以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
図1〜図11に示す本発明を適用する発汗量検出プローブ1,1aは、吸気孔11と、吸気孔11から自然空気を吸気して送風するための送風部4と、送風部4の送風する自然空気の温度及び湿度を測定するための第1の温湿度センサ5と、皮膚面SKに着接される開口部12と、送風部4の下流側に設けられており、開口部12に連通して皮膚面SKの汗を放散させると共に、放散した汗及び自然空気を混合させる第1の混合室13と、第1の混合室13内の温度及び湿度を測定するための第2の温湿度センサ7と、第1の混合室13から汗及び自然空気の汗混合空気を排気するための排気孔14と、第1の温湿度センサ5が一方の面に実装されると共に第2の温湿度センサ7が他方の面に実装された基板6とを、筐体カプセル2,52に備えるものである。
開口部12に対向する第1の混合室13の天井部が、基板6で構成されていることが好ましい。吸気孔11、送風部4、基板6、第1の混合室13及び開口部12が直線上に並んで配置されていることが好ましい。基板6の外形が多角形状に形成されており、基板6の少なくとも2辺の横を自然空気が通流するように、送風部4から第1の混合室13に流れる自然空気の流路15,15aが形成されていることが好ましい。第1の温湿度センサ5の上流側にエアーフィルタ3が設けられていることが好ましい。排気孔14の排気能力が、吸気孔11の吸気能力よりも低いことが好ましい。吸気孔11に、先端部が開放端28のエアーチューブ27が接続されていることが好ましい。第1の混合室13内に、排気孔14に繋がる第2の混合室17が設けられていることが好ましい。
発汗量検出プローブ1,1aは、第1の温湿度センサ5及び第2の温湿度センサ7の測定値に基づいて皮膚面SKの発汗量を演算する演算部30を備えることが好ましい。演算部30が、第1の温湿度センサ5と第2の温湿度センサ7との測定の遅延時間に基づいて、第1の温湿度センサ5の測定値を遅延させて発汗量を演算するものであることが好ましい。
以下、具体的に説明する。
図1に、本発明を適用する発汗量検出プローブ1の構成を分解した状態で示す。図2に、発汗量検出プローブ1の側面図を示す。図3に、図2に示した発汗量検出プローブ1のM−M線断面図を示す。図4に、図3に示した発汗量検出プローブ1のN−N線断面図を示す。図5に、発汗量検出プローブ1の使用状態を示す。
図1〜図5に示す発汗量検出プローブ1は、小型の筐体カプセル(筐体ケース)2内に構成部品を一体的に収容するものである。発汗量検出プローブ1は、筐体カプセル2、エアーフィルタ3、送風部4、第1の温湿度センサ5、基板6、第2の温湿度センサ7及びマイクロプロセッサ8(演算部30)を備えると共に、筐体カプセル2に形成された吸気孔11、開口部12、第1の混合室13、排気孔14を備えている。
筐体カプセル2は、上端が閉じられた略筒状(一例として略円筒状)に形成されている。筐体カプセル2は、一例として、上部カプセル2a及び下部カプセル2bに分割して形成されている。上部カプセル2a及び下部カプセル2bは、合成樹脂によって形成されている。下部カプセル2bは、略筒状(この例では略円筒状)に形成されていて、この下部カプセル2bの上部側の蓋になるように、上部カプセル2aが形成されている。
筐体カプセル2(上部カプセル2a)の上部(皮膚面SKと逆側)の中央部には、自然空気の通流する吸気孔11が形成されている。吸気孔11は、筒状の筐体カプセル2の内径(筒のサイズ)よりも小径(小さいサイズ)に形成されている。
筐体カプセル2(下部カプセル2b)の下端(皮膚面SK側)には、皮膚面SK(図5参照)に着接(貼付)される開口部12が形成されている。この開口部12に連通するように、筐体カプセル2の内側が第1の混合室13になっている。第1の混合室13は、皮膚面SKに着接された状態で皮膚面SKの汗を放散させると共に、放散した汗と自然空気とを混合させる空間として形成されたものである。第1の混合室13は、送風部4の下流側に設けられている。筐体カプセル2の皮膚面SKへの貼付は、開口部12の周辺部に例えば両面テープ、接着剤又は粘着剤を付して行う。
