JP6555518B2 - 天井の脱落防止方法及び脱落防止構造 - Google Patents
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Description
しかしながら、上記説明した特許文献1に記載された補強構造については、一般的に用いられる所謂ピンネット工法(ピンでモルタルをコンクリートへ固定し、ひび割れたモルタルをネット層で補強することで、外壁の落下を防止する補修工法)を天井に採用した事例はあるものの、地震時の壁や天井の落下防止については考慮されていない。また、上記説明した特許文献2に記載された天井防振構造及び特許文献3の落下防止構造については、前述したパネル部材や吊ボルトを用いて左官仕上げ天井より比較的軽量に構築された天井を対象とし、左官仕上げ天井のように質量の大きい天井の脱落を防止できるか不明である。
即ち、現在のところ、左官仕上げ天井については、地震時における脱落防止対策工法に確たるものがない。
上記構成によれば、メッシュシート及び接着剤によって左官仕上げ天井とメッシュシートとを板状に一体化し、補強天井を形成することで、地震動等の外力によって左官仕上げ天井に部分的な破損が発生しても局所的な分離を起こさせない。また、ボルトによって、左官仕上げ天井及びメッシュシートの一体性を高め、左官仕上げ天井の部分的な破損の広がりを抑えることができる。さらに、メッシュシートとボルト取付後の塗装を施すことによって既存同様の天井の外観に復元することができる。
上記構成によれば、地震動等の外力により左官仕上げ天井が割れて落ちそうになっても左官仕上げ天井の荷重はボルトを通じて天井固定具に伝達され、さらに連結具を通して躯体に解放される。このようにメッシュシートと一体化した左官仕上げ天井を躯体によって支持し、下方への落下をより効果的に防止することができる。
上記構成によれば、左官仕上げ天井を単独で揺らすことなく建築物と一体に震動させ、左官仕上げ天井のみでの振動の増幅と躯体への衝突を回避することができる。
上記構成によれば、左官仕上げ天井に装飾としてレリーフが設けられていた場合であっても、既存同様の天井の外観を復元することができる。
上記構成によれば、メッシュシート及び接着剤によって既存の左官仕上げ天井とメッシュシートが板状に一体化され、左官仕上げ天井の部分的な破損が発生しても局所的な分離が生じない。また、ボルトによって、左官仕上げ天井及びメッシュシートの一体性が高まり、部分的な破損の広がりが抑えられる。さらに、塗膜層によって、最終的に既存同様の外観で左官仕上げ天井が復元される。
上記構成によれば、地震動等の外力により左官仕上げ天井が割れて落ちそうになっても左官仕上げ天井の荷重はボルトを通じて天井固定具に伝達され、さらに連結具を通して躯体に解放される。このようにメッシュシートと一体化された左官仕上げ天井が躯体に支持され、下方への落下が防止される。
上記構成によれば、左官仕上げ天井が建築物と一体に震動し、単独で揺れない。これにより、左官仕上げ天井のみでの振動の増幅と躯体への衝突が回避される。
上記構成によれば、左官仕上げ天井に装飾としてレリーフが設けられていた場合であっても、既存同様の天井の外観が復元される。
即ち、左官仕上げ天井2、下地鉄骨38、フラットバー30、埋め込みアンカー32及び補強部材39は、既存部材である。
なお、左官仕上げ天井2のラス網モルタル及び下地鉄骨38に替えて木摺下地が用いられていてもよい。
領域R1においては、図1に示すように、下地鉄骨38の矢印方向D2の両端部が端部固定プレート40で梁22等の躯体20に緊結されている。
図4は、端部固定プレート40の斜視図である。なお、図2(a),(b)では、端部固定プレート40の図示を省略する。
図4に示すように、端部固定プレート40は、ボルト等で下地鉄骨38及び梁22等の躯体20に固定される下地固定面40A及び躯体固定面40Bを備えている。端部固定プレート40には、ボルト等を挿入可能な孔が適所に形成されている。
また、領域R1においては、図2(b)に示すように、下地鉄骨38を支持するフラットバー30の上端部30cは、ボルト40及びナット42で吊元補強アングルピース34に固定されている。吊元補強アングルピース34は金属拡張系アンカー36及びナットで躯体23に躯体面23b側から固定されている。なお、フラットバー30と吊元補強アングルピース34との接合は、機械的に接合されていればよく、ボルト40及びナット42を用いず、例えばリンダプター(登録商標)等によってなされていてもよい。
