本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
[第1実施形態]
第1実施形態の偏光ビームスプリッタは、被投影体である光感応性の基板に露光処理を施す基板処理装置としての露光装置に設けられている。また、露光装置は、露光後の基板に各種処理を施してデバイスを製造するデバイス製造システムに組み込まれている。先ず、デバイス製造システムについて説明する。
<デバイス製造システム>
図1は、第1実施形態のデバイス製造システムの構成を示す図である。図1に示すデバイス製造システム1は、デバイスとしてのフレキシブル・ディスプレーを製造するライン(フレキシブル・ディスプレー製造ライン)である。フレキシブル・ディスプレーとしては、例えば有機ELディスプレー等がある。このデバイス製造システム1は、可撓性の基板Pをロール状に巻回した供給用ロールFR1から、該基板Pが送り出され、送り出された基板Pに対して各種処理を連続的に施した後、処理後の基板Pを可撓性のデバイスとして回収用ロールFR2に巻き取る、いわゆるロール・ツー・ロール(Roll to Roll)方式となっている。第1実施形態のデバイス製造システム1では、フィルム状のシートである基板Pが供給用ロールFR1から送り出され、供給用ロールFR1から送り出された基板Pが、順次、n台の処理装置U1,U2,U3,U4,U5,…Unを経て、回収用ロールFR2に巻き取られるまでの例を示している。先ず、デバイス製造システム1の処理対象となる基板Pについて説明する。
基板Pは、例えば、樹脂フィルム、ステンレス鋼等の金属または合金からなる箔(フォイル)等が用いられる。樹脂フィルムの材質としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレンビニル共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂のうち1または2以上を含んでいる。
基板Pは、例えば、基板Pに施される各種処理において受ける熱による変形量が実質的に無視できるように、熱膨張係数が顕著に大きくないものを選定することが望ましい。熱膨張係数は、例えば、無機フィラーを樹脂フィルムに混合することによって、プロセス温度等に応じた閾値よりも小さく設定されていてもよい。無機フィラーは、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、酸化ケイ素等でもよい。また、基板Pは、フロート法等で製造された厚さ100μm程度の極薄ガラスの単層体であってもよいし、この極薄ガラスに上記の樹脂フィルム、箔等を貼り合わせた積層体であってもよい。
このように構成された基板Pは、ロール状に巻回されることで供給用ロールFR1となり、この供給用ロールFR1が、デバイス製造システム1に装着される。供給用ロールFR1が装着されたデバイス製造システム1は、デバイスを製造するための各種の処理を、供給用ロールFR1から送り出される基板Pに対して繰り返し実行する。このため、処理後の基板Pは、複数のデバイスが連なった状態となる。つまり、供給用ロールFR1から送り出される基板Pは、多面取り用の基板となっている。なお、基板Pは、予め所定の前処理によって、その表面を改質して活性化したもの、或いは、表面に精密パターニングの為の微細な隔壁構造(凹凸構造)を形成したものでも良い。
処理後の基板Pは、ロール状に巻回されることで回収用ロールFR2として回収される。回収用ロールFR2は、図示しないダイシング装置に装着される。回収用ロールFR2が装着されたダイシング装置は、処理後の基板Pを、デバイスごとに分割(ダイシング)することで、複数個のデバイスにする。基板Pの寸法は、例えば、幅方向(短尺となる方向)の寸法が10cm〜2m程度であり、長さ方向(長尺となる方向)の寸法が10m以上である。なお、基板Pの寸法は、上記した寸法に限定されない。
図1を参照し、引き続きデバイス製造システムについて説明する。図1では、X方向、Y方向及びZ方向が直交する直交座標系となっている。X方向は、水平面内において供給用ロールFR1及び回収用ロールFR2を結ぶ方向である。Y方向は、水平面内においてX方向に直交する方向である。Y方向は、供給用ロールFR1及び回収用ロールFR2の軸方向となっている。Z方向は、X方向とY方向とに直交する方向(鉛直方向)である。
デバイス製造システム1は、基板Pを供給する基板供給装置2と、基板供給装置2によって供給された基板Pに対して各種処理を施す処理装置U1〜Unと、処理装置U1〜Unによって処理が施された基板Pを回収する基板回収装置4と、デバイス製造システム1の各装置を制御する上位制御装置5とを備える。
基板供給装置2には、供給用ロールFR1が回転可能に装着される。基板供給装置2は、装着された供給用ロールFR1から基板Pを送り出す駆動ローラR1と、基板Pの幅方向(Y方向)における位置を調整するエッジポジションコントローラEPC1とを有する。駆動ローラR1は、基板Pの表裏両面を挟持しながら回転し、基板Pを供給用ロールFR1から回収用ロールFR2へ向かう搬送方向に送り出すことで、基板Pを処理装置U1〜Unに供給する。このとき、エッジポジションコントローラEPC1は、基板Pの幅方向の端部(エッジ)における位置が、目標位置に対して±十数μm〜数十μm程度の範囲に収まるように、基板Pを幅方向に移動させて、基板Pの幅方向における位置を修正する。
基板回収装置4には、回収用ロールFR2が回転可能に装着される。基板回収装置4は、処理後の基板Pを回収用ロールFR2側に引き寄せる駆動ローラR2と、基板Pの幅方向(Y方向)における位置を調整するエッジポジションコントローラEPC2とを有する。基板回収装置4は、駆動ローラR2により基板Pの表裏両面を挟持しながら回転し、基板Pを搬送方向に引き寄せると共に、回収用ロールFR2を回転させることで、基板Pを巻き上げる。このとき、エッジポジションコントローラEPC2は、エッジポジションコントローラEPC1と同様に構成され、基板Pの幅方向の端部(エッジ)が幅方向においてばらつかないように、基板Pの幅方向における位置を修正する。
処理装置U1は、基板供給装置2から供給された基板Pの表面に感光性機能液を塗布する塗布装置である。感光性機能液としては、例えば、フォトレジスト、感光性シランカップリング材、UV硬化樹脂液等が用いられる。処理装置U1は、基板Pの搬送方向の上流側から順に、塗布機構Gp1と乾燥機構Gp2とが設けられている。塗布機構Gp1は、基板Pが巻き付けられる圧胴ローラDR1と、圧胴ローラDR1に対向する塗布ローラDR2とを有する。塗布機構Gp1は、供給された基板Pを圧胴ローラDR1に巻き付けた状態で、圧胴ローラDR1及び塗布ローラDR2により基板Pを挟持する。そして、塗布機構Gp1は、圧胴ローラDR1及び塗布ローラDR2を回転させることで、基板Pを搬送方向に移動させながら、塗布ローラDR2により感光性機能液を塗布する。乾燥機構Gp2は、熱風またはドライエアー等の乾燥用エアーを吹き付け、感光性機能液に含まれる溶質(溶剤または水)を除去し、感光性機能液が塗布された基板Pを乾燥させることで、基板P上に感光性機能層を形成する。
処理装置U2は、基板Pの表面に形成された感光性機能層を安定にすべく、処理装置U1から搬送された基板Pを所定温度(例えば、数10〜120℃程度)まで加熱する加熱装置である。処理装置U2は、基板Pの搬送方向の上流側から順に、加熱チャンバHA1と冷却チャンバHA2とが設けられている。加熱チャンバHA1は、その内部に複数のローラ及び複数のエア・ターンバーが設けられており、複数のローラ及び複数のエア・ターンバーは、基板Pの搬送経路を構成している。複数のローラは、基板Pの裏面に転接して設けられ、複数のエア・ターンバーは、基板Pの表面側に非接触状態で設けられる。複数のローラ及び複数のエア・ターンバーは、基板Pの搬送経路を長くすべく、蛇行状の搬送経路となる配置になっている。加熱チャンバHA1内を通る基板Pは、蛇行状の搬送経路に沿って搬送されながら所定温度まで加熱される。冷却チャンバHA2は、加熱チャンバHA1で加熱された基板Pの温度が、後工程(処理装置U3)の環境温度と揃うようにすべく、基板Pを環境温度まで冷却する。冷却チャンバHA2は、その内部に複数のローラが設けられ、複数のローラは、加熱チャンバHA1と同様に、基板Pの搬送経路を長くすべく、蛇行状の搬送経路となる配置になっている。冷却チャンバHA2内を通る基板Pは、蛇行状の搬送経路に沿って搬送されながら冷却される。冷却チャンバHA2の搬送方向における下流側には、駆動ローラR3が設けられ、駆動ローラR3は、冷却チャンバHA2を通過した基板Pを挟持しながら回転することで、基板Pを処理装置U3へ向けて供給する。
処理装置(基板処理装置)U3は、処理装置U2から供給された、表面に感光性機能層が形成された基板(感光基板)Pに対して、ディスプレー用の回路または配線等のパターンを投影露光する走査型の露光装置である。詳細は後述するが、処理装置U3は、反射型の円筒状のマスクMに照明光束を照明し、照明光束がマスクMにより反射されることで得られる投影光束を、回転可能な基板支持ドラム25の外周面に支持される基板Pに投影露光する。処理装置U3は、処理装置U2から供給された基板Pを搬送方向の下流側に送る駆動ローラR4と、基板Pの幅方向(Y方向)における位置を調整するエッジポジションコントローラEPC3とを有する。駆動ローラR4は、基板Pの表裏両面を挟持しながら回転し、基板Pを搬送方向の下流側に送り出すことで、基板Pを露光位置へ向けて供給する。エッジポジションコントローラEPC3は、エッジポジションコントローラEPC1と同様に構成され、露光位置における基板Pの幅方向が目標位置となるように、基板Pの幅方向における位置を修正する。
また、処理装置U3は、露光後の基板Pにたるみを与えた状態で、基板Pを搬送方向の下流側へ送る2組の駆動ローラR5、R6を有する。2組の駆動ローラR5、R6は、基板Pの搬送方向に所定の間隔を空けて配置されている。駆動ローラR5は、搬送される基板Pの上流側を挟持して回転し、駆動ローラR6は、搬送される基板Pの下流側を挟持して回転することで、基板Pを処理装置U4へ向けて供給する。このとき、基板Pは、たるみが与えられているため、駆動ローラR6よりも搬送方向の下流側において生ずる搬送速度の変動を吸収でき、搬送速度の変動による基板Pへの露光処理の影響を縁切りすることができる。また、処理装置U3内には、マスクMのマスクパターンの一部分の像と基板Pとを相対的に位置合せ(アライメント)する為に、基板Pに予め形成されたアライメントマーク等を検出するアライメント顕微鏡AM1、AM2が設けられている。
処理装置U4は、処理装置U3から搬送された露光後の基板Pに対して、湿式による現像処理、無電解メッキ処理等を行なう湿式処理装置である。処理装置U4は、その内部に、鉛直方向(Z方向)に階層化された3つの処理槽BT1、BT2、BT3と、基板Pを搬送する複数のローラとを有する。複数のローラは、3つの処理槽BT1、BT2、BT3の内部を、基板Pが順に通過する搬送経路となるように配置される。処理槽BT3の搬送方向における下流側には、駆動ローラR7が設けられ、駆動ローラR7は、処理槽BT3を通過した基板Pを挟持しながら回転することで、基板Pを処理装置U5へ向けて供給する。
図示は省略するが、処理装置U5は、処理装置U4から搬送された基板Pを乾燥させる乾燥装置である。処理装置U5は、処理装置U4において湿式処理された基板Pに付着する水分含有量を、所定の水分含有量に調整する。処理装置U5により乾燥された基板Pは、幾つかの処理装置を経て、処理装置Unに搬送される。そして、処理装置Unで処理された後、基板Pは、基板回収装置4の回収用ロールFR2に巻き上げられる。
上位制御装置5は、基板供給装置2、基板回収装置4及び複数の処理装置U1〜Unを統括制御する。上位制御装置5は、基板供給装置2及び基板回収装置4を制御して、基板Pを基板供給装置2から基板回収装置4へ向けて搬送させる。また、上位制御装置5は、基板Pの搬送に同期させながら、複数の処理装置U1〜Unを制御して、基板Pに対する各種処理を実行させる。
<露光装置(基板処理装置)>
次に、第1実施形態の処理装置U3としての露光装置(基板処理装置)の構成について、図2から図7を参照して説明する。図2は、第1実施形態の露光装置(基板処理装置)の全体構成を示す図である。図3は、図2に示す露光装置の照明領域及び投影領域の配置を示す図である。図4は、図2に示す露光装置の照明光学系及び投影光学系の構成を示す図である。図5Aは、マスクにおける照明光束及び投影光束を示す図である。図5Bは、偏光ビームスプリッタから見た第4リレーレンズを示す図である。図6は、偏光ビームスプリッタにおける照明光束及び投影光束を示す図である。図7は、照明光学系の配置が可能な配置領域を示す図である。
図2に示す露光装置U3は、いわゆる走査露光装置であり、基板Pを搬送方向(走査方向)に搬送しながら、円筒状のマスクMの外周面に形成されたマスクパターンの像を、基板Pの表面に投影露光する。なお、図2及び図4〜図7では、X方向、Y方向及びZ方向が直交する直交座標系となっており、図1と同様の直交座標系となっている。
