以下に、本発明に係る熱圧着装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
〔実施形態〕
図1は、実施形態に係る熱圧着装置の概略図である。図2は、図1に示す熱圧着装置が有する電極の斜視図である。実施形態に係る熱圧着装置1は、交流サイリスタ方式(電源開閉器としてサイリスタを用い、溶接電流をサイリスタなどの点弧位相を変えて連続的に電流調整を行う方式)によって、複数の被溶接材である複数の電線60を組み合わせた組合せ電線64を溶接し、熱圧着する装置になっている。この熱圧着装置1は、側面略コ字形で箱形の装置本体5を有しており、装置本体5の中央、即ち、コの字における凹んでいる部分には、熱圧着をする複数の電線60を所望の状態に保持するための治具である電線セット治具10が配置されている。装置本体5には、この電線セット治具10の上方に、エアシリンダ15が配設されている。
これら電線セット治具10とエアシリンダ15の下方には、組合せ電線64を構成する複数の電線60がそれぞれ有する導体部である芯線61同士を上下方向に重ねた状態で芯線61の溶接部分を上下方向に加圧すると共に、芯線61の溶接部分に対して溶接電流を通電することにより芯線61同士を溶接する上下一対の電極20が設けられている。この一対の電極20は、それぞれ円柱状のクロム銅体23と直方体状のタングステンチップ24とでそれぞれ構成されている。ここで、芯線61は、例えば複数の導電性の素線を撚り合せたものである。
詳しくは、一対の電極20のうち、上側に位置する電極20である第1電極21と、下側に位置する電極20である第2電極22とは、共にタングステンチップ24が、他方の電極20に対向するように構成されている。即ち、第1電極21は、クロム銅体23の下端側にタングステンチップ24が配設され、第2電極22は、クロム銅体23の上端側にタングステンチップ24が配設されており、これにより、第1電極21と第2電極22とは、共にタングステンチップ24が他方の電極20に対向している。その際に、第1電極21のタングステンチップ24と、第2電極22のタングステンチップ24とは、それぞれの形状である直方体状の長手方向の向きが、同じ方向を向く向きで配設されている。つまり、第1電極21のタングステンチップ24と第2電極22のタングステンチップ24とは、略平行になる向きで配設されている。
一対の電極20のうち第1電極21は、電極ホルダ25を介してエアシリンダ15のピストンロッド16に連結されており、エアシリンダ15が作動してピストンロッド16が伸縮するのに伴い、第1電極21は上下方向に移動するようになっている。また、電極20の下方には、電極20に溶接電流を供給する溶接トランス30が配設されており、第1電極21は、オンス銅板31を介して、この溶接トランス30に接続されている。一方、第2電極22は、装置本体5の中央部に固定されて、溶接トランス30に接続されている。この溶接トランス30は、低電圧(例えば2V程度)、大電流(例えば4000〜6000A)を得るために、一次、二次巻線等を有して構成されている。
図3は、図1に示す熱圧着装置の要部構成を示すブロック図である。溶接トランス30には、溶接電流の通電時間を制御する溶接タイマ35が接続されており、溶接タイマ35には、シーケンス制御回路等を備えるシーケンサ36が接続されている。溶接タイマ35は、このシーケンサ36からの通電開始及び通電終了信号により制御され、溶接トランス30に対して通電開始や通電停止の動作を行わせることが可能になっている。
また、エアシリンダ15は、エアシリンダ15に対して流入したり流出したりするエアを、電磁弁17によって制御することにより作動し、ピストンロッド16を上下動させることが可能になっている。この電磁弁17も、シーケンサ36からの通電開始及び通電終了信号によって制御され、これらの信号によって開閉することにより、電磁弁17は、エアシリンダ15を作動させることができる。このエアシリンダ15が作動し、ピストンロッド16によって一対の電極20間で発生する加圧力は、例えば100〜200kgf前後に設定されている。
