以下に本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則的に繰返さないものとする。
(電力変換システムの構成)
図1は、本発明の実施の形態による電力変換システムの構成を示す回路ブロック図である。本発明の実施の形態による電力変換システムは、たとえば、無停電電源装置を複数台並列に接続して負荷に給電する無停電電源システムに適用される。
図1を参照して、無停電電源システムは、交流電源51と負荷52との間に並列に接続されたn台(nは2以上の整数)の無停電電源装置U1〜Unを備える。各無停電電源装置は「電力変換装置」に対応する。
本願明細書では、n台の無停電電源装置U1〜Unは、この並び順で交流電源51に対して並列に接続されるものとする。無停電電源装置Uk(1≦k≦n)を「第kの無停電電源装置」とも称する。
交流電源51は、商用周波数の三相交流電力を無停電電源装置U1〜Unに供給する。交流電源51と無停電電源装置U1〜Unとを繋ぐ接続線上には開閉器8が設けられる。開閉器8は、無停電電源システム全体を制御する制御装置(図示せず)から制御信号に応答して導通/非導通(オン/オフ)されることにより、交流電源51と無停電電源装置U1〜Unとの間の電力供給経路を導通/遮断する。負荷52は、無停電電源装置U1〜Unから供給される商用周波数の三相交流電力によって駆動される。
複数の無停電電源装置U1〜Unに共通に1つのバッテリ53(電力貯蔵装置)が設けられる。バッテリ53は直流電力を蓄える。バッテリ53の代わりにコンデンサが設けられてもよい。
無停電電源装置U1〜Unの各々は、コンバータ1、インバータ2、双方向チョッパ3、制御回路4、直流正母線L1、直流負母線L2、直流中性点母線L3、およびコンデンサC1,C2を含む。
コンバータ1は、交流電源51から供給される三相交流電圧に基づいて正電圧、負電圧および中性点電圧を生成する。コンバータ1によって生成された正電圧、負電圧および中性点電圧は、それぞれ直流正母線L1、直流負母線L2、および直流中性点母線L3を介してインバータ2に与えられる。
コンデンサC1は、直流正母線L1および直流中性点母線L3の間に接続される。コンデンサC1は、母線L1,L3間の直流電圧を平滑化および安定化させる。コンデンサC2は、直流中性点母線L3および直流負母線L2の間に接続される。コンデンサC2は、母線L3,L2間の直流電圧を平滑化および安定化させる。
インバータ2は、コンバータ1から母線L1〜L3を介して供給される正電圧、負電圧および中性点電圧に基づいて三相交流電圧を生成し、その三相交流電圧を負荷52に供給する。
双方向チョッパ3は、交流電源51から三相交流電圧が供給されている通常時は、母線L1,L3間の直流電圧および母線L3,L2間の直流電圧の各々を降圧してバッテリ53に供給することにより、バッテリ53を充電する。双方向チョッパ3は、交流電源51からの三相交流電圧の供給が遮断された停電時は、バッテリ53の端子間電圧を昇圧して母線L1,L3間および母線L3,L2間の各々に供給することにより、バッテリ53を放電させる。
制御回路4は、交流電源51から供給される三相交流電圧、母線L1,L2,L3の各々の直流電圧、バッテリ53の端子間電圧、インバータ2から出力される三相交流電圧、およびインバータ2から負荷52に流れる三相交流電流(負荷電流)などに基づいて、コンバータ1、インバータ2および双方向チョッパ3を制御する。
無停電電源装置U1〜Unの制御回路4は、通信回線9によって互いに結合されており、負荷電流を含む種々の情報を授受する。制御回路4は、無停電電源装置U1〜Unの負荷電流の総和を運転中の無停電電源装置Uの台数で除算して自装置の分担電流を求める。制御回路4は、その分担電流を出力するように自装置を制御する。制御回路4はさらに、無停電電源装置U1〜Unの母線L1〜L3を互いに接続する配線上に設けられたヒューズが溶断する(非導通状態となる)異常が検出された場合に、無停電電源装置U1〜Unの運転を停止させる。これについては、後に詳細に説明する。
