JP6558573B2 - ステンレス用スケール除去剤 - Google Patents
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Description
この点、本件発明者が開発したスケール除去剤(特許文献3)は、フッ化水素酸を全く含まず、しかも高いスケール除去効果が得られる。しかし、このスケール除去剤を常温で使用した場合は処理時間が長くなり、短時間で処理するには40〜80℃の加温が必要であることから、温度制御設備が必要となるという問題があった。また、低温下で白色の沈殿物を生ずるという問題もあった。
すなわち、本発明のステンレス用スケール除去剤は、硝酸、クエン酸、キレート剤、及び両性界面活性剤を含む水溶液であって、さらに塩酸及び硝酸塩を含むことを特徴とする。
本発明のステンレス用スケール除去剤は、硝酸、クエン酸、キレート剤、及び両性界面活性剤を含む水溶液であって、さらに塩酸及び硝酸塩を含む。なお、本発明の効果を損なわない範囲で、これらのほかに、着色料、メチルアルコールやエチルアルコール等のアルコール類、等を添加してもよい。また、キレート剤や両性界面活性剤は、複数の種類のものが含まれていてもよい。
を0.05質量%以上1.5重量%以下が好ましく、リン酸の濃度は5質量%以上10質量%以下が好ましい。塩酸の濃度が2質量%以上となると、処理後における金属光沢が失われる。
本発明のスケール除去剤の調製方法に特に制限はないが、通常、水に硝酸、塩酸を加えて均一に混合し、そこにクエン酸、EDTA及び硝酸カリウムを投入し均一に溶解して本発明のスケール除去剤を調製する。更にリン酸とシュウ酸を加える場合は、通常、リン酸を投入して均一に混合した後、シュウ酸を投入し均一に溶解するのが好ましい。また、硝酸カリウムに替えてその配合量に相当する硝酸と水酸化カリウムを配合することもできる。尚、調製容器及び接液機器には樹脂コーティング、ガラスライニング又はプラスチック製を用いることが好ましい。
スケール除去剤を浴槽に入れておき、ここにステンレスを溶接した被処理物を浸漬処理する。この時、特に加熱を要することはなく、したがってスケール除去処理における加温設備等は不要となる。このため、処理施設の設置面積も小さくなる。また、傾斜、垂直部位の溶接部に対する適用において液体のスケール除去剤に増粘剤を配合して液だれを防止する手法は、本技術分野では従来から通常行われてきたことであり、本発明のスケール除去剤に増粘剤を配合して該適用に供することを妨げない。
本発明のスケール除去剤は、−5℃となっても沈殿を生ずることはない。これに対して、塩酸及び硝酸塩を含まない、特許文献3に記載のスケール除去剤では、−5℃にすると白色沈殿が生じる。従って、本発明のスケール除去剤の使用が想定される日本国内の冬季の保管に対しても、従来のスケール防止剤より取り扱い性が向上した。
硝酸、クエン酸、EDTA・2Na及びアンヒトール20-HD(ラウリルヒドロキシスルホベタイン)を含有する、以下の組成のベース水溶液を調製し、さらにこのベース溶液に塩酸、硝酸カリウム、シュウ酸及びリン酸に所定量を必要に応じて添加し、更に純水を加えて、下記表1に示す組成の実施例及び比較例のスケール除去剤を調製した。
<ベース水溶液>
硝酸 8.35重量部
クエン酸 16.40重量部
EDTA 0.19重量部
アンヒトール20-HD 3.70重量部
(ラウリルヒドロキシスルホベタイン)
純水 45.00重量部
上記のようにして調製した実施例及び比較例のスケール除去剤から何種類かを選定し、(1)ステンレス鋼溶接部のスケール除去試験、(2)ステンレス鋼のレーザー加工時のスケール除去試験、及び、(3)低温における安定性試験を行った。以下、それらの3試験についての詳細を以下に示す。
2枚のステンレス鋼(SUS304、厚さ5mm、縦3cm、横5cm)の板をアーク溶接し、これを試験片とした。そして、各試験片を20℃に保った実施例1〜9及び比較例1〜3のスケール除去剤200mL中に60分間浸漬した。その後、水で十分に洗浄した。スケール除去の評価方法としては、可視領域における分光式色差計(日本電色 NF333)を用い、溶接部分の表面反射率を8mm径のプローブを用いて測定し、目標値の反射率(電解研磨後の試験片の反射率)と比較することで、スケール除去効果を評価した。また、スケール除去効果を数値で示すために、除去率を算出した。算出式には(1)式を用いた。なお、表面反射率の測定は、それぞれの試験片について4点測定し、そのときの測定範囲は、可視光領域である400〜700nmとした。結果を表2に示す。
