JP6552974B2 - 放熱シート及び放熱シートの製造方法 - Google Patents

放熱シート及び放熱シートの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、湿式抄紙して製造される放熱シートとその製造方法に関する。
コンピューターのCPU等の電子部品やLED、液晶、PDP、EL、携帯電話等の発光素子等の電子部品の小型化、高集積化により、各部品からの発熱による装置の寿命低下、誤作動が問題となってきており、電子部品の放熱対策への要求は、年々高まってきている。電子部品の放熱対策として、ファン等を用いた強制冷却の他、金属性の放熱フィンからなる放熱用部品が使用されている。中でも、薄くて軽い放熱シートとして黒鉛シートが開発されている。
黒鉛シートは、グラファイト構造をもつ膨張黒鉛をシート状にプレス成形して製造できる。ただ、この黒鉛シートは、曲げに対する強度が弱く、また、黒鉛の粉末が脱落しやすい欠点がある。
本発明者は、以上の欠点を解決することを目的として、繊維と熱伝導粉末とを水に懸濁して抄紙用スラリーとし、この抄紙用スラリーを湿式抄紙してシート状として放熱シートとすると共に、抄紙用スラリーに、叩解して表面に無数の微細繊維を設けてなる叩解パルプと、叩解されない非叩解繊維とを懸濁し、この叩解パルプと非叩解繊維とでもって、抄紙用スラリーに懸濁している黒鉛などの熱伝導フィラーを繊維に結合してシート状に抄紙する方法を開発した(特許文献1参照)。
以上の方法で製造される放熱シートは、耐折曲強度を向上できると共に、簡単に種々の形状に加工でき、しかも添加される熱伝導フィラーにより熱伝導率を向上できて、放熱シートとして好ましい特性を実現する。
特開2010−34422号公報
このように、黒鉛を樹脂繊維と懸濁して抄紙用スラリーとし、この抄紙用スラリーをシート状に湿式抄紙して製造される放熱シートは、黒鉛の含有率を高くすることで、熱伝導率を向上できる。例えば、黒鉛の含有率を80%以上とする放熱シートは、優れた熱伝導性を実現できる。ただ、黒鉛の比率を高くすると、シートの基材となる樹脂繊維の含有率が低くなるので、シート全体の強度が不足し、湿式抄紙された状態でシート状に保持するのが難しくなる。このため、抄紙工程においてメッシュコンベア等の上面に堆積された材料を、次工程に移送するコンベアにシートの状態で移動できなくなる。したがって、従来の湿式抄紙による方法では、黒鉛の含有率を高くする放熱シートを、流れ作業によって長いシート状に形成しながら多量生産することができなかった。
この種の放熱シートは、湿式抄紙する状態で全体をシート状に保持するためには、黒鉛の含有率を75%以下とすることが好ましく、一般的には、黒鉛の含有率を50〜70%として製造されている。このように、黒鉛を含有する放熱シートにとって、黒鉛の含有率を高くして熱伝導率を高くすることと、シート材に湿式抄紙するために樹脂繊維の含有率を高くすることは互いに相反する特性であって、実質的には、黒鉛の含有率を高くして熱伝導率を高くしながらシート材に湿式抄紙することはできない。
本発明は、以上の問題点を解決するために開発されたものである。本発明の重要な目的は、黒鉛を含有するスラリーをシート状に湿式抄紙して優れた強度としながら、黒鉛の含有率を高くして熱伝導特性を向上できる放熱シートとその製造方法を提供することにある
課題を解決するための手段及び発明の効果
本発明の放熱シートは、バインダー繊維の隙間に黒鉛を含む湿式抄紙の放熱シートであって、シートの一方の表面側にある第1の表面の黒鉛含有量が、他方の表面側にある第2の表面よりも多いことを特徴としている。
以上の放熱シートは、黒鉛を含有するスラリーをシート状に湿式抄紙して優れた強度としながら、黒鉛の含有率を高くして熱伝導特性を向上できる特徴がある。それは、以上の放熱シートが、バインダー繊維の隙間に黒鉛を添加して湿式抄紙すると共に、シートの一方の表面側にある第1の表面の黒鉛含有量を、他方の表面側にある第2の表面よりも多くしているからである。放熱シートは、第1の表面の黒鉛含有量を多くすることで、第1の表面側の熱伝導率を向上させることができ、熱源から伝導される熱を第1の表面側で表面移行させて速やかに熱伝導できる。また、この放熱シートは、第2の表面の黒鉛含有量を第1の表面よりも少なくすることで、第2の表面側におけるバインダー繊維の含有量を多くして全体をシート状に形成して補強できる。
一般に、黒鉛を含有する放熱シートは、黒鉛の含有量を多くすることで熱伝導率を高くして放熱特性を向上できる。ただ、黒鉛の含有率を高くすると、黒鉛を結合する繊維の含有量が減少するため、シート状に成形するのが難しくなる。本発明の放熱シートは、一方の表面側にある第1の表面の黒鉛含有量を、他方の表面側にある第2の表面よりも多くすることで優れた熱伝導性を実現し、他方の表面側にある第2の表面側の黒鉛含有量を少なくすることでシートの強度が低下するのを防止して、放熱シートとして理想的な特徴を実現できる。
本発明の放熱シートは、バインダー繊維をアラミド繊維を含むことができる。この放熱シートは、バインダー繊維としてアラミド繊維を含むことで、優れた耐熱性、強度、難燃性、耐薬品性等を実現できる。
本発明の放熱シートは、第1の表面の黒鉛含有率を、70質量%以上であって100質量%以下とすることができる。この放熱シートは、第1の表面層の黒鉛含有量を多くして優れた熱伝導性を実現できる。
