以下、添付図面を参照して、本願の開示する基板洗浄方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
(第1の実施形態)
<基板洗浄方法の内容>
まず、第1の実施形態に係る基板洗浄方法の内容について図1A〜図1Eを用いて説明する。図1A〜図1Eは、第1の実施形態に係る基板洗浄方法の説明図である。
図1Aに示すように、第1の実施形態に係る基板洗浄方法では、シリコンウェハや化合物半導体ウェハ等の基板(以下、「ウェハW」と記載する)のパターン形成面に対し、揮発成分を含みウェハW上に膜を形成するための処理液(以下、「成膜処理液」と記載する)を供給する。
ここで、ウェハWのパターン形成面は、たとえば親水性の膜(図示せず)で覆われることにより、あるいは、オゾン水などを用いた親水化処理が施されることにより、親水性を有している。
ウェハWのパターン形成面に供給された成膜処理液は、揮発成分の揮発による体積収縮を起こしながら固化または硬化して処理膜となる。これにより、ウェハW上に形成されたパターンやパターンに付着したパーティクルPがこの処理膜に覆われた状態となる(図1B参照)。なお、ここでいう「固化」とは、固体化することを意味し、「硬化」とは、分子同士が連結して高分子化すること(たとえば架橋や重合等)を意味する。
つづいて、図1Bに示すように、ウェハW上の処理膜に対して剥離処理液が供給される。剥離処理液とは、前述の処理膜をウェハWから剥離させる処理液である。
具体的には、剥離処理液は親水性の処理液であり、処理膜上に供給された後、処理膜中に浸透していきウェハWの界面に到達する。ウェハWの界面であるパターン形成面は親水性を有しているため、ウェハWの界面に到達した剥離処理液は、ウェハWの界面であるパターン形成面に浸透する。
このように、ウェハWと処理膜との間に剥離処理液が浸入することにより、処理膜は「膜」の状態でウェハWから剥離し、これに伴い、パターン形成面に付着したパーティクルPが処理膜とともにウェハWから剥離する(図1C参照)。
なお、成膜処理液は、揮発成分の揮発に伴う体積収縮によって生じる歪み(引っ張り力)により、パターン等に付着したパーティクルPをパターン等から引き離すことができる。
つづいて、ウェハWから剥離された処理膜に対し、処理膜を溶解させる溶解処理液が供給される。これにより、処理膜は溶解し、処理膜に取り込まれていたパーティクルPは、溶解処理液中に浮遊した状態となる(図1D参照)。その後、溶解処理液や溶解した処理膜を純水等で洗い流すことにより、パーティクルPは、ウェハW上から除去される(図1E参照)。
このように、第1の実施形態に係る基板洗浄方法では、ウェハW上に形成された処理膜をウェハWから「膜」の状態で剥離させることで、パターン等に付着したパーティクルPを処理膜とともにウェハWから除去することとした。
したがって、第1の実施形態に係る基板洗浄方法によれば、化学的作用を利用することなくパーティクル除去を行うため、エッチング作用等による下地膜の侵食を抑えることができる。
また、第1の実施形態に係る基板洗浄方法によれば、従来の物理力を利用した基板洗浄方法と比較して弱い力でパーティクルPを除去することができるため、パターン倒れを抑制することもできる。
さらに、第1の実施形態に係る基板洗浄方法によれば、従来の物理力を利用した基板洗浄方法では除去が困難であった、粒子径が小さいパーティクルPを容易に除去することが可能となる。かかる点については、第1の実施形態に係る基板洗浄方法と従来の物理力を利用した基板洗浄方法とのパーティクル除去率の比較結果(図5参照)を用いて後述する。
なお、第1の実施形態に係る基板洗浄方法において、処理膜は、ウェハWに成膜された後、パターン露光を行うことなくウェハWから全て除去される。したがって、洗浄後のウェハWは、成膜処理液を塗布する前の状態、すなわち、パターン形成面が露出した状態となる。
<基板洗浄システムの構成>
次に、第1の実施形態に係る基板洗浄システムの構成について図2を用いて説明する。図2は、第1の実施形態に係る基板洗浄システムの構成を示す模式図である。なお、以下においては、位置関係を明確にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする。
図2に示すように、基板洗浄システム1は、搬入出ステーション2と、処理ステーション3とを備える。搬入出ステーション2と処理ステーション3とは隣接して設けられる。
搬入出ステーション2は、キャリア載置部11と、搬送部12とを備える。キャリア載置部11には、複数枚のウェハWを水平状態で収容可能な複数の搬送容器(以下、「キャリアC」と記載する)が載置される。
搬送部12は、キャリア載置部11に隣接して設けられる。搬送部12の内部には、基板搬送装置121と、受渡部122とが設けられる。
基板搬送装置121は、ウェハWを保持するウェハ保持機構を備える。また、基板搬送装置121は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、ウェハ保持機構を用いてキャリアCと受渡部122との間でウェハWの搬送を行う。
処理ステーション3は、搬送部12に隣接して設けられる。処理ステーション3は、搬送部13と、複数の基板洗浄装置14とを備える。複数の基板洗浄装置14は、搬送部13の両側に並べて設けられる。
搬送部13は、内部に基板搬送装置131を備える。基板搬送装置131は、ウェハWを保持するウェハ保持機構を備える。また、基板搬送装置131は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、ウェハ保持機構を用いて受渡部122と基板洗浄装置14との間でウェハWの搬送を行う。
基板洗浄装置14は、上述した基板洗浄方法に基づく基板洗浄処理を実行する装置である。かかる基板洗浄装置14の具体的な構成については、後述する。
また、基板洗浄システム1は、制御装置4を備える。制御装置4は、基板洗浄システム1の動作を制御する装置である。かかる制御装置4は、たとえばコンピュータであり、制御部15と記憶部16とを備える。記憶部16には、基板洗浄処理等の各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部15は、記憶部16に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって基板洗浄システム1の動作を制御する。
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から制御装置4の記憶部16にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