また、電線セット治具10には、組合せ電線64を構成する複数の電線60のそれぞれが有する芯線61からなる芯線61の集合体65の溶接部分の溶接幅Wを測定する幅測定部である幅変位センサ40が設けられている。幅変位センサ40は、水平方向、即ち、溶接をする芯線61の集合体65の幅方向に移動する接触測定子41を備えており、接触測定子41の移動距離により、芯線61の集合体65における溶接部分の溶接幅Wを測定することが可能になっている。
幅変位センサ40はシーケンサ36に接続されており、シーケンサ36には、各種演算処理を行う演算部50が接続されている。演算部50のハード構成は、主に演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)や、熱圧着装置1を作動させるためのプログラム、各種情報を記憶するRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などから構成され、既知の演算装置と同様であるため、詳細な説明は省略する。
また、演算部50には、溶接電流の通電開始から通電停止までの通電時間等を表示する表示部である表示器51が設けられている。表示器51は、熱圧着装置1を用いて作業を行う作業者が視認することができる位置に配置されていると共に、液晶パネル等の表示部材を備えており、溶接電流の通電開始から通電停止までの通電時間等の情報を表示することができるようになっている。
また、電極ホルダ25には、組合せ電線64を構成する複数の電線60のそれぞれが有する芯線61からなる芯線61の集合体65の溶接部分の高さH′(図6参照)を測定する高さ変位センサ45が設けられている。この高さ変位センサ45は、上下方向に重ねた芯線61同士の高さを検出する高さ検出部として設けられている。高さ変位センサ45は、上下方向に移動すると共に、高さ変位センサ45での高さの検出用として電線セット治具10に設けられる基準板部11に当接する接触測定子46を備えている。高さ変位センサ45は、第1電極21側に設けられる高さ変位センサ45と、電線セット治具10に設けられる基準板部11との相対的な移動距離を、接触測定子46によって検出することにより、芯線61の集合体65における溶接部分の高さH′を検出することが可能になっている。このように設けられる高さ変位センサ45も、幅変位センサ40と同様にシーケンサ36に接続されている。
また、演算部50には、高さ変位センサ45での検出結果に基づいて、組合せ電線64の異常を検出する異常検出部55が設けられている。この異常検出部55は、演算部50の記憶部に記憶されるプログラムとデータベースとにより構成されており、当該プログラムを実行し、高さ変位センサ45での検出結果と、データベース中のデータとを比較することにより、組合せ電線64に異常を検出することが可能になっている。組合せ電線64の異常としては、例えば、組合せ電線64を構成する電線60の過不足を検出することが可能になっている。
本実施形態に係る熱圧着装置1は、以上のような構成からなり、以下、その作用について説明する。図4は、熱圧着装置で電線の熱圧着を行う場合の処理手順を示すフロー図である。図5は、組合せ電線を構成する電線をセットする場合の説明図である。図6は、図5のA−A断面図である。組合せ電線64を構成する電線60を、熱圧着装置1によって熱圧着する場合には、組合せ電線64を構成する各電線60における溶接部分の被覆62を除去し、それぞれの電線60で芯線61を露出させ、各電線60がそれぞれ有する芯線61をまとめて集合体65として、電線セット治具10にセットする。即ち、組合せ電線64を構成する電線60は、露出した芯線61の集合体65を第1電極21と第2電極22との間に配置する。この状態で、芯線61の溶接部分の溶接幅Wを、幅変位センサ40で測定することにより検出する(ステップST11)。
詳しくは、芯線61を電線セット治具10にセットする際には、芯線61を、当該芯線61の幅方向における両側から、電線セット治具10が有する一対の保持部材12によって保持する。即ち、芯線61は、保持部材12間に入れることにより、保持部材12で保持する。その際に、保持部材12は、芯線61の幅に応じて間隔が変化する方向に、保持部材12の一方、或いは双方を相対移動させることにより、保持部材12同士の間隔を、芯線61の幅に合わせる。保持部材12を移動させた場合には、保持部材12に伴って幅変位センサ40の接触測定子41も移動するため、幅変位センサ40は、この接触測定子41の移動距離を検出することにより、芯線61の溶接部分の溶接幅Wを検出する。
