態の全体を示す図である。この図に示されているように、本実施形態は、第1の実施形態における回収容器2の底面部に、揚上コンベア100が立設され、その上端近傍に第2の回収容器200が設けられた構成である。揚上コンベア100の上端は振動防止のために、二本の支持アーム101,102が設けられている。この支持アーム101,102の下端は、移動体1の車体フレーム11に連結され、当該車体フレーム11と一体化して揚上コンベア100の上端部を支持するものである。なお、その他の構成は、第1の実施形態と同様であるため、重複する部分については説明を省略する。
ここで、揚上コンベア100は、図10に示すように、周囲にスクリュ羽根を有するスクリュ軸110と、その周辺に等間隔に配置されたガイド柱120と、さらに、全体を包囲する円筒状のカバー130とを主たる構成部材として構成されている。スクリュ軸110およびガイド柱120は、いずれも回収容器2の底面部21に立設されており、円筒カバー130は、ガイド柱120を挿通する状態で配置され、スクリュ軸110およびガイド柱120の全体を包囲するものである。ただし、円筒カバー130の下端は、ガイド柱120に設けられたストッパによって支持され、下端近傍においてスクリュ軸110およびガイド柱120を包囲せず開口させた状態となっており、また、円筒カバー130の上端は、スクリュ軸110およびガイド柱120の上端まで到達させておらず、この上端近傍においても開口する状態となっている。なお、この円筒カバー130は、ストッパによって支持することにより、容易な分離・分解が可能となり、修理等の便に資するものであるが、鋲着手段等によって強固に固定させる構成でもよい。
ガイド柱120は、等間隔で複数(図は5本)立設されるものであるが、これらの間隔を維持するために、その上端において、フランジ150に固定されている。このフランジ150は、中央においてスクリュ軸110も支持できるものであり、回転するスクリュ軸110を支持するために、軸受が中央に装着されている。なお、このフランジ150の頭頂部には、支持アーム101,102(図9)が接続されるものである。
このような揚上コンベア100は、回収容器2の底面部21のうち、最も低い位置に立設されるものである。これは、回収容器2に収容される物体を揚上コンベア100に誘導するための構成である。このような底面部21としては、図示のように、例えば、4分割された底面部構成部材141,142,143,144を中央に向かって傾斜させることにより、当該中央部分140が最も低くなるように構成することができる。また、この中央部分140は、底面部21よりも僅かに低位に配置してもよい。
なお、回収容器2の底面部21の下方には、スクリュ軸110を回転させるためのアクチュエータおよび伝達機構(いずれも図示省略)が設けられ、中央部分140は、ガイド柱120を固定するとともに、スクリュ軸110を回動可能な状態で支持させている。
ところで、図11(a)に示すように、スクリュ軸110の周囲に配置されるスクリュ羽根111は、一般的な螺旋状の羽根形状を有しているが、下端部112は上側表面を凹状に形成している。これは、物体を揚上する際に、スクリュ羽根111に誘導するための案内部113である。
すなわち、図11(b)に示すように、スクリュ軸110およびガイド柱120の下端近傍は、円筒カバー130によって包囲さることなく開口しており、物体Xは、この開口部分から揚上コンベア100の内部に移動することができるものである。ところが、周囲が円筒カバー130によって包囲されていないことから、物体Xが揚上時に外方に逆流することがある。そこで、案内部113を設けることにより、物体Xの逆流を防ぎ、内部に移動した物体Xを確実に揚上させるようにしているのである。なお、隣接するガイド柱120の間隔は、物体Xの外径よりも大きい状態で設けられ、物体Xは、それぞれ隣接するガイド柱120の間を通って、揚上コンベア100の内部に移動することができるものである。
ここで、揚上コンベア100の内部における物体Xの揚上の状態を説明する。図12は、揚上コンベア100の内部を示す図であり、(a)は横断面図、(b)は縦断面図である。これらの図に示されるように、揚上コンベア100の内部に移動した物体Xは、スクリュ軸110の中心軸と、隣接するガイド柱120との間に位置し、さらに、外方に位置する円筒カバー130の壁面によって、これらに包囲された状態となっている。従って、スクリュ羽根111が螺旋状態であるとしても、ガイド柱120の存在により螺旋に沿って下降することがない。また、スクリュ軸110が回転することにより、物体Xを支持するスクリュ羽根111が移動し、その位置が上昇することとなるが、やはりガイド柱120の存在により、スクリュ軸110の中心軸、ガイド柱120および円筒カバー130によって包囲される状態が維持される。
