以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態における燃料電池システム100の概略構成を示す図である。
第1の実施の形態における燃料電池システム100は、水素生成装置200から供給される水素を含む燃料ガスと、酸素を含む酸化剤ガスとを用いて発電する燃料電池1と、炭化水素を含む原料ガスを改質して燃料ガスを生成する改質器2と、改質器2に原料ガスを供給する原料ガス供給器3とを備えている。また、燃料電池システム100は、原料ガスおよび燃料ガスのうちの少なくとも一方を燃焼させて改質器2を加熱する燃焼器4と、原料ガスの供給量を検出する原料ガス供給量検出器5と、改質器2の温度を検知する改質温度検出器6と、制御器7とを備えている。
燃料電池1としては、例えば固体高分子形燃料電池(PEFC)または固体酸化物形燃料電池(SOFC)が用いられる。例えばPEFCが用いられる場合は、図示しないCO除去部を用いて、改質器2から排出される改質ガス中のCOを低減する構成としてもよい。CO除去部としては、例えば、CO変成器とCO選択酸化器との組み合わせが例示される。
水素を生成する方法として、ここでは炭化水素と水蒸気とを改質させる水蒸気改質反応を用い、改質器2に充填される改質触媒としては、Ru系の触媒を用いる。水蒸気改質反応を用いる場合、水供給器8によって改質器2に水を供給してもよい。また、改質反応として、ここでは水蒸気改質反応を挙げたが、例えばオートサーマル反応、および部分酸化改質反応でも同様の効果が得られる。
改質器2は、燃焼器4からの伝熱により加熱される構造とし、原料ガスおよび燃料ガスを燃焼したときの加熱状態が検知できるよう、改質温度検出器6を備えている。ここでは、改質触媒層の出口側流路に、温度検出器として熱電対を備え、改質触媒から排出されるガスの温度を測定できる構成とする。
改質器2の外側は、図示しない断熱材によって覆われている。改質温度検出器6は、原料ガスおよび燃料ガスを燃焼させたときの加熱状態が検知できれば、その配置位置は、上記の位置に限定されるものではない。
燃焼器4では、原料ガスおよび水素含有ガスである燃料ガスのうちの少なくとも一方を燃焼する。燃料ガスとしては、燃料電池1での未消費の水素を含むオフガスであってもよいし、水素生成装置200から排出される燃料ガスであってもよい。また燃焼用の空気は、燃焼用空気供給器9によって燃焼器4に供給されるよう構成してもよい。
次に、本発明の第1の実施の形態における燃料電池システム100の動作を説明する。
なお、以下の諸動作は、制御器7が、燃料電池システム100の各機器を、制御パラメータを用いて制御することにより行われる。本実施の形態では、原料ガスとしてメタンを主成分とする都市ガス13Aに対応した制御パラメータ群を用いて、実際に都市ガス13Aが供給されるものとする。
制御器7は、原料ガス供給器3を制御し、改質器2に原料ガスを供給する。ここで原料ガス供給器3としては、原料ガスを昇圧するブースターポンプを用いることができる。原料ガス供給量検出器5としては、流量計を用い、原料ガス検出量が、所定の流量(例えば3.0NL/min)となるように、制御器7が原料ガス供給器3を制御する構成とする。
ここで、原料ガス供給量を検出する手段である流量計は、一般的に、予め設定された組成のガスと同一の組成のガスを供給したときに、供給量に基づき電気的に出力される流量である原料ガス供給量検出量(以下「指示流量」と呼ぶ)と、実際に流れる流量である原料ガス実供給量(以下「実流量」と呼ぶ)とが、所定の精度範囲内で一致するものである。
ここでは、都市ガス13Aを供給したときに、指示流量と実流量とが一致するように流量計を設定する。一方、予め設定されたガスと実際に流れるガスとの組成が異なるときは、指示流量と実流量とに差が生じる。なお原料ガスは、脱硫器を通して、原料ガス中の硫黄成分が脱硫され、供給されてもよい。
制御器7は、水供給器8を制御して、改質器2に、水蒸気改質反応に必要な水蒸気(以下、改質水とする)を供給する。
本実施の形態では、改質水の流量は、改質器2に供給される原料ガス中の、炭素数に対する水の比率を示すS/Cが、2.9となるように供給される。
ここで、原料ガスとしては、都市ガス13Aのガスを用いているため、原料ガス1モル中の炭素数の割合は「1.17」であり、(2.9×1.17×18×3.0÷22.4)の計算式より、水の供給量が、8.2cc/minとなるように水が供給される。
改質器2に供給された原料ガスと改質水とは、改質器2内部の改質触媒存在下で、水蒸気改質反応によって水素含有ガスに改質される。
制御器7は、水素含有ガスを燃料電池1の燃料ガスとして、燃料電池1のアノードに供給する。燃料電池1では、アノードに供給された燃料ガスと、カソードに供給された発電用空気とが電気化学的に反応して、電気と熱と水とが発生する。
燃料電池1で得られた電気は、図示しない電力負荷に供給されて使用される。一方、発電に伴って発生した熱は、図示しない熱回収手段によって回収され、熱負荷に供給されて、種々の用途で利用される。燃料電池1の内部で消費されなかった、未反応の燃料ガス(以下、オフガスと呼ぶ)は、燃焼器4に供給される。
制御器7は、燃焼用空気供給器9を制御して、燃焼器4に供給されたオフガスを燃焼させるのに必要な燃焼用空気を供給する。燃焼器4では、オフガスと、燃焼用空気供給器9から供給された燃焼用空気とを混合して燃焼させ、改質器2での水蒸気改質反応に必要な熱が供給される。ここで、燃焼用空気の流量は、理論空気流量に対する供給空気流量を表す空気比が、「1.7」となるよう制御される。
制御器7は、原料ガス供給量検出器5で検出される原料流量と、改質温度検出器6で検出される温度から算出される炭化水素の転化率とから、生成する水素生成量を算出し、所定の水素利用率範囲内で発電できるよう、燃料電池1での発電量を指示する。
ここでは、水素利用率が約80%となるよう、発電指示量として「750W」を指示して発電させる。ここで、水素利用率は、安定運転のため、70%から85%程度の間となるように設定するとよい。このとき、改質温度検出器6で検出される温度は620℃となる。
次に、本発明の第1の実施の形態における燃料電池システム100の改質器2の温度について説明する。
改質器2の温度は、水蒸気改質反応を促進させ、燃料電池1で発電に必要な水素を得るために、所定の温度に保たれる必要がある。改質温度の違いは、所定の原料ガスを供給しているときに、原料ガスの転化率、すなわち水素の生成量に影響する。
この水素の生成量は、発電量、および、燃料電池1での水素の利用率に影響し、これらは、燃料電池システム100の安定運転のための重要なパラメータである。
図2は、本発明の第1の実施の形態における、改質温度と、原料ガスである炭化水素の転化率との関係を示す図である。
改質温度は、所定の温度以上において、有用な転化率となるが、所定の温度より低いと、急激に転化率が低下する。そのため、所定の温度以上に改質温度を保つと、効率よく燃料電池システム100を運転できる。
ここで、例えば改質器2に十分な熱を供給できない場合、改質器2の温度は低下する。改質器2の温度が、水蒸気改質反応に適した温度より低くなると、吸熱反応である水蒸気改質反応は進行しなくなり、水素生成量は低下し、その結果、燃料電池1での発電に必要な水素量が供給されず、燃料電池1の発電効率が低下し、さらには発電停止に至る可能性がある。
また、燃料電池1での水素消費量が一定の条件で、水素生成装置200における水素生成量が低下すると、オフガスとして水素生成装置200に返ってくる熱量が低下するため、さらに改質器2の温度が低下する可能性がある。逆に、改質器2に過剰な熱が供給された場合には、改質器2の温度は上昇することとなる。
ここで、改質温度が所定の温度から外れる主要因として、原料ガスの単位体積あたりの熱量の差、および、原料ガス供給量検出器5での原料ガス供給量検出量の差が挙げられる。
前者について、例えば改質器2に供給される原料ガスの組成が変わり、原料ガスの単位体積あたりの熱量が変化した場合には、原料ガスの熱量が変化する前と同じ体積流量を原料ガス供給器3で供給しても、供給される熱量は変化することとなる。
すなわち、所定の原料ガス供給量を供給している際に、低熱量のガスが供給された場合には改質温度が下がり、逆に、高熱量のガスが供給された場合には、所定の原料ガス供給量に対して所定の発電量であるとき、オフガスとして燃焼するガスの熱量が過剰となるため、改質温度の上昇につながる。
後者について、原料ガス供給量検出器5の種類または原理によっては、原料ガスの組成が、想定されている流量計の組成と変わると、検出器で検出される流量と実際に供給されている流量との間に差が生じる。
そのため、原料ガス供給量検出器5が、所定の原料ガス流量が供給されていると認識していても、実際に供給される原料ガス流量が、過剰あるいは過少になる可能性がある。さらに、原料ガス供給量検出器5が、ずれて認識した原料ガス流量に基づいて、水の供給量、燃焼用空気の流量、および発電量が設定されてしまうと、改質温度が所定の値に保てずに、安定運転ができなくなる。
次に、本発明の第1の実施の形態における燃料電池システム100の特徴的な動作について説明する。
「改質温度に基づく判定方法」
制御器7は、原料ガス供給量検出器5で検出される原料ガス供給量が所定の値となるように原料ガスを供給している場合に、改質温度検出器6で検出される温度に基づいて制御パラメータ群を設定する。
ここで、原料ガスとして供給されるガスの熱量に対して、そのときの改質温度は、熱量の関数として与えられ、かつ、制御パラメータ群は、熱量および改質温度の関数として与えることができる。すなわち、所定の条件で運転した際の改質温度から、その原料ガスの熱量を推定して、制御パラメータを設定することができる。
より具体的には、例えば都市ガス13Aに対応した制御パラメータ群を用いて、実際に都市ガス13Aが供給されるときを想定する。この場合、原料ガス供給量検出器5で検出される原料ガス供給量を3.0NL/minとした場合、実際に供給される原料ガス供給量も、所定の精度範囲内で3.0NL/minとなる。
このとき750W発電すると、燃料電池1で消費されなかったオフガスが燃焼器4で燃焼され、改質器2を所定の熱量で加熱することで、改質温度、すなわち改質温度検出器6で検出される温度は、約620℃となる。
一方、都市ガス13Aに対応した制御パラメータ群を用いて、都市ガス13Aよりも熱量の低い、メタン100%の原料ガスが供給される場合を想定する。
この場合、原料ガスの熱量は、都市ガス13Aに比較して小さいため、原料ガス供給量を3.0NL/min供給し、燃料電池1のアウトプットとして同じだけの750W発電した場合、オフガスとして改質器2に戻ってくる熱量が減る。このため、改質器2を十分に加熱できずに、改質温度は620℃よりも低い約600℃となる。
すなわち、測定した改質温度から、供給される原料ガスの熱量を推定することができるので、改質温度から制御パラメータを設定することができる。ここで、供給される原料ガスの熱量、および、そこから導かれる改質温度に対して、設定される制御パラメータは、連続的な関数として与えられてもよい。
「制御パラメータ群の設定方法」
燃料電池1を安定に運転するための制御パラメータ群として、制御器7は、原料ガス供給器3で供給する原料ガス供給量、改質器2に供給する水の供給量、燃焼器4に供給する燃焼用空気の供給量、および、燃料電池1で発電する発電量のうち、少なくともいずれか1つを含む制御パラメータを設定する。また、これら制御パラメータを複合的に変更すると、より安定した運転が可能となり、顕著な効果が得られる。
次に、制御パラメータ群のうち、各制御パラメータの設定方法について説明する。
まず、原料ガス供給量の設定方法を説明する。
都市ガス13Aに対応した制御パラメータで運転する場合、750Wを発電し、燃料電池1での水素利用率を80%としたときの原料ガスの供給量は、約3.0NL/minとなる。
一方、都市ガス13Aよりも熱量の少ないガスであるメタン100%のガスを供給した場合、750Wを発電させるためには、原料ガスをより多く供給する必要がある。原料ガスである炭化水素の組成と、その発熱量との間には相関関係がある。
図3は、本発明の第1の実施の形態における、アルカンにおける炭素数と燃焼熱との相関関係を示す図である。
図3に示すように、基本的には、原料中の炭素数が増加すると、原料の単位体積あたりの燃焼熱(発熱量)は増加し、燃焼熱(発熱量)と炭素数とはおよそ比例関係にある。すなわち、同じ原料ガス供給量としたとき、原料ガス中の炭素数が多いほど、供給される熱量が大きく、改質器2の温度が高くなる。
すなわち、所定の原料ガス供給量を供給しているときの改質温度から、供給されている原料ガスの熱量を推定し、その推定結果をもとに、制御パラメータ群のパラメータの1つである原料ガス供給量を設定することができる。
図4は、本発明の第1の実施の形態における、改質温度に対する原料ガス供給量の設定例を示す図である。
より具体的には、例えば図4のように、検出された改質温度が低いほど、すなわち供給される原料ガスの熱量が小さいほど、原料ガス供給量を増やすよう設定することで、安定した燃料電池システム100の運転が可能となる。
ここでは、改質温度の上昇に対して、原料ガス供給量が比例的に減少するような関数が選択される。この関数は適宜選択されるが、原料ガスの熱量が小さく、改質温度が低いほど、原料ガスの供給量が増やされるように設定するのがよい。
次に、制御パラメータ群を変更するときの水供給量の設定方法を説明する。
ここでは、都市ガス13Aに対応した制御パラメータを用いて、メタン100%を供給して運転する場合を考える。ここで、都市ガス13Aの原料ガス1モル中の炭素数のモル数は1.17であり、メタン100%のそれは1.0であり、その比は1.0÷1.17=0.85である。
上述のように、原料ガスである炭化水素の組成と、その発熱量との間には相関関係がある。言い換えると、原料ガスの熱量が小さく、改質温度が低い場合は、原料ガス供給量を増加させるよう制御パラメータを設定するのがよい。この場合は、原料ガス中の炭素数の割合が相対的に小さいことが示唆され、供給する水の量を同一とすると、Cの数が小さく水蒸気量は同一であるため、設定したS/Cに比して、実際のS/Cは相対的に大きくなる。
同様に、原料ガスの熱量が大きく、原料ガス供給量が小さくなるよう設定する場合は、原料ガス中の炭素数の割合が相対的に大きいことが示唆される。この場合、供給する水の量が同一とすると、Cの数が大きく水蒸気量は同一であるため、設定したS/Cに比して実際のS/Cは相対的に小さくなる。
具体的には、設定しているS/Cが、例えば2.9であり、原料中のCの数が想定の0.85倍となった場合、水蒸気量を一定とすると、実際のS/Cとしては3.4程度となる。
ここで、水蒸気改質反応は、吸熱反応であり、S/Cはその反応熱に大きく寄与する。例えば、S/Cが大きくなると、改質温度を一定の温度に保つためには多くの熱量が必要となる、あるいは、供給する熱量が一定の場合には、改質温度が低下してしまう。
すなわち、所定の原料ガス供給量を供給しているときの改質温度から、供給されている原料ガスの熱量を推定し、その推定結果をもとに制御パラメータ群のパラメータの1つである水供給量を設定することができる。
図5は、本発明の第1の実施の形態における改質温度に対する水供給量の設定例を示す図である。
より具体的には、例えば図5のように、検出された改質温度が低いほど、すなわち供給される原料ガスの熱量が小さいほど、水供給量を減らすよう設定することにより、安定した燃料電池システム100の運転が可能となる。ここでは改質温度の上昇に対して、水の供給量が増加するような高次の関数が選択される。この関数は適宜選択されるが、原料ガスの熱量が小さく改質温度が低いほど、水の供給量を減らすよう設定されるのがよい。
かかる構成により、水供給量、とりわけ見かけによらない実際のS/Cを所定の範囲に保ち、効率よく安定した燃料電池システム100の運転が可能となる。
次に、制御パラメータ群を変更するときの、燃焼用空気供給量の設定方法を説明する。
原料ガスである炭化水素1分子中の水素原子の数は、炭素数が増加するにつれて増加する。例えばCが1つのアルカンであるメタンの場合、1分子中の水素は4であり、例えばCが3つのアルカンであるプロパンの場合、1分子中の水素は8である。すなわち、同じ原料ガス供給量としたとき、原料ガス中の炭素数が多いほど供給される水素分子の数が大きく、また前述のとおり熱量が大きいために、所定の原料ガス供給量のときの改質温度が高くなる。
言い換えると、原料ガスの熱量が小さく、原料ガス供給量が多くなるよう制御パラメータを設定する場合には、原料ガス中の水素数が相対的に小さいことが示唆され、生成される水素の分子数も少なくなる。この場合、供給する燃焼用空気の量を同一とすると、完全燃焼に必要な燃焼用空気流量に対する、供給空気流量である燃焼空気比λは相対的に大きくなる。
同様に、原料ガスの熱量が大きく原料ガス供給量が小さくなるよう制御パラメータを設定する場合には、原料ガス中の水素数が相対的に大きいことが示唆され、生成される水素の分子数も多くなる。この場合、供給する燃焼用空気の量を同一とすると、燃焼空気比λは相対的に小さくなる。
ここで、燃焼排ガスは、燃料電池システム100の系外に排出されるが、燃焼用空気の流量あるいは燃焼空気比λが大きくなると、系外に持ち出される熱量が増えるため、供給する熱量が一定の場合は改質温度が低下する。つまり、原料ガスの補正により燃焼空気比λが大きく変化してしまうと、燃料電池システム100の安定運転が困難となる。
例えば、原料ガスの熱量が小さい場合は、燃焼用空気供給量の補正をしないと、熱量が低く、かつ、λが大きいため、改質温度が上がりにくくなり、燃料電池システム100の安定運転が困難となったり、効率が低下したりする。
すなわち、所定の原料ガス供給量を供給しているときの改質温度から、供給されている原料ガスの熱量を推定し、その推定結果をもとに制御パラメータ群のパラメータの1つである燃焼用空気供給量を設定することができる。
より具体的には、検出した改質温度が低いほど、すなわち、供給される原料ガスの熱量が小さいほど、燃焼用空気供給量を減らすように設定することで、安定した燃料電池システム100の運転が可能となる。改質温度に対して、設定する燃焼用空気供給量の関数は適宜選択されるのがよいが、原料ガスの熱量が小さく改質温度が低いほど、燃焼用空気供給量を減らすよう設定されるのがよい。
かかる構成により、燃焼用空気供給量、とりわけ燃焼空気比λを所定の範囲で運転できるため、高効率で安定した燃料電池システム100の運転が可能となる。
次に、制御パラメータ群を変更するときの発電量の設定方法を説明する。
都市ガス13Aに対応した制御パラメータ群である制御パラメータ群で運転する場合、原料ガスの供給量は約3.0NL/minであり、燃料電池1での水素利用率を80%としたときに750W発電が可能だとする。
ここで、都市ガス13Aよりも熱量の少ないガス、例えば窒素20%を含むメタン80%のガスを供給した場合、750Wを発電させるためには、原料ガスをより多く供給する必要がある。減少した熱量の分に見合った量の原料ガスを増加させれば、同程度の発電が可能であるが、燃料電池システム100で使用する機器の都合で、過大な原料ガスを供給できない場合がある。
例えば、原料ガス供給器3として使用されるブースターポンプ等の構成機器には、所定の供給上限がある。また、例えば改質器2に充填されている改質触媒には、対応可能なガス量がある。また、配管等も、過大なガスが供給されると圧損が増大し、安定した運転が困難となる。
そこで、制御器7は、改質温度に基づいて、制御パラメータ群のうち発電量を変更してもよい。具体的には、所定の制御パラメータ群で運転した場合の改質温度が580℃であった場合、発電量を700Wに下げるよう設定することができる。
図6は、本発明の第1の実施の形態における、改質温度に対する発電量の設定例を示す図である。
図6に、設定するパラメータの例として、発電量の場合の例における改質温度(原料ガスの熱量に相当)との関係を示す。
原料ガスの熱量が大きいほど、原料ガスの単位体積中に含まれる水素分子の数も多いことから、より安定した発電が可能となる。ここでは、改質温度の増加に対して、発電量が増加するような、ステップ状の関数が選択される。
この関数は適宜選択されるが、原料ガスの熱量が大きく、改質温度が高いほど、発電量が増えるよう設定されるのがよい。すなわち、原料ガスの熱量が高く、改質温度が高くなる場合、より発電量を増やしても安定して発電できる。
なお、図2において、改質温度と転化率との関係を示したが、改質温度は所定の温度以上で有用な転化率となるが、所定の温度より低いと急激に転化率が低下する。そのため所定の温度以上に改質温度を保つと効率よく燃料電池システム100を運転できる。
発電量の変更は、使用する燃料電池システム100の構成において、原料ガス供給量の増減だけでは対応できないほどの、熱量の変化がある場合に特に有用である。なお、原料ガス供給量、水供給量、および燃焼用空気供給量を、ともに変更してもよいし、個別に変更をしてもよい。
かかる構成により、原料ガス組成によらず、改質温度を所定の範囲に保ち、安定した燃料電池システム100の運転ができる。また、1つの燃料電池システム100で広範囲の熱量の原料ガスに対応可能であるため、汎用性の高い装置を実現することができる。
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態における燃料電池システム100について説明する。
本実施の形態では、第1の実施の形態における原料ガス供給量検出器5として、質量流量計を備えているものとして説明する。図1に示される第1の実施の形態と同一部または相当部には、同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。
質量流量計は、一般的に、圧力および温度によらず、広い流量範囲で精度よく流量を検出できる特徴をもつ。また、供給されるガスの熱量と指示流量とに相関関係があるので、供給する熱量を重視する燃料電池システム100において特に有用である。
質量流量計の設定として、ここでは都市ガス13Aに対応した制御パラメータ群を設定する。すなわち、実際に供給する原料ガスが13Aの場合には、指示流量と実流量とが一致する。一方で、実際に供給する原料ガス組成が異なると、その成分に応じて実流量と指示流量とが乖離する。
一方、質量流量計は、熱量と指示流量とに相関関係があるものの、校正されたガス組成とは異なるガスが供給されると、熱量を一定に保てるわけではない。
図7は、本発明の第2の実施の形態における、質量流量計のガス組成毎のコンバージョンファクター(C.F.)の一例となる一般的な値を示す図である。
混合ガスの場合は、単独のガスでのC.F.と、その混合比率とを掛け合わせたものを足し合わせることで算出できる。
ここで、校正(設計)されたガス組成と、実際に供給されるガス組成とが異なるときの、質量流量計における実流量は、以下の式であらわされる。
(実流量)=(指示流量)×(実組成でのC.F.)÷(校正ガスでのC.F)
ここで、例えば都市ガスの代表ガスである13A(原料ガス1モル中のCのモル数:1.17)で校正された質量流量計を用いて、メタン100%のガス(原料ガス1モル中のCのモル数:1.0)が供給される場合を考える。
図7から、実組成でのC.F.すなわちメタンのC.F.は0.74である。また、校正ガスでのC.F.、すなわち13AのC.F.は0.71である。
これらから、質量流量計が認識する値が、所定の値F0となるように供給して、燃料電池システム100を起動したとき、実際に供給されるガスの流量F’は、次式で表される。
F’=F0×0.74÷0.71=F0×1.05
すなわち、質量流量計が検知する流量の1.05倍の流量のガスが実際には供給されることになる。
一方、原料ガス中の炭素のモル数の割合C’は、(1.0÷1.17)の計算式から、0.85となる。この炭素のモル数は、前述のとおり図3で示したように、熱量と比例関係にあり、供給される総熱量Qは、炭素数Cと流量Fとの積で近似できる。つまり、都市ガス13Aで校正された質量流量計に、メタン100%のガスを供給すると、実際に供給されるガスの熱量Q’は、次式で表される。
Q’≒C’×F’=0.85×1.05×Q=0.89×Q
すなわち、実際に供給される熱量が、13Aの時に比べて0.89倍程度となり、改質温度も低下する。
質量流量計を用いる場合、熱量と指示流量との間に比例関係があるため、例えば、校正ガスよりも熱量の低いガスを供給した場合、前例の場合、単位体積あたりの熱量は0.85倍程度になるものの、実流量が指示流量の1.05倍程度となるため、供給される熱量は0.85よりも大きい0.89倍程度となり、有用と言える。
しかしながら、この差が大きいと、原料流量に過不足が生じることで生成水素量に過不足が生じたり、原料ガスの熱量に過不足が生じることで改質器2を所定の温度に保てなくなったりする等、燃料電池システム100の安定運転が困難となる。
次に、本発明の第2の実施の形態における特徴的な動作について説明するが、第1の実施の形態との相違点について説明し、それ以外は第1の実施の形態と同様とする。
制御器7は、先ず第1制御パラメータ群で燃料電池システム100を運転する。その際、原料ガス供給量検出器5で検出される原料ガス供給量が、所定の値(本実施の形態では、3.0NL/min)となるよう原料ガスを供給している場合に、改質温度検出器6で検出される温度に基づいて、制御パラメータ群が設定される。
具体的には、第1制御パラメータ群で燃料電池システム100を運転している時に、改質器2が十分に加熱されず、改質温度検出器6が検出する温度が、所定の620℃よりも低い600℃であった場合には、第1制御パラメータ群と異なる第2制御パラメータ群を設定するよう、質量流量計の設定を変更してもよい。
なお、質量流量計の設定ガス種を変更する、すなわちコンバージョンファクターの値を変更することで、指示流量と実流量との関係を補正してもよいし、原料ガス供給量の目標値を設定することで、原料ガス供給量を変更してもよい。
かかる構成により、質量流量計の校正されたガス組成とは異なるガス組成の地域に設置した場合、および、季節的な組成変動がある場合等、原料ガスの組成がどのような場合であっても、所定の原料ガスを供給しているときの改質温度から、制御パラメータ群を設定することができる。
また、質量流量計が検出する見かけの原料供給量によらず、制御パラメータ群を変えることで、実際に供給される原料ガス供給量、すなわち熱量を所定の値に保つことができ、安定した燃料電池システム100の運転ができる。また、質量流量計を用いることで、より正確に広い条件で水素生成装置200を運転可能である。
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態における燃料電池システム100について説明する。
図8は、本発明の第3の実施の形態における燃料電池システム100の構成を示す図である。
図1に示された第1の実施の形態と、同一部または相当部には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。本実施の形態では、最適な制御パラメータ群を記憶する記憶部11を備える構成としている。
次に、本発明の第3の実施の形態における特徴的な動作について説明するが、第1の実施の形態との相違点について説明し、それ以外は第1の実施の形態と同様とする。
制御器7は、記憶部11が記憶した制御パラメータ群に基づいて、次回以降の起動および運転を行うよう制御する。
このように、改質温度から判定し、選択された最適な制御パラメータ群に基づき、起動および運転を行うので、次回以降の起動で、より安定な運転ができる。また、制御パラメータ群を3つ以上設定していた場合、1度の制御パラメータの選択で最適化できなかった場合でも、順に最適なパラメータ群を選択していけるので、より安定した燃料電池システム100の運転ができる。
なお、燃料電池システム100の起動毎にパラメータの補正をして起動毎に記憶してもよいし、所定のタイミングで補正をして記憶するような構成としてもよい。
かかる構成により、校正されたガス組成と異なるガス組成の地域に燃料電池システム100を設置しても、容易に実際の供給ガスに合わせ込んで安定運転が可能となるとともに、季節的なガス組成の変動、および、長期的なガス品質の変化があっても、長期にわたって安定して燃料電池システム100を運転することができる。
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施の形態における燃料電池システム100について説明する。
図9は、本発明の第4の実施の形態における燃料電池システム100の構成を示す図である。
図1に示される第1の実施の形態と、同一部または相当部には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。本実施の形態では、燃料電池システム100の周囲温度を検出する周囲温度検出器12を備える構成としている。
