JP6530927B2 - エレクトロクロミック化合物、及び有機機能性素子 - Google Patents

エレクトロクロミック化合物、及び有機機能性素子 Download PDF

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本開示は電圧印加によって酸化還元反応が起こることにより、発色や色調が変化するエレクトロクロミック化合物、及び該化合物を用いた電気化学的な有機機能性素子に関する。
従来、一対の電極間に電解質層とエレクトロクロミック層を形成し、電圧を印加することによりエレクトロクロミック材料(化合物)が発色するエレクトロクロミック表示素子が知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなエレクトロクロミック性を有する有機機能性素子は、電圧印加の順電圧/逆電圧により発色/消色が行われるため、電子ペーパーや遮光手段等に利用される。
特開2002−287173号公報
このようなエレクトロクロミック性を有する有機機能性素子をカラー表示装置に利用しようとする場合には種々の色が必要となる。また、従来のエレクトロクロミック性を有する有機機能性素子は、電圧の印加を止めてしまうと直ちに消色へ向かってしまうことが多く、発色を維持するためには電圧を印加させ続ける必要があった。このため、カラー表示装置に利用できるような色を発色し、電圧の印加を止めてもある程度の期間、発色が好適に維持されるようなメモリー性を有したエレクトロクロミック材料が求められている。
本開示はこのような従来技術の問題点に鑑み、エレクトロクロミズム現象を生じる新規なエレクトロクロミック化合物を提供すること、さらには電圧の印加を止めても、ある程度の期間、発色が好適に維持されるようなメモリー性を有したエレクトロクロミック化合物を提供することを技術課題とする。また、このようなエレクトロクロミック化合物を用いて得られる有機機能性素子を提供することを技術課題とする。
上記課題を解決するために、本開示は以下のような構成を備えることを特徴とする。
(1) 本開示の第1態様に係るエレクトロクロミック化合物は、下記構造式(1)又は下記構造式(2)で表されるエステル化合物であることを特徴とする。
(2) 本開示の第2態様に係るエレクトロクロミック化合物は、下記構造式(5)又は下記構造式(6)で表されるエステル化合物であることを特徴とする。
(式中、は1以上の整数である。)
(3) 本開示の第3態様に係る有機機能性素子は、少なくとも一方が透明である一対の電極基板の間にエレクトロクロミック層と,電解質層と,が形成される有機機能性素子であって、前記エレクトロクロミック層は、(1)又は(2)のエレクトロクロミック化合物を含む、ことを特徴とする有機機能性素子。
本実施形態における有機機能性素子の構成を示した模式図である。
本開示の実施形態を図面に基づいて以下に説明する。図1は本実施形態の有機機能性素子の構成を模式的に示した図である。
図示する有機機能性素子100は、一対の電極101,102、電解質層103、エレクトロクロミック層104を備える。本実施形態の有機機能性素子100は、一対の電極101,102の間に順電圧・逆電圧をかける(印加する)ことによって、発色,消色、或いは色調の変化が生じるものである。さらに具体的には、エレクトロクロミック層104が接する電極101を正の電極とし、電解質層103が接する電極102を負の電極としたときに、両電極間に順電圧をかける(印加する)ことによって、イオンがドープされ発色し、逆電圧をかけることによりイオンが脱ドープされ消色する。本実施形態の有機機能性素子では電圧をかけて発色させた後、電圧を切っても発色状態が維持されたメモリー性を有する有機機能性素子であり、電子ペーパーや遮光手段等に利用可能なエレクトロクロミック表示素子である。
電極101は、透明基板と、基板内側(内面)に形成される導電膜にて構成されている。透明基板の形成材料としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)やポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の透明樹脂や、ガラスが好適に用いられる。透明基板の内側に形成される導電膜は、透明基板同様に透光性を有した導電膜である必要がある。このような導電膜として用いられる材料としては、例えば、酸化インジウム錫(ITO)やアンチモンドープ錫酸化物(ATO)等、の既知の金属酸化膜を挙げることができる。
電極101はこのような透明基板に導電膜を形成させることにより得られる。導電膜の形成は、導電性材料を真空蒸着法、スパッタ法、ロールコーター法、刷毛塗り等、の既知のコーティング方法により行うことができる。導電膜の厚さは発色/消色に必要とされる電圧を印加することが可能な膜厚であればよく、その場合の光学膜厚としては、好ましくは15nm以上280nm以下、更に好ましくは80nm以上280nm以下である。抵抗値として考えた場合には、好ましくは4Ω/cm以上125Ω/cm以下、更に好ましくは4Ω/cm以上20Ω/cm以下である。
