JP6560946B2 - 解剖台 - Google Patents

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本発明は、解剖台に関し、特に開頭作業に適した解剖台に関する。
従来から、各種構成の解剖台が知られているが、被剖検体に対する開頭作業を行わない場合には、上面が開放された筐体状の本体と、本体の開放上面を覆うように設けた被剖検体を載置する臨床板と、臨床板から落下した汚液を排出する排水機構と、臨床板上方の空気を吸引、排気する吸排気装置を備える構成が一般的である(特許文献1)。
しかしながら、開頭作業を行う解剖台では、上述の構成に加え、被剖検体の頭部を支持するために、本体の長手方向一端外側に設けたヘッドレストが必要となる。すなわち、前記ヘッドレストを備えていないと、臨床板上に被剖検体の頭部を直接載置することになるので、被剖検体を回転させながらその頭部の開頭作業を行わなければならず、極めて効率が悪く、困難な作業になるからである。また、前記ヘッドレストを本体の長手方向一端外側に設けるのは、被剖検体の頭部をヘッドレストで支持したときに、頭部を本体外に突出させることで、頭部の全周囲方向から切断具を操作可能にし、開頭作業を容易になし得るようにするためである。
特許第3343216号公報
しかし、上述した従来の構成では、被剖検体の頭部をヘッドレストで支持すると、頭部が本体外に突出した状態となるので、開頭作業時に飛散する微粉塵や細菌を、本体に設けた吸排気装置によって吸引することができず、解剖室内に微粉塵や細菌が飛散し、空気が汚染されるという問題があった。本発明は、この問題を解消し、開頭作業に適した解剖台を提供することを目的とする。
この目的を達成するため本発明の請求項1に係る解剖台は、上面が開放された筐体状の本体と、本体の開放上面を覆うように配置した被剖検体を載置する通気及び通水可能な複数枚の臨床板と、これら臨床板から落下した汚液等の液体を本体外に排出する排水機構と、臨床板上方の空気を前記本体内に吸引したうえ、浄化して前記本体外に排気する吸排気装置とを備えた解剖台において、前記臨床板の少なくとも本体長手方向一端側の一枚は取り外し可能にとし、この本体長手方向一端側の取り外し可能な臨床板に隣接する所定枚の臨床板を一体化し、この一体化した臨床板は、前記取り外し可能な臨床板に隣接する端部とは反対側の端部で揺動可能に支持するとともに、昇降装置に連係して水平状態と傾斜状態に設定可能とし、前記隣接する端部の下面側にはヘッドレスト支持部を設けたものである。
この構成によれば、次の作用を奏する。第1に、複数の臨床板のうち一端側の一枚を取り外して、一体化した臨床板における露出したヘッドレスト支持部にヘッドレストを支持し、被剖検体をその頭部を前記ヘッドレストで支持して臨床板上に載置し、一体化した臨床板のヘッドレスト端を上昇させ、被剖検体を上半身傾斜状態として、被剖検体の頭部を開頭することができる。この時、被剖検体の頭部は傾斜状態の最上位に位置し、頭部下方に対応すべき臨床板は取り外されて、前記頭部の周囲には切断具を操作する十分な空間が確保される。第2に、前記頭部は、臨床板が取り外されてなる開口部分の上方に位置するので、開頭作業時に生じる微粉塵や細菌は、吸排気装置によって前記開口部分から本体内に吸引される。
また、本発明の請求項2に係る解剖台は、前記請求項1の構成において、前記一体化した臨床板は、取り外し可能な臨床板に隣接する複数の臨床板をその下面に枠体を固定して一体化してなり、前記枠体の前記取り外し可能な臨床板側の端部には前記ヘッドレスト支持部を設ける一方、前記昇降装置はリニアジャッキで構成し、リニアジャッキのスクリュー軸を、前記枠体の長手方向中央よりも前記ヘッドレスト支持部側に連係したものである。
