(第1の実施の形態)
以下に添付図面を参照して、この発明に係る撮像装置、測色装置および画像形成装置の最良な実施の形態を詳細に説明する。なお、以下で説明する実施形態では、本発明を適用した画像形成装置の一例としてインクジェットプリンタを例示するが、本発明は、記録媒体に画像を出力する様々なタイプの画像形成装置に対して広く適用可能である。
<画像形成装置の機械的構成>
まず、図1乃至図3を参照しながら、本実施形態に係る画像形成装置100の機械的構成について説明する。図1は、第1の実施の形態にかかる画像形成装置100の内部を透視して示す斜視図、図2は、画像形成装置100の内部の機械的構成を示す上面図、図3は、キャリッジ5に搭載される記録ヘッド6の配置例を説明する図である。
図1に示すように、本実施形態に係る画像形成装置100は、主走査方向(図中矢印A方向)に往復移動して、副走査方向(図中矢印B方向)に間欠的に搬送される記録媒体16に対して画像を形成するキャリッジ5を備える。キャリッジ5は、主走査方向に沿って延設された主ガイドロッド3により支持されている。また、キャリッジ5には連結片5aが設けられている。連結片5aは、主ガイドロッド3と平行に設けられた副ガイド部材4に係合し、キャリッジ5の姿勢を安定化させる。
キャリッジ5には、図2に示すように、イエロー(Y)インクを吐出する記録ヘッド6y、マゼンタ(M)インクを吐出する記録ヘッド6m、シアン(C)インクを吐出する記録ヘッド6c、およびブラック(Bk)インクを吐出する複数の記録ヘッド6k(以下、記録ヘッド6y,6m,6c,6kを総称する場合は、記録ヘッド6という。)が搭載されている。記録ヘッド6は、その吐出面(ノズル面)が下方(記録媒体16側)に向くように、キャリッジ5に搭載されている。記録ヘッド6は、画像出力手段の主体となる。
記録ヘッド6にインクを供給するためのインク供給体であるカートリッジ7は、キャリッジ5には搭載されず、画像形成装置100内の所定の位置に配置されている。カートリッジ7と記録ヘッド6とは図示しないパイプで連結されており、このパイプを介して、カートリッジ7から記録ヘッド6に対してインクが供給される。
キャリッジ5は、駆動プーリ9と従動プーリ10との間に張架されたタイミングベルト11に連結されている。駆動プーリ9は、主走査モータ8の駆動により回転する。従動プーリ10は、駆動プーリ9との間の距離を調整する機構を有し、タイミングベルト11に対して所定のテンションを与える役割を持つ。キャリッジ5は、主走査モータ8の駆動によりタイミングベルト11が送り動作されることにより、主走査方向に往復移動する。キャリッジ5の主走査方向の移動は、例えば図2に示すように、キャリッジ5に設けられたエンコーダセンサ41がエンコーダシート40のマークを検知して得られるエンコーダ値に基づいて制御される。
また、本実施形態に係る画像形成装置100は、記録ヘッド6の信頼性を維持するための維持機構21を備える。維持機構21は、記録ヘッド6の吐出面の清掃やキャッピング、記録ヘッド6からの不要なインクの排出などを行う。
記録ヘッド6の吐出面と対向する位置には、図2に示すように、プラテン板22が設けられている。プラテン板22は、記録ヘッド6から記録媒体16上にインクを吐出する際に、記録媒体16を支持するためのものである。本実施形態に係る画像形成装置100は、キャリッジ5の主走査方向の移動距離が長い広幅機である。このため、プラテン板22は、複数の板状部材を主走査方向(キャリッジ5の移動方向)に繋いで構成している。記録媒体16は、図示しない副走査モータによって駆動される搬送ローラにより挟持され、プラテン板22上を、副走査方向に間欠的に搬送される。
記録ヘッド6は、複数のノズル列を備えており、プラテン板22上を搬送される記録媒体16上にノズル列からインクを吐出することで、記録媒体16に画像を形成する。本実施形態では、キャリッジ5の1回の走査で記録媒体16に形成できる画像の幅を多く確保するため、図3に示すように、キャリッジ5に、上流側の記録ヘッド6と下流側の記録ヘッド6とを搭載している。また、ブラックのインクを吐出する記録ヘッド6kは、カラーのインクを吐出する記録ヘッド6y,6m,6cの2倍の数だけキャリッジ5に搭載している。また、記録ヘッド6y,6mは左右に分離して配置されている。これは、キャリッジ5の往復動作で色の重ね順を合わせ、往路と復路とで色が変わらないようにするためである。なお、図3に示す記録ヘッド6の配列は一例であり、図3に示す配列に限定されるものではない。
本実施形態に係る画像形成装置100を構成する上記の各構成要素は、外装体1の内部に配置されている。外装体1にはカバー部材2が開閉可能に設けられている。画像形成装置100のメンテナンス時やジャム発生時には、カバー部材2を開けることにより、外装体1の内部に設けられた各構成要素に対して作業を行うことができる。
本実施形態に係る画像形成装置100は、記録媒体16を副走査方向に間欠的に搬送し、記録媒体16の副走査方向の搬送が停止している間に、キャリッジ5を主走査方向に移動させながら、キャリッジ5に搭載された記録ヘッド6のノズル列からプラテン板22上の記録媒体16上にインクを吐出して、記録媒体16に画像を形成する。
特に、画像形成装置100の出力特性を調整するためのキャリブレーションを実施する場合には、キャリッジ5に搭載された記録ヘッド6のノズル列からプラテン板22上の記録媒体16上にインクを吐出して、記録媒体16に測色対象となるパッチ画像200を形成する。パッチ画像200は、基準色のパッチを画像形成装置100が出力することで得られる画像であり、画像形成装置100の出力特性を反映している。したがって、パッチ画像200の測色値とそれに対応する基準色の標準色空間における表色値との差分に基づいて色変換パラメータを生成し、この色変換パラメータを用いて色変換を行った後の画像データに基づいて画像を出力することで、画像形成装置100は再現性の高い画像を出力することができる。
本実施形態に係る画像形成装置100は、記録媒体16に出力したパッチ画像200を測色するための測色装置を備える。測色装置は、画像形成装置100により記録媒体16に形成された測色対象のパッチ画像200を被写体とし、このパッチ画像200と後述する基準チャート400とを撮像する撮像ユニット42を備える。測色装置は、撮像ユニット42の撮像によって得られる基準チャート400の画像データおよび、パッチ画像200の画像データに基づいて、パッチ画像200の測色値を算出する。なお、この測色装置は、パッチ画像200の測色値を算出する機能だけでなく、撮像ユニット42の撮像によって得られる画像データを用いて、画像形成装置100が出力する画像の位置ずれ量を算出する機能や、撮像ユニット42の撮像によって得られる画像データを用いて、画像形成装置100が出力する画像のドット径を算出する機能も備える。
撮像ユニット42は、図2に示すように、キャリッジ5に対して固定されて設けられ、キャリッジ5と一体となって主走査方向に往復移動する。そして、撮像ユニット42は、記録媒体16に形成された画像(パッチ画像200の測色時は測色対象となるパッチ画像200)を被写体とし、この被写体と対向する位置に移動したときに、被写体と基準チャート400とを含む1フレームの画像データを取得する。