上記のように構成された基板洗浄システム1では、まず、搬入出ステーション2の基板搬送装置121が、キャリアCからウェハWを取り出し、取り出したウェハWを受渡部122に載置する。受渡部122に載置されたウェハWは、処理ステーション3の基板搬送装置131によって受渡部122から取り出されて基板洗浄装置14へ搬入され、基板洗浄装置14によって基板洗浄処理が施される。洗浄後のウェハWは、基板搬送装置131により基板洗浄装置14から搬出されて受渡部122に載置された後、基板搬送装置121によってキャリアCに戻される。
<基板洗浄装置の構成>
次に、基板洗浄装置14の構成について図3を参照して説明する。図3は、第1の実施形態に係る基板洗浄装置14の構成を示す模式図である。
図3に示すように、基板洗浄装置14は、チャンバ20と、基板保持機構30と、液供給部40と、回収カップ50とを備える。
チャンバ20は、基板保持機構30と液供給部40と回収カップ50とを収容する。チャンバ20の天井部には、FFU(Fan Filter Unit)21が設けられる。FFU21は、チャンバ20内にダウンフローを形成する。
FFU21は、バルブ22を介してダウンフローガス供給源23に接続される。FFU21は、ダウンフローガス供給源23から供給されるダウンフローガス(たとえば、ドライエア)をチャンバ20内に吐出する。
基板保持機構30は、回転保持部31と、支柱部32と、駆動部33とを備える。回転保持部31は、チャンバ20の略中央に設けられる。回転保持部31の上面には、ウェハWを側面から保持する保持部材311が設けられる。ウェハWは、かかる保持部材311によって回転保持部31の上面からわずかに離間した状態で水平保持される。
支柱部32は、鉛直方向に延在する部材であり、基端部が駆動部33によって回転可能に支持され、先端部において回転保持部31を水平に支持する。駆動部33は、支柱部32を鉛直軸まわりに回転させる。
かかる基板保持機構30は、駆動部33を用いて支柱部32を回転させることによって支柱部32に支持された回転保持部31を回転させ、これにより、回転保持部31に保持されたウェハWを回転させる。
液供給部40は、基板保持機構30に保持されたウェハWに対して各種の処理液を供給する。かかる液供給部40は、ノズル41と、ノズル41を水平に支持するアーム42と、アーム42を旋回および昇降させる旋回昇降機構43とを備える。
ノズル41は、バルブ44a〜44dを介して、オゾン水供給源45a、トップコート液供給源45b、DIW供給源45cおよびアルカリ現像液供給源45dにそれぞれ接続される。なお、DIWは、常温(23〜25度程度)の純水である。本実施形態では、液供給部のノズル41は1つであるが、2つ以上のノズルを設けても良い。例えば、種別の異なる各処理液を個別に供給するために、4つのノズルを設けても良い。
液供給部40は、上記のように構成されており、オゾン水、トップコート液、DIWまたはアルカリ現像液をウェハWに対して供給する。
ここで、オゾン水は、ウェハWのパターン形成面を親水化する親水化処理液の一例である。なお、オゾン水に代えて、たとえば過酸化水素水を親水化処理液として使用してもよい。また、TARC(top anti-reflecting coat)等の親水膜の塗布や、アッシング(Ashing)、UV照射、一分子層の親水基付与等の他の手法を用いて親水化処理を行っても良い。
トップコート液は、ウェハW上にトップコート膜を形成するための成膜処理液の一例である。トップコート膜とは、レジストへの液浸液の浸み込みを防ぐためにレジストの上面に塗布される保護膜である。また、液浸液とは、たとえばリソグラフィ工程における液浸露光に用いられる液体である。
DIWは、トップコート膜をウェハWから剥離させる剥離処理液の一例である。なお、DIWは、後述する溶解処理液供給処理後のリンス処理においてリンス処理液としても用いられる。
アルカリ現像液は、トップコート膜を溶解させる溶解処理液の一例である。アルカリ現像液としては、たとえばアンモニア水、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH:Tetra Methyl Ammonium Hydroxide)等の4級水酸化アンモニウム水溶液、コリン水溶液、の少なくとも一つを含んでいればよい。
回収カップ50は、回転保持部31を取り囲むように配置され、回転保持部31の回転によってウェハWから飛散する処理液を捕集する。回収カップ50の底部には、排液口51が形成されており、回収カップ50によって捕集された処理液は、かかる排液口51から基板洗浄装置14の外部へ排出される。また、回収カップ50の底部には、FFU21から供給されるダウンフローガスを基板洗浄装置14の外部へ排出する排気口52が形成される。
<基板洗浄システムの具体的動作>
次に、基板洗浄装置14の具体的動作について図4を参照して説明する。図4は、第1の実施形態に係る基板洗浄システム1が実行する基板洗浄処理の処理手順を示すフローチャートである。
図4に示すように、基板洗浄装置14では、まず、基板搬入処理が行われる(ステップS101)。かかる基板搬入処理では、基板搬送装置131(図2参照)によってチャンバ20内に搬入されたウェハWが基板保持機構30の保持部材311により保持される。このときウェハWは、パターン形成面が上方を向いた状態で保持部材311に保持される。その後、駆動部33によって回転保持部31が回転する。これにより、ウェハWは、回転保持部31に水平保持された状態で回転保持部31とともに回転する。
つづいて、基板洗浄装置14では、親水化処理が行われる(ステップS102)。かかる親水化処理では、液供給部40のノズル41がウェハWの中央上方に位置する。その後、レジストが形成されていないウェハWのパターン形成面に対して、親水化処理液であるオゾン水が供給される。ウェハWへ供給されたオゾン水は、ウェハWの回転に伴う遠心力によってウェハWのパターン形成面に広がる。これにより、ウェハWのパターン形成面が親水化される。
なお、ウェハWのパターン形成面が既に親水性を有している場合には、上記の親水化処理を省略してもよい。
つづいて、基板洗浄装置14では、成膜処理液供給処理が行われる(ステップS103)。かかる成膜処理液供給処理では、レジストが形成されていないウェハWのパターン形成面に対して、成膜用処理液であるトップコート液が供給される。このように、トップコート液は、レジストを介することなくウェハW上に供給される。
ウェハWへ供給されたトップコート液は、ウェハWの回転に伴う遠心力によってウェハWの表面に広がる。そして、トップコート液が揮発成分の揮発に伴う体積収縮を起こしながら固化または硬化することによって、ウェハWのパターン形成面にトップコート液の液膜が形成される。
