以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のプリンタ(以下、単にプリンタという)の一実施形態について説明する前に、実施形態に係るプリンタを理解する上で参考になる参考形態に係るプリンタについて説明する。
図1は、参考形態に係るプリンタを示す概略構成図である。同図において、このプリンタは、イエロー、マゼンタ、シアン、黒(以下、Y、M、C、Kと記す)のトナー像を作像するための4つの作像ユニット1Y,1M,1C,1Kを備えている。これらは、画像形成物質として、互いに異なる色のY,M,C,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっており、寿命到達時に交換される。Y,M,C,Kトナーはそれぞれ、平均粒径6.5[μm]のポリエステル系重合トナーである。このポリエステル系重合トナーは、次のようにして製造されたものである。即ち、まず、100重量部のトナー母体粒子と、2重量部の疎水シリカであり且つオイル含有シリカである日本アエロジル社製RY50シリカとを混合して混合物を得る。この混合物に対し、20リットル容量のヘンシェルミキサーにて40[m/s]の条件で五分間の混合処理を施した後、混合処理後の混合物を目開き75[μm]の篩にかけて得たものである。
四つの作像ユニット1Y,1M,1C,1Kのうち、Kトナー像を形成するための作像ユニット1Kを例にすると、これは図2に示されるように、潜像担持体であり且つ像担持体であるドラム状の感光体2Kを備えている。また、ドラムクリーニング装置3K、除電装置、帯電装置4K、現像装置5K等も備えている。画像形成ユニットたる作像ユニット1Kは、プリンタ本体に脱着可能であり、一度に消耗部品を交換できるようになっている。
感光体2Kは、直径30[mm]の有機感光体からなる。この感光体2Kは、140[mm/s]のプロセス線速で図中時計回り方向に回転駆動する。
帯電装置4Kは、駆動手段によって図中時計回りに回転せしめられる感光体2Kの表面を一様帯電せしめる。一様帯電せしめられた感光体2Kの表面は、レーザー光Lによって露光走査されてK用の静電潜像を担持する。このK用の静電潜像は、Kトナーを用いる現像装置5KによってYトナー像に現像される。そして、後述する中間転写ベルト16上に一次転写される。
ドラムクリーニング装置3Kは、一次転写工程を経た後の感光体2K表面に付着している転写残トナーを除去する。また、上記除電装置は、クリーニング後の感光体2Kの残留電荷を除電する。この除電により、感光体2Kの表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。他色の作像ユニット(1Y,1M,1C)においても、同様にして感光体(2Y,2M,2C)上に(Y,M,C)トナー像が形成されて、後述する中間転写ベルト16上に中間転写される。
現像装置5Kは、Kトナーを収容する縦長のホッパ部6Kと、現像部7Kとを有している。ホッパ部6K内には、駆動手段によって回転駆動されるアジテータ8K、これの鉛直方向下方で駆動手段によって回転駆動される撹拌パドル9K、これの鉛直方向で駆動手段によって回転駆動されるトナー供給ローラ10Kなどが配設されている。ホッパ部6K内のKトナーは、アジテータ8Kや撹拌パドル9Kの回転駆動によって撹拌されながら、自重によってトナー供給ローラ10Kに向けて移動する。トナー供給ローラ10Kは、金属製の芯金と、これの表面に被覆された発泡樹脂等からなるローラ部とを有しており、ホッパ部6K内のKトナーをローラ部の表面に付着させながら回転する。
現像装置5Kの現像部7K内には、感光体2Kやトナー供給ローラ10Kに当接しながら回転する現像ローラ11Kや、これの表面に先端を当接させる規制ブレード12Kなどが配設されている。
現像ローラ11Kは、回転軸部材と、これの周面に固定された厚さ4[mm]の導電性ウレタンゴム層(ゴム硬度50°(JIS−A))とを有する直径16[mm]のローラからなり、200[mm/s]の線速で回転駆動する。
トナー供給ローラ10Kは、金属製の芯金と、これの表面に被覆された導電性発泡ウレタン(セル径100〜500μm)からなるローラ部とを有する直径13[mm]のローラからなる。そして、ホッパ部6K内のKトナーをローラ部で捕捉しながら200[mm/s]の線速で回転駆動しながら、その回転方向において4〜5[mm]の当接部を形成するように現像ローラ11Kに当接している。
規制ブレード12Kは、厚さ0.1[mm]の金属製プレートからなり、先端に14[°]の角度の折り曲げ加工が施されている。
ホッパ部6K内のトナー供給ローラ10Kに付着したKトナーは、現像ローラ11Kとトナー供給ローラ10Kとの当接部で現像ローラ11Kの表面に供給される。トナー担持体たる現像ローラ11Kと、トナー供給体たるトナー供給ローラ10Kとは、互いの当接部で互いの表面を逆方向に移動させるように回転駆動する。トナー供給ローラ10Kは当接部で自らの表面を現像ローラ11Kとは逆方向に移動させることで、現像ローラ11K上のKトナーを回収したり、現像ローラ11Kに対して新たなKトナーを供給したりする。
現像ローラ11Kに供給されたKトナーは、現像ローラ11Kの回転に伴って現像ローラ11Kと規制ブレード12Kとの当接部を通過する際に、規制ブレード12Kとの摺擦によって摩擦帯電が促されるとともに、ローラ表面上での層厚が均一に規制される。そして、層厚規制後のKトナーは、現像ローラ11Kと感光体2Kとの当接部である現像領域において、感光体2K表面のK用の静電潜像に付着する。この付着により、K用の静電潜像がKトナー像に現像される。
現像領域を通過した後の現像ローラ11Kの表面には、現像に寄与しなかったKトナーが付着しているが、その付着量は均一ではなく、静電潜像に対応したムラがある。このような状態の現像ローラ11Kの表面に対して、そのまま新たなKトナーを供給すると、トナー付着量のムラを残したままになるので、現像濃度ムラを引き起こしてしまう。このため、現像領域を通過した後の現像ローラ11Kの表面からKトナーを回収した後に、新たなKトナーを現像ローラ11Kの表面に供給することが望ましい。そこで、参考形態に係るプリンタでは、既に述べたように、トナー供給ローラ10Kの表面を現像ローラ11Kとの当接部で現像ローラ11Kとは逆方向に移動させる構成を採用している。かかる構成では、当接部の入口(現像ローラ11K表面が当接部に進入する位置)の付近で、トナー供給ローラ10Kによって現像ローラ11Kの表面上からKトナーを掻き取って回収する。その後、当接部の中央から出口付近にかけての領域で、トナー供給ローラ10Kの表面上のKトナーを現像ローラ11Kの表面に供給することが可能になる。
図3は、K用の作像ユニット1K内におけるバイアス印加態様を説明するための構成図である。現像ローラ11Kには、現像電源151Kから出力される現像バイアスが印加される。その現像バイアスは、Kトナーの帯電極性と同極性であり、且つその絶対値(本例では150V)が感光体2Kの地肌部電位の絶対値(本例では550V)と静電潜像電位の絶対値(本例では30〜50V)との間の値になっている。
トナー供給ローラ10Kには、供給電源152Kから出力される供給バイアスが印加される。その供給バイアスは、Kトナーの帯電極性と同極性であり、且つその絶対値が現像バイアスの絶対値よりも大きな値(例えば350V)になっている。このため、現像ローラ11Kとトナー供給ローラ10Kとの当接部では、トナー供給ローラ10K上のKトナーに対して、トナー供給ローラ10K側から現像ローラ11K側に向かう静電気力が付与される。これにより、トナー供給ローラ10K上のKトナーが効率良く現像ローラ10Kに転位する。
規制ブレード12Kには、規制電源154Kから出力される規制バイアスが印加される。その規制バイアスは、Kトナーの帯電極性と同極性であり、且つその絶対値が現像バイアスの絶対値よりも大きな値(例えば350V)になっている。このため、規制ブレード12Kと現像ローラ11Kとの当接部に進入したKトナーは、現像ローラ11K表面に向けて押し付けられて摩擦帯電が助長される。
図2及び図3を用いてK用の作像ユニットについて説明したが、Y,M,C用の作像ユニット1Y,1M,1Cにおいても、同様のプロセスにより、感光体2Y,2M,2C表面にY,M,Cトナー像が形成される。
図1において、作像ユニット1Y,1M,1C,1Kの鉛直方向上方には、光書込ユニット70が配設されている。潜像書込装置たる光書込ユニット70は、画像情報に基づいてレーザーダイオードから発したレーザー光Lにより、作像ユニット1Y,1M,1C,1Kにおける感光体2Y,2M,2C,2Kを光走査する。一様帯電せしめられた感光体2Y,2M,2C,2Kの表面における全域のうち、レーザー光Lが照射された領域は、電位を減衰させて静電潜像を担持する。例えば一様帯電直後の地肌部の電位が−550[V]であるのに対し、静電潜像の電位は−30〜−50[V]まで減衰する。このようにして、感光体2Y,2M,2C,2K上にY,M,C,K用の静電潜像が形成される。なお、光書込ユニット70は、光源から発したレーザー光(L)を、ポリゴンモータによって回転駆動したポリゴンミラーで主走査方向に偏光せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体に照射するものである。LEDアレイの複数のLEDから発したLED光によって光書込を行うものを採用してもよい。
