以下、添付図面を参照して、本願の開示する基板洗浄システム、基板洗浄方法および記憶媒体の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
<基板洗浄方法の内容>
まず、本実施形態に係る基板洗浄方法の内容について図1A〜図1Eを用いて説明する。図1A〜図1Eは、本実施形態に係る基板洗浄方法の説明図である。
図1Aに示すように、本実施形態に係る基板洗浄方法では、シリコンウェハや化合物半導体ウェハ等の基板(以下、「ウェハW」と記載する場合もある)のパターン形成面に対し、「成膜処理液」を供給する。
本実施形態に係る「成膜処理液」は、溶媒と、後述する式(1)で表される部分構造を有する重合体とを含有する基板洗浄用組成物である。かかる成膜処理液を用いることにより、下地膜の種類に依らず高いパーティクル除去性能を得ることができる。なお、重合体は、後述する式(1)で表される部分構造を有している場合に限らず、フッ素原子を含んでいれば、上記と同様の効果を得ることができる。
ウェハWのパターン形成面に供給された成膜処理液は、固化または硬化して処理膜となる。これにより、ウェハW上に形成されたパターンやパターンに付着したパーティクルPがこの処理膜に覆われた状態となる(図1B参照)。なお、ここでいう「固化」とは、固体化することを意味し、「硬化」とは、分子同士が連結して高分子化すること(たとえば架橋や重合等)を意味する。
つづいて、図1Bに示すように、ウェハW上の処理膜に対して剥離処理液が供給される。剥離処理液とは、前述の処理膜をウェハWから剥離させる処理液である。
剥離処理液は、処理膜上に供給された後、処理膜中に浸透していき処理膜とウェハWとの界面に到達する。このように、処理膜とウェハWとの界面に剥離処理液が入り込むことで、処理膜は「膜」の状態でウェハWから剥離し、これに伴い、パターン形成面に付着したパーティクルPが処理膜とともにウェハWから剥離する(図1C参照)。
ここで、例えば特開2014−123704号公報(特許文献1)には、トップコート液を用いて基板の表面に処理膜を形成し、この処理膜を除去することで、処理膜とともに基板上のパーティクルを除去する基板洗浄方法が開示されている。トップコート液とは、レジスト膜への液浸液の浸み込みを防ぐためにレジスト膜の表面に塗布される保護膜である。
本実施形態に係る基板洗浄方法では、上記処理膜の除去のフローとして、まず基板上の処理膜を膜の状態で剥離させることを説明したが、上記トップコート液を用いると、たとえばSiN(窒化ケイ素)膜やTiN(窒化チタン)膜などの下地膜を有する基板によっては処理膜の剥離不足が生じることがあるため、処理膜の基板からの除去性が高くないことがあった。すなわち、処理対象となる基板によっては処理膜が十分に除去されず、パーティクル除去性能が十分に発揮されない可能性があった。
そこで、本実施形態に係る基板洗浄方法では、前述の基板洗浄用組成物を成膜処理液として用いることとした。かかる成膜処理液は、従来のトップコート膜と比較して、処理膜の基板からの除去性が高く、SiN膜やTiN膜などの下地膜を有する基板を処理対象とする場合にも高いパーティクル除去性能を得ることができる。
ここで、従来のトップコート液および本実施形態に係る成膜処理液の基板からの除去性に関する評価結果について図2を参照して説明する。図2は、従来のトップコート液および本実施形態に係る成膜処理液の基板からの除去性に関する評価結果を示す図である。
図2には、ベアシリコンウェハおよびSiNウェハ(SiN膜を有する基板)に対し、トップコート液および成膜処理液の処理膜をそれぞれ形成した後、剥離処理液として常温(23〜25度程度)の純水であるDIWを供給した場合における、各処理膜の基板からの除去性の評価結果を示している。図2の表中、「〇」は、処理膜の基板からの除去率が90%以上であることを表し、「×」は同除去率が10%以下であることを表している。
図2に示すように、従来のトップコート液の処理膜は、ベアシリコンウェハを処理対象とする場合には基板から良好に剥離するものの、SiNウェハを処理対象とする場合には、基板からの剥離が十分ではなく、除去性が低下することがわかる。
一方、本実施形態に係る成膜処理液の処理膜は、ベアシリコンウェハを処理対象とする場合およびSiNウェハを処理対象とする場合のいずれにおいても、基板から良好に剥離し、除去性が高いことがわかる。
このように、本実施形態に係る基板洗浄方法では、成膜処理液を用いることにより、従来のトップコート液と比較して、SiN膜などの下地膜を有する基板に対する除去性を向上させることができる。したがって、本実施形態に係る基板洗浄方法によれば、トップコート液と比較して、多くの基板に対して高いパーティクル除去性能を得ることができる。なお、成膜処理液の具体的な組成等については、後述する。
つづいて、図1Dに示すように、ウェハWから剥離された処理膜に対し、処理膜を溶解させる溶解処理液が供給される。これにより、処理膜は溶解し、処理膜に取り込まれていたパーティクルPは、溶解処理液中に浮遊した状態となる。その後、溶解処理液や溶解した処理膜を純水等で洗い流すことにより、パーティクルPは、ウェハW上から除去される(図1E参照)。
このように、本実施形態に係る基板洗浄方法では、ウェハW上に形成された処理膜をウェハWから「膜」の状態で剥離させることで、パターン等に付着したパーティクルPを処理膜とともにウェハWから除去することとした。
したがって、本実施形態に係る基板洗浄方法によれば、化学的作用を利用することなくパーティクル除去を行うため、エッチング作用等による下地膜の侵食を抑えることができる。
また、本実施形態に係る基板洗浄方法によれば、従来の物理力を利用した基板洗浄方法と比較して弱い力でパーティクルPを除去することができるため、パターン倒れを抑制することもできる。
さらに、本実施形態に係る基板洗浄方法によれば、従来の物理力を利用した基板洗浄方法では除去が困難であった、粒子径が小さいパーティクルPを容易に除去することが可能となる。
なお、本実施形態に係る基板洗浄方法において、処理膜は、ウェハWに成膜された後、パターン露光を行うことなくウェハWから全て除去される。したがって、洗浄後のウェハWは、成膜処理液を塗布する前の状態、すなわち、パターン形成面が露出した状態となる。
<基板洗浄用組成物>
次に、上述した成膜処理液について具体的に説明する。なお、以下では、成膜処理液のことを「基板洗浄用組成物」と記載する場合もある。
基板洗浄用組成物は、[A]溶媒と、[B]重合体とを含有する。[B]重合体が下記式(1)で表される部分構造を極性基として有することにより、基板洗浄用組成物が基板表面に対する適度な濡れ広がり性を示すとともに、形成された処理膜は剥離処理液に対する親和性と適度な溶解速度を有しており、基板表面のパーティクルを包み込んだ状態で速やかに除去され、高い除去効率を実現するものと推測される。
(式(1)中、R
1、R
2はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子、炭素数1〜8のアルキル基又はフッ素化アルキル基を表す。ただし、R
1又はR
2の少なくともいずれか1つはフッ素原子または炭素数1〜8のフッ素化アルキル基である。*は重合体を構成する他原子との結合部位を表す。)
基板洗浄用組成物は、さらに低分子有機酸(以下、単に「[C]有機酸」ともいう)を含有することができる。ここで低分子有機酸とは一分子内に1つ以上の炭素原子を含み、かつ重合または縮合反応により生ずる繰り返し構造を有しない酸をいう。分子量は限定されないが、一般的には40以上2000以下である。基板洗浄用組成物は、[C]有機酸を含有することにより、基板表面からの除去がさらに容易となる。たとえば、シリコン基板表面に形成された処理膜に比べ、下地膜としてSiN膜を有する窒化ケイ素基板、下地膜としてTiN膜を有する窒化チタン基板の表面に形成された処理膜の除去には時間がかかる場合がある。[C]有機酸を添加することにより、処理膜の除去に要する時間を短縮できる。この理由は明らかではないが、例えば、基板表面に形成される処理膜が[B]重合体中に[C]有機酸が分散したものとなることにより処理膜の強度が適度に低下することが理由の1つとして考えられる。この結果、窒化ケイ素基板等の[B]重合体との相互作用が強い基板であっても、処理膜の除去がより容易になると考えられる。
さらに、基板洗浄用組成物は[A]〜[C]成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲において、任意成分を含有していてもよい。
以下、各成分について説明する。
<[A]溶媒>
[A]溶媒は、[B]重合体を溶解する成分である。[C]有機酸を添加する場合、[C]有機酸を溶解するものであることが好ましい。
[A]溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エステル系溶媒、炭化水素系溶媒等の有機溶媒;水等が挙げられる。