なお、トップコート液には、固化または硬化する際に体積が収縮する性質を有するアクリル樹脂が含まれている。これにより、揮発成分の揮発だけでなく、アクリル樹脂の硬化収縮によっても体積収縮が引き起こされるため、揮発成分のみを含む成膜処理液と比べて体積収縮率が大きく、パーティクルPを強力に引き離すことができる。特に、アクリル樹脂は、エポキシ樹脂等の他の樹脂と比較して体積収縮率が大きいため、パーティクルPに引っ張り力を与えるという点でトップコート液は有効である。
また、基板洗浄装置14は、ウェハWに対してトップコート液を供給する前に、たとえばMIBC(4−メチル−2−ペンタノール)等のトップコート液と親和性のある溶剤をウェハWに供給してもよい。これにより、ウェハWのパターン形成面の濡れ性が高まるため、ウェハWのパターン形成面にトップコート液を塗り広げ易くなる。したがって、トップコート液の使用量を削減することができるとともに、処理時間の短縮化を図ることができる。
つづいて、基板洗浄装置14では、乾燥処理が行われる(ステップS104)。かかる乾燥処理では、たとえばウェハWの回転速度を所定時間増加させることによってトップコート液を乾燥させる。これにより、トップコート液に含まれる揮発成分の揮発が促進し、トップコート液が固化または硬化して、ウェハWのパターン形成面にトップコート膜が形成される。
なお、ステップS104の乾燥処理は、たとえば、図示しない減圧装置によってチャンバ20内を減圧状態にする処理であってもよいし、FFU21から供給されるダウンフローガスによってチャンバ20内の湿度を低下させる処理であってもよい。これらの処理によっても、揮発成分の揮発を促進させることができる。
また、ここでは、揮発成分の揮発を促進させる場合の例について示したが、トップコート液が自然に固化または硬化するまでウェハWを基板洗浄装置14で待機させてもよい。また、ウェハWの回転を停止させたり、トップコート液が振り切られてウェハWの表面が露出することがない程度の回転数でウェハWを回転させたりすることによって、揮発成分の揮発を促進させてもよい。
つづいて、基板洗浄装置14では、剥離処理液供給処理が行われる(ステップS105)。かかる剥離処理液供給処理では、ウェハW上に形成されたトップコート膜に対して、剥離処理液であるDIWが供給される。トップコート膜へ供給されたDIWは、ウェハWの回転に伴う遠心力によってトップコート膜上に広がる。
DIWは、トップコート膜中に浸透してウェハWの界面に到達し、ステップS102の親水化処理によって親水化されたウェハWの界面(パターン形成面)に浸透して、トップコート膜をウェハWから剥離させる。これにより、ウェハWのパターン形成面に付着したパーティクルPがトップコート膜とともにウェハWから剥離される。
つづいて、基板洗浄装置14では、溶解処理液供給処理が行われる(ステップS106)。かかる溶解処理液供給処理では、ウェハWから剥離されたトップコート膜に対して溶解処理液であるアルカリ現像液が供給される。これにより、トップコート膜は溶解する。
なお、溶解処理液としてアルカリ現像液を用いた場合、ウェハWおよびパーティクルPに同一極性のゼータ電位を生じさせることができる。これにより、ウェハWとパーティクルPとが反発し合うようになるため、パーティクルPのウェハWへの再付着を防止することができる。
つづいて、基板洗浄装置14では、リンス処理が行われる(ステップS107)。かかるリンス処理では、回転するウェハWに対してDIWが供給されることにより、溶解したトップコート膜やアルカリ現像液中に浮遊するパーティクルPが、DIWとともにウェハWから除去される。
つづいて、基板洗浄装置14では、乾燥処理が行われる(ステップS108)。かかる乾燥処理では、たとえばウェハWの回転速度を所定時間増加させることによって、ウェハWの表面に残存するDIWを振り切ってウェハWを乾燥させる。その後、ウェハWの回転が停止する。
つづいて、基板洗浄装置14では、基板搬出処理が行われる(ステップS109)。かかる基板搬出処理では、基板搬送装置131(図2参照)によって、基板洗浄装置14のチャンバ20からウェハWが取り出される。その後、ウェハWは、受渡部122および基板搬送装置121を経由して、キャリア載置部11に載置されたキャリアCに収容される。かかる基板搬出処理が完了すると、1枚のウェハWについての基板洗浄処理が完了する。
<物理力を用いた洗浄方法との比較>
ここで、物理力を用いた洗浄方法である2流体洗浄と、第1の実施形態に係る基板洗浄方法(以下、「本洗浄方法」と記載する)との比較結果について図5Aおよび図5Bを参照して説明する。図5Aおよび図5Bは、本洗浄方法と2流体洗浄との比較結果を示す図である。
ここで、図5Aには、ベアシリコンウェハ上に各種粒径のSiO2パーティクルを付着させ、各洗浄方法によるパーティクル除去率の比較結果を示している。図5Bには、高さ0.5μm、幅0.5μmのパターンが1.0μm間隔で形成されたウェハに対して2流体洗浄と本洗浄方法とをそれぞれ行った場合における、各洗浄方法によるパーティクル除去率の比較結果を示している。
まず、図5Aを参照し、粒子径の小さいパーティクルPの除去性能について説明する。図5Aには、パーティクルPの粒子径が70nmである場合のパーティクル除去率の結果を左下がり斜線のハッチングで、100nmである場合の結果を網掛けのハッチングで、200nmである場合の結果を右下がり斜線のハッチングで示している。
図5Aに示すように、2流体洗浄のパーティクル除去率は、パーティクルPの粒子径が200nmの場合にはほぼ100%であったが、粒子径が100nmの場合には30%程度、粒子径が70nmの場合には5%程度と、粒子径が小さくなるに従って大幅に減少する結果となった。これにより、2流体洗浄では、粒子径の小さいパーティクルPを除去することが困難であることがわかる。
一方、本洗浄方法のパーティクル除去率は、パーティクルPの粒子径にかかわらず、90〜100%程度と高い値を示した。このように、本洗浄方法によれば、2流体洗浄では除去が困難であった粒子径の小さいパーティクルPを除去することが可能である。
つづいて、図5Bを参照し、パターンの隙間に入り込んだパーティクルPの除去性能について説明する。図5Bには、パーティクルPの粒径が200nmの場合において、それぞれ「ダメージ無し条件」および「ダメージ有り条件」の2つの条件で実施した場合における各洗浄方法のパーティクル除去率の結果を示している。
ここで、「ダメージ無し条件」とは、ウェハ上に厚さ2nmの熱酸化膜を形成するとともに、かかる熱酸化膜上に、高さ100nm、幅45nmのpoly−Siパターンを形成し、かかるpoly−Siパターンを倒壊させない所定の力で洗浄を行った条件のことである。また、「ダメージ有り条件」とは、上記のサンプルパターンを倒壊させる所定の力で洗浄を行った条件のことである。
