JP6529743B2 - 光電変換素子 - Google Patents

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Description

本発明は、光電変換素子に関し、さらに詳しくは、単色光(例えば、太陽光励起レーザーからの10W/cm2以上、特に〜1kW/cm2以上の高パワー密度を持つ単色光)のエネルギーを電気エネルギーに変換するのに適した光電変換素子に関する。
非特許文献1には、従来から宇宙用太陽電池として用いられている砒化ガリウム太陽電池を用いて、半導体レーザーからの波長808nmの光を電気エネルギーに変換する試みが記載されている。しかし、既製の形の素子の組み合わせであるため、変換効率が不十分との問題点が指摘されている。
一方、従来型の太陽電池においても、変換効率を高める努力がなされている。従来型の太陽電池の変換効率を向上させる方法としては、具体的には、以下のような方法が知られている。
(A)光閉じ込め技術を用いて変換効率を高める方法。
(B)キャリアの再結合を抑制する方法。
(C)半導体基板と電極との界面でのショットキー接合の形成を回避する方法。
(A)光閉じ込め技術:
従来型の太陽電池においては、受光面における光の反射を抑制するために、半導体基板の受光面に凹凸構造を設けることが行われている。受光面に凹凸構造を設けると、受光面の凸部で反射された光が隣接する凸部に再吸収される。このような受光面に設ける凹凸構造及びその製造方法については、種々の提案がなされている。
例えば、非特許文献2には、光閉じ込め技術として、1mm2当たり2500個の規則正しい逆ピラミッドからなる無反射表面形状が記載されている。また、特許文献1には、無反射表面形状を、フォトエッチング法で作製することが記載されている。
特許文献2には、均一な無反射表面形状(ピラミッド構造)を、フォトマスクを用いずに形成できるエッチング液として、モノスルホン酸又はこれらの塩、アルカリ化合物、及び、水を含むアルカリエッチング液が開示されている。
特許文献3には、凹凸構造を形成する方法として、
(a)ワイヤースライス、サンドブラスト、サンドペーパー研磨等の機械的ダメージ形成方法、あるいは不純物拡散、イオン衝撃、ラジカル照射等の化学的ダメージ形成方法によって、半導体基板の表面にダメージ層を形成し、
(b)次いで、半導体基板の表面に酸エッチングを施す
方法が開示されている。
特許文献4には、凹凸構造を形成する方法として、
(a)シリコン基板の表面にレーザー光を照射することで溝を形成し、
(b)フッ酸:硝酸=3〜10:1の割合で含まれる酸による化学エッチングで凹凸を形成する
方法が開示されている。
(B)キャリアの再結合の抑制:
従来型の多くの太陽電池では、例えば、特許文献1に開示されているように、半導体基板の受光面側に、半導体基板の伝導型とは異なる伝導型の第1の拡散層(エミッタ層)が形成される。半導体基板の表面にエミッタ層を形成すると、両者の界面にはpn接合面が形成される。pn接合面は、光によって生成したキャリアを太陽電池の2つの電極(+電極と、−電極)のそれぞれの方向に向かって分離・加速移動させる原動力となる。光によって生成したキャリアの密度は、受光面に近い部分で大きいため、エミッタ層を受光面側に設けることにより、2つの電極から効率よくキャリアを取り出すことができる。
また、pn接合面を受光面に近い部分に設けた太陽電池では、半導体基板の受光面とは反対側の面(裏面)に、第2の拡散層(バックサーフェースフィールド(BSF)層)を設けることが多い。BSF層とは、半導体基板の伝導型と同じ伝導型となる不純物を高濃度にドーピングした層をいう。BSF層は、半導体基板が光を吸収することによって生じた少数キャリアであって、本来ならば受光面近傍に設けたpn接合面の方向に拡散移動すべきものが、裏面に設けた電極方向に拡散移動するのを抑制する(半導体基板側に追い返す)働きをする。
一方、特許文献5には、第1の拡散層と第2の拡散層の双方を、半導体基板の裏面側に形成した太陽電池が開示されている。太陽電池の電極には、一般に金属電極が用いられるが、金属電極は光を太陽電池外に反射する。第1の拡散層と第2の拡散層をともに裏面に形成することにより、受光面側に電極を設けずに済むので、電極が光を反射することに起因する効率の減少をある程度抑制することができる。
このような第1及び第2の拡散層は、一般に、不純物ドーピング法によって形成される。拡散層を形成する方法としては、種々の方法が知られている。
例えば、非特許文献3には、
(a)不純物を含む塗布液を半導体基板に塗布し、熱処理によってドープする方法、
(b)半導体基板を電気炉等の内部に挿入し、電気炉中に不純物を含む気体を送り込み、電気炉中で気体が分解されて生じた不純物原子を半導体基板中に拡散させる方法(気相拡散法)
が開示されている。
気相拡散法には、
(a)不純物源として、不純物原子を文字通りその分子内に持つ気体を用いる方法、
(b)不純物源は液体であるが、窒素等のキャリアガスを不純物源に通すことによって不純物源のガスをキャリアガスに含ませ、これを半導体基板の表面に供給する方法、
などがある。
シリコンにn型不純物であるリンをドーピングする場合を例にとると、
(a)リンを含む液状の有機化合物をスピナーでウェハ上に塗布し、800℃で熱処理する方法(特許文献6)、
(b)五酸化二リン(P25)を含む塗布液をウェハ上に塗布し、800〜1200℃で熱処理する方法(特許文献7)、
などが知られている。
さらに、イオン注入法は、不純物をイオンの形で加速し、半導体基板に注入する方法である。イオン注入法は、大規模集積回路(LSI)等で、浅い不純物層を、不純物濃度と深さを精密にコントロールして形成する方法として一般的であるが、光電変換素子(太陽電池)の製造に用いられた例も知られている(特許文献8)。
(C)ショットキー接合の形成の回避:
電極/半導体基板の界面にショットキー接合が形成されると、変換効率が低下する。そのため、光電変換素子においては、ショットキー接合の形成を回避する必要がある。
ショットキー接合の形成の回避に関しては、一般に、半導体基板の組成に応じて、最適な電極材料を選択する方法が採られる。例えば、半導体基板がシリコンであり、かつ、裏面側に第2の拡散層を形成する場合、第2の拡散層に接続する電極材料には、アルミニウムが用いられる(非特許文献4)。
上述したように、従来型の太陽電池において、変換効率を向上させるための種々の方法が提案されている。しかしながら、これらの技術を単色光用の太陽電池にそのまま転用するだけでは、高い変換効率は得られない。
さらに、入射光として単色光を用い、かつ、光吸収部材の受光面とは反対側の面に凹凸構造(拡散反射面)を設けた光電変換素子、並びに、このような光電変換素子にとって理想的な凹凸構造及びその製造方法が提案された例は、従来にはない。
特開2000−022185号公報 特開2013−236027号公報 特開2005−340643号公報 特開2003−258285号公報 特開2013−183004号公報 特開2013−012532号公報 特開2011−171600号公報 特開2013−197538号公報
河島 信樹、「ワイヤレスエネルギー伝送技術−4、レーザーによる伝送技術」、電気学会誌、129巻、第7号、422頁〜425頁(2009) 上村 邦夫、佐賀 達男、松谷 壽信、「宇宙用単結晶シリコン太陽電池」、シャープ技報、第70号、59頁〜64頁(2009) S.M.ジー、「半導体デバイス 第2版 基礎理論とプロセス技術」(産業図書、2004)、第13章 不純物ドーピング、pp.402−434 社団法人日本セラミックス協会編集、「太陽電池材料」(日刊工業新聞社、2006)
本発明が解決しようとする課題は、単色光の照射に適した高効率の光電変換素子を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、入射光として単色光を用い、かつ、光吸収部材の受光面とは反対側の面に凹凸構造を設けた光電変換素子において、高い変換効率を得るのに適した凹凸構造を提供することにある。
さらに、本発明が解決しようとする他の課題は、このような光電変換素子において、キャリアの再結合を抑制し、かつ、光吸収部材/電極界面におけるショットキー結合の形成を回避することにある。
上記課題を解決するために本発明に係る光電変換素子は、以下の構成を備えている。
(1)前記光電変換素子は、波長λ0の単色光を吸収して、キャリアを発生させることが可能な光吸収材料からなる光吸収部材を備え、入射光として前記単色光からなる略平行光線が用いられる。
(2)前記光電変換素子は、
前記光吸収部材と、
前記光吸収部材の受光面側の表面に形成されたバンドパスフィルターと、
前記バンドパスフィルターの周囲に形成された表面電極と、
前記光吸収部材の裏面側の表面であって、前記バンドパスフィルター及び前記表面電極に対向する位置に形成された拡散反射面と、
前記拡散反射面の表面の全部又は一部を覆うように形成された裏面電極と
を備えている。
(3)前記バンドパスフィルターは、少なくとも前記波長λ0の光を選択的に透過させる機能を持つ。
(4)前記拡散反射面は、多重反射によって前記受光面に対して平行方向に前記入射光を拡散させる機能を持つ。
(5)前記表面電極及び前記裏面電極は、それぞれ、前記キャリアを取り出す集電体としての機能と、前記入射光を反射させる反射膜としての機能とを持つ。
本発明に係る光電変換素子は、以下の構成をさらに備えているものが好ましい。
(6)前記光吸収部材の光拡散部の厚さは、前記光吸収材料への前記入射光の侵入深さの1/200以上1/10以下である。
ここで、「光拡散部」とは、前記光吸収部材を前記受光面の法線方向から見た時に、前記バンドパスフィルター及び前記表面電極の投影面と、前記拡散反射面の投影面とが重なり合う部分をいう。
「光吸収材料への入射光の侵入深さ」とは、前記光吸収材料に前記入射光を入射させた時に、前記入射光の強度が1/e(eは、ネイピア数)となる深さをいう。
(7)前記バンドパスフィルターの端縁から前記光拡散部の端縁までの最短距離は、拡散距離の2倍以上である。
ここで、「拡散距離」とは、前記光拡散部の厚さに相当する厚さを有する前記光吸収材料の表面及び裏面に、それぞれ、前記バンドパスフィルター及び前記拡散反射面を形成し、前記バンドパスフィルターと前記拡散反射面との間で前記入射光を多重反射させながら前記受光面に対して平行方向に前記入射光を拡散させた時に、前記入射光の強度が1/e(eは、ネイピア数)となる距離をいう。
前記拡散反射面は、前記入射光の反射スペクトルが後述する(1)式の関係を満たすものが好ましい。
本発明に係る光電変換素子は、以下の構成をさらに備えているものが好ましい。
(8)前記表面電極及び前記裏面電極の少なくとも一方は、
前記光吸収部材の表面に形成された、前記光吸収部材とオーミック接合を形成することが可能な第1導電材料からなる第1層と、
前記第1層の表面に形成された、前記第1導電材料より前記入射光の反射率が高い第2導電材料からなる第2層と
の積層構造を備え、
前記第1層の厚さは、前記第1導電材料へのキャリアの侵入深さの3倍以上であり、かつ、前記第1導電材料への前記入射光の侵入深さ以下である。
ここで、「第1導電材料へのキャリアの侵入深さ」とは、前記光吸収材料中のキャリア(A)と前記第1導電材料中のキャリア(B)とを区別できると仮想して、ポアソンの方程式を用いて前記光吸収材料中の前記キャリア(A)の前記第1導電材料中での濃度分布を計算したとき、前記第1導電材料中の前記キャリア(A)の濃度が前記光吸収材料中の前記キャリア(A)の濃度の1/e(eは、ネイピア数)となる深さをいう。
