本願に開示する技術的思想は、以下に説明するクレーン1のほか、種々のクレーンにも適用できる。
まず、図1を用いて、クレーン1について説明する。
クレーン1は、主に走行体2と旋回体3とで構成されている。
走行体2は、左右一対のフロントタイヤ4と、リヤタイヤ5と、を備えている。また、走行体2は、荷物Wの運搬作業を行う際に接地させて安定を図るアウトリガ6を備えている。旋回体3は、走行体2の上部に支持されている。このような旋回体3は、アクチュエータによって旋回自在である。
旋回体3は、その後部から前方へ突き出すようにブーム7を備えている。そのため、ブーム7は、アクチュエータによって旋回自在である(矢印A参照)。また、ブーム7は、アクチュエータによって伸縮自在である(矢印B参照)。
更に、ブーム7は、アクチュエータによって起伏自在である(矢印C参照)。加えて、ブーム7には、ワイヤロープ8が架け渡されている。ブーム7の基端側には、ワイヤロープ8を巻き付けたウインチ9が配置され、ブーム7の先端側には、ワイヤロープ8によってフック10が垂下されている。
ウインチ9は、アクチュエータと一体的に構成されており、ワイヤロープ8の巻き入れ及び巻き出しを可能としている。そのため、フック10は、アクチュエータによって昇降自在である(矢印D参照)。旋回体3は、ブーム7の側方にキャビン11を備えている。ウインチ9は、被操作機能部の一例に該当する。
図2に示すように、キャビン11の内部には、後述する旋回操作具21、伸縮操作具22、起伏操作具23、及び、巻回操作具24が設けられている。更に、キャビン11には、切替スイッチ25が設けられている。これら各操作部21〜24は、操作部の一例に該当する。操作部は、被操作機能部を操作するための操作入力を受け付ける。
次に、図3を用いて、制御システムについて説明する。但し、本制御システムは、考え得る構成の一例であり、これに限定されない。
制御システムは、主に制御装置20で構成されている。制御装置20には、各種操作具21〜24が接続されている。また、制御装置20には、旋回用バルブ31、伸縮用バルブ32、起伏用バルブ33、及び、巻回用バルブ34が接続されている。
更に、制御装置20には、重量センサ40、旋回用センサ41、伸縮用センサ42、起伏用センサ43、及び、巻回用センサ44が接続されている。なお、重量センサ40は、荷物Wの重さを検出することができる。そのため、制御装置20は、荷物Wの重さを認識することができる。
前述したように、ブーム7は、アクチュエータによって旋回自在である(図1における矢印A参照)。本願においては、旋回用油圧モータ51は、アクチュエータの一例に該当する。旋回用油圧モータ51は、電磁比例切換弁である旋回用バルブ31によって適宜に稼動される。
つまり、旋回用油圧モータ51は、旋回用バルブ31が作動油の流動方向を切り替えたり作動油の流量を調節したりすることで適宜に稼動される。なお、ブーム7の旋回角度や旋回速度は、旋回用センサ41によって検出される。そのため、制御装置20は、ブーム7の旋回角度や旋回速度を認識することができる。
また、前述したように、ブーム7は、アクチュエータによって伸縮自在である(図1における矢印B参照)。伸縮用油圧シリンダ52はアクチュエータの一例に該当する。伸縮用油圧シリンダ52は、電磁比例切換弁である伸縮用バルブ32によって適宜に稼動される。
つまり、伸縮用油圧シリンダ52は、伸縮用バルブ32が作動油の流動方向を切り替えたり作動油の流量を調節したりすることで適宜に稼動される。なお、ブーム7の伸縮長さや伸縮速度は、伸縮用センサ42によって検出される。そのため、制御装置20は、ブーム7の伸縮長さや伸縮速度を認識することができる。
更に、前述したように、ブーム7は、アクチュエータによって起伏自在である(図1における矢印C参照)。起伏用油圧シリンダ53は、アクチュエータの一例に該当する。起伏用油圧シリンダ53は、電磁比例切換弁である起伏用バルブ33によって適宜に稼動される。
つまり、起伏用油圧シリンダ53は、起伏用バルブ33が作動油の流動方向を切り替えたり作動油の流量を調節したりすることで適宜に稼動される。なお、ブーム7の起伏角度や起伏速度は、起伏用センサ43によって検出される。そのため、制御装置20は、ブーム7の起伏角度や起伏速度を認識することができる。
加えて、前述したように、フック10は、アクチュエータによって昇降自在である(図1における矢印D参照)。巻回用油圧モータ54は、アクチュエータの一例に該当する。巻回用油圧モータ54は、電磁比例切換弁である巻回用バルブ34によって適宜に稼動される。
つまり、巻回用油圧モータ54は、巻回用バルブ34が作動油の流動方向を切り替えたり作動油の流量を調節したりすることで適宜に稼動される。なお、フック10の吊下長さL(図1参照)や昇降速度は、巻回用センサ44によって検出される。そのため、制御装置20は、フック10の吊下長さLや昇降速度を認識することができる。
ところで、制御装置20は、各種バルブ31〜34を介して各アクチュエータ(51、52、53、54)を制御する。制御装置20は、基本制御信号作成部20aと、共振周波数算出部20bと、フィルタ係数算出部20cと、フィルタリング制御信号作成部20dと、を有する。フィルタリング制御信号作成部20dは、第一フィルタ部及び第二フィルタ部の一例に該当すると捉えてよい。第一フィルタ部は、第一制御信号をフィルタリングして第二制御信号を生成する。第二フィルタ部は、第三制御信号をフィルタリングして、第四制御信号を生成する。第一フィルタ部と、第二フィルタ部とは、異なるフィルタ特性を有してよい。つまり、第一フィルタ部のフィルタ係数と、第二フィルタ部のフィルタ係数とは、異なってよい。なお、第一フィルタ部と、第二フィルタ部とは、同じフィルタ特性を有してもよい。
基本制御信号作成部20aは、各アクチュエータ(51、52、53、54)の速度指令である基本制御信号Sを作成する(図5参照)。基本制御信号作成部20aは、オペレータによる各種操作具21〜24の操作量や操作速度を認識し、状況毎に基本制御信号Sを作成する。
