JP2010069719A - 金型冷却回路回復方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】有機ホスホン酸又はその塩を用いたスケール除去剤において、除錆効果を高め、腐蝕の度合いを小さくし、除錆後の被洗浄金属の表面仕上げを向上させ、更には、スケール除去剤使用時の臭気の発生を抑制する。
【解決手段】有機ホスホン酸及びその塩と、カルボン酸及びその塩と、腐蝕抑制剤として配合されるメルカプトカルボン酸及びその塩とを含有し、pH5〜8の範囲内に調整されているスケール除去剤。
【選択図】なし
【解決手段】有機ホスホン酸及びその塩と、カルボン酸及びその塩と、腐蝕抑制剤として配合されるメルカプトカルボン酸及びその塩とを含有し、pH5〜8の範囲内に調整されているスケール除去剤。
【選択図】なし
Description
本発明は金型冷却回路回復方法に関する。更に詳しくは本発明は、一度の通液によって金型冷却回路のスケールを溶解・除去すると同時に回路構成金属の腐食を抑制し、優れたスケール除去・防錆効果をもたらす金型冷却回路回復方法に関する
高温の溶融樹脂・溶融金属などが供給される成形金型には金型冷却回路が設けられ、その回路に冷却水を通すことにより金型の冷却を行う。金型冷却回路の構成には種々のものがあるが、例えば、金型自体の内部に通孔を設ける形式の冷却孔回路や、金型内部に冷却管を埋め込み、あるいは金型の外側に冷却管を設ける形式の冷却管回路などが見られる。
これらの金型冷却回路においては、回路の壁面に経時的にスケール(スラッジとも呼ぶ)が付着して堆積することが問題となっている。このようなスケールは、金型冷却回路の熱交換効率を阻害し、金型の冷却効率を著しく低下させる。
その対策として、例えば下記の特許文献1のように、冷却回路系から取り外し可能な部材を冷却回路内へ突出させて取り付け、この部材にスラッジが集中的に付着するようなメカニカルな工夫を行ったものもある。
しかし、一般的には、例えば下記の特許文献2のように、錆除去用の洗浄液を金型冷却回路に通液させてスケールを除去するという化学的な洗浄法を行っている。化学的な洗浄法では、冷却回路全体に対して均等な効果が得られる点、装置的に簡易に実施できる点、等の利点がある。
特開平9−1312号公報
特開平9−1090号公報 しかし、従来の金型冷却回路の化学的な洗浄法では、洗浄液がスケール溶解・除去能力を持つが、良好な腐食抑制力を持たないため、金型冷却回路やその部品等を痛めたりする問題があった。更には、洗浄液が酸性の強い液であるため、通常、洗浄液によるスケール除去後の中和処理作業や、あるいは水洗いや防錆処理という面倒な手間が必要であった。
金型冷却回路の洗浄に限らないが、金属表面から金属酸化物を含むスケールを溶解・除去するため、従来より各種のスケール除去剤が使用されている。例えば無機酸を主成分とするものは低コストでスケール溶解能力が大きい反面、強酸性であるため被洗浄金属の過酸洗や水素脆性、金属の変色等の問題を生じる。
有機酸を主成分とするものは相対的に金属腐食性が弱く、特に有機ホスホン酸やその塩類を主成分とするものは中性pH域で酸化鉄を溶解することができる等の特徴点を持つ。しかし、単に有機ホスホン酸を用いるだけでは被洗浄金属の腐食は避けられないし、その使用時に単純に通常の腐食抑制剤を併用しても、必ずしもスケール除去能力と腐食抑制作用とを良好に両立させることはできない。
上記の特許文献2では、「リン酸系の洗浄液を用いるため、酸を中和する必要がなく、よって洗浄後の水洗い工程や中和工程等を不要とすることができる」と主張するが、特許文献2に開示されたリン酸系の洗浄液を用いるだけでは、そのような効果を十分に期待することはできない。
又、例えば、下記の特許文献3には、有機ホスホン酸に還元剤、腐食抑制剤、界面活性剤を添加すれば効果的な除錆剤となる旨が開示されている。更に、下記の特許文献4には、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸の第三アルカノールアミン塩の水溶液であって、pH5.0〜8.5に調整されたスケール溶解液が開示されている。
米国特許第4810405号公報