交流電源51から三相交流電力が正常に供給されている通常時は、無停電電源装置U1〜Unの各々において、交流電源51からの三相交流電力がコンバータ1によって直流電力に変換される。コンバータ1によって生成された直流電力は、双方向チョッパ3によってバッテリ53に蓄えられるとともに、インバータ2によって三相交流電力に変換された負荷52に供給される。
交流電源51からの三相交流電力の供給が停止された停電時は、無停電電源装置U1〜Unの各々において、コンバータ1の運転が停止される。バッテリ53の直流電力が双方向チョッパ3を介してインバータ2に供給され、三相交流電力に変換されて負荷52に供給される。したがって、バッテリ53に直流電力が蓄えられている期間は、負荷52の運転を継続することができる。
(電力変換回路の構成)
図2は、コンバータ1およびインバータ2の各々に含まれる電力変換回路の構成を示す回路図である。図2を参照して、電力変換回路は、交流端子T1〜T3、中性点端子T4、直流端子T5〜T7、交流フィルタ10、および半導体モジュール20を含む。
交流端子T1〜T3は、三相交流電圧を授受するために用いられる。コンバータ1の中性点端子T4とインバータ2の中性点端子T4とは互いに接続される。直流端子T5〜T7は、それぞれ正電圧、負電圧、および中性点電圧を授受するために用いられる。中性点電圧とは正電圧および負電圧の中間電圧である。
交流フィルタ10は、リアクトル11〜13およびコンデンサ14〜16を含む。リアクトル11〜13の一方端子はそれぞれ交流端子T1〜T3に接続され、それらの他方端子はそれぞれ半導体モジュール20のノードN1〜N3にそれぞれ接続される。コンデンサ14〜16の一方電極はそれぞれ交流端子T1〜T3に接続され、それらの他方電極はともに中性点端子T4に接続される。交流フィルタ10は、低域通過フィルタであり、商用周波数の三相交流電力を通過させ、半導体モジュール20で発生するスイッチング周波数の信号を遮断する。
半導体モジュール20は、トランジスタQ1〜Q6、ダイオードD1〜D6、および交流スイッチS1〜S3を含む。トランジスタQ1〜Q6の各々は、たとえばNチャネルMOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタである。トランジスタQ1〜Q3のドレインはともに直流端子T5に接続され、それらのソースはそれぞれノードN1〜N3に接続される。トランジスタQ4〜Q6のドレインはそれぞれノードN1〜N3に接続され、それらのソースはともに直流端子T6に接続される。
ダイオードD1〜D6は、それぞれトランジスタQ1〜Q6に逆並列に接続される。
交流スイッチS1〜S3の各々は、トランジスタQ7,Q8およびダイオードD7,D8を含む。トランジスタQ7,Q8の各々は、たとえばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。交流スイッチS1〜S3のトランジスタQ7のエミッタはそれぞれノードN1〜N3に接続され、交流スイッチS1〜S3のトランジスタQ8のエミッタはともに直流端子T7に接続される。交流スイッチS1〜S3の各々において、トランジスタQ7,Q8のコレクタは互いに接続される。ダイオードD7,D8は、それぞれトランジスタQ7,Q8に逆並列に接続される。
トランジスタQ1〜Q8の各々は、制御回路4によってPWM(Pulse Width Modulation)制御され、交流電源51からの三相交流電圧に同期して所定のタイミングでオン/オフされる。たとえば、トランジスタQ1〜Q3は、三相交流電圧に同期して順次オン/オフされる。トランジスタQ1〜Q3がオンされている期間ではそれぞれトランジスタQ4〜Q6がオフされる。トランジスタQ1〜Q3がオフされている期間ではそれぞれトランジスタQ4〜Q6がオンされる。
コンバータ1においては、交流端子T1〜T3は交流電源51からの三相交流電圧を受け、直流端子T5は直流正母線L1の一方端に接続され、直流端子T6は直流負母線L2の一方端に接続され、直流端子T7は直流中性点母線L3の一方端に接続される。交流フィルタ10は、交流電源51から供給される商用周波数の三相交流電力を半導体モジュール20に通過させ、半導体モジュール20で発生するスイッチング周波数の信号が交流電源51に通過することを防止する。