作像ユニット1Y,1M,1C,1Kの鉛直方向下方には、無端状の中間転写ベルト16を張架しながら図中反時計回り方向に無端移動せしめる転写ユニット15が配設されている。転写装置の一部である転写ユニット15は、中間転写ベルト16の他に、従動ローラ17、駆動ローラ18、4つの一次転写ローラ19Y,19M,19C,19Kなどを有している。また、二次転写ローラ20、ベルトクリーニング装置21、クリーニングバックアップローラ22なども有している。
従動ローラ17、駆動ローラ18、クリーニングバックアップローラ22及び4つの一次転写ローラ19Y,19M,19C,19Kは、中間転写ベルト16のループ内側に配設されている。これらのうち、クリーニングバックアップローラ22や、4つの一次転写ローラ19Y,19M,19C,19Kは、中間転写ベルト16の裏面に当接しているものの、その周面に対するベルトの巻き付き角度はごく僅かである。このため、実質的に中間転写ベルト16を張架していない。これに対し、従動ローラ17及び駆動ローラ18は、それぞれ周面に中間転写ベルト16を約180[°]の巻き付き角度で巻き付けながら、中間転写ベルト16を張架している。即ち、従動ローラ17及び駆動ローラ18が、それぞれ中間転写ベルト16を張架する張架ローラとして機能している。なお、駆動ローラ18は、駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動されることで、中間転写ベルト16を同方向に無端移動せしめる。
4つの一次転写ローラ19Y,19M,19C,19Kは、このように無端移動せしめられる中間転写ベルト16を感光体2Y,2M,2C,2Kとの間に挟み込んでいる。この挟み込みにより、中間転写ベルト16のおもて面と、感光体2Y,2M,2C,2Kとが当接するY,M,C,K用の一次転写ニップが形成されている。一次転写ローラ19Y,19M,19C,19Kには、一次転写バイアス電源によってそれぞれ一次転写バイアスが印加されており、これにより、感光体2Y,2M,2C,2Kの静電潜像と、一次転写ローラ19Y,M,C,Kとの間に転写電界が形成される。なお、一次転写ローラ19Y,19M,19C,19Kに代えて、転写チャージャーや転写ブラシなどを採用してもよい。
中間転写ベルト16のベルト基体としては、TPE(サーモプラスチックエラストマーアロイ)、PC(ポリカーボネート)、PI(ポリイミド)、PAA(ポリアミドアロイ)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)等の高分子材料を例示することが可能である。ベルト基体は、中間転写ベルト16が単層構造である場合には、ベルトそのものである。また、多層構造の場合には、最も厚い層がベルト基体となる。
Y用の作像ユニット1Yの感光体2Y表面に形成されたYトナーは、感光体2Yの回転に伴って上述のY用の一次転写ニップに進入すると、転写電界やニップ圧の作用により、感光体2Y上から中間転写ベルト16上に一次転写される。このようにしてYトナー像が一次転写せしめられた中間転写ベルト16は、その無端移動に伴ってM,C,K用の一次転写ニップを通過する際に、感光体2M,2C,2K上のM,C,Kトナー像が、Yトナー像上に順次重ね合わせて一次転写される。この重ね合わせの一次転写により、中間転写ベルト16上には4色トナー像が形成される。
駆動ローラ18は、中間転写ベルト16における周方向の全領域のうち、後述する二次転写ニップを形成する箇所を自らの周面に掛け回してベルト湾曲箇所を形成する転写裏打ちローラとして機能している。転写ユニット15の二次転写ローラ20は、駆動ローラ18の曲率に沿って湾曲する前記ベルト湾曲箇所にベルトおもて面側から当接して二次転写ニップを形成している。かかる構成の二次転写ローラ20、及び駆動ローラ18のうち、何れか一方には、転写バイアス電源によって二次転写バイアスが印加される。また、他方は、アース接続されている。これにより、二次転写ローラ20と駆動ローラ18との間に、二次転写電界が形成される。
二次転写ローラ20としては、金属製のローラ芯金上に、導電性且つ弾性を発揮する材料からなる導電弾性層を被覆したものを用いている。かかる導電弾性層の材料としては、イオン導電性材料(ウレタン+カーボン分散、NBR、ヒドリン)や電子導電性材料(EPDM)等が挙げられる。
転写ユニット15の鉛直方向下方には、記録部材たる記録紙Pを複数枚重ねた紙束の状態で収容している記録部材収容手段としての給紙カセット30が、プリンタの筐体に対してスライド着脱可能に配設されている。この給紙カセット30は、紙束の一番上の記録紙Pに給紙ローラ30aを当接させており、これを所定のタイミングで図中反時計回り方向に回転させることで、その記録紙Pを給紙路31に向けて送り出す。
給紙路31の末端付近には、レジストローラ対32が配設されている。このレジストローラ対32は、給紙カセット30における紙排出側の端部の斜め上方に配設されている。給紙カセット30内からカセット側方に向けてほぼ水平方向に排出された記録紙Pは、排出後直ちに約90[°]の角度で大きく方向転換せしめられて、レジストローラ対32のレジストニップに向けて送られる。レジストローラ対32は、給紙カセット30から送り出された記録紙Pをローラ間に挟み込むとすぐに両ローラの回転を停止させる。そして、挟み込んだ記録紙Pを上述の二次転写ニップ内で中間転写ベルト16上の4色トナー像に同期させ得るタイミングで回転駆動を再開して、記録紙Pを二次転写ニップに向けて送り出す。
二次転写ニップで記録紙Pに密着せしめられた中間転写ベルト16上の4色トナー像は、二次転写電界やニップ圧の影響を受けて記録紙P上に一括二次転写され、記録紙Pの白色と相まって、フルカラートナー像となる。このようにして表面にフルカラートナー像が形成された記録紙Pは、二次転写ニップを通過すると、二次転写ローラ20や中間転写ベルト16から曲率分離する。そして、転写後搬送路33を経由して、二次転写ニップの上方に配設された定着装置34に送り込まれる。
二次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト16には、記録紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、中間転写ベルト16のおもて面に当接しているベルトクリーニング装置21によってベルト表面からクリーニングされる。中間転写ベルト16のループ内側に配設されたクリーニングバックアップローラ22は、ベルトクリーニング装置21によるベルトのクリーニングをループ内側からバックアップする。
定着装置34は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ34aと、これに所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ34bとによって定着ニップを形成している。定着装置34内に送り込まれた記録紙Pは、その未定着トナー像担持面を定着ローラ34aに密着させるようにして、定着ニップに挟まれる。そして、加熱や加圧の影響によってトナー像中のトナーが軟化さしめられて、フルカラー画像が定着せしめられる。
定着装置34内から排出された記録紙Pは、定着後搬送路35を経由した後、排紙路36と反転前搬送路41との分岐点にさしかかる。定着後搬送路35の側方には、回動軸42aを中心にして回動駆動される切替爪42が配設されており、その回動によって定着後搬送路35の末端付近を閉鎖したり開放したりする。定着装置34から記録紙Pが送り出されるタイミングでは、切替爪42が図中実線で示す回動位置で停止して、定着後搬送路35の末端付近を開放している。よって、記録紙Pが定着後搬送路35から排紙路36内に進入して、排紙ローラ対37のローラ間に挟み込まれる。
テンキー等からなる操作部に対する入力操作や、パーソナルコンピュータ等から送られてくる制御信号などにより、片面プリントモードが設定されている場合には、排紙ローラ対37に挟み込まれた記録紙Pがそのまま機外へと排出される。そして、筐体の上カバー50の上面であるスタック部にスタックされる。
一方、両面プリントモードに設定されている場合には、次のような動作が行われる。即ち、先端側を排紙ローラ対37に挟み込まれながら排紙路36内を搬送される記録紙Pの後端側が定着後搬送路35を通り抜けると、切替爪42が図中一点鎖線の位置まで回動して、定着後搬送路35の末端付近が閉鎖される。これとほぼ同時に、排紙ローラ対37が逆回転を開始する。すると、記録紙Pは、今度は後端側を先頭に向けながら搬送されて、反転前搬送路41内に進入する。
図1は、参考形態に係るプリンタを正面側から示している。図紙面に直交する方向の手前側がプリンタの前面であり、奥側が後面である。また、参考形態に係るプリンタの図中右側が右側面、左側が左側面である。プリンタの右端部は、回動軸40aを中心に回動することで筐体本体に対して開閉可能な反転ユニット40になっている。排紙ローラ対37が逆回転すると記録紙Pがこの反転ユニット40の反転前搬送路41内に進入して、鉛直方向上側から下側に向けて搬送される。そして、反転搬送ローラ対43のローラ間を経由した後、半円状に湾曲している反転搬送路44内に進入する。更に、その湾曲形状に沿って搬送されるのに伴って上下面が反転せしめられながら、鉛直方向上側から下側に向けての進行方向も反転して、鉛直方向下側から上側に向けて搬送される。その後、上述した給紙路31内を経て、二次転写ニップに再進入する。そして、もう一方の面にもフルカラー画像が一括二次転写された後、転写後搬送路33、定着装置34、定着後搬送路35、排紙路36、排紙ローラ対37を順次経由して、機外へと排出される。