米国特許第3238304号公報 しかし、本願発明者の研究によれば、有機ホスホン酸と共に腐蝕抑制剤としてベンゾトリアゾールを用いる特許文献3は、その有機ホスホン酸として特許文献2のような1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸やその塩を用いた場合でも、腐蝕の度合いが大きくなるとともに、除錆性も効果的とは言い難いという問題点がある。
即ち、上記した従来の洗浄液を金型冷却回路に通液させても、金型冷却回路のスケールは除去できるとしても、回路を構成する金属の腐食を十分に抑制することはできなかった。又、このような点から、洗浄液による処理後には冷却回路の腐蝕抑制処理(中和工程)や水洗いを必要とし、面倒でもあるし、金型の稼動効率を落とすとともに、作業者への負担が大きくなっていた。
そこで本発明は、金型冷却回路のスケール除去と防錆を一液で行って金型冷却効率を回復し、ひいては、洗浄液による処理後の冷却回路の水洗いも不要とすることを、解決すべき技術的課題とする。
(第1発明)
上記課題を解決するための本願第1発明の構成は、金型の冷却回路に、下記の(A)成分〜(C)成分を含有しpH5〜8の範囲内に調整されているスケール除去・防錆液を通液させ、冷却回路のスケール除去と防錆を一液で行う、金型冷却回路回復方法である。
(A)成分:有機ホスホン酸及びその塩から選ばれる1種以上。
(B)成分:カルボン酸及びその塩から選ばれる1種以上。
(C)成分:メルカプトカルボン酸及びその塩から選ばれる1種以上。
上記課題を解決するための本願第1発明の構成は、金型の冷却回路に、下記の(A)成分〜(C)成分を含有しpH5〜8の範囲内に調整されているスケール除去・防錆液を通液させ、冷却回路のスケール除去と防錆を一液で行う、金型冷却回路回復方法である。
(A)成分:有機ホスホン酸及びその塩から選ばれる1種以上。
(B)成分:カルボン酸及びその塩から選ばれる1種以上。
(C)成分:メルカプトカルボン酸及びその塩から選ばれる1種以上。
本発明において、「メルカプトカルボン酸」とは、少なくとも1つのメルカプト基(−SH)と少なくとも1つのカルボキシル基(−COOH)を持つ化合物をいう。また、メルカプトカルボン酸の内、1つのメルカプト基と2つのカルボキシル基を持つ化合物を、「メルカプトジカルボン酸」と呼ぶ。
第1発明の金型冷却回路回復方法によれば、スケール除去と防錆を一液で行うことができる。即ち、冷却回路の壁面に発生し堆積したスケール(スラッジ)を溶解・除去することができる一方で、冷却回路を構成する金属の腐食を抑制し、優れた防錆効果を得ることができる。そのため、冷却回路の洗浄処理後に別液を用いて中和・防錆工程を行う手間を要しない。
又、本発明のスケール除去・防錆液はpH5〜8の範囲内に調整されているため、冷却回路洗浄後の水洗いが不要となり、かつ作業者にとっても安全性が高い。金型冷却回路の洗浄操作において、スケール除去・防錆液のpHが5未満であると、(1)酸性度が強くなり腐蝕が増す、(2)液の取り扱いの危険性が増す、(3)水素脆性の危険性が生じるという点で不満足となり、pHが8を超えると、洗浄能力の不足という点で不満足となる。
第1発明の金型冷却回路回復方法によりこのように優れた効果が得られる理由に関しては、以下の(1)〜(3)の点を指摘することができる。
(1)上記の(A)成分たる有機ホスホン酸やその塩は、スケール除去成分及び防錆成分として作用する。上記の(B)成分たるカルボン酸やその塩は、スケール除去成分として作用する。上記の(C)成分たるメルカプトカルボン酸やその塩は腐食抑制剤であるが、(A)成分や(B)成分のスケール除去性能を損なわない腐食抑制剤であるという特徴的な作用を有する。
(2)(A)成分の防錆作用は、スケール除去後において有機ホスホン酸やその塩が被処理金属材と化合して、有機ホスホン酸金属塩の防錆被膜を形成することに関連している。
(3)なお、(C)成分たるメルカプトカルボン酸やその塩は環境負荷等の面で優れた腐食抑制剤であるが、やや除錆性能に劣るという難点がある。しかし、メルカプトカルボン酸やその塩を(A)成分及び(B)成分と共に配合すると除錆効果が高まり、除錆後の被処理金属表面を美麗に仕上げることができる。
