JP6531777B2 - エンジンの制御方法及びエンジンの制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、エンジンの制御方法及びエンジンの制御装置に関し、特に、エンジンにおける吸排気バルブとバルブシートとの間でのデポジット噛み込みを検出するための技術に関する。
エンジンは、燃焼室内に燃料と空気とを送り込み、燃焼室内で生じる燃焼により駆動される。エンジンにおいては、吸気バルブとバルブシートとの間にデポジットが噛み込むことがある。例えば、特許文献1には、吸気通路に付着したデポジットが何らかの拍子に剥がれ、燃焼室方向に流れ、吸気バルブとバルブシートの間に噛み込むことがあるとの記載がなされている。
吸気バルブとバルブシートとの間にデポジットが噛み込んだ場合には、圧縮漏れを起こすことになる。圧縮漏れは、着火不良の原因となる。このため、吸気バルブとバルブシートとの間へのデポジットの噛み込みによる圧縮漏れを検出する方法の開発が要望されている。
特許文献2には、デポジットの噛み込みによる圧縮漏れを検出するための方法が開示されている。特許文献2には、着火始動時に初爆の後に燃焼が行われるサイクルにおいて、圧縮端でのクランク角度に基づいて圧縮漏れを検出する方法が開示されている。
特開2015−117661号公報 特開2015−166554号公報 特開2011−236826号公報
しかしながら、特許文献2に開示の技術は、デポジットの噛み込みによる圧縮漏れが生じた状態でエンジンを停止することが生じ得るので、エンジンの再始動が困難となることが危惧される。即ち、特許文献2の技術は、エンジン始動時の2サイクル目とエンジン回転数が比較的低い状態で圧縮漏れを検出するものであるので、当該技術では、車両の走行中に高い確率で生じると考えられるデポジットの噛み込みを検出することが難しく、デポジットが噛み込んだ状態でドライバがエンジンを停止した場合に、エンジンの再始動が困難となる。
なお、上記では、吸気バルブとバルブシートとの間へのデポジットの噛み込みに起因する圧縮漏れについて説明したが、排気バルブとバルブシートとの間にデポジットが噛み込んだ場合にも上記同様の問題が生じることとなる。
本発明は、上記のような問題の解決を図ろうとなされたものであって、車両の走行中において、吸排気バルブとバルブシートとの間へのデポジットの噛み込みを高精度に推定することができるエンジンの制御方法及びエンジンの制御装置を提供することを目的とする。
本発明の一態様に係るエンジンの制御方法は、車両のエンジンの制御方法において、車両の走行時、アクセルオフに伴うフューエルカット中か否かを判定するフューエルカット判定ステップと、フューエルカット中であると判定されたときに、クランク角センサからのクランク角速度情報に基づき、吸気バルブ及び排気バルブの少なくとも一方と、バルブシートとの間へのデポジットの噛み込みの有無を推定するデポジット付着推定ステップと、デポジット付推定ステップにおいてデポジットの噛み込み有りと推定されたときに、前記デポジットを除去するための動作を開始するデポジット除去ステップと、を備え、前記デポジット付着推定ステップは前記クランク角センサからのクランク角速度情報に基づき、前記エンジンにおける圧縮行程中又は当該圧縮工程からその直後の膨張行程に跨った第1クランク角範囲の通過に要する第1通過時間を算出する第1通過時間算出サブステップと、前記クランク角センサからのクランク角速度情報に基づき、前記エンジンにおける前記圧縮行程直後の膨張行程でのクランク角範囲であって第1クランク角範囲と同角度の第2クランク角範囲の通過に要する第2通過時間を算出する第2通過時間算出サブステップと、前記第1通過時間の前記第2通過時間に対する比が1を超える所定の閾値以下となる場合に、圧縮漏れがあるとしてこれをデポジットの噛み込み有りと推定する一方、前記比が前記閾値を超える場合に、デポジットの噛み込み無しと推定する推定サブステップと、を有し、前記デポジット除去ステップにおける前記動作は、デポジットを除去可能な筒内圧が得られるように、デポジットの噛み込み有りと推定される以前よりも吸気圧力を高める動作である
上記態様に係るエンジンの制御方法では、デポジット付着推定ステップにおいて、クランク角センサからのクランク角速度情報に基づいてデポジットの噛み込みの有無を推定するので、高い精度でのデポジット噛み込み推定が実行できる。即ち、気筒内に設けた圧力センサからの圧力情報に基づきデポジットの噛み込みの有無を推定する場合などに比べて、上記態様に係るエンジンの制御方法では、微小なデポジットが噛み込んだ場合にも高精度に推定がなされる。
また、上記態様に係るエンジンの制御方法では、フューエルカット中であるときに取得したクランク角速度情報に基づいて、デポジットの噛み込みの有無を推定するので、燃焼によるトルク変動の影響を受けず、微小量のデポジットの噛み込みであっても高い精度で推定することができる。ここで、微小量のデポジットの噛み込みの有無を推定できれば、早期にデポジット除去処理を実行することにより、圧縮漏れによる着火不良を未然に防ぐことができる。このような微小量のデポジットの噛み込みを車両の走行中に推定するためには、燃焼によるトルク変動の影響を抑えるか無くすことが重要となる。この点において、上記態様に係るエンジンの制御方法は、優れている。
特に、第1通過時間の第2通過時間に対する比(クランク角速度比)に基づき、デポジットの噛み込みの有無を推定するので、エンジンの回転数が高い状態であっても高い精度を以ってデポジットの噛み込みの有無を推定することができる。
従って、上記態様に係るエンジンの制御方法は、車両の走行中において、吸排気バルブとバルブシートとの間へのデポジットの噛み込みを高精度で推定できる。
上記態様のエンジンの制御方法において、前記デポジット除去ステップにおける前記吸気圧力を高める動作は、吸気通路に設けられた吸気シャッターバルブの開度を、デポジットの噛み込み有りと推定される以前よりも大きくすることである。
また、上記各態様のエンジンの制御方法において、前記デポジット付着推定ステップは所定のサイクルで実行されるものであって、当該制御方法は、さらに、前記デポジット付着推定ステップにおいて噛み込み有りと推定された回数をカウントする第1カウントステップと、前記デポジット付着推定ステップにおいて噛み込み無しと推定された回数をカウントする第2カウントステップと、前記第1カウントステップにおけるカウント値が予め設定された第1カウント値以上となったときにデポジット除去実行フラグを設定するフラグ設定ステップと、前記第2カウントステップにおけるカウント値が予め設定された第2カウント値以上となりかつ前記デポジット除去実行フラグが設定されている場合に、当該設定を解除するフラグ解除ステップと、を含み、前記デポジット除去ステップは、前記デポジット除去実行フラグが設定されている間実行され、前記デポジット除去実行フラグが解除されると停止される。