電極102は、電極101と同じように透明基板とその内側(内面)に形成される導電膜からなる。電極102で用いられる透明基板,導電膜は、電極101で使用可能な材料を用いることができる。なお、電子ペーパー等、一方の電極側の面のみを表示面として用いる場合には、他方の電極を形成する基板は透明でなくてもよく、不透明な樹脂基板やセラミック等の透光性を持たない材料を基板として用いることも可能である。また、このように一方の電極が透明でなくて良い場合には、導電性材料として白金、金、銀、銅、アルミニウム等の金属材料を用いることもできる。
電解質層103は、一方の面が電極102に接するように他方の面がエレクトロクロミック層104に接するように形成される。言い換えれば、電解質層103は電極102とエレクトロクロミック層104の間に形成される。電解質層103は液状の電解質、または固体状の電解質で形成される。電解質層の厚さは電子の授受、保持に必要な厚さであればよく、その場合の光学膜厚としては、好ましくは0.5μm以上100μm以下、更に好ましくは1μm以上30μm以下である。液状の電解質としては、例えば各種有機溶媒に溶かした支持電解質を用いることができる。このような液状の電解質に用いられる有機溶媒としては、塩化メチレンやアセトニトリル等が挙げられる。また、支持電解質としては、例えば第4級アンモニウム塩等が挙げられる。例えば、このような第4級アンモニウム塩に用いられる陽イオン材料としては、テトラブチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム等が挙げられる。また、陰イオン材料としては、臭化物イオンや塩化物イオンなどのハロゲン系、テトラフェニルボレートなどのホウ素系、ヘキサフルオロホスフェートなどのリン系が挙げられる。
他の支持電解質としては既知のイオン液体を用いることができる。このようなイオン液体に用いられる陽イオン材料としては、イミダゾリウム塩類・ピリジニウム塩類などのアンモニウム系、ホスホニウム系が挙げられる。また、陰イオン材料としては、臭化物イオンや塩化物イオンなどのハロゲン系、テトラフェニルボレートなどのホウ素系、ヘキサフルオロホスフェートなどのリン系を挙げることができる。これらの液状の電解質は電解質層103を構成する組成(全量)に対して、好ましくは5重量%以上60重量%以下、さらに好ましくは10重量%以上50重量%以下である。
また、固体状の電解質としては、例えば、上述したイオン液体をアクリル系樹脂等により固めたものや、高分子電解質等を用いることができる。イオン液体を固体状の電解質として用いるためのアクリル系樹脂は、以下に挙げるものを使用することができる。なお、表記上「・・・(メタ)アクリレート」とあるのは「・・・アクリレート」または「メタクリレート」を表す。メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、tert−ペンチル(メタ)アクリレ−ト、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−メチルブチル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ブトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチレングリコールフェニルエーテルアクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ3−アクリロイロプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート等の直鎖状、分岐鎖状、環状のアルキル(メタ)アクリレート類等の単官能アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ブテン−1,4−ジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート等の直鎖状、分岐鎖状、環状の(メタ)アクリレート類等の2官能アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート等の分岐鎖状、環状の(メタ)アクリレート類、又はウレタンアクリレート類等の多官能アクリレート、グリシジルメタクリレート、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル等のエポキシ系アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、フェニルグリシジルエーテルアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、フェニルグリシジルエーテルアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー等のウレタン系アクリレート、種々のアクリル系モノマーを挙げることができる。
また、アクリル系モノマーを溶解させる溶媒として、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、メタノール、エチレングリコール、n−プロピルセロソルブ、ジメチルアセトアミド、ベンゼン、キシレン、トルエン、n―ブタノール、プロピレングリコールモノメチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エタノール、プロピレングリコール、ジアセトンアルコール、ブタノール、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、及びこれらの混合物等、のアクリル系材料用の溶媒として一般的に使用可能な有機溶媒が挙げられる。
