JP6530644B2 - Ito導電膜形成用組成物及びito導電膜 - Google Patents

Ito導電膜形成用組成物及びito導電膜 Download PDF

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本発明は、高温高湿下及び紫外線照射下においてITO導電膜の表面抵抗率の変化を抑制でき、基材への密着性に優れ、良好な導電性と透明性と耐光性を兼ね備えたITO導電膜を形成するための組成物及びITO導電膜に関するものである。本明細書において、ITOとはインジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide)をいう。
LCD(Liquid Crystal Display)やPDP(Plasma Display Panel)、有機EL(ElectroLuminescence)、タッチパネル等の表示装置には、透明電極が用いられている。この透明電極は、ITO等からなる透明導電材料によって構成されることが多い。このような透明電極は、通常スパッタリング法などで膜状に形成される(例えば、特許文献1参照)。しかしながら成膜する基板の大型化に伴い、スパッタリング装置が大型になり、コストが高くなる問題点があった。この点を解決するため、スパッタリング法に代わって、透明導電膜形成用塗布液又は透明導電性ペースト組成物を基板上に塗布する方法が提案されている(例えば、特許文献2及び3参照)。
上記特許文献2には、透明性と導電性を兼ね備えたITO透明導電膜を、塗布法、特にインクジェット印刷法により形成するのに適した透明導電膜形成用塗布液が示される。この透明導電膜形成用塗布液は、アセチルアセトンインジウム、有機錫化合物、セルロース誘導体、アルキルフェノール及び/又はアルケニルフェノール、二塩基酸エステル及び/又は酢酸ベンジル、ジエチレングリコール誘導体を含み、アセチルアセトンインジウムと有機錫化合物との合計含有量が1〜30重量%、セルロース誘導体の含有量が5重量%以下であることを特徴とする。
上記特許文献3には、基板上に印刷により塗布した際、良好な表面特性を有し、かつ良好な導電性と透明性を兼ね備えた透明導電膜を形成できる透明導電性ペースト組成物が示される。この透明導電性ペースト組成物は、組成物の固形分中、80〜99重量%の透明導電性粒子と、バインダ樹脂と、テルペン系溶媒とケトン系溶媒の有機溶媒とを含有する。
しかしながら、特許文献2の透明導電膜形成用塗布液のように、バインダとしてセルロース誘導体のみであると、例えば基材のPETフィルム上に透明導電膜形成用塗布液を成膜した場合、膜が基材から剥離し易く、信頼性を低下させる一因となっていた。また上記特許文献2及び3の方法で塗布された透明導電膜は、高温高湿下に長時間置かれると、雰囲気中の酸素や水分に起因して表面抵抗率が上昇する傾向にあった。この課題を解決するため、樹脂とITO粉末のような透明導電粒子とシリカ材料とシランカップリング剤とを含有することにより、温度や湿度の影響による表面抵抗率の変化が小さい透明導電材料が開示されている(例えば、特許文献4参照)。この特許文献4に示される透明導電材料により形成された透明導電膜は、高温高湿下であっても表面抵抗率の上昇を十分に抑制することが可能である。
特開2004−315951号公報(段落[0002]) 特開2006−28431号公報(要約、請求項1、請求項7) 特開2011−192401号公報(要約、請求項1) 特開2009−135044号公報(要約、請求項1) WO2006/028131号公報(請求項12、段落[0010]、段落[0012]、段落[0022]、段落[0025]、段落[0041]〜[0046]、図1、図4、図8)
しかしながら、近年では、透明導電膜の用途が一層多岐にわたっており、従来にも増して厳しい条件下であっても、高温高湿下における透明導電膜の表面抵抗率の変化を抑制できる導電膜形成用組成物が求められている。
更に、近年では、タッチパネルが長時間直射日光に曝される過酷な環境下で使用されるケースが増えてきている。この場合、タッチパネルが当該日光に含まれる紫外線等の影響を受けて劣化するおそれがある。具体的には、タッチパネルの透明電極にITO導電膜を用いた場合、ITO導電膜の表面抵抗率が低下し、タッチセンサーの感度の不具合を生じる。この課題を解決するため、比較的過酷な野外使用においても、紫外線による劣化を防止し、優れた性能を発揮することが可能な耐光性を有する抵抗膜式タッチパネルが開示されている(例えば、特許文献5参照)。この抵抗膜式タッチパネルは、偏光板、上部面状部材、ITO透明導電膜、配線基板、スペーサ、ITO透明導電膜、下部面状部材を積層して構成され、上部面状部材として、紫外線吸収材料を含む紫外線吸収粘着層を2つのシロキサン架橋型アクリルシリコーン樹脂フィルムからなる層の間に介設している。このタッチパネルによれば、紫外線吸収粘着層によりタッチパネルに紫外線が入射しても、紫外線による劣化が防止される。しかしながら、このタッチパネルでは、紫外線吸収粘着層を別個に設ける必要があり、構成要素が増加し、製造工程が複雑化する不具合があった。
本発明の第1の目的は、従来にも増して厳しい条件下であっても、ITO導電膜の高温高湿下における表面抵抗率の上昇を抑制でき、基材への密着性に優れ、良好な導電性と透明性を兼ね備えたITO導電膜を形成するための組成物及びITO導電膜を提供することにある。
本発明の第2の目的は、好ましくは、長時間紫外線が照射される過酷な環境下においても、特別な紫外線吸収粘着層を必要とせずにITO導電膜の表面抵抗率の低下を抑制でき耐光性に優れ、かつ基材への密着性に優れ、良好な導電性と透明性を兼ね備えたITO導電膜を形成するための組成物及びITO導電膜を提供することにある。
本発明の第1の観点は、ITO粒子とバインダ樹脂と有機溶媒とを含むITO導電膜形成用組成物において、前記組成物100質量%中、前記ITO粒子を3〜45質量%含み、前記組成物の固形分100質量%中、前記ITO粒子以外の成分を10〜52質量%含み、前記ITO粒子が42〜65m/gのBET法による比表面積と36以下のL値を有し、前記バインダ樹脂がエチルセルロース及び130〜160℃の軟化点を有するテルペンフェノール樹脂を含むことを特徴とする。
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく発明であって、前記エチルセルロースと前記テルペンフェノール樹脂の質量比がエチルセルロース:テルペンフェノール樹脂=10〜80:90〜20であるITO導電膜形成用組成物である。
本発明の第3の観点は、第1又は第2の観点に基づく発明であって、分散剤を前記液ITO粒子100質量部に対して1〜15質量部更に含むITO導電膜形成用組成物である。
本発明の第4の観点は、第1ないし第3いずれかの観点に基づく発明であって、スクリーン印刷用ペースト又は塗料に用いられるITO導電膜形成用組成物である。
本発明の第5の観点は、第4の観点に基づく発明であって、前記スクリーン印刷用ペーストに用いられる場合、前記有機溶媒が3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールと、ブチルカルビトールアセテート又はα−テルピネオールの溶媒とからなるITO導電膜形成用組成物である。
本発明の第6の観点は、第4の観点に基づく発明であって、前記塗料に用いられる場合、前記有機溶媒が3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールと、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、トルエン、メタノール、1-プロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、2,4−ペンタンジオン及びキシレンからなる群より選ばれた1種又は2種以上の溶媒とからなるITO導電膜形成用組成物である。
本発明の第7の観点は、第1ないし第6いずれかの観点に基づく発明であって、フェノール系酸化防止剤又はヒンダードアミン系光安定剤を、前記組成物の固形分100質量%中、0.1〜5質量%更に含むITO導電膜形成用組成物である。