先ず、露光装置U3に用いられるマスクMについて説明する。マスクMは、例えば金属製の円筒体を用いた反射型の円筒マスクとなっている。マスクMは、Y方向に延びる第1軸AX1を中心とする曲率半径Rmとなる外周面(円周面)を有する円筒体に形成され、径方向に一定の肉厚を有している。マスクMの円周面は、所定のマスクパターンが形成されたマスク面P1となっている。マスク面P1は、所定方向に光束を高い効率で反射する高反射部と、所定方向に光束を反射しないまたは低い効率で反射する反射抑制部(或いは光吸収部)とを含み、マスクパターンは、高反射部及び反射抑制部により形成されている。このようなマスクMは、金属製の円筒体であることから、安価に作成することができる。
なお、マスクMは、1個の表示デバイスに対応するパネル用パターンの全体または一部が形成されていてもよいし、複数個の表示デバイスに対応するパネル用パターンが形成された多面取りであってもよい。また、マスクMには、パネル用パターンが第1軸AX1の周りの周方向に繰り返し複数個形成されていてもよいし、小型のパネル用パターンが第1軸AX1に平行な方向に繰り返し複数形成されていてもよい。さらに、マスクMは、第1の表示デバイスのパネル用パターンと、第1の表示デバイスとサイズ等が異なる第2の表示デバイスのパネル用パターンとが形成されていてもよい。また、マスクMは、第1軸AX1を中心とする曲率半径Rmとなる円周面を有していればよく、円筒体の形状に限定されない。例えば、マスクMは、円周面を有する円弧状の板材であってもよい。また、マスクMは薄板状であってもよく、薄板状のマスクMを湾曲させて、円周面を有するように円柱状の母材や円筒状のフレームに貼り付けてもよい。
次に、図2に示す露光装置U3について説明する。露光装置U3は、上記した駆動ローラR4〜R6、エッジポジションコントローラEPC3及びアライメント顕微鏡AM1、AM2の他に、マスク保持機構11と、基板支持機構12と、照明光学系ILと、投影光学系PLと、下位制御装置16とを有する。露光装置U3は、光源装置13から射出された照明光束EL1を、照明光学系IL及び投影光学系PLで案内することで、マスク保持機構11で保持したマスクMのマスクパターンの像を、基板支持機構12で支持した基板Pに投射する。
下位制御装置16は、露光装置U3の各部を制御し、各部に処理を実行させる。下位制御装置16は、デバイス製造システム1の上位制御装置5の一部または全部であってもよい。また、下位制御装置16は、上位制御装置5に制御され、上位制御装置5とは別の装置であってもよい。下位制御装置16は、例えば、コンピュータを含む。
マスク保持機構11は、マスクMを保持するマスク保持ドラム(マスク保持部材)21と、マスク保持ドラム21を回転させる第1駆動部22とを有している。マスク保持ドラム21は、マスクMの第1軸AX1が回転中心となるようにマスクMを保持する。第1駆動部22は、下位制御装置16に接続され、第1軸AX1を回転中心にマスク保持ドラム21を回転させる。
なお、マスク保持機構11は、円筒体のマスクMをマスク保持ドラム21で保持したが、この構成に限らない。マスク保持機構11は、マスク保持ドラム21の外周面に倣って薄板状のマスクMを巻き付けて保持してもよい。また、マスク保持機構11は、円弧状の板材となるマスクMをマスク保持ドラム21の外周面において保持してもよい。
基板支持機構12は、基板Pを支持する円筒状の基板支持ドラム(基板支持部材)25と、基板支持ドラム25を回転させる第2駆動部26と、一対のエア・ターンバーATB1、ATB2と、一対のガイドローラ27、28とを有している。基板支持ドラム25は、Y方向に延びる第2軸AX2を中心とする曲率半径Rfaとなる外周面(円周面)を有する円筒形状に形成されている。ここで、第1軸AX1と第2軸AX2とは互いに平行になっており、第1軸AX1及び第2軸AX2を通る面を中心面CLとしている。基板支持ドラム25の円周面の一部は、基板Pを支持する支持面P2となっている。つまり、基板支持ドラム25は、その支持面P2に基板Pが巻き付けられることで、基板Pを支持する。第2駆動部26は、下位制御装置16に接続され、第2軸AX2を回転中心に基板支持ドラム25を回転させる。一対のエア・ターンバーATB1,ATB2は、基板支持ドラム25を挟んで、基板Pの搬送方向の上流側及び下流側にそれぞれ設けられている。一対のエア・ターンバーATB1,ATB2は、基板Pの表面側に設けられ、鉛直方向(Z方向)において基板支持ドラム25の支持面P2よりも下方側に配置されている。一対のガイドローラ27、28は、一対のエア・ターンバーATB1,ATB2を挟んで、基板Pの搬送方向の上流側及び下流側にそれぞれ設けられている。一対のガイドローラ27、28は、その一方のガイドローラ27が駆動ローラR4から搬送された基板Pをエア・ターンバーATB1に案内し、その他方のガイドローラ28がエア・ターンバーATB2から搬送された基板Pを駆動ローラR5に案内する。
従って、基板支持機構12は、駆動ローラR4から搬送された基板Pを、ガイドローラ27によりエア・ターンバーATB1に案内し、エア・ターンバーATB1を通過した基板Pを、基板支持ドラム25に導入する。基板支持機構12は、第2駆動部26により基板支持ドラム25を回転させることで、基板支持ドラム25に導入した基板Pを、基板支持ドラム25の支持面P2で支持しながら、エア・ターンバーATB2へ向けて搬送する。基板支持機構12は、エア・ターンバーATB2に搬送された基板Pを、エア・ターンバーATB2によりガイドローラ28に案内し、ガイドローラ28を通過した基板Pを、駆動ローラR5に案内する。
このとき、第1駆動部22及び第2駆動部26に接続された下位制御装置16は、マスク保持ドラム21と基板支持ドラム25とを所定の回転速度比で同期回転させることによって、マスクMのマスク面P1に形成されたマスクパターンの像が、基板支持ドラム25の支持面P2に巻き付けられた基板Pの表面(円周面に倣って湾曲した面)に連続的に繰り返し投影露光される。
光源装置13は、マスクMに照明される照明光束EL1を出射する。光源装置13は、光源31と導光部材32とを有する。光源31は、基板Pの表面に形成された光感応層に化学的な作用を与える所定の波長の光を射出する光源である。光源31には、例えば水銀ランプ等のランプ光源、又はレーザーダイオード、発光ダイオード(LED)等が用いられる。光源31が射出する照明光は、例えばランプ光源から射出される輝線(g線、h線、i線)、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)等である。ここで、光源31は、i線(365nmの波長)以下の波長を含む照明光束EL1を射出することが好ましい。i線以下の波長となる照明光束EL1を発生する光源31として、波長355nmのレーザ光を射出するYAGの第3高調波レーザ、波長266nmのレーザ光を射出するYAGの第4高調波レーザ、または波長248nmのレーザ光を射出するKrFエキシマレーザ等を用いることができる。
ここで、光源装置13から出射された照明光束EL1は、後述の偏光ビームスプリッタPBSに入射する。照明光束EL1は、偏光ビームスプリッタPBSによる照明光束EL1の分離によってエネルギーロスが生じることを抑制すべく、入射される照明光束EL1が偏光ビームスプリッタPBSにおいてほぼ全て反射するような光束にすることが好ましい。偏光ビームスプリッタPBSは、S偏光の直線偏光となる光束を反射し、P偏光の直線偏光となる光束を透過する。このため、光源装置13は、偏光ビームスプリッタPBSに入射する照明光束EL1が直線偏光(S偏光)の光束となる照明光束EL1を出射する。よって、光源装置13は、偏光ビームスプリッタPBSに波長及び位相が揃った偏光レーザ光を出射する。
導光部材32は、光源31から出射された照明光束EL1を照明光学系ILに導く。導光部材32は、光ファイバ、またはミラーを用いたリレーモジュール等で構成される。なお、導光部材32は、照明光学系ILが複数設けられている場合、光源31からの照明光束EL1を複数に分離し、複数の照明光束EL1を複数の照明光学系ILに導く。また、導光部材32は、例えば光源31から射出される光束が偏光レーザ光である場合、光ファイバとして偏波保持ファイバ(偏波面保存ファイバ)を用い、偏波保持ファイバにより偏光レーザ光の偏光状態を維持したまま導光してもよい。
ここで、図3に示すように、第1実施形態の露光装置U3は、いわゆるマルチレンズ方式を想定した露光装置である。なお、図3には、マスク保持ドラム21に保持された円筒マスクM上の照明領域IRを−Z側から見た平面図(図3の左図)と、基板支持ドラム25に支持された基板P上の投影領域PAを+Z側から見た平面図(図3の右図)とが図示されている。図3の符号Xsは、マスク保持ドラム21及び基板支持ドラム25の移動方向(回転方向)を示す。マルチレンズ方式の露光装置U3は、マスクM上の複数(第1実施形態では例えば6つ)の照明領域IR1〜IR6に照明光束EL1をそれぞれ照明し、各照明光束EL1が各照明領域IR1〜IR6に反射されることで得られる複数の投影光束EL2を、基板P上の複数(第1実施形態では例えば6つ)の投影領域PA1〜PA6に投影露光する。
先ず、照明光学系ILにより照明される複数の照明領域IR1〜IR6について説明する。図3に示すように、複数の照明領域IR1〜IR6は、中心面CLを挟んで回転方向に2列に配置され、回転方向の上流側のマスクM上に奇数番の第1照明領域IR1、第3照明領域IR3及び第5照明領域IR5が配置され、回転方向の下流側のマスクM上に偶数番の第2照明領域IR2、第4照明領域IR4及び第6照明領域IR6が配置される。各照明領域IR1〜IR6は、マスクMの軸方向(Y方向)に延びる平行な短辺及び長辺を有する細長い台形状(矩形状)の領域となっている。このとき、台形状の各照明領域IR1〜IR6は、その短辺が中心面CL側に位置し、その長辺が外側に位置する領域となっている。第1照明領域IR1、第3照明領域IR3及び第5照明領域IR5は、軸方向に所定の間隔を空けて配置されている。また、第2照明領域IR2、第4照明領域IR4及び第6照明領域IR6は、軸方向に所定の間隔を空けて配置されている。このとき、第2照明領域IR2は、軸方向において、第1照明領域IR1と第3照明領域IR3との間に配置される。同様に、第3照明領域IR3は、軸方向において、第2照明領域IR2と第4照明領域IR4との間に配置される。第4照明領域IR4は、軸方向において、第3照明領域IR3と第5照明領域IR5との間に配置される。第5照明領域IR5は、軸方向において、第4照明領域IR4と第6照明領域IR6との間に配置される。各照明領域IR1〜IR6は、マスクMの周方向からみて、隣り合う台形状の照明領域IRの斜辺部の三角部が重なるように(オーバーラップするように)配置されている。なお、第1実施形態において、各照明領域IR1〜IR6は、台形状の領域としたが、長方形状の領域であってもよい。
また、マスクMは、マスクパターンが形成されるパターン形成領域A3と、マスクパターンが形成されないパターン非形成領域A4とを有する。パターン非形成領域A4は、照明光束EL1を吸収する反射し難い領域であり、パターン形成領域A3を枠状に囲んで配置されている。第1〜第6照明領域IR1〜IR6は、パターン形成領域A3のY方向の全幅をカバーするように、配置されている。
照明光学系ILは、複数の照明領域IR1〜IR6に応じて複数(第1実施形態では例えば6つ)設けられている。複数の照明光学系IL1〜IL6には、光源装置13からの照明光束EL1がそれぞれ入射する。各照明光学系IL1〜IL6は、光源装置13から入射された各照明光束EL1を、各照明領域IR1〜IR6にそれぞれ導く。つまり、第1照明光学系IL1は、照明光束EL1を第1照明領域IR1に導き、同様に、第2〜第6照明光学系IL2〜IL6は、照明光束EL1を第2〜第6照明領域IR2〜IR6に導く。複数の照明光学系IL1〜IL6は、中心面CLを挟んでマスクMの周方向に2列に配置される。複数の照明光学系IL1〜IL6は、中心面CLを挟んで、第1、第3、第5照明領域IR1、IR3、IR5が配置される側(図2の左側)に、第1照明光学系IL1、第3照明光学系IL3及び第5照明光学系IL5が配置される。第1照明光学系IL1、第3照明光学系IL3及び第5照明光学系IL5は、Y方向に所定の間隔を空けて配置される。また、複数の照明光学系IL1〜IL6は、中心面CLを挟んで、第2、第4、第6照明領域IR2、IR4、IR6が配置される側(図2の右側)に、第2照明光学系IL2、第4照明光学系IL4及び第6照明光学系IL6が配置される。第2照明光学系IL2、第4照明光学系IL4及び第6照明光学系IL6は、Y方向に所定の間隔を空けて配置される。このとき、第2照明光学系IL2は、軸方向において、第1照明光学系IL1と第3照明光学系IL3との間に配置される。同様に、第3照明光学系IL3は、軸方向において、第2照明光学系IL2と第4照明光学系IL4との間に配置される。第4照明光学系IL4は、軸方向において、第3照明光学系IL3と第5照明光学系IL5との間に配置される。第5照明光学系IL5は、軸方向において、第4照明光学系IL4と第6照明光学系IL6との間に配置される。また、第1照明光学系IL1、第3照明光学系IL3及び第5照明光学系IL5と、第2照明光学系IL2、第4照明光学系IL4及び第6照明光学系IL6とは、Y方向からみて中心面CLを中心に対称に配置されている。
次に、図4を参照して、各照明光学系IL1〜IL6について説明する。なお、各照明光学系IL1〜IL6は、同様の構成となっているため、第1照明光学系IL1(以下、単に照明光学系ILという)を例に説明する。