なお、図5Bには、パターン無しウェハについてのパーティクル除去率を左下がり斜線のハッチングで示し、パターン有りウェハについてのパーティクル除去率を右下がり斜線のハッチングで示している。本洗浄方法については、サンプルパターンの倒壊が発生しなかった。このため、本洗浄方法については、「ダメージ無し条件」の結果のみを示す。
図5Bに示すように、パターン無しウェハに対する本洗浄方法、2流体洗浄(ダメージ無し条件)および2流体洗浄(ダメージ有り条件)のパーティクル除去率は、いずれも100%に近い値であり、両洗浄方法に大きな違いは見られなかった。
一方、パターン有りウェハに対する2流体洗浄のパーティクル除去率は、ダメージ無し条件で約17%程度、ダメージ有り条件でも約32%とパターン無しウェハと比べて大幅に減少した。このように、パターン有りウェハのパーティクル除去率がパターン無しウェハの場合と比べて大幅に減少したことから、2流体洗浄では、パターンの隙間に入り込んだパーティクルPが除去され難いことがわかる。
これに対し、本洗浄方法は、パターン有りウェハに対しても、パターン無しウェハの場合と同様、100%に近い値を示した。このように、パターン無しウェハとパターン有りウェハとで、パーティクル除去率にほとんど変化がなかったことから、本洗浄方法によって、パターンの隙間に入り込んだパーティクルPが適切に除去されたことがわかる。
このように、本洗浄方法によれば、2流体洗浄と比較して、パターンを倒壊させにくいばかりでなく、パターン間に入り込んだパーティクルPを適切に除去することができる。
<化学的作用を用いた洗浄方法との比較について>
次に、化学的作用を用いた洗浄方法であるSC1(アンモニア過水)による薬液洗浄と、本洗浄方法との比較について説明する。図6Aおよび図6Bは、本洗浄方法と薬液洗浄との比較結果を示す図である。図6Aにはパーティクル除去率の比較結果を、図6Bにはフィルムロスの比較結果をそれぞれ示している。フィルムロスとは、ウェハ上に形成された下地膜である熱酸化膜の侵食深さのことである。
なお、薬液洗浄については、アンモニア水と過酸化水素水と水とをそれぞれ1:2:40の割合で混合したSC1を使用し、温度60℃、供給時間600秒の条件で洗浄を行った。また、ウェハには、高さ0.5μm、幅0.5μmのパターンが1.0μm間隔で形成されたウェハを用いた。パーティクルPの粒径は、200nmである。
図6Aに示すように、薬液洗浄によるパーティクル除去率は、97.5%であり、本洗浄方法のパーティクル除去率(98.9%)と比べて僅かに低いものの、上述した2流体洗浄とは異なり、パターンの隙間に入り込んだパーティクルPが適切に除去されていることがわかる。
一方、図6Bに示すように、薬液洗浄を行った結果、7A(オングストローム)のフィルムロスが生じたが、本洗浄方法を行ってもフィルムロスは生じなかった。このように、本洗浄方法は、下地膜を侵食することなく、パターンの隙間に入り込んだパーティクルPを除去することが可能であることがわかる。
以上のように、本洗浄方法は、パターン倒れや下地膜の侵食を防止する等基板の表面に影響を与えることなく、粒子径の小さいパーティクルPやパターンの隙間に入り込んだパーティクルPを適切に除去することができるという点で、物理力を用いた洗浄方法や化学的作用を用いた洗浄方法よりも有効である。
上述してきたように、第1の実施形態に係る基板洗浄システム1は、成膜処理液供給部(液供給部40)と、剥離処理液供給部(液供給部40)と、溶解処理液供給部(液供給部40)を備える。成膜処理液供給部は、表面が親水性のウェハWに対し、揮発成分を含みウェハW上に膜を形成するための成膜処理液(トップコート液)を供給する。剥離処理液供給部は、揮発成分が揮発することによってウェハW上で固化または硬化した成膜処理液(トップコート膜)に対して該成膜処理液(トップコート膜)をウェハWから剥離させる剥離処理液(DIW)を供給する。そして、溶解処理液供給部は、固化または硬化した成膜処理液(トップコート膜)に対して該成膜処理液(トップコート膜)を溶解させる溶解処理液(アルカリ現像液)を供給する。
したがって、第1の実施形態に係る基板洗浄システム1によれば、基板の表面に影響を与えることなく、ウェハWに付着した粒子径の小さいパーティクルPを除去することができる。
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、剥離処理液として純水を用いる場合の例について説明したが、剥離処理液は、純水に限定されない。たとえば、溶解処理液として用いられるアルカリ現像液よりも低濃度のアルカリ現像液を剥離処理液として用いることとしてもよい。
図7は、第2の実施形態に係る基板洗浄装置の構成を示す模式図である。なお、以下の説明では、既に説明した部分と同様の部分については、既に説明した部分と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図7に示すように、第2の実施形態に係る基板洗浄装置14Aが備える液供給部40Aは、バルブ44e〜44hを介して、第1アルカリ現像液供給源45e、第2アルカリ現像液供給源45f、第3アルカリ現像液供給源45g、第4アルカリ現像液供給源45hにそれぞれ接続される。
第1アルカリ現像液供給源45eは、第1濃度(たとえば、0.1%)のアルカリ現像液を液供給部40Aへ供給し、第2アルカリ現像液供給源45fは、第2濃度(たとえば、0.5%)のアルカリ現像液を液供給部40Aへ供給する。また、第3アルカリ現像液供給源45gは、第3濃度(たとえば、1.0%)のアルカリ現像液を液供給部40Aへ供給し、第4アルカリ現像液供給源45hは、第4濃度(たとえば、2.38%)のアルカリ現像液を液供給部40Aへ供給する。本実施形態では、液供給部のノズル41は1つであるが、2つ以上のノズルを設けても良い。例えば、種別の異なる各処理液を個別に供給するために4つのノズルを設ける。その場合、濃度の異なる第1〜第4濃度のアルカリ現像液は、そのうちの1つのノズルを用いて、バルブ44e〜44hを切り替えることにより供給されるようにする。
次に、第2の実施形態に係る基板洗浄装置14Aの具体的動作について図8を参照して説明する。図8は、第2の実施形態に係る基板洗浄装置14Aが実行する基板洗浄処理の処理手順を示すフローチャートである。なお、図8には、剥離処理液供給処理および溶解処理液供給処理の処理手順のみを示している。その他の処理については、第1の実施形態に係る基板洗浄装置14が実行する基板洗浄処理と同様であるため、ここでの説明は省略する。
図8に示すように、基板洗浄装置14Aでは、剥離処理液として、まず、第1アルカリ現像液供給源45eから供給される第1濃度のアルカリ現像液を液供給部40AからウェハWへ供給する(ステップS201)。第1濃度のアルカリ現像液は、低濃度であるため、トップコート膜をほとんど溶解させることなく、ウェハWから剥離させることができる。このため、剥離処理液としてDIWを用いた場合と同様、パーティクルPは、トップコート膜とともにウェハWから剥離される。
