以下、本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[第1実施形態]
(1)燃料電池利用システムの全体構成
第1実施形態の燃料電池利用システムは、水素ガスを生成して燃料電池車に供給し、燃料電池車内の燃料電池でその水素ガスを用いて発電させ、その発電電力を、燃料電池車外の受電対象へ供給することが可能に構成されたシステムである。
図1に示すように、第1実施形態の燃料電池利用システムは、燃料電池車1と、水素供給システム2と、電力受給電装置3と、太陽光発電システム4と、LPガスタンク群6と、メタンガス生成システム7と、システム制御部8と、ユーザインタフェース(以下「UI」と略す)部9と、通信部10と、を備える。これら各構成要素は、燃料電池車1を除き、地上側に固定して設置される、地上側設備である。
燃料電池車1は、燃料電池11を搭載し、その燃料電池11の発電電力によってモータ23(図1では不図示。図2参照。)が駆動されることによりそのモータ23の駆動力によって走行可能な車両である。
燃料電池11は、水素ガスを燃料とし、水素ガスと酸素ガスの化学反応により電力を生じさせることが可能に構成された電池であり、発電装置の一種である。燃料電池の種類としては、例えば固体高分子形、リン酸形、アルカリ形、固体酸化物形など、様々な種類があり、いずれも本実施形態の燃料電池11として利用できる。
燃料電池車1に対しては、燃料電池11の燃料である水素ガスとして、高圧水素ガス(以下「高圧水素」と略称する)及び低圧水素ガス(以下「低圧水素」と略称する)の2種類の水素ガスを車外から供給可能である。
高圧水素は、規定の圧力範囲内の圧力に圧縮された水素ガスである。高圧水素は、後述するように、燃料電池車1内に流入されると、高圧タンク26(図2参照)に貯蔵され、主にモータ23の駆動用の電力を発電させる際の燃料として用いられる。規定の圧力範囲は、本実施形態では例えば30MPa〜100MPaである。ただし、この30MPa〜100MPaという圧力範囲はあくまでも一例である。水素ガスを高圧に圧縮して車内に貯蔵させる主な目的の1つは、貯蔵された水素ガスによる走行可能距離を延ばすためである。そのため、高圧水素の規定の圧力範囲は、一般的には、燃料電池車1内の高圧タンク26の耐圧性能や、第1の水素供給装置側における水素ガスの圧縮能力及び圧縮後の高圧水素の供給対象への供給能力などによって定められる。
高圧水素は、当該高圧水素を供給対象へ供給可能に構成された第1の水素供給装置から燃料電池車1へ供給することができる。第1の水素供給装置の一例として、現在普及が進められている水素ステーションに設置されるいわゆるディスペンサと呼ばれている装置が挙げられる。図1に示す水素供給システム2も、第1の水素供給装置の一例である。
低圧水素は、上記規定の圧力範囲よりも低い圧力の水素ガスである。低圧水素は、本実施形態では、後述するように、燃料電池車1内において、主に燃料電池車1の外部へ電力を出力する際の発電用の燃料として用いられる。低圧水素の圧力は、本実施形態では例えば標準気圧(1気圧)を含む一定の範囲内の圧力である。ただしその範囲はあくまでも一例である。なお、以下の説明で「発電電力」とは、特にことわりのない限り、主に低圧水素を燃料として発電される、外部出力用の電力を意味する。
低圧水素は、当該低圧水素を供給対象へ供給可能に構成された第2の水素供給装置から燃料電池車1へ供給することができる。図1に示す水素供給システム2は、第2の水素供給装置の一例である。
燃料電池車1において、車外の第1の水素供給装置から高圧水素を受け入れて車内へ流入させるための高圧水素用の流入部は、燃料電池車1の一側面側に一箇所設けられている。また、車外の第2の水素供給装置から低圧水素を受け入れて車内へ流入させるための低圧水素用の流入部は、燃料電池車1の両側面側にそれぞれ一箇所ずつ合計2箇所設けられている。ただし、高圧水素及び低圧水素の流入部の数や位置、形状、構造等は特に限定されるものではなく、適宜決めるようにしてもよい。なお、図1では、燃料電池車1において、車内に流入された高圧水素及び低圧水素が燃料電池11へ供給される状態が破線矢印で簡略的に図示されているが、実際には、後で図2を用いて説明するように、流入された高圧水素及び低圧水素はそれぞれ、配管や弁などの各種の構成部材を経由して燃料電池11へ供給される。
燃料電池11で発電される発電電力は、外部給電コネクタ12から車外へ出力可能である。外部給電コネクタ12には、車両接続ケーブル32を着脱可能である。外部給電コネクタ12に車両接続ケーブル32の一端側を接続し、他端側を供給対象側(本実施形態では電力受給電装置3の外部受電コネクタ3a)に接続すると、燃料電池11の発電電力を車両接続ケーブル32を介して電力受給電装置3へ供給することが可能となる。
車両接続ケーブル32は、より詳しくは、発電電力を供給するための電力ケーブルと、データ通信用のコネクタとを含む。燃料電池車1における燃料電池11の動作は、主に、燃料電池車1内に搭載された車両制御部24により制御される。車両制御部24は、燃料電池11の動作状態を含む各種情報を、車両接続ケーブル32を介して外部へ送信したり、逆に外部から車両接続ケーブル32を介して各種情報を受信したりすることができる。車両接続ケーブル32を介して外部へ送信可能な情報には、燃料電池11による発電電力が外部給電コネクタ12から車外へ出力されている場合におけるその出力されている発電電力に関連する電力関連情報が含まれる。電力関連情報は、出力されている発電電力の値(単位は[W])を示す情報に限らず、例えば、出力されている電力量(単位は[Wh])を示す情報や、出力されている電圧を示す情報、出力されている電流を示す情報などの情報も含まれる。
水素供給システム2は、高圧水素及び低圧水素をそれぞれ生成して外部へ供給可能に構成されている。水素供給システム2で生成された高圧水素及び低圧水素を、燃料電池車1へ供給することができる。
水素供給システム2は、水素を含む流体である水素含有物を改質することにより水素ガスを生成するように構成されている。なお、本明細書において改質とは、水素含有物から水素を分離させ、その分離させた水素から周知の精製方法を用いて水素ガスを生成することを意味する。本実施形態では、都市ガス、LPガス(Liquefied Petroleum Gas :液化石油ガス)、及びメタンガスの3種類の水素含有物を改質対象(以下「改質源」とも言う)としてそれぞれ個別に改質して水素ガスを生成できるように構成されている。
都市ガスは、外部の都市ガス供給網5から取り込むことが可能に構成されている。また、燃料電池利用システムが構築されている特定の敷地内には、LPガスタンク群6が設置されている。LPガスタンク群6は、複数のLPガスタンクを有する。それら複数のLPガスタンクには、少なくとも、LPガスを屋内13へ供給するための屋内用タンク6aと、LPガスを水素供給システム2へ供給するための水素用タンク6bとが含まれる。屋内用タンク6aのLPガスは、屋内13に供給され、屋内13で利用される。水素用タンク6bのLPガスは、水素供給システム2へ供給され、水素ガス生成用の改質源として利用される。
なお、都市ガス供給網5からの都市ガス、及びLPガスタンク群6からのLPガス(本実施形態では例えば水素用タンク6bからのLPガス)は、外部ガス供給装置31にも供給される。外部ガス供給装置31は、都市ガス及びLPガスをそれぞれ外部の供給先へ供給することが可能に構成されている。後述する第3実施形態の燃料電池車150(図10参照)は、都市ガスやLPガス等の改質源を車内に取り込んで車内で水素ガスに改質して燃料電池11へ供給可能に構成されている。外部ガス供給装置31は、その第3実施形態の燃料電池車150に対して改質源を供給することができる。
メタンガスは、メタンガス生成システム7から水素供給システム2へ取り込むことが可能である。メタンガス生成システム7は、バイオマスを発酵させてメタンガスを生成することが可能に構成されている。
太陽光発電システム4は、光(主に太陽光)のエネルギーを直流電力に変換して出力することが可能に構成されている。
電力受給電装置3は、外部から電力を受電してその受電した電力を、屋内13の各種電気負荷14を含む各種電力需要先へ供給可能に構成されている。電力受給電装置3には、商用交流系統15からの商用交流電力(例えばAC100V及びAC200V)、及び太陽光発電システム4からの直流電力が入力される。さらに、電力受給電装置3には、燃料電池車1から発電電力を入力させることが可能である。
商用交流系統15からの商用交流電力は、配電回路18に入力される。太陽光発電システム4からの直流電力は、第1DC/ACコンバータ16に入力される。第1DC/ACコンバータ16は、太陽光発電システム4からの直流電力を所定電圧値の交流電力(例えばAC100V及びAC200V)に変換して配電回路18へ出力する。燃料電池車1からの発電電力は、第2DC/ACコンバータ17に入力される。第2DC/ACコンバータ17は、燃料電池車1からの発電電力を所定電圧値の交流電力(例えばAC100V及びAC200V)に変換して配電回路18へ出力する。
配電回路18は、商用交流系統15からの商用交流電力、及び各DC/ACコンバータ16,17からの交流電力の、各入力電力を、適宜選択、合成して、家屋13内の各種電気負荷14を含む電力需要先へ供給する。例えば、燃料電池車1から発電電力が入力されていない場合は、主に商用交流系統15からの商用交流電力を電力需要先へ供給する。ただし、太陽光発電システム4により発電が行われている場合は、商用交流電力と太陽光発電電力とを混合して(或いは太陽光発電電力のみを)電力需要先へ供給することが可能である。商用交流電力と太陽光発電電力の比率は、太陽光発電電力の発電量や、太陽光発電電力の利用スケジュール、電力需要量などに応じて適宜決めてもよい。
燃料電池車1から発電電力が入力されている場合は、配電回路18は、少なくともその発電電力に基づく交流電力を電力需要先へ供給する。その際、商用交流電力及び太陽光発電電力をどの程度供給するかについては適宜決めてもよい。例えば、商用交流電力については、一定レベルの電力量を常に供給するようにしてもよいし、燃料電池車1からの発電電力だけでは足りない分を補充するようにしてもよい。
なお、各種電気負荷14には、AC100Vの交流電力を電源として動作可能に構成された複数の電気負荷(例えば照明器具、各種事務機器、情報処理装置など)や、AC200Vの交流電力を電源として動作可能に構成された複数の電気負荷(例えば空調装置、冷蔵・冷凍装置、加熱装置など)が含まれる。
また、配電回路18からの交流電力は、屋内13の各種電気負荷14だけでなく、水素供給システム2やメタンガス生成システム7など、燃料電池利用システム内の各部にも必要に応じて供給され、それらの動作用電源として用いられる。
なお、燃料電池11の発電電力を出力する車外の受電対象は、電力受給電装置3に限定されない。発電電力を受電してその電力に基づいて動作可能な各種の装置、システム、電気負荷などの受電対象へ発電電力を出力可能であってもよい。
システム制御部8は、燃料電池利用システム全体の動作を統括的に制御する。システム制御部8は、CPUやメモリ等を有し、CPUがメモリに記憶されている各種プログラムを実行することで、各種機能を実現する。後述する図5、図6の各処理のプログラムも、システム制御部8内のメモリに記憶されており、CPUにより実行される。