本発明の第8の観点は、第1ないし第7いずれかの観点に基づく発明であって、前記ITO粒子以外の成分中、加水分解基を持つ有機ケイ素化合物と水とを更に含み、前記有機ケイ素化合物の含有量が前記組成物の固形分100質量中、5〜52質量%であり、前記水の含有量が、前記加水分解基を持つ有機ケイ素化合物に含まれる加水分解基がメトキシ基もしくはエトキシ基であり、この加水分解基のモル数に対して、0.05〜0.7倍モル数であるITO導電膜形成用組成物である。
本発明の第9の観点は、第1ないし第7いずれかの観点に基づく発明であって、ITO粒子が有機ケイ素の加水分解物で被覆され、前記有機ケイ素の加水分解物で被覆されたITO粒子のBET法による比表面積が50〜70m/gであり、前記有機ケイ素の加水分解物の被覆量が被覆前のITO粒子100質量部に対して0.5〜15質量部であるITO導電膜形成用組成物である。
本発明の第10の観点は、42〜65m/gのBET法による比表面積と36以下のL値を有するITO粒子が130〜160℃の軟化点を有するテルペンフェノール樹脂中に均一に分散してなり、膜中、前記ITO粒子を48〜90質量%、前記ITO粒子以外の成分を10〜52質量%含むITO導電膜である。
本発明の第11の観点は、第10の観点に基づく発明であって、フェノール系酸化防止剤又はヒンダードアミン系光安定剤を、前記組成物の固形分100質量%中、0.1〜5質量%更に含むITO導電膜である。
本発明の第12の観点は、第10の観点に基づく発明であって、前記ITO粒子以外の成分中、加水分解基を持つ有機ケイ素化合物と水とを更に含み、前記有機ケイ素化合物の含有量が前記組成物の固形分100質量中、5〜52質量%であり、前記水の含有量が、
前記加水分解基を持つ有機ケイ素化合物に含まれる加水分解基がメトキシ基もしくはエトキシ基であり、この加水分解基のモル数に対して、0.05〜0.7倍モル数であるITO導電膜である。
本発明の第13の観点は、50〜70m/gのBET法による比表面積を有する、有機ケイ素の加水分解物で被覆されたITO粒子が130〜160℃の軟化点を有するテルペンフェノール樹脂中に均一に分散してなり、膜中、前記有機ケイ素の加水分解物で被覆されたITO粒子を70〜90質量%、前記有機ケイ素の加水分解物で被覆されたITO粒子以外の成分を10〜30質量%含み、前記有機ケイ素の加水分解物の被覆量が被覆前の前記ITO粒子100質量部に対して0.5〜15質量部であるITO導電膜である。
本発明の第14の観点は、第13の観点に基づく発明であって、前記有機ケイ素の加水分解物で被覆されたITO粒子以外の成分中、フェノール系酸化防止剤又はヒンダードアミン系光安定剤を更に含むITO導電膜である。
本発明の第1の観点のITO導電膜形成用組成物では、所定の比表面積とL値を有するITO粒子を3〜45質量%含むため、ITO導電膜にしたときに、良好な導電性と透明性を兼ね備えることができる。またバインダ樹脂として、130〜160℃という高い軟化点を有するテルペンフェノール樹脂を含むことにより、この組成物を基材上に塗布したときにITO導電膜の基材への密着性に優れ、かつITO導電膜の高温高湿下における表面抵抗率の変化を抑制する。またエチルセルロースを含むことにより、この組成物を印刷用ペーストとしたときに印刷性を向上させることができる。
本発明の第2の観点のITO導電膜形成用組成物では、所定の質量比の範囲内において、エチルセルロースがテルペンフェノール樹脂と比べてその質量割合が少ない場合には、テルペンフェノール樹脂の接着効果が発現しやすくなるので、基材への密着性が高まる効果が有り、反対に、エチルセルロースがテルペンフェノール樹脂と比べてその質量割合が多い場合には、エチルセルロースによる液組成物の増粘性を図ることが容易となり、スクリーン印刷用ペーストとしての印刷性が向上する効果が有る。
本発明の第3の観点のITO導電膜形成用組成物では、分散剤を所定量含むことにより、塗膜にした際の膜の光学特性が向上する効果、即ち透明性が向上し、かつヘーズが低減する効果を有する。
本発明の第4の観点のITO導電膜形成用組成物は、スクリーン印刷用ペースト又は塗料に用いられる利点がある。
本発明の第5の観点のスクリーン印刷用ペーストに用いられる場合、有機溶媒として3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールを用いると、比較的高沸点(174℃)でありながら、水溶性であるため、ITO粒子を容易に分散させることができ、塗膜の光学特性向上を図ることが可能である。また高沸点溶媒であるブチルカルビトールアセテート(247℃)もしくはα−テルピネオール(219℃)を併用すると、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール単独使用におけるスクリーン印刷時の乾燥性が速い弊害を防止して、連続生産においても、膜の表面抵抗率のばらつきを抑制することができる。
本発明の第6の観点の塗料に用いられる場合、有機溶媒として3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールを用いると、比較的高沸点(174℃)でありながら、水溶性であるため、ITO粒子を容易に分散させることができ、塗膜の光学特性向上を図ることが可能である。また低沸点溶媒である2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、トルエン、メタノール、1-プロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、2,4−ペンタンジオン及びキシレンからなる群より選ばれた1種又は2種以上溶媒を併用すると、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール単独使用時よりも、乾燥性をより高めることができる。
本発明の第7の観点のITO導電膜形成用組成物では、フェノール系酸化防止剤又はヒンダードアミン系光安定剤を更に含むことにより、この組成物から作られたITO導電膜の高温下における表面抵抗率の変化を更に抑制することができる。
本発明の第8の観点のITO導電膜形成用組成物では、加水分解基を持つ有機ケイ素化合物と水とを更に含むことにより、組成物を加熱したときに加水分解基が水と反応して、シラノール基が一部発生する。このシラノール基が一部発生した有機ケイ素化合物は、シラノール基とITOとの結合力が生じるため、この組成物から作られたITO導電膜は高温高湿下において表面抵抗率の変化が更に抑制される。
本発明の第9の観点のITO導電膜形成用組成物では、所定の比表面積を有するITO粒子が所定量の有機ケイ素の加水分解物層で被覆されるため、ITO導電膜にしたときに、ITO粒子が本来有する導電性を損ねない範囲で、紫外線が照射されたときにITO粒子から生じるラジカルが前記加水分解物の被覆層により抑制される。
本発明の第10の観点のITO導電膜では、所定の比表面積とL値を有するITO粒子が高い軟化点のテルペンフェノール樹脂中に均一に分散し、かつ所定量のITO粒子とITO粒子以外の成分を含むことにより、ITO導電膜の高温高湿下における表面抵抗率の変化を抑制でき、基材への密着性に優れ、良好な導電性と透明性を兼ね備えることができる。
本発明の第11の観点及び第14の観点のITO導電膜では、フェノール系酸化防止剤又はヒンダードアミン系光安定剤を更に含むことにより、ITO導電膜の高温下における表面抵抗率の変化を更に抑制することができる。
本発明の第12の観点のITO導電膜では、加水分解基を持つ有機ケイ素化合物と水とを更に含むことにより、ITO導電膜の高温高温下における表面抵抗率の変化を更に抑制することができる。
本発明の第13の観点のITO導電膜では、所定の比表面積を有するITO粒子が所定量の有機ケイ素の加水分解物で被覆され、高い軟化点のテルペンフェノール樹脂中に均一に分散し、かつ所定量のITO粒子とITO粒子以外の成分を含むことにより、ITO導電膜に紫外線が入射したときに、表面抵抗率の低下を抑制でき耐光性に優れ、かつ基材への密着性に優れ、良好な導電性と透明性を兼ね備えることができる。
次に本発明を実施するための第1の形態を説明する。
〔第1の形態のITO粒子〕