ここで、図4はキャリッジ5の昇降機構600を概略的に示す図である。コシの強い用紙や折れ用紙などを記録媒体16とする場合、プラテン板22から記録媒体16の浮きが発生しやすい。このような場合、記録媒体16によって記録ヘッド6が傷つき、破損する恐れがある。そこで、図4に示すように、本実施の形態の画像形成装置100は、キャリッジ5を昇降させる昇降機構600を備えている。昇降機構600は、キャリッジ昇降モータ601と、キャリッジ昇降カム602とを備えている。昇降機構600は、キャリッジ昇降モータ601の駆動によりキャリッジ昇降カム602が回転することにより、キャリッジ5が上下動する。なお、キャリッジ5の昇降機構600は、図4に示す構成に限るものではない。
<撮像ユニットの具体例>
図5-1乃至図5-3は、撮像ユニット42の具体例を示す図であり、図5-1は、撮像ユニット42の縦断面図(図5-2中のX1-X1線断面図)、図5-2は、撮像ユニット42の内部を透視して示す上面図、図5-3は、筐体の底面部を図5-1中のX2方向から見た平面図である。
撮像ユニット42は、枠体422と基板423とを組み合わせて構成された筐体421を備える。枠体422は、筐体421の上面となる一端側が開放された有底筒状に形成されている。基板423は、枠体422の開放端を閉塞して筐体421の上面を構成するように、締結部材424によって枠体422に締結され、枠体422と一体化されている。
筐体421は、その底面部421aが所定の間隙dを介してプラテン板22上の記録媒体16と対向するように、キャリッジ5に固定される。記録媒体16と対向する筐体421の底面部(第一の面)421aには、記録媒体16に形成された被写体(パッチ画像200)を筐体421の内部から撮影可能にするための開口部425が設けられている。
筐体421の内部には、画像を撮像するセンサ部430が設けられている。センサ部430は、CCDセンサまたはCMOSセンサなどの2次元イメージセンサ431と、センサ部430の撮像範囲の光学像を2次元イメージセンサ431のセンサ面に結像する結像レンズ432とを備える。2次元イメージセンサ431は、センサ面が筐体421の底面部421a側に向くように、例えば、基板423の内面(部品実装面)に実装されている。結像レンズ432は、その光学特性に応じて定められる位置関係を保つように2次元イメージセンサ431に対して位置決めされた状態で固定されている。
筐体421の底面部421aのセンサ部430と対向する内面側には、底面部421aに設けられた開口部425と隣り合うようにして、基準チャート400が形成されたチャート板410が配置されている。チャート板410は、例えば、基準チャート400が形成された面とは逆側の面を接着面として、筐体421の底面部421aの内面側に接着材などにより接着され、筐体421に対して固定された状態で保持されている。なお、基準チャート400は、チャート板410上ではなく、筐体421の底面部421aの内面側に直接形成されていてもよい。この場合はチャート板410は不要である。基準チャート400は、センサ部430により被写体(パッチ画像200)とともに撮像されるものである。なお、基準チャート400の詳細については後述する。
また、筐体421の内部には、センサ部430が被写体(パッチ画像200)と基準チャート400とを同時に撮像する際に、これら被写体(パッチ画像200)および基準チャート400を照明する照明光源426が設けられている。照明光源426としては、例えばLEDが用いられる。本実施形態においては、照明光源426として2つのLEDを用いる。照明光源426として用いるこれら2つのLEDは、例えば、センサ部430の2次元イメージセンサ431とともに、基板423の内面に実装される。ただし、照明光源426は、被写体(パッチ画像200)と基準チャート400とを照明できる位置に配置されていればよく、必ずしも基板423に直接実装されていなくてもよい。また、本実施形態では、照明光源426としてLEDを用いているが、光源の種類はLEDに限定されるものではない。例えば、有機ELなどを照明光源426として用いるようにしてもよい。有機ELを照明光源426として用いた場合は、太陽光の分光分布に近い照明光が得られるため、測色精度の向上が期待できる。
図6は、照明光源426の構成例について説明する図である。照明光源426は、白色光源である。図6に示すように、照明光源426は、プリント基板108上に青色LED素子102を実装している。照明光源426は、例えば、500×500μmのGaN系の青色LED素子102に黄色の蛍光体106を塗布し、青色と黄色により、白色光が出るように調整されている。青色LED素子102からの光は、直接または、一部は反射板104で反射され、外部に取り出される。なお、照明光源426に用いるLED素子は青色LEDに限るものではなく、略白色が発光できれば良い。
また、本実施形態では、図5-2に示すように、照明光源426として用いる2つのLEDを基板423側から筐体421の底面部421a側に垂直に見下ろしたときの底面部421a上の投影位置が、開口部425と基準チャート400との間の領域内となり、且つ、センサ部430を中心として対称となる位置となるように、これら2つのLEDが配置されている。換言すると、照明光源426として用いる2つのLEDを結ぶ線がセンサ部430の結像レンズ432の中心を通り、且つ、この2つのLEDを結ぶ線に対して線対称となる位置に、筐体421の底面部421aに設けられた開口部425と基準チャート400とが配置される。照明光源426として用いる2つのLEDをこのように配置することにより、被写体(パッチ画像200)と基準チャート400とを、概ね同一の条件にて照明することができる。
また、筐体421の底面部421aと記録媒体16との間の間隙dを小さくすれば、センサ部430から被写体(パッチ画像200)までの光路長と、センサ部430から基準チャート400までの光路長との差を、センサ部430の被写界深度の範囲内とすることもできる。本実施形態の撮像ユニット42は、筐体421の外部の被写体(パッチ画像200)と筐体421の内部に設けられた基準チャート400とをセンサ部430により撮像する構成である。したがって、センサ部430から被写体(パッチ画像200)までの光路長とセンサ部430から基準チャート400までの光路長との差がセンサ部430の被写界深度の範囲を超えていると、被写体(パッチ画像200)と基準チャート400との双方に焦点の合った画像を撮像することができない。
センサ部430から被写体(パッチ画像200)までの光路長とセンサ部430から基準チャート400までの光路長との差は、概ね、筐体421の底面部421aの厚みに間隙dを加えた値となる。したがって、間隙dを十分に小さな値とすれば、センサ部430から被写体(パッチ画像200)までの光路長とセンサ部430から基準チャート400までの光路長との差を、センサ部430の被写界深度の範囲内として、被写体(パッチ画像200)と基準チャート400との双方に焦点の合った画像を撮像することができる。例えば、間隙dを1mm~2mm程度に設定すれば、センサ部430から被写体(パッチ画像200)までの光路長とセンサ部430から基準チャート400までの光路長との差を、センサ部430の被写界深度の範囲内とすることができる。
