JP6552913B2 - 発電システムの制御装置、発電システム、及び発電方法 - Google Patents
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Description
一方、舶用の発電システムは、無限大母線と接続されていない、所謂マイクログリッド(アイランドモードともいう。)であるため、発電機のガバナは調速弁開度を固定できず、調速制御で動作する。また、PMS(Power Management System;パワーマネジメントシステム)が発電電力の周波数を監視し、周波数が所定値となるように、各発電機の負荷容量(Available power;発電機で利用可能な出力)を用いて負荷分担を制御する。そして、変圧運転による舶用排熱回収では、発電機の負荷容量を一定値に固定できないので、発電電力の制御に以下のような手法を用いている。
このため、従来では、図9に示されるように、PMS100が負荷容量値保持部102で負荷容量値を予め保持(記憶)し、TCP(Turbine Control Panel;タービンコントロールパネル)104から出力されるパルス信号(オン・オフ信号)によって、負荷容量値保持部102で保持している負荷容量値を増減させる。TCP104から出力されるパルス信号は、主蒸気圧力と調速弁開度に基づくものであり、所定値ずつ段階的に負荷容量値を増加(インクリメント)又は減少(デクリメント)させる値である。このように、保持している負荷容量値をパルス信号によって段階的に増減させる制御を行う理由は、変圧運転において負荷容量値の絶対値を正確に算出することが困難なためである。
PMS100は、負荷分担制御部106及びガバナ増減パルス生成部108を備える。負荷分担制御部106は、負荷容量値保持部102で保持している負荷容量値に基づいて、蒸気タービン及び他の発電機110(ディーゼルエンジン発電機)の負荷分担を示す負荷分担信号を生成する。ガバナ増減パルス生成部108は、負荷分担制御部106からの負荷分担信号に基づいて、蒸気タービン及び他の発電機110に対して、制御値(速度設定)を増加又は減少させるためのガバナ増減パルス信号を生成し、ガバナ112A,112B,112Cへ出力する。
なお、ガバナ112Aは、TCP104に備えられ、蒸気タービンの回転速度を制御するものであり、PMS100が指示する回転速度の速度設定(ガバナ増減パルス信号)に応じた調速弁開度を調速弁へ出力することで、蒸気タービンの出力を制御すると共に、調速弁開度が目標開度となるように制御される。
また、ガバナ112B,112Cは、各々発電機110に備えられ、発電機110の回転速度を制御するものであり、PMS100が指示する回転速度の速度設定(ガバナ増減パルス信号)に応じた調速弁開度を調速弁へ出力することで、発電機110の出力を制御する。
すなわち、比較部114,116による比較の結果、調速弁開度が目標開度に満たない場合は、増パルス信号が増パルス出力部118からPMS100へ出力される。また、比較部114,116による比較の結果、調速弁開度が目標開度を超えた場合や、主蒸気圧力が最低圧力未満となった場合は、減パルス出力部120から減パルス信号がPMS100へ出力される。
しかしながら、負荷容量値は、TCP104からのパルス信号によって増減するので、負荷容量値の変化の速さはパルス信号の間隔(以下「パルス間隔」という。)や幅(以下「パルス幅」という。)に依存する。さらに、PMS100では、TCP104からのパルス信号に対して重み付けを行い、負荷容量値を変化させる場合がある。このような場合には、負荷容量値の変化の速さは、重み付けにも依存することとなる。なお、重み付けは、例えば、調速弁開度、主蒸気圧力、蒸気タービン発電機の出力(以下「STG出力」という。)、及び主機エンジン負荷等に基づいて行われる。