システム制御部8は、水素供給システム2、電力受給電装置3、メタンガス生成システム7などの、燃料電池利用システムを構成する各種システムや装置等と相互にデータ通信可能に構成されており、そのデータ通信を用いて、それら各種システムや装置等を制御可能である。
具体的に、システム制御部8は、水素供給システム2を制御することにより、水素供給システム2による水素ガスの生成や生成した水素ガスの外部への供給などを制御する。また、システム制御部8は、電力受給電装置3から、各種電気負荷14などの各種電力需要先による現在の電力需要量(現在の電力消費量)を取得することができる。システム制御部8は、その取得した電力消費量を含む各種情報に基づいて電力受給電装置3を制御(主に配電回路18の動作を制御)することにより、配電回路18から各部への電力供給を制御する。
UI(User Interface)部9は、ユーザによる各種入力操作を受け付けたり、ユーザへ各種情報を報知させたりすることが可能に構成されている。UI部9は、画像を表示可能な表示装置(例えば液晶ディスプレイ)や音声出力装置などを備え、これら各装置によって各種情報を報知することができる。UI部9を介した各種入力操作の情報はシステム制御部8に入力され、システム制御部8は、その入力された入力操作情報に基づいて各種制御を行う。また、システム制御部8は、表示装置や音声出力装置を制御することで、必要に応じて各種情報を報知させる。
通信部10は、システム制御部8が外部と無線通信を行うための、電波送受用のインターフェースである。システム制御部8は、通信部10を介して、外部の各種無線通信装置と無線によるデータ通信を行うことができる。例えば、燃料電池車1の所有者や屋内13の居住者などの特定のユーザが所有する携帯型の通信端末と無線でデータ通信を行うことにより、燃料電池利用システムの稼働状況を示す各種情報を通信端末に送信して表示させることができる。
(2)燃料電池車の構成
燃料電池車1のより具体的な構成について、図2を用いて説明する。図2に示すように、本第1実施形態の燃料電池車1は、燃料電池11と、高圧流入部51と、高圧タンク26と、コンプレッサ27と、PCU(パワーコントロールユニット)20と、モータ23と、車両制御部24と、補助電源25と、減速機構30と、電源スイッチ34とを備えている。
車外から高圧水素を取り入れるための高圧流入部51には、高圧ホース130のノズル131が着脱可能である。高圧ホース130は、高圧水素の供給元に接続されている。高圧水素の供給元には、水素供給システム2が含まれる。高圧ホース130のノズル131を高圧流入部51に装着することで、燃料電池車1内へ高圧水素を取り入れることが可能となる。
高圧ホース130は、より詳しくは、図3に示すように、高圧水素を供給するための可撓性の高圧水素供給ホース133と、データ通信用の通信ケーブル137とを有する。ノズル131の先端側の端面には、ノズル側コネクタ136が設けられている。通信ケーブル137の一端はそのノズル側コネクタ136に接続されており、他端は水素供給システム2を経てシステム制御部8と電気的に接続されている。
また、高圧水素供給ホース133の先端部には、送出側開閉機構134が設けられている。送出側開閉機構134は、高圧水素供給ホース133から外部への高圧水素の流出口を開閉可能に構成されている。一方、燃料電池車1の高圧流入部51における第1高圧供給管52の先端(即ち外部から高圧水素が流入する端部)には、流入側開閉機構51aが設けられている。流入側開閉機構51aは、第1高圧供給管52への気体の流入口を開閉可能に構成されている。
高圧ホース130のノズル131が、どこにも装着されていない開放状態のときは、高圧水素供給ホース133先端の送出側開閉機構134は、高圧水素の流出口を閉じた状態となっている。また、高圧流入部51が、何も装着されていない開放状態のときは、流入側開閉機構51aは、外部から第1高圧供給管52への気体の流入口を閉じた状態となっている。
一方、高圧ホース130のノズル131を高圧流入部51に装着すると、送出側開閉機構134と流入側開閉機構51aとの機械的相互作用によって、送出側開閉機構134及び流入側開閉機構51aが共に開き、高圧水素が高圧水素供給ホース133から燃料電池車1内の第1高圧供給管52へ流入可能な状態となる。
高圧流入部51における、ノズル131が装着された場合にノズル131のノズル側コネクタ136と対向する位置に、車両側コネクタ181が設けられている。車両側コネクタ181は、車両制御部24と電気的に接続されている。ノズル131が高圧流入部51に装着されると、ノズル側コネクタ136と車両側コネクタ181が相互に接続され、これにより、システム制御部8と車両制御部24とが、水素供給システム2及び通信ケーブル137を介して相互にデータ通信可能に接続された状態となる。
よって、高圧ホース130のノズル131を燃料電池車1の高圧流入部51に装着すると、水素供給システム2から燃料電池車1へ高圧水素を供給可能になると共に、システム制御部8が、水素供給システム2及び高圧ホース130の通信ケーブル137を介して燃料電池車1の車両制御部24と相互にデータ通信できるようになる。
車外の第1の水素供給装置から高圧流入部51に対しては、規定の圧力範囲内の高圧水素が供給されるが、その高圧水素が車内に流入されると、その高圧水素は、高圧流入部51から燃料電池11に至る流路構成によって圧力が変化し得る。本実施形態では、高圧流入部51に流入された高圧水素は、少なくとも第1高圧供給管52、高圧タンク26、及び第2高圧供給管56を経て燃料電池11へ供給される。また、第2高圧供給管56には減圧弁58が設けられているため、高圧タンク26から燃料電池11へ供給される水素ガスは少なくともこの減圧弁58によって圧力が下げられる。そこで、本実施形態では、高圧流入部51から車内に流入された水素ガス(即ち第1高圧供給管52、高圧タンク26、及び第2高圧供給管56を経て燃料電池11へ至る水素ガス)のことを、高圧系水素と称する。
車外の第2の水素供給から第1低圧流入部61に供給される低圧水素についても、その低圧水素が車内に流入されると、その低圧水素は、第1低圧流入部61から燃料電池11に至る流路構成によって圧力が変化し得る。本実施形態では、第1低圧流入部61に流入された低圧水素は、少なくとも第1低圧供給管62、低圧バッファ71、及び第4低圧供給管77を経て燃料電池11へ供給される。第2低圧流入部61から流入される低圧水素についても同様である。そこで、本実施形態では、各低圧流入部61、66から車内に流入された水素ガスのことを、低圧系水素と称する。
なお、高圧系水素は第1の水素に相当し、低圧系水素は第2の水素に相当する。
図2に示すように、高圧流入部51から流入された高圧系水素は、第1高圧供給管52を通じて高圧タンク26へ貯蔵される。なお、図2では、図3に示した流入側開閉機構51a及び車両側コネクタ181の図示を省略している。
第1高圧供給管52には、この第1高圧供給管52の流路を遮断可能な第1高圧遮断弁53が設けられている。第1高圧遮断弁53は、車両制御部24により開閉制御され、開かれると第1高圧供給管52の流路が確保されて高圧流入部51からの高圧系水素を高圧タンク26へ貯蔵可能となり、閉じられると第1高圧供給管52の流路が遮断されて高圧流入部51からの高圧系水素を高圧タンク26へ貯蔵できない状態となる。
高圧流入部51には、高圧装着センサ54が設けられている。高圧装着センサ54は、高圧流入部51に対する、高圧ホース130のノズル131の装着有無を検出するためのセンサである。高圧装着センサ54の検出信号は車両制御部24に入力される。車両制御部24は、高圧装着センサ54から入力される検出信号に基づいて、高圧流入部51に高圧ホース130のノズル131が装着されているか否かを判断することができる。
高圧タンク26は、高圧流入部51から流入された高圧系水素を貯蔵する。高圧タンク26と燃料電池11の間には、高圧タンク26内の高圧系水素を燃料電池11へ供給するための第2高圧供給管56が設けられている。第2高圧供給管56には、この第2高圧供給管56の流路を遮断可能な第2高圧遮断弁57と、第2高圧遮断弁57を経て入力される高圧系水素を減圧して燃料電池11へ供給するための減圧弁58が設けられている。第2高圧遮断弁57は、車両制御部24により開閉制御される。減圧弁58は、高圧タンク26に貯蔵されている高圧系水素を、燃料電池11に入力可能な圧力の水素ガスに減圧する。高圧タンク26から流入してきた高圧系水素を減圧弁58がどの程度の圧力に減圧するかについては、燃料電池11の仕様などに応じて適宜決めてもよい。また、減圧弁58を設けることは必須ではなく、燃料電池11が、高圧タンク26からの高圧系水素をそのままの圧力で入力させることが可能に構成されていれば減圧せずに燃料電池11へ入力させてもよい。
なお、高圧タンク26における、第1高圧供給管52から高圧系水素が流入する流入口、及び貯蔵された高圧系水素が燃料電池11へ流出する流出口には、それぞれ、それら流入口及び流出口を開閉可能な開閉弁が設けられているが、図2では図示を省略している。
高圧系水素を貯蔵する貯蔵部として、高圧タンク26を1つ設けることはあくまでも一例である。高圧タンク26とは異なる他の貯蔵手段を用いて貯蔵するようにしてもよい。例えば、流入された高圧系水素を液化して貯蔵する液化貯蔵装置を用いてもよい。また例えば、流入された高圧系水素を車内でさらに圧縮して貯蔵可能な圧縮貯蔵装置を用いてもよい。また、高圧タンク26を複数設けてそれら複数の高圧タンク26に高圧系水素を貯蔵するようにしてもよい。そして、それら複数の高圧タンク26のうちどのタンクから高圧系水素を燃料電池11に供給するかを選択的に切り替え可能に構成してもよい。その場合、何れか1つの高圧タンク26のみから供給できるようにしてもよいし、何れか複数又は全ての高圧タンク26から同時に供給できるようにしてもよい。
コンプレッサ27は、燃料電池車1の外部から空気を取り込んでその空気を圧縮し、燃料電池11へ供給する。
燃料電池11は、高圧タンク26から第2高圧供給管56を経て供給される水素ガスと、コンプレッサ27から供給される空気中の酸素とを化学反応させることで、電力を発生(発電)させる。高圧タンク26からの高圧系水素に基づいて燃料電池11で発電された電力(以下「駆動用電力」ともいう)は、PCU給電スイッチ36を介してPCU20に入力される。
PCU20は、DC/DCコンバータ21と、インバータ22とを備える。DC/DCコンバータ21は、燃料電池11から入力された直流の駆動用電力を昇圧する。インバータ22は、DC/DCコンバータ21による昇圧後の直流高電圧を、モータ23駆動用の交流電力(本実施形態では3相交流電力)に変換してモータ23側へ出力する。インバータ22で生成された交流電力は、モータ給電スイッチ37を介してモータ23へ供給され、これによりモータ23が回転駆動される。PCU20、PCU給電スイッチ36、及びモータ給電スイッチ37は、車両制御部24により制御される。