また、アクリル系モノマーを重合させるための光ラジカル重合開始剤の例として、トリス(クロロメチル)トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(4’−メトキシスチリル)−6−トリアジン、2−〔2−(フラン−2−イル)エテニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−S−トリアジンなどのトリアジン系化合物、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテルなどのベンゾイン系化合物、ジエトキシアセトフェノン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルアセトフェノンなどのアセトフェノン系化合物、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2−クロロチオキサントンなどのチオキサントン系化合物、ベンジルジメチルケタール、2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルフォスフィンオキサイド、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、アシルフォスフィンオキサイド等の既知の重合開始剤を用いることができる。これらは2種類以上を併用して用いてもよい。これらの重合開始剤は電解質層103を構成する組成(全量)に対して、好ましくは0.1重量%以上10重量%以下、さらに好ましくは0.3重量%以上5重量%以下である。なお、固体電解質に用いるイオン液体は、電解質層103を構成する組成(全量)に対して、好ましくは40重量%以上90重量%以下、さらに好ましくは50重量%以上85重量%以下である。
また、高分子電解質としては、例えばポリアリルアミン塩酸塩、アクリルアミド−ジアリルジメチルアンモニウムクロライド共重合物、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリメタクリル酸トリメチルアミノエチル・メチル硫酸塩、ジメチルアミン−アンモニア−エピクロルヒドリン縮合物、ジメチルアミン−エピクロルヒドリン縮合物、ジシアンジアミド−ホルマリン縮合物、ジシアンジアミド−ジエチレントリアミン縮合物、ポリビニルピロリドン等を挙げることができる。なお、このような高分子電解質には適宜支持塩を加えてもよい。支持塩としては、例えば、臭化物イオンや塩化物イオンなどのハロゲン系、テトラフェニルボレートなどのホウ素系、ヘキサフルオロホスフェートなどのリン系から成る塩が挙げられる。
本実施形態のエレクトロクロミック層104は、エレクトロクロミズム現象を示す有機化合物が好適に用いられる。なお、エレクトロクロミズムとは、化学物質に電荷を印加することにより、その光物性に可逆的変化が見られる現象のことである。本実施形態では、このエレクトロクロミック層104を形成するエレクトロクロミック材料として下記一般式(1)又は一般式(2)で表されるエステル化合物を用いるものとしている。
初めに、上記の一般式(1)について説明する。上記の一般式(1)において、例えば、Rは、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン、水素のいずれかである。Rがハロゲン、又は、水素、以外の場合(アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルコキシカルボニル基、の場合)、置換基を有していてもよい。なお、上記一般式(1)において、mは1以上の整数を示す。例えば、好ましくは、mは1から10000の整数であり、さらに、好ましくは1から100の整数である。
例えば、アルキル基としては、メチル、エチル、n−又はiso−プロピル、n−、iso−又はtert−ブチル、n−、iso−又はneo−ペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル等の直鎖、分岐、環状の炭素数1から20、好ましくは炭素数1から10のアルキル基、が挙げられる。
例えば、アリール基としては、フェニル、o−、m−、p−トリル、1−および2−ナフチル、アントリル等の炭素数6から20、好ましくは炭素数6から14のアリール基、が挙げられる。
例えば、アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、n−又はiso−プロポキシ、n−、iso−又はtert−ブトキシ、n−、iso−又はneo−ペントキシ、n−ヘキソキシ、シクロヘキソキシ、n−ヘプトキシ、n−オクトキシ等の直鎖、分岐、環状の炭素数1から20、好ましくは炭素数1から10のアルコキシ基が挙げられる。
例えば、アリーロキシ基としては、フェノキシ、o−、m−、p−トリロキシ、1−および2−ナフトキシ、アントロキシ等の炭素数6から20、好ましくは炭素数6から14のアリーロキシ基、が挙げられる。