アルコール系溶媒の例としては、エタノール、イソプロピルアルコール、アミルアルコール、4−メチル−2−ペンタノール、シクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、フルフリルアルコール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等の炭素数1〜18の1価のアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等の炭素数2〜12の2価のアルコールやこれらの部分エーテルなどが挙げられる。
エーテル系溶媒の例としては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソアミルエーテル等のジアルキルエーテル系溶媒、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル系溶媒、ジフェニルエーテル、アニソール等の芳香環含有エーテル系溶媒等が挙げられる。
ケトン系溶媒の例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、2−ヘプタノン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、トリメチルノナノン等の鎖状ケトン系溶媒、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン等の環状ケトン系溶媒、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノン等が挙げられる。
アミド系溶媒の例としては、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルピロリドン等の環状アミド系溶媒、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド等の鎖状アミド系溶媒等が挙げられる。
エステル系溶媒の例としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、乳酸エチル等の1価アルコールカルボキシレート系溶媒や、アルキレングリコールモノアルキルエーテルのモノカルボキシレート、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテルのモノカルボキシレート等の多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶媒、ブチロラクトン等の環状エステル系溶媒、ジエチルカーボネート等のカーボネート系溶媒、シュウ酸ジエチル、フタル酸ジエチル等の多価カルボン酸アルキルエステル系溶媒等が挙げられる。
炭化水素系溶媒としては、例えば
n−ペンタン、iso−ペンタン、n−ヘキサン、iso−ヘキサン、n−ヘプタン、iso−ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−オクタン、iso−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;
ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、iso−プロピルベンゼン、ジエチルベンゼン、iso−ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ−iso−プロピルベンセン、n−アミルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。
これらの中で、有機溶媒が好ましい。有機溶媒としては、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒が好ましく、モノアルコール系溶媒、ジアルキルエーテル系溶媒がより好ましく、4−メチル−2−ペンタノール、ジイソアミルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エトキシプロパノール、乳酸エチルがさらに好ましい。
[A]溶媒中の水の含有率としては、20質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、2質量%以下がさらに好ましく、0質量%が特に好ましい。[A]溶媒中の水の含有率を上記上限以下とすることで、形成される処理膜の強度をより適度に低下させることができ、その結果パーティクル除去性能を向上させることができる。
[A]溶媒の含有量の下限としては、50質量%が好ましく、60質量%がより好ましく、70質量%がさらに好ましい。上記含有量の上限としては、99.9質量%が好ましく、99質量%がより好ましく、95質量%がさらに好ましい。[A]溶媒の含有量を上記下限と上限との間とすることで、基板洗浄用組成物は、窒化ケイ素基板に対するパーティクル除去性能がより向上する。基板洗浄用組成物は、[A]溶媒を1種又は2種以上含有していてもよい。
<[B]重合体>
[B]重合体は、[A]溶媒に溶解する重合体である。[B]重合体は、下記式(1)で表される部分構造を有する。
(式(1)中、R
1、R
2はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子、炭素数1〜8のアルキル基又はフッ素化アルキル基を表す。ただし、R
1又はR
2の少なくともいずれか1つはフッ素原子または炭素数1〜8のフッ素化アルキル基である。*は重合体を構成する他原子との結合部位を表す。)
重合体の種類は特に限定されないが、合成の容易性、除去性の向上の観点から、環状ポリオレフィン、ポリ(メタ)アクリレートが好ましい。ポリ(メタ)アクリレートを用いる場合、好ましい重合体としては、下記式(2)で表されるフッ素原子を含む構造単位(以下、「構造単位(I)」ともいう)を有する重合体等が挙げられる。
上記式(2)中、R’は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rfは、上記式(1)で表される基又は上記式(1)で表される部分構造を含む基である。
上記R’としては、構造単位(I)を与える単量体の共重合性の観点から、水素原子、メチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
上記Rfで表される基としては、例えば、
ヒドロキシジ(トリフルオロメチル)メチル基、ヒドロキシジ(トリフルオロメチル)エチル基、ヒドロキシジ(トリフルオロメチル)プロピル基、ヒドロキシジ(トリフルオロメチル)ブチル基等の炭素数1〜20のヒドロキシ置換フッ素化鎖状炭化水素基;
ヒドロキシテトラフルオロシクロペンチル基、ヒドロキシテトラフルオロシクロヘキシル基等のヒドロキシ置換フッ素化脂環式炭化水素基;
ヒドロキシフェニルジフルオロメチル基等のヒドロキシ置換フッ素化芳香族炭化水素基などが挙げられる。
Rfとしては、これらの中でヒドロキシ置換フッ素化鎖状炭化水素基が好ましく、ヒドロキシジ(トリフルオロメチル)ブチル基がより好ましい。
構造単位(I)の含有割合としては、[B]重合体を構成する全構造単位に対して、10モル%〜100モル%が好ましく、50モル%〜100モル%がより好ましく、90モル%〜100モル%がさらに好ましく、95モル%〜100モル%が特に好ましい。構造単位(I)の含有割合を上記範囲とすることで、処理膜の除去性をより向上させることができる。
[B]重合体はさらに、構造単位(II)として、フルオロアルキル基を含む構造単位、β−ジケトン構造を含む構造単位、カルボキシ基を含む構造単位、スルホ基を含む構造単位、スルホンアミド基を含む構造単位、(メタ)アクリル酸アルキルに由来する構造単位、単環または多環ラクトン骨格を含む構造単位、ヒドロキシ基を含む構造単位、芳香環を含む構造単位又は酸解離性基を含む構造単位等を有していてもよい。構造単位(II)がフルオロアルキル基を含む場合、構造単位(II)の含有割合は[B]重合体中、50モル%以下が好ましく、30モル%未満がより好ましく、10モル%未満が特に好ましい。フルオロアルキル基を含む構造単位(II)の割合が50モル%を超える場合、特に後述する[C]有機酸を添加しない場合に、処理膜の除去性が低下する傾向がある。
[B]重合体の酸解離定数としては、後述する[C]有機酸の酸解離定数よりも小さいことが好ましい。[C]有機酸よりも[B]重合体の酸解離定数を小さくすることで、処理膜の基板表面からの除去性をさらに高めることができる。[B]重合体及び[C]有機酸の酸解離定数は、公知の滴定法により求めることができる。酸解離定数の相対的な大小を評価する上では、滴定法よりも簡便な方法として、化学計算ソフトウェアを用いた計算値から求めてもよい。たとえば、ケムアクソン社が提供するプログラムを利用して計算することができる。