なお、メルカプトカルボン酸は臭気を幾分生じるが、第5発明のようにメルカプトカルボン酸としてメルカプトジカルボン酸を用いた場合、このような臭気が有効に解決される。
(第2発明)
上記課題を解決するための本願第2発明の構成は、前記第1発明に係る金型冷却回路回復方法が、スケール除去・防錆液による処理後の冷却回路の水洗いを必要としないものである、金型冷却回路回復方法である。
上記課題を解決するための本願第2発明の構成は、前記第1発明に係る金型冷却回路回復方法が、スケール除去・防錆液による処理後の冷却回路の水洗いを必要としないものである、金型冷却回路回復方法である。
又、本発明で用いるスケール除去・防錆液は、前記した酸系の洗浄液や、特許文献3、4に開示する有機ホスホン酸とベンゾトリアゾールとを用いる洗浄液と比較しても、腐食が十分に小さく、その有効成分の関係から通常は中性のpHであるため、スケール除去・防錆液による冷却回路の洗浄処理後の水洗いを不要とすることができる。
(第3発明)
上記課題を解決するための本願第3発明の構成は、前記第1発明又は第2発明に係る金型冷却回路回復方法において、スケール除去後に(A)成分が金型構成材である鉄と化合してホスホン酸鉄の防錆皮膜を形成する、金型冷却回路回復方法である。
上記課題を解決するための本願第3発明の構成は、前記第1発明又は第2発明に係る金型冷却回路回復方法において、スケール除去後に(A)成分が金型構成材である鉄と化合してホスホン酸鉄の防錆皮膜を形成する、金型冷却回路回復方法である。
本発明の金型冷却回路回復方法においては、第3発明のように、(A)成分たる有機ホスホン酸やその塩が金型構成材である鉄と化合してホスホン酸鉄の防錆皮膜を形成する。そのため、スケール除去後の防錆性を一層良好に確保することができる。
(第4発明)
上記課題を解決するための本願第4発明の構成は、前記第1発明〜第3発明のいずれかに係る金型冷却回路が、金型内部に設けた冷却孔、金型内部に埋め込んだ冷却管又は金型の外側に設けた冷却管のいずれか1以上である、金型冷却回路回復方法である。
上記課題を解決するための本願第4発明の構成は、前記第1発明〜第3発明のいずれかに係る金型冷却回路が、金型内部に設けた冷却孔、金型内部に埋め込んだ冷却管又は金型の外側に設けた冷却管のいずれか1以上である、金型冷却回路回復方法である。
本発明の処理対象となる金型冷却回路の構成及び種類は限定されず、例えば、第4発明に規定するように、金型内部に穿設した冷却水の通孔からなる冷却回路、金型の内部に埋め込んだ冷却管からなる冷却回路、金型の外側に設けた冷却管からなる冷却回路、等を含む。
(第5発明)
上記課題を解決するための本願第5発明の構成は、前記第1発明〜第4発明のいずれかに係るスケール除去・防錆液が以下のいずれか1以上に該当するものである、金型冷却回路回復方法である。
(1)前記(A)成分が、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸及びその塩から選ばれる1種以上である。
(2)前記(B)成分が、オキシカルボン酸及びその塩から選ばれる1種以上である。
(3)前記(C)成分が、メルカプトジカルボン酸及びその塩から選ばれる1種以上である。
上記課題を解決するための本願第5発明の構成は、前記第1発明〜第4発明のいずれかに係るスケール除去・防錆液が以下のいずれか1以上に該当するものである、金型冷却回路回復方法である。
(1)前記(A)成分が、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸及びその塩から選ばれる1種以上である。
(2)前記(B)成分が、オキシカルボン酸及びその塩から選ばれる1種以上である。
(3)前記(C)成分が、メルカプトジカルボン酸及びその塩から選ばれる1種以上である。
本発明で用いるスケール除去・防錆液としては、その(A)、(B)、(C)の各成分が第5発明の(1)〜(3)に該当することが、特に好ましい。
本発明によれば、一度の通液によって金型冷却回路のスケールを溶解・除去すると同時に回路構成金属の腐食を抑制し、優れたスケール除去・防錆効果をもたらす金型冷却回路回復方法が提供される。この方法では、冷却回路洗浄後の中和処理や水洗いも不要化できる。
