JP6546791B2 - 光電変換装置 - Google Patents

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Description

本発明は、光電変換装置、特に、中間準位を有するワイドギャップ半導体を用いた光電変換装置に適用して有効な技術である。
III族窒化物半導体は、ワイドギャップ半導体であり、次世代の光学素子やパワーデバイスへの応用が期待されている。これまでIII族窒化物半導体としては、例えば、AlN、GaN、InNを中心に研究開発が進められてきた。さらに、GaNを中心にInGaNやA1GaNといった混晶についての研究開発も進められている。
このような、III族窒化物半導体の中でも、BNについては、基礎研究の初期段階に位置しており、基本的な物性も明確ではない。
例えば、特許文献1(特開2010−80761号公報)には、バンドギャップ幅において1.5eV以上のワイドバンドを有し、ギャップ中に不純物準位とは異なる中間準位を形成したカルコパイライト構造を持つワイドバンド化合物をp型半導体として用いた太陽電池が開示されている。
また、特許文献2(特表2013−504877号公報)には、希薄III−V窒化物材料をベースとしたpn接合と、接触遮断層と、を含む、中間バンド太陽電池が開示されている。
また、特許文献3(国際公開第2011/115171号)には、Al1−yGaN(0≦y≦1)で表される化合物半導体のAlおよび/またはGaの一部が3d遷移金属で置換された窒化物系化合物半導体を用いた光電変換素子が開示されている。
また、特許文献4(国際公開第2010/095681号)には、Gaの一部が3d遷移金属で置換されたGaN系化合物半導体を用いた光電変換素子が開示されている。
特開2010−80761号公報 特表2013−504877号公報 国際公開第2011/115171号 国際公開第2010/095681号
前述したように、III族窒化物でありながらBNは、GaNなどの他の半導体とは異なる扱いを受けてきた。その原因としては、(a)BNの常圧安定相の結晶構造が他の窒化物半導体と異なること、(b)結晶合成が困難なことなどが挙げられる。
しかしながら、BNの半導体としての物理特性はGaN以上であり、究極のデバイス材料と言われるダイヤモンドと類似の性質を有している。
現在のところBNはまだ基礎研究の初期段階に位置しており、基本的な物性も明確ではない。そのため、その先となるデバイス応用に関する展望に乏しい状況である。
そこで、BNの物性を明らかにすることが望まれる。また、BNの物性に基づき、その有用な利用形態を見出すことが望まれる。
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
本願において開示される発明のうち、代表的な実施の形態に示される光電変換装置は、4eV以上バンドギャップを有する半導体を有する光電変換装置であって、上記半導体は、3d遷移金属を含有し、価電子帯と伝導帯との間に少なくとも1つ以上の中間準位が形成されている。上記半導体は、BNを有する。上記半導体は、B1−yN(0≦y≦1)で表される。上記3d遷移金属は、上記半導体のBの一部と置換されている。上記3d遷移金属は、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、NiおよびCuからなる群から選択された少なくとも1種である。
また、本願において開示される発明のうち、代表的な実施の形態に示される光電変換装置は、4eV以上バンドギャップを有する半導体を有する光電変換装置であって、上記半導体は、3d遷移金属を含有し、価電子帯と伝導帯との間に少なくとも1つ以上の中間準位が形成され、上記半導体は、III族窒化物半導体であり、III族元素として、Bと、B以外のIII族元素とを有する。上記3d遷移金属は、上記半導体のBまたはB以外のIII族元素の一部と置換されている。上記3d遷移金属は、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、NiおよびCuからなる群から選択された少なくとも1種である。
本願において開示される発明のうち、以下に示す代表的な実施の形態に示される光電変換装置によれば、その特性を向上させることができる。
BNの結晶構造を示す図である。 III族窒化物半導体のバンドギャップエネルギーと格子定数の関係を示す図である。 BNの各結晶構造に基づくスーパーセルの様子を示す図である。 自己無撞着場(Self Consistent Field;SCF)計算後のBNの各結晶構造における電荷密度分布を示す図である。 c−BNの全状態密度図である。 c−BNの部分状態密度図である。 w−BNの全状態密度図である。 w−BNの部分状態密度図である。 h−BNの全状態密度図である。 h−BNの部分状態密度図である。 構造最適化の初期状態のc−BNを示す図である。 構造最適化の終了時のスーパーセルを示す図である。 c−BNに各遷移金属元素を導入した後に形成される準位を示す図である。 c−BNにZnを導入した場合のDOS図である。 c−BNのバンドギャップ中に2つ以上の準位ができる場合のDOS図である。 w−BNに各遷移金属元素を導入した後に形成される準位を示す図である。 h−BNに各遷移金属元素を導入した後に形成される準位を示す図である。 w−BNに対して行ったTB−mBJによる補正例を示す図である。 Niをドープしたc−BNのDOS図である。 立方晶系の結晶構造のBN(c−BN)に、Niを導入した半導体を示す図である。 実施の形態2の太陽電池の一例を示す断面図である。 実施の形態2の太陽電池の他の例を示す断面図である。