反転ユニット40は、外部カバー45と揺動体46とを有している。具体的には、反転ユニット40の外部カバー45は、プリンタ本体の筺体に設けられた回動軸40aを中心にして回動するように支持されている。この回動により、外部カバー45は、その内部に保持している揺動体46とともに筺体に対して開閉する。図中点線で示されるように、外部カバー45がその内部の揺動体46とともに開かれると、反転ユニット40とプリンタ本体側との間に形成されていた給紙路31、二次転写ニップ、転写後搬送路33、定着ニップ、定着後搬送路35、排紙路36が縦に二分されて、外部に露出する。これにより、給紙路31、二次転写ニップ、転写後搬送路33、定着ニップ、定着後搬送路35、排紙路36内のジャム紙を容易に取り除くことができる。
また、揺動体46は、外部カバー45が開かれた状態で、外部カバー45に設けられた揺動軸を中心にして回動するように外部カバー45に支持されている。この回動により、揺動体46が外部カバー45に対して開かれると、反転前搬送路41や反転搬送路44が縦に2分されて外部に露出する。これにより、反転前搬送路41内や反転搬送路44内のジャム紙を容易に取り除くことができる。
プリンタの筺体の上カバー50は、図中矢印で示されるように、回動軸51を中心にして回動自在に支持されており、図中反時計回り方向に回転することで、筺体に対して開いた状態になって、筺体の上部開口を外部に向けて大きく露出させる。これにより、光書込ユニット71が露出する。
なお、参考形態に係るプリンタでは、転写ユニット15の構成の簡素化や装置の小型化をできるだけ図るために、中間転写ベルト16を2本の張架ローラ(17、18)だけで張架している。かかる構成では、何れか一方(17、18)を駆動ローラとして機能させることになるが、参考形態に係るプリンタでは、転写裏打ちローラとして機能する方の張架ローラを駆動ローラとして機能させている。これにより、転写裏打ちローラに多機能をもたせているが、転写裏打ちローラと駆動ローラとを別々にしてもよい。
以上の構成の参考形態に係るプリンタにおいては、累積プリント枚数がある程度まで増加すると、画像面積率の高い画像における後端側の画像濃度不足(以下、後端側カスレという)を引き起こし易くなるという不具合があった。そこで、本発明者らは、その不具合を引き起こす原因について鋭意研究を行ったところ、次のようなことを見出した。即ち、作像ユニット1Y,1M,1C,1Kは、現像装置5Y,5M,5C,5K内のY,M,C,Kトナーを消費し尽くした時点を寿命であるとみなして新たなものに交換する構成になっている。その寿命は、おおむね、一般的な画像面積率の画像を15000枚出力した時点である。
本発明者らは、参考形態に係るプリンタと同様のプリント試験機により、第一テストプリントを実施した。この第一テストプリントでは、短手方向を搬送方向に沿わせる横搬送でA3サイズ紙を搬送しながら、ドット出力率=100[%]のテストベタ画像(全ベタ)をそのA3サイズにプリントする動作を連続で実施した。電位条件については、現像バイアス=−150[V]、感光体地肌部電位=−550[V]、潜像電位=−30〜−50[V]、供給バイアス=−350又は−400[V]、規制バイアス=−350又は−400[V]に設定した。供給バイアスや規制バイアスについては、累積プリント枚数が1〜5000枚のときには−350[V]に設定し、5001〜6000枚のときには−400[V]に設定した。
プリント1000枚目毎に、テストベタ画像について後端側カスレの発生度合いを、後端側カスレなし(○)、後端側カスレあり(×)の二段階で主観評価した。同様のテストを、ドット出力率=50[%]のテストハーフトーン画像(全ハーフトーン)についても実施した。この結果を次の表1に示す。
表1に示されるように、全ベタ画像(100%)の場合には、累積プリント枚数が4000枚まで増加した時点で後端側カスレが発生し始めた。また、ハーフトーン画像(50%)の場合には、累積プリント枚数が5000枚まで増加した時点で後端側カスレが発生し始めた。
同様のテストプリントを繰り返しながら、プリンタ試験機から現像ローラなどを取り外して観察した結果、後端側カスレは次のようにして発生していることが解った。即ち、作像ユニット1Y,1M,1C,1Kにおいて、新品の状態からの累積プリント枚数が増加するにつれて、現像装置5Y,5M,5C,5K内におけるY,M,C,Kトナーの撹拌滞留時間が増加していく。そして、Y,M,C,Kトナーが徐々に劣化してその流動性を低下させていく。すると、現像ローラ10Y,10M,10C,10Kと規制ブレード12Y,12M,12C,12Kとの当接部よりも上流側であって当接部の近傍の領域(以下、「ブレード当接部入口近傍領域」という)において、トナー停滞が発生し始める。Y,M,C,Kトナーがブレード当接部に向けて移動し難くなって停滞気味になるのである。これにより、当接部を通過した後の現像ローラ10Y,10M,10C,10Kの表面上にY,M,C,Kトナーが付着し難くなる。そして、高画像面積率の画像をその先端側から後端側に向けて現像する際に、現像ローラ10Y,10M,10C,10K上のY,M,C,Kトナー付着量を徐々に低下させていく。この結果、後端側の画像部でトナー不足による現像不良によって後端側カスレを引き起こしてしまうことが解った。
特に、参考形態に係るプリンタのように、良好なトナークリーニング性や帯電量安定性を得るためにオイル含有シリカを添加剤として含んだトナーを用い、且つ、現像装置内に多量のトナーを収容する構成では、画像の後端側カスレを引き起こし易い。これは、次に説明する理由による。即ち、累積プリント枚数の増加に伴って、規制ブレードとの摺擦部を何度も通過してオイル含有シリカのシリコーンオイルを離脱させてしまったトナー粒子の数が現像装置内で増加していく。これによってトナーの流動性がある程度まで低下すると、高画像面積率の画像をプリントする際に、画像の後端部の現像工程におけるトナー量が不足してしまうからである。
第一テストプリントにおいて、累積プリント枚数が4000枚まで増加すると、全ベタ画像では後端側カスレが発生するのに対し、全ハーフトーン画像では後端側カスレが発生しないのは、次の理由による。即ち、ベタ画像の方が単位面積あたりのトナー消費量が多いことから、画像後端部で現像トナー量が不足し易くなるのである。
次に、実施形態に係るプリンタについて説明する。なお、以下に特筆しない限り、実施形態に係るプリンタの構成は、参考形態と同様である。
本発明者らは、累積プリント枚数が4000枚あたりまで増加した時点で、「ブレード当接部入口近傍領域」において発生し始めるトナー停滞現象を低減する方法について鋭意研究を行った。その結果、規制バイアスとして、直流電圧に交流電圧を重畳した重畳電圧からなるものを用いると、規制ブレード12Y,12M,12C,12Kを微振動させてY,M,C,Kトナーのブレード当接部への流れを促進し得ることを見出した。
そこで、実施形態に係るプリンタにおいては、規制ブレード12Y,12M,12C,12Kに印加する規制バイアスとして、重畳電圧からなるものをY,M,C,K用の規制電源から出力させるようになっている。かかる構成では、累積プリント枚数の増加に伴って現像装置内のY,M,C,Kトナーの流動性を低下させても、重畳電圧からなる規制バイアスの印加による規制ブレード12Y,12M,12C,12Kの微振動により、次のような作用効果を奏する。即ち、微振動により、「ブレード当接部入口近傍領域」のY,M,C,Kトナーのブレード当接部への流れを促進してトナー停滞を抑えることで、現像トナー量の不足を抑える。これにより、画像の後端側カスレの発生を抑えることができる。
次に、実施形態に係るプリンタに、より特徴的な構成を付加した実施例のプリンタについて説明する。なお、以下に特筆しない限り、実施例に係るプリンタの構成は、実施形態と同様である。
図4は、実施例に係るプリンタの電気回路の一部を示すブロック図である。同図においては、メイン制御部100に電気的に接続されている各種機器のうち、一部のものだけを示している。メイン制御部100は、CPU(Central Processing Unit)RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、不揮発性メモリ等を具備しており、プリンタ全体の各種機器の駆動の制御や演算処理を司るものである。
実施例に係るプリンタにおいて、メイン制御部100に対し、I/Oインターフェース101を介して電気的に接続されている機器としては、プリントサーバー回路104、画像データ処理部105、LAN(Local Area Network)ポート102などが挙げられる。また、USBポート103、書込制御部107、ユニット交換検知器109、光書込ユニット70、各色の電源制御部153Y,153M,153C,153Kなども、I/Oインターフェース101を介してメイン制御部100に接続されている。
各色の電源制御部(153Y,M,C,K)は、メイン制御部100から送られてくる信号に基づいて、各色の各電源の出力を制御するものである。具体的には、現像電源(151Y,M,C,K)からの現像バイアスの出力値を制御したり、供給電源(152Y,M,C,K)からの供給バイアスの出力値を制御したり、規制電源(154Y,M,C,K)からの規制バイアスの出力値を制御したりする。