照明光学系ILは、照明領域IR(第1照明領域IR1)を照射する照明光束EL1が均一な照度分布となるように、ケーラー照明法を適用している。また、照明光学系ILは、偏光ビームスプリッタPBSを用いた落射照明系となっている。照明光学系ILは、光源装置13からの照明光束EL1の入射側から順に、照明光学モジュールILMと、偏光ビームスプリッタPBSと、1/4波長板41とを有する。
図4に示すように、照明光学モジュールILMは、照明光束EL1の入射側から順に、コリメータレンズ51と、フライアイレンズ52と、複数のコンデンサーレンズ53と、シリンドリカルレンズ54と、照明視野絞り55と、複数のリレーレンズ56とを含んでおり、第1光軸BX1上に設けられている。コリメータレンズ51は、光源装置13の導光部材32の出射側に設けられている。コリメータレンズ51の光軸は、第1光軸BX1上に配置される。コリメータレンズ51は、フライアイレンズ52の入射側の面全体を照射する。フライアイレンズ52は、コリメータレンズ51の出射側に設けられている。フライアイレンズ52の出射側の面の中心は、第1光軸BX1上に配置される。フライアイレンズ52は、コリメータレンズ51からの照明光束EL1を、多数の点光源像の各々から発散する光束に分割する。このとき、点光源像が生成されるフライアイレンズ52の出射側の面は、フライアイレンズ52から照明視野絞り55を介して後述する投影光学系PLの第1凹面鏡72に至る各種レンズによって、第1凹面鏡72の反射面が位置する瞳面と光学的に共役となるように配置される。
コンデンサーレンズ53は、フライアイレンズ52の出射側に設けられている。コンデンサーレンズ53の光軸は、第1光軸BX1上に配置される。コンデンサーレンズ53は、フライアイレンズ52で分割された照明光束EL1の各々を、シリンドリカルレンズ54を介して照明視野絞り55上で重畳させる。それによって、照明光束EL1は照明視野絞り55上で均一な照度分布となる。シリンドリカルレンズ54は、入射側が平面となり出射側が凸となる平凸シリンドリカルレンズである。シリンドリカルレンズ54は、コンデンサーレンズ53の出射側に設けられている。シリンドリカルレンズ54の光軸は、第1光軸BX1上に配置される。
シリンドリカルレンズ54は、図4中のXZ面内において第1光軸BX1に直交する方向に、照明光束EL1の主光線を収れんさせる。シリンドリカルレンズ54は、照明視野絞り55の入射側に隣接して設けられている。照明視野絞り55の開口部は、照明領域IRと同様の形状となる台形状または長方形等の矩形状に形成されており、照明視野絞り55の開口部の中心は、第1光軸BX1上に配置される。このとき、照明視野絞り55は、照明視野絞り55からマスクMに至る各種レンズによって、マスクM上の照明領域IRと光学的に共役な面に配置される。リレーレンズ56は、照明視野絞り55の出射側に設けられている。リレーレンズ56の光軸は、第1光軸BX1上に配置される。リレーレンズ56は、照明視野絞り55からの照明光束EL1を偏光ビームスプリッタPBSに入射させる。
照明光学モジュールILMに照明光束EL1が入射すると、照明光束EL1は、コリメータレンズ51によりフライアイレンズ52の入射側の面全体を照射する光束となる。フライアイレンズ52に入射した照明光束EL1は、多数の点光源像に分割された照明光束EL1となって、コンデンサーレンズ53を介してシリンドリカルレンズ54に入射する。シリンドリカルレンズ54に入射した照明光束EL1は、XZ面内において第1光軸BX1に直交する方向に収れんする。シリンドリカルレンズ54を通った照明光束EL1は、照明視野絞り55に入射する。照明視野絞り55に入射した照明光束EL1は、照明視野絞り55の開口部(台形または長方形等の矩形状)を通過し、リレーレンズ56を介して偏光ビームスプリッタPBSに入射する。
偏光ビームスプリッタPBSは、照明光学モジュールILMと中心面CLとの間に配置されている。偏光ビームスプリッタPBSは、照明光学モジュールILMからの照明光束EL1を反射する一方で、マスクMで反射された投影光束EL2を透過している。すなわち、照明光学モジュールILMからの照明光束EL1をS偏光の直線偏光とすることで、偏光ビームスプリッタPBSに入射する投影光束EL2は、1/4波長板41の作用によって、P偏光の直線偏光となって偏光ビームスプリッタPBSを透過する。
なお、偏光ビームスプリッタPBSの詳細については後述するが、図6に示すように、偏光ビームスプリッタPBSは、第1プリズム91と、第2プリズム92と、第1プリズム91及び第2プリズム92の間に設けられた偏光膜(波面分割面)93とを有している。第1プリズム91及び第2プリズム92は、石英ガラスで構成され、XZ面内において三角形状の三角プリズムとなっている。そして、偏光ビームスプリッタPBSは、三角形状の第1プリズム91と第2プリズム92とが偏光膜93を挟んで接合されることで、XZ面内において四角形状となる。
第1プリズム91は、照明光束EL1及び投影光束EL2が入射する側のプリズムである。第2プリズム92は、偏光膜93を透過する投影光束EL2が出射する側のプリズムである。偏光膜93には、第1プリズム91から第2プリズム92へ向かう照明光束EL1が入射する。偏光膜93は、S偏光(直線偏光)の照明光束EL1を反射し、P偏光(直線偏光)の投影光束EL2を透過する。
偏光ビームスプリッタPBSは、偏光膜(波面分割面)93に達する照明光束EL1の大部分を反射すると共に、投影光束EL2の大部分を透過することが好ましい。偏光ビームスプリッタPBSの波面分割面での偏光分離特性は消光比で表されるが、その消光比は波面分割面に向かう光線の入射角によっても変わる為、波面分割面の特性は、実用上の結像性能への影響が問題にならないように、照明光束EL1や投影光束EL2のNA(開口数)も考慮して設計される。
1/4波長板41は、偏光ビームスプリッタPBSとマスクMとの間に配置されている。1/4波長板41は、偏光ビームスプリッタPBSで反射された照明光束EL1を直線偏光(S偏光)から円偏光に変換する。円偏光の照明光束EL1の照射によってマスクMで反射した光(円偏光)は、1/4波長板41によってP偏光(直線偏光)の投影光束EL2に変換される。
図5Aは、マスクM上の照明領域IRに照射される照明光束EL1と、照明領域IRで反射された投影光束EL2との振る舞いを、XZ面(第1軸AX1と垂直な面)内で誇張して示した図である。図5Aに示すように、上記した照明光学系ILは、マスクMの照明領域IRで反射される投影光束EL2の主光線がテレセントリック(平行系)となるように、マスクMの照明領域IRに照射される照明光束EL1の主光線を、XZ面(第1軸AX1と垂直な面)内では意図的に非テレセントリックな状態にし、YZ面(中心面CLと平行)内ではテレセントリックな状態にする。照明光束EL1のそのような特性は、図4中に示したシリンドリカルレンズ54によって与えられる。具体的には、マスク面P1上の照明領域IRの周方向の中央の点Q1を通って第1軸AX1に向かう線と、マスク面P1の半径Rmの1/2の円との交点Q2を設定したとき、照明領域IRを通る照明光束EL1の各主光線が、XZ面では交点Q2に向かうように、シリンドリカルレンズ54の凸円筒レンズ面の曲率を設定する。このようにすると、照明領域IR内で反射した投影光束EL2の各主光線は、XZ面内では、第1軸AX1、点Q1、交点Q2を通る直線と平行(テレセントリック)な状態となる。
次に、投影光学系PLにより投影露光される複数の投影領域PA1〜PA6について説明する。図3に示すように、基板P上の複数の投影領域PA1〜PA6は、マスクM上の複数の照明領域IR1〜IR6と対応させて配置されている。つまり、基板P上の複数の投影領域PA1〜PA6は、中心面CLを挟んで搬送方向に2列に配置され、搬送方向の上流側の基板P上に奇数番の第1投影領域PA1、第3投影領域PA3及び第5投影領域PA5が配置され、搬送方向の下流側の基板P上に偶数番の第2投影領域PA2、第4投影領域PA4及び第6投影領域PA6が配置される。各投影領域PA1〜PA6は、基板Pの幅方向(Y方向)に延びる短辺及び長辺を有する細長い台形状(矩形状)の領域となっている。このとき、台形状の各投影領域PA1〜PA6は、その短辺が中心面CL側に位置し、その長辺が外側に位置する領域となっている。第1投影領域PA1、第3投影領域PA3及び第5投影領域PA5は、幅方向に所定の間隔を空けて配置されている。また、第2投影領域PA2、第4投影領域PA4及び第6投影領域PA6は、幅方向に所定の間隔を空けて配置されている。このとき、第2投影領域PA2は、軸方向において、第1投影領域PA1と第3投影領域PA3との間に配置される。同様に、第3投影領域PA3は、軸方向において、第2投影領域PA2と第4投影領域PA4との間に配置される。第4投影領域PA4は、第3投影領域PA3と第5投影領域PA5との間に配置される。第5投影領域PA5は、第4投影領域PA4と第6投影領域PA6との間に配置される。各投影領域PA1〜PA6は、各照明領域IR1〜IR6と同様に、基板Pの搬送方向からみて、隣り合う台形状の投影領域PAの斜辺部の三角部が重なるように(オーバーラップするように)配置されている。このとき、投影領域PAは、隣り合う投影領域PAの重複する領域での露光量が、重複しない領域での露光量と実質的に同じになるような形状になっている。そして、第1〜第6投影領域PA1〜PA6は、基板P上に露光される露光領域A7のY方向の全幅をカバーするように、配置されている。
ここで、図2において、XZ面内で見たとき、マスクM上の照明領域IR1(及びIR3,IR5)の中心点から照明領域IR2(及びIR4,IR6)の中心点までの周長は、支持面P2に倣った基板P上の投影領域PA1(及びPA3,PA5)の中心点から投影領域PA2(及びPA4,PA6)の中心点までの周長と、実質的に等しく設定されている。
投影光学系PLは、複数の投影領域PA1〜PA6に応じて複数(第1実施形態では例えば6つ)設けられている。複数の投影光学系PL1〜PL6には、複数の照明領域IR1〜IR6から反射された複数の投影光束EL2がそれぞれ入射する。各投影光学系PL1〜PL6は、マスクMで反射された各投影光束EL2を、各投影領域PA1〜PA6にそれぞれ導く。つまり、第1投影光学系PL1は、第1照明領域IR1からの投影光束EL2を第1投影領域PA1に導き、同様に、第2〜第6投影光学系PL2〜PL6は、第2〜第6照明領域IR2〜IR6からの各投影光束EL2を第2〜第6投影領域PA2〜PA6に導く。複数の投影光学系PL1〜PL6は、中心面CLを挟んでマスクMの周方向に2列に配置される。複数の投影光学系PL1〜PL6は、中心面CLを挟んで、第1、第3、第5投影領域PA1、PA3、PA5が配置される側(図2の左側)に、第1投影光学系PL1、第3投影光学系PL3及び第5投影光学系PL5が配置される。第1投影光学系PL1、第3投影光学系PL3及び第5投影光学系PL5は、Y方向に所定の間隔を空けて配置される。また、複数の投影光学系PL1〜PL6は、中心面CLを挟んで、第2、第4、第6投影領域PA2、PA4、PA6が配置される側(図2の右側)に、第2投影光学系PL2、第4投影光学系PL4及び第6投影光学系PL6が配置される。第2投影光学系PL2、第4投影光学系PL4及び第6投影光学系PL6は、Y方向に所定の間隔を空けて配置される。このとき、第2投影光学系PL2は、軸方向において、第1投影光学系PL1と第3投影光学系PL3との間に配置される。同様に、第3投影光学系PL3は、軸方向において、第2投影光学系PL2と第4投影光学系PL4との間に配置される。第4投影光学系PL4は、第3投影光学系PL3と第5投影光学系PL5との間に配置される。第5投影光学系PL5は、第4投影光学系PL4と第6投影光学系PL6との間に配置される。また、第1投影光学系PL1、第3投影光学系PL3及び第5投影光学系PL5と、第2投影光学系PL2、第4投影光学系PL4及び第6投影光学系PL6とは、Y方向からみて中心面CLを中心に対称に配置されている。
再び、図4を参照して、各投影光学系PL1〜PL6について説明する。なお、各投影光学系PL1〜PL6は、同様の構成となっているため、第1投影光学系PL1(以下、単に投影光学系PLという)を例に説明する。
投影光学系PLは、マスクM上の照明領域IR(第1照明領域IR1)におけるマスクパターンの像を、基板P上の投影領域PAに投影する。投影光学系PLは、マスクMからの投影光束EL2の入射側から順に、上記の1/4波長板41と、上記の偏光ビームスプリッタPBSと、投影光学モジュールPLMとを有する。
1/4波長板41及び偏光ビームスプリッタPBSは、照明光学系ILと兼用となっている。換言すれば、照明光学系IL及び投影光学系PLは、1/4波長板41及び偏光ビームスプリッタPBSを共有している。
図5Aで説明したように、照明領域IRで反射された投影光束EL2は、テレセントリックな光束(主光線が互いに平行な状態)となって、投影光学系PLに入射する。照明領域IRで反射された円偏光となる投影光束EL2は、1/4波長板41により円偏光から直線偏光(P偏光)に変換された後、偏光ビームスプリッタPBSに入射する。偏光ビームスプリッタPBSに入射した投影光束EL2は、偏光ビームスプリッタPBSを透過した後、投影光学モジュールPLMに入射する。