モータ23は、本実施形態では、3相交流電力により回転する交流同期モータである。モータ23が回転すると、その回転駆動力は、駆動力伝達軸38を介して減速機構30に伝達され、所定の減速比に応じた回転速度に減速される。そして、その減速された回転駆動力が、駆動軸39,40を介して、4つの車輪41〜44のうち駆動輪としての車輪41,42をそれぞれ回転させ、これにより燃料電池車1が走行する。
補助電源25は、繰り返し充放電可能な二次電池を有する。補助電源25は、燃料電池11で発電された電力により充電される。車両制御部24は、高圧系水素又は低圧系水素により燃料電池11で発電が行われる際、必要に応じて、その発電された電力の一部を補助電源25へ供給して補助電源25を充電させる。また、補助電源25には、減速時にモータ23に発生する回生電力がPCU20を通じて入力され、補助電源25はその回生電力によっても充電される。補助電源25の充電電力は、モータ23の駆動を補助する目的や、不図示の補機用バッテリの充電用などとして用いられる。
また、燃料電池車1には、車外から低圧水素を取り入れるための、第1低圧流入部61及び第2低圧流入部66が設けられている。各低圧流入部61,66には、低圧ホース140のノズル141が着脱可能である。低圧ホース140は、低圧水素の供給元に接続されている。低圧水素の供給元には、水素供給システム2が含まれる。低圧ホース140のノズル141を何れかの低圧流入部に装着することで、燃料電池車1内へ低圧水素を取り入れることが可能となる。
低圧ホース140は、基本的に、図3に示した高圧ホース130と同等の構成となっている。即ち、低圧ホース140は、より詳しくは、低圧水素を供給するための可撓性の低圧水素供給ホースと、データ通信用の通信ケーブルとを有する。そして、高圧用のノズル131と同様、低圧用のノズル141にも、ノズル側コネクタ及び送出側開閉機構が設けられている。各低圧流入部61,66においても、高圧流入部51と同様、流入側開閉機構及び車両側コネクタが設けられている。
よって、低圧ホース140のノズル141を燃料電池車1の各低圧流入部61,66のうち何れかに装着すると、水素供給システム2から燃料電池車1へ低圧水素を供給可能になると共に、システム制御部8が、水素供給システム2及び低圧ホース140の通信ケーブルを介して燃料電池車1の車両制御部24と相互にデータ通信できるようになる。
第1低圧流入部61から流入する低圧水素は、第1低圧供給管62を通じて低圧バッファ71へ一時的に貯蔵される。第1低圧供給管62には、この第1低圧供給管62の流路を遮断可能な第1低圧遮断弁63が設けられている。第1低圧遮断弁63は、車両制御部24により開閉制御される。第1低圧流入部61には、第1低圧装着センサ64が設けられている。第1低圧装着センサ64は、第1低圧流入部61に対する、低圧ホース140のノズル141の装着有無を検出するためのセンサである。第1低圧装着センサ64の検出信号は車両制御部24に入力される。車両制御部24は、第1低圧装着センサ64から入力される検出信号に基づいて、第1低圧流入部61に低圧ホース140のノズル141が装着されているか否かを判断することができる。
第2低圧流入部66から流入する低圧水素は、第2低圧供給管67を通じて低圧バッファ71へ一時的に貯蔵される。第2低圧供給管67には、この第2低圧供給管67の流路を遮断可能な第2低圧遮断弁68が設けられている。第2低圧遮断弁68は、車両制御部24により開閉制御される。第2低圧流入部66には、第2低圧装着センサ69が設けられている。第2低圧装着センサ69は、第2低圧流入部66に対する、低圧ホース140のノズル141の装着有無を検出するためのセンサである。第2低圧装着センサ69の検出信号は車両制御部24に入力される。車両制御部24は、第2低圧装着センサ69から入力される検出信号に基づいて、第2低圧流入部66に低圧ホース140のノズル141が装着されているか否かを判断することができる。
また、燃料電池車1には、水素カセット装着部76が設けられている。水素カセット装着部76には、水素カセット80を着脱可能である。水素カセット80は、所定圧力の水素ガスが充填された携帯型のガス缶である。水素カセット装着部76における水素取入口は、第3低圧供給管72を介して低圧バッファ71に接続されている。水素カセット装着部76に水素カセット80を装着すると、水素カセット80内の水素ガスを第3低圧供給管72を介して低圧バッファ71へ供給可能な状態となる。
第3低圧供給管72には、この第3低圧供給管72の流路を遮断可能な第3低圧遮断弁73が設けられている。第3低圧遮断弁73は、車両制御部24により開閉制御される。水素カセット装着部76には、水素カセット装着センサ79が設けられている。水素カセット装着センサ79は、水素カセット装着部76に対する水素カセット80の装着有無を検出するためのセンサである。水素カセット装着センサ79の検出信号は車両制御部24に入力される。車両制御部24は、水素カセット装着センサ79から入力される検出信号に基づいて、水素カセット装着部76に水素カセット80が装着されているか否かを判断することができる。
第1低圧流入部61から第1低圧供給管62を介して入力される低圧系水素、第2低圧流入部66から第2低圧供給管67を介して入力される低圧系水素、及び水素カセット80から第3低圧供給管72を介して入力される水素ガスは、いずれも低圧バッファ71に一時的に貯蔵される。そして、その低圧バッファ71内の水素が第4低圧供給管77を経て燃料電池11へ供給される。
なお、第4低圧供給管77には、この第4低圧供給管77の流路を遮断可能な第4低圧遮断弁78が設けられている。第4低圧遮断弁78は、車両制御部24により開閉制御される。第4低圧供給管77は、先端側(供給先側)が第2高圧供給管56における減圧弁58よりも下流側に接続されている。そのため、低圧バッファ71から流出される水素ガスは、第4低圧供給管77及び第2高圧供給管56を経て燃料電池11へ供給される。
低圧バッファ71は、入力される複数系統の水素ガスを集約して1つの第4低圧供給管77へ出力させるという簡素な機能(内燃機関車両におけるエキゾーストマニホールドに類似した機能)を有する。
燃料電池11による発電電力は、外部給電スイッチ46を経て外部給電コネクタ12から車外へ出力可能に構成されている。外部給電スイッチ46は、車両制御部24により制御される。外部給電コネクタ12に車両接続ケーブル32が接続されると、車両接続ケーブル32内の電力ケーブルが外部給電コネクタ12を介して外部給電スイッチ46に接続され、車両接続ケーブル32内の通信ケーブルが外部給電コネクタ12を介して車両制御部24に接続される。
なお、本第1実施形態では、発電電力を車外へ出力するための電力出力部として、1つの外部給電コネクタ12、及び燃料電池11から外部給電スイッチ46を経て外部給電コネクタ12に至る接続回路を有する構成を示しているが、このような構成はあくまでも電力出力部の一例である。電力出力部として、例えば、外部給電コネクタ12と、燃料電池11と外部給電コネクタ12とを直接接続する配線とを有する構成を用いてもよい。また例えば、外部給電コネクタ12と、燃料電池11の発電電力の電圧を昇圧又は降圧させて外部給電コネクタ12へ出力するDC/DC変換回路とを有する構成を用いてもよい。また例えば、外部給電コネクタ12と、燃料電池11の発電電力を交流電力に変換して外部給電コネクタ12へ出力するDC/AC変換回路とを有する構成を用いてもよい。DC/DC変換回路とDC/AC変換回路とを組み合わせた回路を有する構成であってもよい。また例えば、複数の外部給電コネクタ12と、燃料電池11の発電電力をそれら複数の外部給電コネクタ12へ出力する接続回路とを有する構成を用いてもよい。
また、非接触で電力を送電することが可能な非接触送電方式を利用して、燃料電池11の発電電力を車外へ非接触にて送電できるようにしてもよい。この場合、車両側に設けられる送電用の装置が電力出力部の一例に相当する。非接触送電方式としては、例えば、電磁誘導方式、共鳴方式、電波受信方式などの各種方式の何れかを採用してもよい。
なお、外部給電コネクタ12は、車両接続ケーブル32内の通信ケーブルを車両と電気的に接続させる機能を備えていなくてもよい。つまり、外部給電コネクタ12は、少なくとも、燃料電池11の発電電力を車外へ出力できるように構成されていればよく、発電電力の出力機能に加えてデータ中継等の他の機能まで備えた構成とする必要は必ずしも無い。
UI部28は、ユーザによる各種入力操作を受け付けたり、ユーザへ各種情報を報知させたりすることが可能に構成されている。UI部28は、画像を表示可能な表示装置(例えば液晶ディスプレイ)や音声出力装置などを備え、これら各装置によって各種情報を報知することができる。UI部28を介した各種入力操作の情報は車両制御部24に入力され、車両制御部24は、その入力された入力操作情報に基づいて各種制御を行う。
また、車両制御部24は、UI部28が有する表示装置や音声出力装置を制御することで、必要に応じて各種情報を報知させる。例えば、燃料電池11による発電の実行状態(例えば発電電力)や、外部給電コネクタ12から車外へ出力される発電電力の供給量などを示す情報を表示させるようにしてもよい。
また、UI部28は、表示装置として、例えばフロントウィンドウやサイドウィンドウ、リアウィンドウなどの、燃料電池車1が備えるウィンドウに対して画像を投影させることにより、燃料電池車1の車外からそのウィンドウに投影された画像を視認することを可能とするための、画像情報投影装置を備えていてもよい。そして、例えば、低圧系水素による発電が行われている間、その発電電力や外部への給電量などの、発電実行状態や外部給電状態を示す各種情報を、画像情報投影装置によって投影させるようにしてもよい。そのようにすることで、発電中、車外からその発電の様子を確認することができる。
通信部29は、車両制御部24が外部と無線通信を行うための、電波送受用のインターフェースである。車両制御部24は、通信部29を介して、外部の各種無線通信装置と無線によるデータ通信を行うことができる。例えば、既述の通信端末と無線でデータ通信を行うことにより、燃料電池車1内の各部の動作状況を示す各種情報を通信端末に送信して表示させることができる。例えば、燃料電池11による発電の実行状態(例えば発電電力)を示す情報や、外部給電コネクタ12から車外へ出力される発電電力に関する既述の電力関連情報などを通信端末に無線送信することにより、それら各種情報を通信端末で確認することができる。
車両制御部24は、燃料電池車1内の各部を制御する。車両制御部24は、CPUやメモリ等を有し、CPUがメモリに記憶されている各種プログラムを実行することで、各種機能を実現する。後述する図7の処理のプログラムも、車両制御部24内のメモリに記憶されており、CPUにより実行される。
車両制御部24の制御対象は、燃料電池11、コンプレッサ27、PCU20、UI部28、通信部29、各遮断弁53,57,63,68,73,78、各スイッチ36,37,46など、多岐にわたる。
電源スイッチ34は、ユーザにより押し操作されるスイッチである。車両制御部24は、電源スイッチ34の操作に基づいて、燃料電池車1の作動状態を切り替える。例えば、電源スイッチ34によって特定の起動操作が行われると、車両制御部24は、高圧系水素による燃料電池11の発電を開始させ、燃料電池車1を走行可能な起動状態に移行させる。逆に、起動状態において電源スイッチ34によって特定のオフ操作が行われると、車両制御部24は、燃料電池11による発電を停止させ、燃料電池車1を走行不可能な停止状態に移行させる。
