本発明で用いるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物(α)は下記一般式(1)
〔式中、Aはそれぞれ加水分解性基または非加水分解性基であり、式中、二つある(A)
3の各々において、少なくとも一つのAは加水分解性基である。Zは2価の連結基である。Y
1及びY
2は、それぞれ直接結合または2価の連結基である。PFPEは、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を表す。〕で表される。
本発明で用いるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物(α)は前記一般式(1)で示される通り、二つのSi(A)3を有し、しかも、それぞれの(A)3中の少なくとも一つのAが加水分解性基である。このような珪素原子(反応性シリル基)を有することにより、本発明で用いるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物(α)は、以下のような反応により基材表面に共有結合すると発明者らは推測している。推測している反応の一つは、加水分解によりシラノール基を生成し、該シラノール基が各種基材、例えば、好ましくはガラス基材等の表面にある水酸基と脱水縮合し、基材表面に共有結合する反応である。推測しているもう一つの反応は、加水分解性基が基材の水酸基と直接縮合(加水分解性基がアルコキシ基の場合は脱アルコール縮合)し、基材表面に共有結合する反応である。本発明品は、片末端だけでなく両末端が基材と結合することができるため、これらの縮合反応により形成される共有結合により本発明で用いるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物(α)を含む表面改質剤は従来発明品よりも基材表面に強固に固着し、表面改質剤が有するポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖が奏する防汚性とすべり性を兼ね備えながら、耐久性にも優れる被膜を形成することができる。
前記加水分解性基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基;メトキシエトキシ基等のアルコキシ基置換アルコキシ基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基;イソプロペニルオキシ基、イソブテニルオキシ基等のアルケニルオキシ基;ジメチルケトキシム基、メチルエチルケトキシム基、ジエチルケトキシム基、シクロヘキサンオキシム基等のイミンオキシ基;メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の置換アミノ基;N−メチルアセトアミド基、N−エチルアミド基等のアミド基;ジメチルアミノオキシ基、ジエチルアミノオキシ基等の置換アミノオキシ基;塩素等のハロゲン等が挙げられる。加水分解性基の中でも、加水分解の速度が早く、迅速に防汚性とすべり性を兼ね備えながら、耐久性にも優れる被膜を形成することができることからアルコキシ基が好ましく、炭素原子数1〜6のアルコキシ基がより好ましく、炭素原子数1〜3のアルコキシ基が更に好ましく、メトキシ基、エトキシ基が特に好ましく、メトキシ基が最も好ましい。
前記非加水分解性基としては、例えば、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数6〜20のアリール基又は炭素原子数7〜20のアラルキル基等が挙げられる。中でも、立体障害を避けて加水分解速度を早くでき、その結果、迅速に防汚性とすべり性を兼ね備えながら、耐久性にも優れる被膜を形成することができることから炭素原子数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
前記(A)3中の加水分解性基の数は前記の通り少なくとも一つであるが、より耐久性に優れる被膜が形成できる表面改質剤が得られることから二つ以上が好ましく、前記二つある(A)3中のAはすべて加水分解性基であることがより好ましい。つまり、非加水分解性基がないものが最も好ましい。
前記(A)3中の加水分解性基を複数有する場合、該加水分解性基は同一のものであっても良いし、異なっていても良い。また、非加水分解性基を複数有する場合も、該非加水分解性基は同一のものであっても良いし、異なっていても良い。
前記一般式(1)中のZは2価の連結基である。Y1及びY2は、それぞれ直接結合または2価の連結基である。2価の連結基としては、例えば、炭素原子数1〜22のアルキレン基等が挙げられる。前記アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、tert−ブチレン基、2,2−ジメチルプロピレン基、2−メチルブチレン基、2−メチル−2−ブチレン基、3−メチルブチレン基、3−メチル−2−ブチレン基、ペンチレン基、2−ペンチレン基、3−ペンチレン基、3−ジメチル−2−ブチレン基、3,3−ジメチルブチレン基、3,3−ジメチル−2−ブチレン基、2−エチルブチレン基、ヘキシレン基、2−ヘキシレン基、3−ヘキシレン基、2−メチルペンチレン基、2−メチル−2−ペンチレン基、2−メチル−3−ペンチレン基、3−メチルペンチレン基、3−メチル−2−ペンチレン基、3−メチル−3−ペンチレン基、4−メチルペンチレン基、4−メチル−2−ペンチレン基、2,2−ジメチル−3−ペンチレン基、2,3−ジメチル−3−ペンチレン基、2,4−ジメチル−3−ペンチレン基、4,4−ジメチル−2−ペンチレン基、3−エチル−3−ペンチレン基、ヘプチレン基、2−ヘプチレン基、3−ヘプチレン基、2−メチル−2−ヘキシレン基、2−メチル−3−ヘキシレン基、5−メチルヘキシレン基、5−メチル−2−ヘキシレン基、2−エチルヘキシレン基、6−メチル−2−ヘプチレン基、4−メチル−3−ヘプチレン基、オクチレン基、2−オクチレン基、3−オクチレン基、2−プロピルペンチレン基、2,4,4−トリメチルペンチレン基、デカオクチレン基等のアルキレン基等が挙げられる。
前記Zとしては、合成が容易で、簡便に本発明で用いるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物(α)を得ることができることから炭素原子数1〜10のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1〜6のアルキレン基がより好ましく、1〜3のアルキレン基がさらに好ましく、n−プロピレン基が特に好ましい。
