JP6545995B2 - 繊維束の製造方法 - Google Patents
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Description
しかし繊維束の洗浄工程において、特に多数の単繊維が集合した繊維束、いわゆるトウの状態にて製造する場合や、生産速度をさらに向上させようとする場合には、困難性が顕著に増加していくこととなる。特に単純な洗浄処理方法にて十分な洗浄効果を得るためには、長い洗浄浴長が必要であり、設備の大型化や洗浄液の量が多くなるという問題が発生するのである。
また特許文献3や特許文献4では、洗浄槽を出た、あるいは洗浄槽内の繊維トウに対し、洗浄液を吹き付けるなどする方法が開示されている。しかしながら、これらの方法では、繊維トウの内部まで洗浄液を行き渡らせるのが難しく、特に繊維トウを構成する単繊維数が多くかつ高密度の糸条では十分な洗浄効果を得られないという問題があった。
さらには、処理浴中に仕切り材が複数存在し、仕切り材の他端が処理浴の底面に位置するA型仕切り材と、処理浴の水面上に位置するB型仕切り材とを含むものであることや、A型仕切り材の数がB型仕切り材の数よりも多いものであることが好ましい。また仕切り材の繊維束に接触する一端の形状が、半径1mm以上の曲率を有する曲面であることや、処理浴の上流側から新規な洗浄液が供給されることが好ましい。
ここで本発明にて洗浄処理される繊維束としては、繊維表面に付着した異物や剤を除去する必要がある繊維束であれば本発明の対象物となる。例えば繊維の表面処理として、酸、アルカリ、その塩類などが用いられ、洗浄工程が行われている。
また、中でも本発明は、その除去する対象が溶媒等の液体、例えばN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等である場合に効率的である。
そして本発明の繊維束の製造方法では、洗浄浴中を繊維束が連続して通過し、洗浄処理が行われる。そしてこの洗浄浴中には仕切り材が設置されており、該仕切り材の一端が繊維束に接触し、他端が洗浄浴の底面または水面上に位置していることが必要である。
図1は、本発明に用いられる洗浄浴を含む洗浄装置の一実施形態を模式的に例示した側面図である。この図において、1、2は仕切り材(A型及びB型)、3は走行する繊維束、4は洗浄浴、5は浸漬ロールをそれぞれ示す。
本発明は、例えばこのようにして得られた繊維束を、有効に洗浄処理する繊維束の製造方法なのである。この本発明で行われる洗浄工程は、図1に示したように、洗浄対象となる繊維束は、浸漬ロール5によって洗浄浴4へと導かれる。
また仕切り材の形状としては、繊維束に接する部分の形状が特に重要であり、繊維束に接触する一端の形状が、半径1mm以上の曲率を有する曲面であることが好ましい。特には一端の形状が、半径2〜1000mmの曲率を有することが好ましい。
他方、洗浄浴が深い場合は仕切り材が円型では槽内を占める体積が大きくなるため、仕切り材が板状であって、繊維束に接触する一端のみの形状が、半径1mm以上の曲率を有する板型であることが好ましい。
また特に本発明では洗浄対象となる繊維束が、太いトウの状態である時に効果的である。例えば洗浄対象の繊維束としては、繊維束の総単糸数が100〜50万本であることが好ましい。
繊維束から剥がされた随伴流体は洗浄浴内の液を効率的に撹拌するため、洗浄液の濃度が均一になりやすく、さらに洗浄浴内を複数個の洗浄浴に分割したような濃度勾配を得ることが出来る。
特に本発明の製造方法は、繊維束が紡糸後の繊維状物を凝固浴中にて繊維化したものである場合に特に有効である。このような場合、繊維化された直後の繊維はまだ十分の固化しておらず、損傷が受けやすいが、本発明の製造方法を採用することにより効率の良い製造が可能となる。また、水洗によって紡糸の際や凝固の際に用いられた溶媒を完全に除去することが必要なのであるが、本発明は一つの洗浄浴中に複数の溶媒の濃度分布が生じ、あたかも多段の洗浄浴を用いたかのような効果が、短い洗浄浴長で洗浄液量を増やすことなく、発揮されるのである。
繊維中に含まれる溶媒量は、以下の方法により測定した。