次に、幅変位センサ40で検出した溶接幅Wより予め定められた、組合せ電線64を構成する電線60が有する芯線61の溶接部分の基準溶接断面積Sに基づいて、当該溶接部分の基準溶接高さHを演算部50で算出する(ステップST12)。ここで、溶接部分の基準溶接高さHについて説明する。図7は、芯線の熱圧着前の状態を示す芯線の断面図である。図8は、芯線の熱圧着後の状態を示す芯線の断面図である。組合せ電線64を構成する電線60がそれぞれ有する芯線61同士を熱圧着する場合には、芯線61を集合体65にした状態で、芯線61に対して溶接電流を通電し、抵抗発熱によって芯線61の温度を上昇させながら、上下方向に押し縮める方向の荷重を付与することにより、芯線61同士を熱圧着する。このため、熱圧着によって、一体に接合された芯線61同士の高さHは、熱圧着を行う前の高さH′よりも低くなる。
一方、芯線61は、幅方向については電線セット治具10によって保持されているため、芯線61同士の溶接幅Wは、熱圧着の前後でほとんど変化しない。また、芯線61同士の高さは、溶接幅Wと同程度になっており、複数の芯線61のそれぞれの断面積を合計した断面積も、熱圧着の前後でほとんど変化しない。また、演算部50の記憶部には、芯線61同士の溶接幅Wに対する、熱圧着後に一体に接合された芯線61同士の断面積が、芯線61同士の溶接部分の基準溶接断面積Sとしてデータベース化して記憶されている。このため、演算部50は、幅変位センサ40で検出した溶接幅Wと、この溶接幅Wに対応する基準溶接断面積Sとに基づいて、溶接部分の基準溶接高さHを逆算(S÷W=H)して求める。
基準溶接高さHを算出したら、算出した基準溶接高さHを表示器51で表示し(ステップST13)、溶接開始指示を行う(ステップST14)。即ち、シーケンサ36が、溶接スタート入力の指示を出す。これにより、溶接タイマ35が始動し(ステップST15)、エアシリンダ15が作動する(ステップST16)。このエアシリンダ15の作動は、コンプレッサ(図示省略)等の圧縮エア源に接続された電磁弁17が開くことにより、エアシリンダ15に圧縮エアが供給され、この圧縮エアの圧力により、エアシリンダ15は作動する。
エアシリンダ15が作動すると、ピストンロッド16が下方に向けて伸び、これに伴って第1電極21が下降する。第1電極21と第2電極22との間には、電線60の芯線61における溶接部分が配置されているため、第1電極21が下降した場合には、第1電極21は、この芯線61に接触する。この状態で、さらに第1電極21が下降することにより、第1電極21と第2電極22とは、芯線61の溶接部分に対して、上下方向から芯線61同士を押し縮める方向に加圧することになる。演算部50では、エアシリンダ15の作動後の時間、または、エアシリンダ15に供給するエアの圧力等に基づいて、芯線61に対する初期加圧が完了したか否かを判定する(ステップST17)。この判定により、初期加圧が完了していないと判定された場合(ステップST17、No判定)には、芯線61に対する加圧を継続する。
一方、この判定により、初期加圧は完了したと判定された場合(ステップST17、Yes判定)には、上下方向に加圧が行われている状態の芯線61同士の溶接部分の高さH′を、高さ変位センサ45で測定することにより検出する(ステップST18)。詳しくは、高さ変位センサ45は、第1電極21側に取り付けられており、第2電極22側に設けられる電線セット治具10の基準板部11に接触測定子46が接触することにより、上下方向に移動する第1電極21側と第2電極22側との相対的な移動距離を測定することが可能になっている。高さ変位センサ45は、このように第1電極21側と第2電極22側との相対的な移動距離を測定することを介して、芯線61同士の溶接部分の高さH′を検出する。これにより、高さ変位センサ45は、初期加圧が完了して一対の電極20によって上下方向に加圧した状態の芯線61同士の高さH′を検出する。
芯線61同士の溶接部分の高さH′を検出したら、次に、芯線61の過不足はあるか否かを判定する(ステップST19)。この判定は、演算部50が有する異常検出部55によって行い、異常検出部55は、上下方向に加圧した状態の芯線61同士の高さH′と、予め設定された閾値とを比較することにより、組合せ電線64の異常判定の一例として電線60が有する芯線61の過不足を判定し、芯線61の過不足を検出する。