また、Y1、Y2としては、フッ素原子の含有率が高くなり、より防汚性に優れる被膜が得られる表面改質剤となることからそれぞれ炭素原子数1〜6のアルキレン基が好ましく、それぞれ炭素原子数1〜3のアルキレン基がより好ましく、防汚性に優れ、工業的に得られやすい点で、それぞれメチレン基が更に好ましい。
前記一般式(1)中で二つあるZは、同一のものであっても良いし、異なっていても良い。また、本発明で用いるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物(α)は、それぞれ異なるZを有する改質剤の混合物となっていても良い。
前記一般式(1)中のY1とY2は、同一のものであっても良いし、異なっていても良い。また、本発明で用いるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物(α)は、それぞれ異なるY1とY2を有する改質剤の混合物となっていても良い。
本発明で用いるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物(α)は、骨格中にウレタン結合を有する。このウレタン結合を有することにより、本発明の表面改質剤は両末端にある加水分解性基の近傍の極性が向上する。その結果、後述する基材、好ましくはガラス基材との付着性が良好になり、効率的に基材表面との反応が進行する。その結果、耐久性を有し、且つ、防汚性とすべり性にも優れる被膜を好適に物品上に形成することができる。
以下に、本発明で用いるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物(α)の具体例を示す。式中、PFPEはポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を表す。
本発明で用いるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物(α)が有するPFPE〔ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖〕としては、例えば、炭素原子数1〜3のパーフルオロアルキレン基と酸素原子が交互に連結した構造を有するものを好ましく挙げることができる。炭素原子数1〜3のパーフルオロアルキレン基は、一種類であっても良いし複数種の混合であっても良く、具体的には、下記構造式(P−1)で表されるものが挙げられる。
(上記構造式中、Xはパーフルオロアルキレン基である。該Xはその全てが同一構造のものであっても良いし、また、複数の構造がランダムにまたはブロック状に存在していても良い。)
前記Xとしては、例えば、下記に示す構造等を例示できる
これらのなかでも、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖は、すべり性を発現する屈曲点となる酸素原子が多く存在すること、鎖の屈曲運動を阻害する枝分かれ構造がないことから、Xはパーフルオロメチレン基(a)とパーフルオロエチレン基(b)が好ましく、工業的に得られやすい点も含めると、パーフルオロメチレン基(a)とパーフルオロエチレン基(b)とが共存するものがとりわけ好ましい。また、前記パーフルオロメチレン基(a)とパーフルオロエチレン基(b)とが共存する場合、その存在比(a/b)(個数の比)は1/10〜10/1が好ましく、3/10〜10/3がより好ましい。
前記炭素原子数1〜3のパーフルオロアルキレン基を有するシラン化合物(α)としては、例えば、下記構造式で表されるものを好ましく例示できる。
〔式中、Aはそれぞれ加水分解性基または非加水分解性基であり、式中、二つある(A)
3の各々において、少なくとも一つのAは加水分解性基である。Xはその全てが同一構造のものであっても良いし、また、複数の構造がランダムにまたはブロック状に存在していても良い炭素原子数1〜3のパーフルオロアルキレン基である。Zは炭素原子数1〜6のアルキレン基である。Y
1及びY
2はそれぞれ炭素原子数1〜3のアルキレン基である。nは合計で6〜300である。〕
前記式(1−1)で表されるシラン化合物は、炭素原子数1〜3のパーフルオロアルキレン基を有する。このように、短い鎖を有する事により、柔軟な骨格となり、その結果として、すべり性に優れる被膜を物品上に形成することができる。一般式(1)中のnは12〜200がより好ましく、20〜150がより好ましく、30〜100が更に好ましく、35〜70が特に好ましい。
前記(1−1)で表されるシラン化合物としては、例えば、下記式で表されるものを例示することができる。
前記ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖は、汚れ拭き取り性とすべり性が優れる点からポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖1本に含まれるフッ素原子の合計が30〜600個の範囲であることが好ましく、60〜450個の範囲であることがより好ましく、90〜300個の範囲が更に好ましく、100〜200個の範囲であることが特に好ましい。
本発明で用いるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物(α)は、例えば、下記一般式(α―1)
〔式中、Y
1及びY
2はそれぞれ2価の連結基である。〕で表されるジオールと、下記一般式(α―2)
〔式中、Aは加水分解性基または非加水分解性基であり、少なくとも一つのAは加水分解性基である。Zは2価の連結基である。〕で表されるイソシアネートとを反応させることにより好ましく得ることができる。
前記一般式(α―1)中のY1、Y2、PFPE及び一般式(α―2)中のZ、Aは、前記一般式(1)中のものと同じである。
前記一般式(α―1)で表されるジオールとしては、例えば、下記に示すジオール等を例示する事ができる。
前記一般式(α―1−1)、(α―1−2)の中でも、下記に示すジオールを好ましく例示できる。
(Xはその全てが同一構造のものであっても良いし、また、複数の構造がランダムにまたはブロック状に存在していても良い炭素原子数1〜3のパーフルオロアルキレン基である。nは合計で6〜300である。〕
前記一般式(α―2)で表されるイソシアネートとしては、例えば、下記に示すイソシアネート等を例示することができる。