なお、センサ部430の被写界深度は、センサ部430の絞り値や結像レンズ432の焦点距離、センサ部430と被写体との間の距離などに応じて定まる、センサ部430に固有の特性である。本実施形態の撮像ユニット42においては、筐体421の底面部421aと記録媒体16との間の間隙dを例えば1mm~2mm程度の十分に小さな値としたときに、センサ部430から被写体(パッチ画像200)までの光路長と、センサ部430から基準チャート400までの光路長との差が被写界深度の範囲内となるように、センサ部430が設計されている。
また、本実施形態の撮像ユニット42においては、照明光源426から基準チャート400までの光路に、光量低下部材である光量制限フィルタ700を備えている。光量制限フィルタ700は、透過光量を減衰するフィルタであって、例えばNDフィルタである。NDフィルタは、色彩に影響を与えることなく光量を一定量落とすことができる。本実施の形態の光量制限フィルタ700は、透過率90%程度のフィルタとする。なお、光量制限フィルタ700は、NDフィルタに限るものではなく、透過率を制御可能なフィルタであればよい。
<基準チャートの具体例>
次に、図7を参照しながら、撮像ユニット42の筐体421の内部に配置されるチャート板410上の基準チャート400について詳細に説明する。図7は、基準チャート400の具体例を示す図である。
図7に示す基準チャート400は、測色用のパッチを配列した複数の基準パッチ列401~404、ドット径計測用パターン列406、距離計測用ライン405およびチャート位置特定用マーカ407を有する。
基準パッチ列401~404は、YMCの1次色のパッチを階調順に配列した基準パッチ列401と、RGBの2次色のパッチを階調順に配列した基準パッチ列402と、グレースケールのパッチを階調順に配列した基準パッチ列(無彩色の階調パターン)403と、3次色のパッチを配列したパッチ列404と、を含む。ドット径計測用パターン列406は、大きさが異なる円形パターンが大きさ順に配列された幾何学形状測定用のパターン列である。
距離計測用ライン405は、複数の基準パッチ列401~404やドット径計測用パターン列406を囲む矩形の枠(一対の主走査距離基準線と一対の副走査距離基準線との組み合わせ)として形成されている。チャート位置特定用マーカ407は、距離計測用ライン405の四隅の位置に設けられていて、各パッチ位置を特定するためのマーカとして機能する。撮像ユニット42の撮像により得られる基準チャート400の画像データから、距離計測用ライン405とその四隅のチャート位置特定用マーカ407を特定することで、基準チャート400の位置及び各パターンの位置を特定することができる。
測色用の基準パッチ列401~404を構成する各パッチは、撮像ユニット42が撮像を行う際の撮像条件を反映した色味の基準として用いられる。なお、基準チャート400に配置されている測色用の基準パッチ列401~404の構成は、図7に示す例に限定されるものではなく、任意のパッチ列を適用することが可能である。例えば、可能な限り色範囲が広く特定できるパッチを用いてもよいし、また、YMCKの1次色の基準パッチ列401や、グレースケールの基準パッチ列403は、画像形成装置100に使用されるインクの測色値のパッチで構成されていてもよい。また、RGBの2次色の基準パッチ列402は、画像形成装置100で使用されるインクで発色可能な測色値のパッチで構成されていてもよく、さらに、Japan Color等の測色値が定められた基準色票を用いてもよい。
なお、本実施形態では、一般的なパッチ(色票)の形状の基準パッチ列401~404を有する基準チャート400を用いているが、基準チャート400は、必ずしもこのような基準パッチ列401~404を有する形態でなくてもよい。基準チャート400は、測色に利用可能な複数の色が、それぞれの位置を特定できるように配置された構成であればよい。
基準チャート400は、撮像ユニット42の筐体421の底面部421aに、開口部425と隣り合うように配置されているため、センサ部430によってパッチ画像200などの被写体と同時に撮像することができる。
<画像形成装置の制御機構の概略構成>
次に、図8を参照しながら、本実施形態に係る画像形成装置100の制御機構の概略構成について説明する。図8は、画像形成装置100の制御機構の概略構成を示すブロック図である。
本実施形態に係る画像形成装置100の制御機構は、上位CPU107、ROM118、RAM119、主走査ドライバ109、記録ヘッドドライバ111、測色制御部50、紙搬送部112、副走査ドライバ113、記録ヘッド6、エンコーダセンサ41、および撮像ユニット42を備える。記録ヘッド6、エンコーダセンサ41、および撮像ユニット42は、上述したようにキャリッジ5に搭載されている。
上位CPU107は、記録媒体16に形成する画像のデータや駆動制御信号(パルス信号)を各ドライバに供給し、画像形成装置100の全体の制御を司る。具体的には、上位CPU107は、主走査ドライバ109を介して、キャリッジ5の主走査方向の駆動を制御する。また、上位CPU107は、記録ヘッドドライバ111を介して、記録ヘッド6によるインクの吐出タイミングを制御する。また、上位CPU107は、副走査ドライバ113を介して、搬送ローラや副走査モータを含む紙搬送部112の駆動を制御する。
エンコーダセンサ41は、エンコーダシート40のマークを検知して得られるエンコーダ値を上位CPU107に出力する。上位CPU107は、エンコーダセンサ41からのエンコーダ値を基に、主走査ドライバ109を介して、キャリッジ5の主走査方向の駆動を制御する。
撮像ユニット42は、上述したように、記録媒体16に形成されたパッチ画像200の測色時に、パッチ画像200と筐体421の内部に配置されたチャート板410上の基準チャート400とをセンサ部430で同時に撮像し、パッチ画像200および基準チャート400を含む画像データを測色制御部50に出力する。
図9は、基準チャートと撮像対象とを同時に撮像した画像データの一例を示す図である。図9に示すように、撮像ユニット42は、枠体32の内部に配置された基準チャート400の各パッチを撮像する。図9に示す画像データは、左半面に基準チャート400を2次元イメージセンサ431に対して固定して配置し、右半面に測色対象を撮像した例である。撮像対象のRGB信号値は、右側撮像領域の一部の領域を平均化して求められる。図9に示す例では、破線の領域内のRGB信号を平均化して求めている。多数の画素を平均する事で、ノイズの影響を低減し、Bit分解能の向上を図ることができる。