コンバータ1においては、半導体モジュール20は、交流電源51から交流フィルタ10を介して供給される三相交流電圧に基づいて正電圧、負電圧および中性点電圧を生成し、生成した正電圧、負電圧および中性点電圧をそれぞれ直流端子T5〜T7に与える3レベルコンバータを構成する。
たとえば、交流端子T1の電圧が交流端子T2の電圧よりも高い場合は、トランジスタQ1および交流スイッチS2のトランジスタQ7,Q8がオンされ、交流端子T1、交流フィルタ10(リアクトル11)、トランジスタQ1、直流端子T5、コンデンサC1、直流端子T7、交流スイッチS2(トランジスタQ8,Q7)、交流フィルタ10(リアクトル12)、および交流端子T2の経路で電流が流れ、コンデンサC1が充電される。
交流端子T1の電圧が交流端子T3の電圧よりも高い場合は、交流スイッチS1のトランジスタQ7,Q8およびトランジスタQ6がオンされ、交流端子T1、交流フィルタ10(リアクトル11)、交流スイッチS1(トランジスタQ7,Q8)、直流端子T7、コンデンサC12、直流端子T6、トランジスタQ6、交流フィルタ10(リアクトル13)、および交流端子T3の経路で電流が流れ、コンデンサC2が充電される。
インバータ2においては、交流端子T1〜T3は負荷52に接続され、直流端子T5は直流正母線L1の他方端に接続され、直流端子T6は直流負母線L2の他方端に接続され、直流端子T7は直流中性点母線L3の他方端に接続される。半導体モジュール20は、コンバータ1または双方向チョッパ3から母線L1〜L3を介して供給される正電圧、負電圧および中性点電圧に基づいて三相交流電圧を生成し、生成した三相交流電圧をノードN1〜N3に出力する3レベルインバータを構成する。半導体モジュール20で生成される三相交流電圧の各々は、たとえば、正電圧、中性点電圧、負電圧、中性点電圧、正電圧、・・・の順で変化する3レベルの交流電圧である。
たとえば、トランジスタQ1および交流スイッチS2のトランジスタQ7,Q8がオンされると、直流端子T5、トランジスタQ1、交流フィルタ10(リアクトル11)、交流端子T1、負荷52、交流端子T2、交流フィルタ10(リアクトル12)、交流スイッチS2(トランジスタQ7,Q8)、および直流端子T7の経路で電流が流れ、コンデンサC1が放電される。
交流スイッチS1のトランジスタQ7,Q8およびトランジスタQ6がオンされると、直流端子T7、交流スイッチS1(トランジスタQ8,Q7)、交流フィルタ10(リアクトル11)、交流端子T1、負荷52、交流端子T3、交流フィルタ10(リアクトル11)、トランジスタQ6、および直流端子T6の経路で電流が流れ、コンデンサC2が放電される。
インバータ2において交流フィルタ10は、半導体モジュール20によって生成された商用周波数の三相交流電圧を負荷52に通過させ、半導体モジュール20で発生するスイッチング周波数の信号が負荷52に通過することを防止する。換言すると、インバータ2の交流フィルタ10は、半導体モジュール20によって生成された三相の3レベル交流電圧を三相の正弦波状の交流電圧に変換して負荷52に与える。
(双方向チョッパの構成)
図3は、双方向チョッパ3の構成を示す回路図である。図3を参照して、双方向チョッパ3は、直流端子T11〜T13、バッテリ端子T21,T22、トランジスタQ21〜Q24、ダイオードD21〜D24、ノーマルモードリアクトル30、およびヒューズF1,F2を含む。ノーマルモードリアクトル30は、2つのコイル31,32を含む。直流端子T11,T12,T13は、それぞれ直流正母線L1、直流流負母線L2および直流中性点母線L3に接続される。バッテリ端子T21,T22は、それぞれバッテリ53の正極および負極に接続される。
トランジスタQ21〜Q24の各々は、たとえばIGBTである。トランジスタQ21,Q22は、直流端子T11,T13間に直列に接続され、トランジスタQ23,Q24は、直流端子T13,T12間に直列に接続される。ダイオードD21〜D24は、それぞれトランジスタQ21〜Q24に逆並列に接続される。