次に、本発明の実施形態を、その最良の実施形態を含めて説明する。
〔金型の冷却回路〕
本発明が対象とする金型の構成あるいは種類、及び、金型の冷却回路の構成あるいは種類は限定されない。
本発明が対象とする金型の構成あるいは種類、及び、金型の冷却回路の構成あるいは種類は限定されない。
金型の代表的なものは、鋳鉄・アルミニウム合金・銅・真鍮に代表される溶融金属やプラスチック材料等の溶融樹脂の成形用の鋳造金型であるが、他種材料の成形用の金型も限定なく含まれる。又、いわゆる1個取り金型も、多数個取り金型も含まれ、多数個取り金型としては、同型多数個取り金型も異型多数個取り金型も含まれる。更に金型の構成形式による直彫り金型、入れ子式金型、ユニットダイスのいずれもが含まれる。又、これらの各種金型において、コア型とキャビティ型等の型の区別がある場合は、それらの各型が含まれる。
金型の冷却回路には多様な設計のものがあるが、それらのいずれもが本発明の対象となる。例えば、金型冷却回路の構成形式としては、直流式、循環式、噴流式のいずれもが含まれる。更に、金型冷却回路が、金型内部に設けた冷却孔、金型内部に埋め込んだ冷却管又は金型の外側に設けた冷却管のいずれか1以上によって構成されるものの全てが含まれる。
次に、金型の冷却回路に対して本発明のスケール除去・防錆液を通液させる方法は限定されず、例えば、前記した特許文献2に開示されるように、冷却回路洗浄液用の適宜な構成の貯留槽と、洗浄液を冷却回路に強制通液させるための適宜な構成の通液手段とを備え、冷却水と冷却回路洗浄液との流通を切り替える任意のバルブなどを設けることができる。
〔スケール除去・防錆剤〕
本発明で用いるスケール除去・防錆液は、少なくとも、(A)成分:有機ホスホン酸及びその塩から選ばれる1種以上と、(B)成分:カルボン酸及びその塩から選ばれる1種以上と、(C)成分:メルカプトカルボン酸及びその塩から選ばれる1種以上とを含有する。
本発明で用いるスケール除去・防錆液は、少なくとも、(A)成分:有機ホスホン酸及びその塩から選ばれる1種以上と、(B)成分:カルボン酸及びその塩から選ばれる1種以上と、(C)成分:メルカプトカルボン酸及びその塩から選ばれる1種以上とを含有する。
また、スケール除去・防錆液はpH5〜8の範囲内に調整されている。そのようなpH調整は、必要な場合には、例えば適宜なpH調整剤の配合により行うことができる。pH調整剤の種類は限定されないが、好ましいpH調整剤としては、NaOH、KOH、Na2CO3等の無機アルカリやアンモニア水、アミン等が例示される。
〔(A)成分:有機ホスホン酸及びその塩から選ばれる1種以上〕
スケール除去・防錆液に含有させる有機ホスホン酸やその塩の種類は限定されない。特に好ましい有機ホスホン酸として、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、トリアミノメチルホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸5ナトリウム塩、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸3ナトリウム塩、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸4ナトリウム塩、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸7ナトリウム等が例示される。とりわけ1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸が好ましい。これらの有機ホスホン酸の塩も好ましい。