その結果、物体Xは、スクリュ軸110の軸線方向に沿って略直線的に揚上されることとなるのである。これは、球体のように転動容易な物体Xを、スクリュ羽根111によって揚上させる場合、物体Xがスクリュ羽根111に沿って、螺旋状に整列することを回避するものである。すなわち、物体Xを自由に転動させる場合には、スクリュ羽根111の螺旋に沿って下方へ移動することとなり、スクリュ羽根111の最下端において転動を阻止するストッパ等が必要となるが、物体Xの転動を制限することにより、そのような機構を不要としている。また、自由に転動する場合には、複数の物体Xが、スクリュ羽根111の下端から積み上げられた状態で整列することとなり、上端まで移動するためには、スクリュ羽根111の表面全体に物体Xが整列しなければならない。そして、その際の全体重量が大きくなり、スクリュ軸110に負荷が掛かるものである。これに対し、転動を制限することにより、揚上コンベア100の内部に移動した物体Xを順次(極端な場合は1個のみでも)揚上させることができるのである。
本実施形態は上記のような構成であるから、回収容器2に収容された物体Xを、当該回収容器2から別の場所(第2の回収容器200)に移動させることができ、多量の物体Xを回収する場合には、回収容量を増加させることができる。なお、揚上コンベア100によって揚上された物体Xは、第2の回収容器200に収容されることとなるが、この第2の回収容器200は、第1の回収容器2よりも上方に位置することとなるため、この高さから、自然流下により、さらに他の回収容器に移動させることも可能である。例えば、移動体1に容器を牽引させることにより、第2の回収容器200から勾配を有する連結流路を配置して、牽引される容器に移動させてもよい。
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図13は、本発明の概略を示す図である。本実施形態は、図示のように、第2の実施形態における第2の回収容器200に放出手段300が設置された構成である。
放出手段300は、水平軸によって回転する二つの回転体310,320が上下に分かれて設置され、これらの回転体310,320の周縁が相互に近接しつつ対向するようになっている。この二つの回転体310,320は、相互に逆向きに回転するように、アクチュエータ330による回転駆動力が伝達されている。駆動力の伝達は、例えば、ベルト311,321によって同時に伝達する方法がある。この場合、ベルト311,321の設置により、一方の回転体310は正転方向へ伝達し、他方の回転体320は逆転方向へ伝達することができる。
このように、上下に配置した回転体310,320の周縁の間隔は、物体の外径よりも小さく設けられ、この周縁に挟まれた物体は、回転体310,320の回転力を受けて推進力が付与され、外方へ放出され得ることとなる。このように、放出手段300によって物体を外方へ放出するために、第2の回収容器200には、回転体310,320へ物体を誘導するための誘導路210と、その先端の開口部211とが設けられている。この誘導路210は断面略半円形の筒状部材で構成され、平面部を底面として設置されている。そして、この底面は、第2の回収容器200から放出手段300に向かって傾斜しており、第2の回収容器200まで移動(揚上)された物体の自由な転動によって、放出手段300へ誘導するものである。なお、第2の回収容器200の側面部は、前記誘導路210に連通するように開口しており、また、底面部は、当該誘導路210に向かって傾斜させており、第2の回収容器200の内部においても物体Xを誘導路210に誘導するように構成されている。
上記のように、放出手段300を備える構成の場合には、放出方向(飛び出し方向)が変化できることによって、移動体1(装置全体)の向きにかかわらず、任意の方向へ物体を放出することができる。そこで、放出手段300の向きを変更させるための機構を以下に説明する。
図14は、本実施形態における揚上コンベア100の上端部近傍および下端部近傍の断面を示す図である。この図に示されるように、本実施形態は、前記放出手段300の向きを変更させるために、揚上コンベア100を軸回りに回転可能とするものである。なお、スクリュ軸110は、揚上のために回転させなければならないことから、揚上コンベア100の回転とは個別に回転可能にしている。