上記態様に係るエンジンの制御方法では、車両の走行中において、筒内圧の増大によりデポジットの除去を行うことができる。これより、着火不良を抑制することができ、また、エンジンの良好な再始動性を確保することができる。
本発明の一態様に係るエンジンの制御装置は、車両のエンジンの制御装置において、開閉動作により前記エンジンの燃焼室への燃料噴射量を調節する燃料噴射弁と、前記エンジンのクランク角速度を検出するクランク角センサと、前記クランク角センサからの前記クランク角速度に係る情報を取得するとともに、前記燃料噴射弁の弁開度を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、車両の走行時、アクセルオフに伴うフューエルカット中に取得した前記クランク角センサからのクランク角速度情報に基づき、吸気バルブ及び排気バルブの少なくとも一方と、バルブシートとの間へのデポジットの噛み込みの有無を推定する推定処理を実行するとともに、デポジットの噛み込み有りと推定したときに、前記デポジットを除去するためのデポジット除去処理を開始するものであり、前記推定処理は、前記クランク角センサからのクランク角速度情報に基づき、前記エンジンにおける圧縮行程中又は当該圧縮工程からその直後の膨張行程に跨った第1クランク角範囲の通過に要する第1通過時間を算出する第1通過時間算出処理と、前記クランク角センサからのクランク角速度情報に基づき、前記エンジンにおける前記圧縮行程直後の膨張行程でのクランク角範囲であって第1クランク角範囲と同角度の第2クランク角範囲の通過に要する第2通過時間を算出する第2通過時間算出処理と、前記第1通過時間の前記第2通過時間に対する比が1を超える所定の閾値以下となった場合に、圧縮漏れがあるとしてこれをデポジットの噛み込み有りと推定する一方、前記比が前記閾値を超える場合に、デポジットの噛み込み無しと推定する推定サブ処理と、を含み、前記デポジット除去処理は、デポジットを除去可能な筒内圧が得られるように、デポジットの噛み込み有りと推定される以前よりも吸気圧力を高めるための制御を実行する処理である
上記態様に係るエンジンの制御装置では、制御部は、クランク角センサからのクランク角速度情報に基づいてデポジットの噛み込みの有無を推定するので、高い精度でのデポジット噛み込み推定が実行できる。即ち、気筒内に設けた圧力センサからの圧力情報に基づきデポジットの噛み込みの有無を推定する場合などに比べて、上記態様に係るエンジンの制御装置では、微小なデポジットが噛み込んだ場合にも高精度に推定がなされる。
特に、制御部は、第1通過時間の第2通過時間に対する比(クランク角速度比)に基づき、デポジットの噛み込みの有無を推定するので、エンジンの回転数が高い状態であっても高い精度を以ってデポジットの噛み込みの有無を推定することができる。
また、上記態様に係るエンジンの制御装置では、フューエルカット中に取得したクランク角速度情報に基づいて、デポジットの噛み込みの有無が推定されるので、燃焼によるトルク変動の影響を受けず、微小量のデポジットの噛み込みであっても高い精度での推定が可能である。
従って、上記態様に係るエンジンの制御装置は、車両の走行中において、吸排気バルブとバルブシートとの間へのデポジットの噛み込みを高精度に推定することができる。
上記態様のエンジンの制御装置において、前記デポジット除去処理における前記吸気圧力を高めるための制御は、吸気通路に設けられた吸気シャッターバルブの開度が、デポジットの噛み込み有りと推定される以前よりも大きくなるように当該吸気シャッターバルブを制御することである。
また、上記各態様のエンジンの制御装置において、前記制御部は、前記推定処理を所定のサイクルで実行するとともに、噛み込み有りと推定された回数をカウントする第1カウント処理と、噛み込み無しと推定された回数をカウントする第2カウント処理と、前記第1カウント処理におけるカウント値が予め設定された第1カウント値以上となったときにデポジット除去実行フラグを設定するフラグ設定処理と、前記第2カウント処理におけるカウント値が予め設定された第2カウント値以上となりかつ前記デポジット除去実行フラグが設定されている場合に、当該設定を解除するフラグ解除処理と、をさらに実行し、前記デポジット除去実行フラグが設定されている間、前記デポジット除去処理を実行し、前記デポジット除去実行フラグが解除されると前記デポジット除去処理を停止する。
上記の各態様では、車両の走行中において、吸排気バルブとバルブシートとの間へのデポジットの噛み込みを高精度に推定することができる。
実施形態1に係るエンジン1の構成とPCM2とを示す模式図である。 制御システムの構成を示す模式図である。 エンジン本体10の一部構成を示す模式断面図である。 クランクプレート19の構成を示す模式斜視図である。 クランク角センサSNS1から入力されるパルス信号をクランク角の変化軸上で示す図である。 PCM2が実行するデポジット付着判定及びデポジット除去の各制御方法を示すフローチャートである。 燃料噴射量の変化とデポジット付着判定の実行期間との関係を示すタイミングチャートである。 実施形態2に係るエンジンにおける燃料噴射量の変化とデポジット付着判定の実行期間との関係を示すタイミングチャートである。 実施形態3に係るエンジンにおける燃料噴射量の変化とデポジット付着判定の実行期間との関係を示すタイミングチャートである。
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一態様であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
[実施形態1]
1.エンジン1の全体構成
本実施形態に係るエンジン1の全体構成について、図1を用い説明する。
図1に示すように、エンジン1は、エンジン本体10を備える。本実施形態において、エンジン本体10として多気筒(例えば、4気筒)のディーゼルエンジンを採用している。エンジン本体10は、複数の気筒11aを有するシリンダブロック11と、当該シリンダブロック11上に配設されたシリンダヘッド12と、シリンダブロック11下に配設されたオイルパン13と、を有している。なお、図1では、エンジン本体10における複数の気筒11aの内、1つの気筒11aのみを図示している。
エンジン本体11の各気筒11aには、ピストン14が上下方向に往復動可能なように設けられている。そして、各ピストン14の底面には、燃焼室14aを区画するキャビティが形成されている。
各ピストン14は、下部において、コンロッド14bを介してクランクシャフト15に連結されている。クランクシャフト15は、各ピストン14の上下方向への往復動により、図1の紙面に垂直な方向に延伸する中心軸回りに回転する。
クランクシャフト15には、当該クランクシャフト15と一体に回転するクランクプレート19が取り付けられている。そして、エンジン本体10には、クランクプレート19の回転角を検出するためのクランク角センサ(エンジン回転数センサ)SNS1が設けられている。これらについては、後述する。