この構成によれば、前記請求項1記載の解剖台の作用に加えて、一体化した複数の臨床板に上半身が対応するよう被剖検体を各臨床板上に載置し、リニアジャッキによって、前記一体化した臨床板の下面に固定した枠体の中央よりもヘッドレスト支持部側を昇降することで、前記被剖検体の頭部をヘッドレストで支持した一体化した臨床板を傾斜状態とし、あるいは水平状態に設定しうるという作用を奏する。
本発明の請求項1に係る解剖台によれば、被剖検体の開頭作業が容易であり、また、開頭作業時に生じる微粉塵や細菌を吸引して飛散を防止できるので、解剖室内の空気が汚染されることがないという効果を奏する。また、本発明の請求項2に係る解剖台によれば、前記効果に加えて、被剖検体の頭部をヘッドレストで支持した一体化した臨床板の傾斜状態と水平状態を、容易かつ確実に実現し、開頭作業の準備を迅速になしうるという効果を奏する。
解剖台全体を示す概略的な平面図。 同じく正面図。 同じく一体化した臨床板の傾斜状態を示す正面図。 一体化した臨床板の水平状態を示す部分断面拡大正面図。 一体化した臨床板の傾斜状態を示す部分断面拡大正面図。
以下、本発明の好適な一実施形態を添付図面に基づき説明する。図1及び図2に示すように、解剖台1は、上面が開放された筐体状の本体2を備え、この本体2は上部枠2aとスカート枠2bと下部枠2cとからなるとともに、臨床台3と流し台4を有している。前記上部枠2aは、図示していない油圧式昇降装置に連係して、前記スカート枠2bとともに前記下部本体2bに対して水平状態で昇降可能に構成し、また、前記昇降装置をオンオフ動作して前記上部枠2aを昇降動する、同じく図示していないフットスイッチを設けている。
また、臨床台3に対応する上部枠2aに設けた液溜槽5の上縁段部(図示せず)に、遺体等の被剖検体(図示せず)を載置する6枚の臨床板6a,6b,6c,6d,6e,6fを支持している。これら各臨床板6a,6b,6c,6d,6e,6fには、前記液溜槽5の周縁に沿って前記上縁段部の内側に位置する部分に、上方の空気を通過させるとともに、臨床板6a,6b,6c,6d,6e,6f上の被剖検体から出た汚液等の液体を前記液溜槽5に落下させて、通気及び通水可能とするための通過孔7を多数透設している。
液溜槽5の下面には、液溜槽5内の液体を排出するためのフレキシブルで伸縮可能な排水パイプ8の一端を連結している。この排水パイプ8他端は、図示していない運搬可能な汚液タンクに連結されている。また、前記液溜槽5の長手方向流し台4側の側面の所定高さ位置には、ドレインパイプ9の一端を連結し、前記ドレインパイプ9の他端は前記排水パイプ8に連結している。
上部枠2aには、液溜槽5の側面と底面及び流し台4のシンク4aの側面と底面を囲むようにして排気槽10を設けている。この排気槽10は、前記液溜槽5の四側面上部に設けた多数の吸気孔(図示せず)を介して,前記液溜槽5の内部と連通している。前記排気槽10の底面には、前記吸気孔を通って進入した液体を排出するフレキシブルで伸縮可能な排出パイプ11を設けるとともに、吸気した空気が通過する同じくフレキシブルで伸縮可能な排気ダクト12を設けている。前記排出パイプ11は上述の汚液タンクに連結されている。また、前記排気ダクト12は、その上面開口部は液体が流入しないように前記底面から突出するとともに、適宜間隔をおいてカバー13で覆われる一方、図示していないフィルターを付設した排気用ブロワーに連結されている。そして、下部枠2cには、前記排気ダクト12を通過して前記フィルターで浄化した空気を排気する、図示していない排気口を設けている。