本発明の第1の形態のITO粒子は、42〜65m/gのBET法による比表面積と36以下のL値を有する。BET法による比表面積が42m/g未満であると、所望の表面抵抗率を有するITO導電膜にしたときのヘーズが高くなり膜の透明性が低くなる。ヘーズを低くするために第1の形態のITO粒子の膜中の含有量を減少させると、膜の所望の表面抵抗率が得られず膜の導電性が悪くなる。本来であれば、BET値が高いと、粒子が小さくなるため、透明性並びにヘーズの低減を図ることが可能であるけれども、BET法による比表面積が65m/gを超えると、所定の分散剤の添加量で樹脂に第1の形態のITO粒子を混合した場合、このITO粒子の樹脂への分散が不十分となり、かえって塗膜のヘーズが悪くなる不具合がある。この不具合を生じないようにヘーズを低減する目的で、65m/gを超えた第1の形態のITO粒子を用いた場合、このITO粒子を樹脂に分散するための分散剤量を増やす必要が生じる。分散剤を増加すると、膜の導電性が悪くなり、かつ基材への密着性が悪化する等の問題が発生する。このため、第1の形態のITO粒子のBET法による比表面積の上限値は65m/gに決められる。また所望の表面抵抗率を得るためにこのITO粒子の膜中の含有量を増大させると、第1の形態のITO導電膜形成用組成物を基材上に塗布したときにITO導電膜の基材への密着性が悪くなる。また第1の形態のITO粒子のL値が36を超えると、このITOの還元が不十分であるため、膜の表面抵抗率が高くなり膜の導電性が悪くなる。また粒子も大きくなるため、膜のヘーズが高くなり膜の透明性が低くなる。
〔第1の形態のITO粒子の製造方法〕
第1の形態のITO粒子は、インジウムと錫の共沈水酸化物を焼成してインジウム錫酸化物粒子を製造する方法において、乾燥粉末が山吹色から柿色の色調を有するインジウム錫水酸化物を共沈させ、これを焼成して得られる。
具体的には、第1の形態のITO粒子は次の方法で製造される。先ず、スズ塩とインジウム塩とを所定の割合で秤量混合し、当該混合物を純水に溶解してスズ塩とインジウム塩との混合溶液とし、当該混合溶液とアルカリとを反応させる。溶液中のインジウムと錫はアルカリの存在下で沈殿し、インジウムと錫の共沈水酸化物が生成する。スズ及びインジウムの塩としては、塩酸塩、硫酸塩、又は硝酸塩などがある。例えば、スズ塩として2価錫化合物(SnCl・2HOなど)を、インジウム塩として三塩化インジウム(InCl)を用い、溶液のpHを4.0〜9.3、好ましくはpH6.0〜8.0、液温を5℃以上、好ましくは液温10℃〜80℃に調整する。これにより、乾燥粉末が山吹色から柿色の色調を有するインジウム錫の共沈水酸化物を沈殿させることができる。この山吹色から柿色の色調を有する水酸化物は、従来の白色のインジウム錫水酸化物よりも結晶性に優れている。
なお、4価の錫化合物(SnClなど)を用いると、白色の沈殿になり、山吹色から柿色の色調を有する沈殿にならない。また、溶液のpHが4.0よりも低く(酸性側)あるいは9.3よりも高い(アルカリ側)と薄い黄色を帯びた白色沈殿になり、山吹色から柿色の色調を有する沈殿にならない。4価の錫化合物による白色沈殿や上記薄黄白色沈殿は何れも山吹色から柿色の色調を有する沈殿に比べて結晶性が低く、これらの沈殿物を焼成しても本発明のような結晶性の高いITO粒子を得ることができない。また反応時のpHが4未満であると、後述するインジウム錫水酸化物の焼成時の温度が600℃であっても、L値が36を超えてしまう。
反応時の液性をpH4.0〜9.3に調整するには、例えば、三塩化インジウム(InCl)と二塩化錫(SnCl・2HO)の混合水溶液を用い、この混合水溶液とアルカリ水溶液とを同時に水に滴下して上記pH範囲に調整するとよい。アルカリ水溶液としてはアンモニア水〔NH水〕、炭酸水素アンモニウム水〔NHHCO水〕などを用いるとよい。
上記共沈インジウム錫水酸化物を生成した後、この共沈物を純水で洗浄し、上澄み液の電気伝導度が200μS/cm以下、好ましくは20μS/cm以下になるまで洗浄(以下、傾斜洗浄という。)した後に固液分離して上記共沈物を回収する。上澄み液の電気電導度が200μS/cmより高いと塩素等の不純物が十分に除去されておらず、高純度のインジウム錫酸化物粒子を得ることができない。
上記インジウム錫水酸化物を、第1の形態では、次の3つの方法で製造することができる。
(a−1) 第1の方法では、先ず固液分離したインジウム錫水酸化物を、窒素ガス雰囲気下で、100〜120℃、1晩で乾燥した後、270〜800℃、30分〜6時間で焼成する。次いで焼成により得られた酸化物を、アルコールの表面処理液に入れて含浸させた後、窒素ガス雰囲気下、150〜600℃で加熱して表面改質処理する。
(b−1) 第2の方法では、先ず固液分離したインジウム錫水酸化物を、アルコールの表面処理液を含浸させる。次いで表面処理液を含浸させたインジウム錫水酸化物を、窒素ガス雰囲気下で、270〜600℃で加熱して乾燥と焼成を連続して行い、表面改質処理を一度にする。
(c−1) 第3の方法では、先ず固液分離したインジウム錫水酸化物を、大気雰囲気下で、100〜120℃、1晩で乾燥した後、270〜650℃、30分〜6時間で焼成する。次いで焼成により得られた酸化物を、アルコールの表面処理液に入れて含浸させた後、窒素ガス雰囲気下、150〜600℃で加熱して表面改質処理する。
上記第1及び第2の方法で、窒素ガス雰囲気下で熱処理するのは、高温の大気雰囲気下で焼成したものをアルコールの表面処理液に含浸させた後に、窒素ガス雰囲気下で処理しても、還元が進みにくく、Lab表色系において、L値36を超えるITO粒子になるためである。そのため、第3の方法では、大気焼成温度は、650℃以下とした。
上記の3つの方法で得られた凝集体は、いずれも粉砕してほぐすことによりインジウム錫酸化物となる。即ち、上記処理によってインジウム錫水酸化物は表面改質されたインジウム錫酸化物粒子(ITO粒子)となる。こうして得られた第1の形態のITO粒子は、42〜65m/gのBET法による比表面積と、Lab表色系において、L値36以下、a<0、b<0の濃い青色を帯びた色調を有する。このITO粒子は微細であり、かつ結晶性が高いため、樹脂に混合して被膜やシートを形成したときに、高い透明性を有し、かつ優れた導電性が得られる。
上記第1及び第2の製造方法において、焼成温度が270℃未満では水酸化物のままであり酸化物にならない。また焼成温度が800℃を超えるとITO粒子間同士が焼結するため、比表面積が42m/g未満になってしまう。
第1又は第3の製造方法において、焼成のみ行い、アルコールによる還元処理をしないと、仮に600℃で焼成しても、ITO粒子のBET法による比表面積が65m/g以下であっても、L値が36を超えてしまう。
〔第1の形態のITO導電膜形成用組成物の製造方法〕
上記の方法で得られた第1の形態のITO粒子をバインダ樹脂と有機溶媒と混合して、第1の形態のITO導電膜形成用組成物を調製する。このとき、分散剤を混合してもよい。分散剤を混合することにより、塗膜にしたときの透明性が更に向上する。この組成物は、組成物100質量%中、第1の形態のITO粒子を3〜45質量%、好ましくは4〜40質量%含むように、またその固形分100質量%中、第1の形態のITO粒子以外の成分を10〜52質量%、好ましくは15〜35質量%含むように調製される。上記の方法で得られた第1の形態のITO粒子の含有量が3質量%未満では、この組成物から作られた第1の形態のITO導電膜の導電性が高くならない。また45質量%を超えると、組成物が増粘するなど経時安定性が悪くなるとともに、バインダ樹脂が相対的に不足し、第1の形態のITO粒子の粒子間の接着力が低下し、第1の形態のITO導電膜の表面抵抗率が悪化する。また第1の形態のITO粒子以外の成分が10質量%未満では、第1の形態のITO導電膜の高温高湿下における表面抵抗率の上昇を抑制できず、また基材に対する密着性が十分に得られない。また52質量%を超えると、組成物が増粘するなど経時安定性が悪くなるとともに、第1の形態のITO導電膜の表面抵抗率が悪くなり、導電性が得にくくなる。