コイル31の一方端子はトランジスタQ21のエミッタに接続され、その他方端子はヒューズF1を介してバッテリ端子T21に接続される。コイル32の一方端子はヒューズF2を介してバッテリ端子T22に接続され、その他方端子はトランジスタQ23のエミッタに接続される。ヒューズF1,F2は過電流が流れた場合に溶断され、バッテリ53および双方向チョッパ3を保護する。
双方向チョッパ3は、トランジスタQ21〜Q24のオン/オフ制御によって3つのバッテリ充電モードを実行することができる。第1のバッテリ充電モードでは、トランジスタQ21がオンされるとともにトランジスタQ22〜Q24がオフされる。直流端子T11からトランジスタQ21、コイル31、バッテリ53、ヒューズF2、コイル32、およびダイオードD23を介して直流端子T13に電流が流れることにより、コンデンサC1が放電されてバッテリ53が充電される。
第2のバッテリ充電モードでは、トランジスタQ21,Q24がオンされるとともにトランジスタQ22,Q23がオフされる。直流端子T11からトランジスタQ21、コイル31、ヒューズF1、バッテリ53、ヒューズF2、コイル32、トランジスタQ23を介して直流端子T12に電流が流れることにより、コンデンサC1,C2が放電されてバッテリ53が充電される。
第3のバッテリ充電モードでは、トランジスタQ24がオンされるとともにトランジスタQ21〜Q23がオフされる。直流端子T13からダイオードD22、コイル31、ヒューズF1、バッテリ53、ヒューズF2、コイル32、トランジスタQ24を介して直流端子T12に電流が流れることにより、コンデンサC2が放電されてバッテリ53が充電される。
第1のバッテリ充電モードと第2のバッテリ充電モードとは、交互に行なわれる。第1のバッテリ充電モードと第2のバッテリ充電モードとの間の期間では、トランジスタQ21〜Q24がオフされる。コイル31,32に蓄えられた電磁エネルギが放出されて、ダイオードD22、コイル31、ヒューズF1、バッテリ53、ヒューズF2、コイル32、およびダイオードD23の経路に電流が流れ、バッテリ53が充電される。第2のバッテリ充電モードは、第1のバッテリ充電モードと第3のバッテリ充電モードとが重なっているモードである。
双方向チョッパ3はさらに、トランジスタQ21〜Q24のオン/オフ制御によって3つの放電モードを実行することができる。第1の放電モードでは、トランジスタQ22がオンされるとともにトランジスタQ21,Q23,Q24がオフされる。バッテリ53の正極からヒューズF1、コイル31、トランジスタQ22、コンデンサC2、ダイオードD24、コイル32、およびヒューズF2を介してバッテリ53の負極に電流が流れることにより、バッテリ53が放電されてコンデンサC2が充電される。
第2の放電モードでは、トランジスタQ21〜Q24がオフされる。バッテリ53の正極からヒューズF1、コイル31、ダイオードD21、コンデンサC1,C2、ダイオードD24、コイル32、およびヒューズF2を介してバッテリ53の負極に電流が流れることにより、バッテリ53が放電されてコンデンサC1,C2が充電される。
第3の放電モードでは、トランジスタQ23がオンされるとともにトランジスタQ21,Q22,Q24がオフされる。バッテリ53の正極からヒューズF1、コイル31、ダイオードD21、コンデンサC1、トランジスタQ23、コイル32、およびヒューズF2を介してバッテリ53の負極に電流が流れることにより、バッテリ53が放電されてコンデンサC1が充電される。
第1のバッテリ放電モードと第3のバッテリ放電モードとは、交互に行なわれる。第1のバッテリ放電モードと第3のバッテリ放電モードとの間の期間において、直流端子T11,T12間の電圧がバッテリ53の端子間電圧よりも低下している場合は、第2のバッテリ放電モードが行なわれる。
(配線部およびヒューズ部の構成)
図1に戻って、無停電電源システムは、さらに、複数(図1では(n−1))の配線部W1〜Wn−1、および複数(図1では(n−1))のヒューズ部FS1〜FSn−1を備える。配線部Wk(1≦k≦n−1)は「第kの配線部」に対応し、ヒューズ部FSkは「第kのヒューズ部」に対応する。