測色制御部50は、撮像ユニット42から取得したパッチ画像200の画像データに基づいて、パッチ画像200の測色値(標準色空間における表色値)を算出する。測色制御部50が算出したパッチ画像200の測色値は、上位CPU107に送られる。測色制御部50は、撮像ユニット42とともに、測色装置を構成している。なお、本実施形態では、測色制御部50を撮像ユニット42とは別個の構成としているが、測色制御部50を撮像ユニット42と一体の構成としてもよい。例えば、撮像ユニット42の基板423に、測色制御部50として機能する制御回路を実装するようにしてもよい。
また、測色制御部50は、撮像ユニット42に対して各種設定信号やタイミング信号、光源駆動信号などを供給し、撮像ユニット42による画像の撮像を制御する。各種設定信号は、センサ部430の動作モードを設定する信号や、シャッタスピード、AGCのゲインなどの撮像条件を設定する信号を含む。これら設定信号は、測色制御部50が上位CPU107から取得して、撮像ユニット42に供給する。また、タイミング信号は、センサ部430による撮像のタイミングを制御する信号であり、光源駆動信号は、センサ部430の撮像範囲を照明する照明光源426の駆動を制御する信号である。これらタイミング信号および光源駆動信号は、測色制御部50が生成して、撮像ユニット42に供給する。
ROM118は、例えば、上位CPU107で実行する処理手順等のプログラムや各種制御データなどを格納する。RAM119は、上位CPU107のワーキングメモリとして利用される。
<測色装置の制御機構の構成>
次に、図10を参照しながら、測色装置の制御機構について具体的に説明する。図10は、測色装置の制御機構の一構成例を示すブロック図である。
測色装置は、撮像ユニット42と測色制御部50とを備える。撮像ユニット42は、上述したセンサ部430と照明光源426とに加え、さらに、画像処理部45と、インターフェース部46と、を備える。なお、本実施形態では、画像処理部45をセンサ部430とは別個の構成としているが、センサ部430の2次元イメージセンサ431に画像処理部45の機能を持たせるようにしてもよい。
画像処理部45は、センサ部430により撮像した画像データを処理するものであり、AD変換部451、シェーディング補正部452、ホワイトバランス補正部453、γ補正部454、および画像フォーマット変換部455を備える。
AD変換部451は、センサ部430が出力するアナログ信号をAD変換する。
シェーディング補正部452は、センサ部430の撮像範囲に対する照明光源426からの照明の照度ムラに起因する画像データの誤差を補正する。
ホワイトバランス補正部453は、画像データのホワイトバランスを補正する。
γ補正部454は、センサ部430の感度のリニアリティを補償するように画像データを補正する。
画像フォーマット変換部455は、画像データを任意のフォーマットに変換する。
インターフェース部46は、測色制御部50から送られた各種設定信号、タイミング信号および光源駆動信号を撮像ユニット42が取得し、また、撮像ユニット42から測色制御部50へ画像データを送るためのインターフェースである。
測色制御部50は、フレームメモリ51と、演算部53と、タイミング信号発生部54と、光源駆動制御部55と、不揮発性メモリ60と、間隙調整部56と、を備える。
フレームメモリ51は、撮像ユニット42から送られた画像データを一時的に記憶するメモリである。
不揮発性メモリ60は、図11に示すように、分光器(測色装置)BSによって、基準シートに配列形成されている複数の基準色パッチの測色結果の測色値であるL*a*b*値とXYZ値のうち、少なくともいずれか(図11では、L*a*b*値とXYZ値の双方)が、基準測色値として、不揮発性メモリ125のメモリテーブルTb1にパッチ番号に対応して格納されている。
演算部53は、測色値算出部(算出部)531を備える。演算部53は、例えばCPUなどのプロセッサを備え、このプロセッサにより所定のプログラムを実行することによって、測色値算出部531の機能を実現する。なお、本実施形態では演算部53の測色値算出部531をソフトウェアにより実現しているが、これらの一部または全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)などの専用のハードウェアを用いて実現することも可能である。
測色値算出部531は、撮像ユニット42のセンサ部430が、測色対象のパッチ画像200を撮像したときに、この撮像によって得られるパッチ画像200の画像データに基づいて、パッチ画像200の測色値を算出する。測色値算出部531が算出したパッチ画像200の測色値は、上位CPU107へと送られる。なお、測色値算出部531による処理の具体例については、詳細を後述する。
タイミング信号発生部54は、撮像ユニット42のセンサ部430による撮像のタイミングを制御するタイミング信号を発生して、撮像ユニット42に供給する。
光源駆動制御部55は、撮像ユニット42の照明光源426を駆動するための光源駆動信号を生成して、撮像ユニット42に供給する。
間隙調整部56は、キャリッジ昇降モータ601の駆動を制御することで、センサ部430と記録媒体16の間の間隔を変化させる。
<パッチ画像の測色方法>
次に、本実施形態に係る画像形成装置100によるパッチ画像200の測色方法について詳細に説明する。この測色方法は、画像形成装置100が初期状態のとき(製造やオーバーフォールなどによって初期状態となっているとき)に実施される前処理と、画像形成装置100の色調整を行う調整時に実施される測色処理とを含む。
図11は、基準測色値および基準RGB値を取得する処理と基準値線形変換マトリックスを生成する処理を説明する図である。図11に示すこれらの処理は、前処理として実施される。前処理では、複数の基準パッチKPが配列形成された基準シートKSが用いられる。基準シートKSの基準パッチKPは、撮像ユニット42が備える基準チャート400のパッチと同等のものでも良いが、基準チャート400の備えるパッチよりも数が多い方が好ましい。
まず、基準シートKSの複数の基準パッチKPの測色値であるL*a*b*値とXYZ値のうち、少なくともいずれか(図11の例では、L*a*b*値とXYZ値の双方)が、それぞれのパッチ番号に対応させて、例えば測色制御部50の内部の不揮発性メモリ60などに設けられるメモリテーブルTb1に格納される。基準パッチKPの測色値は、分光器BSなどを用いた測色により事前に得られる値である。基準パッチKPの測色値が既知であれば、その値を用いればよい。以下、メモリテーブルTb1に格納された基準パッチKPの測色値を「基準測色値」という。
次に、基準シートKSがプラテン板22上にセットされ、キャリッジ5の移動を制御することで、基準シートKSの複数の基準パッチKPを被写体として、撮像ユニット42による撮像が行われる。
そして、撮像ユニット42の撮像により得られた基準シートKSの各パッチのRGB値が、不揮発性メモリ60のメモリテーブルTb1に、パッチ番号に対応して格納される。つまり、メモリテーブルTb1には、基準シートKSに配列形成された複数の基準パッチKPそれぞれの測色値とRGB値が、各基準パッチKSのパッチ番号に対応して格納される。以下、メモリテーブルTb1に格納された基準パッチKSのRGB値を「基準RGB値」という。基準RGB値は、撮像ユニット42の特性を反映した値である。