「第1導電材料への入射光の侵入深さ」とは、前記第1導電材料に前記入射光を入射させた時に、前記入射光の強度が1/e(eは、ネイピア数)となる深さをいう。
バンドパスフィルターは、従来、白色光の中から特定波長の光を抽出するために用いられていた。このバンドパスフィルターを光電変換素子の受光面の上に設け、受光面に向かって単色光を入射すると、バンドパスフィルターは、入射光を遮ることなく、裏面からの反射光を再び光吸収部材内部に反射する。これにより、光吸収部材を薄型化しても高い光吸収率が確保される。また、材料の低減、タクトタイムの短縮が可能となり、コストを削減することができる。
また、バンドパスフィルターの周囲を所定の大きさの表面電極で覆い、かつ、バンドパスフィルター及び表面電極に対向するように拡散反射面及び裏面電極を設けると、入射光は、これらの間で多重反射を繰り返しながら、光吸収部材の内部を受光面に対して平行方向に拡散する。そのため、光吸収部材による入射光の吸収率が向上する。特に、拡散反射面が後述する(1)式を満たす場合には、光吸収部材による入射光の吸収率がさらに向上する。
また、光拡散部の厚さを所定の厚さにすると、直列抵抗の小さい光電変換素子を形成することができる。
さらに、表面電極及び前記裏面電極の少なくとも一方が第1層と第2層の積層構造からなる場合には、光吸収率を低下させることなく、ショットキー結合の形成を回避することができる。
本発明の一実施の形態に係る光電変換素子の概略構成図である。 ピラミッド形状の尖端部及び側面の粗面化又は曲面化に適した酸エッチング液の組成範囲を示す図である。 従来型の太陽電池の受光面側に設けられた無反射表面形状(テキスチャ)の断面模式図である。 光電変換素子の裏面側に設けられた拡散反射面の断面模式図である。
第1の拡散層が受光面近傍に存在する太陽電池のエネルギーバンド図である。 銀とシリコン(第2の拡散層)の界面のエネルギーバンド図である。 p型単結晶シリコンを水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(液温約90℃)でエッチングした時の濃度とエッチング速度の関係を示す図である。 水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を用いて、エッチング速度50〜60μm/hで3時間エッチングしたp型単結晶シリコンのエッチング面の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
酸エッチング液で90秒エッチングしたSi表面のSEM写真である。酸エッチング液中の酸の組成は、(a)HF:HNO3:H2SO4=4:16:80、(b)HF:HNO3:H2SO4=10:15:75、(c)HF:HNO3:CH3COOH=18:36:46である。 (a)11重量%のTMAH水溶液、(b)11重量%のTMAH水溶液、及び0.05重量%のポリエチレングリコールモノ−4−オクチルフェニルエーテルを含有する15重量%のTMAH水溶液、(c)11重量%のTMAH水溶液、及びHF:HNO3:CH3COOH=20:40:40の酸エッチング液、又は、(d)11重量%のTMAH水溶、及びHF:HNO3:H2SO4=4:16:80の酸エッチング液で、それぞれ、エッチングしたSi表面のSEM写真である。 図11(a)は、薄板化したシリコン基板(試料No.21)、及び、表面に凹凸構造が形成されたシリコン基板(試料No.22〜試料No.26)に波長1064nmの光を入射させた時の、規格化された反射強度(I/I0)の反射角度依存性である。図11(b)は、反射角θと(I/Io)・sinθとの関係を示す図である。 反射率の角度分布がcosnθであることを仮定した時の、n値と半値全幅との関係(図12(a))、及び、半値全幅と光吸収率との関係(図12(b))を示す図である。 図13(a)は、p型単結晶シリコン基板上に第2の拡散層を形成し、かつ、第2の拡散層上に銀/アルミニウム積層電極を形成した時の電流電圧特性である。図13(b)及び図13(c)は、それぞれ、アルミニウム厚さが1.8nm又は2.7nmである銀/アルミニウム積層電極を形成したp型単結晶シリコン基板の断面の透過電子顕微鏡写真である。
第2の拡散層から銀/アルミニウム積層電極に向かって波長1064nmの光が進む時の、銀/アルミニウム積層電極のアルミニウム層の厚さと反射率との関係を示す図である。 光の入射位置からの距離(伝搬距離)とその点での光強度との関係を示す図である。 直径50μm(図16(a))又は直径100μm(図16(b))の光束中心からの距離とその点での光強度との関係を示す図である。 Siウェハの厚さと変換効率との関係を示す図である。 直径50μm(図18(a))又は直径100μm(図18(b))の光束を、裏面がエッチングされたSiに入射させた時のエッチング部分の半径と変換効率との関係を示す図である。
以下に、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. 光電変換素子]
本発明に係る光電変換素子は、以下の構成を備えている。
(1)前記光電変換素子は、波長λ0の単色光を吸収して、キャリアを発生させることが可能な光吸収材料からなる光吸収部材を備え、入射光として前記単色光からなる略平行光線が用いられる。
(2)前記光電変換素子は、
前記光吸収部材と、
前記光吸収部材の受光面側の表面に形成されたバンドパスフィルターと、
前記バンドパスフィルターの周囲に形成された表面電極と、
前記光吸収部材の裏面側の表面であって、前記バンドパスフィルター及び前記表面電極に対向する位置に形成された拡散反射面と、
前記拡散反射面の表面の全部又は一部を覆うように形成された裏面電極と
を備えている。
(3)前記バンドパスフィルターは、少なくとも前記波長λ0の光を選択的に透過させる機能を持つ。
(4)前記拡散反射面は、多重反射によって前記受光面に対して平行方向に前記入射光を拡散させる機能を持つ。
(5)前記表面電極及び前記裏面電極は、それぞれ、前記キャリアを取り出す集電体としての機能と、前記入射光を反射させる反射膜としての機能とを持つ。
[1.1. 入射光]
本発明において、入射光は、波長λ0の単色光からなる。すなわち、本発明に係る光電変換素子は、単色光照射用の光電変換素子である。
「波長λ0の単色光」とは、中心波長がλ0であり、かつ、中心波長λ0に対するスペクトルの半値半幅(Δλ/2)の比(=Δλ/2λ0)が0.04以下である光をいう。
本発明において、入射光は、受光面(入射光が入射する面)に向かって略平行に入射する略平行光線からなる。
「略平行光線」とは、光の進行方向を示す角の分布βが23°以下である光をいう。βは、小さいほど良い。高い変換効率を得るためには、入射光は、β≒0の平行光線が好ましい。
本発明において、入射光は、入射角θで受光面に入射する。
「入射角θ」とは、受光面の法線方向と、入射光の入射方向とのなす角をいう。
「入射光の入射方向」とは、入射光の平均的な進行方向をいう。例えば、入射光が平行光線(β=0)である場合は、入射方向とは、入射光に平行な方向をいう。また、例えば、入射光の進行方向が頂角:2β(β≠0)の円錐形状内にある場合、入射方向とは、円錐の中心軸に平行な方向をいう。
本発明において、入射角θは、目的とする変換効率が得られる限りにおいて、ゼロ(=垂直入射)より大きくても良い。但し、入射角θが大きくなりすぎると、変換効率が低下する。従って、入射角θは、23°以下が好ましい。入射角θは、さらに好ましくは、5°以下である。
[1.2. 光吸収材料]
光電変換素子は、波長λ0の単色光を吸収して、キャリアを発生させることが可能な光吸収材料からなる光吸収部材を備えている。
本発明において、光吸収材料は、直接遷移型半導体、又は間接遷移型半導体のいずれも選択でき、入射光の波長に応じて適宜選択すればよい。光吸収材料としては、例えば、Si、Ge、GaP、GaAsなどがある。
光吸収材料の組成は、単色光の波長λ0(nm)(その光のエネルギーEL[eV]=hc/eλ0=1240/λ0)と、光吸収材料の禁制帯幅Egによって決まる。
例えば、λ0=1064nmの場合は、光吸収材料は、シリコン、特に単結晶シリコンが好適である。禁制帯幅Egの半導体にエネルギーがELの光が吸収されるためには、Eg<ELである必要がある。このような半導体に光が吸収された時には、EL−Egのエネルギーは熱となって発電に寄与しないので、ELとEgは近いことが好ましい。λ0=1064nmの光のエネルギーELは1.17eVであり、シリコンの禁制帯幅Egは1.11eVである。両者は、ELとEgが近いので、好ましい組み合わせである。
同様に、λ0=800〜860nmの光(EL=1.55〜1.44eV)に対しては、例えば、Eg=1.43eVの砒化ガリウムが好適である。
光吸収部材の主要部を構成する光吸収材料の伝導型は、p型、又はn型のいずれであっても良く、光吸収材料の組成や単色光の波長λ0に応じて、最適なものを選択する。
光吸収材料が光を吸収すると、少数キャリア(p型の場合は電子、n型の場合は正孔)が発生する。非特許文献3に記載されているように、少数キャリアの拡散長は、正孔に比べて電子の方がより長い。
一方、単結晶シリコンの基板の場合、第1の拡散層の部分の厚さは、1μm以下に設定するのが一般的である。第1の拡散層の厚さと、それ以外の部分の厚さを比べると、後者の方が圧倒的に厚い。
従って、単結晶シリコンを光吸収材料に用いる場合には、少数キャリアが電子となるように、p型を選択するのが好ましい。
[1.3. 光吸収部材]
光吸収部材の受光面側の表面には後述するバンドパスフィルターと表面電極が形成される。一方、受光面とは反対側の表面には、後述する拡散反射面が形成され、さらに拡散反射面の表面には、裏面電極が形成される。
光吸収部材の一方の面には、光吸収部材の伝導型とは異なる伝導型を示す第1の拡散層(エミッタ層)が形成される。さらに、光吸収部材の他方の面には、必要に応じて、光吸収部材の伝導型と同じ伝導型を示す第2の拡散層(バックサーフェスフィールド(BSF)層)を設けても良い。
[1.3.1. 光拡散部の厚さ]
本発明に係る光電変換素子において、入射光は、光吸収部材の表面と裏面との間で多重反射を繰り返しながら光吸収部材に吸収される。そのため、光拡散部の厚さと、光吸収材料への入射光の侵入深さは、変換効率に影響を与える。
ここで、「光拡散部」とは、前記光吸収部材を前記受光面の法線方向から見た時に、前記バンドパスフィルター及び前記表面電極の投影面と、前記拡散反射面の投影面とが重なり合う部分をいう。入射光は、少なくとも、バンドパスフィルター及び表面電極と、拡散反射面との間で多重反射を繰り返す。拡散反射面の内、多重反射に寄与する部分に裏面電極が形成されている場合には、裏面電極も多重反射に寄与する。高い変換効率を得るためには、拡散反射面の表面の内、多重反射に寄与する部分の全面を裏面電極で覆い、拡散反射面及び裏面電極の双方で光を反射させるのが好ましい。
「光吸収材料への入射光の侵入深さ」とは、前記光吸収材料に前記入射光を入射させた時に、前記入射光の強度が1/e(eは、ネイピア数)となる深さをいう。
一般に、光拡散部の厚さが厚くなるほど、生成したキャリアの移動距離が長くなり、直列抵抗が高くなる。一方、光拡散部の厚さが薄くなりすぎると、光を十分吸収できないという問題がある。
受光面側のバンドパスフィルターと裏面側の拡散反射面による多重反射の効果により、光拡散部の厚さが光吸収材料への入射光の侵入深さの1/200以上ならば、入射光をかなりの比率で吸収することができる。厚さを更に厚くすると、光吸収率は徐々に向上するが、厚さが光吸収材料への入射光の侵入深さの1/10になると、入射光はほぼ完全に吸収される。そのため、それ以上厚くすると、直列抵抗が高くなるという悪影響のみが大きくなり、その結果、変換効率は低下する。