シリンダヘッド12には、各気筒11aの燃焼室14aに開口する吸気ポート16及び排気ポート17が形成されている。また、シリンダヘッド12には、吸気ポート16の開閉を行う吸気バルブ21と、排気ポート17の開閉を行う排気バルブ22と、が設けられている。
また、シリンダヘッド12には、燃焼室14aに対して燃料を噴射するインジェクタ18が各気筒11aごとに設けられている。本実施形態では、エンジン本体10としてディーゼルエンジンを採用しているので、インジェクタ18からは、燃焼室14aに対して軽油を主成分とする燃料が噴射される。
インジェクタ18は、その先端に備わる噴口(燃料の噴射口)がピストン14の頂面のキャビティに臨むように配置されており、圧縮上死点(圧縮行程の終了点)の前後にわたる所定の期間中のタイミングに、燃焼室14aに対して燃料を噴射する。
図1に示すように、エンジン本体10の吸気ポート16には、吸気通路30が接続されている。また、エンジン本体10の排気ポート17には、排気通路40が接続されている。吸気通路30及び排気通路40は、それぞれエンジン本体10の側壁部分に接合されている。
エンジン本体10の燃焼室14aに対しては、外部から取り込まれた吸入空気が吸気通路30及び吸気ポート16を通して導入される。また、燃焼室14aからは、当該燃焼室14aで生成された燃焼ガス(排気ガス)が排気ポート17及び排気通路40を通して排出される。
吸気通路30中及び排気通路40中には、第1ターボ過給機61及び第2ターボ過給機62が介設されている。
第1ターボ過給機61は、吸気通路30中に配設されたコンプレッサ61aと、当該コンプレッサ61aと同軸で連結され、排気通路40中に配設されたタービン61bと、を有している。同様に、第2ターボ過給機62は、吸気通路30中に配設されたコンプレッサ62aと、当該コンプレッサ62aと同軸で連結され、排気通路40中に配設されたタービン62bと、を有している。
第1ターボ過給機61は、そのコンプレッサ61a及びタービン61bが、第2ターボ過給機62のコンプレッサ62a及びタービン62bよりも大きなサイズとなっている。即ち、吸気上流側に配置されている第1ターボ過給機61は、吸気下流側に配置されている第2ターボ過給機62よりも大型の過給機が採用されている。
第1ターボ過給機61及び第2ターボ過給機62は、排気エネルギーにより駆動され、吸入空気を圧縮する。即ち、エンジン1の運転中において、排気通路40を高温・高速の排気ガスが通過した場合には、その排気ガスのエネルギーにより各ターボ過給機61,62のタービン61b,62bが回転し、これにより同軸で連結されたコンプレッサ61a,62aが回転する。吸気通路30を通り導入される空気は、タービン61a,62aの回転に伴って圧縮されて高圧化される。そして、高圧化された空気がエンジン本体10の燃焼室14aへと送り込まれる。
吸気通路30は、吸気バイパス通路63を有している。吸気バイパス通路63は、第2ターボ過給機62のコンプレッサ62aをバイパスするための経路である。吸気バイパス通路63には、開閉可能な吸気バイパスバルブ63aが設けられている。
吸気通路30の上流端部には、エアクリーナー31が設けられている。エアクリーナー31は、吸気通路30に取り込む空気を濾過するものである。
吸気通路30には、第2ターボ過給機62よりも吸気下流側に、インタークーラー35及び吸気シャッターバルブ36が順に設けられている。インタークーラー35は、第1ターボ過給機61及び第2ターボ過給機62により圧縮された空気を冷却するためのものである。吸気シャッターバルブ36は、エンジン本体10の運転中には基本的に全開若しくはそれに近い開度に維持され、エンジン本体10の停止時等の必要時にのみ閉弁される。
吸気通路30は、吸気下流端部にサージタンク33を有する。なお、詳細な図示をしていないが、吸気通路30において、サージタンク33よりも吸気下流側は、気筒11aごとに分岐した独立通路となっており、各独立通路の下流端が各気筒11aの吸気ポート16にそれぞれ接続されている。
排気通路40は、第1排気バイパス通路65と、第2排気バイパス通路66と、を有する。第1排気バイパス通路65は、第2ターボ過給機62のタービン62bをバイパスするための通路である。第2排気バイパス通路66は、第1ターボ過給機61のタービン61bをバイパスするための通路である。
第1排気バイパス通路65には、開閉可能なレギュレートバルブ65aが設けられている。第2排気バイパス通路66には、同じく開閉可能なウェストゲートバルブ66aが設けられている。
排気通路40には、第1ターボ過給機61のタービン61bよりも排気下流側に排気浄化装置41が設けられている。排気浄化装置41よりも排気下流側には、図示を省略している排気サイレンサが設けられている。
排気浄化装置41は、DOC(Diesel Oxidation Catalyst)41aと、DPF(Diesel Particulate Filter)41bとの組み合わせにより構成されている。DOC41aとDPF41bとは、排気の流れ方向に直列に配置されており、DOC41aがDPF41bに対して排気上流側に配置されている。DOC41aは、通過する排気ガス中の一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)を酸化するものであり、DPF41bは、通過する排気ガス中に含まれる煤等の粒子状物質を捕集するものである。
詳細な図示をしていないが、排気通路40において、第1排気バイパス通路65の排気上流側の分岐点よりも上流側は、排気マニホールドとなっている。排気マニホールドは、各気筒11aの排気ポート17に接続される独立通路部と、各独立通路部が集合する集合部とを含み構成されている。
吸気通路30におけるサージタンク30の吸気上流側の箇所と、排気通路40における第2ターボ過給機62のタービン62bの排気上流側の箇所と、の間には、EGR通路51が設けられている。EGR通路51には、当該EGR通路51内を流通するEGRガスを冷却するためのEGRクーラ52と、EGR通路51内のEGRガスの流通量(排気ガスの還流量)を調整するためのEGRバルブ51aが設けられている。
また、EGR通路51に対しては、EGRバイパス通路53が並列に設けられている。EGRバイパス通路53は、EGRクーラ52をバイパスするための通路であって、EGRバイパスバルブ53aが設けられている。
図1に示すように、エンジン1には、当該エンジン1から各種センサ情報を取得し、各バルブ等を制御するPCM(Powertrain Control Module)2が付設されている。PCM2は、CPU、メモリ、カウンタタイマ類、及びI/F等を有するマイクロプロセッサにより構成されている。
2.制御システム