まず、実施の形態を説明する前に、本発明者が検討したIII族窒化物半導体の有用性について説明する。
(III族窒化物半導体について)
III族窒化物半導体は窒化ガリウム(GaN)を筆頭に、発光素子やパワーデバイス応用に対する高いポテンシャルを秘めた材料として知られている。このIII族窒化物半導体は広い禁止帯幅(バンドギャップ)を有し、化学的結合も強固で安定、かつ人体に危険な元素を含まないという点で優秀な材料である。既に、GaNベースのデバイスは青色発光ダイオード(LED)やパワーデバイスなどで既に製品化されている。その一方で、同じIII族窒化物半導体である、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)、窒化ホウ素(BN)は、GaNに比べて研究開発が大幅に遅れている。この3つの中でも、AlNとInNは、GaNとの混晶、例えばAlGaN、InGaNなどとして、使用されるケースが多いことから、混晶としての研究開発が進んでいる。これに対し、BNの場合は、混晶の研究例も少ない。この原因としてAlN、GaN、InNは、共に結晶構造が同じ六方晶系のウルツ鉱構造であるのに対し、BNは安定構造がグラファイト状の六方晶の構造を取ることが挙げられる。図1は、BNの結晶構造を示す図である。(a)は、立方晶系の結晶構造(c−BN)、(b)は、ウルツ鉱構造の結晶構造(w−BN)、(c)六方晶系の結晶構造(h−BN)である。h−BN(hexagonal−BN)は常圧安定層であり、c−BN(cubic−BN)は高圧安定層であり、w−BN(wurtzite−BN)は準安定層である。
このように、常圧安定状態の結晶構造の違いから、原理的にはIII族窒化物半導体同士で混晶を作製することが可能であるにもかかわらず、BNとGaN等との混晶ではどのような結晶構造になるか判断し難い。
図2は、III族窒化物半導体のバンドギャップエネルギーと格子定数の関係を示す図である。縦軸は、バンドギャップエネルギー(Band gap energy、(eV))を示し、横軸は、格子定数(Lattice constant a(nm))を示す。
AlN、GaN、InNとの間では、前述したように混晶が研究され、バンドギャップエンジニアリングが行われている。図2において、AlN、GaN、InNの各点を結んだ三角形が描かれる。バンドギャップエンジニアリングとは、目的とするバンドギャップを持った材料を利用することで、高い性能を持った素子や装置を得ようとするものである。図2中のAlN、h−BN、w−BNの各点を結んだ三角形は、混晶の可能性、バンドギャップエンジニアリングへの寄与が期待されるものである。
これに対して、BNは、他のIII族窒化物とは別物として扱われてきた。これは先に述べたBNの結晶構造の相違に起因することも大きいが、BNは(i)バンドギャップ等の基礎物性が明確で無い、(ii)格子定数が他の窒化物と大きく異なる、(iii)エピタキシャル成長が難しい等の理由がある。しかしながら、BNはダイヤモンドに近い物性を示す。このため、BNを用いた装置は、超高耐圧、超高温環境下などの極限状態で使用可能なデバイス材料としての活用が期待できる。
このようにBNは、次世代のデバイス材料としての候補でありながら、基本的な物性値であるバンドギャップの報告値でさえも、3.6〜7.1eVの範囲にある。このように現時点において、基本的な物性が明確で無いBNについて、その物性やその有用な利用形態を見出すには計算機シミュレーションによるアプローチが有効である。特に、第一原理計算と呼ばれる手法では、経験的なパラメタを用いずに物質の電子状態を計算することから、外因的影響を排したBNが持つ真性の値を推定することが可能である。
さらに、半導体デバイス開発には材料そのものの結晶品質の高さの他、不純物(導入元素、ドーパント)の探索や制御も重要である。
BNデバイス実現のためにはまず、(i)BNの真性のバンドギャップや電子構造を知ること、(ii)不純物(導入元素、ドーパント)として有効な元素を決定することが重要となる。そこで、以下において、広いギャップを特徴とするBNのバンドギャップ中に深い準位を形成する元素の決定について説明する。特に、BNのバンドギャップ中に中間準位を形成する元素の決定について説明する。ここで、中間バンド(例えば、人間の可視光領域に相当する1.9〜3.1eVという値)は、中間準位からBNの価電子帯および伝導帯のいずれかまでの距離として定義する。元素としては、遷移金属元素の10種類(Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn)に着眼し、c−BN、w−BN、h−BNの各種構造に導入し、その効果を検討した。これらの遷移金属元素を設定した理由は、GaNで遷移金属をドープすることにより中間バンドの形成が報告されていること、希土類等に比べて安価であることが挙げられる。遷移金属とは、周期表で第3族元素から第11族元素の間に存在する金属元素をいい、中でも、上記10種の金属は、3d軌道を有し、3d遷移金属(第1遷移金属)と呼ばれる。