前記式(α−2−1)〜(α−2−12)で表されるイソシアネート化合物中のZは、合成が容易で、簡便に本発明で用いるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物(α)を得ることができることから炭素原子数1〜10のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1〜6のアルキレン基がより好ましく、1〜3のアルキレン基がさらに好ましく、n−プロピレン基が特に好ましい。
前記一般式(α―1)であらわされるジオールと一般式(α―2)で表されるイソシアネートとを反応させる際には、前記一般式(α―1)に含まれるOH基1モルに対して、一般式(α―2)で表されるイソシアネートを、0.5〜1.5モルになるように仕込むのが好ましく、0.9〜1.1モルとなるように仕込むのがより好ましく、0.98〜1.02モルとなるように仕込むのが最も好ましい。
前記一般式(α―1)であらわされるジオールと一般式(α―2)で表されるイソシアネートとの反応(ウレタン化反応)においては、前記一般式(α―1)であらわされるジオールと一般式(α―2)で表されるイソシアネートとの反応を促進させるために、例えばトリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン等の第3級アミン類、ジブチル錫ジラウリレート、ジオクチル錫ジラウリレート、2−エチルヘキサン酸錫等の錫化合物を触媒として用いて行うことができる。
前記触媒の添加量は、反応混合物全体に対して0.001〜5.0質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜1.0質量%で、更に好ましくは0.02〜0.2質量%である。反応時間は1〜10時間が好ましい。また反応温度は30〜120℃が好ましく、より好ましくは40〜90
一般式(α―1)であらわされるジオールと一般式(α―2)で表されるイソシアネートとの反応(ウレタン化反応)を行う際は、反応系は無溶剤系であっても良いし、イソシアネート基との反応性を有さないアセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン等の℃である。
溶剤やフッ素系の溶剤を反応溶剤とした溶剤系であっても良い。
本発明で用いるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物(β)は下記一般式(2)〜(5)
〔式中、rは平均5〜100で、Rは二価の連結基で、R
1は炭素原子数1〜6のアルキレン基で、Xは炭素原子数4〜8の3価の環状脂肪族基である。一般式(2)および一般式(3)において、二つあるBは有機基またはSi(A)
3であり二つあるBの少なくとも一つはSi(A)
3である。該Si(A)
3中のAは加水分解性基または非加水分解性基であり、そのうちの少なくとも一つは加水分解性基である。一般式(4)および一般式(5)中のAは加水分解性基または非加水分解性基であり、そのうちの少なくとも一つは加水分解性基である。〕で表されるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物からなる群から選ばれる一種以上の化合物(β)とを含有する。
本発明で用いるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物(β)は前記一般式(2)〜一般式(5)で示される通り、少なくとも一つのSi(A)3を有し、しかも、それぞれの(A)3中の少なくとも一つのAが加水分解性基である。このような珪素原子(反応性シリル基)を有することにより、本発明で用いるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物(β)は、前記ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物(α)と同様の作用により基材表面に共有結合すると発明者らは推測している。前記ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物(α)及びポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物(β)の作用により、本発明の表面改質剤は防汚性とすべり性を兼ね備えながら、耐久性にも優れる被膜を形成することができる。
また、本発明で用いるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物(β)は、多数のトリフルオロメチル基(CF3基)を有する。CF3基は表面エネルギーを低下させる能力が強い。その為、この多数のCF3基を有するシラン化合物(β)を含有することにより、本発明の改質剤は上記防汚性をより効果的に奏することが可能となる。
本発明で用いるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物(β)の中でも、一般式(2)で表される化合物と一般式(3)で表される化合物は、二つのBで表される基を有し、少なくとも一つが前記Si(A)3である。
一般式(2)で表される化合物と一般式(3)で表される化合物のBのうち一つがSi(A)3の場合、他のBはSi(A)3以外の有機基である。有機基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、フェニル基等が挙げられる。前記アルキル基は、更に、水素原子の一部もしくは全部が他の原子や原子団に置換されていても良い。具体的に水素原子の一部もしくは全部が他の原子や原子団に置換されたアルキル基としては、例えば、部分フッ素化アルキル基、パーフルオロアルキル基等が挙げられる。前記部分フッ素化アルキル基において、フッ素原子が結合した炭素原子の数は、好ましくは1〜6である。また、パーフルオロアルキル基の炭素原子の数も好ましくは1〜6である。このような炭素原子数を有するフッ素化アルキル基をBとして含有する事により、被膜への防汚性能の更なる向上が期待できる。
前記一般式(2)〜一般式(5)で表されるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物が有する加水分解性基としては、例えば、本発明で用いるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物(α)が有する加水分解性基を好ましく挙げることができる。一般式(2)〜一般式(5)で表されるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物(β)が有する加水分解性基は加水分解の速度が早く、迅速に防汚性とすべり性を兼ね備えながら、耐久性にも優れる被膜を形成することができることからアルコキシ基が好ましく、炭素原子数1〜6のアルコキシ基がより好ましく、炭素原子数1〜3のアルコキシ基が更に好ましく、メトキシ基、エトキシ基が特に好ましい。