この組成物の固形分である第1の形態のバインダ樹脂としては、エチルセルロース及び130〜160℃の軟化点を有するテルペンフェノール樹脂を含む。テルペンフェノール樹脂の軟化点が130℃未満であると、第1の形態のITO導電膜の使用条件が60℃以上の高温になった場合、表面抵抗率の変化を抑制することが困難になる。また160℃を超えるテルペンフェノール樹脂は入手困難である。エチルセルロースとテルペンフェノール樹脂の質量比は、エチルセルロース:テルペンフェノール樹脂=10〜80:90〜20であることが好ましく、20〜50:80〜50であることが更に好ましい。エチルセルロースの質量比が10未満であってテルペンフェノール樹脂の質量比が90を超えると、スクリーン印刷時に、ペーストの粘度を上げることが難しくなり、スクリーン印刷性が悪くなる不具合があり、エチルセルロースの質量比が80を超えてテルペンフェノール樹脂の質量比が20未満であると、第1の形態のITO導電膜の基材への密着性が低下する不具合がある。テルペンフェノール樹脂は、アリゾナケミカル社製SylvaliteTP7042(軟化点:145℃),荒川化学工業社製タマノル803L(軟化点:140〜160℃)、901(軟化点:120〜135℃)、ヤスハラケミカル社製YSポリスターT160(軟化点:160℃),145(軟化点:145℃),T130(軟化点:130℃),U130(軟化点:130℃),S145(軟化点:145℃),G150(軟化点:150℃),K140(軟化点:140℃),TH130(軟化点:130℃)等が挙げられる。
第1の形態のITO導電膜形成用組成物に含まれる第1の形態の分散剤は、第1の形態のITO粒子100質量部に対して1〜10質量部含まれることが好ましい。この第1の形態の分散剤の例としては、顔料を安定して微粒子分散できるものであれば、任意の顔料用分散剤を用いることができる。具体的には、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシアルキレンデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレントリデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルセチルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンオレイルセチルエーテル硫酸ナトリウム等のアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフタレンスルフォン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレントリデシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルリン酸エステル等のアルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム等のアルキルエーテル酢酸塩、ラウリルスルホコハク酸二ナトリウムポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸二ナトリウム、ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸塩等のアルキルコハク酸塩、ポリカルボン酸型高分子等の陰イオン性界面活性剤、アミンオキサイド等の陽イオン性界面活性剤、オキシエチレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンアルキルアミド等の非イオン性界面活性剤などの界面活性剤が挙げられる。分散剤の含有量が1質量部未満では、第1の形態のITO導電膜形成用組成物の分散が不十分となり、塗膜の透明性が不十分になりやすい。また10質量部を超えると、第1の形態のITO導電膜の導電性と塗膜の密着性に悪影響を及ぼしやすい。
第1の形態のITO導電膜形成用組成物に含まれる第1の形態の有機溶媒は、有機溶媒として3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールを用いる。3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールは、比較的高沸点でありながら、水溶性であるため、第1の形態のITO粒子を分散することが容易であり、塗膜の光学特性向上を図ることが可能である。しかしながら、第1の形態のITO導電膜形成用組成物がスクリーン印刷用ペーストの場合、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール単独であると、乾燥速度が速いため、何枚も膜を形成すると、膜の表面抵抗率の均一性に難が生じてくるため、高沸点溶媒のブチルカルビトールアセテートもしくはα−テルピネオールを組み合わせて用いる。第1の形態のITO導電膜形成用組成物が塗料の場合は、速乾性を求められるため、沸点の低い、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、トルエン、メタノール、1-プロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、2,4−ペンタンジオン、キシレン等と3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、を組み合わせて用いる。
有機溶媒の添加量は、組成物100質量%中、50〜95質量%であることが好ましい。有機溶媒の添加量が多ければ、組成物は塗料用組成物となり、少なければペースト用組成物となる。
第1の形態のITO導電膜形成用組成物は、フェノール系酸化防止剤又はヒンダードアミン系光安定剤を更に含むことが好ましい。フェノール系酸化防止剤としては、ADEKA社、製品名AO−20、AO−30、AO−40、AO−60、AO−80等が挙げられる。またヒンダードアミン系光安定剤としては、ADEKA社、製品名LA−52、LA−57、LA−63、LA−72等が挙げられる。フェノール系酸化防止剤又はヒンダードアミン系光安定剤を更に含むことにより、この組成物から作られたITO導電膜の高温下における表面抵抗率の変化を更に抑制することができる。このために、フェノール系酸化防止剤又はヒンダードアミン系光安定剤の添加量は、組成物の固形分100質量%中、0.1〜5質量%であることが好ましい。
第1の形態のITO導電膜形成用組成物は、加水分解基を持つ有機ケイ素化合物と水を更に含むことが更に好ましい。加水分解基を持つ有機ケイ素化合物を単独で添加した場合、高温高湿下において所定時間経過した後の表面抵抗率変化がより大きくなるのに対して、水を添加することで、高温高湿下において所定時間経過した後の表面抵抗率の変化を抑制することができ、かつ、基材との密着性をより改善することができる。加水分解基を持つ有機ケイ素化合物としては、ビニルトリメトキシシラン(信越化学工業社、製品名KBM−1003)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシラン(信越化学工業社、製品名KBM−403)、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学工業社、製品名KBM−503)、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社、製品名KBM−803)、メチルトリエトキシシラン(信越化学工業社、製品名KBE−13)等が挙げられる。また、予め、加水分解基を持つ有機ケイ素化合物に水を添加して、有機ケイ素化合物を加水分解重合したシラン化合物(三菱マテリアル電子化成社、製品名SB−10A)等が挙げられる。
前記ITO粒子以外の成分中、加水分解基を持つ有機ケイ素化合物と水を更に含むことにより、この組成物から作られたITO導電膜の高温高湿下における表面抵抗率の変化を更に抑制することができる。このために、加水分解基を持つ有機ケイ素化合物の添加量は、組成物の固形分100質量中、5〜52質量%であることが好ましい。水の添加量は、加水分解基を持つ有機ケイ素化合物に含まれる加水分解基が例えばメトキシ基もしくはエトキシ基であり、この加水分解基のモル数に対して、0.05〜0.7倍モル数であることが好ましい。0.05倍モル数未満であると、加水分解が不十分であり、表面抵抗率の経時変化を抑制しにくくなる。一方、0.7倍モル数を超えると、膜にしたときの表面抵抗率が増大し、かつヘーズが増大しやすくなる。また、水を添加するため、水と相溶性のない有機溶媒を選択していると、よりヘーズが増大するため、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール等の水と相溶性のある溶媒を用いていると、ヘーズ増大を減少させることができる。