この機構を詳述すれば、回収容器底面部21の中央には、テーブル410が設けられ、このテーブル410にガイド柱120が立設されている。また、テーブル410の下部には円筒部411が連続して設けられ、さらに、この円筒部411の下端には傘歯車412が設けられている。従って、この傘歯車412を回転させることにより、円筒部411を介してテーブル410が回転可能となっている。なお、円筒カバーはガイド柱120によって支持(または固着)されることから、ガイド柱120と一体である。
他方、スクリュ軸110は、テーブル410の中央に軸受を介して立設され、その下端はテーブル410を貫通し、さらに円筒部411よりも下方において傘歯車413が設けられている。従って、この傘歯車413を回転させることによって、スクリュ軸110を回転させることができる構成となっているのである。
ここで、テーブル410の下位には、回収容器底面部21と一体化し、または回収容器底面部21と同様に固定的な状態で設置される基部420が設けられている。この基部420は、中央において、軸受を介して円筒部411を固定するものである。また、基部420は、下部に円筒状の壁面部421を備えており、この壁面部421が円筒部411および傘歯車412,413を包囲しつつ、駆動源としての二つのアクチュエータ(モータ)430,440を支持している。そして、このアクチュエータ430,440は、それぞれの回転軸に傘歯車431,441が設けられている。
一方のアクチュエータ430に設けられる傘歯車431は、テーブル410の円筒部411に設けられる傘歯車412と噛合するものであり、他方のアクチュエータ440に設けられる傘歯車441は、スクリュ軸110の下端に設けられる傘歯車413と噛合するものである。従って、一方のアクチュエータ430による回転駆動は、一方の傘歯車431およびこれに噛合する傘歯車412を介して円筒部411に伝達され、この回転部411に連続するテーブルを回転させることとなる。他方のアクチュエータ440による回転駆動力は、他方の傘歯車441およびこれに噛合する傘歯車413を介してスクリュ軸110に伝達されるものである。
上記のような構成により、一方のアクチュエータ430によって、揚上コンベア100を全体的に回転させることができるとともに、他方のアクチュエータ440によって、スクリュ軸110のみを回転させることができるものである。そこで、スクリュ軸110を回転させるためのアクチュエータ440は常時作動するものであるが、テーブル410を回転させるためのアクチュエータ430は放出手段300(図13)の向きを変更するときのみ作動させることとなる。
なお、揚上コンベア100の上端部分は、フランジ150が設けられるものであり、このフランジ150においても、ガイド柱120とともに揚上コンベア100の全体が回転できるように、頭頂部151から分離して構成され、両者の間に軸受を介在させている。なお、頭頂部151は、支持アーム101,102が接続され、やはり移動体の車体フレームによって支持される構成となっている。
本実施形態は、上記のような構成であるから、放出手段300により第2の回収容器200に回収される物体を順次外方へ放出することができ、回収した物体を最終収集場所において、回収容器から取り出す手間を省くことができる。特に、放出手段300の向きを変更可能とすることにより、移動体の向きにかかわらず、任意な方向へ物体を放出させることが可能となるため、物体の拾得を行いつつ放出手段300による放出も可能となる。そして、この種の揚上装置および放出手段は、第1の実施形態に搭載する場合に限らず、他の回収装置に搭載することもできる。少なくとも物体を回収でき、それを収容できる容器を備えていれば、その容器から揚上させることができ、それを所定の方向へ放出させることが可能となるものである。さらに、制御ボックス4には、各種のアクチュエータを制御するための制御装置を搭載することができることから、揚上コンベア100の回転を駆動するアクチュエータを制御することにより、放出手段300の向きを制御することができる。このとき、最終収集場所の位置を検出する検知手段を搭載することにより、放出手段300の向きを最終収集場所に向けるための制御が可能となり、さらに、距離を検出することにより、放出手段300による放出速度を制御することも可能となる。この放出速度の制御は、回転体310,320(図13)を駆動するアクチュエータ330(図13)を制御することにより、物体の放出速度を変更することができる。
