JP6558131B2 - 異常診断装置、軸受、機械装置及び車両 - Google Patents
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Description
しかしながら、上記従来技術では、軸受の経年劣化による振動の変化を考慮していないため、経年劣化による振動の変化に対して、しきい値が不適切な値となって、軸受の異常を正確に検出することができなくなる可能性がある。
また、本発明の第3の態様に係る機械装置は、上記第1の態様に係る異常診断装置を備える。
また、本発明の第4の態様に係る車両は、上記第1の態様に係る異常診断装置を備える。
また、以下に示す第1〜第2実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
(構成)
本発明の第1実施形態に係る鉄道車両1は、図1(a)及び(b)に示すように、複数の回転装置2を含んで構成される。
回転装置2は、車軸21と、車軸21の両端部において車軸21を支持する一対の複列円すいころ軸受3と、車軸21の一対の複列円すいころ軸受3よりも内側の両端部に固定支持された一対の車輪22とを含んで構成される。
複列円すいころ軸受3は、図2に示すように、軸受ハウジング23の内側にて車軸21の端部を回転自在に支持する。
第1の円すいころ軸受部24Aは、第1の内輪26Aと、複数個の第1の円すいころ27Aと、第1の保持器28Aとを備え、第2の円すいころ軸受部24Bは、第2の内輪26Bと、複数個の第2の円すいころ27Bと、第2の保持器28Bとを備える。
第1の内輪26Aは、外周面に円すい凸面状の第1の内輪軌道31Aを有し、第2の内輪26Bは、外周面に円すい凸面状の第2の内輪軌道31Bを有し、それぞれ車軸21の端部に外嵌固定した状態で、使用時にこの車軸21と共に回転するように構成されている。
また、第2の円すいころ27Bは、第2の外輪軌道30Bと、第2の内輪軌道31Bとの間にそれぞれ複数個ずつ、第2の保持器28Bにより保持された状態で転動自在に設けられている。
更に、複列円すいころ軸受3は、図2に示すように、軸受ハウジング23の外周面に取り付けられた異常診断装置4を備える。この異常診断装置4は、複列円すいころ軸受3の傷や剥離、車軸21の偏摩耗、車輪22のフラット磨耗等、異常診断対象である回転装置2の構成部品(以下、「診断対象部品」と記載する場合がある)に生じる異常を診断するものである。
加速度センサ33は、複列円すいころ軸受3の近傍で発生する振動を電気信号として出力する。
加速度センサ33は、異常診断対象の異常発生時の振動特性に応じて、1軸方向の加速度を測定可能なもの、2軸方向の加速度を測定可能なもの、3軸方向の加速度を測定可能なもの等を適宜選択して使用する。また、測定したい振動の方向に合わせて、1軸又は2軸のセンサを複数配置する構成としてもよい。また、本実施形態では、異常診断対象の異常が複数軸方向への振動を発生する場合、異常発生時の振動方向のうち最も大きい振動レベルの振動方向を代表軸方向として決定し、この軸方向の振動を測定可能な加速度センサを使用する。
車速センサ39は、第1実施形態において、鉄道車両1の床下に設けられており、レール面に対してマイクロ波又はミリ波を照射し、この照射波とレール面からの反射波とのドップラシフト量から車速Vを検出するセンサである。
この異常診断ユニット35は、回転装置2を構成する異常診断対象の各部品の運用時間の指標値である運用度を算出する処理、運用度に基づき異常診断用の閾値を設定する処理、異常診断対象の各部品に摩耗や破損等の異常が生じているか否かを診断する処理等を行う為に、加速度センサ33及び車速センサ39の出力した電気信号等を演算処理するものである。
第1のI/F部37aは、車速センサ39から出力されるアナログの電気信号である車速信号Vを、後段のコントローラ37dで演算処理可能な信号形式に変換するものである。 ここで、本実施形態では、コントローラ37dは、CPU(Central Processing Unit)等が搭載されたマイクロコントローラ(マイコン)から構成されている。
第1のI/F部37aは、変換後のデジタルの車速信号Vdを、コントローラ37dに出力する。
コントローラ37dは、第1のI/F部37aからの車速信号Vdに基づく車軸回転数ωの算出処理を行う。加えて、算出した車軸回転数ωと、第2のI/F部37bからの加速度信号Gdとに基づき、本実施形態では、複列円すいころ軸受3、車軸21及び車輪22に摩耗や破損等の異常が発生しているか否かを診断する。更に、コントローラ37dは、上述した運用度の算出処理、運用度に基づく診断閾値の設定処理を行う。