具体的は、基本制御信号作成部20aは、旋回操作具21の操作量や操作速度に応じた基本制御信号S、伸縮操作具22の操作量や操作速度に応じた基本制御信号S、起伏操作具23の操作量や操作速度に応じた基本制御信号S、及び/又は、巻回操作具24の操作量や操作速度に応じた基本制御信号Sを作成する。基本制御信号作成部20aは、第一生成部の一例に該当する。
共振周波数算出部20bは、各アクチュエータ(51、52、53、54)が作動することによって生じる荷物Wの振れの周波数である共振周波数ωを算出する。共振周波数算出部20bは、ブーム7の姿勢やワイヤロープ8の巻き出し量に基づいてフック10の吊下長さLを認識し、状況毎に共振周波数ωを算出する。
具体的には、共振周波数算出部20bは、フック10の吊下長さLと、重力加速度gと、を用いた下記の数式に基づいて共振周波数ωを算出する。
フィルタ係数算出部20cは、後述するノッチフィルタFが有する伝達係数H(s)の中心周波数係数ωn、ノッチ幅係数ζ、及び、ノッチ深さ係数δを算出する。フィルタ係数算出部20cは、共振周波数算出部20bが算出した共振周波数ωを中心として対応する中心周波数係数ωnを算出する。
また、フィルタ係数算出部20cは、それぞれの基本制御信号Sに対応するノッチ幅係数ζ及びノッチ深さ係数δを算出する。なお、伝達係数H(s)は、中心周波数係数ωn、ノッチ幅係数ζ、及び、ノッチ深さ係数δを用いた下記の数式で表される。伝達係数H(s)は、フィルタ特性とも称する。伝達係数H(s)のパラメータが異なれば、ノッチフィルタFのフィルタ特性が異なると捉えてよい。
フィルタリング制御信号作成部20dは、ノッチフィルタFを作成するとともに、基本制御信号Sに対してノッチフィルタFをかけてフィルタリング制御信号Sfを作成する(図5参照)。フィルタリング制御信号作成部20dは、フィルタ係数算出部20cから各種係数ωn、ζ、δを取得してノッチフィルタFを作成する。
また、フィルタリング制御信号作成部20dは、基本制御信号作成部20aから基本制御信号Sを取得し、この基本制御信号Sに対してノッチフィルタFをかけてフィルタリング制御信号Sfを作成する。
具体的に説明すると、フィルタリング制御信号作成部20dは、旋回操作具21の操作量等に応じた基本制御信号SとノッチフィルタFとからフィルタリング制御信号Sfを作成する。また、フィルタリング制御信号作成部20dは、伸縮操作具22の操作量等に応じた基本制御信号SとノッチフィルタFとに基づいてフィルタリング制御信号Sfを作成する。フィルタリング制御信号作成部20dは、起伏操作具23の操作量等に応じた基本制御信号SとノッチフィルタFとに基づいてフィルタリング制御信号Sfを作成する。また、フィルタリング制御信号作成部20dは、巻回操作具24の操作量等に応じた基本制御信号SとノッチフィルタFとに基づいてフィルタリング制御信号Sfを生成する。
このような構成により、制御装置20は、フィルタリング制御信号Sfに基づいて各種バルブ31〜34を制御する。ひいては、制御装置20は、フィルタリング制御信号Sfに基づいて各アクチュエータ(51、52、53、54)を制御する。
次に、図4及び図5を用いて、ノッチフィルタF及びフィルタリング制御信号Sfについて説明する。
ノッチフィルタFは、共振周波数ωを中心とする任意の範囲で共振周波数ωに近づく程に減衰率が高くなる特徴を有する。共振周波数ωを中心とする任意の範囲は、ノッチ幅Bnとして表される。ノッチ幅Bnにおける減衰量の差異は、ノッチ深さDnとして表される。
このため、ノッチフィルタFは、共振周波数ω、ノッチ幅Bn、及び、ノッチ深さDnで特定される。なお、ノッチ深さDnは、ノッチ深さ係数δに基づいて定まる。従って、ノッチ深さ係数δ=0の場合は、共振周波数ωにおけるゲイン特性が−∞dBとなり、ノッチ深さ係数δ=1の場合は、共振周波数ωにおけるゲイン特性が0dBとなる。
フィルタリング制御信号Sfは、各アクチュエータ(51、52、53、54)に伝達される速度指令である。ブーム7等の加速に対応したフィルタリング制御信号Sfは、基本制御信号Sよりも加速が穏やかであり、一時的に減速させてから再び加速していくような特徴を有する(図5におけるX部参照)。
ここで、一時的に減速させるのは、加速時における荷物Wの振れを抑えるためである。また、ブーム7等の減速に対応したフィルタリング制御信号Sfは、基本制御信号Sよりも減速が穏やか又は同程度であり、一時的に増速させてから再び減速していくような特徴を有する(図5におけるY部参照)。ここで、一時的に増速させるのは、減速時における荷物Wの振れを抑えるためである。
次に、図6を用いて、作業現場における運搬許容領域Rp及び運搬制限領域Rrについて説明する。
運搬許容領域Rpは、荷物Wの運搬が認められた領域を表している。運搬許容領域Rpにおいては、ブーム7についても移動が認められている。そして、運搬許容領域Rpにおいては、ノッチ深さ係数δが0〜1の範囲で選択自在となっている。
ノッチ深さ係数δが0或いは0に近い数値のときは、オペレータの操作に対して緩慢な反応となり、荷物Wの振れを抑えることが可能となる。反対に、ノッチ深さ係数δが1或いは1に近い数値のときは、オペレータの操作に対して敏捷な反応となり、オペレータの操作感覚に合わせることが可能となる。
運搬制限領域Rrは、荷物Wの運搬が認められていない領域を表している。運搬制限領域Rrにおいては、ブーム7についても移動(侵入)が認められていない。そして、運搬制限領域Rrにおいては、もとより荷物Wやブーム7が入らないので、ノッチ深さ係数δ等も定められない。
また、運搬制限領域Rrは、障害物B等を囲うように設けられている。このため、荷物Wやブーム7が障害物B等に衝突するのを防ぐことができる。なお、運搬許容領域Rpにある荷物Wやブーム7が、運搬制限領域Rrに向かって移動している場合は、運搬動作を自動停止することとなる。
以下に、図7を用いて、荷物Wの運搬動作を自動停止又は手動停止させる制御態様について説明する。