ところが、パルス信号による負荷容量値の増減は、段階的な増減等により時間遅れが生じる。このため、プラント状態が変化しても、その度にプラント状態の最適値を遅れなく負荷容量値に反映できず、調速弁の開度制御にも遅れが生じる。従って、TCP104から出力されるパルス信号のパルス間隔やパルス幅、及びPMS100におけるパルス信号への重み付け等を調整しても、ハンチングを抑制できない場合がある。
パルス信号を用いた従来の制御では、プラントの状態が変化することでパワータービンの出力が変化した場合、周波数も変化する。このため、ガバナ112Aがドループ特性によってパワータービンの出力変化を吸収するように動作し、これによって調速弁開度を変化させる。その後、PMS100が、主蒸気圧力や調速弁開度を目標値に保つように負荷容量値をパルス信号によって増減させることとなる。
このように、パルス信号を用いた従来の制御では、蒸気タービンの調速弁がパワータービンの出力変化に応じて、また負荷容量値の変化に応じてその都度制御される。このため、プラントの状態が変化している間に、調速弁開度が過度に低下したり、全開位置で固定されたりすることで、制御が不安定になる可能性があった。
しかしながら、パルス信号による負荷容量値の増減は、時間遅れが生じるため、プラント状態が変化しても、その度にプラント状態の最適値を遅れなく負荷容量値に反映できず、調速弁の開度制御にも遅れが生じる。
従って、本構成は、プラントの状態が変化した場合の排熱回収において、より安定な制御を可能とする。
また調速弁の開度が開くほど蒸気圧は低下するが、蒸気圧には最小値が設定されているため、実際の蒸気圧が設定されている最小値未満とならないようにする必要がある。ここで、第2負荷容量値が第1負荷容量値よりも小さい場合とは、実際の蒸気圧が設定最小値未満となる場合である。このような場合には、第2負荷容量値が選択され、実際の蒸気圧を最小値以上に維持することができる負荷容量値が算出される。
これにより、蒸気タービンに導入する蒸気圧が設定された最小値未満となることを防止できる。
従って、本構成は、プラントの状態が変化した場合の排熱回収において、より安定な制御を可能とする。
タービン発電機系統1は、メインエンジン3と、メインエンジン3の排ガスによって駆動される過給機5と、過給機5の上流側から抽気されたメインエンジン3の排ガスによって駆動されるパワータービン(ガスタービン)7と、メインエンジン3の排ガスによって蒸気を生成する排ガスエコノマイザ11と、排ガスエコノマイザ11によって生成された蒸気(高圧蒸気)によって駆動される蒸気タービン9とを備えている。
過給機5は、タービン部5aと、コンプレッサ部5bと、タービン部5aとコンプレッサ部5bを連結する回転軸5cとから構成されている。
この排ガスエコノマイザ11は、過給機5のタービン部5aの出口側から第3排気管L3を介して排出される排ガスと、パワータービン7の出口側から第4排気管L4を介して排出される排ガスとが、導入されて熱交換部21によって、排ガスの熱によって給水管23によって供給された水を蒸発させて蒸気を発生させる。そして、排ガスエコノマイザ11で生成された蒸気は第1蒸気管J1を介して蒸気タービン9に導入され、また、該蒸気タービン9で仕事を終えた蒸気は第2蒸気管J2によって排出されてコンデンサ(復水器)40に導かれるようになっている。
また、第1蒸気管J1には、蒸気タービン9へ向かう蒸気を取り出して復水器40へと導く蒸気ダンプ配管J3が設けられている。蒸気ダンプ配管J3には、蒸気ダンプ配管J3から復水器40へ導かれる蒸気量を制御するダンプ弁41が設けられている。この蒸気ダンプ配管J3によって、蒸気タービン9に供給するには過剰とされる蒸気が蒸気タービン9をバイパスして復水器40へと廃棄される。
以上のようにタービン発電機系統1は、メインエンジン3の排ガス(燃焼ガス)の排気エネルギーを動力として駆動されるようになっており、排気エネルギー回収装置を構成している。
発電システム制御装置43には、タービン発電機25の出力電力を検出する電力センサ45からの信号が入力されている。また、発電システム制御装置43には、ディーゼルエンジン発電機60からの出力信号と、船内消費電力を検出する船内消費電力センサ51からの信号とが入力されている。
