前述した特許文献1に記載された座席装置では、前記連動機構の構成部品(リンク部材とその固定部材)と、前記座部の後端側の可変機構の構成部品(ブロックとローラ部材)とを別々に備えていた。そのため、快適な姿勢を実現できる一方で、部品点数が多く構成が複雑となり、組付工数が増大し、コストアップの要因となっていた。また、構造が複雑になることで、背凭れと座部との連動動作が不安定になる虞もあった。
特に、座部の後端には荷重が集中しやすいにも拘わらず、座部の後端はリンク部材の一端側の長孔にピンを介して枢支されていた。そのため、長孔に対するピンの遊びが多くなり、ピンが少しでも斜めに傾いたりすると、金属同士が喰い込んで動かなくなる現象(いわゆるカジリ)が生じていた。このような現象により、なおさら背凭れと座部との連動動作が不安定となる可能性が高かった。
また、前記連動機構と座部の後端側の可変機構は、座部の後端付近にまとめて配置されていた。ここで可変機構のローラ部材の取り付けは、前記リンク部材の固定部材を兼用して、これに回動可能に支持することが考えられるが、何れにせよローラ部材を取り付ける部材が必要であり、前記可変機構の実質的な配置スペースが大きくなる。従って、座席を設置する例えば鉄道車両内の限られたスペースに収めることができない場合があるという実用上の問題もあった。
本発明は、以上のような従来の技術の有する問題点に着目してなされたものであり、簡易な構成により快適な姿勢が得られる動作を実現することで、部品点数や組付工数を削減してコスト低減が可能となり、また、構成を簡易化したことで、確実に動作させることができると共に、配置スペースを削減して様々な箇所に設置する各種座席に広く適用することができる座席装置を提供することを目的としている。
前述した目的を達成するための本発明の要旨とするところは、以下の各項の発明に存する。
[1]座部(20)の後端側に背凭れ(30)が支持され、該背凭れ(30)を前記座部(20)と連動させてリクライニング可能な座席装置(10)において、
前記座部(20)は、座席を支えるベース(12)上に支持機構(40)を介して少なくとも前後方向に変位可能に支持され、
前記背凭れ(30)は、前記ベース(12)上で前記座部(20)の後端より上方に位置する回転軸(36)を中心に起倒可能に支持されると共に、該背凭れ(30)を後方へ倒すと前記座部(20)が後方へ変位し、該背凭れ(30)を前方へ起こすと前記座部(20)が前方へ変位する連動機構(50)を介して前記座部(20)と連結され、
前記支持機構(40)は、前記座部(20)の後端側を前記連動機構(50)を介して支えて、前記座部(20)の後方への変位に伴って該座部(20)の後端を下方へ変位させる後側支持部(41)を備え、
前記連動機構(50)は、前記座部(20)の後端側に対して、一端側が一箇所で回動可能に連結される一方、前記背凭れ(30)の回転軸(36)より下方に延びた該背凭れ(30)の下端側に対して、他端側が回動可能かつ該回動中心が所定範囲で移動可能に連結されたリンク部材(51)を備え、
前記後側支持部(41)は、前記ベース(12)上に立設された支柱部材(410)を備え、該支柱部材(410)の上端側に前記リンク部材(51)の一端側と他端側の間の一箇所が回動可能に連結され、該支柱部材(410)により、前記座部(20)の後端側が前記リンク部材(51)を介して吊り下げられた状態で支持されたことを特徴とする座席装置(10)。
[2]前記支柱部材(410)は、前記ベース(12)に固定する取付部(411)と、該取付部(411)に一体に固定されて板状に延びる支柱部(412)とを備え、
前記支柱部(412)の両側面のうち少なくとも一面側に、前記取付部(411)上に連なる下端から前記リンク部材(51)を一箇所で回動可能に連結した回動中心の周囲にかけて延びる補強用リブ(414)を設けたことを特徴とする前記[1]に記載の座席装置(10)。
[3]前記リンク部材(51)は、一端側から他端側にかけて延びる板状に形成され、
前記リンク部材(51)の両側面のうち少なくとも一面側に、前記支柱部材(410)の上端側を一箇所で連結した回動中心の周囲から前記座部(20)の後端側を同じく一箇所で連結した回動中心の周囲にかけて延びる補強用リブ(55)を設けたことを特徴とする前記[1]または[2]に記載の座席装置(10)。
