以下に添付図面を参照して、この発明に係る撮像装置、画像形成装置および二次元イメージセンサの駆動制御方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下で説明する実施形態では、本発明を適用した画像形成装置の一例としてインクジェットプリンタを例示するが、本発明はこれに限らず、例えば、電子写真プロセスにより画像を印刷する画像形成装置など、様々なタイプの画像形成装置に対して広く適用可能である。
<画像形成装置の機械的構成>
まず、図1乃至図3を参照しながら、本実施形態の画像形成装置100の機械的構成について説明する。図1は、画像形成装置100の内部を透視して示す斜視図、図2は、画像形成装置100の内部の機械的構成を示す上面図、図3は、キャリッジ5に搭載される記録ヘッド6の配置例を説明する図である。
図1に示すように、本実施形態の画像形成装置100は、主走査方向(図中矢印A方向)に往復移動するキャリッジ(支持体)5を備える。キャリッジ5は、主走査方向に沿って延設された主ガイドロッド3により支持されている。また、キャリッジ5には連結片5aが設けられている。連結片5aは、主ガイドロッド3と平行に設けられた副ガイド部材4に係合し、キャリッジ5の姿勢を安定化させる。
キャリッジ5には、図2に示すように、4つの記録ヘッド6y,6m,6c,6kが搭載されている。記録ヘッド6yは、イエロー(Y)インクを吐出する記録ヘッドである。記録ヘッド6mは、マゼンタ(M)インクを吐出する記録ヘッドである。記録ヘッド6cは、シアン(C)インクを吐出する記録ヘッドである。記録ヘッド6kは、ブラック(Bk)インクを吐出する複数の記録ヘッドである。以下、これら記録ヘッド6y,6m,6c,6kを総称する場合は、記録ヘッド6という。記録ヘッド6は、その吐出面(ノズル面)が下方(用紙P側)に向くように、キャリッジ5に支持されている。
記録ヘッド6にインクを供給するためのインク供給体であるカートリッジ7は、キャリッジ5には搭載されず、画像形成装置100内の所定の位置に配置されている。カートリッジ7と記録ヘッド6とは図示しないパイプで連結されており、このパイプを介して、カートリッジ7から記録ヘッド6に対してインクが供給される。
キャリッジ5は、駆動プーリ9と従動プーリ10との間に張架されたタイミングベルト11に連結されている。駆動プーリ9は、主走査モータ8の駆動により回転する。従動プーリ10は、駆動プーリ9との間の距離を調整する機構を有し、タイミングベルト11に対して所定のテンションを与える役割を持つ。キャリッジ5は、主走査モータ8の駆動によりタイミングベルト11が送り動作されることにより、主走査方向に往復移動する。キャリッジ5の主走査方向の移動は、例えば図2に示すように、キャリッジ5に設けられたエンコーダセンサ13がエンコーダシート14のマークを検知して得られるエンコーダ値に基づいて制御される。
また、本実施形態の画像形成装置100は、記録ヘッド6の信頼性を維持するための維持機構15を備える。維持機構15は、記録ヘッド6の吐出面の清掃やキャッピング、記録ヘッド6からの不要なインクの排出などを行う。
記録ヘッド6の吐出面と対向する位置には、図2に示すように、プラテン16が設けられている。プラテン16は、記録ヘッド6から用紙P上にインクを吐出する際に、用紙Pを支持するためのものである。本実施形態の画像形成装置100は、キャリッジ5の主走査方向の移動距離が長い広幅機である。このため、プラテン16は、複数の板状部材を主走査方向(キャリッジ5の移動方向)に繋いで構成している。用紙Pは、図示しない副走査モータによって駆動される搬送ローラにより挟持され、プラテン16上を、副走査方向に間欠的に搬送される。
記録ヘッド6は、複数のノズル列を備えており、プラテン16上を搬送される用紙P上にノズル列からインクを吐出することで、用紙Pに画像を印刷する。本実施形態では、キャリッジ5の1回の走査で印刷できる画像の幅を多く確保するため、図3に示すように、キャリッジ5に、上流側の記録ヘッド6と下流側の記録ヘッド6とを搭載している。また、ブラックのインクを吐出する記録ヘッド6kは、カラーのインクを吐出する記録ヘッド6y,6m,6cの2倍の数だけキャリッジ5に搭載している。また、記録ヘッド6y,6mは左右に分離して配置されている。これは、キャリッジ5の往復動作で色の重ね順を合わせ、往路と復路とで色が変わらないようにするためである。なお、図3に示す記録ヘッド6の配列は一例であり、図3に示す配列に限定されるものではない。
本実施形態の画像形成装置100を構成する上記の各構成要素は、外装体1の内部に配置されている。外装体1にはカバー部材2が開閉可能に設けられている。画像形成装置100のメンテナンス時やジャム発生時には、カバー部材2を開けることにより、外装体1の内部に設けられた各構成要素に対して作業を行うことができる。
本実施形態の画像形成装置100は、用紙Pを副走査方向(図中矢印B方向)に間欠的に搬送し、用紙Pの副走査方向の搬送が停止している間に、キャリッジ5を主走査方向に移動させながら、キャリッジ5に搭載された記録ヘッド6のノズル列からプラテン16上の用紙P上にインクを吐出して、用紙Pに画像を印刷する(印刷部)。
特に、画像形成装置100の色調整を行う色調整時においては、キャリッジ5に搭載された記録ヘッド6のノズル列からプラテン16上の用紙P上にインクを吐出して、多数のパッチ200が並ぶ色調整用テストパターンを印刷する。そして、この色調整用テストパターンに含まれる各パッチ200に対して測色を行う。色調整用テストパターンに含まれる各パッチ200は、画像形成装置100が実際にインクを用いて基準色のパターンを印刷することで得られる画像であり、画像形成装置100に固有の特性を反映している。したがって、これらのパッチ200の測色値を用いて、画像形成装置100に固有の特性を記述したデバイスプロファイルを生成、あるいは修正することができる。そして、このデバイスプロファイルに基づいて標準色空間と機器依存色との間の色変換を行うことで、画像形成装置100は再現性の高い画像を出力することができる。
本実施形態の画像形成装置100は、用紙Pに印刷した色調整用テストパターンに含まれる各パッチ200に対する測色を行うための測色カメラ(撮像装置)20を備える。測色カメラ20は、図2に示すように、記録ヘッド6が搭載されたキャリッジ5に支持されている。そして、測色カメラ20は、用紙Pの搬送およびキャリッジ5の移動により色調整用テストパターンが印刷された用紙P上を移動して、各パッチ200と対向する位置にきたときに、画像の撮像を行う。そして、撮像により得られたパッチ200のRGB値に基づいて、パッチ200の測色値を算出する。なお、本実施形態では、撮像により得られたパッチ200のRGB値から算出されるパッチ200の測色値を用いて画像形成装置100の色調整を行う例を説明するが、撮像により得られたパッチ200のRGB値を用いて画像形成装置100の色調整を行うことも可能である。この場合、色調整によって、用紙P上に吐出されるインク(記録剤、電子写真方式の場合は用紙に転写されるトナー)の量が調整される。
また、本実施形態の画像形成装置100では、測色カメラ20を用いて、印刷に関わる位置検出を行う機能を持つ。例えば、本実施形態の画像形成装置100では、測色カメラを用いて、画像の位置ずれ検出や、用紙Pの端部検出などを行う。画像の位置ずれ検出を行う場合は、用紙Pに位置ずれ検出用テストパターンを印刷する。そして、用紙Pの搬送およびキャリッジ5の移動により、位置ずれ検出用テストパターンが印刷された用紙P上で測色カメラ20を相対移動させながらパターンの読み取り(撮像)を行い、例えばパターン間の間隔のずれなどから、画像の位置ずれ(インクの着弾位置ずれ)を検出する。
また、用紙Pの端部検出を行う場合は、副走査方向の端部検出であれば、測色カメラ20を所定位置に固定し、用紙Pを副走査方向に搬送する。そして、搬送される用紙Pの副走査方向における端部位置を測色カメラ20により読み取ることで、用紙Pの副走査方向の端部を検出する。また、主走査方向の端部検出であれば、用紙Pの搬送が停止している間に、キャリッジ5を主走査方向に移動させる。そして、キャリッジ5とともに移動する測色カメラ20により用紙Pの主走査方向における端部位置を読み取ることで、用紙Pの主走査方向の端部を検出する。なお、用紙Pの主走査方向の端部検出は、通常、記録ヘッド6から用紙Pにインクを吐出して画像を印刷する動作に付随して行われる。
<測色カメラの具体例>
次に、図4−1乃至図4−4を参照しながら、測色カメラ20の具体例について詳細に説明する。図4−1乃至図4−4は、測色カメラ20の機械的構成の一例を示す図であり、図4−1は、測色カメラ20の縦断面図(図4−3中のX1−X1線断面図)、図4−2は、測色カメラ20の縦断面図(図4−3中のX2−X2線断面図)、図4−3は、測色カメラ20の内部を透視して示す上面図、図4−4は、筐体の底面部を図4−1中のX3方向から見た平面図である。