本発明の放熱シートは、第1の表面の黒鉛含有率を、第2の表面の黒鉛含有率よりも10質量%以上高くすることができる。この放熱シートは、黒鉛含有率を高く設定してなる第1の表面側で熱伝導特性を向上しながら、第1の表面よりも黒鉛含有率を低く設定してなる第2の表面側により、シート状に湿式抄紙される放熱シートの強度低下を防止できる。
本発明の放熱シートは、第1の表面と第2の表面との間に中間層を形成し、中間層の黒鉛含有率を第1の表面の黒鉛含有率以下として、第2の表面の黒鉛含有率以上とすることができる。この放熱シートは、第1の表面と第2の表面との間に中間層を設けて全体を3層以上の構造とし、中間層の黒鉛含有率を調整することで、放熱シート全体の黒鉛含有率を理想的に調整できる。
本発明の放熱シートは、黒鉛として、膨張黒鉛を粉末状に粉砕したものが使用できる。膨張黒鉛の粉末は、平均粒径を5μm〜500μmとすることができる。この放熱シートは、黒鉛として、膨張黒鉛を所定の粒径に粉砕した黒鉛粉末を使用するので、理想的に湿式抄紙しながら密に結合されて優れた熱伝導率を実現できる。
本発明の放熱シートは、厚さを50μm〜500μmとすることができる。この放熱シートは、全体の厚さを薄くするにも関わらず、優れた強度と優れた放熱性を実現できるので、厚さに制約を受ける薄側の電子機器等に好適に内蔵されて効率よく放熱できる。
本発明の放熱シートの製造方法は、黒鉛とバインダー繊維とを分散液に懸濁して抄紙用スラリーとし、この抄紙用スラリーを湿式抄紙してシート状の複合体シートとする抄紙工程と、抄紙工程で得られる複合体シートを熱プレスして所定の厚さとするプレス工程とで放熱シートを製造する。抄紙工程は、黒鉛含有率の異なる複数の抄紙用スラリーを調整する原料調整工程と、原料調整工程で調整された複数の抄紙用スラリーを、黒鉛含有率の低い抄紙用スラリーが下層となり、黒鉛含有率の高い抄紙用スラリーが上層となるようにメッシュコンベアの抄紙面に分散させるスラリー供給工程とを備えており、抄紙工程において、上面側に形成される上層部の表面の黒鉛含有量が下面側に形成される下層部の表面の黒鉛含有量よりも多くなるように複合体シートを抄造している。
以上の放熱シートの製造方法は、黒鉛の含有率を高くして熱伝導特性を向上できる放熱シートを簡単に多量生産できる特徴がある。それは、以上の製造方法が、黒鉛含有率の異なる複数の抄紙用スラリーを調整する原料調整工程と、黒鉛含有率の低い抄紙用スラリーが下層となり、黒鉛含有率の高い抄紙用スラリーが上層となるようにメッシュコンベアの抄紙面に分散させるスラリー供給工程とで複合体シートを湿式抄紙しており、上面側に形成される上層部の表面の黒鉛含有量を、下面側に形成される下層部の表面の黒鉛含有量よりも多くなるようにしているからである。
本発明の放熱シートの製造方法は、黒鉛が粉末状に粉砕された膨張黒鉛を含み、バインダー繊維がアラミド繊維を含むことができる。
本発明の放熱シートの製造方法は、原料調整工程で調整される、黒鉛含有率の高い抄紙用スラリーを第1スラリー21とし、黒鉛含有率の低い抄紙用スラリーを第2スラリー22として、第1スラリー21の黒鉛含有率を第2スラリー22の黒鉛含有率よりも10質量%以上高くすることができる。
本発明の放熱シートの製造方法は、スラリー供給工程が、移動するメッシュコンベア4上に第2スラリー22を分散させて第2の表面層12を形成する第2スラリー供給工程と、第2スラリー供給工程でメッシュコンベア4上に形成された第2の表面層12の上に第1スラリー21を供給して第1の表面層11を形成する第1スラリー供給工程とを備えることができる。この製造方法は、黒鉛含有率の異なる第2スラリーと第1スラリーとを順にメッシュコンベア上に供給して分散させることで、簡単かつ容易に2層構造複合体シートを湿式抄紙できる。
本発明の一実施例にかかる放熱シートの断面構造を示す模式図である。 本発明の一実施例にかかる放熱シートの厚さ方向における黒鉛含有率を示す図である。 本発明の一実施例にかかる放熱シートを製造する製造装置の概略構成図である。 図3に示す製造装置の抄紙機による抄紙構造を示す概略図である。 本発明の他の実施例にかかる放熱シートの厚さ方向における黒鉛含有率を示す図である。 本発明の他の実施例にかかる放熱シートの厚さ方向における黒鉛含有率を示す図である。 本発明の他の実施例にかかる放熱シートの厚さ方向における黒鉛含有率を示す図である。 比較例の放熱シートの厚さ方向における黒鉛含有率を示す図である。
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための放熱シートとその製造方法を例示するものであって、本発明は放熱シートとその製造方法を以下のものに特定しない。さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
本発明の放熱シートは、バインダー繊維の隙間に黒鉛を含む湿式抄紙の放熱シートであって、シートの一方の表面側にある第1の表面の黒鉛含有量を、他方の表面側にある第2の表面よりも多くしている。この放熱シートは、黒鉛とバインダー繊維とを混合して抄紙用スラリーとし、この抄紙用スラリーを湿式抄紙してシート状の複合体シートを抄造する抄紙工程と、この抄紙工程で得られた複合体シートを熱プレスして所定の厚さとするプレス工程とで製造される。