画像形成装置100の上位CPU107は、基準パッチKPの基準測色値および基準RGB値が不揮発性メモリ60のメモリテーブルTb1に格納されると、同じパッチ番号の基準測色値であるXYZ値と基準RGB値との対に対して、これらを相互に変換する基準値線形変換マトリックスを生成し、不揮発性メモリ60に格納する。メモリテーブルTb1に基準測色値としてL*a*b*値のみが格納されている場合は、L*a*b*値をXYZ値に変換する既知の変換式を用いてL*a*b*値をXYZ値に変換した後に、基準値線形変換マトリックスを生成すればよい。
また、撮像ユニット42が基準シートKSの複数の基準パッチKPを撮像する際には、撮像ユニット42に設けられた基準チャート400も同時に撮像される。この撮像により得られた基準チャート400の各パッチのRGB値も、パッチ番号に対応させて、不揮発性メモリ60のメモリテーブルTb1に格納される。この前処理によりメモリテーブルTb1に格納された基準チャート400のパッチのRGB値を「初期基準RGB値」という。図12は、初期基準RGB値の一例を示す図である。図12(a)は初期基準RGB値(RdGdBd)をメモリテーブルTb1に格納した様子を示し、初期基準RGB値と(RdGdBd)ともに、初期基準RGB値(RdGdBd)をL*a*b*値に変換した初期基準L*a*b*値(Ldadbd)やXYZ値に変換した初期基準XYZ値(XdYdZd)も対応付けて格納されることを示している。また、図12(b)は基準チャート400の各パッチの初期基準RGB値をプロットした散布図である。
以上の前処理が終了した後、画像形成装置100は、外部から入力される画像データや印刷設定等に基づいて、上位CPU107が、キャリッジ5の主走査移動制御、紙搬送部112による記録媒体Pの搬送制御および記録ヘッド6の駆動制御を行って、記録媒体Pを間欠的に搬送させつつ、記録ヘッド6からのインク吐出を制御して、画像を記録媒体Pに出力する。このとき、記録ヘッド6からのインクの吐出量が、機器固有の特性や経時変化などによって変化することがあり、このインクの吐出量が変化すると、ユーザが意図する画像の色とは異なった色で画像形成されることとなって、色再現性が劣化する。そこで、画像形成装置100は、色調整を行う所定のタイミングで、パッチ画像200の測色値を求める測色処理を実施する。そして、測色処理により得られた測色値に基づいて色調整を行うことで、色再現性を高める。
図13および図14は、基本測色処理を説明する図である。測色値算出部531は、まず、前処理において生成して不揮発性メモリ60に格納した基準値線形変換マトリックスを読み出し、基準値線形変換マトリックスを用いて測色対象RGB値(RsGsBs)を第1XYZ値に変換し、不揮発性メモリ60に格納する(ステップS21)。図13では、初期化測色対象RGB値(3、200、5)が基準値線形変換マトリックスにより第1XYZ値(20、80、10)に変換された例を示している。
次に、測色値算出部531は、ステップS21で測色対象RGB値(RsGsBs)から変換された第1XYZ値を、既知の変換式を用いて第1L*a*b*値に変換し、不揮発性メモリ60に格納する(ステップS22)。図13では、第1XYZ値(20、80、10)が既知の変換式により第1L*a*b*値(75、-60、8)に変換された例を示している。
次に、測色値算出部531は、前処理において不揮発性メモリ60のメモリテーブルTb1に格納された複数の基準測色値(L*a*b*値)を検索し、該基準測色値(L*a*b*値)のうち、L*a*b*空間上において第1L*a*b*値に対して距離の近い基準測色値(L*a*b*値)を持つ複数のパッチ(近傍色パッチ)の組を選択する(ステップS23)。距離の近いパッチを選択する方法としては、例えば、メモリテーブルTb1に格納されたすべての基準測色値(L*a*b*値)に対して、第1L*a*b*値との距離を算出し、第1L*a*b*値に対して距離の近いL*a*b*値(図13では、ハッチングの施されているL*a*b*値)を持つ複数のパッチを選択するといった方法を用いることができる。
次に、測色値算出部531は、図14に示すように、メモリテーブルTb1を参照して、ステップS23で選択した近傍色パッチのそれぞれについて、L*a*b*値と対になっているRGB値(基準RGB値)とXYZ値を取り出して、これら複数のRGB値とXYZ値のなかから、RGB値とXYZ値との組み合わせを選択する(ステップS24)。そして、測色値算出部531は、選択した組み合わせ(選択組)のRGB値をXYZ値に変換するための選択RGB値線形変換マトリックスを、最小二乗法などを用いて求め、求めた選択RGB値線形変換マトリックスを不揮発性メモリ60に格納する(ステップS25)。
次に、測色値算出部531は、ステップS25で生成した選択RGB値線形変換マトリックスを用いて、測色対象RGB値(RsGsBs)を第2XYZ値に変換する(ステップS26)。さらに、測色値算出部531は、ステップS26で求めた第2XYZ値を、既知の変換式を用いて第2L*a*b*値に変換し(ステップS27)、得られた第2L*a*b*値を、測色対象のパッチ画像200の最終的な測色値とする。画像形成装置100は、以上の測色処理により得られた測色値に基づいて色調整を行うことにより、色再現性が高められる。
ところで、実際に測色対象を測定した時の「測色時基準パッチRd’Gd’Bd’値」が変動することにより、「初期基準パッチRdGdBd値」と一致しないことがある。変動する原因としては、照明光源の経時変化、センサ感度の経時変化などが考えられる。このように変動したままの状態で、選択RGB値線形変換マトリックスを用いて変換すると、最終的な測色値も変動してしまい、高精度な測色が行えなくなる事が予想される。
そこで、本実施の形態においては、「測色時基準パッチRd’Gd’Bd’値」が、いつも「初期基準パッチRdGdBd値」と一致するよう、測色前にLED光量及び、センサ感度(ホワイトバランス、γ補正)の調整を行うようにする。
ここで、図15は、測色前の光量・センサ調整・測色の処理の流れを概略的に示すフローチャートである。図15に示すように、測色値算出部531は、まず、PWM Duty A[%]でLEDを点灯させ(ステップS11)、基準チャート400を撮像してLED調整用基準パッチのRGB値を取得する(ステップS12)。この際、基準チャート400は光量制限フィルタを介して撮像している。出力されるRGB値は光量制限フィルタを介して撮像した値である。
次いで、測色値算出部531は、Gの値がX±a[digit]であるかを判定する(ステップS13)。なお、Gでなく、RかBの値で調整してもよい。
測色値算出部531は、Gの値がX±a[digit]でないと判定した場合(ステップS13のNo)、Gの値がX±a[digit]より小さい時にはPWM DutyをA=A+1[%]に設定し、Gの値がX±a[digit]より大きい時にはPWM DutyをA=A-1[%]を設定し(ステップS14)、ステップS12に戻る。
