JP6530663B2 - 構造体の製造方法及び構造体 - Google Patents

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本発明は、構造体の製造方法及び構造体に関する。
金属等からなる基材に、用途に応じ種々のセラミック原料からなるセラミックコートを設け、基材に所定の性能・機能を持たせる試みは従来より行われている。
例えば、特許文献1には、電気加熱触媒において、基材である排気管の内表面にガラスを主成分とするセラミックコートを設けることで、排気管と、電気加熱触媒との間の絶縁性を確保する技術が記載されている。
また、特許文献2には、基材である排気系部品にガラスを主成分とするセラミックコートを設けることで、断熱性を確保し、排気系部品が用いられたエンジンの作動時に熱が外部に放出されることを抑制する技術が記載されている。
特開2012−154318号公報 国際公開第2014/034395号
特許文献1及び2では、基材にセラミック原料を塗布して焼き付けることで、セラミックコート層を形成している。このように基材にセラミック原料を焼き付ける場合、セラミック原料が収縮し、セラミック原料で覆われていた基材の一部が剥き出しになる場合や、セラミックコート層の端部が薄くなる場合がある。つまり、セラミックコート層にいわゆる“ヒケ”が生じた状態となる場合がある。これは、基材の膨張率と、セラミック原料の膨張率とが一致していないために生じる現象である。特にセラミック原料を厚く塗布する場合、ヒケが生じやすくなる。
このようなヒケが生じることにより、セラミックコート層で覆われることを予定していた基材の一部にセラミックコート層が形成されず基材の一部が剥き出しになる場合や、セラミックコート層の端部が薄くなり、充分な厚さを確保できない場合がある。このことが原因となり、絶縁性の低下や断熱性の低下が生じるという問題があった。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、金属からなる基材の所定部分に充分な厚さのセラミックコート層が形成された構造体の製造方法及び該製造方法により製造された構造体を提供することである。
すなわち、本発明の構造体の製造方法は、金属からなる基材の表面の一部に被覆予定領域を決定する被覆予定領域決定工程と、上記被覆予定領域の外側に、上記被覆予定領域の境界と接するように帯状の外方粗化面を形成する外方粗化面形成工程と、上記被覆予定領域に、内方粗化面を形成する内方粗化面形成工程と、軟化点が300〜900℃である低融点ガラス粉末を含むセラミック原料を上記被覆予定領域及び上記外方粗化面に塗布するセラミック原料塗布工程と、上記セラミック原料を上記基材の表面に上記軟化点よりも高い温度で焼き付けセラミックコート層を形成するセラミックコート層形成工程とを含み、上記外方粗化面形成工程では、上記外方粗化面の表面粗さが、Ra=8〜12μm、かつ、RzJIS=25〜36μmになるようにし、上記内方粗化面形成工程では、上記内方粗化面の表面粗さが、Ra=0.05〜4.0μm、かつ、RzJIS=1.5〜20μmとなるようにすることを特徴とする。
本発明の構造体の製造方法の外方粗化面形成工程では、上記被覆予定領域の外側に、上記被覆予定領域の境界と接するように帯状の外方粗化面を形成する。
後述するように、本発明の構造体の製造方法では、外方粗化面を設けることにより、セラミックコート層にヒケが生じることを抑制できる。そのため、セラミックコート層の端部の位置を制御しやすくなる。従って、被覆予定領域の外側に、被覆予定領域の境界と接するように外方粗化面を形成することにより、後の工程において被覆予定領域を、しっかりとセラミックコート層で覆うことができる。
なお、本明細書において、「帯状」とは、幅を持った範囲のことを意味する。
また、外方粗化面形成工程において形成する外方粗化面の表面粗さは、Ra=8〜12μm、かつ、RzJIS=25〜36μmである。外方粗化面が、このような表面粗さであると、上記のセラミック原料が外方粗化面に物理的に引っ掛かり収縮しにくくなる効果が好適に発揮される。そのため、セラミックコート層にヒケが生じることを抑制することができる。
外方粗化面の表面粗さが、Ra=8μm未満、又は、RzJIS=25μm未満であると、セラミック原料が外方粗化面に物理的に引っ掛かりにくくなり、セラミックコート層にヒケが生じやすくなる。
外方粗化面の表面粗さが、Ra=12μmを超える、又は、RzJIS=25μmを超えると、外方粗化面の表面粗さが粗くなりすぎ、セラミックコート層形成の際にセラミックコートと外方粗化面との間に気泡が入りやすくなる。このように気泡が入ると、セラミックコート層と外方粗化面の密着性が低下するので、密着強度が低下することに加えて、気泡の存在で外方粗化面の表面が滑りやすくなり、セラミックコート層にヒケが生じやすくなる。
また、上記外方粗化面形成工程において形成する上記外方粗化面の表面粗さは、Ra=8〜9μm、かつ、RzJIS=25〜31μmになるようにすることが望ましい。
内方粗化面形成工程において形成する内方粗化面の表面粗さは、Ra=0.05〜4.0μm、かつ、RzJIS=1.5〜20μmである。内方粗化面が、このような表面粗さであると、後の工程を経て製造される構造体において、基材の表面とセラミックコート層との密着性を向上させることができる。
内方粗化面の表面粗さが、Ra=0.05μm未満、又は、RzJIS=1.5μm未満であると、基材の表面とセラミックコート層との密着性が充分に向上しにくくなる。
内方粗化面の表面粗さが、Ra=4.0μmを超える、又は、RzJIS=20μmを超えると、基材の表面とセラミックコート層との密着性を向上させる効果が上限に近づき、経済的でない。また、基材の変形が発生するという問題もある。
本発明の構造体の製造方法において、セラミック原料は、軟化点が300〜900℃である低融点ガラス粉末を含む。
このようなセラミック原料を用いると、軟化点を超える温度で加熱することにより低融点ガラス粉末が軟化溶融するので、容易にセラミックコート層を形成することができる。
本発明の構造体の製造方法のセラミック原料塗布工程では、セラミック原料を上記被覆予定領域及び上記外方粗化面に塗布する。
セラミック原料は、その後のセラミックコート層形成工程において基材の表面に焼き付けられる。この際、セラミック原料が溶融して焼き締まり、焼成収縮を起こす。この焼成収縮は、セラミックコート層にヒケが生じる原因となる。
しかし、上記のようにセラミック原料を塗布すると、セラミック原料が焼成収縮しようとする際、溶融したセラミック原料が外方粗化面に物理的に引っ掛かり収縮しにくくなる。そのため、セラミックコート層にヒケが生じることを抑制することができる。
本発明の構造体の製造方法のセラミック原料塗布工程では、上記セラミックコート層形成工程により形成される上記セラミックコート層の端部が、上記外方粗化面の外側端部と一致するように、上記セラミック原料を塗布してもよい。また、本発明の構造体の製造方法のセラミック原料塗布工程では、上記セラミックコート層形成工程により形成される上記セラミックコート層の端部が、上記外方粗化面の外側端部よりも外側に位置するように、上記セラミック原料を塗布してもよい。さらに、上記セラミック原料塗布工程では、上記セラミックコート層形成工程により形成される上記セラミックコート層の端部が、上記外方粗化面の外側端部よりも内側かつ上記外方粗化面の内側端部よりも外側に位置するように、上記セラミック原料を塗布してもよい。
このようにセラミック原料を塗布することにより、被覆予定領域を、セラミックコート層で確実に覆うことができる。
本発明の構造体の製造方法では、上記セラミック原料は、水及び/又は有機結合材を含むことが望ましい。
セラミック原料が、水及び/又は有機結合材を含むと、セラミック原料は粘性を有することになる。粘性を有するセラミック原料は、被覆予定領域に塗布しやすくなり、また、塗布量も制御しやすくなる。
一方で、セラミックコート層形成工程において水及び/又は有機結合材を含むセラミック原料を基材に焼き付けると、水及び/又は有機結合材は、蒸発や分解され消失する。そのため、セラミック原料が焼成収縮する度合いが大きくなり、セラミックコート層にヒケが生じやすくなる。しかし、本発明の構造体の製造方法では、基材の表面に外方粗化面を形成するので、セラミック原料の焼成収縮度合いが大きくなったとしても、被覆予定領域を、セラミックコート層で確実に覆うことができる。
本発明の構造体の製造方法では、上記セラミック原料は、有機溶媒を含むことが望ましい。
セラミック原料が、有機溶媒を含むと、表面張力が低下しやすくなる。その結果、セラミック原料を外方粗化面に塗布する際に、セラミック原料は外方粗化面になじみやすくなり、塗布しやすくなる。