ここで、前記制御装置の構成について説明する。図15は、制御装置と当該制御装置によって制御される各種アクチュエータ(モータ)との関係を示すブロック図である。この図に示されているように、制御装置には、処理部と、この処理部との間でデータが送受信される記憶部とが備えられている。記憶部には、物体回収装置が移動すべき領域の地図データ(マップデータ)が記憶され、当該地図データに沿って移動すべき予定経路なども記憶されている。また、記憶部には、その他の制御プログラムが記憶され、当該プログラムに従って処理部によってデータ処理がなされ、所定の制御を行うものである。
また、処理部には、入力部および出力部が接続され、入力部は、各種操作を入力するためのキーボード等の操作部と、各種センサ等からセンシングされた検知情報が入力されるようになっている。センサ類としては、カメラ、距離センサ、エンコーダおよびIDタグなどが想定され、物体回収装置の位置、向きおよび最終収集場所との相対的な位置関係等のほか、回収された物体の数等を検出できるようになっている。IDタグは、所定の物体(例えば、ゴルフボールやテニスボールなど)に装着されるタグであり、これらを読み取ることにより、回収された物体の数等を検出可能にするものである。
出力部は、専ら各種のアクチュエータを制御するための制御信号を出力するものであり、駆動車輪を駆動する際のモータ、揚上コンベアにおけるスクリュ軸を回転させるためのモータを制御し、さらに、放出手段により物体を放出する場合には、揚上コンベアの向きや、放出手段の回転体の回転駆動力などを制御するために、それぞれの駆動制御のためのマイクロコンピュータ(マイコン)に制御信号を出力させる構成となっている。なお、各モータには、モータドライバが備えられており、このモータドライバによって現実のモータの出力値を制御している。
図15に示す制御装置は、揚上コンベアおよび放出手段を備える構成を示しているが、揚上コンベアを具備しない形態(第1の実施形態)では、駆動車輪のみを制御するように構成されるものである。また、図示の制御装置は、表示部を備える構成としているが、これは、バッテリの状態や電源のON・OFF、さらに各種アクチュエータの作動・停止の状態等を簡易に表示させるためのものであるほか、操作部によって入力した状態を表示させる目的としても使用可能である。
ここで、制御装置による各種アクチュエータの制御方法について説明する。図16は、駆動車輪の制御方法を示すフローチャートである。この図に示されるように、駆動車輪の制御が開始すると、装置本体(物体回収装置)の位置を推定する(S11)。この位置の推定は、マップデータの情報に前述のカメラや距離センサ等の情報が入力されることにより、これらの情報から演算されるものである。そこで、予め移動経路が設定されている場合には、装置本体が指定された経路(指定コース)の終点に到達したか否かが判断され(S12)、終点であれば駆動車輪の駆動は終了するが、終点でなければ制御が継続する。制御に際しては、バッテリの状態(電圧)を検出し(S13)、バッテリ残量が十分であることを確認したうえで、指定コースに従った移動を継続する(S14)。他方、バッテリ残量が不足する場合には、要充電として、充電ステーション(充電装置設置場所)へ移動する(S15)。この充電ステーションによって充電が完了した後は、再び指定コースに復帰し、移動を再開することとなる。
物体回収装置を移動させるためには、駆動車輪を駆動するためのモータを作動させるものであるが、そのモータを作動させるための駆動電流の値を制御装置から受領し、その値に応じて駆動電流を取得するものであるが、その値がモータの負荷を超えないものであるか否かが推定され、その推定値によってモータの作動が制御される(S17,S18)。すなわち、駆動電流の値が正常な範囲であれば、モータの作動は継続されるが、過負荷の場合は、モータを停止させることとなる。なお、このときの状態を表示部に表示させるとともに、異常時として運転を停止することとなる。