測色カメラ20は、枠体21と基板22とを組み合わせて構成された筐体23を備える。枠体21は、筐体23の上面となる一端側が開放された有底筒状に形成されている。基板22は、枠体21の開放端を閉塞して筐体23の上面を構成するように、締結部材24によって枠体21に締結され、枠体21と一体化されている。
筐体23は、その底面部23aが所定の間隙dを介してプラテン16上の用紙Pと対向するように、キャリッジ5に固定される。用紙Pと対向する筐体23の底面部23aには、用紙Pに印刷された色調整用テストパターンに含まれるパッチ200(測色対象)を筐体23の内部から撮影可能にするための開口部25が設けられている。
筐体23の内部には、画像を撮像するセンサ部26が設けられている。センサ部26は、受光量に応じた出力値を個別に読み出し可能な複数の受光部を有する二次元イメージセンサ27と、センサ部26の撮像対象領域の光学像を二次元イメージセンサ27のセンサ面に結像する結像レンズ28とを備える。二次元イメージセンサ27としては、例えばCMOSエリアイメージセンサが用いられる。二次元イメージセンサ27は、センサ面が筐体23の底面部23a側に向くように、例えば、基板22の内面(部品実装面)に実装されている。結像レンズ28は、その光学特性に応じて定められる位置関係を保つように二次元イメージセンサ27に対して位置決めされた状態で固定されている。
筐体23の底面部23aのセンサ部26と対向する内面側には、底面部23aに設けられた開口部25と隣り合うようにして、基準チャート400が配置されている。基準チャート400は、テストパターンに含まれるパッチ200を測色する際に、センサ部26によりパッチ200とともに撮像されるものである。基準チャート400は、筐体23の外部にある測色対象のパッチ200の撮像時にセンサ部26の撮像対象領域に含まれるように、筐体23の底面部23aに配置されている。なお、基準チャート400の詳細については後述する。
また、筐体23の内部には、センサ部26の撮像対象領域を照明する照明光源30が設けられている。照明光源30としては、例えばLED(Light Emitting Diode)が用いられる。本実施形態においては、照明光源30として2つのLEDを用いる。照明光源30として用いるこれら2つのLEDは、例えば、センサ部26の二次元イメージセンサ27とともに、基板22の内面に実装される。ただし、照明光源30は、センサ部26の撮像対象領域を均一に照明できる位置に配置されていればよく、必ずしも基板22に直接実装されていなくてもよい。また、本実施形態では、照明光源30としてLEDを用いているが、光源の種類はLEDに限定されるものではない。例えば、有機ELなどを照明光源30として用いるようにしてもよい。有機ELを照明光源30として用いた場合は、太陽光の分光分布に近い照明光が得られるため、測色精度の向上が期待できる。
また、本実施形態では、図4−3に示すように、照明光源30として用いる2つのLEDを基板22側から筐体23の底面部23a側に垂直に見下ろしたときの底面部23a上の投影位置が、開口部25と基準チャート400との間の領域内となり、且つ、センサ部26を中心として対称となる位置となるように、これら2つのLEDが配置されている。換言すると、照明光源30として用いる2つのLEDを結ぶ線がセンサ部26の結像レンズ28の中心を通り、且つ、この2つのLEDを結ぶ線に対して線対称となる位置に、開口部25と基準チャート400とが配置される。照明光源30として用いる2つのLEDをこのように配置することにより、筐体23の外部にある測色対象のパッチ200と筐体23内部の基準チャート400とを、概ね同一の条件にて照明することができる。
ところで、筐体23の内部に配置された基準チャート400と同一の照明条件により筐体23外部のパッチ200を照明するには、パッチ200に外光が当たらないようにして、照明光源30からの照明光のみでパッチ200を照明する必要がある。パッチ200に外光が当たらないようにするには、筐体23の底面部23aと用紙Pとの間の間隙dを小さくし、パッチ200に向かう外光が筐体23によって遮られるようにすることが有効である。ただし、筐体23の底面部23aと用紙Pとの間の間隙dを小さくしすぎると、用紙Pが筐体23の底面部23aに接触してしまい、画像の撮像を適切に行えなくなる虞がある。そこで、筐体23の底面部23aと用紙Pとの間の間隙dは、用紙Pの平面性を考慮して、用紙Pが筐体23の底面部23aに接触しない範囲で小さな値に設定することが望ましい。例えば、筐体23の底面部23aと用紙Pとの間の間隙dを1mm〜2mm程度に設定すれば、用紙Pが筐体23の底面部23aに接触することなく、用紙Pに形成されたパッチ200に外光が当たることを有効に防止できる。
また、筐体23の内部には、開口部25を内面側から塞ぐようにして、光路長変更部材31が配置されている。光路長変更部材31は、照明光源30の光(照明光)に対して十分な透過率を有する屈折率n(nは任意の数)の光学素子である。光路長変更部材31は、筐体23外部のパッチ200とセンサ部26との間の光路中に配置され、パッチ200の光学像の結像面を基準チャート400の光学像の結像面に近づける機能を持つ。つまり、本実施形態の測色カメラ20では、パッチ200とセンサ部26との間の光路中に光路長変更部材31を配置することによって、筐体23外部のパッチ200の光学像の結像面と、筐体23の内部の基準チャート400の結像面とを、ともにセンサ部26の二次元イメージセンサ27のセンサ面に合わせるようにしている。
光路長変更部材31を光が通過すると、光路長変更部材31の屈折率nに応じて光路長が延び、画像が浮き上がって見える。画像の浮上がり量Cは、光路長変更部材31の光軸方向の長さをLpとすると、以下の式で求めることができる。
C=Lp(1−1/n)
また、センサ部26の結像レンズ28の主点と基準チャート400との間の距離をLcとすると、結像レンズ28の主点と光路長変更部材31を透過する光学像の前側焦点面(撮像面)との間の距離Lは、以下の式で求めることができる。
L=Lc+Lp(1−1/n)
ここで、光路長変更部材31の屈折率nを1.5とした場合、L=Lc+Lp(1/3)となり、光路長変更部材31を透過する光学像の光路長を光路長変更部材31の光軸方向の長さLpの約1/3だけ長くすることができる。この場合、例えばLp=9[mm]とすれば、L=Lc+3[mm]となるので、センサ部26から基準チャート400までの距離とパッチ200までの距離との差が3mmとなる状態で撮像すれば、基準チャート400の光学像の後側焦点面(結像面)と、パッチ200の光学像の後側焦点面(結像面)とを、ともにセンサ部26の二次元イメージセンサ27のセンサ面に合わせることができる。
本実施形態の画像形成装置100は、上述したように、キャリッジ5に搭載された記録ヘッド6のノズル列からプラテン16上の用紙P上にインクを吐出して、用紙Pに画像を印刷する構成である。このため、記録ヘッド6のノズル列からインクを吐出する際に、霧(ミスト)状の微小なインク粒子(以下、このような微小なインク粒子を「ミスト」という。)が発生する。そして、印刷時に発生したミストが、キャリッジ5に固定して設けられた測色カメラ20の筐体23の外部から開口部25を介して筐体23の内部に入り込むと、筐体23内部に入り込んだミストがセンサ部26や照明光源30、光路長変更部材31などに付着して、パッチ200の測色を行う際に正確なRGB値が得られなくなる懸念がある。そこで、本実施形態の測色カメラ20では、筐体23の底面部23aに設けられた開口部25にミスト防止ガラス32を配置することにより、印刷時に発生したミストが筐体23の内部に入り込むことを防止している。
ミスト防止ガラス32は、照明光源30の光(照明光)に対して十分な透過率を有する透明な光学素子であり、開口部25の全体を覆うことができる大きさの板状に形成されている。ミスト防止ガラス32は、筐体23の底面部23aに沿って形成されたスリットに装着され、筐体23の底面部23aに設けられた開口部25の全面を閉止する。ミスト防止ガラス32が装着されるスリットは、筐体23の側面部にて開口している。ミスト防止ガラス32は、この筐体23の側面部から挿入されてスリットに装着することができる。また、ミスト防止ガラス32は、筐体23の側面部から取り外すこともでき、適宜交換が可能である。
<基準チャートの具体例>
次に、図5を参照しながら、測色カメラ20の筐体23内部に配置される基準チャート400について詳細に説明する。図5は、基準チャート400の具体例を示す図である。
図5に示す基準チャート400は、測色用の基準パッチを配列した複数の基準パッチ列401〜404、ドット径計測用パターン列406、距離計測用ライン405、およびチャート位置特定用マーカ407を有する。