開口部12の開口面積は、一例として1cm2で形成されている。皮膚面SKの発汗量の単位をmg/cm2・minで表す場合、開口部12の開口面積が1cm2であれば、発汗量の測定値を面積で除算して換算することなくそのまま使用することができる。
筐体カプセル2(下部カプセル2b)の内壁の中程には、一例として、外形が多角形状(一例として四角形状)の基板6の角部を支持するために窪ませた複数(4つ)の基板支持部41が形成されている。下部カプセル2bの内壁の上部側には、一例として四角形状の送風部4の角部を支持するために窪ませた複数(4つ)の送風部支持部42が形成されている。同図に示すように、基板6と送風部4とは、筐体カプセル2の筒軸方向に45度回転した状態で対面して配置されるように、基板支持部41及び送風部支持部42が形成されている。又、基板6と送風部4とが空間を開けて配置されるように、基板支持部41及び送風部支持部42が形成されている。下部カプセル2bの上端側から、最初に基板6を基板支持部41まで挿入し、次に送風部4を送風部支持部42まで挿入することで、基板6及び送風部4を下部カプセル2bに簡便に取り付けることができる。固定は接着又は螺子等によって行う。
基板6は、第1の混合室13の天井部(開口部12に対向する天井部)を構成している。このように、基板6が第1の混合室13の天井部を兼用することで、筐体カプセル2の材料を少なくすることができるため、発汗量検出プローブ1(筐体カプセル2)を小型化することができる。又、基板6は、第1の温湿度センサ5が一方の面(送風部4側の面)に実装されると共に第2の温湿度センサ7が他方の面(第1の混合室13側の面)に実装されている。このように、第1の温湿度センサ5及び第2の温湿度センサ7を1枚の基板6に実装することで、2枚の基板に分けて実装する場合と比較して、発汗量検出プローブ1を小型化することができる。
下部カプセル2b(筐体カプセル2)の内壁の中程には、第1の混合室13から汗及び自然空気の汗混合空気を外界に排気するための排気孔14が形成されている。排気孔14は、第1の混合室13に連通している。排気孔14が1つ形成されている例を示しているが、設ける数は任意である。
上部カプセル2aの内側には、送風部4の上部側が嵌るように送風部4の外形形状とほぼ同形状の窪み(図3参照)が形成されている。又、上部カプセル2aには、送風部4より上側で吸気孔11に連通する位置に、エアーフィルタ3がちょうど嵌る窪みが形成されている。上部カプセル2aにエアーフィルタ3を挿入しておき、送風部4を嵌め込んだ下部カプセル2bに上部カプセル2aを嵌め込み、上部カプセル2aと下部カプセル2bとを固定することで、発汗量検出プローブ1(筐体カプセル2)を簡便に組み立てることができる。
発汗量検出プローブ1は、吸気孔11、エアーフィルタ3、送風部4、基板6、第1の混合室13及び開口部12が直線的に並んで配置されている。このように配置すると、各構成部材同士の距離を最短に配置できると共に、自然空気の流路を無駄なく最短とすることができるため、発汗量検出プローブ1を小型化することができる。
図4に示すように、基板6の少なくとも2辺の横を自然空気が通流するように、送風部4から第1の混合室13に流れる自然空気の流路15が形成されていることが好ましい。この例のように、基板6の3辺の横に自然空気の流路15が形成されているほうがより好ましい。この例のように、独立する複数の流路15が形成されていることがより好ましい。このように流路15を太く(断面を大きく)したり、流路15の数を多くしたりすると、自然空気の通流抵抗が小さくなる。送風部4から第1の混合室13までの通流抵抗(流路15,15,15の総合の通流抵抗)が小さいと、送風能力の小さな小型の送風部4を使用しても第1の混合室13に自然空気を充分に供給できるため、発汗量検出プローブ1を小型化することができる。