投影光学モジュールPLMは、照明光学モジュールILMに対応して設けられている。つまり、第1投影光学系PL1の投影光学モジュールPLMは、第1照明光学系IL1の照明光学モジュールILMによって照明される第1照明領域IR1のマスクパターンの像を、基板P上の第1投影領域PA1に投影する。同様に、第2〜第6投影光学系PL2〜PL6の投影光学モジュールPLMは、第2〜第6照明光学系IL2〜IL6の照明光学モジュールILMによって照明される第2〜第6照明領域IR2〜IR6のマスクパターンの像を、基板P上の第2〜第6投影領域PA2〜PA6に投影する。
図4に示すように、投影光学モジュールPLMは、照明領域IRにおけるマスクパターンの像を中間像面P7に結像する第1光学系61と、第1光学系61により結像した中間像の少なくとも一部を基板Pの投影領域PAに再結像する第2光学系62と、中間像が形成される中間像面P7に配置された投影視野絞り63とを備える。また、投影光学モジュールPLMは、フォーカス補正光学部材64と、像シフト用光学部材65と、倍率補正用光学部材66と、ローテーション補正機構67と、偏光調整機構(偏光調整手段)68とを備える。
第1光学系61及び第2光学系62は、例えばダイソン系を変形したテレセントリックな反射屈折光学系である。第1光学系61は、その光軸(以下、第2光軸BX2という)が中心面CLに対して実質的に直交する。第1光学系61は、第1偏向部材70と、第1レンズ群71と、第1凹面鏡72とを備える。第1偏向部材70は、第1反射面P3と第2反射面P4とを有する三角プリズムである。第1反射面P3は、偏光ビームスプリッタPBSからの投影光束EL2を反射させ、反射させた投影光束EL2を第1レンズ群71を通って第1凹面鏡72に入射させる面となっている。第2反射面P4は、第1凹面鏡72で反射された投影光束EL2が第1レンズ群71を通って入射し、入射した投影光束EL2を投影視野絞り63へ向けて反射する面となっている。第1レンズ群71は、各種レンズを含み、各種レンズの光軸は、第2光軸BX2上に配置されている。第1凹面鏡72は、第1光学系61の瞳面に配置され、フライアイレンズ52により生成される多数の点光源像と光学的に共役な関係に設定される。
偏光ビームスプリッタPBSからの投影光束EL2は、第1偏向部材70の第1反射面P3で反射され、第1レンズ群71の上半分の視野領域を通って第1凹面鏡72に入射する。第1凹面鏡72に入射した投影光束EL2は、第1凹面鏡72で反射され、第1レンズ群71の下半分の視野領域を通って第1偏向部材70の第2反射面P4に入射する。第2反射面P4に入射した投影光束EL2は、第2反射面P4で反射され、フォーカス補正光学部材64及び像シフト用光学部材65を通過し、投影視野絞り63に入射する。
投影視野絞り63は、投影領域PAの形状を規定する開口を有する。すなわち、投影視野絞り63の開口の形状が投影領域PAの形状を規定することになる。
第2光学系62は、第1光学系61と同様の構成であり、中間像面P7を挟んで第1光学系61と対称に設けられている。第2光学系62は、その光軸(以下、第3光軸BX3という)が中心面CLに対して実質的に直交し、第2光軸BX2と平行になっている。第2光学系62は、第2偏向部材80と、第2レンズ群81と、第2凹面鏡82とを備える。第2偏向部材80は、第3反射面P5と第4反射面P6とを有する。第3反射面P5は、投影視野絞り63からの投影光束EL2を反射させ、反射させた投影光束EL2を第2レンズ群81を通って第2凹面鏡82に入射させる面となっている。第4反射面P6は、第2凹面鏡82で反射された投影光束EL2が第2レンズ群81を通って入射し、入射した投影光束EL2を投影領域PAへ向けて反射する面となっている。第2レンズ群81は、各種レンズを含み、各種レンズの光軸は、第3光軸BX3上に配置されている。第2凹面鏡82は、第2光学系62の瞳面に配置され、第1凹面鏡72に結像した多数の点光源像と光学的に共役な関係に設定される。
投影視野絞り63からの投影光束EL2は、第2偏向部材80の第3反射面P5で反射され、第2レンズ群81の上半分の視野領域を通って第2凹面鏡82に入射する。第2凹面鏡82に入射した投影光束EL2は、第2凹面鏡82で反射され、第2レンズ群81の下半分の視野領域を通って第2偏向部材80の第4反射面P6に入射する。第4反射面P6に入射した投影光束EL2は、第4反射面P6で反射され、倍率補正用光学部材66を通過し、投影領域PAに投射される。これにより、照明領域IRにおけるマスクパターンの像は、投影領域PAに等倍(×1)で投影される。
フォーカス補正光学部材64は、第1偏向部材70と投影視野絞り63との間に配置されている。フォーカス補正光学部材64は、基板P上に投影されるマスクパターンの像のフォーカス状態を調整する。フォーカス補正光学部材64は、例えば、2枚のクサビ状のプリズムを逆向き(図4ではX方向について逆向き)にして、全体として透明な平行平板になるように重ね合わせたものである。この1対のプリズムを互いに対向する面間の間隔を変えずに斜面方向にスライドさせることにより、平行平板としての厚みを可変にする。これによって第1光学系61の実効的な光路長を微調整し、中間像面P7及び投影領域PAに形成されるマスクパターンの像のピント状態が微調整される。
像シフト用光学部材65は、第1偏向部材70と投影視野絞り63との間に配置されている。像シフト用光学部材65は、基板P上に投影されるマスクパターンの像を像面内において移動可能に調整する。像シフト用光学部材65は、図4のXZ面内で傾斜可能な透明な平行平板ガラスと、図4のYZ面内で傾斜可能な透明な平行平板ガラスとで構成される。その2枚の平行平板ガラスの各傾斜量を調整することで、中間像面P7及び投影領域PAに形成されるマスクパターンの像をX方向やY方向に微少シフトさせることができる。
倍率補正用光学部材66は、第2偏向部材80と基板Pとの間に配置されている。倍率補正用光学部材66は、例えば、凹レンズ、凸レンズ、凹レンズの3枚を所定間隔で同軸に配置し、前後の凹レンズは固定して、間の凸レンズを光軸(主光線)方向に移動させるように構成したものである。これによって、投影領域PAに形成されるマスクパターンの像は、テレセントリックな結像状態を維持しつつ、等方的に微少量だけ拡大または縮小される。なお、倍率補正用光学部材66を構成する3枚のレンズ群の光軸は、投影光束EL2の主光線と平行になるようにXZ面内では傾けられている。
ローテーション補正機構67は、例えば、アクチュエータ(図示略)によって、第1偏向部材70をZ軸と平行な軸周りに微少回転させるものである。このローテーション補正機構67は、第1偏向部材70を回転させることによって、中間像面P7に形成されるマスクパターンの像を、その中間像面P7内で微少回転させることができる。
偏光調整機構68は、例えば、アクチュエータ(図示略)によって、1/4波長板41を、板面に直交する軸回りに回転させて、偏光方向を調整するものである。偏光調整機構68は、1/4波長板41を回転させることによって、投影領域PAに投射される投影光束EL2の照度を調整することができる。
このように構成された投影光学系PLにおいて、マスクMからの投影光束EL2は、照明領域IRからマスク面P1の法線方向に出射し、1/4波長板41及び偏光ビームスプリッタPBSを通って第1光学系61に入射する。第1光学系61に入射した投影光束EL2は、第1光学系61の第1偏向部材70の第1反射面(平面鏡)P3で反射され、第1レンズ群71を通って第1凹面鏡72で反射される。第1凹面鏡72で反射された投影光束EL2は、再び第1レンズ群71を通って第1偏向部材70の第2反射面(平面鏡)P4で反射されて、フォーカス補正光学部材64及び像シフト用光学部材65を透過して、投影視野絞り63に入射する。投影視野絞り63を通った投影光束EL2は、第2光学系62の第2偏向部材80の第3反射面(平面鏡)P5で反射され、第2レンズ群81を通って第2凹面鏡82で反射される。第2凹面鏡82で反射された投影光束EL2は、再び第2レンズ群81を通って第2偏向部材80の第4反射面(平面鏡)P6で反射されて、倍率補正用光学部材66に入射する。倍率補正用光学部材66から出射した投影光束EL2は、基板P上の投影領域PAに入射し、照明領域IR内に現れるマスクパターンの像が投影領域PAに等倍(×1)で投影される。
本実施形態において、第1偏向部材70の第2反射面(平面鏡)P4と、第2偏向部材80の第3反射面(平面鏡)P5は、中心面CL(或いは光軸BX2、BX3)に対して45°傾いた面となっているが、第1偏向部材70の第1反射面(平面鏡)P3と、第2偏向部材80の第4反射面(平面鏡)P6は、中心面CL(或いは光軸BX2、BX3)に対して45°以外の角度に設定される。第1偏向部材70の第1反射面P3の中心面CL(或いは光軸BX2)に対する角度α°(絶対値)は、図6において、点Q1、交点Q2、第1軸AX1を通る直線と中心面CLとのなす角度をθ°としたとき、α°=45°+θ°/2の関係に定められる。同様に、第2偏向部材80の第4反射面P6の中心面CL(或いは光軸BX2)に対する角度β°(絶対値)は、基板支持ドラム25の外周面の周方向に関する投影領域PA内の中心点を通る投影光束EL2の主光線と中心面CLとのZX面内での角度をε°としたとき、β°=45°+ε°/2の関係に定められる。
<照明光学系及び投影光学系の構成>
さらに、図4と共に、図6及び図7を参照し、第1実施形態の露光装置U3の照明光学系IL及び投影光学系PLの構成について詳細に説明する。
上記したように、図4に示す照明光学系ILは、照明光学モジュールILMを有し、投影光学系PLは、投影光学モジュールPLMを有し、照明光学系IL及び投影光学系PLは、偏光ビームスプリッタPBS及び1/4波長板41を共有している。照明光学モジュールILM及び偏光ビームスプリッタPBSは、中心面CLが延在する方向(Z方向)において、マスクMと投影光学モジュールPLMとの間に設けられている。具体的に、偏光ビームスプリッタPBSは、Z方向において、マスクMと投影光学モジュールPLMの第1偏向部材70との間に設けられ、X方向において、中心面CLと照明光学モジュールILMとの間に設けられる。また、照明光学モジュールILMは、Z方向において、マスクMと投影光学モジュールPLMの第1レンズ群71との間に設けられ、X方向において、偏光ビームスプリッタPBSを挟んで中心面CL側の反対側に設けられる。
ここで、図7を参照し、照明光学モジュールILMを配置可能な配置領域Eについて説明する。XZ面内における配置領域Eは、第1ラインL1と、第2ラインL2と、第3ラインL3とで区画された領域である。第2ラインL2は、マスクMで反射された投影光束EL2の主光線(例えば図5A中の点Q1を通る)である。第1ラインL1は、マスクMで反射された投影光束EL2の主光線とマスク面P1とが交わる交点(例えば図5A中の点Q1)における、マスク面P1の接線(接面)である。第3ラインL3は、投影光学モジュールPLMと空間的に干渉しないように、第1光学系61の第2光軸BX2と平行に設定される線である。照明光学モジュールILMは、第1ラインL1、第2ラインL2及び第3ラインL3で囲まれた配置領域E内に配置される。マスクMを円筒とした場合、図7のように、第3ラインL3と第1ラインL1のZ方向の間隔が中心面CLから離れるに従って大きくなるように、第1ラインL1を傾けることができる。その為、照明光学モジュールILMの設置が容易になる。
また、照明光学モジュールILMは、照明光学モジュールILMから偏光ビームスプリッタPBSの偏光膜93に入射する照明光束EL1の主光線の入射角βによっても、その配置が規定される。図6に示すように、照明領域IRで反射された投影光束EL2の主光線(例えば図5A中の点Q1を通る)と中心面CLとが為す角度をθとする。このとき、照明光学モジュールILMは、偏光ビームスプリッタPBSの偏光膜93に入射する照明光束EL1の主光線の入射角β(後述ではθ1として説明している)が、45°×0.8≦β≦(45°+θ/2)×1.2の範囲内となるように配置される。つまり、この入射角βの角度範囲は、偏光ビームスプリッタPBSの偏光膜93に適した入射角βで照明光束EL1を入射させつつも、マスクM及び投影光学モジュールPLMに物理的に干渉しないように照明光学モジュールILMを配置可能な範囲となっている。なお、上記の入射角βの角度範囲は、照明光束EL1の開口数(NA)で決まる角度分布も考慮して決められるが、45°≦β≦(45°+θ/2)がより好ましい。また、最適となる入射角βは、照明光学モジュールILMの第1光軸BX1が投影光学モジュールPLMの第2光軸BX2と平行となった状態において、偏光ビームスプリッタPBSの偏光膜93に照明光束EL1を入射させたときの入射角である。
偏光ビームスプリッタPBSは、偏光膜93を挟んで接合される2つの三角プリズム(例えば石英製)91、92で構成される。照明光学モジュールILMからの照明光束EL1を入射するプリズム(第1プリズム)91の入射面は、照明光学モジュールILMの光軸BX1と垂直に設定され、照明光束EL1をマスクMに向けて射出する面は、投影光束EL2の主光線(例えば図5A中の点Q1と回転中心軸(第1軸)AX1とを結ぶ線)と垂直に設定される。また、マスクMからの投影光束EL2を、プリズム91、偏光膜93を介して投影光学モジュールPLMに向けて透過するプリズム(第2プリズム)92の射出面も、投影光束EL2の主光線(例えば図5A中の点Q1と回転中心軸AX1とを結ぶ線)と垂直に設定される。従って、偏光ビームスプリッタPBSは、テレセントリックな主光線を持つ投影光束EL2に対して、一定の厚みを有する光学平行平板となっている。