第1の形態のITO導電膜形成用組成物の調製手順は、先ず第1の形態のITO粒子を有機溶媒に加えて、分散剤を使用する場合には、分散剤を溶解した有機溶媒に第1の形態のITO粒子を加えて、湿式ビーズミル等を用いて、このITO粒子の分散した粒子径が所望の粒子径になるまで、ITO粒子を分散させてITO分散液を作製する。分散濃度は限定されないが、ITOとして10〜75質量%である。10質量%未満であると、生産性が悪く、かつ、後工程のペースト作製時に、樹脂溶液等を混合した際、高濃度のペーストを作製することが不可能となる。また、75質量%を超えると、ITO粒子を分散させることが困難となり、生産性が悪くなる。一方、バインダ樹脂は上記ITO粒子を分散させた有機溶媒と同じか、若しくは別の有機溶媒に入れて混合し、この有機溶媒を40〜80℃の温度で加熱することによりバインダ樹脂を溶解して樹脂溶液を調製する。最後にこの樹脂溶液とITO分散液とフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤又は加水分解基を持つ有機ケイ素化合物と水などの添加剤とを混合し、この混合物を自転公転ミキサー、2本ロール、プラネタリーミキサー、ボールミル、ホモジナイザー、超音波分散機、3本ロール、ヘンシェルミキサー等の装置で40〜80℃の温度で加熱した状態で撹拌、混練、分散することにより、第1の形態のITO導電膜形成用組成物が得られる。
次に本発明を実施するための第2の形態を説明する。
〔第2の形態のITO粒子〕
本発明の第2の形態のITO粒子は、上述した第1の形態のITO粒子を有機ケイ素の加水分解物で被覆して製造される。上述したように本発明の第1の形態のITO粒子が42〜65m/gのBET法による比表面積を有するのに対して、この第2の形態のITO粒子は、50〜70m/g、好ましくは55〜65m/gのBET法による比表面積を有する。BET法による比表面積が50m/g未満であると、導電膜にした際のヘーズが高くなる不具合がある。BET法による比表面積が70m/gを超えると、紫外線照射に対して表面抵抗率の変化を改善できない不具合がある。第2の形態のITO粒子では有機ケイ素の加水分解物の被覆量が被覆前のITO粒子100質量部に対して0.5〜15質量部、好ましくは1〜10質量部である。被覆量が0.5質量部未満では、紫外線が照射されたときのITO導電膜の光劣化を防ぐことができず、15質量部を超えると、ITO導電膜の導電性が失われる。被覆前のITO粒子の等電点はpH7前後であり、被覆後のITO粒子の等電点はpH2前後である。また被覆前のITO粒子の体積抵抗率は5Ωcm以下であり、被覆後のITO粒子の体積抵抗率は100〜50000Ωcmである。
〔第2の形態のITO粒子の製造方法〕
第2の形態のITO粒子は、次の3つの方法で製造することができる。
(a−2)有機ケイ素の加水分解物であるシリカゾルゲル液に上述した第1の形態のITO粒子を含浸させる。シリカゾルゲル液に含浸したITO粒子を乾燥し、乾燥物を粉砕して有機ケイ素の加水分解物で被覆されたITO粒子を得る。この方法では、被覆前のITO粒子100質量部に対する有機ケイ素の加水分解物の被覆量は、シリカゾルゲル液中のシリカ質量と含浸させるITO粒子の質量の比率を調整することにより0.5〜15質量部に調整される。
(b−2)上述した第1の形態のITO粒子を乾式攪拌装置で攪拌しながら、有機ケイ素の加水分解物であるシリカゾルゲル液を噴霧する。シリカゾルゲル液を噴霧したITO粒子を乾燥し、乾燥物を粉砕して有機ケイ素の加水分解物で被覆されたITO粒子を得る。この方法では、被覆前のITO粒子100質量部に対する有機ケイ素の加水分解物の被覆量は、噴霧するシリカゾルゲル液中のシリカ質量と含浸させるITO粒子の質量の比率を調整することにより0.5〜15質量部に調整される。
(c−2)ケイ素アルコキシドを加温して蒸気を発生させ、上述した第1の形態のITO粒子にその蒸気を所定の時間接触させる。前記蒸気を接触したITO粒子乾燥し、乾燥物を粉砕して有機ケイ素の加水分解物で被覆されたITO粒子を得る。この方法では、被覆前のITO粒子100質量部に対する有機ケイ素の加水分解物の被覆量は、ケイ素アルコキシドを加温する温度(ケイ素アルコキシドの蒸発量)とITO粒子に接触させる時間を調整することにより0.5〜15質量部に調整される。
上記(a−2)〜(c−2)の方法における乾燥は、大気又は窒素雰囲気下で行う。大気雰囲気下で乾燥を行う場合、乾燥温度は150〜200℃の範囲に設定する。200℃を超えるとITO粒子が酸化され、ITO導電膜にしたときに導電膜が黄色味かかった膜となり好ましくない。また150℃未満では、ITO導電膜にしたときのITO導電膜の耐光性が悪化する。窒素雰囲気下で乾燥を行う場合、乾燥温度は150〜700℃の範囲に設定する。700℃を超えると、ITO導電膜にしたときに導電膜のヘーズが高くなり、導電膜の透明性に劣る。また150℃未満では、ITO導電膜にしたときのITO導電膜の耐光性が悪化する。
上記(a−2)及び(b−2)の方法で用いる有機ケイ素の加水分解物は、テトラメトキシシラン又はテトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラアセトキシシラン等のケイ素アルコキシド等のアルコール溶液に、水と硝酸と必要に応じてグリコールエーテルの有機溶媒との混合物を添加して加温・攪拌することにより調製される。テトラメトキシシラン又はテトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラアセトキシシラン等は、導電膜にしたときに紫外線光に対して導電膜の抵抗変化が小さく好ましい。この有機ケイ素の加水分解物は、具体的には、先ず、ケイ素アルコキシドとしてのテトラメトキシシラン又はテトラエトキシシラン1質量部に対して、1.0〜100.0質量部となる量のエタノール、イソプロパノール(IPA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)等の有機溶媒を添加して、好ましくは30〜40℃の温度で5〜20分間撹拌することにより第1液を調製する。一方、この第1液とは別に、上記ケイ素アルコキシド1質量部に対して、水を0.5〜5.0質量部、硝酸を0.005〜1.0質量部の割合で添加し、30〜40℃の温度で5〜20分間攪拌することにより第2液を調製する。次に、上記調製した第1液を、ウォーターバス等を用いて好ましくは30〜80℃の温度に保持してから、第1液に第2液を添加し、上記温度を保持した状態で好ましくは30〜180分間撹拌する。これにより、上記ケイ素アルコキシドの加水分解物が調製される。
〔第2の形態のITO導電膜形成用組成物の製造方法〕
上記の方法で得られた第2の形態のITO粒子を第1の形態のバインダ樹脂と第1の形態の有機溶媒と混合して、第2の形態のITO導電膜形成用組成物を調製する。この調製方法は、第2の形態のITO粒子を用いる以外、第1の形態のITO導電膜形成用組成物の調製方法と同じであるため、繰り返しの説明を省略する。
〔ITO導電膜の形成方法〕
ITO導電膜は、例えば、基材であるポリエチレンテレフタレート(PET)等のフィルム上に、上記得られた第1の形態又は第2の形態のITO導電膜形成用組成物を、スクリーン印刷法、バーコート法、ダイコート法、ドクターブレード、スピン法等により塗布した後に、80〜130℃の温度で乾燥させることにより、形成される。
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
〔16種類の第1の形態のITO粒子の製造〕