なお、上述した排水パイプ8と、排出パイプ11と、ドレインパイプ9と、汚液タンクとによって排水機構を構成する。また、上述した吸気口に連通する排気ダクト12と、排気口に連通するフィルターを付設した排気用ブロワーとによって吸排気装置を構成する。また、流し台4のシンク4aの底面には、フレキシブルで伸縮可能な排水パイプ21の一端を連結し、この排水パイプ21の他端は前記排水パイプ8に連結している。
上部枠2aの臨床台3と流し台4との間の上面には、水と湯を切り替え、あるいは混合して供給可能な混合栓14を設け、臨床台3の混合栓14とは反対側端の外側面には筒状のヘッドレスト支持部15を設けている。このヘッドレスト支持部15には、円弧状の支持体16aと棒状の固定脚16bからなるヘッドレスト16の前記固定脚16bを挿入して、固定ネジ17によって締め付け固定している。
各臨床板6a,6b,6c,6d,6e,6fは、臨床板6b,6cを除いて取り外し可能に支持している。図3〜図5に示すように、臨床板6cと臨床板6dの隣接端同士は若干の間隔をおいて位置し、前記臨床板6b,6cの下面には枠体18を固定して一体化している。この枠体18は前記一体化した臨床板6b,6cの周縁に対応する四角枠と前記臨床板6b,6cの幅方向中央に対応して伸びる補強部材(図示せず)からなり、前記枠体18の臨床板6a側端には幅方向中央に筒状のヘッドレスト支持部19を設けている。このヘッドレスト支持部19には、固定ネジ20が取り付けられている。
また、図4及び図5に示すように、枠体18の臨床板6d側端部は、支持部材22を介して支持軸23に支持され、前記支持軸23は、液溜槽5の底面を形成する底板5aに固定された固定台24に設けた軸受け25に回転可能に支持されている。これによって、各臨床板6c,6dは前記支持軸23を支点として枠体18とともに揺動可能である。
底板5aの下方に対応する排気槽10内には、昇降装置たるリニアジャッキのギヤケース26を、前記排気槽10の幅方向に延びる図示していない横架部材に固定している。前記ギヤケース26には液溜槽5の底板5aを気密状態で貫通するガイド管27の下端を固定している。前記ギヤケース26を挿通して昇降可能なスクリュー軸28は、前記ガイド管27に案内されて液溜槽5内に突出し、先端に設けたローラー29を介して枠体18の補強部材の長手方向中央よりもヘッドレスト支持部19側に当接している。
図示していないが、スクリュー軸28は、適宜な回転駆動源に連係された入力軸の回転駆動力がウォームギヤ、ウォームホイルを介して伝達され、前記入力軸の回転方向に応じて昇降するものである。また、排気槽10内には、スクリュー軸28の下端に固定した突起30を検出してリニアジャッキをオフ状態にする上限リミットスイッチ31と、下限リミットスイッチ32を配置し、これによってスクリュー軸28の昇降範囲を規制している。なお、図2及び図3における33,34は前記回転駆動源をオン操作して前記スクリュー軸28を昇降するためのフットスイッチであり、フットスイッチ33は上昇用、フットスイッチ34は下降用である。
続いて、本実施形態における解剖台1の使用方法を説明するが、開頭作業を行わない場合には、従来の一般的な解剖台の使用と何ら異なるところがないので、その説明は省略する。開頭作業を行う場合には、まず、臨床板6aを取り外し、露出したヘッドレスト支持部19に、ヘッドレスト支持部15から固定ネジ17を緩めて抜き取ったヘッドレスト16の固定脚16bを挿入し、固定ネジ20を締め付けて、前記ヘッドレスト16を固定する(図4参照)。
次いで、被剖検体を、その頭部をヘッドレスト16の支持体16aで支持した状態で各臨床板6b,6c,6d,6e,6f上に載置する。そして、フットスイッチ33を踏み込んでスクリュー軸28を上昇させ、臨床板6b,6cを枠体18とともに傾斜状態とし、被剖検体の頭部を開頭作業がやり易い位置で前記フットスイッチ33への踏み込みを解除して停止させて(図5参照)、開頭作業を行う。そして、開頭作業が終了した後は、フットスイッチ34を踏み込んで臨床板6b,6cを枠体18とともに水平状態に戻すものである。
