JP6559474B2 - アンカー部材の検査方法 - Google Patents

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本発明は、基礎体に設置されたアンカー部材の前記基礎体に対する引抜強度を検査する方法の改良技術に関する。
公知のように、例えば道路標識等の構造物を、例えばコンクリート等の基礎体に固定するために、例えばアンカーボルト等のアンカー部材が基礎体に設置されている。
このアンカー部材の基礎体に対する引抜強度は、構造物の基礎体への固定強度に直接関与するため、非常に重要である。つまり、アンカー部材の基礎体に対する引抜強度が低い場合には、構造物の基礎体への固定強度が低いことになる。そのため、アンカー部材の基礎体に対する引抜強度を、アンカー部材を基礎体に設置した直後だけでなく、アンカー部材とナット等の被締付部材との螺合によって構造物が基礎体に取り付けられた後にも定期的に検査することが望まれていた。
このようなアンカー部材の引抜強度を検査する方法として、例えば特許文献1では、次のような方法が提案されている。すなわち、基礎体の上に載置された架台の上面に突出したアンカーボルトの先端からナットを架台上面に向かってねじ込み、ナットをトルクレンチで締め付けた時に所定のトルクが得られるか否かを確認してアンカーボルトの引抜強度を診断する。
特開平10−48112号公報
しかしながら、特許文献1の検査方法では、ナットをトルクレンチで締め付けた時に所定のトルクが得られるか否かを確認し、所定のトルクが得られた場合にアンカーボルトの引抜強度が正常であると判断している。しかしながら、ナット等の被締付部材をトルクレンチで締め付けた時に所定のトルクが得られた場合であっても、アンカーボルト等のアンカー部材の引抜強度が正常であると言えない事態が発生する可能性があった。
本発明は、上記事情に鑑み、アンカー部材の引抜強度が正常であることをより正確に判断することを技術的課題とする。
前記課題を解決するために創案された本発明に係るアンカー部材の検査方法は、トルクレンチで締め付け可能な被締付部材との螺合によって構造物を基礎体に取り付けるために前記基礎体に設置されたアンカー部材についての前記基礎体に対する引抜強度を検査する方法であって、前記アンカー部材と前記被締付部材との螺合によって前記構造物が前記基礎体に取り付けられた状態のままで、前記被締付部材を前記トルクレンチで締め付けた時に、前記被締付部材が回転せず、且つ、前記被締付部材に付与されるトルクが所定の値以上になった場合に、前記引抜強度が正常であると判断し、前記被締付部材を前記トルクレンチで締め付けた時に、前記被締付部材が回転し、且つ、前記被締付部材に付与されるトルクが前記所定の値未満のままである場合に、前記アンカー部材が回転しているか否かを判定し、その判定した結果、前記アンカー部材が回転していない場合に、前記被締付部材の緩みであると判断し、前記アンカー部材が回転している場合に、前記引抜強度が異常であると判断することに特徴づけられる。
ここで、アンカー部材とは、例えば、基礎体の完成前に予め設置されるアンカーボルト、基礎体の完成後に基礎体に設置される後施工アンカー等である(以下、同様)。また、被締付部材としては、例えばボルト等の雄ネジ部を有する部材、例えばナット等の雌ネジ部を有する部材が挙げられる(以下、同様)。
また、トルクの所定の値とは、アンカー部材に必要とされる基礎体に対する引抜強度の値に対応するトルクの値である(以下、同様)。このトルクの所定の値は、公知の計算式で計算可能である。例えば、概算値であれば、必要な引抜強度(軸力)の値をF(kN)とし、この引抜強度に対応するトルクの値をT(N・m)とし、アンカー部材又は被締付部材の雄ネジ部の外径をd(mm)とした場合、T=0.2×F×dで計算可能である。