基準パッチ列401〜404は、YMCKの1次色の基準パッチを階調順に配列した基準パッチ列401と、RGBの2次色の基準パッチを階調順に配列した基準パッチ列402と、グレースケールの基準パッチを階調順に配列した基準パッチ列(無彩色の階調パターン)403と、3次色の基準パッチを配列した基準パッチ列404と、を含む。ドット径計測用パターン列406は、大きさが異なる円形パターンが大きさ順に配列された幾何学形状測定用のパターン列であり、用紙Pに印刷された画像のドット径の計測に用いることができる。
距離計測用ライン405は、複数の基準パッチ列401〜404やドット径計測用パターン列406を囲む矩形の枠として形成されている。チャート位置特定用マーカ407は、距離計測用ライン405の四隅の位置に設けられていて、各基準パッチの位置を特定するためのマーカとして機能する。センサ部26により撮像される基準チャート400の画像から、距離計測用ライン405とその四隅のチャート位置特定用マーカ407を特定することで、基準チャート400の位置および各基準パッチやパターンの位置を特定することができる。
測色用の基準パッチ列401〜404を構成する各基準パッチは、測色カメラ20の撮像条件を反映した色味の基準として用いられる。なお、基準チャート400に配置されている測色用の基準パッチ列401〜404の構成は、図5に示す例に限定されるものではなく、任意の基準パッチ列を適用することが可能である。例えば、可能な限り色範囲が広く特定できる基準パッチを用いてもよいし、また、YMCKの1次色の基準パッチ列401や、グレースケールの基準パッチ列403は、画像形成装置100に使用されるインクの測色値のパッチで構成されていてもよい。また、RGBの2次色の基準パッチ列402は、画像形成装置100で使用されるインクで発色可能な測色値のパッチで構成されていてもよく、さらに、Japan Color等の測色値が定められた基準色票を用いてもよい。
なお、本実施形態では、一般的なパッチ(色票)の形状の基準パッチ列401〜404を有する基準チャート400を用いているが、基準チャート400は、必ずしもこのような基準パッチ列401〜404を有する形態でなくてもよい。基準チャート400は、測色に利用可能な複数の色が、それぞれの位置を特定できるように配置された構成であればよい。
基準チャート400は、測色カメラ20の筐体23の底面部23aに、開口部25と隣り合うように配置されているため、センサ部26によって測色対象のパッチ200と同時に撮像することができる。なお、ここでの同時に撮像とは、測色対象のパッチ200と基準チャート400とを含む1フレームの画像データを取得することを意味する。つまり、画素ごとのデータ取得に時間差があっても、1フレーム内にパッチ200と基準チャート400とを含む画像データを取得すれば、パッチ200と基準チャート400とを同時に撮像したことになる。
なお、以上説明した測色カメラ20の機械的構成は一例であり、これに限らない。本実施形態の測色カメラ20は、少なくとも二次元イメージセンサ27を用いて被写体を撮像する構成であればよく、上記の構成に対して様々な変形や変更が可能である。
<画像形成装置の制御機構の概略構成>
次に、図6を参照しながら、本実施形態の画像形成装置100の制御機構の概略構成について説明する。図6は、画像形成装置100の制御ブロック図である。
本実施形態の画像形成装置100は、図6に示すように、CPU101、ROM102、RAM103、記録ヘッドドライバ104、主走査ドライバ105、副走査ドライバ106、制御用FPGA(Field-Programmable Gate Array)110、記録ヘッド6、測色カメラ20、エンコーダセンサ13、主走査モータ8、および副走査モータ12を備える。CPU101、ROM102、RAM103、記録ヘッドドライバ104、主走査ドライバ105、副走査ドライバ106、および制御用FPGA110は、メイン制御基板120に搭載されている。記録ヘッド6、エンコーダセンサ13、および測色カメラ20は、上述したようにキャリッジ5に搭載されている。
CPU101は、画像形成装置100の全体の制御を司る。例えば、CPU101は、RAM103を作業領域として利用して、ROM102に格納された各種の制御プログラムを実行し、画像形成装置100における各種動作を制御するための制御指令を出力する。特に、本実施形態の画像形成装置100では、CPU101が所定のプログラムを実行することにより、動作モード切替え部150としての機能と、速度制御部160としての機能とを実現する。
動作モード切替え部150は、測色カメラ20の利用目的に応じて、二次元イメージセンサ27の動作モードを切り替える。本実施形態では、二次元イメージセンサ27の動作モードとして、測色カメラ20を用いてパッチ200の測色を行うための全体読み出しモード(第1動作モード)と、測色カメラ20をパッチ200の測色以外の用途、例えば、上述した印刷に関わる位置検出(画像の位置ずれ検出や用紙Pの端部検出)に用いるための部分読み出しモード(第2動作モード)とが、予め定められている。動作モード切替え部150は、測色カメラ20の利用目的(つまり、二次元イメージセンサ27の出力値の利用目的)に応じて、これらの動作モードを指定する制御信号を生成し、この制御信号を測色カメラ20に送ることによって、2次元イメージセンサ27の動作モードの切り替えを行う。
全体読み出しモードは、二次元イメージセンサ27のすべての受光部から出力値を読み出す動作モードである。部分読み出しモードは、二次元イメージセンサ27の一部の受光部から出力値を読み出す動作モードである。測色カメラ20では、この動作モードを指定した制御信号に基づいて、二次元イメージセンサ27の出力値を読み出す受光部の範囲(以下、この範囲を「撮像領域」という。)が設定される。二次元イメージセンサ27の動作モードとして部分読み出しモードが指定されると、全体読み出しモードが指定された場合に比べて撮像領域が狭くなるため、撮像領域内の各受光部から出力値をすべて読み出すまでの所要時間(以下、「読み出し時間」という。)が、全体読み出しモードよりも短縮される。
速度制御部160は、動作モード切替え部150からの制御信号に基づいて設定される二次元イメージセンサ27の撮像領域の大きさに応じて、測色カメラ20と、この測色カメラ20により撮像される撮像対象(本実施形態では用紙P)との相対的な移動速度を制御する。つまり、速度制御部160は、二次元イメージセンサ27の撮像領域の大きさに応じた出力値の読み出し時間に基づいて、キャリッジ5の主走査方向の移動速度や用紙Pの副走査方向の搬送速度を制御する。
記録ヘッドドライバ104、主走査ドライバ105、副走査ドライバ106は、それぞれ、記録ヘッド6、主走査モータ8、副走査モータ12を駆動するためのドライバである。
制御用FPGA110は、CPU101と連携して画像形成装置100における各種動作を制御する。制御用FPGA110は、機能的な構成要素として、例えば、CPU制御部111、メモリ制御部112、インク吐出制御部113、センサ制御部114、およびモータ制御部115を備える。
CPU制御部111は、CPU101と通信を行って、制御用FPGA110が取得した各種情報をCPU101に伝えるとともに、CPU101から出力された制御指令を入力する。
メモリ制御部112は、CPU101がROM102やRAM103にアクセスするためのメモリ制御を行う。
インク吐出制御部113は、CPU101からの制御指令に応じて記録ヘッドドライバ104の動作を制御することにより、記録ヘッドドライバ104により駆動される記録ヘッド6からのインクの吐出タイミングを制御する。
センサ制御部114は、エンコーダセンサ13から出力されるエンコーダ値などのセンサ信号に対する処理を行う。
モータ制御部115は、CPU101からの制御指令に応じて主走査ドライバ105の動作を制御することにより、主走査ドライバ105により駆動される主走査モータ8を制御して、キャリッジ5の主走査方向への移動を制御する。また、モータ制御部115は、CPU101からの制御指令に応じて副走査ドライバ106の動作を制御することにより、副走査ドライバ106により駆動される副走査モータ12を制御して、プラテン16上の用紙Pの副走査方向への移動を制御する。
なお、以上の各部は、制御用FPGA110により実現する制御機能の一例であり、これら以外にも様々な制御機能を制御用FPGA110により実現する構成としてもよい。例えば、CPU101により実行されるプラグラムによって実現される上述した動作モード切替え部150や速度制御部160の機能を、制御用FPGA110により実現する構成としてもよい。また、上記の制御機能の全部または一部を、CPU101または他の汎用のCPUにより実行されるプログラムによって実現する構成であってもよい。また、上記の制御機能の一部を、制御用FPGA110とは異なる他のFPGAやASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの専用のハードウェアにより実現する構成であってもよい。
