JP6542159B2 - スナップファスナの雌部材及びその中で使用する樹脂製バネ - Google Patents

Description

本発明は、スナップファスナの雌部材及びその中で使用する樹脂製バネに関するものである。

スナップファスナの雌部材はバネを内蔵し、それが雄部材の頭部を弾力的に支持することにより、雌雄部材の結合が図られている。

バネは、材質的には金属製のものと樹脂製のものがある。金属製バネは、金属特有のきしみがあるほか、故障しやすく、洗濯などにより腐食が進みやすい。樹脂製のものにはその欠点がない。しかも金属本体との馴染みがよく、軽量化も図れて薄手の生地にも取り付けやすいといった利点を有するので、近年は樹脂製バネを使用することが多くなりつつある。

樹脂製バネの形状としては、リング形又は多角リング形のものがほとんどである。金属製バネでは２本の線材が対向する形状（以下、「２本バネ」形式と略称することがある）のものが多いが、樹脂製バネでは知られていない。その理由は、樹脂製バネでは、対向する２本のバネ要素を正しく整列させて取り付けることや雌部材本体から脱落しないように固定することが困難だったからである。

樹脂製バネを有するスナップファスナとしては、例えば、国際公開ＷＯ９７／１５２０７及び特開２０００-２７９２０９が代表的である。双方ともリング形又は多角リング形の樹脂製バネである。

国際公開ＷＯ９７／１５２０７ 特開２０００-２７９２０９

上記国際公開ＷＯ９７／１５２０７の樹脂製バネは、雌部材本体とは別成形のものである。本体の外縁で脱落を防止しているが、遊びがあり樹脂製バネの移動に伴って音が発生するので、使用に不適当な分野があった。

また、外縁の金属先端部分は、高級感やブランド価値の付加を求めて文字や図形を刻印することが望まれることが多いが、この従来技術ではそれらを達成するのが難しかった。それは図８に示すように、樹脂製バネ３Ｘを表側（雄部材との係合側）から挿入した後で外縁先端部分２１Ｘをかしめるため、刻印は場所的にも困難であるし、刻印作業により、バネを破損するおそれがあるからである。

上記特開２０００-２７９２０９は、樹脂製バネが雌部材本体と一体のものである。そのため、樹脂バネは移動しないが、金属で樹脂を被覆するので、加工が難しく、成形コストが上昇する。また、金属キャップ２２Ｙは雌部材本体２Ｙと直接強固に結合する必要があって、使用する樹脂材料は硬いものに限定されるので、雄部材との接合において弾力性が欠けたものとなりやすい。その結果、バネ設計の自由度を大きく喪失していた。

外縁の金属先端部分２２Ｙに対する刻印に関しては、図９に示すように、樹脂製バネ３Ｙが一体化した雌部材本体２Ｙは裏側（雄部材との係合側でない側）からキャップ２２Ｙに挿入され、後でキャップ外縁の金属部分２１Ｙがかしめられるので、問題はない。キャップに対する刻印はあらかじめ部品段階で済ませておくことができる。

本発明では、今まで不可能と思われていた「２本バネ」形式の樹脂製バネを使用する。樹脂製バネが雌部材本体とは別構造とすることにより、樹脂製バネが移動せず、（したがって音が発生せず）、しかも、樹脂製バネが雌部材本体から脱落しないように固定可能としたスナップファスナの雌部材を提供することを目的とする。

本発明のスナップファスナの雌部材は、円筒部と皿状部を有する金属製本体と、前記本体内に内蔵される樹脂製バネと、前記本体にかしめられる表面被覆材を有するスナップファスナの雌部材であって、前記樹脂製バネは、前記本体に内蔵可能な樹脂板であって、この樹脂板の中央部に長孔が設けられており、前記円筒部には、２つのスリットが対向して設けられており、前記樹脂製バネが前記スリットに嵌まって位置固定されることを特徴とする（請求項１）。

別の見方では、本発明のスナップファスナの雌部材は、円筒部と皿状部を有する金属製本体と、前記本体内に内蔵される樹脂製バネと、前記円筒部にかしめられる表面被覆材を有するものであって、前記樹脂製バネは、雌部材本体に内蔵可能な樹脂板であって、この樹脂板の中央部に長孔が設けられており、前記円筒部が樹脂製のバネ支持部を有し、前記樹脂製バネがこの支持部により位置固定されることを特徴とする。

好ましくは、前記円筒部に設けられる前記樹脂製バネの前記支持部はスリットである。

本発明のスナップファスナの雌部材において使用する樹脂製バネは、請求項１項記載のスナップファスナの雌部材において使用する樹脂製バネであって、この樹脂製バネは、雌部材本体に内蔵可能な樹脂板であって、この樹脂板の中央部に長孔を有することを特徴とする（請求項２）。