本発明の放熱シートは、その厚さ方向において、一方の表面側にある第1の表面層と他方の表面側にある第2の表面層とを備えており、各々の表面層における黒鉛含有率が異なる構造としている。本発明の放熱シートは、抄紙用スラリーを湿式抄紙して複合体シートを抄造する際に、上面となる表面側に形成される第1の表面層の黒鉛含有率を、下面となる表面側に形成される第2の表面層よりも高くしている。これにより、第1の表面層の上面である第1の表面の黒鉛含有量を多くして、放熱シートの熱伝導特性を向上させている。さらに、本発明の放熱シートは、抄紙工程で下面側に形成される第2の表面層の下面である第2の表面の黒鉛含有率を、上面側に形成される第1の表面層の第1の表面よりも低くしている。これにより、第2の表面層のバインダー繊維の含有量を多くして、シート状に湿式抄紙される複合体シートの強度低下を防止して、シート状に保持されるようにしている。
本発明の放熱シートの拡大断面図を図1に示している。図1に示す放熱シート100は、図において上面である第1の表面13側に形成される上層部を第1の表面層11とし、下面である第2の表面14側に形成される下層部を第2の表面層12とする2層構造としている。この放熱シート100は、厚さ方向の中央を境界として、第1の表面層11と第2の表面層12の厚さをシート全体の厚さ(D)の1/2として、同じ厚さとしている。ただ、第1の表面層と第2の表面層は、詳細には後述するが、異なる厚さとすることもできる。この放熱シート100は、第1の表面層11の黒鉛含有率を、放熱シート全体における黒鉛の平均含有率よりも高くし、第2の表面層12における黒鉛含有率を、放熱シート全体における黒鉛の平均含有率よりも低くしている。すなわち、この放熱シート100は、第1の表面層11の黒鉛含有率を第2の表面層12の黒鉛含有率よりも高くして、第1の表面層11の黒鉛含有量を第2の表面層12よりも多くしている。
(第1の表面層11)
第1の表面層11は、複合体シートを湿式抄紙する工程で上面となる第1の表面13を含む領域であって、図1において放熱シート100の上層部を形成している。放熱シート100は、第1の表面層11の黒鉛含有率を高くすることによって、放熱シート全体の熱伝導率を高くすることができる。したがって、第1の表面層11は、黒鉛含有率を70質量%以上であって100質量%以下とする。第1の表面層11の黒鉛含有率を70〜100質量%とする構造は、第1の表面13付近における黒鉛含有量を多くでき、放熱シート100の第1の表面側の熱伝導率を向上できる。とくに、この放熱シート100は、第1の表面13を熱源に対向して配置する対向面として使用して、優れた放熱特性を実現できる。第1の表面層11の黒鉛含有率は、例えば、第1の表面13の黒鉛含有率が、70〜100質量%、好ましくは70〜95質量%、さらに好ましくは70〜90質量%となるようにする。
(第2の表面層12)
第2の表面層12は、複合体シートを湿式抄紙する工程で下面となる第2の表面14を含む領域であって、図1において放熱シート100の下層部を形成している。第2の表面層12は、黒鉛含有率を低くしてバインダー繊維の含有率を高くすることによって、抄紙工程で抄造されるシートを次工程に移送しやすくできる。第2の表面層12の黒鉛含有率は、例えば、第2の表面14の黒鉛含有率が80質量%以下、好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下となるようにする。第2の表面層12は、例えば、全体における平均された黒鉛含有率を40〜70質量%とすることができる。第2の表面層12の黒鉛含有率を40〜70質量%とする構造は、バインダー繊維の含有率を30〜60質量%として、抄紙工程においてメッシュコンベアの抄紙面に集合される材料をシート状に抄造し、次工程へ移送する移送手段を介してシートの状態で移動できる。
以上のように、第1の表面13側に形成される第1の表面層11と第2の表面14側に形成される第2の表面層12とを備える放熱シート100は、第1の表面13の黒鉛含有率と第2の表面14の黒鉛含有率の差を10質量%以上、好ましく20質量%以上とすることができる。黒鉛含有率の差を20質量%以上と大きくする放熱シート100は、第1の表面13側の黒鉛含有率を高くして熱伝導率を高くしながら、第2の表面14側の黒鉛含有率を低くすることでバインダー繊維の含有率を高くしてシート全体の強度を高めることができる。
なお、放熱シート100の第1の表面13及び第2の表面14における黒鉛含有率は、以下のようにして求めることができる。放熱シート100の表面を顕微鏡で観察して、黒鉛とバインダー繊維の面積比を計測する。黒鉛の比重は約2g/cmで、バインダー繊維の比重は約1.5g/cmなので、これ等の比重と計測された面積比とから、表面における黒鉛含有率(質量%)を算出する。例えば、顕微鏡での観察による黒鉛とバインダー繊維の面積比が80:20であった場合、黒鉛とバインダー繊維の質量比は、(80×2):(20×1.5)=16:3となり、黒鉛含有率は約84.2%となる。同様に、顕微鏡での観察による黒鉛とバインダー繊維の面積比が70:30であった場合、黒鉛とバインダー繊維の質量比は、(70×2):(30×1.5)=28:9となり、黒鉛含有率は約75.7%となる。このようにして、放熱シート100の第1の表面13と第2の表面14の表面状態を顕微鏡で観察することで表面における黒鉛含有率を求めることができる。
(中間領域15)