基板洗浄用組成物中の[B]重合体の含有量の下限としては、0.1質量%が好ましく、0.5質量%がより好ましく、1質量%がさらに好ましい。上記含有量の上限としては、50質量%が好ましく、30質量%がより好ましく、15質量%がさらに好ましい。上記含有量を上記下限と上記上限との間とすることで、処理膜の基板表面からの除去性をさらに高めることができる。
基板洗浄用組成物中の全固形分に対する[B]重合体の含有量の下限としては、30質量%が好ましく、40質量%がより好ましく、50質量%がさらに好ましい。上記含有量の上限としては、99質量%が好ましく、98質量%がより好ましく、96質量%がさらに好ましい。
<[C]有機酸>
基板洗浄用組成物は、さらに[C]有機酸を含むことができる。[C]有機酸を加えることにより、基板表面に形成された処理膜の除去がより容易となる。[C]有機酸は重合体でないものが好ましい。ここで「重合体でない」とは、繰り返し単位を有さないことをいう。[C]有機酸の分子量の上限としては、例えば、500であり、400が好ましく、300がより好ましい。[C]有機酸の分子量の下限としては、例えば、50であり、55が好ましい。
[C]有機酸としては、例えば、
酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキシル酢酸、1−アダマンタンカルボン酸、安息香酸、フェニル酢酸等のモノカルボン酸;
ジフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ペンタフルオロプロパン酸、ヘプタフルオロブタン酸、フルオロフェニル酢酸、ジフルオロ安息香酸等のフッ素原子含有モノカルボン酸;
10−ヒドロキシデカン酸、チオール酢酸、5−オキソヘキサン酸、3−メトキシシクロヘキサンカルボン酸、カンファーカルボン酸、ジニトロ安息香酸、ニトロフェニル酢酸等のヘテロ原子含有モノカルボン酸;
(メタ)アクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸等の二重結合含有モノカルボン酸などのモノカルボン酸;
シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ドデカンジカルボン酸、プロパントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ヘキサフルオログルタル酸、シクロヘキサンヘキサカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸等のポリカルボン酸;
上記ポリカルボン酸の部分エステル化物などが挙げられる。
[C]有機酸の25℃における水に対する溶解度の下限としては、5質量%が好ましく、7質量%がより好ましく、10質量%がさらに好ましい。上記溶解度の上限としては、50質量%が好ましく、40質量%がより好ましく、30質量%がさらに好ましい。上記溶解度を上記下限と上記上限の間とすることで、形成される処理膜の除去をより容易にすることができる。
[C]有機酸は、25℃において固体であることが好ましい。[C]有機酸が25℃において固体であると、基板洗浄用組成物から形成された処理膜中に固体状の[C]有機酸が析出すると考えられ、除去性がより向上する。
[C]有機酸としては、処理膜の除去をより容易とする観点から、多価カルボン酸が好ましく、シュウ酸、リンゴ酸、クエン酸がより好ましい。
基板洗浄用組成物中の[C]有機酸の含有量の下限としては、0.01質量%が好ましく、0.05質量%がより好ましく、0.1質量%がさらに好ましい。上記含有量の上限としては、30質量%が好ましく、20質量%がより好ましく、10質量%がさらに好ましい。
基板洗浄用組成物中の全固形分に対する[C]有機酸の含有量の下限としては、0.5質量%が好ましく、1質量%がより好ましく、3質量%がさらに好ましい。上記含有量の上限としては、30質量%が好ましく、20質量%がより好ましく、10質量%がさらに好ましい。
[C]有機酸の含有量を上記下限と上記上限との間とすることで、処理膜の除去をより容易とすることができる。
<任意成分>
基板洗浄用組成物は、上記[A]〜[C]成分以外の任意成分を含有していてもよい。任意成分としては、例えば、界面活性剤等が挙げられる。
上記界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンn−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤などが挙げられる。
上記界面活性剤の含有量としては、通常、2質量%以下であり、1質量%以下が好ましい。
<基板洗浄システムの構成>
次に、本実施形態に係る基板洗浄システムの構成について図3を用いて説明する。図3は、本実施形態に係る基板洗浄システムの構成を示す模式図である。なお、以下においては、位置関係を明確にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする。
図3に示すように、基板洗浄システム1は、搬入出ステーション2と、処理ステーション3とを備える。搬入出ステーション2と処理ステーション3とは隣接して設けられる。
搬入出ステーション2は、キャリア載置部11と、搬送部12とを備える。キャリア載置部11には、複数枚のウェハWを水平状態で収容可能な複数の搬送容器(以下、「キャリアC」と記載する)が載置される。
搬送部12は、キャリア載置部11に隣接して設けられる。搬送部12の内部には、基板搬送装置121と、受渡部122とが設けられる。
基板搬送装置121は、ウェハWを保持するウェハ保持機構を備える。また、基板搬送装置121は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、ウェハ保持機構を用いてキャリアCと受渡部122との間でウェハWの搬送を行う。
処理ステーション3は、搬送部12に隣接して設けられる。処理ステーション3は、搬送部13と、複数の基板洗浄装置14とを備える。複数の基板洗浄装置14は、搬送部13の両側に並べて設けられる。
搬送部13は、内部に基板搬送装置131を備える。基板搬送装置131は、ウェハWを保持するウェハ保持機構を備える。また、基板搬送装置131は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、ウェハ保持機構を用いて受渡部122と基板洗浄装置14との間でウェハWの搬送を行う。
基板洗浄装置14は、上述した基板洗浄方法に基づく基板洗浄処理を実行する装置である。かかる基板洗浄装置14の具体的な構成については、後述する。
また、基板洗浄システム1は、制御装置4を備える。制御装置4は、基板洗浄システム1の動作を制御する装置である。かかる制御装置4は、たとえばコンピュータであり、制御部15と記憶部16とを備える。記憶部16には、基板洗浄処理等の各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部15は、記憶部16に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって基板洗浄システム1の動作を制御する。制御部15は、たとえばCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processor Unit)等であり、記憶部16は、たとえばROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等である。
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から制御装置4の記憶部16にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
上記のように構成された基板洗浄システム1では、まず、搬入出ステーション2の基板搬送装置121が、キャリアCからウェハWを取り出し、取り出したウェハWを受渡部122に載置する。受渡部122に載置されたウェハWは、処理ステーション3の基板搬送装置131によって受渡部122から取り出されて基板洗浄装置14へ搬入され、基板洗浄装置14によって基板洗浄処理が施される。洗浄後のウェハWは、基板搬送装置131により基板洗浄装置14から搬出されて受渡部122に載置された後、基板搬送装置121によってキャリアCに戻される。
<基板洗浄装置の構成>
次に、基板洗浄装置14の構成について図4を参照して説明する。図4は、本実施形態に係る基板洗浄装置14の構成を示す模式図である。
図4に示すように、基板洗浄装置14は、チャンバ20と、基板保持機構30と、液供給部40と、回収カップ50とを備える。