次に、本発明の第4の実施の形態における特徴的な動作について説明するが、第1の実施の形態との相違点について説明し、それ以外は第1の実施の形態と同様とする。
制御器7は、周囲温度検出器12が検出する温度に基づいて、改質温度検出器6で検出される温度と、燃料電池システム100の制御パラメータ群との対応関係を補正する。
改質器2の温度は、燃焼による温度上昇が寄与するとともに、改質器2からの放熱および供給される原料ガスの温度によって温度変化速度が変わりうる。放熱量は、機器(断熱材)の表面温度と、周囲温度との差に依存する。すなわち、例えば周囲温度が低ければ、放熱量が相対的に大きくなるとともに、供給される原料ガスおよび燃焼用空気の温度が低くなるので、改質器2の温度は低くなる。
そのため、周囲温度をもとに改質温度を補正することで、改質温度検出器6による、原料ガスの熱量に起因する改質温度測定がより正確にできることになる。
かかる構成により、周囲温度によらず、原料ガスの熱量に起因する改質器2の温度をより正確に算出することができ、水素生成量を所定の値に保ち、安定した運転が可能な燃料電池システム100を実現することができる。
(第5の実施の形態)
次に、本発明の第5の実施の形態における燃料電池システムについて説明する。構成については、本発明の第1の実施の形態における燃料電池システム100の構成と同様とすることができため、詳細な説明は省略する。
次に、本発明の第5の実施の形態における特徴的な動作について説明するが、第1の実施の形態との相違点について説明し、それ以外は、第1の実施の形態と同様とする。
制御器7は、改質器2の運転時間に基づいて、改質温度検出器6で検出される温度と、燃料電池1の制御パラメータ群との対応関係を補正する。なお、改質器2の運転時間は、燃料電池1の発電時間を用いて算出してもよいし、燃焼器4の燃焼時間を用いて算出してもよい。
改質器2の温度は、燃焼による温度上昇が寄与するとともに、例えば触媒の劣化に伴っても変わり得る。水蒸気改質反応は触媒によってなされるが、触媒は、一般的に経時的に劣化し、反応速度が遅くなる傾向にある。反応速度が変化すると、反応熱による温度変化量が変わるため、たとえ同じ熱量の原料ガスが、経時的に変わらず供給されていても、改質器2の温度は経時的に変わり得る。
また、燃料電池1についても、発電時間の経過とともに、一般的に電圧は低下傾向となるが、低下した電圧で同じ発電量(電流×電圧)を維持するためには、電流を多く消費する必要がある。燃料電池1においては、電流値すなわち水素の消費量が増えることとなり、同じ水素生成量の場合、オフガスの熱量が減ることとなり改質温度が低下する。
そのため、改質器2の運転時間に基づいて改質温度を補正することにより、改質温度検出器6による、原料ガスの熱量に起因する改質温度測定がより正確にできることになる。
かかる構成により、運転時間の経過に伴う劣化等によらず、原料ガスの熱量に起因する改質器2の温度を、より正確に算出することができるため、安定した運転が可能な燃料電池システム100を実現することができる。
(第6の実施の形態)
次に、本発明の第6の実施の形態における燃料電池システムについて説明する。本実施の形態の構成は、本発明の第1の実施の形態における燃料電池システム100の構成と同様とすることができため、詳細な説明は省略する。
次に本実施の形態における特徴的な動作について説明する。
燃料電池システム100は、原料ガス供給量検出器5で検出する原料ガス供給量として、所定の範囲の上限値あるいは下限値のいずれかを含んでいる。制御器7は、この原料ガス供給量の制御範囲内で、改質温度検出器6で検出される温度が所定の温度になるように、原料ガス供給量を制御する。
原料ガス供給量の制御方法としては、フィードバック制御が用いられてもよい。制御器7は、原料ガス供給器3を制御して原料供給量を調整する。原料供給量を制御することで、燃焼器4へ供給される可燃性ガスの供給熱量を調整することが可能となり、燃焼器4から改質器2への供給熱量を調整することができ、改質温度の調整が可能となる。
ここで、例えば都市ガス13Aに対応した、第1制御パラメータ群を用いてメタン100%の原料ガスを供給する場合には、制御器7は、改質温度を所定の温度に保つため、原料ガス供給量を増量する。
しかしながら、所定の原料ガス供給量の上限となってしまうと、それ以上は増量できないので、改質温度は低下する。そこで、制御器7は、改質温度検出器6で検出される温度に基づいて、制御パラメータ群を設定する。
ここで、原料供給量の上下限閾値は、想定される中心的な組成の原料ガスを用いる際に、改質温度を維持するために必要な原料ガス流量をもとに、余裕度を考慮して設定されるのがよく、原料供給量の閾値は、制御パラメータ群毎に変更される値であってもよい。
かかる構成により、各制御パラメータ群で、改質温度を所定の範囲に保ちつつ、対応する制御パラメータ群と異なるガス組成が供給された際には、改質温度に基づいて制御パラメータ群を変更することで、安定した燃料電池システム100の運転が可能となる。
(第7の実施の形態)
次に、本発明の第7の実施の形態における燃料電池システム100について説明する。
本実施の形態の構成は、本発明の第1の実施の形態における燃料電池システム100の構成と同様とすることができため、詳細な説明は省略する。
次に本実施の形態における特徴的な動作について説明する。
本実施の形態では、燃料電池システム100が、所定の原料ガスの熱量範囲に対応した複数の制御パラメータ群を有することを特徴とする。
「改質温度に基づく判定方法」
制御器7は、原料ガス供給量検出器5で検出される原料ガス供給量が所定の値となるように原料ガスを供給している場合の、改質温度検出器6で検出される温度に基づいて制御パラメータ群を設定する。
図10は、本発明の第7の実施の形態における、制御パラメータ群と、該制御パラメータ群を用いて、供給する原料ガスの組成、すなわち熱量を変えたときに、原料ガス供給量検出器で検出する値が所定の値のときの改質温度の例を示す図である。
ここで、第1制御パラメータは、都市ガス13A、第2制御パラメータは、メタン100%、第3制御パラメータは、窒素20%、メタン80%の混合ガスのガス組成に、それぞれ対応し、最適化されているものとする。
上述の通り、都市ガス13Aに対応した制御パラメータ群(ここでは第1制御パラメータ群とする)を用いて、実際に都市ガス13Aを供給したときには、原料ガス供給量検出器5で検出される原料ガス供給量が3.0NL/minとなるように原料ガスを供給した場合、実際に供給される原料ガス供給量も、所定の精度範囲内で3.0NL/minとなる。
このとき750W発電させると、燃料電池1で消費されなかったオフガスは燃焼器4で燃焼され、改質器2が所定の熱量で加熱されることで、改質温度、すなわち改質温度検出器6で検出される温度は、約620℃となる。
一方、都市ガス13Aに対応した第1制御パラメータ群を用いて、メタン100%の原料ガスが供給されるとする。
この場合、原料ガスの熱量が、都市ガス13Aに比較して小さいため、原料ガス供給量を3.0NL/min供給し、燃料電池1のアウトプットとして、同じだけの750W発電させた場合、オフガスとして改質器2に戻ってくる熱量が減る。このため、改質器2を十分に加熱できずに、改質温度、すなわち改質温度検出器6で検出される温度は、620℃よりも低い約600℃となる。
同様に、メタン100%よりも熱量の低いガス(例えば窒素20%、メタン80%の混合ガス)を供給する場合は、さらに改質温度が低下することとなる(580℃)。
なお、それぞれの原料ガスに対応した制御パラメータ群で運転した場合でも、安定する改質温度は一定でなくてもよい。例えば、都市ガス13Aに対応した第1制御パラメータ群を用いて都市ガス13Aを供給した場合と、メタン100%に対応した第2制御パラメータ群を用いてメタン100%を供給した場合とで、改質温度検出器6で検出される改質温度は同一でなくてもよい。なお、所定の原料ガス供給量と改質温度との関係から判定するのがよいが、必ずしも原料ガス供給量自体の目標値は設定しなくてもよい。
「制御パラメータ群の設定方法」
燃料電池1を安定に運転させるための制御パラメータ群として、制御器7は、原料ガス供給器3で供給する原料ガス供給量、改質器2に供給する水の供給量、燃焼器4に供給する燃焼用空気の供給量、および、燃料電池1で発電する発電量のうちの少なくともいずれか1つを含む制御パラメータを設定する。
図11は、本発明の第7の実施の形態における、制御パラメータ群の設定例を示す図である。
第1制御パラメータ群としては、原料ガス供給量3.0NL/min、水供給量8.2cc/min、燃焼用空気の供給量16L/min、発電量750Wとする。
なお、水の供給量としては、原料ガス中の炭素のモル数に対する水のモル数を示す、S/Cの値で設定してもよい。また、燃焼用空気の供給量としては、可燃性ガスの理論空気流量に対する空気比の値で設定してもよい。
ここで、原料ガス供給量、改質水、燃焼用空気の供給量、および発電量を、それぞれ変更してもよい。またこれらの制御パラメータを複合的に変更すると、より安定した運転が可能となり、顕著な効果を得ることができる。
制御器7は、まず、第1制御パラメータ群で燃料電池システム100を運転する。その際、原料ガス供給量検出器5で検出される原料ガス供給量が、所定の値(ここでは3.0NL/min)となるように原料ガスを供給している場合の、改質温度検出器6で検出される温度に基づいて、制御パラメータ群を設定する。
具体的には、改質温度検出器6が検出する温度が、600℃であった場合には、第1制御パラメータ群と異なる第2制御パラメータ群を設定するよう構成してもよい。また、第1制御パラメータ群で運転した際に、620℃または600℃のどちらにより近いかにより、あるいは所定の閾値(例えば605度)以下であった場合に、第2制御パラメータ群を選択して運転するよう設定してもよい。
また、第1制御パラメータ群に対応した原料ガスの熱量は、第2制御パラメータ群に対応した原料ガスの熱量より大きい熱量であってもよく、相対的に、熱量がより高い原料ガスに対応した制御パラメータ群でまず運転するのがよい。なお、制御パラメータ群を3つ以上備えている場合は、相対的に熱量が高い原料ガスに対応した制御パラメータ群から順に運転するとよい。
相対的に低熱量ガスに対応した制御パラメータ群を用いて、相対的に高熱量ガスを供給して運転した場合には、燃焼ガスに対する燃焼用空気の流量が不十分となり、不完全燃焼による一酸化炭素の発生を起こしたり失火したりする可能性がある。
また、水蒸気改質の場合には、原料ガスに対する水の流量が不十分になり、触媒上へのススの析出が起こったりする等、装置の安定運転上、問題が発生する可能性もある。そのため、相対的に熱量が高い原料ガスに対応した制御パラメータ群から順に運転すると、より安全かつ安定した燃料電池システム100を実現することができる。
図12は、本発明の第7の実施の形態における、原料ガス組成と対応する制御パラメータ群との例を示す図である。
炭化水素を含む原料ガスは、相対密度と熱量との関係で示すことができる。
例えば、前述のように、都市ガス13A、メタンガス(メタン100%)、および、窒素が20%でメタンが80%の混合ガスの、ガス組成それぞれに対応した制御パラメータ群を設定する場合を想定する。この場合、各制御パラメータ群は、該当する原料ガス組成だけでなく、該当する原料ガス組成を含む、所定の範囲に対応することができ、安定運転が可能なものである。なお、対応可能範囲は、各制御パラメータ群で重複してもよいし、重複しなくてもよい。
複数の制御パラメータ群を保持し、対応可能な原料ガス組成が広ければ広いほど、1台の機器で、広範囲の原料ガス組成に対応でき、汎用性が上がる。一方で、対応可能範囲は狭くても、厳密に原料ガスの対応範囲を区分することで、より正確に、効率よく燃料電池システム100を運転することができる。
最適化する原料ガス組成、および、その組成での対応可能な熱量範囲は、供給され得る原料ガス組成、あるいは予測される長期的なガス組成変動に合わせて、都度選択されるのがよい。
かかる構成により、原料ガス供給量検出器5を校正したガス組成とは異なるガス組成地域に設置される場合、および、季節的な組成変動がある場合等、原料ガスの組成がどのような場合であっても、改質温度から原料ガスの組成を推定し、最適な制御パラメータ群を設定することで、効率よく安定した燃料電池システムの運転が可能となる。
次に、制御パラメータ群のうち、各制御パラメータの設定方法について説明する。
先ず、制御パラメータ群を変更するときの、原料ガス供給量の設定方法を説明する。
都市ガス13Aに対応した制御パラメータ群である第1制御パラメータ群で運転する場合、750Wを発電し、燃料電池1での水素利用率を80%としたときの原料ガスの供給量は、約3.0NL/minとなる。
一方、都市ガス13Aよりも熱量の少ないガス、例えば第2制御パラメータ群に対応したメタン100%のガスを供給した場合、750Wを発電させるためには、原料ガスをより多く供給する必要がある。
図3に示したように、基本的には、原料中の炭素数が増加すると、原料の単位体積あたりの燃焼熱(発熱量)は増加し、燃焼熱(発熱量)と炭素数とはおよそ比例関係にある。すなわち、同じ原料ガス供給量としたとき、原料ガス中の炭素数が多いほど供給される熱量が大きく、改質器2の温度が高くなる。
すなわち、所定の原料ガス供給量を供給しているときの改質温度から、供給されている原料ガスの熱量を推定し、その推定結果をもとに制御パラメータ群のパラメータの1つである原料ガス供給量を設定することで、安定した燃料電池システム100の運転が可能となる。
次に、制御パラメータ群を変更するときの水供給量の設定方法を説明する。ここでは、第1制御パラメータ群として都市ガス13A、第2制御パラメータ群としてメタン100%、それぞれに対応したパラメータ設定方法を挙げる。
ここで、都市ガス13Aの原料ガス1モル中の炭素数のモル数は1.17であり、メタン100%のそれは1.0であり、その比は、(1.0÷1.17)の計算式から、0.85となる。
上述のように、原料ガスである炭化水素の組成と、その発熱量との間には相関関係がある。言い換えると、原料ガスの熱量が小さく改質温度が低い場合は、原料ガス供給量を増加させるよう制御パラメータを設定するのがよい。
この場合には、原料ガス中の炭素数の割合が相対的に小さいことが示唆され、供給する水の量を同一とすると、Cの数が小さく水蒸気量は同一であるため、設定したS/Cに比して、実際のS/Cは相対的に大きくなる。
同様に、原料ガスの熱量が大きく、原料ガス供給量が小さくなるよう設定する場合には、原料ガス中の炭素数の割合が相対的に大きいことが示唆される。この場合、供給する水の量が同一とすると、Cの数が大きく、水蒸気量は同一であるため、設定したS/Cに比して、実際のS/Cは相対的に小さくなる。
具体的には、設定しているS/Cが、例えば2.9であり、原料中のCの数が想定の0.85倍となった場合、水蒸気量一定とすると、実際のS/Cとしては3.4程度となる。
ここで、水蒸気改質反応は、吸熱反応であり、S/Cは、その反応熱に大きく寄与する。例えばS/Cが大きくなると、改質温度を一定の温度に保つためには多くの熱量が必要となる、あるいは、供給する熱量が一定の場合には、改質温度が低下してしまう。
つまり、原料ガス供給量の設定で、S/Cが大きく変化してしまうと、燃料電池システム100の安定運転が困難となる。そこで制御器7は、改質温度に基づいて制御パラメータ群のうち、水供給量を同時に変更してもよい。
かかる構成により、水供給量、とりわけS/Cを所定の範囲に保ち、効率よく安定した燃料電池システム100の運転が可能となる。
次に、制御パラメータ群を変更するときの燃焼用空気供給量の設定方法を説明する。
原料ガスである炭化水素1分子中の水素原子の数は、炭素数が増加するにつれて増加する。例えばCが1つのアルカンであるメタンの場合、1分子中の水素は4であり、例えばCが3つのアルカンであるプロパンの場合、1分子中の水素は8である。
すなわち、同じ原料ガス供給量としたとき、原料ガス中の炭素数が多いほど、供給される水素分子の数は大きく、また前述のとおり熱量が大きいため、所定の原料ガス供給量のときの改質温度は高くなる。
言い換えると、原料ガスの熱量が小さく、原料ガス供給量が多くなるよう制御パラメータを設定する場合は、原料ガス中の水素数が相対的に小さいことが示唆され、生成される水素の分子数も少なくなる。この場合、供給する燃焼用空気の量を同一とすると、完全燃焼に必要な燃焼用空気流量に対する、供給空気流量である燃焼空気比λは相対的に大きくなる。
同様に、原料ガスの熱量が大きく原料ガス供給量が小さくなるよう制御パラメータを設定する場合は、原料ガス中の水素数が相対的に大きいことが示唆され、生成される水素の分子数も多くなる。この場合、供給する燃焼用空気の量を同一とすると、燃焼空気比λは相対的に小さくなる。
ここで、燃焼排ガスは、燃料電池システム100の系外に排出されるが、燃焼用空気の流量あるいは燃焼空気比λが大きくなると、系外に持ち出される熱量が増えるため、供給する熱量が一定の場合は、改質温度が低下する。
つまり、原料ガスの補正により燃焼空気比λが大きく変化してしまうと、燃料電池システム100の安定運転が困難となる。例えば、原料ガスの熱量が小さい場合には、燃焼用空気供給量の補正をしないと、熱量が低く、かつ、λが大きいため、改質温度が上がりにくくなり、燃料電池システム100の安定運転が困難となったり、効率が低下したりする。そこで、制御器7は、改質温度に基づいて制御パラメータ群のうち、燃焼用空気供給量を同時に変更してもよい。
かかる構成により、燃焼用空気供給量、とりわけ燃焼空気比λを、所定の範囲で運転できるため、高効率で安定した燃料電池システム100の運転が可能となる。
次に、制御パラメータ群を変更するときの発電量の設定方法を説明する。
都市ガス13Aに対応した制御パラメータ群である、第1制御パラメータ群で運転した場合、原料ガスの供給量は約3.0NL/minであり、燃料電池1での水素利用率を80%としたとき、750W発電が可能だとする。
ここで、都市ガス13Aよりも熱量の少ないガス、例えば第3制御パラメータ群に対応した、窒素が20%でメタンが80%の混合ガスを供給した場合、750Wを発電させるためには、原料ガスをより多く供給する必要がある。
減少した熱量の分に見合った量の原料ガスを増加させれば、同程度の発電が可能であるが、燃料電池システム100で使用する機器の都合、過大な原料ガスを供給できない場合がある。
例えば、原料ガス供給器3として使用されるブースターポンプ等の構成機器には、所定の供給上限がある。また、例えば改質器2に充填されている改質触媒には、対応可能なガス量がある。また、配管等も過大なガスを供給すると、圧損が増大し、安定した運転が困難となる。
そこで、制御器7は、改質温度に基づいて、制御パラメータ群のうち、発電量を変更してもよい。具体的には、第1制御パラメータ群を用いて運転したときの改質温度が580℃であった場合、発電量を700Wに下げるよう設定することができる。
図2において、改質温度と転化率との関係を示したが、改質温度は所定の温度以上で有用な転化率となるが、所定の温度より低いと急激に転化率が低下する。そのため所定の温度以上に改質温度を保つと、効率よく燃料電池システム100を運転できる。
発電量の変更は、使用する燃料電池システム100の構成で、原料ガス供給量の増減だけでは対応できないほどの熱量の変化がある場合に、特に有用である。なお、原料ガス供給量、水供給量、および燃焼用空気供給量を、ともに変更してもよいし、個別に変更をしてもよい。
かかる構成により、原料ガス組成によらず、改質温度を所定の範囲に保ち、安定した燃料電池システム100の運転ができる。また、1つの燃料電池システム100で、広範囲の熱量の原料ガスに対応可能であるため、汎用性の高い装置とすることができる。
(第8の実施の形態)
次に、本発明の第8の実施の形態について説明する。
図13は、本発明の第8の実施の形態における水素生成装置200の構成を示す図である。
図13に示すように、本実施の形態における水素生成装置200は、炭化水素を含む原料ガスおよび水蒸気を用いて改質反応により水素含有ガスを生成する改質器2と、少なくとも原料ガスを燃焼させて改質器2を加熱する燃焼器4と、改質器2の温度を検出する改質温度検出器6とを備えている。燃料電池システムとしては、さらに、改質器2へ原料ガスを供給する原料ガス供給器3と、改質器2に水を供給する水供給器8と、燃焼器4へ燃焼用空気を供給する燃焼用空気供給器9と、原料ガスの供給量を検出する原料ガス供給量検出器5と、制御器7とを備えている。
改質器2には改質触媒が充填されているが、ここではRu系の触媒を改質触媒として用いて、炭化水素を水蒸気改質させて水素を得る方法としている。この改質器2は、燃焼器4からの伝熱により加熱される構造とし、少なくとも原料ガスを燃焼したときの加熱状態が検知できるよう、改質温度検出器6を備えている。
燃焼器4では少なくとも原料ガスを燃焼するが、水素生成中に水素含有ガスを燃焼してもよい。ここでは、改質触媒層の出口側流路に、温度検知器として熱電対を備え、改質触媒から排出されるガスの温度を測定できる構成としている。
改質器2の外側は図示しない断熱材によって覆われている。改質温度検出器6は、原料ガスを燃焼したときの加熱状態が検知できれば、この配置位置は上述の例に限定されるものではない。また、改質反応として、ここでは水蒸気改質反応を挙げたが、少なくとも原料ガスの燃焼による温度変化が検知できる構成であればよく、オートサーマル反応が例示される。
原料ガス供給器3としては、ここではブースターポンプを用い、原料ガスを昇圧して供給できる構成としている。昇圧された原料ガスは、原料ガス供給量検出器5で検出される原料ガス検出量が、所定の流量となるように、原料ガス供給器3が制御される構成としている。
ここで、原料ガス供給量を検出する手段である流量計は、一般的に、予め設定された組成のガスと同一の組成のガスを供給したときに、供給量に基づき電気的に出力される流量である原料ガス供給量検出量(以下「指示流量」と呼ぶ)と実際に流れる流量である原料ガス実供給量(以下「実流量」と呼ぶ)とが所定の精度範囲内で一致する。
一方、それらの組成が異なるときは、指示流量と実流量との間に差が生じる。なお、原料ガスは、脱硫器を通して原料ガス中の硫黄成分を脱硫して供給されてもよい。
また、水素利用機器210として燃料電池を備える構成としてもよい。燃料電池としては、例えば固体高分子形燃料電池(PEFC)または固体酸化物形燃料電池(SOFC)が用いられてもよい。例えばPEFCが用いられる場合は、図示しないCO除去部で、改質器2から排出される改質ガス中のCOが低減される構成としてもよく、CO除去部としては、CO変成器とCO選択酸化器との組み合わせが例示される。
次に、本発明の第8の実施の形態における水素生成装置200の動作を説明する。なお、以下の諸動作は、制御器7が水素生成装置200の各機器を制御することにより行われる。
「水素生成装置の起動方法」
まず水素生成装置200の起動方法について説明する。水素生成は、触媒反応によってなされるが、触媒を所定の温度に保つことで反応が進行する。そこで、まず原料ガス供給量検出器5で検出される原料ガス供給量が、所定の値となるように、原料ガス供給器3が制御されて原料ガスが供給される。
ここでは、フィードバック制御方式が用いられてもよい。原料ガスは、燃焼器4に供給されるが、原料ガスは、改質器2を通って燃焼器4に供給されてもよい。また、改質器2から排出された原料ガスは、水素利用機器210を通ってもよいし、図示されない切換え弁を用いてバイパスされる構成としてもよい。本実施の形態では、改質器2を通った原料ガスが、水素利用機器210をバイパスするように燃焼器4に供給される構成を用いている。
また、燃焼用空気供給器9により、燃焼用空気も燃焼器4に供給され、図示されない点火器により原料ガスが着火される。燃焼用空気の流量は予め定められた所定の流量となるように供給される。
原料ガスの燃焼により、改質器2が昇温され、その温度は改質温度検出器6により検出される。改質器2が昇温され、改質温度検出器6で検出される温度が予め定められた第1温度となったら、水供給器8により所定の流量の水が改質器2に供給される。ここで、第1温度は、触媒層が水供給による結露により水濡れしない温度以上であるとともに、高温による炭素析出が起こらない温度以下であることが望ましく、ここでは150℃とする。
改質器2では、原料ガスと水とにより、水蒸気改質反応が、温度の上昇とともに進行する。燃焼器4では、未反応の原料ガスと、改質器2により生成された水素ガスとを含む混合ガスが燃焼され、改質器2の温度がさらに上昇する。ここで、水素生成装置200にCO除去部を設けた場合には、図示しないヒータ等によりCO除去部を加熱してもよい。
改質温度検出器6で検出される温度が水素生成を行うのに十分高温になったら(ここでは550℃)、水素利用機器210に水素含有ガスを供給して、水素を利用してもよいし、未利用の水素は燃焼器4に戻されて燃焼されてもよい。
「水素生成装置の定常時の運転方法」
次に、水素生成装置200の定常時の運転方法について説明する。制御器7は、原料ガス供給器3を制御し、改質器2に原料ガスを供給する。改質器2の温度は、水蒸気改質反応を促進させ、水素利用機器210で必要な水素を得るために予め定められた目標温度に制御される必要がある。
ここでは、改質温度検出器6で検出される温度が630℃となるように、原料ガス供給器3を用いて、原料ガス供給量検出器5で検出される原料ガス流量が制御される。原料ガス流量の制御方法としては、フィードバック制御を用いてもよい。
また、改質器2の目標温度は、燃焼器4での加熱量、水素生成装置200から排出される熱量、および、水素生成装置200の機体からの放熱等が影響する温度であるが、水素利用機器210で必要な水素量、および、水素生成装置200での原料ガスの水素への転化率等から予め決められるのがよい。
また、制御器7は、水供給器8を制御して、改質器2に、水蒸気改質反応に必要な水蒸気(以下、改質水とする)を供給する。本実施の形態では、改質水の流量は、改質器2に供給される原料ガス中の炭素数に対する水の比率を示すS/Cが、2.9となるように水供給器8を制御する。
ここで、原料ガス中の炭素数は、原料ガスの組成によって変化する。ここではメタン100%の組成の原料ガスが供給されるものと想定しているので、原料ガス中の炭素数は1.00としてS/Cを算出し、水を供給する。
また、制御器7は、燃焼用空気供給器9を制御して、燃焼器4に供給された水素利用機器210からのオフガスを燃焼させるのに必要な燃焼用空気を供給する。燃焼器4では、オフガスを燃焼させ、改質器2での水蒸気改質反応に必要な熱を供給する。ここで、燃焼用空気の流量は、理論空気流量に対する供給空気流量をあらわす空気比が1.7となるように制御する。
また、制御器7は、原料ガス供給量検出器5で検出される原料流量と、改質温度検出器6で検出される温度から算出される転化率とから、生成する水素生成量を算出し、所定の水素利用率範囲内で水素を利用できるよう水素利用機器210を制御する。
制御器7は、改質温度を目標温度に維持するために、原料ガス供給器3を制御し、原料ガス供給量を増加させる。しかしながら、想定する原料ガス組成(ここではメタン100%)とは異なる組成の原料ガスが供給された場合、所定の流量を供給していると原料ガス供給量検出器5が検出していても、すなわち指示流量が所定の値であっても、実際に供給されている原料ガス供給量は異なる可能性がある。
例えば、メタンに15%の窒素が含まれる場合、実際に供給されるガスの流量および熱量が、想定から逸脱し、原料ガス供給量を所定の範囲内で制御しても、改質器2の温度を所定の温度に維持できなくなる、あるいは必要な水素が生成されず、水素利用機器210で必要な水素が利用できず、水素生成装置200として安定運転が困難になる可能性がある。
次に、本発明の第8の実施の形態における水素生成装置200の特徴的な動作について説明する。
制御器7は、所定の流量で原料ガスを燃焼器4で燃焼し改質器2を昇温した場合に、改質温度検出器6で検出される温度変化速度を用いて、原料ガス供給器3で供給されている、熱量より換算される原料ガス実供給量(実流量)と、原料ガス供給量検出器5で検出される原料ガス供給量検出量(指示流量)との相関を補正するよう制御する。
または、温度変化速度を用いて、原料ガス供給量検出量(実流量)を補正してもよいし、原料ガス供給量が目標供給量となるよう制御しているときの原料ガスの目標供給量を補正するよう制御してもよい。
また、温度変化速度を用いて補正係数を算出し、補正係数を原料ガス供給量検出量に乗じた値を補正された原料ガス供給量としてもよいし、補正係数を補正前の原料ガスの目標供給量に乗じた値を、補正された原料の目標供給量とするように制御してもよい。