つづいて、基板洗浄装置14Aでは、剥離処理液として、第2アルカリ現像液供給源45fから供給される第2濃度(>第1濃度)のアルカリ現像液を液供給部40AからウェハWへ供給する(ステップS202)。第2濃度のアルカリ現像液は、第1濃度のアルカリ現像液と比較して高濃度であるため、トップコート膜をわずかに溶解させながらウェハWからさらに剥離させる。
つづいて、基板洗浄装置14Aでは、溶解処理液として、第3アルカリ現像液供給源45gから供給される第3濃度(>第2濃度)のアルカリ現像液を液供給部40AからウェハWへ供給する(ステップS203)。第3濃度のアルカリ現像液は、第2濃度のアルカリ現像液よりもさらに高濃度であるため、ウェハWから剥離したトップコート膜を第2濃度のアルカリ現像液よりも高い溶解力で溶解させる。
さらに、基板洗浄装置14Aでは、溶解処理液として、第4アルカリ現像液供給源45hから供給される第4濃度(>第3濃度)のアルカリ現像液を液供給部40AからウェハWへ供給する(ステップS204)。第4濃度のアルカリ現像液は、第3濃度のアルカリ現像液よりもさらに高濃度であり、第3濃度のアルカリ現像液よりも高い溶解力でトップコート膜を溶解させる。
このように、溶解処理液供給処理において供給されるアルカリ現像液よりも低濃度のアルカリ現像液を剥離処理液としてトップコート膜に供給してもよい。かかる場合も、剥離処理液としてDIWを用いた場合と同様に、ウェハWからトップコート膜を剥離させることができる。
また、第2の実施形態に係る基板洗浄装置14Aでは、剥離処理液供給処理において供給するアルカリ現像液の濃度を、溶解処理液供給処理において供給されるアルカリ現像液の濃度を超えない範囲で低濃度から高濃度へ変化させることとした。これにより、トップコート膜の剥離と並行してトップコート膜の溶解も行うことができるため、基板洗浄処理に要する時間を短縮させることができる。
また、第2の実施形態に係る基板洗浄装置14Aでは、溶解処理液供給処理において、アルカリ現像液の濃度を低濃度から高濃度へ変化させることとした。このため、溶解処理液として高濃度のアルカリ現像液をいきなり供給した場合と比較して、トップコート膜のウェハWへの膜残りを防止することができる。
なお、ここでは、剥離処理液供給処理において、まず、第1濃度のアルカリ現像液をトップコート膜に供給することとしたが、第1濃度のアルカリ現像液を供給する前に、DIWを供給してもよい。
また、ここでは、剥離処理液供給処理および溶解処理液供給処理において、アルカリ現像液の供給を2段階で行うこととしたが、剥離処理液供給処理および溶解処理液供給処理は、アルカリ現像液の供給を3段階以上で行ってもよい。また、剥離処理液供給処理および溶解処理液供給処理のいずれか一方のアルカリ現像液の供給を1段階で行ってもよい。
また、ここでは、液供給部40Aが、各濃度のアルカリ現像液を供給する複数の供給源(第1アルカリ現像液供給源45e〜第4アルカリ現像液供給源45h)に接続される場合の例について説明したが、液供給部40Aは、たとえば第4濃度のアルカリ現像液を供給する第4アルカリ現像液供給源45hにのみ接続される構成としてもよい。
かかる場合、基板洗浄装置14Aは、第4濃度のアルカリ現像液とDIWとをノズル41から同時に供給することで、第4濃度のアルカリ現像液よりも低濃度のアルカリ現像液をウェハWに供給することができる。基板洗浄装置14Aは、DIWの流量を調整することで、第1濃度〜第4濃度のアルカリ現像液をウェハWに供給することが可能である。
また、ここでは、剥離処理液および溶解処理液に各濃度のアルカリ現像液を用いることとしたが、各濃度のIPA水溶液(IPAと純水の混合液)を用いてもよい。この場合、剥離処理液供給処理では低濃度IPAの水溶液と、溶解処理液供給処理では高濃度IPAの水溶液と、を段階的に供給する。
(第3の実施形態)
上述した各実施形態では、トップコート液やアルカリ現像液といった複数の処理液を1つのアームのノズル41から供給する場合の例について説明したが、基板洗浄装置は、複数のアームにノズルを備えていてもよい。以下では、基板洗浄装置が複数のアームにノズルを備える場合の例について図9を参照して説明する。図9は、第3の実施形態に係る基板洗浄装置の構成を示す模式図である。
図9に示すように、第3の実施形態に係る基板洗浄装置14Bは、第1液供給部40Bと、第2液供給部40Cとを備える。
第1液供給部40Bは、ノズル41aと、ノズル41aを水平に支持するアーム42aと、アーム42aを旋回および昇降させる旋回昇降機構43bとを備える。同様に、第2液供給部40Cは、ノズル41bと、ノズル41bを水平に支持するアーム42bと、アーム42bを旋回および昇降させる旋回昇降機構43cとを備える。
そして、第1液供給部40Bが備えるノズル41aは、バルブ44a,44cを介してオゾン水供給源45aとDIW供給源45cとに接続され、第2液供給部40Cが備えるノズル41bは、バルブ44b,44dを介してトップコート液供給源45bとアルカリ現像液供給源45dに接続される。
このように、基板洗浄装置14Bは、オゾン水、トップコート液、DIWおよびアルカリ現像液を複数のアームのノズル41a,41bに分けて供給してもよい。
ここで、第2の実施形態に係る基板洗浄装置14Bのように、アルカリ現像液の濃度を変化させる場合には、第1液供給部40Bが備えるノズル41aからDIWを供給しながら、第2液供給部40Cが備えるノズル41bからアルカリ現像液を供給すればよい。かかる場合、ウェハW上でアルカリ現像液とDIWとが混合され、ウェハW上で低濃度のアルカリ現像液が生成される。
なお、ここでは、基板洗浄装置14Bが2つの液供給部(第1液供給部40Bおよび第2液供給部40C)を備えることとしたが、1つの液供給部に対して複数のノズルを設けてもよい。
(第4の実施形態)
ところで、剥離処理液として常温の純水を用いると、ウェハ表面の下地膜の種類によっては、トップコート膜を十分に剥離させることができず、十分なパーティクル除去性能を得られない場合がある。たとえば、ウェハ表面にSiN(窒化シリコン)の膜が形成されたSiNウェハを処理対象とする場合に剥離処理液として常温の純水を用いると、トップコート膜が十分に剥離されないことがわかった。第4の実施形態では、この点への対策として、加熱された純水を剥離処理液として用いる場合の例について説明する。
まず、ベアシリコンウェハ上のトップコート膜の剥離性について図10を参照して説明する。図10は、ベアシリコンウェハ上のトップコート膜に対して常温の純水を供給した場合における膜厚の変化を示す図である。