好ましくは、前記樹脂製バネは刀のつば状であり、２つの対向する厚肉部と２つの対向する薄肉部により形成される。

前記樹脂製バネの前記長孔を形成する厚肉部の壁を傾斜させることもできる。

また、前記厚肉部を線バネで置き換えることもできる。

本発明請求項１の発明によれば、樹脂製バネが雌部材の円筒部の樹脂製バネ支持部により位置固定される。したがって、樹脂製バネが移動せず、（したがって音が発生せず）、しかも、樹脂製バネが雌部材本体から脱落しないように固定可能となる。

外縁の金属部分に対する刻印に関しては、本発明における樹脂製バネは、裏側（雄部材との係合側でない側）から挿入され、支持部により位置固定された後で外縁の金属部分がかしめられるので、問題はない。外縁の金属部分に対する刻印はあらかじめ部品段階で済ませておくことができる。この点では本発明は、上記特開２０００-２７９２０９と同様である。

しかし、この先願と異なり、本発明では、樹脂製バネと外縁金属部分は強固に結合されていないので、樹脂を自由に選択することができる。すなわち、ソフトなバネ味から硬めのバネ味を選択できるほか、特定の薬品に対して優れた耐薬品性を持つ樹脂を採用する等、さまざまに可能性が広がる。

さらに、「２本バネ」形式の樹脂製バネを使用するため、文字や図形を刻印する場所の確保が容易となり、ファッション性を高めることができる。

本発明請求項３の発明によれば、樹脂製バネの支持部により位置固定されやすい形状である「２本バネ」形式の樹脂製バネが得られる。

以下、添付の図面に基づき、本発明の実施例を説明する。

本発明の実施例に係るスナップファスナ雌部材における本体と樹脂製バネの斜視図である。 同上の（ａ）平面図、（ｂ）底面図、（ｃ）側面図、（ｄ）前記（ａ）のＤ−Ｄ断面図、（ｅ）前記（ａ）のＥ−Ｅ断面図である。 （ａ）（ｂ）は樹脂製バネをかしめ固定する過程を示した断面図である。（ａ）は前記（ａ）のＤ−Ｄ断面図の位置、（ｂ）は前記（ａ）のＥ−Ｅ断面図の位置である。 （ａ）（ｂ）（ｃ）は、スナップファスナ雌部材の製造方法を示す断面図である。（ｃ）と（ｄ）は、雌部材と雄部材の嵌合方法を示す断面図である。 樹脂バネの変形例（実施例２）を示す（ａ）正面図と（ｂ）横断面図である。 樹脂バネの変形例（実施例３）を示す（ａ）正面図と（ｂ）横断面図である。 樹脂バネの変形例（実施例４）を示す（ａ）正面図と（ｂ）横断面図である。 （ａ）（ｂ）は従来技術１（国際公開ＷＯ９７／１５２０７）の製造過程を示す断面図である。 （ａ）（ｂ）は従来技術２（特開２０００-２７９２０９）の製造過程を示す断面図である。

図１及び図２は、スナップファスナ雌部材１の部品である本体２と樹脂製バネ３を示している。

本体２は、真鍮などの金属製であり、縁部２１を有する皿状部２２と、この皿状部２２の中央に突出する円筒部２３を有する。全体を深絞りで一体成形することが好ましい。皿状部２２の上には文字や図形（図示せず）を刻印することができる。円筒部２３は、付根近くに２つのスリット２４が対向して設けられ、先端は円筒の内部方向に折り曲げられて内向きフランジ２５を形成している。

樹脂製バネ３は日本刀のつばのような形状であり、左右の厚肉部３１，３２と上下の薄肉部３３，３４によって、上下方向に延びる長孔３５が形成されている。この形状は冒頭において紹介した２本の線材が対向する形状の金属製のバネ（「２本バネ」形式）に近い。樹脂製バネ３の樹脂としては、ポリアミド（ナイロン）又はポリエステルが好ましい。

この実施例では、樹脂製バネ３は、左右長が１１．２ｍｍ、上下長が１１．２ｍｍであり、長孔３５は、幅が３．６ｍｍ、長手方向長さが９．６ｍｍ、厚みが０．７ｍｍである。

この樹脂製バネ３を本体２にはめると、図２の各図に示すように、樹脂製バネ３は円筒部２３のスリット２４で止まり、この位置で固定される。さらに、図３に示すように、本体２の縁部２１の先端２６は樹脂製バネ３に対してかしめられる。樹脂製バネ３と本体２の縁部２１の間には若干隙間があるが、樹脂製バネ３はスリット２４及び縁部２１の先端２６により、支持固定されているので、移動できず、脱落のおそれはない。