本実施形態に係るエンジン1を制御するための制御システムについて、図2を用い説明する。
図2に示すように、エンジン1の制御部であるPCM2には、クランク角センサ(エンジン回転数センサ)SNS1からのクランク角速度情報、吸気圧センサSNS2からの吸気圧情報、車速センサSNS3からの車速情報、ブレーキ圧センサSNS4からのブレーキ圧情報、ギヤポジションセンサSNS5からのギヤポジション情報、水温センサSNS6からの水温情報、油圧センサSNS7からの油圧情報、吸気シャッターバルブポジションセンサSNS8からのシャッターバルブポジション情報、EGRバルブポジションセンサSNS9からのEGRバルブポジション情報を取得する。
PCM2は、取得した上記各センサ情報に基づいて、燃料噴射弁37の弁開度、吸気シャッターバルブ36の弁開度、トルクコンバータを含む変速機3、及びEGRバルブ51aを含むエンジン1の各種制御を実行する。
3.エンジン本体10における吸気バルブ21周りの構成
エンジン本体10における吸気バルブ21周りの構成について、図3を用い説明する。
図3に示すように、エンジン本体10の燃焼室14aに対しては、吸気ポート16と排気ポート17とが連通されている。吸気ポート16と燃焼室14aとの間には、その間の開閉を行う吸気バルブ21が設けられている。また、排気ポート17と燃焼室14aとの間には、その間の開閉を行う排気バルブ22が設けられている。
図3の拡大部分に示すように、吸気バルブ21は、弁体であるバルブ傘部21aと、軸体であるバルブ軸部21bとが一体形成されている。そして、吸気バルブ21が閉じた状態では、バルブ傘部21aの外周部がシリンダヘッド12のバルブシート12aに気密に当接することとなる。
ところで、吸気通路30の内壁面に付着したデポジットが、何らかの拍子に剥がれ、燃焼室14a方向に流れることがある。流れてきたデポジットは、その一部が吸気バルブ21のバルブ傘部21aとバルブシート12aとの間に噛み込むことが生じ得る。また、同様に、排気バルブ22とバルブシートとの間にデポジットが噛み込むことも生じ得る。
上記のように、吸気バルブ21や排気バルブ22とバルブシート12aとの間にデポジットが噛み込んだ場合には、圧縮漏れが生じ、着火不良の原因となる。そして、圧縮漏れが生じた状態でエンジンを停止した場合には、再始動が困難となる場合も生じ得る。
4.クランクプレート19の構成とクランク角速度情報の検出
クランクプレート19の構成とクランク角速度情報の検出について、図4及び図5を用い説明する。図4は、クランクプレート19の構成を示す模式斜視図である。図5は、クランク角センサSNS1から入力されるパルス信号をクランク角の変化軸上で示す図である。
先ず、図4に示すように、クランクプレート19は、円環状のプレートであって、クランクシャフト15と一体に軸芯Ax15回りに回転する。クランクプレート19の外周部分には、径方向外向きに複数の歯部19aが突出形成されている。ただし、周方向の一部には、歯部19aが形成されていない歯欠け部19bが設けられている(矢印Aで指し示す部分)。
なお、本実施形態に係るクランクプレート19においては、歯部19aが6°間隔で設けられている。即ち、クランク角センサSNS1が5つの歯部19aを検出することにより、クランクシャフト15が30°CAを検出することになる。
次に、図5に示すように、クランク角センサSNS1から入力されるパルス信号は、30°CAごとに、区間(クランク角範囲)Int1〜Int7,・・に区切られる。そして、各期間Int1〜Int7,・・の通過に要する時間T1〜T7,・・がPCM2で演算される。
なお、図5に示すように、本実施形態では、区間Int5中に圧縮上死点(TDC;Top Dead Center)が含まれている。また、図5では図示していないが、圧縮下死点(BDC;Bottom Dead Center)は、圧縮上死点TDCに対して180°CAずれた位置に設定されている。
ここで、PCM2において、燃料噴射量の算出は、区間Int1の終了タイミング(区間Int2の開始タイミング)で行われるようになっている。
また、吸気バルブ21や排気バルブ22とバルブシート12aとの間へのデポジットの噛み込みがなく、圧縮漏れがない状態では、圧縮上死点TDCを含む区間Int5の通過に要する時間T5は、その後の区間、例えば、区間Int7の通過に要する時間T7よりも長くなる。即ち、[数1]の関係を満たす。
[数1]T5>T7
これは、区間Int5においては、圧縮漏れがなく気筒11aの筒内圧が高くなるためにピストン14の上昇速度が遅くなることによるものである。
一方、吸気バルブ21や排気バルブ22とバルブシート12aとの間へのデポジットの噛み込みが発生し、圧縮漏れが生じている状態では、時間T5と時間T7との比が“1”に近付くこととなる。
本実施形態において、PCM2は、クランク角センサSNS1からのクランク角速度情報に基づき、時間T5と時間T7との比率が、予め設定された閾値(通常時よりも“1”に近い値)に近付いた場合に、吸気バルブ21や排気バルブ22とバルブシート12aとの間へのデポジットの噛み込みが発生していると判定する。
5.PCM2によるデポジット付着判定とデポジット除去制御
PCM2によるデポジット付着判定の具体的な方法について、図6を用い説明する。図6は、PCM2が実行するデポジット付着判定及びデポジット除去の各制御方法を示すフローチャートである。
図6に示すように、PCM2は、先ず、上記のように各センサSNS1〜SNS9からのセンサ情報を含む複数のセンサ情報を逐次取得する(ステップS1)。次に、PCM2は、車両の走行中において、アクセルオフに伴うフューエルカット(燃料噴射を停止)中か否かを判断する(ステップS2)。
なお、平坦路においては、車両の走行中にフューエルカットが実行されると、車両は減速することになる。ただし、下り坂などでは、必ずしも減速しない場合もあるが、ステップS2では、車両が必ずしも減速していない場合も含めてフューエルカットが実行されているか否かを判断する。
次に、PCM2は、ステップS2の判断において、フューエルカット中であると判断した場合には(ステップS2;Yes)、気筒11aにおける筒内圧縮状態を検出する(ステップS3)。この検出は、上記のように、クランク角速度情報に基づき、区間Int5の通過に要する時間T5と区間Int7の通過に要する時間T7との比を用い実行される。さらに具体的には、値(T5/T7)を算出することで筒内圧縮状態を検出する。
PCM2は、上記ステップS3で求めた値(T5/T7)を、予め設定された閾値と比較する(ステップS4)。そして、PCM2は、ステップS4での比較により吸気バルブ21及び排気バルブ22とバルブシート12aとの間へのデポジットの噛み込みがあると判定した場合には(ステップS5;Yes)、“デポジットの付着あり“とのカウント(m←m+1)を行う(ステップS6)。