[4]前記支柱部材(410)および前記リンク部材(51)は、前記座部(20)の両側に配される左右一対として備えられ、
前記支柱部材(410)および前記リンク部材(51)は、それぞれ左右一対のもの同士が同一形状であることを特徴とする前記[1],[2]または[3]に記載の座席装置(10)。
[5]前記支持機構(40)は、前記座部(20)の前端側を直接支えて、該座部(20)の後方への変位に伴って該座部(20)の前端を上方へ変位させる前側支持部(42)を備え、
前記前側支持部(42)は、
前記座部(20)の前端側の下方に固定され、該座部(20)の前後方向の中心側から該座部(20)の前方に向けて下り傾斜した傾斜面(421a)を備えたブロック(421)と、
前記ベース(12)上に固定され、前記座部(20)の幅方向を軸方向として、前記ブロック(421)の傾斜面(421a)に当接可能な周面部(422a)を備えたガイド部材(422)と、を備えたことを特徴とする前記[1],[2],[3]または[4]に記載の座席装置(10)。
次に、前述した解決手段に基づく作用を説明する。
前記[1]に記載の座席装置(10)によれば、背凭れ(30)は、座部(20)の後端より上方の回転軸(36)を中心に起倒するから、リクライニング時における背凭れ(30)の後方突出量は少なくなり、後部座席のスペースが狭くなることを防ぐことができる。
また、背凭れ(30)は、連動機構(50)を介して座部(20)と連結され、この連動機構(50)により、背凭れ(30)を後方へ倒すと座部(20)も後方へ変位し、背凭れ(30)を前方へ起こすと座部(20)も前方へ変位するように、背凭れ(30)と座部(20)が連動する。従って、座部(20)の後端と背凭れ(30)の下端との間隔の変動が抑えられ、リクライニング時に着座感が損なわれることを防ぐことができる。
座部(20)は、座席を支えるベース(12)上で、支持機構(40)により前後方向に変位する。ここで支持機構(40)は、座部(20)の後端側を前記連動機構(50)を介して支える後側支持部(41)を備え、この後側支持部(41)によって、座部(20)の後方への変位に伴ない該座部(20)の後端は下方へ変位する。座部(20)の座面も後方へ傾斜させることで、より快適な姿勢を得ることが可能となり、着座時の快適性が向上する。
前記連動機構(50)は、座部(20)の後端側に対して、一端側が一箇所で回動可能に連結される一方、背凭れ(30)の回転軸(36)より下方に延びた該背凭れ(30)の下端側に対しては、他端側が回動可能かつ該回動中心が所定範囲で移動可能に連結されたリンク部材(51)を備える。このようなリンク部材(51)の一端側と他端側の間を回動可能に支持することで、背凭れ(30)の前後方向の動きは座部(20)に反転して伝達され、前述した背凭れ(30)と座部(20)の連動が実現される。
前記後側支持部(41)は、ベース(12)上に立設された支柱部材(410)を備え、該支柱部材(410)の上端側に前記リンク部材(51)の一端側と他端側の間の一箇所が回動可能に連結される。このような支柱部材(410)により、座部(20)の後端側がリンク部材(51)を介して吊り下げられた状態でベース(12)上に支持される。リンク部材(51)の一端側と座部(20)の後端側とは、一箇所でのみ回動可能に連結され、同様にリンク部材(51)と支柱部材(410)も、一箇所でのみ回動可能に連結され、その回動中心が移動することはない。
このように、リンク部材(51)に対する座部(20)や支柱部材(410)の連結は、それぞれ一点のみで枢支すれば良く、連結のための構成が簡易となる。特に座部(20)の後端側の支持は、前記リンク部材(51)を介して支柱部材(410)に吊り下げる状態だけで足り、座部(20)の後端側を他の構成部品でベース(12)側に別途支持させる必要はない。すなわち、前記後側支持部(41)は、リンク部材(51)を支持するための支柱部材(410)だけで簡易に構成することができる。
