以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。まず、図47を参照して本発明のシール構造1が適用され得る直動システムの一例となる油圧ピストンの基本構造について説明する。油圧ピストンは、ピストンとして機能するピストン体300、ピストンロッドとして機能する直動ロッド10、チューブ4、ロッドカバー5、ヘッドカバー6を備える。ピストン体300は、例えば複数の部材から構成されると共に、直動ロッド10に固定されて、円筒状のチューブ4内に配置される。チューブ4は、直動ロッド10が突出する側にリング状のロッドカバー5が配置され、その反対側にヘッドカバー6が配置される。従ってチューブ4は、両端が、ロッドカバー5とヘッドカバー6に覆われることで、内部に圧力空間が形成される。また、チューブ4の両端近傍には、チューブ4内に作動流体を出し入れする開口7、8が形成され、この開口7、8を介して圧力空間内に油を流入させること、ピストン体300を移動させる構造となっている。
図1には、第一実施形態に係る直動システムのシール構造が示されている。シール構造は、直動ロッド10と、連携部材となる環状のワッシャ50と、ピストン部材100を備えて構成される。なお、ピストン部材100の周囲にはピストンリング(外側シール部材)90が設けられる。ワッシャ50、ピストン部材100及びピストンリング90等によってピストン体300が構成される。なお、ここでは直動ロッド10が挿入される各種部材を「被挿入部材」とも表現し、これらはピストン体300の一部を構成する。従って、ワッシャ50及びピストン部材100は、被挿入部材となる。
ピストン部材100は円筒状の部材となっており、チューブ4の内周面に対向する環状の外周面105と、軸方向に対向する一対の端面101と、外周面と同軸状に形成される挿入孔100aを有する。外周面105は、チューブ4の内周面に近接して、作動流体の移動を規制するシール部105aとなる。端面101の少なくとも一方は、作動流体の圧力を受け止める受圧面101aとなる。挿入孔100aには直動ロッド10が挿入される。
更にピストン部材100の外周面105には、その途中からワッシャ50側の端面101まで連続する環状の外側シール嵌合部210が形成される。この外側シール嵌合部210は、その周面において、ワッシャ50側の端面101まで連続する小径面201を構成しており、そこにピストンリング90が挿入され、当接且つ嵌合される。この小径面201は、ピストン部材100の外周面(シール部105a)よりも小径となり、シール部105aと小径面201に形成される段差205によりピストンリング90が軸方向に位置決めされる。ピストンリング90の軸方向寸法は、小径面201の軸方向寸法より多少大きく設定されており、ピストンリング90が、ピストン部材100からワッシャ50側に微小に突出する。ワッシャ50は、直径が小径面201よりも大きく設定される。従って、ワッシャ50とピストン部材100を締結すると、ワッシャ50端面がピストンリング90に当接して、ピストンリング90が固定される。即ち、ピストンリング90は、ピストン部材100とワッシャ50によって挟持される。ワッシャ50は、ピストン部材100の端面近傍に配置されて、ピストンリング90を外側シール嵌合部210側に押圧する外側シール保持部材として機能する。
以上の結果、従来のようにシール部材を弾性変形させながら嵌合設置する場合と比較して、ピストンリング90を簡単に組み立てることが可能となる。それに伴い、ピストンリング90の弾性変形を考慮する必要が無くなるので、高剛性、高耐摩耗性の材料を自由に選定することが可能となる。
図2(A)に示すように、直動ロッド10は、軸部12において、本体部12aと端部12cを有する。本体部12aと端部12cの境界には段部20が形成されており、段部20の下部乃至付け根に相当する部位には、ロッド側座部22が形成される。本体部12aは円柱状を成している。端部12cには雄ねじ部13が形成される。
図2(B)に示すように、端部12cには、軸方向から視て断面非円形となるロッド側連携領域17が形成される。ここではロッド側連携領域17が、端部12cにおける雄ねじ部13よりも基端側に形成される。具体的にロッド側連携領域17は、断面正円形の一部の円弧が、その弦に沿って省略(異形と)された形状となっており、この弦の部分がロッド側当接部23となる。結果、このロッド側当接部23は、端部12cの周面において、半径方向に対して直角で、且つ半径方向外側に向いた平面となる。ロッド側当接部23は、ねじの軸心からの距離が周方向に沿って変動し、第一ロッド側当接領域23Yは、直動ロッド10の一方の周方向Xに沿って距離X1、X2が大きくなる。第二ロッド側当接領域23Xは、直動ロッド10の他方の周方向Yに沿って距離Y1、Y2が大きくなる。なお、この変動量は、多少の余裕隙間を無視すれば、後述するワッシャ側当接部53と同じに設定される。或いは、この余裕隙間が、ピストン部材100によるワッシャ50の締め込みによる軸方向の圧縮によってもたらされる軸直角方向への変形によって埋まるように、設定しても好い。
また、ロッド側連携領域17の軸心からの最小半径17Yは、雄ねじ部13の軸心からの最大半径13Xと同等以上に設定されている。従って、ロッド側連携領域17の軸心からの最大半径17Yは、雄ねじ部13の軸心からの最大半径13Xより大きく設定されることが好ましい。
図3(A)(B)に示すように、ワッシャ50の一方側の面には、第一受部60が形成される。この第一受部60は、ピストン部材100の座部102と対向しており、両者の間には、第一相対回転防止機構Aが構成される。この第一相対回転防止機構Aは、少なくともピストン部材100が、螺合する直動ロッド10に対して緩まる方向に回転しようとすると、第一受部60とピストン部材100の座部102が互いに係合して、当該回転方向に対する第一受部60とロッド側座部22との相対回転を防止する。ワッシャ50の他方側には、第二受部70が形成される。この第二受部70は、直動ロッド10の段部20と対向する。
ワッシャ50におけるピストンロッドの挿入孔52は、軸方向から視た場合に非正円形となっている。この挿入孔52は、正円形の一部の円弧がその弦に沿って省略された形状となっており、直動ロッド10のロッド側連携領域17に対して周方向に係合する(このワッシャ50の挿入孔52における断面非正円領域を「ピストン側連携領域」と定義し、ピストン側連携領域とロッド側連携領域17との係合構造を「補助相対回転防止機構B」と定義する)。
具体的に、この補助相対回転防止機構Bは、ワッシャ50の挿入孔52に形成されるワッシャ側当接部53と、直動ロッド10のロッド側連携領域17に形成されるロッド側当接部23を有する。既に述べたように、ワッシャ50の挿入孔52は、ねじの軸心に対して同心の部分円弧形状となっており、残部を弦のように直線状に切り落とした形状となっているので、この弦がワッシャ側当接部53となる。従って、ワッシャ50の挿入孔52の内壁は、ワッシャ側当接部53に相当する部分において平面形状となっており、ねじの軸心からの距離が周方向に沿って変動する。具体的に第一ワッシャ側当接領域53Xは、ワッシャ50の一方の周方向Xに沿って、距離XA、XBが大きくなる。第二ワッシャ側当接領域53Yは、ワッシャ50の他方の周方向Yに沿って距離YA、YBが大きくなる。なお、ワッシャ側当接部53を除いた部分は、ねじの軸心からの距離が一定となる正円形状となっている。また、挿入孔52の軸心からの最小半径52Yは、雄ねじ部13の最大半径13Xと同じ又はそれより大きく設定される。結果、挿入孔52と直動ロッド10の雄ねじ部13が干渉しないで済む。