前記一般式(2)〜一般式(5)で表されるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物が有する非加水分解性基としては、例えば、本発明で用いるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物(α)が有することができる非加水分解性基を好ましく挙げることができる。
前記一般式(2)〜一般式(5)で表されるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物が有する(A)3中の加水分解性基の数は前記の通り少なくとも一つであるが、より耐久性に優れる被膜が形成できる表面改質剤が得られることから二つ以上が好ましく、前記二つある(A)3中のAはすべて加水分解性基であることがより好ましい。つまり、非加水分解性基がないものが最も好ましい。
前記一般式(2)〜一般式(5)で表されるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物が有する(A)3中の加水分解性基を複数有する場合、該加水分解性基は同一のものであっても良いし、異なっていても良い。また、非加水分解性基を複数有する場合も、該非加水分解性基は同一のものであっても良いし、異なっていても良い。
前記一般式(2)〜一般式(5)で表されるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物中のrは平均5〜100である。rはCF3基の含有量が多いほど防汚性に優れる被膜が得られる表面改質剤となることから平均で8〜80が好ましく、平均で10〜60がより好ましい。
前記一般式(2)〜一般式(5)で表されるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物中のRは二価の連結基である。前記Rは、例えば、下記(R−1)または(R−2)
(式中、R2は炭素原子数1〜3のアルキレン基であり、R3は直接結合または炭素原子数1〜6のアルキレン基であり、R4は炭素原子数1〜5のアルキレン基である)
で表される構造を好ましく例示できる。
前記(R−1)で表される構造の具体例を下記に示す。
前記(R−2)で表される構造の具体例を下記に示す。
前記(R−1)や(R−2)で表される構造の中でも、本発明で用いるシラン化合物(β)を製造する際の原料を安定して入手でき、且つ、ガラス基材等の基材上に耐久性に優れる防汚性とすべり性に優れる被膜を形成することができる表面改質剤が得られることから(R−1−1)、(R−1−3)、(R−1−4)、(R−2−5)、(R−2−6)、(R−2−8)で表される構造が好ましく、(R−1−3)及び(R−1−4)で表される構造がより好ましい。
一般式(3)で表されるシラン化合物や一般式(5)で表されるシラン化合物中のXは炭素原子数4〜8の3価の環状脂肪族基である。該環状脂肪族基としては、例えば、シクロヘキシル環を好ましく例示することができる。
以下に、本発明で用いるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物(β)の具体例を示す。
本発明で用いる一般式(2)で表されるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物と一般式(3)で表されるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物において、Bが共にSi(A)3の化合物は、例えば、下記の製法により得ることができる。
製法1:下記一般式(β−1)
(式中、rは平均5〜100である。)
で表されるカルボン酸(β―1)と、下記一般式(β−2)または一般式(β−3)
(式中Rはそれぞれ二価の連結基である。Aは加水分解性基または非加水分解性基であり、そのうちの少なくとも一つは加水分解性基である。)で表されるエポキシシラン化合物とを反応させて、エポキシ基由来の2級水酸基を有する反応物を得る第一工程と、該反応物と下記一般式(β―4)
(R
1は炭素原子数1〜6のアルキレン基である。Aは加水分解性基または非加水分解性基である。)で表されるイソシアネート化合物(β−4)とを反応させる第二工程を含む製法。
本発明で用いる一般式(2)や一般式(3)で表されるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物において、Bの一方がSi(A)3で、Bのもう一方がSi(A)3以外の有機基である化合物は、下記の製法により得ることができる。
製法2:前記一般式(β−1)で表されるカルボン酸(β―1)と、下記一般式(β−5)
(式中Rは二価の連結基である。Gは有機基である)で表されるエポキシ化合物(β―4)とを反応させて、エポキシ由来の2級水酸基を有する反応物を得る第一工程と、該反応物と前記一般式(β―4)で表されるイソシアネート化合物(β―4)とを反応させる第二工程とを含む製法。
本発明で用いる一般式(4)や一般式(5)で表されるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物は、例えば、前記製法1の第一工程により得ることができる。
前記カルボン酸(β―1)中のrは、高い防汚性能を発現する表面改質剤が得られることから平均で8〜80が好ましく、平均で10〜60がより好ましい。カルボン酸(β―1)は単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
前記エポキシシラン化合物(β−2)とエポキシシラン化合物(β−3)としては、例えば、下記に示される化合物等を好ましく例示する事ができる。
前記エポキシシラン化合物(β−2)とエポキシシラン化合物(β−3)は、工業的に入手が容易なことから前記(β―2−1)、(β―2−2)、(β―3−1)及び(β―3−2)からなる群から選ばれる一種以上の化合物が好ましく、(β―2−1)及び(β―2−2)がより好ましい。エポキシシラン化合物(β−2)とエポキシシラン化合物(β−3)は単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