ここで、図10に示すグラフの横軸は、ベアシリコンウェハ上の位置(ウェハ径)を示しており、直径150mmのベアシリコンウェハの中心位置を0とし、両端位置をそれぞれ−150,150としている。また、図10に示すグラフの縦軸は、トップコート膜の膜厚を示しており、その値は、トップコート膜を形成した後の膜厚に対する各膜厚の比率を示している。図10では、トップコート膜を形成する前の膜厚を実線L1で、トップコート膜を形成した後の膜厚を破線L2で、常温の純水を供給した後の膜厚を一点鎖線L3でそれぞれ示している。ここで、常温の純水(以下、「CDIW」と記載する)とは、例えば23℃の純水のことをいう。
図10に示すように、CDIWを供給した後の膜厚(一点鎖線L3)は、トップコート膜を形成する前の膜厚(実線L1)とほぼ一致する。つまり、ベアシリコンウェハ上に形成されるトップコート膜は、CDIWにより良好に剥離される。
つづいて、SiNウェハ上のトップコート膜の剥離性について図11および図12を参照して説明する。図11は、SiNウェハ上のトップコート膜に対して常温の純水を供給した場合における膜厚の変化を示す図である。また、図12は、SiNウェハ上のトップコート膜に対して加熱された純水を供給した場合における膜厚の変化を示す図である。
図11では、トップコート膜を形成する前の膜厚を実線L4で、トップコート膜を形成した後の膜厚を破線L5で、常温の純水を供給した後の膜厚を一点鎖線L6でそれぞれ示している。また、図12では、上記L4およびL5に加え、加熱された純水を供給した後のSiNウェハの膜厚を二点鎖線L7で示している。ここで、加熱された純水(以下、「HDIW」と記載する)とは、例えば75℃に加熱された純水のことをいう。また、ここで、SiNウェハは、例えばベアシリコンウェハの表面にSiN膜を形成したウェハのことをいう。
図11に示すように、CDIWを供給した後の膜厚(一点鎖線L6)は、SiNウェハの外周部分のみ、トップコート膜を形成する前のSiNウェハの膜厚(実線L4)とほぼ一致する。つまり、SiNウェハを処理対象とする場合に剥離処理液としてCDIWを用いると、SiNウェハ上にトップコート膜が残存してしまう。
このように、SiNウェハを処理対象とする場合、ベアシリコンウェハを処理対象とする場合と比較してトップコート膜の剥離性が低下する。この原因の一つとしては、トップコート膜がSiN膜と化学的に結合することにより、トップコート膜とSiNウェハとの界面に純水が到達し難くなることが考えられる。なお、SiNウェハの外周部分においてトップコート膜の剥離が見られるのは、SiNウェハのベベル部とトップコート膜との界面から純水が侵入するためであると考えられる。
一方、図12に示すように、HDIWを供給した後のSiNウェハの膜厚(二点鎖線L7)は、剥離処理液としてCDIWを用いた場合(一点鎖線L6、図11参照)と比較して、トップコート膜を形成する前のSiNウェハの膜厚(実線L4)と一致する部分が増える。つまり、剥離処理液としてHDIWを用いることで、CDIWを用いる場合と比較して、トップコート膜の剥離性が向上する。
このように、SiNウェハを処理対象とする場合、剥離処理液としてHDIWを用いることにより、トップコート膜の剥離性を向上させることができる。
しかしながら、図12に示すように、剥離処理液としてHDIWを用いた場合でも、SiNウェハにはトップコート膜の残存が見られる。特に、SiNウェハの中央部分は、外周部分と比べて多くのトップコート膜が残存する。そこで、トップコート膜の剥離性をさらに向上させるためのHDIWの供給方法の例について以下に説明する。
図13は、第4の実施形態に係る基板洗浄装置の構成を示す模式図である。図13に示すように、第4の実施形態に係る基板洗浄装置14Cは、液供給部40Dを備える。液供給部40Dは、バルブ44i及びヒーター46iを介して剥離処理用DIW供給源45iに接続される。また、液供給部40Dは、バルブ44j及びヒーター46jを介してリンス処理用DIW供給源45jに接続される。
剥離処理用DIW供給源45iから供給されるDIWは、剥離処理に用いられる常温の純水である。ここでは、剥離処理用DIW供給源45iから供給された常温の純水がヒーター46iにより75℃に加熱され、加熱された純水(HDIW)がバルブ44iを介して供給されるものとする。また、リンス処理用DIW供給源45jから供給されるDIWは、リンス処理に用いられる常温の純水である。ここでは、リンス処理用DIW供給源45jから供給された常温の純水がヒーター46jにより75℃よりも低い温度、例えば50℃に加熱され、加熱された純水(HDIW)がバルブ44jを介して供給されるものとする。
このように、基板洗浄装置14Cは、リンス処理用のDIWを供給するリンス処理用DIW供給源45jとは別に、剥離処理液用のDIWを供給する剥離処理用DIW供給源45iを備える。ここでは、ヒーター46i及び46jにより過熱された剥離処理用のHDIWとリンス処理用のHDIWとを単一のノズル41から吐出する場合の例を示すが、基板洗浄装置14Cは、剥離処理用のHDIWを吐出するノズルと、リンス処理用のHDIWを吐出するノズルとをそれぞれ備えてもよい。
なお、剥離処理用のHDIWの温度とリンス処理用のHDIWの温度とは、同一でもよい。また、リンス処理は、HDIWではなくCDIWを用いて行われてもよい。
次に、上記の基板洗浄装置14Cを用いた剥離処理液供給処理の動作例について図14を参照して説明する。図14は、第4の実施形態に係る剥離処理液供給処理の動作例を示す図である。
図14に示すように、基板洗浄装置14Cは、旋回昇降機構43を用いてノズル41をSiNウェハW’の中心部から外周部へ向けて移動させつつ、SiNウェハW’上のトップコート膜にHDIWを供給する。
このように、液供給部40D(「剥離処理液供給部」の一例に相当)は、HDIWを供給するノズル41と、ノズル41を移動させる旋回昇降機構43(「移動機構」の一例に相当)とを備える。そして、基板洗浄装置14Cは、旋回昇降機構43を用いてノズル41を移動させつつ、ノズル41からトップコート膜に対してHDIWを供給する。
このようなスキャン動作を行うと、トップコート膜に衝撃が加わってトップコート膜とSiN膜との結合が弱まることとなる。これにより、トップコート膜とSiNウェハW’との界面にHDIWが到達し易くなるため、トップコート膜の剥離性を向上させることができる。
なお、第4の実施形態において「衝撃」とは、パターンを倒壊させない所定の力の衝撃である。したがって、第4の実施形態に記載の剥離処理を行ったとしても、パターン倒壊が生じるおそれはない。