従って、ワッシャ50の挿入孔52に直動ロッド10の端部12cを挿入すると、ワッシャ側当接部53とロッド側当接部23が当接し、ねじの軸心を合わせた状態のままでは、両者の周方向の相対回転が制約される。即ち、このワッシャ側当接部53とロッド側当接部23が補助相対回転防止機構Bとして作用する。
更に第一相対回転防止機構Aとして、ワッシャ50の第一受部60には、ピストン側凹凸104と係合する第一受部側凹凸64が形成される。第一受部側凹凸64は、周方向に複数連続して設けられる鋸刃形状となっている。第一受部側凹凸64の各々が延びる方向、即ち稜線が延びる方向は、ワッシャ50の半径方向に沿っている。結果、第一受部側凹凸64は、ワッシャ50の貫通穴52の中心から放射状に延びる。
更にこの第一受部60には、半径方向に傾斜するワッシャ側テーパ面が形成される。このワッシャ側テーパ面は、中心側が直動ロッド10の段部20側に近づくように傾斜してすり鉢状を成している(図1参照)ので、結果として、凹の円錐形状となる。このワッシャ側テーパ面に、既述の第一受部側凹凸64が形成される。
図3(C)(D)に示すように、ピストン部材100の挿入孔100aは、直動ロッド10と螺合するための雌ねじ部106aが形成される。更にピストン部材100には、ワッシャ50の第一受部60に対向する座部102が形成される。この座部102とワッシャ50側の第一受部60は共に環状の面領域となっており、互いに当接して、締結力(軸力)を段部20に伝達する役割を担う。即ち、本締結構造における軸力の殆どは、ワッシャ50を介して段部20に伝達される。また、この軸力によって、ピストンリング90がピストン部材100とワッシャ50に保持される。
図3に示すように、第一相対回転防止機構Aとして、ピストン部材100の座部102には、雌ねじ側凹凸104が形成される。雌ねじ側凹凸104は、周方向に複数連続して設けられる鋸刃形状と成っている。雌ねじ側凹凸104の各々が延びる方向、即ち、稜線が延びる方向は、ピストン部材100の半径方向となっている。結果、雌ねじ側凹凸104は、軸心から放射状に延びる。
更にこの座部102には、半径方向に傾斜する雌ねじ側テーパ面が形成される。この雌ねじ側テーパ面は、中心側がワッシャ50側に近づくように傾斜しているので、結果として、直動ロッド10の段部20側に凸の円錐形状となる。この雌ねじ側テーパ面に、既述の雌ねじ側凹凸104が形成される。
以上の通り、第一相対回転防止機構Aとして、雌ねじ側凹凸104と第一受部側凹凸64が、周方向に複数連続する鋸刃形状と成っているので、所謂ラチェット機構又はワンウエイクラッチ機構として作用する。結果、ピストン部材100の締結動作時は、雌ねじ側凹凸104とワッシャ50の第一受部側凹凸64の相対移動を許容して、円滑な相対回転を実現する。一方、ピストン部材100の緩み動作時は、雌ねじ側凹凸104とワッシャ50の第一受部側凹凸64の相対移動を完全に規制する。結果、締結時の作業性と、その後の緩み止めを合理的に両立出来る。
また更に第一相対回転防止機構Aとして、座部102と第一受部60には、ピストン側テーパ面とワッシャ側テーパ面が形成されるので、両者の当接面積を大きくすることが出来る。また、この締結構造による軸線方向の締結力が、テーパ面によって半径方向にも作用する。互いのテーパ面を半径方向に押し付けることで、自励的にセンタリング出来る。結果、ピストン部材100とワッシャ50の同芯度が高められ、雌ねじ側凹凸104と第一受部側凹凸64の係合精度を高めることが出来る。なお、凸側の雌ねじ側テーパ面の傾斜を微小に大きくし、凹側のワッシャ側テーパ面の傾斜角を微小に小さくして、角度に微小差を設けておくことも好ましい。このようにすると、締め付け圧力の増大に伴って、中心から半径方向外側に向かって、互いのテーパ面を少しずつ当接させることが出来る。
また補助相対回転防止機構Bは、ワッシャ側当接部53とロッド側当接部23の形状が、ねじの軸心に対して同心正円となることを回避している。換言すると、ワッシャ側当接部53とロッド側当接部23の形状は、ねじの軸心からの距離が周方向に沿って変化する。この非正円形状によって、ワッシャ側当接部53とロッド側当接部23が一旦当接すると、互いの軸心を合わせたままでは、それ以上の周方向の相対回転が規制される。特に、ワッシャ側当接部53とロッド側当接部23が、直動ロッド10の全周に亘って形成されておらず、周方向において部分的に形成されているため、ワッシャ50や直動ロッド10のこれらの形状加工を、例えば簡単な面取り加工やプレス加工とすることができる。
図4に示すように、直動ロッド10に対してワッシャ50を挿入し、更にピストン部材100を締め付けると、まず補助相対回転防止機構Bによって直動ロッド10とワッシャ50が周方向に係合し、更にピストン部材100を締め付けると、第一相対回転防止機構Aにおいて、ワッシャ50のワッシャ側テーパ面の凹内に座部102の雌ねじ側テーパ面が進入し、雌ねじ側凹凸104と第一受部側凹凸64が係合して図1の状態となる。第一相対回転防止機構Aにおける両者の鋸歯形状は、図5(A)に示されるように、ピストン部材100が、締結方向Yに回転しようとすると、互いの傾斜面104Y、64Yが当接して、両者の距離を軸方向に狭めながら、相対スライドを許容する。一方、ピストン部材100が、緩み方向Xに回転しようとすると、互いの垂直面(傾斜が強い側の面)104X、64Xが当接して、両者の相対移動を防止する。とりわけ第一相対回転防止機構Aは、ピストン部材100を締め付けることによって、雌ねじ側座部102と第一受部60の距離が縮む程、雌ねじ側凹凸104と第一受部側凹凸64の噛み合いが強くなり、緩み方向X側の係合強度が高められる。ここで、雌ねじ側テーパ面の傾斜角度と、ワッシャ側テーパ面の傾斜角度とを互いに異ならせること、特にワッシャ側テーパ面の軸心からの傾斜角度を雌ねじ側テーパ面の軸心からの傾斜角度よりも狭めに設定することで、それぞれのテーパ面に形成される鋸歯のピッチに因らず、ガタ付き無く締め付けることも可能となる。
以上の通り、第一実施形態のシール構造によれば、ピストン部材100に外側シール嵌合部210が形成されるので、ピストンリング90を簡単に組み立てることが可能となる。それに伴い、ピストンリング90の弾性変形を考慮する必要が無くなるので、高剛性、高耐摩耗性の材料を選定することが可能となる。また、ワッシャ50とピストン部材100でピストンリング90を軸方向に保持することができるので、ピストンリング90の脱落を防止できる。
またワッシャ50を介在させることによって、ピストン部材100の雌ねじ側座部102とワッシャ50の第一受部60の間に第一相対回転防止機構Aを構成し、一方、ワッシャ50の挿入孔52と直動ロッド10のロッド側連携領域17の間に補助相対回転防止機構Bを構成する。結果として、ピストン部材100又は直動ロッド10が緩み方向に相対回転しようとすると、第一相対回転防止機構A及び補助相対回転防止機構Bの双方の周方向係合作用によって、直動ロッド10とピストン部材100の相対回転が規制された状態となり、逆回転すること即ち緩むことが防止される。従って、振動等が生じても、全く緩まない締結状態を得ることが出来る。一方、直動ロッド10とピストン部材100が締まり方向に相対回転する場合は、第一相対回転防止機構Aのワンウエイクラッチ構造によって、ワッシャ50とピストン部材100の相対回転が許容されるので、増し締めすることが自在に可能となっている。
また、第一相対回転防止機構A及び補助相対回転防止機構Bによる機械的な構造によって、ピストン部材100が緩まないようになっているので、必要以上にピストン部材100を増し締めすることが不要となり、ピストンリング90に適度な挟持力を付与できる。