スケール除去・防錆液に含有させる有機ホスホン酸やその塩の種類は限定されない。特に好ましい有機ホスホン酸として、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、トリアミノメチルホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸5ナトリウム塩、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸3ナトリウム塩、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸4ナトリウム塩、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸7ナトリウム等が例示される。とりわけ1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸が好ましい。これらの有機ホスホン酸の塩も好ましい。
有機ホスホン酸の塩として、各種有機ホスホン酸の金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等が好ましく例示される。より具体的には、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸の場合において、その第三アルカノールアミン塩、無機アルカリ塩、アンモニウム塩等が例示される。
スケール除去・防錆液における有機ホスホン酸やその塩の合計含有量は限定されないが、通常は0.1質量%以上であれば良く、好ましくは0.5〜50質量%、更に好ましくは1〜30重量%である。含有量が0.1質量%未満であると絶対量の不足から本発明の効果を確保できない恐れがある。含有量が50質量%を超えても、発明の効果が飽和してコスト的に不利である。
〔(B)成分:カルボン酸及びその塩から選ばれる1種以上〕
スケール除去・防錆液に含有させるカルボン酸やその塩の種類は限定されないが、特にヒドロキシカルボン酸やジカルボン酸あるいはその塩が好ましい。
スケール除去・防錆液に含有させるカルボン酸やその塩の種類は限定されないが、特にヒドロキシカルボン酸やジカルボン酸あるいはその塩が好ましい。
ヒドロキシカルボン酸やその塩としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸あるいはそれらの塩が例示され、ジカルボン酸やその塩としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、あるいはそれらの塩が例示される。
スケール除去・防錆液におけるカルボン酸やその塩の合計含有量は特に限定されないが、通常は0.1質量%以上であれば良く、好ましくは0.5〜30質量%、更に好ましくは1〜10質量%である。含有量が0.1質量%未満であると、絶対量の不足から本発明の効果を確保できない恐れがある。含有量が30質量%を超えても、発明の効果が飽和してコスト的に不利である。
〔(C)成分:メルカプトカルボン酸及びその塩から選ばれる1種以上〕
スケール除去・防錆液に含有させるメルカプトカルボン酸やその塩の種類は限定されないが、チオリンゴ酸(即ちメルカプトコハク酸)及びチオグリコール酸(即ちメルカプト酢酸)が特に好ましく例示される。
スケール除去・防錆液に含有させるメルカプトカルボン酸やその塩の種類は限定されないが、チオリンゴ酸(即ちメルカプトコハク酸)及びチオグリコール酸(即ちメルカプト酢酸)が特に好ましく例示される。
メルカプトカルボン酸の塩としては、各種のメルカプトカルボン酸の金属塩、アンモニウム塩、アミン塩が好ましく例示される。チオグリコール酸の塩の場合で例示すると、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリコール酸カルシウム、チオグリコール酸カリウム、チオグリコール酸アンモニウム、チオグリコール酸モノエタノールアミン、チオグリコール酸ジエタノールアミン、チオグリコール酸トリエタノールアミン、チオグリコール酸エチルアミン、チオグリコール酸モノイソプロパノールアミン、チオグリコール酸トリイソプロパノールアミン等が挙げられる。
メルカプトカルボン酸及びその塩の中でも、メルカプトジカルボン酸及びその塩が特に好ましい。メルカプトジカルボン酸及びその塩の中でも、上記したチオリンゴ酸及びその塩がとりわけ好ましい。チオリンゴ酸の塩としては、チオリンゴ酸ナトリウム、チオリンゴ酸アンモニウム、チオリンゴ酸モノエタノールアミン、チオリンゴ酸ジエタノールアミン、チオリンゴ酸トリエタノールアミン等が例示される。