PMS53から設定された負荷率に応じた出力の指示信号が、TCP57、及びディーゼルエンジン発電機60用ガバナ部にそれぞれ出力される。
ここで、パワータービン7と蒸気タービン9とタービン発電機25は1つの軸に直列に結合されている。このように各々が1つの軸に直列接続されている場合、ガバナは主となる原動機である蒸気タービン9に対するガバナ59のみが設置される。これは、1つの軸に2以上のガバナを設置するのは制御が複雑となるためである。
よって、パワータービン7による出力が変化する場合、発電システム制御装置43は、蒸気タービン9の出力、すなわちガバナ59によって調速弁37を制御することとなる。
ここで、パワータービン7にはガバナが設置されないため、パワータービン7の制御は排ガス量調整弁33の開閉のみの制御となり、定常運転中は常に全開のままとなる。但し、パワータービン7の立ち上げ及び立ち下げ時に限り、排ガス調整弁33の開度は漸増または漸減する。よって、パワータービン7の出力に変化があると蒸気タービン9の出力、すなわちガバナ59による調速弁37の開度制御がその変化量を吸収するように変動する。なお、パワータービン7の立ち上げとは、パワータービン7の出力が0である状態を起点として、出力を増加させることであり、パワータービン7の立ち下げとは、パワータービン7の出力が0になるように、出力を減少させることであると定義する。
本実施形態に係るガバナ制御では、TCP57によって、タービン発電機25で利用可能な蒸気タービン9の出力を示す負荷容量の制限値(以下「制限負荷容量値」という。)、及び調速弁37の目標開度と調速弁37の実際の開度との偏差に基づいて、蒸気タービン9から得られる実際の負荷容量値を算出する。そして、算出された負荷容量値に基づいて、ガバナ59によって調速弁開度が制御される。なお、調速弁37の目標開度は例えば90%の開度であり、必ずしも全開である必要はない。
制限値算出部71は、例えば、メインエンジン3の負荷(M/E Load)に基づいて負荷容量値の制限値(以下「制限負荷容量値」という。)を算出し、乗算部72へ出力する。制限負荷容量値は、換言すると、算出される負荷容量値の上限値である。すなわち、負荷容量値算出部70で算出される負荷容量値には、上限値が定められる。このように、負荷容量値算出部70は、負荷容量値に上限が定めるので、現実に則した負荷容量値を算出することとなる。
なお、制限値算出部71は、一例として、メインエンジン3の負荷と外気温度(Atomos.Temp.)を変数とする予め定められた関数によって、理論上求められる制限負荷容量値を算出する。理論上求められる制限負荷容量値は、換言すると、負荷容量値の設計値である。しかしながら、制限負荷容量値は、これに限らず、この設計値に対して他のパラメータを加味して、より現実に則したものとされてもよい。
減算部73は、調速弁37の目標開度(GV lift Setting)と調速弁37の実際の開度(GV Lift)との偏差である開度偏差を算出し、PID演算部74へ出力する。
PID演算部74は、開度偏差に基づいて負荷容量値(以下「開度偏差負荷容量値」という。)を演算し、低値選択部75へ出力される。なお、PID演算部74は、開度偏差を変数とする予め定められた関数によって、開度偏差負荷容量値を算出する。
開度偏差負荷容量値は、低値選択部75において、蒸気タービン9に導入する蒸気圧の設定値と実際の蒸気圧との偏差に基づく負荷容量値(以下「圧力偏差負荷容量値」という。)と比較され、より小さい値が低値選択部75から出力される。低値選択部75から出力される負荷容量値は、換言すると、負荷容量の目標値(以下「負荷容量目標値」という。)である。
また、本実施形態に係るタービン発電機系統1は、パワータービン7も備えているため、別途算出されたパワータービン7の出力値(PT Act.kW)も加算部79で更に加算される。すなわち、加算部79から出力された負荷容量値が、本実施形態に係るタービン発電機25の実際の負荷容量値(STG Avail.kW)の絶対値であり、この値がアナログ信号(電圧値)としてPMS53が備える負荷分担制御部80へ出力される。