例えば、アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−、i−、t−ブトキシカルボニル基等の直鎖、分岐、環状の炭素数1から20、好ましくは炭素数1から10のアルコキシカルボニル基、が挙げられる。
例えば、ハロゲンとしてはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、が挙げられる。
また、上記の一般式(1)において、例えば、Rは、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン、水素のいずれかである。Rがハロゲン、又は、水素、以外の場合(アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルコキシカルボニル基、の場合)、置換基を有していてもよい。
例えば、上記の一般式(1)において、X乃至Xは、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ハロゲン、水素のいずれかである。Rがハロゲン、又は、水素、以外の場合(アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、の場合)、置換基を有していてもよい。
以上のような、一般式(1)で表されるエステル化合物は、以下の構造式(1)で表されるエステル化合物、構造式(2)で表されるエステル化合物、を好適に用いることができる。
次いで、上記の一般式(2)について説明する。上記の一般式(2)において、例えば、X乃至Xは、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ハロゲン、水素のいずれかである。X乃至Xがハロゲン、又は、水素、以外の場合(アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、の場合)、置換基を有していてもよい。なお、上記一般式(2)において、nは1以上の数字を示し、nは重合度を表す。
例えば、一般式(2)において、Yは二価の有機基から選ばれる。以下に、一般式(2)で表されるより具体的なエステル化合物を示す。例えば、一般式(2)で表されるエステル化合物は、より具体的には、以下の、一般式(3)で表されるエステル化合物、一般式(4)で表されるエステル化合物、を好適に用いることができる。また、例えば、一般式(2)で表されるエステル化合物は、より具体的には、構造式(5)で表されるエステル化合物、構造式(6)で表されるエステル化合物、を好適に用いることができる。
上記の一般式(3)について説明する。上記の一般式(3)において、例えば、X乃至Xは、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ハロゲン、水素のいずれかである。X乃至Xがハロゲン、又は、水素、以外の場合(アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、の場合)、置換基を有していてもよい。なお、上記一般式(3)において、nは1以上の数字を示し、nは重合度を表す。
例えば、一般式(3)において、Rは二価の有機基から選ばれる。以下に、一般式(3)で表されるより具体的なエステル化合物を示す。例えば、一般式(3)で表されるエステル化合物としては、以下の、構造式(3)で表されるエステル化合物、構造式(4)で表されるエステル化合物、を好適に用いることができる。
例えば、上記構造式(4)において、kは1以上の数字を示す。
次いで、上記の一般式(4)について説明する。上記の一般式(4)において、例えば、X乃至X12は、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ハロゲン、水素のいずれかである。X乃至X12がハロゲン、又は、水素、以外の場合(アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、の場合)、置換基を有していてもよい。なお、上記一般式(4)において、nは1以上の数字を示し、nは重合度を表す。また、上記一般式(4)における斜線は、ランダムに共重合していることを意味している。すなわち、一般式(4)は、ランダムコポリマーを示している。
例えば、一般式(4)において、Rは二価の有機基から選ばれる。以下に、一般式(4)で表されるより具体的なエステル化合物を示す。例えば、一般式(4)で表されるエステル化合物としては、以下の、構造式(7)で表されるエステル化合物、構造式(8)で表されるエステル化合物、を好適に用いることができる。
例えば、上記構造式(7)、構造式(8)において、nは1以上の数字を示し、nは重合度を表す。なお、構造式(7)において、kは1以上の数字を示す。また、上記構造式(7)、構造式(8)における斜線は、ランダムに共重合していることを意味している。すなわち、構造式(7)、構造式(8)は、ランダムコポリマーを示している。
以上のように、本実施形態のエレクトロクロミック層104は、上記記載のようなエレクトロクロミズム現象を示す有機化合物が好適に用いられる。