配線部W1〜Wn−1の各々は、配線Lp,Ln,Lcを含む。配線部W1において、配線Lp,Ln,Lcの一方端子はそれぞれ、無停電電源装置U1の直流正母線L1、直流負母線L2および直流中性点母線L3に接続され、それらの他方端子はそれぞれ、無停電電源装置U2の直流正母線L1、直流負母線L2および直流中性点母線L3に接続される。配線部W2において、配線Lp,Ln,Lcの一方端子はそれぞれ、無停電電源装置U2の直流正母線L1、直流負母線L2および直流中性点母線L3に接続され、それらの他方端子はそれぞれ、無停電電源装置U3の直流正母線L1、直流負母線L2および直流中性点母線L3(図示せず)に接続される。配線部Wn−1において、配線Lp,Ln,Lcの一方端子はそれぞれ、無停電電源装置Un−1の直流正母線L1、直流負母線L2および直流中性点母線L3(図示せず)に接続され、それらの他方端子は無停電電源装置Unの直流正母線L1、直流負母線L2および直流中性点母線L3に接続される。
すなわち、第kの配線部Wkにおいて、配線Lp,Ln,Lcの一方端子はそれぞれ、第kの無停電電源装置Ukの直流正母線L1、直流負母線L2および直流中性点母線L3に接続され、それらの他方端子はそれぞれ、第(k+1)の無停電電源装置Uk+1の直流正母線L1、直流負母線L2および直流中性点母線L3に接続される。
配線部W1〜Wn−1において、配線Lpは無停電電源装置U1〜Unの直流正母線L1を互いに接続し、無停電電源装置U1〜Unの直流正母線L1の電圧を一致させる。配線Lnは無停電電源装置U1〜Unの直流負母線L2を互いに接続し、無停電電源装置U1〜Unの直流負母線L2の電圧を一致させる。配線Lcは無停電電源装置U1〜Unの直流中性点母線L3を互いに接続し、無停電電源装置U1〜Unの直流中性点母線L3の電圧を一致させる。
このようにすると、無停電電源装置U1〜Unのインバータ2の入力電圧を一致させることができる。これにより、無停電電源装置U1〜Unのインバータ2の出力電圧のばらつきを小さくすることができるため、無停電電源装置U1〜Unのインバータ2の出力端子間に流れる横流を低減することができる。
ヒューズ部FS1〜FSn−1は、それぞれ配線部W1〜Wn−1に設けられる。ヒューズ部FS1〜FSn−1の各々は、ヒューズF1〜F3を含む。ヒューズF1は配線Lp上に設けられ、配線Lpに過電流が流れた場合に溶断される。ヒューズF2は配線Ln上に設けられ、配線Lnに過電流が流れた場合に溶断される。ヒューズF3は配線Lc上に設けられ、配線Lcに過電流が流れた場合に溶断される。
すなわち、第kの配線部Wkには第kのヒューズ部FSkが設けられる。第kのヒューズ部FSkにおいて、ヒューズF1〜F3はそれぞれ、第kの配線部Wkの配線Lp,Ln,Lcに過電流が流れた場合に溶断されることで、無停電電源システムを保護する。
具体的には、無停電電源装置UkまたはUk+1のコンバータ1、インバータ2、双方向チョッパ3などが故障して母線L1,L3間が短絡した場合、配線部Wkの配線Lp,Lcを通じて無停電電源装置Ukの母線L1,L3と無停電電源装置Uk+1の母線L1,L3との間に過電流が流れる。この場合、ヒューズ部FSkのヒューズF1,F3の少なくとも1つが溶断されると、無停電電源装置Ukの母線L1,L3と無停電電源装置Uk+1の母線L1,L3とが電気的に切り離される。これにより、健全な無停電電源装置が故障することを防止することができる。
たとえば、無停電電源装置Ukのコンバータ1の半導体モジュール20に含まれるトランジスタQ11が故障して導通状態に固定された場合、交流スイッチS1(トランジスタQ17,Q18)がオンされると、母線L1,L3間が短絡される。無停電電源装置Ukの母線L1,L3間が短絡されると、たとえば、無停電電源装置Uk+1のコンデンサC1の正側電極からヒューズF1、無停電電源装置Ukの短絡部、ヒューズF3を介して無停電電源装置Uk+1のコンデンサC1の負側電極に過電流が流れる。この過電流によってヒューズF1,F3の少なくとも1つが溶断されることにより、過電流が遮断される。
または、無停電電源装置UkまたはUk+1が故障して母線L2,L3間が短絡した場合、配線部Wkの配線Lc,Lnを通じて無停電電源装置Ukの母線L2,L3と無停電電源装置Uk+1の母線L2,L3との間に過電流が流れる。この場合、ヒューズ部FSkのヒューズF2,F3の少なくとも1つが溶断され、無停電電源システムを保護する。