図9は、電線が有する芯線の本数が、組合せ電線において設定される本数である場合の説明図である。図10は、組合せ電線に電線の抜けが発生することにより、電線の本数が設定本数に対して少ない状態を示す説明図である。図11は、芯線の本数が、電線の設定本数に対して多い状態を示す説明図である。組合せ電線64が有する電線60は、組合せ電線64ごとに電線60の本数が設定されており、通常は、組合せ電線64は設定された本数の電線60を有している。例えば、1組の組合せ電線64が有する電線60の設定本数が8本である場合には、組合せ電線64は、通常は8本の電線60を有しており、即ち、芯線61を8本有している(図9)。これに対し、組合せ電線64に電線60の抜けが発生しており、電線60の数が設定本数に対して1本足りない場合は、組合せ電線64が有する電線60の本数、即ち、芯線61の本数は7本になる(図10)。また、組合せ電線64に必要以上の数の電線60がまとめられていることがあり、電線60の数が設定本数に対して1本多い場合は、組合せ電線64が有する電線60の本数、即ち、芯線61の本数は9本になる(図11)。
異常検出部55は、組合せ電線64ごとに設定される電線60の本数に対して、実際の電線60の本数が、これらのように少ない、或いは多いか、または設定本数になっているかを、高さ変位センサ45で検出した芯線61同士の高さH′と、予め設定された閾値とを比較することにより判定する。図12は、電線の本数の過不足の判断に用いる閾値についての説明図である。組合せ電線64が実際に有する電線60の本数に過不足があるか否かの判定に用いる閾値は、組合せ電線64における電線60の設定本数ごとに、上下方向に加圧した状態の芯線61同士の高さH′の上限値71と下限値72とが、閾値として設定される。これらの上限値71と下限値72とは、組合せ電線64が有する電線60が、設定本数に対して1本多かったり少なかったりする場合における上下方向の高さの平均値に基づいて設定される。その際に、電線60が設定本数に対して1本多かったり少なかったりする場合における高さを、より高い精度で求めてこれらを閾値とするために、標準偏差σを用いて上限値71と下限値72とを算出して設定するのが好ましい。標準偏差σを用いて上限値71と下限値72とを算出する場合の一例としては、下記の式(1)、(2)で算出をする。なお、式(1)、(2)における芯線61の溶接部分の高さの平均は、10本程度の電線60(N=10)の平均を求めるのが好ましい。
上限値71=(設定本数+1本の時の溶接部分の高さの平均)−3σ・・・(1)
下限値72=(設定本数−1本の時の溶接部分の高さの平均)+3σ・・・(2)
つまり、上限値71は、電線60の本数が設定本数+1本の時における、上下方向に加圧した状態の芯線61同士の溶接部分の高さの平均から、標準偏差σの3倍である3σを減算することにより、設定本数に対して電線60が1本多い場合における芯線61同士の溶接部分の高さの下限を求め、これを上限値71とする。即ち、芯線61同士の溶接部分の高さは、電線60の本数が同じ組合せ電線64同士でも組合せ電線64ごとにそれぞれ微妙に異なるため、電線60の本数が設定本数よりも1本多い複数の組合せ電線64におけるそれぞれの芯線61同士の溶接部分の高さを数値で表した場合は、数値が分散した1本増し範囲77を形成することになる。
このため、上限値71を設定する際には、このように数値が分散する、電線60が設定本数よりも1本多い場合の芯線61同士の高さの全ての値を極力除外し、1本増し範囲77に含まれる高さを全て除外するため、高さの平均値から標準偏差σの3倍を減算した値を、上限値71として設定する。即ち、1本増し範囲77の下限を上限値71として設定し、高さ変位センサ45で検出した芯線61同士の高さH′が、上限値71以上の場合には、検出した高さH′は1本増し範囲77に含まれる、或いはそれ以上であるため、電線60の本数は設定本数より多いと判断できるようにする。