塩化インジウム水溶液と、二塩化錫とを混合し、この混合水溶液とアンモニア水溶液を、水に同時に滴下し、pHを調整して反応させる。生成した沈殿をイオン交換水によって繰り返し傾斜洗浄を行った。上澄み液の電気伝導度が20μS/cm以下になったところで、沈殿物(In/Sn共沈水酸化物)を濾別し、共沈インジウム錫水酸化物を得た。固液分離したインジウム錫水酸化物を、上述した第1〜第3の方法により、表面改質処理し、表1に示すように、16種類(No.1〜No.16)の第1の形態のITO粒子を得た。なお、No.16のITO粒子は窒素雰囲気下で焼成して得られ、それ以外のNo.1〜No.15のITO粒子は大気雰囲気下で焼成して得られた。
例えば、No.1のITO粒子は次の方法で製造した。先ず原料の三塩化インジウム(InCl)水溶液(In金属18g含有)50mLと、原料の二塩化錫(SnCl・2HO)3.6gとを混合し、この混合水溶液とアンモニア(NH)水溶液を、水500mlに同時に滴下し、pH7に調整し、30℃の液温で30分間反応させた。次いで生成した沈殿をイオン交換水によって繰り返し傾斜洗浄を行った。上澄み液の電気伝導度が20μS/cm以下になったところで、沈殿物(In/Sn共沈水酸化物)を濾別し、乾燥粉末の色調が柿色を有する共沈インジウム錫水酸化物を得た。固液分離したインジウム錫水酸化物を110℃で一晩乾燥した後、大気中550℃で3時間焼成し、凝集体を粉砕してほぐし、山吹色を有するITO粒子約25gを得た。上記ITO粉25gを、無水エタノールと蒸留水を混合した表面処理液(混合比率はエタノール95重量部に対して蒸留水5重量部)に入れて含浸させた後、ガラスシャーレに入れて窒素ガス雰囲気下、330℃にて2時間加熱して表面改質処理してITO粒子を得た。
このNo.1のITO粒子の製造方法に準じて、原料と、反応時のpHと、反応時の温度と、焼成条件である温度と、改質条件であるアルコール還元温度をNo.1のそれらと変更してNo.2〜No.16のITO粒子を得た。得られたNo.1〜No.16の16種類のITO粒子について、BET法による比表面積とL値を測定した。
No.1〜No.16の16種類の第1の形態のITO粒子のBET法による比表面積は柴田科学社の装置(SA-1100)を用いて測定し、L値はスガ試験機社のカラーコンピュータ(SM-T)を用いて測定した。これらの測定結果も表1に示す。
〔21種類の第1の形態のITO分散液の調製〕
表2に示すように、3種類の有機溶媒に上記No.1〜No.16の16種類の第1の形態のITO粒子のいずれかと、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルからなる分散剤を加えて、湿式ビーズミルにより分散して、A〜Uの21種類のITO分散液を調製した。なお、表2において、MMBは3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールを、BCAブチルカルビトールアセテートを、α−Tはα−テルピネオールをそれぞれ意味する。
〔14種類の第1の形態の樹脂溶液の調製〕
表3に示すように、上記ITO分散液と同じ3種類の有機溶媒を用意し、バインダ樹脂としてのエチルセルロースとテルペンフェノール樹脂を、それぞれ、上記有機溶媒に入れて混合し、これを60℃の温度で加熱することによりバインダ樹脂を溶解して14種類の第1の形態の樹脂溶液を調製した。テルペンフェノール樹脂は前述したヤスハラケミカル社製の品番のものを使用した。
〔実施例1〜37と比較例1〜7の第1の形態のITO導電膜形成用組成物の調製〕
表4及び表5に示すように、14種類の第1の形態の樹脂溶液をそれぞれ希釈溶液で希釈し、25質量%の樹脂溶液にした後で、その中から所定の樹脂溶液を選定し、21種類のITO分散液の中から所定のITO分散液を選定し、選定した樹脂溶液と選定したITO分散液にフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤、加水分解基を持つ有機ケイ素化合物、水若しくは水とレベリング材(ビックケミ−ジャパン製BYK−313)からなる添加剤を混合し、自転公転ミキサーで攪拌分散することにより、実施例1〜37と比較例1〜7の第1の形態のITO導電膜形成用組成物の調製した。表4及び表5に示す「MEK」はメチルエチルケトンであり、「BCA」はブチルカルビトールアセテートで、「EtOH」はエタノールである。また表4及び表5では、加水分解基を持つ有機ケイ素化合物を含むITO導電膜形成用組成物の例として、実施例20〜32、35〜37と比較例7をそれぞれ示している。表4及び表5に示す「モル比」は有機ケイ素化合物に含まれる加水分解基のモル数に対する水のモル数の割合をモル比で表したものである。なお、実施例35〜37と比較例7ではITO粒子以外の成分中、水を含まないため、このモル比はゼロである。
〔実施例、比較例の組成分中の第1の形態の固形分の割合、ITO粒子及びITO粒子以外の割合〕
表4及び表5から実施例1〜37と比較例1〜7の組成分中の第1の形態の固形分の割合、ITO粒子及びITO粒子以外の割合をまとめた。これらの割合を表6及び表7に示す。
〔実施例、比較例の組成分中のITO粒子及びITO粒子以外の割合、ITO粒子の物性、バインダ樹脂、分散剤の割合〕
表4及び表5から実施例1〜37と比較例1〜7の組成分中のITO粒子及びITO粒子以外の割合、ITO粒子の物性、バインダ樹脂、分散剤の割合をまとめた。これらの割合を表8及び表9に示す。
〔第1の形態のITO導電膜の形成と印刷性の評価〕
実施例1〜37と比較例1〜7で得られた44種類の第1の形態のITO導電膜形成用組成物から組成物毎に第1の形態のITO導電膜を基材上に形成した。具体的にはこれらの組成物を、スクリーン印刷機(ミタニマイクロニクス社製、型番MEC-2400)を用いて、ポリエチレンテレフタレート(PET)のフィルム基材上と厚さ1mmのガラス上に40mm×40mmのサイズにそれぞれ印刷した。印刷後、大気雰囲気下、130℃で5分間乾燥することにより、44種類のITO導電膜を得た。このときの印刷性を評価した。印刷性の評価は、上記スクリーン印刷機により、印刷したときに印刷後の滲みの程度及びスクリーンの目詰まりの程度を目視により判定した。印刷後の滲み及びスクリーンの目詰まりを生じないものを「良好」とし、印刷後の滲みを生じるものを「やや不良」とし、スクリーンの目詰まりを生じるものを「不良」とした。この結果を表10及び表11に示す。
〔第1の形態のITO導電膜の評価〕
上記方法で形成された44種類の第1の形態のITO導電膜について、次の項目の評価試験を行った。
(1) 基材への密着性
フィルム基材上のITO導電膜に対して、碁盤目法(JISK5600-5-6に準拠)によって基材への密着性を調べた。なお、密着性試験においては、100個の碁盤目のうち、試験後に剥がれずに残存したマス目の数を分子に示し、その密着性の評価とした。具体的には100個のマス目がすべて残存した場合、100/100で表し、20マス目が剥がれて80マス目が残存した場合、80/100で表す。これらの結果を表10及び表11に示す。
(2) 透明性
ガラス基材に成膜した膜を、ヘーズメータ(スガ試験機製、型番HZ-2)を用いて全光線透過率とヘーズを求め、ITO導電膜の透明性を測定した。尚、表に記載の全光線透過率は、基材込みの数値であり、基材のみの全光線透過率は、89%、同ヘーズは、0.03%であった。これらの結果を表10及び表11に示す。
(3) 導電性と高温高湿下における表面抵抗率の変化
三菱化学アナリテック製ハイレスタ(型番:MCP−HT450)を用いて、ガラス基材に作製した直後のITO導電膜の表面抵抗率(初期の抵抗率)を測定し、導電性を評価した。その後、耐熱試験としては85℃に調整された室内に24時間保管した後、初期抵抗率を測定した箇所と同一箇所の表面抵抗率の変化率を下記の式に基づいて求めた。
変化率(%)= [(加熱後表面抵抗率−初期表面抵抗率)/ 初期表面抵抗率]×100
また耐湿試験としては相対湿度90%で温度60℃に調整された室内に24時間保管した後、初期抵抗率を測定した箇所と同一箇所の表面抵抗率を測定し、その変化率を下記の式に基づいて求めた。
変化率(%)= [(加湿後表面抵抗率−初期表面抵抗率)/ 初期表面抵抗率]×100
これらの結果を表12及び表13に示す。
(4) ITO導電膜の組成分析