一方で、セラミックコート層形成工程において有機溶媒を含むセラミック原料を基材に焼き付けると、有機溶媒は、蒸発や分解され消失する。そのため、セラミック原料が焼成収縮する度合いが大きくなり、セラミックコート層にヒケが生じやすくなる。しかし、本発明の構造体の製造方法では、基材に外方粗化面を形成するので、セラミック原料の焼成収縮度合いが大きくなったとしても、被覆予定領域を、セラミックコート層で確実に覆うことができる。
本発明の構造体は、金属からなる基材と、上記基材の表面に形成されたセラミック原料からなるセラミックコート層とからなる構造体であって、上記基材の表面のうち上記セラミックコート層が形成されている部分の面積が、上記基材の表面の全体の面積よりも小さく、上記セラミックコート層の周縁部の上記基材の表面には、帯状の外方粗化面が形成されており、上記外方粗化面より内側の上記基材の表面には、内方粗化面が形成されており、上記外方粗化面の表面粗さは、Ra=8〜12μm、かつ、RzJIS=25〜36μmであり、上記内方粗化面の表面粗さは、Ra=0.05〜4.0μm、かつ、RzJIS=1.5〜20μmであり、上記セラミックコート層は軟化点が300〜900℃の低融点ガラスからなることを特徴とする。
本発明の構造体では、基材の表面のうちセラミックコート層が形成されている部分の面積が、基材の表面の全体の面積よりも小さい。
つまり、基材の表面には、セラミックコート層が形成されている部分と形成されていない部分とがある。
また、本発明の構造体では、セラミックコート層の周縁部の基材の表面には、帯状の外方粗化面が形成されている。
本発明の構造体を製造する際には、セラミックコート層で覆われるべき範囲である被覆予定領域の外側に、被覆予定領域の境界と接するように外方粗化面を形成する。そして、セラミック原料を外方粗化面にセラミック原料を塗布する。その後、セラミック原料が基材の表面に焼き付けられる。この際、セラミック原料が溶融して焼き締まり、焼成収縮を起こす。この焼成収縮は、セラミックコート層にヒケが生じる原因となる。
しかし、基材の表面には外方粗化面が形成されているので、セラミック原料が焼成収縮しようとする際、溶融したセラミック原料が外方粗化面に物理的に引っ掛かり収縮しにくくなる。そのため、セラミックコート層にヒケが生じることを抑制することができる。
さらに、本発明の構造体では、外方粗化面の表面粗さは、Ra=8〜12μm、かつ、RzJIS=25〜36μmである。外方粗化面の表面粗さは、Ra=8〜9μm、かつ、RzJIS=25〜31μmであることが望ましい。
外方粗化面が、このような表面粗さであると、本発明の構造体を製造する際に、セラミック原料が外方粗化面に物理的に引っ掛かり収縮しにくくなる効果が好適に発揮される。そのため、セラミックコート層にヒケが生じることを抑制することができる。
さらに、本発明の構造体では、内方粗化面が形成されており、内方粗化面の表面粗さは、Ra=0.05〜4.0μm、かつ、RzJIS=1.5〜20μmである。内方粗化面が、このような表面粗さであると、基材の表面とセラミックコート層との密着性を向上させることができる。
本発明の構造体では、上記セラミックコート層は、軟化点が300〜900℃である低融点ガラスからなる。
セラミックコート層が、軟化点が300〜900℃である低融点ガラスからなると、軟化点を超える温度で加熱することにより低融点ガラスが軟化溶融するので、容易にセラミックコート層を形成することができる。
本発明の構造体では、上記セラミックコート層の端部は、上記外方粗化面の外側端部と一致していてもよい。また、本発明の構造体では、上記セラミックコート層の端部は、上記外方粗化面の外側端部の外側に位置していてもよい。さらに、上記セラミックコート層の端部は、上記外方粗化面の外側端部よりも内側かつ上記外方粗化面の内側端部よりも外側に位置していてもよい。
本発明の構造体において外方粗化面の外側端部は、セラミックコート層で覆われるべき範囲の基材の表面の端部である。そのため、上記のように外方粗化面が形成されていると、セラミックコート層で覆われるべき範囲の基材の表面は、セラミックコート層で確実に覆われていることになる。そのため、基材の表面がセラミックコート層で覆われることの効果が充分に発揮される。
本発明の構造体では、上記セラミックコート層の周縁部は、上記セラミックコート層の端部から上記セラミックコート層の平均厚さの40倍の距離だけ内側に向かう範囲である。
本発明の構造体では、上記外方粗化面の幅は、0.5〜20mmであることが望ましい。
外方粗化面の幅が、0.5mm未満であると、基材にセラミックコート層を形成する際に、セラミック原料と外方粗化面との接触面積が小さくなる。そのため、セラミック原料が収縮する際に、セラミック原料が引っ掛かる部分が小さくなる。その結果、ヒケが生じることを防ぎにくくなる。
外方粗化面の幅が、20mmを超えると、基材にセラミックコート層を形成する際に、セラミック原料が収縮する部分以上に外方粗化面が形成されることになる。上記範囲を超えて外方粗化面を形成した場合、経済的でなく、また、基材が変形するという問題がある。
本発明の構造体では、上記外方粗化面は、上記基材の表面に連続して形成されていてもよい。
本発明の構造体では、上記セラミックコート層の平均厚さは、50〜1500μmであることが望ましい。
セラミックコート層の平均厚さが、50μm未満であると、基材がセラミックコート層で覆われることの効果が得られにくくなる。
セラミックコート層の平均厚さが、1500μmを超えると、セラミックコート層と基材との熱膨張差によって発生する熱応力が大きくなるのでセラミックコート層が破損しやすくなる。
本発明の構造体では、上記外方粗化面に配置される上記セラミックコート層の厚さは、上記セラミックコート層の平均厚さの80〜120%であることが望ましい。
外方粗化面に配置されるセラミックコート層の厚さが、セラミックコート層の平均厚さの80%未満であると、セラミックコート層が薄いので、基材の表面がセラミックコート層で覆われることの効果が得られにくくなる。
外方粗化面に配置されるセラミックコート層の厚さが、セラミックコート層の平均厚さの120%を超えると、外方粗化面以外の部分に配置されるセラミックコート層の厚さと外方粗化面に配置されるセラミックコート層の厚さの差が大きくなり、これらのセラミックコート層の熱膨張差が大きくなるのでセラミックコート層の層内において破損が生じやすくなる。
本発明の構造体では、上記基材は、ステンレス、鋼、鉄、銅、アルミニウム、インコネル、ハステロイ、インバーから選択される少なくとも一種からなることが望ましい。
ステンレス、鋼、鉄、銅、アルミニウム、インコネル、ハステロイ、インバーは加工が容易であるので、基材を用途に合わせ加工しやすくなる。
本発明の構造体は、排気管として用いられてもよい。
図1(a)〜(c)は、一般的な方法で、金属からなる基材の表面にセラミックコート層を形成する場合に生じるヒケの一例を模式的に示す斜視図である。 図2は、本発明の構造体の製造方法における被覆予定領域決定工程の一例を模式的に示す斜視図である。 図3は、本発明の構造体の製造方法における外方粗化面形成工程の一例を模式的に示す斜視図である。 図4は、本発明の構造体の製造方法における内方粗化面形成工程の一例を模式的に示す斜視図である。 図5は、本発明の構造体の製造方法におけるセラミック原料塗布工程の一例を模式的に示す斜視図である。 図6は、本発明の構造体の製造方法におけるセラミックコート層形成工程の一例を模式的に示す斜視図である。 図7(a)及び(b)は、本発明の構造体の製造方法における外方粗化面形成工程において、外方粗化面を形成する手順の一例を模式的に示す模式図である。 図8は、本発明の構造体の製造方法における外方粗化面形成工程の別の一例を模式的に示す平面図である。 図9(a)及び(b)は、本発明の構造体の製造方法におけるセラミック原料塗布工程において、セラミック原料を塗布する端部の一例を模式的に示す断面図である。 図10(a)〜(c)は、本発明の構造体の製造方法において、製造された構造体のセラミックコート層の端部と、外方粗化面との関係を模式的に示す断面図である。 図11は、本発明の構造体の一例を模式的に示す斜視図である。 図12は、本発明の構造体を排気管として用いた場合の一例を模式的に示す斜視図である。 図13は、本発明の構造体を排気管として用いた場合の一例を模式的に示す斜視図である。 図14は、本発明の構造体を排気管として用いた場合の一例を模式的に示す斜視図である。 図15(a)は、本発明の構造体をケーシングとして用いた場合の一例を模式的に示す斜視図である。図15(b)は、図15(a)のA−A線断面図である。 図16(a)は、本発明の構造体をケーシングとして用いた場合の一例を模式的に示す斜視図である。図16(b)は、図16(a)のB−B線断面図である。 図17(a)は、本発明の構造体をケーシングとして用いた場合の一例を模式的に示す斜視図である。図17(b)は、図17(a)のC−C線断面図である。 図18は、実施例1に係る構造体の上面写真である。 図19は、実施例2に係る構造体の上面写真である。 図20は、比較例1に係る構造体の上面写真である。