(実施の形態1)
<計算手法>
計算手法としては、密度汎関数理論(Density Functional Theory;DFT)に基づく第一原理計算を用いる。これによりBNの電子状態を計算し、バンドギャップ中に不純物準位を形成する元素を見出す。DFTは、Hohenberg−Kohn(H−K)の定理とKohn−Sham(K−S)方程式の2つが基本となる。
DFTでは、多電子系の電子状態を、電子の軌道で計算するのではなく、ある電子密度を再現する汎関数で取り扱う。これにより、比較的大規模な電子状態が取り扱えることになる。このDFT計算も大きく分けて、全電子計算法(Full Linearlized Augument Plane Wave;FLAPW)と擬ポテンシャル法(Pseudo Potential;PP)とがある。前者はポテンシャル(原子)を全ての電子を使って計算するが、後者はいわゆる価電子以外の電子は内殻のコアポテンシャルに含めて直接的な計算に用いない。いずれも平面波を使う点では共通であるが、共にメリット・デメリットがある。ここでは、前者のうちの、(L)APW+lo法では、Wien2k、後者のPP法では、Quantum Espresso(QE)という計算コードをそれぞれ使用する。なお、QEは主に構造最適化に使用し、それ以外の計算は全てWien2kで行う。
<計算モデル>
ここでは、半導体中に入った不純物を模擬する。そこで、不純物の状態を再現するためにスーパーセルと呼ばれる、BNの基本単位のセルを拡張したものを用意する。c−BNについては、8個の原子を含んだ基本となるセルを2×2×2に拡張し、合計64個の原子のスーパーセルを構築する。また、w−BNとh−BNについては、4個の原子を含んだ基本となるセルを3×3×2に拡張し、合計72個の原子のスーパーセルを構築する。それぞれのスーパーセルからN原子かB原子の1つを取り除き、そこへ不純物を入れることによって不純物を有する半導体を再現する。すなわち、本計算モデルでは、例えばB3132XやB3536Xという基本単位を持つ結晶を想定する。
ここで、Xには先の遷移金属10種類のいずれかが入る。図3は、BNの各結晶構造に基づくスーパーセルの様子を示す図である。(a)、(b)、(c)は、それぞれ、c−BN、w−BN、h−BNを示す。Xは不純物であり、いずれの構造もBサイトに置換したモデルを示している。例えば、B1−yN(0≦y≦1)で表され、X(3d遷移金属)は、BNのBの一部と置換されている。
このモデルでは不純物の濃度が、64個の原子のスーパーセルでは1.56atom%、72個の原子のスーパーセルでは1.39atom%となる。これはドーパント含有量が比較的大きいが、孤立した不純物を再現しているので第一原理計算のモデルとしては妥当である。また、ここでは、簡単化のために置換型の不純物のみを想定している。
<計算結果>
<<バルクBNの計算結果>>
ここでは、まず、不純物の効果を明確にするために、バルクの状態、即ちアンドープBNの電子状態計算の結果を示す。図4は、自己無撞着場(Self Consistent Field;SCF)計算後のBNの各結晶構造における電荷密度分布を示す図である。(a)、(b)、(c)は、それぞれ、c−BN、w−BN、h−BNを示す。図中のメッシュ部が電荷を表している。いずれの構造も電荷分布はN原子の方に局在しており、イオン性の高い結合になっていることが分かる。また、それぞれの結晶構造から、c−BNとw−BNはspライクな結合であり、h−BNはspライクな結合である。すなわち、c−BNとw−BNはh−BNよりも強固な結合をしていることから、強固な物質であると判断可能である。これはc−BNがダイヤモンドに次ぐ強度を持ち、切削工具などに利用されていることからも理解される。一方、h−BNはいわゆるグラファイト型の構造をしているため、層間はファンデルワールス(van der Waals;vdW)力という弱い力しか作用しておらず、他の構造のBNに比べて機械的強度に劣ることが分かる。
図5〜図10は、BNの各結晶構造における状態密度図(Density Of States;DOS)である。なお、全ての状態密度図はフェルミ準位を0eVに揃えて描画している。
図5は、c−BNの全状態密度図(Total DOS;T−DOS)、図6は、c−BNの部分状態密度図(Partial DOS;P−DOS)である。価電子帯の広がりは−10eVから0eVまであり、このバンドはN原子の電子で主に作られている。また、このバンドでは、Nの2p以外にもBの2sと2pが分布しているので、spの混成軌道によるバンドであると判断できる。一方、伝導帯はB原子の電子の分布が高くなっており、典型的な半導体のバンド形成であるといえる。バンドギャップは、価電子帯の上端と伝導帯の下端の距離で決定されるので、c−BNの場合、図5より約4.6eVである。この値は実験値よりも過小評価されているが、これはDFT計算の一般的な傾向である。