スケール除去・防錆液におけるメルカプトカルボン酸やその塩の合計含有量は特段に限定されないが、一般的には0.1〜20.0質量%の範囲内が好ましい。含有量が0.1質量%未満であると絶対量の不足から本発明の効果を確保できない恐れがあり、含有量が20.0質量%を超えても本発明の効果が飽和してコスト的に不利である。メルカプトカルボン酸やその塩の含有量は、0.5〜5.0質量%の範囲内であることが、特に好ましい。
〔スケール除去・防錆液におけるその他の成分〕
スケール除去・防錆液には、上記したpH調整剤、有機ホスホン酸やその塩、カルボン酸やその塩、メルカプトカルボン酸やその塩の他にも、還元剤(例えば、1〜30質量%程度の範囲内での亜硫酸ナトリウム、イソアスコルビン酸、L−アスコルビン酸、ぶどう糖、ヒドラジン等)を含有させることができる。
スケール除去・防錆液には、上記したpH調整剤、有機ホスホン酸やその塩、カルボン酸やその塩、メルカプトカルボン酸やその塩の他にも、還元剤(例えば、1〜30質量%程度の範囲内での亜硫酸ナトリウム、イソアスコルビン酸、L−アスコルビン酸、ぶどう糖、ヒドラジン等)を含有させることができる。
スケール除去・防錆液には、スケール除去性能を更に高めるために、必要に応じて界面活性剤を含有させることができる。界面活性剤の種類としては非イオン系、陰イオン系、陽イオン系、両性イオン系の1種以上を適宜に選択して含有させることができ、その含有量は0.5質量%以下であることが好ましい。
更に、スケール除去・防錆液には、発明の効果を阻害しない範囲において、この種の製剤に含有させることがある公知の各種の成分を含有させることができる。例えば、スケール除去・防錆液の寿命延長を目的としてキレート剤も含有させることができる。キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸等の金属塩、アミン塩、アンモニウム塩等を、0.1〜10.0質量%程度の範囲内で含有させることができる。
次に本発明の実施例を説明する。本発明の技術的範囲は以下の実施例によって限定されない。
〔スケール除去・防錆液の調製〕
末尾の表1に示す実施例1〜10、比較例1〜10に係る組成のスケール除去・防錆液を調製した。表中の各実施例及び各比較例について、配合成分欄に、その成分の配合量を数値(質量%)で表記した。配合成分欄は成分のカテゴリー別に整理して表記した。例えば「(A)成分又は(A比)成分」と表記した部分は、(A)成分である有機ホスホン酸あるいはその塩、又はそれに対する比較用の成分を記載している。表に示した質量%数の配合成分以外の残部の組成分は水である。これらのスケール除去・防錆液のpHは、表に示した通りにpH調整剤(苛性ソーダ)を用いて調整した。
末尾の表1に示す実施例1〜10、比較例1〜10に係る組成のスケール除去・防錆液を調製した。表中の各実施例及び各比較例について、配合成分欄に、その成分の配合量を数値(質量%)で表記した。配合成分欄は成分のカテゴリー別に整理して表記した。例えば「(A)成分又は(A比)成分」と表記した部分は、(A)成分である有機ホスホン酸あるいはその塩、又はそれに対する比較用の成分を記載している。表に示した質量%数の配合成分以外の残部の組成分は水である。これらのスケール除去・防錆液のpHは、表に示した通りにpH調整剤(苛性ソーダ)を用いて調整した。
〔錆試験サンプルの準備〕
約10,000ショット鋳造生産を行った金属製(SKD61材)のアルミダイカスト金型を用意し、そのSKD61材からなる冷却管内を内視鏡で観察して錆が発生している領域の面積を確認した後、冷却管の洗浄を実施した。
約10,000ショット鋳造生産を行った金属製(SKD61材)のアルミダイカスト金型を用意し、そのSKD61材からなる冷却管内を内視鏡で観察して錆が発生している領域の面積を確認した後、冷却管の洗浄を実施した。
〔試験方法と評価〕
上記の錆試験片を用いて、前記の各実施例及び各比較例に係るスケール除去・防錆剤についてそれぞれ、以下のように「洗浄性」、「腐食抑制」、「防錆性」、を評価した。
上記の錆試験片を用いて、前記の各実施例及び各比較例に係るスケール除去・防錆剤についてそれぞれ、以下のように「洗浄性」、「腐食抑制」、「防錆性」、を評価した。