ここで、基板洗浄装置14Cは、ノズル41をSiNウェハW’の中心部から最外周部までスキャンさせてもよいが、たとえば、トップコート膜の残存が多く見られるSiNウェハW’の中央部分を含む残存領域201のみスキャンさせてもよい。これにより、剥離処理供給処理の処理時間を短縮することができる。なお、残存領域201の範囲は、図11に示すグラフに基づいて決定することができる。たとえば、残存領域201は、−85〜85mmの範囲とすることができる。
また、基板洗浄装置14Cは、トップコート膜の剥離が良好なSiNウェハW’の外周部を含む剥離領域202と、残存領域201とで、ノズル41のスキャン速度を異ならせてもよい。たとえば、基板洗浄装置14Cは、剥離領域202におけるノズル41のスキャン速度と比較して、残存領域201におけるノズル41のスキャン速度を高くしてもよい。スキャン速度を高くすることで、単位時間あたりにトップコート膜に衝撃を与える回数が増すため、残存領域201におけるトップコート膜の剥離性をさらに向上させることができる。
なお、ここでは、SiNウェハW’の中心部から外周部へ向けてノズル41を移動させることとしたが、基板洗浄装置14Cは、SiNウェハW’の外周部から中心部へ向けてノズル41を移動させてもよい。
また、HDIWを供給している間、他の処理を行っている期間よりも、ウェハWの回転速度を高速に制御するようにしてもよい。例えば、成膜処理液供給処理を行っている間は、1000回転/分とする一方で、HDIWを供給している間は1500回転/分とすることができる。これにより、剥離された処理膜が迅速にウェハW上から振り切られて、HDIWが剥離されていない処理膜に浸透しやすくなるので、剥離処理が促進されるようになる。
次に、第4の実施形態に係る剥離処理液供給処理の第1変形例について図15を参照して説明する。図15は、第4の実施形態における第1変形例に係る剥離処理液供給処理の動作例を示す図である。
図15に示すように、剥離処理液供給処理をバーノズル41cを用いて行ってもよい。バーノズル41cは、たとえばSiNウェハW’の径方向に延在する棒状のノズルであり、下部に複数(ここでは、4つ)の吐出口41c1〜41c4を備える。吐出口41c1〜41c4は、たとえば同一の口径を有し、バーノズル41cの長手方向に沿って所定の間隔をあけて並べて配置される。このバーノズル41cは、たとえばアーム42(図13参照)に支持される。
バーノズル41cが備える吐出口41c1〜41c4のうち、吐出口41c1,41c2は、SiNウェハW’の残存領域201と対向する位置に配置され、吐出口41c3,41c4は剥離領域202と対向する位置に配置される。また、吐出口41c1,41c2には、バルブ44kを介して第1のHDIW供給源45kが接続され、吐出口41c3,41c4には、バルブ44lを介して第2のHDIW供給源45lが接続される。なお、吐出口41c1,41c2は、バルブ44kおよび第1のヒーターを介して第1のDIW供給源に接続されてもよい。同様に、吐出口41c3,41c4は、バルブ44lおよび第2のヒーターを介して第2のDIW供給源に接続されてもよい。
上記のように構成されたバーノズル41cは、第1のHDIW供給源45kから供給されるHDIWを吐出口41c1,41c2からSiNウェハW’の残存領域201へ供給する。また、バーノズル41cは、第2のHDIW供給源45lから供給されるHDIWを吐出口41c3,41c4からSiNウェハW’の剥離領域202へ供給する。
ここで、バーノズル41cでは、第1のHDIW供給源45kから吐出口41c1,41c2へ供給されるHDIWの流量を、第2のHDIW供給源45lから吐出口41c3,41c4へ供給されるHDIWの流量よりも多くしている。このため、吐出口41c1,41c2から残存領域201へ供給されるHDIWの流速は、吐出口41c3,41c4から剥離領域202へ供給されるHDIWの流速よりも高くなる。これにより、剥離領域202のトップコート膜と比較して、残存領域201のトップコート膜により強い衝撃が加えられることとなるため、残存領域201におけるトップコート膜の剥離性を向上させることができる。
このように、液供給部40D(「剥離処理液供給部」の一例に相当)は、SiNウェハW’の径方向に沿って所定の間隔をあけて並べて配置される複数の吐出口41c1〜41c4を有するバーノズル41cを備える。そして、液供給部40Dは、SiNウェハW’の外周部分を含む剥離領域202と対向する吐出口41c3,41c4から吐出されるHDIWの流速と比較して、SiNウェハW’の中央部分を含む残存領域201と対向する吐出口41c1,41c2から吐出されるHDIWの流速を高くした。このため、残存領域201におけるトップコート膜の剥離性を向上させることができる。
なお、ここでは、吐出口41c1〜41c4を同一口径とし、吐出口41c1,41c2へ供給されるHDIWの流量を吐出口41c3,41c4へ供給されるHDIWの流量よりも多くすることとした。しかし、これに限らず、吐出口41c1〜41c4へ供給されるHDIWの流量を同一とし、吐出口41c1,41c2の口径を吐出口41c3,41c4の口径よりも小さくしてもよい。この場合でも、吐出口41c1,41c2から残存領域201へ供給されるHDIWの流速を吐出口41c3,41c4から剥離領域202へ供給されるHDIWの流速よりも高くすることができる。
次に、第4の実施形態に係る剥離処理液供給処理の第2変形例について図16を参照して説明する。図16は、第4の実施形態における第2変形例に係る剥離処理液供給処理の動作例を示す図である。
図16に示すように、第2変形例に係るノズル41dは、2流体ノズルであり、バルブ44mを介してHDIW供給源45mと接続されるとともに、バルブ44nを介してガス供給源45nと接続される。ガス供給源45nからは、たとえば窒素などの不活性ガスが供給される。なお、ノズル41dは、たとえば図13に示すノズル41とは別体にアーム42に設けられてもよいし、ノズル41の代わりにアーム42に設けられてもよい。また、ノズル41dは、バルブ44mおよびヒーターを介してDIW供給源に接続されてもよい。
ノズル41dへ供給されたHDIWおよび不活性ガスは、ノズル41d内で混合され、ノズル41dからSiNウェハW’上のトップコート膜へ供給される。このように、剥離処理液供給処理に2流体ノズルであるノズル41dを用いることで、ノズル41dから吐出される混合流体によりトップコート膜に衝撃を与えることができ、トップコート膜の剥離性を向上させることができる。
ここで、2流体ノズルであるノズル41dを用いた剥離処理液供給処理の具体的な動作について図17を参照して説明する。図17は、第4の実施形態における第2変形例に係る剥離処理液供給処理の処理手順を示すフローチャートである。