さらに、図1に示す放熱シート100は、第1の表面13と第2の表面14との間に黒鉛含有率が変化する中間領域15を設けている。中間領域15において、黒鉛含有率は、第2の表面14側から第1の表面13側に向かって次第に高くなるようにしている。この中間領域15は、後述する抄紙工程において、黒鉛含有率の異なる抄紙用スラリーを順に供給することで、その境界部分に形成される領域である。この放熱シート100は、上層部である第1の表面層11の黒鉛含有率を下層部である第2の表面層12の黒鉛含有率よりも高くするので、中間領域15では、第2の表面層12側から第1の表面層11側に向かって次第に黒鉛含有率が高くなるように形成される。
図2は、図1に示す放熱シート100の厚さ方向における黒鉛含有率の分布を示す概略図である。この図において、縦軸は放熱シートの厚さ方向における位置であって、放熱シートの厚さを100とし、第2の表面14(下面)を0、第1の表面13(上面)を100として表示している。また、横軸は、黒鉛含有率を示している。図2では、第1の表面13の黒鉛含有率を90%、第2の表面14の黒鉛含有率を50%とし、第1の表面13と第2の表面14の間の中間領域15においては、第2の表面14側から第1の表面13側に向かって黒鉛含有率が50〜90%の範囲で次第に高くなる状態を示している。このように、黒鉛含有率が50〜90%に変化する中間領域15においては、これ等の中間となる黒鉛含有率が70%となるラインを境界ラインとして、この中間ラインよりも黒鉛含有率が高い領域を第1の表面層11とし、この中間ラインよりも黒鉛含有率が低い領域を第2の表面層13とすることもできる。
図2に示す放熱シートは、全体の厚さを100とし、厚さが0〜50の領域を第2の表面層12、厚さが50〜100の領域を第1の表面層11、厚さが25〜75の領域を中間領域15としている。ただ、放熱シートは、詳細には後述するが、抄紙用のスラリーの調整状態や、供給状態をコントロールすることで、厚さ方向における黒鉛含有率の分布を調整することができる。
(抄紙用スラリー)
複合体シートは、黒鉛とバインダー繊維とを分散液に懸濁して調整された抄紙用スラリーを湿式抄紙して抄造される。黒鉛とバインダー繊維とを懸濁する分散液には、例えば水が使用できる。
抄紙用スラリーに混合される黒鉛には、膨張黒鉛の粉末が使用できる、この黒鉛粉末は、例えば、膨張黒鉛を粉砕して、平均粒径が5μm〜500μm、好ましくは10μm〜400μm、さらに好ましくは50μm〜300μmとしたものが使用できる。ただ、黒鉛は、膨張黒鉛の粉末には特定しない。抄紙用スラリーには、黒鉛を繊維状としたものを混合することもできる。
抄紙スラリーに混合されるバインダー繊維には、好ましくは耐熱性に優れた繊維が使用される。このような繊維として、アラミド繊維が最適である。アラミド繊維は、耐熱性に優れ、また優れた強度を有する特徴がある。このようなアラミド繊維として、パラ系アラミド繊維またはメタ系アラミド繊維を単独で、あるいはこれ等を混合して使用することができる。これ等のアラミド繊維は、パルプ状に成形されたものが使用される。さらに、バインダー繊維には、アラミド繊維に加えてPET等の樹脂繊維を添加することもできる。
以上の抄紙用スラリーは、黒鉛粉末とアラミド繊維を分散液中に均一に分散させて、その後、スクリーン(異物、塊等除去)等の工程を通り、最終の濃度を0.01〜0.5質量%に調整する。
(放熱シートの製造方法)
以上の放熱シートは、黒鉛の粉末とアラミド繊維とを分散液に懸濁してなる抄紙用スラリーを湿式抄紙してシート状の複合体シートとする抄紙工程と、この抄紙工程で得られる複合体シートを熱プレスして所定の厚さとするプレス工程とで製造される。ここで、図3と図4は、放熱シート100を製造する製造装置の概略構成図を示している。図3に示す製造装置は、抄紙用スラリーをシート状に抄造する抄紙機1と、この抄紙機1で抄造された複合体シート10を乾燥させる乾燥機3と、乾燥された複合体シート10を加熱プレスして所定の厚さとするプレス機2とを備えている。
(抄紙工程)
抄紙工程は、黒鉛含有率の異なる複数の抄紙用スラリーを用意する原料調整工程と、原料調整工程で調整された複数の抄紙用スラリーを、黒鉛含有率の低い抄紙用スラリーが下層となり、黒鉛含有率の高い抄紙用スラリーが上層となるようにメッシュコンベア4の抄紙面4Aに分散させるスラリー供給工程とで複合体シート10を抄造する。
(原料調整工程)
原料調整工程では、黒鉛含有率の異なる少なくとも2種類の抄紙用スラリーを調整する。例えば、図4に示す製造方法では、第2の表面層12を形成する黒鉛含有率の低い第2スラリー22と、第1の表面層11を形成する黒鉛含有率の高い第1スラリー21とを用意し、これ等の2種類の抄紙用スラリー20をメッシュコンベア4上に順に分散させて、黒鉛含有率の異なる2種類の抄紙用スラリー20をメッシュコンベア4上に分散させて抄紙する。原料調整工程では、例えば、第2スラリー22の黒鉛含有率を40〜70質量%とし、第1スラリー21の黒鉛含有率を70〜100質量%として2種類の抄紙用スラリー20を調整する。
(スラリー供給工程)