なお、本第一実施形態では、第一相対回転防止機構Aとして、雌ねじ側凹凸104と第一受部側凹凸64が鋸刃形状の場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図5(B)に示されるように、互いの凹凸を山形(双方とも傾斜面)にすることも可能である。このようにすると、ピストン部材100が緩み方向Xに回転する際、互いの傾斜面104X,64Xが相対移動しようとするが、この傾斜面に沿って、雌ねじ側凹凸104と第一受部側凹凸64が離れようとする。この移動距離(離れる角度α)を、ピストン部材100のリード角より大きく設定すれば、ピストン部材100が緩もうとしても、それ以上に雌ねじ側凹凸104と第一受部側凹凸64が離れようとするので、緩むことが出来なくなる。なお、この図5(B)では、断面二等辺三角形の凹凸を例示したが、図5(C)のように、締結回転時に当接する傾斜面104Y、64Yの傾斜角よりも、緩み回転時に当接する傾斜面104X,64Xの傾斜角をなだらかにすることも好ましい。このようにすると、締結回転時に、互いに乗り越えなければならない傾斜面104Y、64Yの周方向距離Pを短くすることができるので、締結後のガタ(隙間)を少なく出来る。
また、図5(A)〜(C)の応用として、図5(D)に示されるように、峯と谷を湾曲させた波型の凹凸も好ましく、締結時には滑らかな操作性を得ることができる。更に、本第一実施形態では、半径方向に延びる凹凸を例示したが、図6(A)に示されるように、渦巻き状(スパイラル状)の溝又は山(凹凸)を形成することも好ましい。また図6(B)のように、直線状に延びる溝又は山(凹凸)であっても、ねじの半径方向に対して周方向位相が変化するように傾斜配置することもできる。また、図6(C)に示されるように、微細凹凸を、ねじの周方向且つ半径方向の双方(平面状)に複数形成した、所謂エンボス形状を採用することも好ましい。
更に本第一実施形態のように、雌ねじ側凹凸104と第一受部側凹凸64の凹凸形状を必ずしも一致(相似)させる必要はない。例えば、図5及び図6の各種形状から異なるものを互いに選択して組み合わせることも出来る。
本第一実施形態では、雌ねじ側テーパ面を凸形状、ワッシャ側テーパ面を凹形状にする場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、雌ねじ側テーパ面を凹形状、ワッシャ側テーパ面を凸形状にすることができる。一方でこれら両者は、ねじ軸に対して垂直な非テーパ面にすることもできる。また、例えばワッシャ50の弾性変形を有効活用すれば、双方のテーパ面の傾斜角を一致させる必要はない。勿論、ピストン部材100又はワッシャ50の一方のみにテーパ面を形成しても良い。更には、双方のテーパ面を凸形状にしたり、凹形状にしたりすることで、ワッシャの弾性変形を活用して両者を密着させることが出来る。また、ワッシャ50の弾性を得る為に、ワッシャ50の基本的な形状を螺旋状として成る所謂スプリングワッシャ状や皿バネ状としても好い。
また、本第一実施形態の直動ロッド10は、端部12cの途中、詳細にはロッド側連携領域35と雄ねじ部13の境界に溝(くびれ)を設ける場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。ロッド側連携領域35と雄ねじ部13が溝を介さずに連続している構造も好ましく、直動ロッド10の強度を高めることが可能となる。また、本体部12aと端部12cの境界に段部20を形成する場合を示したが、本発明はこれに限定されず、本体部12aと端部12cを同一径で連続するようにしてもよい。
更に、第一実施形態の補助相対回転防止機構Bの応用として、図7(A)に示すように、直動ロッド10のロッド側連携領域17として、端部12cの周囲の複数個所(ここでは2カ所)に、ロッド側当接部23Aを形成しても良い。図7(B)に示すように、直動ロッド10のロッド側連携領域17として、端部12cの周囲から半径方向外側に向かってに凸となるような突起23Bを形成しても良い。図7(C)に示すように、直動ロッド10のロッド側連携領域17として、端部12cを断面多角形23C(ここでは六角形)にしても良い。更に図7(D)に示すように、直動ロッド10のロッド側連携領域17として、端部12cを断面楕円形状23Dにしてもよい。いずれも「断面非正円」形状となる。この際、特に図示しないが、ワッシャ50の挿入孔52も、これらに対応した相似形にすることが好ましいが、両者が周方向に係合できる条件であれば、両者を相似形状にする必要はない。
また、本構造の場合、図8(A)に示すように、直動ロッド10に凸状のテーパ面11を形成すると共に、被挿入部材となるワッシャ50に、テーパ面51を形成し、両者を当接させることが好ましい。この結果、ピストン部材100でワッシャ50を締め付けることで、テーパ面11、51を押し付け合うようにすれば、ワッシャ50と直動ロッド10の軸心を高精度に一致させることができるようになる。なお、テーパ面11、51の間に内側シール部材82を介在させて、テーパ面11に内側シール部材82と当接させることで、油の漏れを抑制する。
なお、本構造では、連携部材(ワッシャ)50とピストン部材100の半径サイズは略同じにしており、ピストン部材100側の外側シール嵌合部210にピストンリング90が収容され、ワッシャ50によって挟持している。そこで図8(B)に示すように、ワッシャ50側に、外側シール嵌合部210を形成し、そこにピストンリング90を収容して、ピストン100によって挟持することも可能である。この場合は、被挿入部材であるワッシャ50をピストンとして定義し、被挿入部材であるピストン100を、ワッシャ50の脱落防止用の雌ねじ体と定義することが可能であろう。以下、第二実施形態以降も同様に、連携部材(ワッシャ)がピストンを兼ねたり、ワッシャとピストンの定義を適宜反転させたりできることを先に述べておく。
次に図9及び図10を参照して、第二実施形態に係るシール構造を説明する。なお、第一実施形態と同一又は類似する構造又は部材については説明を省略する。
図10(A)に示すように、直動ロッド10には、雄ねじ部13と重なるようにロッド側連携領域17が形成される。このロッド側連携領域17は、軸方向から視た場合に、ねじ山の頂点に沿って形成される断面正円形の一部の円弧が、その弦に沿って省略(又はカット)されたような形状となっており、この弦の部分がロッド側当接部23となる。即ち、ねじ山の一部が軸方向に連なるよう省略されることで、半径方向に対して直角且つ半径方向外側に向いた仮想平面Pが構成され、この仮想平面Pがロッド側当接部23となる。従って、ロッド側連携領域17の最小半径17Yは、雄ねじ部13の最大半径13Xより小さく設定される。
更に本実施形態では、ロッド側当接部23の軸方向の周囲に、ねじ山の谷底13aが残存している。結果、ピストン部材100と螺合する機能は残存していることになる。具体的には、ロッド側当接部23において、ねじ山の高さの3分の2を上限として省略することが好ましく、より好ましくは、ねじ山の高さの2分の1を上限として省略する。従って、ロッド側連携領域17の最小半径(最小距離)17Yは、雄ねじ部13の軸心からの最小半径(谷底半径)13Yより大きくなる。本実施形態では、周方向の23度の位相差となる三か所に、ロッド側当接部23が形成される。
図10(B)に示すように、ワッシャ50におけるピストンロッドを挿通させ得る挿入孔52は、軸方向から視た場合に非正円形となるピストン側連携領域となる。挿入孔52は、ねじの軸心に対して同心の部分円弧形状となっており、残部を弦のように直線状に切り落としたような形状となっているので、この弦がワッシャ側当接部53となる。なお、本実施形態では、周方向の120度の位相差となる三か所にワッシャ側当接部53が形成される。ワッシャ側当接部53が、ロッド側連携領域17のロッド側当接部23と当接することで、互いに周方向に係合して補助相対回転防止機構Bを構成する。