記録ヘッド6は、CPU101および制御用FPGA110により動作制御される記録ヘッドドライバ104により駆動され、プラテン16上の用紙Pにインクを吐出し、画像の印刷を行う。特に、画像形成装置100の色調整時においては、記録ヘッド6は、CPU101および制御用FPGA110の制御に従って用紙P上にインクを吐出することで、測色対象となる多数のパッチ200が並ぶ色調整用テストパターンを印刷する。また、画像の位置ずれの調整を行う位置ずれ調整時においては、記録ヘッド6は、CPU101および制御用FPGA110の制御に従って用紙P上にインクを吐出することで、例えばライン状のパターンが並ぶ位置ずれ検出用テストパターンを印刷する。
測色カメラ20は、上述したように、画像形成装置100の色調整時に、色調整用テストパターンに含まれる各パッチ200を基準チャート400とともに2次元イメージセンサ27で撮像し、撮像画像から得られるパッチ200のRGB値と基準チャート400の各基準パッチのRGB値とに基づいて、パッチ200の測色値(標準色空間における表色値であり、例えばL*a*b*色空間におけるL*a*b*値(以下、L*a*b*を「Lab」と表記する。))を算出する。測色カメラ20が算出したパッチ200の測色値は、制御用FPGA110を介してCPU101に送られる。なお、本実施形態におけるパッチ200の測色方法の具体例については、詳細を後述する。
なお、画像形成装置100の色調整は、上述したように、パッチ200のRGB値を用いて実施することもできる。この場合、測色カメラ20は、色調整用テストパターンに含まれる各パッチ200を基準チャート400とともに2次元イメージセンサ27で撮像し、撮像画像から得られるパッチ200のRGB値に対し、基準チャート400の各基準パッチのRGB値を用いて、照明光源30の変動などに起因する誤差を補正する処理を行う。補正されたパッチ200のRGB値は、例えば、測色カメラ20から制御用FPGA110を介してCPU101に送られる。そして、CPU101が、このRGB値を用いてインクの吐出量を制御するためのパラメータなどを調整することにより、記録ヘッド6から用紙P上に吐出されるインクの量が調整される。
また、測色カメラ20は、上述したように、パッチ200の測色(撮像)だけでなく、画像の位置ずれ検出や、用紙Pの端部検出にも用いられる。測色カメラ20により検出された画像の位置ずれの情報や、用紙Pの端部の位置情報は、制御用FPGA110を介してCPU101に送られる。
エンコーダセンサ13は、エンコーダシート14のマークを検知して得られるエンコーダ値を制御用FPGA110に出力する。このエンコーダ値は制御用FPGA110からCPU101へと送られて、例えば、キャリッジ5の位置や速度を計算するために用いられる。CPU101は、このエンコーダ値から計算したキャリッジ5の位置や速度に基づき、主走査モータ8を制御するための制御指令を生成して出力する。
<測色カメラの制御機構の構成>
次に、図7を参照しながら、測色カメラ20の制御機構の構成例について具体的に説明する。図7は、測色カメラ20の制御ブロック図である。
測色カメラ20は、図7に示すように、二次元イメージセンサ27や照明光源30のほか、センサ制御部40、インターフェース部41、タイミング信号発生部42、フレームメモリ43、演算部44、不揮発性メモリ45、および光源駆動制御部46を備える。これらの各部は、例えば、測色カメラ20の筐体23の上面部を構成する基板22に実装されている。
二次元イメージセンサ27は、上述した結像レンズ28を介して入射した光を受光部で受光し、各受光部の受光量に応じた出力値を読み出して、画像データとして出力する。二次元イメージセンサ27は、各受光部の出力値をデジタルの画像データにAD変換し、その画像データに対してシェーディング補正やホワイトバランス補正、γ補正、フォーマット変換などの各種の画像処理を行う機能を有し、これら画像処理が行われた画像データを出力する。なお、画像データに対する各種の画像処理は、その一部あるいは全部を二次元イメージセンサ27の外部で行うようにしてもよい。
センサ制御部40は、二次元イメージセンサ27の動作モードを指定したCPU101からの制御信号に基づいて、二次元イメージセンサ27の撮像領域を設定して、二次元イメージセンサ27の動作モードに従った出力値の読み出しを制御する。
図8は、二次元イメージセンサ27とセンサ制御部40の詳細を説明する模式図である。図8に示すように、二次元イメージセンサ27は、垂直方向および水平方向の二次元方向に配列された複数の受光部50と、垂直アドレス発生回路51および水平アドレス発生回路52と、読み出し部53とを備える。二次元イメージセンサ27の複数の受光部50のうち、垂直アドレス発生回路51および水平アドレス発生回路52により指定された受光部50の出力値が、読み出し部53により順次読み出される。なお、図8や、以下で説明する図9および図10では、図示を簡略化するために受光部50の数を限定して示しているが、実際には、より多数の受光部50が二次元方向に配列された構造となっている。
センサ制御部40は、垂直アドレス発生回路51が参照する垂直アドレス指定レジスタ55と、水平アドレス発生回路52が参照する水平アドレス指定レジスタ56とを備える。垂直アドレス指定レジスタ55は、二次元イメージセンサ27の動作モードに応じて設定される撮像領域内の受光部50の垂直方向のアドレスを格納するレジスタである。水平アドレス指定レジスタ56は、二次元イメージセンサ27の動作モードに応じて設定される撮像領域内の受光部50の水平方向のアドレスを格納するレジスタである。センサ制御部40は、二次元イメージセンサ27の動作モードを指定したCPU101からの制御信号に基づき、出力値を読み出す受光部50のアドレスを垂直アドレス指定レジスタ55および水平アドレス指定レジスタ56に格納することで、二次元イメージセンサ27の撮像領域を設定し、読み出し部53による出力値の読み出しを制御する。
図9は、全体読み出しモードに応じた撮像領域が設定された場合の出力値の読み出しを説明する模式図である。全体読み出しモードは、上述したように、二次元イメージセンサ27の受光部50の出力値を用いてパッチ200の測色を行う場合に、CPU101によって指定される二次元イメージセンサ27の動作モードであり、二次元イメージセンサ27のすべての受光部50を撮像領域とする動作モードである。
全体読み出しモードに応じた撮像領域が設定されると、出力値を読み出す受光部50として、図9に示すように、二次元イメージセンサ27のすべての受光部50が、垂直アドレス発生回路51および水平アドレス発生回路52によって順番に指定される。そして、読み出し部53により、二次元イメージセンサ27のすべての受光部50から出力値が順次読み出される。
なお、本実施形態では、二次元イメージセンサ27を用いてパッチ200の測色を行う場合に全体読み出しモードが指定され、全体読み出しモードでは二次元イメージセンサ27のすべての受光部50から出力値を読み出すものとしている。しかし、パッチ200の測色を行う場合にすべての受光部50から出力値を読み出すことは必ずしも必要ではなく、測色に必要なRGB値が得られる十分に広い撮像領域が設定されればよい。ここで、測色に必要なRGB値とは、パッチ200の測色に基準チャート400を使用する場合は、測色対象のパッチ200のRGB値および基準チャート400に含まれる各基準パッチのRGB値である。測色対象のパッチ200のRGB値は、例えば、二次元イメージセンサ27が出力する画像データのうち、パッチ200を映した領域の中央部付近に設定される測色対象領域の画像データを平均化して求められる。また、基準チャート400の各基準パッチのRGB値は、例えば、二次元イメージセンサ27が出力する画像データのうち、基準チャート400の各基準パッチを映した領域の画像データを各々平均化して求められる。したがって、この場合、少なくとも基準チャート400と上述した測色対象領域(開口部25の中央付近)とが含まれる大きさの撮像領域が設定されればよい。すなわち、センサ制御部40は、第1動作モードを指定したCPU101からの制御信号に基づいて、二次元イメージセンサ27の撮像領域を、少なくとも基準チャート400と上述した測色対象領域(開口部25の中央付近)とが含まれる範囲に設定すればよい。
また、上述したように、パッチ200のRGB値を用いて画像形成装置100の色調整を行う場合にも、二次元イメージセンサ27の動作モードとして全体読み出しモードが指定される。この場合も、二次元イメージセンサ27のすべての受光部50から出力値を読み出すことは必ずしも必要ではなく、例えば、パッチ200を映した領域の中央部付近(開口部25の中央付近)と基準チャート400を映した領域とが含まれるように、二次元イメージセンサ27の撮像領域が設定されればよい。
図10は、部分読み出しモードに応じた撮像領域が設定された場合の出力値の読み出しを説明する模式図である。部分読み出しモードは、上述したように、二次元イメージセンサ27の受光部50の出力値を用いて、印刷に関わる位置検出(画像の位置ずれ検出や用紙Pの端部検出)など、パッチ200の測色以外の処理を行う場合に、CPU101によって指定される二次元イメージセンサ27の動作モードである。部分読み出しモードでは、二次元イメージセンサ27の撮像領域が一部の受光部50の範囲に限定される。