測色値算出部531は、Gの値がX±a[digit]であると判定した場合(ステップS13のYes)、ステップS15に進む。
以上、ステップS11~S14の処理により、LEDの光量調整が終了する。ステップS11~S14の処理により、光量制限フィルタを介して基準チャート400を撮像した場合に適切な出力が得られる光量に調整がされている。
続いて、測色値算出部531は、基準チャートを撮像し、ホワイトバランス・γ補正用基準パッチのRGB値を取得する(ステップS15)。
次に、測色値算出部531は、R値がRd±c[digit]であるか、G値がGd±c[digit]であるか、B値がBd±c[digit]であるかを判定する(ステップS16)。
測色値算出部531は、R値がRd±c[digit]、G値がGd±c[digit]、B値がBd±c[digit]でない場合(ステップS16のNo)、ホワイトバランス・γ調整を実行して(ステップS17)、ステップS15に戻る。
ここで、図16はバランス調整前のRGB出力値について説明する図、図17は理想値との比と差分について説明する図である。基準チャート400のグレースケールのRGB値をそのまま出力すると図16に示すような各色のバランスがあっていない出力となり、彩度を持った色として出力されてしまう。これは、2次元イメージセンサ431の各センサの感度バラツキによって誤差をもってしまうからである。
本来すべてのRGB出力は、図16に示す理想値上のリニアリティを持った出力として出力されるのが理想である。そのため、図17に示すような理想値との差分、若しくは比を取り、不揮発性メモリ60に一旦記憶し補正を行うことでリニアリティを持った出力を行っている。
測色値算出部531は、上述のように、理想値との比、若しくは差を用いて基準チャート400のグレースケールのRGB出力値を補正することで、理想値に近いRGB出力を得ることができる。
一方、測色値算出部531は、R値がRd±c[digit]、G値がGd±c[digit]、B値がBd±c[digit]である場合(ステップS16のYes)、処理を終了する。
以上、ステップS15~S17の処理により、イメージセンサのホワイトバランス、γ補正が終了する。この際に、ホワイトバランス、γ補正値の調整は光量制限フィルタを介して得られた撮像結果から行われる。光量制限フィルタは、光量のみを下げるフィルタであるため、光量制限フィルタを介さない撮像に対しても適切なホワイトバランスの調整、γ補正値の調整が行われる。
次に、ステップS14で調整された光量で測色対象の撮像を行う。撮像された測色対象のRGB値は、ステップS15~S17の処理により設定されたホワイト、γ補正値で補正され、測色対象RsGsBsとして出力される(ステップS18)。
そして、上述した測色方法により、測色値が算出される(ステップS19)。
このように本実施の形態によれば、基準チャート側の画像が白側に飽和することなく、かつ測色対象の画像が黒側に飽和しない光量を設定し、その光量で撮像した画像からγ補正、ホワイトバランス補正を行うことができる。
(第2の実施の形態)
<パッチ画像の測色方法の別の形態>
次に、本実施形態に係る画像形成装置100によるパッチ画像200の測色方法の別の形態について詳細に説明する。
図18は、第2の実施の形態にかかるセンサ部430が測色対象のパッチ画像200と基準チャート400とを同時に撮像することで得られる画像データの一例を示す図である。図19は、パッチ画像200の測色方法の具体例を説明する図である。図20は、L*a*b*値とXYZ値との変換を行う変換式を示す図である。図21は、パッチ画像200の測色の手順を示すフローチャートである。
パッチ画像200の測色を行う場合は、まず、画像形成装置100が任意のパッチを記録媒体16に出力してパッチ画像200を形成する。そして、測色装置の撮像ユニット42が備えるセンサ部430により、測色対象のパッチ画像200を撮像ユニット42の筐体421内に配置されたチャート板410上の基準チャート400とともに撮像する。その結果、例えば図18に示すようなパッチ画像200および基準チャート400を含む画像データが取得される。センサ部430の撮像範囲は、基準チャート400を撮像する基準チャート撮像領域と、測色対象の被写体であるパッチ画像200を撮像する被写体撮像領域とを有している。基準チャート撮像領域に対応する画素から出力される画像データが基準チャート400の画像データとなり、被写体撮像領域に対応する画素から出力される画像データがパッチ画像200の画像データとなる。なお、ここでは、測色対象の被写体として1つのパッチ画像200のみを撮像するようにしているが、複数のパッチ画像200を同時に撮像するようにしてもよい。
例えば、従来の撮像ユニットで基準チャート400と測色対象のパッチ画像200とを撮像した場合、最も明るい部分についてのパッチ画像200と基準チャート400との差は、おおよそ50digitである。しかしながら、本実施形態の撮像ユニット42においては、照明光源426から基準チャート400までの光路に、光量制限フィルタ700を備えていることにより、同じ明るさになる。
センサ部430により撮像されたパッチ画像200および基準チャート400の画像データは、画像処理部45での処理が行われた後、撮像ユニット42からインターフェース部46を介して測色制御部50へと送られ、測色制御部50のフレームメモリ51に格納される。そして、演算部53の測色値算出部531が、フレームメモリ51に格納された画像データを読み出して、パッチ画像200の測色を行う。
測色値算出部531は、まず、フレームメモリ51から読み出した画像データから、基準チャート400の距離計測用ライン(主走査・副走査距離基準線)405の四隅にあるチャート位置特定用マーカ407の位置を、パターンマッチング等により特定する。これにより、画像データにおける基準チャート400の位置を特定することができる。基準チャート400の位置を特定した後は、基準チャート400の各パッチの位置を特定する。
次に、測色値算出部531は、基準チャート400の各パッチの画像データ(RGB値)を用いて、測色対象となるパッチ画像200の画像データ(RGB値)を、L*a*b*色空間における表色値であるL*a*b*値に変換する。以下、この変換の具体的な手法について詳細に説明する。
図19(c)は、図7に示した基準チャート400の1次色(YMC)の基準パッチ列401および2次色(RGB)の基準パッチ列402の各パッチのL*a*b*値を、L*a*b*色空間上にプロットしたものである。なお、これら各パッチのL*a*b*値は、予め計測されており、例えば測色制御部50の内部の不揮発性メモリなどに記憶されている。
図19(a)は、図7に示した基準チャート400の1次色(YMC)の基準パッチ列401および2次色(RGB)の基準パッチ列402の各パッチのRGB値(センサ部430による撮像によって得られる画像データ)を、RGB色空間上にプロットしたものである。