エレクトロクロミック層を形成する膜の形成は、エレクトロクロミック材料を所定の溶媒に溶かした後、この溶液をロールコーター法、バーコーター法、スピンコーター法、スプレーコーター法、刷毛塗り等の既知のコーティング方法を用いて電極(基板の導電膜形成面)に塗布し、その後、溶媒を除去することにより所定の厚さを有したエレクトロクロミック層を形成することができる。エレクトロクロミック膜の厚さは発色/消色に必要とされる透過率を得られる膜厚であればよく、その場合の光学膜厚は好ましくは0.1μm以上100μm、更に好ましくは0.2μm以上20μm以下である。なお、エレクトロクロミック層の形成は電極にコーティングする方法の他、一対の電極間に液状のエレクトロクロミック材料を注入し、その後硬化させる方法であってもよい。硬化方法としては光や熱による方法が挙げられる。
また、電解質層103やエレクトロクロミック層104を外気から遮蔽するために封止材を用いても良い。封止材としては透湿せず、内部物質による化学反応が生じないものを用いることができる。このような封止材としては、例えば、上述したアクリル系樹脂が挙げられる。アクリル系樹脂のうち、特に好ましくはウレタン系アクリレートやエポキシ系アクリレートを用いることができる。
次に、本実施形態の有機機能性素子を得る方法について説明する。透明基板上に導電膜を真空蒸着法、スパッタ法、ロールコーター法、刷毛塗り等、の既知のコーティング方法により形成し、電極101,102を作成する。次に一方の電極101(102)の導電膜の形成面にエレクトロクロミック材料をスピンコート等の既知のコーティング方法により塗布し、所定時間乾燥させ、エレクトロクロミック層104を形成する。このエレクトロクロミック層104の上に電解質液を所定量垂らした上で、他方の電極102(101)の導電膜の形成面を電解質液側として載せて貼り付ける。その後、オーブン等により所定時間乾燥させ、電極間に電解質層とエレクトロクロミック層とが形成された有機機能性素子を得る。なお、電解質液としてイオン液体とアクリルモノマー(重合開始剤を含む)との混合液を用いた場合には、乾燥後、紫外線硬化を行う。また、封止材を用いる場合には、貼り付けた電極101と電極102との間に封止材を塗布し、硬化させて封止を行う。得られた有機機能性素子100に電源装置105を用いて電極101、電極102に所定の電圧を印加させることにより、有機機能性素子が発色する。なお、本実施形態では、エレクトロクロミック層の形成後に電解質層を形成するものとしているが、これに限るものではなく、先に電解質層を形成後、その上にエレクトロクロミック層を形成するようにしてもよい。
なお、本開示における有機機能性素子のメモリー性とは、有機機能性素子に対して所定の電圧をかけ発色させた後、電圧の印加を止めても良好な発色状態が所定期間得られていることを指す。
次に本件開示の好適な実施例1〜8を以下に記載するが、本件開示はこれらの実施例に限定されるものではない。本件開示の実施例1〜8では、得られた有機機能性素子におけるエレクトロクロミック性の評価(発色評価、メモリー評価)をおこなった。また、実施例1〜8のエステル化合物と比較するために、比較例1において、従来の有機機能性素子におけるエレクトロクロミック性の評価(発色評価、メモリー評価)をおこなった。
<実施例1>
(1) 構造式(1)に示すエステル化合物の合成
氷浴中において、224.5mg(1.0mmol)のテレフタル酸2−ヒドロキシエチルメチルを5mLのジクロロメタンに溶かした溶液に、140.4mg(1.0mmol)の塩化ベンゾイルを加え、さらにトリエチルアミンを5mL加えてそのまま一晩攪拌した。反応液を留去して得られた粉末をクロロホルム−水で抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを留去して得られた粉末を水−メタノールの混合溶媒で洗浄することにより、224mgの構造式(1)に示すエステル化合物を白色粉末として得た。
なお、得られた化合物のNMRデータは以下のとおりである。
H‐NMRスペクトル(CDCl):δ8.0−8.2(m,6H),7.5−7.6(m,1H),7.4−7.5(m,2H),4.69(s,4H),3.94(s,3H)ppm
13C−NMRスペクトル(CDCl):δ166.35,166.24,165.60,134.10,133.54,133.24,129.69,129.60,128.45,63.17,62.56,52.47ppm
(2) 有機機能性素子の作成
透明基板である1mmのガラス板にスパッタ法を用いてITOを蒸着させ、一対のITO付きガラス電極(抵抗値14Ω/cm)を用意した。前述の合成により得られたエレクトロクロミック材料である構造式(1)に示すエステル化合物を有機溶媒(テトラヒドロフラン)で溶解させ、この溶液を一方のガラス電極に塗布し、オーブンにて100℃、10分にて乾燥させ、光学膜厚6.2μmのエレクトロクロミック層が形成されたガラス電極を得た。