または、無停電電源装置UkまたはUk+1が故障して母線L1,L2間が短絡した場合、配線部Wkの配線Lp,Lnを通じて無停電電源装置Ukの母線L1,L2と無停電電源装置Uk+1の母線L1,L2との間に過電流が流れる。この場合、ヒューズ部FSkのヒューズF1,F2の少なくとも1つが溶断され、無停電電源システムを保護する。
なお、無停電電源システムが正常である場合、各ヒューズ部のヒューズF1〜F3に流れる電流は、無停電電源装置U1〜Unの各々の定格電流値よりも十分に小さい。このため、ヒューズF1〜F3の各々の定格遮断電流値は、無停電電源装置U1〜Unの各々の定格電流値よりも小さな値に選択されている。ヒューズに流れる電流が定格遮断電流値を超えると、ヒューズが溶断され、ヒューズに流れる電流が遮断される。
さらに、各配線部の配線Lp,Ln,Lcの許容電流値は、それぞれ母線L1,L2,L3の許容電流値よりも小さな値に選択されている。配線に流れる電流が許容電流値を超えると、配線が発熱する。
(予備充電回路の構成)
無停電電源システムは、さらに、予備充電回路5を備える。予備充電回路5は、交流電源51と第1の無停電電源装置U1の母線L1,L2との間に接続されている。交流電源51と予備充電回路5とを繋ぐ接続線上には開閉器7が設けられる。開閉器7は図示しない制御装置からの制御信号に応答してオン/オフされることにより、交流電源51と予備充電回路5との間の電力供給経路を導通/遮断する。
無停電電源システムの起動時には、各無停電電源装置のコンデンサC1,C2が無充電状態となっている場合がある。この場合に開閉器8をオンして交流電源51と各無停電電源装置とを接続すると、コンデンサC1,C2に過大な突入電流が流れ込む可能性がある。この起動時の突入電流を抑制するために、予備充電回路5を用いて、無停電電源システムの起動に備えて各無停電電源装置のコンデンサC1,C2を予め充電する。
具体的には、無停電電源システムの起動時には、開閉器8をオフしておき、開閉器7をオンすることで予備充電回路5を交流電源51に接続する。予備充電回路5は、交流電源51から供給される三相交流電圧に基づいて正電圧および負電圧を生成する。無停電電源装置U1では、予備充電回路5によって生成された正電圧および負電圧がそれぞれ、直流正母線L1および直流負母線L2に供給されることにより、コンデンサC1,C2が充電される。
図4は、予備充電回路5の構成を示す回路図である。図4を参照して、予備充電回路5は、交流端子T31〜T33、直流端子T34,T35、抵抗素子R1〜R3、および半導体モジュール25を含む。
交流端子T31〜T33は、開閉器8(図1)を介して交流電源51から三相交流電圧を受ける。直流端子T34は無停電電源装置U1の直流正母線L1に接続され、直流端子T35は無停電電源装置U1の直流負母線L2に接続される。
抵抗素子R1は、交流端子T31およびノードN11の間に接続される。抵抗素子R2は、交流端子T32およびノードN12の間に接続される。抵抗素子R3は、交流端子T33およびノードN13の間に接続される。
半導体モジュール25は、ダイオードD11〜D16を含む。ダイオードD11〜D13のカソードはともに直流端子T34に接続され、それらのアノードはそれぞれノードN11〜N13に接続される。ダイオードD14〜D16のカソードはそれぞれノードN11〜N13に接続され、それらのアノードはともに直流端子T35に接続される。
半導体モジュール25は、ダイオードブリッジを含む三相全波整流回路を構成する。半導体モジュール25は、交流電源51から抵抗素子R1〜R3を介して供給される三相交流電圧に基づいて正電圧および負電圧を生成し、生成した正電圧および負電圧をそれぞれ無停電電源装置U1の直流正母線L1および直流負母線L2に供給する。
上述したように、無停電電源装置U1〜Unの直流正母線L1は、配線部W1〜Wn−1の配線Lpによって互いに接続されている。したがって、予備充電回路5から無停電電源装置U1の直流正母線L1に供給された正電圧は、配線Lpを介して無停電電源装置U2〜Unの各々の直流正母線L1に供給される。