LANポート102は、外部のローカルエリアネットワークを介して、パーソナルコンピュータやスキャナとの通信を行って、出力すべき画像の画像データを取得することが可能である。また、USBポート103は、USBケーブルを介して外部のパーソナルコンピュータと通信を行って、出力すべき画像の画像データを取得することが可能である。
パーソナルコンピュータからローカルエリアネットワークを介してLANポート102に入力された画像データは、プリントサーバー回路104を介して画像データ処理部105に入力される。また、パーソナルコンピュータからUSBポート103に入力されたカラー画像データは、そのまま画像データ処理部105に入力される。
画像データ処理部105は、受信したカラー画像データを、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の色分解画像データに分離した後、それらをY,M,C,Kの4つの色分解画像データに変換する。そして、得られたY,M,C,Kの色分解画像データを、書込制御部107に送信する。書込制御部107は、画像データ処理部105から受信したY,M,C,Kの色分解画像データに基づいて、光書込ユニット70の駆動を制御して感光体2Y,M,C,Kをそれぞれ光走査させる。また、各ページで同期をとるためのページ同期信号を、メイン制御部100や、各色の電源制御部(153Y,M,C,K)に送信する。メイン制御部100は、そのページ同期信号に基づいて、給紙カセット30やレジストローラ対32からの記録紙Pの送り出しを制御する。また、各色の電源制御部(153Y,M,C,K)は、そのページ同期信号に基づいて、各種のバイアスの出力値を制御する。
画像データ処理部105は、Y,M,C,Kトナー像についてそれぞれドット出力率を算出し、その結果をY,M,C,K用の電源制御部153Y,153M,153C,153Kに送信する。電源制御部153Y,153M,153C,153Kは、Y,M,C,Kのドット出力率と、光書込ユニット70から送られてくる同期信号とに基づいて、Y,M,C,K用の各種バイアスの出力値を制御する。
ユニット交換検知器109は、作像ユニット1Y,1M,1C,1Kに搭載されているICタグと無線通信することで、作像ユニット1Y,1M,1C,1KのID番号を取得する。そして、作像ユニット1Y,1M,1C,1Kのそれぞれについて、ID番号が変化したことに基づいて、交換がなされたことを検知することができる。交換を検知した場合には、その作像ユニットと同じ色に対応するユニット交換信号をメイン制御部100に送信する。メイン制御部100は、ユニット交換信号を受信すると、そのユニット交換信号に対応する色について、累積プリント枚数の積算値をゼロにリセットする。
また、メイン制御部100は、中間転写ベルト16の張架姿勢を変化させることで、中間転写ベルト16を、三つの感光体2Y,C,Mに対して接離させることが可能である。そして、受信した画像データがカラー画像データである場合には、中間転写ベルト16を各色の感光体2Y,2M,2C,2Kに当接させた後に、カラープリント動作を開始させる。このとき、各色の作像ユニット1Y,1M,1C,1Kのそれぞれを動作させる。一方、受信した画像データがモノクロ画像データである場合には、中間転写ベルト16を三つの感光体2Y,2M,2Cから離間させた後に、モノクロプリント動作を開始させる。このとき、各色のうち、K用の作像ユニット1Kだけを動作させる。これにより、モノクロプリント時には、画像形成に不要な作像ユニット1Y,1M,1Cの動作を停止させて、現像装置5Y,5M,5C内のY,M,Cトナーの不要な劣化を回避している。
また、メイン制御部100は、記録紙P1枚に対するプリントジョブを実施する毎に、モノクロプリントであればKについてだけ、カラープリントであればY,M,C,Kの各色のそれぞれについて、累積プリント枚数の積算値を1つカウントアップする。そして、その結果を、対応する電源制御部(153Y,M,C,K)に送信する。
先に示した表1から、規制バイアスとして直流電圧だけからなるものを用いてドット出力率が最大である全ベタ画像をプリントしても、3000枚程度の累積プリント枚数であれば、画像の後端側カスレを発生させないことが解る。つまり、3000枚程度の累積プリント枚数であれば、規制バイアスとして直流電圧だけからなるものを用いても、重畳電圧からなるものを用いても、画像の後端側カスレを発生させることがないのである。一方、本発明者らは実験により、規制バイアスとして重畳電圧からなるものを用いる場合には、その交流成分によって規制ブレード12Y,12M,12C,12Kを微振動させて、騒音を発生させることを見出した。よって、累積プリント枚数がある程度増加するまでの期間については、規制バイアスとして直流電圧からなるものを用いることが望ましい。
更に、その期間の終期については、出力する画像のドット出力率によって異ならせることが望ましい。例えば、表1の例では、累積プリント枚数が4000枚に達した時点において、ドット出力率100%の全ベタ画像では後端側カスレが発生するのに対し、ドット出力率50%の全ハーフトーン画像では後端側カスレが発生しない。よって、全ベタ画像では終期を3999枚に設定することが望ましいのに対し、全ハーフトーン画像では終期をそれよりも遅らせることが望ましい。
そこで、Y,M,C,K用の電源制御部153Y,153M,153C,153Kは、画像データ処理部105から送られてくるドット出力率が所定の切替基準値と同等以下である場合と、そうでない場合とで、規制バイアスの種類を切り替えるようになっている。具体的には、ドット出力率が所定の切替基準値と同等以下である場合には、規制電源154Y,154M,154C,154Kから直流電圧だけからなる規制バイアスを出力させる。これに対し、ドット出力率が切替基準値と同等以下でない場合には、規制電源154Y,154M,154C,154Kから重畳電圧からなる規制バイアスを出力させる。
かかる構成では、ドット出力率が比較的低いことで後端側カスレを発生させる可能性の低い場合には、規制バイアスとして直流電圧だけからなるものを用いる。これにより、重畳電圧からなる規制バイアスを用いることに起因して規制ブレードの微振動による騒音を発生させる頻度を減らすことができる。
また、Y,M,C,K用の電源制御部153Y,153M,153C,153Kは、それぞれY,M,C,Kの累積プリント枚数の増加に応じて前述の切替基準値を小さくしていく処理を実施する。具体的には、累積プリント枚数が1〜3000枚の範囲内である場合には、切替基準値として100[%]を用いる。また、累積プリント枚数が3001〜4000枚の範囲内である場合には、切替基準値として50[%]を用いる。また、累積プリント枚数が4001枚〜10000枚の範囲内である場合には、切替基準値として40[%]を用いる。また、累積プリント枚数が10001枚以上である場合には、切替基準値として30[%]を用いる。
かかる構成では、累積プリント枚数とドット出力率との組み合わせに応じた適切なタイミングで、規制バイアスを重畳電圧だけからなるものから重畳電圧からなるものに切り替えることができる。
本発明者らは、上述したプリント試験機を、実施例に係るプリンタと同様の構成のものに改良した。そして、このプリント試験機を用いて、第二テストプリントを実施した。この第二テストプリントにおいても、短手方向を搬送方向に沿わせる横搬送でA3サイズ紙を搬送しながら、ドット出力率=100[%]のテストベタ画像(全ベタ)をそのA3サイズにプリントする動作を連続で実施した。電位条件については、現像バイアス=−150[V]、感光体地肌部電位=−550[V]、潜像電位=−30〜−50[V]、供給バイアス=−350[V]とした。また、規制バイアスについては、ドット出力率が切替基準値を下回っている場合には、−350[V]の直流電圧だけからなるものを用いる一方で、ドット出力率が切替基準値と同等以上である場合には、重畳電圧からなるものを用いるようにした。また、重畳電圧としては、−150[V]の直流電圧に、ピークツウピーク電位1000[V]、周波数1[kHz]の正弦波の交流電圧を重畳したものを採用した。また、連続プリント枚数については6000枚とした。同様のテストを、ドット出力率50%の全ハーフトーン画像についても実施した。この結果を次の表2に示す。
表2に示されるように、累積プリント枚数が3000枚から1枚増えて3001枚になると、ドット出力率の切替基準値が100[%]から50[%]に変更される。これにより、全ベタ画像を出力する場合には、そのドット出力率(=100%)が切替基準値(=50%)を超えることから、規制バイアスが直流電圧だけからなるものから、重畳電圧からなるものに変更される。これにより、直流電圧だけからなる規制バイアスの条件では全ベタ画像の後端側カスレが発生してしまう3001枚という累積プリント枚数の条件でも、全ベタ画像の後端側カスレを有効に抑えることができている。一方、全ハーフトーン画像を出力する場合には、そのドット出力率(=50%)が切替基準値(=50%)と同等以下であることから、引き続き規制バイアスとして直流電圧だけからなるものが用いられる。これにより、全ハーフトーン画像の後端側カスレを発生させることなく、重畳電圧からなる規制バイアスを用いることによる騒音の発生を回避することができている。
累積プリント枚数が4001枚まで増加すると、ドット出力率の切替基準値が50[%]から40[%]に変更される。これにより、全ハーフトーン画像を出力する場合であっても、そのドット出力率(=50%)が切替基準値(=40%)を超えることから、規制バイアスが直流電圧だけからなるものから、重畳電圧からなるものに変更される。これにより、直流電圧だけからなる規制バイアスの条件では全ハーフトーン画像の後端側カスレが発生してしまう4001枚という累積プリント枚数の条件でも、全ハーフトーン画像の後端側カスレを有効に抑えることができている。