「補正値算出方法」
前述のとおり、水素生成装置200の起動においては、原料ガス供給量検出器5で検出される原料ガス供給量が所定の値となるように、原料ガス供給器3が制御されて原料ガスを供給する。原料ガスの燃焼により、改質器2が昇温され、その温度変化は、改質温度検出器6により検出される。
ここで、原料ガスを燃焼器4で燃焼し改質器2を昇温した場合に、改質温度検出器6で検出される温度変化速度を表す係数としてαを定義する。ここでは変化速度αを、改質温度検出器6で検出される温度が、温度T1から温度T2になるまでの時間として定義する。
なお、昇温を開始してから所定の時間経過後の改質温度検出器6で検出される温度をもって、変化速度としてもよいし、単位時間あたりの上昇温度を変化速度としてもよい。しかしながら、定義の仕方によってαの大小が変わり得るので、熱量の低いガスが供給されたときに熱量を増やすよう、あるいは熱量の高いガスが供給されたときに熱量を低減するよう補正するよう、適宜選択するとよい。
原料ガス供給量検出器5で校正された所定の組成のガス(ここではメタン100%)を、原料ガス供給量検出器5で検出される供給量が、所定の供給量で供給し燃焼したときの、改質温度検出器6で検出される温度変化速度をα0とする。α0は、予備実験あるいは計算から算出されるのがよい。
この変化速度αは、メタン100%が実際に供給された場合にα0となるが、組成Aとして熱量の小さいガス(例えば窒素が15%でメタンが85%の混合ガス)を供給した場合、温度T1から温度T2になるまでの時間として定義されるαAは、α0よりも大きい値となる。
すなわち、所定の流量を供給していると指示していても、実際に供給されている原料ガスの供給量が小さい分、改質温度検出器6で検出される昇温速度は遅く、所定の温度に達するまでに、より長い時間がかかることとなる。
同様に、組成Bとして熱量の大きいガス(例えばプロパンが15%でメタンが85%の混合ガス)を供給した場合、温度T1から温度T2になるまでの時間として定義されるαBは、α0よりも小さい値となる。
すなわち、所定の流量を供給していると指示していても、実際に供給されている原料ガスの供給量が大きい分、改質温度検出器6で検出される昇温速度は大きく、所定の温度に達するまでに、より短い時間ですむこととなる。
図14は、本発明の第8の実施の形態において、組成が異なるガスを供給したときの起動時の昇温速度の差を示す図である。
図14に示すように、実際に供給されるガスの組成が想定と異なると、指示流量と実流量とに乖離が生じ、その熱量差が昇温速度の差として現れる。
ここでは、α0と、実際に運転されたときの変化速度αとの比、α0/αを用いて補正係数を算出する。
なお、乗じる値を、α0/αを用いて算出するか、その逆数であるα/α0を用いて算出するかは、昇温速度αの定義の仕方によって変わり得るので、熱量の低いガスが供給されたときに熱量を増やすよう、あるいは熱量の高いガスが供給されたときに熱量を低減するよう補正するよう、適宜選択するとよい。
なお、αとα0との比そのものでなく、αとα0とをもとに、所定の係数を用いて算出される値をもって補正してもよい。
具体的には、予めメタン100%で校正された原料ガス供給量検出器5で、メタン100%のガスを所定流量Q(ここでは1.0NL/min)供給した際の、温度T1から温度T2になるまで(ここでは150℃から550℃になるまで)の時間として定義する変化速度α0が、30分だとする。
ここで、メタン100%で校正された原料ガス供給量検出器5に、組成A(窒素が15%でメタンが85%の混合ガス)のガスを原料ガス供給量検出器5が検出する供給量がQ(ここでは1.0NL/min)となるよう供給して起動したときに、変化速度αが、α0よりも大きい35分だとする。
ここで実際に供給された原料ガスの熱量は、メタン100%の時に比べて、約0.86倍(α0÷α=30÷35≒0.86)となるので、補正係数X=0.86と設定する。ここではα0とαとの比から算出したが、例えば所定の係数を乗じた値を真の補正値としてもよい。なお、昇温速度から供給されている原料ガスの熱量が判定できればよく、原料ガスの組成そのものの判定はしなくてもよい。
「原料ガス供給量補正方法」
次に原料ガス供給量の補正方法を説明する。
得られた温度変化速度を用いて、原料ガス供給器3で供給されている原料ガス実供給量と、原料ガス供給量検出器5で検出される原料ガス供給量検出量との相関を補正する。より具体的には、得られた補正値を用いて、原料ガス供給量検出器5で検出される値を補正する、または、原料ガスの目標流量を補正する。
前者の原料ガス供給量検出器5で検出される値を補正する場合には、Xの値が例えば0.86であった場合、補正前に検出していた原料ガス供給量の0.86倍が真の原料ガス供給量であると、原料ガス供給量検出器5が認識するよう補正する。これにより、目標流量が同じでも、補正前の0.86の逆数、すなわち1.16倍の原料ガスが実際に供給されるよう補正することとなる。
この場合、原料ガス供給量検出器5自体が出力する、供給量に相当する信号を増減させるよう補正してもよいし、原料ガス供給量検出器5が出力した、供給量に相当する信号を受けた装置、例えばマイコンメータが補正をしてもよい。
また、後者の原料ガスの目標流量を補正する場合、補正前の目標流量が3.0NL/minであった場合、Xの逆数である1.16を乗じた、3.48NL/minを真の目標流量となるよう補正する。
なお、起動時の変化速度から補正値を算出し、その後の定常運転以降において補正した値を使用してもよい。
図15は、本発明の第8の実施の形態における、校正ガスとしてメタン100%を用いる原料ガス供給量検出器5において、メタンが85%で窒素が15%の混合ガスを供給したときの補正の一例を示す図である。
また、図14に、補正後の起動の特性を同時に示したが、補正をすることで校正ガス組成と同等の熱量となるため、起動時の昇温速度も同等となる。
かかる構成により、原料ガス供給量検出器5の校正に用いられるガス組成と異なるガス組成地域に設置した場合、および、季節的な組成変動がある場合等、原料ガスの組成がどのような場合であっても、昇温速度から、容易に原料ガス供給量検出器5で検出される値を補正する、または、原料の目標流量を補正することができる。
また、原料ガス供給量検出器5が検出する見かけの原料供給量によらず、実際に供給される原料ガス供給量、すなわち熱量を所定の値に保つことができ、効率よく安定した水素生成が可能となる。
また、補正値を算出するための温度変化量の測定は、改質器2に原料ガスを供給した後に、改質温度検出器6で検出される温度が所定の温度に達したことをもって改質器2への水供給を開始した後に、改質温度検出器6で検出される温度変化量の測定を行っても構わない。
水の供給を開始すると、原料ガス組成が想定とずれている場合は、S/Cの値もずれるため(後述する)、より顕著に温度変化量に差がでる。そのため、水の供給を開始した後に測定を行うことで、より正確に原料ガス組成の差を検出できる。
なお、補正係数Xが所定の範囲から外れた時(例えば±5%の範囲外となったとき)に補正をするようにしてもよい。
「水供給量補正方法」
次に、水供給量の補正方法を説明する。
原料ガスである炭化水素の組成と、その発熱量との間には相関関係がある。
図16は、本発明の第8の実施の形態における、アルカンにおける炭素数と燃焼熱との相関関係を示す図である。
図16に示すように、基本的には、原料中の炭素数が増加すると、原料の単位体積あたりの燃焼熱(発熱量)は増加し、燃焼熱(発熱量)と炭素数とはおおよそ比例関係にある。すなわち、同じ原料ガス供給量としたとき、原料ガス中の炭素数が多いほど、供給される熱量が大きく、起動時の温度変化速度が大きい(所定の温度になるまでの時間が短い)ことになる。
言い換えると、原料ガスの熱量が小さく原料ガス供給量が多くなるよう補正する場合は、原料ガス中の炭素数の割合が相対的に小さいことが示唆される。この場合、供給する水の量を補正前と変化させない場合、Cの数が小さく水蒸気量は同一であるため、設定したS/Cに比して、実際のS/Cは相対的に大きくなる。
同様に、原料ガスの熱量が大きく原料ガス供給量が小さくなるよう補正する場合は、原料ガス中の炭素数の割合が相対的に大きいことが示唆される。この場合、供給する水の量を変化させない場合、Cの数が大きく水蒸気量は同一であるため、設定したS/Cに比して実際のS/Cは相対的に小さくなる。
具体的には、設定しているS/Cが例えば2.9であり、原料中のCの数が想定の0.85倍となった場合、水蒸気量を一定とすると、実際のS/Cは3.4程度となってしまう。
ここで、水蒸気改質反応は吸熱反応であり、S/Cはその反応熱に大きく寄与する。例えばS/Cが大きくなると、改質温度を一定の温度に保つためには、多くの熱量が必要となる、あるいは供給する熱量が一定の場合は改質温度が低下してしまう。
つまり、原料ガスの補正によりS/Cが大きく変化してしまうと、水素生成装置200の安定運転が困難となる。例えば、原料ガスの熱量が小さい場合、水供給量の補正をしないと、熱量が低く、かつ、S/Cが大きいため、改質温度が上がりにくくなり、水素生成装置200の安定運転が困難となる。また過不足の水供給は、効率の低下にもつながる。
そこで、制御器7は、得られた補正値を用いて、補正前より原料ガス供給量が多くなるよう補正する場合には、改質器2に供給する水の供給量を補正前より減らし、補正前より原料ガス供給量が少なくなるよう補正する場合には、水の供給量を補正前より増やすように水供給器8を制御する。
より具体的には、起動時の温度変化速度を用いて算出された補正係数を用いて、その補正係数を水の目標供給量に乗じてもよい。例えば、前例のように、X=0.86と算出された場合、補正前の目標流量に0.86を乗じた値を補正後の目標流量としてもよい。なお、算出された補正係数と所定の係数とから算出される補正値を用いて補正してもよい。
かかる構成により、原料ガス供給量を補正したときに、水供給量が大きくずれてしまうことを抑制することができ、S/Cを所定の範囲で運転できるため、改質温度を所定の温度に保ち、効率よく安定した水素生成装置200の運転が可能となる。
「燃焼用空気供給量補正方法」
次に、燃焼用空気供給量の補正方法を説明する。
原料ガスである炭化水素1分子中の水素原子の数は、炭素数が増加するにつれて増加する。例えばCが1つのアルカンであるメタンの場合、1分子中の水素は4であり、例えばCが3つのアルカンであるプロパンの場合、1分子中の水素は8である。
すなわち、同じ原料ガス供給量としたとき、原料ガス中の炭素数が多いほど、供給される水素分子の数が大きく、また前述のとおり熱量が大きいため、起動時の温度変化速度が大きい(所定の温度になるまでの時間が短い)ことになる。
言い換えると、原料ガスの熱量が小さく原料ガス供給量が多くなるよう補正する場合は、原料ガス中の水素数が相対的に小さいことが示唆され、生成される水素の分子数も少なくなる。この場合、供給する燃焼用空気の量を変化させない場合、完全燃焼に必要な燃焼用空気流量に対する、供給空気流量である燃焼空気比λは相対的に大きくなる。
同様に、原料ガスの熱量が大きく原料ガス供給量が小さくなるよう補正する場合は、原料ガス中の水素数が相対的に大きいことが示唆され、生成される水素の分子数も多くなる。この場合、供給する燃焼用空気の量を変化させない場合、燃焼空気比λは相対的に小さくなる。
ここで、燃焼排ガスは、水素生成装置200の系外に排出されるが、燃焼用空気の流量、あるいは燃焼空気比λが大きくなると、系外に持ち出される熱量が増えるため、改質温度を一定の温度に保つためには、多くの熱量が必要となる、あるいは、供給する熱量が一定の場合には、改質温度が低下する。
つまり、原料ガスの補正により燃焼空気比λが大きく変化してしまうと、水素生成装置200の安定運転が困難となる。例えば、原料ガスの熱量が小さい場合、燃焼用空気供給量の補正をしないと、熱量が低く、かつ、λが大きいため、改質温度が上がりにくくなり、水素生成装置200の安定運転が困難となったり、効率が低下したりする。
そこで、制御器7は、得られた補正値を用いて、補正前より原料ガス供給量が多くなるよう補正する場合には、燃焼器4に供給する燃焼用空気の供給量を補正前より減らし、補正前より原料ガス供給量が少なくなるよう補正する場合には、燃焼用空気の供給量を補正前より増やすように、燃焼用空気供給器9を制御する。
なお、補正された原料ガス供給量から導かれる、水素利用機器210からのオフガス流量に対する、燃焼器4へ供給する燃焼用空気流量の比が一定となるよう燃焼用空気供給器9を制御してもよい。
かかる構成により、原料ガス供給量を補正したときに、燃焼用空気供給量が大きくずれてしまうことを抑制することができ、燃焼空気比λを所定の範囲で運転できるため、改質温度を所定の温度に保ち、高効率で安定した水素生成装置200の運転が可能となる。
なお、原料ガスの補正に合わせて、水および燃焼用空気の補正を同時に行ってもよい。
(第9の実施の形態)
次に、本発明の第9の実施の形態における水素生成装置200について説明する。
図17は、本発明の第9の実施の形態における水素生成装置200の構成を示す図である。
図13に示す実施の形態と同一部または相当部には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
本実施の形態では、第8の実施の形態における原料ガス供給量検出器5として、質量流量計5aを用いる構成としている。質量流量計5aは、一般的に圧力、温度によらず広い流量範囲で精度よく流量を検出できる特徴をもつ。また供給されるガスの熱量と指示流量とに相関関係があるので、供給する熱量を重視する水素生成装置200において特に有用である。
質量流量計5aには、予め校正されたガス組成が設定されるが、ここでは都市ガスの代表ガスである13Aを選択する。すなわち、実際に供給する原料ガスが13Aの場合、指示流量と実流量とが一致する。一方、実際に供給する原料ガス組成が異なると、その成分に応じて実流量と指示流量とが乖離する。なお、質量流量計5aの校正ガスとして設定するガス組成は、実際に供給され得るガス組成に近い値を選択するとよい。
一方、質量流量計5aは、熱量と指示流量とに相関関係があるものの、校正されたガス組成と異なるガスが供給されると、熱量を一定に保てるわけではない。
図18は、本発明の第9の実施の形態における、一般的な質量流量計のガス組成毎のコンバージョンファクター(C.F.)の値を示す図である。
混合ガスの場合は、単独のガスでのC.F.とその混合比率とを掛け合わせたものを足し合わせることで算出できる。
ここで、校正(設計)されたガス組成と実際に供給されるガス組成とが異なるときの、質量流量計5aにおける実流量は、以下の式で表される。
(実流量)=(指示流量)×(実組成でのC.F.)÷(校正ガスでのC.F)
ここで、例えば都市ガスの代表ガスである13A(原料ガス1モル中のCのモル数:1.17)で校正された質量流量計5aを用いて、メタン100%のガス(原料ガス1モル中のCのモル数:1.0)を供給した場合を考える。
図18から、実組成でのC.F.、すなわちメタンのC.F.は0.74である。また、校正ガスでのC.F.、すなわち13AのC.F.は0.71である。これらから、質量流量計5aが認識する値が、所定の値F0となるように供給して、水素生成装置200を起動したとき、実際に供給されるガスの流量F’は、(F0×0.74÷0.71)の計算式から、(F0×1.05)となる。すなわち、質量流量計5aが検知する流量の1.05倍の流量のガスが実際には供給されることになる。
一方、原料ガス中の炭素のモル数の割合C’は、(1.0÷1.17)の計算式から、0.85となる。この炭素のモル数は、前述のとおり図16で示したように、熱量と比例関係にあり、供給される総熱量Qは、炭素数Cと流量Fとの積で近似できる。つまり、13Aで校正された質量流量計5aにメタン100%のガスを供給すると、実際に供給されるガスの熱量Q’は、次式で表される。
Q’≒C’×F’=0.85×1.05×Q=0.89×Q
すなわち実際に供給される熱量は、13Aの時に比べて0.89倍程度となり、起動時の昇温速度も0.89倍程度となる。
質量流量計5aを用いる場合、熱量と指示流量とに比例関係があるため、例えば、校正ガスよりも熱量の低いガスを供給した場合、前例の場合、単位体積あたりの熱量は0.85倍程度になるものの、実流量が指示流量の1.05倍程度となるため、供給される熱量は0.85よりも大きい0.89倍程度となり有用と言える。
しかしながら、この差が大きいと、原料流量に過不足が生じることで、生成水素量に過不足が生じたり、原料ガスの熱量に過不足が生じることで改質器2を所定の温度に保てなくなったりする等、水素生成装置200の安定運転が困難となる。
次に、本発明の第9の実施の形態における特徴的な動作について説明するが、第8の実施の形態との相違点について説明し、それ以外は第8の実施の形態と同様とする。
「原料ガス供給量補正方法」
次に、原料ガス供給量の補正方法を説明する。
制御器7は、前述のように温度変化速度(例えば昇温速度の比:ここでは0.89)から、質量流量計5aで検出される値を補正する、または、原料の目標流量を補正するよう制御する。
より具体的には、前者の質量流量計5aで検出される値を補正する場合は、Xの値が例えば0.89であった場合、補正前に検出していた原料ガス供給量の0.89倍が真の原料ガス供給量であると質量流量計5aが認識するよう補正することで、目標流量が同じでも、補正前の0.89の逆数、すなわち1.12倍の原料ガスが実際に供給されるよう補正することとなる。
また、後者の原料ガスの目標流量を補正する場合、補正前の目標流量が例えば3.0NL/minであった場合、Xの逆数である1.12を乗じた、3.36NL/minを、真の目標流量となるよう補正する。なお、起動時の変化速度から補正値を算出し、その後の定常運転以降において補正した値を使用してもよい。
かかる構成により、質量流量計5aの校正されたガス組成とは異なるガス組成の地域に設置した場合、および、季節的な組成変動がある場合等、原料ガスの組成がどのような場合であっても、昇温速度から容易に、質量流量計5aで検出される値を補正する、または、原料の目標流量を補正することができる。
また、質量流量計5aが検出する見かけの原料供給量によらず、実際に供給される原料ガス供給量、すなわち熱量を、所定の値に保つことができ、安定した水素生成が可能となる。また、質量流量計5aを用いることで、より正確に広い条件で水素生成装置200を運転することが可能である。
「水供給量補正方法」
次に、水供給量の補正方法を説明する。
制御器7は、得られた補正値を用いて、補正前より原料ガス供給量が多くなるよう補正する場合に、改質器2に供給する水の供給量を補正前よりも減らし、補正前より原料ガス供給量が少なくなるよう補正する場合に、水の供給量を補正前より増やすように、水供給器8を制御する。なお、制御器7は、補正された原料ガス中の炭素のモル数に対する、改質器2へ供給する水のモル数の比率であるS/Cが一定となるように、水供給器8を制御してもよい。
かかる構成により、原料ガス供給量を補正したときに、水供給量が大きくずれてしまうことを抑制することができ、S/Cを所定の範囲で運転できるため、供給される原料ガスの組成によらず改質温度を所定の温度に保ち、高効率で安定した水素生成装置200の運転が可能となる。
「燃焼用空気供給量補正方法」
次に、燃焼用空気供給量の補正方法を説明する。
制御器7は、得られた補正値を用いて、補正前より原料ガス供給量が多くなるよう補正する場合に、燃焼器4に供給する燃焼用空気の供給量を補正前より減らし、補正前より原料ガス供給量が少なくなるよう補正する場合に、燃焼用空気の供給量を補正前より増やすように、燃焼用空気供給器9を制御する。
なお、制御器7は、補正された原料ガス供給量から導かれる、水素利用機器210からのオフガス流量に対する、燃焼器4へ供給する燃焼用空気流量の比が一定となるように、燃焼用空気供給器9を制御してもよい。
かかる構成により、原料ガス供給量を補正したときに、燃焼用空気供給量が大きくずれてしまうことを抑制することができ、燃焼空気比λを所定の範囲で運転できるため、供給される原料ガスの組成によらず、改質温度を所定の温度に保ち、高効率で安定した水素生成装置200の運転が可能となる。
(第10の実施の形態)
次に、本発明の第10の実施の形態における水素生成装置200について説明する。
図19は、本発明の第10の実施の形態における水素生成装置200の構成を示す図である。
図13に示される第8の実施の形態と、同一部または相当部には同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。本実施の形態では、第8の実施の形態の構成に加えて、原料ガスの漏えい有無を検知するガス漏えい検知部20を備える構成としている。
次に、本発明の第10の実施の形態における特徴的な動作について説明するが、第8の実施の形態との相違点について説明し、それ以外は第8の実施の形態と同様とする。
原料ガスを燃焼器4で燃焼し、改質器2を昇温し、改質温度検出器6で検出される温度変化速度を測定する際に、仮に、微量の原料ガスの漏えいがあると、水素生成装置200としては安全な範囲であっても、温度変化速度に影響を及ぼし、正確な判定ができない。
そこで、制御器7は、改質器2の温度変化速度を検出する前に、原料ガスの漏えいがないことを検知する。
ガス漏えい検知部20としては、例えば可燃性ガス検知器により、その信号を検知して漏えいがないことを確認してもよい。また、例えば、限られた所定の経路内に圧力をかけ、圧力の低下がないことを確認することによって、ガス漏えいがないことを間接的に確認してもよい。なお、これらの操作は、水素生成装置200の温度変化速度を検出する前に確認するのがよく、起動中、すなわち昇温中に適宜確認してもよい。
かかる構成により、確実に昇温時の改質器2の温度変化を測定することができ、正確な判定ができるため、より安定した水素生成装置200の運転が可能となる。
(第11の実施の形態)
次に、本発明の実施の形態11における水素生成装置200について説明する。
図20は、本発明の第11の実施の形態における水素生成装置200の構成を示す図である。
図13に示される第8の実施の形態と、同一部または相当部には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。本実施の形態では、第8の実施の形態の構成に加えて、温度変化速度に基づく原料ガス供給量の補正値を記憶する記憶部21を備える構成としている。
次に、本発明の第11の実施の形態における特徴的な動作について説明するが、第8の実施の形態との相違点について説明し、それ以外は、第8の実施の形態と同様とする。
制御器7は、記憶部21が記憶した補正値に基づき、次回以降の起動および運転を行うよう制御する。
このように、一度判定した結果に基づき起動および運転を行うので、次回以降の起動で、より安定な運転ができる。仮に使用する原料ガス供給量検出器5の校正されたガス組成と、実際に供給されるガス組成とが大きくかけ離れていても、次回以降の起動および運転で、実際に供給されるガス組成に近い値で運転できる。その際、1回の補正で十分な補正ができなかった場合でも、記憶した補正値に基づき補正を繰り返すことで、徐々に運転パラメータを適正化し、安定した運転が可能となる。
なお、水素生成装置200の起動毎に補正をして起動毎に記憶してもよいし、所定のタイミングで補正をして記憶するような構成としてもよい。
かかる構成により、校正されたガス組成と異なる地域に水素生成装置200を設置しても、容易に実際の供給ガスに合わせ込んで安定運転が可能となるとともに、季節的なガス組成の変動、または、長期的なガス品質の変化等があっても、長期にわたって安定して水素生成装置200を運転できる。
(第12の実施の形態)
次に、本発明の第12の実施の形態における水素生成装置200について説明する。
図21は、本発明の第12の実施の形態における水素生成装置200の構成を示す図である。
図13に示される第8の実施の形態と同一部または相当部には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。本実施の形態では、第8の実施の形態の構成に加えて、水素生成装置200の周囲温度を検出する周囲温度検出器22を備える構成としている。
次に、本発明の第12の実施の形態における特徴的な動作について説明するが、第8の実施の形態との相違点について説明し、それ以外は、第8の実施の形態と同様とする。
制御器7は、周囲温度検出器22が検出する温度に基づいて、温度変化速度の値を補正する。
改質器2の温度変化速度は、燃焼による温度上昇が寄与するとともに、改質器2からの放熱や供給される原料ガスの温度によって変わりうる。放熱量は、機器(断熱材)の表面温度と、周囲温度との差に依存する。すなわち、例えば周囲温度が低ければ、放熱量が相対的に大きくなるとともに、供給される原料ガスおよび燃焼用空気の温度が低くなるため、温度変化速度が小さく(温度が上がりにくく)なる。
そのため、周囲温度をもとに温度変化速度を補正することで、原料ガスの熱量に起因する補正が、より正確にできることになる。
かかる構成により、周囲温度によらず、原料ガスの熱量に起因する改質器2の温度変化速度を、より正確に算出することができ、原料ガス供給量を補正することができるため、水素生成量を所定の値に保った、安定した運転が可能な水素生成装置200を実現することができる。
(第13の実施の形態)
次に、本発明の第13の実施の形態における水素生成装置について説明する。本実施の形態の構成は、本発明の第8の実施の形態における水素生成装置の構成と同様とすることができため、詳細な説明は省略する。
次に、本発明の第13の実施の形態における特徴的な動作について説明するが、第8の実施の形態との相違点について説明し、それ以外は第8の実施の形態と同様とする。
制御器7は、改質器2の運転時間に基づいて、温度変化速度の値を補正する。
改質器2の温度変化速度は、燃焼による温度上昇が寄与するとともに、例えば触媒の劣化に伴い変わり得る。水蒸気改質反応は、触媒によってなされるが、触媒は一般的に経時的に劣化し、反応速度が遅くなる傾向になる。反応速度が変化すると、反応熱による温度変化量が変わるため、たとえ同じ熱量の原料ガスが経時的に変わらず供給されていても、改質器2の温度変化速度は経時的に変わり得る。そのため、改質器2の運転時間に基づいて温度変化速度を補正することで、原料ガスの熱量に起因する補正が、より正確にできることになる。
かかる構成により、運転時間の経過に伴う劣化等によらず、原料ガスの熱量に起因する改質器2の温度変化速度を、より正確に算出することができ、原料ガス供給量を補正することができるため、水素生成量を所定の値に保った安定した運転が可能な水素生成装置200を実現することができる。
(第14の実施の形態)
図22は、本発明の第14の実施の形態における水素生成装置200の構成を示す図である。
図22に示すように、本実施の形態における水素生成装置200は、炭化水素を含む原料ガスおよび水蒸気を用いて改質反応により水素含有ガスを生成する改質器31と、改質器31から供給される水素含有ガス中の一酸化炭素の濃度を低減する選択酸化器32とを備えている。また水素生成装置200は、原料ガスおよび水素含有ガスのうちの少なくとも一方を燃焼させて改質器31を加熱する燃焼器35と、改質器31の温度を検出する改質温度検出器38とを備えている。
また、システムとしては、さらに、選択酸化器32に選択酸化用空気を供給する選択酸化空気供給器33と、改質器31へ原料ガスを供給する原料ガス供給器34と、燃焼器35へ燃焼用空気を供給する燃焼用空気供給器36と、原料ガスの供給量を検出する原料ガス供給量検出器37と、制御器39とを備えている。
改質器31には改質触媒を充填しているが、ここではRu系の触媒を改質触媒として用い、水素を得る方法とした。この改質器31は、燃焼器35からの伝熱により加熱される構造とし、少なくとも原料ガスを燃焼したときの加熱状態が検知できるように、改質温度検出器38を備えている。
燃焼器35では、炭化水素を含む原料ガスおよび水素含有ガスのうちの少なくとも一方を燃焼する。ここでは、改質触媒層の出口側流路に、温度検出器として熱電対を備え、改質触媒から排出されるガスの温度を測定できる構成としている。改質器31の外側は、図示しない断熱材によって覆われている。
改質温度検出器38は、原料ガスを燃焼したときの加熱状態が検知できれば、この配置位置は上述の例に限定されるものではない。また、少なくとも原料ガスの燃焼による温度変化が検知できる構成であればよく、改質反応としては、水蒸気改質反応、部分酸化反応、およびオートサーマル反応が例示される。