同様に、無停電電源装置U1〜Unの直流負母線L2は、配線部W1〜Wn−1の配線Lnによって互いに接続されている。したがって、予備充電回路5から無停電電源装置U1の直流負母線L2に供給された負電圧は、配線Lnを介して無停電電源装置U2〜Unの各々の直流負母線L2に供給される。
このようにして、予備充電回路5によって生成された正電圧および負電圧が、配線部W1〜Wn−1を介して無停電電源装置U1〜Unの各々の直流正母線L1および直流負母線L2に供給されることにより、各無停電電源装置のコンデンサC1,C2が充電される。各無停電電源装置のコンデンサC1,C2を充電した後は、開閉器7をオフして開閉器8をオンすることで、交流電源51と各無停電電源装置とを接続する。
なお、予備充電時に配線部W1〜Wnの配線Lp,Ln,Lcおよびヒューズ部FS1〜FSn−1のヒューズF1〜F3に流れる電流は、配線およびヒューズの許容電流値よりも小さな値に選択されている。
本実施の形態によれば、無停電電源装置U1〜Unの直流正母線L1が互いに接続され、それらの直流負母線L2が互いに接続されているため、1台の予備充電回路5によって無停電電源装置U1〜Unの全てのコンデンサC1,C2を一括して充電することができる。これにより、無停電電源システムの小型化および低コスト化を実現することができる。
(電圧検出器の構成)
無停電電源システムは、さらに、電圧検出器6を備える。電圧検出器6は、第nの無停電電源装置Unの母線L1〜L3に接続されている。電圧検出器6は、無停電電源装置Unの母線L1〜L3の電圧を検出すると、その検出値を示す信号を無停電電源装置Unの制御回路4に出力する。
上述したように、本実施の形態では、無停電電源装置U1〜Unの直流正母線L1を互いに接続し、無停電電源装置U1〜Unの直流正母線L1の電圧を一致させている。無停電電源装置U1〜Unの直流負母線L2を互いに接続し、無停電電源装置U1〜Unの直流負母線L2の電圧を一致させている。無停電電源装置U1〜Unの直流中性点母線L3を互いに接続し、無停電電源装置U1〜Unの直流中性点母線L3の電圧を一致させている。したがって、無停電電源装置Unの母線L1〜L2に接続された1台の電圧検出器6によって無停電電源装置U1〜Unの母線L1〜L3の電圧を一括して検出することができる。これにより、無停電電源システムの小型化および低コスト化を実現することができる。
無停電電源装置U1〜Unの制御回路4は、通信回線9によって互いに結合されて1つの総合制御回路を構成している。総合制御回路は、電圧検出器6の検出値をモニタしている。上述したコンデンサC1,C2の予備充電では、総合制御回路は、電圧検出器6の検出値が予め定められた基準値を超えた場合には、コンデンサC1,C2の充電が完了したと判定して予備充電回路5の運転を停止させる。
これに対して、ヒューズ部FS1〜FSn−1のいずれかにおいてヒューズF1,F2の少なくとも1つが溶断している場合、予備充電回路5から各無停電電源装置の母線L1,L2への電圧供給が遮断されることになる。具体的には、第kのヒューズ部FSkが溶断している場合には、第(k+1)以降の無停電電源装置(すなわち、無停電電源装置Uk+1〜Un)の各々の母線L1,L2に対する電圧の供給が遮断されてしまう。その結果、これらの無停電電源装置のコンデンサC1,C2を充電することができなくなる。
第(k+1)以降の無停電電源装置Uk+1〜Unにおいては、コンデンサC1,C2が充電されないため、予備充電の実行中、母線L1〜L3の電圧が変化せず、低いままである。この直流電圧の無変化は、第nの無停電電源装置Unの直流母線L1〜L3に接続された電圧検出器6の検出値にも現われる。
すなわち、ヒューズ部FS1〜FSn−1のいずれかが溶断している場合、予備充電の実行中にもかかわらず、電圧検出器6の検出値に変化が見られない。したがって、この電圧検出器6の検出値の無変化を捉えることで、ヒューズ部FS1〜FSn−1のうちの少なくとも1つのヒューズ部が溶断している異常を検出することができる。
このような予備充電時における異常検出を有効に行なうためには、図1に示されるように、予備充電回路5を第1の無停電電源装置U1の母線L1,L2に接続するとともに、電圧検出器6を第nの無停電電源装置Unの母線L1〜L3に接続することが好ましい。