この理由は、調速弁開度が開くほど蒸気圧は低下するが、蒸気圧には最小値が設定されているため、実際の蒸気圧が設定最小値未満とならないようにするためである。すなわち、圧力偏差負荷容量値が開度偏差負荷容量値よりも小さい場合とは、実際の蒸気圧が設定最小値未満となる場合である。このような場合には、圧力偏差負荷容量値が低値選択部75で選択され、実際の蒸気圧を設定最小値以上に維持することができる負荷容量値が算出される。
これにより、蒸気タービン9に導入する蒸気圧が設定最小値未満となることを防止できる。
減算部81は、高圧蒸気圧の計測値(HP Press)と高圧蒸気圧の設定最小値(HP Press Min Setting)との偏差である圧力偏差を算出し、PID演算部82へ出力する。
PID演算部82は、圧力偏差に基づいて圧力偏差負荷容量値を演算し、低値選択部75へ出力する。なお、PID演算部82は、圧力偏差を変数とする予め定められた関数によって、圧力偏差負荷容量値を算出する。
これを防止するために、負荷容量値算出部70は、減算部83、高値選択部84、及びレートリミッタ85を備える。
高値選択部84は、変動抑制値で減算された計測値と設定最小値とを比較し、より小さな値をレートリミッタ85へ出力する。
レートリミッタ85は、高値選択部84から出力された値を所定の時間変化率で減算部83へ出力する。
負荷分担制御部80は、TCP57から入力された負荷容量値に基づいて、蒸気タービン9及びディーゼルエンジン発電機60の負荷分担を示す負荷分担信号を生成する。ガバナ増減パルス生成部86は、負荷分担制御部80からの負荷分担信号に基づいて、蒸気タービン9及びディーゼルエンジン発電機60に対して、制御値(速度設定値)を増加又は減少させるためのガバナ増又はガバナ減を示すパルス信号(以下「ガバナ増減パルス信号」という。)を生成し、各々に対応するガバナ59,87,88へ出力する。
また、ガバナ87,88は、各々対応するディーゼルエンジン発電機60に備えられ、ディーゼルエンジン発電機60の回転速度を制御するものであり、PMS53が指示する回転速度の速度設定値(ガバナ増減パルス信号)に応じた調速弁開度を調速弁37へ出力することで、ディーゼルエンジン発電機60の出力を制御する。
STG Avail.kW=ST Avail.kW+PT Act.kW ・・・(1)
PT Act.kW=STG Act.kW−ST Act.kW ・・・(2)
なお、蒸気タービン9の出力計測値は、蒸気タービン9に導入される主蒸気圧力、蒸気温度、蒸気の排気圧力等の各種計測値を用いて既知の手法により算出される。
タービン発電機25の負荷容量値(STG Avail.kW)は、パワータービン7の負荷容量値(PT Avail.kW)を用いて下記(3)式から算出することも考えられる。
STG Avail.Kw=ST Avail.kW+PT Avail.kW ・・・(3)
ここで、パワータービン7の負荷容量値(PT Avail.kW)は、メインエンジン3の負荷による関数に対して、外気温(過給機5の吸込み温度)をパラメータとして補正することで求められる。すなわち、(3)式では、メインエンジン3の負荷と外気温とでパワータービン7の負荷容量値(PT Avail.kW)がある値に決まってしまうので、メインエンジン3の負荷と外気温とでは、パワータービン7の起動中において時々刻々と変化するパワータービン7の負荷容量値(PT Avail.kW)を算出できない。従って、(3)式では、パワータービン7の起動中におけるタービン発電機25の負荷容量値(STG Avail.kW)も算出できない。
なお、蒸気タービン9の調速弁37の開度(換言すると、蒸気タービン9の出力)を現状維持することを目的とすると、パワータービン7の起動中の出力値(PT Act.kW)の変化は、即ちタービン発電機25の負荷容量値(STG Avail.kW)の変化でもあると考えることができる。また、パワータービン7の起動中の出力の変化は、(2)式で算出されるPT Act.kWの変化として現れ、精度良く得られる。