選択酸化器32には、選択酸化触媒としてRu系の触媒を用い、選択酸化空気供給器33より選択酸化用空気が供給される。選択酸化触媒上では、水素含有ガス中の一酸化炭素が、選択的に、酸化反応(発熱反応)により概ね10ppm以下まで低減される。なお、除去されるべき一酸化炭素流量に対する、供給する酸素流量の比を示すO2/COが、1.5程度になるように選択酸化用空気を供給する。
ここで、過剰な酸素の供給は、CO以外の水素の燃焼に寄与し、必要な水素の消費につながる。また、温度上昇につながるので、触媒および反応器の耐久性、ならびに、副次的なメタン化反応による暴走反応を起こす可能性もあり、供給する空気(酸素)の流量を管理することは重要である。なお、改質器31から排出され、一酸化炭素を含む水素含有ガスを、CO変成触媒を用いて一酸化炭素を低減した後、選択酸化器32に供給するような構成としてもよい。
原料ガス供給器34としては、ここではブースターポンプを用い、原料ガスを昇圧して供給できる構成としている。昇圧した原料ガスは、原料ガス供給量検出器37で検出される原料ガス検出量が所定の流量となるように、原料ガス供給器34を制御する構成とする。原料ガス供給量検出器37として、ここでは質量流量計を用いる。質量流量計は、比較的安価で、広流量域において温度および圧力の影響を受けずに流量を測定できるメリットがある。なお、原料ガスは、脱硫器を通して原料ガス中の硫黄成分を脱硫して供給してもよい。
次に、本発明の第14の実施の形態における水素生成装置200の動作を説明する。なお、以下の諸動作は、制御器39が水素生成装置200の各機器を制御することにより行われる。
「水素生成装置の起動方法」
まず、水素生成装置200の起動方法について説明する。水素生成は、触媒反応によってなされるが、触媒を所定の温度に保つことで反応が進行する。そこで、まず、原料ガス供給量検出器37で検出される原料ガス供給量が、所定の値となるように、制御器39が、原料ガス供給器34を制御して原料ガスを供給する。
ここではフィードバック制御方式が用いられてもよい。原料ガスは、燃焼器35に供給されるが、原料ガスは、改質器31を通って燃焼器35に供給されてもよい。また、改質器31から排出された原料ガスは、水素利用機器210を通ってもよいし、図示されない切換え弁等を用いてバイパスされる構成としてもよい。本実施の形態では、改質器31を通った原料ガスが、水素利用機器210をバイパスするように燃焼器35に供給される構成を用いる。
また、燃焼用空気供給器36により、燃焼用空気も燃焼器35に供給され、図示されない点火器により原料ガスが着火される。燃焼用空気の流量は、予め定められた所定の流量となるように供給する。原料ガスの燃焼により、改質器31が昇温され、その温度は改質温度検出器38により検出される。
改質器31では、原料ガスの改質反応が温度の上昇とともに進行する。燃焼器35では、未反応の原料ガスと、改質器31により生成された水素ガスとを含む混合ガスが燃焼され、改質器31の温度がさらに上昇する。ここで、水素生成装置200として、選択酸化器32を含むCO除去部を、図示しないヒータ等により加熱してもよい。
改質温度検出器38で検出される温度が水素生成を行うのに十分高温になったら(ここでは550℃)、水素利用機器210に水素含有ガスを供給して、水素を利用してもよく、未利用の水素は、燃焼器35に戻されて燃焼されてもよい。
「水素生成装置の定常時の運転方法」
次に、水素生成装置200の定常時の運転方法について説明する。制御器39は、原料ガス供給器34を制御し、改質器31に原料ガスを供給する。改質器31の温度は、改質反応を促進させ、水素利用機器210で必要な水素を得るために、予め定められた目標温度に制御される必要がある。
ここでは、改質温度検出器38で検出される温度が630℃となるように、原料ガス供給器34を用いて、原料ガス供給量検出器37で検出される原料ガス流量を制御する。原料ガス流量の制御方法として、フィードバック制御を用いてもよい。
改質器31の目標温度は、燃焼器35での加熱量、水素生成装置200から排出される熱量、および、水素生成装置200の機体からの放熱等が影響する温度であるが、水素利用機器210で必要な水素量、および水素生成装置200での原料ガスの水素への転化率等から予め決められるのがよい。
また、制御器39は、燃焼用空気供給器36を制御し、燃焼器35に供給された水素利用機器210からのオフガスを燃焼させるのに必要な燃焼用空気を供給する。燃焼器35では、オフガスを燃焼させ、改質器31での改質反応に必要な熱を供給する。ここで、燃焼用空気の流量は、理論空気流量に対する供給空気流量を表す空気比が、1.7となるように制御した。
また、制御器39は、原料ガス供給量検出器37で検出される原料流量と、改質温度検出器38で検出される温度とから算出される転化率から、生成する水素生成量を算出し、所定の水素利用率範囲内で水素を利用できるように、水素利用機器210を制御する。
制御器39は、改質温度を目標温度に維持するために、原料ガス供給器34を制御し、原料ガス供給量を増加させる。しかしながら、原料ガス中に窒素および二酸化炭素等の不活性ガスが多量に含まれる場合には、原料ガスの単位体積あたりの熱量が低くなるため、所定の温度に保つため、あるいは所定の水素量を得るため、必要な原料流量が増加することになる。
「原料ガス組成と一酸化炭素流量」
次に、選択酸化器32で除去すべき一酸化炭素の流量と、ガス組成との関係について説明する。
ここでは、改質反応として水蒸気改質反応を例とし、供給する水蒸気と原料ガス中の炭素数との比であるS/C=2.8、改質出口温度を600℃とし、さらに、変成器を備え、変成器の出口温度が200℃である場合を想定する。
ここで、原料ガスとして、メタン100%のガスを3.0NL/min供給するとする。この場合、改質反応、および変成反応を経て、平衡上、選択酸化器32へ供給される一酸化炭素の流量は0.022NL/minとなる。供給する原料ガス流量に対する、選択酸化器32に供給される一酸化炭素流量の割合は、(0.022÷3.0×100)の計算式から0.73%となる。
一方、原料ガスとして、窒素が20%でメタンが80%の混合ガスを供給した場合には、供給流量および改質温度が同一とすると、平衡上、選択酸化器32へ供給される一酸化炭素の流量は、0.018NL/minとなる。この場合、供給する原料ガス流量に対する、選択酸化器32に供給される一酸化炭素流量の割合は、0.018÷3.0×100=0.6%となる。
しかし、実際には、供給する原料ガスの流量が一定の場合は、改質温度が低下し、改質反応が抑制され一酸化炭素流量は低下する。また、改質温度が一定となるよう原料ガスを制御した場合は、原料ガス流量が増加する。すなわち、いずれの場合においても、供給する原料ガス流量に対する、選択酸化器32に供給される一酸化炭素流量の割合は、0.6%よりさらに小さくなり、差が顕著となる。
よって、例えば所定の原料ガス流量に対して、選択酸化空気流量を設定すると、窒素等の混入により原料ガスの熱量が低い場合、処理すべき一酸化炭素流量が相対的に少なくなるため、水素が過剰に消費されて、所定の水素量が賄えずに水素生成装置200として安定運転が困難となる。あるいは、過剰の水素消費によって触媒や反応器が高温化する等して、耐久性が低下する可能性がある。
次に、本発明の第14の実施の形態における水素生成装置200の特徴的な動作について説明する。
制御器39は、所定の流量で原料ガスを燃焼器35で燃焼し、改質器31を昇温させた場合に、改質温度検出器38で検出される温度変化速度(α:後述)を用いて、選択酸化空気供給器33が供給する空気流量を補正するよう制御する。
または、制御器39は、温度変化速度が予め設定される値未満(β:後述)である場合に、温度変化速度が予め設定される値以上である場合に比べ、選択酸化空気供給器33が供給する空気供給量が少なくなるよう補正するよう制御してもよい。
「補正値算出方法」
前述のとおり、水素生成装置200の起動において、原料ガス供給量検出器37で検出される原料ガス供給量が所定の値となるように、原料ガス供給器34を制御して原料ガスが供給される。原料ガスの燃焼により、改質器31が昇温され、その温度変化は、改質温度検出器38により検出される。
ここで、原料ガスを燃焼器35で燃焼し改質器31を昇温した場合に、改質温度検出器38で検出される温度変化速度αを定義する。ここでは変化速度αとして、所定の時間あたりの改質温度の上昇速度で定義する。すなわち、原料ガスとして、単位体積あたりの熱量の低いガスが供給されたとき、αの値は、高熱量ガスの時に比べて相対的に小さい値となる。
また、予め想定される基準となる原料ガス組成を用いて、原料ガスを燃焼器35で燃焼して改質器31を昇温した場合の、改質温度検出器38で検出される温度変化速度を、基準の昇温速度α0として測定しておくとよい。本実施の形態では、例として、メタン100%のガスを供給した場合の昇温速度をα0とする。
また、前述の予め設定される温度変化速度として、βを定義し、昇温速度がβ未満であった場合、選択酸化空気供給量が少なくなるよう補正してもよい。βは、想定され得る、かつ補正を必要とすべき原料ガス組成に基づいて、予備実験あるいは計算から算出されるのがよい。
より具体的には、例えば窒素を20%を含むメタンガスを供給した場合、選択酸化空気供給量の補正が必要とされるとする。この場合、予め窒素10%を含むメタンガスを供給した場合の、原料ガスを燃焼器35で燃焼し、改質器31を昇温した場合の昇温速度βを測定する。
その上で、実際に原料ガスを供給して燃焼器35で燃焼し、改質器31を昇温させた場合に、測定された昇温速度がβ未満(昇温速度がβより遅い)の場合には、選択酸化空気供給器33で供給する空気流量を減らすよう補正してもよい。予め設定される昇温速度の値であるβは、供給され得る原料ガス組成を考慮し適宜設定されるのがよい。
「選択酸化空気供給量補正方法」
所定の流量で、原料ガスを燃焼器35で燃焼し改質器31を昇温させた場合に、改質温度検出器38で検出される温度変化速度αは、本実施の形態ではメタン100%が実際に供給された場合にα0となるが、組成Aとして熱量の小さいガス(例えば窒素が20%でメタンが80%の混合ガス)を供給した場合、α1となるとする。ここでは所定の時間あたりの改質温度の上昇速度として定義しており、原料ガスの熱量は、窒素を含む方が小さいので、昇温速度はα1<α0となる。
図23は、本発明の第14の実施の形態において、組成が異なるガスを供給したときの起動時の昇温速度の差を示す図である。
図23に示すように、実際に供給されるガスの組成が想定と異なると、その熱量差から昇温速度の差として現れる。
ここで、昇温速度の比、α1/α0を考える。この比、α1/α0を、所定の選択酸化空気流量に乗じた値を用いることで補正してもよい。すなわち、原料ガスの熱量が小さく、昇温速度が遅いほど、選択酸化空気の流量が減少するよう補正するとよい。
また、α1が予め設定したβより遅い場合に、選択酸化空気流量が減少するよう補正してもよい。なお、α1とα0の比そのものでなく、α1とα0をもとに、所定の係数を用いて算出される値を以って補正してもよい。
具体的には、基準ガスとして、メタン100%の原料ガスを供給して改質器31を所定流量(ここでは1.0NL/min)供給して昇温した場合の、昇温速度α0が10℃/分だったとする。一方、窒素が20%でメタンが80%の混合ガスを同流量で供給した場合は、前者より熱量が小さいため、昇温速度α1は遅く、8℃/分であるとする。
この場合、α1/α0=8÷10=0.8となり、例えば、予め設定した選択酸化空気流量に0.8を乗じた値を供給するよう補正してもよい。予め設定した選択酸化空気流量とは、選択酸化器32で十分、一酸化炭素を除去できる空気流量として、例えば原料ガスの供給量に基づいて設定されるのがよい。
なお、ここでは、変化速度αとして、所定の時間あたりの改質温度の上昇速度で定義したが、例えば所定の温度を上昇させるのに要した時間としてαを定義しても同じであり、その場合は、原料ガスの熱量が小さいほど昇温速度は遅く、所定の温度に上昇する時間が長くなることを意味する。
定義の仕方によってα0とα1の関係は変化し得るが、原料ガスの熱量が小さく、昇温速度が遅い(所定の時間になるのに時間を要す)ほど、選択酸化空気の流量が減少するよう補正するのがよい。
なお、昇温速度から供給されている原料ガスの熱量が判定できればよく、原料ガスの組成そのものの判定はしなくてもよい。
かかる構成により、例えば、原料ガス中に、炭化水素以外の、窒素および二酸化炭素等のガスを多量に含む地域に設置した場合でも、予めあるいは外部からパラメータを設定する必要がなく、昇温速度から容易に原料ガスの熱量を判定することのできる、汎用性の高い水素生成装置を実現することができる。
また、その判定結果をもとに、選択酸化空気流量を補正することで、選択酸化器32で過剰に消費する水素量を抑制し、高効率で安定した水素生成装置200を実現することができる。また、窒素および二酸化炭素等の、炭化水素以外の成分を含む分、選択酸化空気流量を減らすことで、選択酸化器32で過剰に消費する水素量を抑制し、高効率で安定した水素生成装置200を実現することができる。
(第1変形例)
次に、第14の実施の形態における第1変形例について説明する。
図24は、本発明の第14の実施の形態における第1変形例の水素生成装置200の構成を示す図である。
図22に示される第14の実施の形態と同一部または相当部には、同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。本変形例では、第14の実施の形態の構成に加えて、改質器31に水を供給する水供給器40を備え、水供給器40を用いて改質器31に水を供給することで、水蒸気改質反応(吸熱反応)を進行させ、水素含有ガスを生成する構成とする。
次に、本変形例における特徴的な動作について説明する。
制御器39は、改質器31に原料ガスを供給した後、改質温度検出器38で検出される温度が所定の温度に達したことを以って改質器31への水供給を開始した後に、温度変化速度の測定を行う。
原料ガスの燃焼により、改質器31が昇温され、その温度は、改質温度検出器38により検出される。改質器31が昇温され、改質温度検出器38で検出される温度が予め定められた第1温度となったら、水供給器40により所定の流量の水を改質器31に供給する。ここで第1温度は、触媒層が水供給による結露により水濡れしない温度以上であるとともに、高温による炭素析出が起こらない温度以下であることが望ましく、ここでは150℃とする。
改質器31では原料ガスと水とにより、水蒸気改質反応が、温度の上昇とともに進行する。燃焼器35では、未反応の原料ガスと改質器31により生成された水素ガスとを含む混合ガスが燃焼され、改質器31の温度がさらに上昇する。
また、制御器39は、水供給器40を制御し、改質器31に水蒸気改質反応に必要な水蒸気(改質水)を供給する。本実施の形態では、改質水の流量は、改質器31に供給する原料ガス中の炭素数に対する水の比率を示す、S/Cが2.9となるように水供給器40を制御する。
ここで、原料ガス中に窒素等の不活性ガスが含まれる場合は、含まれない場合に比べて、単位体積あたりの熱量が低下する。すなわち、同じ原料ガス供給量としたとき、窒素等の不活性ガスが多く含まれるほど、供給される熱量が小さく、起動時の温度変化速度が小さい(所定の温度になるまでの時間が長い)ことになる。
言い換えると、原料ガスの熱量が小さい場合は、原料ガス中の炭素数の割合が相対的に小さいことが示唆される。この場合、供給する水の量を変化させない場合、Cの数が小さく、水蒸気量は同一であるため、設定したS/Cに比して実際のS/Cは、相対的に大きくなる。
より具体的には、メタン100%の原料ガスを想定してS/Cを設定し、水蒸気を供給していた場合に、原料ガス中に20%の窒素を含むメタンが供給された場合、供給されるS/Cの値としては、1.25倍となる。
ここで、水蒸気改質反応は、吸熱反応であり、S/Cは、その反応熱に大きく寄与する。例えば、実際に供給されるS/Cが大きくなると、相対的に過剰な量の水蒸気を供給する必要があり、その顕熱および潜熱から、所定の原料ガス供給量での改質器31の昇温速度は遅くなる。
以上のことから、改質器31に原料ガスを供給した後、改質温度検出器38で検出される温度が所定の温度に達したことを以って、改質器31への水供給を開始した後に、改質温度検出器38で検出される温度変化量の測定を行うことで、原料ガス組成が想定とずれている場合には、実際に供給されるS/Cの値もずれるため、より顕著に温度変化量に差がでる。そのため、より正確に原料ガスの熱量の差を検出でき、選択酸化空気の流量を補正することで、安定した運転が可能となる。
(第2変形例)
次に、第14の実施の形態における第2変形例について説明する。
図25は、本発明の第14の実施の形態における第2変形例の水素生成装置200の構成を示す図である。
図22に示される第14の実施の形態と同一部または相当部には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
本変形例では、第14の実施の形態の構成に加えて、原料ガスの漏えい有無を検知する、ガス漏えい検知部41を備える構成としている。
原料ガスを燃焼器35で燃焼し、改質器31を昇温し、改質温度検出器38で検出される温度変化速度を測定する際に、水素生成装置200としては安全な範囲でも、仮に、微量の原料ガスの漏えいがあると、温度変化速度に影響を及ぼし、正確な判定ができない。
そこで、制御器39は、改質器31の温度変化速度を検出する前に、原料ガスの漏えいがないことを検知することを特徴とする。
ガス漏えい検知部41としては、例えば、可燃性ガス検知器により、その信号を検知して、漏えいがないことを確認してもよい。また、例えば、限られた所定の経路内に圧力をかけ、圧力の低下がないことを確認することで、ガス漏えいがないことを間接的に確認してもよい。なお、これらの操作は、水素生成装置200の温度変化速度を検出する前に確認するのがよく、起動中、すなわち昇温中に適宜確認してもよい。
かかる構成により、原料ガスを燃焼器35で燃焼し、改質器31を昇温した場合に、改質温度検出器38で検出される温度変化速度をより正確に測定することで、より正確に選択酸化空気流量を補正して、安定運転が可能な水素生成装置200を実現することができる。
(第3変形例)
次に、第14の実施の形態における第3変形例について説明する。
図26は、本発明の第14の実施の形態における第3変形例の水素生成装置200の構成を示す図である。
図22に示される第14の実施の形態と、同一部または相当部には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
本変形例では、第14の実施の形態の構成に加えて、温度変化速度に基づく水素生成装置200の制御パラメータを記憶する記憶部42を備え、制御器39は、記憶部42が記憶した制御パラメータに基づき、次回以降の起動および運転を行うよう制御する構成としている。
このように、一度判定した結果に基づき、起動および運転を行うので、次回以降の起動で、より安定な運転ができる。仮に、使用する原料ガス供給量検出器37の校正されたガス組成と、実際に供給されるガス組成とが大きくかけ離れていても、次回以降の起動および運転で、実際に供給されるガス組成に近い値で運転できる。
その際、1回の補正で十分な補正ができなかった場合でも、記憶した補正値に基づき補正を繰り返すことで、徐々に運転パラメータを適正化し、安定した運転が可能となる。
なお、水素生成装置200の起動毎に補正をして、その値を起動毎に記憶してもよいし、所定のタイミングで補正をして、その値を記憶するような構成としてもよい。
かかる構成により、想定されるガス組成と異なるガス組成の地域に水素生成装置200を設置しても、容易に実際の供給ガスに合わせ込んで安定運転が可能となるとともに、季節的なガス組成の変動、および、長期的なガス品質の変化があっても、長期にわたって安定して水素生成装置200を運転することができる。
(第4変形例)
次に、第14の実施の形態における第4変形例について説明する。
図27は、本発明の第14の実施の形態における第4変形例の水素生成装置200の構成を示す図である。
図22に示される第14の実施の形態と、同一部または相当部には、同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。
本変形例では、第14の実施の形態の構成に加えて、水素生成装置200の周囲温度を検出する周囲温度検出器43を備え、制御器39は、周囲温度検出器43が検出する温度に基づいて、温度変化速度の値を補正するよう構成する。
改質器31の温度変化速度は、燃焼による温度上昇が寄与するとともに、改質器31からの放熱、および、供給される原料ガスの温度によって、温度変化速度が変わりうる。放熱量は、機器(断熱材)の表面温度と、周囲温度との差に依存する。
すなわち、例えば、周囲温度が低ければ、放熱量が相対的に大きくなるとともに、供給される原料ガスおよび燃焼用空気の温度が低くなるため、温度変化速度が小さく(温度が上がりにくく)なる。そのため、周囲温度をもとに、温度変化速度を補正することで、原料ガスの熱量に起因する補正がより正確にできることになる。
かかる構成により、周囲温度によらず、原料ガスの熱量に起因する改質器31の温度変化速度を、より正確に算出することができ、より正確に選択酸化空気流量を補正し、安定運転が可能な水素生成装置200を実現することができる。
(第5変形例)
次に、本発明の第14の実施の形態における第5変形例について説明する。第5変形例の構成は、第14の実施の形態における水素生成装置200の構成図と同様とすることができるため、詳細な説明は省略する。
制御器39は、改質器31の運転時間に基づいて、温度変化速度の値を補正することを特徴とする。なお、改質器31を含む水素生成装置200としての運転時間に基づいて補正をしてもよい。
改質器31の温度変化速度は、燃焼による温度上昇が寄与するとともに、例えば触媒の劣化に伴い、改質器31の温度変化速度は変わり得る。水蒸気改質反応は触媒によってなされるが、触媒は一般的に経時的に劣化し、反応速度が遅くなる傾向になる。
反応速度が変化すると、反応熱による温度変化量が変わるため、たとえ同じ熱量の原料ガスが経時的に変わらず供給されていても、改質器31の温度変化速度は経時的に変わり得る。そのため、改質器31の運転時間に基づいて、温度変化速度を補正することで、原料ガスの熱量に起因する補正が、より正確にできることになる。
かかる構成により、運転時間の経過に伴う劣化等によらず、原料ガスの熱量に起因する改質器の温度変化速度を、より正確に算出することができ、より正確に選択酸化空気流量を補正し、安定運転が可能な水素生成装置200を実現することができる。
(第6変形例)
次に本発明の第14の実施の形態における第6変形例について説明する。本変形例では、前述のいずれかの変形例の水素生成装置200と、水素生成装置200から供給される水素含有ガスを用いて発電する燃料電池とを備える燃料電池システムが例示される。
ここで、燃料電池としては、例えば固体高分子形燃料電池が例示されるが、その構成は公知であるため詳細は省略する。
燃料電池は、一酸化炭素により電圧が低下するため、概ね10ppm以下に一酸化炭素を低減する必要がある。本実施の形態の水素生成装置200と燃料電池とを組み合わせることで、過剰の空気供給による水素の消費を抑制し、安定した発電が可能な燃料電池システムを実現することができる。
なお、制御器39は、燃料電池における発電量に対して、選択酸化空気供給器33が供給する空気量との相関を補正してもよい。すなわち、選択酸化器32で処理すべき一酸化炭素の流量は、燃料電池での発電量と所定の相関がある。よって、この発電量に対して、一酸化炭素空気供給量を予め設定し、原料ガスを燃焼器35で燃焼し、改質器31を昇温した場合に、改質温度検出器38で検出される温度の温度変化速度を用いて、選択酸化空気供給器33が供給する空気流量を補正するよう構成してもよい。
かかる構成により、発電量に対して、所定の選択酸化空気流量を設定した上で、原料ガス中に窒素等の不活性ガスが多量に含まれる場合でも、過剰の空気による水素の消費を抑制し、安定した発電が可能な燃料電池システムを実現することができる。
(第15の実施の形態)
図28は、本発明の第15の実施の形態における燃料電池システムの構成を示す図である。
図28に示すように、本実施の形態における燃料電池システムは、炭化水素を含む原料ガスおよび水蒸気を用いて改質反応により水素含有ガスを生成する改質器31と、改質器31から供給される水素含有ガスを用いて発電する燃料電池50と、燃料電池50のアノードにアノード用空気を供給するアノード空気供給器51とを備えている。
また、燃料電池システムは、改質器31へ原料ガスを供給する原料ガス供給器34と、原料ガスおよび水素含有ガスのうちの少なくとも一方を燃焼させて、改質器31を加熱する燃焼器35と、燃焼器35へ燃焼用空気を供給する燃焼用空気供給器36と、原料ガスの供給量を検出する原料ガス供給量検出器37と、改質器31の温度を検出する改質温度検出器38と、制御器39とを備えている。なお、図22に示される第14の実施の形態と同一部または相当部には、同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。
燃料電池50としては、ここでは固体高分子形燃料電池(PEFC)を用いる。燃料電池50は、一般的に、一酸化炭素により電圧が低下するため、一酸化炭素除去器を用いて、概ね10ppm以下に一酸化炭素を低減する必要がある。また、水素含有ガス中に微量の一酸化炭素が残っていると、燃料電池50の発電時に一酸化炭素がアノードに吸着することにより、発電性能が低下することがある。
そこで、アノード空気供給器51を備え、微量の空気を水素含有ガスに添加して、燃料電池50のアノードに供給する構成としている。アノード空気供給器51としては、例えばブロワにより昇圧した空気を、空気流量計とニードル弁とを用いて流量制御して供給する構成を用いることができる。
次に、本発明の第15の実施の形態における燃料電池システムの動作を説明する。なお、以下の諸動作は、制御器39が、燃料電池システムの各機器を制御することにより行われる。
「燃料電池システムの運転方法」
まず、第14の実施の形態と同様に、水素生成装置200を起動し、改質温度検出器38で検出される温度が水素生成に十分高温になったら(ここでは550℃)、燃料電池50に水素含有ガスを供給して、発電を開始する。燃料電池50では、投入した水素流量に対して約80%の水素を、燃料電池50で消費し発電するよう制御し、未利用の水素は、燃焼器35に戻され燃焼するよう構成する。
発電開始後、原料ガス供給器34を制御し、改質器31に所定の原料ガスを供給する。改質器31の温度は、改質反応を促進させ、燃料電池50で必要な水素を得るために、予め定められた目標温度に制御される必要がある。
ここでは、改質温度検出器38で検出される温度が630℃となるように、原料ガス供給器34を用いて、原料ガス供給量検出器37で検出される原料ガス流量を制御する。原料ガス流量の制御方法として、フィードバック制御を用いてもよい。
改質器31の目標温度は、燃焼器35での加熱量、水素生成装置200から排出される熱量、および、水素生成装置200の機体からの放熱等が影響する温度であるが、燃料電池50で必要な水素量、および水素生成装置200での原料ガスの水素への転化率等から予め決められるのがよい。
また、制御器39は、燃焼用空気供給器36を制御し、燃焼器35に供給された燃料電池50からのオフガスを燃焼させるのに必要な燃焼用空気を供給する。燃焼器35では、オフガスを燃焼させ、改質器31での改質反応に必要な熱を供給する。ここで、燃焼用空気の流量は、理論空気流量に対する供給空気流量をあらわす空気比が、1.7となるよう制御した。
また、制御器39は、原料ガス供給量検出器37で検出される原料流量と、改質温度検出器38で検出される温度から算出される転化率とから、生成する水素生成量を算出し、所定の水素利用率範囲内で水素を利用できるよう、燃料電池50の発電量を制御する。
制御器39は、改質温度を目標温度に維持するために、原料ガス供給器34を制御し、原料ガス供給量を増加させる。しかしながら、原料ガス中に、窒素および二酸化炭素等の不活性ガスが多量に含まれる場合は、原料ガスの単位体積あたりの熱量が低くなるため、所定の温度に保つため、あるいは、所定の水素量を得るため、必要な原料流量が増加することになる。
「原料ガス組成と一酸化炭素流量」
次に、燃料電池50のアノードに供給され得る一酸化炭素の流量とガス組成との関係について説明する。
水素生成装置200における反応が安定しているとすると、水素含有ガス中に含まれる一酸化炭素の流量は、原料ガス中の炭化水素の供給量と比例関係にある。すなわち、アノード空気流量は、原料ガス流量、または、原料ガス流量と所定の関係にある燃料電池50の発電量の関数として設定されるのがよく、ここでは、原料ガスの1%の流量のアノード空気を供給するよう構成する。