更に本実施形態では、ワッシャ50の外周面及びピストン部材100の外周面のそれぞれに、外側シール嵌合部56、210が対向状態で形成される。従って、ピストンリング90は、一対の外側シール嵌合部56、210に収容される。
以上の通り、第二実施形態のシール構造では、図9で示すように、ワッシャ50の挿入孔52と、直動ロッド10の雄ねじ部13に重畳的に形成されるロッド側連携領域17の間に補助相対回転防止機構Bを構成できる。従って、ロッド側連携領域17が存在する範囲内であれば、ワッシャ50との係合位置を自在に変更できるので、ワッシャ50の軸方向寸法を変更するだけで、ピストン10及びピストンリング90の固定位置を調整できる。なお、ワッシャ50と直動ロッド10の段部20の間にスリーブを介在させても良く、その場合は、スリーブの軸方向寸法を変更するだけで、ピストン10の固定値位置を調整できる。更にここでは、ロッド側連携領域17のロッド側当接部23において、ねじ山の谷底を可能な限り残存させているので、ピストン部材100との締結力の低下は、殆ど生じないようになっている。
なお、本第二実施形態の直動ロッド10は、本体部12aにロッド側連携領域17を設けない場合を例示したが、本体部12aの断面形状を、ロッド側連携領域17と略一致させることによって、このロッド側連携領域17を本体部12aまで拡張することも可能である。勿論、本体部12a自体を無くすことも可能である。
図11に第二実施形態の他の変形例を示す。図11(A)に示すように、雄ねじ部13と重畳形成されるロッド側連携領域17において、軸方向から視た場合に、ねじ山の頂点が凹状に省略されたロッド側当接部23が形成される。より詳しくは、ロッド側当接部23はねじ山の頂点がV字形状に凹んで構成されており、周方向に十二か所、等間隔で形成される。なお、ロッド側当接部23の軸心からの最小距離(凹みの底部)17Yは、雄ねじ部13の最大半径13Xより小さく、且つ、雄ねじ部13の最小半径(谷底半径)30bYより大きく設定される。
従って、図11(B)に示すように、直動ロッド10に組み付けられるワッシャ50の挿入孔52も、ロッド側連携領域17と相似形となるように、半径方向内側に凸状となるワッシャ側当接部53が周方向に十二か所、等間隔で形成される。結果、ワッシャ50と直動ロッド10を周方向に係合させることができる。
なお、第二実施形態では、雄ねじ部13に形成されるロッド側連携領域17において、ロッド側当接部23の軸心からの最小距離17Yが、雄ねじ部13の最小半径(谷底半径)30bYより大きく設定される場合を例示しているが、本発明はこれに限定されない。例えば図12(A)に示すように、雄ねじ部13において、ねじ山の谷底部よりも深い軸方向溝を形成し、これをロッド側当接部23とすることもできる。結果、ロッド側当接部23の軸心からの最小距離17Yは、雄ねじ部13の最小半径(谷底半径)より小さくなる。この場合は、雄ねじ部13のねじ山が、谷底を含めて部分的に省略される結果となる。ワッシャ50の挿入孔52にも、半径方向内向きに凸となるワッシャ側当接部53を形成し、その軸心からの最小距離を雄ねじ部13の最小半径(谷底半径、すなわち谷の径)より小さくする。結果、ワッシャ側当接部53とロッド側当接部23の周方向の係合寸法を大きくすることが可能となる。
また、第一及び第二実施形態では、ワッシャ50とピストン部材100に傾斜面(テーパ面)を形成して、両者を当接させる場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば図12(B)に示すように、ワッシャ50とピストン部材100の双方に円筒面を形成し、ワッシャ50の円筒面に第一受部側凹凸64を形成し、ピストン部材100の円筒面に雌ねじ側凹凸104を形成することで、互いに周方向に係合させても良い。
更に第一及び第二実施形態では、直動ロッド10が段部20を有する場合を例示しているが、本発明はこれに限定されない。例えば第一実施形態の応用として図13に示すように、連携部材(ワッシャ)50を、一対のピストン部材100、100で両側から挟み込むように締結することも可能である。この際、連携部材50の両側に、第一相対回転防止機構Aとなる一対の受部60を形成しておき、各受部60、60を、ピストン部材100の座部102と係合させる。このようにすると、両側に配置されるピストン部材100、100が、連携部材50に形成される受部60、60の存在によって、直動ロッド10に対して緩み方向に相対回転することが防止される。
この場合、一対のピストン部材100、100のそれぞれに、外側シール嵌合部210、210を形成し、更に、連携部材(ワッシャ)50の両端にも、外側シール嵌合部56、56を形成することができる。これにより、2個のピストンリング90、90を、一対のピストン部材100、100と連携部材(ワッシャ)50の境界で保持することが可能となる。
更に第二実施形態の応用として図14に示すような連携部材(ワッシャ)50を、一対のピストン部材100、100で両側から挟み込むように締結することも可能である。直動ロッド10には、段部20を省略してそこに雄ねじ部13を形成し、この雄ねじ部13と重なるようにロッド側連携領域17を形成する。連携部材50の両側に、第一相対回転防止機構Aとなる一対の受部60を形成しておき、各受部60、60を、ピストン部材100の座部102と係合させる。このようにすると、両側に配置されるピストン部材100、100が、連携部材50に形成される受部60、60の存在によって、直動ロッド10に対して緩み方向に相対回転することが防止される。
なお、この図13及び図14の思想は、一対のピストン部材100、100を直動ロッド上の任意の場所で固定することを実現しているが、一対のピストン部材の一方のみを実質的にピストン100として機能させ、他方は雌ねじ体として機能させるようにしてもよい。また連携部材50がピストンの一部を兼ねることも可能である。具体的には図15に示すように、両側に受部60、60を有する連携部材(ワッシャ)50に対して、一方側から雌ねじ体を兼ねるピストン部材100Aを締結し、他方側からは雌ねじ体100Bを締結すれば、ピストン部材100A、連携部材50、雌ねじ体100Bの3部材を任意の場所で固定できる。なお、ここではピストン部材100A側のみに外側シール嵌合部210を形成し、そこに1個のピストンリング90を配置している。
更に図15の直動システムのシール構造の変形例となる図16の構造のように、ワッシャ50において、雌ねじ体100Bの多角形周面、または座部102と反対側の平面まで回り込むようなアーム58を形成し、このアーム58と雌ねじ体100Bを周方向に係合させて相対回転防止機構Aを構成することも好ましい。
次に、図17及び図18を参照して第三実施形態のシール構造を説明する。なお、この第三実施形態は、第二実施形態の図11で示したシール構造の応用となっており、これらと同一又は類似する部材については説明を省略する。このシール構造は、ワッシャ(連携部材)50の機能をピストン部材100に一体的に設けることで、独立したワッシャ(連携部材)50を省略可能にすることを特徴としている。
図18に示すように、ピストン部材100は、雄ねじ部13と螺合する雌ねじ部106aを有する挿入孔100aにおいて、軸方向から視て断面非正円形となるピストン側連携領域106bが形成される。このピストン側連携領域106bは、ピストン部材100の座部102の反対側に軸方向にリング状に飛び出して設けられているが、座部102側に設けても良く、また雌ねじ部106aと重畳するように形成しても良い。