まず、ブーム7の旋回動作によって荷物Wが運搬制限領域Rrに向かっている例について説明する。ここでは、図7とともに、図8及び図9を参照して説明する。本例において、ブーム7は、被操作機能部の一例に該当する。
ステップS11において、制御装置20は、自動停止信号が入力されたか否かを判断する。自動停止信号は、荷物Wやブーム7が運搬制限領域Rrに近接した場合に作成される。自動停止信号が入力された場合(ステップS11において“YES”)、制御処理は、ステップS12へ移行し、自動停止信号が入力されていない場合(ステップS11において“NO”)、制御処理は、ステップS14へ移行する。
ステップS12において、制御装置20は、旋回用油圧モータ51の自動制御信号Saを作成する(図8参照)。自動制御信号Saは、自動停止時に作成される基本制御信号Sである。自動制御信号Saは、第三制御信号の一例に該当する。自動制御信号Saは、ブーム7の旋回速度や荷物Wの重さ等に基づいて作成される。なお、自動制御信号Saは、自動停止時に用いられるプログラムに基づいて作成される。プログラムは、制御装置20に予め格納されている。制御装置20において、自動制御信号Saを生成する部分は、第二生成部の一例に該当すると捉えてよい。
ステップS13において、制御装置20は、自動制御信号Sa(第三制御信号)に対してノッチフィルタFをかけてフィルタリング制御信号Sf(以降「自動フィルタリング制御信号Sfa」とする)を作成する(図8参照)。このときのノッチフィルタFは、任意に設定されたノッチ深さ係数δに基づいて作成される。自動フィルタリング制御信号Sfaは、第四制御信号の一例に該当する。
そして、制御装置20は、自動フィルタリング制御信号Sfaに基づいて旋回用油圧モータ51を制御する。これにより、例えば荷物Wの振れを抑えることを優先させた制御内容を実現できる。この場合、ブーム7の旋回速度が減速すると、荷物Wが慣性によって振れ始める(図8における(A)参照)。
そこで、ブーム7の旋回速度を一時的に増速させることで、ブーム7を追いつかせて荷物Wの振れを抑える(図8における(B)参照)。そして、その後は荷物Wの振れを抑えた状態で再び減速させていく(図8における(C)参照)。なお、ノッチフィルタFのノッチ深さ係数δは、後述する調節ダイヤル26によって変更自在となっている。
加えて、荷物Wやブーム7の流れ量(旋回動作を止める操作を行ってから止まるまでの移動距離)は、許容流れ量Pdに収まる量に決定される。許容流れ量Pdについては、オペレータが任意に設定できる。
ところで、ステップS14において、制御装置20は、手動停止信号が入力されたか否かを判断する。手動停止信号は、オペレータが旋回操作具21を操作してブーム7の旋回動作を止めようとした場合に作成される。手動停止信号が入力された場合(ステップS14において“YES”)、制御処理は、ステップS15へ移行し、手動停止信号が入力されていない場合(ステップS14において“NO”)、制御処理は、はステップS11に戻される。
ステップS15において、制御装置20は、旋回用油圧モータ51の手動制御信号Smを作成する(図9参照)。手動制御信号Smは、手動停止時に作成される基本制御信号Sを指す。手動制御信号Smは、オペレータによる旋回操作具21の操作量や操作速度に基づいて作成される。
なお、手動制御信号Smは、手動停止時に用いられるプログラムに基づいて作成される。プログラムは、制御装置20に予め格納されている。
ステップS16において、制御装置20は、切替スイッチ25が「ON」であるか「OFF」であるかを判断する。切替スイッチ25は、オペレータが自在に切り替えることができる。切替スイッチ25が「ON」である場合(ステップS16において“YES”)、制御処理は、ステップS17へ移行し、切替スイッチ25が「OFF」である場合(ステップS16において“NO”)、制御処理は、ステップS18へ移行する。
なお、切替スイッチ25が「OFF」の状態を、切替スイッチ25の第一状態と定義する。一方、切替スイッチ25が「ON」の状態を、切替スイッチ25の第二状態と定義する。切替スイッチ25は、スイッチ部の一例に該当する。
ステップS17において、制御装置20は、手動制御信号Smに対してノッチフィルタFをかけてフィルタリング制御信号Sf(以降「手動フィルタリング制御信号Sfm」とする)を作成する(図9参照)。このときのノッチフィルタFについても、任意に設定されたノッチ深さ係数δに基づいて作成される。
ステップS13で使用するノッチフィルタFと、ステップS17で使用するノッチフィルタFとは、同じフィルタであってもよいし、異なるフィルタであってもよい。一例として、ステップS17で使用するノッチフィルタFにより、手動制御信号Smから減衰させる周波数成分の割合は、ステップS13で使用するノッチフィルタFにより、自動制御信号Saから減衰させる周波数成分の割合よりも小さくてよい。換言すれば、手動制御によりアクチュエータを制御する場合(ステップS17の場合)に、手動制御信号Smから減衰させる周波数成分の割合は、自動制御によりアクチュエータを制御する場合(ステップS13の場合)に、自動制御信号Saから減衰させる周波数成分の割合よりも小さくてよい。
そして、制御装置20は、手動フィルタリング制御信号Sfmに基づいて旋回用油圧モータ51を制御する。これにより、例えば荷物Wの振れを抑えることよりも、オペレータの操作感覚に合せることを優先させた制御内容を実現できる。
この場合、ブーム7の旋回速度が減速すると、荷物Wが慣性によって振れ始める(図9における(A)参照)。そして、ブーム7の旋回速度を僅かに増速させる或いは増速させることなく、そのままブーム7の旋回速度を減速させていく(図9における(B)参照)。
なお、ノッチフィルタFのノッチ深さ係数δは、後述する調節ダイヤル27によって変更自在となっている。加えて、荷物Wの振れ量が許容振れ幅Pxに収まるものに決定される。許容振れ幅Pxについては、オペレータが任意に設定できる。