上記の構成では、被締付部材をトルクレンチで締め付けた時に、被締付部材が回転せず、且つ、被締付部材に付与されるトルクが所定の値以上になった場合に、アンカー部材の引抜強度が正常であると判断する。従って、例えば、被締付部材に付与されるトルクが所定の値以上になっていても、被締付部材が回転するといったようなアンカー部材の引抜強度が正常であるとは言えない事態が発生した場合に、引抜強度が正常であると判断することを回避できる。すなわち、本発明のアンカー部材の検査方法によれば、アンカー部材の引抜強度が正常であることをより正確に判断することができる。
また、上記の構成では、アンカー部材と被締付部材との螺合によって構造物が基礎体に取り付けられた状態のままで、被締付部材をトルクレンチで締め付ける。従って、被締付部材を緩めたり、取り外したりして検査器具を装着する等の検査の準備の必要が無い。このため、アンカー部材の引抜強度を容易に検査することができ、これにより、大量のアンカー部材の引抜強度を検査することができる。
上記の構成において、前記アンカー部材がアンカーボルトであると共に、前記被締付部材がナットであり、前記ナットを前記トルクレンチで締め付けた時に、前記ナットが回転し、且つ、前記ナットに付与されるトルクが前記所定の値未満のままである場合に、前記アンカーボルトが回転しているか否かを判定してもよい。
ナットをトルクレンチで締め付けた時に、ナットが回転し、且つ、ナットに付与されるトルクが所定の値未満のままである場合、アンカーボルト又はその周辺の基礎体が破壊してアンカーボルトの引抜強度が低下している可能性がある。しかし、この場合でも、アンカーボルトの引抜強度が低下しておらず、単にナットが緩んでいるだけの可能性もある。この構成のように、ナットが回転し、且つ、ナットに付与されるトルクが所定の値未満のままである場合に、アンカーボルトが回転するか否かを判定し、アンカーボルトが回転しなければ、ナットの緩みの可能性が高い。従って、この構成によれば、ナットの緩みとアンカーボルトの引抜強度の低下とを見分けることが可能になる。
以上のように本発明によれば、アンカー部材の引抜強度が正常であることをより正確に判断することができる。また、アンカー部材の基礎体に対する引抜強度の検査を容易化することによって大量のアンカー部材の検査を実施可能にすることができる。
本発明の実施形態に係るアンカー部材の検査方法の検査対象のアンカー部材の周辺を示す概略部分断面図である。 本発明の実施形態に係るアンカー部材の検査方法を示すフローチャートである。 アンカー部材の検査方法の変形例を示すフローチャートである。 アンカー部材の変形例の周辺を示す概略部分断面図である。
以下、本発明を実施するための形態について図面に基づき説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るアンカー部材の検査方法の検査対象のアンカー部材の周辺を示す概略部分断面図である。アンカー部材としてのアンカーボルト1は、スリーブ打ち込み式の後施工アンカーである。アンカーボルト1は、ボルト部1aと、ボルト部1aが挿通されたスリーブ部1bを備える。ボルト部1aは、一端に雄ネジ部1cを有し、他端に円錐台形状の頭部1dを有する。スリーブ部1bは、ボルト部1aの頭部との係合により径方向に拡張した拡張部1eを有する。この拡張部1eにより、アンカーボルト1は、基礎体2の孔2aに対して固定されている。
アンカーボルト1は、構造物3を基礎体2に取り付けるために基礎体2に設置されている。アンカーボルト1は、被締付部材としてのナット4の雌ネジ部に対する雄ネジ部1cの螺合によって構造物3を基礎体2に取り付けている。構造物3は、例えば、道路標識や道路照明等である。基礎体2は、所定の強度を有し、例えばコンクリート、石垣等である。
構造物3は、基礎体2に当接した状態で取り付けられる取付板部3aを有する。取付板部3aにはバカ孔3bが設けられており、このバカ孔3bにアンカーボルト1の雄ネジ部1cが挿通される。バカ孔3bから突出した雄ネジ部1cにワッシャ5が嵌められ、ワッシャ5から突出した雄ネジ部1cにナット4の雌ネジ部が螺合している。アンカーボルト1とナット4との螺合で基礎体2とナット4によって取付板部3aが挟持され、これにより、構造物3が基礎体2に取り付けられて固定されている。