なお、各遮断弁53,57,63,68,73,78は、いずれも、停止状態においては、基本的に流路を閉じる状態に制御される。そして、例えば低圧系水素による発電時など、必要に応じて、特定の遮断弁が開かれて流路が開かれる。一方、起動状態においては、低圧系水素系の各遮断弁53,63,68,73,78は何れも閉じた状態が維持されつつ、第2高圧遮断弁57が開かれて、高圧系水素が燃料電池11に供給される。
また、各スイッチ36,37,46は、いずれも、停止状態においては開いた状態(オフ)に制御される。そして、例えば低圧系水素による発電時など、必要に応じて、特定のスイッチが閉じて(オンして)電気的に導通される。一方、起動状態においては、PCU給電スイッチ36及びモータ給電スイッチ37が共にオンされて、燃料電池11で発電された駆動用電力に基づいてモータ23が駆動される。
(3)地上側設備の構成
(3−1)水素供給システムの構成
燃料電池利用システムを構成する各種システム、装置等のうち、地上側設備の1つである水素供給システム2の具体的構成について、図4を用いて説明する。なお、図4は、図1に示した燃料電池利用システムのうち、特に水素供給システム2及びメタンガス生成システム7についてその具体的内部構成を示すと共に、他の各構成要素を適宜簡略表示したり図示を省略したりしたものである。
図4に示すように、水素供給システム2は、都市ガス改質器81と、LPガス改質器82と、メタン改質器83と、低圧水素貯蔵タンク84と、水素圧縮機85と、高圧水素貯蔵タンク86とを備える。
都市ガス改質器81には、都市ガス供給管91が接続されており、外部の都市ガス供給網5からこの都市ガス供給管91を介して都市ガスが供給される。都市ガス供給管91には、この都市ガス供給管91の流路を遮断可能な都市ガス遮断弁92が設けられている。都市ガス遮断弁92は、システム制御部8により開閉制御される。
都市ガス改質器81は、都市ガスから水素を分離してその水素を元に水素ガスを生成し、出力する。都市ガスを改質して水素ガスを生成する方法やそれを実現する具体的な改質器の構成については既によく知られているため、ここでは都市ガス改質器81の具体的な構成や動作についての説明は省略する。LPガス改質器82及びメタンガス改質器83についても同様である。
都市ガス改質器81によって生成された水素ガスは、第1改質供給管93を経て低圧水素貯蔵タンク84に供給され、低圧水素貯蔵タンク84に一時的に貯蔵されたり、低圧水素貯蔵タンク84を経て外部又は水素圧縮機85へ出力される。なお、第1改質供給管93には、この第1改質供給管93の流路を遮断可能な改質水素遮断弁94が設けられている。改質水素遮断弁94は、システム制御部8により開閉制御される。
LPガス改質器82には、LPガス供給管96が接続されており、外部のLPガスタンク群6のうち水素用タンク6bからLPガス供給管96を介してLPガスが供給される。LPガス供給管96には、このLPガス供給管96の流路を遮断可能なLPガス遮断弁97が設けられている。LPガス遮断弁97は、システム制御部8により開閉制御される。
LPガス改質器82は、LPガスから水素を分離してその水素を元に水素ガスを生成し、出力する。LPガス改質器82によって生成された水素ガスは、第2改質供給管98及び改質水素遮断弁94を経て低圧水素貯蔵タンク84に供給される。
メタン改質器83には、メタンガス供給管101が接続されており、メタンガス生成システム7で生成されて外部供給管100を介して入力されるメタンガスは、メタンガス供給管101を介してメタン改質器83へ供給される。メタンガス供給管101には、このメタンガス供給管101の流路を遮断可能なメタンガス遮断弁102が設けられている。メタンガス遮断弁102は、システム制御部8により開閉制御される。
メタン改質器83は、メタンガスから水素を分離してその水素を元に水素ガスを生成し、出力する。メタン改質器83によって生成された水素ガスは、第3改質供給管103及び改質水素遮断弁94を経て低圧水素貯蔵タンク84に供給される。
低圧水素貯蔵タンク84は、各改質器81,82,83で生成された水素ガスを貯蔵可能に構成されている。低圧水素貯蔵タンク84に貯蔵された水素ガスは、低圧水素出力管111を介して外部に供給可能である。また、低圧水素出力管111には、低圧水素分岐管115が接続されている。そのため、低圧水素貯蔵タンク84から低圧水素出力管111を介して供給される水素ガスは、低圧水素分岐管115にも流入し、この低圧水素分岐管115を介して水素圧縮機85にも供給される。
低圧水素出力管111には、この低圧水素出力管111の流路を遮断可能な低圧供給遮断弁112及び低圧出力遮断弁113が設けられている。これら各遮断弁112,113は、システム制御部8により開閉制御される。
低圧水素分岐管115は、低圧水素出力管111における、低圧供給遮断弁112よりも下流側であって且つ低圧出力遮断弁113よりは上流側の所定の位置において、その位置から分岐するように接続されている。低圧水素分岐管115には、この低圧水素分岐管115の流路を遮断可能な低圧分岐遮断弁116が設けられている。この低圧分岐遮断弁116は、システム制御部8により開閉制御される。
水素圧縮機85は、低圧水素貯蔵タンク84から供給される低圧水素を圧縮して高圧水素を生成することが可能に構成されている。水素圧縮機85の動作は、システム制御部8により制御される。
高圧水素貯蔵タンク86は、水素圧縮機85により生成された高圧水素を貯蔵可能に構成されている。高圧水素貯蔵タンク86に貯蔵された高圧水素は、高圧水素出力管117を介して外部に供給可能である。また、高圧水素出力管117には、この高圧水素出力管117の流路を遮断可能な高圧出力遮断弁118が設けられている。この高圧出力遮断弁118は、システム制御部8により開閉制御される。
なお、高圧水素出力管117の先端側には、高圧ホース130の一端側が接続されている。そのため、高圧ホース130の他端側に設けられたノズル131を、高圧水素の供給対象へ装着することで、その供給対象へ高圧水素を供給することができる。
また、低圧水素出力管111の先端側には、低圧ホース140の一端側が接続されている。そのため、低圧ホース140の他端側に設けられたノズル141を、低圧水素の供給対象へ装着することで、その供給対象へ低圧水素を供給することができる。
(3−2)メタンガス生成システムの構成
燃料電池利用システムを構成する各種システム、装置等のうち、地上側設備の1つであるメタンガス生成システム7の具体的構成について、図4を用いて説明する。図4に示すように、メタンガス生成システム7は、バイオマス原料槽121と、メタン発酵槽122と、メタンガス生成装置123と、メタンガスホルダ124とを備える。
バイオマス原料槽121は、メタンガスの原料となる各種のバイオマス資源が貯蔵される貯蔵槽である。バイオマスとは、周知の通り、エネルギー源として利用できる生物資源の総称であり、例えば、木質資源、下水汚泥、食物残渣、家畜糞尿などが挙げられる。
メタン発酵槽122は、バイオマス原料槽121に貯蔵されたバイオマス資源をメタン発酵させることにより、メタンガスを含むバイオガスを発生させる。メタンガス生成装置123は、メタン発酵槽122で発生したバイオガスからメタンガスを抽出する。メタンガスホルダ124は、メタンガス生成装置123で抽出されたメタンガスを一時的に貯蔵する。メタンガスホルダ124に貯蔵されたメタンガスが、外部供給管100を介して水素供給システム2へ供給される。
(4)システム制御部による水素生成処理
次に、システム制御部8において実行される水素生成処理について、図5を用いて説明する。水素生成処理は、水素供給ステム2に対して必要に応じて水素ガスを生成・貯蔵させることにより、低圧水素貯蔵タンク84及び高圧水素貯蔵タンク86の双方の水素貯蔵状態を常に適性状態に維持させるための処理である。適正状態とは、水素ガス供給用のノズルが供給対象に装着された場合にその供給対象が要求する量の水素ガスを十分に供給し得る程度に水素ガスが貯蔵されている状態を意味する。適性状態としては、例えば、貯蔵されている水素ガスの重量のみを考慮して貯蔵重量が重量下限値以上であること、としてもよいし、圧力のみを考慮して圧力が圧力下限値以上であること、としてもよい。また例えば、重量と圧力の双方を考慮して、重量が所定の重量下限値以上であって且つ圧力が所定の圧力下限値以上であること、としてもよい。また、上記例において、重量下限値及び圧力下限値は、低圧水素及び高圧水素それぞれに対して個別に設定するようにしてもよい。
なお、水素供給システム2内の各遮断弁は、水素ガスの生成が行われておらず且つ外部への水素供給が行われていない間は、基本的に全て閉弁されている。そして、何れかの改質器で水素生成が開始されたり、高圧水素及び低圧水素の少なくとも一方の外部供給が開始される場合に、それらの開始のために必要な遮断弁が適宜開弁される。
システム制御部8のCPUは、起動後、メモリに記憶されている図5の水素生成処理のプログラムを読み込んで、周期的に繰り返し実行する。システム制御部8のCPUは、図5の水素生成処理を開始すると、S105で、水素生成条件が成立したか否か判断する。
水素生成条件とは、水素供給システム2において水素ガスを生成させるべき条件である。水素生成条件は、水素ガスを生成させるべきタイミングを適切に判断することができるような条件を適宜設定してもよい。水素生成条件としては、例えば、低圧水素貯蔵タンク84内の低圧水素の貯蔵重量が所定の低圧重量下限値未満となること、低圧水素貯蔵タンク84内の低圧水素の圧力が所定の低圧圧力下限値未満となること、高圧水素貯蔵タンク86内の高圧水素の貯蔵重量が所定の高圧重量下限値未満となること、高圧水素貯蔵タンク86内の高圧水素の圧力が所定の高圧圧力下限値未満となること、など、水素ガスの貯蔵状態が適正状態ではなくなったことを示す条件を適宜設定するようにしてもよい。また例えば、通信端末を介して或いはUI部9を介して、ユーザから水素生成の指示を受けたこと、を水素生成条件として設定してもよい。
水素生成条件が成立していない場合は(S105:NO)、水素生成処理を終了する。水素生成条件が成立した場合は(S105:YES)、S110で、水素ガスを生成する元となる改質源を決定する。本実施形態では、改質源として、都市ガス、LPガス、及びメタンガスの三種類のガスを利用可能である。また、これら三種類の改質源のうち複数種類の改質源を並行して改質してそれぞれ水素を生成させることもできる。
よって、S110では、都市ガス、LPガス、及びメタンガスのうち、予め決められた決定方法に基づいて、何れか1つ、何れか2つ、又は3つ全てを、改質源として決定する。例えば、メタンガスの供給能力が一定レベル以上にある場合はメタンガスを優先的に改質源に決定するようにしてもよい。また例えば、都市ガスとLPガスのうちガス料金の安い方を改質源に決定するようにしてもよい。また例えば、短時間に多量の水素ガスが必要な場合は、何れか二種類又は三種類全てを改質源に決定するようにしてもよい。