他方、ステップS18において、制御装置20は、手動制御信号Smに基づいて旋回用油圧モータ51を制御する。つまり、制御装置20は、手動フィルタリング制御信号Sfmを作成せず、そのまま手動制御信号Smに基づいて旋回用油圧モータ51を制御する。
これにより、荷物Wの振れを考慮せず、オペレータの操作感覚に合せることを最優先とした制御内容を実現できる。この場合、荷物Wの振れを抑えるためには、オペレータが旋回操作具21を操作してブーム7の旋回速度を一時的に増速させ、振れ始めた荷物Wにブーム7を追いつかせる必要がある。このような操作は、熟練のオペレータであれば可能である。
以上のように、クレーン1は、荷物Wの運搬に供するアクチュエータ(旋回用油圧モータ51)と、アクチュエータ51の作動状態を指示する制御装置20と、制御装置20に接続されてアクチュエータ51の制御態様を切り替えるスイッチ(切替スイッチ25)と、を具備している。
そして、スイッチ25が一方を選択している際(スイッチ25がOFFの状態であってスイッチの第一状態の場合)には、制御装置20がアクチュエータ51の基本制御信号S(手動制御信号Sm)に基づいてアクチュエータ51を制御して運搬動作を停止させる。
また、スイッチ25が他方を選択している際(スイッチ25がONの状態であってスイッチの第二状態の場合)には、制御装置20がアクチュエータ51の基本制御信号Smに対してノッチフィルタFをかけてフィルタリング制御信号Sf(手動フィルタリング制御信号Sfm)を作成する。そして、制御装置20は、作成したフィルタリング制御信号Sfmに基づいてアクチュエータ51を制御して運搬動作を停止させる。このようなクレーン1によれば、荷物Wの運搬動作を停止させる際の制御態様について動作特性を選択できる。
具体的には、クレーン1においては、アクチュエータ(旋回用油圧モータ51)がブーム7を旋回させる油圧モータである。そして、スイッチ(切替スイッチ25)が一方を選択している際(切替スイッチ25がOFFの状態)には、制御装置20が油圧モータ51の基本制御信号S(手動制御信号Sm)に基づいて油圧モータ51を制御して旋回動作を停止させる。
また、スイッチ25が他方を選択している際(切替スイッチ25がONの状態)には、制御装置20は、油圧モータ51の基本制御信号Smに対してノッチフィルタFをかけてフィルタリング制御信号Sf(手動フィルタリング制御信号Sfm)を作成する。そして、制御装置20は、作成したフィルタリング制御信号Sfmに基づいて油圧モータ51を制御して旋回動作を停止させる。このようなクレーン1によれば、ブーム7の旋回動作を停止させる際の制御態様について動作特性を選択できる。
クレーン1においては、ブーム7の旋回動作によって生じる荷物Wの振れを抑えるべく、荷物Wの振れの周波数を共振周波数ωとしている。しかし、ブーム7の旋回動作によって生じるブーム7自身の振れを抑えるべく、ブーム7の振れの周波数を共振周波数ωとしてもよい。また、荷物Wの振れの周波数とブーム7の振れの周波数を共に考慮した共振周波数ωとしてもよい。
加えて、クレーン1においては、オペレータが切替スイッチ25を操作して制御態様を選択する構成としているが、これに限定するものではない。例えば、切替スイッチ25が制御装置20の演算装置に組み込まれており、所望の制御態様を選択するように予め設定できる構成であってもよい。
或いは適宜な制御態様を状況に応じて自動的に選択する構成であってもよい。つまり、切替スイッチ25は、手動で操作されるものに限定されない。
次に、ブーム7の伸縮動作によって荷物Wが運搬制限領域Rrに向かっている例について説明する。ここでは、図7とともに、図10及び図11を参照して説明する。なお、ブーム7の伸縮動作を伸長動作として説明するが、収縮動作についても同様である。本例において、ブーム7は、被操作機能部の一例に該当する。
ステップS11において、制御装置20は、自動停止信号が入力されたか否かを判断する。自動停止信号は、荷物Wやブーム7が運搬制限領域Rrに近接した場合に作成される。自動停止信号が入力された場合(ステップS11において“YES”)、制御処理は、ステップS12へ移行し、自動停止信号が入力されていない場合(ステップS11において“NO”)、制御処理は、ステップS14へ移行する。
ステップS12において、制御装置20は、伸縮用油圧シリンダ52の自動制御信号Saを作成する(図10参照)。自動制御信号Saは、自動停止時に作成される基本制御信号Sである。自動制御信号Saは、ブーム7の伸長速度や荷物Wの重さ等に基づいて作成される。
なお、自動制御信号Saは、自動停止時に用いられるプログラムに基づいて作成される。プログラムは、制御装置20に予め格納されている。
ステップS13において、制御装置20は、自動制御信号Saに対してノッチフィルタFをかけてフィルタリング制御信号Sf(以降「自動フィルタリング制御信号Sfa」とする)を作成する(図10参照)。このときのノッチフィルタFは、任意に設定されたノッチ深さ係数δに基づいて作成される。
そして、制御装置20は、自動フィルタリング制御信号Sfaに基づいて伸縮用油圧シリンダ52を制御する。これにより、例えば荷物Wの振れを抑えることを優先させた制御内容を実現できる。この場合、ブーム7の伸長速度が減速すると、荷物Wが慣性によって振れ始める(図10における(A)参照)。
そこで、ブーム7の伸長速度を一時的に増速させることで、ブーム7を追いつかせて荷物Wの振れを抑える(図10における(B)参照)。そして、その後は荷物Wの振れを抑えた状態で再び減速させていく(図10における(C)参照)。
なお、ノッチフィルタFのノッチ深さ係数δは、後述する調節ダイヤル26によって変更自在である。加えて、荷物Wやブーム7の流れ量(伸長動作を止める操作を行ってから止まるまでの移動距離)は、許容流れ量Pdに収まる量に決定される。許容流れ量Pdについては、オペレータが任意に設定できる。