コントローラ37dは、図4に示すように、各種制御や演算処理を担う中央演算処理装置であるCPU60と、主記憶装置を構成するRAM(Random Access Memory)61と、読み出し専用の記憶装置であるROM(Read Only Memory)62と、RTC63とを備える。加えて、データ転送用の各種内外バス65と、入出力インターフェース(I/F)64とを備える。本実施形態では、RAM61は、例えばNOR型のフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリから構成される。
そして、電源を投入すると、ROM62等に記憶されたBIOS等のシステムプログラムが、ROM62に予め記憶された各種のコンピュータプログラムをRAM61にロードし、RAM61にロードされたプログラムに記述された命令に従ってCPU60が各種リソースを駆使して所定の制御及び演算処理を行うことで後述する各機能をソフトウェア上で実現できるようになっている。
運用度算出部371は、診断対象部品の運用時間の指標値である運用度Tpを算出する。
具体的に、運用度算出部371は、まず、回転装置2の各診断対象部品の最初の使用開始時の現在時刻TrdをRTC63から取得し、これを初回使用開始時刻TeとしてRAM61に記憶する。
なお、運用度算出部371は、診断対象部品が新品に交換される毎に、RAM61に記憶された交換された診断対象部品に対応する初回使用開始時刻Teを更新する。
第1実施形態では、運用度Tpと、運用度Tpに対応する振動の大きさに対して適正な診断閾値とが対応付けられた閾値マップがROM62に予め記憶されている。
例えば、試験運転等によって予め運用度Tpの大きさと振動の大きさとの関係を求めておき、この関係に基づき、各運用度Tpに対して各異常診断対象の異常を検出するのに適正な診断閾値を閾値マップに登録する。具体的には、運用度Tpの大きさに対応する大きさの振動の振動値から抽出される特徴周波数成分に対して適正な診断閾値を登録する。
振動測定部373は、第2のI/F部37bから予め設定したサンプリング周期で入力される加速度信号Gdの示す加速度値(以下、「振動値Gd」と記載する場合がある)を、常時RAM61に時系列に記憶する。これにより、回転装置2に生じる振動を測定する。
具体的に、下式(1)に従って、車速Vdと車輪径Rと円周率πとから車軸回転数ωを算出する。なお、下式(1)において、Vdの単位は[km/h]、ωの単位は[rpm]とする。
車軸回転数検出部374は、算出した車軸回転数ωを、特徴周波数成分抽出部375に出力する。
特徴周波数成分抽出部375は、車軸回転数検出部374からの車軸回転数ωに基づき、車軸21が予め設定した設定回転数範囲ωsで回転しているときに測定された振動値Gdから特徴周波数成分を抽出する。なお、設定回転数範囲ωsは、例えば、6000[rpm]〜9000[rpm]または6000[rpm]以上などの範囲に設定する。
第1実施形態では、診断可能時間Tfの期間の振動値を特徴周波数成分の抽出に必要な時間間隔で(周期的な振動区間毎に)M分割(Mは2以上の自然数)し、各分割区間の振動値に対して特徴周波数成分の抽出処理を行う。具体的に、診断可能時間Tfの期間にRAM61に記憶された設定回転数範囲ωsに対応する振動値群Gdsに対して次数解析処理を行う。
以下、特徴周波数成分As11,As12,・・・,As(M−1)(N−1),AsMNを、「特徴周波数成分As11〜AsMN」と略記する場合がある。
ここで、次数解析処理は、具体的に、FFT(高速フーリエ変換)を用いて、振動波形のパワースペクトル(振動レベル)を求め、このパワースペクトルを求めたときの車軸回転数に当たる周波数fsに対応する成分を1次成分として求める。加えて、この周波数fsの2倍、3倍、・・・、N−1倍、N倍の周波数毎のパワースペクトルを、2次〜N次成分として求める処理となる。また、Nの値は、異常診断対象に対応する次数成分によって適宜設定する。
異常診断部376は、特徴周波数成分抽出部375から診断開始指令Stdが入力されると、RAM61に記憶された特徴周波数成分As11〜AsMNと、RAM61に記憶された、閾値設定部372で設定された現在の運用度Tpに対応する診断閾値Th1〜ThNとを比較する。そして、各比較結果に基づき、回転装置2の診断対象部品に異常が発生しているか否かを診断する。異常診断部376は、この異常診断結果を、例えば、車載ネットワークを介して、統括制御装置へと出力する。