チャンバ20は、基板保持機構30と液供給部40と回収カップ50とを収容する。チャンバ20の天井部には、FFU(Fan Filter Unit)21が設けられる。FFU21は、チャンバ20内にダウンフローを形成する。
FFU21は、バルブ22を介してダウンフローガス供給源23に接続される。FFU21は、ダウンフローガス供給源23から供給されるダウンフローガス(たとえば、ドライエア)をチャンバ20内に吐出する。
基板保持機構30は、回転保持部31と、支柱部32と、駆動部33とを備える。回転保持部31は、チャンバ20の略中央に設けられる。回転保持部31の上面には、ウェハWを側面から保持する保持部材311が設けられる。ウェハWは、かかる保持部材311によって回転保持部31の上面からわずかに離間した状態で水平保持される。
支柱部32は、鉛直方向に延在する部材であり、基端部が駆動部33によって回転可能に支持され、先端部において回転保持部31を水平に支持する。駆動部33は、支柱部32を鉛直軸まわりに回転させる。
かかる基板保持機構30は、駆動部33を用いて支柱部32を回転させることによって支柱部32に支持された回転保持部31を回転させ、これにより、回転保持部31に保持されたウェハWを回転させる。
液供給部40_1は、基板保持機構30に保持されたウェハWに対して各種の処理液を供給する。かかる液供給部40_1は、ノズル41_1〜41_3と、ノズル41_1〜41_3を水平に支持するアーム42_1と、アーム42_1を旋回および昇降させる旋回昇降機構43_1とを備える。
ノズル41_1は、流量調整器46aおよびバルブ44aを介してDIW供給源45aに、流量調整器46bおよびバルブ44bを介してアルカリ水溶液供給源45bに、流量調整器46cおよびバルブ44cを介して有機溶剤供給源45cに、それぞれ接続される。
かかるノズル41_1からは、DIW供給源45aから供給されるDIW、アルカリ水溶液供給源45bから供給されるアルカリ水溶液または有機溶剤供給源45cから供給される有機溶剤が吐出される。また、たとえばバルブ44aとバルブ44bとが開くことにより、DIWとアルカリ水溶液との混合液すなわち希釈されたアルカリ水溶液がノズル41_1から吐出される。また、たとえばバルブ44aとバルブ44cとが開くことにより、DIWと有機溶剤との混合液すなわち希釈された有機溶剤がノズル41_1から吐出される。これらの混合比率は、制御部15が流量調整器46a〜46cを制御することによって調整される。
DIWは、処理膜をウェハWから剥離させる剥離処理液の一例である。アルカリ水溶液は、処理膜を溶解させる溶解処理液の一例である。アルカリ水溶液は、たとえばアルカリ現像液である。アルカリ現像液としては、たとえばアンモニア水、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH:Tetra Methyl Ammonium Hydroxide)等の4級水酸化アンモニウム水溶液、コリン水溶液、の少なくとも一つを含んでいればよい。
有機溶剤は、処理膜を溶解させる溶解処理液の他の一例である。有機溶剤としては、たとえばシンナー、IPA(イソプロピルアルコール)、MIBC(4−メチル−2−ペンタノール)、トルエン、酢酸エステル類、アルコール類、グリコール類(プロピレングリコールモノメチルエーテル)などを用いることができる。
ノズル41_2は、バルブ44dを介してDIW供給源45dに接続され、DIW供給源45dから供給されるDIWを吐出する。ノズル41_2から吐出されるDIWは、後述するリンス処理において用いられるリンス処理液の一例である。
ノズル41_3は、バルブ44eを介してIPA供給源45eに接続され、IPA供給源45eから供給されるIPAを吐出する。IPAは、後述する乾燥処理において用いられる乾燥溶媒の一例である。
液供給部40_2は、ノズル41_4,41_5と、ノズル41_4,41_5を水平に支持するアーム42_2と、アーム42_2を旋回および昇降させる旋回昇降機構43_2とを備える。
ノズル41_4は、バルブ44fを介して前処理液供給源45fと接続され、前処理液供給源45fから供給される前処理液を吐出する。前処理液は、たとえば成膜処理液に含まれる[A]溶媒である。[A]溶媒は、ウェハW上に成膜処理液を広げ易くするために、成膜処理液が供給される前のウェハWに供給される。また、前処理液は、たとえばオゾン水であってもよい。オゾン水は、ウェハWの表面を親水化する親水化処理に用いられる。
ここでは、基板洗浄装置14が、前処理液を吐出するノズルとして1つのノズル41_4を備えることとするが、基板洗浄装置14は、[A]溶媒を吐出するノズルと、オゾン水等の親水化処理液を吐出するノズルとをそれぞれ備えてもよい。
ノズル41_5は、流量調整器46gおよびバルブ44gを介してA+B供給源45gに、流量調整器46hおよびバルブ44hを介してC供給源45hに、それぞれ接続される。
A+B供給源45gからは、[A]溶媒および[B]重合体の混合液が供給される。また、C供給源45hからは[C]有機酸が供給される。これらは、ノズル41_5へ至る流路内で混合されて成膜処理液となりノズル41_5から吐出される。[A]溶媒および[B]重合体の混合液と[C]有機酸との混合比率は、制御部15が流量調整器46g,46hを制御することによって調整される。
[A]溶媒、[B]重合体および[C]有機酸をはじめから混合しておくと、経時変化によって[C]有機酸が析出する可能性がある。このため、上記のように[A]溶媒および[B]重合体の混合液と[C]有機酸とをノズル41_5から吐出する直前に混合する構成とすることで、[C]有機酸の析出を抑えることができる。
なお、上記流路の中途部に混合槽を設け、この混合槽内で[A]溶媒および[B]重合体の混合液と[C]有機酸とを混合させてもよい。
ノズル41_1、アーム42_1、旋回昇降機構43_1、バルブ44a〜44c、DIW供給源45a、アルカリ水溶液供給源45b、有機溶剤供給源45cおよび流量調整器46a〜46cは、「除去液供給部」の一例である。このうち、ノズル41_1、アーム42_1、旋回昇降機構43_1、バルブ44aおよびDIW供給源45aは、「剥離処理液供給部」の一例であり、ノズル41_1、アーム42_1、旋回昇降機構43_1、バルブ44b(バルブ44c)およびアルカリ水溶液供給源45b(有機溶剤供給源45c)は、「溶解処理液供給部」の一例である。
また、ノズル41_1、アーム42_1、旋回昇降機構43_1、バルブ44bおよびアルカリ水溶液供給源45bは、「アルカリ水溶液供給部」の一例であり、ノズル41_2、アーム42_1、旋回昇降機構43_1、バルブ44dおよびDIW供給源45dは、「リンス液供給部」の一例である。
また、ノズル41_5、アーム42_2、旋回昇降機構43_2、バルブ44g,44h、A+B供給源45g、C供給源45hおよび流量調整器46g,46hは、「成膜処理液供給部」の一例である。
ここでは、液供給部40_1および液供給部40_2が、それぞれ複数のノズル41_1〜41_5を備えることとしたが、液供給部40_1および液供給部40_2は、それぞれノズルを1つずつ備えてもよい。
回収カップ50は、回転保持部31を取り囲むように配置され、回転保持部31の回転によってウェハWから飛散する処理液を捕集する。回収カップ50の底部には、排液口51が形成されており、回収カップ50によって捕集された処理液は、かかる排液口51から基板洗浄装置14の外部へ排出される。また、回収カップ50の底部には、FFU21から供給されるダウンフローガスを基板洗浄装置14の外部へ排出する排気口52が形成される。
<基板洗浄システムの具体的動作>
次に、基板洗浄装置14の具体的動作について図5を参照して説明する。図5は、本実施形態に係る基板洗浄システム1が実行する基板洗浄処理の処理手順を示すフローチャートである。基板洗浄システム1が備える各装置は、制御部15の制御に従って図5に示す各処理手順を実行する。
なお、以下では、成膜処理液として、後述する実施例12〜16のいずれかの組成物を用いた場合の基板洗浄処理について説明する。
図5に示すように、基板洗浄装置14では、まず、基板搬入処理が行われる(ステップS101)。かかる基板搬入処理では、基板搬送装置131(図3参照)によってチャンバ20内に搬入されたウェハWが基板保持機構30の保持部材311により保持される。このときウェハWは、パターン形成面が上方を向いた状態で保持部材311に保持される。その後、駆動部33によって回転保持部31が回転する。これにより、ウェハWは、回転保持部31に水平保持された状態で回転保持部31とともに回転する。
つづいて、基板洗浄装置14では、前処理が行われる(ステップS102)。たとえば、前処理としてプリウェット処理を行う場合、液供給部40_2のノズル41_4がウェハWの中央上方に位置する。その後、バルブ44fが所定時間開放されることにより、レジストが形成されていないウェハWのパターン形成面に対して前処理液である[A]溶媒が供給される。ウェハWへ供給された[A]溶媒は、ウェハWの回転に伴う遠心力によってウェハWのパターン形成面に広がる。