ところで、ステップS14において、制御装置20は、手動停止信号が入力されたか否かを判断する。手動停止信号は、オペレータが伸縮操作具22を操作してブーム7の伸長動作を止めようとした場合に作成される。手動停止信号が入力された場合(ステップS14において“YES”)、制御処理は、ステップS15へ移行し、手動停止信号が入力されていない場合(ステップS14において、“NO”)、制御処理は、ステップS11に戻される。
ステップS15において、制御装置20は、伸縮用油圧シリンダ52の手動制御信号Smを作成する(図11参照)。手動制御信号Smは、手動停止時に作成される基本制御信号Sである。手動制御信号Smは、オペレータによる伸縮操作具22の操作量や操作速度に基づいて作成される。
なお、手動制御信号Smは、手動停止時に用いられるプログラムに基づいて作成される。プログラムは、制御装置20に予め格納されている。
ステップS16において、制御装置20は、切替スイッチ25が「ON」であるか「OFF」であるかを判断する。切替スイッチ25は、オペレータが自在に切り替えることができる。切替スイッチ25が「ON」である場合(ステップS16において“YES”)、制御処理は、ステップS17へ移行し、切替スイッチ25が「OFF」である場合(ステップS16において“NO”)、制御処理は、ステップS18へ移行する。
ステップS17において、制御装置20は、手動制御信号Smに対してノッチフィルタFをかけてフィルタリング制御信号Sf(以降「手動フィルタリング制御信号Sfm」とする)を作成する(図11参照)。このときのノッチフィルタFについても、任意に設定されたノッチ深さ係数δに基づいて作成される。
そして、制御装置20は、手動フィルタリング制御信号Sfmに基づいて伸縮用油圧シリンダ52を制御する。これにより、例えば荷物Wの振れを抑えることよりも、オペレータの操作感覚に合せることを優先させた制御内容を実現できる。
この場合、ブーム7の伸長速度が減速すると、荷物Wが慣性によって振れ始める(図11における(A)参照)。そして、ブーム7の伸長速度を僅かに増速させる或いは増速させることなく、そのままブーム7の伸長速度を減速させる(図11における(B)参照)。
なお、ノッチフィルタFのノッチ深さ係数δは、後述する調節ダイヤル27によって変更自在となっている。加えて、荷物Wの振れ量は、許容振れ幅Pxに収まる量に決定される。許容振れ幅Pxについては、オペレータが任意に設定できる。
他方、ステップS18において、制御装置20は、手動制御信号Smに基づいて伸縮用油圧シリンダ52を制御する。つまり、制御装置20は、手動フィルタリング制御信号Sfmを作成せず、そのまま手動制御信号Smに基づいて伸縮用油圧シリンダ52を制御する。これにより、荷物Wの振れを考慮せず、オペレータの操作感覚に合せることを最優先とした制御内容を実現できる。
この場合、荷物Wの振れを抑えるためには、オペレータが伸縮操作具22を操作してブーム7の伸長速度を一時的に増速させ、振れ始めた荷物Wにブーム7を追いつかせる必要がある。このような操作は、熟練のオペレータであれば可能である。
以上のように、本クレーン1は、荷物Wの運搬に供するアクチュエータ(伸縮用油圧シリンダ52)と、アクチュエータ52の作動状態を指示する制御装置20と、制御装置20に接続されてアクチュエータ52の制御態様を切り替えるスイッチ(切替スイッチ25)と、を具備している。
そして、スイッチ25が一方を選択している際には、制御装置20がアクチュエータ52の基本制御信号S(手動制御信号Sm)に基づいてアクチュエータ52を制御して運搬動作を停止させる。
また、スイッチ25が他方を選択している際には、制御装置20がアクチュエータ52の基本制御信号Smに対してノッチフィルタFをかけてフィルタリング制御信号Sf(手動フィルタリング制御信号Sfm)を作成し、このフィルタリング制御信号Sfmに基づいてアクチュエータ52を制御して運搬動作を停止させる。クレーン1によれば、荷物Wの運搬動作を停止させる際の制御態様について動作特性を選択できる。
具体的に説明すると、クレーン1においては、アクチュエータ(伸縮用油圧シリンダ52)がブーム7を伸縮させる油圧シリンダである。そして、スイッチ(切替スイッチ25)が一方を選択している際には、制御装置20が油圧シリンダ52の基本制御信号S(手動制御信号Sm)に基づいて油圧シリンダ52を制御して伸縮動作を停止させる。
また、スイッチ25が他方を選択している際には、制御装置20が油圧シリンダ52の基本制御信号Smに対してノッチフィルタFをかけてフィルタリング制御信号Sf(手動フィルタリング制御信号Sfm)を作成し、このフィルタリング制御信号Sfmに基づいて油圧シリンダ52を制御して伸縮動作を停止させる。このようなクレーン1によれば、ブーム7の伸縮動作を停止させる際の制御態様について動作特性を選択できる。
クレーン1においては、ブーム7の伸縮動作によって生じる荷物Wの振れを抑えるべく、荷物Wの振れの周波数を共振周波数ωとしている。しかし、ブーム7の伸縮動作によって生じるブーム7自身の振れを抑えるべく、ブーム7の振れの周波数を共振周波数ωとしてもよい。また、荷物Wの振れの周波数とブーム7の振れの周波数を共に考慮した共振周波数ωとしてもよい。
加えて、クレーン1においては、オペレータが切替スイッチ25を操作して制御態様を選択する構成としているが、これに限定されない。例えば、切替スイッチ25が制御装置20の演算装置に組み込まれており、所望の制御態様を選択するように予め設定できる構成であってもよい。或いは、適宜な制御態様を状況に応じて自動的に選択する構成であってもよい。つまり、切替スイッチ25は、手動で操作されるものに限定されない。
次に、ブーム7の起伏動作によって荷物Wが運搬制限領域Rrに向かっている例について説明する。ここでは、図7とともに、図12及び図13を参照して説明する。なお、ブーム7の起伏動作を起立動作として説明するが、倒伏動作についても同様である。本例において、ブーム7は、被操作機能部の一例に該当する。
ステップS11において、制御装置20は、自動停止信号が入力されたか否かを判断する。自動停止信号は、荷物Wやブーム7が運搬制限領域Rrに近接した場合に作成される。自動停止信号が入力された場合(ステップS11において“YES”)、制御処理は、ステップS12へ移行し、自動停止信号が入力されていない場合(ステップS11において“NO”)、制御処理は、ステップS14へ移行する。