ピストン側連携領域106bは、挿入孔100aの内周面に、半径方向内側に凸状となる雌ねじ側当接部108が、周方向に十二か所、等間隔で形成される。結果、雌ねじ側当接部108は、直動ロッド10の雄ねじ部13に凹んで形成されるロッド側当接部23と周方向に係合させることができる。既に述べたように、雌ねじ側当接部108は、ピストン部材100の座部102の反対側に軸方向に突出して肉薄に設けられており、半径方向外側に弾性変形できるようにしている。直動ロッド10とピストン部材100を所望の力で相対回転させることで、ピストン側当接部108が外側に弾性変形して、ロッド側当接部23との周方向の係合を解除することができる。
従って、図17に示すように、直動ロッド10の段部20とピストン部材100の間に位置決め用のスリーブ18(これも被挿入部材と定義される)を配置しておき、直動ロッド10に対してピストン部材100を所望の力で締まる方向に付勢すれば、ロッド側当接部23と雌ねじ当接部108が係合と解除を繰り返しながら、相対回転を許容できるので、ピストン部材100を雄ねじ部の途中の場所で固定できる。より望ましくは、ロッド側当接部23と雌ねじ側当接部108の少なくとも一方の形状を鋸刃形状にすることで、締め付け方向の回転は許容し、緩み方向の回転は規制する所謂ラチェット機構として作用させる。
また、スリーブ18の挿入孔は、直動ロッド10が挿入される基本孔18Aと、基本孔18Aよりも大径であって、直動ロッド10の本体側の端面まで連続する環状の内側シール収容孔18Bを有する。内側シール収容孔18Bと基本孔18Aの間には段部18Cが形成される。内側シール収容孔18Bには、環状の内側シール部材82が収容され、段部18Cと軸方向に係合する。従って、ピストン部材100を締めつけることにより、スリーブ18を介して、内側シール部材82が直動ロッド19の段部21に押し付けられて、作動流体がシールされる。なおここでは、スリーブ18の外周面に収容凹部18Dが形成され、そこに補助シール部材83を収容することで、ピストン部材100とスリーブ18の間がシールされる。なお、ピストン部材100とスリーブ18は、一体的に形成されていても良く、その場合は、補助シール83を省略することが可能である。
第一乃至第三実施形態では、ロッド側連携領域17のロッド側当接部23が、軸方向に直線的に伸びる場合を主に例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図19(A)及び(B)に示すように、ロッド側当接部23を、軸方向に対して螺旋状に傾斜して形成することも好ましい。この際、ロッド側当接部23の螺旋方向は、雄ねじ部のねじ山の螺旋方向と同じであり、且つ、そのリードは、雄ねじ部のリードより大きく設定することが望ましい。結果、雌ねじ体が緩み方向に回転する際に、連携部材(例えばワッシャ)が雌ねじ体(例えばピストン)と連れ回りすると、リードの相違によって連携部材が雌ねじ体に押し付けられるので、第一相対回転防止機構Aが一層強固に係合して緩みを防止できる。
また、第一乃至第三実施形態では、ピストン部材100の周面に形成される外側シール嵌合部210において、段部205にピストンリング90を当接させて軸方向に位置決めする場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図20に示すように、ピストンリング90の内周面をテーパ面90a、90bにして、密封性能を高めることもできる。この場合は、ピストン部材100及び/又はワッシャ50の外周面に、外側シール嵌合部210、56を形成し、それぞれの周面に、ピストンリング90のテーパ90a、90bと対向するテーパ面203、55aを形成すれば良い。テーパ面203は、シール部105a側が大径、端面101側が小径となる。即ち、ワッシャ50側に向かって次第に小径となるように傾斜している。テーパ面55aは、ピストン部材100に向かって次第に小径となるように傾斜している。このようにすると、ピストン部材100とワッシャ50の挟持力を利用して、ピストンリング90のテーパ面90a、90bと、ピストン部材100及び/又はワッシャ50のテーパ面203、55aを密着及び軸方向に位置決めさせることができる。
更に、第一実施形態の図8で示す変形例では、直動ロッド10の軸部12のテーパ面11と、ピストン50のテーパ面51の間に、内側シール部材82を介在させる場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図21に示すように、直動ロッド10の本体部12aに内側シール部材82を設置し、この内側シール部材82の外周をテーパ面11にすることも可能である。内側シール部材82は、段部21に当接させることで軸方向に位置決めされる。
連携部材50の挿入孔50aは、基本孔50a2と、挿入孔50aの途中から端面まで連続する環状の内側シール収容孔250を有する。この内側シール収容孔250は、その内周においてテーパ面51が形成され、このテーパ面51と内側シール部材82のテーパ面11を密着させることで、連携部材50の軸方向の位置決めを行うと同時に、油の漏れを抑制する。この際、ピストン部材100の締結力を調整すれば、両テーパ面11、51の密着程度も適宜変更できる。
また、上記第一乃至第三実施形態では、ピストン部材100の座部102にピストン側テーパ面を形成し、ワッシャ50との間で自励的にセンタリングする構造を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図22(A)で示す第三実施形態の変形例のように、ピストン部材10における挿入孔100aにおいて、直径の大きい第一挿入孔(内側シール収容孔)100a1と、直径の小さい第二挿入孔(基本孔)100a2を同軸状に有するようにし、この第一挿入孔(内側シール収容孔)100a1に、内側シール部材82を収容してもよい。内側シール部材82の内周面には、環状のテーパ面82aを形成しておき、この環状のテーパ面82aと、直動ロッド10のテーパ面11を当接させて、ピストン部材100と直動ロッド10の間で直接センタリングすることも好ましい。
更にここでは、ピストン部材10の外周面105において、その途中から端面101まで連続する環状の外側シール嵌合部210を形成し、そこにピストンリング90を挿入する。ピストン部材10の端面101には、リング状の外側シール保持部材270が、軸方向に延びるボルト272によって固定される。この外側シール保持部材270とピストンリング90を当接させることにより、ピストンリング90が、外側シール嵌合部210から脱落しないようになっている。
更に上記第一乃至第三実施形態では、連携部材(ワッシャ)50が、直動ロッド10と別部材として構成され、この連携部材50を利用してピストン部材100の緩みを防止する構造を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図22(B)に示す第一実施形態の変形例ように、直動ロッド10において連携部材(ワッシャ)50と同等の機能が一体的に設けられるようにしても良い。即ち、直動ロッド10が拡張部50Xを一体的に有しており、この拡張部50Xにおいて、ピストン部材100の座部102と対向する第一受部60を形成すればよい。結果、直動ロッド10の拡張部50Xとピストン部材100の間には、第一相対回転防止機構Aが構成される。この第一相対回転防止機構Aは、少なくともピストン部材100が、螺合する直動ロッド10に対して緩まる方向に回転しようとすると、第一受部60と座部102が互いに係合して相対回転を防止する。
この際、ピストン部材100の挿入孔100aには、直径の大きい第一挿入孔(内側シール収容孔)100a1と、直径の小さい第二挿入孔(基本孔)100a2が形成される。この第一挿入孔(内側シール収容孔)100a1に、内側シール部材82を収容し、この内側シール部材82を直動ロッド10側の端面に当接させることで、作動流体をシールすることができる。