前記イソシアネート化合物(β−4)としては、例えば、下記に示される化合物等を好ましく例示することができる。
(式中、R1は炭素原子数1〜6のアルキレン基である)
前記式(β−4−1)〜(α−4−12)で表されるイソシアネート化合物中のR1は、合成が容易で、簡便に本発明で用いるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物(β)を得ることができることから炭素原子数1〜10のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1〜6のアルキレン基がより好ましく、1〜3のアルキレン基がさらに好ましく、n−プロピレン基が特に好ましい。
前記イソシアネート化合物(β−4)は、反応性に優れ、耐久性の高い皮膜が得られる表面改質剤となることから(β−4−1)、(β−4−2)及び(β−4−3)からなる群から選ばれる一種以上の化合物が好ましく、(β−4−1)及び(β−4−2)がより好ましい。イソシアネート化合物(β−4)は単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
前記エポキシ化合物(β−5)としては、例えば、下記の化合物を好ましく例示することができる。
前記エポキシ化合物(β−5)の中でも、防汚性に優れる塗膜を得るため前記(β−5−1)または(β−5−2)が好ましく、(β―5−2)がより好ましい。エポキシ化合物(β−5)は単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
前記製法1〜製法2における反応は、必要に応じて有機溶剤存在下で行っても良い。有機溶剤としては、原料である上記化合物を溶解するものであれば特に制限されない。また、イソシアネート基との反応性を有さないアセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン等の溶剤やフッ素系の溶剤を反応溶剤とした溶剤系であっても良い。
前記フッ素系の溶剤としては、例えば、1、3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、トリフルオロトルエン等の含フッ素芳香族炭化水素系溶剤;パーフルオロヘキサン、パーフルオロメチルシクロヘキサン等の炭素数3〜12のパーフルオロカーボン系溶剤;1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロオクタン等のハイドロフルオロカーボン系溶剤;C3F7OCH3,C4F9OCH3,C4F9OC2H5,C2F5CF(OCH3)C3F7,等のハイドロフルオロエーテル系溶剤;フォンブリン、ガルデン(ソルベイ製)、デムナム(ダイキン工業製)、クライトックス(ケマーズ製)等のパーフルオロポリエーテル系化合物等を好ましく例示することができる。
前記製法1の第一工程において、カルボン酸(β−1)とエポキシシラン化合物〔(β−2)、(β−3)〕との反応割合は、カルボン酸(β−1)が有するカルボキシル基とエポキシシラン化合物が有するエポキシ基との当量比(カルボキシル基/エポキシ基)が、0.5〜1.5となる割合が好ましく、0.9〜1.1となる割合がより好ましく、0.98〜1.02となる割合が最も好ましい。
前記製法1の第一工程の反応温度は通常50〜150℃である。また、反応時間は通常1〜10時間である。
前記製法1の第二工程において、エポキシ基由来の2級水酸基を有する反応物とイソシアネート化合物(β−4)との反応割合は、反応物が有する水酸基とイソシアネート化合物(β−4)が有するイソシアネート基との当量比(水酸基基/イソシアネート基)が、0.5〜1.5となる割合が好ましく、0.9〜1.1となる割合がより好ましく、0.98〜1.02となる割合が最も好ましい。
前記製法1の第二工程の反応温度は通常30〜120℃である。また、反応時間は通常1〜10時間である。
前記製法2の第一工程において、カルボン酸(β−1)とエポキシ化合物(β−5)との反応割合は、カルボン酸(β−1)が有するカルボキシル基とエポキシ化合物が有するエポキシ基との当量比(カルボキシル基/エポキシ基)が、0.5〜1.5となる割合が好ましく、0.9〜1.1となる割合がより好ましく、0.98〜1.02となる割合が最も好ましい。
前記製法2の第一工程の反応温度は通常50〜150℃である。また、反応時間は通常1〜10時間である。
前記製法2の第二工程において、エポキシ基由来の2級水酸基を有する反応物とイソシアネート化合物(β−4)との反応割合は、反応物が有する水酸基とイソシアネート化合物(β−4)が有するイソシアネート基との当量比(水酸基基/イソシアネート基)が、0.5〜1.5となる割合が好ましく、0.9〜1.1となる割合がより好ましく、0.98〜1.02となる割合が最も好ましい。
前記製法2の第二工程の反応温度は通常30〜120℃である。また、反応時間は通常1〜10時間である。
本発明の表面改質剤中のポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物(α)とポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物(β)との含有割合は、すべり性を維持しながら防汚性能を向上させることができるため、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物(α)1質量部に対してポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物(β)0.01〜100質量部が好ましく、0.05〜20質量部がより好ましく、0.1〜2質量部がさらに好ましい。
本発明のコーティング組成物は、本発明の表面改質剤と溶剤とを含有することを特徴とする。前記溶剤としては、表面改質剤を溶解するものであれば特に制限されない。アルコール類、エーテル類、ケトン類、芳香族炭化水素類、エステル類、パラフィン系炭化水素類等が好ましく、特にフッ素原子を含有する溶剤が本発明の表面改質剤を良好に溶解できることから好ましく使用することができる。溶剤は1種類であってもいいし、2種以上を混合して使用しても良い。