図4に示すように、照明光学モジュールILMは、偏光ビームスプリッタPBS側において、投影光学モジュールPLMと物理的に干渉し易くなるため、照明光学モジュールILMに含まれる各種レンズ(第1レンズ)の一部を切り欠いている。なお、第1実施形態では、照明光学モジュールILMの各種レンズの一部を切り欠いた場合について説明するが、この構成に限らない。つまり、投影光学モジュールPLMも、偏光ビームスプリッタPBS側において、照明光学モジュールILMと物理的に干渉し易くなるため、投影光学モジュールPLMに含まれる各種レンズ(第2レンズ)の一部を切り欠いてもよい。従って、照明光学モジュールILM及び投影光学モジュールPLMの両方に含まれる各種レンズの一部を切り欠いてもよい。しかしながら、一般に、照明光学モジュールILMは、投影光学モジュールPLMに比して要求される光学的な精度が低いため、照明光学モジュールILMの各種レンズの一部を切り欠くことが、簡単で好ましい。
照明光学モジュールILMは、偏光ビームスプリッタPBS側に設けられた複数のリレーレンズ56の一部が切り欠かれている。複数のリレーレンズ56は、照明光束EL1の入射側から順に、第1リレーレンズ56a、第2リレーレンズ56b、第3リレーレンズ56c、第4リレーレンズ56dとなっている。第4リレーレンズ56dは、偏光ビームスプリッタPBSに隣接して設けられている。第3リレーレンズ56cは、第4リレーレンズ56dに隣接して設けられている。第2リレーレンズ56bは、第3リレーレンズ56cに所定の間隔を空けて設けられており、第2リレーレンズ56bと第3リレーレンズ56cとの間は、第2リレーレンズ56bと第1リレーレンズ56aとの間に比して長くなっている。第1リレーレンズ56aは、第2リレーレンズ56bに隣接して設けられている。偏光ビームスプリッタPBSに遠い側の第1リレーレンズ56a及び第2リレーレンズ56bは、光軸を中心として円形に形成されている。一方、偏光ビームスプリッタPBSに近い側の第3リレーレンズ56c及び第4リレーレンズ56dは、円形の一部を切り欠いた形状になっている。
第3リレーレンズ56c及び第4リレーレンズ56dに照明光束EL1が入射すると、第3リレーレンズ56c及び第4リレーレンズ56dには、照明光束EL1が入射する入射領域S2と、照明光束EL1が入射しない非入射領域S1とが形成される。第3リレーレンズ56c及び第4リレーレンズ56dは、非入射領域S1の一部を欠損して形成することで、円形の一部を切り欠いた形状に形成される。具体的に、第3リレーレンズ56c及び第4リレーレンズ56dは、XZ面内において第1光軸BX1に直交する直交方向の両側を、直交方向に垂直な面で切った形状となっている。このため、第3リレーレンズ56c及び第4リレーレンズ56dは、第1光軸BX1上から見ると、略楕円形、略長円形状、略小判形等を含む形状となっている。
ここで、図4中の偏光ビームスプリッタPBSに最も近い第4リレーレンズ56dの外形の一例を、図5Bを参照して説明する。この図5Bは、偏光ビームスプリッタPBS側から第4リレーレンズ56dを見たもので、照明光束EL1が通る入射領域S2を挟んで、Z方向の上下に照明光束EL1が通らない非入射領域S1が存在する。第4リレーレンズ56dは、所定直径の円形レンズとして製造された後、非入射領域S1に相当する部分をカットして作られる。
その円形レンズの直径は、マスクM上の照明領域IRの大きさ、ワーキングディスタンス、照明光束EL1の開口数(NA)、及び図5Aで説明した照明光束EL1の主光線の非テレセンの度合に応じて決められる。図5Bにおいて、マスクM上に設定される照明領域IR(ここでは光軸BX1が通る点Q1を中心としたY方向を長辺とする長方形とする)の四隅に着目する。その四隅のひとつの点をFFaとすると、照明領域IR中の点FFaは、第4リレーレンズ56dを通る照明光束EL1のうち、ほぼ円形の部分照明光束EL1aによって照射される。部分照明光束EL1aの第4リレーレンズ56d上での円形分布の寸法は、ワーキングディスタンス(焦点距離)や照明光束EL1の開口数(NA)で決まる。
また、図5Aで説明したように、マスクM上での照明光束EL1の各主光線は、XZ面内では非テレセントリックな状態となるので、マスクM上の点FFaを通る部分照明光束EL1aの主光線は、第4リレーレンズ56d上では、Z方向に一定量シフトすることになる。このように、照明領域IRの四隅(及び外縁上)の各点を照射する部分照明光束の第4リレーレンズ56d上での分布の全てを重畳したものが、第4リレーレンズ56d上の入射領域S2に分布する照明光束EL1となる。従って、照明光束EL1の第4リレーレンズ56d上での分布(広がり)を、照明光束EL1のXZ面内での非テレセントリックな状態も加味して求め、入射領域S2(照明光束EL1の分布領域)をカバーする大きさとなるように、第4リレーレンズ56dの形状と寸法を決めれば良い。
第4リレーレンズ56dと同様に、図4中の他のレンズ56c、又はレンズ56a、56bについても、実質的な照明光束EL1の分布領域を考慮して、それをカバーする大きさとなるように、レンズの外形と寸法を決めることができる。
一般に、パワー(屈折力)を持つ高精度なレンズは、光学ガラスや石英等の円形の硝材の表面を研磨して作られるが、初めから、例えば図5Bのようにして決められた入射領域S2に相当する大きさの略小判形、略楕円形、略長円形状、又は略長方形の硝材を用意し、その表面を研磨して所望のレンズ面を形成しても良い。その場合は、非入射領域S1に相当する部分をカットする工程が不要となる。
<偏光ビームスプリッタ>
次に、第1実施形態の露光装置U3に設けられた偏光ビームスプリッタPBSの構成について、図6、図8から図11を参照して説明する。図8は、第1実施形態の偏光ビームスプリッタの偏光膜周りの構成を示す図である。図9は、第1実施形態に対する比較例の偏光ビームスプリッタの偏光膜周りの構成を示す図である。図10は、図8に示す偏光ビームスプリッタの透過特性及び反射特性を示すグラフである。図11は、図9に示す偏光ビームスプリッタの透過特性及び反射特性を示すグラフである。
図6に示すように、偏光ビームスプリッタPBSは、第1プリズム91と、第2プリズム92と、第1プリズム91及び第2プリズム92の間に設けられた偏光膜93とを有している。第1プリズム91及び第2プリズム92は、石英ガラスで構成され、XZ面内において異なる三角形状の三角プリズムとなっている。そして、偏光ビームスプリッタPBSは、三角形状の第1プリズム91と第2プリズム92とが偏光膜93を挟んで接合されることで、XZ面内において四角形状となる。
第1プリズム91は、照明光束EL1及び投影光束EL2が入射する側のプリズムである。第1プリズム91は、照明光学モジュールILMからの照明光束EL1が入射する第1面D1と、マスクMからの投影光束EL2が入射する第2面D2とを有している。第1面D1は、照明光束EL1の主光線に対して垂直面となっている。また、第2面D2は、投影光束EL2の主光線に対して垂直面となっている。
第2プリズム92は、偏光膜93を透過する投影光束EL2が出射する側のプリズムである。第2プリズム92は、第1プリズム91の第1面D1に対向する第3面D3と、第1プリズム91の第2面D2に対向する第4面D4とを有している。第4面D4は、第1プリズム91に入射した投影光束EL2が偏光膜93を透過して出射する面となっており、出射する投影光束EL2の主光線に対して垂直面となっている。このとき、第1面D1は、対向する第3面D3と非平行となる一方で、第2面D2は、対向する第4面D4と平行となる。
偏光膜93には、第1プリズム91から第2プリズム92へ向かう照明光束EL1が入射する。偏光膜93は、S偏光(直線偏光)の照明光束EL1を反射し、P偏光(直線偏光)の投影光束EL2を透過する。偏光膜93は、主成分が二酸化ケイ素(SiO2)の膜体と、主成分が酸化ハフニウム(HfO2)の膜体とを膜厚方向に積層して形成されている。酸化ハフニウムは、石英と同等に光束の吸収が少ない材料であり、光束の吸収による変化が生じ難い材料である。この偏光膜93は、所定のブリュースター角θBとなる膜になっている。ここで、ブリュースター角θBは、P偏光の反射率がゼロとなる角である。
ブリュースター角θBは、下記の式から算出される。なお、nhは、酸化ハフニウムの屈折率であり、nLは、二酸化ケイ素の屈折率であり、nsは、プリズム(石英ガラス)の屈折率である。
θB=arcsin([(nh2×nL2)/{ns2(nh2+nL2)}]0.5)
ここで、nh=2.07(HfO2)、nL=1.47(SiO2)、ns=1.47(石英ガラス)、とすると、上記の式から、偏光膜93のブリュースター角θBは、略54.6°になる。
但し、各材料の屈折率nh、nL、nsは、上記数値に一義的に限定されるものではない。屈折率は、概ね紫外から可視光までの使用波長に対して変化し、多少の範囲を持つ。また、各種材料に若干の添加を行なうことによって屈折率が変化する場合もある。例えば、酸化ハフニウムの屈折率nhは、2.00〜2.15の範囲、二酸化ケイ素の屈折率nLは、1.45〜1.48の範囲に分布する。また使用波長により屈折が変化することを考慮すると、プリズム(石英ガラス)の屈折率nsも変化することになる。屈折率nsは上記SiO2と同様に1.45〜1.48の範囲にあるとすると、上記の式から導かれる偏光膜93のブリュースター角θBは、52.4°〜57.3°の範囲を持つことになる。
このように、各材料の屈折率nh、nL、nsが材料組成や使用波長によって若干変わることから、ブリュースター角θBも変わり得るが、以下の具体例では、θB=54.6°として説明する。
このとき、図6に示すように補助線(点線)L1を引くと、偏光膜93と第1面D1とのなす角度θ2は、偏光膜93に入射する照明光束EL1の主光線の入射角θ1と同じ角度になることが分かる。つまり、第1プリズム91は、第1面D1と偏光膜93とがなす角度θ2が、照明光束EL1の主光線の入射角θ1と同じ角度となるように形成される。
尚、図6では、照明光束EL1を偏光膜93で反射させ、マスクMからの反射光(投影光束EL2)は偏光膜93を透過させるように、偏光ビームスプリッタPBSを構成したが、偏光膜93に対する照明光束EL1と投影光束EL2の反射・透過特性は逆にしても良い。即ち、照明光束EL1は偏光膜93を透過させ、マスクMからの反射光(投影光束EL2)は偏光膜93で反射させるようにしても良い。そのような実施形態については後述する。
図8に示すように、偏光膜93は、第1プリズム91と第2プリズム92とを結ぶ方向が膜厚方向となっている。偏光膜93は、二酸化ケイ素の第1膜体H1と酸化ハフニウムの第2膜体H2とを有しており、第1膜体H1と第2膜体H2とが膜厚方向に積層されている。具体的に、偏光膜93は、第1膜体H1と第2膜体H2とからなる層体Hを、膜厚方向に周期的に複数積層した周期層となっている。ここで、偏光膜93に入射する照明光束EL1の主光線の入射角θ1が54.6°のブリュースター角θBとなる場合、偏光膜93は、層体Hを18周期以上30周期以下とした周期層に形成される。層体Hは、照明光束EL1の波長λに対してλ/4波長となる膜厚の第1膜体H1と、第1膜体H1を挟んで膜厚方向の両側に設けられ、照明光束EL1の波長λに対してλ/8波長となる膜厚の一対の第2膜体H2とを含んで構成される。このように構成された層体Hは、膜厚方向に複数積層されることで、層体Hの各第2膜体H2が、隣接する層体Hの各第2膜体H2と一体になり、λ/4波長の膜厚となる第2膜体H2が形成される。このため、偏光膜93は、膜厚方向の両側の膜体が、λ/8波長の膜厚となる一対の第2膜体H2となり、λ/8波長の膜厚となる一対の第2膜体H2の間において、λ/4波長の膜厚となる第1膜体H1とλ/4波長の膜厚となる第2膜体H2とが交互に設けられる。
また、偏光膜93は、接着剤またはオプティカルコンタクトによって、第1プリズム91及び第2プリズム92の間に固定される。例えば、偏光ビームスプリッタPBSは、第1プリズム91上に偏光膜93が形成された後、接着剤を介して第2プリズム92が偏光膜93上に接合して形成される。
次に、図10を参照して、上記の偏光ビームスプリッタPBSの透過特性及び反射特性について説明する。図10では、偏光ビームスプリッタPBSの偏光膜93に入射する照明光束EL1の主光線の入射角θ1を、54.6°のブリュースター角θBとし、偏光膜93は、21周期層とし、照明光束EL1は、第3(3倍)高調波のYAGレーザを用いている。図10に示すグラフは、その横軸が入射角θ1となっており、その縦軸が、透過率・反射率となっている。図10に示すグラフにおいて、Rsは、偏光膜93に入射するS偏光の反射光束であり、Rpは、偏光膜93に入射するP偏光の反射光束であり、Tsは、偏光膜93に入射するS偏光の透過光束であり、Tpは、偏光膜93に入射するP偏光の透過光束である。