ステップS12において、制御装置20は、起伏用油圧シリンダ53の自動制御信号Saを作成する(図12参照)。自動制御信号Saは、自動停止時に作成される基本制御信号Sである。
自動制御信号Saは、ブーム7の起立速度や荷物Wの重さ等に基づいて作成される。なお、自動制御信号Saは、自動停止時に用いられるプログラムに基づいて作成される。プログラムは、制御装置20に予め格納されている。
ステップS13において、制御装置20は、自動制御信号Saに対してノッチフィルタFをかけてフィルタリング制御信号Sf(以降「自動フィルタリング制御信号Sfa」とする)を作成する(図12参照)。このときのノッチフィルタFは、任意に設定されたノッチ深さ係数δに基づいて作成される。
そして、制御装置20は、自動フィルタリング制御信号Sfaに基づいて起伏用油圧シリンダ53を制御する。これにより、例えば荷物Wの振れを抑えることを優先させた制御内容を実現できる。この場合、ブーム7の起立速度が減速すると、荷物Wが慣性によって振れ始める(ワイヤロープ8の撓みによって振れ始める:図12における(A)参照)。
そこで、ブーム7の起立速度を一時的に増速させることで、ワイヤロープ8を張らせて荷物Wの振れを抑える(図12における(B)参照)。そして、その後は荷物Wの振れを抑えた状態で再び減速させていく(図12における(C)参照)。
なお、ノッチフィルタFのノッチ深さ係数δは、後述する調節ダイヤル26によって変更自在となっている。加えて、荷物Wやブーム7の流れ量(起立動作を止める操作を行ってから止まるまでの移動距離)は、許容流れ量Pdに収まる量に決定される。許容流れ量Pdについては、オペレータが任意に設定できる。
ところで、ステップS14において、制御装置20は、手動停止信号が入力されたか否かを判断する。手動停止信号は、オペレータが起伏操作具23を操作してブーム7の起立動作を止めようとした場合に作成される。手動停止信号が入力された場合(ステップS14において“YES”)、制御処理は、ステップS15へ移行し、手動停止信号が入力されていない場合(ステップS14において“NO”)、制御処理は、ステップS11に戻される。
ステップS15において、制御装置20は、起伏用油圧シリンダ53の手動制御信号Smを作成する(図13参照)。手動制御信号Smは、手動停止時に作成される基本制御信号Sである。手動制御信号Smは、オペレータによる起伏操作具23の操作量や操作速度に基づいて作成される。なお、手動制御信号Smは、手動停止時に用いられるプログラムに基づいて作成される。プログラムは、制御装置20に予め格納されている。
ステップS16において、制御装置20は、切替スイッチ25が「ON」であるか「OFF」であるかを判断する。切替スイッチ25は、オペレータが自在に切り替えることができる。切替スイッチ25が「ON」である場合(ステップS16において“YES”)、制御処理は、ステップS17へ移行し、切替スイッチ25が「OFF」である場合(ステップS16において“NO”)、制御処理は、ステップS18へ移行する。
ステップS17において、制御装置20は、手動制御信号Smに対してノッチフィルタFをかけてフィルタリング制御信号Sf(以降「手動フィルタリング制御信号Sfm」とする)を作成する(図13参照)。このときのノッチフィルタFについても、任意に設定されたノッチ深さ係数δに基づいて作成される。
そして、制御装置20は、手動フィルタリング制御信号Sfmに基づいて起伏用油圧シリンダ53を制御する。これにより、例えば荷物Wの振れを抑えることよりも、オペレータの操作感覚に合せることを優先させた制御内容を実現できる。
この場合、ブーム7の起立速度が減速すると、荷物Wが慣性によって振れ始める(ワイヤロープ8の撓みによって振れ始める:図13における(A)参照)。そして、ブーム7の起立速度を僅かに増速させる或いは増速させることなく、そのままブーム7の起立速度を減速させていく(図13における(B)参照)。なお、ノッチフィルタFのノッチ深さ係数δは、後述する調節ダイヤル27によって変更自在となっている。加えて、荷物Wの振れ量は、許容振れ幅Pxに収まる量に決定される。許容振れ幅Pxについては、オペレータが任意に設定できる。
他方、ステップS18において、制御装置20は、手動制御信号Smに基づいて起伏用油圧シリンダ53を制御する。つまり、制御装置20は、手動フィルタリング制御信号Sfmを作成せず、そのまま手動制御信号Smに基づいて起伏用油圧シリンダ53を制御する。
これにより、荷物Wの振れを考慮せず、オペレータの操作感覚に合せることを最優先とした制御内容を実現できる。この場合、荷物Wの振れを抑えるためには、オペレータが起伏操作具23を操作してブーム7の起立速度を一時的に増速させ、撓み始めたワイヤロープ8を張らせる必要がある。このような操作は、熟練のオペレータであれば可能である。
以上のように、クレーン1は、荷物Wの運搬に供するアクチュエータ(起伏用油圧シリンダ53)と、アクチュエータ53の作動状態を指示する制御装置20と、制御装置20に接続されてアクチュエータ53の制御態様を切り替えるスイッチ(切替スイッチ25)と、を具備している。
そして、スイッチ25が一方を選択している際には、制御装置20がアクチュエータ53の基本制御信号S(手動制御信号Sm)に基づいてアクチュエータ53を制御して運搬動作を停止させる。
また、スイッチ25が他方を選択している際には、制御装置20がアクチュエータ53の基本制御信号Smに対してノッチフィルタFをかけてフィルタリング制御信号Sf(手動フィルタリング制御信号Sfm)を作成し、このフィルタリング制御信号Sfmに基づいてアクチュエータ53を制御して運搬動作を停止させる。このようなクレーン1によれば、荷物Wの運搬動作を停止させる際の制御態様について動作特性を選択できる。