同様に、下限値72は、電線60の本数が設定本数−1本の時における、上下方向に加圧した状態の芯線61同士の溶接部分の高さの平均から、標準偏差σの3倍である3σを加算することにより、設定本数に対して電線60が1本少ない場合における芯線61同士の溶接部分の高さの上限を求め、これを下限値72とする。即ち、芯線61同士の溶接部分の高さは、電線60の本数が同じ組合せ電線64同士でも組合せ電線64ごとにそれぞれ微妙に異なるため、電線60の本数が設定本数よりも1本少ない複数の組合せ電線64におけるそれぞれの芯線61同士の溶接部分の高さを数値で表した場合は、数値が分散した1本抜け範囲76を形成することになる。
このため、下限値72を設定する際には、このように数値が分散する、電線60が設定本数よりも1本少ない場合の芯線61同士の高さの全ての値を極力除外し、1本抜け範囲76に含まれる高さを全て除外するため、高さの平均値から標準偏差σの3倍を加算した値を、下限値72として設定する。即ち、1本抜け範囲76の上限を下限値72として設定し、高さ変位センサ45で検出した芯線61同士の高さH′が、下限値72以下の場合には、検出した高さH′は1本抜け範囲76に含まれる、或いはそれ以下であるため、電線60の本数は設定本数より少ないと判断できるようにする。
電線60の本数が設定本数である場合の複数の組合せ電線64におけるそれぞれの芯線61同士の溶接部分の高さを数値で表した場合も、数値が分散した設定本数範囲75を形成するが、この設定本数範囲75は、1本増し範囲77の下限よりも小さく、1本抜け範囲76の上限よりも大きくなる。つまり、設定本数範囲75は、組合せ電線64における電線60の設定本数ごとに設定される上限値71と下限値72との間に位置することになり、電線60の本数が設定本数である場合には、高さ変位センサ45で検出した芯線61同士の高さH′が、いずれの値を示している場合でも、その値は上限値71と下限値72との間に位置することになる。
なお、これらの閾値である上限値71と下限値72は、組合せ電線64を構成する複数の電線60のうち、最も細い芯線61を基準として設定するのが好ましい。つまり、電線60は、種類によって芯線61の太さが異なるため、組合せ電線64を構成する電線60は、互いに異なる太さの芯線61を有する電線60が組み合わされることがある。このため、このような場合は、当該組合せ電線64において用いられる可能性のある電線60のうち、最も細い芯線61を有する電線60が、設定本数より1本多かったり少なかったりする場合の高さを用いて、上限値71と下限値72とを設定するのが好ましい。
演算部50は、組合せ電線64を構成する電線60の設定本数ごとに、これらの上限値71と下限値72とを予め設定してデータベースとして記憶部で記憶する。異常検出部55は、高さ変位センサ45で検出した芯線61同士の高さH′と、このように記憶されている上限値71及び下限値72とを比較することにより、組合せ電線64が有する電線60の過不足を検出する。即ち、異常検出部55は、一対の電極20によって芯線61同士を上下方向に加圧し、芯線61に対して溶接電流を通電する前の芯線61同士の高さH′に基づいて、芯線61の過不足、即ち、電線60の過不足を検出する。具体的には、異常検出部55は、芯線61に対して溶接電流を通電する前における、高さ変位センサ45で検出した芯線61同士の高さH′が、上限値71以上である場合には、組合せ電線64が有する電線60の本数が過剰であると判定する。また、異常検出部55は、芯線61に対して溶接電流を通電する前における、高さ変位センサ45で検出した芯線61同士の高さH′が、下限値72以下である場合には、組合せ電線64が有する電線60の本数が不足していると判定する。
異常検出部55での判定により、電線60の本数が過剰であったり、不足していたりすることはなく、電線60の過不足はないと判定された場合(ステップST19、No判定)には、通電を開始する(ステップST20)。即ち、溶接トランス30より一対の電極20に対して電流を流し、第1電極21と第2電極22との間に交互に溶接電流を流す。これにより、上下方向に加圧されながら第1電極21と第2電極22とに接触している複数の電線60の芯線61に溶接電流が通電され、芯線61は、溶接電流が通電することよる抵抗発熱が発生して溶融する。即ち、複数の電線60の芯線61は、上下方向に重ねられ、且つ、上下方向に押し縮められる方向に加圧されながら溶融するため、各芯線61が変形して芯線61間の隙間が減少し、上下方向に重なっている溶接部分全体の高さが低くなる。