図10に示した例では、二次元イメージセンサ27のセンサ面中央部に位置する4つの受光部50の範囲を撮像領域としているが、部分読み出しモードに応じて設定される撮像領域内の受光部50の数や位置は、この例に限定されるものではない。部分読み出しモードに応じて設定される撮像領域は、少なくとも、全体読み出しモードに応じて設定される撮像領域よりも狭い範囲となる。
部分読み出しモードに応じた撮像領域が設定されると、図10に示すように、二次元イメージセンサ27の一部の受光部50が、垂直アドレス発生回路51および水平アドレス発生回路52によって順番に指定される。そして、垂直アドレス発生回路51および水平アドレス発生回路52によって指定された一部の受光部50のみから、読み出し部53によって出力値が順次読み出される。
部分読み出しモードでは、二次元イメージセンサ27の撮像領域が、全体読み出しモードよりも狭い範囲となる。このため、全体読み出しモードよりも部分読み出しモードの方が、二次元イメージセンサ27の読み出し時間が短くなる。つまり、二次元イメージセンサ27の撮像領域内の各受光部50から読み出された出力値の集合を1フレームの画像と捉え、1秒間に取得できるフレーム数を読み出し速度(fps)とすると、部分読み出しモードの読み出し速度は、全体読み出しモードよりも速くなる。
図11は、二次元イメージセンサ27の撮像領域の面積比と読み出し速度との関係を示す図である。図の横軸は、撮像領域の面積比(二次元イメージセンサ27のセンサ面全体の面積を、撮像領域の面積で除算した値)を示し、縦軸は、面積比1の場合(つまり、全体読み出しモードの場合)の読み出し速度をaとしたときの相対的な読み出し速度(fps)を示している。なお、面積比1の場合の読み出し速度aは二次元イメージセンサ27の性能に依存し、一般に、面積比1の場合の読み出し速度aが速いものほど高価である。
図11に示すように、二次元イメージセンサ27の読み出し速度は、撮像領域が狭くなるほど速くなる。例えば、二次元イメージセンサ27のセンサ面全体の面積に対して、撮像領域の面積を1/2にすると読み出し速度は約2倍となり、撮像領域の面積を1/3にすると読み出し速度は約3倍となる。ただし、撮像領域がある程度狭くなると、撮像領域の面積削減に対する読み出し速度の向上の度合は小さくなる。例えば、二次元イメージセンサ27のセンサ面全体の面積に対して、撮像領域の面積を1/5にした場合は、読み出し速度は約4倍となり、撮像領域の面積を1/100にした場合は、読み出し速度は約37倍となる。
図12は、測色カメラ20を用いて画像の位置ずれ検出を行う様子を示す模式図である。図中、(a)は用紙Pに印刷された位置ずれ検出用テストパターンの一例を示し、(b)は全体読み出しモードでパターンの読み取り(撮像)を行う様子を示し、(c)は部分読み出しモードでパターンの読み取り(撮像)を行う様子を示している。
画像の位置ずれ検出を行う場合は、上述したように、用紙Pに位置ずれ検出用テストパターンを印刷し、この用紙Pに対して測色カメラ20を相対移動させながら、測色カメラ20の二次元イメージセンサ27によりパターンの読み取り(撮像)を行う。そして、得られた画像内のパターンの位置と、用紙Pに対する測色カメラ20の相対移動速度などから、それぞれのパターンの位置を求め、例えば、隣り合うパターン間の間隔のずれなどから、画像の位置ずれ(インクの着弾位置ずれ)を検出する。
したがって、画像の位置ずれ検査を適切に行うには、二次元イメージセンサ27の撮像領域が隣り合う2つのパターンに亘って移動する間に、撮像領域内の各受光部50からの出力値の読み出しが完了している必要がある。つまり、図12(b),(c)に示すように、二次元イメージセンサ27の撮像領域があるパターンと対向する位置から次のパターンと対向する位置にまで移動する時間は、二次元イメージセンサ27の読み出し時間より短くすることができない。
ここで、撮像領域が広い全体読み出しモードでは、読み出し速度が遅く、読み出し時間が長くなるため、二次元イメージセンサ27を全体読み出しモードで動作させて画像の位置ずれ検出を行うには、用紙Pに対する測色カメラ20の相対移動速度を遅くする必要がある。このため、検査に要する時間が長くなってしまい、画像形成装置100に要求される性能を満足できない場合がある。
これに対して、撮像領域が狭い部分読み出しモードでは、全体読み出しモードよりも読み出し速度が速く、読み出し時間が短くなるため、画像の位置ずれ検出を行う際に用紙Pに対する測色カメラ20の相対移動速度を高めることができる。よって、検査に要する時間を短縮して、画像形成装置100に要求される性能を満足しながら、画像の位置ずれ検査を適切に行うことができる。本実施形態では、測色カメラ20を用いて画像の位置ずれ検出を行う場合は、二次元イメージセンサ27を部分読み出しモードで動作させるようにしている。
なお、図12(b),(c)では、主走査方向における画像の位置ずれ(インクの着弾位置ずれ)を検出する例を示している。この例では、位置ずれ検出用テストパターンが印刷された用紙Pの搬送が停止している間に、キャリッジ5を主走査方向に移動させることによって、用紙Pに対して測色カメラ20を相対移動させながら、主走査方向に並ぶパターンの読み取り(撮像)を行う。副走査方向における画像の位置ずれを検出する場合は、測色カメラ20の移動が停止している間に、位置ずれ検出用テストパターンが印刷された用紙Pを副走査方向に搬送させることで、用紙Pに対して測色カメラ20を相対移動させながら副走査方向に並ぶパターンの読み取りを行えばよい。
図13は、測色カメラ20を用いて用紙Pの副走査方向の端部検出を行う様子を示す模式図である。図中、(a)は用紙Pの副走査方向の端部検出を行う際の用紙Pと測色カメラ20との位置関係を示し、(b)は全体読み出しモードで用紙Pの副走査方向の端部位置を読み取る様子を示し、(c)は部分読み出しモードで用紙Pの副走査方向の端部位置を読み取る様子を示している。
用紙Pの副走査方向の端部検出を行う場合は、測色カメラ20を例えば図13(a)に示す位置に固定し、用紙Pを副走査方向に搬送して、測色カメラ20の二次元イメージセンサ27により、搬送される用紙Pの副走査方向の端部位置を読み取る。この際、図13(b)に示すように、撮像領域が広い全体読み出しモードで二次元イメージセンサ27を動作させると、二次元イメージセンサ27の読み出し速度が遅く、読み出し時間が長いために、用紙Pの副走査方向の端部位置を正しく検出できない場合がある。ここで、用紙Pの搬送速度を遅くすれば端部位置の検出精度は向上するが、用紙Pの搬送速度を遅くすると、画像の位置ずれ検査の場合と同様、検査に要する時間が長くなってしまい、画像形成装置100に要求される性能を満足できない場合がある。
これに対して、図13(c)に示すように、撮像領域が狭い部分読み出しモードで二次元イメージセンサ27を動作させれば、二次元イメージセンサ27の読み出し速度が全体読み出しモードよりも速くなり、読み出し時間が短くなるため、用紙Pの副走査方向の端部位置を精度よく検出することができる。そこで、本実施形態では、測色カメラ20を用いて用紙Pの副走査方向の端部検出を行う場合は、二次元イメージセンサ27を部分読み出しモードで動作させるようにしている。
図14は、測色カメラ20を用いて用紙Pの主走査方向の端部検出を行う様子を示す模式図である。図中、(a)は用紙Pの主走査方向の端部検出を行う際の用紙Pと測色カメラ20との位置関係を示し、(b)は全体読み出しモードで用紙Pの主走査方向の端部位置を読み取る様子を示し、(c)は部分読み出しモードで用紙Pの主走査方向の端部位置を読み取る様子を示している。
用紙Pの主走査方向の端部検出は、上述したように、キャリッジ5に搭載された記録ヘッド6から用紙Pにインクを吐出して画像を印刷する動作に付随して行われる。つまり、用紙Pの主走査方向の端部検出を行う場合は、図14(a)に示すように、用紙Pの副走査方向の搬送が停止している間に、キャリッジ5の移動に伴って測色カメラ20を主走査方向に移動させ、測色カメラ20の二次元イメージセンサ27により、用紙Pの主走査方向の端部位置を読み取る。この際、図14(b)に示すように、撮像領域が広い全体読み出しモードで二次元イメージセンサ27を動作させると、二次元イメージセンサ27の読み出し速度が遅く、読み出し時間が長いために、用紙Pの主走査方向の端部位置を正しく検出できない場合がある。ここで、キャリッジ5の移動速度を遅くすれば端部位置の検出精度は向上するが、キャリッジ5の移動速度は画像の印刷速度に依存するため、遅くすることができない。
これに対して、図14(c)に示すように、撮像領域が狭い部分読み出しモードで二次元イメージセンサ27を動作させれば、二次元イメージセンサ27の読み出し速度が全体読み出しモードよりも速くなり、読み出し時間が短くなる。このため、画像の印刷速度に応じた移動速度でキャリッジ5を移動させながら、用紙Pの主走査方向の端部位置を精度よく検出することができる。そこで、本実施形態では、測色カメラ20を用いて用紙Pの主走査方向の端部検出を行う場合は、二次元イメージセンサ27を部分読み出しモードで動作させるようにしている。