ここで、偏光ビームスプリッタPBSの偏光膜93は、S偏光の反射光束(照明光束)を反射し、P偏光の透過光束(投影光束)を透過する構成となっていることから、反射光束Rsの反射率が高く、透過光束Tpの透過率が高い膜特性が優れた偏光膜93となる。換言すれば、反射光束Rpの反射率が低く、透過光束Tsの透過率が低い膜特性が優れた偏光膜となる。図10において、最適に使用可能な偏光膜93の透過率・反射率の範囲は、54.6°のブリュースター角θBにおける反射光束Rsの反射率及び透過光束Tpの透過率に対し、透過率・反射率が−5%の低下を許容する範囲である。つまり、ブリュースター角θBにおける透過率・反射率は100%であることから、反射光束Rsの反射率及び透過光束Tpの透過率が95%以上となる範囲が、最適に使用できる偏光膜93の透過率・反射率の範囲である。図10に示す場合では、反射光束Rsの反射率及び透過光束Tpの透過率が95%以上となる範囲において、入射角θ1の範囲は、46.8°以上61.4°以下となる。
以上から、図10では、偏光ビームスプリッタPBSの偏光膜93に入射する照明光束EL1の主光線の入射角θ1を、54.6°のブリュースター角θBとした場合、照明光束EL1の主光線以外の光線の入射角の範囲を、46.8°以上61.4°以下とすることができるため、偏光膜93に入射させる照明光束EL1の入射角の角度範囲を14.6°の範囲にできることが分かる。
従って、露光装置U3の照明光学モジュールILMは、偏光ビームスプリッタPBSの偏光膜93に入射する照明光束EL1の入射角θ1の角度範囲が、46.8°以上61.4°以下になると共に、照明光束EL1の主光線が54.6°のブリュースター角θBになるように、照明光束EL1を出射できる。
次に、図9を参照し、図8に示す第1実施形態の偏光ビームスプリッタPBSに対する比較例としての偏光ビームスプリッタPBSについて説明する。比較例となる偏光ビームスプリッタPBSは、第1実施形態と略同様の構成となっており、第1プリズム91と、第2プリズム92と、第1プリズム91及び第2プリズム92の間に設けられた偏光膜100とを有している。第1プリズム91及び第2プリズム92は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
比較例となる偏光ビームスプリッタPBSの偏光膜100には、偏光膜100に入射する照明光束EL1の主光線が45°の入射角θ1になるような膜となっている。具体的に、偏光膜100に入射する照明光束EL1の主光線が45°の入射角θ1となる場合、偏光膜100は、第1実施形態と同様の層体Hを膜厚方向に31周期以上40周期以下とした周期層となっている。
次に、図11を参照して、比較例の偏光ビームスプリッタPBSの透過特性及び反射特性について説明する。図11では、偏光ビームスプリッタPBSの偏光膜100に入射する照明光束EL1の主光線の入射角θ1を、45°の入射角とし、偏光膜100は、33周期層とし、照明光束EL1は、第3(3倍)高調波のYAGレーザを用いている。図11に示すグラフは、図10と同様に、その横軸が入射角、その縦軸が透過率・反射率、Rsが偏光膜100に入射するS偏光の反射光束、Rpが偏光膜100に入射するP偏光の反射光束、Tsが偏光膜100に入射するS偏光の透過光束、Tpが偏光膜100に入射するP偏光の透過光束である。
図11において、最適に使用可能な偏光膜100の透過率・反射率の範囲は、反射光束Rsの反射率及び透過光束Tpの透過率が95%以上となる範囲である。図11に示す場合では、反射光束Rsの反射率及び透過光束Tpの透過率が95%以上となる範囲において、入射角θ1の範囲は、41.9°以上48.7°以下となる。
以上から、図11では、偏光ビームスプリッタPBSの偏光膜100に入射する照明光束EL1の主光線の入射角θ1を、45°とした場合、照明光束EL1の主光線以外の光線の入射角θ1の角度範囲を、41.9°以上48.7°以下とすることができるため、偏光膜100に入射させる照明光束EL1の入射角θ1の角度範囲を6.8°の範囲にできることが分かる。よって、図8に示す偏光ビームスプリッタPBSは、図9に示す偏光ビームスプリッタPBSに比して、照明光束EL1の入射角θ1の角度範囲を、2倍程度広くすることができる。
<デバイス製造方法>
次に、図12を参照して、デバイス製造方法について説明する。図12は、第1実施形態のデバイス製造方法を示すフローチャートである。
図12に示すデバイス製造方法では、まず、例えば有機EL等の自発光素子による表示パネルの機能・性能設計を行い、必要な回路パターンや配線パターンをCAD等で設計する(ステップS201)。次いで、CAD等で設計された各種レイヤー毎のパターンに基づいて、必要なレイヤー分のマスクMを製作する(ステップS202)。また、表示パネルの基材となる可撓性の基板P(樹脂フィルム、金属箔膜、プラスチック等)が巻かれた供給用ロールFR1を準備しておく(ステップS203)。なお、このステップS203にて用意しておくロール状の基板Pは、必要に応じてその表面を改質したもの、下地層(例えばインプリント方式による微小凹凸)を事前形成したもの、光感応性の機能膜や透明膜(絶縁材料)を予めラミネートしたもの、でも良い。
次いで、基板P上に表示パネルデバイスを構成する電極や配線、絶縁膜、TFT(薄膜半導体)等によって構成されるバックプレーン層を形成すると共に、そのバックプレーンに積層されるように、有機EL等の自発光素子による発光層(表示画素部)が形成される(ステップS204)。このステップS204には、先の各実施形態で説明した露光装置U3を用いて、フォトレジスト層を露光する従来のフォトリソグラフィ工程も含まれるが、フォトレジストの代わりに感光性シランカップリング材を塗布した基板Pをパターン露光して表面に親撥水性によるパターンを形成する露光工程、光感応性の触媒層をパターン露光し無電解メッキ法によって金属膜のパターン(配線、電極等)を形成する湿式工程、或いは、銀ナノ粒子を含有した導電性インク等によってパターンを描画する印刷工程、等による処理も含まれる。
次いで、ロール方式で長尺の基板P上に連続的に製造される表示パネルデバイス毎に、基板Pをダイシングしたり、各表示パネルデバイスの表面に、保護フィルム(対環境バリア層)やカラーフィルターシート等を貼り合せたりして、デバイスを組み立てる(ステップS205)。次いで、表示パネルデバイスが正常に機能するか、所望の性能や特性を満たしているかの検査工程が行なわれる(ステップS206)。以上のようにして、表示パネル(フレキシブル・ディスプレー)を製造することができる。
以上、第1実施形態は、偏光ビームスプリッタPBSを用いた落射照明となる照明光学系ILにおいて、偏光ビームスプリッタPBSにより照明光束EL1を反射し、投影光束EL2を透過する場合、偏光ビームスプリッタPBSを照明光学系IL及び投影光学系PLで共有し、照明光学モジュールILM内の少なくとも偏光ビームスプリッタPBSに近いレンズ素子の外形を、照明光束EL1の分布に応じた形状に設定することにより、照明光学モジュールILM及び偏光ビームスプリッタPBSを、マスクMと投影光学モジュールPLMとの間に設けることができる。このため、照明光学系IL及び投影光学系PLの物理的な干渉、特に、照明光学モジュールILMと投影光学モジュールPLMとの物理的な干渉条件を緩和し、照明光学モジュールILMと偏光ビームスプリッタPBSとの配置の自由度、投影光学モジュールPLMと偏光ビームスプリッタPBSとの配置の自由度を高められ、照明光学系IL及び投影光学系PLを容易に配置することが可能となる。
また、第1実施形態は、偏光ビームスプリッタPBSに隣接する第4リレーレンズ56dや第3リレーレンズ56cが、実質的に照明光束EL1が通る部分(入射領域S2)を含み、実質的に照明光束EL1が通らない部分(非入射領域S1)の無いレンズ外形とした為、コンパクトな照明光学モジュールILMとしつつも、照明光束EL1をほとんどロスすることなく、照明領域IRの照明条件(テレセン性、照度均一性等)を高精度に維持しつつ、照明光学モジュールILM及び投影光学モジュールPLMの配置の自由度を高めることができる。
なお、第1実施形態では、照明光学モジュールILMに含まれるレンズの一部を欠損させて外形を小さくしたが、投影光学モジュールPLMに含まれるレンズの一部を欠損させて外形を小さくしてもよい。この場合も、照明光学モジュールILMと同様に、偏光ビームスプリッタPBSに近い側のレンズ、例えば、第1レンズ群71の第1偏向部材70側にあるレンズの一部を欠損させて外形を小さくすることができる。
また、第1実施形態は、偏光ビームスプリッタPBSの偏光膜93を、二酸化ケイ素の第1膜体H1と酸化ハフニウムの第2膜体H2とを膜厚方向に積層して形成することができる。このため、偏光膜93は、偏光膜93に入射するS偏光の反射光束(照明光束)の反射率、及び偏光膜93に入射するP偏光の透過光束(投影光束)の透過率を高いものとすることができる。これにより、偏光ビームスプリッタPBSは、i線以下の波長となるエネルギー密度の高い照明光束EL1が偏光膜93に入射した場合であっても、偏光膜93に加わる負荷を抑制することができ、反射光束と透過光束とに好適に分離することができる。
また、第1実施形態は、偏光膜93を、偏光膜93に入射する照明光束EL1の主光線の入射角θ1が54.6°のブリュースター角θBとなる膜に形成することができる。換言すれば、偏光膜93に入射する照明光束EL1の主光線を54.6°のブリュースター角θBとすることで、偏光膜93に入射する照明光束EL1の入射角θ1の角度範囲を、46.8°以上61.4°以下にすることができる。このため、偏光膜93に入射する照明光束EL1の入射角θ1の角度範囲を広くすることができる。これにより、照明光束EL1の入射角θ1の角度範囲を広くできる分、偏光ビームスプリッタPBSに隣接して設けられるレンズの開口数NAを大きくすることが可能となる。このため、開口数NAが大きいレンズを用いることが可能となることで、露光装置U3の解像度を高めることができ、基板Pに対し微細なマスクパターンを露光することが可能となる。
尚、偏光膜93を構成する材料(膜体)の屈折率のばらつきにより、第1実施形態における偏光膜93のブリュースター角θBは、52.4°〜57.3°の範囲を取り得る為、その範囲を考慮して、偏光膜93に入射する照明光束EL1の入射角θ1の角度範囲を設定すれば良い。
また、第1実施形態は、偏光ビームスプリッタPBSの第1面D1と第3面D3とを非平行にし、第2面D2と第4面D4とを平行にすることができる。また、第1実施形態は、第1面D1と偏光膜93とのなす角度θ2を、偏光膜93に入射する照明光束EL1の主光線の入射角θ1と同じにすることができる。このため、第1面D1に入射する照明光束EL1の主光線に対し、第1面D1を垂直面にすることができ、また、第2面D2に入射する投影光束EL2の主光線に対し、第2面D2を垂直面にすることができる。これにより、偏光ビームスプリッタPBSは、第1面D1における照明光束EL1の反射を抑制でき、また、第2面D2における投影光束EL2の反射を抑制できる。
また、第1実施形態は、所定の層体Hを膜厚方向に周期的に複数積層することで、周期層となる偏光膜93を形成することができる。このとき、一例として挙げた、照明光束EL1の主光線の入射角θ1が54.6°のブリュースター角θBとなる偏光膜93(図8)は、照明光束EL1の主光線の入射角θ1が45°となる偏光ビームスプリッタPBSの偏光膜100(図9)に比して、周期層を少なくすることができる。このため、図8の偏光膜93は、図9の偏光膜100に比して周期層が少ない分、簡易な構造にでき、偏光ビームスプリッタPBSの製造コストを低減することができる。
また、第1実施形態は、接着剤またはオプティカルコンタクトによって、偏光膜93を第1プリズム91と第2プリズム92との間に好適に固定できる。なお、第1実施形態において、偏光ビームスプリッタPBSと1/4波長板41とを、接着剤またはオプティカルコンタクトによって一体に固定してもよい。この場合、偏光ビームスプリッタPBSと1/4波長板41との相対的な位置ズレの発生を抑制できる。
また、第1実施形態は、照明光束EL1として、i線以下の波長を用いることができ、例えば、高調波レーザやエキシマレーザを用いることができるため、露光処理に適した照明光束EL1を用いることが可能となる。
また、第1実施形態は、偏光調整機構68により1/4波長板41の偏光方向を調整することで、投影領域PAの照度を調整することができるため、複数の投影領域PA1〜PA6の照度を均一にすることができる。
[第2実施形態]
次に、図13を参照して、第2実施形態の露光装置U3について説明する。なお、重複する記載を避けるべく、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明し、第1実施形態と同様の構成要素については、第1実施形態と同じ符号を付して説明する。図13は、第2実施形態の露光装置(基板処理装置)の全体構成を示す図である。第1実施形態の露光装置U3は、円筒状の反射型のマスクMを、回転可能なマスク保持ドラム21に保持する構成であったが、第2実施形態の露光装置U3は、平板状の反射型マスクMAを、移動可能なマスク保持機構11に保持する構成となっている。
第2実施形態の露光装置U3において、マスク保持機構11は、平面状のマスクMAを保持するマスクステージ110と、マスクステージ110を中心面CLと直交する面内でX方向に沿って走査移動させる移動装置(図示略)とを備える。