第1の温湿度センサ5よりも上流側にエアーフィルタ3が設けられていることが好ましい。この例のように、送風部4よりも上流側(吸気孔11と送風部4との間)にエアーフィルタ3が設けられている方が、送風部4の送風する自然空気の通流抵抗にならないため、より好ましい。
エアーフィルタ3は、例えば、スポンジ、繊維、紙などで形成された塵埃の流入を阻止するものである。エアーフィルタ3は、塵埃の流入を阻止するためだけに設けられているのではなく、通過する際に吸入した自然空気を拡散し均一化することで測定誤差を少なくして発汗量を正確に測定できるようにする為にも設けられている。その機能については後述する。
送風部4は、例えば、電動のエアーファン、エアーポンプ又はエアーブロワである。送風部4は、吸気孔11から自然空気を吸気して、送風部4の下流側に設けられた第1の混合室13に自然空気を送風する。
第1の温湿度センサ5は、送風部4の送風する自然空気の温度及び湿度を測定するためのものである。前述したように、第1の温湿度センサ5は、基板6の送風部4側の面に実装されている。第1の温湿度センサ5が送風部4に対向(対面)する基板6の位置に配置されていることが好ましい。
第2の温湿度センサ5は、第1の混合室13内の汗混合空気の温度及び湿度を測定するためのものである。前述したように、第2の温湿度センサ7は、基板6の第1の混合室13側の面に実装されている。第2の温湿度センサ5は、良好に混合された汗混合空気が当たるように、第1の混合室13の天井部の中央部に位置するように、基板6に配置されていることが好ましい。吸気孔11、送風部4、第1の温湿度センサ5、第2の温湿度センサ7が直線的に並ぶように配置されていることが好ましい。
第1の温湿度センサ5として、温度センサと湿度センサとが一体的に形成されたものを用いてもよいし、温度センサと湿度センサとが別体で形成されたものを用いてもよい。第2の温湿度センサ7も同様である。
基板6は、プリント配線が両面に形成されたプリント基板である。基板6のいずれかの面には、マイクロプロセッサ8が実装されている。マイクロプロセッサ8には、第1の温湿度センサ5及び第2の温湿度センサ7が接続されている。マイクロプロセッサ8は演算部30として動作する。マイクロプロセッサ8等の電子部品は、湿度の低い送風部4側の基板6の面に実装されていることが好ましい。
基板6には、送風部4が電気配線ケーブル(不図示)で接続されている。マイクロプロセッサ8は、送風部4の動作を制御して、送風部4の吸気する自然空気の流量を制御可能に構成されていることが好ましい。
図5に示すように、発汗量検出プローブ1及び発汗計本体101によって発汗計が構成される。発汗量検出プローブ1は、発汗計本体101に多芯の電線配線であるケーブル110を介して接続されて使用される。発汗量検出プローブ1に、ケーブル110を着脱可能に接続するためのコネクタ(不図示)が設けられていてもよい。発汗計本体101には、複数の発汗量検出プローブ1を接続することができる。
発汗量検出プローブ1は、測定した発汗量を、ケーブル110を介して発汗計本体101に出力する。又、発汗量検出プローブ1は、発汗計本体101からケーブル110を介して動作用の電力の供給を受けて動作する。又、発汗量検出プローブ1は、ケーブル110を介して設定用のコンピュータ121との接続が可能であり、マイクロプロセッサ8の動作用プログラムや各種動作用のパラメータ等の更新・設定等が可能に構成されている。
発汗計本体101は、一例として、表示部102、電源部103、及び無線通信部104を備えている。発汗計本体101は、発汗量検出プローブ1が測定した発汗量を、表示部102に表示する。又、発汗計本体101は、発汗量検出プローブ1が測定した発汗量を、有線又は無線通信部104を介して無線で、外部のコンピュータ121等の外部機器に出力することが可能である。無線通信部104は、例えば無線LAN、Bluetooth(登録商標)などデータ通信用の公知の無線通信機器である。なお、発汗量検出プローブ1が小型液晶画面等の表示部102を備えて、発汗量などを表示するようにしてもよい。又、発汗量検出プローブ1が無線通信部104を備えて、発汗量検出プローブ1から外部機器に発汗量を無線で直接出力するようにしてもよい。又、発汗量検出プローブ1が外部機器接続用のコネクタを備えて、発汗量検出プローブ1から外部機器に発汗量を有線で直接出力するようにしてもよい。
