JP6532758B2 - 溶融塩電解槽並びに該溶融塩電解槽に使用される電極及び該溶融塩電解槽を用いた金属の製造方法 - Google Patents
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Description
特に、金属チタンは、航空機のみならず民生品に対しても積極的に利用されており、その需要は拡大傾向にあるにもかかわらず他の金属に比べて高価であるため爆発的な市場の拡大までには至っておらず、更なるコスト改善が求められている。
金属チタンの原料であるスポンジチタンは、クロール法により製造されているが、その原料である四塩化チタンは、チタン鉱石の塩素化により製造されている。また、この四塩化チタンの還元剤である金属マグネシウムは、四塩化チタンのマグネシウム還元で副生した塩化マグネシウムの溶融塩を電気分解(以下、単に「電解」ともいう)することにより製造される。
特許文献1では、溶融塩電解において、溶融塩化マグネシウムの電解により、生成する金属マグネシウムと塩素ガスの再反応を防ぐための方法について開示されている。
また、特許文献2及び3には、電解槽内の溶融塩の浴流を抑制し、電解槽底部に堆積した不純物の巻き上げを防止することにより、電流効率の低下を抑制した溶融金属塩化物の電解方法について開示されている。
更に、特許文献4には、より効率のよい電気分解を目的とした、陽極‐陰極間にグラファイト性の複極を装入することで見かけの電極を形成させ、電解面積を増やすことができるバイポーラ電極が記載されている。現在、クロール法ではバイポーラ電極を用いた電解槽が主流となっている。
しかしながら、塩化マグネシウムを主成分とする溶融塩の電解工程は電力を多量に消費するため、効率の改善による更なる省エネルギー化が求められている。
[1]2つ以上の電極を配列してなり、前記電極は隣接する電極との配列方向の距離が電極先端部で長くなる形状を有する、溶融塩電解槽。
[2]前記電極の配列方向の幅が電極先端部に向かって連続的に小さくなる、上記[1]に記載の溶融塩電解槽。
[3]前記電極の配列方向の幅が電極先端部に向かって不連続に小さくなる、上記[1]に記載の溶融塩電解槽。
[5]前記電極先端部に面取り部が形成されている、上記[3]に記載の溶融塩電解槽。
[6]前記電極先端部に形成された面取り部が配列方向に並ぶ2つの面の両方に施されている、上記[5]に記載の溶融塩電解槽。
[8]前記隣接する電極との組合せが陽極−陰極、陽極−複極、陰極−複極又は複極−複極である、上記[1]〜[7]のいずれか一つに記載の溶融塩電解槽。
[9]前記電極の材質がグラファイト、鉄又は炭素鋼である、上記[1]〜[8]のいずれか一つに記載の溶融塩電解槽。
[10]前記溶融塩が、マグネシウム塩化物、亜鉛塩化物、アルミニウム塩化物又はチタン塩化物である、上記[1]〜[9]のいずれか一つに記載の溶融塩電解槽。
[12]上記[1]〜[10]のいずれか一つに記載の溶融塩電解槽を用いた金属の製造方法。
更に、上記電極間における溶融塩の滞留の抑制により、電気分解で発生するガス及び金属の再反応も防止することができる。その結果、溶融塩電解槽における電流効率を改善することができる。
一方、隣接する電極を2つ有する電極の場合、本発明における「隣接する電極との配列方向の距離が電極先端部で長くなる」とは、その隣接する電極の少なくとも1つとの配列方向の距離が電極先端部で長くなることをいう。隣接する電極を2つ有する電極は、その隣接する電極の両者との配列方向の距離が電極先端部で長くなる形状を有することが好ましい。
特に、電極の配列方向に並ぶ面の少なくとも一方に対して、好ましくはその両面に対して、電極先端部の角部をR面取りすることにより、溶融塩の流れの改善、電極間における溶融塩の滞留の防止、金属マグネシウムと塩素ガスの再反応の防止及び電流効率の改善、の効果をより一層大きくすることができる。
これにより、溶融塩の滞留がより一層抑制されるため、電気分解により発生するガス及び金属の再反応を一段と防止することができる。その結果、溶融塩電解槽における電流効率がより一層改善され、電気分解の効率を一段と改善することができる。
更に、電極上、特に電極角部に電解析出金属の堆積物が付着することをより一層防ぐことができ、電極の寿命を一段と改善することができる。その結果、溶融塩電解槽の運転可能時間をより一層改善することができる。
運転可能時間及び電流効率の改善の観点から、本発明の溶融塩電解槽としては、隣接する電極との配列方向の距離が電極先端部で長くなる形状を有する上記電極を、2つ以上用いた溶融塩電解槽が好ましい。また、用いられた電極の全てが、隣接する電極との配列方向の距離が電極先端部で長くなる形状を有する上記電極である溶融塩電解槽がより好ましい。
理想的な溶融塩電解槽では、電気分解の原料として投入された塩化マグネシウムを金属マグネシウムと塩素ガスに電気分解することに、電流のすべてが使用される。また、複極が存在する場合は、上記に加え、漏れ電流と呼ばれる複極を介さない電流がないのが理想的な溶融塩電解槽である。
しかし、現実の溶融塩電解槽では、様々な要因によって電流のロスが生じる。特に、従来の溶融塩電解槽では、電解により生成した金属マグネシウムが共に生成された塩素ガスと再反応し、塩化マグネシウムとなってしまう。この再反応により再生した塩化マグネシウムは溶融塩として再び電極間で電気分解する必要があるので、電流が余分にかかり電流効率が悪くなる。また、複極が存在する場合は、上記に加え、漏れ電流により電流が短絡し(複極をパスし)、パスした複極でされるべき電解が行われないため、電流効率が悪くなる。