図13のマスクMAのマスク面P1は実質的にXY面と平行な平面であるので、マスクMAから反射された投影光束EL2の主光線は、XY面と垂直になる。このため、マスクMA上の各照明領域IR1〜IR6を照明する照明光学系IL1〜IL6からの照明光束EL1の主光線もXY面に対して垂直になるように配置される。
マスクMAで反射される投影光束EL2の主光線がXY面と垂直になる場合、投影光束EL2の主光線に応じて、配置領域Eを区画する第1ラインL1及び第2ラインL2も変化する。つまり、第2ラインL2は、マスクMAと投影光束EL2の主光線とが交わる交点からXY面に垂直な方向となり、第1ラインL1は、マスクMAと投影光束EL2の主光線とが交わる交点からXY面に平行な方向となる。このため、照明光学モジュールILMの配置は、配置領域Eの変更に伴って適宜変更され、照明光学モジュールILMの配置の変更に伴って、偏光ビームスプリッタPBSの配置も適宜変更される。
また、マスクMAから反射される投影光束EL2の主光線がXY面と垂直になる場合、投影光学モジュールPLMの第1光学系61に含まれる第1偏向部材70の第1反射面P3は、偏光ビームスプリッタPBSからの投影光束EL2を反射させ、反射させた投影光束EL2を第1レンズ群71を通って第1凹面鏡72に入射させる角度にされる。具体的に、第1偏向部材70の第1反射面P3は、第2光軸BX2(XY面)に対して実質的に45°に設定される。
また、第2実施形態においても、先の図2と同様に、XZ面内で見たとき、マスクMA上の照明領域IR1(及びIR3,IR5)の中心点から照明領域IR2(及びIR4,IR6)の中心点までの周長は、支持面P2に倣った基板P上の投影領域PA1(及びPA3,PA5)の中心点から第2投影領域PA2(及びPA4,PA6)の中心点までの周長と、実質的に等しく設定されている。
図13の露光装置U3においても、下位制御装置16が、マスク保持機構11の移動装置(走査露光用のリニアモータや微動用のアクチュエータ等)を制御し、基板支持ドラム25の回転と同期してマスクステージ110を駆動する。図13の露光装置U3では、マスクMAの+X方向への同期移動で走査露光を行なった後、−X方向の初期位置にマスクMAを戻す動作(巻戻し)が必要となる。そのため、基板支持ドラム25を一定速度で連続回転させて基板Pを等速で送り続ける場合、マスクMAの巻戻し動作の間、基板P上にはパターン露光が行なわれず、基板Pの搬送方向に関してパネル用パターンが飛び飛びに(離間して)形成されることになる。しかしながら、実用上、走査露光時の基板Pの速度(ここでは周速)とマスクMAの速度は50mm/s〜100mm/sと想定されていることから、マスクMAの巻戻しの際にマスクステージ110を、例えば500mm/sの最高速で駆動すれば、基板P上に形成されるパネル用パターン間の搬送方向に関する余白を狭くすることができる。
[第3実施形態]
次に、図14を参照して、第3実施形態の露光装置U3について説明する。なお、重複する記載を避けるべく、第1実施形態(又は第2実施形態)と異なる部分についてのみ説明し、第1実施形態(又は第2実施形態)と同様の構成要素については、第1実施形態(又は第2実施形態)と同じ符号を付して説明する。図14は、第3実施形態の露光装置(基板処理装置)の構成を示す図である。図14の露光装置U3は、先の各実施形態と同様に、反射型の円筒マスクMからの反射光(投影光束EL2)を、平面状に搬送される可撓性の基板P上に投影しつつ、円筒マスクMの回転による周速度と基板Pの搬送速度とを同期させる走査露光装置である。
第3実施形態の露光装置U3は、偏光ビームスプリッタPBSにおける照明光束EL1と投影光束EL2の反射・透過特性を逆にした場合の露光装置の一例となっている。図14において、照明光学モジュールILMの光軸BX1に沿って配置されるリレーレンズ56のうち、少なくとも最も偏光ビームスプリッタPBSに近いリレーレンズ56は、照明光束EL1が通らない部分(非入射領域S1)を無くした形状とすることにより、投影光学モジュールPLMとの空間的な干渉を避けてある。また、照明光学モジュールILMの光軸BX1の延長線は第1軸AX1(回転中心となる線)と交差する。
偏光ビームスプリッタPBSは、互いに平行な第2面D2と第4面D4とが、照明光学モジュールILMの光軸BX1(第1光軸)と垂直になるように配置され、第1面D1が投影光学モジュールPLMの光軸BX4(第4光軸)と垂直になるように配置される。光軸BX1と光軸BX4とのXZ面内での交差角度は、偏光膜93の先の図6の条件と同様であるが、ここでは投影光束EL2をブリュースター角θB(52.4°〜57.3°)で反射させるように、90°以外の角度に設定される。
本実施形態における偏光ビームスプリッタPBSの偏光膜93(波面分割面)は、二酸化ケイ素の第1膜体と酸化ハフニウムの第2膜体とを膜厚方向に複数積層して形成することができる。そのため、偏光膜93は、偏光膜93に入射するS偏光の反射率、及び偏光膜93に入射するP偏光の透過率を高いものとすることができる。これにより、偏光ビームスプリッタPBSは、i線以下の波長となるエネルギー密度の高い照明光束EL1が偏光膜93に入射した場合であっても、偏光膜93に加わる負荷を抑制することができ、反射光束と透過光束とに好適に分離することができる。偏光膜93を二酸化ケイ素の第1膜体H1と酸化ハフニウムの第2膜体H2との積層構造にすることは、先の第1実施形態、または第2実施形態で用いる偏光ビームスプリッタPBSにも同様に適用できる。
第3実施形態の場合、偏光ビームスプリッタPBSの第4面D4からは、P偏光の照明光束EL1が入射する。その為、照明光束EL1は、偏光膜93を透過して第2面D2から射出し、1/4波長板41を通って円偏光に変換されて、マスクMのマスク面P1上の照明領域IRに照射される。マスクMの回転に伴って、照明領域IR内に現れるマスクパターンから発生(反射)する投影光束EL2(円偏光)は、1/4波長板41によってS偏光に変換され、偏光ビームスプリッタPBSの第2面D2に入射する。S偏光となった投影光束EL2は、偏光膜93で反射されて、偏光ビームスプリッタPBSの第1面D1から投影光学モジュールPLMに向けて射出する。
本実施形態では、投影光束EL2のうち、マスクM上の照明領域IRの中心(点Q1)を通る主光線Lsが、投影光学モジュールPLMの光軸BX4から偏心した位置で、投影光学モジュールPLMの最初のレンズ系G1に入射する。投影光束EL2の広がり(開口数NA)が小さい場合、レンズ系G1のうち、投影光束EL2が実質的に通らない部分を無くした形状とすることによって、偏光ビームスプリッタPBSを円筒マスクMに近付けた場合に、投影光学モジュールPLMの一部(レンズ系G1)が、円筒マスクMや照明光学モジュールILMの一部(レンズ56)と空間的に干渉することが避けられる。
図14において、投影光学モジュールPLMは、レンズ系G1とレンズ系G2とを光軸BX4に沿って配置した全屈折系の投影光学系として説明するが、このような系に限られず、凹面、凸面、或いは平面のミラーとレンズとを組み合わせた反射屈折型の投影光学系であっても良い。また、レンズ系G1は全屈折系とし、レンズ系G2を反射屈折系としてもよく、マスク面P1上の照明領域IR内のパターンの像を、基板P上の投影領域PAに結像するときの倍率も、等倍(×1)以外の拡大や縮小の何れであっても良い。
図14では、基板Pを支持する基板支持部材PHを、平坦な表面として、その表面と基板Pの裏面との間に、数μm程度のエアベアリング層(気体軸受け)が形成されるような構成とし、基板Pの少なくとも投影領域PAを含む所定範囲内では、ニップ式の駆動ローラ等を用いて、基板Pに一定のテンションを付与して平坦にしつつ、基板Pを長尺方向(X方向)に送る搬送機構が設けられる。勿論、本実施形態でも、基板Pを先の図2に示したような基板支持ドラム25のような円筒体の一部に巻き付けて搬送する構成であっても良い。
また、図14のような、照明光学モジュールILM、偏光ビームスプリッタPBS、1/4波長板41、投影光学モジュールPLMで構成される露光ユニットを、マスクMの回転中心軸(第1軸)AX1の方向に複数設けて、マルチ化する場合は、マスクMの回転中心線である第1軸AX1を含み、ZY面と平行な中心面CLを挟んで対称的に露光ユニットを配置すれば良い。
以上の第3実施形態では、酸化ハフニウムの膜体と二酸化ケイ素の膜体との積層構造による偏光膜(多層膜)93を備えた偏光ビームスプリッタPBSを使うことによって、照明光束EL1として紫外波長域の高輝度のレーザ光を使う場合でも、高解像のパターン露光を安定的に継続することができる。このような偏光膜93を備えた偏光ビームスプリッタPBSは、先の第1実施形態、第2実施形態でも同様に利用可能である。
[第4実施形態]
次に、図15を参照して、第4実施形態の露光装置U3について説明する。なお、重複する記載を避けるべく、第1実施形態(から第3実施形態)と異なる部分についてのみ説明し、第1実施形態(から第3実施形態)と同様の構成要素については、第1実施形態(から第3実施形態)と同じ符号を付して説明する。図15は、第4実施形態の露光装置(基板処理装置)の全体構成を示す図である。第1実施形態の露光装置U3は、円筒状の反射型のマスクMを、回転可能なマスク保持ドラム21に保持する構成であったが、第4実施形態の露光装置U3は、平板状の反射型のマスクMAを、移動可能なマスク保持機構11に保持する構成となっている。
第4実施形態の露光装置U3において、マスク保持機構11は、平面状のマスクMAを保持するマスクステージ110と、マスクステージ110を中心面CLと直交する面内でX方向に沿って走査移動させる移動装置(図示略)とを備える。
図15のマスクMAのマスク面P1は実質的にXY面と平行な平面であるので、マスクMAから反射された投影光束EL2の主光線は、XY面と垂直になる。このため、マスクMA上の各照明領域IR1〜IR6を照明する照明光学系IL1〜IL6からの照明光束EL1の主光線もXY面に対して垂直になるように配置される。
マスクMAに照明される照明光束EL1の主光線がXY面と垂直になる場合、偏光ビームスプリッタPBSは、偏光膜93に入射する照明光束EL1の主光線の入射角θ1がブリュースター角θB(52.4°〜57.3°)となり、偏光膜93で反射した照明光束EL1の主光線がXY面と垂直になるように配置される。この偏光ビームスプリッタPBSの配置の変更に伴って、照明光学モジュールILMの配置も適宜変更される。
また、マスクMAから反射される投影光束EL2の主光線がXY面と垂直になる場合、投影光学モジュールPLMの第1光学系61に含まれる第1偏向部材70の第1反射面P3は、偏光ビームスプリッタPBSからの投影光束EL2を反射させ、反射させた投影光束EL2を第1レンズ群71を通って第1凹面鏡72に入射させる角度にされる。具体的に、第1偏向部材70の第1反射面P3は、第2光軸BX2(XY面)に対して実質的に45°に設定される。
また、第4実施形態においても、先の図2と同様に、XZ面内で見たとき、マスクMA上の照明領域IR1(及びIR3,IR5)の中心点から照明領域IR2(及びIR4,IR6)の中心点までの周長は、支持面P2に倣った基板P上の投影領域PA1(及びPA3,PA5)の中心点から投影領域PA2(及びPA4,PA6)の中心点までの周長と、実質的に等しく設定されている。
図15の露光装置U3においても、下位制御装置16が、マスク保持機構11の移動装置(走査露光用のリニアモータや微動用のアクチュエータ等)を制御し、基板支持ドラム25の回転と同期してマスクステージ110を駆動する。図15の露光装置U3では、マスクMAの+X方向への同期移動で走査露光を行なった後、−X方向の初期位置にマスクMAを戻す動作(巻戻し)が必要となる。そのため、基板支持ドラム25を一定速度で連続回転させて基板Pを等速で送り続ける場合、マスクMAの巻戻し動作の間、基板P上にはパターン露光が行なわれず、基板Pの搬送方向に関してパネル用パターンが飛び飛びに(離間して)形成されることになる。しかしながら、実用上、走査露光時の基板Pの速度(ここでは周速)とマスクMAの速度は50mm/s〜100mm/sと想定されていることから、マスクMAの巻戻しの際にマスクステージ110を、例えば500mm/sの最高速で駆動すれば、基板P上に形成されるパネル用パターン間の搬送方向に関する余白を狭くすることができる。
[第5実施形態]
次に、図16を参照して、第5実施形態の露光装置U3について説明する。なお、重複する記載を避けるべく、第1実施形態(から第4実施形態)と異なる部分についてのみ説明し、第1実施形態(から第4実施形態)と同様の構成要素については、第1実施形態(から第4実施形態)と同じ符号を付して説明する。図16は、第5実施形態の露光装置(基板処理装置)の構成を示す図である。第5実施形態の露光装置U3は、偏光ビームスプリッタPBSにおける照明光束EL1と投影光束EL2の反射・透過特性を逆にした場合の露光装置の一例となっている。図16において、照明光学モジュールILMの光軸BX1に沿って配置されるリレーレンズ56のうち、少なくとも最も偏光ビームスプリッタPBSに近いリレーレンズ56は、照明光束EL1が通らない部分を切り欠くことにより、投影光学モジュールPLMとの空間的な干渉を避けてある。また、照明光学モジュールILMの光軸BX1の延長線は第1軸AX1(回転中心となる線)と交差する。