図1に示すように、メッシュシート4には、ポリプロピレンシートが用いられている。なお、メッシュシート4として、左官仕上げ天井2の小片を落下させず、均等に左官仕上げ天井2の重量を支持できるものが望ましく、例えば5mmから20mm程度の網目間隔のものが推奨される。メッシュシート4を左官仕上げ天井2に貼り付けるための接着剤には、カチオンや石膏のコテ塗が用いられている。
なお、メッシュシート4は左官仕上げ天井2の既存形状になじみやすい繊維状のものが適しており、ガラス繊維シートや炭素繊維シート等であってもよい。
ボルト6は、平面視で所定の間隔をあけて補強天井18に複数貫通されている(図1参照)。ボルト6同士の所定の間隔は、例えば450mmとされているが、適切に設定されていればよい。
天井固定具8には、側面視でL字形のアングルピースが用いられている。なお、ボルト6によって補強天井18の上面18aに固定可能であって、連結具14,15を接続可能であれば、天井固定具8は例えばT形やC形の鋼材、ブロック状の鋼材、その他の部材であってもよく、その形状や素材は特に限定されない。
図1に示す領域R1においては、図2(a)に示すように、水平方向のうち矢印方向D2に沿って、間隔をあけて配置されている複数の天井固定具8の孔13に連結具15が挿通されている。連結具15の不図示の両端部は梁22等の躯体20に緊結されている。また、連結具15は矢印方向D2に沿って所定の間隔をあけて連結具16で躯体23に緊結されている。連結具16の上部は吊元補強アングルピース34に挿通され、金属拡張系アンカー36を介して、ボルト及びナットで躯体23に躯体面23b側から固定されている。連結具16の端部16cはこのように吊元補強アングルピース34に掛け回されて留め具等によって係止されている。連結具16の端部16dは連結部15に掛け回されて留め具等によって係止されている。このように、天井固定具8は、連結具15で梁22に緊結されると共に、連結具16で躯体23に緊結され、躯体20に支持されている。
即ち、領域R1及び領域R2のいずれにおいても、天井固定具8と躯体20との間は連結具14,15,16によって緊結されている。
図5は、レリーフ50が取り付けられた脱落防止構造1の側面図及びレリーフ50の平面図である。なお、脱落防止構造1の構成及びレリーフ50の取り付け状態をそれぞれわかりやすく示すために、図1から図3ではレリーフ50の図示を省略し、図5を参照してレリーフ50の取り付け状態を説明する。
また、レリーフ50は、装飾部52及び側壁部54に囲まれた内部空間に接着石膏62が設けられることで補強され、塗膜層10及びメッシュシート4を介して左官仕上げ天井2に接着されている。
ボルト60及びナット64として一方向からのみ緊結できるものを採用することで、多数のレリーフ50が左官仕上げ天井2に効率よく取り付けられる。
次に、補強天井18の下面18b側からボルト6を貫通させる。そして、補強天井18の上面18aから上方に突出したボルト6のボルト本体6yに天井固定具8の孔12を螺合させる。このようにして、ボルト6で左官仕上げ天井2と天井固定具8とを固定する工程を行う。
なお、上記説明した脱落防止構造1の領域R1,R2における作業の順序は逆にしてもよく、同時に並行してもよい。
また、図2(b)に示すように、脱落防止構造1の領域R1において、下地鉄骨38を支持するフラットバー30の上端部30cをボルト40及びナット42で吊元補強アングルピース34に固定し、吊元補強アングルピース34を金属拡張系アンカー36及びナットで躯体23に躯体面23b側から固定する。
従って、本実施形態の脱落防止方法によれば、既存の左官仕上げ天井2に装飾としてレリーフ50が設けられていた場合であっても、既存同様の天井の外観を復元することができる。また、ボルト60及び接着石膏62でレリーフ50を左官仕上げ天井2に固定することで、地震時等におけるレリーフ50の脱落を防止することができる。