図7は、w−BNの全状態密度図、図8は、w−BNの部分状態密度図である。これらはそれぞれc−BNとほぼ同じようなDOS構造になっているが、伝導帯が少し高エネルギー側にシフトしている。また、T−DOSは、c−BNと比較し、全体的にDOS値が高い。これはc−BNがユニットセルに2原子しか入っていないのに対して、w−BNは4原子であることに由来する。そのため、原子分割でみるP−DOSではほぼ同等なDOS値となっていることが確認される。価電子帯の構造もspの混成軌道で形成されていることから、これも典型的な半導体的バンド構造を有しているといえる。ただし、w−BNはc−BNよりもバンドギャップ値が高く、約5.6eVとなっている。これはDFTではバンドギャップが過小評価されていることを考慮すると、w−BNがIII族窒化物半導体の中で最大のバンドギャップ値を有していることを示唆する結果である。
図9は、h−BNの全状態密度図、図10は、h−BNの部分状態密度図である。h−BNの状態密度図は、価電子帯の構造がspである上記2つのものとは異なり、価電子帯のバンド幅が狭くなっている。またNの2sが形成する−17〜14eVに広がるバンドが、他の2つに比べて狭い。このように、sp系の伝導帯と大きく形が異なっている。
さらにはs電子とp電子のDOS値が、sp系よりも低くなっており、s電子とp電子の混成割合も低くなっていることからsp系の結合が示唆されている。h−BNは、図4に示したようにグラファイト状の結晶構造を有しており、DOSの結果もそれを支持するものとなっている。なお、バンドギャップ値は、約4.2eVで、BNの中で最も低いギャップ値を有する結果となった。
以上のようにc−BN、w−BN、h−BNのアンドープの電子状態を計算したが、当然のことながらバンドギャップ中に何ら準位を有していないことがわかった。また第一原理計算による電子状態計算ではバンドギャップが過小評価され、c−BNが約4.6eV、w−BNが約5.6eV、h−BNが約4.2eVであることがわかった。
<<スーパーセルモデルによる置換サイトの決定>>
ここでは、バルクBNの各構造における電子状態計算について説明する。この結果を踏まえ、図3に示したようなスーパーセルモデルでの不純物の添加効果を検証する。まずは、10種類ある遷移金属とBN構造(c−BN、w−BN、h−BN)の組み合わせで、どれがデバイス応用に適しているかのスクリーニングを行う。しかしながら、BNのような化合物の場合、不純物はBサイトかNサイトかに入るかの自由度を持つ。したがって、まず始めに不純物がBサイトに入るか、Nサイトに入るかを決める必要がある。GaNなどの同じ窒化物系の実験結果から、Bサイトに入る方が安定であることが見込まれるが、それを第一原理計算によって決定する。10種類の全ての元素に対してBサイト、Nサイト置換の計算を行うのは時間がかかるので、代表としてCuについてのみ実施した。置換サイトを決定する目安としてここでは形成エネルギーで比較することにした。形成エネルギーは以下の式(1)で求める。
上記式(1)において、Eformは形成エネルギー、Etotal(defect)は不純物モデルの全エネルギー、Etotal(perfect)はバルク(アンドープ)の全エネルギー、nは欠陥として取り除かれた原子の数、μは化学ポテンシャルを意味する。なお、絶対零度における化学ポテンシャルはフェルミエネルギーを意味するので、μはフェルミエネルギーと同等である。ここで、不純物CuがBサイトに入る場合をCu、Nサイトに入る場合をCuと表現する。また、ドープしたスーパーセルモデルでは以下の計算条件で構造最適化をQEで実施する。
・カットオフエネルギー:60Rydberg(1Rydberg≒13.6eV)
・カットオフチャージ:600Rydberg
・力の収束条件:1.0×10−3Rydberg/Bohr
ここでいう力は原子間に働く力を意味しており、ヘルマン−ファインマン力である。なお、構造最適化は、原子間の位置関係だけでなく、格子についても同時に行っている。例えば、図11は、構造最適化の初期状態のc−BNを示す図であり、図12は、構造最適化の終了時のスーパーセルを示す図である。図中の矢印は力を表現しており、大きさと方向を示すベクトルである。このベクトルはc−BNにCuが入り込んだことによって各原子間に力が発生したことを意味している。初期状態では大きなベクトルがいくつも出ているが、原子間距離などを最適化することによって、終了時にはベクトルが消失し、一切出ていない。形成エネルギー計算では、このような状態にしてから各構造におけるエネルギーの比較を行う。
構造最適化が終了した後、式(1)を用いて形成エネルギーを計算した。その結果c−BNはCuが10.50eV、Cuが15.54eVとなり、w−BNはCuが10.44eV、Cuが15.52eVとなった。形成エネルギーの定義から、この値の低い方が不純物が入り易いことを意味するので、いずれの結晶構造においてもCuはBサイトに入り易いことがわかった。h−BNはvdWの補正が必要であり、なおかつ不純物を導入したモデルでの構造最適化が収束しなかった。ここでは、h−BNでも他の構造と同じくBサイト置換が安定と仮定する。また、以降の計算ではh−BNのみ構造最適化時においてc軸方向(z方向)、すなわち層間距離が変動しないような拘束条件を課すこととする。
<<遷移金属元素のスクリーニング>>
前述したように、遷移金属元素はBサイトに入るというモデルが妥当であることを確認した。そこで、BNの各構造に遷移金属元素10種類をそれぞれ入れて、バンドギャップ中に準位を形成するかどうかを検討する。計算条件は先の構造最適化と同じ条件とし、SCF計算が終了した後にDOSを描く。ここでは単純なスクリーニングのため、スピンはアップスピンのみの計算をQEで行った。