前記支柱部材(410)は、例えば前記[2]に記載したように、前記ベース(12)に固定する取付部(411)と、該取付部(411)に一体に固定されて板状に延びる支柱部(412)とから構成すると良い。支柱部(412)には、座部(20)の後端側の荷重が集中してかかる。そこで、支柱部(412)の両側面のうち少なくとも一面側に、取付部(411)上に連なる下端からリンク部材(51)を一箇所で回動可能に連結する回動中心の周囲にかけて延びる補強用リブ(414)を設ければ、支柱部(412)の剛性は高められ、簡易な板状であっても座屈や破損を防止することができる。
また、前記リンク部材(51)は、例えば前記[3]に記載したように、一端側から他端側にかけて延びる簡易な板状に形成すると良い。このリンク部材(51)の両側面のうち少なくとも一面側に、支柱部材(410)の上端側を一箇所で連結した回動中心の周囲から座部(20)の後端側を同じく一箇所で連結した回動中心の周囲にかけて延びる補強用リブ(55)を設ければ、前記支柱部材(410)と同様にリンク部材(51)の剛性は高められ、座屈や破損を防止することができる。
また、前記[4]に記載したように、前記支柱部材(410)および前記リンク部材(51)は、座部(20)の両側に配される左右一対として備えられるが、これらの部材は、それぞれ左右一対のもの同士が同一形状とする。このように同じ部品に関しては、左右で向きや仕様が異なることなく、互いに兼用できる一部品として用意すれば良く、例えば左右で対称形となる異なる2部品を用意する手間を省くことができる。
さらに、着座時の快適性を向上させるために、座部(20)の座面を後方へ傾斜させるには、前記後側支持部(41)によって座部(20)の後端を下方へ変位させる他、併せて座部(20)の前端を上方へ変位させると良い。そこで、前記[5]に記載した座席装置(10)によれば、前記支持機構(40)が、前記後側支持部(41)の他、座部(20)の前端側を直接支えて、座部(20)の後方への変位に伴って該座部(20)の前端を上方へ変位させる前側支持部(42)を備える。
前記前側支持部(42)は、座部(20)の前端側の下方に固定され、該座部(20)の前後方向の中心側から該座部(20)の前方に向けて下り傾斜した傾斜面(421a)を備えたブロック(421)と、前記ベース(12)上に固定され、座部(20)の幅方向を軸方向として、前記ブロック(421)の傾斜面(421a)に当接可能な周面部を備えたガイド部材(422)と、を備えてなる。かかる簡易な構成の前側支持部(42)によれば、ブロック(421)の傾斜面(421a)がガイド部材(422)の周面部上を移動することにより、座部(20)の前後方向の移動と上下方向の変位を同時に実現することができる。
本発明に係る座席装置によれば、簡易な構成により快適な姿勢が得られる動作を実現することで、部品点数や組付工数を削減してコスト低減が可能となり、また、構成を簡易化したことで、確実に動作させることができると共に、配置スペースを削減して様々な箇所に設置する各種座席に広く適用することができる。
以下、図面に基づき本発明を代表する実施の形態を説明する。
図1〜図6は、本発明の一実施の形態を示している。
本実施の形態に係る座席装置10は、座部20の後端側に背凭れ30が支持され、該背凭れ30を座部20と連動させてリクライニング可能に構成されている。以下、座席装置10として、鉄道車両等の乗物の客室内に装備される鉄道車両用座席に適用した例について説明する。
図2に示すように、座席装置10は、脚部11を介して台枠12が車両客室内の床面上に固定され、台枠12上に3人掛けの座部20および背凭れ30が支持されている。台枠12は、脚部11に対して回転機構により略水平方向へ180度回転可能に支持され、車両の進行方向に対して前後逆向きとなる位置で各々ロック可能であり、ロック解除用のペダル11aを踏み込むことで方向転換できるように構成されている。
前記台枠12は、座席全体を支えるベースに相当するものであり、前記脚部11の上側に固定された前後一対のシャフト13,14と、各シャフト13,14の両端間に固定された左右一対のフレーム15,15から略四角形の枠形状に構成されている。各シャフト13,14は、金属製で円形閉断面のパイプ材から成り、各フレーム15は、金属製で角形断面の棒材から成る。このような台枠12上に、座部20および背凭れ30は支持されている。