洗浄工程の入側および出側にて、それぞれの繊維をサンプリングした。サンプリングした繊維を遠心分離機(回転数5000rpm)に10分間かけ、このときの繊維質量(M1)を測定した。この繊維を、質量M2gのメタノール中で4時間煮沸し、繊維中のアミド系溶媒および水を抽出した。抽出後の繊維を105℃雰囲気下で2乾燥し、乾燥後の繊維質量(P)を測定した。また、抽出液中に含まれるアミド系溶媒の質量濃度(C)を、ガスクロマトグラフにより求めた。
繊維中に残存する溶媒量N(%)は、上記のM1、M2、P、およびCを用いて、下記
式により算出した。
N=[C/100]×[(M1+M2−P)/P]×100
界面重合法によって製造したポリメタフェニレンイソフタルアミド粉末21.5質量部を、−10℃に冷却したN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと表記する)78.5質量部に懸濁させ、スラリー状にした。引き続き、懸濁液を60℃まで昇温して溶解させ、透明なポリマー溶液を得た。
得られたポリマー溶液を紡糸原液として、孔径0.07mm、孔数15000の吐出孔群が穿設された紡糸口金から、85℃の凝固浴中に吐出して紡糸した。このときの凝固浴の組成は、塩化カルシウムが40質量%、NMPが5質量%、水が55質量%であり、浸漬長(有効凝固浴長)1000mmにて糸速7.0m/分で吐出して凝固液中を通過させた後、いったん空気中に引き出した。
水洗工程の入側(水洗前)の繊維内に含まれる溶媒量は、131.0質量部であったが、水洗工程の出側(水洗後)の繊維内に含まれる溶媒量は、73.4質量部であり、繊維束が仕切り材に接していたにも関わらず、工程調子も良好であった。
実施例1と同じ条件で紡糸し、凝固させた芳香族ポリアミド凝固糸につき、実施例1と同じ組成および温度の水洗槽を用いて洗浄を実施した。なお、洗浄にあたっては、本発明の洗浄設備を設置しない通常の水洗槽を通過させて行った。水洗工程の入側(水洗前)の繊維内に含まれる溶媒量は、131.0質量部であったが、水洗工程の出側(水洗後)の繊維内に含まれる溶媒量は、90.5質量部までしか低減していなかった。
単量体としてアクリロニトリル95質量%、アクリル酸メチル4質量%、イタコン酸1質量%の割合で含む混合液を溶液重合、湿式紡糸、凝固、を順に行うことによって、24000本のフィラメントからなるポリアクリルニトリル系の繊維束(凝固糸条)を得た。
得られた繊維束を延伸し、さらに引き続いて水洗槽に導いた。該水洗槽内を繊維束が走行する際に、本発明の繊維束下面に接触し、かつ浴槽底面に接触する円柱状のA型仕切り材2本、及び繊維束上面に接触しかつ浴槽液面より上方に端面を有する円柱状のB型仕切り材1本を用いて繊維束を洗浄した。円柱の直径は20mmであった。繊維束の単糸密度は5mm/1000本の扁平形状の繊維束であった。水洗浴槽の幅方向に対する繊維束の占める割合は47%であり、有効水洗長17250mmの水洗槽を通過後、沸水中で延伸し、再び有効水洗長3450mmの水洗槽を通過して洗浄した。水洗浴槽には洗浄液を繊維束の走行方向の反対側から1m3/時間で供給した。
得られたアクリロニトリル系重合体繊維束の溶媒や塩類等の残存物の濃度は、水洗浴槽中にて仕切り材を使用していない場合の50%に低減していた。また、繊維束が仕切り材に接していたにも関わらず、工程調子も良好であった。
また、水洗後の繊維束を耐炎化処理、炭化処理することにより、炭素繊維を得ることができた。
2:B型仕切り材
3:走行する繊維束
4:水洗槽
5:浸漬ロール
Claims (5)
- 連続して洗浄処理する繊維束の製造方法であって、洗浄処理が処理浴中にて行われ、処理浴中には仕切り材が設置されており、該仕切り材の少なくとも一つの仕切り材において、その一端が繊維束に接触し、他端が処理浴の底面に位置することを特徴とする繊維束の製造方法。
- 処理浴中に仕切り材が複数存在し、仕切り材の他端が処理浴の底面に位置するA型仕切り材と、処理浴の水面上に位置するB型仕切り材とを含むものである請求項1に記載の繊維束の製造方法。
- A型仕切り材の数がB型仕切り材の数よりも多いものである請求項2記載の繊維束の製造方法。
- 仕切り材の繊維束に接触する一端の形状が、半径1mm以上の曲率を有する曲面である請求項1〜3のいずれか1項記載の繊維束の製造方法。
- 処理浴の上流側から新規な洗浄液が供給される請求項1〜4のいずれか1項記載の繊維束の製造方法。
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