(発明の詳細な説明)
以下、詳述する。
本発明の構造体の製造方法を説明する前に、一般的な方法で、金属からなる基材の表面にセラミックコート層を形成する場合に生じるヒケについて説明する。
図1(a)〜(c)は、一般的な方法で、金属からなる基材の表面にセラミックコート層を形成する場合に生じるヒケの一例を模式的に示す斜視図である。
一般的に、金属からなる基材の表面にセラミックコート層を形成する場合には、まず、図1(a)に示すように、基材510の表面511にセラミックコート層で覆われることになる被覆予定領域520(図1(a)中、斜線で示す範囲)を決定する。
そして、図1(b)に示すように、被覆予定領域520にセラミック原料530を塗布する。基材510に塗布されたセラミック原料530は、乾燥され、加熱されて基材510の表面511に焼き付けられセラミックコート層550(図1(c)参照)となる。
この乾燥、加熱の際に、セラミック原料530は溶融することになるが、セラミック原料530が溶融すると、表面張力により端部のセラミック原料530は中心に集まろうと移動する。また、セラミック原料530中の揮発成分も乾燥、加熱の間に揮発することになるのでセラミック原料530が収縮する。
その結果、図1(c)に示すように、セラミックコート層550にヒケが生じ、被覆予定領域520の端部がセラミックコート層550で覆われず剥き出しになったり、セラミックコート層550の厚さが薄くなることがある。
つまり、セラミック原料530が溶融して焼き締まり、焼成収縮を起こすことが、セラミックコート層550にヒケが生じる原因となる。
また、セラミックコート層550にヒケが生じることを予測して、あらかじめ被覆予定領域520の範囲を超えてセラミック原料530を塗布することも考えられるが、ヒケの度合いは、セラミック原料530を調製する際の気温や湿度、セラミック原料530の乾燥条件や加熱条件、また基材表面の状態等により大きく変動するので、無駄なく正確に基材510の表面511をセラミックコート層550で覆うことは難しい。
一方、本発明の構造体の製造方法では、このようにセラミックコート層にヒケが生じることを抑制できる。その原理を説明する。
本発明の構造体の製造方法は、金属からなる基材の表面の一部に被覆予定領域を決定する被覆予定領域決定工程と、被覆予定領域の外側に、被覆予定領域の境界と接するように帯状の外方粗化面を形成する外方粗化面形成工程と、被覆予定領域に、内方粗化面を形成する内方粗化面形成工程と、被覆予定領域及び外方粗化面が覆われるように軟化点が300〜900℃である低融点ガラス粉末を含むセラミック原料を塗布するセラミック原料塗布工程と、セラミック原料を基材の表面に軟化点よりも高い温度で焼き付けセラミックコート層を形成するセラミックコート層形成工程とを含む。
本発明の構造体の製造方法における被覆予定領域決定工程では、まず、金属からなる基材を準備し、基材の表面の一部に、セラミックコート層で覆われることになる被覆予定領域を決定する。なお、被覆予定領域の面積は、基材の表面の全体の面積よりも小さくなる。
本明細書において、「金属からなる基材」とは、金属のみからなる基材に限られず、強度や耐熱性を向上させるための金属以外の元素を含む基材を含む。
本発明の構造体の製造方法における外方粗化面形成工程では、被覆予定領域の外側に、被覆予定領域の境界と接するように帯状の外方粗化面を形成する。
この際、外方粗化面の表面粗さがRa=8〜12μm、かつ、RzJIS=25〜36μmになるように外方粗化面を形成する。表面粗さは、Ra=8〜9μm、かつ、RzJIS=25〜31μmとすることがより望ましい。
外方粗化面の表面粗さがRa=8〜12μm、かつ、RzJIS=25〜36μmであると、後述するセラミックコート層形成工程において、セラミックコート層にヒケが生じることを抑制することができる。
なお、本明細書で「Ra」とはJIS B 0601(2001)に準拠して決定される算術平均粗さのことを意味する。
また、本明細書で「RzJIS」とは、JIS B 0601(2001)に準拠して決定される十点平均粗さのことを意味する。
これらは、株式会社東京精密製ハンディサーフE−35Bを用い、測長距離を10mmとして測定することができる。
本発明の構造体の製造方法における内方粗化面形成工程では、被覆予定領域に、内方粗化面を形成する。
この際、内方粗化面の表面粗さが、Ra=0.05〜4.0μm、かつ、RzJIS=1.5〜20μmとなるようにする。
内方粗化面の表面粗さが、Ra=0.05〜4.0μm、かつ、RzJIS=1.5〜20μmであると、後の工程を経て製造される構造体において、基材の表面とセラミックコート層との密着性を向上させることができる。
本発明の構造体の製造方法におけるセラミック原料塗布工程では、まず、軟化点が300〜900℃である低融点ガラス粉末を含むセラミック原料を準備する。
そして、セラミック原料を被覆予定領域及び外方粗化面に塗布する。
本発明の構造体の製造方法におけるセラミックコート層形成工程では、セラミック原料を基材の表面に低融点ガラス粉末の軟化点よりも高い温度で焼き付けセラミックコート層を形成する。
セラミック原料を焼き付ける際、セラミック原料が溶融して焼き締まり、焼成収縮を起こそうとする。
しかし、セラミック原料は、外方粗化面にも塗布されているので、セラミック原料が焼成収縮しようとする際、溶融したセラミック原料が外方粗化面に物理的に引っ掛かり収縮しにくくなる。そのため、形成されるセラミックコート層にヒケが生じることを抑制することができる。
これら一連の工程の一例を以下に図面を用いて説明する。
図2は、本発明の構造体の製造方法における被覆予定領域決定工程の一例を模式的に示す斜視図である。
本発明の構造体の製造方法における被覆予定領域決定工程では、まず、図2に示すように、金属からなる基材10を準備し、基材10の表面11に、セラミックコート層で覆われることになる被覆予定領域20(図2中、斜線で示す)を決定する。図2中、符号20aは被覆予定領域20の境界を示す。なお、被覆予定領域20の面積は、基材10の表面11の全体の面積よりも小さくなる。
図3は、本発明の構造体の製造方法における外方粗化面形成工程の一例を模式的に示す斜視図である。
次に、本発明の構造体の製造方法における外方粗化面形成工程では、図3に示すように、被覆予定領域20の外側に、被覆予定領域20の境界20aと接するように帯状の外方粗化面40を形成する。
外方粗化面40には、被覆予定領域20に対し内側に位置する内側端部41と、被覆予定領域20に対し外側に位置する外側端部42とがあり、被覆予定領域20の境界20aと、外方粗化面40の内側端部41とは一致することになる。
また、外方粗化面40の表面粗さは、Ra=8〜12μm、かつ、RzJIS=25〜36μmになるようにする。
図4は、本発明の構造体の製造方法における内方粗化面形成工程の一例を模式的に示す斜視図である。
次に、本発明の構造体の製造方法における内方粗化面形成工程では、図4に示すように、被覆予定領域20に内方粗化面44を形成する。
内方粗化面44の表面粗さは、Ra=0.05〜4.0μm、かつ、RzJIS=1.5〜20μmになるようにする。
図5は、本発明の構造体の製造方法におけるセラミック原料塗布工程の一例を模式的に示す斜視図である。
次に、本発明の構造体の製造方法におけるセラミック原料塗布工程では、まず、軟化点が300〜900℃である低融点ガラス粉末を含むセラミック原料30を準備する。そして、図5に示すように、被覆予定領域20及び外方粗化面40にセラミック原料30を塗布する。
図6は、本発明の構造体の製造方法におけるセラミックコート層形成工程の一例を模式的に示す斜視図である。
次に、本発明の構造体の製造方法におけるセラミックコート層形成工程では、図6に示すように、セラミック原料30を基材10の表面11に低融点ガラス粉末の軟化点よりも高い温度で焼き付けセラミックコート層50を形成する。
セラミック原料30を焼き付ける際、セラミック原料30が溶融して焼き締まり、焼成収縮を起こそうとする。
しかし、外方粗化面40にセラミック原料30を塗布すると、セラミック原料30が焼成収縮しようとする際、溶融したセラミック原料30が外方粗化面40に物理的に引っ掛かり収縮しにくくなる。そのため、セラミックコート層50にヒケが生じることを抑制することができる。