このように、第二テストプリントにより、実施例に係るプリンタにおける作用効果が立証された。
規制ブレード(12Y,M,C,K)に対して直流電圧だけからなる規制バイスを印加する場合に、現像ローラ(11Y,M,C,K)へのトナー供給不足を抑えつつ、トナーを良好に摩擦帯電させるためには、その直流電圧を次のようにする必要がある。即ち、その絶対値を現像バイアスの絶対値よりも大きくする必要がある。そこで、実施例に係るプリンタにおいては、直流電圧だけからなる規制バイアスの直流電圧として、その絶対値(350V)を現像バイアスの絶対値(150V)よりも大きくしたものを採用している。
一方、規制ブレード(12Y,M,C,K)に対して振幅の比較的大きな交流電圧を印加すると、規制ブレード直流電圧の絶対値を現像バイアスの絶対値よりも大きくしなくても、ブレード微振動によってトナーを良好に摩擦帯電させることが可能になる。そこで、実施例に係るプリンタにおいては、重畳電圧からなる規制バイアスとして、直流電圧の絶対値(150V)を、直流電圧だけからなる規制バイアスの直流成分絶対値よりも小さくしたものを採用している。このようにすると、交流電圧として、その波形が正弦波であるものや、デューティが50[%]の矩形波であるものなど、対称波であるものを用いる場合に、ブレード当接部での放電によるトナーの逆帯電の発生を抑えることができる。重畳電圧からなる規制バイアスの直流電圧の絶対値を比較的大きくすると、規制バイアスのピークツウピークにおける一方のピーク値と、現像バイアスとの電位差を放電開始電圧よりも大きくして、ブレード〜ローラ間の放電を発生させ易くなるからである。
また、規制ブレード(12Y,M,C,K)に対して振幅の大きな交流電圧を印加すると、ブレード微振動によってブレード当接部へのトナーの流れを促進する。これにより、現像ローラ(11Y,M,C,K)上のトナー薄層の厚みを狙いよりも大きくして、画像濃度を過剰に高くしてしまうおそれがある。しかし、重畳電圧からなる規制バイアスにおける直流成分の絶対値を、直流電圧だけからなる規制バイアスの直流成分絶対値よりも小さくしてブレードからローラに向かう静電気力をより小さくすることで、トナー薄層の厚みの増加を抑えることが可能になる。これにより、画像濃度過多の発生を抑えることもできる。
規制ブレード(12Y,M,C,K)に重畳電圧を印加することで「ブレード当接部入口近傍領域」のトナーのブレード当接部への流れを促進する作用は、主に、ブレードの微振動と、トナーの振動によるものと思われる。そして、ブレードの微振動を効率良く正規せしめるほど、トナーの流れを効率良く促進することができる。実施例に係るプリンタのように、規制ブレード(12Y,M,C,K)として、金属からなるものを用いると、非金属からなるものを用いる場合に比べて、薄い厚みで所望の強度を得て、より良好にブレードの微振動を正規せしめることが可能になる。これにより、トナーの流れをより効率良く促進することができる。金属としては、ステンレス、りん青銅、アルミニウムなどを例示することができる。
次に、実施例に係るプリンタに、より特徴的な構成を付加した各具体例について説明する。なお、以下に特筆しない限り、各具体例に係るプリンタの構成は、実施例と同様である。
[第一具体例]
上述したように、規制ブレード(12Y,M,C,K)に対して振幅の大きな交流電圧を印加すると、現像ローラ(11Y,M,C,K)上のトナー薄層の厚みを狙いよりも大きくして、画像濃度を過剰に高くしてしまうおそれがある。そこで、第一具体例に係るプリンタでは、重畳電圧からなる規制バイアスを用いる場合には、直流電圧だけからなる規制バイアスを用いる場合に比べて、現像バイアスの絶対値を小さくするように、電源制御部153Y,153M,153C,153Kを構成している。かかる構成では、重畳電圧からなる規制バイアスを用いる場合に、現像バイアスの絶対値の低下によって現像ポテンシャルをより小さくすることで、画像濃度過多の発生を抑えることができる。なお、第一具体例では、重畳電圧からなる規制バイアスを用いる場合には、現像バイアスを−100[V]にしている。
重畳電圧からなる規制バイアスによって得られる「ブレード当接部入口近傍領域」のトナーのブレード当接部への流れを促進する作用は、交流電圧のピークツウピーク電位が現像バイアスと感光体の潜像電位との電位差の10倍未満になると、得られ難くなる。一方、第一具体例に係るプリンタでは、交流電圧としてピークツウピーク電位が1000[V]であるものを採用している。また、現像バイアス=−100[V]、潜像電位=−30〜−50[V]であるので、両者の電位差は70〜50[V]である。ピークツウピーク電位が前記電位差の10倍以上になっているので、前述した作用を確実に得ることができる。
電源制御部153Y,153M,153C,153Kは、出力画像のドット出力率が高くなるほど、供給バイアスの直流電圧の絶対値を大きくする制御を実施するように構成されている。かかる構成では、ドット出力率が高くなって画像の後端側カスレが生じ易くなるほど、供給バイアスの絶対値を大きくしてトナー供給ローラ(10Y,M,C,K)から現像ローラ(11Y,M,C,K)へのトナー供給量を増やす。これにより、現像トナー量不足の発生を抑えることによっても、画像の後端側カスレの発生を抑えることができる。
[第二具体例]
画像の後端側カスレは、画像の全域のうち、画像の感光体表面移動方向の下流側(後端側)で現像トナー量が不足することによって発生するものであり、その発生のし易さは画像領域全体のドット出力率よりも、次に説明する区画毎のドット出力率と良好に相関する。即ち、出力画像を表現する仮想頁を感光体の表面移動方向と直交する方向に複数に区画した区画毎のドット出力率である。例えば、それら複数の区画のうち、1つの区画にだけ、区画全域に渡るベタ画像が形成されるとする。この場合、仮想頁全体のドット出力率はそれほど大きな値にはならない。例えば、区画数が10個であれば、仮想頁全体におけるドット出力率は10[%]であり、これは比較的低い値である。ところが、ベタ画像が出力される一つの区画では、トナーが集中的に消費されることから、累積プリント枚数がある程度まで増加した条件においてベタ画像に後端側カスレが発生してしまう。ベタ画像が出力される一つの区画だけに着目すると、ドット出力率は100[%]という最大の値になることから、後端側カスレの発生のし易さと良好に相関している。
そこで、第二具体例に係るプリンタにおいては、次のような処理を実施するように画像データ処理部105を構成している。即ち、各色についてそれぞれ、出力画像を表現する仮想頁を感光体(2Y,M,C,K)の表面移動方向と直交する方向に複数に区画してそれぞれの区画のドット出力率を算出し、それら区画の算出結果を電源制御部(153Y,M,C,K)に送信する処理である。また、次のような処理を実施するように、各色の電源制御部153Y,153M,153C,153Kを構成している。即ち、画像データ処理部105から送られてきた複数の区画におけるそれぞれのドット出力率のうち、最大のドット出力率を特定する。そして、最大のドット出力率が切替基準値と同等以下である場合には直流電圧だけからなる規制バイアス、同等以下でない場合には重畳電圧からなる規制バイアスを、規制電源(154Y,M,C,K)から出力させる処理である。
かかる構成では、複数の区画のうち、一部の区画だけに画像部が集中していて仮想頁全体のドット出力率が切替基準値を上回らない場合であっても、規制バイアスとして重畳電圧からなるものを適切に選択して画像の後端側カスレの発生を抑えることができる。
[第三具体例]
画像の後端側カスレの発生し易さは画像領域全体のドット出力率よりも、次に説明する区画毎のドット出力率と良好に相関する。即ち、出力画像を表現する仮想頁を感光体の表面移動方向に複数に区画した区画毎のドット出力率である。
第三具体例に係るプリンタにおいては、次のような処理を実施するように画像データ処理部105を構成している。即ち、各色についてそれぞれ、出力画像を表現する仮想頁を感光体(2Y,M,C,K)の表面移動方向に複数に区画してそれぞれの区画のドット出力率を算出し、それら区画の算出結果を電源制御部(153Y,M,C,K)に送信する処理である。
図5は、仮想頁の一例とドット出力率との関係を示す模式図である。同図における矢印A方向は感光体の表面移動方向を示している。画像データ処理部105は、Y,M,C,Kの各色についてそれぞれ次のようにしてドット出力率を算出する。即ち、まず、図中点線で示されるように、仮想頁を矢印A方向(=記録紙の紙面に沿いつつ紙搬送方向に延びる方向)に複数に区切って複数の区画を設定する。仮想頁は、画像の出力対象となる記録紙Pを機内での搬送姿勢と同じ姿勢にした場合の紙面と同じ姿勢の仮想領域である。例えば、縦搬送されるA4サイズ紙に画像を形成する場合、仮想頁は、長手方向を搬送方向に沿わせたA4サイズの紙面と同じ姿勢の仮想領域である。図示の例では、仮想頁を感光体の表面移動方向に沿って等間隔で16個の区画に分割しているが、分割数は16個に限られない。
画像データ処理部105は、仮想頁を複数に区画したら、それぞれの区画におけるドット出力率(区画内出力ドット総数/区画内全画素数)を算出する。そして、それら算出結果を電源制御部(153Y,M,C,K)に送信する。