ここで、回転装置2の各診断対象部品は、長期間の運用によって経年劣化する。例えば、運用時間が長くなると複列円すいころ軸受3の内輪や外輪に摩耗等が生じる。また、潤滑剤の劣化によって摩耗が生じやすくなる。これら潤滑剤の劣化や摩耗等による摩擦や軸ブレ等の増大によって回転装置2に生じる振動が大きくなる。
従って、閾値マップは、次数成分(特徴周波数成分)毎に、各運用度の大きさに対応する振動波形の大きさに対して適正な診断閾値Th1〜ThNが登録されたものとなっている。具体的に、回転装置2の新品時の振動を基準として、予め基準診断閾値Thr1〜ThrNが設定されており、この基準診断閾値Thr1〜ThrNを、運用度の大きさ(経年劣化の劣化度の大きさ)に対応する振動の大きさに応じて適正な値へと補正した診断閾値Th1〜ThNがマップに登録されている。
次に、図7に基づき、異常診断装置4における異常診断処理の処理手順の一例を説明する。なお、異常診断処理は、鉄道車両1の運転中(駆動源の駆動中又は車両走行中)に所定周期で繰り返し実行される処理である。
CPU60において、プログラムが実行され異常診断処理が開始されると、図7に示すように、まず、ステップS100に移行する。
ステップS102では、振動測定部373において、振動測定処理を実施して、ステップS104に移行する。
ステップS104では、車軸回転数検出部374において、第1のI/F部37aを介して入力される車速Vdを取得し、取得した車速Vdに基づき車軸回転数ωを算出する。そして、算出した車軸回転数ωを特徴周波数成分抽出部375に出力して、ステップS106に移行する。
具体的に、特徴周波数成分抽出部375は、車軸回転数ωが設定回転数範囲ωsに含まれるか否かを判定し、含まれると判定した場合にRTC63のタイマ機能を用いて経過時間Tdの測定を開始する。そして、経過時間Td(カウント値Tc)が診断可能時間Tf以上となったと判定した場合に特徴周波数成分の抽出タイミングであると判定し、診断可能時間Tf未満であると判定した場合に抽出タイミングでは無いと判定する。
ステップS110では、異常診断部376において、閾値比較処理を実施して、ステップS112に移行する。
具体的に、異常診断部376は、診断可能時間Tfの期間、診断閾値以上となる次数成分に対応する診断対象部品に異常が発生していると診断し、診断可能時間Tfの期間中に閾値未満となる次数成分に対応する診断対象部品は正常であると診断する。
次に、図8に基づき、ステップS100の閾値設定処理の処理手順の一例を説明する。
ステップS100で閾値設定処理が開始されると、図8に示すように、まず、ステップS200に移行する。
ステップS200では、運用度算出部371において、回転装置2が最初の使用開始時か否かを判定する。そして、最初の使用開始時であると判定した場合(Yes)は、ステップS202に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、ステップS212に移行する。
即ち、運用度算出部371は、使用状態フラグが「1」のときは、最初の使用開始時であると判定し、使用状態フラグが「0」のときは、最初の使用開始時ではないと判定するように構成されている。
ステップS204では、運用度算出部371において、ステップS202で取得した現在時刻Trdを、回転装置2の全ての診断対象部品又は交換された診断対象部品の初回開始時刻TeとしてRAM61に記憶する。その後、ステップS206に移行する。
ステップS208では、閾値設定部372において、ROM62に記憶された閾値マップから、運用度算出部371から入力された現在の運用度Tpに対応する診断閾値Th1〜ThNを読み出す。その後、ステップS210に移行する。
一方、ステップS200において最初の使用開始時ではないと判定されステップS212に移行した場合は、運用度算出部371において、RTC63から現在時刻Trdを取得して、ステップS206に移行する。
次に、図9に基づき、ステップS110の閾値比較処理の処理手順の一例を説明する。
ステップS110で閾値比較処理が開始されると、図9に示すように、まず、ステップS300に移行する。
ステップS300では、異常診断部376において、変数i及びjに「1」を代入して、ステップS302に移行する。