このように、成膜処理液と親和性のある[A]溶媒を事前にウェハWに塗り広げておくことで、後述する成膜処理液供給処理(ステップS103)において、成膜処理液がウェハWの上面に広がり易くなるとともに、パターンの隙間にも入り込み易くなる。したがって、成膜処理液の使用量を削減することができるとともに、パターンの隙間に入り込んだパーティクルPをより確実に除去することが可能となる。また、成膜処理液供給処理の処理時間の短縮化を図ることもできる。
また、前処理として親水化処理を行う場合、液供給部40_2のノズル41_4がウェハWの中央上方に位置する。その後、バルブ44fが所定時間開放されることにより、レジストが形成されていないウェハWのパターン形成面に対して前処理液であるオゾン水が供給される。ウェハWへ供給されたオゾン水は、ウェハWの回転に伴う遠心力によってウェハWのパターン形成面に広がる。これにより、ウェハWのパターン形成面が親水化される。
このように、親水化処理を行うことで、親水化されたウェハWの界面(パターン形成面)に剥離処理液が浸透し易くなるため、処理膜の除去性をさらに向上させることができる。なお、親水化処理を前処理として行う場合、オゾン水に代えて、たとえば過酸化水素水を前処理液として使用してもよい。なお、ステップS102の前処理は、必ずしも行われることを要しない。
つづいて、基板洗浄装置14では、成膜処理液供給処理が行われる(ステップS103)。かかる成膜処理液供給処理では、液供給部40_2のノズル41_5がウェハWの中央上方に位置する。その後、バルブ44g,44hが所定時間開放されることにより、ノズル41_5へ至る流路に、[A]溶媒および[B]重合体の混合液と[C]有機酸とがそれぞれ供給される。これらは、上記流路内で混合されて成膜処理液となり、レジストが形成されていないウェハWのパターン形成面に供給される。このように、成膜処理液は、レジストを介することなくウェハW上に供給される。
ウェハWへ供給された成膜処理液は、ウェハWの回転に伴う遠心力によってウェハWの表面に広がる。これにより、ウェハWのパターン形成面に成膜処理液の液膜が形成される。形成される処理膜の膜厚は、10nm〜5,000nmが好ましく、20nm〜500nmがより好ましい。
つづいて、基板洗浄装置14では、乾燥処理が行われる(ステップS104)。かかる乾燥処理では、たとえばウェハWの回転速度を所定時間増加させることによって成膜処理液を乾燥させる。これにより、たとえば成膜処理液に含まれる有機溶媒の一部または全部が気化して成膜処理液に含まれる固形分が固化または硬化し、ウェハWのパターン形成面に処理膜が形成される。
なお、ステップS103の乾燥処理は、たとえば、図示しない減圧装置によってチャンバ20内を減圧状態にする処理であってもよいし、FFU21から供給されるダウンフローガスによってチャンバ20内の湿度を低下させる処理であってもよい。これらの処理によっても、成膜処理液を固化または硬化させることができる。
また、基板洗浄装置14は、成膜処理液が自然に固化または硬化するまでウェハWを基板洗浄装置14で待機させてもよい。また、ウェハWの回転を停止させたり、成膜処理液が振り切られてウェハWの表面が露出することがない程度の回転数でウェハWを回転させたりすることによって成膜処理液を固化または硬化させてもよい。
つづいて、基板洗浄装置14では、除去処理が行われる(ステップS105)。かかる除去処理では、ウェハW上に形成された処理膜が除去される。これにより、ウェハW上のパーティクルPが処理膜とともに除去される。かかる除去処理の具体的な内容については、後述する。
つづいて、基板洗浄装置14では、ステップS105でリンス処理まで行われたウェハWに対して乾燥処理が行われる(ステップS106)。かかる乾燥処理では、液供給部40_1のノズル41_3がウェハWの中央上方に位置する。その後、バルブ44eが所定時間開放されることにより、ウェハW上に乾燥溶媒であるIPAが供給される。これにより、ウェハW上のDIWがIPAに置換される。また、乾燥処理では、ウェハWの回転速度を所定時間増加させることによって、ウェハWの表面に残存するIPAを振り切ってウェハWを乾燥させる。その後、ウェハWの回転が停止する。
つづいて、基板洗浄装置14では、基板搬出処理が行われる(ステップS107)。かかる基板搬出処理では、基板搬送装置131(図3参照)によって、基板洗浄装置14のチャンバ20からウェハWが取り出される。その後、ウェハWは、受渡部122および基板搬送装置121を経由して、キャリア載置部11に載置されたキャリアCに収容される。かかる基板搬出処理が完了すると、1枚のウェハWについての基板洗浄処理が完了する。
次に、ステップS105の除去処理の具体例について説明する。ここで、実施例12〜16のいずれかの組成物を成膜処理液として用いる場合、重合体(M1〜M10)の組成比によっては、アルカリに可溶なものと難溶なものとが存在する。そこで、以下では、アルカリに可溶な成膜処理液を用いる場合の除去処理と、アルカリに難溶な成膜処理液を用いる場合の除去処理とについてそれぞれ説明する。
まず、アルカリに可溶な成膜処理液を用いる場合の除去処理の例について図6を参照して説明する。図6は、アルカリに可溶な成膜処理液を用いる場合における除去処理の処理手順を示すフローチャートである。
図6に示すように、基板洗浄装置14では、まず、DIW供給処理が行われる(ステップS201)。かかるDIW供給処理では、液供給部40_1のノズル41_1がウェハWの中央上方に位置する。その後、バルブ44aが所定時間開放されることにより、ウェハW上に形成された処理膜に対して剥離処理液であるDIWが供給される。処理膜へ供給されたDIWは、ウェハWの回転に伴う遠心力によって処理膜上に広がる。
DIWは、処理膜中に浸透し、処理膜とウェハWとの界面に到達して、処理膜をウェハWから剥離させる。これにより、ウェハWのパターン形成面に付着したパーティクルPが処理膜とともにウェハWから剥離される。
ここで、上述したように成膜処理液は、溶媒と、式(1)で表される部分構造を有する重合体とを含有する。このような成膜処理液を用いることで、処理膜のウェハWからの除去性が向上するため、ウェハW上のパーティクルPの除去性能を向上させることができる。
また、成膜処理液は、処理膜の除去性が高いことから、様々な材質からなる基板に対する適用が考えられる。適用可能な基板の例として、シリコン基板、アルミニウム基板、ニッケル基板、クロム基板、モリブデン基板、タングステン基板、銅基板、タンタル基板、チタン基板等の金属又は半金属基板;窒化ケイ素基板、アルミナ基板、二酸化ケイ素基板、窒化タンタル基板、窒化チタン等のセラミック基板等が挙げられる。これらの中で、シリコン基板、窒化ケイ素基板、窒化チタン基板が好ましく、窒化ケイ素基板がより好ましい。
つづいて、基板洗浄装置14では、アルカリ水溶液供給処理が行われる(ステップS202)。かかるアルカリ水溶液供給処理では、バルブ44bが所定時間開放されることにより、ウェハWから剥離された処理膜に対して溶解処理液であるアルカリ水溶液が供給される。これにより、処理膜は溶解する。
溶解処理液としてアルカリ水溶液を用いた場合、ウェハWおよびパーティクルPに同一極性のゼータ電位を生じさせることができる。これにより、ウェハWとパーティクルPとが反発し合うようになるため、パーティクルPのウェハWへの再付着を防止することができる。
つづいて、基板洗浄装置14では、リンス処理が行われる(ステップS203)。かかるリンス処理では、液供給部40_1のノズル41_2がウェハWの中央上方に位置する。その後、バルブ44dが所定時間開放されることにより、回転するウェハWに対してDIWがリンス液として供給される。これにより、溶解した処理膜やアルカリ水溶液中に浮遊するパーティクルPが、DIWとともにウェハWから除去される。これにより、除去処理が終了し、ステップS106の乾燥処理へ移行する。
このように、アルカリに可溶な成膜処理液を用いる場合には、溶解処理液としてアルカリ水溶液を用いることで、処理膜を溶解させることができる。
次に、アルカリに難溶な成膜処理液を用いる場合の除去処理の例について図7を参照して説明する。図7は、アルカリに難溶な成膜処理液を用いる場合における除去処理の処理手順を示すフローチャートである。
図7に示すように、基板洗浄装置14では、まず、上述したステップS201と同様のDIW供給処理が行われる(ステップS301)。
つづいて、基板洗浄装置14では、有機溶剤供給処理が行われる(ステップS302)。かかる有機溶剤供給処理では、バルブ44cが所定時間開放されることにより、ウェハWから剥離された処理膜に対して溶解処理液である有機溶剤が供給される。これにより、処理膜は溶解する。