また、左右に3つ並ぶ各座部20の間には、前側のシャフト13に接続されて斜め後方へ延びる支持アーム16と、後側のシャフト14に立設されて上方へ延びる支持バー17が、それぞれ配置されている。これら支持アーム16と支持バー17の上端側は互いに接続され、当該接続箇所に、後述する背凭れ30の回転軸36が軸支され、また、図示省略したアームレスト等が支持される。
座部20は、前記台枠12上に支持機構40を介して前後方向に変位可能に支持されている。また、背凭れ30は、前記台枠12上で座部20の後端より上方に位置する回転軸36を中心に起倒可能に支持されている。さらに、座部20と背凭れ30は、背凭れ30を後方へ倒すと座部20が後方へ変位し、背凭れ30を前方へ起こすと座部20が前方へ変位するように、連動機構50を介して連結されている。
図1、図2に示すように、座部20は、座部フレーム21上に、図示省略したクッション体を装着し、その表面を表皮材で被覆してなる。座部フレーム21は、左右一対の側部22,22と、両側部22の前端間に固定された前部23と、両側部22の後端間に固定された後部24とを有し、矩形状の枠組みとして構成されている。また、前部23と後部24の間には、前記クッション体を裏側から支える複数の波型ばね25が架け渡されている。なお、前部23には、前記台枠12の前側のシャフト13の前方へ向かって垂下する横長の板材26が固定されている。
一方、背凭れ30は、背凭れフレーム31に、図示省略したクッション体を装着し、その表面を表皮材で被覆してなる。背凭れフレーム31は、左右一対の側部32,32と、両側部32の上端間に固定された上部33と、両側部32の下端間に固定された下部34とを有し、矩形状の枠組みとして構成されている。また、両側部32の下半部分の間には、薄板状のプレート35が固定されている。
図1に示すように、背凭れフレーム31の両側部32の下端側には、背凭れ30が起倒するための回転軸36の枢支孔32aが設けられている。枢支孔32aに挿通した回転軸36は、前記台枠12上で座部20の後端より上方の定位置に軸支される。図2に示すように、左右に3つ並ぶ各背凭れ30のうち中央の背凭れ30では、背凭れフレーム31の両側の回転軸36は、その側方に位置する前記支持アーム16および前記支持バー17の接続箇所に軸支される。
また、左右両端の背凭れ30では、それぞれ背凭れフレーム31の両側の回転軸36のうち、座席中央寄りの回転軸36は、その側方に位置する前記支持アーム16および前記支持バー17の接続箇所に軸支されるが、座席外側寄りの回転軸36は、その側方に別途配置される図示省略した袖状フレームに軸支される。このように、各背凭れ30(背凭れフレーム31)は、それぞれ回転軸36を中心に独立して起倒可能に支持されている。
次に、座部20を台枠12上に支持する支持機構40について説明する。
図1に示すように、支持機構40は、座部20の後端側を支持する後側支持部41と、座部20の前端側を支持する前側支持部42とを有する。かかる支持機構40は、組みをなす座部20および背凭れ30ごとに設けられている。
後側支持部41は、座部20(座部フレーム21)の後端側を後述の連動機構50を介して支えることにより、座部20の後方への変位に伴って、該座部20の後端を下方へ変位させるものである。かかる後側支持部41は、連動機構50の一部として捉えることもできる。すなわち、後側支持部41は、連動機構50の構成部品の一部を兼用するものとなる。
本実施形態における後側支持部41は、前記台枠12の後側のシャフト14に立設された一対の支柱部材410,410からなる。各支柱部材410の上端側に、後述の連動機構50を構成するリンク部材51の中央部が回動可能に連結されている。この支柱部材410により、座部20の後端側は、リンク部材51を介して吊り下げられた状態で支持される。