次に、高さ変位センサ45で検出した芯線61同士の溶接部分の高さH′が、基準溶接高さHに到達したか否かを判定する(ステップST21)。即ち、芯線61同士の溶接部分が上下方向に加圧されながら溶融することにより高さが低くなっている状態で、高さ変位センサ45によって検出した高さH′が、幅変位センサ40で検出した溶接幅Wに基づいて演算部50で算出した基準溶接高さHに到達したか否かを、演算部50で判定する。高さ変位センサ45は、初期加圧時の芯線61同士の溶接部分の高さH′の検出のみでなく、このように芯線61同士の溶接部分の高さH′が基準溶接高さHに達したか否かも検出できるようになっている。
この判定により、高さ変位センサ45で検出した芯線61同士の溶接部分の高さH′が、基準溶接高さHに到達していないと判定された場合(ステップST21、No判定)には、芯線61同士の溶接部分への加圧と通電を継続する。つまり、高さ変位センサ45が、芯線61同士の溶接部分の高さH′が基準溶接高さHに達するのを検出するまで、電極20から芯線61同士の溶接部分に溶接電流を流し続けて、芯線61同士を抵抗溶接させる。なお、この溶接電流の通電開始から通電停止までの通電時間は、表示器51に表示され、また、表示器51には、通電時間が適正範囲か否か等が表示される。
これに対し、高さ変位センサ45で検出した芯線61同士の溶接部分の高さH′が、基準溶接高さHに到達したと判定された場合(ステップST21、Yes判定)には、芯線61への通電を停止する(ステップST22)。即ち、シーケンサ36が、溶接タイマ35への制御を介して、電極20から芯線61同士の溶接部分への溶接電流の通電を停止させる。
次に、通電を停止した状態で、一対の電極20間の加圧状態を一定時間保持する(ステップST23)。これにより、芯線61同士を上下方向に押し縮める方向に加圧した状態で保持し、芯線61の冷却を行う。その後、電磁弁17を作動させてエアシリンダ15を作動させることにより、電極20から芯線61への加圧を解除し、被溶接材としての複数の電線60の芯線61同士を重ね合わせた状態での抵抗溶接を終了する。これにより、芯線61同士の熱圧着が完了する。
これらに対し、異常検出部55での判定により、電線60の本数が過剰であったり、不足していたりすることにより、電線60に過不足があると判定された場合(ステップST19、Yes判定)には、電線60に過不足があることを表示器51で表示する(ステップST24)。つまり、電線60に過不足がある場合には、電線60同士を、所望の接合状態にできない可能性があるため、この場合は、電線60に過不足があることを表示器51で表示し、芯線61に対して通電を行うことなく、電線セット治具10から組合せ電線64を取り除く。
以上の実施形態に係る熱圧着装置1は、複数の電線60を組み合わせた組合せ電線64を構成する電線60がそれぞれ有する芯線61同士を上下方向に加圧すると共に、芯線61に対して溶接電流を通電することにより芯線61同士を溶接する一対の電極20と、上下方向に重ねた芯線61同士の高さを検出する高さ変位センサ45と、高さ変位センサ45での検出結果に基づいて、組合せ電線64の異常を検出する異常検出部55と、を備え、高さ変位センサ45は、一対の電極20によって上下方向に加圧した状態の芯線61同士の高さを検出し、異常検出部55は、上下方向に加圧した状態の芯線61同士の高さと、予め設定された閾値とを比較することにより、組合せ電線64の異常を検出する。これにより、熱圧着を行う電線60の本数を数える工程を設けることなく、電線60が有する芯線61の熱圧着を行う過程において、電線60の過不足を判断することができる。この結果、電線60の異常を容易に判断することができる。
また、組合せ電線64が有する電線60の本数が設定本数に対して過不足があるか否かを判定する際に、芯線61同士の高さに対する閾値を設定し、この閾値に基づいて判定しているため、熱圧着装置1ごとのバラつきによる判定のバラつきを抑制することができる。この結果、組合せ電線64を構成する電線60の過不足を、精度よく判断することができる。