次に、アクリルモノマー(UA−510H;共栄社化学(株)製)を50重量%、溶媒MIBK49重量%、重合開始剤(イルガキュア184)を1重量%加え混合した。この混合液に対して電解質材料としてイミダゾリウム系イオン液体(1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート 関東化学(株)製)を60重量%となるように添加し、混合した。このようにして得られた混合液を電解質層用の電解質液とした。得られた電解質液をエレクトロクロミック層付きのガラス電極にスポイトで1滴〜数滴垂らした上で、他方のガラス電極を載せて貼り合わせた。電極間にエレクトロクロミック層と電解質液が挟み込まれた状態で、これをオーブンにより100℃,10分加熱し乾燥させた。乾燥後、高圧水銀灯にて光源下10cmの位置で 1000mJ/cm(365nm)の紫外線を照射して硬化させた。紫外線照射を行いアクリルモノマーを重合させて、エレクトロクロミック層と固体の電解質層が形成された有機機能性素子を作製した。
得られた固体の電解質層の厚みは15μmであった。なお、電解質層の厚み測定は評価後、両電極を剥がし測定した。得られた有機機能性素子のエレクトロクロミック層側のガラス電極を正極、電解質層側の電極を負極として電圧を可変できる電源装置を繋ぎ、逆電圧(−3.0V)をかけたところ、このエレクトロクロミック材料を用いた有機機能性素子は鮮やかなマゼンタ色に発色した。また、+3.0Vの順電圧をかけたところ、直ちに消色した。次に、得られた有機機能性素子のエレクトロクロミック性の評価(発色評価、メモリー評価)をおこなった。得られた有機機能性素子に電圧(逆電圧 −3.0V)をかけ、発色の色相を目視にて確認した後、発色した状態における有機機能性素子の色濃度を視感度透過率計((株)朝日分光、MODEL345)で測定した。
印加前後の濃度変化の評価は、10%以上を○、3%以上から10%未満を△、3%未満を×とした。メモリー性評価は、視感透過率を100%とし、30秒後の退色率と、60秒後の退色率を測定した。30秒経過後の退色率50%未満を○、50%以上70%未満を△、それ以上を×とした。また、60秒後の退色率70%未満を○、70%以上90%未満を△、それ以上を×とした。このようなエレクトロクロミック性の評価結果を表1に示す。
<実施例2>
(1) 構造式(2)に示すエステル化合物の合成
氷浴中において、100.1mg(0.49mmol)のテレフタル酸2−ヒドロキシエチルメチルを2mLのジクロロメタンに溶かした溶液に、229.4mg(1.02mmol)のテレフタル酸ジクロリドを加え、さらにトリエチルアミンを2mL加えてそのまま一晩攪拌した。反応液を留去して得られた粉末を水−メタノールの混合溶媒で洗浄し、さらにこの粉末をメタノールで洗浄することにより、215.0mgの構造式(2)に示すエステル化合物を白色粉末として得た。
なお、得られた化合物のNMRデータは以下のとおりである。
H‐NMRスペクトル(CDCl):δ8.0−8.1(m,12H),4.70(s,8H),3.95(s,6H)ppm
13C−NMRスペクトル(CDCl):δ166.20,165.55,134.18,133.71,133.42,129.75,129.67,129.63,63.04,62.97,52.49ppm
(2) 有機機能性素子の作成
実施例1におけるエレクトロクロミック層に用いる材料を構造式(2)に示すエステル化合物とし、溶解させるために用いた有機溶媒をクロロホルムとした以外は、実施例1と同じ条件で有機機能性素子を作製した。得られた有機機能性素子を実施例1と同様に逆電圧,順電圧をかけ発色、消色を確認後、実施例1と同様のメモリー性評価を行った。その結果を表1に示す。
<実施例3>
(1) 構造式(3)に示すエステル化合物の合成
氷浴中において、830mg(2.6mmol)の4,4’−イソプロピリデンビス(2−フェノキシエタノール)を5mLのジクロロメタンに溶かした溶液に、530mg(2.6mmol)のテレフタル酸ジクロリドを加え、さらにトリエチルアミンを5mL加えて2時間攪拌した。反応の終了は、反応溶液にメタノールを注ぐことにより行い、この混合液をろ過して得られた粉末をさらにメタノールで洗浄することにより、1000mgの構造式(3)に示すエステル化合物を白色粉末として得た。生成物のMwは23600(n=52.9),Mnは7600(n=17.0)であった。
なお、得られた化合物のNMRデータは以下のとおりである。
H‐NMRスペクトル(CDCl):δ8.1(s,4H),7.0−7.1(m,4H),6.8−7.0(m,4H),4.68(s,4H),4.30(s,4H),1.64(s, 6H)ppm
13C−NMRスペクトル(CDCl):δ165.70,156.29,143.67,133.79,129.69,127.82,114.02,65.78,63.85,41.74,31.04ppm
(2) 有機機能性素子の作成
実施例1におけるエレクトロクロミック層に用いる材料を構造式(3)に示すエステル化合物とした以外は、実施例1と同じ条件で有機機能性素子を作製した。得られた有機機能性素子を実施例1と同様に逆電圧,順電圧をかけ発色、消色を確認後、実施例1と同様のメモリー性評価を行った。その結果を表1に示す。
<実施例4>
(1) 構造式(4)に示すエステル化合物の合成
氷浴中において、710mg(1.8mmol)のポリエチレングリコール(分子量400、l=9.1)を5mLのジクロロメタンに溶かした溶液に、360mg(1.8mmol)のテレフタル酸ジクロリドを加え、さらにトリエチルアミンを5mL加えて5時間攪拌した。反応溶液をヘキサンに注ぐことにより、740mgの構造式(4)に示すエステル化合物を白色粉末として得た。生成物のMwは12200(n=23.0),Mnは4000(n=7.5)であった。