なお、上記実施形態では、主として、連携部材(ワッシャ)のワッシャ側当接部が周方向内側に凹状となる場合を例示しているが、周方向内側に凸状となっていてもよい。
図23(a)は、第四実施形態に係るシール構造1の平面図であり、同図(b)は、シール構造1の正面図である。また、図24は、図23(a)のA−A線断面図である。これらの図に示すように、シール構造1は、ピストン部材100を直動ロッド10に締結して互いに固定しつつ、作動流体をシールするものであり、直動ロッド10と、ピストン部材100に形成される第一雌ねじ部106aと、固定用雌ねじ体30と、相対回転防止機構40と、を備えている。ピストン部材100及び固定用雄ねじ体30は、直動ロッド10が挿入される「被挿入部材」であり、これらによってピストン体300が構成される。
図24に示すように、直動ロッド10は、中央から端部に向かって、直径の大きい略棒状(略円柱状)の本体部12aと、本体部12aよりも直径の小さい円柱状の位置決め部12bと、位置決め部12bよりも直径の小さい円柱状の端部12cを有して構成されている。従って、本体部12aと位置決め端部12bの境界には第一軸側段部11aが形成され、位置決め端部12bと端部12cの境界には第二軸側段部11bが形成される。端部12cの外周面には、雄ねじ螺旋溝が形成された雄ねじ部13が設けられており、本実施形態では、この雄ねじ部13に、右ねじである第一雄ねじ螺旋溝14、及び左ねじである第二雄ねじ螺旋溝15の二種類の雄ねじ螺旋溝が同一領域上に重複して形成される。
図25に、直動ロッド10の雄ねじ部13を拡大して示す。雄ねじ部13には、軸心(ねじ軸)Cに垂直となる面方向に連続する略三日月状のねじ山13aが、雄ねじ部13の一方側(図の左側)及び他方側(図の右側)に交互に設けられており、ねじ山13aをこのように構成することで、右回りに旋回する螺旋溝及び左回りに旋回する螺旋溝の二種類の螺旋溝を、ねじ山13aの間に形成することが出来る。
本実施形態では、このようにすることで、第一雄ねじ螺旋溝14及び第二雄ねじ螺旋溝15の二種類の雄ねじ螺旋溝を、雄ねじ部13に形成している。従って、雄ねじ部13は、右ねじ及び左ねじの何れの雌ねじ体とも螺合することが可能となっている。なお、二種類の雄ねじ螺旋溝が形成された雄ねじ部13の詳細については、本願の発明者に係る特許第4663813号公報を参照されたい。
図24に戻って、ピストン部材100は円筒状の部材となっており、チューブ4の内周面に対向する環状の外周面105と、軸方向に対向する一対の端面101と、外周面と同軸状に形成される挿入孔100aを有する。外周面105は、チューブ4の内周面に近接して、作動流体の移動を規制するシール部105aとなる。端面101の少なくとも一方(ここでは双方)は、作動流体の圧力を受け止める受圧面101aとなる。挿入孔100aには直動ロッド10が挿入される。
挿入孔100aは、詳細に、直径の大きい第一挿入孔(内側シール収容孔)100a1と、直径の小さい第二挿入孔(基本孔)100a2を同軸状に有する。第一挿入孔100a1は、直動ロッド10の中央側に位置しており、直動ロッド10の本体部12a又は位置決め部12bの直径よりも多少大きいサイズとなる。第二挿入孔100a2は直動ロッド10の軸端側に位置しており、内周面に第一雌ねじ部106aが形成される。結果、第一挿入孔100a1と第二挿入孔100a2の境界には孔側段部100bが形成される。
第一挿入孔(内側シール収容孔)100a1の内周及び直動ロッド10の位置決め部12bの外周には、筒状の内側シール部材82が配置される。内側シール部材82の軸方向サイズは、直動ロッド10の位置決め部12bの軸方向寸法より少しだけ長い。結果、内側シール部材82の両端は、孔側段部100bと第一軸側段部11aに係合する。なお、内側シール部材82の外径は、第一挿入孔100a1の内径と略一致している。
以上の通り、直動ロッド10の端部を、ピストン部材100の第一挿入孔100a1に挿通すると、内側シール部材82の外周面がピストン部材100の第一挿入孔100a1の内周面と密着し、更に、内側シール部材82の両端面が孔側段部100bと第一軸側段部11aに当接する。即ち、直動ロッド10とピストン部材100が軸方向に位置決めされる。なお、内側シール部材82は、合成樹脂製に設定されているが、必ずしも合成樹脂製である必要はなく、密閉性を保持することができるものであれば、特に限定されるものではない。
ピストン部材100の外周面105には、その途中から固定用雌ねじ体30側の端面101まで連続する環状の外側シール嵌合部210が形成される。この外側シール嵌合部210は、その周面において、固定用雌ねじ体30側の端面101まで連続する小径面201を構成しており、そこにピストンリング90が挿入され、当接且つ嵌合される。この小径面201は、ピストン部材100の外周面(シール部105a)よりも小径となり、シール部105aと小径面201に形成される段差205によりピストンリング90が軸方向に位置決めされる。ピストンリング90の軸方向寸法は、小径面201の軸方向寸法より多少大きく設定されており、ピストンリング90が、ピストン部材100から固定用雌ねじ体30側に微小に突出する。固定用雌ねじ体30は、直径が小径面201よりも大きく設定される。従って、固定用雌ねじ体30とピストン部材100を締結すると、固定用雌ねじ体30端面がピストンリング90に当接して、ピストンリング90が固定される。即ち、ピストンリング90は、ピストン部材100と固定用雌ねじ体30によって挟持される。これにより、固定用雌ねじ体30は、ピストン部材100の端面近傍に配置されて、ピストンリング90を外側シール嵌合部210側に押圧する外側シール保持部材として機能する。勿論、このピストンリング90の素材は、合成樹脂に限定されるものではなく、密閉性を保持できるものであれば、特に限定されるものではない。
直動ロッド10の雄ねじ部13には、ピストン部材100の第一雌ねじ部106aが螺合される。従って、ピストン部材100は、自らが雌ねじとなって直動ロッド10に締結される。更にこの雄ねじ部13には、ピストン部材100の外側から、固定用雌ねじ体30が螺合される。従って、ピストン部材100は、内側シール部材82と固定用雌ねじ体30に挟み込まれるようにして固定される。
ピストン部材100の第一雌ねじ部106aには、右ねじである第一雌ねじ螺旋溝が形成される。即ち、第一雌ねじ部106aは、直動ロッド10の雄ねじ部13における第一雄ねじ螺旋溝14と螺合する。
固定用雌ねじ体30は、外形等は特に限定されるものではないが、本実施形態においてはピストン部材100と略一致させている。従って、固定用雌ねじ体30は、外周面31が円筒面となっている。更にピストン部材100は、軸方向に貫通するねじ孔32を備えている。そして、ねじ孔32の内周面である第二雌ねじ部33には、左ねじである第二雌ねじ螺旋溝が形成されている。即ち、固定用雌ねじ体30は、直動ロッド10の雄ねじ部13における第二雄ねじ螺旋溝15と螺合する。端面38には、後述する相対回転防止機構40が配置される。
図26(a)〜(d)は、相対回転防止機構を無視した状態で、ピストン部材100及び固定用雌ねじ体30の相対的な螺合動作を示した図である。ピストン部材100及び固定用雌ねじ体30は、互いに逆ねじの関係となっているため、同図(a)及び(b)に示すように、直動ロッド10に対して両者を同一の方向に回転させた場合(又は、両者を固定して直動ロッド10を回転させた場合)、軸心Cに沿って互いに逆方向に移動することとなる。
具体的には、同図(a)に示すように、ピストン部材100及び固定用雌ねじ体30の直動ロッド10に対する回転方向が、固定用雌ねじ体30側(図の上側)から見て左回りとなる場合には、ピストン部材100及び固定用雌ねじ体30は、軸心C方向に沿って互いに近接する方向に移動する。しかしながら、既にピストン部材100と固定用雌ねじ体30が密着状態の場合は、これ以上近接することができないことから、ピストン部材100及び固定用雌ねじ体30の同時回転は自ずと規制される。