例えば、原料ガスとしてメタン100%のガスを用いる場合において、原料ガスの1%の空気を供給する場合を想定する。具体的には、原料ガス供給量として3.0NL/minを供給する場合、30cc/minのアノード空気を供給するとする。この条件において、燃料電池50のアノードで、H2+(1/2)O2の反応に基づき、消費水素量が所定の範囲内に収まり、安定運転が可能であるとする。
一方、原料ガスとして、窒素が20%でメタンが80%の混合ガスを供給した場合は、メタン100%を供給した場合に比べ、水素含有ガス中に含まれる水素濃度は相対的に小さくなる。この条件において、原料ガスの流量に対して同様に1%の空気を供給すると、過剰の水素が消費されることとなる。
よって、例えば、所定の原料ガス流量に対して、アノード空気流量を設定すると、窒素等の混入により原料ガスの熱量が低い場合、処理すべき一酸化炭素流量が相対的に少なくなるため、水素が過剰に消費されて、所定の水素量が賄えずに燃料電池50の安定運転が困難となる。
次に、本発明の第15の実施の形態における燃料電池システムの特徴的な動作について説明する。
制御器39は、所定の流量で原料ガスを燃焼器35で燃焼し、改質器31を昇温した場合に、改質温度検出器38で検出される温度変化速度(α:後述)を用いて、アノード空気供給器51が供給する空気流量を補正するよう制御する。
または、制御器39は、温度変化速度が予め設定される値未満(β:後述)である場合に、温度変化速度が予め設定される値以上である場合に比べ、アノード空気供給器51が供給する空気供給量が少なくなるよう補正するよう制御してもよい。
昇温速度に基づく補正値の算出方法、および、補正値に基づくアノード空気供給器51が供給する空気流量の補正方法は、第14の実施の形態と同様の手段をとることができるので、詳細な説明は省略する。
かかる構成により、例えば、原料ガス中に、炭化水素以外の窒素および二酸化炭素等のガスを多量に含む地域に設置した場合でも、予めあるいは外部からパラメータを設定する必要がなく、昇温速度から容易に原料ガスの熱量を判定することのできる、汎用性の高い燃料電池システムを実現することができる。
また、その判定結果をもとに、アノード空気流量を補正することで、燃料電池50のアノードで過剰に消費される水素量を抑制し、安定した発電が可能な燃料電池システムを実現することができる。また、窒素および二酸化炭素等の炭化水素以外の成分を含む分、アノード空気流量を減らすことで、燃料電池50で過剰に消費する水素量を抑制し、高効率で安定した燃料電池システムを実現することができる。
(第1変形例)
次に、本発明の第15の実施の形態における第1変形例について説明する。
本変形例では、図28に示される第15の実施の形態と同様の構成をとることができるので、詳細の説明は省略する。次に、本変形例における特徴的な動作について説明する。
制御器39は、原料ガス供給器34が供給する原料ガス供給量に対する、アノード空気供給器51が供給する空気量との相関を補正するよう制御する。すなわち、水素生成装置200に供給する原料ガス供給量と、その原料ガス供給量から生成する水素含有ガスの流量、および、その中に含まれる微量一酸化炭素の流量とには所定の相関がある。そこで、この原料ガス供給量に対して、アノード空気供給量を予め設定し、原料ガスを燃焼器35で燃焼し改質器31を昇温した場合に、改質温度検出器38で検出される温度の温度変化速度を用いて、アノード空気供給器51が供給する空気流量を補正するよう構成する。
かかる構成により、原料ガス供給量に対して、所定のアノード空気流量を設定した上で、原料ガス中に窒素等の不活性ガスが多量に含まれる場合でも、過剰の空気による水素の消費を抑制し、安定した発電が可能な燃料電池システムを実現することができる。
(第2変形例)
次に、本発明の第15の実施の形態における第2変形例について説明する。
本変形例では、図28に示す第15の実施の形態と同様の構成をとることができるので詳細の説明は省略する。次に本変形例における特徴的な動作について説明する。
制御器39は、燃料電池50における発電量に対して、アノード空気供給器51が供給する空気量との相関を補正するよう制御する。すなわち、燃料電池50に供給する水素含有ガスの流量、および、その中に含まれる微量一酸化炭素の流量と、燃料電池50での発電量とには所定の相関があるが、この発電量に対してアノード空気供給量を予め設定し、原料ガスを燃焼器35で燃焼し、改質器31を昇温した場合に、改質温度検出器38で検出される温度の温度変化速度を用いて、アノード空気供給器51が供給する空気流量を補正するよう構成する。
かかる構成により、発電量に対して、所定のアノード空気流量を設定した上で、原料ガス中に窒素等の不活性ガスが多量に含まれる場合でも、過剰の空気による水素の消費を抑制し、安定した発電が可能な燃料電池システムを実現することができる。
(第3変形例)
次に、本発明の第15の実施の形態における第3変形例について説明する。
図29は、本発明の第15の実施の形態における第3変形例の燃料電池システムの構成を示す図である。
図28に示される第15の実施の形態と、同一部または相当部には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
本変形例では、図28に示す第15の実施の形態の構成に加えて、改質器31に水を供給する水供給器40を備えている。水供給器40を用いて、改質器31に水を供給することで、水蒸気改質反応(吸熱反応)を進行させ、水素含有ガスを生成する構成とする。
本変形例は、図24に示される第14の実施の形態における第1変形例の水素生成装置200と燃料電池50とを組み合わせることで実現可能である。
かかる構成により、改質器31に原料ガスを供給した後、改質温度検出器38で検出される温度が所定の温度に達したことを以って、改質器31への水供給を開始した後に、改質温度検出器38で検出される温度変化量の測定を行うことで、原料ガス組成が想定とずれている場合は、実際に供給されるS/Cの値もずれるため、より顕著に温度変化量に差がでる。そのため、より正確に原料ガスの熱量の差を検出でき、アノード空気の流量を補正することで、安定した燃料電池システムの運転が可能となる。
(第4変形例)
次に、本発明の第15の実施の形態における第4変形例について説明する。
図30は、本発明の第15の実施の形態における第4変形例の燃料電池システムの構成を示す図である。
図28に示される第15の実施の形態と同一部または相当部には、同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。
本変形例では、図28に示される第15の実施の形態の構成に加えて、原料ガスの漏えい有無を検知するガス漏えい検知部41を備える構成としている。
本変形例は、図25に示す第14の実施の形態における第2変形例の水素生成装置200と燃料電池50とを組み合わせることで実現可能である。
かかる構成により、原料ガスを燃焼器35で燃焼し、改質器31を昇温した場合に、改質温度検出器38で検出される温度変化速度を、より正確に測定することで、より正確にアノード空気流量を補正し、安定運転が可能な燃料電池システムを実現することができる。
(第5変形例)
次に、本発明の第15の実施の形態における第5変形例について説明する。
図31は、本発明の第15の実施の形態における第5変形例の燃料電池システムの構成を示す図である。
図28に示される第15の実施の形態と同一部または相当部には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
本変形例では、図28に示す第15の実施の形態の構成に加え、温度変化速度に基づく水素生成装置200の制御パラメータを記憶する記憶部42を備え、制御器39は、記憶部42が記憶した制御パラメータに基づき、次回以降の起動および運転を行うよう制御する構成としている。
本変形例は、図26に示す第14の実施の形態における第3変形例の水素生成装置200と燃料電池50とを組み合わせることで実現可能である。
なお、記憶部42は、燃料電池50の制御パラメータを同時に記憶してもよい。また、水素生成装置200または燃料電池システムの起動毎に補正をして、起動毎に記憶してもよいし、所定のタイミングで補正をして、記憶するような構成としてもよい。
かかる構成により、想定されるガス組成と異なるガス組成の地域に燃料電池システムを設置しても、容易に実際の供給ガスに合わせ込んで、安定運転が可能となるとともに、季節的なガス組成の変動および長期的なガス品質の変化があっても、長期にわたって安定して燃料電池システムを運転できる。
(第6変形例)
次に本発明の第15の実施の形態における第6変形例について説明する。
図32は、本発明の第15の実施の形態における第6変形例の燃料電池システムの構成を示す図である。
図28に示される第15の実施の形態と、同一部または相当部には、同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。
本変形例では、図28に示す第15の実施の形態の構成に加えて、水素生成装置200の周囲温度を検出する周囲温度検出器43を備え、制御器39は、周囲温度検出器43が検出する温度に基づいて、温度変化速度の値を補正するよう構成する。なお、周囲温度検出器43は、水素生成装置200を含む燃料電池システムの周囲温度を検出するように構成してもよい。
本変形例は、図27に示される第14の実施の形態における第4変形例の水素生成装置200と燃料電池50とを組み合わせることで実現可能である。
かかる構成により、周囲温度によらず、原料ガスの熱量に起因する改質器31の温度変化速度を、より正確に算出することができ、より正確にアノード空気流量を補正し、安定運転が可能な燃料電池システムを実現することができる。
(第7変形例)
次に、本発明の第15の実施の形態における第7変形例について説明する。
本変形例の構成は、図28に示す第15の実施の形態における燃料電池システムの構成と同様とすることができため、詳細な説明は省略する。
制御器39は、改質器31の運転時間に基づいて、温度変化速度の値を補正することを特徴とする。なお、改質器31を含む水素生成装置200、あるいは水素生成装置200を含む燃料電池システムとしての運転時間に基づいて補正をしてもよい。
本変形例は、第14の実施の形態における第5変形例の水素生成装置200と燃料電池50を組み合わせることで実現可能である。
かかる構成により、運転時間の経過に伴う劣化等によらず、原料ガスの熱量に起因する改質器31の温度変化速度を、より正確に算出することができ、より正確にアノード空気流量を補正し、安定運転が可能な燃料電池システムを実現することができる。
(第16の実施の形態)
図33は、本発明の第16の実施の形態における燃料電池システムの構成を示す図である。
図28に示される第15の実施の形態と、同一部または相当部には、同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。本変形例では、改質器31から供給される水素含有ガス中の一酸化炭素の濃度を低減する選択酸化器32と、選択酸化器32に選択酸化用空気を供給する選択酸化空気供給器33とを備える構成としている。また、アノード空気と選択酸化空気とを、共通の空気源から供給する構成としている。
本実施の形態では、選択酸化空気供給器33およびアノード空気供給器51を備え、それぞれが、選択酸化器32および燃料電池50のアノードに空気を供給する構成としている。なお、それぞれについて、流量計等を用いて流量を制御してもよいし、例えばオリフィス等を流路に備えることで、流量を分配するような構成としてもよい。
前述のとおり、選択酸化空気流量およびアノード空気流量のいずれも、原料ガス流量、または、原料ガス流量から導かれる燃料電池発電量と、所定の関係で供給するとよい。すなわち、原料ガス流量が多いほど、選択酸化空気流量およびアノード空気流量をともに増加させるよう設定するとよい。よって、空気供給源を共通化することで、部品を減らし、制御を容易にし、かつコスト削減が可能である。
次に、本実施の形態における特徴的な動作について説明する。
制御器39は、所定の流量で原料ガスを燃焼器35で燃焼し、改質器31を昇温した場合に、改質温度検出器38で検出される温度変化速度を用いて、選択酸化空気供給器33が供給する空気流量およびアノード空気供給器51が供給する空気流量を補正するよう制御する。
かかる構成により、例えば、原料ガス中に、炭化水素以外の窒素および二酸化炭素等のガスを多量に含む地域に設置した場合でも、予めあるいは外部からパラメータを設定する必要がなく、昇温速度から容易に原料ガスの熱量を判定することができる汎用性の高い燃料電池システムを実現することができる。
また、その判定結果をもとに、選択酸化器32へ供給する空気流量、および燃料電池50のアノードへ供給するエアブリード空気流量を補正することで、選択酸化器32および燃料電池50のアノードで過剰に消費する水素量を抑制し、高効率で安定した燃料電池システムを実現することができる。また、部品を減らした低コストの燃料電池システムを実現することができる。
燃料電池システムにおいては、燃料電池の発電時の燃料として用いる水素含有ガスが、一般的な原料インフラガスとして整備されていない。このため、燃料電池システムは、通常、改質器を有する水素生成装置を備えている。
改質器では、一般的な原料インフラガスである都市ガス、天然ガスあるいはLPGから、水素含有ガスが改質反応により生成される。例えば、水蒸気改質反応が一般的に用いられている。
この水蒸気改質反応では、原料となる都市ガス等と水蒸気とを、Ni系またはRu系等の貴金属系の改質触媒を用いて、600℃〜700℃程度の高温で反応させることにより、水素を主成分とした水素含有ガスが生成される。
水蒸気改質反応を、安定かつ効率に行うには、供給原料の組成に適した量の水を供給する必要がある。例えば、メタン(CH4)またはエタン(C2H6)が水蒸気改質されて水素と二酸化炭素とが生成される改質反応では、理論的には、1モルのメタンに対して必要な水の量は2モルである。また、1モルのエタンに対しては必要な水の量は4モルである。
通常は、改質器への水の供給量が不足すると、供給原料中の炭素が析出する等の問題が生じることから、このような問題を防止すべく、原料の供給流量から算出された理論水量の1.5倍程度の水が改質器に供給されるように、水供給流量が設定されている。そして、原料の供給流量に応じて、水の供給流量が所望の値になるよう、水素生成装置の運転が制御されている。
また、改質器の水蒸気改質反応に必要な熱エネルギーは、改質器に設けられた燃焼器の原料燃焼によって、改質器に供給されている。起動時は、水素生成装置を通流したガスを、直接、燃焼器に戻して燃焼させ、燃料電池に水素含有ガスを供給している時は、燃料電池から排出される燃料オフガスを、燃焼器で燃焼させる方法が一般的である。
燃焼器の原料燃焼を安定して行うには、原料の組成に適した量の燃焼用空気を供給する必要がある。例えば、メタンガスまたはエタンガスが酸素とともに燃焼して、水と二酸化炭素とが生成される燃焼反応では、理論的には、1モルのメタンに対して、必要な酸素の量は2モルである。また、1モルのエタンに対して、必要な酸素の量は3.5モルである。
通常は、燃焼器への燃焼用空気の供給量が不足すると、燃焼不良が生じることから、このような事態を防止すべく、原料の供給流量から算出された理論燃焼用空気量の1.5倍程度の燃焼用空気が燃焼器に供給されるように、燃焼用空気の供給量が設定されている。そして、原料の供給流量に応じて、燃焼用空気の供給量が所望の値になるよう、水素生成装置の運転が制御されている。
ところで、ドイツ等の欧州地域の様に、ガス規格として設定されている発熱量が高いHガス、および、発熱量が低いLガスが、パイプラインを通じて供給される中で、それぞれの組成のガスの地域のどちらに燃料電池システムが設置されるか分からない場合がある。
改質器に、供給原料の組成に対して不適切な量の水を供給すると、理論水量と実際の供給水量との間に差が生じ、実際に必要な供給水量が、理論水量に対して大幅な過不足を生じる可能性がある。
例えば、高発熱量ガス想定の供給水量のもとで低発熱量ガスを用いて運転した場合、理論水量より供給量が多く、改質反応自体は速やかに進行するが、改質反応のための水蒸発に消費するエネルギー量が多くなるため、水素生成のエネルギー効率は低下する。
一方、低発熱ガス想定の供給水量のもとで高発熱ガスを用いて運転した場合、供給水量が理論水量よりも少なく、供給原料の熱分解による炭化、あるいは、改質ガスの不均化反応による炭素析出が生じうる。このため、水素生成装置の圧損の増大、さらには改質ガス流路の閉塞が起こり、その結果、水素生成効率の低下あるいは水素生成装置の運転停止を招くおそれがある。
また、燃焼器においては、低発熱量ガス想定の燃焼用空気量のもとで高発熱量ガスを用いて運転すると、空気量が理論燃焼用空気量に対して少なく、この場合、燃焼不良を引き起こすことがある。
例えば、特許文献3および特許文献5のような、原料の組成を判定する方法では、外気温度の影響により改質部温度、または燃焼器温度の変化速度が、同じ原料組成でも複数回取得したときに一致しない場合があり、原料の組成を誤って判定してしまい、不適切な運転制御パラメータを設定してしまう虞がある。
本発明者らは、水素生成装置および燃料電池システムにおいて、従来よりも精度良く原料組成に適した制御パラメータを設定すべく鋭意検討をおこなった。その結果、以下の知見を得た。
原料の組成を判定する場合、従来例では一回の運転に基づいた発熱量検知、例えば改質部の温度上昇速度を測定しているが、そうした場合には外気温度の影響により改質部温度の変化速度が同じ原料組成であっても、複数回取得したときに一致しない場合があり、原料の組成を誤って判定し、不適切な運転制御パラメータを設定してしまうという課題を有している。
そこで、本発明者は、温度上昇速度の外気温度による補正を行い、それを設定に用いることで、外気温度の影響を受けることなく、精度良く原料組成に適した運転制御パラメータを設定できると想到するものである。
(第17の実施の形態)
本実施の形態の水素生成装置は、改質反応により水素含有ガスを生成する改質器と、改質器の温度上昇速度を検出する改質温度上昇速度検出器と、改質器を加熱する加熱器と、制御パラメータ群およびその制御パラメータ群を改質温度上昇速度検出器によって検知される温度上昇速度に基づいて設定するパラメータ設定関数が記憶されている記憶部と、記憶部を有する制御器とを備えている。そして、制御器は、改質器を所定の判定用制御パラメータ群を用いて加熱する加熱動作を行い、温度上昇速度を取得し、外気温度に基づいてパラメータ設定関数を補正し、温度上昇速度に基づき、補正後のパラメータ設定関数を参照し、補正後のパラメータ設定関数によって設定された制御パラメータ群を用いて運転するよう制御する。
これにより、外気温度に起因して温度上昇速度が変化する分を補正値により補正できるため、外気温度による温度上昇速度の変化の影響を受けることなく、制御パラメータ設定を行うことができ、精度良く運転制御パラメータ群を設定できる。
なお、運転制御パラメータ群は、例えば、原料流量、改質水流量および燃焼用空気流量のうちの1つ以上の制御値であればよい。
[装置構成]
図34は、第17の実施の形態にかかる水素生成装置200の概略構成の一例を示すブロック図である。
図34に示す例では、水素生成装置200は、改質器31と、改質器31に原料を供給する原料ガス供給器34と、改質器31に水を供給する水供給器40と、改質器31を加熱する加熱器44と、加熱器44に空気を供給する燃焼用空気供給器36とを備えている。また水素生成装置200は、加熱器44の火炎の状態を検知するフレームロッド62と、改質器31の温度を検出する改質温度検出器38と、加熱器44に燃料を供給する燃料供給器90と、水素生成装置200を制御する制御器39とを備える。
なお、本実施の形態では、改質温度上昇速度検出器として改質温度検出器38を設置する例の説明を行う。改質温度検出器38は、例えば熱電対によって構成される。
なお、加熱器44は、例えば、燃焼器、ヒータおよび触媒燃焼器から選択されるものであってもよい。本実施例では、加熱器を燃焼器とする場合の説明をする。
改質器31は、原料および水蒸気を用いて、改質反応により水素含有ガスを生成する。原料は、少なくとも炭素および水素を構成元素とする有機化合物を含み、具体的には、天然ガス、都市ガス、LPG、およびLNG等の炭化水素、ならびに、メタノール、およびエタノール等のアルコールが例示される。
都市ガスとは、ガス会社から配管を通じて各家庭等に供給されるガスをいう。改質反応は、原料および水蒸気から水素含有ガスが生成される反応であれば、いずれの改質反応でもよい。具体的には、水蒸気改質反応、およびオートサーマル反応が例示される。改質器31で生成された水素含有ガスは、水素供給路89を介して水素利用機器210に供給される。
原料ガス供給器34は、原料を改質器31に供給する。原料ガス供給器34は、例えば、昇圧器および流量調整弁の少なくとも一方により構成される。
水供給器40は、水を改質器31に供給する。水供給器40は、水の流量を調整し、例えば、ポンプおよび流量調整弁の少なくとも一方により構成される。
加熱器44は、改質器31を加熱する。加熱器44の燃料には、少なくとも改質器31より排出される水素含有ガスが用いられる。加熱器44に供給される水素含有ガスは、改質器31から加熱器44に直接供給されてもよいし、水素利用機器210を経由し、水素利用機器210から排出されて加熱器44に供給されてもよい。加熱器44において、燃料供給器90から水素含有ガスに燃料が追加されて燃焼されてもよい。
燃焼用空気供給器36は、加熱器44に燃焼用空気を供給する。燃焼用空気供給器36は、例えば、ファンおよびポンプの少なくとも一方により構成される。
制御器39は、制御機能を有するものであれば、水素生成装置200の全体あるいは一部を制御可能な制御装置でもよい。制御器39は、例えば、演算処理部(図示せず)と、制御プログラムを記憶する記憶部42とを備える。演算処理部としては、MPU、およびCPUが例示される。記憶部42としては、メモリが例示される。
制御器39は、記憶部42に、制御パラメータ群およびその制御パラメータ群を、改質温度上昇速度検出器によって検知される温度上昇速度に基づいて設定する、パラメータ設定関数を記憶している。
制御器39は、改質器31を、所定の判定用制御パラメータ群を用いて加熱する加熱動作を行い、改質温度上昇速度検出器である改質温度検出器38を用いて温度上昇速度を検知し、外気温度に基づいてパラメータ設定関数を補正し、温度上昇速度に基づき、補正後のパラメータ設定関数を参照し、補正後のパラメータ設定関数によって設定された制御パラメータ群を用いて運転するよう制御する。
また、制御器39により設定された運転制御パラメータ群に基づいて、水素生成装置200の運転が制御される。
制御器39は、単独の制御器でも複数の制御器でもよい。つまり、制御器39が、集中制御を行う単独の制御器で構成されていてもよいし、互いに協働して分散制御を行う複数の制御器で構成されていてもよい。この点は、後述の他の実施の形態の制御器においても同様である。
[水素生成装置の動作]
次に、第17の実施の形態の水素生成装置200の動作について説明する。なお、以下の動作は、制御器39が水素生成装置200を制御することによって行われる。
水素生成装置200が起動すると、加熱器44における燃焼を開始する。このとき、封止器48は閉止されているが、水素供給路89から分岐して伸び、加熱器44に至る燃料供給路91はガス通気状態となっている。
よって、原料ガス供給器34の動作開始により、原料が改質器31に供給されると、改質器31を通過した原料は、燃料供給路91を用いて加熱器44に供給される。同時に、燃焼用空気供給器36の動作開始により、燃焼用の空気が加熱器44に供給される。加熱器44において、点火電極(図示せず)により着火動作がおこなわれ、燃焼用の空気を用いて、燃料の燃焼が起こる。このようにして、加熱器44から供給される燃焼熱により、改質器31が加熱される。
次いで、水供給器40の動作開始により、改質器31に水が供給される。水の供給開始後、改質器31で生成された水素含有ガスの組成が、水素利用機器210への供給に適した組成になった段階で、封止器48が開放されて、水素利用機器210に水素含有ガスが供給される。
水素生成装置200を停止させる場合には、原料ガス供給器34と水供給器40とを停止させる。
[運転制御パラメータ設定方法]
図35は、本発明の第17の実施の形態の水素生成装置の動作の一例を示すフローチャートである。
運転制御パラメータ設定は、制御器39において、図35のフローチャートの動作に従って行われる。まず、改質温度検出器38で検知される温度が、所定の第2温度以下であるかどうかが判定される(S11)。なお、第2温度とは、例えば60℃としてもよい。
改質温度検出器38で検知される温度が、第2温度以下である場合には、判定用制御パラメータ群を用いる加熱動作が開始され(S12)、制御器39において、改質温度検出器38で検知される温度が、第2温度から所定の第2温度よりも高い第1温度に上昇するまでの時間が計測される(S13)。
そして、第1温度から第2温度までの差を、制御器39により計測された時間で除算することにより温度上昇速度が算出され、算出された温度上昇速度が記憶部42に記憶される(S14)。なお、第1温度とは、例えば350℃としてよい。
第2温度から第1温度までの所定の温度範囲において温度上昇速度を取得することで、温度上昇速度取得のための改質器温度条件を一定にすることができ、改質器31の温度と外気温度との差から生じる放熱量のうち、温度上昇速度取得時の改質器温度条件の違いから生じる放熱量変化分が温度上昇速度に与える影響を除くことができ、運転制御パラメータ群設定を精度よく行える。
次に、パラメータ設定関数に対して、外気温度に基づいた補正値を取得して補正を行う(S15)。
図36は、本発明の第17の実施の形態における、外気温度と基準外気温度との差に応じたパラメータ設定関数補正幅の関係の一例を示す図である。また、図37は、本発明の第17の実施の形態における、外気温度と基準外気温度との差に応じたパラメータ設定関数補正倍率の関係の一例を示す図である。
図36において、横軸は、判定用制御パラメータ群を用いる温度上昇速度取得時の外気温度と、補正のための基準となるパラメータ設定関数を取得したときの基準外気温度との差である。縦軸は、パラメータ設定関数を補正するために与えられるパラメータ設定関数補正値(補正幅)である。図36は、これらの対応関係を示すグラフである。
図37は、図36において、縦軸をパラメータ設定関数補正値(補正倍率)としたものである。補正値は、図36のように、補正幅としてパラメータ設定関数に加算されるものでもよいし、図37のように、補正倍率としてパラメータ設定関数に積算されるものでもよい。
この補正値によって、外気温度に起因して温度上昇速度が変化する分を補正するため、外気温度による温度上昇速度の変化の影響を受けることなく、制御パラメータ設定を行うことができ、精度良く運転制御パラメータ群を設定できる。
補正後、温度上昇速度に基づいて補正後のパラメータ設定関数を参照し(S16)、参照された補正後のパラメータ設定関数によって設定される運転制御パラメータ群を用いて運転が行われる(S17)。
図38は、本発明の第17の実施の形態における、各運転制御パラメータに対応するパラメータ設定関数の一例を示す図である。
パラメータ設定関数は、図38に示したように、温度上昇速度の連続関数として記憶部42に記憶されている。
図38では、原料流量目標値がf1(ΔT)、改質水流量目標値がf2(ΔT)、燃焼空気量目標値がf3(ΔT)として、それぞれ、温度上昇速度ΔTの連続関数として表されている。連続関数としてパラメータ群を用意しておくことで、パラメータ設定値が温度上昇速度に対して連続的になり、より詳細なパラメータ設定が可能になる。なお、f1(ΔT)、f2(ΔT)、およびf3(ΔT)は、水素生成量の目標値に応じて変化させてもよい。
図39は、本発明の第17の実施の形態における、温度上昇速度と各運転制御パラメータとの関係の一例を示す図である。
運転制御パラメータ群は、図39のように、テーブルとして各温度上昇速度に対応して与えられていてもよい。
図39では、各温度上昇速度範囲に判定用制御パラメータで取得した温度上昇速度が入る場合に、原料流量目標値、改質水流量目標値、および燃焼用空気量目標値をどの値に設定するかを示したものである。例えば、温度上昇速度が、ΔT1〜ΔT2の間に入れば、原料流量目標値はa1、改質水流量目標値はb1、燃焼用空気量目標値はc1として与えられる。
この場合、a1、b1、c1が、外気温度補正の対象となる。なお、a1、b1、c1は、水素生成量の目標値に応じて変化させてもよい。