つづいて、基板洗浄装置14では、ステップS203と同様のリンス処理が行われる(ステップS303)。これにより、除去処理が終了し、ステップS106の乾燥処理へ移行する。
このように、アルカリに難溶な成膜処理液を用いる場合には、溶解処理液としてシンナーなどの有機溶剤を用いることで、処理膜を溶解させることができる。また、アルカリ水溶液を使用しないため、ウェハWや下地膜へのダメージをさらに抑制することができる。
なお、ここでは、有機溶剤供給処理(ステップS302)の後に、リンス処理(ステップS303)を行うこととしたが、有機溶剤はウェハW上で揮発するため、リンス処理(ステップS303)は必ずしも行われることを要しない。
次に、アルカリに難溶な成膜処理液を用いる場合における除去処理の変形例について図8を参照して説明する。図8は、アルカリに難溶な成膜処理液を用いる場合における除去処理の変形例(その1)を示すフローチャートである。
図8に示すように、基板洗浄装置14では、まず、DIW供給処理(ステップS401)を行い、つづいて、有機溶剤供給処理(ステップS402)を行う。これらの処理は、上述したステップS301およびステップS302の処理と同様である。
つづいて、基板洗浄装置14では、アルカリ水溶液供給処理(ステップS403)が行われる。かかるアルカリ水溶液供給処理では、液供給部40_1のノズル41_1がウェハWの中央上方に位置する。その後、バルブ44bが所定時間開放されることにより、ウェハWに対してアルカリ水溶液が供給される。その後、基板洗浄装置14では、ステップS303と同様のリンス処理(ステップS404)が行われて、除去処理が終了する。
このように、有機溶剤供給処理後のウェハWに対してアルカリ水溶液を供給してもよい。アルカリ水溶液を供給することで、ウェハWおよびパーティクルPに同一極性のゼータ電位を生じさせることができる。これにより、ウェハWとパーティクルPとが反発し合うようになるため、パーティクルPのウェハWへの再付着を防止することができる。
つづいて、アルカリに難溶な成膜処理液を用いる場合における除去処理のその他の変形例について図9を参照して説明する。図9は、アルカリに難溶な成膜処理液を用いる場合における除去処理の変形例(その2)を示すフローチャートである。
図9に示すように、基板洗浄装置14では、まず、ステップS301と同様のDIW供給処理が行われる(ステップS501)。
つづいて、基板洗浄装置14では、アルカリ水溶液供給処理が行われる(ステップS502)。かかるアルカリ水溶液供給処理では、液供給部40_1のノズル41_1がウェハWの中央上方に位置する。その後、バルブ44bが所定時間開放されることにより、ウェハWに対してアルカリ水溶液が供給される。その後、基板洗浄装置14では、ステップS302と同様の有機溶剤供給処理(ステップS503)およびステップS303と同様のリンス処理(ステップS504)が行われて、除去処理が終了する。なお、ステップS504のリンス処理は、省略してもよい。
このように、DIW供給処理後のウェハWに対してアルカリ水溶液を供給してもよい。DIW供給処理後のウェハWには、処理膜に含まれる特定の成分が部分的に残存する可能性がある。この特定の成分のなかには、アルカリ水溶液に可溶な成分も含まれる。これに対し、本変形例のように、DIW供給処理後のウェハWに対してアルカリ水溶液を供給することで、ウェハWに残存する処理膜の成分のうちアルカリ水溶液に可溶な成分を溶解して除去することができる。したがって、本変形例によれば、処理膜の膜残りを抑えることができる。
なお、基板洗浄装置14は、有機溶剤供給処理(ステップS503)の後に、ステップS403と同様のアルカリ水溶液供給処理を行ってもよい。
上述した各除去処理の例では、DIW供給処理によってウェハW上の処理膜をウェハWから剥離させ、その後、アルカリ水溶液供給処理または有機溶剤供給処理を行うことによって処理膜を溶解させることとした。しかし、これに限らず、処理膜をウェハWから剥離する処理と、剥離した処理膜を溶解する処理とを1つの工程で並行して行ってもよい。かかる点について図10を参照して説明する。
図10は、除去処理の変形例を示すフローチャートである。なお、図10に示す除去処理の処理手順は、アルカリに可溶な成膜処理液を用いる場合およびアルカリに難溶な成膜処理液を用いる場合の両方に適用することができる。
図10に示すように、基板洗浄装置14では、除去液供給処理を行う(ステップS601)。かかる除去液供給処理では、液供給部40_1のノズル41_1がウェハWの中央上方に位置する。その後、バルブ44bおよびバルブ44cの一方とバルブ44aとが所定時間開放されることにより、ウェハWに対して希釈されたアルカリ水溶液または有機溶剤が供給される。
かかるアルカリ水溶液または有機溶剤は、低濃度であるため、処理膜をほとんど溶解させることなく、ウェハWから剥離させることができる。このため、DIWを供給した場合と同様、パーティクルPは、処理膜とともにウェハWから剥離される。そして、その後、ウェハWから剥離した処理膜は、低濃度のアルカリ水溶液または有機溶剤によって溶解される。その後、ステップS303と同様のリンス処理(ステップS602)が行われて、除去処理が終了する。なお、希釈した有機溶剤を除去液として用いる場合、ステップS602のリンス処理は、必ずしも行われることを要しない。
このように、DIWで希釈したアルカリ水溶液または有機溶剤を除去液として用いることにより、処理膜をウェハWから剥離する処理と、剥離した処理膜を溶解する処理とを1つの工程で並行して行うことができる。これにより、基板洗浄処理に要する時間を短縮させることができる。
なお、基板洗浄装置14では、流量調整器46a〜46cの何れかを制御することにより、アルカリ水溶液または有機溶剤の濃度を徐々に高くしてもよい。たとえば、基板洗浄装置14は、第1濃度のアルカリ水溶液または有機溶剤を供給した後、第2濃度(>第1濃度)のアルカリ水溶液または有機溶剤を供給してもよい。
上述してきたように、本実施形態に係る基板処理システム(基板洗浄システム1に相当)は、保持部(基板保持機構30に相当)と、除去液供給部とを備える。保持部は、有機溶媒と、フッ素原子を含み(より好ましくは上述した式(1)で表される部分構造を有し)有機溶媒に可溶な重合体とを含有する処理膜が形成された基板を保持する。除去液供給部は、基板上の処理膜に対して処理膜を除去する除去液を供給する。
したがって、本実施形態に係る基板処理システムによれば、高いパーティクル除去性能を得ることができる。
(その他の実施形態)
上述してきた実施形態では、「成膜処理液供給部」と「除去液供給部」とが1つのチャンバ20内に設けられる場合の例を示したが、「成膜処理液供給部」と「除去液供給部」とは、それぞれ別々のチャンバ内に設けられてもよい。たとえば、基板洗浄システム1は、図4に示す基板洗浄装置14から液供給部40_2を取り除いたチャンバ(第1チャンバ)と、図4に示す基板洗浄装置14から液供給部40_1を取り除いたチャンバ(第2チャンバ)とを備えてもよい。
また、基板洗浄システム1は、必ずしも「成膜処理液供給部」を備えることを要しない。すなわち、基板洗浄システム1は、図5に示すステップS104までの処理が施されたウェハWに対して図5に示すステップS105〜S107の処理を行うものであってもよい。
また、上述してきた実施形態では、液体状のDIWを剥離処理液として用いる場合の例について説明したが、剥離処理液は、ミスト状のDIWであってもよい。
また、上述してきた実施形態では、ノズルを用いることによって、DIWを処理膜に直接供給する場合の例について説明したが、たとえば加湿装置などを用いてチャンバ内の湿度を高めることによって、処理膜に対してDIWを間接的に供給するようにしてもよい。
また、上述してきた実施形態では、常温の純水であるDIWを剥離処理液として用いる場合の例について説明したが、たとえば加熱された純水を剥離処理液として用いてもよい。これにより、処理膜の除去性をさらに高めることができる。
また、上述してきた実施形態では、剥離処理液としてDIWを用いる場合の例について説明した。しかし、ウェハW上に形成された処理膜を溶解させることなく(あるいは、溶解させる前に)剥離させるプロセスが実行可能な組合せであれば、剥離処理液の種類は問わない。例えば、剥離処理液は、CO2水(CO2ガスが混合されたDIW)、酸またはアルカリ性の水溶液、界面活性剤添加水溶液、HFE(ハイドロフルオロエーテル)等のフッ素系溶剤、希釈IPA(純水で希釈されたIPA:イソプロピルアルコール)、の少なくとも一つを含んでいればよい。
たとえば、ウェハWとの密着性が低く、剥離しやすい処理膜が形成されるように成膜処理液を組成したものとする。かかる場合、形成される処理膜は、剥離しやすくなる反面、撥水性が高まってDIWのみでは浸透しにくくなる可能性があるので、このような場合、剥離処理液として、希釈IPAのような純水で希釈された有機溶剤(以下、「希釈有機溶剤」と言う)を用いることが好ましい。