また、同図(b)に示すように、ピストン部材100及び固定用雌ねじ体30の回転方向が、固定用雌ねじ体30側(図の上側)から見て右回りとなる場合には、ピストン部材100及び固定用雌ねじ体30は、軸心C方向に沿って互いに離隔する方向に移動する。しかしながら、既にピストン部材100が内側シール部材82(図24参照)と当接している場合は、ピストン部材100がこれ以上移動することができないことから、ピストン部材100及び固定用雌ねじ体30の同時回転は自ずと規制される。
勿論、同図(c)に示すように、固定用雌ねじ体30のみを右回りに回転させる場合は、固定用雌ねじ体30は緩むことができる。結果、ピストンリング90が外側シール嵌合部210から離脱し得る。また同図(d)に示すように、固定用雌ねじ体30のみを右回りに回転させると同時に、ピストン部材100を左回りに回転させる場合は、両者が同時に緩むことになる。
以上の螺合動作から理解できるように、ピストン部材100及び固定用雌ねじ体30を直動ロッド10に十分に締め付けた状態の場合、ピストン部材100及び固定用雌ねじ体30が同じ方向に回転することは構造的に不可能となる(図26(a)、(b)参照)。換言すると、直動ロッド10が、ピストン部材100及び固定用雌ねじ体30に対して相対回転することが不可能な構造となっている。一方、固定用雌ねじ体30のみが回転したり、ピストン部材100と固定用雌ねじ体30を互いに反対方向に回転させると、締結状態が緩んでしまうことが理解できる。即ち、この締結構造においては、ピストン部材100及び固定用雌ねじ体30の「締結後の相対回転」を規制すれば、ピストン部材100及び固定用雌ねじ体30は、構造的に外れない状態を維持でき、ピストンリング90が永続的に離脱しない結果になる。
以上の考察を下に、本実施形態で採用される相対回転防止構造40について説明する。
図24に戻って、相対回転防止機構40は、ピストン部材100に形成される雌ねじ穴となる第一係合孔191と、固定用雌ねじ体30に形成される第二係合孔181と、係合用雄ねじ体110と、環状のワッシャ150を備えて構成される。第二係合孔181は挿入孔であり、ピストン部材100に形成される第一係合孔191は非挿入孔である。第一係合孔191の内周面には係合用雌ねじ部が形成される。係合用雄ねじ体110は、第二係合孔181を介して第一係合孔191と螺合する。結果、係合用雄ねじ体110が、第一係合孔191と第二係合孔181に一貫して挿入されて、ピストン部材100と固定用雌ねじ体30の相対回転が規制される。なお、雌ねじ穴は、第一係合孔191側ではなく、第二係合孔181側に形成してもよい。
図27に示すように、係合用雄ねじ体110は所謂ボルトであり、頭部120と軸部130を有する。頭部120の下部乃至付け根に相当する部位には、ねじ体側座部122が形成される。軸部130には、円筒部130aとねじ部130bとが形成される。勿論、円筒部130aは必須ではない。
ワッシャ150の一方側(図27の上面側)には、第一受部160が形成される。この第一受部160は、ねじ体側座部122と対向しており、両者の間には、第一係合機構Aが構成される。この第一係合機構Aは、少なくともねじ体側座部122が、締結状態の係合用雄ねじ体110を緩める方向に回転しようとすると、第一受部160とねじ体側座部122が互いに係合して、当該回転方向に対する第一受部160とねじ体側座部122との相対回転を防止する。
ワッシャ150の他方側(図27の下面側)には、第二受部170が形成される。この第二受部170は、固定用雌ねじ体30と対向する。
固定用雌ねじ体30には、ワッシャ150の第二受部170に対向する部材側座部182が形成される。固定用雌ねじ体30の部材側座部182と、ワッシャ150の第二受部170の間には、第二係合機構Bが構成される。この第二係合機構Bは、少なくともワッシャ150が、係合用雄ねじ体110と共に、緩める方向に回転しようとすると、第二受部170と部材側座部182が互いに係合して、当該回転方向に対する第二受部170と部材側座部182との相対回転を防止する。
この第一係合機構Aと第二係合機構Bの作用により、係合用雄ねじ体110が緩み方向に回転しようとすると、ワッシャ150の介在によって、係合用雄ねじ体110と固定用雌ねじ体30の相対回転が規制される。結果、係合用雄ねじ体110が緩むことが防止される。
図28に示すように、第一係合機構Aとして、係合用雄ねじ体110のねじ体側座部122には、ねじ体側凹凸124が形成される。ねじ体側凹凸124は、周方向に複数連続して設けられる鋸刃形状と成っている。ねじ体側凹凸124の各々が延びる方向、即ち、稜線が延びる方向は、係合用雄ねじ体110の半径方向となっている。結果、ねじ体側凹凸124は、軸心から放射状に延びる。
更に、このねじ体側座部122は、半径方向に傾斜するねじ体側テーパ面126が形成される。このねじ体側テーパ面126は、中心側がねじ先に近づくように傾斜しているので、結果として、ねじ先側に凸の円錐形状となる。更に好ましくは、このねじ体側テーパ面126に、既述のねじ体側凹凸124が形成される。
図29に示すように、第一係合機構Aとして、ワッシャ150の第一受部160には、ねじ体側凹凸124と係合する第一受部側凹凸164が形成される。第一受部側凹凸164は、周方向に複数連続して設けられる鋸刃形状となっている。第一受部側凹凸164の各々が延びる方向、即ち稜線が延びる方向は、係合用雄ねじ体110の半径方向に沿っている。結果、第一受部側凹凸164は、ワッシャ150の貫通穴152の中心から放射状に延びる。
更に、好ましくは、この第一受部160は、半径方向に傾斜するワッシャ側テーパ面166が形成される。このワッシャ側テーパ面166は、中心側がねじ先に近づくように傾斜してすり鉢状を成しているので、結果として、ねじ先側に凹の円錐形状となる。このワッシャ側テーパ面166に、既述の第一受部側凹凸164が形成される。
結果、係合用雄ねじ体110を締め付ける際に、第一係合機構Aでは、ワッシャ150のワッシャ側テーパ面166の凹内に、ねじ体側座部122のねじ体側テーパ面126が進入し、ねじ体側凹凸124と第一受部側凹凸164が係合する。両者の鋸歯形状は、図30(A)に示すように、係合用雄ねじ体110が、締結方向Yに回転しようとすると、互いの傾斜面124Y、164Yが当接して、両者の距離を軸方向に離しながら、相対スライドを許容する。一方、係合用雄ねじ体110が、緩み方向Xに回転しようとすると、互いの垂直面(傾斜が強い側の面)124X、164Xが当接して、両者の相対移動を防止する。とりわけ第一係合機構Aは、係合用雄ねじ体110を締め付けることによって、ねじ体側座部122と第一受部160の距離が縮む程、ねじ体側凹凸124と第一受部側凹凸164の噛み合いが強くなり、緩み方向X側の係合強度が高められる。ここで、ねじ体側テーパ面126の傾斜角度と、ワッシャ側テーパ面166の傾斜角度とを互いに異ならせること、特にワッシャ側テーパ面166の軸心からの傾斜角度をねじ体側テーパ面126の軸心からの傾斜角度よりも狭めに設定することで、それぞれのテーパ面に形成される鋸歯のピッチに因らず、ガタ付き無く締め付けることも可能となる。
図29に戻って、ワッシャ150の第二受部170の外壁172は、ねじの軸心からの距離が周方向に沿って変動する。具体的に、この外壁172は、ねじの軸心(挿入孔152の中心)に対して偏心した円形状となっている。
一方、固定用雌ねじ体30の部材側座部182は、ワッシャ150の第二受部170を収容するための嵌合部184を備えており、且つ、この嵌合部184の内壁も、ねじの軸心に対して偏心した円形状となっている。なお、偏心量は、第二受部170と嵌合部184で同じであり、第二受部170と嵌合部184の直径差(余裕隙間)は、偏心量よりも小さく設定される。