ITO導電膜の組成を分析は、ITOの近赤外吸収があるため、FT−IRにて測定が不可能であった。そのため、ITOを除いた成分の塗料を作製し、塗料をガラスに成膜し、堀場製作所製のFT−IRにて測定した。まず、実施例1の組成から、ITOを除いた溶液を作製し、この溶液のFT−IRを測定した。次に、この溶液をスクリーン印刷でガラスに成膜し、溶媒を除去した膜のFT−IRを測定した。溶液と膜のエチルセルロースとテルペンフェノール樹脂のピーク比が同一であることを確認し、仕込みの組成と膜の組成が同一であることを確認できた。
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表10〜表13から明らかなように、比較例1では、組成物の固形分100質量%中、ITO粒子以外の割合が60.0質量%(表7)と高かったため、組成物のスクリーン印刷性に劣った。また組成物100質量%中、ITO粒子の割合が0.8質量%(表7)と低くかったため、ITO導電膜の初期の表面抵抗率が非常に大きく導電性に劣っていた。
比較例2では、テルペンフェノール樹脂を含有しない(表9)ため、ITO導電膜の基材への密着性が非常に悪かった。またITO粒子の比表面積が40m/g(表9)と低くく、またITO粒子のL値が39.0(表9)と高かったため、初期の表面抵抗率が非常に大きく導電性に劣っていた。
比較例3では、テルペンフェノール樹脂を含有しない(表9)ため、ITO導電膜の基材への密着性が非常に悪く、またITO粒子のL値が37.2(表9)であるため、初期の表面抵抗率が大きく導電性に劣っていた。
比較例4では、ITO粒子の比表面積が30m/g(表9)と低いため、ITO導電膜のヘーズがやや大きく透明性に劣っていた。
比較例5では、ITO粒子のL値が68.0(表9)であるため、初期の表面抵抗率が大きく導電性に劣っていた。また、エチルセルロースとテルペンフェノール樹脂の比率にて、エチルセルロースの割合が5質量%(表9)と少ないため、スクリーン印刷性に劣っていた。
比較例6では、ITO粒子の比表面積が85m/g(表9)と高いため、ITO導電膜の全光線透過率が低く、ヘーズが大きく透明性に劣った。またITO粒子のL値が73.5(表9)であるため、初期の表面抵抗率が大きく導電性に劣っていた。
比較例7においては、テルペンフェノール樹脂の軟化点が110℃(表9)と低いため、85℃の耐熱試験においても、表面抵抗率の変化が大きかった(表13)。更に、分散剤添加量がITO粒子に対して25質量部(表5、表2)と多いため、密着性においても劣り、高い表面抵抗率を示した。
実施例35〜37では、水の添加無しの加水分解基を含有する有機ケイ素化合物のみであるため、ITO導電膜の初期の表面抵抗率に対する加湿後の表面抵抗率の変化率がそれ程小さくなく、ITO導電膜の耐湿性に優れていなかった(表13)。
これに対して、実施例1〜34の組成物は、粘度を高くすることが可能であるエチルセルロースと、ブチルカルビトールアセテート又はα−テルピネオールの高沸点溶媒を含む組成物であることから、スクリーン性に優れていた。更に、ペースト組成物100質量%中、ITO粒子を3〜45質量%含み、前記組成物の固形分100質量%中、前記ITO粒子以外の成分を10〜52質量%含み、前記ITO粒子が42〜65m/gのBET法による比表面積と36以下のL値を有し、前記バインダ樹脂が130〜160℃の軟化点を有するテルペンフェノール樹脂を含み、前記エチルセルロースと前記テルペンフェノール樹脂の質量比がエチルセルロース:テルペンフェノール樹脂=10〜80:90〜20であり、分散剤を前記液ITO粒子100質量部に対して1〜15質量部をみたしていることから、ITO導電膜の基材への密着性、透明性、導電性、耐熱耐湿性に優れていた。特に、実施例14〜19の組成物は、フェノール系酸化防止剤又はヒンダードアミン系光安定剤を含有することで、耐熱性の向上を図ることができた。特に、実施例20〜33の組成物は、加水分解基を含有する有機ケイ素化合物と水を含むことにより、水を含まない実施例35〜37と比較して、格段に耐湿性並びに密着性に優れていた。
〔6種類の第2の形態のITO粒子の製造〕
6種類の有機ケイ素の加水分解物を被覆したITO粒子(以下、被覆ITO粒子という。)をすべて上述した(a−2)の方法により作製した(No.17〜No.22)。
No.17の被覆ITO粒子:テトラエトキシシラン1.7g(SiO換算量でITO粒子に対して0.5質量部)、エタノール130gを25℃で撹拌混合し、硝酸0.1g、水3.4gを25℃で撹拌混合した液を添加し、60℃の温度で1時間加熱撹拌した。室温まで冷却した上記液に、ITO粒子100gを添加し、1時間、撹拌混合した後、スラリー中の液体分を加熱し蒸発させた。これによりNo.17の被覆ITO粒子を得た。
No.18の被覆ITO粒子:テトラメトキシシラン7.6g(SiO換算量でITO粒子に対して3.0質量部)、エタノール50gを25℃で撹拌混合し、硝酸0.1g、水7.6gを25℃で撹拌混合した液を添加し、60℃の温度で1時間加熱撹拌した。ITO粒子100gを撹拌機で撹拌しながら、上記液を少量ずつ滴下しながら、全量添加した。回収後、液体分を加熱し蒸発させた。これによりNo.18の被覆ITO粒子を得た。
No.19の被覆ITO粒子:テトラブトキシシランを37.4g(SiO換算量でITO粒子に対して7.0質量部)、エタノール120g、硝酸3.0g、水15.0にて、No.17の被覆ITO粒子の作製方法と同様にして、No.19の被覆ITO粒子を得た。
No.20の被覆ITO粒子:テトラエトキシシランを34.7g(SiO換算量でITO粒子に対して10.0質量部)、エタノール150g、硝酸3.0g、水18.0にて、No.17の被覆ITO粒子の作製方法と同様にして、No.20の被覆ITO粒子を得た。
No.21の被覆ITO粒子:テトラエトキシシランの3〜5量体を29.4g(SiO換算量でITO粒子に対して15.0質量部)、エタノール150g、硝酸3.0g、水18.0にて、No.17の被覆ITO粒子の作製方法と同様にして、No.21の被覆ITO粒子を得た。
No.22の被覆ITO粒子:テトラエトキシシランの3〜5量体を39.2g(SiO換算量でITO粒子に対して20.0質量部)、エタノール150g、硝酸3.0g、水18.0にて、No.17の被覆ITO粒子の作製方法と同様にして、No.22の被覆ITO粒子を得た。
上記方法で得られたNo.17〜No.22の被覆ITO粒子を表14に示す雰囲気下及び温度で、それぞれ4時間乾燥した。得られた被覆ITO粒子のBET法による比表面積を柴田科学社の装置(SA-1100)を用いて測定した。この測定結果を表14に示す。また、得られた被覆ITO粒子中のSi量をICPで測定し、仕込み値と同じであることを確認した。
〔6種類の第2の形態のITO分散液の調製〕
表15に示すように、有機溶媒の3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール(MMB)に上記No.17〜No.22の6種類の第2の形態の被覆ITO粒子のいずれかと、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルからなる分散剤を加えて、湿式ビーズミルにより分散して、V〜AAの6種類のITO分散液を調製した。
〔実施例38〜43と比較例8の第2の形態のITO導電膜形成用組成物の調製〕
第1の形態の樹脂溶液mと、上記6種類の第2の形態の分散液と、希釈媒体としてのブチルカルビトールアセテート(BCA)とを表16に示す割合で混合し、自転公転ミキサーで攪拌分散することにより、実施例38〜43と比較例8の第2の形態のITO導電膜形成用組成物を調製した。実施例43では、添加剤としてフェノール系酸化防止剤のADEKA社製の製品名AO−20を表16に示す割合で添加した。
〔実施例、比較例の組成分中の第2の形態の固形分の割合、ITO粒子及びITO粒子以外の割合〕
実施例38〜43と比較例8の組成分中の第2の形態の固形分の割合、ITO粒子及びITO粒子以外の割合をまとめた。これらの割合を表17に示す。
〔実施例、比較例の組成分中のITO粒子及びITO粒子以外の割合、ITO粒子の物性、バインダ樹脂、分散剤の割合〕
実施例38〜43と比較例8の組成分中のITO粒子及びITO粒子以外の割合、ITO粒子の物性、バインダ樹脂、分散剤の割合をまとめた。これらの割合を表18に示す。