また、外方粗化面形成工程において形成する外方粗化面40の表面粗さは、Ra=8〜12μm、かつ、RzJIS=25〜36μmである。外方粗化面40が、このような表面粗さであると、上記のセラミック原料30が外方粗化面40に物理的に引っ掛かり収縮しにくくなる効果が好適に発揮される。そのため、セラミックコート層50にヒケが生じることを抑制することができる。
以下、本発明の構造体の製造方法における各工程の望ましい態様についてより詳しく説明する。
<被覆予定領域決定工程>
本発明の構造体の製造方法における被覆予定領域決定工程では、まず、金属からなる基材を準備する。
基材としては、特に限定されないが、ステンレス、鋼、鉄、銅、アルミニウム、インコネル、ハステロイ、インバーから選択される少なくとも一種からなることが望ましい。
ステンレス、鋼、鉄、銅、アルミニウム、インコネル、ハステロイ、インバーは加工が容易であるので、基材を用途に合わせ加工しやすくなる。
本発明の構造体の製造方法において、基材の形状は、特に限定されず、平面状の基材であってもよく、曲面状の基材であってもよい。
また、三角柱、四角柱、六角柱、八角柱等の角柱状や、円柱状や、球状等の立体的な形状の基材であってもよい。
次に、セラミックコート層で覆われることになる被覆予定領域を決定する。
被覆予定領域の境界は、直線状であっても、曲線状であってもよい。
<外方粗化面形成工程>
本発明の構造体の製造方法における外方粗化面形成工程では、被覆予定領域の外側に、被覆予定領域の境界と接するように帯状の外方粗化面を形成する。
本発明の構造体の製造方法における外方粗化面の幅は、0.5〜20mmであることが望ましい。
外方粗化面の幅が、0.5mm未満であると、セラミック原料と外方粗化面との接触面積が小さくなる。そのため、セラミック原料が収縮する際に、セラミック原料が引っ掛かる部分が小さくなる。その結果、ヒケが生じることを防ぎにくくなる。
外方粗化面の幅が、20mmを超えると、セラミック原料が収縮する部分以上に外方粗化面が形成されることになる。上記範囲を超えて外方粗化面を形成した場合、セラミック原料が収縮しない部分にまで外方粗化面が形成されることになり、この部分では、ヒケ防止の効果は得られにくく、また、経済的でない。
本発明の構造体の製造方法における外方粗化面形成工程において、に外方粗化面を形成する方法は、特に限定されないが、サンドブラストやショットブラスト等の機械的手段、エッチング等の化学的手段等を用いることができる。これらの中では、サンドブラストにより外方粗化面を形成することが望ましい。
サンドブラストにより外方粗化面を形成する場合には、基材の表面において外方粗化面を形成する部分以外の部分をマスキングする。
次に、基材の表面にサンドブラストすることにより外方粗化面を形成することができる。なお、サンドブラストの条件は、特に限定されないが、例えば、新東工業株式会社製自給式エアーブラストを用い、エアー圧0.3MPaでサンドブラストすることができる。
サンドブラストにより外方粗化面を形成する手順の一例を以下に図面を用いて説明する。
図7(a)及び(b)は、本発明の構造体の製造方法における外方粗化面形成工程において、外方粗化面を形成する手順の一例を模式的に示す模式図である。
図7(a)に示すように、基材10の表面11において外方粗化面40を形成する部分以外の部分をマスキングする(図7(a)中、マスキングを符号45で示す)。
次に、図7(b)に示すように、基材10の表面11にサンドブラストすることにより外方粗化面40を形成することができる。なお、サンドブラストの条件は、特に限定されないが、例えば、新東工業株式会社製自給式エアーブラストを用い、エアー圧0.3MPaでサンドブラストすることができる。
また、本工程では、外方粗化面を連続的に形成してもよく、断続的に形成してもよい。
すなわち、外方粗化面を連続的に形成するとは、図3に示すように外方粗化面を形成することであり、外方粗化面を断続的に形成するとは、以下の図8に示すように外方粗化面を形成することである。
図8は、本発明の構造体の製造方法における外方粗化面形成工程の別の一例を模式的に示す平面図である。
本工程では、図8に示すように、外方粗化面40を基材10の表面11に断続的に形成してもよい。
なお、本明細書において「帯状の外方粗化面」とは、図3に示すように連続的に形成されているもの、及び、図8に示すように断続的に形成されているものを含む。
なお、本発明の構造体の製造方法では、外方粗化面を連続して形成することが望ましい。
外方粗化面が、連続して形成されていると、後述するセラミックコート層形成工程において、セラミック原料が収縮する際に、セラミック原料が外方粗化面に常に引っ掛かることになる。従って、ヒケの発生を防ぎやすくなる。
本発明の構造体の製造方法における外方粗化面は、直線状に形成してもよく、曲線状に形成してもよい。
<内方粗化面形成工程>
本発明の構造体の製造方法における内方粗化面形成工程では、被覆予定領域に内方粗化面を形成する。
内方粗化面を形成する方法としては、表面粗さが、Ra=0.05〜4.0μm、かつ、RzJIS=1.5〜20μmとなるようにする以外は、外方粗化面を形成する方法と同様の方法で形成することができる。
なお、外方粗化面形成工程及び内方粗化面形成工程を行う順番は逆であってもよい。
<セラミック原料塗布工程>
上記の通り、本発明の構造体の製造方法におけるセラミック原料塗布工程では、セラミック原料を被覆予定領域及び外方粗化面に塗布する。
セラミック原料は、軟化点が300〜900℃である低融点ガラス粉末を含む。
このようなセラミック原料を用いると、軟化点を超える温度で加熱することにより低融点ガラス粉末が軟化溶融するので、容易にセラミックコート層を形成することができる。
なお、低融点ガラスの軟化点は以下の方法により測定することができる。
まず、低融点ガラス粉末を適量となるように示差熱天秤(Rigaku製、「TG−DTA」型番TG8120)に入れ、大気雰囲気において10℃/分の設定で950℃まで昇温し、サンプリング周期1秒でDTA曲線を得る。得られたDTA曲線の第4変曲点を、軟化点とする。
本発明の構造体の製造方法における低融点ガラスとしては、軟化点が300〜900℃であれば、特に限定されず、セラミックコート層に付与する性能に合わせて選択することができる。
本発明の構造体の製造方法におけるセラミックコート層に断熱性能を付与する場合には、バリウムガラス、ボロンガラス、ストロンチウムガラス、アルミナ珪酸ガラス、ソーダ亜鉛ガラス、及び、ソーダバリウムガラスのうち少なくとも一種を含むガラスであることが望ましい。これらの中ではバリウムガラスを含むことが望ましい。
これらガラスを用いると、熱伝導率が低く、かつ、耐熱性、耐久性を有するセラミックコート層を形成することができる。
本発明の構造体の製造方法におけるセラミックコート層に絶縁性能を付与する場合には、アルミナ、ムライトのうち少なくとも一種を含むことが望ましい。これらの中ではアルミナを含むことが望ましい。
これら材料を用いると、絶縁性が高く、かつ、耐熱性、耐久性を有するセラミックコート層を形成することができる。
本発明の構造体の製造方法におけるセラミック原料は、水や、有機結合材や、有機溶媒等を含むことが望ましい。セラミック原料が、水や有機結合材を含むと、セラミック原料は粘性を有することになる。粘性を有するセラミック原料は、基材の表面に塗布しやすくなり、また、塗布量も制御しやすくなる。また、セラミック原料が、有機溶媒を含むと、表面張力が低下しやすくなる。その結果、セラミック原料を外方粗化面に塗布する際に、セラミック原料は外方粗化面になじみやすくなり、塗布しやすくなる。
一方で、セラミックコート層形成工程においてこれら物質を含むセラミック原料を基材に焼き付けると、これら物質は、蒸発や分解され消失する。そのため、セラミック原料が焼成収縮する度合いが大きくなり、セラミックコート層にヒケが生じやすくなる。しかし、本発明の構造体の製造方法では、上記の通り、基材に外方粗化面を形成するので、セラミック原料の焼成収縮度合いが大きくなったとしても、被覆予定領域を、セラミックコート層で確実に覆うことができる。
本発明の構造体の製造方法における有機結合材としては、特に限定されないが、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。
これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
有機溶媒としては、特に限定されないが、メタノール、エタノール等が挙げられる。
これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、セラミック原料に水、有機結合材及び有機溶媒を併用してもよい。