前記フッ素原子を含有する溶剤としては、例えば、ハイドロフルオロエーテル、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、含フッ素芳香族炭化水素、パーフルオロポリエーテル化合物等が挙げられる。フッ素原子を含有する溶剤は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、ヘテロ原子を含有してもよい。また、フッ素原子を含有する溶剤の炭素原子数は2〜12が好ましく、4〜10がより好ましい。
前記ハイドロフルオロエーテルとしては、例えば、C3F7OCH3、C4F9OCH3、C4F9OC2H5、C2F5CF(OCH3)C3F7、HCF2CF2OCH2CF3等が挙げられる。前記ハイドロフルオロカーボンとしては、例えば、C4F9C2H5、(CF3)2CFCHFCHFCF3、C6F13H、C6F13C2H5、C8F17C2H5、CF3(CF2)4CHF2、CF3CH2CF2CH3、CF3(CHF)2CF2CF3等が挙げられる。
前記パーフルオロカーボンとしては、例えば、C3F8、C4F10,C5F12、C6F14、C7F16,C8F18、C9F20,C10F22、C11F24、C12F26、(C4F9)3N、パーフルオロ(1,2−ジメチルシクロブタン)、パーフルオロ(メチルシクロヘキサン)、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)等が挙げられる。
前記含フッ素芳香族炭化水素としては、例えば、1、3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、トリフルオロトルエン等が挙げられる。
前記パーフルオロポリエーテル化合物としては、例えば、フォンブリン、ガルデン(ソルベイ製)、デムナム(ダイキン工業製)、クライトックス(ケマーズ製)等が挙げられる。
前記フッ素原子を含有する溶剤の中でも、C4F9C2H5、(CF3)2CFCHFCHFCF3、C6F13H、C6F13C2H5、C4F9OCH3、C4F9OC2H5、C2F5CF(OCH3)C3F7及びHCF2CF2OCH2CF3からなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
本発明のコーティング組成物中の表面改質剤の含有率としては、表面改質剤を含む被覆が均一に形成でき、且つ、該表面改質剤とガラス等の基材に良好に反応することにより、耐久性に優れる被膜が形成できることから0.001〜50質量%が好ましく、0.01〜10質量%がより好ましく、0.05〜1質量%がさらに好ましい。
本発明の物品は、基材上に本発明のコーティング組成物の被膜を有することを特徴とする。前記基材としては、ガラス等の無機基材;アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニル樹脂等の有機基材等が挙げられる。
本発明で用いる基材としては、本発明のコーティング組成物中の表面改質剤が良好に反応し、基材上に防汚性とすべり性に優れ、しかも耐久性を有する被膜を形成することができることから、ガラス基材が好ましい。
本発明で用いる基材の形状としては、種々の形状のものを使用することが出来る。中でも、シート状のものが好適に使用することができる。シート状の基材の厚さは、例えば、5μm〜10mmの範囲のものを例示できる。
前記基材上に本発明のコーティング組成物の被膜を形成させる方法としては、種々の方法を用い、基材上にコーティング組成物を塗布したのち、乾燥する方法を例示することができる。基材上にコーティング組成物を塗布する方法としては、例えば、浸漬コーティング法、スピンコーティング法、フローコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、蒸着法等を例示できる。
基材上にコーティング組成物を塗布した後は、種々の方法により組成物中の溶剤を除去し、被膜を形成させる。乾燥は、例えば、室温中に静置し乾燥しても良いし、加温した雰囲気下に静置し乾燥させても良い、加温した雰囲気下において乾燥させる際は、雰囲気の温度は通常30〜200℃で、好ましくは50〜180℃である。
本発明の物品が有する被膜の膜厚は、例えば、スマートフォンやタブレットPCの画面を保護する最表面の被膜とする場合、通常1〜100nm、好ましくは5〜50nmである。
本発明の表面改質剤やコーティング組成物は、物品表面に防汚性とすべり性に優れる被膜を形成することができる。このような優れた効果を利用して、本発明の表面改質剤やコーティング組成物は指先が画面に直接接触し、しかも、指先やペン先で画面をなぞる(スライドさせる)操作(スワイプ)を行うスマートフォンやタブレットPCの画面の最表面の被膜形成に好ましく用いることができる。また、カメラやメガネ等のレンズ類や、自動車や家屋に用いられるガラス表面や、展示パネル等の防汚用途にも好ましく用いることができる。
以下に本発明を具体的な実施例を挙げてより詳細に説明する。例中、断りのない限り、「部」、「%」は質量基準である。尚、得られた表面改質剤のIRスペクトル、1H−NMRスペクトル、19F−NMRスペクトル及び13C−NMRスペクトルの測定条件は下記の通りである。
[IRスペクトル測定条件]
装置:サーモエレクトロン社製「NICOLET380」
測定方法:KBr法
[1H−NMRスペクトル、19F−NMRスペクトル及び13C−NMRスペクトルの測定条件]
装置:日本電子株式会社製「JNM−ECA500」
溶媒:DMSO−d6
合成例1〔ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物(α)の合成〕
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、ハイドロフルオロエーテル(C4F9OC2H5)66.67gと、下記式(α−1−1)
(Xはパーフルオロメチレン基及びパーフルオロエチレン基であり、1分子あたり、パーフルオロメチレン基が平均21個、パーフルオロエチレン基が平均21個存在するものであり、フッ素原子の数が平均126である。nは平均41である。)
で表されるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を有するジオール45.3gと、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン4.7gと、ウレタン化触媒としてオクチル酸スズ0.025gを仕込み、窒素気流下で攪拌を開始し、60℃に加温後、IR測定によりイソシアネート基の消失が確認されるまで約3時間反応させ、反応物を得た。