ステップS304に移行した場合は、異常診断部376において、特徴周波数成分Asijが診断閾値Thi以上であるという判定結果を、RAM61に記憶する。その後、ステップS306に移行する。
ステップS308に移行した場合は、異常診断部376において、変数jの値がN(設定最大次数)と一致するか否かを判定し、一致すると判定した場合(Yes)は、ステップS310に移行し、一致しないと判定した場合(No)は、ステップS314に移行する。
一方、ステップS312に移行した場合は、異常診断部376において、現在の変数iの値に1を加算した値を変数iに代入すると共に、変数jに1を代入して、ステップS302に移行する。
上記一連の処理を変数iがM、変数jがNとなるまで繰り返し行うことで、特徴周波数成分As11〜AsMNが診断閾値以上であるか否かを判定する。
次に、図10に基づき、ステップS112の診断処理の処理手順の一例を説明する。
ステップS112で診断処理が開始されると、図10に示すように、まず、ステップS400に移行する。
ステップS400では、異常診断部376において、変数kに「1」を代入して、ステップS402に移行する。
即ち、本実施形態では、診断可能時間Tf以上の期間、k次成分が診断閾値Thk以上となる状態が継続した場合に、異常と診断する。
ステップS406では、異常診断部376において、ステップS404又はS412の診断結果をRAM61に記憶すると共に、車載ネットワークを介して、統括制御装置へと出力する。その後、ステップS408に移行する。
ステップS410では、異常診断部376において、現在の変数kの値に1を加算した値を変数kに代入して、ステップS402に移行する。
次に、図11に基づき、第1実施形態に係る鉄道車両1の具体的な動作例を説明する。
鉄道車両1が運転を開始して回転装置2を含む各種装置に電源が供給されると、加速度センサ33が回転装置2に生じる振動に応じた加速度Gの出力を開始し、車速センサ39が車速Vの出力を開始する。これにより、第1〜第2のI/F部37a〜37bを介して、車速Vd及び加速度(振動値)Gdがコントローラ37dに入力される。
一方、コントローラ37dは、電源供給に応じて起動し異常診断処理を開始する。ここでは、各診断対象部品の初回使用開始時刻Teが既にRAM61に記憶されていることとする。
閾値設定部372は、現在の運用度Tpに基づき、ROM62の閾値マップから運用度Tpに対応する診断閾値Th1〜ThNを読み出す。ここでは、N=5として、診断閾値Th1〜Th5を読み出したとする。そして、読み出した診断閾値Th1〜Th5を、RAM61の診断閾値用の記憶領域に記憶する。これにより、異常診断(閾値比較処理)に用いる診断閾値を設定する。
その後、運用時間が増加することで運用度Tpが大きくなり、また、運用時間が長くなることで回転装置2の診断対象部品のいずれかに摩耗等の経年劣化が生じる。そのため、回転装置2に発生する振動が初回使用開始時とは異なる振動に変化する。具体的に、運用度Tpが大きく(劣化度が大きく)なるほど振動の振幅が大きくなる。
診断閾値Th1〜Th5が設定されると、振動測定部373は、所定サンプリング周期で入力される振動値Gdを、時系列にRAM61に記憶する。
特徴周波数成分抽出部375は、車軸回転数検出部374からの車軸回転数ωの入力に応じて、抽出タイミングであるか否かを判定する。即ち、特徴周波数成分抽出部375は、車軸回転数検出部374から入力された車軸回転数ωが設定回転数範囲ωsに含まれるようになったか否かを判定する。
統括制御装置では、例えば、異常診断結果に基づき、対象の回転装置2の診断対象部品毎の診断結果の情報(例えば、異常発生の有無等)を回転装置2の位置が解る情報と共に運転席のモニタに表示する。また、異常発生時は、異常の内容に応じて、部品交換を促すメッセージや警告メッセージを表示したり、警報を鳴らしたり、警告ランプを点灯したりしてもよい。
第1実施形態において、複列円すいころ軸受3が軸受に対応し、車軸21が回転軸に対応し、車輪22が回転体に対応し、加速度センサ33が振動検出部に対応し、閾値設定部372が閾値設定部に対応し、車軸回転数検出部374が車軸回転数検出部に対応する。