かかる剥離処理液として希釈有機溶剤を用いる場合について図11〜図12Cを用いて説明する。図11は、剥離処理液として希釈有機溶剤を用いる場合における除去処理の変形例を示すフローチャートである。図12A〜図12Cは、希釈有機溶剤供給処理の説明図(その1)〜(その3)である。なお、図11は、既に示した図7に対応している。また、図12A〜図12Cでは、バルブの図示を省略している。
図11に示すように、剥離処理液として希釈有機溶剤を用いる場合、基板洗浄装置14では、まず、上述した図7のステップS301のDIW供給処理に代えて、希釈有機溶剤供給処理が行われる(ステップS701)。
かかる希釈有機溶剤供給処理では、ウェハW上に形成された処理膜を溶解させることなく処理膜へ浸透する程度の濃度、たとえば希釈IPAであれば10%以下の濃度である希釈有機溶剤が、ウェハWへ供給される。
これにより、ウェハW上に形成されたパターンの深部にまで到達した処理膜に対しても剥離処理液を浸透させることが可能となるので、パターンが形成されたウェハWであっても高いパーティクル除去性能を得ることができる。
つづいて、基板洗浄装置14では、ステップS302と同様の有機溶剤供給処理が行われる(ステップS702)。
そして、基板洗浄装置14では、ステップS303と同様のリンス処理が行われる(ステップS703)。これにより、除去処理が終了し、ステップS106の乾燥処理へ移行する。
なお、希釈有機溶剤の具体的な供給方法としては、たとえば図12Aに示すように、希釈有機溶剤供給源45iを設けることとしたうえで、かかる希釈有機溶剤供給源45iからノズル41を介して直接にウェハWへ希釈有機溶剤を供給することができる。
また、たとえば図12Bに示すように、DIW供給源45aから流量調整器46aを介し、また、有機溶剤供給源45cから流量調整器46cを介することで、内部混合した希釈有機溶剤をノズル41からウェハWへ供給してもよい。
また、たとえば図12Cに示すように、DIW供給源45aからDIWをウェハWへ供給した後に、有機溶剤供給源45cから有機溶剤をウェハWへ供給し、ウェハW上で混合することで、希釈有機溶剤を生成することとしてもよい。また、この場合、DIWと有機溶剤とが同時にウェハWへ供給されてもよい。
このように、浸透性が低い成膜処理液を用いる場合には、剥離処理液として希釈有機溶剤を用いることで、処理膜へ剥離処理液をより浸透させることができる。また、これにより、パターンが形成されたウェハWであっても高いパーティクル除去性能を得ることができる。なお、ここで説明した剥離処理液として希釈有機溶剤を用いる場合は、具体的には、成膜処理液が、後に示す表1の樹脂(P−3)または樹脂(P−5)をベース樹脂とする場合等に適用することが好ましい。
また、上述してきた実施形態では、成膜処理液供給処理から乾燥処理が行われた後、除去処理が行われる場合の例について説明したが(図5のステップS103〜ステップS105参照)、除去処理が行われる前に、成膜処理液の固化または硬化を促進させる「成膜促進処理」を行うこととしてもよい。
かかるその他の実施形態について、図13〜図16Bを用いて説明する。まず、図13は、その他の実施形態に係る基板洗浄システム1’が実行する基板洗浄処理の処理手順を示すフローチャートである。なお、図13は、既に示した図5に対応している。
図13に示すように、基板洗浄システム1’の基板洗浄装置14では、まず、上述した図5のステップS101〜ステップS104と同様の、基板搬入処理、前処理、成膜処理液供給処理および乾燥処理が行われる(ステップS801〜ステップS804)。
つづいて、基板洗浄装置14では、成膜促進処理が行われる(ステップS805)。かかる成膜促進処理では、ウェハWの表面へ供給された成膜処理液の固化または硬化を促進させる処理、一例としてウェハWの加熱等の処理が行われる。かかる処理の具体的な態様については、図14A以降を用いて後述する。
かかる成膜促進処理を経ることにより、たとえばウェハWに形成されたパターンの深部にまで到達した成膜処理液を確実に固化または硬化させ、処理膜とパーティクルとの付着力を向上させることができる。すなわち、パターンが形成されたウェハWであっても、かかるパターンの深部にあるパーティクルまでも確実に処理膜へ付着させ、高いパーティクル除去性能を得ることができる。
そして、基板洗浄装置14では、ステップS105〜ステップS107と同様の、除去処理、乾燥処理および基板搬出処理が行われ(ステップS806〜ステップS808)、1枚のウェハWについての基板洗浄処理が完了する。
次に、成膜促進処理の具体的な態様について説明する。まず、第1の態様としての成膜促進処理について説明する。図14Aは、第1の成膜促進処理の説明図である。また、図14Bは、第1の成膜促進処理を実行する場合における基板洗浄システム1’の構成を示す模式図である。なお、以下では、基板洗浄装置14を「_番号」の形式で付番して、複数の基板洗浄装置14のそれぞれを区別する場合がある。
図14Aに示すように、第1の成膜促進処理では、たとえばベイク装置60を設けることとしたうえで、かかるベイク装置60によりウェハWをベイクすることでウェハWへ供給された成膜処理液を加熱し、成膜処理液の固化または硬化を促進させる。なお、第1の成膜促進処理は、上述したステップS804の乾燥処理の前に行ってもよい。また、ウェハWをベイクする条件は、温度を70°〜120°、時間を60秒以下程度とすることが好ましい。
第1の態様として、かかる第1の成膜促進処理を行う場合、ベイク装置60を含む「成膜促進部」は、少なくとも成膜処理液供給処理が行われるチャンバ20とは別のチャンバ20に設けられる。これにより、ベイク処理を高性能化することができ、また、ベイク処理と成膜処理液供給処理とを別々のチャンバで並行処理することができるようになる。
具体的には、図14Bに示すように、たとえば成膜処理液供給処理を基板洗浄装置14_3〜14_6にて行い、除去処理を基板洗浄装置14_9〜14_12にて行う配置とした場合、これらとは別のチャンバ20を有する基板洗浄装置14_1、14_2、14_7および14_8へベイク装置60を収容し、かかる基板洗浄装置14_1、14_2、14_7および14_8にて第1の成膜促進処理を行うとよい。
次に、第2の態様としての成膜促進処理について説明する。図15A〜図15Cは、第2の成膜促進処理の説明図(その1)〜(その3)である。また、図15D〜図15Fは、第2の成膜促進処理を実行する場合における基板洗浄システム1’の構成を示す模式図(その1)〜(その3)である。
図15Aに示すように、第2の成膜促進処理では、たとえば基板保持機構30において、支柱部32を介してノズル41_6を設けることとしたうえで、保持部材311によって回転保持部31の上面から離間した状態で水平保持されたウェハWの裏面側へ、ノズル41_6から高温のDIWを供給することによってウェハWの表面側の成膜処理液を加熱する。
これにより、ウェハWの表面側の成膜処理液の固化または硬化を間接的に促進させることができる。なお、ノズル41_6から供給するのはDIWに限らず高温の流体であればよく、たとえば高温の窒素ガスであったり、水蒸気であったりしてもよい。
また、ウェハWの裏面からに限らず、ウェハWの表面側へ供給された成膜処理液に対し、図15Bに示すように、ノズル41を介してウェハWの表面側から高温の流体を供給することによって、成膜処理液を直接的に加熱することとしてもよい。
また、図15Aおよび図15Bに示す第2の成膜促進処理は、成膜処理液の供給中に、すなわち成膜処理液供給処理と並行して行われてもよい。
また、図15Aおよび図15Bでは、成膜処理液が供給された後あるいは供給中に第2の成膜促進処理を行う場合の例を示しているが、図15Cに示すように、成膜処理液がウェハWへ供給される前に、ウェハWへノズル41あるいはノズル41_6から高温の流体を供給することによってウェハWを予め加熱し、間接的に成膜処理液を加熱することとしてもよい。
このような第2の成膜促進処理を行う場合、たとえばノズル41_6やノズル41を含む「成膜促進部」は、成膜処理液供給処理や除去処理が行われるチャンバ20と同一のチャンバ20に設けることができる。
具体的には、図15Dに示すように、たとえば成膜処理液供給処理、第2の成膜促進処理および除去処理をあわせて、基板洗浄装置14_1〜14_12のそれぞれにて行う配置とすることができる。
また、図15Eに示すように、たとえば成膜処理液供給処理を基板洗浄装置14_1〜14_6にて行う配置とした場合、これとは別のチャンバ20を有する基板洗浄装置14_7〜14_12にて第2の成膜促進処理および除去処理を行う配置とすることができる。