なお、得られた化合物のNMRデータは以下のとおりである。
H‐NMRスペクトル(CDCl):δ8.11(s,4H),4.49(t,4H),3.85(t,4H),3.5−3.8(m,28H)ppm
13C−NMRスペクトル(CDCl):δ165.73,133.91,129.63,70.65,70.61,70.54,69.09,64.50,45.69ppm
(2) 有機機能性素子の作成
実施例1におけるエレクトロクロミック層に用いる材料を一般式(4)に示すエステル化合物とした以外は、実施例1と同じ条件で有機機能性素子を作製した。得られた有機機能性素子を実施例1と同様に逆電圧,順電圧をかけ発色、消色を確認後、実施例1と同様のメモリー性評価を行った。その結果を表1に示す。
<実施例5>
(1) 構造式(5)に示すエステル化合物の合成
氷浴中において、253mg(2.1mmol)のN−メチルジエタノールアミンを5mLのジクロロメタンに溶かした溶液に、431mg(2.1mmol)のテレフタル酸ジクロリドを加え、さらにトリエチルアミンを5mL加えて4時間攪拌した。反応溶液にメタノールを注ぐことにより反応を終了させた。この混合液をろ過して得られた粉末をさらにメタノールで洗浄することにより、400mgの一般式(5)に示すエステル化合物を白色粉末として得た。
なお、得られた化合物のNMRデータは以下のとおりである。
H‐NMRスペクトル(CDCl):δ8.02(s,4H),4.45(t,4H),2.91(t,4H),2.45(s,3H)ppm
13C−NMRスペクトル(CDCl):δ165.64,133.87,129.51,63.18,55.98,43.02ppm
(2) 有機機能性素子の作成
実施例1におけるエレクトロクロミック層に用いる材料を構造式(5)に示すエステル化合物とし、溶解させるために用いた有機溶媒をクロロホルムとした以外は、実施例1と同じ条件で有機機能性素子を作製した。得られた有機機能性素子を実施例1と同様に逆電圧,順電圧をかけ発色、消色を確認後、実施例1と同様のメモリー性評価を行った。その結果を表1に示す。
<実施例6>
(1) 構造式(6)に示すエステル化合物の合成
室温で、112mgの構造式(5)に示すエステル化合物を10mLのクロロホルムに溶かし、1.14gのヨウ化メチルを加えて2日間攪拌した。反応時に得られた沈殿をろ過することにより、187mgの構造式(5)に示すエステル化合物−MeI(構造式(5)’)を得た。
上記のようにして取得した81.5mgの構造式(5)に示すエステル化合物−MeIを5mLのDMFに溶かした溶液に、354mgのヘキサフルオロリン酸テトラメチルアンモニウムを6mLの水に溶かした溶液を加えて75℃で攪拌した。反応液をメタノールに注いで得られた粉末をろ過することにより、62.5mgの構造式(6)に示すエステル化合物を得た。
なお、得られた化合物のNMRデータは以下のとおりである。
H‐NMRスペクトル(acetone−d):δ8.19(s,4H),5.0−5.1(br,4H),4.3―4.4(br,4H),3.6−3.8(br,6H)ppm
(2) 有機機能性素子の作成
実施例1におけるエレクトロクロミック層に用いる材料を構造式(6)に示すエステル化合物とし、溶解させるために用いた有機溶媒をジメチルフランとクロロホルムの1対1の混合溶媒とした以外は、実施例1と同じ条件で有機機能性素子を作製した。得られた有機機能性素子を実施例1と同様に逆電圧,順電圧をかけ発色、消色を確認後、実施例1と同様のメモリー性評価を行った。その結果を表1に示す。
<実施例7>
(1) 構造式(7)に示すエステル化合物の合成
氷浴中において、460mg(1.2mmol)のポリエチレングリコール(分子量400)と295mg(1.2mmol)のテレフタル酸ビス(2−ヒドロキシエチル)を20mLのジクロロメタンに溶かした溶液に、471mg(2.3mmol)のテレフタル酸ジクロリドを加え、さらにトリエチルアミンを20mL加えて7日間攪拌した。反応溶液をメタノールに注いで得られた粉末をろ過して得られた粉末をさらにメタノールで洗浄することにより、550mgの構造式(7)に示すエステル化合物を白色粉末として得た。生成物のMwは5900(n=12.9),Mnは2800(n=6.1)であった。
なお、得られた化合物のNMRデータは以下のとおりである。
H‐NMRスペクトル(CDCl):δ8.0−8.1(m,12H),4.70(s,8H),4.49(s,4H),3.84(s,4H),3.5−3.7(m,23H)ppm
(2) 有機機能性素子の作成
実施例1におけるエレクトロクロミック層に用いる材料を構造式(7)に示すエステル化合物とし、溶解させるために用いた有機溶媒をクロロホルムとした以外は、実施例1と同じ条件で有機機能性素子を作製した。得られた有機機能性素子を実施例1と同様に逆電圧,順電圧をかけ発色、消色を確認後、実施例1と同様のメモリー性評価を行った。その結果を表1に示す。
<実施例8>
(1) 構造式(8)に示すエステル化合物の合成