また、閾値は、組合せ電線64における電線60の設定本数ごとに、上下方向に加圧した状態の芯線61同士の高さの上限値71と下限値72とが設定され、異常検出部55は、高さ変位センサ45で検出した芯線61同士の高さが上限値71以上である場合には、電線60の本数が過剰であると判定し、高さ変位センサ45で検出した芯線61同士の高さが下限値72以下である場合には、電線60の本数が不足していると判定する。このように、電線60の過不足を判定するための閾値として、高さ変位センサ45で検出した芯線61同士の高さの上限値71と下限値72とを設定し、高さ変位センサ45で検出した芯線61同士の高さを、これらの上限値71及び下限値72と比較することにより、高さ変位センサ45で検出した芯線61同士の高さに基づいた判定を、容易に行うことができる。この結果、電線60の過不足を、より容易に判断することができる。
また、異常検出部55は、一対の電極20によって芯線61同士を上下方向に加圧し、芯線61に対して溶接電流を通電する前の芯線61同士の高さに基づいて組合せ電線64の異常を検出するため、一対の電極20間に配置されている芯線61を有する組合せ電線64に異常があるか否かを、芯線61同士の溶接を開始する前に判断することができる。この結果、異常がある組合せ電線64の芯線61を溶接してしまうことに伴って、不必要な労力や時間が発生してしまうことを抑制することができる。
また、上限値71と下限値72は、組合せ電線64を構成する複数の電線60のうち、最も細い芯線61を基準として設定することにより、組合せ電線64を構成する電線60として、複数の種類の太さの芯線61が用いられた場合でも、電線60の過不足を、より確実に判断することができる。つまり、上限値71と下限値72が、比較的太い芯線61を基準として設定された場合、1本増し範囲77や1本抜け範囲76は、設定本数範囲75に対して大幅に数値が増減する範囲になる。このため、この場合における1本増し範囲77や1本抜け範囲76に基づいて上限値71と下限値72とを設定した場合、この設定に用いた芯線61よりも細い芯線61が1本増えたり減ったりしても、芯線61の高さは、上限値71と下限値72との間に収まってしまう可能性がある。これに対し、最も細い芯線61を基準として上限値71と下限値72とを設定した場合は、電線60が設定本数より1本増えたり減ったりした際には、その電線60の芯線61の太さに関わらず、芯線61の高さは、上限値71以上になったり、下限値72以下になったりする。この結果、電線60の過不足を、より確実に判断することができる。
〔変形例〕
なお、上述した実施形態に係る熱圧着装置1では、異常検出部55は、芯線61に対して溶接電流を通電する前の芯線61同士の高さに基づいて電線60の過不足を検出することにより組合せ電線64の異常を検出しているが、電線60の過不足の検出は、芯線61に対して溶接電流を通電する前以外に行ってもよい。異常検出部55は、一対の電極20によって芯線61同士を上下方向に加圧し、芯線61に対して溶接電流を通電して芯線61同士を溶接した後の芯線61同士の高さに基づいて芯線61の過不足を検出してもよい。つまり、組合せ電線64を構成する電線60の本数が、設定本数に対して過不足がある場合には、芯線61同士の溶接部分の高さは、溶接前のみでなく、溶接後も電線60の過不足に応じて変化する。このため、電線60の本数が、設定本数に対して過不足があるかの判定は、芯線61同士の溶接後でも行うことができるため、この判定を行う際には、芯線61同士を溶接した後の芯線61同士の高さに基づいて行ってもよい。
また、高さ変位センサ45で検出した芯線61同士の高さに基づいて行う、電線60の本数が設定本数に対して過不足があるかの判定は、芯線61に対して溶接電流を通電する前と、芯線61に対して溶接電流を通電して芯線61同士を溶接した後との両方で行ってもよい。このように、電線60の過不足の判定を、芯線61同士の溶接の前後で行うことにより、組合せ電線64を構成する電線60の過不足を、より高い精度で判定することができる。
また、上述した実施形態に係る熱圧着装置1では、組合せ電線64を構成する電線60の本数が設定本数に対して過不足があるか否かの判定を、高さ変位センサ45で検出した芯線61同士の高さH′に基づいて行う際に用いる上限値71と下限値72とを、上述した式(1)、(2)によって算出しているが、上限値71と下限値72は、式(1)、(2)以外によって算出してもよい。上限値71と下限値72の算出は、電線60の本数が設定本数に対して過不足があるか否かを判定することができる値を算出できる手法であれば、その手法は問わない。