電源部103は、発汗量検出プローブ1の各部(送風部4、基板6の実装部品等)の動作用の電力を供給するものである。電源部103は、商用交流電源(例えば商用交流100V)を直流電圧に変換する回路であってもよいし、電池であってもよい。なお、電源部103として、発汗量検出プローブ1に非接触(ワイヤレス)で電力を供給する公知の非接触型の電力供給装置を用いてもよい。この場合、発汗量検出プローブ1には、対応する非接触型の公知の受電装置を備えればよい。又、発汗量検出プローブ1が、一次電池、二次電池、太陽電池を備えてもよい。発汗量検出プローブ1に何を内蔵するかは、小型化の観点等から適宜検討すればよい。
図5に、発汗量検出プローブ1が動作したときの自然空気の流路を太線矢印及び太い破線矢印で示す。送風部4が作動すると、自然空気が吸気孔11から吸気されて、エアーフィルタ3、送風部4、流路15,15,15(図4参照)を通り第1の混合室13に送風される。太い破線矢印は、基板6の紙面の裏面側の流路15を通る自然空気を表している。第1の混合室13内で汗と自然空気とが混合される。この汗混合空気は、排気孔14から外部に排気される。
第1の混合室13に送風された自然空気は、開口部12の皮膚面SK上を通って皮膚面SKから放散される汗と一緒になる。第1の混合室13に複数の流路15,15,15から互いにぶつかる向きで自然空気が流入すると、自然空気同士がぶつかって渦等の乱流が生じるため、汗と自然空気とを良好に混合することができる。したがって、第1の混合室13を小さく形成できるため、発汗量検出プローブ1(筐体カプセル2)を小型化することができる。
排気孔14の排気能力は、吸気孔11の吸気能力よりも低いことが好ましい。仮に、排気孔14の排気能力の方が吸気孔11の吸気能力よりも高い場合には、自然空気(汗混合空気)が早く外界に排気されてしまい汗混合空気に含まれる汗の量が少なくなる。一方、排気孔14の排気能力の方が吸気孔11の吸気能力よりも低い場合には、自然空気が第1の混合室13内に可及的に長い時間留まって汗混合空気に含まれる汗の量が多くなる。汗の量が多い方が汗を精度よく検出しやすいため、発汗量を正確に測定することができる。
吸気した自然空気の温度及び湿度が、第1の温湿度センサ5によって測定される。第1の混合室13内の汗混合空気の温度及び湿度が、第2の温湿度センサ7によって測定される。
図6に、発汗量検出プローブ1の電気的な信号処理のブロック図を示す。発汗量検出プローブ1は、第1の温湿度センサ5及び第2の温湿度センサ7の測定値に基づいて皮膚面SKの発汗量を演算する演算部30を備えている。演算部30は、第1の温湿度センサ5と第2の温湿度センサ7との測定の遅延時間に基づいて、第1の温湿度センサ5の測定値を遅延させて発汗量を演算するものである。
第1の温湿度センサ5は、第1の温度センサ21a及び第1の湿度センサ22aから構成されている。第2の温湿度センサ7は、第2の温度センサ21b及び第2の湿度センサ22bから構成されている。演算部30は、第1の絶対湿度演算回路31a、第2の絶対湿度演算回路31b、遅延回路32、及び差動増幅器33によって構成されている。演算部30は、一例として、マイクロプロセッサ8によるディジタル信号処理で演算可能に構成されている。
第1の温度センサ21aによって測定された温度、及び第1の湿度センサ22aによって測定された湿度は、各々A/D変換されて第1の絶対湿度演算回路31aに入力され、自然空気の絶対湿度(第1の絶対湿度検知信号S1)が算出される。第1の絶対湿度演算回路31aから出力される第1の絶対湿度検知信号S1は、遅延回路32によって所定の遅延時間だけ遅延されて、差動増幅器33の反転入力端子(−)に入力される。この遅延時間については、後に詳述する。