スラリー供給工程は、移動するメッシュコンベア4上に第2スラリー22を分散させて第2の表面層12を形成する第2スラリー供給工程と、第2スラリー供給工程でメッシュコンベア4上に形成された第2の表面層12の上に第1スラリー21を供給して第1の表面層11を形成する第1スラリー供給工程とで、2種類の抄紙用スラリー20をメッシュコンベア4上に供給して複合体シートを形成する。第2スラリー供給工程では、図4に示すように、メッシュコンベア4が傾斜姿勢で配置された抄紙槽5内に供給第2スラリー22を供給して、抄紙槽5の内部から外部に向かって移動するメッシュコンベア4の抄紙面4A上に第2スラリー22を分散させて第2の表面層12を形成する。第1スラリー供給工程では、メッシュコンベア4上に形成された第2の表面層12の上方に第1スラリー21を供給して、第2の表面層12の上に第1スラリー21を分散させて第1の表面層11を形成する。すなわち、原料調整工程で調整された黒鉛含有率の異なる抄紙用スラリー20は、図4に示すように、黒鉛含有率の低い第2スラリー22が下層となるようにメッシュコンベア4の抄紙面4A上に分散され、その後、抄紙面4A上に形成された第2スラリー22からなる第2表面層12の上に第1スラリー21を供給して分散させて、第1スラリー21からなる第1表面層11を形成する。これにより、第2スラリー22で形成される第2の表面層12を下層とし、第1スラリー21で形成される第1の表面層11を上層とする2層構造の複合体シート10が抄造される。
図4に示す抄紙機1は、抄紙槽5の内部に傾斜姿勢でメッシュコンベア4を配置しており、抄紙槽5に供給された第2スラリー22の液面23からメッシュコンベア4が外側に引き出される部分に第1スラリー21を供給する供給部6を設けている。この抄紙機1は、抄紙槽5に供給された第2スラリー22をメッシュコンベア4の抄紙面4A上に分散させて第2の表面層12を形成しつつ、メッシュコンベア4が第2スラリー22の液中から引き出される直前に供給部6から第1のスラリー21を供給して、第2の表面層12の上に第1スラリー21を分散させて第1の表面層11を形成する。
ここで、メッシュコンベア4上に順に供給される第1スラリー21と第2スラリー22は2層構造で積層されるが、その境界部分において、第1スラリー21と第2スラリー22は明確に2層に分離されることなく、第1スラリー21と第2スラリー22とが混合されて中間領域15を形成する状態で積層される。第1スラリー21と第2スラリー22の境界部分における混合状態は、例えば、傾斜姿勢で配置されるメッシュコンベア4の傾斜角(α)及び移送速度(v)、第1スラリー21及び第2スラリー22の濃度、供給部6から供給される第1スラリー21の供給量等によって調整され、さらには、抄紙槽5に供給された第2スラリー22の液面23とメッシュコンベア4との交差ライン24と、第1スラリー21を供給する供給部23との間隔(K)によって調整される。例えば、メッシュコンベア4の移送速度(v)を速くし、交差ライン24と供給部6との間隔(K)を小さくすると、境界部分における第1スラリー21と第2スラリー22の混合領域である中間領域15の厚さ(d)が狭くなる。これに対して、メッシュコンベア4の移送速度(v)を遅くし、交差ライン24と供給部6との間隔(K)を大きくすると、境界部分における第1スラリー21と第2スラリー22の混合領域である中間領域15の厚さ(d)が広くなる。
この状態を図2と図5に示す。これらの図は、放熱シートの下面である第2の表面14から上面である第1の表面13までの厚さ方向における黒鉛含有率の変化を示している。図2は、下層部である第2の表面層12と上層部である第1の表面層11の境界部分において、第1スラリーと第2スラリーが狭い領域で混合されて中間領域15を形成する状態を示している。これに対して、図5は、下層部である第2の表面層12と上層部である第1の表面層11の境界部分において、第1スラリーと第2スラリーが広い領域で混合されて中間領域15を形成する状態を示している。これ等の図からも分かるように、図2で示される構成の放熱シートの中間領域15の厚さ(d)は、図5で示される構成の放熱シートの中間領域15の厚さ(d)よりも大きく、これにより、第1の表面層11における黒鉛含有量は、図5よりも図2の方が多くなる。すなわち、図2で示される構成の放熱シートの方が、図5で示される構成の放熱シートよりも熱伝導率が高くなる。したがって、抄紙工程においては、好ましくは、中間領域15の厚さ(d)が小さくなるように各条件を調整する。
さらに、メッシュコンベア4上に順に供給される第1スラリー21と第2スラリー22の前述の供給条件を調整することで、第2スラリー22で形成される第2の表面層12と第1スラリー21で形成される第1の表面層11の厚さを調整することができる。例えば、メッシュコンベア4に供給する第1スラリー21の濃度を高くし、供給量を多くすることで、第2の表面層12に対する第1の表面層11の厚さを厚くすることができる。例えば、図6は、下層部である第2の表面層12に対して上層部である第1の表面層11の厚さを厚くしてなる状態を示している。図6に示す放熱シートは、第1の表面層11の厚さを第2の表面層12の厚さの約3倍としている。これにより、第1の表面層11における黒鉛含有量を多くして放熱シートの熱伝導率を高くできる。さらに、この放熱シートは、第1の表面層11における黒鉛含有量を多くすることで、第1の表面層11におけるバインダー樹脂の使用量を少なくでき、これにより製造コストを低減できる特徴も実現できる。