セラミック原料に水、有機結合材及び有機溶媒を加える場合には、セラミック原料の重量に対する水、有機結合材及び有機溶媒の合計重量は、5〜80%であることが望ましい。
本発明の構造体の製造方法において形成するセラミックコート層に断熱性能を付与する場合には、セラミック原料にさらに造孔材を加えてもよい。
セラミック原料が造孔材を含むと、造孔材は、セラミックコート層形成工程において、分解し、セラミックコート層に気孔を形成する。
セラミックコート層に気孔が存在していると、気孔部分では熱が伝わりにくくなるので、セラミックコート層の断熱性が向上する。
本発明の構造体の製造方法における造孔材としては、特に限定されないが、酸化物系セラミックを成分とする微小中空球体であるバルーン、球状アクリル粒子、グラファイト等のカーボン、炭酸塩、発泡剤等を用いることができる。また、形成されるセラミックコート層は、高い断熱性能を有することが望ましく、そのためには、気孔は、なるべく小さい径のものが均一に分散していることがより望ましい。
このような観点から、造孔材は、カーボン、炭酸塩、又は、発泡剤が望ましい。炭酸塩、発泡剤としては、CaCO、BaCO、NaHCO、NaCO、(NHCO等が挙げられる。
さらに、これらの中では、グラファイト等のカーボンが好ましい。
本発明の構造体の製造方法におけるセラミック原料塗布工程では、セラミック原料を外方粗化面に塗布する。このようにする方法としては、以下の2通りの塗布方法がある。
第1の塗布方法としては、塗布されるセラミック原料の端部が、外方粗化面の外側端部と一致するようにセラミック原料を塗布する方法である。第2の塗布方法としては、塗布されるセラミック原料の端部が、外方粗化面の外側端部のさらに外側に位置するようにセラミック原料を塗布する方法である。
より具体的な例としては、以下の図9(a)及び(b)に示す方法があげられる。
図9(a)及び(b)は、本発明の構造体の製造方法におけるセラミック原料塗布工程において、セラミック原料を塗布する端部の一例を模式的に示す断面図である。
本発明の構造体の製造方法におけるセラミック原料塗布工程では、外方粗化面40にセラミック原料30を塗布する。このようにする方法としては、図7(a)及び(b)に示すように2通りの塗布方法がある。
すなわち、図9(a)に示すように、塗布されるセラミック原料30の端部31が、外方粗化面40の外側端部42と一致するようにセラミック原料30を塗布する方法と、図9(b)に示すように、塗布されるセラミック原料30の端部31が、外方粗化面40の外側端部42のさらに外側に位置するようにセラミック原料30を塗布する方法とがある。
また、セラミック原料塗布工程では、後述するセラミックコート層形成工程において形成されるセラミックコート層50と、外方粗化面40との関係が以下に記載する第1〜第3の端部の状態のうちいずれかの状態となるように、塗布されるセラミック原料30の端部31を位置させることが望ましい。
すなわち、第1の状態としては、セラミックコート層の端部が、上記外方粗化面の外側端部と一致する状態である。
第2の状態としては、セラミックコート層の端部が、上記外方粗化面の外側端部よりも外側に位置する状態である。
第3の状態としては、セラミックコート層の端部が、上記外方粗化面の外側端部よりも内側かつ上記外方粗化面の内側端部よりも外側に位置する状態である。
セラミックコート層と、外方粗化面との関係がこのような状態になるように、セラミック原料を塗布することにより、被覆予定領域を、セラミックコート層で確実に覆うことができる。
また、セラミックコート層と外方粗化面との関係を第1〜第3の端部の状態にするには、セラミック原料の焼成収縮率や、外方粗化面の形状等に応じてセラミック原料の塗布量や塗布位置等を調整することにより行うことができる。
より具体的な第1〜第3の端部の状態の例として図10(a)〜(c)に示す状態があげられる。
図10(a)〜(c)は、本発明の構造体の製造方法において、製造された構造体のセラミックコート層の端部と、外方粗化面との関係を模式的に示す断面図である。
図10(a)では、セラミックコート層50の端部51は、外方粗化面40の外側端部42と一致している。
図10(b)では、セラミックコート層50の端部51は、外方粗化面40の外側端部42の外側に位置している。
図10(c)では、セラミックコート層50の端部51が、外方粗化面40の外側端部42よりも内側かつ外方粗化面40の内側端部41よりも外側に位置している。
<セラミックコート層形成工程>
本発明の構造体の製造方法におけるセラミックコート層形成工程では、セラミック原料を基材の表面に焼き付けることになるが、この前に、セラミック原料を乾燥させてもよい。
本発明の構造体の製造方法におけるセラミック原料を乾燥させる際の条件としては、特に限定されず、セラミック原料に含まれる水、有機結合材、有機溶媒等の種類や量によって適宜調整することが望ましい。
例えば、セラミック原料の重量に対する水、有機結合材及び有機溶媒の合計重量が、5〜80%である場合の乾燥条件としては、乾燥温度が70〜120℃、乾燥時間が20〜60分間であることが望ましい。
その後、本発明の構造体の製造方法におけるセラミックコート層形成工程では、セラミック原料を基材の表面に焼き付ける。
セラミック原料を焼き付ける条件としては、低融点ガラス粉末の軟化点よりも高い温度であれば特に限定されないが、焼き付け温度が310〜910℃、焼き付け時間が10〜60分間であることが望ましい。
以上の工程を経て、構造体を製造することができる。また、このように製造された構造体は、本発明の構造体でもある。
次に、本発明の構造体について説明する。
本発明の構造体は、金属からなる基材と、基材の表面に形成されたセラミック原料からなるセラミックコート層とからなる構造体である。
そして、基材の表面のうちセラミックコート層が形成されている部分の面積が、基材の表面の全体の面積よりも小さい。
つまり、基材の表面には、セラミックコート層が形成されている部分と形成されていない部分がある。
また、基材の表面には外方粗化面が形成されており、セラミックコート層の周縁部に外方粗化面が位置している。
上記の本発明の構造体の製造方法で説明したように、基材の表面に外方粗化面を設けることで、セラミックコート層にヒケが生じることを抑制することができる。
なお、本発明の構造体における、外方粗化面の形状は上記本発明の構造体の製造方法において既に説明しているので、ここでの説明は省略する。
また、セラミックコート層の周縁部は、例えば、セラミックコート層の端部からセラミックコート層の平均厚さの40倍の距離だけ内側に向かう範囲である。
なお、セラミックコート層の周縁部に外方粗化面が位置するとは、周縁部に外方粗化面の少なくとも一部が位置していることを意味する。
本発明の構造体では、セラミックコート層は、軟化点が300〜900℃である低融点ガラスからなる。
セラミックコート層が、軟化点が300〜900℃である低融点ガラスからなると、軟化点を超える温度で加熱することにより低融点ガラスが軟化溶融するので、容易にセラミックコート層を形成することができる。
なお、セラミックコート層の望ましい組成等は、上記本発明の構造体の製造方法において既に説明しているので、ここでの説明は省略する。
なお、本発明の構造体では、セラミックコート層に含まれる低融点ガラスの軟化点は、以下の方法により測定することができる。
まず、セラミックコート層を粉末状に掻き出し、掻き出した粉末状のセラミックコート層を適量となるように示差熱天秤(Rigaku製、「TG−DTA」型番TG8120)に入れ、大気雰囲気において10℃/分の設定で950℃まで昇温し、サンプリング周期1秒でDTA曲線を得る。
得られたDTA曲線の第4変曲点を、軟化点とする。
本発明の構造体としては、例えば、図11に示す構造体があげられる。
図11は、本発明の構造体の一例を模式的に示す斜視図である。
図11に示すように、本発明の構造体の一例である構造体100は、金属からなる基材10と、基材10の表面11に形成されたセラミック原料からなるセラミックコート層50とからなる構造体である。
そして、基材10の表面11のうちセラミックコート層50が形成されている部分の面積が、基材10の表面11の全体の面積よりも小さい。
つまり、基材10の表面11には、セラミックコート層50が形成されている部分と形成されていない部分がある。
また、基材10の表面11には外方粗化面40が形成されており、セラミックコート層50の周縁部55に外方粗化面40が位置している。
上記の本発明の構造体の製造方法で説明したように、基材10の表面11に外方粗化面40を設けることで、セラミックコート層50にヒケが生じることを抑制することができる。
また、セラミックコート層50の周縁部55は、セラミックコート層50の端部51からセラミックコート層50の平均厚さの40倍の距離だけ内側に向かう範囲Aである。