図7に戻り、インターフェース部41は、二次元イメージセンサ27から画像データを出力し、また、CPU101から送られてきた各種設定信号やタイミング信号発生部42が生成したタイミング信号などを二次元イメージセンサ27に入力するためのインターフェースである。各種設定信号は、二次元イメージセンサ27のシャッタスピードやAGCのゲインなどの撮像条件を設定する信号を含む。
また、インターフェース部41は、二次元イメージセンサ27の動作モードを指定する制御信号をCPU101から受信して、センサ制御部40に受け渡す役割を持つ(受信部)。
タイミング信号発生部42は、二次元イメージセンサ27による撮像開始のタイミングを制御するタイミング信号を生成し、インターフェース部41を介して二次元イメージセンサ27に入力する。
フレームメモリ43は、二次元イメージセンサ27から出力された画像データを一時的に格納する。
演算部44は、フレームメモリ43に格納された画像データを用いて各種演算を行う機能ブロックであり、機能別に、測色演算部44a、位置ずれ検出部44b、および用紙端部検出部44cを有する。
測色演算部44aは、全体読み出しモードで動作する二次元イメージセンサ27から出力され、フレームメモリ43に格納された画像データをもとに、測色対象となるパッチ200のRGB値と、基準チャート400の各基準パッチのRGB値とを求める。そして、測色演算部44aは、得られたパッチ200のRGB値と基準チャート400の各基準パッチのRGB値とに基づいて、パッチ200の測色値を算出する。測色演算部44aが算出した測色値は、CPU101へと送られる。なお、測色演算部44aによる処理の具体例については、詳細を後述する。
位置ずれ検出部44bは、部分読み出しモードで動作する二次元イメージセンサ27から出力され、フレームメモリ43に格納された画像データをもとに、画像の位置ずれを検出する処理を行う。また、用紙端部検出部44cは、部分読み出しモードで動作する二次元イメージセンサ27から出力され、フレームメモリ43に格納された画像データをもとに、用紙Pの副走査方向の端部や主走査方向の端部を検出する処理を行う。これら位置ずれ検出部44bが検出した画像位置ずれの情報や、用紙端部検出部44cが検出した用紙Pの端部位置の情報は、CPU101へと送られる。
不揮発性メモリ45は、演算部44での処理に必要な各種データを格納する記憶装置である。
光源駆動制御部46は、照明光源30を駆動するための光源駆動信号を生成して、照明光源30に供給する。
以上のように、本実施形態の画像形成装置100では、測色カメラ20の利用目的に応じて二次元イメージセンサ27の動作モードを切り替えて、動作モードに応じた撮像領域を設定するようにしている。具体的には、測色カメラ20を用いてパッチ200の測色を行う場合には、二次元イメージセンサ27を全体読み出しモードで動作させ、二次元イメージセンサ27のすべての受光部50から出力値の読み出しを行う。一方、測色カメラ20を測色以外の用途で用いる場合、例えば、測色カメラ20を用いて画像の位置ずれ検出や用紙Pの端部検出を行う場合には、二次元イメージセンサ27を部分読み出しモードで動作させ、二次元イメージセンサ27の一部の受光部50から出力値の読み出しを行う。このように、測色カメラ20の利用目的に応じて二次元イメージセンサ27の動作モードを切り替えて、動作モードに応じた撮像領域を設定することで、測色カメラ20の二次元イメージセンサ27を単にパッチ200の測色だけでなく、様々な用途で有効に利用することができる。
<二次元イメージセンサの駆動制御方法>
ここで、本実施形態による二次元イメージセンサ27の駆動制御方法の概要を、図15に沿って説明する。図15は、二次元イメージセンサ27の駆動制御方法の処理手順を示すフローチャートである。
まず、CPU101が、測色カメラ20の利用目的がパッチ200の測色であるか否かを判定する(ステップS101)。そして、CPU101は、測色カメラ20の利用目的がパッチ200の測色であれば(ステップS101:Yes)、二次元イメージセンサ27の動作モードとして全体読み出しモードを指定する制御信号を出力する(ステップS102)。一方、測色カメラ20の利用目的がパッチ200の測色でない、つまり、測色カメラ20の利用目的が画像の位置ずれ検出や用紙Pの端部検出などであれば(ステップS101:No)、CPU101は、二次元イメージセンサ27の動作モードとして部分読み出しモードを指定する制御信号を出力する(ステップS103)。CPU101から出力された制御信号は、測色カメラ20のインターフェース部41により受信され、センサ制御部40に渡される。
測色カメラ20のセンサ制御部40は、インターフェース部41が受信した制御信号が全体読み出しモードを指定するものであれば、二次元イメージセンサ27のすべての受光部50を撮像領域に設定する(ステップS104)。一方、インターフェース部41が受信した制御信号が全体読み出しモードを指定するものであれば、センサ制御部40は、二次元イメージセンサ27の一部の受光部50を撮像領域に設定する(ステップS105)。そして、センサ制御部40は、ステップS104またはステップS105で設定した撮像領域に含まれる受光部50から出力値が順次読み出されるように、読み出し部53による出力値の読み出しを制御する(ステップS106)。
<変形例>
本実施形態の画像形成装置100では、二次元イメージセンサ27の出力値を高速に読み出すことが要求される用途で測色カメラ20を利用する場合には、二次元イメージセンサ27の撮像領域を狭い範囲に設定することで読み出し速度を高めるようにしている。しかし、二次元イメージセンサ27の撮像領域を狭めることによる読み出し速度の向上には限界があり、特に、安価なセンサ(図11に示した面積比が1の場合の読み出し速度aの値が小さいセンサ)では、目標とする読み出し速度が得られない場合がある。
この場合、例えば用紙Pの端部検出を行う際に、二次元イメージセンサ27の撮像領域が用紙Pの端部位置を捉えている間に出力値の読み出しが完了せずに、端部検出を適切に行えない虞がある。このような問題に対しては、部分読み出しモードで二次元イメージセンサ27を動作させる場合に、二次元イメージセンサ27の撮像領域を、測色カメラ20と撮像対象(本実施形態では用紙P)との相対移動方向に長い領域に設定することが有効である。
図16は、二次元イメージセンサ27を部分読み出しモードで動作させて用紙Pの主走査方向の端部検出を行う様子を示す模式図である。図16(a)は二次元イメージセンサ27の撮像領域を正方形の領域とした場合を示し、図16(b)は二次元イメージセンサ27の撮像領域を相対移動方向に長い領域とした場合を示している。
図16(a)に示すように、二次元イメージセンサ27の撮像領域が正方形の領域に設定されている場合には、読み出し速度が十分でないと、撮像領域が用紙Pの端部位置を捉えている間に1フレーム分の出力が完了せず、用紙Pの端部を検出できない場合がある。
これに対して、図16(b)に示すように、二次元イメージセンサ27の撮像領域を相対移動方向に長い領域に設定すれば、撮像領域が用紙Pの端部位置を捉えている時間が長くなる。このため、読み出し速度が同じでも、撮像領域が用紙Pの端部位置を捉えている間に1フレーム分の出力を完了させることができ、用紙Pの端部を適切に検出することができる。
図17は、二次元イメージセンサ27の撮像領域を相対移動方向に長い領域に設定する様子を示す模式図である。図17(a)は相対移動方向が主走査方向である場合を示し、図17(b)は相対移動方向が副走査方向である場合を示している。
センサ制御部40は、二次元イメージセンサ27を部分読み出しモードで動作させる場合、撮像対象(本実施形態では用紙P)に対する測色カメラ20の相対移動方向が主走査方向か副走査方向かを確認する。そして、相対移動方向が主走査方向であれば、二次元イメージセンサ27の水平方向に並ぶ受光部50のアドレスを垂直アドレス指定レジスタ55および水平アドレス指定レジスタ56に格納することで、図17(a)に示すように、主走査方向に長い撮像領域を設定して、読み出し部53による出力値の読み出しを制御する。一方、相対移動方向が副走査方向であれば、二次元イメージセンサ27の垂直方向に並ぶ受光部50のアドレスを垂直アドレス指定レジスタ55および水平アドレス指定レジスタ56に格納することで、図17(b)に示すように、副走査方向に長い撮像領域を設定して、読み出し部53による出力値の読み出しを制御する。
図18は、変形例による二次元イメージセンサ27の駆動制御方法の処理手順を示すフローチャートである。