減算部90は、タービン発電機25の出力計測値(STG Act.kW)から蒸気タービン9の出力計測値(ST Act.kW)を減算し、パワータービン7の出力値(PT Act.kW)を算出する。
減算部91は、減算部90からの出力値(PT Act.kW)とPID演算部92から出力されるパワータービン7の負荷容量値とを減算し、偏差を出力する。なお、減算部91から出力される偏差が0でない場合は、パワータービン7の出力に変化があった場合である。
PID演算部92は、減算部91から出力された偏差に基づいて、パワータービン7の負荷容量値を算出し、加算部79へ出力する。なお、PID演算部92は、パワータービン7の出力に変化があり、大きな値の偏差が入力された場合に、パワータービン7の出力値を急激に変化させるのではなく、パワータービン7の出力値(負荷容量値)を時間変化を伴って徐々に変化させて出力する。
そして、期間(3)までは、高圧蒸気圧は設定最小値を超え、また、調速弁開度は目標開度未満であるため、TCP57はPMS53へ出力する負荷容量値を増加させる。
PMS53は増加した負荷容量値に応じてガバナ59にガバナ増指令を示すパルス信号を出力し、これによりガバナ59が調速弁開度を増加するので、蒸気タービン9の負荷が増加する。
なお、高圧蒸気圧が設定最小値未満となると、調速弁開度が目標開度に達していなくても、TCP57はそれまでのような負荷容量値の増加をやめ、設定最小値を維持すべく負荷容量値を調整する。
なお、調速弁開度を目標開度とする制御は一旦止まるが、厳密にはこの状態で蒸気量が増加すると蒸気タービン9の回転速度が増加するので、ガバナ59は蒸気タービン9に導入する蒸気量を減少させるように動き、調速弁開度は減少する。そして、さらに調速弁開度を目標開度とするべくTCP57は負荷容量値を増加させ、PMS53のガバナ増指令により負荷が増加する。このように、調速弁37の目標開度到達後も蒸気量増加に伴い、調速弁開度を目標開度とする制御が繰り返されながら負荷容量値が増加し、蒸気タービン9の負荷が増加していく。
なお、調速弁開度が目標開度より増加すると、調速弁開度を目標開度に戻すためにTCP57はタービン発電機25の負荷容量値(STG Avail.kW)を減少させる。そしてPMS53からガバナ減指令を受けて調速弁開度は目標開度に向かって減少する。このように、期間(11)では、調速弁開度が小さな増減を繰り返しながら、目標開度を維持することとなる。
従来のパルス信号を用いた負荷容量値の増加では、パワータービン7の出力が一定となった時間T3以降も時間遅れのために、段階的に負荷容量値が増している。一方、本実施形態に係る制御では、パワータービン7の出力が一定となった時間T3のタイミングで、負荷容量値の増加は終わり、その後一定となる。
ガバナ速度設定値の変化は、負荷容量値の増減に依存するため、従来に係る図6(A−4)では、パワータービン7の出力が一定となった時間T3以降も時間遅れのために、所定値ずつ段階的にガバナ速度設定値が増している。一方、本実施形態に係る図6(B−4)では、パワータービン7の出力が一定となった時間T3となったタイミングで、ガバナ速度設定値の増加は終わり、その後一定となる。
図6(A−5),(B−5)で示されるように、パワータービン7の出力が増加すると共に調速弁開度は減少する。これが期間aである。一方、減少し過ぎた調速弁開度を目標開度とする制御が、期間bで行われる。
従来では、パワータービン7の出力変化に伴い調速弁開度が制御され、その後パルス信号によってPMS53に保持している調速弁開度や蒸気圧を目標値とする制御が行われていた。このため、制御に時間遅れが生じており、排ガス量調整弁33が全開となってもパワータービン7や蒸気タービン9も整定状態となっていない。