具体的に説明すると、クレーン1においては、アクチュエータ(起伏用油圧シリンダ53)がブーム7を起伏させる油圧シリンダである。そして、スイッチ(切替スイッチ25)が一方を選択している際には、制御装置20が油圧シリンダ53の基本制御信号S(手動制御信号Sm)に基づいて油圧シリンダ53を制御して起伏動作を停止させる。
また、スイッチ25が他方を選択している際には、制御装置20が油圧シリンダ53の基本制御信号Smに対してノッチフィルタFをかけてフィルタリング制御信号Sf(手動フィルタリング制御信号Sfm)を作成し、このフィルタリング制御信号Sfmに基づいて油圧シリンダ53を制御して起伏動作を停止させる。クレーン1によれば、ブーム7の起伏動作を停止させる際の制御態様について動作特性を選択できる。
クレーン1においては、ブーム7の起伏動作によって生じる荷物Wの振れを抑えるべく、荷物Wの振れの周波数を共振周波数ωとしている。しかし、ブーム7の起伏動作によって生じるブーム7自身の振れを抑えるべく、ブーム7の振れの周波数を共振周波数ωとしてもよい。また、荷物Wの振れの周波数とブーム7の振れの周波数を共に考慮した共振周波数ωとしてもよい。
加えて、クレーン1においては、オペレータが切替スイッチ25を操作して制御態様を選択する構成としているが、これに限定されない。例えば、切替スイッチ25が制御装置20の演算装置に組み込まれており、所望の制御態様を選択するように予め設定できる構成であってもよい。或いは、適宜な制御態様を状況に応じて自動的に選択する構成であってもよい。つまり、切替スイッチ25は、手動で操作されるものに限定されない。
次に、フック10の昇降動作によって荷物Wが運搬制限領域Rrに向かっている例について説明する。ここでは、図7とともに、図14及び図15を参照して説明する。なお、フック10の昇降動作を上昇動作として説明するが、降下動作についても同様である。本例において、フック10を昇降するためのウインチ9は、被操作機能部の一例に該当する。
ステップS11において、制御装置20は、自動停止信号が入力されたか否かを判断する。自動停止信号は、荷物Wやブーム7が運搬制限領域Rrに近接した場合に作成される。自動停止信号が入力された場合はステップS12へ移行し、自動停止信号が入力されていない場合はステップS14へ移行する。
ステップS12において、制御装置20は、巻回用油圧モータ54の自動制御信号Saを作成する(図14参照)。自動制御信号Saは、自動停止時に作成される基本制御信号Sである。自動制御信号Saは、フック10の上昇速度や荷物Wの重さ等に基づいて作成される。なお、自動制御信号Saは、自動停止時に用いられるプログラムに基づいて作成される。プログラムは、制御装置20に予め格納されている。
ステップS13において、制御装置20は、自動制御信号Saに対してノッチフィルタFをかけてフィルタリング制御信号Sf(以降「自動フィルタリング制御信号Sfa」とする)を作成する(図14参照)。このときのノッチフィルタFは、任意に設定されたノッチ深さ係数δに基づいて作成される。
そして、制御装置20は、自動フィルタリング制御信号Sfaに基づいて巻回用油圧モータ54を制御する。これにより、例えば荷物Wの振れを抑えることを優先させた制御内容を実現できる。この場合、フック10の上昇速度が減速すると、荷物Wが慣性によって振れ始める(ワイヤロープ8の撓みによって振れ始める:図14における(A)参照)。
そこで、フック10の上昇速度を一時的に増速させることで、ワイヤロープ8を張らせて荷物Wの振れを抑える(図14における(B)参照)。そして、その後は荷物Wの振れを抑えた状態で再び減速させる(図14における(C)参照)。
なお、ノッチフィルタFのノッチ深さ係数δは、後述する調節ダイヤル26によって変更自在となっている。加えて、荷物Wの流れ量(上昇動作を止める操作を行ってから止まるまでの移動距離)は、許容流れ量Pdに収まる量に決定される。許容流れ量Pdについては、オペレータが任意に設定できる。
ところで、ステップS14において、制御装置20は、手動停止信号が入力されたか否かを判断する。手動停止信号は、オペレータが巻回操作具24を操作してフック10の上昇動作を止めようとした場合に作成される。手動停止信号が入力された場合(ステップS14において“YES”)、制御処理は、ステップS15へ移行し、手動停止信号が入力されていない場合(ステップS14において“NO”)、制御処理は、ステップS11に戻される。
ステップS15において、制御装置20は、巻回用油圧モータ54の手動制御信号Smを作成する(図15参照)。手動制御信号Smは、手動停止時に作成される基本制御信号Sである。手動制御信号Smは、オペレータによる巻回操作具24の操作量や操作速度に基づいて作成される。なお、手動制御信号Smは、手動停止時に用いられるプログラムに基づいて作成される。プログラムは、制御装置20に予め格納されている。
ステップS16において、制御装置20は、切替スイッチ25が「ON」であるか「OFF」であるかを判断する。切替スイッチ25は、オペレータが自在に切り替えることができる。切替スイッチ25が「ON」である場合(ステップS16において“YES”)、制御処理は、ステップS17へ移行し、切替スイッチ25が「OFF」である場合(ステップS16において“NO”)、制御処理は、ステップS18へ移行する。
ステップS17において、制御装置20は、手動制御信号Smに対してノッチフィルタFをかけてフィルタリング制御信号Sf(以降「手動フィルタリング制御信号Sfm」とする)を作成する(図15参照)。このときのノッチフィルタFについても、任意に設定されたノッチ深さ係数δに基づいて作成される。そして、制御装置20は、手動フィルタリング制御信号Sfmに基づいて巻回用油圧モータ54を制御する。これにより、例えば荷物Wの振れを抑えることよりも、オペレータの操作感覚に合せることを優先させた制御内容を実現できる。