以上に示す抄紙工程では、原料調整工程において、黒鉛含有率の異なる複数の抄紙用スラリーとして2種類のスラリーを用意し、スラリー供給工程において、黒鉛含有率の低い第2スラリー22を下層に分散し、黒鉛含有率の高い第1スラリー21を上層に分散させて抄造する方法を示している。ただ、本発明は、黒鉛含有率の異なる抄紙用スラリーとして、必ずしも2種類のスラリーを使用する方法には特定しない。本発明の放熱シートは、図示しないが、抄紙工程において、第1スラリーと第2スラリーの間に分散される中間スラリーを用意し、黒鉛含有率の異なる3種類以上の抄紙用スラリーを使用して3層以上の複合体シートを抄造することもできる。この放熱シートは、第1の表面層と第2の表面層との間に中間層が形成されてなる3層以上の構造とすることができる。この放熱シートは、中間層の黒鉛含有率を、第1の表面層の黒鉛含有率以下とすると共に、第2の表面層の黒鉛含有率以上とする。すなわち、中間スラリーの黒鉛含有率を、第1スラリーの黒鉛含有率以下であって、第2スラリーの黒鉛含有率以上とする。
このように放熱シートを3層以上の構造とする場合、抄紙槽に供給された第2スラリーの液中からメッシュコンベアが引き出される部分に、メッシュコンベアの移動方向に離して複数の供給部を設けることで実現できる。例えば、3層構造の放熱シートを形成する抄紙機では、第1スラリーを供給する供給部よりも液中側に、中間スラリーを供給する第2の供給部を設けることで実現できる。この抄紙機は、抄紙槽に供給された第2スラリーを、移動するメッシュコンベアの抄紙面上に分散させて第2の表面層を形成し、さらに、この第2の表面層の上に第2の供給部から供給される中間スラリーを分散させて中間層を形成し、さらにまた、中間層の上に供給部から供給される第1スラリーを分散させて第1の表面層を形成する。これにより、3層構造の放熱シートが製造される。
図7は、3層構造の放熱シートの一例として、厚さ方向における黒鉛含有率の分布を示す概略図である。この図において、縦軸は放熱シートの厚さ方向における位置を、横軸は黒鉛含有率を示している。図7で示される構成の放熱シートは、第1の表面層11と第2表面層12との間に中間層16が形成されてなる3層構造としており、第1の表面層11における第1の表面13側の黒鉛含有率を90%、第2の表面層12における第2の表面14側の黒鉛含有率を50%、中間層の黒鉛含有率を70%としている。
さらに、図7で示される構成の放熱シートは、第1の表面層11と中間層16との間に黒鉛含有率が変化する第1の中間領域15Aを設けて、第2の表面層12と中間層16との間に黒鉛含有率が変化する第2の中間領域15Bを設けている。第1の中間領域15Aの黒鉛含有率は、中間層16側から第1の表面層11側に向かって次第に高くなるようにしている。また、第2の中間領域15Bの黒鉛含有率は、第2の表面層12側から中間層16側に向かって次第に高くなるようにしている。これらの第1の中間領域15A及び第2の中間領域15Bは、図示しないが、抄紙工程において、黒鉛含有率の異なる抄紙用スラリーを、第2スラリー→中間スラリー→第1スラリーの順に供給することで、その境界部分に形成される領域である。この放熱シートは、上層側に供給される抄紙用スラリーの黒鉛含有率を下層側に供給されるスラリーの黒鉛含有率よりも高くするので、第1の中間領域15Aと第2の中間領域15Bでは、下層側から上層側に向かって次第に黒鉛含有率が高くなるように形成される。
図7に示す例では、中間層を形成する中間スラリーの黒鉛含有率(70%)を第1スラリーの黒鉛含有率(90%)と第2スラリーの黒鉛含有率(50%)の中間としているが、中間スラリーの黒鉛含有率は、種々に調整することもできる。例えば、図7の鎖線で示すように、この中間スラリーの黒鉛含有率を第1スラリーの黒鉛含有率に近づけ、あるいは第1スラリーの黒鉛含有率と等しくすることで、図6に示すように、第1の表面側の黒鉛含有量を多くすることができ、反対に中間スラリーの黒鉛含有率を第2スラリーの黒鉛含有率に近づけることで、第2の表面側のバインダー繊維量を多くできる。
以上の抄紙工程において、湿式法による抄紙シートの製造には、湿式の抄紙機として、繊維の分散が良いこと、配向性の調整が容易であること等の点から、好ましくは傾斜姿勢で配置されるメッシュコンベアを使用する。
(乾燥工程)
抄紙工程で抄造された複合体シート10は、図3に示すように乾燥機3に移動されて乾燥される。図に示す乾燥機3は、ドラム型乾燥機で、ドラム7の外周に沿って移送される複合体シート10を熱風により乾燥する。図に示す乾燥機3は、複数のドラム7を備えており、各ドラム7の外周面から放出される120〜130℃の熱風を複合体シート10に供給して、乾燥機3を通過する複合体シート10を乾燥する構造としている。ただ、乾燥機は、ドラム型乾燥機には限定せず、複合体シートを乾燥できる他の乾燥機も使用できる。
(プレス工程)
乾燥工程で乾燥された複合体シート10は、プレス機2に移送されて熱プレスされる。図に示すプレス機2は、水平姿勢で上下に配置された一対のローラー8を備えており、複合体シート10を一対のローラー8の間に通過させて熱プレスする。一対のローラー8の間を通過する複合体シート10は、所定の温度に加熱された状態で加圧されて、所定の厚さにプレスされる。図に示すプレス機2は、直径を30〜100cmとする一対のローラー8を平行な姿勢で対向して配置しており、ローラー8間を通過する複合体シート10を100〜250℃の温度に加温しながら、100〜200kg/cmの圧力でプレスする構造としている。このプレス工程において、複合体シート10は、50μm〜500μm、好ましくは50μm〜300μm、さらに好ましくは50μm〜100μmの厚さにプレスされて放熱シートとなる。連続する長いシート状に製造された放熱シート100は、ロール状に巻き取られて出荷される。