以上のように、パラメータ設定関数の外気温度による補正を行うことで、外気温度による温度上昇速度変化の影響を除外することができるため、精度良く運転制御パラメータ群設定が行える。
ここで、外気温度検出方法について説明する。改質器31を、加熱器44により加熱していないとき、改質温度検出器38によって検知される改質器31の温度下降速度は、改質器31の温度と外気温度との差によって生じる放熱の量の影響を大きく受ける。
そのため、加熱していないとき、外気温度によって改質器31の温度下降速度が変化するので、改質温度検出器38で検知される温度が、所定の第1温度から第1温度よりも低い第2温度まで低下する時間を取得し、第1温度と第2温度との差を、取得した時間で除算して得られる温度下降速度から外気温度を推定してもよい。
また、改質温度検出器38で検知される温度が、所定の第1温度から一定時間経過した後の温度を検出し、第1温度と一定時間経過した後の温度との差を、一定時間で除算して得られる温度下降速度から、外気温度を推定してもよい。
なお、改質温度検出器38で検知される温度が第1温度になるまで改質器31を加熱する動作を、温度下降速度検出前に行ってもよい。
また、外気温度検出の別の方法として、周囲温度検出器43を、水素生成装置200の外側に配置して行ってもよい。
図40は、本発明の第17の実施の形態の水素生成装置において、周囲温度検出器43を取り付けた場合の構成の一例を示す図である。
図40と図34とで共通する構成要素については、同一の符号および用語を付して、その説明を省略する。図34と異なる点は、周囲温度検出器43を水素生成装置200の外側に設けた点であり、これにより外気温度を検出することができる。周囲温度検出器43は、例えばサーミスタによって構成されていてもよい。
なお、改質温度検出器38による温度検出部は、改質器31のどの部分の温度であってもよい。
なお、次回設定時の外気温度が、前回設定時の外気温度と比較して所定の差以内であるときは、図35における、外気温度によるパラメータ設定関数補正のステップ(S15)を省略し、前回設定時の補正後のパラメータ設定関数を参照して運転制御パラメータ群を設定してもよい。
これにより、外気温度による補正の頻度を減少させることができ、精度良く運転制御パラメータ群を設定できるとともに、補正ステップ分の設定に要する時間を短縮でき、起動時間を短くすることができる。
なお、一定期間の気温変化量が小さい地域においては、一定期間内での外気温度による温度上昇速度の変化が小さくなるため、外気温度によるパラメータ設定関数補正を行った後、一定期間、外気温度によるパラメータ設定関数補正のステップ(S15)を省略し、前回設定時の補正後のパラメータ設定関数を参照して運転制御パラメータ群を設定してもよい。
一定期間とは例えば、3ヶ月間としてもよい。これにより、外気温度による補正の頻度を減少させることができ、精度良く運転制御パラメータ群を設定できるとともに、補正ステップ分の設定に要する時間を短縮でき、起動時間を短くすることができる。
なお、気温変化の小さい地域においては、外気温度による温度上昇速度の変化が小さくなるため、外気温度によるパラメータ設定関数補正を試運転中に行った後、外気温度によるパラメータ設定関数補正のステップ(S15)を省略し、前回設定時の補正後のパラメータ設定関数を参照して、運転制御パラメータ群を設定してもよい。
これにより、外気温度による補正の頻度を減少させることができ、精度良く運転制御パラメータ群を設定できるとともに、補正ステップ分の設定に要する時間を短縮でき、起動時間を短くすることができる。
なお、前回の運転時から、原料組成が変化する可能性が低い地域においては、前回の運転中において設定された運転制御パラメータ群に基づいて起動を実行してもよい。これにより、運転制御パラメータ群設定の頻度を減少させることができ、精度良く運転制御パラメータ群を設定できるとともに、設定に要する時間を短縮でき、起動時間を短くすることができる。
なお、試運転時に設定した運転制御パラメータ群に基づいて、起動を実行してもよい。
なお、判定用制御パラメータ群を用いる加熱動作において、温度上昇速度を取得しているが、次回起動時は前回の運転に用いる運転制御パラメータ群を用いて温度上昇速度を取得してもよく、そうすることで、判定用制御パラメータ群を記憶しておく必要がなくなる。この動作は本発明の範囲を逸脱するものではない。
(第18の実施の形態)
本発明の第18の実施の形態にかかる水素生成装置の概略構成を示すブロック図は、図34に示される第17の実施の形態のブロック図と同様であるので、同一の符号および用語を付して、その説明を省略する。
図41は、本発明の第18の実施の形態の水素生成装置200の動作の一例を示すフローチャートである。
第18の実施の形態においては、制御器39による運転制御パラメータ群の設定が、図41に示すフローチャートに従って行われる。
上述の第17の実施の形態と異なるのは、判定用制御パラメータ群を用いる加熱動作時に、一定時間経過する前後の温度変化による温度上昇速度を取得する点であり、それ以外の点は、第17の実施の形態と同じである。
運転制御パラメータ群の設定方法について、図41を用いて説明する。まず、改質温度検出器38で検知される温度が、所定の第2温度以下であるかどうかが判定される(S21)。なお、第2温度は、例えば60℃としてもよい。
改質温度検出器38で検知される温度が第2温度以下である場合(S21,YES)には、判定用制御パラメータ群を用いる加熱動作を開始し(S22)、判定用制御パラメータを用いる加熱動作を開始する。
判定用制御パラメータを用いる加熱を一定時間行い(S23)、一定時間経過後(S23,YES)の改質温度検出器38で検出される温度である第3温度を取得する(S24)。第2温度と第3温度との差を一定時間で除算することにより、判定用制御パラメータを用いる温度上昇速度を取得する(S25)。
次に、パラメータ設定関数に対して、外気温度に基づいて補正値を取得して補正を行う(S26)。補正後、温度上昇速度に基づいて補正後のパラメータ設定関数を参照し(S27)、参照された補正後のパラメータ設定関数によって設定される運転制御パラメータ群を用いて運転を行う(S28)。
(第19の実施の形態)
第19の実施の形態の水素生成装置は、改質反応により水素含有ガスを生成する改質器と、改質器の温度上昇速度を検出する改質温度上昇速度検出器と、改質器を加熱する加熱器と、制御パラメータ群およびその制御パラメータ群を改質温度上昇速度検出器によって検知される温度上昇速度に基づいて設定するパラメータ設定関数が記憶されている記憶部と、記憶部を有する制御器とを備えている。
制御器は、改質器を所定の判定用制御パラメータ群を用いて加熱する加熱動作を行い、温度上昇速度を取得し、外気温度に基づいて温度上昇速度を補正し、補正後の温度上昇速度に基づき、パラメータ設定関数を参照し、パラメータ設定関数によって設定された制御パラメータ群を用いて運転するように制御する。
これにより、外気温度に起因して温度上昇速度が変化する分を補正値により補正するため、外気温度による温度上昇速度の変化の影響を受けることなく、制御パラメータ設定を行うことができ、精度良く運転制御パラメータ群を設定できる。
本発明の第19の実施の形態にかかる水素生成装置の概略構成を示すブロック図は、図34に示される第17の実施の形態のブロック図と同様であるので、同一の符号および用語を付して、その説明を省略する。
図42は、本発明の第19の実施の形態の水素生成装置の動作の一例を示すフローチャートである。
第19の実施の形態においては、制御器39による運転制御パラメータ群の設定が、図42に示すフローチャートに従って行われる。上述の第17の実施の形態と異なるのは、外気温度による補正対象を、加熱動作によって取得した温度上昇速度とする点であり、それ以外の点は、第17の実施の形態と同じである。
運転制御パラメータ群の設定方法について、図42を用いて説明する。まず、改質温度検出器38で検知される温度が、所定の第2温度以下であるかどうかが判定される(S31)。なお、第2温度は、例えば60℃としてもよい。
改質温度検出器38で検知される温度が第2温度以下である場合には、判定用制御パラメータ群を用いる加熱動作を開始し(S32)、制御器39において、改質温度検出器38で検知される温度が、第2温度から所定の第1温度に上昇するまでの時間が計測される(S33)。
そして、第1温度から第2温度までの差を、制御器39により計測された時間で除算することにより、温度上昇速度を算出し、算出された温度上昇速度を記憶部42に記憶する(S34)。なお、第1温度は、例えば350℃としてよい。
第2温度から第1温度までの所定の温度範囲において、温度上昇速度を取得することで、温度上昇速度取得のための改質器温度条件を一定にすることができ、改質器31の温度と外気温度との差から生じる放熱量のうち、温度上昇速度取得時の改質器温度条件の違いから生じる放熱量変化分が、温度上昇速度に与える影響を除くことができ、運転制御パラメータ設定を精度よく行える。
次に、得られた温度上昇速度について、外気温度に基づいて補正値を取得して補正を行う(S35)。
図43は、本発明の第19の実施の形態における、外気温度と基準外気温度との差に応じた温度上昇速度補正幅の関係の一例を示す図である。図44は、本発明の第19の実施の形態における、外気温度と基準外気温度との差に応じた温度上昇速度補正倍率の関係の一例を示す図である。
図43において、横軸は、判定用制御パラメータ群を用いる温度上昇速度取得時の外気温度と、補正のための基準となる温度上昇速度を取得したときの基準外気温度との差であり、縦軸は、温度上昇速度を補正するために与えられる温度上昇速度補正値(補正幅)である。図43は、これらの対応関係を示すグラフである。
図44は、図43において、縦軸を、温度上昇速度補正値(補正倍率)としたものである。図43は、補正値が補正幅として取得される場合を示し、図44は補正値が補正倍率として取得される場合を示している。
補正値は、図43のように、補正幅として温度上昇速度に加算されるものでもよいし、図44のように、補正倍率として温度上昇速度に積算されるものでもよい。この補正値により、外気温度に起因して温度上昇速度が変化する分を補正するため、外気温度による温度上昇速度の変化の影響を受けることなく、制御パラメータ設定を行うことができ、精度良く運転制御パラメータ群を設定できる。
補正後、補正した温度上昇速度に基づいてパラメータ設定関数を参照し(S36)、参照されたパラメータ設定関数によって設定される運転制御パラメータ群を用いて運転が行われる(S37)。
以上のように、温度上昇速度の外気温度による補正を行うことで、外気温度による温度上昇速度変化の影響を除外することができるため、精度良く運転制御パラメータ群設定を行うことができる。
ここで、外気温度検出方法について説明する。改質器31を加熱器44により加熱していないとき、改質温度検出器38によって検知される改質器31の温度下降速度は、改質器31の温度と外気温度との差によって生じる放熱の量の影響を大きく受ける。
そのため、加熱していないとき、外気温度によって改質器31の温度下降速度が変化するので、改質温度検出器38で検知される温度が、所定の第1温度から第1温度よりも低い第2温度まで低下する時間を取得し、第1温度と第2温度との差を、取得した時間で除算して得られる温度下降速度から、外気温度を推定してもよい。
また、改質温度検出器38で検知される温度が、所定の第1温度から一定時間経過した後の温度を検出し、第1温度と一定時間経過した後の温度との差を、一定時間で除算して得られる温度下降速度から、外気温度を推定してもよい。
なお、改質温度検出器38で検知される温度が第1温度になるまで、改質器を加熱する動作を、温度下降速度検出前に行ってもよい。
また、外気温度検出の別の方法として、周囲温度検出器43を水素生成装置200の外側に配置して行ってもよい。
図40には、第17の実施の形態の水素生成装置200に周囲温度検出器43を取り付けた場合の構成の一例を示す図が示されているが、これと同様の構成となる。図40においては、周囲温度検出器43を水素生成装置200の外側に設けており、これにより、外気温度を検出することができる。周囲温度検出器43は例えばサーミスタによって構成されていてもよい。
なお、改質温度検出器38による温度検出部は改質器31のどの部分の温度であってもよい。
なお、次回設定時の外気温度が、前回設定時の外気温度と比較して所定の差以内であるときには、外気温度による温度上昇速度補正のステップ(S35)を省略して、前回設定時に用いる補正幅、または補正倍率によって温度上昇速度を補正して運転制御パラメータを設定してもよい。
これにより、外気温度による補正の頻度を減少させることができ、精度良く運転制御パラメータ群を設定できるとともに、補正ステップの設定に要する時間を短縮でき、起動時間を短くすることができる。
なお、一定期間の気温変化量が小さい地域においては、一定期間内での外気温度による温度上昇速度の変化が小さくなるため、外気温度による温度上昇速度補正を行った後、一定期間外気温度による温度上昇速度補正のステップ(S35)を省略し、前回設定時に用いる補正幅、または補正倍率によって、温度上昇速度を補正して運転制御パラメータ群を設定してもよい。
一定期間は、例えば3ヶ月間としてもよい。これにより、外気温度による補正の頻度を減少させることができ、精度良く運転制御パラメータ群を設定できるとともに、補正ステップの設定に要する時間を短縮でき、起動時間を短くすることができる。
なお、気温変化の小さい地域においては、外気温度による温度上昇速度の変化が小さくなるため、外気温度による温度上昇速度補正を試運転中に行った後、外気温度による温度上昇速度補正のステップ(S35)を省略し、前回設定時に用いる補正幅、または補正倍率によって、温度上昇速度を補正して運転制御パラメータ群を設定してもよい。
これにより、外気温度による補正の頻度を減少させることができ、精度良く運転制御パラメータ群を設定できるとともに、補正ステップ分の設定に要する時間を短縮でき、起動時間を短くすることができる。
なお、前回の運転時から原料組成が変化する可能性が低い地域においては、前回の運転中において設定された運転制御パラメータ群に基づいて、起動を実行してもよい。これにより、運転制御パラメータ群設定の頻度を減少させながら、精度良く運転制御パラメータ群を設定できるとともに、設定に要する時間を短縮でき、起動時間を短くすることができる。
なお、試運転時に設定された運転制御パラメータ群に基づいて、起動を実行してもよい。
なお、判定用制御パラメータ群を用いる加熱動作によって、温度上昇速度を取得しているが、次回起動時は、前回の運転に用いた運転制御パラメータ群を用いて温度上昇速度を取得してもよく、そうすることで判定用制御パラメータ群を記憶しておく必要がなくなる。この動作は本発明の範囲を逸脱するものではない。
(第20の実施の形態)
本発明の第20の実施の形態にかかる水素生成装置の概略構成を示すブロック図は、図34に示す第17の実施の形態のブロック図と同様であるので、同一の符号および用語を付して、その説明を省略する。
図45は、本発明の第20の実施の形態の水素生成装置200の動作の一例を示すフローチャートである。
第20の実施の形態においては、制御器39による運転制御パラメータ群の設定が、図45に示すフローチャートに従って行われる。
上述の第19の実施の形態と異なるのは、判定用制御パラメータ群を用いた加熱動作時に、一定時間経過する前後の温度変化による温度上昇速度を取得する点であり、それ以外の点は、第19の実施の形態と同じである。
運転制御パラメータ群の設定方法について、図45を用いて説明する。まず、初期の温度として改質温度検出器38で検知される温度が第2温度以下であるかが判断され(S41)、第2温度以下であれば(S41,YES)、判定用制御パラメータを用いた加熱動作を開始する(S42)。
判定用制御パラメータを用いた加熱を一定時間行い(S43)、一定時間経過後(S43,YES)の、改質温度検出器38で検出される温度である第3温度を取得する(S44)。第2温度と第1温度との差を一定時間で除算することにより判定用制御パラメータを用いる温度上昇速度を取得する(S45)。
次に、温度上昇速度に対して、外気温度に基づいて補正値を取得して補正を行う(S46)。補正後、補正した温度上昇速度に基づいてパラメータ設定関数を参照し(S47)、参照されたパラメータ設定関数によって設定される運転制御パラメータ群を用いて運転を行う(S48)。
以上のように、温度上昇速度の外気温度による補正を行うことで、外気温度による温度上昇速度変化の影響を除外することができるため、精度良く運転制御パラメータ群設定を行うことができる。
(第21の実施の形態)
次に、本発明の第21の実施の形態について説明する。
本実施の形態における水素生成装置は、改質反応により水素含有ガスを生成する改質器と、改質器の温度を測定する改質温度検出器と、改質器に原料を供給する原料供給器と、改質器に改質水を供給する改質水供給器と、改質器を加熱する燃焼器と、燃焼器に燃料を供給する燃料供給器と、燃焼器に空気を供給する空気供給器とを備えている。また、高発熱量のガス組成に対応する第1制御パラメータ群、および、低発熱量のガス組成に対応する第2制御パラメータ群が記憶されている記憶部と、第1制御パラメータ群および第2制御パラメータ群のうちの一方の制御パラメータ群を用いて改質器を加熱する第1加熱動作を行う制御器を備えている。制御器は、また、改質器の加熱を停止し、第1制御パラメータ群および第2制御パラメータ群のうちの他方の制御パラメータ群を用いて改質器を加熱する第2加熱動作を行う。制御器は、その後、第1制御パラメータ群を用いて加熱した場合の改質器の第1温度上昇速度、および、第2制御パラメータ群を用いて加熱した場合の改質器の第2温度上昇速度のうち、予め設定される温度上昇速度に近い温度上昇速度が得られた制御パラメータ群を用いて運転するよう制御する。このような構成により、従来例よりも精度良く、原料組成に適した運転制御パラメータを設定できる。
なお、第1制御パラメータ群および第2制御パラメータ群は、例えば、原料流量、改質水流量、燃焼用空気流量および選択酸化空気流量のうちの1つ以上の制御値であればよい。
[装置構成]
本発明の第21の実施の形態にかかる水素生成装置の概略構成を示すブロック図は、図34に示す第17の実施の形態のブロック図と同様である。
第21の実施の形態にかかる水素生成装置200は、原料ガス供給器34と、水供給器40と、改質器31と、加熱器44と、燃焼用空気供給器36と、フレームロッド62と、改質温度検出器38と、燃料供給器90と、制御器39とを備える。
改質器31は、原料および水蒸気を用いて、改質反応により水素含有ガスを生成する。原料は、少なくとも炭素および水素を構成元素とする有機化合物を含み、具体的には、天然ガス、都市ガス、LPG、およびLNG等の炭化水素、ならびに、メタノール、およびエタノール等のアルコールが例示される。
都市ガスとは、ガス会社から配管を通じて各家庭等に供給されるガスをいう。改質反応は、原料および水蒸気から水素含有ガスが生成される反応であれば、いずれの改質反応でもよい。具体的には、水蒸気改質反応、およびオートサーマル反応が例示される。
改質器31で生成された水素含有ガスは、水素供給路89を介して水素利用機器210に供給される。
原料ガス供給器34は、原料を改質器31に供給する。原料ガス供給器34は、例えば、昇圧器および流量調整弁の少なくともいずれか一方により構成される。
水供給器40は、水を改質器31に供給する。水供給器40は、水の流量を調整し、例えば、ポンプおよび流量調整弁の少なくともいずれか一方により構成される。
加熱器44は、改質器31を加熱する。加熱器44の燃料には、少なくとも改質器31より排出される水素含有ガスが用いられる。加熱器44に供給される水素含有ガスは、改質器31から加熱器44に直接供給されてもよいし、水素利用機器210を経由し、水素利用機器210から排出されて加熱器44に供給されてもよい。加熱器44において、燃料供給器90から水素含有ガスに燃料を追加して燃焼されてもよい。
燃焼用空気供給器36は、加熱器44に燃焼用空気を供給する。燃焼用空気供給器36は、例えば、ファンおよびポンプの少なくともいずれか一方により構成される。
制御器39は、制御機能を有するものであれば、水素生成装置200全体あるいは一部を制御可能等のような制御装置でもよい。制御器39は、例えば、演算処理部(図示せず)と、制御プログラムを記憶する記憶部42とを備える。演算処理部としては、MPU、およびCPUが例示される。記憶部42としては、メモリが例示される。
記憶部42には、高発熱量のガス組成に対応する第1制御パラメータ群、および、低発熱量のガス組成に対応する第2制御パラメータ群が記憶されている。
制御器39は、第1制御パラメータ群を用いて加熱した場合の改質器31の第1温度上昇速度、および、第2制御パラメータ群を用いて加熱した場合の改質器31の第2温度上昇速度のうち、予め設定される温度上昇速度に近い温度上昇速度が得られた制御パラメータ群を用いて運転するよう制御する。
また、制御器39は、設定された目標値に基づいて水素生成装置200の運転を制御する。
制御器39は、単独の制御器でも複数の制御器でもよい。つまり、制御器39が、集中制御を行う単独の制御器で構成されていてもよいし、互いに協働して分散制御を行う複数の制御器で構成されていてもよい。この点は、他の実施の形態の制御器においても同様である。
[水素生成装置の動作]
次に、第21の実施の形態の水素生成装置200の動作について説明する。なお、以下の動作は、制御器39が水素生成装置200を制御することによって行われる。
水素生成装置200が起動すると、加熱器44における燃焼が開始される。このとき、封止器48は閉止されているが、水素供給路89から分岐して伸び、加熱器44に至る、燃焼用の燃料供給路91はガス通気状態となっている。
よって、原料ガス供給器34の動作開始により、原料ガスが改質器31に供給されると、改質器31を通過した原料ガスは、燃焼用の燃料供給路91を用いて加熱器44に供給される。同時に、燃焼用空気供給器36の動作開始により、燃焼用の空気が加熱器44に供給される。
加熱器44において、点火電極(図示せず)により着火動作がおこなわれ、燃焼用の空気を用いて、燃料の燃焼が起こる。このようにして、加熱器44から供給される燃焼熱により、改質器31が加熱される。
次いで、水供給器40の動作開始により、改質器31に水が供給される。水の供給開始後、改質器31で生成された水素含有ガスの組成が、水素利用機器210への供給に適した組成になった段階で、封止器48が開放され、水素利用機器210に水素含有ガスが供給される。
水素生成装置200を停止させる場合には、原料ガス供給器34と水供給器40とを停止させる。
[運転制御パラメータ設定方法]
図46は、本発明の第21の実施の形態の水素生成装置200の動作の一例を示すフローチャートである。
運転制御パラメータ設定方法は、制御器39によって、図46のフローチャートの動作に従って行われる。高発熱量ガスを想定した第1制御パラメータ群による加熱が、低発熱量ガスを想定した第2制御パラメータ群よりも先に行われる場合を例にとり、図46のフローチャートの動作を説明する。
フローチャート中の第1温度は、改質器への供給水量が、組成変化後の理論水量よりも少ない場合に起こる、供給原料の熱分解による炭化、あるいは改質ガスの不均化反応による炭素析出を抑制するため、炭素析出温度条件より低ければどのような温度に設定してもよく、例えば350℃と設定してもよい。
第2温度は、第1温度より低ければ、どのような温度に設定してもよく、例えば、60℃としてもよい。
まず、改質温度検出器38によって検知される改質器温度が第2温度以下である場合(S51,YES)に、高発熱量ガスを想定した第1制御パラメータ群を用いて第1加熱動作を行い(S52)、第1温度まで温度を上昇させる(S53)。
なお、改質温度検出器38は、例えば熱電対によって構成されていてもよい。
ここで、制御器39において、改質器温度が第2温度から第1温度に上昇するまでの時間が計測されている。この計測時間から温度上昇速度を算出し(S54)、算出された温度上昇速度を第1温度上昇速度として記憶部42に記憶する。そして、改質器を第1加熱動作によって改質器温度が第1温度になるまで加熱し停止した(S55)後、第2温度以下になるまで次の加熱動作を開始しない(S56)。
改質器温度が第2温度まで低下した後(S56,YES)、低発熱量ガスを想定した第2制御パラメータ群を用いて第2加熱動作を開始する(S57)。改質器を、第2加熱動作によって、改質器温度が第1温度になるまで加熱した後(S58,YES)、制御器39が、第1温度上昇速度取得時と同様の動作を行い、第2加熱動作によって得られた温度上昇速度を第2温度上昇速度として取得し記憶部42に記憶する(S59)。
上述の動作により、第1温度上昇速度と第2温度上昇速度とを取得後、制御器39内で所定の温度上昇速度との差分をとり、差の絶対値が小さいほうの制御パラメータを運転に使用するように制御する(S60)。これにより、精度良く原料組成に応じた適切な運転制御パラメータを設定できる。
なお、制御器39による運転制御パラメータ設定は、第2加熱動作終了後に運転停止して行ってもよいし、第2温度上昇速度取得後も加熱動作を継続しながら行ってもよい。
また、上記説明は、第1制御パラメータ群を第2制御パラメータ群よりも先に行う例としたが、第2制御パラメータ群を第1制御パラメータ群よりも先に行ってもよい。
なお、第1温度上昇速度および第2温度上昇速度を、予め設定される温度上昇速度と比較し、第1温度上昇速度と予め設定される温度上昇速度との差、および、第2温度上昇速度と予め設定される温度上昇速度との差が、ほぼ同等であると判断した場合を想定する。このような場合、高発熱量のガス組成に対応する第1制御パラメータ群、および、低発熱量のガス組成に対応する第2制御パラメータ群の中間の制御値である第3制御パラメータ群を用いて運転するよう、制御するよう制御器39が構成されていてもよい。
(第22の実施の形態)
本実施の形態の水素生成装置200は、図40に示した、第17の実施の形態の水素生成装置200において、外部温度測定のための周囲温度検出器43を設置したものと同様であり、第21の実施の形態に記載の所定の温度上昇速度を、周囲温度検出器43によって検出された外部温度に応じて変更させるものである。
かかる構成により、加熱動作時の改質部温度上昇速度が外部温度の影響で変化した場合でも原料組成の誤判定を防止し、精度良く原料組成に応じた適切な運転制御パラメータを設定できる。上記の点以外は、第21の実施の形態と同じとしてよい。周囲温度検出器43は例えばサーミスタにより構成される。
図47は、本発明の第22の実施の形態の、外部温度変化に対する所定の温度上昇速度決定方法を説明するための図である。
詳しく説明すると、記憶部42に、図47に示される外部温度に対応した所定の温度上昇速度データが保持されており、制御器39で、周囲温度検出器43によって検出された温度に基づいて所定の温度上昇速度が設定される。かかる構成により、外部温度が低い場合には、所定の温度上昇速度を低い値に設定し、高い場合には温度上昇速度を高い値にすることにより、加熱動作時の改質部温度上昇速度が外部温度の影響により変化した場合でも、精度良く、原料組成に適した運転制御パラメータを設定することができる。
(第23の実施の形態)
図48は、本発明の第23の実施の形態の水素生成装置の動作の一例を示すフローチャートである。
本実施の形態は、図40の装置構成のもとで、制御器39による運転制御パラメータ設定が、図48に示されるフローチャートの動作に従って行われ、外部温度が所定の温度範囲内の場合に、第1加熱動作および第2加熱動作を行うよう制御するものである。
上記の点以外の動作は、第21の実施の形態と同じとしてよい。かかる構成により、外部温度による改質部温度上昇速度への影響を除外できるため、精度良く原料組成に適した運転制御パラメータを設定することができる。
運転制御パラメータ設定方法について、高発熱量ガスを想定したパラメータ群が低発熱量ガスを想定したパラメータ群よりも先に行われる場合を例にとり、図48のフローチャートの動作を説明する。第21の実施の形態と同様の表現で記載しているものは、第21の実施の形態と同じ意味であるので説明を省略する。
まず、改質器温度が第2温度以下であれば(S51,YES)、制御器39が周囲温度検出器43によって検出された外部温度が、所定の温度範囲かどうかが判定される(S61)。なお、所定の温度範囲とは、常時固定値でもよいし、現在時間情報によって変化させてもよい。
外部温度が所定温度範囲内であれば(S61,YES)、高発熱量ガスを想定したパラメータ群を用いて第1加熱動作を開始し(S52)、第1温度まで温度を上昇させる(S53)。ここで、制御器39において、改質器温度が第2温度から第1温度に上昇するまでの時間が計測されており、この時間から温度上昇速度が算出され、算出された温度上昇速度が第1温度上昇速度として記憶部42に記憶される(S54)。