S115では、S110で決定された改質源に基づく改質を開始させる。即ち、S110で決定された改質源に対応したガス供給管のガス遮断弁を開弁させて対応する改質器を作動させることで、その改質源を水素ガスに改質させる。S120では、改質水素遮断弁94を開弁させることで、改質を実行中の改質器で生成された水素ガスの、低圧水素貯蔵タンク84への充填を開始させる。
S125では、高圧水素貯蔵タンク86への高圧水素の充填が必要か否か判断する。例えば、高圧水素貯蔵タンク86内の高圧水素の貯蔵重量が所定の高圧重量下限値未満となっていたり、高圧水素貯蔵タンク86内の高圧水素の圧力が所定の高圧圧力下限値未満となっていたり、通信端末を介して或いはUI部9を介してユーザから高圧水素の充填を指示されている場合は、高圧水素の充填が必要と判断する。
高圧水素の充填が不要な場合は(S125:NO)、S155に進む。高圧水素の充填が必要な場合は(S125:YES)、S130で、水素圧縮機85を起動させる。そしてS135で、高圧水素貯蔵タンク86への高圧水素の充填を開始させる。具体的に、低圧供給遮断弁112及び低圧分岐遮断弁116を共に開弁することで低圧水素を水素圧縮機85に供給させて低圧水素を高圧水素に圧縮させ、その圧縮後の高圧水素を高圧水素貯蔵タンク86に貯蔵させる。
S140では、高圧水素貯蔵タンク86における高圧水素の貯蔵状態が満充填状態になったか否か判断する。高圧水素に対する満充填状態とは、高圧水素貯蔵タンク86に十分な量の高圧水素が貯蔵されている状態を示し、例えば、高圧水素の貯蔵重量が上記高圧重量下限値よりも大きい所定の高圧基準重量以上となっていたり、高圧水素貯蔵タンク86内の高圧水素の圧力が上記高圧圧力下限値よりも高い所定の高圧基準圧力以上となっている場合に、満充填状態と判断するようにしてもよい。
高圧水素の貯蔵状態が満充填状態になるまでS140の判断処理を継続する。そして、高圧水素の貯蔵状態が満充填状態になった場合は(S140:YES)、S145で、高圧水素の充填を終了する。具体的に、低圧供給遮断弁112及び低圧分岐遮断弁116を共に閉弁させる。そして、S150で、水素圧縮機85の動作を停止させる。
S155では、低圧水素貯蔵タンク84における低圧水素の貯蔵状態が満充填状態になったか否か判断する。低圧水素に対する満充填状態とは、低圧水素貯蔵タンク84に十分な量の低圧水素が貯蔵されている状態を示し、例えば、低圧水素の貯蔵重量が上記低圧重量下限値よりも大きい所定の低圧基準重量以上となっていたり、低圧水素貯蔵タンク84内の低圧水素の圧力が上記低圧圧力下限値よりも高い所定の低圧基準圧力以上となっている場合に、満充填状態と判断するようにしてもよい。
低圧水素の貯蔵状態が満充填状態になるまでS155の判断処理を継続する。そして、低圧水素の貯蔵状態が満充填状態になった場合は(S155:YES)、S160で、動作中の改質器による改質を停止させ、対応するガス遮断弁を閉弁させる。そして、S165で、低圧水素の充填を終了する。具体的に、改質水素遮断弁94を閉弁させる。
(5)システム制御部による水素供給処理
次に、システム制御部8において実行される水素供給処理について、図6を用いて説明する。水素供給処理は、水素供給システム2に貯蔵されている高圧水素及び低圧水素を外部に供給するための処理である。
システム制御部8のCPUは、起動後、メモリに記憶されている図6の水素供給処理のプログラムを読み込んで、周期的に繰り返し実行する。システム制御部8のCPUは、図6の水素供給処理を開始すると、S205で、発電条件が成立しているか否か判断する。発電条件とは、外部の燃料電池に低圧水素を供給して発電させてその発電電力を受電して各種電気負荷14等へ供給すべき条件である。
発電条件としては、外部の燃料電池に発電を行わせてその発電電力を受電すべきタイミングを適切に判断することができるような条件を適宜設定することができる。発電条件としては、例えば、各種電気負荷14等の電力需要先による電力需要量が一定レベル以上の高いレベルにあること、停電により商用交流系統15からの受電が不可能な状態になっていること、商用交流系統15からの交流電力の電気料金が1日の中で相対的に高い時間帯であること、予め設定された特定の時間帯であること、バイオマスの貯蔵量が増加してメタンガスの供給可能量が高くなっていること、などが挙げられる。
発電条件が成立していない場合は(S205:NO)、S255に進む。S255では、高圧用のノズル131が供給対象(例えば燃料電池車1の高圧流入部51)に装着されたか否か判断する。高圧用のノズル131が供給対象に装着されていない場合は(S255:NO)、水素供給処理を終了する。高圧用のノズル131が供給対象に装着された場合は(S255:YES)、S260で高圧水素供給処理を実行して、水素供給処理を終了する。S260の高圧水素供給処理は、高圧用のノズル131が装着されている供給対象に対して高圧水素を供給するための処理である。この高圧水素供給処理の具体的な処理内容についての説明は省略する。
S205で、発電条件が成立した場合は(S205:YES)、S210に進む。S210では、低圧用のノズル141が供給対象(例えば燃料電池車1の各低圧流入部61,66の何れか)に装着されているか否か判断する。低圧用のノズル141が供給対象に装着されていない場合は(S210:NO)、S215で、ユーザに対して低圧用のノズル141を供給対象に装着するように指示する。具体的には、例えば、UI部9を介して、ノズル141を装着するように報知するようにしてもよい。また例えば、ユーザの通信端末に指示情報を送信して通信端末において報知を実行させるようにしてもよい。S215の処理後はS210に戻る。
低圧用のノズル141が供給対象に装着されている場合は(S210:YES)、S220で、低圧用のノズル141が装着されている供給対象へ、低圧ホース140内の通信ケーブルを介して発電要求信号を送信する。
S225では、S220で送信した発電要求信号に対する応答信号である発電許可信号が供給対象から受信されたか否か判断する。発電許可信号が受信されなかった場合は(S225:NO)、S230でエラー通知を実行して、水素供給処理を終了する。エラー通知とは、低圧水素を供給対象に供給できない状態にあることをユーザに知らせることであり、例えばUI部9を介して画像表示或いは音声出力等によって行うことができる。
S225で、供給対象から発電許可信号を受信した場合は(S225:YES)、S235で、低圧水素の供給を開始する。具体的に、低圧供給遮断弁112及び低圧出力遮断弁113を共に開弁させることで、低圧水素貯蔵タンク84内の低圧水素を低圧ホース140を介して供給対象へ供給させる。
S240では、発電停止条件が成立したか否か判断する。発電停止条件としては、低圧水素に基づく燃料電池での発電(ひいてはその発電電力の受電)を停止させるべきタイミングを適切に判断することができるような条件を適宜設定することができる。例えば、S205において成立した発電条件の内容に合わせてその成立した発電条件に対応した発電停止条件を動的に設定するようにしてもよい。具体的には、例えば発電条件として電力需要先による電力需要量が一定レベル以上の高いレベルにあるという条件が成立したことにより低圧水素の供給及びそれに基づく燃料電池での発電が開始された場合は、発電停止条件として、電力需要先による電力需要量が上記一定レベル未満になること、を設定してもよい。また例えば、発電条件として予め設定された特定の時間帯であるという条件が成立したことにより低圧水素の供給及びそれに基づく燃料電池での発電が開始された場合は、発電停止条件として、その特定の時間帯を過ぎること、を設定してもよい。また例えば、S205で成立した発電条件の内容とは無関係に、特定の発電停止条件を設定してもよい。また例えば、予め決めておいた特定の異常が発生したこと、を発電停止条件の1つに設定してもよい。なお、後述する第2実施形態では、燃料電池車1から水素供給禁止信号が送信されてくる可能性があるが(図9のS540)、その場合、その水素供給禁止信号が受信されることも発電停止条件の1つである。
発電停止条件が成立するまではS240の判断を繰り返すが、発電停止条件が成立した場合は(S240:YES)、S245で、低圧水素の供給を停止させる。具体的に、低圧供給遮断弁112及び低圧出力遮断弁113を共に閉弁させる。そして、S250で、供給対象に対し、低圧ホース140内の通信ケーブルを介して、発電終了信号を送信する。
(6)車両制御部による水素受入処理
次に、燃料電池車1の車両制御部24において実行される水素受入処理について、図7を用いて説明する。水素受入処理は、何れかの流入部に水素供給用のノズルが装着された場合にそのノズルからの水素供給を受け入れる処理であって、且つ低圧水素用のノズルが装着された場合には供給される低圧水素による発電を実行させる処理である。
車両制御部24のCPUは、起動後、メモリに記憶されている図7の水素受入処理のプログラムを読み込んで、周期的に繰り返し実行する。車両制御部24のCPUは、図7の水素受入処理を開始すると、S305で、何れかの流入部にノズルが装着されたか否か判断する。ここでいう判断対象の流入部は、高圧流入部51、第1低圧流入部61、及び第2低圧流入部66の3つである。
何れかの流入部にもノズルが装着されていない場合は(S305:NO)、水素受入処理を終了する。何れかの流入部にノズルが装着された場合は(S305:YES)、S310で、走行機能無効化処理を実行する。走行機能無効化処理は、何れかの流入部にノズルが装着されている間は燃料電池車1が走行しないようにするための処理である。具体的な処理内容としては、例えば、モータ給電スイッチ37を強制的にオフさせることでモータ23に通電されないようにすること、モータ23の回転が各駆動輪41,42に伝達されるのを機械的に遮断すること、などが考えられる。
S315では、低圧用の流入部(第1低圧流入部61及び第2低圧流入部66の何れか)にノズルが装着されているか否か判断する。低圧用の流入部にノズルが装着されていない場合、即ち高圧流入部51にノズルが装着されている場合は(S315:NO)、S320で、高圧水素受入処理を実行する。
S320の高圧水素受入処理は、高圧流入部51から高圧水素を受け入れて高圧タンク26に貯蔵させる処理であり、具体的には、第1高圧遮断弁53を開弁させる。なお、第2高圧遮断弁57,及び低圧系の各遮断弁63,68,73,78についてはいずれも閉弁状態を保持させる。高圧流入部51からノズルが離脱されると、S320の高圧水素受入処理が終了する。その間、仮に低圧用の流入部にノズルが装着されても、低圧水素の受け入れは行われない。
S315で、低圧用の流入部にノズルが装着されていると判断した場合は(S315:YES)、S325で、低圧水素の供給元から低圧ホース140の通信ケーブルを介して発電要求信号を受信したか否か判断する。発電要求信号を受信しなかった場合は(S325:NO)、S330でエラー通知を実行して、水素受入処理を終了する。
S330のエラー通知は、ノズルが装着されたものの供給元から低圧水素が供給されない状態にあることをユーザに知らせることであり、例えば燃料電池車1内のUI部28を介して画像表示或いは音声出力等によって行うことができる。また例えば、低圧ホース140の通信ケーブルを介して、或いは車両接続ケーブル32内の通信ケーブルを介して、システム制御部8へエラー情報を送信することによって、外部のUI部9を介して画像表示或いは音声出力等による報知を行わせるようにしてもよい。