氷浴中において、671mg(2.1mmol)の4,4’−イソプロピリデンビス(2−フェノキシエタノール)と539mg(2.1mmol)のテレフタル酸ビス(2−ヒドロキシエチル)を20mLのジクロロメタンに溶かした溶液に、861mg(4.2mmol)のテレフタル酸ジクロリドを加え、さらにトリエチルアミンを20mL加えて24時間攪拌した。反応の終了は、反応溶液にメタノールを注ぐことにより行い、この混合液をろ過して得られた粉末をさらにメタノールで洗浄することにより、969mgの構造式(8)に示すエステル化合物を白色粉末として得た。生成物のMwは7100(n=8.5),Mnは3000(n=3.7)であった。
なお、得られた化合物のNMRデータは以下のとおりである。
H‐NMRスペクトル(CDCl):δ8.0−8.1(m,12H),6.8−7.2(m,8H),4.67(s,8H),4.65(s,4H),4.27(s,4H),1.60(s,6H)ppm
(2) 有機機能性素子の作成
実施例1におけるエレクトロクロミック層に用いる材料を構造式(8)に示すエステル化合物とし、溶解させるために用いた有機溶媒をクロロホルムとした以外は、実施例1と同じ条件で有機機能性素子を作製した。得られた有機機能性素子を実施例1と同様に逆電圧,順電圧をかけ発色、消色を確認後、実施例1と同様のメモリー性評価を行った。その結果を表1に示す。
<比較例1>
透明基板である1mmのガラス板にスパッタ法を用いてITOを蒸着させ、一対のITO付きガラス電極(抵抗値14Ω/cm)を用意した。市販のテレフタル酸ジメチル(DMT)(東京化成工業株式会社)を有機溶媒(N−メチル−2−ピロリドン)で溶解させ、その中に電解質材料として過塩素酸テトラブチルアンモニウムを加えてエレクトロクロミック溶液とした。2枚のガラス電極間に70μmのスペーサーを挟み、ガラス電極を貼り合わせた。そのスペースに得られたエレクトロクロミック溶液を注入しエレクトロクロミック層とし、有機機能性素子を作製した。得られた有機機能性素子のガラス電極に電圧を可変できる電源装置を繋ぎ、電圧(−3.6V)をかけたところ、このエレクトロクロミック材料を用いた有機機能性素子は鮮やかなマゼンタ色に発色した。また、印加を止めると、直ちに消色した。次に、得られた有機機能性素子のエレクトロクロミック性の評価(発色評価、メモリー評価)をおこなった。得られた有機機能性素子に電圧(−3.6V)をかけ、発色の色相を目視にて確認した後、発色した状態における有機機能性素子の色濃度を視感度透過率計((株)朝日分光、MODEL345)で測定した。印加前後の濃度変化の評価、メモリー性評価は実施例1と同様の評価を行った。その結果を表2に示す。
<結果>
以上、表1、表2で示されるように、構造式(1)で示されるエステル化合物、構造式(2)で示されるエステル化合物、構造式(3)〜(6)で示されるエステル化合物、構造式(7)で示されるエステル化合物、構造式(8)で示されるエステル化合物、は、電圧の印加を止めてもある程度の期間、発色が好適に維持されるようなメモリー性を有する新規のエレクトロクロミック材料であることが確認された。言い換えると、一般式(1)で示されるエステル化合物、又は、一般式(2)(一般式(3)、一般式(4))で示されるエステル化合物は、発色が好適に維持されるようなメモリー性を有するエレクトロクロミック材料であることが確認された。また、これらのエステル化合物は、マゼンダに発色することが可能な新規のエレクトロクロミック材料であることが確認された。
さらに、構造式(2)で示されるエステル化合物、構造式(7)で示されるエステル化合物、構造式(8)で示されるエステル化合物、は、特にメモリー性が高いことが確認された。
このように、本件開示の化合物は、電圧の印加を止めてもある程度の期間、発色が好適に維持されるようなメモリー性を有する新規のエレクトロクロミック材料として用いることができる。また、本件開示の化合物は、マゼンダに発色することが可能な新規のエレクトロクロミック材料として用いることができる。さらに、上記の新規なエレクトロクロミック材料を有機機能性素子に用いることによって、電圧の印加を止めても、ある程度の期間、発色が好適に維持されるようなメモリー性を有した有機機能性素子を提供することができる。また、上記の新規なエレクトロクロミック材料を有機機能性素子に用いることによって、マゼンダに発色することが可能な有機機能性素子を提供することができる。
100 有機機能性素子
101 電極
102 電極
103 電解質層
104 エレクトロクロミック層

Claims (3)

  1. 下記構造式(1)又は下記構造式(2)で表されるエステル化合物から選ばれることを特徴とするエレクトロクロミック化合物。
  2. 記構造式(5)又は下記構造式(6)で表されるエステル化合物であることを特徴とするエレクトロクロミック化合物。
    (式中、nは1以上の整数である。)
  3. 少なくとも一方が透明である一対の電極基板の間にエレクトロクロミック層と,電解質層と,が形成される有機機能性素子であって、
    前記エレクトロクロミック層は、請求項1又は2のエレクトロクロミック化合物を含む、ことを特徴とする有機機能性素子。
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