まず、CPU101が、測色カメラ20の利用目的がパッチ200の測色であるか否かを判定する(ステップS201)。そして、CPU101は、測色カメラ20の利用目的がパッチ200の測色であれば(ステップS201:Yes)、二次元イメージセンサ27の動作モードとして全体読み出しモードを指定する制御信号を出力する(ステップS202)。一方、測色カメラ20の利用目的がパッチ200の測色でない、つまり、測色カメラ20の利用目的が画像の位置ずれ検出や用紙Pの端部検出などであれば(ステップS201:No)、CPU101は、二次元イメージセンサ27の動作モードとして部分読み出しモードを指定する制御信号を出力する(ステップS203)。CPU101から出力された制御信号は、測色カメラ20のインターフェース部41により受信され、センサ制御部40に渡される。
測色カメラ20のセンサ制御部40は、インターフェース部41が受信した制御信号が全体読み出しモードを指定するものであれば、二次元イメージセンサ27のすべての受光部50を撮像領域に設定する(ステップS204)。一方、インターフェース部41が受信した制御信号が全体読み出しモードを指定するものであれば、センサ制御部40は、撮像対象(本実施形態では用紙P)に対する測色カメラ20の相対移動方向が主走査方向であるか否かを判定する(ステップS205)。
そして、センサ制御部40は、相対移動方向が主走査方向であれば(ステップS205:Yes)、二次元イメージセンサ27の水平方向(主走査方向に対応)に並ぶ一部の受光部50を撮像領域に設定する(ステップS206)。一方、相対移動方向が副走査方向であれば(ステップS205:No)、センサ制御部40は、二次元イメージセンサ27の垂直方向(副走査方向に対応)に並ぶ一部の受光部50を撮像領域に設定する(ステップS207)。
そして、センサ制御部40は、ステップS204またはステップS206またはステップS207で設定した撮像領域に含まれる受光部50から出力値が順次読み出されるように、読み出し部53による出力値の読み出しを制御する(ステップS208)。
<パッチの測色方法の具体例>
次に、図19乃至図25を参照しながら、本実施形態の画像形成装置100によるパッチ200の測色方法の具体例について詳細に説明する。以下で説明する測色方法は、画像形成装置100が初期状態のとき(製造やオーバーフォールなどによって初期状態となっているとき)に実施される前処理と、画像形成装置100の色調整を行う色調整時に実施される測色処理とを含む。
図19は、基準測色値および基準RGB値を取得する処理と基準値線形変換マトリックスを生成する処理を説明する図である。図19に示すこれらの処理は、前処理として実施される。前処理では、複数の基準パッチKPが配列形成された基準シートKSが用いられる。基準シートKSの基準パッチKPは、測色カメラ20が備える基準チャート400のパッチと同等のものである。
まず、基準シートKSの複数の基準パッチKPの測色値であるLab値とXYZ値のうち、少なくともいずれか(図19の例では、Lab値とXYZ値の双方)が、それぞれのパッチ番号に対応させて、例えば測色カメラ20の基板22に実装された不揮発性メモリ45などに設けられるメモリテーブルTb1に格納される。基準パッチKPの測色値は、分光器BSなどを用いた測色により事前に得られる値である。基準パッチKPの測色値が既知であれば、その値を用いればよい。以下、メモリテーブルTb1に格納された基準パッチKPの測色値を「基準測色値」という。
次に、基準シートKSがプラテン16上にセットされ、キャリッジ5の移動を制御することで、基準シートKSの複数の基準パッチKPを被写体として、測色カメラ20による撮像が行われる。そして、測色カメラ20の撮像により得られた基準パッチKPのRGB値が、不揮発性メモリ45のメモリテーブルTb1に、パッチ番号に対応して格納される。つまり、メモリテーブルTb1には、基準シートKSに配列形成された複数の基準パッチKPそれぞれの測色値とRGB値が、各基準パッチKPのパッチ番号に対応して格納される。以下、メモリテーブルTb1に格納された基準パッチKPのRGB値を「基準RGB値」という。基準RGB値は、測色カメラ20の特性を反映した値である。
画像形成装置100のCPU101は、基準パッチKPの基準測色値および基準RGB値が不揮発性メモリ45のメモリテーブルTb1に格納されると、同じパッチ番号の基準測色値であるXYZ値と基準RGB値との対に対して、これらを相互に変換する基準値線形変換マトリックスを生成し、不揮発性メモリ45に格納する。メモリテーブルTb1に基準測色値としてLab値のみが格納されている場合は、Lab値をXYZ値に変換する既知の変換式を用いてLab値をXYZ値に変換した後に、基準値線形変換マトリックスを生成すればよい。
また、測色カメラ20が基準シートKSの複数の基準パッチKPを撮像する際には、測色カメラ20に設けられた基準チャート400も同時に撮像される。この撮像により得られた基準チャート400の各パッチのRGB値も、パッチ番号に対応させて、不揮発性メモリ45のメモリテーブルTb1に格納される。この前処理によりメモリテーブルTb1に格納された基準チャート400のパッチのRGB値を「初期基準RGB値」という。図20は、初期基準RGB値の一例を示す図である。図20(a)は初期基準RGB値(RdGdBd)をメモリテーブルTb1に格納した様子を示し、初期基準RGB値(RdGdBd)とともに、初期基準RGB値(RdGdBd)をLab値に変換した初期基準Lab値(Ldadbd)やXYZ値に変換した初期基準XYZ値(XdYdZd)も対応付けて格納されることを示している。また、図20(b)は基準チャート400の各パッチの初期基準RGB値をプロットした散布図である。
以上の前処理が終了した後、画像形成装置100は、外部から入力される画像データや印刷設定等に基づいて、CPU101による制御のもとで、主走査モータ8や副走査モータ12、記録ヘッド6を駆動して、用紙Pを副走査方向に間欠的に搬送させつつ、キャリッジ5を主走査方向に移動させながら、記録ヘッド6からインクを吐出させて、用紙Pに画像を印刷する。このとき、記録ヘッド6からのインクの吐出量が、機器固有の特性や経時変化などによって変化することがあり、このインクの吐出量が変化すると、ユーザが意図する画像の色とは異なった色で画像形成されることとなって、色再現性が劣化する。そこで、画像形成装置100は、色調整を行う所定のタイミングで、用紙Pに印刷されたテストチャートに含まれるパッチ200の測色値を求める測色処理を実施する。そして、測色処理により得られたパッチ200の測色値に基づいてデバイスプロファイルの生成あるいは修正を行って、このデバイスプロファイルに基づいて色調整を行うことにより、出力画像の色再現性を高める。
図21は、測色処理の概要を説明する図である。画像形成装置100は、色調整を行う色調整時に、まず、プラテン16上にセットされた用紙P上に記録ヘッド6からインクを吐出して、多数のパッチ200が並んだテストパターン印刷する。以下、テストパターンが印刷された用紙Pを「調整シートCS」という。この調整シートCSには、画像形成装置100の色調整時における出力特性、特に、記録ヘッド6の出力特性を反映したパッチ200が印刷されている。なお、テストパターンを印刷するための画像データは、不揮発性メモリ45などに予め格納されている。
次に、画像形成装置100は、図21に示すように、この調整シートCSがプラテン16上にセットされるか、調整シートCSを作成した段階で排紙することなくプラテン16上に保持された状態において、この調整シートCS上でキャリッジ5を主走査方向に移動させながら、測色カメラ20の二次元イメージセンサ27で画像の撮像を行う。そして、二次元イメージセンサ27から出力される撮像画像からパッチ200のRGB値が求められる。また、二次元イメージセンサ27は、測色対象のパッチ200と同時に基準チャート400を撮像しているため、基準チャート400に含まれる各基準パッチのRGB値も得られる。以下、測色対象のパッチ200のRGB値を「測色対象RGB値」といい、基準チャート400の基準パッチのRGB値を「測色時基準RGB値(RdsGdsBds)」という。「測色時基準RGB値(RdsGdsBds)」は、不揮発性メモリ45などに格納される。
測色カメラ20の測色演算部44aは、後述する基準RGB間線形変換マトリックスを用いて、測色対象RGB値を初期化測色対象RGB値(RsGsBs)に変換する処理を行う(ステップS10)。初期化測色対象RGB値(RsGsBs)は、測色対象RGB値から、前処理を行った初期状態のときから測色処理を行う色調整時に至るまでの間に生じる測色カメラ20の撮像条件の経時変化、例えば、照明光源30の経時変化や二次元イメージセンサ27の経時変化の影響を排除したものである。
その後、測色演算部44aは、測色対象RGB値から変換された初期化測色対象RGB値(RsGsBs)を対象として、後述する基本測色処理を実行することにより(ステップS20)、測色対象のパッチ200の測色値であるLab値を取得する。