支柱部材410の詳細は、図1に示すように、シャフト14の上側周面に固定する取付部411と、該取付部411に一体に固定されて上方へ延びる細幅板状の支柱部412からなる。支柱部材410は、座部20の両側に配される左右一対として備えられるが、各支柱部材410は、それぞれ左右一対のもの同士が同一形状の共通部品となっている。なお、支柱部材410は、一般の板金加工や鋳造ではなく、鍛造により成形して剛性を高めると良い。
また、前記支柱部412の両側面のうち少なくとも一面側には、前記取付部411上に連なる下端から前記リンク部材51を一箇所で回動可能に連結する枢支孔413(回動中心)の周囲にかけて延びる補強用リブ414が設けられている。本実施の形態では、支柱部412の両側面にそれぞれ補強用リブ414を設けているが、強度が足りる場合には片側のみに設けても良い。なお、補強用リブ414の具体的な形状は、図示した上下方向に延びる略直線状に限られず、適宜定め得る設計事項である。
一方、前側支持部42は、座部20(座部フレーム21)の前端側を直接支えて、座部20の後方への変位に伴って該座部20の前端を上方へ変位させるものである。ここで座部20の後方への変位は、背凭れ30を後方へ倒すリクライニングに連動するが、本実施形態における前側支持部42は、背凭れ30の後方への傾斜角度が大きくなるに従って、座部20の上方への変位の変化率が増加するように構成されている。
前側支持部42は、座部フレーム21の前端側の下方に固定された一対のブロック421,421と、前記台枠12の前側のシャフト13に固定された一対のガイド部材422,422からなる。各ブロック421は、座部フレーム21における両側部22の前端側の下側周面に、それぞれネジ等で一体に固定されている。
各ブロック421は、座部フレーム21の前後方向の中心側から座部フレーム21の前方に向けて下り傾斜した傾斜面421aを備えている。ここで傾斜面421aは、ブロック421の下端部に形成される。なお、傾斜面421aは、直線的なテーパー面であっても良く、円弧状の曲面であっても良く、これらが複合した形状であっても良い。また、傾斜面421aの傾斜角は特に限定されず、座部20の後方への変位量に対する上方への変位量(上り勾配)に応じて適宜設定すれば良い。
また、各ガイド部材422は、前記ブロック421の下端部にそれぞれ対向するように、前側シャフト13に固定される。本実施の形態では、一対のガイド部材422は、前記シャフト13に一体に固定されている。ガイド部材422は、座部20の幅方向を軸方向として、前記傾斜面421aに当接可能な周面部422aを備えている。ガイド部材422は、周面部422aの曲率が座部20の前方側から後方側に向かって大きくなるように形成されている。
各ガイド部材422の詳細は、図5に示すように、前記シャフト13の前方側から上側頂端に向かって厚みが漸次大きくなる円弧形の断面形状に形成されている。このようなガイド部材422の周面部422aは、前後方向に変位する座部20をブロック421の傾斜面421aを介して直接支持する。これにより、座部20の後方への変位に伴ない、座部20の前端の上方への変位が可能となる。ここで座部フレーム21の前端の上り勾配は、傾斜面421aの傾斜角度とガイド部材422の周面部422aの曲率で決定される。
次に、背凭れ30と座部20を連動させる連動機構50について説明する。
図1に示すように、連動機構50は、背凭れ30を後方へ倒すと座部20が後方へ変位し、背凭れ30を前方へ起こすと座部20が前方へ変位するように、背凭れ30と座部20とを連動させるものである。かかる連動機構50も、前記支持機構40と同様に、組みをなす座部20および背凭れ30ごとに設けられている。
図1に示すように、連動機構50は、背凭れ30の背凭れフレーム31と座部20の座部フレーム21とを互いに連結する一対のリンク部材51,51を備えている。各リンク部材51は、座部フレーム21の後端側と、背凭れフレーム31の回転軸36より下方に延びた部位との間に、それぞれ第1ピン57,第2ピン58を介して連結されている。