(1)第1実施形態に係る異常診断装置4は、加速度センサ33が、車軸21を支持する複列円すいころ軸受3を含んで構成される回転装置2に生じる振動を検出する。特徴周波数成分抽出部375が、加速度センサ33で検出した振動の値である振動値から回転装置2の異常に係る特徴周波数成分を抽出する。異常診断部376が、特徴周波数成分抽出部375で抽出した特徴周波数成分As11〜AsMNと予め設定した診断閾値Th1〜ThNとを比較し、該比較の結果に基づき回転装置2の異常を診断する。運用度算出部371が、回転装置2の運用時間の指標値である運用度Tpを算出する。閾値設定部372が、運用度算出部371で算出した運用度Tpに基づき、運用時間の長さ(経年劣化の劣化度の大きさ)に応じて大きさの変化する振動の振動値から抽出される特徴周波数成分As11〜AsMNに対して適正な診断閾値Th1〜ThNを設定する。
これにより、経年劣化による回転装置2の異常の誤診断を低減することが可能となり、異常診断装置4の信頼性を向上することが可能となる。
この構成であれば、回転装置2の最初の使用開始時からの経過時間の長さに対応する振動の大きさに対して適正な診断閾値を設定することが可能となる。即ち、経過時間が長いほど経年劣化の劣化度が大きくなり、回転装置2に生じる振動の変化も大きくなっていくので、劣化度に応じた適正な診断閾値を設定することが可能となる。
ここで、回転装置2を構成する軸受や回転体は、経年劣化によって摩耗が発生する。この摩耗によって部材間の隙間の広がりや、変形による接触部分の変化等によって、回転装置2に生じる振動が大きくなる。そして、経年劣化により振動レベルが大きくなった場合、この変化を考慮しない診断閾値を用いると、特徴周波数成分が診断閾値を上回って、本来ならば正常であるのに、異常と誤診断する可能性がある。
即ち、上記(3)の構成であれば、運用度Tpが大きいほど大きい診断閾値Th1〜ThNを設定するようにしたので、正常時に特徴周波数成分が診断閾値を上回る誤診断を低減することが可能となる。
この構成であれば、回転装置2の構成部品毎の異常を診断することが可能となり、構成部品毎に修理や交換等を行うことが可能となる。これによって、回転装置のメンテナンスにかかるコストを低減することが可能となる。
この構成によって、上記(1)〜(5)のいずれか1に記載した異常診断装置4の作用及び効果と同等の作用及び効果を得ることが可能である。
(7)機械装置の1種である回転装置2は、異常診断装置4を備える。
この構成によって、上記(1)〜(5)のいずれか1に記載した異常診断装置4の作用及び効果と同等の作用及び効果を得ることが可能である。
(8)車両の1種である鉄道車両1は、異常診断装置4を備える。
この構成によって、上記(1)〜(5)のいずれか1に記載した異常診断装置4の作用及び効果と同等の作用及び効果を得ることが可能である。
(構成)
次に、図面に基づき、本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態は、上記第1実施形態において、初回使用開始時刻からの経過時間を算出することで運用度Tpを算出していたのに対して、鉄道車両1の走行距離に基づき回転装置2の各診断対象部品の実動時間を運用度Tpとして算出する点で異なる。かかる相違点以外は上記第1実施形態と同様となる。
第2実施形態の鉄道車両1は、鉄道車両1の総走行距離(累計走行距離)を計測する走行距離計38を備える。
第2実施形態のROM62には、鉄道車両1の平均速度Vaが記憶されている。
実動総走行距離算出部3710は、回転装置2の各診断対象部品の最初の使用開始時からの総走行距離である実動総走行距離Drを算出する。
具体的に、実動総走行距離算出部3710は、まず、回転装置2の各診断対象部品の最初の使用開始時の現在の総走行距離DdをCAN等の車載ネットワークを介して走行距離計38から取得し、これを初回総走行距離DeとしてRAM61に記憶する。
実動時間算出部3711は、実動総走行距離算出部3710からの各診断対象部品の実動総走行距離Drの入力に応じて、RAM61から鉄道車両1の平均速度Vaを取得する。そして、各診断対象部品の実動総走行距離Drを平均速度Vaで除算することで実動時間を算出し、この実動時間を、運用度Tpとして、閾値設定部372に出力する。
即ち、第2実施形態の運用度算出部371は、回転装置2の実動時間を運用度Tpとして算出する。従って、第2実施形態のROM62には、回転装置2の運用度Tpの大きさ(実動時間の長さに対応する経年劣化の劣化度の大きさ)に対応する振動の大きさに対して適正な診断閾値が記憶されている。
次に、図13に基づき、第2実施形態の閾値設定処理の処理手順の一例を説明する。
ステップS100で閾値設定処理が開始されると、図13に示すように、まず、ステップS500に移行する。