開頭作業時である図5図示状態においては、被剖検体の頭部の周囲には切断具を操作する十分な空間があるとともに、頭部も所望の高さ位置にあるので、開頭作業を容易かつ確実に行うことができる。開頭作業で生じる微粉塵や細菌は吸排気装置により、液溜槽5から排気槽10に導かれて排気ダクト12に吸い込まれ、フィルターで浄化された後、本体2外部に排出される。また、汚液等の液体は前記液溜槽5から排水パイプ8を介して汚液タンク内に収容される。そして、前記汚液タンク内の収容量が所定量に達すると、前記汚液タンクは本体2内から取り出されて新たな汚液タンクと交換される一方、汚液タンク内の液体は別途設けた適宜な処理設備で処理される。
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、例えば、傾斜される臨床板6b,6cは二枚に限らず、臨床板6b,6c,6d,6e,6fの大きさに応じて決定されるものであり、複数枚のほか一枚でもよい。また、昇降装置はリニアジャッキのほか、油圧シリンダなどを用いることもできる。さらに、ヘッドレスト支持部15,19及びヘッドレスト16の構成は、上述のものに限定されず、加えて、ヘッドレスト支持部15は設けなくてもよい。このヘッドレスト支持部15を設けない場合には、ヘッドレスト16は、適所に保管すればよいものである。またさらに、各臨床板6a,6b,6c,6d,6e,6fに設ける通過孔7は、周縁部分だけでなく、全面的に設けてもよい。さらにまた、流し台4は設けなくてもよいし、別体として設けて隣接配置してもよい。
1 解剖台
2 本体
2a 上部枠
2b スカート枠
2c 下部枠
3 臨床台
4 流し台
4a シンク
5 液溜槽
6a,6b,6c,6d,6e,6f 臨床板
7 通過孔
8 排水パイプ
9 ドレインパイプ
10 排気槽
11 排出パイプ
12 排気ダクト
13 カバー
14 混合栓
15,19 ヘッドレスト支持部
16 ヘッドレスト
16a 支持体
16b 固定脚
17,20 固定ネジ
18 枠体
21 排水パイプ
22 支持部材
23 支持軸
24 固定台
25 軸受け
26 ギヤケース
27 ガイド管
28 スクリュー軸
29 ローラー
30 突起
31,32 リミットスイッチ
33,34 フットスイッチ

Claims (2)

  1. 上面が開放された筐体状の本体と、この本体の開放上面を覆うように配置した被剖検体を載置する通気及び通水可能な複数枚の臨床板と、これら臨床板から落下した汚液等の液体を本体外に排出する排水機構と、臨床板上方の空気を前記本体内に吸引したうえ、浄化して本体外に排気する吸排気装置とを備えた解剖台において、前記臨床板の少なくとも本体長手方向一端側の一枚は取り外し可能とし、この本体長手方向一端側の取り外し可能な臨床板に隣接する所定枚の臨床板を一体化し、この一体化した臨床板は、前記取り外し可能な臨床板に隣接する端部とは反対側の端部で揺動可能に支持するとともに、昇降装置に連係して水平状態と傾斜状態に設定可能とし、前記隣接する端部の下面側にはヘッドレスト支持部を設けたことを特徴とする解剖台。
  2. 前記一体化した臨床板は、前記取り外し可能な臨床板に隣接する複数の臨床板をその下面に枠体を固定して一体化してなり、前記枠体の前記取り外し可能な臨床板側の端部には前記ヘッドレスト支持部を設ける一方、前記昇降装置はリニアジャッキで構成して、リニアジャッキのスクリュー軸を前記枠体の長手方向中央よりも前記ヘッドレスト支持部側に連係してなることを特徴とする請求項1記載の解剖台。
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