図3に示す製造装置は、抄紙機1と乾燥機3とプレス機2とを直線状に配置しており、一つのラインで放熱シート100を製造するようにしている。ただ、製造装置は、乾燥機で乾燥された複合体シートをロール状に巻き取った後、別ラインに設けたプレス機で熱プレスすることもできる。この方法は、抄紙工程と乾燥工程で製造される複合体シートの製造ラインの移動速度と、別ラインのプレス機で熱プレスして製造される放熱シートの製造ラインの移動速度とを異なる速さにできる。
本発明の実施例1に係る放熱シートを以下に示す工程で製造する。
[抄紙工程]
(原料調整工程)
黒鉛を粉砕して平均粒径を100μmとする黒鉛粉末と、バインダー繊維としてパルプ状のパラ系アラミド繊維とPET繊維を所定の比率で混合する。混合された材料と、分散液として水をチェストに供給し、チェスト内において分散液中で懸濁して分散させて所定の濃度の抄紙用スラリーを調製する。この工程では、以下に示す混合比で黒鉛含有率が異なる第1スラリーと第2スラリーを調整する。
第1スラリー:黒鉛粉末…………85質量%
アラミド繊維………5質量%
PET繊維………10質量%
スラリー濃度……1.0質量%
第2スラリー:黒鉛粉末…………50質量%
アラミド繊維……20質量%
PET繊維………30質量%
スラリー濃度……1.0質量%
これにより、黒鉛含有率を85質量%とする第1スラリーと、黒鉛含有率を50質量%とする第2スラリーが調整される。
なお、原料調整工程において調整される第1スラリー及び第2スラリーは、スラリー濃度を共に1.0質量%としているが、これ等のスラリーは、次工程であるスラリー供給工程において、さらに、濃度調整がされる状態で吐出される。例えば、第2スラリーは、抄紙槽5内において、水中に分散された状態で供給されるので、水を加えて全体の濃度が例えば0.12質量%となるように調整された後、抄紙槽5に供給される。また、第1スラリーは、第2スラリーよりも濃度が高くなるように、全体の濃度が例えば0.9質量%となるように調整された後、供給部6から吐出される。
(スラリー供給工程)
これ等の抄紙用スラリーを、図4に示すように、メッシュコンベア4に供給して湿式抄紙する。濃度調整された第2スラリー22を、図4に示すように、抄紙槽5に供給し、移動するメッシュコンベア4の抄紙面4A上に第2スラリー22を分散させて第2の表面層12を形成する。さらに、メッシュコンベア4に形成された第2の表面層12の上に、供給部6から第1スラリー21を供給する。この実施例では、第1の表面層11の厚さが第2の表面層12の厚さの3倍となるようにメッシュコンベア4上に抄紙用スラリーを分散させて、全体の厚さを200μmとする複合体シートを形成する。
以上のようにしてメッシュコンベア4上に供給された第2スラリー22と第1スラリー21は、図6に示すように、第2スラリー22が下層となり、第1スラリー21が上層となるように分散されて、第2の表面14から第1の表面13に向かって黒鉛含有率が所定の割合となるように分布する2層構造の複合体シートが形成される。
[プレス工程]
抄紙工程で抄造された複合体シートを乾燥工程で乾燥した後、プレス機で熱プレスして放熱シートとする。乾燥工程では、抄紙工程で抄造された複合体シート10を、乾燥機3に通過させて乾燥する。乾燥機は、例えば、9基のドラムによって120〜130℃の熱風で複合体シート10を乾燥する。プレス工程では、熱プレス装置として、直径を50cmとする一対のローラー8間に複合体シート10を通過させて、120℃の温度に加温しながら、150kg/cmの圧力で熱プレスする。これにより、厚さを約70μmとする放熱シート1を製造する。
比較例
抄紙工程において、黒鉛含有率を75質量%とする抄紙用スラリーを調整する。この抄紙用スラリーは、黒鉛粉末とバインダー繊維を以下に示す混合比とした。
抄紙用スラリー:黒鉛粉末…………75質量%
アラミド繊維……11質量%
PET繊維………14質量%
スラリー濃度……1.0質量%
スラリー供給工程において、以上の抄紙用スラリーに水を加えて全体の濃度が0.12質量%となるように調整して抄紙槽に吐出する。この抄紙用スラリーをメッシュコンベアの抄紙面上に分散させて全体の厚さを200μmとする単層の複合体シートを抄造する。さらに、抄紙工程で得られた複合体シートを、実施例1と同様に乾燥機で乾燥した後、熱プレスして厚さを約70μmとする放熱シート1を製造する。この放熱シートは、厚さ方向における黒鉛含有率が図8に示す分布となる。
以上のようにして製造された実施例1の放熱シートと比較例の放熱シートを以下の項目について比較した。
(1)黒鉛含有率
実施例1の放熱シート全体の平均された黒鉛含有率は以下のようになる。なお、図6に示す放熱シートでは、第1の表面層11の厚さを第2の表面層12の3倍としているので、全体を100とすると、第1の表面層11の比率が75、第2の表面層12の比率が25に相当する。
実施例1の放熱シートの黒鉛含有率
=(第1の表面層の黒鉛の比率+第2の表面層の黒鉛の比率)/100
=(75×0.85+25×0.50)/100
=76.5(%)
すなわち、実施例1の平均された黒鉛含有率は76.5%となる。これに対して比較例の黒鉛含有率は75%となる。したがって、実施例1の放熱シートと比較例の放熱シートの黒鉛含有率の差は約2%となり、ほぼ等しくなる。
(2)アラミド繊維の比率