結果を、図13に示す。図13は、c−BNに各遷移金属元素を導入した後に形成される準位を示す図である。数値は全て価電子帯からの距離として定義している。N/Aは、“該当せず”を意味する。準位形成の基準は、DOS図で描画した時に、価電子帯もしくは伝導帯から明確に分離したものとしている。ZnはIII族窒化物ではBサイトに置換して入り込むとアクセプタとして機能すると予想される。実際、DOSでは価電子帯の上端付近にZn由来のピークができているが、価電子帯との混成も強く起きているので、ここでは準位が形成されているとはみなさなかった。
図13に示すように、c−BNに遷移金属元素10種類を導入した場合について、中間準位(中間バンド)を説明する。c−BNにVを導入した場合、中間準位は、3.3eVであり、c−BNにMnを導入した場合、中間準位は、2.2eVであり、c−BNにNiを導入した場合、中間準位は、1.5eVである。c−BNにCuを導入した場合、中間準位は、0.5eVである。c−BNにCrを導入した場合、3.6eVと2.8eVの2つの中間準位ができる。c−BNにFeを導入した場合、2.8eVと1.1eVの2つの中間準位ができる。c−BNにCoを導入した場合、2.0eVと0.4eVの2つの中間準位ができる。Sc、Ti、Znを導入した場合は、中間準位が確認できない。このように、c−BNのバンドギャップ中にV、Cr、Mn、Fe、Co、Niを導入することで、可視光領域に相当する1.9〜3.1eVの中間準位を形成することが判明した。
図14は、c−BNにZnを導入した場合のDOS図である。縦軸はエネルギー(Energy)で、単位は任意単位(a.u.)であり、横軸はDOS(States/eV)である。縦軸に任意単位を使用した理由は、個々のドーパントによってフェルミ準位が異なりエネルギースケールが揃わないからである。図14においては、価電子帯の上端にZn由来のピークがきているが、価電子帯と分離していない。
図15は、c−BNのバンドギャップ中に2つ以上の準位ができる場合のDOS図である。縦軸は任意単位(a.u.)であり、横軸はDOS(States/eV)である。図15においては、バンドギャップ中に明確に分離された2つの準位が存在している。この準位は比較的近い値をもち、なおかつDOS値が高く局在していることがわかる。したがって、この2つの準位はCr、FeやCo原子のdバンド分裂に起因するものであると考えられる。これらは、半導体の深い準位の形成を担っていることになる。
図16は、w−BNに各遷移金属元素を導入した後に形成される準位を示す図であり、図17は、h−BNに各遷移金属元素を導入した後に形成される準位を示す図である。
図16に示すように、w−BNに遷移金属元素10種類を導入した場合について、中間準位(中間バンド)を説明する。w−BNにScを導入した場合、5.1eVと4.2eVの2つの中間準位ができる。w−BNにTiを導入した場合、4.5eVと3.6eVの2つの中間準位ができる。w−BNにVを導入した場合、3.9eVと2.7eVの2つの中間準位ができる。w−BNにCrを導入した場合、3.4eVと2.2eVの2つの中間準位ができる。w−BNにMnを導入した場合、3.1eVと1.8eVの2つの中間準位ができる。w−BNにFeを導入した場合、2.4eVと0.8eVの2つの中間準位ができる。w−BNにCoを導入した場合、1.6eVと0.2eVの2つの中間準位ができる。w−BNにNiを導入した場合、中間準位は、1.1eVであり、w−BNにCuを導入した場合、中間準位は、1.1eVである。Znを導入した場合は、中間準位が確認できない。このように、w−BNのバンドギャップ中にV、Cr、Mn、Feを導入することで、可視光領域に相当する1.9〜3.1eVの中間準位を形成することが判明した。
図17に示すように、h−BNに遷移金属元素10種類を導入した場合について、中間準位(中間バンド)を説明する。h−BNにMnを導入した場合、2.7eVと1.7eVの2つの中間準位ができる。h−BNにMnを導入した場合、1.3eVと0.9eVの2つの中間準位ができる。h−BNにCoを導入した場合、1.3eVと0.9eVの2つの中間準位ができる。h−BNにNiを導入した場合、0.9eVと0.5eVの2つの中間準位ができる。h−BNにScを導入した場合、中間準位は、0.2eVであり、h−BNにVを導入した場合、中間準位は、2.6eVであり、h−BNにCrを導入した場合、中間準位は、2.2eVである。Ti、Cu、Znを導入した場合は、中間準位が確認できない。このように、h−BNのバンドギャップ中にV、Cr、Mnを導入することで、可視光領域に相当する1.9〜3.1eVの中間準位を形成することが判明した。
w−BNはもともとバンドギャップが大きいためか、c−BNに形成された準位よりも高い位置に準位を形成する元素が多い。これは同じsp系の結合でありながら、明確にドーパントの効果が異なることを示している。
すなわち、同じ材料に対し同じ不純物を導入しても結晶構造が異なるだけで、違う効果がもたらされることを意味している。c−BNとw−BNとでは、第二近接原子の位置関係が異なるほか、結晶構造上分極の有無などの違いがある。しかしながら、バンドギャップ中の準位形成にこれだけの違いが出るのは、w−BNが準安定層であることも関係している可能性がある。