第2の温度センサ21bによって測定された温度、及び第2の湿度センサ22bによって測定された湿度は、各々A/D変換されて第2の絶対湿度演算回路31bに入力され、汗と自然空気との汗混合空気の絶対湿度(第2の絶対湿度検知信号S2)が算出される。第2の絶対湿度演算回路31bから出力される第2の絶対湿度検知信号S2は、差動増幅器33の非反転入力端子(+)に入力される。差動増幅器33は、自然空気の絶対湿度(第1の絶対湿度検知信号S1)と汗混合空気の絶対湿度(第2の絶対湿度検知信号S2)との差を演算して、皮膚面SKの発汗量を出力する。差動増幅器33(マイクロプロセッサ8)は、皮膚面SKの発汗量を、例えばmg/cm2・minの単位で表すように演算して出力する。
次に、発汗量検出プローブ1の動作について説明する。
[自然空気の流量及び遅延時間の設定]
測定を行う前に、予め、送風部4の送風する自然空気の流量(誘導流量)を設定し、次にマイクロプロセッサ8に内設の遅延回路32に対して第1の絶対湿度検知信号S1と第2の絶対湿度検知信号S2(図6参照)との立ち上がり時点を一致させるように遅延時間の設定を行う。これら設定は、発汗計本体101又は発汗量検出プローブ1にコンピュータ121(図5参照)を接続して、マイクロプロセッサ8又はその周辺回路に動作用パラメータを記録することで行う。
これらの流量及び遅延時間の設定調整は、発汗量検出プローブ1の製造時や出荷前調整時に行ってもよいし、実際の測定前に行ってもよい。適正な流量及び遅延時間が決まったら、同種の発汗量検出プローブ1に対し固定値として製造時に記録するようにしてもよい。
自然空気の流量(流速)は、送風部4を作動させ、第1の温湿度センサ5(第1の温度センサ21a及び第1の湿度センサ22a)、第2の温湿度センサ7(第2の温度センサ21b及び第2の湿度センサ22b)が温度及び湿度を良好に測定可能な流量に適宜設定すればよい。
図7に、遅延時間について説明する説明図を示す。同図中、(a)は第1の温度センサ21aの検出する温度波形、(b)は第1の湿度センサ22aの検出する湿度波形、(c)は第1の絶対湿度検知信号S1の波形、(d)は第2の温度センサ21bの検出する温度波形、(e)は第2の湿度センサ22bの検出する湿度波形、(f)は第2の絶対湿度検知信号S2の波形を示している。なお、同図は、発汗量検出プローブ1にエアーフィルタ3を装着していない場合の例を示している。
同図は、例えば発汗量検出プローブ1に人が息を吹きかけたときのように、発汗量検出プローブ1の周囲の自然空気の温度及び湿度が急激に変化した場合の各部の波形を模式的に示したものである。
例えば発汗量検出プローブ1に人が息を吹きかけると、息は自然空気よりも温度及び湿度が高いため、同図(a)〜(c)に示すように、第1の温度センサ21a、第1の湿度センサ22a、第1の絶対湿度検知信号S1の波形が上昇する。各波形の立ち上がりピークは時刻Aになる。この息が発汗量検出プローブ1内を通って第2の温度センサ21b、第2の湿度センサ22bの位置まで流れて測定されるまで多少時間が掛かる。そのため、同図(d)〜(f)に示すように、第2の温度センサ21b、第2の湿度センサ22b、第2の絶対湿度検知信号S2の各波形の立ち上がりピークは時刻Bになる。測定時刻Aと測定時刻Bとの時間差が遅延時間Dである。このように、発汗量検出プローブ1内を流れる自然空気の第1の温湿度センサ5から第2の温湿度センサ7までの時間差に起因して遅延時間Dが発生する。
そこで、図6に示したように、演算部30に遅延回路32を備えて、第1の絶対湿度検知信号S1を遅延回路32で遅延時間Dの分だけ遅延させて発汗量を演算することで、第1の絶対湿度検知信号S1に対する第2の絶対湿度検知信号S2の遅延を解消でき、測定誤差なく発汗量を正確に演算することができる。
遅延時間Dは、例えば、図7に示したように、第1の温度センサ21a、第1の湿度センサ22a、第1の絶対湿度検知信号S1、第2の温度センサ21b、第2の湿度センサ22b、第2の絶対湿度検知信号S2の各部の波形をコンピュータ121等でモニタリングしながら、発汗量検出プローブ1に息等を吹きかけて測定すればよい。このとき、開口部12は漏気の無いようにテープ等で閉口させておく。