PCM2は、ステップS6の後に、カウント値mが予め設定された所定の回数M以上であるか否かを判定する(ステップS7)。なお、所定の回数Mは、エンジン1の構成などを考慮の上、実験的あるいは経験的に設定された値である。
PCM2は、ステップS7において、“m≧M”であると判定した場合には(ステップS7;Yes)、デポジット除去実行フラグをセットし(ステップS8)、デポジット除去制御を実行する(ステップS8〜ステップS13)。
PCM2は、デポジット除去制御の1つとして、ロックアップ解除回転数をRL0からRL1に変更する(ステップS9)。通常のロックアップ解除回転数RL0よりも低い回転数RL1までロックアップ状態を維持し、これにより車輪の回転を利用してエンジン本体10の運転(クランクシャフト15の回転)を維持することで、噛み込んだデポジットを押し潰す(除去する)機会を増大させることができる。
なお、RLOは、例えば1200rpm程度であり、それに対して、RL1は、例えば、900rpm程度である。
また、PCM2は、デポジット除去制御の他の方法として、フューエルカット復帰回転数をRF0からRF1に変更する(ステップS10)。このように、通常のフューエルカット復帰回転数RF0よりも高いRF1とすることにより、フューエルカットの実行可能な時間を短くすることができ、これによって燃焼室14aにおける燃焼圧を利用してデポジットを押し潰す(除去する)機会を増大させることができる。
なお、RF0は、例えば900rpm程度であり、RF1は、例えば、1200rpm程度である。
また、PCM2は、デポジット除去制御の他の方法として、アイドルストップを禁止する(ステップS11)。これにより、アイドルストップを禁止することにより、圧縮漏れに起因するエンジン1の再始動失敗を抑制できるとともに、燃焼室14aにおける燃焼圧を利用してデポジットの除去を行うことができる。
また、PCM2は、デポジット除去制御の他の方法として、吸気シャッターバルブ36の開度を、通常の開度OV0よりも大きいOV1に変更する(ステップS12)。このように、吸気シャッターバルブ36の開度を通常よりも大きいOV1に変更することで、気筒11aにおける筒内圧を高めることができ、デポジットを押し潰す(除去する)ことができる可能性を高めることができる。
また、PCM2は、デポジット除去制御の他の方法として、EGRバルブ51aの弁開度を、通常の開度OE0よりも小さいOE1に変更する(ステップS13)。このように、EGRバルブ51aの弁開度を通常よりも小さいOE1に変更することで、吸気圧を高め吸気流速を利用して付着したデポジットを剥すことができる。また、EGRバルブ51aの弁開度をOE1とすることにより、気筒11aにおける筒内圧を高めることもでき、吸気バルブ21の閉弁中においてもデポジットを押し潰す(除去する)ことが可能となる。
なお、図1を用い説明したように、本実施形態に係るエンジン1では、EGRバイパス通路53も設けられているため、当該EGRバイパス通路53に設けられたEGRバイパスバルブ53aについても、その開度を小さくすることが望ましい。これにより、より一層効果的にデポジットを押し潰すことができる。
図6のフローチャートにおいては、ステップS9〜ステップS13を順序付けて図示しているが、実際には、PCM2がステップS7で“Yes”と判定すれば、ステップS9〜ステップS13の各デポジット除去制御を同時並行的に実施する。
次に、PCM2は、ステップS7で“No”と判定した場合には、リターンする。
また、PCM2は、ステップS5で“No”と判定した場合、即ち、吸気バルブ21及び排気バルブ22とバルブシート12aとの間へのデポジットの噛み込みがないと判定した場合には、“デポジットの付着なし“とのカウント(n←n+1)を行う(ステップS14)。
PCM2は、ステップS14の後に、カウント値nが予め設定された所定の回数N以上であるか否かを判定する(ステップS15)。なお、所定の回数Nについても、エンジン1の構成などを考慮の上、実験的あるいは経験的に設定された値である。
PCM2は、ステップS15において、“n≧N”であると判定した場合には(ステップS15;Yes)、デポジット除去実行フラグをリセットし(ステップS16)、デポジット除去制御を停止し、各種変更条件を元の条件へと復帰させる(ステップS17〜ステップS21)。
具体的には、ロックアップ解除回転数をRL1からRL0へと戻し(ステップS17)、フューエルカット復帰回転数をRF1からRF0へと戻し(ステップS18)、アイドルストップ禁止を解除し(ステップS19)、吸気シャッターバルブ開度をOV1からOV0へと戻し(ステップS20)、EGRバルブ開度をOE1からOE0へと戻す(ステップS21)。
なお、デポジット除去制御の実行により、EGRバイパスバルブ53aの弁開度を小さくしていた場合には、当該EGRバイパスバルブ53aの弁開度も元の開度へと復帰させる。
PCM2は、ステップS15で“No”と判定した場合には、リターンする。
また、PCM2は、ステップS2で“No”と判定した場合、即ち、エンジン1がフューエルカット中ではないと判定した場合には、デポジット除去制御が実行中であるか否かを判定する(ステップS22)。デポジット除去制御の実行中であると判定した場合には(ステップS22;Yes)、車両の車速vが予め設定された閾値以上であるか否かを判定する(ステップS23)。
PCM2は、ステップS23において、“v≧V”であると判定した場合には、ステップS16からステップS21を実行する。即ち、ステップS23で“Yes”と判定した場合には、既にデポジットの除去がなされたものとみなし、デポジット除去実行フラグをリセットし(ステップS16)、デポジット除去制御を停止し、各種変更条件を元の条件へと復帰させる(ステップS17〜ステップS21)。
これは、エンジン1がフューエルカット中ではなく、且つ、車速vが予め設定された所定の速度V以上である場合には、燃焼走行によりデポジットは除去されたものとみなせるためである。なお、所定の速度Vは、実験的又は経験的に設定された値であり、例えば、40km/h程度とすることができる。ただし、エンジン1の種類などにより、適宜の変更が可能である。
PCM2は、ステップS22及びステップS23で“No”と判定した場合には、リターンする。
6.デポジット付着判定の実行期間
本実施形態に係るPCM2によるデポジット付着判定の実行期間について、図7を用い説明する。図7は、燃料噴射量の変化等とデポジット付着判定の実行期間との関係の一例を示すタイミングチャートである。
図7に示すように、本一例では、タイミングtにおいて、吸気バルブ21とバルブシート12aとの間、及び排気バルブ22とバルブシート12aとの間、の少なくとも一方にデポジットが付着した状態にあると仮定する。
次に、タイミングtにおいて、ドライバがアクセルオフし、アクセル開度が略ゼロまで低下し、それとともに燃料噴射量がタイミングtに向かって漸減してゆく。燃料噴射は、タイミングtにカットされる。即ち、燃料噴射量がゼロとなる。