詳しく言えばリンク部材51は、一端側から他端側にかけて途中屈曲して延びる板状に形成されている。リンク部材51の一端側は、座部フレーム21の側部22の後端に対して、一箇所で回動可能に第1ピン57を介して連結されている。一方、リンク部材51の他端側は、背凭れフレーム31の側部32のうち回転軸36よりも下方に延びた延出部32bに対して、第2ピン58を介して回動可能かつ第2ピン58(回動中心)が所定範囲で移動可能に連結されている。
図3,図1に示すように、リンク部材51の一端側には、第1ピン57が一箇所で回動可能に挿通する枢支孔52が設けられ、同様に座部フレーム21の側部22の後端にも、第1ピン57が一箇所で回動可能に挿通する枢支孔22aが設けられている。枢支孔52と枢支孔22aは、それぞれ第1ピン57を一箇所で枢支するものであるが、枢支孔22aは第1ピン57を円滑に回転させるように、該第1ピン57の外径より若干大きい内径の円形に設けられている。なお、枢支孔52と枢支孔22aにブッシュを挿入し、枢支孔22aのブッシュ内径を該第1ピン57の外径よりも若干大きくすることで第1ピン57を円滑に回転させるようにしても良い。
第1ピン57の一端には、抜け止め用のフランジ状の頭部があり、第1ピン57の他端には、抜け止め用のスナップピン(図示せず)を係止する貫通孔が軸心と直交する方向に設けられている。ここで第1ピン57は、リンク部材51の内向き側面から外向き側面へ挿通され、座部フレーム21の外側で貫通孔にスナップピンを係止することができる。また、図3において、リンク部材51の外向き側面と、座部フレーム21の側部22の内向き側面との間には、両側方向に組付上の隙間が生じるが、該隙間を埋める厚さのコロ56が第1ピン57に軸支されている。
一方、リンク部材51の他端側には、第2ピン58が回動可能かつ所定範囲で移動可能に挿通する長孔53が設けられている。長孔53は、リンク部材51の他端から中央部に向かって前記所定範囲の長さ分だけ延びており、第2ピン58は、この長孔53内を相対的に移動可能に挿通している。このように、リンク部材51の他端側の回動中心は、前述した一端側の回動中心とは異なり、所定範囲で移動可能な遊びが設定されている。
第2ピン58は、背凭れフレーム31に対しては、一箇所で軸支されているが、前記延出部32bに対する片持ち状態の軸支に限らず、前記下部34の両側で下方に突設された支持片34aにも両持ち状態となるように軸支したり、あるいは支持片34aに片持ち状態で軸支しても良い。なお、第2ピン58自体の構成も、前記第1ピン57と同様に一端に頭部があり、他端にスナップピンを係止するものに限らず、他に例えば、両端にスナップピンを係止するものとしても良い。
さらに、リンク部材51の一端側と他端側の間の中央部は、前記支柱部材410の上端側に対して一箇所で回動可能に第3ピン59を介して連結されている。この支柱部材410によって、座部20の後端側は、リンク部材51を介して台枠12上に吊り下げられた状態で支持される。
図3,図1に示すように、リンク部材51の中央部には、第3ピン59が一箇所で回動可能に挿通する枢支孔54が設けられ、同様に支柱部材410の上端にも、第3ピン59が一箇所で回動可能に挿通する前述の枢支孔413が設けられている。枢支孔54と枢支孔413は、それぞれ第3ピン59を一箇所で枢支するものである。なお、第3ピン59自体の構成は、前記第1ピン57と同様である。また、枢支孔54と枢支孔413は次述に記載のとおりそれぞれにブッシュ415を挿入する。
ここで支柱部材410の枢支孔413には、座部20の後端側の荷重が集中するため、円滑な回動と強度の向上を図るべく、枢支孔413の内周にブッシュ415を嵌挿させている。ブッシュ415は金属製であるが、その内周面をフッ素加工が施され、滑りを良くするものである。かかるブッシュ415は枢支孔413に圧入され、ブッシュ415の内側に第3ピン59が挿通している。
リンク部材51の両側面のうち少なくとも一面側には、前記支柱部材410の上端側を一箇所で連結する枢支孔54(回動中心)の周囲から前記座部フレーム21の後端側を同じく一箇所で連結する枢支孔52(回動中心)の周囲にかけて延びる補強用リブ55が設けられている。本実施の形態では、リンク部材51の両側面にそれぞれ補強用リブ55を設けているが、強度が足りる場合には片側のみに設けても良い。なお、補強用リブ55の具体的な形状は、図示した長手方向に延びる略直線状に限られず、適宜定め得る設計事項である。