各色の電源制御部153Y,153M,153C,153Kは、画像データ処理部105から送られてきた複数の区画について、区画内のドット出力率が切替基準値と同等以下である場合には直流電圧だけからなる規制バイアスを用いることを決定する。これに対し、区画内のドット出力率が切替基準値と同等以下でない場合には重畳電圧からなる規制バイアスを用いることを決定する。そして、プリントジョブ中において、書込制御部107から送られてくるページ同期信号に基づいて、それぞれの区画の現像開始タイミングを算出する。現像開始タイミングは、感光体2Y,2M,2C,2Kの表面移動方向における全域のうち、前述の区画に相当する領域の先端が現像ローラ11Y,11M,11C,11Kとの当接部に進入するタイミングである。電源制御部153Y,153M,153C,153Kは、各区画についてそれぞれ、現像開始タイミングよりも所定時間だけ早いタイミングが到来した時点で、次のような処理を実施する。即ち、規制電源154Y,154M,154C,154Kから出力させる規制バイアスを、その区画について予め決定しておいたものと同じものにする処理である。
かかる構成では、画像を現像する現像期間内で、必要な時期だけ規制バイアスとして重畳電圧からなるものを用いることで、規制ブレード12Y,12M,12C,12Kの微振動による振動の発生を抑えることができる。
また、電源制御部(153Y,M,C,K)は、重畳電圧からなる規制バイアスを規制電源(154Y,M,C,K)から出力させるときには、現像電源(151Y,M,C,K)から出力させる現像バイアスを次のように制御する。即ち、直流電圧だけからなる規制バイアスを出力させるときに比べて、現像バイアスの絶対値を小さくする。かかる構成では、規制バイアスとして重畳電圧からなるものを用いることによって「ブレード当接部入口近傍領域」のトナーのブレード当接部への流れを促進することに起因して画像濃度を過剰に高めてしまうことを抑えることができる。
本発明者らは、上述したプリント試験機を、第三具体例に係るプリンタと同様の構成に改良した。そして、そのプリント試験機を用いて、第三テストプリントを実施した。この第三テストプリントでは、図6に示されるベタ画像を連続プリントした。同図における矢印A方向(=感光体の表面移動方向)の上流側の位置になるほど面積が大きくなる三角形上のベタ画像であり、縦搬送されるA3サイズ紙に出力されるものである。同図における点線は上述した区画の境界を示している。仮想頁の先端、後端でそれぞれ10mmの余白をとり、その内側で区画を等間隔で分割している。区画の幅Wについては、現像ローラ11Y,11M,11C,11Kの周長と同じ値にした。電源制御部153Y,153M,153C,153Kには、それぞれの区画毎に規制バイアスや現像バイアスを切り替える制御を行わせるようにした。図示のようなベタ画像の連続プリント(6000枚)を、後述する条件A、条件B、条件Cでそれぞれ実施した。そして、出力されたベタ画像について、後端側カスレの発生度合いと地汚れの悪化度とを評価した。地汚れの悪化度については後述する。
条件Aでは、ドット出力率に基づく規制バイアスの繰り替えを実施せず、ドット出力率にかかわらず、直流電圧だけからなる規制バイアスを規制電源(154Y,M,C,K)から出力させ続けた。規制バイアスの直流電圧については、累積プリント枚数1枚目〜5000枚目において−350[V]とし、5001枚目からは−400[V]とした。
条件Bでは、第二テストプリントと同様に頁全体におけるドット出力率と切替基準値との比較に基づいて、規制バイアスとして直流電圧だけからなるもの、重畳電圧からなるもの、の何れを用いるかを決定させるようにした。累積プリント枚数と切替基準値との関係については、表2に示される関係と同じにした。なお、重畳電圧からなる規制バイアスを出力するときには、第二テストプリントとは異なり、現像バイアスの絶対値を直流電圧の場合よりも小さくするようにした。その値については、所定のアルゴリズムに従って決定させるようにした。
条件Cでは、第三具体例に係るプリンタと同様に、各区画を現像する際に、規制バイアスとして、区画内のドット出力率と切替基準値との比較に基づいて予め決定しておいたものと同じものを規制電源から出力させるようにした。累積プリント枚数と切替基準値との関係については、表2に示される関係と同じにした。また、条件Bと同様に、重畳電圧からなる規制バイアスを出力するときには、現像バイアスの絶対値を直流電圧の場合よりも小さくするようにした。
図7は、第三テストプリントで出力されるベタ画像の各区画とドット出力率[%]との関係を示すグラフである。表2における累積プリント枚数と切替基準値との関係と、図7のグラフとから、条件Cでは、次のような規制バイアスの制御になることがわかる。即ち、1枚目から3000枚目までは、全ての区画が直流電圧だけからなる規制バイアスを用いる条件で現像される。3001枚目から4000枚目までは、第1区画から第6区画までが直流電圧だけからなる規制バイアスを用いる条件で現像され、その他の区画が重畳電圧からなる規制バイアスを用いる条件で現像される。また、4001枚目から6000枚目までは、第1区画から第5区画までが直流電圧だけからなる規制バイアスを用いる条件で現像され、その他の区画が重畳電圧からなる規制バイアスを用いる条件で現像される。
表3において、地汚れは、感光体の地肌部(非画像部)にトナーを付着させてしまう現象であり、地肌部電位と現像バイアスとの電位差である地肌ポテンシャルに応じて発生し易くなったり、発生し難くなったりする。また、地肌部電位が一定である場合には、地肌ポテンシャルは現像バイアスに応じて変化し、現像バイアスが小さくなるほど地肌ポテンシャルが大きくなる。よって、規制バイアスに応じて現像バイアスを変化させる条件Bや条件Cでは、重畳電圧からなる規制バイアスを出力するのに伴って現像バイアスの絶対値を小さくすると、地肌ポテンシャルがより大きくなる。正規に負(マイナス)に帯電したトナーであれば、地肌ポテンシャルが大きくなると、地汚れがより発生し難くなる。ところが、帯電能力が低いために正(プラス)に帯電したトナーが含まれる場合や、電気抵抗が低いトナーの場合には、その逆に、地肌ポテンシャルが大きくなると地汚れがより発生し易くなるものがある。例えば、電気抵抗が低いトナーの場合には、地肌部では現像領域で現像ローラからトナーに正電荷が注入され、トナーの極性が反転(正に帯電)するためである。テストプリントでは、そのような性質のあるトナーを用いていることから、重畳電圧からなる規制バイアスを出力するときには、直流電圧だけからなる規制バイアスを出力するときに比べて、地汚れが発生し易くなる。
表3における地汚れ悪化度は、条件Aにおける地汚れの度合いを基準にして、条件B、条件Cにおける地汚れの度合いについて基準の何倍にあたるのかを示すものである。
重畳電圧からなる規制バイアスを用いない条件Aでは、累積プリント枚数が4000枚を超えると、画像の後端側カスレが発生し始めてしまう。これに対し、ドット出力率と切替基準値との比較結果に応じて、規制バイアスを直流電圧だけからものと重畳電圧からなるものとで切り替える条件Bや条件Cでは、6000枚のテストベタ画像を出力しても、画像の後端側カスレを発生させることがなかった。
条件Bと条件Cとで地汚れ悪化度を比較すると、条件Cの方が地汚れの度合いを低くすることができている。これは次に説明する理由による。即ち、条件Bでは、重畳電圧からなる規制バイアスを出力する場合には、頁全体の非画像部に対してそれぞれ大きな地肌ポテンシャルを作用させることから、頁全体の非画像部で地汚れを発生させ易くする。これに対し、条件Cでは、複数の区画のうち、ドット出力率が比較的低くて非画像部の割合が高い区画を現像する際には、直流電圧だけからなる規制バイアスを用いることから、地汚れを発生し難い。ドット出力率が比較的高くて画像部の割合が高い区画を現像する際には、重畳バイアスからなる規制バイアスを用いることから地汚れを発生させ易くなるが、非画像部の割合が低いことから、頁全体としてみるとその地汚れは目立ち難い。この結果、条件Cの方が地汚れの度合いを低くすることができているのである。
[第四具体例]
既に述べたように、累積プリント枚数が増加するにつれて、トナーの流動性が悪化して画像の後端側カスレが発生し易くなる。また、トナーの流動性の悪さが同じであれば、画像のドット出力率が高くなるにつれて、トナー消費量が増加して画像の後端側カスレが発生し易くなる。
そこで、第四具体例に係るプリンタにおいては、累積プリント枚数が増加したり、ドット出力率が増加したりするにつれて、規制バイアスの交流成分のピークツウピーク電位を大きくする処理を実施するように、電源制御部(153Y,M,C,K)を構成している。かかる構成では、「ブレード当接部入口近傍領域」でトナーが停滞し易くなるにつれて、ピークツウピーク電位の増大によってより大きなブレード微振動を発生させることで、トナーのブレード当接部に向けての流れをより促進する。これにより、画像の後端側カスレの発生をより確実に抑えることができる。
なお、ピークツウピーク電位を大きくするにつれて、ブレード当接部において放電によるトナーへの逆電荷の注入を引き起こし易くなり、これによって地汚れを発生させ易くなる。よって、累積プリント枚数やドット出力率が比較的低い場合には、ピークツウピーク電位を比較的小さな値に留めることが望ましい。