S325で、低圧水素の供給元から発電要求信号を受信した場合は(S325:YES)、S335で、低圧水素の供給元に対して低圧ホース140の通信ケーブルを介して発電許可信号を送信する。これにより、供給元から低圧水素の供給が開始されることになる。
S340では、低圧ホース140を介して供給される低圧水素の受け入れを開始する。具体的に、低圧用のノズルが装着された流入部に対応した遮断弁(例えば第1低圧流入部61に低圧用のノズルが装着されている場合には第1低圧遮断弁63)を開弁させると共に、第4低圧遮断弁78を開弁させることで、低圧用のノズルから注入される低圧水素を燃料電池11へ供給させる。そして、S345で、燃料電池11を作動させて、低圧系水素を用いた発電を実行させる。
S350では、低圧系水素の供給元から通信ケーブルを介して発電終了信号を受信したか否か判断する。発電終了信号を受信していない場合は(S350:NO)、S355で、発電を継続して実行可能か否か判断する。例えば燃料電池11に異常が発生するなど、所望の発電電力を外部へ正常に出力できないような状態になった場合は、発電を継続して実行可能ではないと判断する。なお、後述する第2実施形態では、受入禁止処理が実行される可能性があるが(図9のS535)、その受入禁止処理が実行されることも、発電を継続して実行可能ではない状態の1つである。
発電を継続して実行可能な場合は(S355:YES)、S345に戻り、発電を継続させる。発電を継続して実行可能ではない場合は(S355:NO)、S360に進む。S350で、発電終了信号を受信した場合も(S350:YES)、S360に進む。
S360では、低圧水素の受け入れを停止させる。具体的に、S340で開弁させた遮断弁を閉弁させることで、燃料電池11への低圧系水素の供給を遮断させると共に、低圧用のノズルが装着されている低圧流入部からの低圧水素の流入を遮断させる。そしてS365で、燃料電池11による発電を停止させる。
S370では、低圧用のノズルが装着されている低圧流入部からノズルが離脱されたか否か判断する。そして、ノズルが離脱されたら(S370:YES)、S375で、走行機能無効状態を解除させる。即ち、S310の走行機能無効化処理によって燃料電池車1が強制的に走行できない状態にされている状態を解除し、走行させるための正規の操作(例えばアクセルペダルの踏み込み)が行われた場合にはその操作に応じて車両を走行させることができる状態にさせる。
なお、図7には直接示されていないが、車両制御部24は、主に各遮断弁の動作を制御することで、燃料電池11へ供給する水素ガスを、高圧タンク26からの水素ガス、第1低圧流入部61からの水素ガス、第2低圧流入部66からの水素ガス及び水素カセット80からの水素ガス、の4系統の水素ガスのうち何れか1つ又は複数の系統に任意に切り替えることができる。例えば、何れか1系統のみを供給することができるし、何れか2系統を同時に供給することもできるし、何れか3系統を同時に供給することもできるし、4系統全てを同時に供給することもできる。
(7)第1実施形態の効果
以上説明した本実施形態の燃料電池利用システムによれば、燃料電池車1に対し、モータ23の駆動用のエネルギー源となる高圧水素とは別に、低圧水素を供給することができる。燃料電池車1では、低圧水素を取り込むことで、その低圧水素を元とする低圧系水素によって燃料電池11を発電させることができる。そして、その低圧系水素によって発電された発電電力を外部へ出力することができる。
これにより、燃料電池車1の停車中、燃料電池車1に低圧水素を供給できる限り、その低圧水素を元に発電された電力を燃料電池車1から取りだして利用することができる。そのため、燃料電池車1内の高圧系水素の貯蔵量にかかわらず、走行可能距離の低下を抑えつつ、停車中の燃料電池車1の燃料電池11を有効活用することができる。
なお、本実施形態において、高圧流入部51は第1の流入部の一例に相当する。各低圧流入部61,66は第2の流入部の一例に相当する。高圧タンク26は貯蔵部の一例に相当する。第2高圧供給管56、第1低圧供給管62、第2低圧供給管67、低圧バッファ71、第4低圧供給管77、第2高圧遮断弁57、及び第4低圧遮断弁78は、燃料供給部の一例に相当する。
[第2実施形態]
第2実施形態は、各ホース130,140の各ノズル131,141の構成、及び燃料電池車1内の各流入部51,61,66の一部構成を除き、基本的には第1実施形態と同様の構成である。そのため、第1実施形態と共通する構成については説明を省略し、相違点を中心に説明する。
図8に、第2実施形態における、高圧ホース130のノズル131、及び燃料電池車1の高圧流入部51の具体的断面構成を示す。図8と図3を比較して明らかなように、第2実施形態では、高圧ホース130のノズル131に、RFタグ138が設けられている。RFタグ138は、アンテナとICチップを有する小型の無線通信モジュールである。
RFタグ138には、水素供給システム2に設けられた高圧水素供給用のノズルであることを示す固有のノズル情報が記憶されている。RFタグ138は、いわゆるパッシブタイプのRFタグである。RFタグ138に記憶されているノズル情報は、外部からタグリーダによって非接触通信にて読み出すことができる。
また、図8に示すように、第2実施形態では、高圧流入部51にタグリーダ182が設けられている。タグリーダ182は、高圧ホース130のノズル131が高圧流入部51に装着されたときにノズル131のRFタグ138と対向する位置に設けられている。
タグリーダ182は、高圧流入部51にノズル131が装着されることにより対向する位置にRFタグ138が存在する状態になった場合に、RFタグ138からノズル情報を読み取ることができる。タグリーダ182は、RFタグ138からノズル情報を読み取ると、その読み取ったノズル情報を車両制御部24へ送信する。
また、図8に示すように、第2実施形態では、第1高圧供給管52の管内の内壁における、先端側(流入口)にごく近い所定の部位に、異質気体検出センサ183が設けられている。異質気体検出センサ183は、水素ガスとは異なる気体のうち特定の少なくとも一種類の気体である異質気体を検出することが可能なセンサである。本第2実施形態では、異質気体検出センサ183は、例えば、酸素を検出可能である。ただし、検出対象の異質気体として、酸素はあくまでも一例である。例えば、高圧流入部51に誤ってメタンガス供給用のノズルが装着される可能性があることを考慮して、異質気体としてメタンガスを検出可能であってもよい。
異質気体検出センサ183を設ける主な目的は、高圧流入部51から異質気体が流入することを阻止することである。そのため、異質気体検出センサ183としては、流入を阻止すべき異質気体を少なくとも一種類以上検出することができるものを採用することができる。また、異質気体検出センサ183の設置位置は、図8に示した位置に限らない。第1高圧供給管52の管内に設けることも必須ではなく、第1高圧供給管52の開口端に設けてもよいし、流入側開閉機構51aに設けてもよい。また、1つの流入部に対して複数の異質気体検出センサ183を設けてもよい。
図示は省略したが、低圧ホース140のノズル141にも、図8に示した高圧ホース130のノズル131と全く同様、RFタグが設けられている。そのRFタグには、水素供給システム2に設けられた低圧水素供給用のノズルであることを示す固有のノズル情報が記憶されている。
また、図示は省略したが、各低圧流入部61,66にも、図8に示した高圧流入部51と同様、タグリーダが設けられている。また、各低圧流入部61,66に対してそれぞれ、図8に示した高圧流入部51に対する異質気体検出センサ183と同様に、異質気体検出センサ設けられている。
このように各ノズル131,141にそれぞれRFタグが設けられ、車両側の各流入部にそれぞれタグリーダと異質気体検出センサが設けられている第2実施形態の燃料電池利用システムでは、燃料電池車1の車両制御部24において、図9に示す適合性確認処理が実行される。
適合性確認処理とは、何れかの流入部にノズルが装着された場合にそのノズルが正規のノズルであるか否か、及びそのノズルから異質気体が流入されていないか否かを監視し、正規のノズルではないノズルが装着されたり異質気体が流入されたりした場合にはそのノズルからの気体の流入を強制的に阻止させるための処理である。
車両制御部24のCPUは、起動後、メモリに記憶されている図9の適合性確認処理のプログラムを読み込んで、周期的に繰り返し実行する。車両制御部24のCPUは、図9の適合性確認処理を開始すると、S505で、何れかの流入部にノズルが装着されたか否か判断する。何れの流入部にもノズルが装着されていない場合は(S505:NO)、適合性確認処理を終了する。何れかの流入部にノズルが装着された場合は(S505:YES)、S510で、ノズル適合性チェックを実行する。
ノズル適合性チェックとは、流入部に装着されたノズルがその流入部に対応した正規のノズルであるか否かをチェックする処理である。具体的には、装着されたノズルのRFタグからノズル情報を読み取る。そして、その読み取ったノズル情報が、流入部に対応した正規のノズルであることを示す情報であるか否か確認する。例えば高圧流入部51にノズルが装着された場合は、そのノズルのRFタグから読み取った情報が、水素供給システム2に設けられた高圧水素供給用のノズルであることを示す固有のノズル情報であるかどうか確認する。そして、当該固有のノズル情報であった場合は、高圧流入部51に対応した正規のノズルであると判断できる。
S515では、S510でのノズル適合性チェックの結果に基づき、装着されているノズルが流入部に対応した正規のノズルであるか否か判断する。正規のノズルではない場合は(S515:NO)、S535に進み、受入禁止処理を行う。受入禁止処理とは、当該ノズルからの気体の流入を強制的に阻止させるための処理であり、例えば、当該ノズルが装着されている流入部に接続されている供給管の遮断弁を強制的に閉弁状態に保持させる。高圧流入部51については、第1高圧遮断弁53を強制的に閉弁させることで、ノズルから第1高圧供給管52内へ(詳しくは第1高圧供給管52における第1高圧遮断弁53の下流側へ)気体が流入するのを阻止する。低圧水素の流入部についても同様であり、例えば第1低圧流入部61については、第1低圧遮断弁63を強制的に閉弁させることで、ノズルから第1低圧供給管62内へ(詳しくは第1低圧供給管62における第1低圧遮断弁63の下流側へ)気体が流入するのを阻止する。
S540では、装着されているホース内の通信ケーブル、車両接続ケーブル32内の通信ケーブル、及び無線通信の何れかを介して、システム制御部8へ、水素供給禁止信号を送信する。S545では、ノズルが離脱されたか否か判断する。そして、ノズルが離脱されたら(S545:YES)、適合性確認処理を終了する。
S515で、装着されているノズルが流入部に対応した正規のノズルである場合は(S515:YES)、S520に進む。S520では、流入ガスチェックを実行する。流入ガスチェックとは、ノズルが装着された流入部から流入してくる気体に異質気体が含まれているか否かを判断する。具体的には、異質気体検出センサからの検出信号に基づいて判断する。