それに対しh−BNは全体的にc−BNやw−BNに比べて不純物準位が低い値を示している。これは、h−BNの構造最適化がc軸方向に行われていないことや、vdW力などが取り込まれていないことなどが考えられる。またh−BNはグラファイト状の2次元結晶であるために、比較的大きな元素を不純物としてドープする場合、インターカレーションのように層間に取り込む方が安定になる可能性がある。
以上の結果を表1にまとめる。導入した遷移金属元素は原子番号21〜30までのSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znで、バンドギャップ中に準位を形成するか否かを○と×で示した。また、準位形成が明確でないZnのようなケースは△とした。具体的に、○は少なくとも1個以上の準位を形成し、×は1つもないことを示す。△は不純物準位が価電子帯または伝導帯と混成しており、非常に浅い準位を形成していると考えられるものに対してつけた。
表1より、V、Cr、Mn、Fe、Co、NiはBNの結晶構造に依存せずにそのバンドギャップ中に準位を形成することがわかった。ZnはBN中ではアクセプタとして働くためにギャップ中に極めて浅い準位を形成するはずであるが、このモデルはいわゆるヘビードープな状態であるので、価電子帯との混成が起こり、本計算では明確に準位形成しているとの判断ができていないと考えられる。またScで準位ができにくいのは、結晶として窒化スカンジウム(ScN)が存在するため、BNへのScの導入により、ある種の混晶になって準位形成が起きたり、起きなかったりしたのではないかと考察される。この考察は、結晶構造による依存が大きいことからも、蓋然性が高い。
以上の結果から、特に、結晶構造については、c−BNが最もデバイス応用に適しており、バンドギャップ中に準位を形成する元素の候補としてV、Cr、Mn、Fe、Co、Niの計6種類が好適であることが判明した。
<<バンドギャップの補正>>
DFTでは一般的にバンドギャップを過小評価してしまうために、前述の計算でも全てのBNでバンドギャップを過小評価している。ここでは、TranとBlahaらによって提案されたTB−mBJによってバンドギャップを補正する。この手法はあくまでもポテンシャルに補正をかけるだけであって、外因的エネルギーを盛り込まない。したがって、比較的計算が軽く、恣意性も少ない状態でバンドギャップの補正が実行できる。TB−mBJは、例えば、文献“Fabien Tran and Peter Blaha:” Accurate Band Gaps of Semiconductors and Insulators with a Semilocal Exchange-Correlation Potential” Phys. Rev. Lett. 102, (2009) 226401-226401-4.”に記載されている。
図18は、w−BNに対して行ったTB−mBJによる補正例を示す図である。通常の計算(GGA、破線)ではバンドギャップが約5.6eVであったが、TB−mBJ(実線)で計算すると約7.2eVになった。図示するように、価電子帯の変化はほとんど起きていないが、伝導帯が全体的に高エネルギー側にシフトしている。このようにTB−mBJでは価電子帯の構造をほとんど変えずに、バンドギャップの補正が可能であることから、ギャップ中に準位を形成する元素の正確な位置関係を見積もるのに有利な計算手法であるといえる。
<<可視光応答する準位の決定>>
前述したとおり、例えば、c−BNに、V、Cr、Mn、Fe、Co、Niをドーパントとして導入すれば、可視光応答する領域に不純物準位の形成が見込めることがわかった。そして、TB−mBJでバンドギャップを補正することにより、最終的な値が決定される。ここでのDOS計算ではWien2kを使用してスピンを考慮する。すなわち、アップスピンとダウンスピンの両方のDOSを描画し、最終的に価電子帯もしくは伝導帯から1.9〜3.1eVの位置に準位を形成する元素を決定する。
バンドギャップ補正後に、1.9〜3.1eVの範囲に準位を形成する元素を決定する。表2は、c−BNのバンドギャップ中の可視光応答する領域に不純物準位を形成する元素を示す表である。表2中の○は可視光応答可能な準位を形成していることを示し、×は準位形成がないことを意味する。なおバンドギャップはTB−mBJで補正している。
表2に示すように、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuの7種類の元素が、1.9〜3.1eVの範囲(可視光領域)に準位を形成することがわかった。
さらにこれらの元素の中から最も導入しやすい元素を決定するために、前述の式(1)を用いて、それぞれの形成エネルギーを計算した。その結果を表3に示す。
形成エネルギーは低い方がその元素が導入しやすいことを意味する。表3より、c−BNに対する不純物元素導入の形成エネルギーについては、Niの4.394eVが最も低く、導入しやすいことが判明した。形成エネルギーは、Ni>Fe>Mn>V>Co>Cr>Cuの順に低くなっており、Niが最も不純物として導入しやすく、Cuが最も導入しにくいということになる。