得られた反応物における溶剤の含有率が80%となるようにC4F9OC2H5で反応物を希釈した。この希釈した反応物を孔径1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製フィルターを使用してろ過精製し、一般式(1)で表される本発明で用いるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物(α−1)を含む溶剤溶液を得た。ここで、シラン化合物(α1)は、一般式(1)において、Aはエトキシ基であり、Zはn−プロピレン基であり、Y1、Y2はメチレン基である。
なお、シラン化合物(α1)のIRスペクトルのチャート図を図1に、1H−NMRスペクトルのチャート図を図2に、19F−NMRスペクトルのチャート図を図3に、13C−NMRスペクトルのチャート図を図4に示す。
合成例2〔ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物(β)の合成〕
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン30.45gと、下記式
で表されるカルボン酸44.0gと、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン1.67gと、反応触媒としてトリフェニルフォスフィン0.137gを加え、窒素気流下で攪拌を開始し、105℃に加温後、約6時間反応させ、反応物を得た。
得られた反応物における溶剤の含有率が80%となるようにC4F9OC2H5で反応物を希釈した。この希釈した反応物を孔径1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製フィルターを使用してろ過精製し、一般式(4)で表される本発明で用いるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物(β1)を含む溶剤溶液を得た。ここで、シラン化合物(β1)は、一般式(4)において、rは平均43で、(−R−)は(−CH2OCH2CH2CH2−)で、Aはエトキシ基である。
なお、シラン化合物(β1)のIRスペクトルのチャート図を図5に、1H−NMRスペクトルのチャート図を図6に示す。
合成例3(同上)
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン30.28gと、下記式
で表されるカルボン酸44.0gと、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1.42gと、反応触媒としてトリフェニルフォスフィン0.136gを加え、窒素気流下で攪拌を開始し、105℃に加温後、約6時間反応させ、反応物を得た。
得られた反応物における溶剤の含有率が80%となるようにC4F9OC2H5で反応物を希釈した。この希釈した反応物を孔径1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製フィルターを使用してろ過精製し、一般式(4)で表される本発明で用いるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物(β2)を含む溶剤溶液を得た。ここで、シラン化合物(β2)は、一般式(4)において、rは平均43で、(−R−)は(−CH2OCH2CH2CH2−)で、Aはメトキシ基である。
合成例4(同上)
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン27.49gと、下記式
で表されるカルボン酸39.0gと、下記式
で表されるエポキシ化合物2.24gと、反応触媒としてトリフェニルフォスフィン0.123gを加え、窒素気流下で攪拌を開始し、105℃に加温後、約5時間反応させた。その後、50℃まで降温し、C4F9OC2H5 15.10gと、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン1.35gと、ウレタン化触媒としてオクチル酸スズ0.026gを加え、窒素気流下で攪拌を開始し、70℃で約4時間反応させ、反応物を得た。
得られた反応物における溶剤の含有率が80%となるようにC4F9OC2H5で反応物を希釈した。この希釈した反応物を孔径1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製フィルターを使用してろ過精製し、一般式(2)で表される本発明で用いるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物(β3)を含む溶剤溶液を得た。ここで、シラン化合物(β3)は、一般式(2)において、rは平均43で、(−R−)は(−CH2OCH2CH2−)で、(−R1−)は(−CH2CH2CH2−)で、二つあるBの一方がSi(OC2H5)3で、もう一方がC6F13である。
合成例5(同上)
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン27.49gと、下記式
で表されるカルボン酸39.0gと、下記式
で表されるエポキシ化合物2.24gと、反応触媒としてトリフェニルフォスフィン0.123gを加え、窒素気流下で攪拌を開始し、105℃に加温後、約5時間反応させた。その後、50℃まで降温し、C
4F
9OC
2H
5 14.87gと、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン1.12gと、ウレタン化触媒としてオクチル酸スズ0.026gを加え、窒素気流下で攪拌を開始し、70℃で約4時間反応させ、反応物を得た。
得られた反応物における溶剤の含有率が80%となるようにC4F9OC2H5で反応物を希釈した。この希釈した反応物を孔径1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製フィルターを使用してろ過精製し、一般式(2)で表される本発明で用いるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物(β4)を含む溶剤溶液を得た。ここで、シラン化合物(β4)は、一般式(2)において、rは平均43で、(−R−)は(−CH2OCH2CH2−)で、(−R1−)は(−CH2CH2CH2−)で、二つあるBの一方がSi(OCH3)3で、もう一方がC6F13である。
合成例6(同上)