また、電線60の設定本数に対する上限値71と下限値72とについては、熱圧着装置1とは異なる装置から、電線60の設定本数についての情報を取得し、取得した設定本数の情報に基づいて、熱圧着を行う組合せ電線64ごとに適宜設定をするのが好ましい。
また、上述した実施形態に係る熱圧着装置1では、異常検出部55は、組合せ電線64の異常の一例として電線60の過不足の検出を行っているが、組合せ電線64の異常としては、電線60の過不足以外の検出を行ってもよい。異常検出部55は、組合せ電線64の異常として、例えば組合せ電線64を構成する電線60が有する芯線61の太さの異常を検出してもよい。図13は、太さが設定とは異なる芯線を有する組合せ電線の説明図である。電線60は、電線60の延在方向に見た場合の芯線61の断面積が、電線60の種類によって異なるため、組合せ電線64は、電線60の本数のみでなく、各電線60が有する芯線61の断面積についても、適切な断面積のものを用いる必要がある。つまり、電線60は、電線60の種類によって太さが異なるため、組合せ電線64は、各電線60が有する芯線61の太さについても、適切な太さのものを用いる必要がある。
一方、組合せ電線64を構成する電線60の芯線61同士の高さは、芯線61の太さによって変化する。例えば、図13に示すように、組合せ電線64を構成する電線60の中に、予め設定されている芯線61よりも太さが太い太芯線67を有する太電線66が含まれている場合、芯線61の全体の高さは、全ての電線60が、予め設定されているものである場合における高さよりも高くなる。このため、異常検出部55は、高さ変位センサ45で検出した芯線61同士の高さが上限値71以上である場合や下限値72以下である場合には、組合せ電線64の異常として、芯線61の太さが、設定されている太さとは異なる電線60が用いられていると判定してもよい。
具体的には、異常検出部55での判定に用いる閾値である上限値71と下限値72は、組合せ電線64における電線60が有する芯線61の太さごとに設定し、高さ変位センサ45で検出した芯線61同士の高さが上限値71以上である場合には、異常検出部55は、組合せ電線64に太電線66が含まれていると判定してもよい。同様に、高さ変位センサ45で検出した芯線61同士の高さが下限値72以下である場合には、異常検出部55は、組合せ電線64に、予め設定されている芯線61よりも太さが細い芯線61を有する電線60が含まれていると判定してもよい。このように、組合せ電線64の異常として、組合せ電線64を構成する電線60が有する芯線61の太さの異常を検出することにより、電線60の本数が適切な本数である場合でも、電線60の異常を、より適切に判断することができる。
また、このように、組合せ電線64の異常として、組合せ電線64を構成する電線60が有する芯線61の太さの異常を検出する場合でも、組合せ電線64を構成する複数の電線60のうち、最も細い芯線61を基準として上限値71と下限値72を設定することにより、芯線61の太さの異常を、適切に検出することができる。最も細い芯線61を基準として上限値71と下限値72とを設定することにより、芯線61の全体の断面積が、予め設定される太さの芯線61全体の断面積に対して、最も細い芯線61の断面積分、設定とは異なった場合でも検出することができ、芯線61の太さに異常がある電線60が用いられていることを検出することができる。これにより、芯線61の太さの異常を、より適切に検出することができる。
また、上述した実施形態に係る熱圧着装置1では、第1電極21を昇降させる手段として、エアシリンダ15を用いたが、第1電極21を昇降させる手段は、油圧シリンダ等の他のアクチュエータを用いてもよい。また、幅変位センサ40及び高さ変位センサ45は、機械式のセンサを用いたが、これらのセンサは、反射型や透過型の光センサ等を用いてもよい。また、芯線61同士を溶接する手法としては、芯線61に溶接電流を通電して抵抗発熱を発生させることにより行う抵抗溶接を用いて説明したが、芯線61同士を溶接する手法は、例えば超音波溶接等の、抵抗溶接以外の手法を用いてもよい。