特許文献1に示した従来の発汗計では、発汗計本体とプローブ(カプセル)とが長いフレキシブルパイプで接続されており、発汗計本体から自然空気が供給されていた。プローブに息を吹きかけるような状況はあっても、発汗計本体に息を吹きかけるような状況はあまり無かった。又、発汗計本体はプローブよりも大きくて、発汗計本体の吸気孔からコンプレッサまでの空気流路の長さや、コンプレッサから温湿度センサの設けられたタンクまでの空気流路の長さはある程度の長さで形成されていて、タンクも広く形成されていた。そのため、発汗計本体に息を吹きかけても、空気流路やタンク内で息が拡散するため、息の温度や湿度が発汗計本体で測定されることはほぼ無かった。しかしながら、本発明の発汗量検出プローブ1は小型のものであり、発汗量検出プローブ1自体が吸気するため、息を吹きかけるような周囲環境が急激に変化する状況があり得るため、遅延時間Dの影響を考慮する必要性が生じた。
なお、自然空気の流量(流速)により、第1の温湿度センサ5及び第2の温湿度センサ7の測定時刻の時間差(遅延時間)が変化するため、流量を変化させたときには、遅延時間Dも変化させる必要がある。
第1の温湿度センサ5の上流に、エアーフィルタ3を設けることで、例えば息等による周囲の自然空気の急激な温湿度変動の影響を緩和することができる。エアーフィルタ3を設けると、図7に示した各波形のピーク値は小さくなる。その理由は、エアーフィルタ3を通るときに息等が拡散するので、自然空気が均一化するためと考察される。エアーフィルタ3として、息等が拡散しやすいように、容積の大きなものや、通気抵抗(圧力損失)の大きなものを用いることが好ましい。ただし、エアーフィルタ3の大きさと小型化とはトレードオフの関係にあり、又、通気抵抗と自然空気の流量とはトレードオフの関係になるため、適度なものを用いればよい。
[発汗量の測定]
発汗量は次のように測定する。先ず、表示部102のゼロ点調整をする。この場合、開口部12を漏気の無いようにテープ等で閉口した状態で、送風部4を駆動させて自然空気を一定流量で誘導(誘導自然空気)する。そして、図示していないゼロ点調節スイッチを押して、第1の絶対湿度検知信号S1と第2の絶対湿度検知信号S2とのレベルの差分をゼロに調整する。これで、表示部102に発汗量がゼロ表示される。
上記のゼロ点調整により表示部102のモニタで発汗量がゼロになっていることを確認後、例えば図5に示したように、発汗量検出プローブ1を皮膚面SKに着接する。第1の混合室13内において、自然空気と皮膚面SKからの発汗とが混合される。前述したように、排気孔14の排気能力を小さくし、かつ、3方向の流路15,15,15が設けられていることで、汗の濃度を高めると共に自然空気に渦等の乱流を生じさせて、汗と自然空気とを良好に混合することができる。
第1の温度センサ21a及び第1の湿度センサ22aによって自然空気の温湿度が測定され、第2の温度センサ21b及び第2の湿度センサ22bによって汗混合空気の温湿度が測定される。これらが演算部30(図6参照)で発汗量に演算される。
発汗量検出プローブ1の周囲の自然空気の温湿度が息等で急激に変動した場合、エアーフィルタ3でその影響が緩和される。又、演算部30が第1の絶対湿度検知信号S1を遅延時間Dだけ遅延させる遅延回路32を備えているため、第1の絶対湿度検知信号S1と第2の絶対湿度検知信号S2との立ち上がり時点が一致することから自然空気の流れる時間差に起因する誤差が生じず、正確な測定値を得ることができる。
マイクロプロセッサ8は、皮膚面SKの発汗量をmg/cm2・minの単位に演算・計測して出力する。この発汗量は、発汗計本体101に出力される。
発汗計本体101は、表示部102に皮膚面SKの発汗量をアナログ又はディジタル表示するとともに発汗量計測信号を有線又は無線で出力する。