改質器31を第1加熱動作によって改質器温度が第1温度になるまで加熱し停止した後(S55)、第2温度以下になるまで改質器温度を低下させる(S56)。
改質器温度が第2温度以下になるまで低下した後(S56,YES)に、制御器39が周囲温度検出器43によって検出された外部温度が、所定の温度範囲かどうかが判定され(S62)、所定温度範囲内であれば(S62,YES)、低発熱量ガスを想定したパラメータ群を用いて第2加熱動作が開始される(S57)。
改質器を、第2加熱動作によって改質器温度が第1温度になるまで加熱した後(S58)、制御器39が第1温度上昇速度取得時と同様の動作を行い、第2加熱動作によって得られた温度上昇速度を第2温度上昇速度として取得し記憶部42に記憶する(S59)。
上述の動作により、第1温度上昇速度と第2温度上昇速度とを取得後、制御器39内で所定の温度上昇速度との差分をとり、差の絶対値が小さいほうを運転に使用するように制御する。かかる構成により、外部温度による改質部温度上昇速度への影響を除外できるため、精度良く原料組成に適した運転制御パラメータを設定することができる(S60)。
なお、制御器39による運転制御パラメータ設定は、第2加熱動作終了後に停止して行ってもよいし、第2温度上昇速度取得後も加熱動作を継続しながら行ってもよい。
なお、所定の温度上昇温度は、第22の実施の形態のように、外部温度に応じて変化させてもよい。
(第24の実施の形態)
図49は、本発明の第24の実施の形態の水素生成装置の動作の一例を示すフローチャートである。
本実施の形態は、図40の装置構成のもとで、制御器39による運転制御パラメータ設定が、図49に示すフローチャートの動作に従って行われる。外部温度が所定の温度範囲内の場合に、第1加熱動作および第2加熱動作を行うような制御がなされる。
上記の点以外の動作は、第21の実施の形態と同じとしてよい。かかる構成により、外部温度による改質部温度上昇速度への影響を除外できるため、原料組成に適した運転制御パラメータを設定することができる。
運転制御パラメータ設定方法について、高発熱量ガスを想定したパラメータ群が、低発熱量ガスを想定したパラメータ群よりも先に行われる場合を例にとり、図49のフローチャートの動作を説明する。
第21の実施の形態と同様の表現で記載しているものは、第21の実施の形態と同じ意味であるので説明を省略する。
まず、改質器温度が第2温度以下である場合に(S51,YES)、改質器加熱動作前に、制御器39が周囲温度検出器43によって外部温度を取得し、第1外部温度として記憶部42に保持する(S71)。その後、高発熱量ガスを想定した第1制御パラメータ群を想定した第1加熱動作が行われ(S52)、第1温度まで温度を上昇させる(S53)。
ここで、制御器39において、改質器温度が、第2温度から第1温度に上昇するまでの時間が計測されており、この時間から温度上昇速度が算出され、算出された温度上昇速度が第1温度上昇速度として記憶部42に記憶される(S54)。
改質器31を、第1加熱動作によって改質器温度が第1温度になるまで加熱し停止した後(S55)は、第2温度になるまで次の加熱動作を開始しない(S56)。
改質器温度が第2温度まで低下した後(S56,YES)、改質器加熱動作前に、制御器39が、周囲温度検出器43によって外部温度を取得し、第2外部温度として記憶部42に保持する(S72)。その後、低発熱量ガスを想定した第2制御パラメータ群を用いて、第2加熱動作が開始される(S57)。
改質器31を、第2加熱動作によって、改質器温度が第1温度になるまで加熱した後(S58,YES)、制御器39が、第1温度上昇速度取得時と同様の動作を行い、第2加熱動作によって得られた温度上昇速度を第2温度上昇速度として取得し、記憶部42に記憶する(S59)。
上述の動作により、第1温度上昇速度と第2温度上昇速度とを取得後、第1外部温度および第2外部温度が、所定の温度範囲内であるかどうかが判定され(S73)、範囲内であれば(S73,YES)、制御器39内で所定の温度上昇速度との差分をとり、差の絶対値が小さいほうを運転に使用するように制御する(S60)。また、どちらか一方でも所定温度範囲外である場合には(S73,NO)、再度スタートに戻る。
なお、所定の温度範囲は、固定値でもよいし、現在時間情報によって変化させてもよい。
なお、制御器39による運転制御パラメータ設定は、第2加熱動作終了後に停止して行ってもよいし、第2温度上昇速度取得後も加熱動作を継続しながら行ってもよい。
また、上記説明は、第1制御パラメータ群を、第2制御パラメータ群よりも先に行う例としたが、第2制御パラメータ群を、第1制御パラメータ群よりも先に行ってもよい。
なお、所定の温度上昇温度は、第22の実施の形態のように、外部温度に応じて変化させてもよい。
(第25の実施の形態)
図50は、本発明の第25の実施の形態の水素生成装置の動作の一例を示すフローチャートである。
本実施の形態は、図40の装置構成のもとで、制御器39による運転制御パラメータ設定が、図50に示すフローチャートの動作に従って行われる。運転時の外部温度が所定の温度範囲内になるまで、第1加熱動作が繰り返され、所定の温度範囲内となれば、続いて第2加熱動作が開始され、同様に、運転時外部温度が所定の温度範囲内になるまで、第2加熱動作が繰り返されるよう制御される。
上記の点以外の動作は、第21の実施の形態と同じとしてよい。かかる構成により、外部温度による改質部温度上昇速度への影響を除外できるため、精度良く、原料組成に適した運転制御パラメータを設定することができる。
運転制御パラメータ設定方法について、高発熱量ガスを想定したパラメータ群が、低発熱量ガスを想定したパラメータ群よりも先に行われる場合を例にとり、図50のフローチャートの動作を説明する。第21の実施の形態と同様の表現で記載しているものは、第21の実施の形態と同じ意味であるので、説明を省略する。
まず、改質器温度が第2温度以下である場合(S51,YES)に、高発熱量ガスを想定した第1制御パラメータ群を想定した第1加熱動作が行われ(S52)、第1温度まで温度を上昇させる(S53)。ここで、制御器39において、改質器温度が第2温度から第1温度に上昇するまでの時間が計測されており、この時間から温度上昇速度が算出され、算出された温度上昇速度が第1温度上昇速度として記憶部42に記憶される(S54)。
改質器31を、第1加熱動作によって改質器温度が第1温度になるまで加熱し停止させた後(S55)、第2温度になるまで次の加熱動作を開始しない(S56,NO)。
改質器温度が第2温度まで低下した後(S56,YES)、制御器39は、周囲温度検出器43によって外部温度を取得し、外部温度が所定の温度範囲内であるかどうかを判定する(S81)。
所定の温度範囲外であれば(S81,NO)、再度第1加熱動作を開始する。所定の温度範囲内であれば(S81,YES)、低発熱量ガスを想定した第2制御パラメータ群を用いて第2加熱動作を開始する(S57)。改質器31を第2加熱動作によって改質器温度が第1温度になるまで加熱した後(S58,YES)、制御器39は、第1温度上昇速度取得時と同様の動作を行い、第2加熱動作によって得られた温度上昇速度を第2温度上昇速度として取得し、記憶部42に記憶する(S59)。
その後、制御器39は、周囲温度検出器43によって外部温度を取得し、外部温度が所定の温度範囲内であるかどうかを判定する(S82)。範囲外であれば(S82,NO)加熱を停止し(S83)、改質器温度を第2温度まで低下させて、再度第2加熱動作を行う。範囲内であれば(S82,YES)、制御器39内で第1温度上昇速度および第2温度上昇速度について、それぞれの、所定の温度上昇速度との差分をとり、差の絶対値が小さいほうを運転に使用するように制御する(S60)。
かかる構成により、外部温度による改質部温度上昇速度への影響を除外できるため、精度良く原料組成に適した運転制御パラメータを設定することができる。
なお、所定の温度範囲とは、固定値でもよいし、現在時刻情報によって変化させてもよい。
なお、制御器39による運転制御パラメータ設定は、第2加熱動作終了後に停止して行ってもよいし、第2温度上昇速度取得後も加熱動作を継続しながら行ってもよい。
また、上記説明は、第1制御パラメータ群を、第2制御パラメータ群よりも先に行う例としたが、第2制御パラメータ群を、第1制御パラメータ群よりも先に行ってもよい。
なお、所定の温度上昇温度は、第22の実施の形態のように外部温度に応じて変化させてもよい。
(第26の実施の形態)
燃料電池の発電時の燃料に用いる水素含有ガスは、一般的な原料インフラガスとして整備されていない。このため、燃料電池システムは、通常、改質器を有する水素生成装置を備える。
改質器では、一般的な原料インフラガスである都市ガス、天然ガスあるいはLPGから水素含有ガスが、改質反応により生成される。例えば、水蒸気改質反応が一般的に用いられている。
この水蒸気改質反応では、原料となる都市ガス等と水蒸気とを、Ni系またはRu等の貴金属系の改質触媒を用いて、600℃〜700℃程度の高温で反応させることにより、水素を主成分とした水素含有ガスが生成される。
このとき、水蒸気改質反応を安定かつ効率に行うには、供給原料の組成に適した量の水を供給する必要がある。例えば、メタン(CH4)ガスまたはエタン(C2H6)ガスが水蒸気改質されて、水素と二酸化炭素とが生成される改質反応では、理論的には、1モルのメタンに対して必要な水の量は2モルである。
また、1モルのエタンに対して、必要な水の量は4モルである。通常は、改質器への水の供給量が不足すると、供給原料中の炭素が析出する等の問題が生じることから、このような問題を防止すべく、原料の供給流量から算出された理論水量の1.5倍程度の水が改質器に供給されるように、水供給流量が設定されている。そして、原料の供給流量に応じて、水の供給流量が所望の値になるよう、水素生成装置の運転が制御されている。
また、改質器の水蒸気改質反応に必要な熱エネルギーは、改質器に設けられた燃焼器の原料燃焼によって、改質器に供給されている。起動時は、水素生成装置を通流したガスを直接、燃焼器に戻して燃焼させ、燃料電池に水素含有ガスを供給している時は、燃料電池から排出される燃料オフガスを燃焼器で燃焼させる方法が一般的である。
燃焼器の原料燃焼を安定して行うには、原料の組成に適した量の燃焼用空気を供給する必要がある。例えば、メタンガスまたはエタンガスが、酸素とともに燃焼して、水と二酸化炭素とが生成される燃焼反応では、理論的には、1モルのメタンに対して、必要な酸素の量は2モルである。また、1モルのエタンに対して、必要な酸素の量は3.5モルである。
通常は、燃焼器への燃焼用空気の供給量が不足すると、燃焼不良が生じることから、このような事態を防止すべく、原料の供給流量から算出された理論燃焼用空気量の1.5倍から2.0倍程度の燃焼用空気が、燃焼器に供給されるように燃焼用空気の供給量が設定されている。そして、原料の供給流量に応じて、燃焼用空気の供給量が所望の値になるよう、水素生成装置の運転が制御されている。
ところで、原料インフラの構成上、改質器に供給される原料の組成が変化する場合がある。例えば、既存のインフラから供給される都市ガスは、主たる組成は同様であっても、供給元(具体的にはガス会社)によって組成に違いがあることから、供給元を変更すると、改質器に供給される原料の組成が変化する。また、決められた基準の中で、同一の供給元においても原料の組成が変更される場合がある。
供給原料の組成が変化した場合には、組成変化前の原料供給流量に応じて設定された水供給流量のままで改質器に水を供給すると、組成変化後の理論水量と実際の供給水量との間に差が生じ、実際に必要な供給水量が、理論水量に対して大幅な過不足を生じる可能性がある。
例えば、供給水量が、組成変化後の理論水量よりも多い場合には、改質反応自体は速やかに進行するが、改質反応のための水蒸発に消費するエネルギー量が多くなるため、水素生成のエネルギー効率は低下する。
一方、供給水量が組成変化後の理論水量よりも少ない場合には、供給原料の熱分解による炭化、あるいは、改質ガスの不均化反応による炭素析出が生じうる。このため、水素生成装置の圧損の増大、さらには改質ガス流路の閉塞が起こり、その結果、水素生成効率の低下、あるいは、水素生成装置の運転停止を招く虞がある。
また、供給原料の組成が変化した場合、組成変化前の原料供給流量に応じて設定された燃焼用空気量のままで運転を継続すると、組成変化後の理論燃焼用空気量と実際の燃焼用空気の供給量との間に差が生じ、実際に必要な燃焼用空気の供給量が、理論燃焼用空気量に対して大幅な過不足を生じる可能性がある。この場合、燃焼不良を引き起こす虞がある。
例えば、特許文献6の燃料電池において、原料ガスの流量と、水素濃度の高い改質ガスを得るための改質用水の流量とを変更する制御パラメータの設定手段では、センタサーバのほか、地域毎にエリアサーバを設け、エリアサーバの下に、燃料電池が電話回線、インタネット、および無線等を介して接続される構成である。このため、回線切断等の通信不具合が発生した場合、通信が復旧するまでの期間、ガス組成の更新ができず、その期間にガス組成の変更が行われた場合、燃料電池の運転が不安定になる。
具体的には、改質水が適量供給できないため、炭素析出が発生する。また、燃焼用の空気流量が適正に制御できないため、空気不足、または、空気過剰による燃焼の不安定化がもたらされる虞がある。
(基礎的知見)
本発明者等は、ガス組成に応じた燃料電池システムの制御パラメータの設定において、従来よりも確実に実行可能な手法について鋭意検討を行った。その結果、以下の知見を得た。
すなわち、本発明者等は、原料と水素含有ガスの少なくともいずれか一方が燃焼している状態で、燃焼器への原料の供給量に対する、燃焼器への空気供給量の比を変化させたときに、原料の組成に応じて、燃焼状態の変化度合いが異なる現象を利用可能であると想到する。
すなわち、高熱量の原料ガスの燃焼において、空気比が適正に制御される制御パラメータで運転している状態で、原料ガスが低熱量の原料ガスに切り替わった場合の燃焼において、空気比は過剰に増大されることになる。
このとき、燃焼状態が不安定になるため、不完全燃焼により、燃焼排ガスに含まれる一酸化炭素濃度が、通常許容される濃度よりも高くなる。また、過剰な空気比による、燃焼器および火炎の冷却によって、燃焼反応が停止する。
これらの状態は、燃焼状態検出器、すなわち燃焼器の後段に配設された一酸化炭素検出器、または、フレームロッドあるいは熱電対等の火炎検出器で検出が可能であると考える。
例えば、燃料電池システムの発電量に対する改質器への原料供給量が、メタン100%の原料に最適化されている場合を想定する。このとき、メタン1モルに対して、完全燃焼に必要な酸素は2モルであり、通常はこの1.5倍から2.0倍程度の酸素が燃焼器に供給できるよう、空気供給量を制御する。
具体的には、原料供給量が1L/minのときの空気比が、1.5〜2.0となるよう、空気供給量を14〜19L/minに制御する。
次に、空気供給量が同じ状態で、原料の組成が、メタン90%と窒素10%との混合物となった場合を想定する。原料供給量が1L/minであれば、原料中のメタンは0.9L/minで、空気供給量が14〜19L/minであると、空気比は1.6〜2.2となる。
空気比が、通常設定される範囲よりも高い場合、燃焼状態は不安定になり、燃焼排ガス中の一酸化炭素濃度が増大する。また、さらに空気供給量が増大すると、火炎の消失等の燃焼不安定状態となる。空気供給量あるいは原料供給量のいずれかを操作して、原料供給量に対する空気供給量の比を高くしたとき、原料ガスの熱量が高い場合と低い場合とで、燃焼状態の安定性が異なる。このため、熱量の高い原料ガスの方が、熱量の低い原料ガスよりも、燃焼排ガス中の一酸化炭素濃度は低くなる。
かかる構成によれば、燃焼器で原料と水素含有ガスとの少なくともいずれか一方が燃焼している状態で、原料供給量に対する空気供給量の比を増大させたときの、燃焼排ガス中の一酸化炭素濃度を制御装置が読み取り、それに対応する燃料電池の発電量に対する、改質器への原料供給流を制御することによって、従来の燃料電池システムよりも、原料組成に応じた制御パラメータの設定を、従来よりも確実に実行し得る。
[水素生成装置の構成]
図51は、本発明の第26の実施の形態の燃料電池システム100の概略構成の一例を示す模式図である。
図51に示す例において、本実施の形態の燃料電池システム100は、水素生成装置200、燃料電池50、改質器31、燃焼器35、水供給器40、原料ガス供給器34、燃焼用空気供給器36、燃焼状態検出器56、燃焼排ガス経路58、制御器39、アノード水素供給経路63、アノード水素排気経路64、電力変換器68、およびスタック電流73を備えている。
改質器31は、原料および水蒸気を用いて、改質反応により水素含有ガスを生成するように構成されている。具体的には、改質器31内の改質触媒(図示せず)において、原料が改質反応して、水素含有ガスが生成される。改質反応は、いずれの形態であってもよく、例えば、水蒸気改質反応、およびオートサーマル反応が挙げられる。
なお、原料は、メタンを主成分とする天然ガス、プロパンを主成分とするLPG、アルコール、ガソリン、および灯油等の、少なくとも炭素および水素から構成された有機化合物を用いることができる。
また、原料は、原料供給源(図示せず)より供給される。原料供給源としては、例えば、原料ガスボンベ、原料ガスインフラ、および原料タンク等が挙げられる。また、水は、イオン交換水等を用いることができ、改質水タンクまたは水道水の配管等からイオン交換処理を行った状態で供給される。
また、図51には示されていないが、各改質反応において必要となる機器は、適宜設けられる。例えば、改質反応が水蒸気改質反応であれば、水蒸気を生成する蒸発器が設けられる。改質反応がオートサーマル反応であれば、水素生成装置200には、さらに、改質器31に空気を供給する空気供給器(図示せず)が設けられる。
改質器31で生成された水素含有ガスは、アノード水素供給経路63を介して、燃料電池50に供給される。
燃焼器35は、燃焼器35に供給された燃料と空気を燃焼して、改質器31を加熱するように構成されている。燃焼器35としては、例えば、バーナを用いることができる。燃焼器35には、燃焼用空気供給器36が接続されている。
燃焼用空気供給器36は、燃焼器35に空気を供給することができれば、どのような構成であってもよい。燃焼用空気供給器36としては、例えば、ファンまたはブロワ等を用いることができる。
また、燃焼器35には、改質器31、アノード水素供給経路63、燃料電池50およびアノード水素排気経路64を介して、原料ガス供給器34が接続されている。原料ガス供給器34は、燃焼器35に燃料を供給することができれば、どのような構成であってもよい。原料ガス供給器34は、燃焼器35へ供給する燃料の流量を調整する機器であり、例えば、昇圧器と流量調整弁とにより構成されている。昇圧器としては、例えば、定容積型ポンプが用いられるが、これに限定されるものではない。
また、後述するように、燃焼器35に、改質器31で生成された水素含有ガスが供給される形態を採用した場合は、原料ガス供給器34、水蒸気供給器(水供給器40と蒸発器)、および改質器31を経て、燃焼器35に、改質器31で生成された水素含有ガスが供給される。
燃焼器35には、燃焼状態検出器56が設けられている。燃焼状態検出器56は、燃焼器35における燃焼状態を検出し、検出した状態を制御器39に出力するように構成されている。
燃焼状態検出器56としては、燃焼排ガス中の一酸化炭素濃度を計測する一酸化炭素センサ、火炎の状態を検出するフレームロッド、または、燃焼による発熱を検出する温度センサ等を用いることができる。なお、燃焼状態検出器56が一酸化炭素センサの場合には、燃焼排ガス経路58から分岐した経路に設けてもよい。
制御器39は、原料ガスの熱量を推定する動作において、燃焼器35における原料供給量に対する空気供給量の比が、原料ガスの熱量を推定する動作の前よりも高くなるよう、燃焼用空気供給器36および原料ガス供給器34の少なくとも一方の機器を制御するように構成されている。
制御器39は、原料ガスの熱量を推定する動作を実行する際に動作が必要な機器(例えば、燃焼用空気供給器36等)を制御するものであればよく、演算処理部と制御プログラムとを記憶している記憶部(いずれも図示せず)を備えている。
演算処理部としては、MPU、およびCPUが例示される。記憶部としては、メモリーが例示される。なお、制御器39は、集中制御を行う単独の制御器で構成されていてもよく、互いに協働して分散制御を行う複数の制御器で構成されていてもよい。
[燃料電池システムの動作]
次に、第26の実施の形態の燃料電池システム100の動作について、図51〜図56を参照しながら説明する。なお、以下では、燃料電池システム100における水素生成装置200の水素生成動作は、公知の水素生成装置と同様に行われるため、その詳細な説明は省略し、原料ガスの熱量を推定する動作について説明する。
図52は、本発明の第26の実施の形態の燃料電池システム100の概略動作の一例を示すフローチャートである。
図52に示されるように、制御器39は、燃焼器35における原料流量に対する空気流量の比が、原料ガスの熱量を推定する動作を実行する前よりも高くなるように、原料ガス供給器34、燃焼用空気供給器36および電力変換器68のうち、少なくとも一つの機器を制御する(S101)。
具体的には、例えば、燃焼器35における原料供給量に対する空気供給量の比が、原料の熱量を推定する動作の前の原料供給量に対する、空気供給量の比の、2倍から5倍となるように、原料ガス供給器34、燃焼用空気供給器36および電力変換器68の少なくとも一つの機器を制御する。
より詳細には、制御器39は、燃焼器35に供給される空気の流量を増加させるように、燃焼用空気供給器36を制御する。または、制御器39は、燃焼器35に供給される燃料の流量を減少させるように、原料ガス供給器34を制御する。または、制御器39は、燃焼器35に供給される燃料の流量を減少させるように、スタック電流73を増大するよう電力変換器68を制御する。
ここで、原料供給量に対する空気供給量の比が、原料の熱量を推定する動作の前の原料供給量に対する空気供給量の比の2倍から5倍となるようにしている理由は以下の通りである。
図53は、本発明の第26の実施の形態における、燃料電池システムの発電中に燃焼器における空気比を変動させたときに、燃焼排ガス中に含まれる一酸化炭素濃度を測定したときの図である。
一酸化炭素センサを燃焼状態検出器56として採用する場合、図53に示されるように、通常使用する空気供給量は、安定した燃焼状態を維持できる範囲に設定されているため、原料の熱量に応じた燃焼状態の変化が観察されにくい。しかし、空気供給量を増大させていくと、燃焼状態は徐々に不安定となり、燃焼排ガス中の一酸化炭素濃度が増大すると同時に、原料の熱量に応じて、一酸化炭素濃度の差が顕著に現れる。
また、フレームロッド、温度センサ、または光学センサ等の火炎の有無を検出する火炎検出器を燃焼状態検出器56として採用する場合、火炎を確実に消失させるために、原料供給量に対する空気供給量の比が、原料の熱量を推定する動作の前の原料供給量に対する空気供給量の比の2倍から5倍であることが必要である。
一方で、原料供給量に対する空気供給量の比を、必要以上に高くする場合には、原料ガス供給器34あるいは燃焼用空気供給器36の通常の動作範囲を逸脱するため、採用可能なブロア、またはファンが存在しない可能性がある。
これにより、燃焼器35における原料供給量に対する空気供給量の比を、原料の熱量を推定する動作でないときの、燃焼器35における原料供給量に対する空気供給量の比よりも高くすることができ、原料の熱量を推定する動作の前よりも、燃焼は不安定な状態になる。
次に、制御器39は、燃焼状態検出器56から燃焼状態検出器56が検出した燃焼状態出力値を取得する(S102)。
ついで、制御器39は、ステップS102で取得した燃焼状態出力値に応じた燃料電池50の発電量に対する改質器31への原料供給量を設定して(S103)、原料の熱量を推定する動作を終了する。
図54は、本発明の第26の実施の形態における、燃料電池システムの発電中に、燃焼器における空気比を変動させたときに、燃焼排ガス中に含まれる一酸化炭素濃度を測定したときの図である。具体的には、燃焼状態検出器56の検出値と原料の熱量推定値との関係が示されている。図55は、本発明の第26の実施の形態における、原料の推定熱量と、燃料電池の発電量に対する改質器への原料供給量との関係を示す図である。
ここで、燃焼状態出力値に応じた、燃料電池50の発電量に対する改質器31への原料供給量の設定値は、予め制御器39の記憶器に記憶されており、図55の関係を元に、任意に設定される。
第26の実施の形態の燃料電池システム100では、制御器39が、原料の熱量を推定する動作の実行時に、燃焼器35における原料流量に対する空気流量の比が高くなるように、原料ガス供給器34および燃焼用空気供給器36の少なくとも一方の機器を制御することで、燃焼排ガス中の一酸化炭素濃度を増加させている。
燃焼排ガス中の一酸化炭素濃度を増加させるには、燃焼器35における原料流量に対する空気流量の比が低くなるように機器を制御することも可能であるが、本実施の形態においては、以下の理由から、燃焼器35における原料流量に対する空気流量の比が高くなるように、機器を制御している。
図56は、本発明の第26の実施の形態において、燃焼器35における空気比を変動させたときに、燃焼排ガス中に含まれる一酸化炭素濃度を測定したときの図である。
図56に示されるように、燃料電池システム100の通常運転時(原料の熱量を推定する動作時でないとき)における燃焼器35の空気比よりも、空気比を低くすると、目標とする空気比(例えば、1.05)に対してわずかでもずれると、一酸化炭素濃度が急激に変動する。このため、燃焼器35で発生する一酸化炭素濃度を所定値に保つためには、制御器39は、原料ガス供給器34および燃焼用空気供給器36の制御を厳密に行う必要がある。
また、燃焼器35における空気比を低くすると、空気不足により煤煙が発生する。煤煙は、燃焼器35、燃焼排ガス経路58、または、燃焼排ガス経路58の燃焼器35よりも下流に設けられている、図示しない熱交換器等の機器に付着し、熱交換能力を低下させるだけでなく、燃焼排ガス経路58の断面積を減少させ、燃焼時の燃焼性を悪化させるおそれがある。
一方、燃料電池システム100の通常運転時(原料の熱量を推定する動作時でないとき)における燃焼器35の空気比よりも、空気比を高くすると、空気比を低くしたときに比して、一酸化炭素濃度の変動が小さい。
このため、燃焼器35で発生する一酸化炭素濃度を所定値に保つことが容易となり、制御器39の原料ガス供給器34、燃焼用空気供給器36または電力変換器68の制御が容易となる。また、燃焼器35における空気比を高くすると、煤煙が発生した場合でも、大量の燃焼排ガスによって速やかに排出されるので、燃焼器35および下流側の機器への悪影響を低減し得る。
(第27の実施の形態)
第27の実施の形態の燃料電池システム100は、第26の実施の形態の燃料電池システム100において、改質器31で水素含有ガスの生成を実行していないときに、制御器39は、燃焼器35における原料流量に対する空気流量の比が、原料ガスの熱量を推定する動作を実行する前よりも高くなるよう、原料ガス供給器34および燃焼用空気供給器36の少なくとも一方の機器を制御する。本実施の形態の燃料電池システム100は、上記特徴以外は、第26の実施の形態の水素生成装置200と同様に構成してもよい。
第27の実施の形態では、改質触媒の温度が炭素析出を起こさない温度、例えば400℃以下で実施されるので、制御パラメータが不適切な状態での改質反応を防止することができる。すなわち、制御パラメータが不適切であった場合に発生する、改質触媒での炭素析出による触媒の劣化が防止される。
なお、第27の実施の形態の燃料電池システム100は、図51に示される第26の実施の形態において、燃料電池システム100のアノード水素供給経路63とアノード水素排気経路64とを短絡する経路(図示しない)を設け、この短絡経路を介して、原料ガスを燃焼器35に供給する構成としてもよい。その他の構成は同様であるため、以下の説明では、原料の熱量を推定する動作について説明する。
図57は、本発明の第27の実施の形態の燃料電池システム100の概略動作の一例を示すフローチャートである。
図57に示されるように、第27の実施の形態の水素生成装置200の概略動作は、第26の実施の形態の水素生成装置200の概略動作と基本的には同じであるが、原料ガス供給器34および燃焼用空気供給器36の少なくとも一方の機器が制御される(S201)。より詳細には、制御器39は、燃焼器35に供給される空気の流量を増加させるように、燃焼用空気供給器36を制御する。または、制御器39は、燃焼器35に供給される原料の流量を減少させるように、原料ガス供給器34を制御する点が、第26の実施の形態とは異なる。