従って、光拡散部の厚さは、光吸収材料への入射光の侵入深さの1/200以上1/10以下が好ましい。
例えば、光吸収部材が単結晶シリコンである場合、光拡散部の厚さは、100μm以下が好ましい。光拡散部の厚さは、さらに好ましくは、50μm以下、さらに好ましくは、20μm以下である。
光拡散部以外の部分の厚さは、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な厚さを選択することができる。本発明において、光吸収部材の裏面側に拡散反射面(凹凸構造)が形成されるため、光吸収部材の全体を上述した厚さにすると、光吸収部材の機械的強度が低下するおそれがある。従って、光拡散部の周囲には、光拡散部より厚い厚肉部を形成するのが好ましい。
[1.3.2. 光拡散部の大きさ]
本発明において、バンドパスフィルター及び表面電極、並びに、拡散反射面及び裏面電極は、いずれも入射光を反射させる機能、又は反射光を光吸収部材の内部に再反射させる機能を持つ。入射光は、光拡散部の表面と裏面との間で多重反射を繰り返しながら、光吸収部材の受光面に対して平行方向に拡散する。そのため、光拡散部の大きさ(すなわち、表面電極、裏面電極、及び、拡散反射面の大きさ)は、変換効率に影響を与える。
なお、拡散反射面の大きさは、必ずしもバンドパスフィルタ+表面電極の大きさに完全に一致している必要はない。これは、双方の投影面の重複部分が光拡散部となるためである。
同様に、拡散反射面の大きさは、必ずしも裏面電極の大きさに完全に一致している必要はない。但し、拡散反射面のみで入射光を完全に反射させるのは難しい。従って、拡散反射面の内、多重反射に寄与する部分の全面が裏面電極で覆われているのが好ましい。
光拡散部の外側の領域(例えば、表面電極のみが存在する領域)まで光が拡散すると、光の大半は、再反射されることなく、そのまま光吸収部材の外側に透過する。そのため、光拡散部の大きさが小さくなるほど、光吸収部材による光の吸収量が減少する。
高い変換効率を得るためには、前記バンドパスフィルターの端縁から前記光拡散部の端縁までの最短距離は、拡散距離の2倍以上が好ましい。最短距離は、さらに好ましくは、拡散距離の3倍以上である。
ここで、「拡散距離」とは、前記光拡散部の厚さに相当する厚さを有する前記光吸収材料の表面及び裏面に、それぞれ、前記バンドパスフィルター及び前記拡散反射面を形成し、前記バンドパスフィルターと前記拡散反射面との間で前記入射光を多重反射させながら前記受光面に対して平行方向に前記入射光を拡散させた時に、前記入射光の強度が1/e(eは、ネイピア数)となる距離をいう。
光拡散部の大きさが大きくなるほど、より多くの多重反射が繰り返されるので、変換効率が向上する。しかしながら、光拡散部の大きさが大きくなるほど、その効果が飽和する。そのため、光拡散部の大きさを必要以上に大きくしても、実益がない。
従って、前記バンドパスフィルターの端縁から前記光拡散部の端縁までの最短距離は、拡散距離の10倍以下が好ましい。最短距離は、さらに好ましくは、拡散距離の5倍以下、さらに好ましくは、拡散距離の4倍以下である。
[1.3.3. 拡散層]
光吸収部材の裏面側又は受光面側のいずれか一方には、光吸収部材の伝導型とは異なる伝導型を示す第1の拡散層(エミッタ層)が形成される。他方の面には、必要に応じて、さらに光吸収部材の伝導型と同じ伝導型を示す第2の拡散層(BSF層)を形成しても良い。エミッタ層をいずれの面に設けるかは、光吸収材料の組成、拡散層の形成方法等に応じて選択することができる。
高い変換効率を得るためには、拡散層の厚さは均一であることが好ましい。しかしながら、光吸収部材の組成やドーパントの種類によっては、凹凸面に均一な拡散層を形成するのが困難な場合がある。例えば、光吸収部材がp型単結晶シリコンである場合、凹凸面に均一な厚さを有するBSF層を形成するのが難しい。従って、このような場合には、光吸収部材の裏面側の表面にエミッタ層を形成するのが好ましい。
なお、光吸収部材の裏面側の表面にエミッタ層を形成した場合、入射光がエミッタ層に到達する前に入射光が減衰するおそれがある。しかしながら、入射光の減衰については、光拡散部の厚さを薄くすることにより軽減することができる。
[1.4. バンドパスフィルター]
[1.4.1. 定義]
本発明に係る光電変換素子は、前記単色光が入射角θで入射する面(受光面)にバンドパスフィルターが形成されている。
「バンドパスフィルター」とは、少なくとも波長λ0の光を選択的に透過させる機能を持つものをいう。バンドパスフィルターは、通常、白色光の中から、特定の波長を持つ光を抽出するために用いられている。本発明において、バンドパスフィルターは、入射光(単色光)をそのまま透過させ、かつ、裏面からの反射光を再び光吸収部材内部に反射させるために用いられる。この点が従来とは異なる。
[1.4.2. 中心波長λ]
バンドパスフィルターを透過することが可能な光の波長は、所定の幅(透過帯域)を持つ。
「中心波長λ」とは、バンドパスフィルターを透過することが可能な光の波長の中央値をいう。
「少なくとも波長λ0の光を選択的に透過する」とは、バンドパスフィルターの中心波長λが、必ずしも入射光の中心波長λ0に完全に一致している必要はないことを意味する。しかしながら、波長λと波長λ0との差が大きく異なると、バンドパスフィルターを透過する光子の数が減少し、変換効率が低下する。
高い変換効率を得るためには、バンドパスフィルターの中心波長λは、0.97×λ0以上1.039×λ0以下が好ましい。中心波長λは、さらに好ましくは、0.98×λ0以上1.025×λ0以下、さらに好ましくは、0.99×λ0以上1.01×λ0以下である。
[1.4.3. 構造]
バンドパスフィルターの構造は、上述した機能を奏するものである限りにおいて、特に限定されない。バンドパスフィルターとしては、例えば、
(a)(L4/H4/)m1L2(H4/L4/)m2の積層構造を持つもの、
(b)AR/(L4/H4/)m1L2(H4/L4/)m2の積層構造を持つもの、
(c)(H4/L4/)m1H2(L4/H4/)m2の積層構造を持つもの、
(d)AR/(H4/L4/)m1H2(L4/H4/)m2の積層構造を持つもの、
などがある。
但し、
「AR」は、屈折率がnARである材料からなる反射防止層、
「L4」は、屈折率がnL4である低屈折材料(A)からなる低屈折率層(A)、
「L2」は、屈折率がnL2である低屈折材料(B)からなる低屈折率層(B)、
「H4」は、屈折率がnH4(>nL4、>nL2)である高屈折材料(A)からなる高屈折率層(A)、
「H2」は、屈折率がnH2(>nL4、>nL2)である高屈折材料(B)からなる高屈折率層(B)、
1、m2は、それぞれ、1以上の整数。
「L4」、「L2」は、それぞれ、その光学厚さ(=屈折率n×実厚さd)がλ0/4又はλ0/2に比例する層を表す。入射角θの場合、バンドパスフィルターを構成する各層の光学厚さndの条件は、nd=(1−sin2θ/n2)1/2×(λ0/4 or λ0/2)となる。この点は、「H4」、「H2」も同様である。
「(L4/H4/)m1」は、「L4/H4/」の積層単位がm1回繰り返されることを表す。前半の繰り返し数m1と後半の繰り返し数m2は、同一であっても良く、あるいは、異なっていても良い。
「(L4/H4/)m1L2(H4/L4/)m2」は、(L4/H4/)m1の積層構造と、(H4/L4/)m2の積層構造の間にL2層が挿入されていることを表す。
「AR/」は、バンドパスフィルターの最表面(光の入射側)に反射防止層が形成されていることを表す。
L4を構成する低屈折材料(A)と、L2を構成する低屈折率材料(B)は、後述する条件を満たす限りにおいて、同一材料であっても良く、あるいは、異なる材料であっても良い。さらに、積層構造中に含まれる個々のL4は、後述する条件を満たす限りにおいて、同一材料であっても良く、あるいは、異なる材料であっても良い。
同様に、H4を構成する高屈折率材料(A)と、H2を構成する高屈折率材料(B)は、後述する条件を満たす限りにおいて、同一材料であっても良く、あるいは、異なる材料であっても良い。さらに、積層構造中に含まれる個々のH4は、後述する条件を満たす限りにおいて、同一材料であっても良く、あるいは、異なる材料であっても良い。
バンドパスフィルターは、特に、積層構造(a)又は積層構造(b)を備えているものが好ましい。これらの積層構造を備えたバンドパスフィルターは、他の積層構造を備えたバンドパスフィルターに比べて高い変換効率が得られる。
バンドパスフィルターを構成する各層の厚さ(実厚さ)dには、理想的な厚さ(実厚さ)d0が存在する。各層の厚さdは、必ずしも理想的な厚さd0と完全に同一である必要はない。しかしながら、厚さdと理想的な厚さd0との差が大きくなると、変換効率が低下する。従って、厚さdは、理想的な厚さd0に近いのが好ましい。
例えば、上述した積層構造(a)又は積層構造(b)を備えたバンドパスフィルターの場合、低屈折率層(A)の厚さdL4、低屈折率層(B)の厚さdL2、及び、高屈折率層(A)の厚さdH4は、それぞれ、以下の関係を満たしているのが好ましい。
すなわち、低屈折率層(A)の厚さdL4は、0.75×dL40以上1.20×dL40以下が好ましい。厚さdL4は、さらに好ましくは、0.85×dL40以上1.10×dL40以下、さらに好ましくは、0.92×dL40以上1.06×dL40以下である。
但し、dL40は、低屈折率層(A)の理想的な厚さ(実厚さ)であり、dL40=(1−sin2θ/nL4 21/2×(λ0/4)×(1/nL4)で表される。
また、低屈折率層(B)の厚さdL2は、0.926×dL20以上1.058×dL20以下が好ましい。厚さdL2は、さらに好ましくは、0.95×dL20以上1.03×dL20以下、さらに好ましくは、0.97×dL20以上1.02×dL20以下である。
但し、dL20は、低屈折率層(B)の理想的な厚さ(実厚さ)であり、dL20=(1−sin2θ/nL2 21/2×(λ0/2)×(1/nL2)で表される。
また、高屈折率層(A)の厚さdH4は、0.87×dH40以上1.10×dH40以下が好ましい。厚さdH4は、さらに好ましくは、0.92×dH40以上1.05×dH40以下、さらに好ましくは、0.96×dH40以上1.02×dH40以下である。
但し、dH40は、高屈折率層(A)の理想的な厚さ(実厚さ)であり、dH40= (1−sin2θ/nH4 21/2×(λ0/4)×(1/nH4)で表される。
積層構造(b)又は積層構造(d)を備えたバンドパスフィルターにおいて、反射防止層の屈折率nAR及び厚さ(実厚さ)dARは、特に限定されない。すなわち、反射防止層は、少なくとも光を透過する材料からなる層であればよい。
また、積層構造(b)を備えたバンドパスフィルターにおいて、さらに高い変換効率を得るためには、反射防止層の屈折率nAR及び厚さdARは、それぞれ、以下の関係を満たしているのが好ましい。
すなわち、反射防止層の屈折率nARは、0.60×npv 1/2以上が好ましい。屈折率nARは、さらに好ましくは、0.7×npv 1/2以上1.8×npv 1/2以下、さらに好ましくは、0.8×npv 1/2以上1.5×npv 1/2以下である。
但し、npvは、前記光吸収材料の屈折率である。
また、反射防止層の厚さdARは、1.70×dAR0以下が好ましい。厚さdARは、さらに好ましくは、0.4×dAR0以上1.4×dAR0以下、さらに好ましくは、0.7×dAR0以上1.2×dAR0以下である。