なお、図5の発汗計本体101内に破線で示すように、発汗計本体101が演算部30を備えて、発汗量検出プローブ1及び発汗計本体101によって発汗計を構成してもよい。この場合、発汗量検出プローブ1は、第1の温湿度センサ5(第1の温度センサ21a、第1の湿度センサ22a)、第2の温湿度センサ7(第2の温度センサ21b、第2の湿度センサ22b)の測定値を発汗計本体101に出力する。発汗計本体101の演算部30は、発汗量検出プローブ1から出力される第1の温湿度センサ5及び第2の温湿度センサ7の測定値に基づいて皮膚面SKの発汗量を演算する。演算部30は、第1の温湿度センサ5と第2の温湿度センサ7との測定の遅延時間Dに基づいて、第1の温湿度センサ5の測定値を遅延させて発汗量を演算すればよい。
図8に示すように、発汗量検出プローブ1の吸気孔11に、先端部28が開放端のエアーチューブ27を接続するようにしてもよい。エアーチューブ27は、エアーが内部を通る中空のフレキシブルパイプ又は硬質パイプである。
エアーチューブ27は、その先端部28を例えば衣服201から外界側に突き出して、衣服201よりも外界側の自然空気を吸気するためのものである。先端部28を衣服201よりも外界側に出せればよいので、エアーチューブ27の長さは、例えば20mm〜300mm程度に形成されている。
同図に示す発汗量検出プローブ1は、衣服201を着用した皮膚面SKに着接されている。衣服201と皮膚面SKとの間の衣服内空間203は、皮膚面SKから汗が放散されるため、湿度が高く、場合によっては湿度100%(飽和水蒸気量)に達することがある。湿度100%になると、それ以上の水分を含むことはできない。
発汗量検出プローブ1にエアーチューブ27を接続しない場合、発汗量検出プローブ1は吸気孔11から衣服内空間203の自然空気を吸気する。衣服内空間203の湿度が飽和状態に近いと、発汗量検出プローブ1が吸気した自然空気に汗を含ませることが出来なくなるため、発汗量の測定が出来なくなる。
吸気孔11にエアーチューブ27を接続することで、衣服201よりも外界側の湿度の低い自然空気を吸気することができるので、衣服201を着用して発汗量が多い場合であっても、発汗量を正確に測定することができる。又、衣服201を着用しない場合であっても、皮膚面SKの発汗量が多く、被測定者が静止している状態では、皮膚面SK付近の湿度が高くなる。このようなときにも、エアーチューブ27を接続して皮膚面SKから離れた位置から自然空気を吸気することで、発汗量を正確に測定することができる。
図9〜図11に、本発明を適用する別の発汗量検出プローブ1aを示す。図9に、発汗量検出プローブ1aの縦断面図を示す。図10に、図9に示した発汗量検出プローブ1aのY−Y線断面図を示す。図11に、発汗量検出プローブ1aの自然空気の流路を示す。なお、既に説明した構成については同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。
発汗量検出プローブ1aは、第1の混合室13内に、排気孔14に繋がる第2の混合室17が設けられているものである。
発汗量検出プローブ1aは、筐体カプセル(筐体ケース)52、内部カプセル53、送風部4、エアーフィルタ3、第1の温湿度センサ5(第1の温度センサ21a及び第1の湿度センサ22a)、基板6、第2の温湿度センサ7(第2の温度センサ21b及び第2の湿度センサ22b)、マイクロプロセッサ8、吸気孔11、開口部12、内口部55、第1の混合室13、第2の混合室17、排気パイプ58及び排気孔14を一体的に備えている。
筐体カプセル52は、皮膚面SKに着接(貼付)されるものであり、略筒状(一例として円筒状)に形成されている。筐体カプセル52は、上部側に吸気孔11が形成され、皮膚面SKに着接される側(図の下端側)の筒端に開口部12が形成されている。この開口部12に連通するように、筐体カプセル2の内側が第1の混合室13になっている。第1の混合室13は、皮膚面SKに着接された状態で皮膚面SKの汗を放散させると共に、放散した汗と吸気した自然空気とを混合させる空間として形成されたものである。
筐体カプセル52の内側には、筒状の内部カプセル53が形成されている。内部カプセル53は、筐体カプセル52と同心(同軸)で形成されている。内部カプセル53は、開口部12の上空に位置するように形成されている。内部カプセル53の皮膚面SK側の筒端に開口する内口部55が形成されている。