図19(b)は、図19(c)に示すL*a*b*値を、所定の変換式を用いてXYZ値に変換し、その変換したXYZ値を、XYZ色空間上にプロットしたものである。L*a*b*値をXYZ値に変換する場合、図20(b)に示す変換式(L*a*b*⇒XYZ)により変換することができる。また、XYZ値をL*a*b*値に変換する場合、図20(a)に示す変換式(XYZ⇒L*a*b*)により変換することができる。つまり、図19(c)に示すL*a*b*値と図19(b)に示すXYZ値は、図20(a),(b)に示す変換式を用いて相互に変換することができる。
ここで、図21のフローチャートに沿って、図18に示す被写体撮像領域内から得られた側色対象のパッチ画像200のRGB値をL*a*b*値に変換する手順を説明する。測色対象のパッチ画像200のRGB値が、図19(a)に示すRGB色空間上のPrgb点にあったとする。この場合、まず、図18に示す基準チャート400の各パッチのRGB値のうち、Prgb点を含む4面体を作ることができる最近傍の4点を検索する(ステップS1)。図19(a)の例では、p0,p1,p2,p3の4点が選択される。ここで、図19(a)に示すRGB色空間上の4点p0,p1,p2,p3の各座標値を、p0(x01,x02,x03),p1(x1,x2,x3),p2(x4,x5,x6),p3(x7,x8,x9)とする。
次に、図19(a)に示すRGB色空間上の4点p0,p1,p2,p3に対応する図19(b)に示すXYZ色空間上の4点q0,q1,q2,q3を検索する(ステップS2)。XYZ色空間上の4点q0,q1,q2,q3の各座標値を、q0(y01,y02,y03),q1(y1,y2,y3),q2(y4,y5,y6),q3(y7,y8,y9)とする。
次に、この4面体内の局所空間を線形変換する線形変換マトリックスを求める(ステップS3)。具体的には、RGB色空間上の4点p0,p1,p2,p3のうち、任意の対応点の対を決定し(本実施形態では、無彩色に最も近いp0,q0とする)、この対応点(p0,q0)を原点とする(p1~p3、q1~q3の座標値は、p0,q0からの相対値となる)。
図19(a)に示すRGB色空間と図19(b)に示すXYZ色空間との空間間の変換式をY=AXと線形変換できると仮定すると、下記式(1)のように表される。
ここで、p1→q1、p2→q2、p3→q3に写像されるとすると、各係数aは、下記式(2)~(10)のように求めることができる。
次に、この線形変換マトリックス(Y=AX)を使って、図19(a)に示すRGB色空間上の測色対象のパッチ画像200のRGB値であるPrgb点(座標値は(Pr,Pg,Pb))を図19(b)に示すXYZ色空間上に写像する(ステップS4)。ここで得られたXYZ値は、原点q0からの相対値であるため、測色対象のパッチ画像200のRGB値Prgbに対応する実際のXYZ値Pxyz(座標値は(Px,Py,Pz))は、原点q0(y01,y02,y03)からのオフセット値として、下記式(11)~(13)のようになる。
次に、以上のように求めたパッチ画像200のXYZ値Pxyzを、図20(a)に示した変換式によってL*a*b*値に変換し、測色対象のパッチ画像200のRGB値Prgbに対応するL*a*b*値を求める(ステップS5)。これにより、センサ部430の感度が変わったり、照明光源426の波長や強度が変化したりした場合でも、測色対象のパッチ画像200の測色値を正確に求めることができ、高精度の測色を行うことができる。なお、本実施形態では、画像形成装置100が形成したパッチ画像200を測色対象としているが、画像形成装置100が出力した任意の画像を測色対象とすることもできる。例えば、画像形成装置100が画像を出力しながらその画像の一部を測色し、リアルタイムで画像形成装置の出力特性を調整するといった利用が可能である。
なお、上述した処理動作で使用した図19(c)は、図7に示した基準チャート400の1次色(YMC)の基準パッチ列401および2次色(RGB)の基準パッチ列402の各パッチのL*a*b*値を、L*a*b*色空間上にプロットしたものである。図7に示した基準チャート400は、撮像ユニット42の筐体421の内部に配置されるチャート板410上に形成されるため、基準チャート400を構成するパッチの数が制限されることになる。このため、標準のパッチの中から選別した一部のパッチを用いて、図7に示した基準チャート400を構成することになる。例えば、Japan Colorは928色あり、その928色の中から選択した一部(例えば72色)を用いて、図7に示す基準チャート400を構成することになる。しかし、標準のパッチの中から選択された一部のパッチのみを用いて測色を行う場合、測色の精度の低下が懸念される。そこで、基準チャート400を構成するパッチのRGB値から標準のパッチのRGB値を類推し、標準のパッチのRGB値を用いて測色対象のパッチ画像200の測色を行うことが望ましい。
そして、撮像ユニット42の撮像により得られた基準チャート400の各パッチ(初期基準色パッチ)のRGB値が、不揮発性メモリ60のメモリテーブルTb1に、パッチ番号に対応して格納される。つまり、メモリテーブルTb1には、プラテン板22上にセットされた基準シートに配列形成された複数の基準パッチそれぞれの測色値とRGB値が、各基準パッチのパッチ番号に対応して格納される。以下、メモリテーブルTb1に格納された基準チャート400の各パッチ(初期基準色パッチ)のRGB値を「基準RGB値」という。基準RGB値は、撮像ユニット42の特性を反映した値である。
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態について説明する。
第3の実施の形態の画像形成装置100は、撮像ユニットが第1の実施の形態および第2の実施の形態とは異なるものとなっている。以下、第3の実施の形態の説明では、第1の実施の形態および第2の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態および第2の実施の形態と異なる箇所について説明する。
ここで、図22は第3の実施の形態にかかる撮像ユニット42Fの縦断面図であり、図5-1に示した撮像ユニット42の縦断面図と同じ位置の断面図である。
第3の実施の形態にかかる撮像ユニット42Fでは、筐体421の内部に、光路長変更部材440が配置されている。光路長変更部材440は、光を透過する屈折率n(nは任意の数)の光学素子である。光路長変更部材440は、筐体421の外部の被写体(パッチ画像200)とセンサ部430との間の光路中に配置され、被写体(パッチ画像200)の光学像の結像面を基準チャート400の光学像の結像面に近づける機能を持つ。つまり、第3の実施の形態にかかる撮像ユニット42Fでは、被写体(パッチ画像200)とセンサ部430との間の光路中に光路長変更部材440を配置することによって、筐体421の外部の被写体(パッチ画像200)の光学像の結像面と、筐体421の内部の基準チャート400の結像面とを、ともにセンサ部430の2次元イメージセンサ431のセンサ面に合わせるようにしている。なお、図17では、光路長変更部材440を筐体421の底面部421a上に載置した例を図示しているが、光路長変更部材440は必ずしも底面部421a上に載置する必要はなく、筐体421の外部の被写体(パッチ画像200)とセンサ部430との間の光路中に配置されていればよい。