図8は、第四具体例に係るプリンタにおける重畳電圧からなる規制バイアスのピークツウピーク電位[V]とドット出力率と累積プリント枚数との関係を示すグラフである。累積プリント枚数が3000枚に達するまでは、例えドット出力率が100[%]であっても、画像の後端側カスレは発生せず、直流電圧だけからなる規制バイアスが用いられることから、同図ではピークツウピーク電位が0[V]と示されている。累積プリント枚数が3001枚以上になると、ドット出力率によっては重畳電圧からなる規制バイアスが用いられる。このとき、累積プリント枚数が3001〜4000枚の範囲であり、且つドット出力率が50[%]が超える場合には、規制バイアスの交流成分としてピークツウピーク電位=1.0[kV]のものが出力される。また、累積プリント枚数が4001〜10000枚であり、ドット出力率が40[%]を超え且つ75[%]以下である場合には、規制バイアスの交流成分としてピークツウピーク電位=1.25[kV]のものが出力される。また、累積プリント枚数が4001〜10000枚であり、且つドット出力率が75[%]を超える場合には、規制バイアスの交流成分としてピークツウピーク電位=1.5[kV]のものが出力される。また、累積プリント枚数が10001枚以上であり、ドット出力率が30[%]を超え且つ50[%]以下である場合にも、規制バイアスの交流成分としてピークツウピーク電位=1.5[kV]のものが出力される。また、累積プリント枚数が10001枚以上であり、且つドット出力率が50[%]を超える場合には、規制バイアスの交流成分としてピークツウピーク電位=2.0[kV]のものが出力される。
なお、交流成分の周波数については、ピークツウピーク電位にかかわらず1[kHz]としているが、ピークツウピーク電位の増加に伴って周波数を高くしてもよい。また、第二具体例に係るプリンタや、第三具体例に係るプリンタのように、仮想頁における複数の区画毎に規制バイアスを切り替える構成において、第四具体例の構成を適用してもよい。
[第一詳細例]
次に、第二具体例に係るプリンタに、より特徴的な構成を付加した第一詳細例について説明する。なお、以下に特筆しない限り、第一詳細例に係るプリンタの構成は、第二具体例と同様である。
図9は、仮想頁の一例を示す模式図である。同図における矢印A方向は感光体の表面移動方向を示している。画像データ処理部105は、Y,M,C,Kの各色についてそれぞれ次のようにしてドット出力率を算出する。即ち、まず、図中点線で示されるように、仮想頁を矢印A方向と直交する方向(=記録紙の紙面に沿いつつ紙搬送方向に直交する方向)に複数に区切って複数の区画を設定する。仮想頁は、画像の出力対象となる記録紙Pを機内での搬送姿勢と同じ姿勢にした場合の紙面と同じ姿勢の仮想領域である。例えば、縦搬送されるA4サイズ紙に画像を形成する場合、仮想頁は、長手方向を搬送方向に沿わせたA4サイズの紙面と同じ姿勢の仮想領域である。このような仮想頁を複数の区画に分けるのである。区画の幅については、次の理由によって4[mm]にすることが望ましい。即ち、幅4[mm]以下の縦帯ベタ画像を現像する際には、現像ローラ(11Y,M,C,K)表面の縦帯ベタ画像を現像する領域(縦帯現像域)に対し、左右の領域のトナーが流れ込み易い。更に、現像後の縦帯現像域がトナー供給ローラ(10Y,M,C,K)に進入した際に、トナー供給ローラにおける左右の領域のトナーが縦帯現像域に補給され易い。これらの結果、幅4[mm]以下の縦帯ベタ画像では後端側カスレが発生し難い。また、区画の幅が4[mm]よりも大きいと、画像に縦帯ベタ部が含まれる場合に、縦帯ベタ部であるにもかかわらず、区画のドット出力率が比較的低く算出されるおそれがある。よって、区画の幅については4[mm]にすることが望ましい。
画像データ処理部105は、仮想頁を複数に区画したら、それぞれの区画(△x1,△x2・・・△xn)におけるドット出力率(区画内出力ドット総数/区画内全画素数)を算出する。そして、それら算出結果(η1,η2・・・ηn)のうち、最大値を最大ドット出力率ηmaxと定義し、複数の区画のうち、最大ドット出力率ηmaxに対応する区画である「最大出力区画」について、次のような処理を行う。即ち、仮想頁における感光体表面移動方向(矢印A方向)の下流端(頁先端)から上流端側に向けて出力ドット数を累計した場合に累計結果が出力ドット総数の1[%]になる第一位置y1を特定し、前記下流端から第一位置y1までの領域を第一領域△y1とする。また、仮想頁における感光体表面移動方向の上流端(頁後端)から下流端に向けて出力ドット数を累計した場合に累計結果が出力ドット総数の1[%]になる第二位置y2を特定し、前記上流端から第二位置y2までの領域を第三領域△y3とする。また、第一位置y1と第二位置y2との間の領域を第二領域△y2とする。「最大出力区画」の全域のうち、第二領域y2においてドット出力率が特に高くなるので、区画内の第二領域△y2だけでドット出力率を再算出し(第二領域内出力ドット総数/第二領域内全画素数)、その結果を補正後最大ドット出力率ηmax’とする。「最大出力区画」であっても、感光体表面移動方向の一部の領域だけにベタ画像部が集中している場合には、最大ドット出力率ηmaxが比較的低い値になってしまうが、補正後最大ドット出力率ηmax’は比較的高い値になる。画像データ処理部105は、このような補正後最大ドット出力率ηmax’の算出を、Y,M,C,Kの各色についてそれぞれ個別に実施する。そして、求めた補正後最大ドット出力率ηmax’、第一位置y1、及び第二位置y2の情報を電源制御部(153Y,M,C,K)に送信する。
電源制御部153Y,153M,153C,153Kは、画像データ処理部105から送られてきた補正後最大ドット出力率ηmax’が切替基準値と同等以下である場合には、規制バイアスとして直流電圧だけからなるものを用いることを決定する。これに対し、切替基準値と同等以下でない場合には、規制バイアスとして重畳電圧からなるものを用いることを決定する。かかる構成では、次のような場合であっても、規制バイアスとして重畳電圧からなるものを適切に選択して画像の後端側カスレの発生を抑えることができる。即ち、「最大出力区画」内で感光体表面移動方向の一部の領域にベタ画像部が集中していて最大ドット出力率ηmaxが切替基準値を上回らない場合である。
なお、補正後最大ドット出力率ηmax’について切替基準値以下であるか否かを判定することに加えて、第一位置y1と第二位置y2との距離について閾値以上であるか否かを判定して、重畳電圧にするのか直流電圧にするのかを決定するようにしてもよい。この場合、規制バイアスとして重畳電圧からなるものをより適切に選択して画像の後端側カスレの発生をより確実に抑えることができる。
電源制御部153Y,153M,153C,153Kは、プリントジョブ中において、書込制御部107から送られてくるページ同期信号に基づいて、第二領域現像開始タイミングや第二領域現像終了タイミングを算出する。第二領域現像開始タイミングは、感光体2Y,2M,2C,2Kの表面移動方向における全域のうち、第二領域△y2に相当する領域の先端が現像ローラ11Y,11M,11C,11Kとの当接部に進入するタイミングである。また、第二領域現像終了タイミングは、第二領域△y2に相当する領域の後端が前記当接部から出るタイミングである。電源制御部153Y,153M,153C,153Kは、重畳電圧からなる規制バイアスを用いることを決定した場合には、第二領域現像開始タイミングよりも所定時間だけ早いタイミングが到来した時点で、規制バイアスを直流電圧から重畳電圧に切り替える。その後、第二領域現像終了タイミングよりも所定時間だけ早いタイミングが到来した時点で、規制バイアスを重畳電圧から直流電圧に切り替える。
かかる構成では、画像を現像する現像期間内で、必要な時期だけ規制バイアスとして重畳電圧からなるものを用いることで、規制ブレード12Y,12M,12C,12Kの微振動による騒音の発生をより抑えることができる。
なお、第二領域現像終了タイミングを参照する代わりに、第二領域後端現像開始タイミングを参照するようにしてもよい。第二領域後端現像開始タイミングは、第二領域の後端が現像ローラ11Y,11M,11C,11Kとの当接部に進入するタイミングである。また、第二領域現像開始タイミング、第二領域現像終了タイミング、第二領域後端現像開始タイミングで、規制バイアスの切り替えを行わせるようにしてもよい。
[第二詳細例]
次に、第三具体例に係るプリンタに、より特徴的な構成を付加した第二詳細例について説明する。なお、以下に特筆しない限り、第二詳細例に係るプリンタの構成は第三具体例に係るプリンタと同様である。
上述した第三具体例に係るプリンタにおいて、画像部を現像している最中に規制バイアスを切り替えたとする。すると、現像ローラ(11Y,M,C,K)の回転ムラや、現像ローラへのトナー供給量のムラが発生して、ローラ軸線方向に延在するスジ状の画像濃度ムラを引き起こしてしまうおそれがある。
そこで、第二詳細例に係るプリンタにおいては、Y,M,C,Kの各色についてそれぞれ、仮想頁を感光体表面移動方向に等間隔に区画するのではなく、次のように区画するように、画像データ処理部105を構成している。即ち、図11に示されるように、感光体表面移動方向(矢印A方向)にて画像部が存在する画像部あり区画と画像部が存在しない画像部なし区画とに区分けする。より詳しくは、まず、仮想頁の第一画素ラインについてドット出力画素を含むものであるか否かを判定する。画素ラインは、主走査方向において頁全域に渡って並ぶ複数の画素からなる1画素分の幅の画素ラインである。第一画素ラインは、頁先端に存在する1番目の画素ラインである。画像データ処理部105は、この第一画素ラインについて、複数の画素のうち、ドット出力画素が一つでも存在する場合にはドット出力画素を含むものであると判定し、ドット出力画素が一つも存在しない場合にはドット出力画素を含まないものであると判定する。同様の判定を全ての画素ラインについてそれぞれ実施する。そして、感光体表面移動方向において、ドット出力画素を含まない画素ラインが連続している領域を画像部なし区画とする一方で、ドット出力画素を含む画素ラインが連続している領域を画像部あり区画とする。このようにして仮想頁を区画したら、次に、個々の画像部あり区画についてそれぞれドット出力率を算出したり、個々の画像部あり区画についてそれぞれ、頁先端からの区画先端位置及び区画後端位置を特定したりする。そして、電源制御部(153Y,M,C,K)に対して、個々の画像部あり区画におけるドット出力率、区画先端位置及び区画後端位置の情報を送信する。