また、揚上コンベアによる物体を第2の回収容器へ揚上する場合には、揚上コンベアのスクリュ軸を回転駆動するのであるが、この回転駆動のためのアクチュエータは、図17に示すように制御されるものである。このスクリュ軸は、回転を継続することにより、物体は、回収容器から第2の回収容器まで順次揚上させることができるものであるが、揚上の速度(物体の量)を変更するために、スクリュ軸の回転速度を可変としている。そこで、第2の回収容器に回収された物体の数をセンサによって検出し、当該第2の回収容器に回収されている数を推定する(S21)。その数が少ない場合(予め定めた下限値以下の場合)にはスクリュ軸を高速に回転させるために、駆動モータを高速に変更するのである(S22,S23)。これに対し、下限値よりも多数の場合は、上限値を超えていなかが判断され(S24)、上限値以上の場合は、逆に駆動モータを低速に変更するのである(S25)。また、下限値と上限値の中間(適当な数)の場合には、駆動モータは、基準速度によってスクリュ軸を回転させるようにしている(S26)。なお、駆動モータの回転速度の高低等にかかわらず、その駆動電流の値から負荷の状態が推定され、過負荷の場合には、モータを停止し運転を終了することについては、駆動車輪の場合と同様である(S27〜S29)。
さらに、第2の回収容器に備えられる放出手段によって物体を外方へ放出する場合、特に最終収集場所へ放出させる場合には、放出手段の向き(揚上コンベアの回転)および放出のための回転体の回転駆動力が制御される。その制御方法を図18に示す。この図に示されるように、制御が開始されると、各種センサ(カメラおよび距離センサ等)から入力される情報に基づいて、装置本体(物体回収装置)の位置および最終収集場所の方角が推定される(S31,32)。放出手段の向き(物体が放出される方向)が、最終収集場所へ向いている場合と異なる場合とが判断され(S33)、一致している場合には、揚上コンベアの角度は変更されないが、向きが異なる場合は、揚上コンベアを回転させるためのモータを作動させる(S34)。さらに、最終収集場所までの距離も推定され(S35)、放出手段を構成する回転体の回転数が、当該距離に到達するために必要な回転数であるか否かが判断され(S36)、距離の長短に応じて、放出に適する回転数に制御される(S37)。なお、この回転体の制御に際しても、その駆動電流の値から負荷の状態が推定され、過負荷の場合には、モータを停止し運転を終了することについては、駆動車輪の場合と同様である(S38〜S40)。
以上のように、各種のセンサによる検出と、各種アクチュエータの出力制御によって、物体回収装置の移動、物体の回収、揚上および放出を制御することができ、物体の回収を自動化することができる。また、制御装置は、前述のとおり物体回収装置に搭載されることから、他の制御装置を別途設ける必要がなく、また、同様に搭載されるバッテリの残量を常時確認できることから、バッテリの管理をも自動化することができる。
本発明の実施形態は上記のとおりであるが、これらの実施形態は本発明の一例を示すものであり、本発明がこれらの実施形態に限定される趣旨ではない。従って、実施形態に示されていない構成を付加し、またはこれらの構成を変形した形態とすることができる。例えば、実施形態において、搬送部3におけるブレード33による物体Xの搬送は、下方のガイド部6の表面を転動させつつ物体Xを移動させる構成であるが、ブレード33によって物体Xを拾い上げ、ブレード33に物体Xを乗せて搬送するようにしてもよい。この場合、ガイド部6はブレード33の上方に位置することとなる。
また、駆動部8と従動部9との間には伝達部としてのチェーン90a,90bが懸架されているが、これは、循環移動するための無端縁で構成され、駆動部側のスプロケット81,82と従動部側のスプロケット9a,9bによって噛合させたものである。ブレード33の移動を確実にするためにスプロケットとチェーンで構成したが、これに代えてプーリとベルトによって構成してもよい。ただし、両者間の滑りによる移動の変化を解消するため、ベルトを使用する場合は、歯付ベルトを使用することが好ましい。なお、ベルトを使用する場合、ブレード33は、ベルト表面に直接接着する方法があり得る。
さらに、第2および第3の実施形態においては、第2の回収容器200を閉塞するような装置カバーを設けて、全体を包囲してもよい。この状態を図19に示す。この図に示されるように、装置カバーCは、本体部用のカバーCAと搬送部用のカバーCBとに区分され、搬送部用のカバーCBは、蝶番によって回動可能に装着されるものとなっている。なお、本体部用のカバーCAは、揚上コンベア100を全体的に包囲する構成でもよいが、スクリュ軸110の周囲は円筒カバー130によって包囲されているため、この円筒カバー130を本体部用のカバーCAの一部としてもよい。さらに、本体部用のカバーCAは、第2の回収容器200を同時に包囲するものであるが、スクリュ軸100の上端に設置されるフランジ150の頭頂部はカバーCAから外方に配置し、支持アーム101,102をカバーCAの外方に配置するようにしてもよい。