但し、dAR0は、反射防止層の理想的な厚さ(実厚さ)であり、dAR0=(1−sin2θ/nAR 21/2×(λ0/4)×(1/nAR)で表される。
[1.4.4. 材料]
バンドパスフィルターを構成する各層の材料は、特に限定されるものではなく、目的に応じて種々の材料を用いることができる。
低屈折率材料としては、例えば、MgF2(波長1064nmの光の屈折率:約1.36)、SiO2(波長1064nmの光の屈折率:約1.43)などがある。
高屈折率材料としては、例えば、ZnS(波長1064nmの光の屈折率:約2.29)、TiO2(波長1064nmの光の屈折率:約2.25)などがある。
反射防止層の材料としては、例えば、Y23(波長1064nmの光の屈折率:約1.73)、TiO2−SiO2などの複合酸化物などがある。
[1.4.5. バンドパスフィルターの大きさ]
バンドパスフィルターの周囲には、表面電極が形成される。そのため、バンドパスフィルターの大きさが、入射光の断面の大きさより小さくなると、入射光の一部が表面電極で反射される。従って、バンドパスフィルターの大きさは、入射光の断面の大きさ以上であるのが好ましい。
一方、バンドパスフィルターの大きさを必要以上に大きくしても、実益がない。バンドパスフィルターを構成する薄膜の作製の容易さを鑑みて、適宜設計すればよい。
[1.5. 拡散反射面]
光吸収部材は、その裏面に、拡散反射面を備えている。拡散反射面は、光吸収部材で吸収しきれなかった入射光を反射させるためのものである。換言すれば、拡散反射面は、多重反射によって受光面に対して平行方向に入射光を拡散させる機能を持つ。拡散反射面は、光吸収部材の裏面の全面に形成しても良いが、少なくとも光の多重反射に実質的に寄与する部分(すなわち、光拡散部)に形成されていれば良い。
受光面に対して平行方向に入射光を拡散させるためには、拡散反射面は、入射光の反射スペクトルが次の(1)式の関係を満たすものが好ましい。
(I/I0)・sinθの半値全幅≧30° ・・・(1)
但し、I/I0は規格化された反射強度、θは入射方向から計った反射角。
高い変換効率を得るためには、半値全幅は、さらに好ましくは、50°以上である。
このような条件を満たす拡散反射面としては、例えば、
(a)大きさ(底面の大きさ、及び/又は高さ)がランダムなピラミッドがランダムに並んでいる面、
(b)大きさがランダムなピラミッドがランダムに並んでおり、かつ、ピラミッドの尖端部及び側面が粗面化又は曲面化されている面、
(c)直径1〜5μmの楔状のくぼみが緻密に形成されている面、
などがある。
従来の拡散反射面作製評価の報告によると、反射強度の反射角度依存性をcoswθで近似するPhongモデルと対応させてwの値を求め、これを拡散反射の指標とした例がある。そこでは、鏡面シリコン/スクリーン印刷Al界面に対して、w=10(参考文献A)、アルカリエッチングシリコン/蒸着Ag界面に対してw=30(参考文献B)が報告されている。w=10、30は、それぞれ、(I/I0)・sinθの半値全幅26.2°、及び16.2°に相当する。従って、従来の作製方法では、十分な光拡散反射機能を得ることができない。
これに対し、後述する異方性エッチング法、酸による等方エッチング法、又はこれらの併用により、上記の条件を満たす拡散反射面を形成することができる。
[参考文献A]M. Hermle, E. Schneiderlochner, and G. Grupp, S. W. Glunz, Proc. 20th European Photovoltaice Solar Energy Conference (Barcelona, Spain, 2005) 810
[参考文献B]D. Kray, M. Hermle, and S. W. Glunz, Prog. Photovolt.: Res. Appl. 16, 1(2008)
[1.6. 表面電極及び裏面電極]
光吸収部材の受光面側の表面であって、バンドパスフィルターの周囲には、表面電極が形成される。また、光吸収部材の裏面側の表面であって、バンドパスフィルター及び表面電極に対向する位置(すなわち、拡散反射面の表面)には、裏面電極が形成される。表面電極及び裏面電極は、それぞれ、キャリアを取り出す集電体としての機能と、入射光を反射させる反射膜としての機能とを持つ。
[1.6.1. 電極の大きさ及び形状]
表面電極及び裏面電極の大きさ及び形状は、特に限定されるものではないく、目的に応じて最適なものを選択することができる。また、表面電極及び裏面電極は、互いに同一の大きさ及び/又は形状を有している必要はない。表面電極及び裏面電極の内、光の多重反射に寄与する部分は、光拡散部として機能する。そのため、高い変換効率が得られるように、表面電極及び裏面電極の大きさ及び形状を選択するのが好ましい。
高い変換効率を得るためには、裏面電極は、拡散反射面の全面を覆っているのが好ましい。但し、変換効率を著しく低下させない限りにおいて、裏面電極は、拡散反射面の一部を覆うものでも良い。
[1.6.2. 電極の材料]
電極には、通常、金属材料が用いられる。光吸収部材の表面に直接、金属電極を形成した場合、光吸収部材/電極間にショットキー接合が形成される場合がある。光吸収部材/電極間にショットキー接合が形成されると、高い変換効率は得られない。従って、電極材料は、光吸収材料とオーミック接合を形成することが可能な材料が好ましい。
また、本発明において、電極は、反射膜としても機能するため、電極には、入射光に対する高い反射率が求められる。反射率は、具体的には、90%以上が好ましい。反射率は、さらに好ましくは、95%以上である。
ある光吸収材料に対して、このような2つの条件を同時に満たす材料がある場合には、光吸収材料の表面に、電極を直接、形成することができる。
一方、このような2つの条件を同時に満たす材料がない場合には、電極は、
前記光吸収部材の表面に設けられた、前記光吸収部材とオーミック接合を形成可能な導電材料からなる第1層と、
前記第1層の表面に設けられた、前記第1導電材料より前記入射光の反射率が高い第2導電材料からなる第2層と
の積層構造を備えたものが好ましい。
このような積層構造を備えた電極は、表面電極又は裏面電極のいずれか一方に用いても良く、あるいは、双方に用いても良い。
積層構造を備えた電極において、キャリアは、第1層から第2層を通って外部に取り出される。第2層が光吸収材料との間でショットキー接合を形成する材料である場合において、第1層の厚さが薄すぎると、キャリアは第2層の影響を受ける。高い変換効率を得るためには、第1層の厚さは、第1導電材料へのキャリアの侵入深さの3倍以上が好ましい。第1層の厚さは、さらに好ましくは、キャリアの侵入深さの5倍以上である。
ここで、「第1導電材料へのキャリアの侵入深さ」とは、前記光吸収材料中のキャリア(A)と前記第1導電材料中のキャリア(B)とを区別できると仮想して、ポアソンの方程式を用いて前記光吸収材料中の前記キャリア(A)の前記第1導電材料中での濃度分布を計算したとき、前記第1導電材料中の前記キャリア(A)の濃度が前記光吸収材料中の前記キャリア(A)の濃度の1/e(eは、ネイピア数)となる深さをいう。
入射光の一部は、拡散反射面を透過する。積層構造を備えた電極において、透過した光の一部は、第1層をさらに透過し、第2層の表面で反射される。第1層の厚さが厚すぎると、第1層における光の減衰が大きくなる。高い変換効率を得るためには、第1層の厚さは、第1導電材料への入射光の侵入深さ以下が好ましい。第1層の厚さは、さらに好ましくは、入射光の侵入深さの1/2倍以下である。
ここで、「第1導電材料への入射光の侵入深さ」とは、前記第1導電材料に前記入射光を入射させた時に、前記入射光の強度が1/e(eは、ネイピア数)となる深さをいう。
例えば、入射光がλ0=1064nmの単色光であり、光吸収材料がp型単結晶シリコンであり、裏面側の表面にエミッタ層(n型)を形成し、受光面側の表面にBSF層(p型)を形成する場合を考える。
反射率の高い材料としては、例えば、Agが知られている。Agは、p型単結晶シリコンのエミッタ層との間でショットキー接合を形成しにくい。従って、裏面電極には、Agをそのまま用いることができる。
これに対し、表面電極としてAgを用いた場合、Agとp型単結晶シリコンのBSF層とを直接接触させると、ショットキー接合が形成される。
一方、Alは、シリコンLSIに用いられる一般的な電極材料である。シリコン表面にAl層を形成した後、400℃前後の温度で数10分程度の熱処理(シンタリング処理)を行うと、Al中にSiが拡散する。シンタリング処理されたAlは、p型及びn型のいずれの伝導層に対してもオーミック接合を形成する。しかしながら、Alの反射率は、Agより低い。
本発明の光電変換素子は、光吸収部材の受光面側の表面と裏面側の表面との間で多重反射を行わせることにより、光吸収部材内での光路長を増大させ、光の吸収率を高めることを特徴とする。そのため、Alの反射率がAgのそれと比べてわずかでも小さいことは、変換効率の低下に決定的な影響を及ぼす。従って、表面電極には、Alをそのまま用いるのではなく、Al(第1層)とAg(第2層)の積層電極を用いるのが好ましい。
λ0=1064nmの光に対するAlの消衰係数kは、下記の参考文献1によれば、k=10.6であるので、波長1064nmのAlへの侵入深さは、約8nmと計算される。従って、Al層の厚さが8nmに比べて十分薄ければ、波長1064nmの光にとっては、Al層は無いも同然であり、ほとんどの光子はAl層を透過し、Alより反射率の大きいAgによって反射されることになる。
[参考文献1] E. D. Palik, Handbook of Optical Constant of solids, (Academic Press 1985)
一方、BSF層(p型)の少数キャリアである電子の侵入深さは、0.1nm程度である。そのため、Al層の厚さが0.1nmより十分厚ければ、電子はAl層がBSF層に接していると感ずる。従って、このような条件を満たすAl層(第1層)と、Ag層(第2層)との積層電極をBSF層の上に形成すればよいことになる。
但し、Al層とBSF層とをオーミック接合させるためには、400℃前後の温度で数10分程度の熱処理を行う必要がある。Al層は、Ag層に比べて圧倒的に薄いので、400℃前後の温度で数10分程度の熱処理によって、AlとAgが合金化し、Al層の表面にAg原子が露出する確率が高くなる。そのようにならないように、シンタリング処理の温度と時間を決定する必要がある。
[1.7. 具体例]
図1に、本発明の一実施の形態に係る光電変換素子の概略構成図を示す。図1において、光電変換素子10は、光吸収部材12と、バンドパスフィルター(BPF)14と、表面電極16と、裏面電極18とを備えている。
光吸収部材12は、所定の厚さを持つp型半導体基板(例えば、p型単結晶シリコン基板)からなる。光吸収部材12の受光面側の表面には、SiO2膜20を介して、BPF14が形成されている。SiO2膜は、厚さが13nm程度であり、光吸収部材(シリコン)12の表面を保護するためのものである。この保護機能を発揮するためには、13nm程度の厚さが必要である。但し、この際、BPF14を構成する各層の内、光吸収部材12に接する低屈折率層の厚さを調整する必要がある。また、光吸収部材12の受光面側の表面であって、BPF14の周囲には、表面電極16が形成されている。表面電極16は、Alからなる第1層16aと、Agからなる第2層16bの積層電極である。さらに、光吸収部材の受光面側の表面直下には、BSF層(第2の拡散層)12aが形成されている。