内部カプセル53内が第2の混合室17になっている。第2の混合室17は、汗と自然空気とをより一層混合させるための空間である。開口部12に対向する第1の混合室13及び第2の混合室17の共通の天井部が、基板6で形成されている。基板6には、上面側(送風部4側)に、第1の温湿度センサ5が実装されており、下面側(第2の混合室側)に、第2の温湿度センサ7が実装されている。又、基板6には、マイクロプロセッサ8が実装されている。
図10に示すように、筒状の筐体カプセル52の内壁と内部カプセル53の外壁との間に空間(隙間)が形成され、この空間が自然空気の流路15aになっている。図10に、基板6の位置を仮想的に破線で示す。基板6の4辺の横を自然空気が通るように、流路15aが形成されている。又、2本の排気パイプ58,58で分断されるため、2つの流路15a,15aが形成されている。流路15a,15aは比較的断面積を広く形成できるため、自然空気の通流抵抗を小さくできる。このため、小型の送風部4を使用することができ、発汗量検出プローブ1aを小型化することができる。
筐体カプセル52の側面には、排気孔14が形成されている。内部カプセル53の第2の混合室17から排気孔14に連通する排気パイプ58が設けられている。この例では、2組の排気孔14及び排気パイプ58を設けた例を示しているが、設ける数は任意である。2つの排気孔14,14の排気能力を、吸気孔11の吸気能力よりも小さく形成することが好ましい。
筐体カプセル52、内部カプセル53及び排気パイプ58は、例えば合成樹脂で形成されている。筐体カプセル52は、エアーフィルタ3、送風部4及び基板6等を取り付けられるように、適宜分割して形成されている。
筐体カプセル52の内部には、吸気孔11の下流に位置するように、送風部4、エアーフィルタ3がこの順で配置されている。送風部4とエアーフィルタ3とを逆の順で配置してもよい。
吸気孔11、送風部4、エアーフィルタ3、基板6、第1の混合室13、第2の混合室17、開口部12が直線的に並んで配置されているため、各部材間の距離が小さくなり、全体的に小型化することができる。
図11に、発汗量検出プローブ1aが動作したときの自然空気の流路を太線矢印で示す。送風部4が作動すると、自然空気は、吸気孔11、送風部4、エアーフィルタ3、第1の温湿度センサ5、流路15a,15a、第1の混合室13、第2の混合室17、第2の温湿度センサ7、排気パイプ58、排気孔14の流路で流れる。第1混合室13の内部に第2の混合室を設けたことで、汗混合空気の流路が長くなると共に、流路が折れ曲がるため、汗と自然空気を良好に混合することができる。又、複数の流路15a,15aを通った自然空気が、第1の混合室13でぶつかって空気の渦等の乱流が生じるため、汗と自然空気を良好に混合することができる。良好に混合された汗混合空気の温度及び湿度が、第2の温湿度センサ7によって測定される。このため、発汗量を正確に測定することができる。
第1混合室13の内部に第2の混合室が設けられているので、汗混合空気の流路を長くしたにもかかわらず、発汗量検出プローブ1aを小型に形成することができる。
なお、発汗量検出プローブ1,1aでは、基板6が第1の混合室13の天井部を構成する位置に配置された例を示したが、第1の温湿度センサ5が自然空気に当たり、第2の温湿度センサ7が汗混合空気に当たる位置であれば、任意の位置に配置することができる。例えば、第1の温湿度センサ5が流路15,15a側に表出するように、第1の混合室13の側壁を構成するように基板6を配置してもよい。又、吸気孔11、送風部4、エアーフィルタ3、基板6、第1の混合室13、(第2の混合室17)、開口部12が直線上に配置された例を示したが、いずれかを直線上から外れる位置に配置してもよい。
以上の説明から明らかなように、本発明の発汗量検出プローブ1,1aは、小型、かつ軽量に構成でき、野外スポーツ、様々な作業中、通勤や、オフィスでの仕事中における発汗量の正確な測定が可能で使用者の行動を妨げない。又、複数の発汗量検出プローブ1,1aを皮膚に貼付することで、多点の発汗部位差を計測することもできる。