偏光ビームスプリッタPBSは、互いに平行な第2面D2と第4面D4とが、照明光学モジュールILMの光軸BX1(第1光軸)と垂直になるように配置され、第1面D1が投影光学モジュールPLMの光軸BX4(第4光軸)と垂直になるように配置される。光軸BX1と光軸BX4とのXZ面内での交差角度は、偏光膜93の先の図6の条件と同様であり、ここでは投影光束EL2をブリュースター角θB(52.4°〜57.3°)で反射させるように、90°以外の角度に設定される。
本実施形態の場合、偏光ビームスプリッタPBSの第4面D4からは、P偏光の照明光束EL1が入射する。その為、照明光束EL1は、偏光膜93を透過して第2面D2から射出し、1/4波長板41を通って円偏光に変換されて、マスクMのマスク面P1上の照明領域IRに照射される。マスクMの回転に伴って、照明領域IR内に現れるマスクパターンから発生(反射)する投影光束EL2(円偏光)は、1/4波長板41によってS偏光に変換され、偏光ビームスプリッタPBSの第2面D2に入射する。S偏光となった投影光束EL2は、偏光膜93で反射されて、偏光ビームスプリッタPBSの第1面D1から投影光学モジュールPLMに向けて射出する。
本実施形態では、投影光束EL2のうち、マスクM上の照明領域IRの中心を通る主光線Lsが、投影光学モジュールPLMの光軸BX4から偏心した位置で、投影光学モジュールPLMの最初のレンズ系G1に入射する。投影光束EL2の広がり(開口数NA)が小さい場合、レンズ系G1のうち、投影光束EL2が通らない部分を切り欠くことによって、照明光学モジュールILMのレンズ56との空間的な干渉を避けることができる。
図16において、投影光学モジュールPLMは、レンズ系G1とレンズ系G2とを光軸BX4に沿って配置した全屈折系の投影光学系として説明するが、このような系に限られず、凹面、凸面、或いは平面のミラーとレンズとを組み合わせた反射屈折型の投影光学系であっても良い。また、レンズ系G1は全屈折系とし、レンズ系G2を反射屈折系としてもよく、マスク面P1上の照明領域IR内のパターンの像を、基板P上の投影領域PAに結像するときの倍率も、等倍(×1)以外の拡大や縮小の何れであっても良い。
図16では、基板Pを支持する基板支持部材PHを、平坦な表面として、その表面と基板Pの裏面との間に、数μm程度のエアベアリング層(気体軸受け)が形成されるような構成とし、基板Pの少なくとも投影領域PAを含む所定範囲内では、基板Pに一定のテンションを付与して平坦にしつつ、基板Pを長尺方向(X方向)に送る搬送機構が設けられる。勿論、本実施形態でも、基板Pを先の図2に示したような基板支持ドラム25のような円筒体の一部に巻き付けて搬送する構成であっても良い。
また、図16のような、照明光学モジュールILM、偏光ビームスプリッタPBS、1/4波長板41、投影光学モジュールPLMで構成される露光ユニットを、マスクMの回転中心軸(第1軸)AX1の方向に複数設けて、マルチ化する場合は、マスクMの回転中心線である第1軸AX1を含み、ZY面と平行な中心面CLを挟んで対称的に露光ユニットを配置すれば良い。
以上の第5実施形態のような露光装置U3であっても、酸化ハフニウムの膜体と二酸化ケイ素の膜体との積層構造による偏光膜(多層膜)93を備えた偏光ビームスプリッタPBSを使うことによって、照明光束EL1として紫外波長域の高輝度のレーザ光を使う場合でも、高解像のパターン露光を安定的に継続することができる。
以上の各実施形態で説明した露光装置U3は、予め決まったマスクパターンを平面状又は円筒状に固定したマスクMを使うものとしたが、可変のマスクパターンを投影露光する装置、例えば、特許第4223036号に開示されたマスクレス露光装置のビームスプリッタとして、同様に利用可能である。
そのマスクレス露光装置は、ビームスプリッタで反射された露光用の照明光を受けるプログラム可能なミラー・アレーと、このミラー・アレーでパターン化されたビーム(反射光束)を、ビームスプリッタと投影システム(マイクロレンズアレーを含むこともある)とを介して、基板上に投影するような構成となっている。このようなマスクレス露光装置のビームスプリッタとして、先の図8に示したような偏光ビームスプリッタPBSを用いると、照明光として紫外波長域の高輝度のレーザ光を使っても、高解像のパターン露光を安定的に継続することができる。
先の各実施形態で用いる偏光ビームスプリッタPBSは、偏光膜93として、主成分が二酸化ケイ素(SiO2)の膜体と、主成分が酸化ハフニウム(HfO2)の膜体とを膜厚方向に繰り返し積層したもので構成したが、他の材料であっても良い。例えば、石英や二酸化ケイ素(SiO2)と同様に、波長355nm近辺の紫外線に対して低屈折率であって、紫外レーザ光に対して耐性の高い材料であるフッ化マグネシウム(MgF2)も利用できる。また、酸化ハフニウム(HfO2)と同様に、波長355nm近辺の紫外線に対して高屈折率であって、紫外レーザ光に対して耐性の高い材料である酸化ジルコニウム(ZrO2)が利用できる。そこで、これらの材料の組合せを変えて得られる偏光膜93の特性についてシミュレーションした結果を、以下の図17から図22に基づいて説明する。
図17は、高屈折率の材料として酸化ハフニウム(HfO2)の膜体を使い、低屈折率の材料としてフッ化マグネシウム(MgF2)の膜体を使う場合の偏光膜93の構成を模式的に示す断面である。酸化ハフニウムの屈折率nhを2.07、フッ化マグネシウムの屈折率nLを1.40、プリズム(石英ガラス)の屈折率nsを1.47とすると、ブリュースター角θBは、
θB=arcsin([(nh2×nL2)/{ns2(nh2+nL2)}]0.5)、
より、約52.1°になる。
そこで、厚み78.6nmのフッ化マグネシウムの膜体の上下に、厚み22.8nmの酸化ハフニウムの膜体を積層したものを周期層として、これを21周期分積層した偏光膜93を、第1プリズム91と第2プリズム92との接合面の間に設ける。この図17に示す偏光膜93を備えた偏光ビームスプリッタPBSにおいては、シミュレーションの結果、図18のような光学特性が得られた。シミュレーション上の照明光の波長を355nmとすると、P偏光に対する反射率Rpが5%以下(透過率Tpが95%以上)となる入射角θ1は43.5°以上となり、S偏光に対する反射率Rsが95%以上(透過率Tsが5%以下)となる入射角θ1は59.5°以下となる。本例の場合も、ブリュースター角θB(52.1°)に対して、−8.6°〜+7.4°の約15°の範囲で、良好な偏光分離特性を得ることができる。
また、図19は、高屈折率の材料として酸化ジルコニウム(ZrO2)の膜体を使い、低屈折率の材料として二酸化ケイ素(SiO2)の膜体を使う場合の偏光膜93の構成を模式的に示す断面である。酸化ジルコニウムの屈折率nhを2.12、二酸化ケイ素の屈折率nLを1.47、プリズム(石英ガラス)の屈折率nsを1.47とすると、ブリュースター角θBは、上記の式より、約55.2°になる。
そこで、厚み88.2nmの二酸化ケイ素の膜体の上下に、厚み20.2nmの酸化ジルコニウムの膜体を積層したものを周期層として、これを21周期分積層した偏光膜93を、第1プリズム91と第2プリズム92との接合面の間に設ける。この図19に示す偏光膜93を備えた偏光ビームスプリッタPBSにおいては、シミュレーションの結果、図20のような光学特性が得られた。シミュレーション上の照明光の波長を355nmとすると、P偏光に対する反射率Rpが5%以下(透過率Tpが95%以上)となる入射角θ1は47.7°となり、S偏光に対する反射率Rsが95%以上(透過率Tsが5%以下)となる入射角θ1は64.1°となる。本例の場合も、ブリュースター角θB(55.2°)に対して−7.5°〜+8.9°の約16.4°の範囲で、良好な偏光分離特性を得ることができる。
さらに、図21は、高屈折率の材料として酸化ジルコニウム(ZrO2)の膜体を使い、低屈折率の材料としてフッ化マグネシウム(MgF2)の膜体を使う場合の偏光膜93の構成を模式的に示す断面である。酸化ジルコニウムの屈折率nhを2.12、フッ化マグネシウムの屈折率nLを1.40、プリズム(石英ガラス)の屈折率nsを1.47とすると、ブリュースター角θBは、上記の式より、約52.6°になる。
そこで、厚み77.3nmのフッ化マグネシウムの膜体の上下に、厚み22.1nmの酸化ジルコニウムの膜体を積層したものを周期層として、これを21周期分積層した偏光膜93を、第1プリズム91と第2プリズム92との接合面の間に設ける。この図21に示す偏光膜93を備えた偏光ビームスプリッタPBSにおいては、シミュレーションの結果、図22のような光学特性が得られた。シミュレーション上の照明光の波長を355nmとすると、P偏光に対する反射率Rpが5%以下(透過率Tpが95%以上)となる入射角θ1は43.1°となり、S偏光に対する反射率Rsが95%以上(透過率Tsが5%以下)となる入射角θ1は60.7°となる。本例の場合も、ブリュースター角θB(52.6°)に対して−9.5°〜+8.1°の約17.6°の範囲で、良好な偏光分離特性を得ることができる。
先の図4で示したように、マスクMで反射した投影光束EL2は、等倍の投影光学系PLの開口数(NA)で制限される広がり角θnaを伴って、基板Pに投影される。開口数NAは、NA=sin(θna)で定義され、照明光束EL1の波長λと共に、投影光学系PLによる投影像の解像力RSを決める。照明光束EL1の開口数も、マスクMが図15に示したように、平坦なマスク面P1である場合は、投影光学系PLのマスクM側の開口数NAと同じか、それ以下に設定される。
例えば、照明光束EL1の波長λを355nm、プロセスファクターkを0.5として、解像力RSとして3μmを得る場合、RS=k・(λ/NA)より、等倍の投影光学系PLのマスク側の開口数NAは約0.06(θna≒3.4°)となる。照明光学系ILからの照明光束EL1の開口数は、一般に投影光学系PLのマスクM側の開口数NAよりも僅かに小さいが、ここでは等しいものと仮定する。
ところが、先の図5Aで説明したように、マスク面P1が半径Rmの円筒面に沿って形成される円筒マスクMである場合、照明光束EL1の主光線は、円筒マスクMの円周方向に関しては、さらに広い角度で広がっている。ここで、図3中に示したマスク上の照明領域IRの周方向の露光幅をDeとすると、図5A中の点Q1を通る照明光束EL1の主光線に対して、露光幅Deの最も周方向の端を通る照明光束EL1の主光線は、概ね、以下のような角度φだけ傾いている。
sinφ≒(De/2)/(Rm/2)
ここで、円筒マスクMの曲率半径Rmを150mm、露光幅Deを10mmとすると、角度φは約3.8°となる。さらに、露光幅Deの最も周方向の端を通る照明光束EL1の主光線に対して、照明光束EL1の開口数分の角度θna(約3.4°)分が加わることから、照明領域IRへの照明光束EL1の広がり角は、点Q1を通る照明光束EL1の主光線に対して、±(φ+θna)の範囲を取る。即ち、上記の数値例では、±7.2°となり、照明光束EL1は円筒マスク面の周方向に関して14.4°の角度範囲に渡って分布することになる。
このように、照明光束EL1は、比較的大きな角度範囲を伴って円筒マスク面P1に入射するように設定されるが、そのような角度範囲であっても、先の図8、図10に示した実施形態の偏光ビームスプリッタPBS、及び、図17〜22に示した実施例の偏光ビームスプリッタPBSであれば、照明光束EL1と投影光束EL2とを良好に偏光分離することができる。
また、投影光学系PLがマスク面P1のパターンを基板P上に拡大投影する露光装置では、投影光学系PLのマスク面P1側の開口数NAmが、基板P側の開口数NApに対して、拡大倍率Mp分だけ増大する。例えば、先に例示した等倍の投影光学系で得られる解像力RSと同じ解像力を得るのであれば、拡大倍率Mpが2倍の投影光学系におけるマスク側の開口数NAは約0.12となり、それだけ投影光束EL2の広がり角θnaも±6.8°(幅で14.6°)と大きくなる。しかしながら、偏光ビームスプリッタPBSで良好に偏光分離できる入射角度範囲が、図10の場合は約14.6°、図18の場合は約16°、図20の場合は約16.4°、そして図22の場合は約17.6°となり、いずれの場合も、その広がり角θnaをカバーしていることから、良好な像質で拡大投影露光ができる。
以上のように、マスクMを円筒マスクとする場合は、マスク面P1上の照明領域IRに照射される照明光束EL1の周方向に関する最大の角度範囲がカバーされるように、偏光分離特性が良好なブリュースター角θBを含む入射角度範囲の偏光ビームスプリッタPBSが選定される。また、図17〜22に例示した偏光ビームスプリッタPBSのブリュースター角θBは、何れも50°以上であり、図4、図6に示したように、照明光学系ILの光軸BX1と投影光学系PLの光軸BX2(又はBX3)とを平行にする場合でも、円筒マスクMに向かう照明光束EL1とマスク面で反射する投影光束EL2のXZ面内での各進行方向を、中心面CLに対して傾けることができ、良好な結像性能を確保することができる。
なお、以上の各実施形態において、偏光膜93を構成する酸化ハフニウムの膜体、又は酸化ジルコニウムの膜体は、紫外域(波長400nm以下)の光に対して高い屈折率nhを呈するが、その屈折率nhと基材(プリズム91、92)の屈折率nsとの比nh/nsが1.3以上であれば良く、高屈折率材料としては、二酸化チタン(TiO2)の膜体、五酸化タンタル(Ta2O5)の膜体も利用可能である。