光吸収部材12の裏面側の中央には薄板部が形成され、薄板部の全面には拡散反射面12bが形成されている。拡散反射面12bを含む光吸収部材12の裏面側の表面直下には、エミッタ層(第1の拡散層)12cが形成されている。さらに、拡散反射面12bを含む光吸収部材12の裏面側の表面には、裏面電極(例えば、Ag電極)18が形成されている。
光吸収部材12の薄板部は、「光拡散部」、すなわち、光吸収部材12を受光面の法線方向から見た時に、バンドパスフィルター14及び表面電極16の投影面と、拡散反射面12bの投影面とが重なり合う部分に該当する。
図1に示す光電変換素子10のBPF14に向かって波長λ0の単色光を入射させると、単色光は、BPF14を透過し、拡散反射面12bで反射される。入射光の一部は、拡散反射面12bを透過し、裏面電極18で反射される。拡散反射面12b及び裏面電極18で反射された光は、さらに、BPF14又は表面電極16により再反射される。以下、このような多重反射を繰り返しながら、光のエネルギーが光吸収部材12に吸収される。
この時、拡散反射面12bの形状、光拡散部の厚さ及び大きさなどを最適化すると、光閉じ込め効果により光の吸収率が向上し、かつ、キャリアの再結合が抑制される。また、表面電極16及び裏面電極18の材料を最適化すると、ショットキー接合の形成を回避することができる。その結果、従来の光電変換素子に比べて、高い変換効率が得られる。
[2. 光電変換素子の製造方法]
本発明に係る光電変換素子は、
(a)必要に応じて、光吸収部材に光拡散部となる薄板部を形成し、
(b)少なくとも光拡散部(薄板部)の裏面側の表面に拡散反射面を形成し、
(c)光吸収部材の表面に拡散層(エミッタ層及び、必要に応じてBSF層)を形成し、
(d)光吸収部材の受光面側の表面に、バンドパスフィルター及び表面電極を形成し、かつ、光吸収部材の裏面側の表面に裏面電極を形成する、
ことにより製造することができる。
なお、各工程の順序は、上記の順序に限定されるものではなく、物理的に可能な限りにおいて、手順を前後させることができる。
[2.1. 薄板部形成工程]
光吸収部材が単結晶シリコン基板のようなバルク材である場合には、光吸収部材の裏面側に、光拡散部となる薄板部を形成する(薄板部形成工程)。なお、光吸収部材が初めから光の多重反射に適した厚さを有する場合(例えば、光吸収部材が薄膜である場合)には、薄板部形成工程を省略することができる。
[2.1.1. 薄板部の形成方法]
薄板部を形成する方法としては、例えば、
(a)光吸収部材の裏面の内、薄板化すべき領域以外の領域をマスキングし、マスキングされた光吸収部材をエッチング液に浸漬する方法、
(b)マスキングを行うことなく、光吸収部材の裏面全体をエッチングする方法、
(c)研磨等の機械加工により、光吸収部材の裏面全体を除去する方法
などがある。
光吸収部材がバルク材である場合、光吸収部材の全体を薄板化すると、光吸収部材の強度が低下するので実用的ではない。従って、エッチング法を用いて、光電変換に実質的に寄与する部分のみを薄板化するのが好ましい。
[2.1.2. 薄板部を形成するためのエッチング液]
薄板化をエッチングで行う場合において、エッチング液は、特に限定されるものではなく、光吸収部材の組成に応じて最適なものを選択する。但し、マスキングを行う場合には、マスキング材を剥離・消失させないエッチング液を用いる必要がある。
エッチング液としては、例えば、
(a)水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、エチレンジアミン−ピロカテコール、水和ヒドラジンなどを含むアルカリ性エッチング液、
(b)フッ化水素酸と硝酸とを主成分とする酸エッチング液、
などがある。
薄板化の際には、いずれか1つのエッチング液を用いても良く、あるいは、2種以上のエッチング液を組み合わせて用いても良い。
これらの内、アルカリ性エッチング液は、以下のような特徴がある。
(a)一般的には異方性エッチングとなるため、凹凸のあるエッチング面を形成しやすい。但し、エッチング条件によってはエッチング面が平坦となることもある。
(b)マスク材として、マスクパターンの形成及び除去が容易なシリコン酸化膜を用いることができる。
(c)エッチング速度は、酸エッチング液に比べて遅い。
一方、酸エッチング液は、以下のような特徴がある。
(a)一般的には等方性エッチングとなるため、平坦なエッチング面を形成しやすい。但し、光吸収部材の表面にマイクロな結晶構造上の違いがある場合、あるいは、酸エッチング液の組成を最適化した場合には、凹凸のあるエッチング面を形成することができる。
(b)マスク材として、シリコン酸化膜を用いることができない場合がある。
(c)エッチング速度は、アルカリ性エッチング液に比べて速い。
薄板化のためのエッチングにおいて、エッチング速度が遅すぎると、エッチング時間が単に長くなるだけでなく、液温や濃度のコントロール上も実用的ではない。例えば、光吸収部材が単結晶シリコンである場合、十分な機械的強度を有し、かつ、実用的な時間内にエッチング処理を完了させることが可能な厚さ(実用的な初期厚さ)は、150μm〜300μmである。また、最終的な薄板部の厚さは、5〜50μmである。これらを考慮すると、エッチング液のエッチング速度は、50μm/h以上が好ましい。
酸エッチング液の組成を最適化すると、シリコンのエッチング速度として、300μm/h〜1200μm/hが得られる。従って、実用的な初期厚さ、及び最終的な薄板部の厚さを考慮すると、酸エッチング液を用いてエッチングを行った場合、10分程度で目的とする厚さを有する薄板部が得られることになる。
しかしながら、シリコンを酸エッチングする場合において、マスク材として、シリコン酸化膜を用いると、酸エッチング液の組成を最適化したとしても、シリコン酸化膜は、酸エッチング液により腐食され、10分以内にマスク効果を発揮できなくなる。
これを防止するために、マスク材として、例えばシリコン窒化膜を用いることも考えられる。しかしながら、シリコン窒化膜を用いたマスクパターンの形成及びその除去は、非常に煩雑である。
従って、光吸収部材がシリコンである場合において、光吸収部材を部分的に薄板化するときには、アルカリ性エッチング液を用いるのが好ましい。
アルカリ性エッチング液には、
(a)水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、
(b)水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液、
(c)エチレンジアミン−ピロカテコール、水和ヒドラジン
などを用いることができる。
半導体プロセスにおいては、半導体基板、それに積層される各種薄膜、半導体基板や薄膜を処理するための処理液、各種処理を行うための装置部品で半導体基板や薄膜に接触する部分に、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオン、あるいは、カルシウム等のアルカリ土類金属イオンが0.001ppb程度(イオンの数密度で1010個/cm3)の濃度で存在しても、半導体デバイスの特性に支障を来す場合がある。
従って、薄板化のためのエッチングには、アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンのいずれも含まないアルカリ性エッチング液を用いるのが好ましい。アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンを含むエッチング液を用いる場合には、エッチング後、極めて厳重な洗浄工程が必要である。
エチレンジアミン−ピロカテコール、及び水和ヒドラジンは、いずれもアルカリ金属及びアルカリ土類金属を含まない。しかしながら、これらのエッチング液を用いてシリコンをエッチングする場合において、エッチング速度50μm/hを得るためには、液の温度を100℃以上に上昇させる必要がある。そのため、エッチング設備が煩雑となる。
これに対し、TMAH水溶液は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属イオンを含まない。また、90℃程度の温度で50μm/h以上のエッチング速度が得られ、しかも、TMAH濃度を変えることにより、エッチング速度を種々調整できる。そのため、TMAH水溶液は、薄板化のためのエッチング液として最も適している。この場合、TMAH水溶液中のTMAHの重量濃度は、13〜22重量%が好ましい。
[2.2. 拡散反射面形成工程]
次に、少なくとも光拡散部(薄板部)の裏面側の表面に拡散反射面を形成する(拡散反射面形成工程)。
薄板化された部分の表面は、通常、滑らかである。そのため、薄板部の表面を拡散反射面とするために、少なくとも光拡散部の裏面側の表面にランダムな凹凸を形成する必要がある。拡散反射面の形成方法は、特に限定されるものではなく、目的とする反射率が得られる方法であればよい。拡散反射面の形成方法としては、具体的には、以下のような方法がある。
[2.2.1. 酸エッチングによる拡散反射面の形成]
拡散反射面を形成するための第1の具体例は、酸エッチング液により、少なくとも光拡散部の裏面側の表面を粗面化又は曲面化する方法である。
酸エッチング液は、等方性エッチングとなることが多いが、組成を最適化すると、光吸収部材の表面を粗面化又は曲面化することができる。
粗面化又は曲面化に用いる酸エッチング液としては、
(a)フッ化水素酸、硝酸、及び硫酸の混酸、
(b)フッ化水素酸、硝酸、及び酢酸の混酸
などがある。
なお、拡散反射面を形成するための混酸の好適な組成は、後述する第2エッチング液と同様である(図2参照)。
[2.2.2. ランダムピラミッドの形成及びピラミッド表面の粗面化又は曲面化]
拡散反射面を形成するための第2の具体例は、
(a)第1エッチング液を用いて、前記光吸収部材の裏面に大きさがランダムなピラミッドを形成し、
(b)第2エッチング液を用いて、前記ピラミッドの尖端部及び側面を粗面化又は曲面化する
方法である。
第1エッチング液は、上述したアルカリ性エッチング液が好ましい。アルカリ性エッチング液は、異方性エッチングとなる場合が多いので、大きさがランダムなピラミッドを容易に形成することができる。アルカリ性エッチング液の中でも、アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンのいずれも含まないアルカリ性エッチング液が好ましく、特に、TMAH水溶液が好ましい。
第1エッチング液として、TMAH水溶液を用いる場合、TMAHの重量濃度は、5〜11重量%が好ましい。例えば、光吸収部材が単結晶シリコン基板である場合、5〜11重量%のTMAH水溶液で、1〜2時間エッチングすることで、大きさがランダムなピラミッドを形成することができる。
前記第2エッチング液としては、例えば、
(a)アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンのいずれも含まないアルカリ性エッチング液であって、一端が疎水性、他端が親水性の鎖状の分子構造を持つ添加剤を加えて、前記光吸収部材のエッチング速度を15μm/時以下に調整したもの、
(b)フッ化水素酸、硝酸及び酢酸を混合した酸エッチング液であって、前記光吸収部材のエッチング速度を10μm/時以下に調整したもの、
(c)フッ化水素酸、硝酸及び硫酸を混合した酸エッチング液であって、前記光吸収部材のエッチング速度を10μm/時以下に調整したもの、
などがある。
これらは、いずれか1種を用いても良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。アルカリ性エッチング液及び酸エッチング液の双方を用いる場合、先にアルカリ性エッチング液で粗面化又は曲面化を行い、次いで酸エッチング液で粗面化又は曲面化を行うのが好ましい。