このようにすると、第1〜第(n−1)のヒューズ部FS1〜FSn−1のいずれかが溶断した場合であっても、電圧検出器6の検出値にその影響が現われるため、異常を確実に検出することができる。なお、予備充電回路5を第nの無停電電源装置Unの母線L1,L2に接続するとともに、電圧検出器6を第1の無停電電源装置U1の母線L1,L2に接続することによっても、同様の効果を得ることができる。
[本実施の形態の作用効果]
次に、比較例による電力変換システムと対比しながら、本実施の形態による電力変換システムの作用効果について説明する。
図5は、比較例による電力変換システムの構成を示す回路ブロック図である。図5を参照して、比較例による電力変換システム(無停電電源システム)は、基本的に図1に示す電力変換システムと同様の構成を備えるが、電力変換装置(無停電電源装置)の構成が異なっている。
比較例による無停電電源システムは、交流電源51と負荷52との間に並列に接続されたn台の無停電電源装置U1〜Unを備えている。無停電電源装置U1〜Unの各々は、コンバータ1、インバータ2、双方向チョッパ3、制御回路4、予備充電回路5、電圧検出器6、直流正母線L1、直流負母線L2、直流中性点母線L3、およびコンデンサC1,C2を含む。比較例による無停電電源装置は、図1に示す無停電電源装置と比較して、予備充電回路5および電圧検出器6を有している点が異なっている。
比較例による無停電電源システムでは、無停電電源装置ごとに、制御回路4が電圧検出器6の検出値に基づいて予備充電回路5を制御することで、コンデンサC1,C2の充電が実行される。このようにすると、万一ヒューズ部FS1〜FSn−1のいずれかが溶断している場合であっても、いずれの無停電電源装置においてもコンデンサC1,C2を充電することができる。
しかしながら、比較例では、予備充電回路5および電圧検出器6がそれぞれ無停電電源装置の台数分必要となる。また、図1に示す無停電電源装置に比べて無停電電源装置が大型になる。その結果、無停電電源システム全体の大型化および高コスト化を招いてしまう。
また、比較例では、各無停電電源装置において電圧検出器6が自己の母線L1〜L3の電圧を直接的に検出することができるため、その検出値がヒューズ部の溶断に影響されることがない。その結果、無停電電源装置ごとに独立して予備充電を実行できるものの、本実施の形態のように、予備充電時の電圧検出器6の検出値に基づいてヒューズ部の溶断を検出することは不可能である。
これに対して、本実施の形態による無停電電源システムによれば、複数台の無停電電源装置U1〜Unに対して1台の予備充電回路5と1台の電圧検出器6とが設けられるため、予備充電回路5および電圧検出器6の台数を減らすことができる。これにより、無停電電源システムの小型化、低コスト化を実現することができる。
また、1台の予備充電回路5を第1(または第n)の無停電電源装置の母線L1,L2に接続するとともに、1台の電圧検出器6を第n(または第1)の無停電電源装置の母線L1〜L3に接続することにより、無停電電源システムの起動時に行なわれる予備充電において、電圧検出器6の検出値に基づき、ヒューズ部FS1〜FSn−1の少なくとも1つが溶断している異常を検出することができる。
なお、上述した実施の形態では、各配線部の配線Lp,Ln,Lcに対して、各ヒューズ部のヒューズF1〜F3をそれぞれ設ける構成について説明したが、3つのヒューズF1〜F3のうちのいずれか1つを省略しても構わない。たとえば、配線Lp,LnにヒューズF1,F2をそれぞれ設け、配線Lcにはヒューズを設けない構成としてもよい。あるいは、配線Lp,LcにヒューズF1,F3をそれぞれ設け、配線Lnにはヒューズを設けない構成としてもよい。あるいは、配線Ln,LcにヒューズF2,F3をそれぞれ設け、配線Lpにはヒューズを設けない構成としてもよい。
また、上述した実施の形態では、コンバータ1およびインバータ2の各々に含まれる電力変換回路を3レベル回路とする構成について説明したが、電力変換回路を2レベル回路としてもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。