アンカーボルト1の引抜強度の検査のためにナット4を締め付けるトルクレンチ6は、スパナ型のヘッド部6aを有する。アンカーボルト1の雄ネジ部1cに螺合したナット4にヘッド部6aを装着した状態で、雄ネジ部1cの先端部を視認可能である。また、トルクレンチ6は、ナット4に付与されるトルクの値を表示する表示部6bを有する。
次に、図2のフローチャートを参照しつつ、本発明の実施形態に係るアンカー部材の検査方法を説明する。
本発明のアンカー部材の検査方法では、図1に示すように、アンカーボルト1とナット4との螺合によって構造物3が基礎体2に取り付けられた状態のままで実施される。
まず、最初に、ステップS1で、トルクレンチ6のヘッド部6aをナット4に装着し、ナット4をトルクレンチ6によって締め付ける。
次に、ステップS2で、ナット4が回転せず、且つ、ナット4に付与されるトルクが所定の値以上になるか否かを判定する。具体的には、ナット4を視認してナット4が回転するか否かを判定すると共に、トルクレンチ6の表示部6bに表示されるトルク値を確認して、ナット4に付与されるトルクが所定の値以上になるか否かを判定する。なお、ナット4が回転するか否かについては、ナット4を直接視認するのでは無く、トルクレンチ6を視認又は体感で確認することによって、トルクレンチ6が回転するか否かで間接的に判定してもよい。
ステップS2の判定結果で、ナット4が回転せず、且つ、ナット4に付与されるトルクが所定の値以上になった場合(Yesになった場合)には、アンカーボルト1の引抜強度が正常であると判断する(ステップS3)。それ以外の場合(Noになった場合)には、アンカーボルト1の引抜強度が異常であると判断する(ステップS4)。
なお、ナット4に付与されるトルクが所定の値以上になったことを確認した後は、トルクレンチ6によるトルクの付与をすぐ止めるようにすることが好ましい。トルクを付与し過ぎると、アンカーボルト1又はその周辺の基礎体2を破壊する可能性があるからである。
上記の説明では、ステップS2の判定結果がNoの場合、アンカーボルト1の引抜強度が異常であると判断(ステップS4)していた。しかし、本発明はこれに限定されず、例えば、図3に示すように、ステップS2の判定結果がNoの場合に、更に判定を行なってもよい。すなわち、ステップS5に進み、ナット4が回転し、且つ、ナット4に付与されるトルクが所定の値未満のままであるか否かを判定する。
図3に示すように、ステップS5の判定結果がNoの場合は、アンカーボルト1の異常であると判断する(ステップS4)。ステップS5の判定結果がYesの場合は、ステップS6に進み、アンカーボルト1を視認して、アンカーボルト1が回転しているか否かを判定する。
ステップS6の判定結果がYesの場合は、アンカーボルト1又はその周辺の基礎体2を破壊してアンカーボルト1の引抜強度が低下しているものとして、アンカーボルト1の引抜強度が異常であると判断する(ステップS4)。ステップS6の判定結果がNoの場合は、ナット4が緩んでいると判断する(ステップS7)。この場合、点線で示すように、ナットを適切なトルクで締め直し(ステップS8)、その後に、ステップS1に戻り、再び検査を実施してもよい。
以上のように構成された本発明の実施形態に係るアンカーボルト1の検査方法では、以下の効果を享受できる。
ナット4をトルクレンチ6で締め付けた時に、ナット4が回転せず、且つ、ナット4に付与されるトルクが所定の値以上になった場合に、アンカーボルト1の引抜強度が正常であると判断する。従って、例えば、ナット4に付与されるトルクが所定の値以上になっていても、ナット4が回転するといったようなアンカーボルト1の引抜強度が正常であるとは言えない事態が発生した場合に、引抜強度が正常であると判断することを回避できる。すなわち、本実施形態のアンカーボルト1の検査方法によれば、アンカーボルト1の引抜強度が正常であることをより正確に判断することができる。