実施例1のアラミド繊維の比率は以下のようになる。この場合も、全体を100として第1の表面層11の比率を75、第2の表面層12の比率を25とする。
実施例1の放熱シートのアラミド繊維の比率
=(第1の表面層のアラミド繊維の比率+第2の表面層のアラミド繊維の比率)/100
=(75×0.05+25×0.20)/100
=8.75(%)
すなわち、実施例1の放熱シートのアラミド繊維の比率は8.75%となる。これに対して比較例の放熱シートのアラミド繊維の比率は11%となる。したがって、実施例1の放熱シートは、比較例の放熱シートに比較してアラミド繊維の使用量を約20%低減することができる。ここで、アラミド繊維は、黒鉛やPET樹脂に比較して価格が高いため、この使用量を20%も削減できることで、全体の製造コストを約10%も低減できる。
(3)熱伝導率
実施例1の放熱シートと比較例の放熱シートにおける熱伝導率を測定した。熱伝導率は、放熱シートの表面方向における熱伝導率を測定した。各放熱シートの熱伝導率は以下のようになった。
実施例1の放熱シート………159W/m・K
比較例の放熱シート……………65W/m・K
このように、実施例1の放熱シートでは、比較例の放熱シートの2倍以上と優れた熱伝導率を実現できた。
以上のように、実施例1の放熱シートでは、従来の放熱シートに比べて、表面方向への熱伝導率を2倍以上と向上しながら、アラミド繊維の使用量を20%削減することで、全体の製造コストを約10%も低減でき、製造コストを低減しながら性能を向上できる優れた特徴を実現できる。
本発明に係る放熱シートと放熱シートの製造方法は、コンピューターに内蔵されるCPU等の電子部品やLED、液晶、PDP、EL、携帯電話等の発光素子等の電子部品からの発熱を放熱する薄くて軽い放熱シート及びその製造方法として好適に採用される。
100…放熱シート
1…抄紙機
2…プレス機
3…乾燥機
4…メッシュコンベア
4A…抄紙面
5…抄紙槽
6…供給部
7…ドラム
8…ローラー
10…複合体シート
11…第1の表面層
12…第2の表面層
13…第1の表面
14…第2の表面
15…中間領域
15A…第1の中間領域
15B…第2の中間領域
16…中間層
20…抄紙用スラリー
21…第1スラリー
22…第2スラリー
23…液面
24…交差ライン

Claims (9)

  1. バインダー繊維の隙間に黒鉛を含む湿式抄紙の放熱シートであって、
    シートの一方の表面側にある第1の表面の黒鉛含有量が、他方の表面側にある第2の表面よりも多いことを特徴とする放熱シート。
  2. 請求項1に記載される放熱シートであって、
    前記バインダー繊維がアラミド繊維を含むことを特徴とする放熱シート。
  3. 請求項1または2に記載される放熱シートであって、
    前記第1の表面の黒鉛含有率が70質量%以上であって100質量%以下である放熱シート。
  4. 請求項1ないし3のいずれかに記載される放熱シートであって、
    第1の表面の黒鉛含有率を、第2の表面の黒鉛含有率よりも10質量%以上高くしてなる放熱シート。
  5. 請求項1ないし4のいずれかに記載される放熱シートであって、
    前記第1の表面と前記第2の表面との間に中間層が形成されており、前記中間層の黒鉛含有率が前記第1の表面の黒鉛含有率以下であり、前記第2の表面の黒鉛含有率以上であることを特徴とする放熱シート。
  6. 請求項1ないし5のいずれかに記載される放熱シートであって、
    前記黒鉛が膨張黒鉛の粉末で、その平均粒径が5μm〜500μmである放熱シート。
  7. 黒鉛とバインダー繊維とを分散液に懸濁して抄紙用スラリーとし、この抄紙用スラリーを湿式抄紙してシート状の複合体シートとする抄紙工程と、
    前記抄紙工程で得られる複合体シートを熱プレスして所定の厚さとするプレス工程と
    を含有する放熱シートの製造方法であって、
    前記抄紙工程が、
    黒鉛含有率の異なる複数の抄紙用スラリーを調整する原料調整工程と、
    前記原料調整工程で調整された複数の抄紙用スラリーを、黒鉛含有率の低い抄紙用スラリーが下層となり、黒鉛含有率の高い抄紙用スラリーが上層となるようにメッシュコンベアの抄紙面に分散させるスラリー供給工程とを備え、
    該抄紙工程において、上面側に形成される上層部の表面の黒鉛含有量が下面側に形成される下層部の表面の黒鉛含有量よりも多くなるように前記複合体シートが抄造されることを特徴とする放熱シートの製造方法。
  8. 請求項に記載される放熱シートの製造方法であって、
    前記原料調整工程で調整される、前記黒鉛含有率の高い抄紙用スラリーを第1スラリーとし、前記黒鉛含有率の低い抄紙用スラリーを第2スラリーとして、前記第1スラリーの黒鉛含有率を前記第2スラリーの黒鉛含有率よりも10質量%以上高くしてなることを特徴とする放熱シートの製造方法。
  9. 請求項に記載される放熱シートの製造方法であって、
    前記スラリー供給工程が、
    移動するメッシュコンベア上に該第2スラリーを分散させて第2の表面層を形成する第2スラリー供給工程と、
    前記第2スラリー供給工程でメッシュコンベア上に形成された前記第2の表面層の上に前記第1スラリーを供給して第1の表面層を形成する第1スラリー供給工程と
    を備えることを特徴とする放熱シートの製造方法。
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