図19は、Niをドープしたc−BNのDOS図である。Niをドープしたことにより、アップスピン(右側)とダウンスピン(左側)のDOSが異なっている。これは磁性を有することを意味しており、可視光応答だけでなくスピントロニクスへの応用も期待されることを見いだせたことになる。なお、図19に示すアップスピン(右側)とダウンスピン(左側)のうち、右側(VBMとピーク間のエネルギー)が、図13のNiのデータ(1.5eV)と対応する。
(実施の形態2)
本実施の形態においては、実施の形態1で説明した半導体材料のうち、好適なものを選択し、その応用例について説明する。
実施の形態1で説明したように、本発明に係る半導体材料は、BNに遷移金属元素Xを導入した半導体材料(BXN)である。BNの中でも、立方晶系の結晶構造(c−BN)のものが好ましく、導入する遷移金属元素としては、V、Cr、Mn、Fe、Co、Niのいずれかを用いることが好ましい。中でも、Niを導入したものは、形成エネルギーが低く、製造しやすい。図20は、立方晶系の結晶構造のBN(c−BN)に、Niを導入した半導体を示す図である。
(半導体層)
このような、BNに遷移金属元素Xを導入した半導体材料(BXN)よりなる半導体層(BXN層)は、例えば、分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法により製造することができる。
分子線エピタキシー法は、半導体結晶を製造する技術の一つで、超高真空中で、高純度な原料を蒸発させ、下地となる基板結晶上で反応させ、基板結晶と原子配列のそろった結晶を成長させる(エピタキシャル成長)技術である。真空中では、蒸発した原子・分子は他の分子と衝突することなくビーム状に進むので、分子線(MBE)と呼ばれる。そして、装置のシャッターを開閉することで簡単に原料の供給を制御でき、また複数の原料を切り替えて組成の異なる半導体層を積層することも容易である。よって、MBE法は、高純度な半導体の薄膜多層構造を製造するのに好適である。
例えば、半導体層(BXN層)を形成するための基板を真空チャンバー内に搬送する。そして、例えば、アンモニアやヒドラジン等の含窒素原子ガスを、真空チャンバー中に導入し、含窒素原子ガスを、基板上あるいはその近傍で光分解又は熱分解しながら、基板上にBの分子線と、遷移金属元素Xの金属分子線を照射し、半導体層(BXN層)を成長させる。遷移金属元素Xの濃度(添加量、置換量)は、原料となる遷移金属セルの温度の調整により、供給量を調整し、変化させることができる。なお、遷移金属元素Xは1種でもよいし、2種以上の遷移金属元素を導入してもよい。
また、上記半導体層(BXN層)を、スパッタリング法により製造してもよい。例えば、半導体層(BXN層)を形成するための基板を真空チャンバー内に搬送する。基板としては、例えば、単結晶サファイア基板を用いることができる。基板として、単結晶サファイア基板上に、あらかじめ、p型BNまたはn型BNの層が形成された基板を用いてもよい。この基板と対向するように、BNターゲットが設置され、ターゲット上にはBと置換する遷移金属元素Xのチップを設置する。遷移金属元素Xの濃度(添加量、置換量)の調整は、例えばチップの個数や大きさ、配置位置を調整することにより行う。基板を設置するホルダーの裏面には基板加熱用ヒータが設置されている。チャンバー内を一旦排気した後、不活性ガス(例えば、アルゴンと窒素の混合ガス)を導入し、基板を所定温度に加熱する。その後、高周波電力を印加してプラズマを誘起し、所定時間スパッタ製膜を行う。また、スパッタ製膜に先立って、基板およびターゲットをプラズマ中で清浄化してもよい。スパッタによる製膜は、組成を変更することが容易であり、かつ大面積の製膜に適している。また、スパッタ法で形成された半導体層(BXN層)は微結晶またはアモルファス様の構造を示す。
このようにして形成された半導体層(BXN層)は、バンドギャップが大きく、中間準位が形成されているため(図19参照)、例えば、光電変換装置などに用いて有用である。
(光電変換装置)
図21は、本実施の形態の太陽電池(光電変換装置)の一例を示す断面図である。図21に示すように、本実施の形態の太陽電池は、最下層のp型BN層21と、その上層のBXN層22と、その上層のn型BN層23とを有する。p型BN層21およびn型BN層23は、BXN層22と同様にして形成することができる。p型BN層21は、BN層にp型不純物を導入することにより形成することができる。また、n型BN層は、BN層にn型不純物を導入することにより形成することができる。これらの不純物にはドナーとアクセプタの二種類がある。ドナーは自由電子を供給し、アクセプタは正孔(ホール)を供給する。ドナーを含む不純物半導体をn型半導体、アクセプタを含むとp型半導体という。
前述の遷移金属元素のうち、例えば、可視光領域に相当する1.9〜3.1eVの中間準位を形成する元素は、いわゆる“深い準位”を形成する元素である。このような、“深い準位”を形成する元素を導入した半導体は、“真性”の性質を有する。一方、“浅い準位”を形成する元素は、その導入により、n型またはp型の半導体となる。
ここでいう“浅い準位”とはドナーやアクセプタが室温程度(300K)のエネルギーで活性化するものを意味し、“深い準位”では室温程度のエネルギーでは活性化しないものを指す。したがって、深い準位を形成する半導体では自由電子や正孔のようなキャリアの発生が見込めないので、“真性”のように振る舞う。