従って、脱落防止構造1の全領域において、作業者が躯体23と左官仕上げ天井2との間に入ることができれば、領域R1における天井固定具8に対する連結具15の挿通方法、連結具15に対する連結具16の接続方法、これらの連結具15,16の両端部の躯体20への接続方法及びフラットバー30の吊元の補強方法のみが脱落防止のために採用されてもよい。この脱落防止方法では、上記説明したように、複数の天井固定具8の孔13にわたって連結具15を挿通させるので、個々の天井固定具8を躯体20に接続するのに比べて作業量をより抑え、且つ連結具15の軸線方向に沿って補強天井18の一体性を効率良く高めることができる。また、連結具15の両端部をそれぞれ梁22等の躯体20に緊結することで、連結具15及び既存の下地鉄骨38によって補強天井18を躯体20により多くの位置から支持させ、比較的質量の大きい左官仕上げ天井2の地震時等の揺れに伴う荷重を躯体20に効率良く解放し、脱落防止構造1の脱落防止性を高めることができる。さらに、躯体23の躯体面23bに吊元補強アングルピース34を設置し、これに連結具16を掛け回して係止し、一方で連結具15に連結具16を掛け回して係止することで、より簡便な作業で脱落防止構造1を躯体23に支持させ、脱落防止構造1の脱落防止性をさらに高めることができる。
また、脱落防止構造1の全領域において、作業者が躯体23と左官仕上げ天井2との間に入ることが困難であれば、領域R2における天井固定具8に対する連結具14の挿通方法及び連結具14の両端部の躯体20への接続方法のみが脱落防止のために採用されてもよい。この脱落防止方法では、個々の天井固定具8を連結具14で躯体20に接続することで、連結具14及び既存の下地鉄骨38によって補強天井18を躯体20にさらに多くの位置から支持させ、比較的質量の大きい左官仕上げ天井2の地震時等の揺れに伴う荷重を躯体20に効率良く解放すると共に、脱落防止構造1の脱落防止性を高めることができる。
そして、連結具14,15,16にワイヤロープ等の比較的容易に変形可能な部材を用いることで、領域R1,R2に共通して作業を進めやすく、また脱落直前の左官仕上げ天井2の荷重を連結具14,15,16及び躯体20に円滑に分散させることができる。
2 左官仕上げ天井
4 メッシュシート
6,60 ボルト
8 天井固定具
10 塗膜層
14,15,16 連結具
20 躯体
22 梁(躯体)
38 下地鉄骨(下地)
40 端部固定プレート
50 レリーフ
50e 内壁面(裏面)
51 ガラス繊維
Claims (8)
- 左官仕上げ天井の下面にメッシュシートを接着剤で貼り付けて前記左官仕上げ天井と前記メッシュシートとを一体化して補強天井を形成する工程と、
前記補強天井にボルトを貫通させ、該ボルトで前記補強天井と天井固定具とを固定する工程と、
前記補強天井及び前記ボルトの下面に、前記左官仕上げ天井と同様の塗装を施す工程と、
を備えていることを特徴とする天井の脱落防止方法。 - 前記補強天井と天井固定具とを固定する工程において、
前記ボルトを前記補強天井の下面側から前記補強天井に貫通させると共に、前記ボルトで前記補強天井の上面側に前記天井固定具を固定し、
前記天井固定具を連結具で躯体に緊結することを特徴とする請求項1に記載の天井の脱落防止方法。 - 前記左官仕上げ天井の下地を端部固定プレートで躯体に緊結する工程をさらに備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の天井の脱落防止方法。
- 前記補強天井を形成する工程を行う前に
前記左官仕上げ天井に装飾として設けられたレリーフを一旦取り外し、前記レリーフの裏面にガラス繊維による補強を行い、
前記塗装を施す工程を行った後に、
補強を行った前記レリーフをボルトで前記補強天井に固定することを特徴とする請求項1から請求項3までの何れか一項に記載の天井の脱落防止方法。 - 左官仕上げ天井と該左官仕上げ天井の下面に接着剤で貼り付けられたメッシュシートとを有する補強天井と、
前記補強天井を厚み方向に貫通するボルトと、
前記ボルトによって前記補強天井に固定された天井固定具と、
前記補強天井及び前記ボルトの下面を覆う塗膜層と、
を備えていることを特徴とする天井の脱落防止構造。 - 前記ボルトは前記補強天井の下面側から前記補強天井を厚み方向に貫通し、
前記天井固定具は前記補強天井の上面側に固定され、
前記天井固定具と躯体との間が連結具によって緊結されていることを特徴とする請求項5に記載の天井の脱落防止構造。 - 前記左官仕上げ天井の下地が端部固定プレートで躯体に緊結されていることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の天井の脱落防止構造。
- 前記補強天井の下方に、ガラス繊維による補強を行ったレリーフが設けられていることを特徴とする請求項5から請求項7までの何れか一項に記載の天井の脱落防止構造。
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