さらに、セラミックコート層は、軟化点が300〜900℃である低融点ガラスからなる。
本発明の構造体では、セラミックコート層の平均厚さは、50〜1500μmであることが望ましい。
セラミックコート層の平均厚さが、50μm未満であると、基材がセラミックコート層で覆われることの効果が得られにくくなる。
セラミックコート層の平均厚さが、1500μmを超えると、セラミックコート層と基材との熱膨張差によって発生する熱応力が大きくなるのでセラミックコート層が破損しやすくなる。
なお、「セラミックコート層の平均厚さ」とは、外方粗化面の内側端部より内側に形成されたセラミックコート層の平均厚さのことを意味する。
セラミックコート層の厚さの測定には、株式会社フィッシャーインストルメンツ社製、デュアルスコープMP40を用いることができる。セラミックコート層の任意の30点において、デュアルスコープMP40の膜厚測定における膜厚補正を実施したのち、膜厚測定をセラミックコート層の任意の10点に対して行い、その測定値の平均をとることによりセラミックコート層の厚さを測定することができる。膜厚測定を10点に対して行う場合、測定領域内で測定部位の偏りがないようにすることが望ましく、例えば、測定を1mmの等間隔おきに行う等の方法が挙げられる。
本発明の構造体では、外方粗化面に配置されるセラミックコート層の厚さは、セラミックコート層の平均厚さの80〜120%であることが望ましい。
外方粗化面に配置されるセラミックコート層の厚さが、セラミックコート層の平均厚さの80%未満であると、セラミックコート層が薄いので、断熱効果が低くなる。
外方粗化面に配置されるセラミックコート層の厚さが、セラミックコート層の平均厚さの120%を超えると、外方粗化面に配置されるセラミックコート層とそれ以外の部分のセラミックコート層の厚み差による熱膨張の差異が大きくなり、セラミックコート層が割れるという問題がある。
なお、本明細書において、「外方粗化面に配置されるセラミックコート層の厚さ」とは、外方粗化面に配置されているセラミックコート層の平均厚さを意味する。外方粗化面に配置されたセラミックコート層の厚さは、上記セラミックコート層の厚さの測定と同じ方法で測定することができる。
本発明の構造体では、基材は、ステンレス、鋼、鉄、銅、アルミニウム、インコネル、ハステロイ、インバーから選択される少なくとも一種からなることが望ましい。
ステンレス、鋼、鉄、銅、アルミニウム、インコネル、ハステロイ、インバーは加工が容易であるので、基材を用途に合わせ加工しやすくなる。
次に、本発明の構造体の用途について説明する。
本発明の構造体は、例えば、排気管、排ガス浄化装置における排ガス処理体を収容するケーシング、吸気ポート、エンジンヘッド(吸気ポートと排気ポートを含む)、シリンダ、ピストン、ターボハウジング、熱交換器、EGRパイプの用途に用いることができる。
本発明の構造体を排気管に用いる場合について説明する。
本発明の構造体を排気管として用いた場合、排気管は、排ガスの流入口と、排ガスの流出口とを有する基材と、基材の表面に形成されたセラミックコート層からなっていてもよい。
セラミックコート層は、流出口から流入口に向かって基材の表面の所定の範囲に形成されており、流入口側のセラミックコート層の周縁部には、外方粗化面が形成されていてもよい。
本発明の構造体を排気管として用いた場合、セラミックコート層は、基材の内側表面に形成されていてもよく、基材の外側表面に形成されていてもよく、基材の内側表面及び基材の外側表面の両方に形成されていてもよい。
基材の内側表面とは、排ガスが通過する流路側の基材の表面のことを意味する。
基材の外側表面とは、排ガスが通過する流路側とは反対側の基材の表面のことを意味する。
本発明の構造体を排気管として用いた場合、セラミックコート層は、バリウムガラスからなっていることが望ましい。セラミックコート層がバリウムガラスであると、排気管の断熱性が向上する。
ここで、排ガスが排気管を通過する場合について説明する。
排ガスは、排気管の流入口から流れ込み、排気管の流出口ら排気される。
排ガスが排気管の流入口に到達した時点では、排ガスGが充分に高い温度を有する。また、排気管を通過する際に、排ガスから熱が放出され、排ガスの温度が低下しやすくなる。しかし、排気管に上記のようにセラミックコート層が形成されていると、排気管の断熱性が高くなり、排ガスの温度が低下することを防ぐことができる。排ガスは、下流に設置された排ガス浄化装置に設置された排ガス処理体により浄化されることになるが、排ガスの温度が低下せず、充分に高い場合、排ガスは速やかに排ガス処理体の温度を上昇させ、排ガス処理体の排ガス浄化機能を好適に発揮させることができる。つまり、排ガス浄化効率が向上する。
さらに、このような排気管を製造する際には、基材に外方粗化面を形成するので、セラミックコート層の端部の位置を制御することができる。
従って、セラミックコート層で覆うべき基材の部分を確実に覆うことができる。
また、セラミックコート層が形成されていることにより、所望の断熱性能や絶縁性能を確保することができる。
上記排気管についてさらに詳述すると、例えば、図12〜図14に示す排気管があげられる。
図12〜図14は、本発明の構造体を排気管として用いた場合の一例を模式的に示す斜視図である。
図12では、排気管200は、排ガスの流入口201と、排ガスの流出口202とを有する基材210と、基材210の内側表面211に形成されているセラミックコート層250からなる。
そして、セラミックコート層250は、流出口202から流入口201に向かって、内側表面211の所定の範囲に形成されている。
また、流入口202側のセラミックコート層250の周縁部255には、外方粗化面240が形成されている。
図13では、排気管200は、排ガスの流入口201と、排ガスの流出口202とを有する基材210と、基材210の外側表面211に形成されているセラミックコート層250からなる。
セラミックコート層250は、流出口202から流入口201に向かって、外側表面211の所定の範囲に形成されている。
また、流入口202側のセラミックコート層250の周縁部255には、外方粗化面240が形成されている。
図14では、排気管200は、排ガスの流入口201と、排ガスの流出口202とを有する基材210と、基材210の内側表面211及び基材210の外側表面211に形成されているセラミックコート層250及びセラミックコート層250からなる。
セラミックコート層250及びセラミックコート層250は、流出口202から流入口201に向かって、内側表面211及び外側表面211の所定の範囲に形成されている。
また、流入口202側のセラミックコート層250の周縁部255及びセラミックコート層250の周縁部255には、外方粗化面240及び外方粗化面240が形成されている。
次に、本発明の構造体を排ガス浄化装置における排ガス処理体を収容するケーシングに用いる場合について説明する。
本発明の構造体を用いた排ガス浄化装置では、ケーシングは基材を含んでおり、基材は、排ガスの流入口、流入口側の流入口コーン部、排ガスの流出口、及び、流出口コーン部を有している。さらに、流入口コーン部の流入口側には、外方粗化面が形成されており、流出口コーン部の流入口側には、外方粗化面が形成されている。
さらに、流入口コーン部には、セラミックコート層が形成されており、セラミックコート層の流入口側の端部の周縁部に、外方粗化面が位置していてもよい。また、流出口コーン部には、セラミックコート層が形成されており、セラミックコート層の流入口側の端部の周縁部に、外方粗化面が位置していてもよい。
本発明の構造体を排ガス浄化装置における排ガス処理体を収容するケーシングに用いる場合、セラミックコート層は、各コーン部の基材の内側表面に形成されていてもよく、各コーン部の基材の外側表面に形成されていてもよい。
基材の内側表面とは、排ガスが通過する流路側の基材の表面のことを意味する。
基材の外側表面とは、排ガスが通過する流路側とは反対側の基材の表面のことを意味する。
本発明の構造体を排ガス浄化装置における排ガス処理体を収容するケーシングに用いる場合、セラミックコート層は、バリウムガラスからなっていることが望ましい。セラミックコート層がバリウムガラスであると、排気管の断熱性が向上する。
本発明の排ガス浄化装置におけるケーシングの内部構造について説明する。
ケーシングには、保持シール材が周囲に巻き付けられた排ガス処理体が収容されている。
排ガス処理体は、ハニカム形状であることが望ましく、排ガスを浄化するための触媒が担持されていることが望ましい。
排ガスは、流入口から流入し、排ガス処理体の中を通過することになるが、排ガス処理体には、触媒が担持されているので、排ガスは触媒作用により浄化される。