一方、本実施形態では、(1)式で示すように、パワータービン7の出力変化がタービン発電機25の負荷容量値(アナログ信号)にリアルタイムで反映させるため、時間遅れ無く調速弁開度の制御が可能となり、減少し過ぎた調速弁開度を目標開度とする制御に要する時間(期間b)も従来に比べて短くなる。特に、本実施形態では、排ガス量調整弁33が全開となったタイミングにおいて、調速弁開度を目標開度とできるのでパワータービン7や蒸気タービン9も従来に比べて早く整定状態となる。
一方、本実施形態に係る図7(B−3)では、負荷容量値はアナログ信号で表されるため、連続的に減少し、時間遅れもない。
ガバナ速度設定値の変化は、負荷容量値の増減に依存するため、従来に係る図7(A−4)では、ガバナ速度設定値が減少した後に増加して一定となる。一方、本実施形態に係る図7(B−4)では、従来のようなガバナ速度設定値の減少・増加はなく、ガバナ速度設定値は減少後に一定となる。
従来では、制御に時間遅れが生じているので、タービン発電機25の出力は正定状態となるまで時間を要する。一方、本実施形態では、時間遅れ無く制御が可能でるため、タービン発電機25の出力が正定状態となるまでの時間が従来に比べて短い。
ここで、従来では、PMS53に保持されている負荷容量値をパルス信号によって増減させるため、タービン発電機25の出力変化に対して負荷容量値の変化に遅れが生じる。その結果、ガバナ速度設定値や調速弁開度の変化にも遅れが生じるので、図8(A−2)〜(A−5)に示されるように、各種制御値にハンチングが生じる可能性がある。換言すると、パルス信号による負荷容量値の変化の位相が、タービン発電機25の出力、ガバナ速度設定値や調速弁開度の変化の位相とずれるため、ハンチングが生じる可能性がある。
一方、本実施形態では、TCP57で負荷容量値の絶対値を算出し、アナログ信号によりPMS53へ出力するので、負荷容量値の算出、ガバナ速度設定値の出力、調速弁開度の制御を時間遅れ無く行えるので、従来のようなハンチングを抑制できる。
これにより、本実施形態に係るTCP57は、調速弁開度の制御に用いる負荷容量値を従来のようにパルス信号で増減しないので、パルス信号特有の時間遅れを生じることなく、調速弁37を制御できる。従って、TCP57は、プラントの状態が変化した場合の排熱回収において、より安定な制御を可能とする。
この形態の場合、プラント設備は、無限大母線と接続されていない、所謂マイクログリッド(アイランドモードともいう。)で運用される。
3 メインエンジン
7 パワータービン
9 蒸気タービン
25 タービン発電機(発電機)
37 調速弁
43 発電システム制御装置(制御装置)
59 ガバナ(制御手段)
70 負荷容量値算出部(算出手段)
Claims (8)
- 排ガスによって生成された蒸気によって駆動される蒸気タービンと、
前記蒸気タービンに導入する蒸気量を制御する調速弁と、
前記蒸気タービンに接続された発電機と、
を具備し、前記蒸気タービンに導入する蒸気圧を変化させる変圧運転を行う発電システムの制御装置であって、
前記調速弁の目標開度と前記調速弁の実際の開度との偏差に基づいて、前記蒸気タービンから得られる実際の負荷容量値を算出する算出手段と、
前記算出手段によって算出された前記負荷容量値に基づいて、前記調速弁の開度を制御する制御手段と、
を備え、
前記算出手段は、前記調速弁の目標開度と前記調速弁の実際の開度との偏差に基づく第1負荷容量値、及び前記蒸気タービンに導入する蒸気圧の設定値と実際の蒸気圧との偏差に基づく第2負荷容量値のうちより小さな値を、前記蒸気タービンから得られる実際の負荷容量値として算出する発電システムの制御装置。 - 前記算出手段で算出される前記負荷容量値は、上限が定められる請求項1記載の発電システムの制御装置。
- 前記排ガスによって駆動されるパワータービンを具備し、
前記発電機は、前記パワータービン及び前記蒸気タービンに接続され、
前記算出手段は、算出した前記負荷容量値と前記パワータービンの出力値との和を前記発電機で利用可能な負荷容量値として出力する請求項1記載の発電システムの制御装置。 - 前記パワータービンの出力値は、前記発電機の出力の計測値から前記蒸気タービンの出力の計算値を減算して算出される請求項3記載の発電システムの制御装置。