電源制御部153Y,153M,153C,153Kは、画像データ処理部105から送られてきた複数の画像部あり区画について、区画内のドット出力率が切替基準値と同等以下である場合には直流電圧だけからなる規制バイアスを用いることを決定する。これに対し、区画内のドット出力率が切替基準値と同等以下でない場合には重畳電圧からなる規制バイアスを用いることを決定する。そして、プリントジョブ中において、それぞれの画像部あり区画について、書込制御部107から送られてくるページ同期信号と、区画先端位置と、区画後端位置とに基づいて、現像開始タイミングや現像終了タイミングを把握する。その現像開始タイミングから所定時間だけ早いタイミングで規制バイアスを予め決定しておいたものと同じにし、現像終了タイミングから所定時間だけ早いタイミングで規制バイアスを直流電圧だけからなるものに切り替える。
かかる構成では、画像部を現像している最中に規制バイアスを切り替えることがないので、規制バイアスの切り替えに起因するスジ状の画像濃度ムラの発生を回避することができる。
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[態様A]
態様Aは、潜像担持体(例えば感光体2Y,M,C,K)と、自らの表面上のトナーによって前記潜像担持体上の潜像を現像するトナー担持体(例えば現像ローラ11Y,M,C,K)、及び前記トナー担持体の表面に当接して前記表面上のトナー層厚を規制する規制部材(例えば規制ブレード12Y,M,C,K)を具備する現像手段(例えば5Y,M,C,K)と、前記規制部材に印加するための規制バイアスを出力する規制電源(例えば規制電源154Y,M,C,K)とを備える画像形成装置(例えばプリンタ)において、前記規制バイアスとして、直流電圧に交流電圧を重畳した重畳電圧からなるものを出力するように、前記規制電源を構成したことを特徴とするものである。
かかる構成においては、規制部材に対して重畳電圧からなる規制バイアスを印加することで、規制部材を重畳電圧の交流成分によって微振動させる。この微振動により、トナー担持体と規制部材との当接部よりも上流側の当接部入口近傍領域で停滞しようとするトナーの当接部に向けての流れを促して、当接部に対してトナーを滞りなく供給する。これにより、当接部入口近傍領域におけるトナーの停滞によって、高画像面積率の画像の後端側を現像する際にトナー担持体に対するトナー供給量を不足させてしまうことに起因する後端側カスレの発生を抑えることができる。
[態様B]
態様Bは、態様Aにおいて、前記規制バイアスとして、前記重畳電圧からなるものと、直流電圧だけからなるものとを切り替えて出力するように、前記規制電源を構成し、且つ、出力画像のドット出力率を算出する算出手段(例えば画像データ処理部105)と、前記算出手段による算出結果が比較的高い値である場合に前記規制電源から重畳電圧からなる前記規制バイアスを出力させる一方で、前記算出手段による算出結果が比較的高い値でない場合に前記規制電源から直流電圧だけからなる前記規制バイアスを出力させる制御手段(例えば電源制御部153Y,M,C,K)とを設けたことを特徴とするものである。かかる構成では、不要なタイミングで重畳電圧からなる規制バイアスを規制部材に印加することによる騒音の発生を抑えることができる。
[態様C]
態様Cは、態様Bにおいて、累積運転時間又は前記累積運転時間に相関する所定のパラメータを積算する積算手段(例えばメイン制御部100)を設け、且つ、前記積算手段による積算結果が大きくなるにつれて、前記算出手段による算出結果について比較的高い値であるか否かを判定するための判定基準値をより小さい値に変更するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、トナーの流動性の悪化度合いにかかわらず、後端側カスレを発生させる可能性の高い画像を現像するときだけ、重畳電圧からなる規制バイアスを用いて騒音の発生を抑えることができる。
[態様D]
態様Dは、態様B又はCにおいて、重畳電圧からなる前記規制バイアスにおける直流電圧の絶対値を、直流電圧だけからなる前記規制バイアスにおける前記直流電圧の絶対値よりも小さくすることを特徴とするものである。かかる構成では、重畳電圧からなる規制バイアスを用いる際の画像濃度過多の発生を抑えることができる。
[態様E]
態様Eは、態様B〜Dの何れかであって、前記トナー担持体に印加するための現像バイアスを出力する現像電源(例えば現像電源151Y,M,C,K)を備え、且つ、重畳電圧からなる前記規制バイアスを前記規制電源から出力する場合に、直流電圧だけからなる前記規制バイアスを前記規制電源から出力する場合に比べて、前記現像バイアスの直流電圧の絶対値を小さくすることを特徴とするものである。かかる構成においても、重畳電圧からなる規制バイアスを用いる際の画像濃度過多の発生を抑えることができる。
[態様F]
態様Fは、態様B〜Eの何れかであって、前記トナー担持体に印加するための現像バイアスを出力する現像電源を備え、前記重畳電圧のピークツウピーク電圧が前記現像バイアスの直流電圧と前記潜像の電位との電位差の10倍以上であり、且つ、前記規制部材が金属からなるものであることを特徴とするものである。かかる構成では、重畳電圧からなる規制部材を用いることによる画像の後端側カスレの発生の抑制を確実なものにすることができる。更には、非金属からなる規制部材を用いる場合に比べて、規制部材の微振動によるトナーの流れの促進を確実なものにすることができる。
[態様G]
態様Gは、態様B〜Fの何れかにおいて、前記トナー供給体に印加するための供給バイアスを出力する供給電源(例えば供給電源152Y,M,C,K)を設け、且つ、前記ドット出力率が高くなるほど、前記供給電源から出力される供給バイアスの直流電圧の絶対値を大きくするように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、供給バイアスの増加によってトナー供給体からトナー担持体へのトナー供給量を増加させることで、画像の後端側カスレの発生を抑えることができる。
[態様H]
態様Hは、態様B〜Gの何れかにおいて、出力画像を表現する仮想頁を前記潜像担持体の表面移動方向と直交する方向に複数に区画し、それぞれの区画におけるドット出力率を算出し、算出結果のうち、最大のドット出力率に基づいて、前記規制電源から出力させる前記規制バイアスについて、直流電圧だけからなるものにするのか、あるいは重畳電圧からなるものにするのかを決定するように、前記算出手段及び前記制御手段の組み合わせを構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、頁全体のドット出力率に基づいて規制バイアスの種類を決定する場合に比べて、画像の後端側カスレを発生させる可能性のある画像とそうでない画像との仕分けをより正確に行うことができる。
[態様I]
態様Iは、態様Hにおいて、前記規制バイアスとして重畳電圧からなるものを用いることを決定した場合には、複数の前記区画のうち、ドット出力率の最も高い最大出力区画について、前記潜像担持体の表面移動方向の頁下流端から頁上流端側に向けて出力ドット数を累計した場合に累計結果が前記最大出力区画における全出力画素数の所定比率になる第一位置にあるドットの現像を開始するタイミングに基づいて前記規制バイアスを直流電圧から重畳電圧に切り替えた後、頁上流端から頁下流端側に向けて出力ドット数を累計した場合に累計結果が前記最大出力区画における全出力ドット数の所定比率になる第二位置にあるドットの現像を開始するタイミング又は終了するタイミングに基づいて前記規制バイアスを重畳電圧から直流電圧に切り替えるように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、不要なタイミングで重畳電圧からなる規制バイアスを規制部材に印加することによる騒音の発生を更に低減することができる。
[態様J]
態様Jは、態様B〜Gの何れかにおいて、出力画像を表現する仮想頁について、前記潜像担持体の表面移動方向にて画像部が存在する画像部あり区画と画像部が存在しない画像部なし区画とに分けして、個々の画像部あり区画のドット出力率を算出するように、前記算出手段を構成し、個々の画像部あり区画のそれぞれを現像する際に、その画像部あり区画のドット出力が比較的高い値である場合には重畳電圧からなる前記規制バイアスを前記規制電源から出力させる一方で、比較的高い値でない場合には直流電圧だけからなる前記規制バイアスを前記規制電源から出力させるように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、不要なタイミングで重畳電圧からなる規制バイアスを規制部材に印加することによる騒音の発生を低減することができる。