本発明の排ガス浄化装置における保持シール材は、排ガス処理体を外部からの衝撃から守る目的や、排ガス処理体がケーシングから抜け落ちるのを防ぐ目的や、断熱性を高め、排ガスの温度が低下することを防ぐ目的で用いられている。
本発明の排ガス浄化装置におけるセラミックコート層が、コーン部の基材の内側表面及び/又は外側表面に形成されている場合の効果について説明する。
排ガスがケーシングの流入口に到達した時点では、排ガスが充分に高い温度を有する。また、ケーシングを通過する際に、排ガスから熱が放出され、排ガスの温度が低下しやすくなる。しかし、排ガスがケーシングを通過する際、コーン部の内側表面及び/又は外側表面にセラミックコート層が形成されている場合、これらは断熱性が高いので、排ガスが排ガス処理体を通過するまで、排ガスの温度が低下することを防ぐことができる。排ガスは、排ガス浄化体により浄化されることになるが、排ガスの温度が低下せず、充分に高い場合、排ガスは速やかに排ガス処理体の温度を上昇させ、排ガス処理体の排ガス浄化機能を好適に発揮させることができる。つまり、排ガス浄化効率が向上する。
また、このようなケーシングでは、流出口コーン部にもセラミックコート層が形成されているので、排ガスが排ガス処理体を通過した後も、排ガスの温度が保たれることになる。
特に、セラミックコート層が、コーン部の基材の内側表面に形成されていると以下の効果を奏する。
排ガスが、排ガス浄化装置を通過する際に、排ガスの温度が低下すると、排ガスの凝集水が生じやすくなり、排ガスの流路が、腐食しやすくなる。しかし、このようなケーシングを用いると、排ガスの温度が低下しにくくなるので、排ガス凝集水が生じるのを防ぐことができ、流路の腐食を防ぐことができる。
本発明の排ガス浄化装置におけるケーシングを製造する際には、外方粗化面を形成するので、流入口コーン部及び流出口コーン部を、それぞれ確実にセラミックコート層で覆うことができる。
また、セラミックコート層が形成されていることにより、所望の断熱性能や絶縁性能を確保することができる。
上記排ガス浄化装置についてさらに詳述すると、例えば、以下の図15(a)及び(b)、図16(a)及び(b)並びに図17(a)及び(b)に示すような排ガス浄化装置があげられる。
図15(a)は、本発明の構造体をケーシングとして用いた場合の一例を模式的に示す斜視図である。図15(b)は、図15(a)のA−A線断面図である。
図15(a)及び(b)に示すように、ケーシング300は基材310を含んでいる。ケーシング300には、保持シール材370が巻き付けられた排ガス処理体360が収容されている。
そして、基材310は、排ガスの流入口301、流入口301側の流入口コーン部303、排ガスの流出口302、及び、流出口コーン部304を有している。さらに、流入口コーン部303の基材の内側表面311aの流入口301側には、外方粗化面340aが形成されており、流出口コーン部303の基材の内側表面311aの流入口301側には、外方粗化面340bが形成されている。
さらに、流入口コーン部303の基材の内側表面311bには、セラミックコート層350aが形成されており、セラミックコート層350aの流入口301側の端部351aの周縁部355aに、外方粗化面340aが位置している。
また、流出口コーン部304の基材の内側表面311bには、セラミックコート層350bが形成されており、セラミックコート層350bの流入口301側の端部351bの周縁部355bに、外方粗化面340bが位置している。
図16(a)は、本発明の構造体をケーシングとして用いた場合の一例を模式的に示す斜視図である。図16(b)は、図16(a)のB−B線断面図である。
図16(a)及び(b)に示すように、ケーシング300は基材310を含んでいる。ケーシング300には、保持シール材370が巻き付けられた排ガス処理体360が収容されている。
そして、基材310は、排ガスの流入口301、流入口301側の流入口コーン部303、排ガスの流出口302、及び、流出口コーン部304を有している。さらに、流入口コーン部303の基材の外側表面311aの流入口301側には、外方粗化面340aが形成されており、流出口コーン部303の基材の外側表面311aの流入口301側には、外方粗化面340bが形成されている。
さらに、流入口コーン部303の基材の外側表面311aには、セラミックコート層350aが形成されており、セラミックコート層350aの流入口301側の端部351aの周縁部355aに、外方粗化面340aが位置している。
また、流出口コーン部304の基材の外側表面311bには、セラミックコート層350bが形成されており、セラミックコート層350bの流入口301側の端部351bの周縁部355bに、外方粗化面340bが位置している。
図17(a)は、本発明の構造体をケーシングとして用いた場合の一例を模式的に示す斜視図である。図17(b)は、図17(a)のC−C線断面図である。
図17(a)及び(b)に示すように、ケーシング300は基材310を含んでいる。ケーシング300には、保持シール材370が巻き付けられた排ガス処理体360が収容されている。
そして、基材310は、排ガスの流入口301、流入口301側の流入口コーン部303、排ガスの流出口302、及び、流出口コーン部304を有している。さらに、流入口コーン部303の基材の内側表面311a及び基材の外側表面311aの流入口301側には、外方粗化面340a及び外方粗化面340aが形成されており、流出口コーン部303の基材の内側表面311a及び基材の外側表面311aの流入口301側には、外方粗化面340b及び外方粗化面340bが形成されている。
さらに、流入口コーン部304の基材の内側表面311a及び基材の外側表面311aには、セラミックコート層350a及びセラミックコート層350aが形成されており、セラミックコート層350a及びセラミックコート層350aの流入口301側の端部351a及び端部351aの周縁部355a及び周縁部355aに、外方粗化面340a及び外方粗化面340aが位置している。
また、流出口コーン部304の基材の内側表面311b及び基材の外側表面311bには、セラミックコート層350b及びセラミックコート層350bが形成されており、セラミックコート層350b及びセラミックコート層350bの流入口301側の端部351b及び端部351bの周縁部355b及び周縁部355bに、外方粗化面340b及び外方粗化面部340bが位置している。
以下、本発明の構造体の製造方法について作用効果を記載する。
(1)本発明の構造体の製造方法では、被覆予定領域決定工程では、基材の表面の一部に、セラミックコート層で覆われることになる被覆予定領域を決定する。また、外方粗化面形成工程では、被覆予定領域の外側に、被覆予定領域の境界と接するように、帯状の外方粗化面を形成する。この際、外方粗化面の表面粗さを、Ra=8〜12μm、かつ、RzJIS=25〜36μmとする。
このような工程を経てからセラミックコート層形成工程を行うので、セラミックコート層形成工程において、セラミック原料を基材の表面に焼き付ける場合に、セラミック原料は溶融して焼き締まりが焼成収縮しようとするが、溶融したセラミック原料が外方粗化面に物理的に引っ掛かり収縮しにくくなる。そのため、セラミックコート層にヒケが生じることを抑制することができる。
その結果、セラミックコート層の端部の位置を制御しやすくなる。従って、被覆予定領域を、しっかりとセラミックコート層で覆うことができる。
(実施例)
以下に実施例を掲げ、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
(実施例1)
(1)被覆予定領域決定工程
(1−1)基材の準備
まず、ステンレス鋼材(SUS430)からなる平板状の基材(縦×横×高さ=40mm×40mm×1.5mm)を準備した。
(1−2)被覆予定領域の決定
次に、平板の横方向において、平板の右端から20mmまでの領域を、被覆予定領域とした。
(2)外方粗化面形成工程
(2−1)マスキング
次に、平板の左端から10mmまでの領域と、平板の右端から20mmまでの領域をマスキングした。
(2−2)サンドブラスト
新東工業株式会社製自給式エアーブラストマイクロブラストを用いて、エアー圧=0.3MPa、投射材=アルミナ粉0.9mmにて5分間処理の条件で、平板に外方粗化面を形成した。
外方粗化面のRaは9.15μmであり、RzJISは31.11μmであった。
(3)内方粗化面形成工程
(3−1)マスキング
次に、被覆予定領域以外の領域をマスキングした。
(3−2)サンドブラスト
新東工業株式会社製自給式エアーブラストマイクロブラストを用いて、エアー圧=0.3MPa、投射材=アルミナ粉0.9mmにて5分間処理の条件で、平板に内方粗化面を形成した。