図7に示すように、クランク角速度比(T5/T7)は、アクセルオフしてもタイミングtまでの間は不安定な状態である。このため、PCM2に入力されるクランク角速度情報についても、ノイズ成分が含まれた状態となっている。
燃料噴射がカットされることにより、タイミングt以降においては、クランク角速度比(T5/T7)が安定するようになる。そして、本実施形態では、燃料噴射量がゼロとなったタイミングtの後、直ぐにタイミングtからデポジット付着判定を開始する。そして、PCM2は、燃料噴射量がゼロの状態が継続している期間中に取得したクランク角速度比(T5/T7)に基づき、デポジット付着判定を実行する。
本実施形態では、タイミングtにおいて、デポジットの噛み込みの有無の判定がなされる。
デポジットの噛み込みの有無の判定は、上述のように、クランク角速度比(T5/T7)が、予め設定された閾値RAth以下であるか否かにより行われる。即ち、クランク角速度比(T5/T7)が、予め設定された閾値RAth以下である場合には、デポジットが付着していると判定し、閾値RAthよりも大きい場合には、デポジットが付着していないと判定する。
なお、上述のように、閾値RAthは、“1”よりも少し大きい値とすることができる。詳細な値については、エンジンの特性等を考慮して規定することが可能である。
そして、タイミングtにおいてデポジット付着判定でデポジットが付着していると判定された場合には、図6に示すフローチャートのステップS8〜ステップS13のようなデポジット除去制御が実行される。
なお、図6のフローチャートで示したように、1回の燃料カット期間中にデポジット除去が完了しなかった場合には、次回の燃料カットの際までデポジット除去実行フラグを立てた状態で維持する。
本例においては、タイミングtにおいて、クランク角速度比(T5/T7)が閾値RAthよりも大きくなり、デポジット除去が完了したものと仮定する。この場合には、タイミングtで燃料カットが解除され、ドライバのアクセルオンに備える。
7.効果
本実施形態に係るPCM2は、クランク角センサSNS1からのクランク角速度情報に基づいてデポジットの噛み込みの有無を判定するので、高い精度でのデポジット噛み込み判定が実行できる。即ち、気筒内に設けた圧力センサからの圧力情報に基づきデポジットの噛み込みの有無を判定する場合などに比べて、本実施形態では、微小なデポジットが噛み込んだ場合にも高精度に判定がなされる。
また、本実施形態では、燃料噴射弁が閉状態となり燃料噴射量がゼロの状態で継続している期間中(タイミングt〜タイミングt)に取得されたクランク角速度情報(クランク角速度比)に基づき、PCM2はデポジットの噛み込みの有無を判定するので、燃焼によるトルク変動の影響を受けず、微小量のデポジットであっても高い精度で検出することができる。
よって、本実施形態では、微小量のデポジットの有無を検出することができ、早期にデポジット除去を実行することが可能となる。これより、エンジン1では、圧縮漏れによる着火不良を未然に防ぐことができる。
従って、本実施形態では、車両の走行中において、吸気バルブ21及び排気バルブ22とバルブシート12aとの間へのデポジットの噛み込みを高精度に検出することができる。
また、本実施形態では、車両の走行中において、アクセルオフに伴い燃料噴射弁を閉状態とし、燃料噴射量がゼロとなったタイミングtの後、燃料噴射量がゼロの状態で継続している期間中に取得したクランク角速度情報(クランク角速度比)に基づき、デポジットの噛み込みの有無を判定することができるので、車両が停止するまでの間にデポジット除去を実行することができる。よって、デポジットの噛み込みによるエンジン1の始動性の低下を抑制することができる。
また、本実施形態において、PCM2は、クランク角センサSNS1からのクランク角速度情報を取得し、これより算出されるクランク角速度比(T5/T7)に基づいてデポジットの噛み込みの有無を判定するので、高い精度でのデポジット噛み込み判定が実行できる。
また、本実施形態において、PCM2は、ピストン14が上昇する期間を含む区間Int5を通過する時間(T5)と、区間Int5の後において、ピストン14が下降する期間を含む区間Int7を通過する時間(T7)と、の比(クランク角速度比)に基づき、デポジットの噛み込みの有無を判定するので、エンジン本体10の回転数が高い状態であっても高い精度を以ってデポジットの噛み込みの有無を検出することができる。
なお、本実施形態では、区間Int5として、圧縮上死点TDCが含まれる区間を設定している。このように、区間Int5に圧縮上死点TDCを含むこととしているので、時間T5と時間T7との比(クランク角速度比T5/T7)による圧縮漏れの検出を高い精度を以って行うことができる。即ち、デポジットの噛み込みが実質的になく、圧縮漏れがない状態では、圧縮上死点TDCを含む区間Int5の通過時間T5は、その後におけるピストン14が下降する区間Int7の通過時間T7よりも長くなる。
これに対して、デポジットの噛み込みが所定量以上となり、圧縮漏れが発生している状態では、時間T5が圧縮漏れがない状態に比べて短くなり、圧縮漏れがない状態に比べてクランク角速度比T5/T7が“1”に近付くこととなる。本実施形態では、このような特徴に着目してデポジットの噛み込みの有無を判定するので、高精度での判定を行うことが可能となる。
[実施形態2]
実施形態2に係るPCMによるデポジット付着判定の実行期間について、図8を用い説明する。図8は、燃料噴射量の変化とデポジット付着判定の実行期間との関係の一例を示すタイミングチャートであり、上記実施形態1における図7の一部に相当する。
図8に示すように、本実施形態では、燃料噴射量が漸減する状態を一例として仮定する。そして、燃料噴射量は、タイミングt13において、予め設定された閾値FIth以下となる。
本実施形態に係るPCMは、燃料噴射量が閾値FIth以下となったタイミングt13の直後、即ち、タイミングt14からデポジット付着判定を実行する。PCMによるデポジット付着判定は、燃料噴射量が再び閾値FIthを超えるタイミングt15までの間に取得されたクランク角速度情報(クランク角速度比)に基づき、実行される。
本実施形態では、タイミングt14において、デポジットの噛み込みの有無が判定される。
なお、タイミングt15の前の時点で、デポジット除去が完了した場合には、一旦、デポジット付着判定制御を終了することもできる。
また、図8に示したタイミングを除き、構成及びPCMが実行する各種制御については、上記実施形態1と同様である。
本実施形態に係るPCMでも、クランク角センサSNS1からのクランク角速度情報に基づいてデポジットの噛み込みの有無を判定するので、高い精度でのデポジット噛み込み判定が実行できる。即ち、本実施形態でも、微小なデポジットが噛み込んだ場合にも高精度に判定がなされる。