この場合、フック10の上昇速度が減速すると、荷物Wが慣性によって振れ始める(ワイヤロープ8の撓みによって振れ始める:図15における(A)参照)。そして、フック10の上昇速度を僅かに増速させる或いは増速させることなく、そのままフック10の上昇速度を減速させていく(図15における(B)参照)。
なお、ノッチフィルタFのノッチ深さ係数δは、後述する調節ダイヤル27によって変更自在となっている。加えて、荷物Wの振れ量は、許容振れ幅Pxに収まる量に決定される。許容振れ幅Pxについては、オペレータが任意に設定できる。
他方、ステップS18において、制御装置20は、手動制御信号Smに基づいて巻回用油圧モータ54を制御する。つまり、制御装置20は、手動フィルタリング制御信号Sfmを作成せず、そのまま手動制御信号Smに基づいて巻回用油圧モータ54を制御する。
これにより、荷物Wの振れを考慮せず、オペレータの操作感覚に合せることを最優先とした制御内容を実現できる。この場合、荷物Wの振れを抑えるためには、オペレータが巻回操作具24を操作してフック10の上昇速度を一時的に増速させ、撓み始めたワイヤロープ8を張らせる必要がある。このような操作は、熟練のオペレータであれば可能である。
以上のように、クレーン1は、荷物Wの運搬に供するアクチュエータ(巻回用油圧モータ54)と、アクチュエータ54の作動状態を指示する制御装置20と、制御装置20に接続されてアクチュエータ54の制御態様を切り替えるスイッチ(切替スイッチ25)と、を具備している。
そして、スイッチ25が一方を選択している際には、制御装置20がアクチュエータ54の基本制御信号S(手動制御信号Sm)に基づいてアクチュエータ54を制御して運搬動作を停止させる。また、スイッチ25が他方を選択している際には、制御装置20がアクチュエータ54の基本制御信号Smに対してノッチフィルタFをかけてフィルタリング制御信号Sf(手動フィルタリング制御信号Sfm)を作成し、このフィルタリング制御信号Sfmに基づいてアクチュエータ54を制御して運搬動作を停止させる。クレーン1によれば、荷物Wの運搬動作を手動停止させる際の制御態様について動作特性を任意に調整できる。
具体的に説明すると、クレーン1においては、アクチュエータ(巻回用油圧モータ54)がフック10を昇降させる油圧モータである。そして、スイッチ(切替スイッチ25)が一方を選択している際には、制御装置20が油圧モータ54の基本制御信号S(手動制御信号Sm)に基づいて油圧モータ54を制御して昇降動作を停止させる。
また、スイッチ25が他方を選択している際には、制御装置20は、油圧モータ54の基本制御信号Smに対してノッチフィルタFをかけてフィルタリング制御信号Sf(手動フィルタリング制御信号Sfm)を作成する。そして、制御装置20は、このフィルタリング制御信号Sfmに基づいて油圧モータ54を制御して昇降動作を停止させる。このようなクレーン1によれば、フック10の昇降動作を停止させる際の制御態様について動作特性を選択できる。
クレーン1においては、フック10の昇降動作によって生じる荷物Wの振れを抑えるべく、荷物Wの振れの周波数を共振周波数ωとしている。しかし、フック10の昇降動作によって生じるブーム7自身の振れを抑えるべく、ブーム7の振れの周波数を共振周波数ωとしてもよい。また、荷物Wの振れの周波数とブーム7の振れの周波数を共に考慮した共振周波数ωとしてもよい。
加えて、クレーン1においては、オペレータが切替スイッチ25を操作して制御態様を選択する構成としているが、これに限定されない。例えば、切替スイッチ25が制御装置20の演算装置に組み込まれており、所望の制御態様を選択するように予め設定できる構成であってもよい。或いは、適宜な制御態様を状況に応じて自動的に選択する構成であってもよい。つまり、切替スイッチ25は、手動で操作されるものに限定されない。
次に、クレーン1における他の特徴点について説明する。
図16に示すように、クレーン1は、調節ダイヤル26、27を備えている。調節ダイヤル26、27は、オペレータの手が届く範囲に配置されている。このため、オペレータは、自在に調節ダイヤル26、27を回すことができる。なお、図2には、調節ダイヤル26のみが示されている。図2において、調節ダイヤル27は、調節ダイヤル26に離接する位置(例えば、図2中の右隣り隣り)に設けられてよい。
調節ダイヤル26は、自動停止に関するノッチ深さ係数δを選択してノッチ深さDnを変更するものである。調節ダイヤル27は、手動停止に関するノッチ深さ係数δを選択してノッチ深さDnを変更するものである。調節ダイヤル26は、第二フィルタ特性設定部の一例に該当する。調節ダイヤル27は、第一フィルタ特性設定部の一例に該当する。
制御装置20は、調節ダイヤル26によって設定されたノッチフィルタFを利用して自動フィルタリング制御信号Sfaを作成する。同じく、制御装置20は、調節ダイヤル27によって設定されたノッチフィルタFを利用して手動フィルタリング制御信号Sfmを作成する。
なお、調節ダイヤル26は、ノッチ深さ係数δに1を選択することができる。この場合、制御装置20は、自動制御信号Saに基づいてアクチュエータ51〜54を制御する。また、調節ダイヤル27も、ノッチ深さ係数δに1を選択することができる。この場合、制御装置20は、手動制御信号Smに基づいてアクチュエータ51〜54を制御する。
このように、クレーン1においては、調節具(調節ダイヤル26、27)を具備している。そして、調節具26、27の操作によってノッチフィルタFの強さを調節できる。クレーン1によれば、より細やかにオペレータの操作感覚に合せることができる。
最後に、本願においては、フィルタリング制御信号Sfを作成するフィルタとしてノッチフィルタFを用いているが、これに限定するものではない。つまり、特定の周波数域だけ減衰又は削減できるバンドストップフィルタであればよい。例えば、バンドリミットフィルタやバンドエリミネーションフィルタ等である。
2018年2月28日出願の特願2018−035210の日本出願に含まれる明細書、図面及び要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。