(第28の実施の形態)
第28の実施の形態の水素生成装置200は、第26の実施の形態、または、第27の実施の形態の燃料電池システム100において、制御器39は、燃焼状態検出器56で検知された値に基づいて、燃料電池50の発電量に対する改質器31への原料供給量が、第1の原料供給量、および、第1の原料供給量よりも少ない第2の原料供給量のうちのいずれかになるように制御する。
燃料電池システム100が対応できる原料を、都市ガスとLPGとして設計したとき、都市ガスとLPGとの熱量には大きな差があるため、種々の都市ガスに対して制御パラメータを設定するには、燃焼状態検出器56の感度および再現性の水準を非常に高いものとする必要がある。このため、燃料電池システム100が高価格となり、商品としての価値が低下する。
そこで、第28の実施の形態では、熱量の差が小さい原料組成の変化に対する制御パラメータは設定せず、熱量の差が大きい原料に対して、それぞれに適した2段階の制御パラメータを設定することで、感度および再現性の水準の低い燃焼状態検出器56を採用することが可能となり、燃料電池システム100の低コスト化が実現できるという特徴がある。
図58は、本発明の第28の実施の形態の燃料電池システム100の概略動作の一例を示すフローチャートである。
図58に示されるように、第28の実施の形態の燃料電池システム100の概略動作は、第26の実施の形態の燃料電池システム100、および、第27の実施の形態の燃料電池システム100の概略動作と基本的には同じであるが、燃料電池50の発電量に対する改質器31への原料供給量を無段階ではなく、2段階に設定する点が異なる(S303〜S305)。
(第29の実施の形態)
第29の実施の形態の燃料電池システム100は、燃焼状態検出器56として、一酸化炭素センサが、燃焼器35の後段に配設される。一酸化炭素センサは、燃焼状態の良否の度合いを、無段階に測定できる。このため、原料の熱量に対する制御パラメータを無段階に設定することが可能である。
すなわち、第28の実施の形態で例示した都市ガスとLPGとのような、熱量の差の大きな原料だけでなく、都市ガスを細分化し、それぞれに適した制御パラメータが設定可能なため、燃料電池システム100を、従来よりも安定的に運転することが可能である。
図59は、本発明の第29の実施の形態の燃料電池システム100の概略動作の一例を示すフローチャートである。
図59に示されるように、第29の実施の形態の燃料電池システム100の概略動作は、第26の実施の形態から第28の実施の形態までの燃料電池システム100の概略動作と基本的に同じである。しかしながら、一酸化炭素センサの出力値に応じて、発電量に対する改質器31への原料供給量を制御する点が異なる(S401〜S403)。
(第30の実施の形態)
第30の実施の形態の燃料電池システム100は、第29の実施の形態において、燃焼器35で原料および水素含有ガスの少なくともいずれか一方が燃焼している状態で、燃焼器35への原料の供給量に対する、燃焼器35への空気供給量の比を増加させたときに、一酸化炭素検出器の検知される一酸化炭素濃度が所定の濃度閾値以上であると、燃料電池50の発電量に対する改質器31への原料供給量が第1の原料供給量になるよう制御する。そして、一酸化炭素検出器の検知される一酸化炭素濃度が所定の濃度閾値未満であると、燃料電池50の発電量に対する改質器31への原料供給量が、第2の原料供給量になるよう制御する。
燃焼器35における燃焼状態は、空気温度が低い場合、火炎温度が低下し、燃焼反応速度の低下により、不完全燃焼が起こりやすいため、燃焼排ガス中に含まれる一酸化炭素濃度が高くなりやすい。
また、燃焼器35の温度が非常に高い場合。すなわち前回の発電が終了してから、改質器31が十分に冷却される前に、再び燃焼を開始する場合は、空気が予熱された状態で燃焼器35に供給され、かつ、火炎から燃焼器35へ熱が移動しにくいため、火炎温度が上昇し、燃焼反応速度が増加するため、燃焼状態は悪化しにくい。
したがって、このような外部環境の影響を受けても、確実に燃料電池50の発電量に対する改質器31への原料供給量の制御パラメータを設定するためには、一酸化炭素濃度に対して線形ではなく、閾値を設けた2値の制御パラメータを設定することが有用である。
図60は、本発明の第30の実施の形態の燃料電池システム100の概略動作の一例を示すフローチャートである。
図60に示されるように、第30の実施の形態の燃料電池システム100の概略動作は、第29の実施の形態の燃料電池システム100の概略動作と基本的に同じであるが、一酸化炭素センサの出力値が、所定の濃度閾値以上の場合と濃度閾値未満の場合とで、発電量に対する改質器31への原料供給量を制御する点が異なる(S501〜S505)。
(第31の実施の形態)
第31の実施の形態の燃料電池システム100は、燃焼状態検出器56として火炎検知器の一例であるフレームロッドが、燃焼器35の後段に配設される。フレームロッドは、電源と電流センサとからなる火炎電流検出回路とに電気的に接続された金属棒を、火炎に挿入し、電流の大小によって火炎の状態を判断するものである。
燃焼反応が停止した場合には、瞬時に電流値が「0」となるため、火炎が消失した場合の再点火動作への移行が迅速に行えるため、未燃ガス放出の可能性が低く、安全性の高い燃料電池システム100を提供できる。
図61は、本発明の第31の実施の形態の燃料電池システム100の概略動作の一例を示すフローチャートである。
図61に示されるように、第31の実施の形態の燃料電池システム100の概略動作は、第29の実施の形態の燃料電池システム100の概略動作と基本的に同じであるが、フレームロッドで検出された火炎電流が、所定の電流閾値以上の場合と電流閾値未満の場合とで、発電量に対する改質器31への原料供給量を制御する点が異なる(S601〜S603)。
(第32の実施の形態)
第32の実施の形態の燃料電池システム100の概略構成は、第31の実施の形態と同一である。
図62は、本発明の第32の実施の形態の燃料電池システム100の概略動作の一例を示すフローチャートである。
図62に示すように、第32の実施の形態の燃料電池システム100は、燃焼の有無を確認(S703)した後、燃焼が継続していない場合は、燃料電池50の発電量に対する改質器31への原料供給量として、第1の原料供給量が設定される(S704)。ここで、第1の原料供給量とは、低熱量原料用の制御パラメータを意味する。
また、燃焼が継続している場合には、燃料電池50の発電量に対する改質器31への原料供給量として、第2の原料供給量が設定される(S705)。ここで、第2の原料供給量とは、高熱量原料用の制御パラメータを意味する。
(第1変形例)
次に、第32の実施の形態の水素生成装置200における第1変形例について説明する。第32の実施の形態における第1変形例の水素生成装置200では、燃焼状態検出器56として、火炎検出器の一種である温度センサが、燃焼器35に配設される。
温度センサは、燃焼による発熱を検出するもので、熱電対、またはサーミスタ等が用いられる。温度センサは、燃焼による発熱反応による温度変化を測定するため、燃料として都市ガス、およびLPG等の炭化水素燃料だけでなく、原料に比べて炭化水素濃度の低い、改質ガス、および、スタックからのオフガスに対しても有用である。
図63は、本発明の第32の実施の形態における、第1変形例の水素生成装置200の概略動作の一例を示すフローチャートである。
図63に示されるように、第32の実施の形態の第1変形例の水素生成装置200の概略動作は、第32の実施の形態の水素生成装置200の概略動作と基本的には同じであるが、制御器39が温度センサの出力状態を取得し(S702B)、燃焼の状態を判定する点(S703B)が異なる。
(第2変形例)
次に、第32の実施の形態の水素生成装置200における第2変形例について説明する。第32の実施の形態における第2変形例の水素生成装置200では、燃焼状態検出器56として、火炎検出器の一種である光学センサが、燃焼器35に配設される。
光学センサは、燃焼反応による発光を検出するもので、可視光、または紫外光等を検出するセンサが用いられる。光学センサは、燃焼反応の発光現象を直接観察するという特徴から、燃焼反応が停止した場合は、瞬時にセンサ出力値が「0」となるため、火炎が消失した場合の再点火動作への移行が迅速に行える。このため、未燃ガス放出の可能性が低く、安全性の高い燃料電池システム100を提供することができる。
図64は、本発明の第32の実施の形態における、第2変形例の水素生成装置200の概略動作の一例を示すフローチャートである。
図64に示すように、第32の実施の形態の第2変形例の水素生成装置200の概略動作は、第32の実施の形態の水素生成装置200の概略動作と基本的には同じであるが、制御器39が光学センサの出力状態を取得し(S702C)、燃焼の状態を判定する点(703C)が異なる。
(第33の実施の形態)
第33の実施の形態の燃料電池システム100の概略構成は、第31の実施の形態と同一である。
図65は、本発明の第33の実施の形態の、燃料電池システム100の概略動作の一例を示すフローチャートである。
図65に示されるように、第33の実施の形態の燃料電池システム100は、燃焼の有無を確認した(S803)後、燃焼が継続していない場合(S803,NO)は、再着火動作を実施する(S804)。
具体的には、イグナイター、またはグロープラグ等の点火装置を用いて、燃焼が継続するような動作を行う。かかる構成によれば、火炎の消失後もただちに燃焼を再開するので、未燃ガス放出の可能性が低く、安全性が高い燃料電池システム100を提供できる。また、火炎の消失時間を10秒以内程度に抑えることができるため、水素生成装置200の加熱昇温中において、起動時間を過度に延長する必要がない。
なお、上述の実施の形態の水素生成装置200と、水素生成装置200より供給される水素含有ガスを用いて発電する燃料電池とを備える燃料電池システム100を構成してもよい。
燃料電池は、水素生成装置200より供給される水素含有ガスを用いて発電する。燃料電池は、どのような方式の燃料電池であってもよい。例えば、燃料電池として、高分子電解質形燃料電池(PEFC)、固体酸化物形燃料電池、または、りん酸形燃料電池等を用いることができ、これらの構成はいずれも公知である。
よって、燃料電池の構成の詳細な説明は省略する。なお、燃料電池が、固体酸化物形燃料電池であるとき、改質器と燃料電池とが一体化された、内部改質型の固体酸化物形燃料電池であってもよい。
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造および機能の少なくともいずれかの詳細を実質的に変更できる。
以上述べたように、本発明の実施の形態の水素生成装置は、炭化水素を含む原料ガスから改質反応により水素含有ガスを生成する改質器と、改質器に原料ガスを供給する原料ガス供給器と、改質器を経由した原料ガスおよび水素含有ガスの少なくとも一方、または、未利用の水素含有ガスを含むオフガスのいずれかを燃焼させて改質器を加熱する燃焼器とを備えている。また、燃焼器に燃焼用空気を供給する燃焼用空気供給器と、改質器への原料ガスの供給量を検出する原料ガス供給量検出器と、改質器の温度を検出する改質温度検出器と、所定の制御パラメータによって制御を行う制御器とを備えている。
そして、制御器は、原料ガス供給量検出器で検出される原料ガス供給量が所定の値となるように原料ガス供給器が原料ガスを供給している場合の、改質温度検出器で検出される改質温度、または、燃焼器の加熱により改質器の温度が上昇しているときの、改質温度検出器で検出される温度変化速度に基づいて、制御パラメータを設定するように構成されている。
このような構成により、予め、あるいは外部からパラメータを設定する必要がなく、所定の流量で原料ガスを供給しているときの改質温度から、容易に原料ガスの熱量を判定することのできる、汎用性の高い水素生成装置を実現することができる。
また、その判定結果をもとに、原料ガス供給量検出器で検出される見かけの原料供給量によらず、制御パラメータを変更することで、必要な水素を適正に生成することができ、安定運転を可能にすることができる。
また、制御器は、改質温度または温度変化速度に基づいて、熱量の異なる少なくとも二種の原料ガス組成それぞれに対応した、少なくとも二種の制御パラメータの中から、最適な制御パラメータを選択する構成であってもよい。
このような構成によれば、さらに、一方の制御パラメータ群で運転した場合に、実際に供給された原料ガスの組成が、その制御パラメータに合致しない場合には、他の制御パラメータに変えることで、安定運転を可能にすることができる。
また、制御器は、まず、制御パラメータの一種である第1制御パラメータに基づいて制御し、改質温度が、所定の閾値から外れた場合、または、温度変化速度が所定の閾値から外れた場合は、制御パラメータの他の一種である第2制御パラメータに変更して制御する構成であってもよい。
このような構成によれば、さらに、第1制御パラメータ群で運転した場合に改質温度または温度変化速度が所定の閾値から外れた場合、供給される原料ガスの組成が第1制御パラメータに合致しないと判定でき、制御パラメータを第2制御パラメータに変えることで、安定運転を可能にすることができる。
また、第1制御パラメータに対応した原料ガスの熱量は、第2制御パラメータに対応した原料ガスの熱量よりも大きい、構成であってもよい。
このような構成によれば、さらに、まず、相対的に高い熱量に対応した第1制御パラメータ群で運転することにより、相対的に低い熱量の原料ガスが実際に供給されていても、燃焼用空気の不足による燃焼排ガス中のCOの発生、および、水供給不足による改質触媒上でのススの発生等を抑制した運転とすることができる。そして、その後、相対的に低い熱量の原料ガスに対応した第2制御パラメータ群に変更して運転することで、安全かつ安定した運転ができる。
また、改質温度または温度変化速度に基づいて、設定または選択された制御パラメータを記憶する記憶部をさらに備え、制御器は、記憶部が記憶した制御パラメータに基づいて、次回以降の起動および運転を行うよう制御する構成であってもよい。
このような構成によれば、さらに、最適な制御パラメータを記憶しておくことで、次回以降の起動において、確実に安定運転することが可能となる。また、想定する原料ガス組成と大きくかけ離れており、一度の制御パラメータの設定で十分な調整ができなかったとしても、記憶した補正値をもとに、制御パラメータをさらに変更することで、より安定した運転をすることができる。また、季節的な組成変動があっても都度対応することができる。
また、制御器は、周囲温度に基づいて、改質温度または温度変化速度と制御パラメータとの対応関係を補正する構成であってもよい。
このような構成により、周囲温度によらず、改質温度検出器で検出される温度を、より正確に算出することができるため、より安定した運転を可能にすることができる。
また、制御器は、改質器の運転時間に基づいて、原料ガス供給量検出器で検出される原料ガス供給量が所定の値となるよう原料ガスを供給しているときの、改質温度または温度変化速度と、制御パラメータとの対応関係を補正する構成であってもよい。
このような構成によれば、さらに、運転時間の経過に伴う劣化等によらず、原料ガスの熱量に起因する改質器の温度を、より正確に算出することができるため、長期にわたって安定した運転を可能にすることができる。
また、制御器は、改質温度または温度変化速度に基づいて、原料ガス供給器で供給されている、熱量より換算される原料ガス実供給量と、原料ガス供給量検出器で検出される原料ガス供給量検出量との相関を補正する構成であってもよい。
このような構成により、さらに、例えば、ガス組成が異なる地域に設置した場合、および、季節的な組成変動がある場合等、原料ガスの組成がどのような場合であっても、予め、あるいは外部からパラメータを設定する必要がなく、原料ガスの熱量に大きく依存する昇温速度から、容易に原料ガスの熱量を判定することができる。
また、その判定結果をもとに、原料ガス供給量検出器で検出される見かけの原料供給量によらず、原料供給量の補正をすることで、必要な水素を適正に生成することができるため、広範囲におよぶ原料ガス組成にも対応でき、汎用性の高い、高効率で安定した水素生成装置を実現することができる。
また、制御器は、改質温度または温度変化速度に基づいて、原料ガス供給量検出量を補正する、または、原料ガス供給量が目標供給量となるよう制御しているときの原料ガスの目標供給量を補正するよう制御するように構成されていてもよい。
このような構成によれば、さらに、改質温度または温度変化速度を用いて、原料ガス供給量に対する原料ガス供給量検出量を補正することができる。また、改質温度または温度変化速度を用いて、原料ガスの目標供給量を補正することができる。このため、原料ガス供給量検出器で検出される見かけの原料供給量によらず、原料供給量の補正をすることで、必要な水素を適正に生成することができる。
また、制御器は、改質温度または温度変化速度に基づいて、補正係数を算出し、補正係数を原料ガス供給量検出量に乗じた値を、補正された原料ガス供給量とする、または、補正係数を補正前の原料ガスの目標供給量に乗じた値を、補正された原料の目標供給量とする構成であってもよい。
このような構成によれば、さらに、原料ガスの熱量に起因する変化速度から算出される補正係数を用いて補正することで、原料ガス供給器が実際に供給される原料の供給熱量を、所定の値に保つことができ、安定した水素生成装置を実現することができる。
また、改質器に水を供給する水供給器を備え、制御器は、補正前より原料ガス供給量検出量が多くなるよう補正する場合には、改質器に供給する水の供給量を補正前より減らし、補正前より原料ガス供給量検出量が少なくなるよう補正する場合には、水の供給量を補正前より増やすよう水供給器を制御する構成であってもよい。
補正により原料供給量を増やす場合、すなわち原料ガスの熱量が小さい場合には、原料ガス中の炭素のモル数が相対的に小さい。すなわち、原料ガスの流量増加に合わせて、水の流量を比例的に増加させてしまうと、水蒸気と原料ガス中のカーボンのモル数の比であるS/Cの値が相対的に大きくなり、改質温度が低下し、その結果、水素量が低下する等安定運転が困難となる。しかしながら、このような構成によって、水の供給量を減らすことで安定運転が可能となる。
一方で、原料を減らす場合には、原料ガス中の炭素のモル数が相対的に大きく、実際のS/Cの値は相対的に小さくなる。この場合、改質温度が上昇したり、実際のS/Cが低下しすぎると、カーボンが析出したりする等課題が生じる。しかしながら、本制御により水の供給量を増やすことにより、安定した水素生成が可能となる。
また、制御器は、補正前より原料ガス供給量検出量が多くなるよう補正する場合には、燃焼器に供給する燃焼用空気の供給量を補正前より減らし、補正前より原料ガス供給量検出量が少なくなるよう補正する場合には、燃焼用空気の供給量を補正前より増やすよう燃焼用空気供給器を制御する構成であってもよい。
補正により原料ガス供給量を増やす場合、すなわち原料ガスの熱量が小さい場合には、被燃焼ガスの流量が相対的に小さい。すなわち、原料ガスの流量増加に合わせて、燃焼用空気の流量を比例的に増加させてしまうと、燃焼用空気流量と、原料ガス流量あるいは原料ガス流量から導かれる水素含有ガス流量との比は相対的に大きくなり、改質温度が低下し水素量が低下する等安定運転が困難となる。しかしながら、このような構成によれば、安定運転が可能となる。同様に、原料を減らす場合は、燃焼用空気の供給量を増やすことで、安定した水素生成が可能となる。
また、制御器は、改質器に原料ガスを供給した後、改質温度検出器で検出される温度が所定の温度に達したことを以って、改質器への水供給を開始した後に、温度変化量の測定を行う構成であってもよい。
このような構成により、起動時に水の供給を開始してからの昇温速度を算出することで、原料の組成が想定とずれていた場合に、前述のとおりS/Cもずれるため、昇温速度の差が顕著となり、組成判定が確実に行える。改質が所定の温度になったことを以って改質水を供給する場合、改質水を供給開始する温度以下から運転を開始した場合には、その温度によらず確実に比較でき、判定が可能となる。
また、改質温度または温度変化速度に基づく原料ガス供給量の補正値を記憶する記憶部を備え、制御器は、記憶部が記憶した補正値に基づき、次回以降の起動および運転を行うよう制御する構成であってもよい。
このような構成によれば、さらに、判定結果を記憶しておくことで、次回以降の起動において、確実に安定運転が可能となる。また、想定する原料ガス組成と実際の組成とが大きくかけ離れており、一度の起動の補正で十分は補正ができなかったとしても、記憶した補正値をもとに補正を繰り返すことで、より安定した運転をすることができる。また、季節的な組成変動があっても都度対応できる。
また、改質器から排出される水素含有ガス中の一酸化炭素の濃度を低減する選択酸化器と、選択酸化器に選択酸化用空気を供給する選択酸化空気供給器とを、さらに備え、制御器は、改質温度または温度変化速度に基づいて、選択酸化空気供給器が供給する空気流量を補正する構成であってもよい。
このような構成によれば、さらに、例えば、原料ガス中に、炭化水素以外の窒素および二酸化炭素等のガスを多量に含む地域に設置した場合でも、予め、あるいは外部からパラメータを設定する必要がなく、改質温度または昇温速度から、容易に原料ガスの熱量を判定することができる、汎用性の高い水素生成装置を実現することができる。また、その判定結果をもとに、選択酸化空気流量を補正することで、選択酸化器で過剰に消費される水素量を抑制し、高効率で安定した水素生成装置を実現することができる。
また、燃料電池のアノードにアノード用空気を供給するアノード空気供給器を、さらに備え、制御器は、改質温度または温度変化速度に基づいて、アノード空気供給器が供給する空気流量を補正する構成であってもよい。
このような構成によれば、さらに、例えば、原料ガス中に炭化水素以外の窒素および二酸化炭素等のガスを多量に含む地域に設置した場合でも、予め、あるいは外部からパラメータを設定する必要がなく、改質温度または昇温速度から、容易に原料ガスの熱量を判定することができる汎用性の高い燃料電池システムを実現することができる。また、その判定結果をもとに、燃料電池へのエアブリード空気流量を補正することで、燃料電池のアノードで過剰に消費される水素量を抑制し、高効率で安定した燃料電池システムを実現することができる。
また、制御パラメータおよび制御パラメータを温度変化速度に基づいて設定するパラメータ設定関数が記憶されている記憶部を、さらに備えている。そして、制御器は、周囲温度に基づいて、パラメータ設定関数を補正し、改質器を、所定の判定用制御パラメータを用いて加熱する加熱動作を行って得られた温度変化速度に基づき、補正後のパラメータ設定関数を参照し、補正後のパラメータ設定関数によって設定された制御パラメータを用いて運転するよう制御する構成であってもよい。
このような構成により、さらに、外気温度に起因して温度上昇速度が変化する分を、補正値により補正できるため、外気温度による温度上昇速度の変化の影響を受けることなく、制御パラメータ設定を行うことができ、精度良く、運転制御パラメータ群を設定することができる。
また、制御パラメータおよび制御パラメータを温度変化速度に基づいて設定するパラメータ設定関数が記憶されている記憶部を、さらに備えている。制御器は、改質器を所定の判定用制御パラメータを用いて加熱する加熱動作を行って温度変化速度を得た後に、周囲温度に基づいて、温度変化速度を補正し、補正後の温度変化速度に基づき、パラメータ設定関数を参照し、パラメータ設定関数によって設定された制御パラメータを用いて運転するよう制御する構成であってもよい。
これにより、外気温度に起因して温度上昇速度が変化する分を、補正値により補正できるため、外気温度による温度上昇速度の変化の影響を受けることなく、制御パラメータ設定を行うことができ、精度良く、運転制御パラメータ群を設定することができる。
また、水素生成装置の外側に、周囲温度を検出する周囲温度検出器を備えた構成であってもよい。
このような構成によれば、さらに、周囲温度によらず、原料ガスの熱量に起因する改質器の温度変化速度をより正確に算出することができ、原料ガス供給量を補正することができるため、水素生成量を所定の値に保った、安定した運転が可能な水素生成装置を実現することができる。
また、制御器は、第1温度から、第1温度よりも低い第2温度までの改質器の温度下降速度から周囲温度を推定する構成であってもよい。
このような構成によれば、さらに、外気温度検出器を備える必要がなく、外気温度を推定することができる。
また、高発熱量のガス組成に対応する第1制御パラメータ、および、低発熱量のガス組成に対応する第2制御パラメータが記憶されている記憶部を、さらに備えている。制御器は、第1制御パラメータおよび第2制御パラメータのうちの一方の制御パラメータを用いて、改質器を加熱する第1加熱動作と、第1制御パラメータおよび第2制御パラメータのうちの他方の制御パラメータを用いて、改質器を加熱する第2加熱動作とを、間に改質器の加熱を停止する動作を挟んで順番に行う。制御器は、その後、第1制御パラメータを用いて改質器を加熱した場合に、改質温度検出器により検出した第1温度上昇速度、および、第2制御パラメータを用いて改質器を加熱した場合に、改質温度検出器により検出した第2温度上昇速度のうちで、予め設定される改質器の温度上昇速度に近い温度上昇速度が得られた制御パラメータを選択し運転する構成であってもよい。
このような構成によれば、さらに、発熱量想定の異なる2回の加熱動作による温度上昇速度を取得でき、これと、所定の温度上昇速度とを比較することで、精度良く、原料組成に適した運転制御パラメータを設定することができる。
また、制御器は、周囲温度が所定の温度範囲内の場合に、第1加熱動作および第2加熱動作を行うよう制御する構成であってもよい。
このような構成によれば、さらに、外部温度の影響を受けずに温度上昇速度が取得でき、精度良く、原料組成に適した運転制御パラメータを設定できる。
また、制御器は、改質器を第1温度まで加熱する第1加熱動作を行い、改質器の加熱を停止し、改質器を加熱する第2加熱動作を行うように構成されていてもよい。
このような構成によれば、さらに、加熱動作を所定の温度で停止させることができるので、改質器への供給水量が、組成変化後の理論水量よりも少ない場合に起こる、供給原料の熱分解による触媒の炭化、あるいは、改質ガスの不均化反応による炭素析出を抑制することができる。
また、本発明の実施の形態の燃料電池システムは、上述のいずれかに記載の水素生成装置と、改質器により生成された、水素含有ガスと酸素を含む酸化剤ガスとを用いて発電する燃料電池と、を備えている。
このような構成により、予め、あるいは外部からパラメータを設定する必要がなく、所定の流量で原料ガスを供給しているときの改質温度から、容易に原料ガスの熱量を判定することのできる、汎用性の高い燃料電池システムを実現することができる。
また、その判定結果をもとに、原料ガス供給量検出器で検出される見かけの原料供給量によらず、制御パラメータを変更することで、必要な水素を適正に生成することができ、安定運転を可能にすることができる。
また、本発明の実施の形態の水素生成装置の運転方法は、炭化水素を含む原料ガスから改質反応により水素含有ガスを生成する改質器と、改質器に原料ガスを供給する原料ガス供給器とを備えた水素生成装置の運転方法である。そして、改質器を経由した原料ガスおよび水素含有ガスの少なくとも一方、または、未利用の水素含有ガスを含むオフガスのいずれかを燃焼させて改質器を加熱する燃焼器とを含む水素生成装置の運転方法である。また、改質器への原料ガスの供給量を検出する原料ガス供給量検出器と、改質器の温度を検出する改質温度検出器と、制御パラメータに基づいて制御を行う制御器とを備えた水素生成装置の運転方法である。そして、制御器が、原料ガス供給量検出器で検出される原料ガス供給量が所定の値となるよう、原料ガス供給器が原料ガスを供給している場合の、改質温度検出器で検出される改質温度、または、燃焼器の加熱により改質器の温度が上昇しているときの、改質温度検出器で検出される温度変化速度に基づいて、制御パラメータを設定するステップを備えている。
このような方法により、予め、あるいは外部からパラメータを設定する必要がなく、所定の流量で原料ガスを供給しているときの改質温度から、容易に原料ガスの熱量を判定することのできる、汎用性の高い水素生成装置の運転方法を実現することができる。
また、その判定結果をもとに、原料ガス供給量検出器で検出される見かけの原料供給量によらず、制御パラメータを変更することで、必要な水素を適正に生成することができ、安定運転を可能にすることができる。