図17に示すように、第2変形例に係る剥離処理液供給処理では、まず、2流体スキャン処理を行い(ステップS301)、その後、HDIWスキャン処理を行う(ステップS302)。2流体スキャン処理は、ノズル41dをSiNウェハW’の中心部から外周部へ向けて移動させつつ、ノズル41dからSiNウェハW’上のトップコート膜に対し、HDIWおよび不活性ガスの混合流体を供給する処理である。また、HDIWスキャン処理は、ノズル41dをSiNウェハW’の中心部から外周部へ向けて移動させつつ、ノズル41dからSiNウェハW’上のトップコート膜に対し、HDIWのみを供給する処理である。
2流体スキャン処理は、SiNウェハW’上のトップコート膜に与える衝撃が比較的強いため、パターン倒壊が懸念される。そこで、第2変形例に係る剥離処理液供給処理では、2流体スキャン処理を短時間行った後に、HDIWスキャン処理を行うこととした。これにより、パターン倒壊を防止しつつ、トップコート膜の剥離性を高めることができる。なお、2流体スキャン処理の処理時間は、HDIWスキャン処理の処理時間よりも短く設定される。また、トップコート膜にHDIWが十分に侵入するが膜自体の剥離は始まらない程度の時間とする。
このように、液供給部40D(「剥離処理液供給部」の一例に相当)は、2流体ノズルであるノズル41dを備える。そして、液供給部40Dは、ノズル41dからトップコート膜に対して混合流体を供給した後、ノズル41dからトップコート膜に対してHDIWを供給する。これにより、トップコート膜の剥離性を高めることができる。
なお、2流体スキャン処理およびHDIWスキャン処理は、残存領域201に対してのみ行ってもよい。また、2流体スキャン処理を残存領域201に対してのみ行い、HDIWスキャン処理を残存領域201および剥離領域202の両方に対して行ってもよい。また、これとは逆に、2流体スキャン処理を残存領域201および剥離領域202の両方に対して行い、HDIWスキャン処理を残存領域201に対してのみ行ってもよい。
また、2流体スキャン処理による衝撃を抑えるために、2流体スキャン処理におけるノズル41dとSiNウェハW’との間隔を、HDIWスキャン処理におけるノズル41dとSiNウェハW’との間隔よりも大きくしてもよい。
また、ここでは、ノズル41dが、HDIWおよび不活性ガスの混合流体を吐出する場合の例について示したが、ノズル41dから吐出される混合流体は、HDIW以外の液体と不活性ガス以外の気体との混合流体であってもよい。
第4の実施形態では、処理対象のウェハとしてSiNウェハW’を例に挙げて説明したが、SiNウェハW’以外のウェハを処理対象とする場合にも、剥離処理液として加熱された純水を用いることで、剥離性を向上させることが可能である。
(その他の実施形態)
上述してきた第1〜第4の実施形態では、成膜処理液供給処理と溶解処理液供給処理とを同一チャンバ内で行うこととしたが、成膜処理液供給処理と溶解処理液供給処理とは、別チャンバで行うこととしてもよい。かかる場合、たとえば図4に示すステップS101(基板搬入処理)〜S104(乾燥処理)を行う第1の基板洗浄装置と、図4に示すステップS105(剥離処理液供給処理)〜S109(基板搬出処理)を行う第2の基板洗浄装置とを図2に示す処理ステーション3に配置すればよい。また、剥離処理液供給処理と溶解処理液供給処理とを別チャンバで行ってもよい。なお、第1の基板洗浄装置を別の処理ステーションに設け、成膜処理液供給処理が施された後のウェハWをキャリア載置部11に置き、処理ステーション3の第2の基板洗浄装置において溶解処理液供給処理を行うようにしても良い。
また、上述してきた第1および第3の実施形態では、液体状のDIWを剥離処理液として用いる場合の例について説明したが、剥離処理液は、ミスト状のDIWであってもよい。
また、上述してきた各実施形態では、ノズルを用いることによって、DIWをトップコート膜に直接供給する場合の例について説明したが、たとえば加湿装置などを用いてチャンバ内の湿度を高めることによって、トップコート膜に対してDIWを間接的に供給するようにしてもよい。
また、上述してきた各実施形態では、成膜処理液としてトップコート液を用いるとともに、剥離処理液としてDIWあるいは低濃度のアルカリ現像液を用いる場合の例について説明した。しかし、ウェハW上に形成された処理膜を溶解させることなく(あるいは、溶解させる前に)剥離させるプロセスが実行可能な組合せであれば、成膜処理液および剥離処理液の組合せは問わない。例えば、剥離処理液は、CO2水(CO2ガスが混合されたDIW)、酸またはアルカリ性の水溶液、界面活性剤添加水溶液、HFE(ハイドロフルオロエーテル)等のフッ素系溶剤、希釈IPA(純水で希釈されたIPA:イソプロピルアルコール)、の少なくとも一つを含んでいればよい。
また、基板洗浄装置は、成膜処理液としてトップコート液を用いる場合に、成膜処理液供給処理を行う前に、トップコート液と親和性のある溶剤として、たとえばMIBC(4−メチル−2−ペンタノール)をウェハWに対して供給することとしてもよい。MIBCは、トップコート液に含有されており、トップコート液と親和性がある。なお、MIBC以外のトップコート液と親和性のある溶剤としては、たとえばPGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)などを用いてもよい。
このように、トップコート液と親和性のあるMIBCを事前にウェハWに塗り広げておくことで、後述する成膜処理液供給処理において、トップコート液がウェハWの上面に広がり易くなるとともに、パターンの隙間にも入り込み易くなる。したがって、トップコート液の使用量を削減することができるとともに、パターンの隙間に入り込んだパーティクルPをより確実に除去することが可能となる。また、成膜処理液供給処理の処理時間の短縮化を図ることもできる。
また、上述してきた各実施形態では、溶解処理液供給処理としてアルカリ現像液を用いた場合の例について説明してきたが、溶解処理液は、アルカリ現像液に過酸化水素水を加えたものであってもよい。このように、アルカリ現像液に過酸化水素水を加えることによって、アルカリ現像液によるウェハ表面の面荒れを抑制することができる。
また、溶解処理液は、MIBC(4−メチル−2−ペンタノール)、シンナー、トルエン、酢酸エステル類、アルコール類、グリコール類(プロピレングリコールモノメチルエーテル)等の有機溶剤であってもよいし、酢酸、蟻酸、ヒドロキシ酢酸等の酸性現像液であってもよい。
さらに、溶解処理液は、界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤には表面張力を弱める働きがあるため、パーティクルPのウェハW等への再付着を抑制することができる。また、除去対象の不要物としてはパーティクルに限らず、例えばドライエッチング後またはアッシング後に基板上に残存するポリマー等の他の物質でも良い。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。