図22は、基準RGB間線形変換マトリックスを生成する処理を説明する図であり、図23は、初期基準RGB値と測色時基準RGB値との関係を示す図である。測色演算部44aは、測色対象RGB値を初期化測色対象RGB値(RsGsBs)に変換する処理(ステップS10)を行う前に、この変換に用いる基準RGB間線形変換マトリックスを生成する。すなわち、測色演算部44aは、図22に示すように、画像形成装置100が初期状態のときに前処理として得られた初期基準RGB値(RdGdBd)と、色調整時において得られる測色時基準RGB値(RdsGdsBds)とを不揮発性メモリ45から読み出し、測色時基準RGB値RdsGdsBdsを初期基準RGB値RdGdBdに変換する基準RGB間線形変換マトリックスを生成する。そして、測色演算部44aは、生成した基準RGB間線形変換マトリックスを不揮発性メモリ45に格納する。
図23において、図23(a)で薄く描かれている点が初期基準RGB値RdGdBdをrgb空間でプロットした点であり、塗りつぶし点が、測色時基準RGB値RdsGdsBdsをrgb空間でプロットした点である。図23(a)から分かるように、測色時基準RGB値RdsGdsBdsの値が初期基準RGB値RdGdBdの値から変動しており、これらのrgb空間上での変動方向は、図23(b)に示すように概ね同じであるが、色相によってずれの方向が異なる。このように、同じ基準チャート400のパッチを撮像してもRGB値が変動する要因としては、照明光源30の経時変化、二次元イメージセンサ27の経時変化などがある。
このように、測色カメラ20による撮像によって得られるRGB値が変動している状態で、パッチ200を撮像することで得られる測色対象RGB値を用いて測色値を求めると、変動分だけ測色値に誤差が発生する虞がある。そこで、初期基準RGB値RdGdBdと測色時基準RGB値RdsGdsBdsとの間で、最小2乗法などの推定法を用いて、測色時基準RGB値RdsGdsBdsを初期基準RGB値RdGdBdに変換する基準RGB間線形変換マトリックスを求め、この基準RGB間線形変換マトリックスを用いて、測色カメラ20でパッチ200を撮像することにより得られる測色対象RGB値を、初期化測色対象RGB値RsGsBsに変換し、変換した初期化測色対象RGB値RsGsBsを対象として、後述する基本測色処理を実行することで、測色対象のパッチ200の測色値を精度よく取得できるようにしている。
この基準RGB間線形変換マトリックスは、1次だけでなく、さらに高次の非線形マトリックスであってもよく、rgb空間とXYZ空間間で非線形性が高い場合には、高次のマトリックスとすることで、変換精度を向上させることができる。
測色演算部44aは、上述したように、パッチ200の撮像により得られる測色対象RGB値を、基準RGB間線形変換マトリックスを用いて初期化測色対象RGB値(RsGsBs)に変換した後(ステップS10)、この初期化測色対象RGB値(RsGsBs)を対象として、ステップS20の基本測色処理を行う。
図24および図25は、基本測色処理を説明する図である。測色演算部44aは、まず、前処理において生成して不揮発性メモリ45に格納した基準値線形変換マトリックスを読み出し、基準値線形変換マトリックスを用いて初期化測色対象RGB値(RsGsBs)を第1XYZ値に変換し、不揮発性メモリ45に格納する(ステップS21)。図24では、初期化測色対象RGB値(3、200、5)が基準値線形変換マトリックスにより第1XYZ値(20、80、10)に変換された例を示している。
次に、測色演算部44aは、ステップS21で初期化測色対象RGB値(RsGsBs)から変換された第1XYZ値を、既知の変換式を用いて第1Lab値に変換し、不揮発性メモリ45に格納する(ステップS22)。図24では、第1XYZ値(20、80、10)が既知の変換式により第1Lab値(75、−60、8)に変換された例を示している。
次に、測色演算部44aは、前処理において不揮発性メモリ45のメモリテーブルTb1に格納された複数の基準測色値(Lab値)を検索し、該基準測色値(Lab値)のうち、Lab空間上において第1Lab値に対して距離の近い基準測色値(Lab値)を持つ複数のパッチ(近傍色パッチ)の組を選択する(ステップS23)。距離の近いパッチを選択する方法としては、例えば、メモリテーブルTb1に格納されたすべての基準測色値(Lab値)に対して、第1Lab値との距離を算出し、第1Lab値に対して距離の近いLab値(図24では、ハッチングの施されているLab値)を持つ複数のパッチを選択するといった方法を用いることができる。
次に、測色演算部44aは、図25に示すように、メモリテーブルTb1を参照して、ステップS23で選択した近傍色パッチのそれぞれについて、Lab値と対になっているRGB値(基準RGB値)とXYZ値を取り出して、これら複数のRGB値とXYZ値のなかから、RGB値とXYZ値との組み合わせを選択する(ステップS24)。そして、測色演算部44aは、選択した組み合わせ(選択組)のRGB値をXYZ値に変換するための選択RGB値線形変換マトリックスを、最小二乗法などを用いて求め、求めた選択RGB値線形変換マトリックスを不揮発性メモリ45に格納する(ステップS25)。
次に、測色演算部44aは、ステップS25で生成した選択RGB値線形変換マトリックスを用いて、初期化測色対象RGB値(RsGsBs)を第2XYZ値に変換する(ステップS26)。さらに、測色演算部44aは、ステップS26で求めた第2XYZ値を、既知の変換式を用いて第2Lab値に変換し(ステップS27)、得られた第2Lab値を、測色対象のパッチ200の最終的な測色値とする。画像形成装置100は、以上の測色処理により得られた測色値に基づいてデバイスプロファイルを生成あるいは修正し、このデバイスプロファイルに基づいて色調整を行うことにより、出力画像の色再現性を高めることができる。
なお、上述した測色カメラ20は、筐体23に基準チャート400を設けて、センサ部26の二次元イメージセンサ27によって測色対象のパッチ200と基準チャート400とを同時に撮像する構成となっている。しかし、上述したように、基準チャート400の撮像により得られる初期基準RGB値や測色時基準RGB値は、測色対象のパッチ200の撮像により得られる測色対象RGB値に対して、測色カメラ20の撮像条件の経時変化、例えば、照明光源30の経時変化や二次元イメージセンサ27の経時変化の影響を排除するために用いられる。つまり、基準チャート400の撮像により得られる初期基準RGB値や測色時基準RGB値は、上述した基準RGB間線形変換マトリックスを算出し、この基準RGB間線形変換マトリックスを用いて、測色対象RGB値を初期化測色対象RGB値(RsGsBs)に変換するために用いられる。
したがって、要求される測色の精度に対して測色カメラ20の撮像条件の経時変化が無視できるレベルであれば、基準チャート400が省略された構成の測色カメラ20を用いてパッチ200の測色値を算出するようにしてもよい。この場合、測色対象RGB値を初期化測色対象RGB値に変換する処理(図21のステップS10)が省略され、測色対象RGB値を対象として、基本測色処理(図21のステップS20、図24および図25)が行われる。
以上、具体的な例を挙げながら詳細に説明したように、本実施形態に係る画像形成装置100では、測色カメラ20をパッチ200の測色に用いる場合には、測色カメラ20が備える二次元イメージセンサ27を全体読み出しモードで動作させる。一方、測色カメラ20をパッチ200の測色以外の用途、例えば、画像の位置ずれ検出や用紙Pの端部検出に用いる場合には、二次元イメージセンサ27を部分読み出しモードで動作させる。そして、二次元イメージセンサ27を部分読み出しモードで動作させる場合は、二次元イメージセンサ27の撮像領域を、全体読み出しモードで動作させる場合よりも狭い範囲に設定し、二次元イメージセンサ27からの出力値の読み出し速度を向上させる。したがって、本実施形態に係る画像形成装置100では、従来は読み出し速度が十分ではないために利用が困難であった測色カメラ20の二次元イメージセンサ27を、より多くの用途で有効に利用することができる。
以上、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で様々な変形や変更を加えながら具体化することができる。
例えば、上述した実施形態では、測色カメラ20を用いて画像の位置ずれ検出や用紙Pの端部検出を行う場合に、二次元イメージセンサ27を部分読み出しモードで動作させるものとしているが、これに限らない。測色カメラ20を用いてパッチ200の測色以外の何らかの機能を実行する場合に、二次元イメージセンサ27の撮像領域を、パッチ200の測色を行う場合よりも狭くして、読み出し速度を向上させるようにすればよい。
また、上述した実施形態で説明したパッチ200の測色方法、画像の位置ずれ検出方法、用紙Pの端部検出の方法はあくまで一例であり、これに限定されるものではない。パッチ200の測色方法としては、例えば、上述した方法に代えて、特許文献1にて開示される方法を用いるようにしてもよい。