実施例1〜9については77%以上の良好なスケール除去率を示した。
また、比較例1の除去率は80%であるのに対し、比較例1に塩酸を0.85重量%加えた比較例2の除去率は46%に低下した。一方、比較例1に硝酸カリウムを9.38重量%加えた比較例3の除去率は77%であり、比較例1とほぼ同等であった。比較例1〜3と、実施例1〜3との結果から、比較例1に塩酸と硝酸カリウムを加えた実施例1〜3の除去率は、98%〜120%という良好な除去率となった。
以上の結果から、比較例1のスケール除去剤に更に塩酸と硝酸カリウムを加えることにより、スケール除去機能が良くなるという特異な相乗効果が明らかとなった。
また、実施例1〜4のスケール除去剤では、全て98%以上の高いスケール除去率を示すが、実施例1〜3では処理後に金属光沢を有していたのに対し、実施例4では処理後に金属光沢を失っていた。したがって、塩酸の配合量は0.05重量%以上1.5重量%以下が好ましい範囲と判定された。
また、塩酸濃度を0.85重量%とし、硝酸カリウムの濃度を変化させた実施例5〜9では、硝酸カリウムが5重量%以上とした実施例6〜9において95%以上の優れた除去率を示すが、実施例9では処理後に金属光沢を失っていた。したがって、硝酸カリウムの添加量は5重量%以上10質量%以下が好ましいことが分かった。
ステンレス鋼(SUS304 10mm×10mm×3mm)を2B法(冷間圧延,熱処理,酸洗い後,軽く冷間圧延して光沢をあげる処理)によって表面仕上げを行った後、レーザービームによって切断(三菱電機ML2512LX,出力670W,切断速度1500mm/min(酸素吹き付け))したものを試験片とし、ステンレス鋼溶接部のスケール除去試験の場合と同様のスケール除去試験を行った。スケール除去剤は実施例7,8,10及び比較例1,4のものを用いた。結果を表3に示す。
その結果、比較例1のスケール除去剤では、ステンレス鋼レーザー加工時のスケールの除去率は31%と低く、常温処理でのスケールの除去は困難であった。
また、シュウ酸とリン酸が添加されているが、塩酸と硝酸カリウムが添加されていない比較例4では除去率が14%となり、さらに低下した。
また、塩酸と硝酸カリウムが添加されているが、シュウ酸及びリン酸が添加されていない実施例7及び8では、除去率それぞれ57%、66%となり、比較例1や比較例4よりは向上した。
さらに、塩酸、硝酸カリウム、シュウ酸及びリン酸が添加された実施例10では105%となり、ステンレス鋼レーザー加工時のスケールに対しても常温浸漬によって優れたスケール除去機能を発揮することが分かった。即ち、本発明のスケール除去剤における塩酸と硝酸塩に更にシュウ酸とリン酸を加えた場合の特異な相乗効果が明示された。
低温におけるスケール除去剤の安定性を評価するため、実施例1,3,6,7、8及び10の各スケール除去剤を250mLのガラス瓶に200mL投入して蓋をし、−5℃の恒温槽内に静置した。48時間後の状況を目視確認した。また、比較として、特許文献3の実施例1に記載された下記表4の比較例5に示す組成のスケール除去剤を調製し、同様の試験を行った。
Claims (5)
- 硝酸、クエン酸、及び両性界面活性剤、並びにEDTA又はその塩、を含む水溶液であって、さらに塩酸及び硝酸塩を含むことを特徴とするステンレス用スケール除去剤。
- 前記硝酸の濃度は2質量%以上15質量%以下、前記クエン酸の濃度は7質量%以上20質量%以下、前記EDTA又はその塩の濃度は0.6質量%以上1.7質量%以下、前記両性界面活性剤の濃度は3.0質量%以上10質量%以下である請求項1に記載のステンレス用スケール除去剤。
- 前記塩酸の濃度は0.05質量%以上1.5重量%以下、前記硝酸塩は硝酸カリウムであって5質量%以上10質量%以下である請求項1又は2に記載のステンレス用スケール除去剤。
- 更にシュウ酸及びリン酸を含む請求項1乃至3のいずれか1項に記載のステンレス用スケール除去剤。
- シュウ酸の濃度は0.05質量%以上1.5重量%以下、リン酸の濃度は5質量%以上10質量%以下である請求項4に記載のステンレス用スケール除去剤。
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