ピラミッド形状の尖端部と側面の粗面化又は曲面化に適したアルカリ性エッチング液としては、例えば、
(a)11〜15重量%のTMAHと、0.01〜0.1重量%のポリエチレングリコールを含むエッチング液、
(b)11〜15重量%のTMAHと、0.01〜0.1重量%のポリエチレングリコールモノ−4−オクチルフェニルエーテル(通称、トリトン−X−100)を含むエッチング液、
(c)11〜15重量%のTMAHと、0.01〜0.1重量%の界面活性剤NC−200を含むエッチング液、
などがある。
図2に、ピラミッド形状の尖端部及び側面の粗面化又は曲面化に適した酸エッチング液の組成範囲を示す。フッ化水素酸−硝酸−酢酸の混酸の場合、図2(a)に示すように、その組成は、(HF、HNO3、CH3COOH)=(10、70、20)、(10、40、50)、(20、30、50)、(30、30、40)、(25、45、30)、(25、63、12)を直線で結んだ領域内が好ましい。
また、フッ化水素酸−硝酸−硫酸の混酸の場合、図2(b)に示すように、その組成は、(HF、HNO3、H2SO4)=(2、38、60)、(2、13、85)、(7、8、85)、(20、20、60)を直線で結んだ領域内が好ましい。
[2.3. 拡散層形成工程]
次に、光吸収部材の表面に第1の拡散層(エミッタ層)、及び、必要に応じて第2の拡散層(BSF層)を形成する(拡散層形成工程)。
拡散層の形成方法としては、
(a)ドープしようとする不純物を含む層を、拡散層を形成しようとする面に塗布等の方法で堆積させ、熱処理等の方法で不純物を拡散させる方法(溶液塗布法)、
(b)イオン注入による方法、
(c)不純物を含む気体を、拡散層を形成しようとする面に接触させながら熱処理する方法(気相拡散法)
などがある。
光吸収部材の裏面側には拡散反射面が形成されているので、裏面側の表面(すなわち、拡散反射面の表面)に拡散層を形成する場合には、気相拡散法を用いるのが好ましい。気相拡散法を用いると、凹凸がある拡散反射面の表面に、均一な厚さの拡散層を形成することができる。
一方、光吸収部材の受光面側の表面に拡散層を形成する場合、上述したいずれの方法を用いても良い。
気相拡散法を用いた拡散層の形成は、具体的には、
(a)光吸収部材の表面及び裏面の内、拡散層を形成する領域以外の領域を、不純物原子が透過しないマスク材(例えば、二酸化珪素)で覆い、
(b)不純物原子を含む気体が充満している電気炉内に光吸収部材を挿入し、電気炉内で不純物原子を光吸収部材に熱拡散させる
ことにより行う。
不純物原子を含む気体を電気炉内に充満させる方法としては、種々の方法がある。例えば、不純物原子を含む化合物が常温で気体である場合、その気体をそのまま、又はキャリアガスで希釈して電気炉内に送り込む。
一方、不純物原子を含む化合物が常温で液体であるが、その蒸気圧がある程度の大きさを持っている場合、不純物原子を含む液体に酸素、窒素等のキャリアガスを流し、キャリアガスを不純物原子を含む液体の蒸気で飽和させ、これを電気炉内に送り込む。
あるいは、不純物原子を含む化合物が常温で固体であるが、熱分解しやすい場合、不純物原子を含む固体と光吸収部材とを電気炉内で対向させ、電気炉内で加熱する。
光吸収部材としてp型単結晶シリコン基板を用いる場合、第1の拡散層(エミッタ層)にドープするn型不純物は、リンが一般的である。この場合、常温で気体であるリン源としては、例えば、ホスフィンなどがある。また、常温で液体であるリン源としては、例えば、オキシ塩化リンなどがある。いずれのリン源を用いる場合であっても、適正なリン濃度分布が得られるように、キャリアガスの濃度、温度、処理時間などを制御する。
また、リンをドープする途中で、拡散層の表面にリンガラス(ホスホシリケートガラス)が形成される場合がある。この場合、リンガラスを除去した後、酸素、窒素、又はこれらの混合ガス雰囲気中で熱処理(「ドライブイン」と呼ばれる追い込み拡散)を行っても良い。
また、光吸収部材としてp型単結晶シリコン基板を用いる場合、第2の拡散層(BSF層)にドープするp型不純物は、ホウ素が一般的である。この場合、常温で気体であるホウ素源としては、例えば、ジボランなどがある。また、常温で固体であるホウ素源としては、例えば、窒化ホウ素などがある。いずれのホウ素源を用いる場合であっても、適正なホウ素濃度分布が得られるように、キャリアガスの濃度、温度、処理時間などを制御する。
また、ホウ素をドープする途中で、拡散層の表面にボロンガラス(ボロシリケートガラス)が形成される場合がある。この場合、ボロンガラスを除去した後、酸素、窒素、又はこれらの混合ガス雰囲気中で熱処理(ドライブイン)を行っても良い。
光吸収部材の表面にエミッタ層とBSF層の双方を形成する場合、エミッタ層とBSF層の形成順序は、いずれが先でもかまわない。しかし、プロセスの後の方で凹凸面を形成する方が、ウェハ処理上煩雑ではない。従って、受光面側の表面への拡散層の形成を先に行うのが好ましい。
[2.4. 電極・BPF形成工程]
次に、光吸収部材の受光面側の表面に、バンドパスフィルター及び表面電極を形成し、かつ、光吸収部材の裏面側の表面に裏面電極を形成する(電極・BPF形成工程)。
表面電極、裏面電極、及びバンドパスフィルターは、いずれも、公知の薄膜積層技術を用いて形成することができる。この場合、受光面側の薄膜と裏面側の薄膜の形成順序は、特に限定されない。
また、受光面側にバンドパスフィルター及び表面電極を形成する場合、その形成順序も特に限定されない。すなわち、先にバンドパスフィルターを形成し、その周囲に表面電極を形成しても良い。あるいは、先に表面電極を形成し、バンドパスフィルターを形成すべき部分にエッチングにより開口部を形成し、開口部にバンドパスフィルターを形成しても良い。
[3. 作用]
[3.1. 光閉じ込め効果]
図3に、従来型の太陽電池の受光面側に設けられた無反射表面形状(テキスチャ)の断面模式図を示す。図3(a)に示すように、従来型の太陽電池は、半導体基板の受光面側の表面に、規則正しい凹凸が形成されている。第1の凸部の側面に光が入射すると、その多くの部分が半導体基板中に侵入し(第1の侵入光)、一部は第1の凸部の側面で反射される(第1の反射光)。半導体基板に形成された凹凸の高さや大きさが均一に分布するならば、第1の反射光は第2の凸部に当たり、第2の侵入光と第2の反射光を生ずる。光が凸部に入射するごとに、その多くの部分が半導体基板に侵入するので、凸部での入射が繰り返されるほど、反射光の強度は大きく減少する。
一方、図3(b)に示すように、凸部の高さが不均一であると、第1の反射光が第2の凸部に当たらない場合が生ずる。この場合、第1の反射光は、半導体基板中に侵入することがないので、発電に寄与しない。以上の理由で、従来型の太陽電池では、受光面側の表面に、できるだけ規則的な凹凸を形成する必要があった。
図4に、光電変換素子の裏面側に設けられた拡散反射面の断面模式図を示す。本発明に係る光電変換素子は、光吸収部材の受光面側にバンドパスフィルター(BPF)と表面電極を形成し、裏面側に拡散反射面と裏面電極を形成したことを特徴とする。
BPFは、従来、白色光の中から特定波長の光を抽出するために用いられていた。このBPFを光電変換素子の受光面の上に設け、受光面に向かって単色光を入射すると、BPFは、入射光を遮ることなく、裏面からの反射光を再び光吸収部材内部に反射する。これにより、光吸収部材を薄型化しても高い光吸収率が確保される。また、材料の低減、タクトタイムの短縮が可能となり、コストを削減することができる。
また、BPFの周囲を所定の大きさの表面電極で覆い、かつ、BPF及び表面電極に対向するように拡散反射面及び裏面電極を設けると、入射光は、これらの間で多重反射を繰り返しながら、光吸収部材の内部を受光面に対して平行方向に拡散する。そのため、光吸収部材による入射光の吸収率が向上する。
しかしながら、光吸収部材の裏面側に、凹凸の傾斜角や大きさが一様であり、かつ、凹凸が規則正しく並んだ拡散反射面を形成すると、図4(a)に示すように、光が常に一定方向に反射する。そのため、光は、光吸収部材内に広く拡散伝搬しない。特に、凹凸の傾斜角が45°に近い角度(例えば、35°から55°の範囲)であると、凹凸面で複数回反射された光が、BPFの臨界角より小さい角度でBPFに再入射するため、入射光が光電変換素子外部に漏れだしてしまう。
これに対し、図4(b)に示すように、凹凸面の大きさや傾斜角が様々であると、受光面から光吸収部材に入射した光は、凹凸面で様々な方向に反射する。そのため、光吸収部材内に光が広く拡散伝搬する。その結果、光吸収部材に光が十分に吸収され、光電変換素子の変換効率に十分寄与できる。特に、拡散反射面の形状が上述した(1)式を満たす場合には、光吸収部材による入射光の吸収率がさらに向上する。
[3.2. 拡散反射面]
光吸収部材(半導体基板)の表面に凹凸を形成する方法として、例えば、
(a)アルカリ性エッチング液を用いる第1の方法、
(b)酸エッチング液を用いる第2の方法、
(c)機械的又は化学的ダメージ形成と酸エッチングとを組み合わせる第3の方法、
などが知られている。
これらの内、第1の方法は、規則的な凹凸が形成されやすい。
第2の方法は、等方性エッチングであるため、半導体基板にマイクロな結晶構造上の違いがないと、凹凸面を形成しにくい。また、酸エッチング液の組成によっては、エッチング中にマスク材が溶解又は剥離することがある。
さらに、第3の方法は、製造工程が煩雑となるだけでなく、光吸収部材の結晶構造にミクロにダメージを与える場合がある。そのため、キャリアの再結合の増加等により、光電変換素子の変換効率を低下させる原因となる。
これに対し、まず、第1エッチング液を用いて、光吸収部材の裏面に大きさがランダムなピラミッドを形成し、次いで、第2エッチング液を用いて、ピラミッドの尖端部及び側面を粗面化又は曲面化する方法を用いると、理想的な拡散反射面を比較的容易に形成することができる。また、この方法は、マスク材の選択の自由度が大きいため、光吸収部材の裏面に、選択的に拡散反射面を形成することができる。さらに、光吸収部材の結晶構造にミクロなダメージを与えることがないので、キャリアの再結合も抑制される。
[3.3. 拡散層]
図5に、第1の拡散層(1)が受光面近傍に存在する太陽電池のエネルギーバンド図を示す。従来型の多くの太陽電池では、半導体基板の受光面側に第1の拡散層(エミッタ層)(1)を形成する。その理由は、半導体基板が光を吸収することにより発生するキャリアの密度は、受光面に近い部分で大きいため、pn接合面(3)を受光面に近い部分に設けることにより、効率よく2つの電極からキャリアを取り出すことができるからである。pn接合面(3)は、光によって生成したキャリアを太陽電池の2つの電極(+電極と−電極)のそれぞれの方向に向かって分離・加速させる原動力となる。
また、pn接合面(3)を受光面に近い部分に設けた太陽電池では、受光面側に拡散移動すべき少数キャリア(図5の場合は、電子)が裏面側に拡散移動するのを抑制するために、半導体基板の裏面に第2の拡散層(BSF層)(2)を設けることが多い。
このような拡散層の形成方法としては、上述したように、溶液塗布法、イオン注入法、気相拡散法などが知られている。これらの内、溶液塗布法は、凹凸面に溶液を均一に塗布したとしても、溶液はやがて凹部に溜まり、凸部には十分な厚さで残らない。そのため、溶液塗布法では、不純物を均一な濃度で凹凸面にドープするのが難しい。
また、イオン注入法において、イオンの侵入深さは、注入イオンの質量とエネルギー、及び基板の材料によってほぼ決まる。そのため、凹凸面にイオン注入法で不純物をドープした場合、拡散層は、平坦面では厚くなり、傾斜面では薄くなる。