本発明の溶融塩電解槽を用いることにより、この電流効率を改善することが可能である。
図1に示す溶融塩電解槽1にて電気分解を開始すると、電解室9の塩化マグネシウムは、図2に示す陽極7−陰極8、陽極7−複極12、陰極8−複極12及び複極12−複極12間で電気分解され、塩素ガスと金属マグネシウムに電気分解される。塩素は気体として発生し、電極間を上昇し、上部の開口から排出される。
電極先端部を含む面を電極の配列方向に垂直な方向から見た形状として、図3(a)に示される形状を有する各電極を図2のように配置して使用した溶融塩電解槽により、塩化マグネシウムの電解を行った。上記電極は、電極先端部に対し、電極の配列方向に垂直な方向から見た形状が半円状のカーブとなるように加工し、更に、溶融塩と接する他の角部をR5面取り(カーブが付きはじめる部分から5mm中心方向に内側に入った部分を中心に、円弧を描いたような形状にする面取り)したものである。
ここで、本実施例における、電極先端部を含む面を電極の配列方向から見た各電極の形状は、電極先端部に位置する2か所の頂点を半径5mmの四分円状にした長方形であった。
また、上記電極の配列方向の幅の最小値を前記電極の配列方向の幅の最大値で割った値は、ほぼ0に近い正の値であった。
電極先端部を含む面を電極の配列方向に垂直な方向から見た形状が、図3(a)に示す形状から図3(b)に示す形状となるように変更した各電極を用いた以外は、実施例1と同様の溶融塩電解槽により、塩化マグネシウムの電解を行った。上記電極は、電極の配列方向の幅が電極先端部に向かうにつれて細くなるように、かつ、電極先端部に対し、電極の配列方向に垂直な方向から見た形状が半円状のカーブとなるように加工し、更に、溶融塩と接する他の角部をR5面取りしたものである。
ここで、本実施例における、電極先端部を含む面を電極の配列方向から見た各電極の形状は、電極先端部に位置する2か所の頂点を半径5mmの四分円状にした長方形であった。
また、上記電極の配列方向の幅の最小値を前記電極の配列方向の幅の最大値で割った値は、ほぼ0に近い正の値であった。
電極先端部を含む面を電極の配列方向に垂直な方向から見た形状が、図3(a)に示す形状から図3(c)に示す形状となるように変更した各電極を用いた以外は、実施例1と同様の溶融塩電解槽により、塩化マグネシウムの電解を行った。上記電極は、電極の配列方向に並ぶ2つの面に対して、電極先端部にR25面取り(カーブが付きはじめる部分から25mm中心方向に内側に入った部分を中心に、円弧を描いたような形状にする面取り)し、更に、溶融塩と接する他の角部をR5面取りしたものである。
ここで、本実施例における、電極先端部を含む面を電極の配列方向から見た各電極の形状は、電極先端部に位置する2か所の頂点を半径5mmの四分円状にした長方形であった。
また、上記電極の配列方向の幅の最小値を前記電極の配列方向の幅の最大値で割った値は、0.75であった。
電極先端部を含む面を電極の配列方向に垂直な方向から見た形状が、図3(a)に示す形状から図3(d)に示す形状となるように変更した各電極を用いた以外は、実施例1と同様の溶融塩電解槽により、塩化マグネシウムの電解を行った。
ここで、本比較例における、電極先端部を含む面を電極の配列方向から見た各電極の形状は、電極先端部に位置する2か所の頂点を半径5mmの四分円状にした長方形であった。
また、上記電極の配列方向の幅の最小値を前記電極の配列方向の幅の最大値で割った値は、1.0であった。
2 鉄製外板
3 断熱煉瓦層
4 耐火煉瓦層
5 隔壁
6 蓋
7 陽極
8 陰極
9 電解室
10 メタル室
11 金属マグネシウム
12 複極
Claims (11)
- 2つ以上の電極を配列してなり、前記電極は隣接する電極との配列方向の距離が電極の配列方向に垂直な方向から見た電極先端部で長くなる形状を有する、溶融塩電解槽。
- 前記電極の配列方向の幅が、R面を有する電極先端部に向かって連続的に小さくなる、請求項1に記載の溶融塩電解槽。
- 前記電極の配列方向の幅が、R面を有する電極先端面にかけて不連続に小さくなる、請求項1に記載の溶融塩電解槽。
- 前記電極先端部に半円状のカーブが形成された、請求項3に記載の溶融塩電解槽。
- 前記電極先端部に形成された面取り部が配列方向に並ぶ2つの面の両方に施されている、請求項3に記載の溶融塩電解槽。
- 前記電極の配列方向の幅の最小値を前記電極の配列方向の幅の最大値で割った値が0を超え0.80以下である、請求項2〜5のいずれか一項に記載の溶融塩電解槽。
- 前記隣接する電極との組合せが陽極−陰極、陽極−複極、陰極−複極又は複極−複極である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の溶融塩電解槽。
- 前記電極の材質がグラファイト、鉄又は炭素鋼である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の溶融塩電解槽。
- 前記溶融塩が、マグネシウム塩化物、亜鉛塩化物、アルミニウム塩化物又はチタン塩化物である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の溶融塩電解槽。
- 請求項1〜9のいずれか一項に記載の溶融塩電解槽に使用される電極。
- 請求項1〜9のいずれか一項に記載の溶融塩電解槽を用いた金属の製造方法。
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