内方粗化面のRaは2μmであり、RzJISは9μmであった。
(4)セラミック原料塗布工程
(4−1)セラミック原料の準備
低融点ガラス粉末として、バリウムシリケートガラス(軟化点770℃)100重量部を準備した。さらに、有機結合材として、メチルセルロース1重量部を準備した。
これら、低融点ガラス粉末100重量部、有機結合材1重量部にさらに水を100重量部加えて、ボールミルで湿式混合することによりセラミック原料を調製した。
(4−2)セラミック原料の塗布
次に、被覆予定領域及び外方粗化面にセラミック原料を塗布した。
この際、塗布されるセラミック原料の端部が、外方粗化面の外側端部と一致するようにセラミック原料を塗布した。
(5)セラミックコート層形成工程
(5−1)セラミック原料の乾燥
次に、セラミック原料が塗布された基材を、70℃、20分間の条件で乾燥させた。
(5−2)セラミック原料の焼成
次に、セラミック原料が塗布された基材を、900℃、60分間の条件で焼成し、セラミックコート層を形成した。
以上の工程を経て、実施例1に係る構造体を製造した。実施例1に係る構造体では、セラミックコート層の平均厚さは300μmであり、外方粗化面に配置されるセラミックコート層の厚さは250μmであった。
また、製造された構造体を図18に示す。図18は、実施例1に係る構造体の上面写真である。
図18に示すように、実施例1に係る構造体では、被覆予定領域の全てがセラミックコート層に覆われていた。
(実施例2)
実施例1の「(2−2)サンドブラスト」において、新東工業株式会社製自給式エアーブラストマイクロブラストを用いて、エアー圧=0.3MPa、投射材=ステンレスビーズ粒度600μmにて5分間処理の条件で、平板に外方粗化面を形成した以外は、実施例1と同様に、実施例2に係る構造体を製造した。
実施例2に係る構造体における基材の外方粗化面のRaは8.07μmであり、RzJISは25.48μmであった。
また、製造された構造体を図19に示す。図19は、実施例2に係る構造体の上面写真である。
図19に示すように、実施例2に係る構造体では、被覆予定領域の全てがセラミックコート層に覆われていた。
(比較例1)
実施例1の「(2−1)マスキング」及び「(2−2)サンドブラスト」を行わず外方粗化面を形成しない以外は、実施例1と同様に、比較例1に係る構造体を製造した。
比較例1に係る構造体における被覆予定領域以外の基材の表面のRaは2.02μmであり、RzJISは9.28μmであった。
また、製造された構造体を図20に示す。図20は、比較例1に係る構造体の上面写真である。
図20に示すように、比較例1に係る構造体では、セラミックコート層にヒケが生じ、被覆予定領域にセラミックコート層が形成されていない部分があった。
以上より、基材に外方粗化面を形成することにより、セラミックコート層にヒケが生じることが抑制できることが示された。
10、210、310 基材
11、211、211、311a、311a、311b、311b 基材の表面
20 被覆予定領域
20a 被覆予定領域の境界
30 セラミック原料
31 塗布されるセラミック原料の端部
40、240、240、340a、340a、340b、340b 外方粗化面
41 外方粗化面の内側端部
42 外方粗化面の外側端部
44 内方粗化面
45 マスキング
50、250、250、350a、350a、350b、350b セラミックコート層
51、251、251、351a、351a、351b、351b セラミックコート層の端部
55、255、255、355a、355a、355b、355b セラミックコート層の周縁部
100 構造体
200 排気管
201、301 流入口
202、302 流出口
300 ケーシング
303 流入口コーン部
304 流出口コーン部
360 排ガス処理体
370 保持シール材

Claims (19)

  1. 金属からなる基材の表面の一部に被覆予定領域を決定する被覆予定領域決定工程と、
    前記被覆予定領域の外側に、前記被覆予定領域の境界と接するように帯状の外方粗化面を形成する外方粗化面形成工程と、
    前記被覆予定領域に、内方粗化面を形成する内方粗化面形成工程と、
    軟化点が300〜900℃である低融点ガラス粉末を含むセラミック原料を前記被覆予定領域及び前記外方粗化面に塗布するセラミック原料塗布工程と、
    前記セラミック原料を前記基材の表面に前記軟化点よりも高い温度で焼き付けセラミックコート層を形成するセラミックコート層形成工程とを含み、
    前記外方粗化面形成工程では、前記外方粗化面の表面粗さが、Ra=8〜12μm、かつ、RzJIS=25〜36μmになるようにし、
    前記内方粗化面形成工程では、前記内方粗化面の表面粗さが、Ra=0.05〜4.0μm、かつ、RzJIS=1.5〜20μmとなるようにすることを特徴とする構造体の製造方法。
  2. 前記外方粗化面形成工程において形成する前記外方粗化面の表面粗さが、Ra=8〜9μm、かつ、RzJIS=25〜31μmになるようにする請求項1に記載の構造体の製造方法。
  3. 前記セラミック原料塗布工程では、前記セラミックコート層形成工程により形成される前記セラミックコート層の端部が、前記外方粗化面の外側端部と一致するように、前記セラミック原料を塗布する請求項1又は2に記載の構造体の製造方法。
  4. 前記セラミック原料塗布工程では、前記セラミックコート層形成工程により形成される前記セラミックコート層の端部が、前記外方粗化面の外側端部よりも外側に位置するように、前記セラミック原料を塗布する請求項1又は2に記載の構造体の製造方法。
  5. 前記セラミック原料塗布工程では、前記セラミックコート層形成工程により形成される前記セラミックコート層の端部が、前記外方粗化面の外側端部よりも内側かつ前記外方粗化面の内側端部よりも外側に位置するように、前記セラミック原料を塗布する請求項1又は2に記載の構造体の製造方法。
  6. 前記セラミック原料は、水及び/又は有機結合材を含む請求項1〜5のいずれかに記載の構造体の製造方法。
  7. 前記セラミック原料は、有機溶媒を含む請求項1〜6のいずれかに記載の構造体の製造方法。
  8. 金属からなる基材と、前記基材の表面に形成されたセラミック原料からなるセラミックコート層とからなる構造体であって、
    前記基材の表面のうち前記セラミックコート層が形成されている部分の面積が、前記基材の表面の全体の面積よりも小さく、
    前記セラミックコート層の周縁部の前記基材の表面には、帯状の外方粗化面が形成されており、前記外方粗化面より内側の前記基材の表面には、内方粗化面が形成されており、
    前記外方粗化面の表面粗さは、Ra=8〜12μm、かつ、RzJIS=25〜36μmであり、
    前記内方粗化面の表面粗さは、Ra=0.05〜4.0μm、かつ、RzJIS=1.5〜20μmであり、
    前記セラミックコート層は軟化点が300〜900℃の低融点ガラスからなることを特徴とする構造体。
  9. 前記外方粗化面の表面粗さが、Ra=8〜9μm、かつ、RzJIS=25〜31μmである請求項8に記載の構造体。
  10. 前記セラミックコート層の端部は、前記外方粗化面の外側端部と一致している請求項8又は9に記載の構造体。
  11. 前記セラミックコート層の端部は、前記外方粗化面の外側端部の外側に位置している請求項8又は9に記載の構造体。
  12. 前記セラミックコート層の端部は、前記外方粗化面の外側端部よりも内側かつ前記外方粗化面の内側端部よりも外側に位置している請求項8又は9に記載の構造体。
  13. 前記セラミックコート層の周縁部は、前記セラミックコート層の端部から前記セラミックコート層の平均厚さの40倍の距離だけ内側に向かう範囲である請求項8〜12のいずれかに記載の構造体。
  14. 前記外方粗化面の幅は、0.5〜20mmである請求項8〜13のいずれかに記載の構造体。
  15. 前記外方粗化面は、前記基材の表面に連続して形成されている請求項8〜14のいずれかに記載の構造体。
  16. 前記セラミックコート層の平均厚さは、50〜1500μmである請求項8〜15のいずれかに記載の構造体。
  17. 前記外方粗化面に配置される前記セラミックコート層の厚さは、前記セラミックコート層の平均厚さの80〜120%である請求項8〜16のいずれかに記載の構造体。
  18. 前記基材は、ステンレス、鋼、鉄、銅、アルミニウム、インコネル、ハステロイ、インバーから選択される少なくとも一種からなる請求項8〜17のいずれかに記載の構造体。
  19. 排気管として用いられる請求項8〜18のいずれかに記載の構造体。
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