また、本実施形態では、燃料噴射量が所定の(予め設定された)閾値FIth以下となった期間(タイミングt13の後の期間)に取得したクランク角速度情報(クランク角速度比)に基づき、デポジットの噛み込みの有無の判定を実行するので、燃焼によるトルク変動の影響を比較的受け難く、微小量のデポジットであっても高い精度で検出することができる。
従って、本実施形態でも、車両の走行中において、吸気バルブ21及び排気バルブ22とバルブシート12aとの間へのデポジットの噛み込みを高精度に検出することができる。
なお、燃料噴射量についての上記閾値FIthは、クランク角速度への影響が比較的小さい燃料噴射量を実験的又は経験的に求めておき、当該値を用いることが可能である。例えば、アイドル運転のための燃料噴射量を上記閾値として用いることなどが可能である。
なお、本実施形態では、図8に示したタイミングを除き、上記実施形態1と同じ構成を備え、同じ制御を実行するので、上記実施形態1と同様の効果も得ることができる。
[実施形態3]
実施形態3に係るPCMによるデポジット付着判定の実行期間について、図9を用い説明する。図9は、燃料噴射量の変化とデポジット付着判定の実行期間との関係の一例を示すタイミングチャートであり、上記実施形態1における図7の一部、及び上記実施形態2における図8に相当する。
図9に示すように、本実施形態でも、上記実施形態2と同様に、燃料噴射量が漸減する状態を一例として仮定する。そして、燃料噴射量の変化の範囲は、タイミングt23において、予め設定された範囲△FI内(以下)となる。
本実施形態に係るPCMは、燃料噴射量の変化の範囲が範囲△FI内となったタイミングt23からの期間中に取得したクランク角速度情報に基づき、デポジット付着判定を実行する。即ち、PCMによるデポジット付着判定は、燃料噴射量の変化の範囲が再び範囲△FIを超えるタイミングt25まで継続される。
本実施形態では、タイミングt24において、デポジットの噛み込みの有無を判定する。
なお、タイミングt25の前の時点で、デポジット除去が完了した場合には、一旦、デポジット付着判定制御を終了することもできる。
また、図9に示したタイミングを除き、構成及びPCMが実行する各種制御については、上記実施形態1あるいは上記実施形態2と同様とすることができる。
本実施形態に係るPCMでも、クランク角センサSNS1からのクランク角速度情報に基づいてデポジットの噛み込みの有無を判定するので、高い精度でのデポジット噛み込み判定が実行できる。
また、本実施形態に係るPCMは、燃料噴射量の変化が所定の(予め設定された)範囲△FI内となった期間(タイミングt23の後の期間)に取得したクランク角速度情報(クランク角速度比)に基づき、デポジットの噛み込みの有無の判定を実行するので、燃焼によるトルク変動の影響を比較的受け難く、微小量のデポジットであっても高い精度で検出することができる。
従って、本実施形態でも、車両の走行中において、吸気バルブ21及び排気バルブ22とバルブシート12aとの間へのデポジットの噛み込みを高精度に検出することができる。
なお、燃料噴射量についての上記範囲△FIは、クランク角速度への影響が比較的小さい燃料噴射量を実験的又は経験的に求めておき、当該範囲を用いることが可能である。
なお、本実施形態では、図9に示したタイミングを除き、上記実施形態1あるいは上記実施形態2と同じ構成を備え、同じ制御を実行するので、上記実施形態1あるいは上記実施形態2と同様の効果も得ることができる。
[変形例]
上記実施形態1,2,3では、2つのターボ過給機61,62を備えるエンジン1を一例としたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、1つのターボ過給機を備える構成を採用することもできるし、ターボ過給機を備えない、所謂、自然吸気エンジンを採用することもできる。
また、上記実施形態1,2,3では、EGR通路51やEGRバイパス通路53を備えるエンジン1を一例としたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。即ち、EGR通路やEGRバイパス通路は、必須の構成ではない。
また、上記実施形態1,2,3では、エンジン本体10としてディーゼルエンジンを一例としたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。即ち、ガソリンエンジンを採用することもできる。
また、上記実施形態1,2,3では、PCM2によるデポジット付着判定において、クランク角速度情報に基づく区間Int1〜Int7,・・の内、区間Int5を通過する時間T5と区間Int7を通過する時間T7とを用いてクランク角速度比(T5/T7)を算出することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、区間Int3や区間Int4などを通過する時間T3,T4と、区間Int6や区間Int7などを通過する時間T6,T7と、の比を採用することとしてもよい。
また、上記実施形態1等では、図6に示すフローチャートにおいて、ステップS2で「減速フューエルカット中」か否かを判定することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。アクセルオフに伴うフューエルカット中であれば、「減速中」か否かは必須の要件ではない。例えば、下り坂を走行中などにもデポジット付着判定を実行することとする場合には、ステップ2として、「アクセルオフに伴うフューエルカット中」か否かを判定要件とすることができる。
また、上記実施形態1等では、図6に示すフローチャートにおいて、ステップS13で「EGRバルブ開度」を小さくする(又はゼロとする)こととしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。即ち、上記実施形態1等のようにEGRバイパス通路53を備える場合には、EGRバルブ51aに加え、EGRバイパスバルブ53aについても開度を小さくする(又はゼロとする)ことが望ましい。これにより、排気ガスの略全量がターボ過給機61,62のタービン61b,62bが設けられた箇所を経由して排出されることとなり、より高圧の空気が吸気ポート16に供給されることとなる。よって、デポジット除去を行う上でより望ましい。
また、上記実施形態1等では、図6に示すフローチャートにおいて、ステップS9〜ステップS13のデポジット除去制御を実行することとしたが、本発明は、これら全てを実行することは必須ではなく、あるいは、他のデポジット除去を促進できる制御を付加して実行することも可能である。
また、上記実施形態1等では、燃料噴射量がゼロとなった、あるいは所定量より少なくなった期間中に、デポジットの噛み込みの有無の判定も実行することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、燃料噴射量がゼロとなった、あるいは所定量より少なくなった期間中に取得されたクランク角速度情報に基づき、当該期間の後にデポジットの噛み込みの有無を判定することとしてもよい。