また、アンカーボルト1とナット4との螺合によって構造物3が基礎体2に取り付けられた状態のままで、ナット4をトルクレンチ6で締め付ける。従って、ナット4を緩めたり、取り外したりして検査器具を装着する等の検査の準備の必要が無い。このため、アンカーボルト1の引抜強度を容易に検査することができ、これにより、大量のアンカーボルト1の引抜強度を検査することができる。
本発明は、上記実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲で様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では、基礎体2の上面に構造物3を取り付けていたが、基礎体の斜面や側面や下面に構造物3を取り付けていてもよい。この場合、アンカーボルト1の引抜強度を検査するために、ナット4を緩めたり、取り外したりして検査器具を装着する検査方法を採用した場合には、ナット4を緩めたり、取り外したりした際に基礎体2から構造物3が脱落する可能性がある。従って、ナット4を緩めたり、取り外したりする必要が無い本発明の検査方法がより有意義なものとなる。
また、上記実施形態では、アンカー部材のアンカーボルト1が雄ネジ部1cを有し、トルクレンチ6で締め付ける被締付部材のナット4が雌ネジ部を有していたが、アンカー部材が雌ネジ部を有し、被締付部材が雄ネジ部を有してもよい。例えば、図4に示すように、締付方式のコーンナット式の後施工アンカーに本発明を適用する場合には、アンカー部材は、ナット部7aとスリーブ部7bを備え、ナット部7aに雌ネジ部を有する。そして、被締付部材は、ボルト8であり、雄ネジ部8aを有する。この場合には、スリーブ部7bは、ナット部7aのテーパ部との係合により径方向に拡張した拡張部7cを有する。この拡張部7cにより、アンカー部材は、基礎体2の孔2aに対して固定されている。
なお、締付方式のコーンナット式の後施工アンカーは、ナット部7aとスリーブ部7bの他、ボルト8及びワッシャ9も含む。このように、本発明のアンカー部材及び被締付部材は、後施工アンカーの構造の一部となる場合も含む。
また、上記実施形態では、トルクレンチ6のヘッド部6aがスパナ型であったが、これ以外の型でもよい。ただし、ナット4に装着するとアンカーボルト1の雄ネジ部1cの先端部が覆われるタイプのヘッド部6aを使用した場合、ステップS6で、アンカーボルト1を視認できず、アンカーボルト1が回転するか否かを判定できない。
1 アンカーボルト(アンカー部材)
2 基礎体
3 構造物
4 ナット(被締付部材)
6 トルクレンチ
7a ナット部(アンカー部材)
7b スリーブ部(アンカー部材)
8 ボルト(被締付部材)

Claims (2)

  1. トルクレンチで締め付け可能な被締付部材との螺合によって構造物を基礎体に取り付けるために前記基礎体に設置されたアンカー部材についての前記基礎体に対する引抜強度を検査する方法であって、
    前記アンカー部材と前記被締付部材との螺合によって前記構造物が前記基礎体に取り付けられた状態のままで、前記被締付部材を前記トルクレンチで締め付けた時に、前記被締付部材が回転せず、且つ、前記被締付部材に付与されるトルクが所定の値以上になった場合に、前記引抜強度が正常であると判断し
    前記被締付部材を前記トルクレンチで締め付けた時に、前記被締付部材が回転し、且つ、前記被締付部材に付与されるトルクが前記所定の値未満のままである場合に、前記アンカー部材が回転しているか否かを判定し、
    その判定した結果、前記アンカー部材が回転していない場合に、前記被締付部材の緩みであると判断し、前記アンカー部材が回転している場合に、前記引抜強度が異常であると判断することを特徴とするアンカー部材の検査方法。
  2. 前記アンカー部材がアンカーボルトであると共に、前記被締付部材がナットであることを特徴とする請求項1に記載のアンカー部材の検査方法。
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