〔第2の形態のITO導電膜の形成と組成物の印刷性と第2の形態のITO導電膜の評価〕
実施例38〜43と比較例8で得られた7種類の第2の形態のITO導電膜形成用組成物から組成物毎に第2の形態のITO導電膜を第1の形態と同じ方法で基材上に形成し、第1の形態と同様に組成物の印刷性と、第2の形態のITO導電膜の基材への密着性、透明性、及び導電性と高温高湿下における表面抵抗率の変化の評価を行った。高温下における表面抵抗率の変化率は、85℃に調整された室内に72時間保管した後で、第1の形態と同様に求めた。また高湿下における表面抵抗率の変化率は、相対湿度90%で温度60℃に調整された室内に72時間保管した後で、第1の形態と同様に求めた。それ以外の項目の評価方法は第1の形態の評価方法と同じである。これらの結果を表19及び表20に示す。
〔第2の形態のITO導電膜の耐光性の評価〕
上記方法で形成された7種類の第2の形態のITO導電膜の耐光性について評価した。具体的には、基材上に形成されたITO導電膜を相対湿度50%で温度63℃に調整された室内に置き、このITO導電膜に紫外線照射装置(岩崎電気製、アイ スーパーUVテスター SUV-W16)を用いて、照度0.15W/cm、積算光量270J/cmの紫外線を30分間照射した。照射前の初期の表面抵抗率と照射後の表面抵抗率を測定し、その変化率を下記の式に基づいて求めた。
変化率(%)= [(UV照射後表面抵抗率−初期表面抵抗率)/ 初期表面抵抗率]×100
この結果を表21に示す。
Figure 0006530644
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表14〜表21から明らかなように、比較例8では、有機ケイ素の加水分解物の被覆量を20.0質量部(表14)のNo.22のITO粒子を用いてITO分散液を作製し、かつそのITO粒子の比表面積が80m/g(表18)であったため、その分散液で得られたITO導電膜の透明性評価である全光線透過率が85.0%(表19)と低く、またヘーズが3.0%と高かった。また、初期の表面抵抗率は、ハイレスタの測定レンジを超えており(表20、21)中には「Over」と記載。)導電性を発現できなかった。
これに対して、実施例38〜43の組成物は、粘度を高くすることが可能であるエチルセルロースと、ブチルカルビトールアセテート又はα−テルピネオールの高沸点溶媒を含む組成物であることから、スクリーン性に優れていた。更に、ペースト組成物100質量%中、ITO粒子を14.0〜31.5質量%含み、前記組成物の固形分100質量%中、前記ITO粒子以外の成分を10.0〜30質量%含み、前記ITO粒子が50〜70m/gのBET法による比表面積を有し、前記バインダ樹脂が160℃の軟化点を有するテルペンフェノール樹脂を含み、前記エチルセルロースと前記テルペンフェノール樹脂の質量比がエチルセルロース:テルペンフェノール樹脂=30:70又は20:80であり、分散剤を前記液ITO粒子100質量部に対して5質量部であることから、実施例35〜40の組成物から作られたITO導電膜の基材への密着性、透明性、導電性、耐熱耐湿性に優れていた。特に、これらの実施例38〜43の組成物から作られたITO導電膜の紫外線照射前後の変化率が−10%以内であり、耐光性に優れていた。

Claims (14)

  1. ITO粒子とバインダ樹脂と有機溶媒とを含むITO導電膜形成用組成物において、
    前記組成物100質量%中、前記ITO粒子を3〜45質量%含み、前記組成物の固形分100質量%中、前記ITO粒子以外の成分を10〜52質量%含み、
    前記ITO粒子が42〜65m/gのBET法による比表面積と36以下のL値を有し、
    前記バインダ樹脂がエチルセルロース及び130〜160℃の軟化点を有するテルペン
    フェノール樹脂を含む
    ことを特徴とするITO導電膜形成用組成物。
  2. 前記エチルセルロースと前記テルペンフェノール樹脂の質量比がエチルセルロース:テルペンフェノール樹脂=10〜80:90〜20である請求項1記載のITO導電膜形成用組成物。
  3. 分散剤を前記液ITO粒子100質量部に対して1〜15質量部更に含む請求項1又は2記載のITO導電膜形成用組成物。
  4. スクリーン印刷用ペースト又は塗料に用いられる請求項1ないし3いずれか1項に記載のITO導電膜形成用組成物。
  5. 前記スクリーン印刷用ペーストに用いられる場合、前記有機溶媒が3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールと、ブチルカルビトールアセテート又はα−テルピネオールの溶媒とからなる請求項4記載のITO導電膜形成用組成物。
  6. 前記塗料に用いられる場合、前記有機溶媒が3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールと、2−ブタノン、4−メチル2−ペンタノン、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、トルエン、メタノール、1-プロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、2,4-ペンタンジオン及びキシレンからなる群より選ばれた1種又は2種以上の溶媒とからなる請求項4記載のITO導電膜形成用組成物。
  7. フェノール系酸化防止剤又はヒンダードアミン系光安定剤を、前記組成物の固形分100質量%中、0.1〜5質量%更に含む請求項1ないし6いずれか1項に記載のITO導電膜形成用組成物。
  8. 加水分解基を持つ有機ケイ素化合物と水とを更に含み、前記有機ケイ素化合物の含有量が前記組成物の固形分100質量中、5〜52質量%であり、前記水の含有量が、前記加水分解基を持つ有機ケイ素化合物に含まれる加水分解基がメトキシ基もしくはエトキシ基であり、この加水分解基のモル数に対して、0.05〜0.7倍モル数である請求項1ないし7いずれか1項に記載のITO導電膜形成用組成物。
  9. 前記ITO粒子が有機ケイ素の加水分解物で被覆され、前記有機ケイ素の加水分解物で被覆されたITO粒子のBET法による比表面積が50〜70m/gであり、前記有機ケイ素の加水分解物の被覆量が被覆前の前記ITO粒子100質量部に対して0.5〜15質量部である請求項1ないし7いずれか1項に記載のITO導電膜形成用組成物。
  10. 42〜65m/gのBET法による比表面積と36以下のL値を有するITO粒子が130〜160℃の軟化点を有するテルペンフェノール樹脂中に均一に分散してなり、膜中、前記ITO粒子を48〜90質量%、前記ITO粒子以外の成分を10〜52質量%含むITO導電膜。
  11. 前記ITO粒子以外の成分中、フェノール系酸化防止剤又はヒンダードアミン系光安定剤を、前記組成物の固形分100質量%中、0.1〜5質量%更に含む請求項10記載のITO導電膜。
  12. 前記ITO粒子以外の成分中、加水分解基を持つ有機ケイ素化合物と水とを更に含み、前記有機ケイ素化合物の含有量が前記組成物の固形分100質量中、5〜52質量%であり、前記水の含有量が、前記加水分解基を持つ有機ケイ素化合物に含まれる加水分解基がメトキシ基もしくはエトキシ基であり、この加水分解基のモル数に対して、0.05〜0.7倍モル数である請求項10記載のITO導電膜形成用組成物。
  13. 50〜70m/gのBET法による比表面積を有する、有機ケイ素の加水分解物で被覆されたITO粒子が130〜160℃の軟化点を有するテルペンフェノール樹脂中に均一に分散してなり、膜中、前記有機ケイ素の加水分解物で被覆されたITO粒子を70〜90質量%、前記有機ケイ素の加水分解物で被覆されたITO粒子以外の成分を10〜30質量%含み、前記有機ケイ素の加水分解物の被覆量が被覆前の前記ITO粒子100質量部に対して0.5〜15質量部であるITO導電膜。
  14. 前記有機ケイ素の加水分解物で被覆されたITO粒子以外の成分中、フェノール系酸化防止剤又はヒンダードアミン系光安定剤を更に含む請求項13記載のITO導電膜。
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