ステップS500では、運用度算出部371において、回転装置2が最初の使用開始時か否かを判定する。そして、最初の使用開始時であると判定した場合(Yes)は、ステップS502に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、ステップS514に移行する。
ステップS504では、運用度算出部371において、ステップS502で取得した現在の総走行距離Ddを、全ての診断対象部品又は交換された診断対象部品の初回総走行距離DeとしてRAM61に記憶する。その後、ステップS506に移行する。
ステップS508では、運用度算出部371において、ステップS502又はS514で取得した現在の総走行距離DdからRAM61に記憶された各診断対象部品の初回総走行距離Deを減算してなる実動総走行距離Drを算出する。その後、ステップS510に移行する。
ステップS512では、閾値設定部372において、ROM62に記憶された閾値マップから、運用度算出部371から入力された現在の運用度Tpに対応する診断閾値Th1〜ThNを読み出す。その後、ステップS514に移行する。
一方、ステップS500において最初の使用開始時ではないと判定されステップS514に移行した場合は、運用度算出部371において、車載ネットワークを介して走行距離計38から現在の総走行距離Ddを取得して、ステップS506に移行する。
次に、第2実施形態に係る鉄道車両1の具体的な動作例を説明する。
ここでは、各診断対象部品の初回総走行距離Deが既にRAM61に記憶されていることとする。また、上記第1実施形態と同様の動作部分については説明を省略する。
閾値設定処理が開始されると、運用度算出部371は、実動総走行距離算出部3710において、まず、車載ネットワークを介して走行距離計38から現在の総走行距離Ddを取得し、RAM61から初回総走行距離Deを取得する。そして、取得した現在の総走行距離Ddから初回総走行距離Deを減算して実動総走行距離Drを算出し、算出した実動総走行距離Drを、実動時間算出部3711に出力する。
第2実施形態において、複列円すいころ軸受3が軸受に対応し、車軸21が回転軸に対応し、車輪22が回転体に対応し、加速度センサ33が振動検出部に対応し、閾値設定部372が閾値設定部に対応し、車軸回転数検出部374が車軸回転数検出部に対応する。
第2実施形態は、上記第1実施形態の効果に加えて、以下の効果を奏する。
(1)第2実施形態に係る異常診断装置4は、運用度算出部371が、運用度Tpとして、回転装置2の実動時間を算出する。
この構成であれば、回転装置2の実際の動作時間を運用度Tpとして算出することが可能となるので、回転装置2の経年劣化の度合をより正確に示す運用度Tpを求めることが可能となる。これによって、回転装置2の経年劣化によって変化する振動の大きさに対して、より適正な診断閾値を設定することが可能となる。
この構成であれば、鉄道車両1の走行距離に基づき実動時間を算出することが可能となるので、簡易な計算で運用度Tpを算出することが可能となる。
特に、鉄道車両は、毎日決まったコースを決まった時間で走行するため平均速度が決まっていると共に事故等が生じない限り変化しない。また、平均速度を予め記憶保持しておくことで、鉄道車両の備える走行距離計から得られる総走行距離を平均速度で除算するといった簡易な計算で回転装置2の実動時間を算出することが可能である。
(1)上記実施形態では、運用度に対応する診断閾値が登録された閾値マップを参照して異常診断に用いる診断閾値を設定する構成としたが、この構成に限らない。例えば、その都度、基準診断閾値を運用度の大きさに応じた補正量で補正して運用度に対応する診断閾値を算出し、これを異常診断に用いる診断閾値として設定する構成としてもよい。また、例えば、運用度を入力値とし該運用度に対応する振動の大きさに対して適正な診断閾値を出力値とする関数を用いて運用度に対応する診断閾値を算出し、これを異常診断に用いる診断閾値として設定する構成とするなど他の構成としてもよい。
(3)上記実施形態では、振動を検出するセンサとして、加速度センサを例に挙げて説明したが、この構成に限らない。例えば、AE(acoustic emission)センサ、超音波センサ、ショックパルスセンサ、マイクロホン等や、あるいは、速度、加速度、歪み、応力、変位型等、回転装置2の振動に起因して発生する物理量を電気信号化できるものであれば他のセンサを用いる構成としてもよい。また、ノイズが多いような機械装置に取り付ける際には、絶縁型を使用する方がノイズの影響を受けることが少ないので好ましい。さらに、圧電素子等の振動検出素子を使用する場合には、この素子をプラスチック等にモールドして構成してもよい。