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン60.62gと、下記式
で表されるカルボン酸87.6gと、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン3.33gと、反応触媒としてトリフェニルフォスフィン0.273gを加え、窒素気流下で攪拌を開始し、105℃に加温後、約5時間反応させた。その後、50℃まで降温し、C4F9OC2H5 33.33gと、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン3.02gと、ウレタン化触媒としてオクチル酸スズ0.047gを加え、窒素気流下で攪拌を開始し、70℃で約4時間反応させ、反応物を得た。
得られた反応物における溶剤の含有率が80%となるようにC4F9OC2H5で反応物を希釈した。この希釈した反応物を孔径1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製フィルターを使用してろ過精製し、一般式(2)で表される本発明で用いるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物(β5)を含む溶剤溶液を得た。ここで、シラン化合物(β5)は、一般式(2)において、rは平均43で、(−R−)は(−CH2OCH2CH2CH2−)で、(−R1−)は(−CH2CH2CH2−)で、BはSi(OC2H5)3である。
合成例7(同上)
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン60.62gと、下記式
(式中、rは平均43である。)
で表されるカルボン酸87.6gと、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン3.33gと、反応触媒としてトリフェニルフォスフィン0.273gを加え、窒素気流下で攪拌を開始し、105℃に加温後、約5時間反応させた。その後、50℃まで降温し、C
4F
9OC
2H
5 32.82gと、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン2.51gと、ウレタン化触媒としてオクチル酸スズ0.047gを加え、窒素気流下で攪拌を開始し、70℃で約4時間反応させ、反応物を得た。
得られた反応物における溶剤の含有率が80%となるようにC4F9OC2H5で反応物を希釈した。この希釈した反応物を孔径1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製フィルターを使用してろ過精製し、一般式(2)で表される本発明で用いるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物(β6)を含む溶剤溶液を得た。ここで、シラン化合物(β6)は、一般式(2)において、rは平均43で、(−R−)は(−CH2OCH2CH2CH2−)で、(−R1−)は(−CH2CH2CH2−)で、二つあるBの一方がSi(OC2H5)3で、もう一方がSi(OCH3)3である。
実施例1(表面改質剤、コーティング組成物及び物品の調製)
シラン化合物(α−1)を含む溶剤溶液とシラン化合物(β−1)を含む溶剤溶液とを質量換算で等量混合し、本発明の表面改質剤(1)を含む溶剤溶液を得た。表面改質剤(1)を含む溶剤溶液をC4F9OC2H5で希釈し、表面改質剤の含有率が0.1%である溶液〔コーティング組成物(1)〕を得た。表面をオゾン処理した7×15cmのガラス基板に前記コーティング組成物(1)50mlをスプレーガンでスプレー塗布した。塗布後、コーティング組成物(1)を塗布したガラス基板を150℃の環境下で30分間静置し、コーティング組成物の被膜を有する物品(1)を得た。
得られた物品(1)を用いて、下記方法に従って物品表面の撥水性、すべり性、撥水性の耐久性及びすべり性の耐久性の評価を行った。評価結果を第1表に示す。
<物品表面の撥水性の評価方法>
水の接触角を測定することにより評価した。接触角の測定は、接触角測定装置(協和界面科学株式会社製「MODEL CA−W150」)を用いた。接触角が高いほど、撥水性に優れる(防汚性に優れる)。
<物品表面のすべり性の評価方法>
表面性測定機(新東科学株式会社製「トライボギア TYPE−38」)を用いて、サンプル台に物品(1)を固定して水平を確認後、サンプル上にプローブをセットし、500g荷重にて引張り速度0.3m/分の条件で測定を行い、動摩擦係数を求めた。動摩擦係数が低いほど、すべり性に優れる。
<撥水性の耐久性の評価方法>
新東科学社製の往復磨耗試験機 TYPE:30Sを用い、これの圧子(1cm×1cmの圧子)にボンスター販売株式会社製のスチールウール#0000を取り付け、1kgの荷重をかけた状態で、物品(1)を1000回往復させることで、スチールウールで物品(1)の表面を擦った。その後、前記<物品表面の撥水性の評価方法>と同様にして水の接触角を測定した。スチールウールで表面を擦る前と表面を擦った後で、水の接触角の低下が少ない程、耐久性に優れる。
<すべり性の耐久性の評価方法>
新東科学社製の往復磨耗試験機 TYPE:30Sを用い、これの圧子(1cm×1cmの圧子)にボンスター販売株式会社製のスチールウール#0000を取り付け、1kgの荷重をかけた状態で、物品(1)を1000回往復させることで、スチールウールで物品(1)の表面を擦った。その後、前記<物品表面のすべり性の評価方法>と同様にして動摩擦係数を求めた。スチールウールで表面を擦る前と表面を擦った後で、動摩擦係数の上昇が少ない程、耐久性に優れる。
実施例2〜7(同上)
第1表に示す配合割合でシラン化合物(α)とシラン化合物(β)を配合した以外は実施例5と同様にしてコーティング組成物(2)〜(7)及び物品(2)〜(7)を得た。実施例1と同様にして撥水性、すべり性及び撥水性の耐久性を評価した。評価結果を第1表に示す。
比較例1(比較対照用コーティング組成物及び比較対照用物品の調製)
表面改質剤(1)の代わりに特開2012−037896の合成例1に記載の表面改質剤〔CF3CF2CF2(OCF2CF2CF2)11OCF2CF2CH2OCH2CH2CH2Si(OCH3)3〕〔比較対照用表面改質剤(1´)〕を用いた以外は実施例1と同様にして比較対照用コーティング組成物(1´)及び比較対照用物品(1´)を得た。実施例1と同様にして撥水撥油性、すべり性及び撥水性の耐久性を評価した。評価結果を第1表に示す。