光路長変更部材440を光が通過すると、光路長変更部材440の屈折率nに応じて光路長が延び、画像が浮き上がって見える。画像の浮上がり量Cは、光路長変更部材440の光軸方向の長さをLpとすると、以下の式で求めることができる。
C=Lp(1-1/n)
また、センサ部430の結像レンズ432の主点と基準チャート400との間の距離をLcとすると、結像レンズ432の主点と光路長変更部材440を透過する光学像の前側焦点面(撮像面)との間の距離Lは、以下の式で求めることができる。
L=Lc+Lp(1-1/n)
ここで、光路長変更部材440の屈折率nを1.5とした場合、L=Lc+Lp(1/3)となり、光路長変更部材440を透過する光学像の光路長を光路長変更部材440の光軸方向の長さLpの約1/3だけ長くすることができる。この場合、例えばLp=9[mm]とすれば、L=Lc+3[mm]となるので、センサ部430から基準チャート400までの距離と被写体(パッチ画像200)までの距離との差が3mmとなる状態で撮像すれば、基準チャート400の光学像の後側焦点面(結像面)と、被写体(パッチ画像200)の光学像の後側焦点面(結像面)とを、ともにセンサ部430の2次元イメージセンサ431のセンサ面に合わせることができる。
以上のように構成される第3の実施の形態にかかる撮像ユニット42Fでは、被写体(パッチ画像200)とセンサ部430との間の光路中に光路長変更部材440を配置することで、被写体(パッチ画像200)の光学像の結像面を基準チャート400の光学像の結像面に近づけるようにしているので、被写体(パッチ画像200)と基準チャート400の双方に焦点の合った適切な画像を撮像することができる。
(第4の実施の形態)
次に、第4の実施の形態について説明する。
第4の実施の形態の画像形成装置100は、撮像ユニットが第1の実施の形態ないし第3の実施の形態とは異なるものとなっている。以下、第4の実施の形態の説明では、第1の実施の形態ないし第3の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態ないし第3の実施の形態と異なる箇所について説明する。
ここで、図23は第4の実施の形態にかかる撮像ユニット42Aの縦断面図であり、図5-1に示した撮像ユニット42の縦断面図と同じ位置の断面図である。
第1の実施の形態の撮像ユニット42ないし第3の実施の形態の撮像ユニット42Fにおいては、光量低下部材である光量制限フィルタ700を固定的に設けるようにしたが、本実施の形態の撮像ユニット42Aにおいては、光量制限フィルタ700を記録媒体16の厚み、キャリッジ5の高さによって任意に交換可能として透過率を任意に変えられるようにしたものである。
図23に示すように、第4の実施の形態にかかる撮像ユニット42Aは、異なる透過率の数種類の光量制限フィルタ700a,700b,700cを備えている。撮像ユニット42Aは、センサ部430から被写体(パッチ画像200)までの光路長が変更になった場合に、光量制限フィルタ700a,700b,700cを切り替えが可能な構成としている。
また、撮像ユニット42Aは、光量制限フィルタ700a,700b,700cを切り替えるためのモータやソレノイド等の駆動部701を備える。駆動部701は、測色制御部50により制御される。
例えば、センサ部430から被写体(パッチ画像200)との距離D=5を標準とした場合、距離Dが6mm(D=4~6mmの範囲を1mm毎に切り替える場合)の場合、駆動部701により光量制限フィルタ700aを基準チャート400の読み取り光路から取り除き、駆動部701により距離6mm用の光量制限フィルタ700bに切り替える。透過率の切り替えは1mmあたり5%とするが、温度や設置環境により切り替える場合には透過率の構成を変更することを行う。
(第5の実施の形態)
次に、第5の実施の形態について説明する。
第5の実施の形態の画像形成装置100は、撮像ユニットが第1の実施の形態ないし第3の実施の形態とは異なるものとなっている。以下、第5の実施の形態の説明では、第1の実施の形態ないし第3の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態ないし第3の実施の形態と異なる箇所について説明する。
ここで、図24は第5の実施の形態にかかる撮像ユニット42Bの縦断面図であり、図5-1に示した撮像ユニット42の縦断面図と同じ位置の断面図である。
図24に示すように、第5の実施の形態にかかる撮像ユニット42Bは、光量制限フィルタ700に代えて、照明光源426から基準チャート400までの光路に、光量低下部材である光路変更部材800を備えている。光路変更部材800は、センサ部430への入力光量を減らすため、反射光を拡散させ受光量を低減させる。また、撮像ユニット42Bは、光路遮断部材801を備えている。光路変更部材800により光路変更となった反射光Yは、光路遮断部材801にて、センサ部430への入力がないように遮断される。
これにより、受光時の光量を制限した状態での基準チャート400の測色を実施することで、開口部425から間隔dだけ離れた部分にある測色対象である被写体(パッチ画像200)の光量を上げた場合でも、基準チャート400を読み取る照明光源426の光量を変更することなく、同基準での補正が可能となる。
(第6の実施の形態)
次に、第6の実施の形態について説明する。
第6の実施の形態の画像形成装置100は、撮像ユニットが第5の実施の形態とは異なるものとなっている。以下、第6の実施の形態の説明では、第5の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第5の実施の形態と異なる箇所について説明する。
ここで、図25は第6の実施の形態にかかる撮像ユニット42Cの縦断面図であり、図5-1に示した撮像ユニット42の縦断面図と同じ位置の断面図である。
図25に示すように、第6の実施の形態にかかる撮像ユニット42Cは、撮像ユニット42Bの構成に加えて、光量低下部材である光路変更部材800の傾きを調整するためのモータやソレノイド等の駆動部802を備える。駆動部802は、測色制御部50により制御される。
光路変更部材800は、センサ部430への入力光量を減らすため、反射光を拡散させ受光量を低減させる。また、撮像ユニット42Cは、光路遮断部材801を備えている。傾きを調整された光路変更部材800により光路変更となった反射光Yは、光路遮断部材801にて、センサ部430への入力がないように遮断される。
これにより、受光時の光量を制限した状態での基準チャート400の測色を実施することで、開口部425から間隔dだけ離れた部分にある測色対象である被写体(パッチ画像200)の光量を上げた場合でも、基準チャート400を読み取る照明光源426の光量を変更することなく、同基準での補正が可能となる。