1 エンジン
2 PCM
10 エンジン本体
12a バルブシート
19 クランクプレート
21 吸気バルブ
21a バルブ傘部
22 排気バルブ
30 吸気通路
33 サージタンク
36 吸気シャッターバルブ
51a EGRバルブ
61 第1ターボ過給機
62 第2ターボ過給機

Claims (6)

  1. 車両のエンジンの制御方法において
    車両の走行時、アクセルオフに伴うフューエルカット中か否かを判定するフューエルカット判定ステップと、
    フューエルカット中であると判定されたときに、クランク角センサからのクランク角速度情報に基づき、吸気バルブ及び排気バルブの少なくとも一方と、バルブシートとの間へのデポジットの噛み込みの有無を推定するデポジット付着推定ステップと
    デポジット付推定ステップにおいてデポジットの噛み込み有りと推定されたときに、前記デポジットを除去するための動作を開始するデポジット除去ステップと、を備え、
    前記デポジット付着推定ステップは
    前記クランク角センサからのクランク角速度情報に基づき、前記エンジンにおける圧縮行程中又は当該圧縮工程からその直後の膨張行程に跨った第1クランク角範囲の通過に要する第1通過時間を算出する第1通過時間算出サブステップと、
    前記クランク角センサからのクランク角速度情報に基づき、前記エンジンにおける前記圧縮行程直後の膨張行程でのクランク角範囲であって第1クランク角範囲と同角度の第2クランク角範囲の通過に要する第2通過時間を算出する第2通過時間算出サブステップと、
    前記第1通過時間の前記第2通過時間に対する比が1を超える所定の閾値以下となる場合に、圧縮漏れがあるとしてこれをデポジットの噛み込み有りと推定する一方、前記比が前記閾値を超える場合に、デポジットの噛み込み無しと推定する推定サブステップと、を有し、
    前記デポジット除去ステップにおける前記動作は、デポジットを除去可能な筒内圧が得られるように、デポジットの噛み込み有りと推定される以前よりも吸気圧力を高める動作である、
    エンジンの制御方法。
  2. 請求項1に記載のエンジンの制御方法において、
    前記デポジット除去ステップにおける前記吸気圧力を高める動作は、吸気通路に設けられた吸気シャッターバルブの開度を、デポジットの噛み込み有りと推定される以前よりも大きくすることである、
    エンジンの制御方法。
  3. 請求項1又は2に記載のエンジンの制御方法において、
    前記デポジット付着推定ステップは所定のサイクルで実行されるものであって、
    当該制御方法は、さらに、
    前記デポジット付着推定ステップにおいて噛み込み有りと推定された回数をカウントする第1カウントステップと、
    前記デポジット付着推定ステップにおいて噛み込み無しと推定された回数をカウントする第2カウントステップと、
    前記第1カウントステップにおけるカウント値が予め設定された第1カウント値以上となったときにデポジット除去実行フラグを設定するフラグ設定ステップと、
    前記第2カウントステップにおけるカウント値が予め設定された第2カウント値以上となりかつ前記デポジット除去実行フラグが設定されている場合に、当該設定を解除するフラグ解除ステップと、を含み、
    前記デポジット除去ステップは、前記デポジット除去実行フラグが設定されている間実行され、前記デポジット除去実行フラグが解除されると停止される、
    エンジンの制御方法。
  4. 車両のエンジンの制御装置において、
    開閉動作により前記エンジンの燃焼室への燃料噴射量を調節する燃料噴射弁と、
    前記エンジンのクランク角速度を検出するクランク角センサと、
    前記クランク角センサからの前記クランク角速度に係る情報を取得するとともに、前記燃料噴射弁の弁開度を制御する制御部と、を備え、
    前記制御部は、車両の走行時、アクセルオフに伴うフューエルカット中に取得した前記クランク角センサからのクランク角速度情報に基づき、吸気バルブ及び排気バルブの少なくとも一方と、バルブシートとの間へのデポジットの噛み込みの有無を推定する推定処理を実行するとともに、デポジットの噛み込み有りと推定したときに、前記デポジットを除去するためのデポジット除去処理を開始するものであり、
    前記推定処理は、
    前記クランク角センサからのクランク角速度情報に基づき、前記エンジンにおける圧縮行程中又は当該圧縮工程からその直後の膨張行程に跨った第1クランク角範囲の通過に要する第1通過時間を算出する第1通過時間算出処理と、
    前記クランク角センサからのクランク角速度情報に基づき、前記エンジンにおける前記圧縮行程直後の膨張行程でのクランク角範囲であって第1クランク角範囲と同角度の第2クランク角範囲の通過に要する第2通過時間を算出する第2通過時間算出処理と、
    前記第1通過時間の前記第2通過時間に対する比が1を超える所定の閾値以下となった場合に、圧縮漏れがあるとしてこれをデポジットの噛み込み有りと推定する一方、前記比が前記閾値を超える場合に、デポジットの噛み込み無しと推定する推定サブ処理と、を含み、
    前記デポジット除去処理は、デポジットを除去可能な筒内圧が得られるように、デポジットの噛み込み有りと推定される以前よりも吸気圧力を高めるための制御を実行する処理である、
    エンジンの制御装置。
  5. 請求項4に記載のエンジンの制御装置において、
    前記デポジット除去処理における前記吸気圧力を高めるための制御は、吸気通路に設けられた吸気シャッターバルブの開度が、デポジットの噛み込み有りと推定される以前よりも大きくなるように当該吸気シャッターバルブを制御することである、
    エンジンの制御装置。
  6. 請求項4又は5に記載のエンジンの制御装置において、
    前記制御部は、前記推定処理を所定のサイクルで実行するとともに、噛み込み有りと推定された回数をカウントする第1カウント処理と、噛み込み無しと推定された回数をカウントする第2カウント処理と、前記第1カウント処理におけるカウント値が予め設定された第1カウント値以上となったときにデポジット除去実行フラグを設定するフラグ設定処理と、前記第2カウント処理におけるカウント値が予め設定された第2カウント値以上となりかつ前記デポジット除去実行フラグが設定されている場合に、当該設定を解除するフラグ解除処理と、をさらに実行し、前記デポジット除去実行フラグが設定されている間、前記デポジット除去処理を実行し、前記デポジット除去実行フラグが解除されると前記デポジット除去処理を停止する、エンジンの制御装置。
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