従って、凹凸面に拡散層を形成する場合には、気相拡散法を用いるのが好ましい。
光吸収部材がp型の単結晶シリコンからなる場合、光吸収部材の裏面側には、気相拡散法が適用できるエミッタ層を形成するのが好ましい。従来型の太陽電池でもエミッタ層を裏面に設けた例が存在する(特許文献5参照)。しかし、同文献に記載の太陽電池では、BSF層も裏面に形成されている。エミッタ層とBSF層をともに裏面に形成することにより、受光面側に電極(一般に金属電極であり、光を太陽電池外へ反射する)を設けずに済むので、効率の減少をある程度抑制することができる。しかしながら、pn接合面を受光幅全体にわたって形成できないので、一部効率を犠牲にしている。
本発明においては、pn接合面を受光幅全体にわたって形成できるので、従来の太陽電池のように変換効率を犠牲にすることがない。
[3.4. 光拡散部]
バンドパスフィルターから入射した光は、裏面側の拡散反射面及び裏面電極により反射される。反射された光は、受光面側のバンドパスフィルター及び表面電極により再反射される。このような多重反射を繰り返しながら、光は、受光面に対して平行方向に拡散する。本発明においては、光の吸収率を高めるために、光拡散部を多重反射に適した構造にすると同時に、光拡散部が薄板化されている。そのため、第1の拡散層を裏面側に形成した場合であっても、入射光はほとんど減衰せずに第1の拡散層まで到達する。このことは、次の計算によって説明できる。
本発明に係る光電変換素子において、入射光の波長λ0を1064nmとすると、単結晶シリコンの消衰係数kは、k=6.7×10-5である(参考文献1参照)。よって、波長1064nmの単結晶シリコンへの侵入深さは、約1.3mmと計算される。本発明においては、光拡散部の厚さは、入射光の侵入深さの1/200〜1/10に設定されるので、好ましい厚さは、6.5〜130μmとなる。
単結晶シリコンにおいて、実用的に最も好ましいと思われる光拡散部の厚さは、20〜80μmである。入射光が厚さ20、50、80μmの単結晶シリコンの底面に到達した時、入射光のエネルギーの減少率は、それぞれ、僅か1.6、3.9、6.1%である。そのため、入射光のエネルギーの厚さ方向の分布は、ほぼ一様と考えて良い。従って、入射光が単結晶シリコンに吸収されることによって発生するキャリアの密度も、厚さ方向の断面でほぼ一様と考えて良い。そのため、単結晶シリコンの裏面に第1の拡散層を設けても、光電変換素子の変換効率が実用上障害のあるほど低下することはない。
[3.5. 積層電極]
本発明において、電極は、キャリアを取り出すための集電体としての機能だけでなく、入射光を反射する反射膜としての機能も求められる。金属材料の中で、最大の反射率を有するものは、銀である。光吸収部材がp型単結晶シリコンである場合、銀と第1の拡散層(エミッタ層)とを接触させても、ショットキー接合は形成されない。そのため、第1の拡散層と接する電極には、銀を用いることができる。しかしながら、図6に示すように、銀を第2の拡散層に直接接続すると、ショットキー接合を形成し、電極として都合が悪いという問題がある。
この問題を解決するために、第2の拡散層と接する電極の材料として、光吸収部材とショットキー接合を形成しない金属(例えば、p型単結晶シリコンの場合は、Al)を用いることも考えられる。しかしながら、ショットキー接合の形成を回避可能な金属が存在したとしても、その金属は、入射光に対する反射率が十分であるとは限らない。反射率の僅かな低下は、大きな変換効率の低下を引き起こす。
これに対し、電極を、光吸収部材とオーミック接合を形成することが可能な第1導電材料からなる第1層と、第1導電材料より前記入射光の反射率が高い第2導電材料からなる第2層との積層構造にすると、ショットキー接合の形成と、反射率の低下を同時に抑制することができる。また、光吸収材料の組成によらず、第2層の材料として反射率の高い材料を常に選択することができるので、設計上の自由度が増大する。
(実施例1: 水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を用いたエッチング)
[1. 試料の作製]
水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液を用いて、p型単結晶シリコンのエッチングを行った。TMAH水溶液中のTMAH濃度は、10〜25重量%とした。また、エッチング時の液温は、88℃〜90℃とした。
[2. 結果]
図7に、p型単結晶シリコンをTMAH水溶液(液温90℃)でエッチングした時の濃度とエッチング速度の関係を示す。図8に、TMAH水溶液を用いて、エッチング速度50〜60μm/hで3時間エッチングした時のエッチング面の走査電子顕微鏡(SEM)写真を示す。図7及び図8より、以下のことがわかる。
(1)TMAH水溶液中のTMAH濃度を変えることにより、エッチング速度を調節することができる。TMAH水溶液中のTMAH濃度を最適化すると、90℃程度の温度で、50μm/h以上のエッチング速度が得られる。
(2)TMAH水溶液を用いてエッチング速度50μm/h以上でエッチングを行った場合、部分的にピラミッド構造が見られる場合もあった(図8(a))。しかし、エッチング表面は、概して滑らかであった(図8(b))。そのため、エッチング速度50μm/h以上のTMAH水溶液は、薄板部を形成するためのエッチング液として使用できる。
(実施例2: 酸エッチング液を用いたエッチング)
[1. 試料の作製]
フッ化水素酸−硝酸−硫酸の混合液、又はフッ化水素酸−硝酸−酢酸の混合液を用いて、p型単結晶シリコンのエッチングを行った。エッチング時間は、90秒とした。酸エッチング液中の酸の組成比は、以下の通りである。
(a)HF:HNO3:H2SO4=4:16:80(試料No.1、図9(a))。
(b)HF:HNO3:H2SO4=10:15:75(試料No.2、図9(b))。
(c)HF:HNO3:CH3COOH=18:36:46(試料No.3、図9(c))。
[2. 結果]
図9(a)〜図9(c)に、それぞれ、試料No.1〜試料No.3のエッチング後のSi表面のSEM写真を示す。図9より、以下のことがわかる。
(1)酸エッチングは等方性エッチングとなりやすいが、液組成を最適化すると、拡散反射面として使用可能なランダムな凹凸を形成することができる。
(2)エッチング液(c)でエッチングした場合、表面に形成されるくぼみの径は、5μm以上であった。また、エッチング液(b)の場合、くぼみの径は2〜5μmであった。さらに、エッチング液(a)の場合、くぼみの径は1〜2μmであった。即ち、くぼみの径は、エッチング液(c)→(b)→(a)の順に入射光の波長に近くなった。入射光の波長に近い凹凸面の方が様々な方向に光が反射されるので、エッチング液(a)が最も好ましい。
(実施例3: 2段階エッチングによる拡散反射面の形成)
[1. 試料の作製]
まず、TMAH水溶液を用いて、p型単結晶シリコンのエッチング(薄板化)を行った。TMAH水溶液中のTMAH濃度は、15重量%とした。また、エッチング時の液温は、90℃とした。
次に、第1エッチング液を用いて、薄板化された部分のエッチング(ピラミッド形成)を行った。第1エッチング液には、TMAH濃度が11重量%のTMAH水溶液中を用いた。エッチング時間は、1時間とした。さらに、エッチング時の液温は、90℃とした(試料No.11、図10(a))。
さらに、第2エッチング液を用いて、ピラミッドの尖端部及び側面のエッチング(粗面化、曲面化)を行った。エッチング条件は、以下の通りである。
(a)0.05重量%のポリエチレングリコールモノ−4−オクチルフェニルエーテルを含有する15重量%のTMAH水溶液(液温:90℃)で1時間エッチング(粗面化)(試料No.12、図10(b))。
(b)0.05重量%のポリエチレングリコールモノ−4−オクチルフェニルエーテルを含有する15重量%のTMAH水溶液(液温:90℃)で1時間エッチングし(粗面化)、さらにHF:HNO3:CH3COOH=20:40:40の酸エッチング液(液温:23℃)でさらに2分間エッチング(曲面化)(試料No.13、図10(c))。
(c)HF:HNO3:H2SO3=4:16:80の酸エッチング液(液温:23℃)で90秒間エッチング(粗面化)(試料No.14、図10(d))。
[2. 結果]
図10(a)〜図10(d)に、それぞれ、試料No.11〜試料No.14のSEM写真を示す。図10より、以下のことがわかる。
(1)11重量%のTMAH水溶液でエッチングすると、ランダムな大きさのピラミッドをSi表面の全体に形成することができる(図10(a))。
(2)ランダムな大きさのピラミッドが形成されたSiを、さらに所定の組成のアルカリ性エッチング液及び/又は酸エッチング液でエッチングすると、ピラミッドの表面を粗面化又は曲面化することができる(図10(b)〜図10(d))。
(実施例4: 反射強度測定)
[1. 試料の作製]
実施例2及び実施例3に記載のエッチング方法を用いて、以下の反射強度測定用試料を作製した。
(1)試料No.21: 薄板化のみ。
(2)試料No.22: 薄板化+ピラミッド形成(11重量%TMAH)。
(3)試料No.23: 薄板化+酸エッチング(HF:HNO3:H2SO4=10:15:75)。
(4)試料No.24: 薄板化+酸エッチング(HF:NHO3:H2SO4=4:16:80)。
(5)試料No.25: 薄板化+ピラミッド形成(11重量%TMAH)+曲面化(15重量%TMAH(Triton))
(6)試料No.26: 薄板化+ピラミッド形成(11重量%TMAH)+粗面化(HF:NHO3:H2SO4=4:16:80)。
[2. 結果]
図11(a)に、薄板化したシリコン基板(試料No.21)、及び、表面に凹凸が形成されたシリコン基板(試料No.22〜No.26)に波長1064nmの光を入射させた時の、規格化された反射強度(I/I0)の反射角度依存性を示す。図11(b)に、反射角θと(I/Io)・sinθとの関係を示す。なお、図11中、「cos(θ)」は、完全拡散反射を表す。図11より、以下のことがわかる。
(1)薄板化のみの場合(試料No.21)、裏面は部分的にピラミッド構造が形成されたが、ほとんどの領域で平坦面であった。そのため、入射光は、入射方向にほとんどそのまま反射した。すなわち、(I/Io)・sinθの半値全幅は、6.2°であった。
(2)薄板化の後、11重量%TMAH水溶液でエッチングした場合(試料No.22)、エッチング面の全面にピラミッド形状が形成された。ピラミッド形状の側面は、一定の傾斜を持つ平面であるため、特定の角度方向への反射が顕著となった。このときの(I/Io)・sinθの半値全幅は、6.4°であった。
(3)薄板化の後、酸エッチングを行った場合(試料No.23、試料No.24)、シリコン基板表面には、図9(a)及び図9(b)に示すような凹凸が形成された。そのため、90°までの角度範囲に幅広く分布する反射角度依存性が得られた。このときの(I/Io)・sinθの半値全幅は、それぞれ、62.2°、及び60.6°であった。
一方、試料No.25は、(I/I0)・sinθの値がθ≦80°まで広く分布したが、半値全幅は14.3°であった。
(4)ピラミッド形状を形成した後、さらに酸エッチングを行った場合(試料No.26)、図10(d)に示すように、ピラミッドの側面が粗面化された。そのため、30°〜90°の角度範囲にわたって、反射強度が著しく増加した。