例えば、一般的には、30meV(0.03eV)より浅い準位でない場合、ドナーやアクセプタによるキャリアがほとんど発生しない。目安として室温27℃(300K)でキャリアを発生させるものを“浅い”と表現し、それより1桁ほど大きいものを“深い”と呼ぶことができる。例えば、前述したZnはアクセプタのように振る舞うと予想される。
BXN層(光吸収層)22として、例えば、立方晶系の結晶構造のBN(c−BN)に、Niを導入した半導体を用いた場合、1.9〜3.1eVの範囲(可視光領域)の光に対応した、中間準位を有するため、光電変換効率を向上させることができる。
図21においては、太陽電池を構成する各半導体層をBN系材料で構成したが、例えば、他の半導体材料(GaInN、InN)などを用いた太陽電池の一部の層をBN系材料で置き換えてもよい。
図22は、本実施の形態の太陽電池(光電変換装置)の他の例を示す断面図である。図22に示す太陽電池は、BXN層31と、その上層のn型InN層32と、その上層のp型GaInN層33と、その上層のn型GaInN層34と、を有する。n型GaInN層34上には、電極35が配置され、p型InN層31下には、電極36が配置されている。n型InN層32は、高濃度に不純物がドープされた層である。
このように、BXN層31を用いることで、例えば、BXN層31に代えてp型InN層を用いる場合と比較し、高濃度のInN層(32)による漏れ電流を低減することができる。
このように、他の半導体材料(GaInN、InN)などを用いた太陽電池の一部の層をBN系材料で置き換えてもよい。
このように、実施の形態1で説明した半導体(BXN)を光電変換装置に適用することで、光電変換装置の特性を向上させることができる。
特に、上記半導体(BXN)は、GaN系材料で問題となっている内部電界に起因する問題を結晶学的に回避することが可能であり、デバイスの性能向上が期待される。
また、上記半導体(BXN)は、高温、高圧ならびに放射線にも耐えることから、極限環境下で動作可能なデバイスの作製が可能となる。具体的には、宇宙、砂漠地帯や放射能汚染地域などにおいても、動作可能なデバイスを提供することができる。
(応用例)
実施の形態1においては、いわゆる“深い準位”を形成する元素を導入した半導体(BXN)について説明したが、“深い準位”を形成する元素の他に、実施の形態2で説明したドナードーパントやアクセプタードーパントを含有させてもよい。
また、実施の形態1においては、BNに“深い準位”を形成する元素を導入した半導体(BXN)について説明したが、BNと他のIII族窒化物半導体の混晶に、“深い準位”を形成する元素を導入してもよい。
即ち、III族窒化物半導体であり、III族元素として、Bと、B以外のIII族元素とを有する半導体に、3d遷移金属のような“深い準位”を形成する元素を導入してもよい。
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態および実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である
本発明は、光電変換装置に適用して有効な技術である。
21 p型BN層
22 BXN層
23 n型BN層
31 BXN層
32 n型InN層
33 p型GaInN層
34 n型GaInN層
35 電極
36 電極

Claims (10)

  1. 半導体を有する光電変換装置であって、
    前記半導体は、3d遷移金属を含有するBNであり、4eV以上バンドギャップを有し、
    価電子帯と伝導帯との間に少なくとも1つ以上の中間準位が形成されている、光電変換装置。
  2. 請求項1記載の光電変換装置において、
    前記半導体は、可視光領域に相当する1.9〜3.1eVの中間位を形成する、光電変換装置。
  3. 請求項2記載の光電変換装置において、
    前記半導体は、By1-yN(0≦y≦1)で表され、前記3d遷移金属は前記Xと対応する、光電変換装置。
  4. 請求項3記載の光電変換装置において、
    前記3d遷移金属は、前記半導体のBの一部と置換されている、光電変換装置。
  5. 請求項4記載の光電変換装置において、
    前記3d遷移金属は、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、NiおよびCuからなる群から選択された少なくとも1種である、光電変換装置。
  6. 請求項5記載の光電変換装置において、
    前記半導体は、立方晶系の結晶構造を有する、光電変換装置。
  7. 請求項5記載の光電変換装置において、
    前記半導体は、ウルツ鉱構造の結晶構造を有する、光電変換装置。
  8. 請求項5記載の光電変換装置において、
    前記半導体は、立方晶系の結晶構造を有し、
    前記3d遷移金属は、Niである、光電変換装置。
  9. 請求項5記載の光電変換装置において、
    前記半導体は、ウルツ鉱構造の結晶構造を有し、
    前記3d遷移金属は、Niである、光電変換装置。
  10. 請求項5記載の光電変換装置において、
    前記半導体は、ドナードーパントおよびアクセプタードーパントを含有する、光電変換装置。
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