また、リンク部材51も、前記支柱部材410と同様に、座部20の両側に配される左右一対として備えられるが、各リンク部材51は、それぞれ左右一対のもの同士が同一形状の共通部品となっている。なお、リンク部材51は、一般の板金加工や鋳造ではなく、鍛造により成形して剛性を高めると良い。
次に、本実施の形態に係る座席装置10の作用を説明する。
図5に示すように、背凭れ30が最も起立したアップライト状態のとき、座部フレーム21は、台枠12上で支持機構40によって略水平な状態に支持される。背凭れ30をリクライニングさせるには、図示省略したロック機構のロックを解除してから、背凭れ30に背中を押し付けて後方へ倒す。背凭れ30は座部20の後端より上方の回転軸36を中心に起倒するから、リクライニング時における背凭れ30の後方突出量は少なく、後部座席のスペースが狭くなることを防ぐことができる。
背凭れ30を後方へ倒すと、連動機構50によって座部20が後方へ変位する。詳しくは、背凭れフレーム31の下端にある延出部32bが、回転軸36を中心に図5中で時計回りに回動し、回転軸36より下方にある第2ピン58は前方へ移動する。この第2ピン58が挿通した長孔53のあるリンク部材51は、第2ピン58が前方へ移動すると、長孔53のある他端側が、第3ピン59を中心に図5中で反時計回りに回動し、反対側の一端側は後方へ移動する。このリンク部材51の一端側に第1ピン57を介して連結された座部フレーム21は、そのまま後方へ引かれて変位する。
連動機構50のリンク部材51は、支持機構40のうち後側支持部41の支柱部材410の上端側に、一端側と他端側の間が第3ピン59を介して回動可能に連結されている。従って、背凭れ30の前後方向の動きは座部20に反転して伝達され、座部フレーム21が後方へ変位する。これに伴ない、座部フレーム21の後端は、後側支持部41によって下方へ変位し、座部フレーム21の前端は、前側支持部42によって上方へ変位する。
このような変位によって、座部20の後端と背凭れ30の下端との間隔の変動が抑えられ、リクライニング時に着座感が損なわれることを防ぐことができる。また、座部20の後方への変位に伴って座面も後方へ傾斜するため、より快適な姿勢を得ることが可能となり、着座時の快適性を向上させることができる。
図6に示すように、背凭れフレーム31がリクライニング状態のとき、元のアップライト状態に戻す場合は、背凭れフレーム31や座部フレーム21、それにリンク部材51は、前述したリクライニング時における各々の動作とは逆の向きに動作することになる。すなわち、背凭れ30を前方へ起こすと、連動機構50によって座部20が前方へ変位し、これに伴ない座部フレーム21の後端は、後側支持部41によって上方へ変位し、座部フレーム21の前端は、前側支持部42によって下方へ変位して、元のアップライト状態に戻る。
後側支持部41によれば、座部20の後端側は、リンク部材51を介して支柱部材410に吊り下げられた状態で台枠12上に支持される。ここでリンク部材51の一端側と座部20の後端側とは、それぞれ枢支孔52および枢支孔22aの一箇所で第1ピン57を介して回動可能に連結される。また、リンク部材51の中央部と支柱部材410の上端も、それぞれ枢支孔54および枢支孔413の一箇所で第3ピン59を介して回動可能に連結され、第3ピン59(回動中心)が移動することはない。
このように、リンク部材51に対する座部20や支柱部材410の連結は、それぞれ一点のみで枢支すれば足り、連結のための構成が簡易となる。従って、着座者の荷重が集中しやすい座部20の後端側では、長孔にピンが移動可能に枢支した場合に生じ得るカジリの虞はなく、リンク部材51と座部20の連動動作を安定させることができる。一方、リンク部材51と背凭れフレーム31との連結に関しては、長孔53の長さ分だけ遊びを持たせることにより、背凭れ30と座部20のスムーズなリクライニングが実現される。