また、この反射強度は、試料No.24に比べて、50°〜90°の角度範囲で反射強度が増加した。その結果、(I/Io)・sinθの半値全幅は、72.0°に達した。そのため、ピラミッド形状を形成した後に酸エッチングにより粗面化することは、より好ましい結果をもたらすことがわかった。
(5)光閉じ込めのためには、反射角の分布が広いことが重要である。反射強度の角度(極角θ)分布は、方位角方向にはおおよそ等方的であるので、測定された反射強度にsin(θ)をかけた値に比例する。試料No.22では、入射方向から約22°の方向に強い反射が生じるが、その分布の幅が狭い。
これに対し、試料No.23〜26(試料No.25を除く)では、半値全幅50°以上が得られた。
(6)反射強度の角度分布がcosn(θ)であることを仮定して、表面バンドパスフィルター付きの厚さ50μmのSi素子に1064nm光が入射する場合の光吸収率のシミュレーションを行った結果が図12である。この場合、n≦2ならば半値半幅50°以上、n≦8ならば半値全幅30°以上が得られ、それぞれ光吸収率0.83以上、0.80以上が得られる。
(実施例5: 積層電極)
[1. 試料の作製]
p型単結晶シリコン基板上に、第2の拡散層を形成した。次いで、第2の拡散層の上に、アルミニウム厚さ:1.8nm、銀厚さ:500nmの積層電極を形成した。さらに、基板を温度:400℃(試料No.31)又は420℃(試料No.33)、処理時間:15分間の条件下でシンタリング処理を行った。
同様に、第2の拡散層の上に、アルミニウム厚さ:2.7nm、銀厚さ:500nmの積層電極を形成した。さらに、基板を温度:400℃、処理時間:15分間の条件下でシンタリング処理を行った(試料No.32)。
[2. 結果]
[2.1. 電流電圧特性]
図13(a)に、p型単結晶シリコン基板上に第2の拡散層を形成し、かつ、第2の拡散層上に銀/アルミニウム積層電極を形成した時の電流電圧特性を示す。図13(b)及び図13(c)に、それぞれ、アルミニウム厚さが1.8nm(試料No.31)又は2.7nm(試料No.32)である銀/アルミニウム積層電極を形成したp型単結晶シリコン基板の断面の透過電子顕微鏡写真を示す。図13より、以下のことが分かる。
(1)アルミニウム厚さを2.7nm以下にしても、シンタリング処理条件を400℃×15分とすれば、オーミック特性が得られる(試料No.31、32)。
(2)シンタリング温度を420℃にすると、銀−アルミニウムの相互拡散によって、銀原子が第2の拡散層の表面に達する。そのため、ショットキー障壁が形成され始め、電流電圧曲線に整流特性が現れ始める(試料No.33)。よって、シンタリング温度は、420℃を超えない範囲で定めるのが好ましい。
[2.2. 光の反射率]
図14に、第2の拡散層から銀/アルミニウム積層電極に向かって波長1064nmの光が進む時の、銀/アルミニウム積層電極のアルミニウム層の厚さと反射率との関係を示す。図14より、アルミニウム層の厚さを3nm以下にすると、反射率が90%を超えることが分かる。従って、アルミニウム層の厚さを3nm以下とし、かつ、420℃を超えない範囲内で15分のシンタリング処理を行えば、ショットキー接合を形成することがなく、かつ、高い光閉じ込め効果を示す電極構造を形成することができる。
なお、p型単結晶シリコン基板の第1の拡散層(n型)に接する電極は、銀単体として何ら問題はない。銀は、反射率が95%を超える高反射率材料であるため、基板の薄板部に十分光を閉じ込めることができる。
(実施例6: 光拡散部の大きさ)
厚さ20μm又は50μmにエッチングされたSi光電変換素子に、波長1064nm、直径50μm又は100μmの光束が垂直に入射する場合を考える。
[1. 拡散距離]
入射光(光束ではない)が拡散反射面及びバンドパスフィルター付き表面にて多重反射される際に、横方向に伝搬する距離を光線追跡法により調べた。裏面の拡散反射現象は、モンテカルロ法により取り扱った。
図15に、光の入射位置からの距離(伝搬距離)とその点での光強度との関係を示す。これを指数関数によりフィッティングして、拡散距離(光強度が1/eとなる距離)を求めた。図15より、厚さ20μm及び50μmのSiの拡散距離は、それぞれ、86μm及び130μmと求められた。
[2. 入射光束の強度分布]
光束が素子に入射するときの入射光強度の分布を求めた。図16に、直径50μm(図16(a))又は直径100μm(図16(b))の光束中心からの距離とその点での光強度とその点での光強度の関係を示す。なお、光束直径=2×(ビーム半径)である。図16より、入射光束の縁から、おおよそ光の拡散距離の2〜3倍の範囲まで入射光強度の0.05倍以上の強度の光が到達していることがわかる。
[3. Siウェハの厚さ]
Siウェハの厚さと素子の変換効率との関係をシミュレーションソフトPC1Dを用いて計算した。このとき、入射光強度は、1kW/cm2で、面内方向に一様であることを仮定した。
図17に、Siウェハの厚さと変換効率との関係を示す。図17より、以下のことがわかる。
(a)Siウェハの厚さを100μm以下にすると、変換効率は40%を超える。
(b)Siウェハの厚さを50μm以下にすると、変換効率は55%を超える。
(c)Siウェハの厚さを約20μmにすると、変換効率は最大となる。
[4. 光拡散部の半径]
図16に示されるように、光強度に分布があり、かつ光が裏面エッチングの範囲を超えているような場合の素子の変換効率ηを、次式のような近似を用いて計算した。
η=(ηa×Ia+ηb×Ib)/Itotal
但し、
ηaは、エッチング部の変換効率、
aは、エッチング部の光強度の積算、
ηbは、非エッチング部の変換効率、
bは、非エッチング部の光強度の積算、
totalは、全領域での光強度の積算。
ηaには、61.1%(厚さ:20μm)、又は56.0%(厚さ:50μm)を用いた。また、ηbには、25.7%(厚さ:200μm)を用いた。
図18に、直径50μm(図18(a))又は直径100μm(図18(b))の光束を、裏面がエッチングされたSiに入射させた時のエッチング部分の半径と変換効率との関係を示す。図18より、高い変換効率を得るためには、エッチング部分(光拡散部)の半径は、光束半径+拡散距離の2〜3倍が必要であることがわかる。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
本発明に係る光電変換素子は、太陽電池、光導電セル、フォトダイオード、フォトトランジスタなどに用いることができる。
10 光電変換素子
12 光吸収部材
12a 第2の拡散層(バックサーフェースフィールド層)
12b 拡散反射面
12c 第1の拡散層(エミッタ層)
14 バンドパスフィルター
16 表面電極
18 裏面電極

Claims (7)

  1. 以下の構成を備えた光電変換素子。
    (1)前記光電変換素子は、波長λ0の単色光を吸収して、キャリアを発生させることが可能な光吸収材料からなる光吸収部材を備え、入射光として前記単色光からなる略平行光線が用いられる。
    (2)前記光電変換素子は、
    前記光吸収部材と、
    前記光吸収部材の受光面側の表面に形成されたバンドパスフィルターと、
    前記バンドパスフィルターの周囲に形成された表面電極と、
    前記光吸収部材の裏面側の表面であって、前記バンドパスフィルター及び前記表面電極に対向する位置に形成された拡散反射面と、
    前記拡散反射面の表面の全部又は一部を覆うように形成された裏面電極と
    を備えている。
    (3)前記バンドパスフィルターは、少なくとも前記波長λ0の光を選択的に透過させる機能と、前記入射光を遮ることなく、裏面からの反射光を再び前記光吸収部材内部に反射させる機能とを持つ。
    (4)前記拡散反射面は、大きさや傾斜角が様々である凹凸面を備え、多重反射によって前記受光面に対して平行方向に前記入射光を拡散させる機能を持つ。
    (5)前記表面電極は、前記キャリアを取り出す集電体としての機能と、前記入射光を反射させる反射膜としての機能とを持ち、
    前記裏面電極は、前記キャリアを取り出す集電体としての機能と、前記入射光を反射させる反射膜としての機能とを持つ。
  2. 以下の構成をさらに備えた請求項1に記載の光電変換素子。
    (6)前記光吸収部材の光拡散部の厚さは、前記光吸収材料への前記入射光の侵入深さの1/200以上1/10以下である。
    ここで、「光拡散部」とは、前記光吸収部材を前記受光面の法線方向から見た時に、前記バンドパスフィルター及び前記表面電極の投影面と、前記拡散反射面の投影面とが重なり合う部分をいう。
    「光吸収材料への入射光の侵入深さ」とは、前記光吸収材料に前記入射光を入射させた時に、前記入射光の強度が1/e(eは、ネイピア数)となる深さをいう。
    (7)前記バンドパスフィルターの端縁から前記光拡散部の端縁までの最短距離は、拡散距離の2倍以上である。
    ここで、「拡散距離」とは、前記光拡散部の厚さに相当する厚さを有する前記光吸収材料の表面に前記バンドパスフィルターを形成し、前記光吸収材料の裏面に前記拡散反射面を形成し、前記バンドパスフィルターと前記拡散反射面との間で前記入射光を多重反射させながら前記受光面に対して平行方向に前記入射光を拡散させた時に、前記入射光の強度が1/e(eは、ネイピア数)となる距離をいう。
  3. 前記拡散反射面は、前記入射光の反射スペクトルが次の(1)式の関係を満たす請求項1又は2に記載の光電変換素子。
    (I/I0)・sinθの半値全幅≧30° ・・・(1)
    但し、I/I0は規格化された反射強度、θは入射方向から計った反射角。
  4. 前記拡散反射面は、
    前記光吸収部材の裏面に形成された大きさがランダムなピラミッドを含み、
    前記ピラミッドの尖端部及び側面が粗面化又は曲面化されている
    請求項1から3までのいずれか1項に記載の光電変換素子。
  5. 以下の構成をさらに備えた請求項1から4までのいずれか1項に記載の光電変換素子。
    (8)前記表面電極及び前記裏面電極の少なくとも一方は、
    前記光吸収部材の表面に形成された、前記光吸収部材とオーミック接合を形成することが可能な第1導電材料からなる第1層と、
    前記第1層の表面に形成された、前記第1導電材料より前記入射光の反射率が高い第2導電材料からなる第2層と
    の積層構造を備え、
    前記第1層の厚さは、前記第1導電材料へのキャリアの侵入深さの3倍以上であり、かつ、前記第1導電材料への前記入射光の侵入深さ以下である。
    ここで、「第1導電材料へのキャリアの侵入深さ」とは、前記光吸収材料中のキャリア(A)と前記第1導電材料中のキャリア(B)とを区別できると仮想して、ポアソンの方程式を用いて前記光吸収材料中の前記キャリア(A)の前記第1導電材料中での濃度分布を計算したとき、前記第1導電材料中の前記キャリア(A)の濃度が前記光吸収材料中の前記キャリア(A)の濃度の1/e(eは、ネイピア数)となる深さをいう。
    「第1導電材料への入射光の侵入深さ」とは、前記第1導電材料に前記入射光を入射させた時に、前記入射光の強度が1/e(eは、ネイピア数)となる深さをいう。
  6. 前記表面電極及び前記裏面電極は、それぞれ、前記入射光の反射率が90%以上である請求項1から5までのいずれか1項に記載の光電変換素子。
  7. 以下の構成をさらに備えた請求項1から6までのいずれか1項に記載の光電変換素子。
    (9)前記光吸収部材の裏面側に、前記光吸収部材の伝導型とは異なる伝導型を示す第1の拡散層(エミッタ層)が形成されている。
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