また、図15Fに示すように、たとえば成膜処理液供給処理および第2の成膜促進処理をあわせて基板洗浄装置14_1〜14_6にて行い、除去処理を基板洗浄装置14_7〜14_12にて行う配置としたものとする。この場合、基板洗浄装置14_1〜14_6の基板保持機構30がウェハWをたとえば吸着式のバキュームチャック等で保持する場合には、少なくとも図15Bおよび図15Cに示したウェハWの表面側からの第2の成膜促進処理を、基板洗浄装置14_1〜14_6のそれぞれにて行うことができる。
次に、第3の態様としての成膜促進処理について説明する。図16Aは、第3の成膜促進処理の説明図である。また、図16Bは、第3の成膜促進処理を実行する場合における基板洗浄システム1’の構成を示す模式図である。
図16Aに示すように、第3の成膜促進処理では、たとえば搬送部12,13のいずれかの位置に「成膜促進部」としての熱源70を設けることとしたうえで、表面へ成膜処理液が供給されたウェハWが熱源70の近傍を通過する際に、かかる熱源70の熱により成膜処理液を加熱する。これにより、ウェハWの表面側の成膜処理液の固化または硬化を促進させることができる。なお、成膜処理液は、ウェハWの表面側および裏面側のいずれから加熱されてもよい。
熱源70は、たとえばハロゲンランプ等であって、図16Bに示すように、基板洗浄装置14_1〜14_6にて成膜処理液供給処理を行い、基板洗浄装置14_7〜14_12にて除去処理を行う配置とした場合に、搬送部13における搬送経路や基板搬送装置131のウェハ保持機構、搬送部12の受渡部122等に設けることができる。熱源70は、基板搬送装置131のウェハ保持機構に設けられた場合、成膜処理液が供給されたウェハWがこのウェハ保持機構により保持される間に、成膜処理液を加熱する。
なお、かかる第3の成膜促進処理では、熱源70に限らず、熱源70に代えてたとえばUV(Ultraviolet)光源を設けることとしたうえで、かかるUV光源による紫外光の照射により、成膜処理液の固化または硬化を促進させることとしてもよい。
また、上述してきた各実施形態では、溶解処理液としてアルカリ現像液を用いる場合の例について説明してきたが、溶解処理液は、アルカリ現像液に過酸化水素水を加えたものであってもよい。このように、アルカリ現像液に過酸化水素水を加えることによって、アルカリ現像液によるウェハW表面の面荒れを抑制することができる。また、溶解処理液は、酢酸、蟻酸、ヒドロキシ酢酸等の酸性現像液であってもよい。
さらに、溶解処理液は、界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤には表面張力を弱める働きがあるため、パーティクルPのウェハW等への再付着を抑制することができる。また、除去対象の不要物としてはパーティクルPに限らず、例えばドライエッチング後またはアッシング後に基板上に残存するポリマー等の他の物質でも良い。
次に、基板洗浄用組成物の実施例について説明する。
得られた重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、東ソー製GPCカラム(G2000HXL:2本、G3000HXL:1本、G4000HXL:1本)を用い、流量:1.0mL/分、溶出溶媒:テトラヒドロフラン、試料濃度:1.0質量%、試料注入量:100μL、カラム温度:40℃、検出器:示差屈折計の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した。分散度(Mw/Mn)は、Mw及びMnの測定結果より算出した。
(重合体の合成)
重合体の原料として用いた化合物を以下に示す。
(製造例1)
化合物(M−1)100g(100モル%)及びアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)7.29g(7モル%)を2−ブタノン100gに溶解させた単量体溶液を準備した。100gの2−ブタノンを投入した1,000mLの三口フラスコを30分窒素パージした。窒素パージの後80℃に加熱し、攪拌しながら上記単量体溶液を滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、6時間重合させた。重合終了後、反応溶液を30℃以下に冷却した。反応溶液を質量が150gになるまで減圧濃縮した。メタノール150g及びn−ヘキサン750gを投入し、分離させた。分離後、下層液を回収した。回収した下層液にn−ヘキサン750gを投入し、再度分離精製した。分離後、下層液を回収した。回収した下層液から溶媒を除去し、4−メチル−2−ペンタノールを加えて、樹脂(P−1)を含む溶液を得た。結果を表1に示す。
(製造例2〜10)
使用する化合物及び組み合わせを表1の通り変えた他は製造例1と同様にして樹脂(P−2)〜(P−11)を合成した。
(実施例1)
重合体(P−1)100質量部、4−メチル−2−ペンタノール7,400質量部を混合し、均一溶液とした。この溶液をHDPE製のフィルター(孔径5nm、日本Pall社製 PhotoKleen EZD)を用いて濾過した。液中の150μm以下のパーティクルが10個/mLまで減少したことを液中パーティクルカウンタ(リオン社製、KS−41B)で確認し、基板洗浄用組成物(D−1)を調製した。固形分濃度は約1.5%であった。
(実施例2〜8及び比較例1,2)
樹脂を表2の通り変えた他は実施例1と同様にして、基板洗浄用組成物(D−2)〜(D−8)及び比較組成物(c−1),(c−2)を調製した。
(実施例9)
重合体(P−1)100質量部、有機酸として酒石酸(Ac−1)5.0質量部及び4−メチル−2−ペンタノール7,400質量部を混合し、均一溶液とした。この溶液をHDPE製のフィルター(孔径5nm、日本Pall社製 PhotoKleen EZD)を用いて濾過した。液中の150μm以下のパーティクルが10個/mLまで減少したことを液中パーティクルカウンタ(リオン社製、KS−41B)で確認し、基板洗浄用組成物(D−1)を調製した。固形分濃度は約1.5%であった。
(実施例10〜16及び比較例3〜5)
樹脂及び有機酸を表2の通り変えた他は実施例9と同様にして、基板洗浄用組成物(D−10)〜(D−16)及び比較組成物(c−3)〜(c−5)を調製した。
各実施例及び比較例で用いた有機酸は以下の通りである。本実施例では、有機酸はいずれも和光純薬製の試薬を使用した。
Ac−1:酒石酸
Ac−2:シュウ酸
Ac−3:クエン酸
Ac−4:マレイン酸
Ac−5:リンゴ酸
Ac−6:フマル酸
Ac−7:イソフタル酸
Ac−8:テレフタル酸
Ac−9:ポリアクリル酸(和光純薬製ポリアクリル酸5000)
(粒子除去性及び膜除去性の評価)
予め粒径200nmのシリカ粒子を付着させた12インチウェハ上に、上述の基板洗浄装置14を使用してスピンコート法により各組成物の処理膜を形成した。処理膜が形成されたものについて、溶解処理液として2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(TMAH溶液)を供給し、処理膜を除去した。除去性については、TMAH溶液の供給開始から20秒以内に全ての処理膜の除去が完了したものをA、20秒を超えて1分以内に完了したものをB、1分以内に除去が完了しなかったものをCと判定した。また、処理膜の除去後にウェハ上に残存したシリカ粒子数を暗視野欠陥装置(SP2,KLA−TENCOR社製)を用いて分析した。シリカ粒子の除去率が70%以上のものをA、30%以上70%未満のものをB、30%未満のものはCと判定した。なお、処理膜が形成できなかったものについては粒子除去性の欄に「塗布不可」と記載した。
(評価例1〜16及び比較評価例1〜5)
ウェハとしてシリコンウェハを、基板洗浄用組成物(D−1)〜(D−16)及び比較用組成物(c−1)〜(c−5)をそれぞれ用い、上述の評価方法にしたがって粒子除去性及び膜除去性を評価した。結果を表3に示す。
(評価例17〜24及び比較評価例6,7)
シリコンウェハを窒化シリコン又は窒化チタンに、基板洗浄用組成物との組み合わせを表4の通り変えた他は上記と同様にして、粒子除去性及び膜除去性を評価した。結果を表4に示す。
各評価例と各比較評価例との比較より、本発明に係る基板洗浄用組成物は、基板表面に膜を形成してこれを除去する基板洗浄方法において、粒子除去性及び膜除去性にともに優れることがわかる。また、評価例5〜8と評価例13〜16との比較より、有機酸を加えることによって膜除去性がさらに向上することがわかる。
(評価例25〜31及び比較評価例8)
評価例4,5,12〜16及び比較評価例3において溶解処理液の代わりに剥離処理液としての純水を供給した以外は同様にして粒子除去性及び膜除去性を評価した。結果を表5に示す。
(評価例32〜36及び比較評価例9)
評価例20〜24及び比較評価例6において溶解処理液の代わりに剥離処理液としての純水を供給した以外は同様にして粒子除去性及び膜除去性を評価した。結果を表6に示す。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。