即ち、各実施例及び各比較例に係るスケール除去・防錆剤の試験液のそれぞれを、錆が発生した金型冷却管に1時間通液させ、洗浄性(錆除去性)を目視観察した。又、腐食抑制の評価については冷却管と同等材質であるSKD61の円柱ブロック材 半径15mm×高さ30mmを用意し、試験液に浸漬し、浸漬前後の重量変化を求めることにより行った。更に、防錆性の評価については、錆が発生した金型冷却管にこの試験液を1時間通液後、金型冷却管を7日保管しておき、7日後に錆の発生を目視観察することにより行った。
洗浄性(錆除去性)の評価基準は、試験前の内視鏡観察において錆が発生していた領域に対して90%以上の錆除去率であるものを「4」、70%以上で90%未満の錆除去率であるものを「3」、50%以上で70%未満の錆除去率であるものを「2」、50%未満の錆除去率であるものを「1」と評価した。
腐食抑制の評価基準は、上記の円柱ブロック材の重量変化が1%未満であるものを「4」、1%以上で5%未満であるものを「3」、5%以上で10%未満であるものを「2」、10%以上であるものを「1」とした。
防錆性の評価基準は、上記した7日後の錆発生の目視観察において、錆発生無しの面積が90%以上であるものを「4」、70%以上で90%未満であるものを「3」、50%以上で70%未満であるものを「2」、50%未満であるものを「1」とした。
本発明によって、有機ホスホン酸又はその塩を用いたスケール除去剤において除錆効果を高め、腐蝕の度合いを小さくし、除錆後の被洗浄金属の表面仕上げを向上させることが可能となる。
Claims (5)
- 金型の冷却回路に、下記の(A)成分〜(C)成分を含有しpH5〜8の範囲内に調整されているスケール除去・防錆液を通液させ、冷却回路のスケール除去と防錆を一液で行うことを特徴とする金型冷却回路回復方法。
(A)成分:有機ホスホン酸及びその塩から選ばれる1種以上。
(B)成分:カルボン酸及びその塩から選ばれる1種以上。
(C)成分:メルカプトカルボン酸及びその塩から選ばれる1種以上。 - 前記金型冷却回路回復方法が、スケール除去・防錆液による処理後の冷却回路の水洗いを必要としないものであることを特徴とする請求項1に記載の金型冷却回路回復方法。
- 前記金型冷却回路回復方法において、スケール除去後に(A)成分が金型構成材である鉄と化合してホスホン酸鉄の防錆皮膜を形成することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の金型冷却回路回復方法。
- 前記金型冷却回路が、金型内部に設けた冷却孔、金型内部に埋め込んだ冷却管又は金型の外側に設けた冷却管のいずれか1以上であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の金型冷却回路回復方法。
- 前記スケール除去・防錆液が以下のいずれか1以上に該当するものであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の金型冷却回路回復方法。
(1)前記(A)成分が、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸及びその塩から選ばれる1種以上である。
(2)前記(B)成分が、オキシカルボン酸及びその塩から選ばれる1種以上である。
(3)前記(C)成分が、メルカプトジカルボン酸及びその塩から選ばれる1種以上である。
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JP2008239571A JP2010069719A (ja) | 2008-09-18 | 2008-09-18 | 金型冷却回路回復方法 |
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CN111006097A (zh) * | 2019-12-09 | 2020-04-14 | 中国石油化工股份有限公司 | 油水井管道外防腐一体化设备 |
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