S525では、S520での流入ガスチェックの結果に基づき、異質気体が流入してきたか否か判断する。この判断は、例えば、異質気体が少しでも検出された場合には即流入してきたと判断するようにしてもよいし、一定割合以上の異質気体が検出された場合に流入してきたと判断するようにしてもよい。
異質気体が流入してきたと判断した場合は(S525:YES)、S535で受入禁止処理を行って、その異質気体の流入を阻止する。異質気体が流入していないと判断した場合は(S525:NO)、S530で、S505で装着されたと判断したノズルが離脱されたか否か判断する。ノズルがまだ装着されている場合は(S530:NO)、S520に戻り、ノズルが離脱された場合は(S530:YES)、適合性確認処理を終了する。
以上詳述した第2実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果に加え、以下の効果が得られる。即ち、各流入部51,61,66に正規のノズルではないノズルが装着された場合に、そのノズルからの気体の流入を阻止することができる。そのため、各流入部51,61,66に対応した品質の水素ガス(規定の高圧水素又は低圧水素)とは異なる水素ガスが流入したり水素ガス以外の他の気体が流入したりすることを抑制することができる。
更に、異質気体検出センサ183を設けていることによっても、異質気体が流入することを抑制することができる。
なお、本実施形態において、異質気体検出センサ183は検出部の一例に相当する。第1高圧遮断弁53、第1低圧遮断弁63、第2低圧遮断弁68、及びこれら各遮断弁53,63,68の開閉を制御する車両制御部24は、供給抑止部の一例に相当する。また、図9の適合性確認処理において、S535の処理は、供給抑止部が実行する処理の一例に相当する。
[第3実施形態]
第3実施形態は、燃料電池車の構成が一部異なることを除き、基本的な構成は第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態と共通する構成については説明を省略し、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
図10に、第3実施形態の燃料電池車150の概略構成を示す。図2と図10を比較して明らかなように、第1実施形態の燃料電池車1には低圧水素の流入部が2箇所に設けられていたのに対し、第3実施形態では、低圧水素の流入部は、第1低圧流入部61の1つである。そして、第3実施形態では、水素以外の改質源を取り込んでその改質源を水素ガスに改質して燃料電池11へ供給することが可能に構成された、第1改質システム160が搭載されている。
更に、第1実施形態の燃料電池車1は水素カセット80から水素ガスを供給可能な構成を備えていたのに対し、第3実施形態の燃料電池車150は、それに代えて、バイオマスから水素ガスを生成して供給可能な第2改質システム170が搭載されている。
更に、第3実施形態では、高圧タンク26からの高圧系水素が減圧弁58で減圧されて燃料電池11へ供給される系統と、低圧バッファ71からの水素ガスが燃料電池11へ供給される系統とが、別々に設けられている。燃料電池11は、少なくとも一方の系統から水素ガスが供給されている場合、その水素ガスを元に発電を行うことができる。また、両方の系統から共に水素ガスを供給させてそれら水素ガスを元に発電を行うこともできる。
第1改質システム160は、外部ガス流入部161と、外部ガス供給管162と、第1改質器164と、第1改質供給管165とを備えている。外部ガス供給管162には、外部ガス遮断弁163が設けられている。外部ガス供給管162は、外部ガス流入部161から流入される改質源を第1改質器164へ供給するための配管である。外部ガス流入部161には、改質源を供給可能な各種のノズルを装着することができる。例えば、図1に示した外部ガス供給装置31に設けられているノズルを装着することで、外部ガス供給装置31から、第1改質器164で改質可能な改質源を取り入れることができる。
第1改質器164は、水素を含む流体である水素含有物のうち特定の流体(例えば都市ガス)を改質源として、その改質源を水素ガスに改質可能に構成されている。第1改質器164による改質により生成された水素ガスは、第1改質供給管165を経て低圧バッファ71へ供給され、低圧バッファ71を経て燃料電池11へ供給される。
なお、外部ガス流入部161にも、外部から改質源を流入させるための不図示のノズルが装着されているか否かを検出するための装着センサを設けてもよい。更に、第2実施形態のように、RFタグを利用して外部ガスの適合性を判断する機能を設けたり、異質気体検出センサを設けて改質可能な改質源以外の他の改質源の流入を検出する機能を設けてもよい。
第2改質システム170は、バイオマス貯留槽171と、メタンガス生成部172と、メタンガス供給管174と、第2改質器173と、第2改質供給管176とを備えている。メタンガス供給管174には、メタンガス遮断弁175が設けられている。
バイオマス貯留槽171は、図4のバイオマス原料槽121と同様、メタンガスの原料となる各種のバイオマス資源を貯蔵可能に構成されている。メタンガス生成部172は、図4におけるメタン発酵槽122及びメタンガス生成装置123の機能を兼ね備えている。即ち、メタンガス生成部172は、バイオマス貯留槽171に貯蔵されたバイオマス資源をメタン発酵させてバイオガスを発生させ、そのバイオガスからメタンガスを抽出する。メタンガス生成部172で生成されたメタンガスは、メタンガス供給管174を経て第2改質器173へ供給される。
第2改質器173は、メタンガス生成部172で生成されたメタンガスを水素ガスに改質可能に構成されている。第2改質器173による改質により生成された水素ガスは、第2改質供給管176を経て低圧バッファ71へ供給され、低圧バッファ71を経て燃料電池11へ供給される。
このように構成された第3実施形態の燃料電池車150では、車両制御部24は、低圧流入部61に低圧水素用のノズルが装着されている場合は、そのノズルから供給される低圧水素を用いて燃料電池11で発電を実行させることができる。また、外部ガス流入部161に改質源供給用のノズルが装着されている場合は、そのノズルから供給される改質源を第1改質器164で水素ガスに改質させてその水素ガスを用いて燃料電池11で発電を実行させることができる。また、メタンガス生成部172において一定量以上のメタンガスが生成されている場合は、そのメタンガスを第2改質器173で水素ガスに改質させてその水素ガスを用いて燃料電池11で発電を実行させることができる。
また、車両制御部24は、各遮断弁や各改質器164,173の動作などを制御することで、燃料電池11へ供給する水素ガスを、高圧タンク26からの水素ガス、低圧流入部61からの水素ガス、第1改質器164からの水素ガス、及び第2改質器173からの水素ガス、の4系統の水素ガスのうち何れか1つ又は複数の系統に任意に切り替えることができる。例えば、何れか1系統のみを供給することができるし、何れか2系統を同時に供給することもできるし、何れか3系統を同時に供給することもできるし、4系統全てを同時に供給することもできる。
従って、第3実施形態の燃料電池車150によれば、第2の水素供給装置から供給される低圧水素による発電だけでなく、車外から供給可能な改質源をもとに水素ガスを生成して発電させることができ、更に、バイオマスから生成したメタンガスをもとに水素ガスを生成して発電させることもできる。
そのため、燃料電池車150が、低圧水素及び改質源の少なくとも一方を取り込める状態にあるか、或いはバイオマスによるメタンガスの生成が可能な状態(即ち発電に必要な水素ガスを生成可能な程度のメタンガスが生成可能な状態)にあれば、燃料電池11を動作させて発電させることができる。
なお、本実施形態において、外部ガス流入部161は第3の流入部の一例に相当する。第1改質器164は水素生成部の一例に相当する。また、第2高圧供給管56、第1低圧供給管62、第1改質供給管165、低圧バッファ71、第4低圧供給管77、第2高圧遮断弁57、及び第4低圧遮断弁78は燃料供給部の一例に相当する。外部ガス供給装置31は、水素含有物供給装置の一例に相当する。
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得る。
(1)図1に示した、第1の水素供給装置及び第2の水素供給装置の一例としての水素供給システム2は、3種類の改質源をそれぞれ水素ガスに改質する機能を備えているが、改質源として使用する水素含有物の種類や改質器の設置数などは上記構成に限定されない。例えば、水素含有物として、天然ガス、メタノール、石油、ナフサ、石炭ガス化ガスなどを用いてもよい。また、1つのシステムに複数の改質源の改質機能を備えさせることは必須ではない。第1の水素供給装置及び第2の供給装置は、例えば、特定の一種類の改質源から水素ガスを生成して外部に供給可能な装置であってもよいし、複数種類の改質源毎に個別に水素ガスを生成可能な装置であってもよい。
また、水素を生成する方法として、特定の改質源を改質して生成する方法を用いることは必須ではない。水素を生成する方法としては、改質源を改質する方法以外にも、例えば、部分酸化法、副生ガスとして取り出す方法、水電解を利用した方法、光分解、生物化学法などの、様々な方法が知られている。特に、鉄鋼製造プロセスにおいては多量の水素ガスが発生することが知られている。水素を生成させることができる様々な方法、プロセスによって生成した水素を燃料電池車1へ供給できるように可能に構成された様々な水素生成装置或いはシステム等が、第1の水素供給装置及び第2の供給装置に相当する。
(2)燃料電池車内の高圧タンク26に貯蔵されている高圧系水素を用いて燃料電池11で発電させ、その発電電力を外部に取り出せるようにしてもよい。即ち、水素供給システム2から低圧水素の供給を受けることなく、単に燃料電池車と電力受給電装置3とを車両接続ケーブル32で接続し、高圧タンク26内の高圧系水素を用いて燃料電池11で発電させ、その発電電力を電力受給電装置3へ出力するようにしてもよい。
その場合、水素供給システム2から高圧水素の供給を受けながら発電を行ってもよい。さらに、高圧タンク26の高圧系水素と低圧系水素の双方を用いて発電を行わせるようにしてもよい。
(3)車外から高圧水素を取り入れて車内に流入させるための第1の流入部として、上記実施形態の高圧流入部51はあくまでも一例である。第1の流入部は、車外の第1の水素供給装置から高圧水素を流入させることができるような他の構成であってもよい。例えば、流入側開閉機構51aを設けることは必須ではなく、手動操作によって或いは車内側からの自動制御によって開閉可能な蓋を設け、その蓋によって第1高圧供給管52の開口部を塞ぐようにしてもよい。
車外から低圧水素を取り入れて車内に流入させるための第2の流入部についても、上記実施形態の高圧流入部51はあくまでも一例であり、車外の第2の水素供給装置から低圧水素を流入させることができるような他の構成であってもよい。また、第1の流入部及び第2の流入部の設置位置や設置数も任意に決めてもよい。
(4)第1実施形態では、燃料供給部として、第2高圧供給管56、第1低圧供給管62、第2低圧供給管67、低圧バッファ71、第4低圧供給管77、第2高圧遮断弁57、及び第4低圧遮断弁78を含む配管系統を示したが、このような構成はあくまでも一例である。燃料供給部として、低圧系水素及び高圧系水素の少なくとも一方を選択的に燃料電池11へ供給できるような他の構成を採用してもよい。