(5)上記実施形態では、1つの加速度センサの出力する加速度信号に対して異常診断処理をする構成としたが、この構成に限らない。例えば、加速度センサを2つ設け、2つの加速度センサの出力する2つの加速度信号に対して、異常診断部によって異常診断処理を行う構成としてもよい。この場合、例えば、2つの加速度信号から得た2つの振動値の平均値を求め、この平均値に対して異常診断処理を行う。
(7)上記実施形態では、回転軸(車軸)を支持する軸受として、複列円すいころ軸受を例に挙げて説明したが、この構成に限らない。例えば、円筒ころ軸受、針状ころ軸受、自動調心ころ軸受等の他のころ軸受、深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受等の玉軸受など他の軸受とする構成としてもよい。なお、複列の軸受に限らず、単列の軸受、四列の軸受など他の構成としてもよい。
(10)上記実施形態では、振動を検出するセンサを、複列円すいころ軸受の近傍に設ける構成としたが、この構成に限らず、回転装置の構成部品の異常に係る特徴周波数成分を含む振動を検出可能であれば他の位置に設ける構成としてもよい。
Claims (10)
- 回転軸を支持する軸受を含んで構成される回転装置に生じる振動を検出する振動検出部と、
前記振動検出部で検出した振動の値である振動値から前記回転装置の異常に係る特徴周波数成分を抽出する特徴周波数成分抽出部と、
前記特徴周波数成分抽出部で抽出した前記特徴周波数成分と予め設定した診断閾値とを比較し、該比較の結果に基づき前記回転装置の異常を診断する異常診断部と、
前記回転装置の運用時間の指標値である運用度を算出する運用度算出部と、
前記運用度算出部で算出した前記運用度に基づき、前記運用時間の長さに応じて大きさの変化する振動の振動値から抽出される前記特徴周波数成分に対して適正な診断閾値を設定する閾値設定部と、
前記回転軸の回転数を検出する回転数検出部と、
前記振動検出部で検出した前記振動値を時系列に記憶媒体に記憶する振動測定部と、を備え、
前記特徴周波数成分抽出部は、前記振動測定部が記憶した振動値のうち、予め設定した設定回転数の範囲内となる回転数で前記回転軸が回転時の振動値から前記特徴周波数成分を抽出する異常診断装置。 - 前記回転数検出部で検出した前記回転数が、予め設定した設定回転数の範囲内となる回転数となっている間の経過時間を測定する経過時間測定部を備え、
前記特徴周波数成分抽出部は、前記経過時間測定部で測定した前記経過時間が前記特徴周波数成分の抽出に必要な時間間隔である診断可能時間となる毎に、該診断可能時間の期間に前記記憶媒体に記憶された振動値から前記特徴周波数成分を抽出する請求項1に記載の異常診断装置。 - 前記運用度算出部は、前記運用度として、前記回転装置の最初の使用開始時から現在時刻までの経過時間を算出する請求項1又は2に記載の異常診断装置。
- 前記運用度算出部は、前記運用度として、前記回転装置の実動時間を算出する請求項1又は2に記載の異常診断装置。
- 前記回転装置は車両に搭載され、
前記運用度算出部は、前記車両の走行距離に基づき前記回転装置の実動時間を算出する請求項4に記載の異常診断装置。 - 前記閾値設定部は、前記診断に用いる診断閾値として、前記運用度が大きくなるほど大きくなる診断閾値を設定する請求項1から5のいずれか1項に記載の異常診断装置。
- 前記回転装置は、前記軸受と、前記回転軸と、前記回転軸に支持された回転体とを含んで構成され、
前記異常診断部の異常診断対象は、前記軸受、前記回転軸及び前記回転体を含む前記回転装置の構成部品であり、
前記特徴周波数成分抽出部は、前記構成部品毎に異なる前記特徴周波数成分を抽出し、
前記運用度算出部は、前記構成部品毎の運用度を算出し、
前記閾値設定部は、前記構成部品毎に異なる前記特徴周波数成分に対して適正な診断閾値を設定する請求項1から6のいずれか1項に記載の異常診断装置。 - 請求項1から7のいずれか1項に記載の異常診断装置を備えた軸受。
- 請求項1から7のいずれか1項に記載の異常診断装置を備えた機械装置。
- 請求項1から7のいずれか1項に記載の異常診断装置を備えた車両。
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