- 排ガスによって駆動されるパワータービンと、
前記排ガスによって生成された蒸気によって駆動される蒸気タービンと、
前記蒸気タービンに導入する蒸気量を制御する調速弁と、
前記パワータービン及び前記蒸気タービンに接続された発電機と、
を具備し、前記蒸気タービンに導入する蒸気圧を変化させる変圧運転を行う発電システムの制御装置であって、
前記調速弁の目標開度と前記調速弁の実際の開度との偏差に基づいて、前記蒸気タービンから得られる実際の負荷容量値を算出する第1算出手段と、
前記第1算出手段によって算出された前記負荷容量値に基づいて、前記調速弁の開度を制御する第1制御手段と、
前記パワータービンの出力値を前記発電機の出力の計測値から前記蒸気タービンの出力の計算値を減算することで算出し、算出した前記パワータービンの出力値を前記蒸気タービンから得られる負荷容量値に加算することで前記発電機の負荷容量値を算出する第2算出手段と、
前記第2算出手段によって算出された前記発電機の負荷容量値に基づいて、前記調速弁の開度を制御する第2制御手段と、
を備え、
前記第1算出手段は、前記調速弁の目標開度と前記調速弁の実際の開度との偏差に基づく第1負荷容量値、及び前記蒸気タービンに導入する蒸気圧の設定値と実際の蒸気圧との偏差に基づく第2負荷容量値のうちより小さな値を、前記蒸気タービンから得られる実際の負荷容量値として算出する発電システムの制御装置。 - 請求項1又は請求項5記載の制御装置を備え、前記蒸気タービンに導入する蒸気圧を変化させる変圧運転を行う発電システム。
- 排ガスによって生成された蒸気によって蒸気タービンを駆動する工程と、
前記蒸気タービンに導入する蒸気量を調速弁によって制御する工程と、
前記蒸気タービンの駆動により発電を行う工程と、
を具備し、前記蒸気タービンに導入する蒸気圧を変化させる変圧運転を行う発電方法であって、
前記調速弁の目標開度と前記調速弁の実際の開度との偏差に基づいて、前記蒸気タービンから得られる実際の負荷容量値を算出する第1工程と、
前記第1工程によって算出した前記負荷容量値に基づいて、前記調速弁の開度を制御する第2工程と、
前記調速弁の目標開度と前記調速弁の実際の開度との偏差に基づく第1負荷容量値、及び前記蒸気タービンに導入する蒸気圧の設定値と実際の蒸気圧との偏差に基づく第2負荷容量値のうちより小さな値を、前記蒸気タービンから得られる実際の負荷容量値として算出する第3工程と、
を備える発電方法。 - 排ガスによってパワータービンを駆動する工程と、
前記排ガスによって生成された蒸気によって蒸気タービンを駆動する工程と、
前記蒸気タービンに導入する蒸気量を調速弁によって制御する工程と、
前記パワータービン及び前記蒸気タービンの駆動により発電を行う工程と、
を具備し、前記蒸気タービンに導入する蒸気圧を変化させる変圧運転を行う発電方法であって、
前記調速弁の目標開度と前記調速弁の実際の開度との偏差に基づいて、前記蒸気タービンから得られる実際の負荷容量値を算出する第1工程と、
前記第1工程によって算出された前記負荷容量値に基づいて、前記調速弁の開度を制御する第2工程と、
前記パワータービンの出力値を発電機の出力の計測値から前記蒸気タービンの出力の計算値を減算することで算出し、算出した前記パワータービンの出力値を前記蒸気タービンから得られる負荷容量値に加算することで前記発電機の負荷容量値を算出する第3工程と、
前記第3工程によって算出した前記発電機の負荷容量値に基づいて、前記調速弁の開度を制御する第4工程と、
前記調速弁の目標開度と前記調速弁の実際の開度との偏差に基づく第1負荷容量値、及び前記蒸気タービンに導入する蒸気圧の設定値と実際の蒸気圧との偏差に基づく第2負荷容量値のうちより小さな値を、前記蒸気タービンから得られる実際の負荷容量値として算出する第5工程と、
を備える発電方法。
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