例えば、低圧バッファ71を設けることは必須ではない。また、例えば低圧バッファ71に圧縮機能を持たせるか或いは別途水素圧縮機を設け、低圧系水素を圧縮して燃料電池11へ供給できるようにしてもよい。燃料電池11が、燃料の取り入れ口を三箇所有している場合には、高圧系水素及び2系統の低圧系水素の計3系統の水素ガスを各々個別に燃料電池11へ供給できるようにしてもよい。その他、1つの配管に対してどこに幾つ弁を設けるかについても適宜決めてもよい。
第3実施形態に示した、第1改質器164で改質された水素ガスを燃料電池11へ供給するための経路構成についても、改質された水素ガスを燃料電池11へ供給可能な他の経路構成を採用してもよい。
(5)また、第3実施形態では、水素生成部として第1改質器164を示したが、水素生成部として、改質源である水素含有物から水素を抽出してその抽出した水素から水素ガスを生成できるような他の構成を採用してもよい。また、改質対象の水素含有物の種類についても、例えば都市ガス、LPガス、メタンガス、天然ガス、メタノール、石油、ナフサ、石炭ガス化ガスなどの各種の水素含有物の中から適宜決めてもよい。また、異なる複数の水素含有物を取り入れることができるよう、第3の流入部としての外部ガス流入部を複数設け、それら複数の水素含有物をそれぞれ個別に改質するための水素生成部としての第1改質器も水素含有物毎に個別に設けて、各第1改質器で生成された水素を個別に燃料電池11へ供給できるようにしてもよい。
また、第3実施形態では、水素含有物供給装置として、外部ガス供給装置31を示したが、外部ガス供給装置31とは異なる他の水素含有物供給装置から改質源を供給できるようにしてもよい。即ち、第1改質器で改質可能な改質源に基づき、その改質源を供給可能な他の水素含有物供給装置からその改質源を取り入れることができるようにしてもよい。
(6)水素供給システム2から水素ガスを供給して発電させる燃料電池は、燃料電池車に搭載された燃料電池11に限定されない。水素ガスを用いて発電可能なあらゆる燃料電池に対して水素ガスを供給して発電させ、その発電電力を受電できるようにしてもよい。
(7)燃料電池11の発電電力を電力受給電装置3内の第2DC/ACコンバータ17で交流電力に変換することは必須ではない。電力需要先に、直流電力で動作する負荷がある場合は、その負荷に対して発電電力を直接或いは降圧して供給するようにしてもよい。
(8)第2実施形態では、高圧流入部51及び2つの低圧流入部61,66の全てに対して異質気体検出センサが設けられている例を示したが、これら3つの流入部全てに異質気体センサを設けることは必須ではない。何れか1つ又は何れか2つに対して異質気体検出センサを設けてもよい。
また、異質気体検出センサに加えて、又は異質気体検出センサに代えて、水素ガス以外の他の気体が流入しないような機構を設けるようにしてもよい。例えば、水素ガスのみ通過させて他の気体の通過を遮断可能な水素フィルタを設けることで、水素ガス以外の気体が流入しないようにしてもよい。
また、異質気体検出センサ183に加えて、流入気体中の水素ガスの割合を検出可能な水素センサを設け、水素ガスの割合が規定レベル以上であって且つ異質気体が検出されていない場合に流入を許可するようにしてもよい。
また、異質気体を検出可能な検出部として、異質気体検出センサはあくまでも一例である。検出部としては、例えば、流入する気体に含まれている水素ガスの割合(例えば体積割合或いは質量割合)を検出し、水素ガスの割合が規定レベルより低い(例えば90%より低い)場合に異質気体が流入してきたと判断するような構成を採用してもよい。また例えば、ノズルが装着された場合に、そのノズルから、或いはそのノズルから供給される水素ガスの供給元から、供給される気体を示す情報をデータ通信等で取得可能な構成であってもよい。つまり、検出部は、実際に異質気体が流入してきたという事実を検出可能なものに限らず、異質気体が流入する可能性がある場合にそのことを事前に検出可能なものであってもよい。
(9)第2実施形態では、流入阻止部として、各流入部51,61,66から車内への気体の流入を阻止可能な各遮断弁53,63,68を示したが、これらはあくまでも一例である。流入阻止部は、異質気体の流入が検出された場合にその異質気体が流入するのを阻止可能な他の構成を採用してもよい。例えば、各流入部51,61,66に接続されている各供給管52,62,67の開口部近傍にシャッタを設け、異質気体が検出された場合にそのシャッタを閉じるようにしてもよい。また例えば、装着されているノズルを強制的に離脱させるための機構を設け、異質気体が検出されたらその機構を作動させてノズルを強制的に離脱させることで、異質気体の流入を阻止するようにしてもよい。
(10)バイオマスから生成する改質源は、メタンガスに限定されない。メタンガス以外の他の改質源をバイオマスから生成し、それを改質して水素ガスを生成するようにしてもよい。
(11)その他、上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合させたりしてもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、同様の機能を有する公知の構成に置き換えてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。なお、特許請求の範囲に記載した文言のみによって特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本発明の実施形態である。
(12)また、上述した燃料電池利用システムの他、当該燃料電池利用システムを構成する各種構成要素(例えばシステム制御部8、水素供給システム2、燃料電池車1、燃料電池車1内の車両制御部24、電力受給電装置3など)、それら各構成要素としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した媒体、当該燃料電池利用システムで使用されている各種の制御方法など、種々の形態で本発明を実現することもできる。
[実施形態から把握される技術思想]
以上詳述した種々の実施形態から、少なくとも以下の技術思想が把握される。
[1]燃料電池搭載車両であって、
水素ガスを燃料として発電可能に構成された燃料電池と、
当該燃料電池搭載車両の外部に設けられた第1の水素供給装置から供給される水素ガスを流入させるように構成された第1の流入部と、
前記第1の流入部から流入された水素ガスである第1の水素ガスを貯蔵するように構成された貯蔵部と、
当該燃料電池搭載車両の外部に設けられて前記第1の水素供給装置が供給する水素ガスよりも圧力の低い水素ガスを供給するように構成された第2の水素供給装置から供給される水素ガスを流入させるように構成された第2の流入部と、
前記燃料電池へ前記燃料が供給される状態を、前記貯蔵部に貯蔵された前記第1の水素ガスが前記燃料として前記燃料電池へ供給される第1の燃料供給状態、及び前記第2の流入部から流入された前記第2の水素ガスが前記燃料として前記燃料電池へ供給される第2の燃料供給状態、を少なくとも含む複数の状態のうち何れかに切り替え可能に構成された燃料供給切替部と、
前記燃料電池により発電された電力を当該燃料電池搭載車両の外部の受電対象へ出力するように構成された電力出力部と、
を備えることを特徴とする燃料電池搭載車両。
燃料供給切替部は、複数の状態のうち何れか1つのみに切り替え可能な構成であってもよいし、何れか複数の状態を同時に発生させることが可能な構成であってもよい。なお、第1実施形態において、第2高圧遮断弁57を開弁させることにより高圧タンク26に貯蔵された高圧系水素が第2高圧供給管56を介して燃料電池11へ供給される状態は、第1の燃料供給状態の一例に相当する。また、第1低圧遮断弁63及び第4低圧遮断弁を開弁させることにより第1低圧流入部61から流入された低圧系水素が第1低圧供給管62、低圧水素バッファ71及び第4低圧供給管を介して燃料電池11へ供給される状態は、第2の燃料供給状態の一例に相当する。
[2]燃料電池搭載車両であって、
水素ガスを燃料として発電可能に構成された燃料電池と、
当該燃料電池搭載車両の外部に設けられた第1の水素供給装置から供給される水素ガスを流入させるように構成された第1の流入部と、
前記第1の流入部から流入された水素ガスである第1の水素ガスを貯蔵するように構成された貯蔵部と、
当該燃料電池搭載車両の外部に設けられて前記第1の水素供給装置が供給する水素ガスよりも圧力の低い水素ガスを供給するように構成された第2の水素供給装置から供給される水素ガスを流入させるように構成された第2の流入部と、
前記貯蔵部に貯蔵された前記第1の水素ガスを前記燃料として前記燃料電池へ供給するための第1の流路と、
前記第2の流入部から流入された前記第2の水素ガスを前記燃料として前記燃料電池へ供給するための第2の流路と、
前記第1の流路に設けられ、前記第1の流路を開閉可能に構成された第1の開閉部と、
前記第2の流路に設けられ、前記第2の流路を開閉可能に構成された第2の開閉部と、
前記第1の開閉部及び前記第2の開閉部の動作を個別に制御するように構成された制御部と、
前記燃料電池により発電された電力を当該燃料電池搭載車両の外部の受電対象へ出力するように構成された電力出力部と、
を備えることを特徴とする燃料電池搭載車両。
[3][1]又は[2]の燃料電池搭載車両において、
前記第1の流入部及び前記第2の流入部のうち少なくとも一方は、対応する水素供給装置から流入対象の水素ガスを供給するための供給部が着脱可能に構成され、前記供給部が装着されている間にその供給部から流入対象の水素ガスが流入されるように構成されており、
当該燃料電池搭載車両は、更に、
車輪と、
前記車輪を回転させる駆動源であるモータと、
前記少なくとも一方の流入部に前記供給部が装着されているか否かを検出するための装着検出部と、
前記装着検出部により前記供給部が装着されていることが検出されている間、当該燃料電池搭載車両が走行しないように前記モータの回転を強制的に停止させるか又は前記車輪の回転を強制的に停止させるように構成された停止部と、
を備えることを特徴とする燃料電池搭載車両。
なお、各実施形態において、高圧ホース130のノズル131及び低圧ホース140のノズル141はいずれも上記の供給部の一例に相当する。また、第2実施形態において、高圧装着センサ54が上記の装着検出部の一例に相当し、車両制御部24が上記の停止部の一例に相当する。S310の走行機能無効化処理は上記の停止部の一例に相当する。
[4][1]〜[3]の何れか1つの燃料電池搭載車両において、
前記燃料電池により発電された電力が前記電力出力部によって前記受電対象へ出力されている場合に、その出力されている電力に関する情報である電力情報を出力するように構成された電力情報出力部を備えることを特徴とする燃料電池搭載車両。
電力情報には、出力されている電力の値(単位は[W])を示す情報に限らず、例えば、出力されている電力量(単位は[Wh])を示す情報や、出力されている電圧を示す情報、出力されている電流を示す情報などの情報も含まれる。第1実施形態においては、外部給電コネクタ12及び通信部29が上記の電力情報出力部の一例に相当する。