これらの部品を用いてスナップファスナ雌部材１を形成する様子を図４（ａ）〜（ｃ）に示す。

まず、図１の雌部材部品２，３とは別に表面被覆材４を用意する。表面被覆材４は、円盤状の装飾板４１とその中央下部に延びる円柱状の脚部４２を有する。装飾板４１及び脚部４２は真鍮等の金属により、一体形成するのが好ましい。

図３（ａ）（ｂ）に示すように、予め孔あけした生地５の孔５１を挟んで、図１の雌部材部品２，３と表面被覆材４をはめ合わせる。かしめ機械を用いて、図４（ｃ）に示すように、表面被覆材４の脚部４２を円筒部２３のフランジ２５にかしめることにより、スナップファスナ雌部材１が完成する。

このスナップファスナ雌部材１は生地６に固定されたスナップファスナ雄部材７とスナップ嵌合可能である。嵌合状態では、図４（ｄ）に示すように、スナップファスナ雌部材１の樹脂製バネ３が雄部材７の頭部７１を押圧して弾力的に支持する。

図５〜図７は樹脂製バネの変形例である。

図５の樹脂製バネ３Ａは、一方の薄肉部３４Ａに切り込み３６を有する。強度的にやや弱くなるので、対向する薄肉部３３Ａを太くすることが好ましい。

図６の樹脂製バネ３Ｂは、厚肉部３１Ａ，３２Ａを線バネ３７，３８で置き換えたものである。線バネは長孔の長手方向端部付近から円弧状に皿状部の縁部に沿って延びるものである。このようにすることにより軽量化が図れる。

図７の樹脂製バネ３Ｃは、実施例１とよく似ているが、長孔３５Ｃを形成する厚肉部３１Ｃ，３２Ｃの壁を傾斜させて、嵌合方向に向かって長孔３５Ｃの面積が大きくなるようにしている。このようにすることにより、雄部材７の頭部７１は受け入れやすく、抜き取りにくくなる。

１ スナップファスナ雌部材
２ 本体
２Ｘ 本体（従来技術）
２Ｙ 本体（従来技術）
２１ 縁部
２２ 皿状部
２２Ｘ 皿状部（従来技術）
２２Ｙ 皿状部（従来技術）
２３ 円筒部
２４ スリット
２５ フランジ
２６ 縁部先端
３ 樹脂製バネ
３Ａ 樹脂製バネ
３Ｂ 樹脂製バネ
３Ｃ 樹脂製バネ
３Ｘ 樹脂製バネ（従来技術）
３Ｙ 樹脂製バネ（従来技術）
３１，３２ 厚肉部
３１Ａ，３２Ａ 厚肉部
３１Ｃ，３２Ｃ 厚肉部
３３，３４ 薄肉部
３３Ａ 薄肉部
３４Ａ 薄肉部
３５ 長孔
３５Ｃ 長孔
３６ 切り込み
３７，３８ 線バネ
４ 表面被覆材
４１ 装飾板
４２ 脚部
５，６ 生地
５１ 孔
７ スナップファスナ雄部材

Claims (3)

1. 円筒部（２３）と皿状部（２２）を有する金属製本体（２）と、前記本体（２）内に内蔵される樹脂製バネ（３，３Ａ，３Ｂ，３Ｃ）と、前記本体（２）にかしめられる表面被覆材（４）を有するスナップファスナの雌部材（１）であって、
   前記樹脂製バネ（３，３Ａ，３Ｂ，３Ｃ）は、前記本体（２）に内蔵可能な樹脂板であって、この樹脂板の中央部に長孔（３５，３５Ａ，３５Ｂ，３５Ｃ）が設けられており、
   前記円筒部（２３）には、２つのスリット（２４）が対向して設けられており、
   前記樹脂製バネ（３，３Ａ，３Ｂ，３Ｃ）が前記スリット（２４）に嵌まって位置固定されることを特徴とするスナップファスナの雌部材（１）。
2. 請求項１項記載のスナップファスナの雌部材（１）において使用する樹脂製バネ（３，３Ａ，３Ｂ，３Ｃ）であって、この樹脂製バネ（３，３Ａ，３Ｂ，３Ｃ）は、前記本体（２）に内蔵可能な樹脂板であって、この樹脂板の中央部に長孔（３５，３５Ａ，３５Ｂ，３５Ｃ）が設けられていることを特徴とする樹脂製バネ（３，３Ａ，３Ｂ，３Ｃ）。
3. 前記樹脂製バネ（３，３Ａ，３Ｃ）が、２つの対向する厚肉部（３１，３２；３１Ａ，３２Ａ；３１Ｃ，３２Ｃ）と２つの対向する薄肉部（３３，３４；３３Ａ，３４Ａ；３３Ｃ，３４Ｃ）により形成されるものである請求項２記載の樹脂製バネ。
   

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