また、座部20の後端側の支持は、リンク部材51を介して支柱部材410に吊り下げるだけで良く、座部20の後端側を他の構成部品で台枠12側に別途支持させる必要はない。従って、後側支持部41は、リンク部材51を支持する支柱部材410だけで簡易に構成することができる。ここで支柱部材410は、連動機構50の一部と捉えることもできる。何れにせよ構成を簡易化したことで配置スペースも削減され、鉄道車両内の限られたスペースに収めたり、他の様々な箇所に設置する各種座席に広く適用することが可能となる。
支柱部材410には、座部20の後端側の荷重が集中してかかることになるが、本実施の形態では支柱部412の両側面に、取付部411上に連なる下端からリンク部材51に連結する枢支孔413の周囲にかけて延びる補強用リブ414を設けている。これにより、支柱部412の剛性は高められ、簡易な板状であっても座屈や破損を防止することができる。
また、リンク部材51に関しても、その回動中心である枢支孔54から座部フレーム21の後端を吊り下げる一端側の枢支孔52にかけては、特に荷重が集中するため、かかる部位には補強用リブ55が設けられている。このような補強用リブ55により、前記支柱部材410の支柱部412と同様に、リンク部材51の剛性が高められ、座屈や破損を防止することができる。なお、リンク部材51の他端側では、長孔53の周囲に、図1,図3に示すように、同じく長孔がある固定片53aを補強用に取り付けると良い。
さらに、本実施の形態における前記支柱部材410および前記リンク部材51は、座部20の両側に配される左右一対として備えられるが、これらの部材は、それぞれ左右一対のもの同士が同一形状とする。このように同じ部品に関しては、左右で向きや仕様が異なることなく、互いに兼用できる一部品として用意すれば良く、例えば左右で対称形となる異なる2部品を用意する手間を省くことができる。
ところで、座部20の前端側は、前側支持部42によって直接支えられており、前述したように、座部20の後方への変位に伴って該座部20の前端は上方へ変位する。ここで前側支持部42は、座部20の前端側の下方に固定されたブロック421と、台枠12上に固定されて前記ブロック421の傾斜面421aに当接するガイド部材422と、を備えてなる。なお、ガイド部材422の内側端面には、ブロック421の位置ズレを防止するフランジ部422b(図5参照)を設けると良い。
このような簡易な構成の前側支持部42によれば、ブロック421の傾斜面421aがガイド部材422の周面部422a上を移動することにより、座部20の前後方向の移動と上下方向の変位を同時に実現することができる。ここでガイド部材422は、周面部422aの曲率が座部20の前方側から後方側に向かって漸次大きくなるように形成されている。
これにより、背凭れフレーム31の傾斜角度の変化に応じて、座部フレーム21の座面角度の変化率も変化させることができる。すなわち、背凭れフレーム31の後方への傾斜角度が大きくなるに従って、座部フレーム21の座面角度の変化率は徐々に増加する。具体的には、背凭れ30の傾斜角度が小さいときは、座部20の座面角度の変化率は小さく、背凭れ30の傾斜角度が大きくなれば、座部20の座面角度の変化率も大きくなる。特に、アップライト状態では座面角度を小さく抑えることになり、着座時の窮屈感がなく、着座時の快適性を向上させることができる。
なお、背凭れ30の傾斜角度の変化量は特に限定されず、また、座部20の座面の傾斜角度も適宜設定可能であるが、座り心地を維持する観点から、傾斜角度に応じた最適な座面角度が設定されることが好ましい。これらの角度は、具体的には例えば、椅子をデザインする際に必須となるプロトタイプ(例えば『インテリアの人間工学』,産調出版(株)等参考)の各タイプに順次合致するように設計すると良い。
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。また、各図において、同一部材についての多少の形状の違いは軽微な設計変更にすぎない。
また、前記実施の形態では、鉄道車両用の三人掛け用の座席装置を例に説明したが、二人掛け用や一人掛け用の座席装置として構成しても良い。また、鉄道車両用の座席に限られるものでもなく、航空機、自動車、船舶等の他の乗物用の座席や、あるいは劇場用、家庭用、事務用の椅子にも適用することができる。