従って、図27に示すように、ワッシャ150の第二受部170が、固定用雌ねじ体30の嵌合部184に収容されると、両者が嵌り合う結果となり、ねじの軸心を合わせた状態のままでは、両者の周方向の相対回転が規制される。即ち、この第二受部170と嵌合部184が第二係合機構Bとして作用する。
以上の結果、この相対回転防止機構40によれば、ワッシャ150を介在させることによって、ねじ体側座部122と第一受部160の間に第一係合機構Aを構成し、部材側座部182と第二受部170の間に第二係合機構Bを構成し、係合用雄ねじ体110が緩もうとすると、第一係合機構A及び第二係合機構Bの双方の規制作用によって、係合用雄ねじ体110が固定用雌ねじ体30と周方向に係合した状態となり、逆回転すること、即ち緩むことが防止される。従って、振動等が生じても、全く緩まない締結状態を得ることが出来る。その結果、係合用雄ねじ体110が、ピストン部材100と固定用雌ねじ体30の相対回転を確実に規制することが可能となる。
更にここでは、第一係合機構Aとして、ねじ体側凹凸124と第一受部側凹凸164が、周方向に複数連続する鋸刃形状と成っており、所謂ラチェット機構又はワンウエイクラッチ機構として作用する。結果、締結動作時は、ねじ体側凹凸124と第一受部側凹凸164の相対移動を許容して、円滑な相対回転を実現する一方、緩み動作時は、ねじ体側凹凸124と第一受部側凹凸164の相対移動を完全に規制する。結果、締結時の作業性と、その後の緩み止めを合理的に両立出来る。
また第一係合機構Aとして、ねじ体側座部122と第一受部160には、ねじ体側テーパ面126、ワッシャ側テーパ面166が形成されるので、両者の当接面積を大きくすることが出来る。また、係合用雄ねじ体110の軸線方向の締結力が、テーパ面によって半径方向にも作用する。互いのテーパ面を半径方向に押し付けることで、自励的にセンタリング出来る。結果、係合用雄ねじ体110とワッシャ150の同芯度が高められ、ねじ体側凹凸124と第一受部側凹凸164の係合精度を高めることが出来る。なお、凸側のねじ体側テーパ面126の傾斜を微小に大きくし、凹側のワッシャ側テーパ面166の傾斜角を微小に小さくして、角度に微小差を設けておくことも好ましい。このようにすると、締め付け圧力の増大に伴って、中心から半径方向外側に向かって、互いのテーパ面を少しずつ当接させることが出来る。
また第二係合機構Bでは、ワッシャ150の第二受部170の外壁と、固定用雌ねじ体30の嵌合部184の内壁の形状が、ねじの軸心に対して同心円となることを回避している。換言すると、嵌合部184の内壁及び第二受部170の外壁は、ねじの軸心からの距離が周方向に沿って変化する。この形状によって、嵌合部184の内壁と第二受部170が嵌り合うと、互いの軸心を合わせたままでは、周方向の相対回転が規制される。特にここでは、偏心した正円形状となっているので、ワッシャ150や固定用雌ねじ体130の形状加工を極めて簡単としつつも、両者の相対回転を防止出来る。
なお、ここでは第一係合機構Aとして、ねじ体側凹凸124と第一受部側凹凸164が鋸刃形状の場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図30(B)に示すように、互いの凹凸を山形(双方とも傾斜面)にすることも可能である。このようにすると、係合用雄ねじ体110が緩み方向Xに回転する際、互いの傾斜面124X,164Xが相対移動しようとするが、この傾斜面に沿って、ねじ体側凹凸124と第一受部側凹凸164が離れようとする。この移動距離(離れる角度α)を、係合用雄ねじ体110のリード角より大きく設定すれば、係合用雄ねじ体110が緩もうとしても、それ以上にねじ体側凹凸124と第一受部側凹凸164が離れようとするので、緩むことが出来なくなる。なお、この図30(B)では、断面二等辺三角形の凹凸を例示したが、図30(C)のように、締結回転時に当接する傾斜面124Y、164Yの傾斜角よりも、緩み回転時に当接する傾斜面124X,164Xの傾斜角をなだらかにすることも好ましい。このようにすると、締結回転時に、互いに乗り越えなければならない傾斜面124Y、164Yの周方向距離Pを短くすることができるので、締結後のガタ(隙間)を少なく出来る。
また、図30(A)〜(C)の応用として、図30(D)に示すように、峯と谷を湾曲させた波型の凹凸も好ましい。締結時に滑らかな操作性を得ることができる。更に、ここでは半径方向に延びる凹凸を例示したが、図31(A)に示すように、渦巻き状(スパイラル状)の溝又は山(凹凸)を形成することも好ましい。また図31(B)のように、直線状に延びる溝又は山(凹凸)であっても、ねじの半径方向に対して周方向位相が変化するように傾斜配置することもできる。また、図31(C)に示すように、微細凹凸を、ねじの周方向且つ半径方向の双方(平面状)に複数形成した、所謂エンボス形状を採用することも好ましい。
更に本相対回転防止機構40のように、ねじ体側凹凸124と第一受部側凹凸164の凹凸形状を必ずしも一致(相似)させる必要はない。例えば、図30及び図31の各種形状から異なるものを互いに選択して組み合わせることも出来る。
本相対回転防止機構40の応用として、図32(A)に示すように、ワッシャ150の第二受部170の外壁及び、部材側台座部182の嵌合部184の内壁が、ねじの軸心に対して同心の部分円弧形状Sとし、残部を弦Gのように直線状に切り落としたような形状とすることも出来る。即ち、この場合においても、嵌合部184の内壁及び第二受部170の外壁は、ねじの軸心からの距離が周方向に沿って変動する。従って、弦Gの形状によって、嵌合部184の内壁と第二受部170が係合し、周方向の相対回転が規制される。
また図32(B)に示すように、ワッシャ150の第二受部170の外壁が、ねじの軸心に対して同心の部分円弧形状Sとし、残部には、半径方向に延びる突起Tを形成することが出来る。この際、嵌合部184の内壁には、半径方向に凹む窪みKを形成する。この突起Tと窪みKの係合によって、嵌合部184の内壁と第二受部170が係合し、周方向の相対回転が規制される。この際、嵌合部184に形成される窪みKは、小さな正円形状(部分円弧)とすることが好ましい。嵌合部184を切削加工する際に、回転刃物による一回の加工だけで、窪みKを形成出来るからである。なお、特に図示しないが、ワッシャ150の第二受部170側に窪み(切欠き)を形成し、嵌合部184側に半径方向内側に突出する突起を形成することも出来る。
本第四実施形態のシール構造1によれば、内側シール部材82及びピストンリング(外側シール部材)90共に、固定用雌ねじ体30とピストン部材100の端面から挿入することができる。また、内側シール部材82は、固定用雌ねじ体30とと直動ロッド10によって保持され、ピストンリング90は、固定用雌ねじ体30とピストン部材100によって保持することができる。結果、組立作業が極めて容易となる。
更に本シール構造1によれば、ピストン部材100自身が第一雌ねじ部106aを有しており、直動ロッド10の第一雄ねじ螺旋溝14と螺合しているので、外部から受ける力を、ピストン部材100自らが直動ロッド10に伝達できる。従来のように、軸方向にスライド自在のピストン部材を、雌ねじ体で挟み込むように直動ロッド10に固定する構造と比較して、第一雄ねじ螺旋溝14の最小直径(谷径)を大きくすることが可能となり、直動ロッド10の耐久性を高めることが可能となる。
また、直動ロッド10の雄ねじ部13は、第一雄ねじ螺旋溝14及び第二雄ねじ螺旋溝15を有しており、第二雄ねじ螺旋溝15に螺合する固定用雌ねじ体30によって、ピストン部材100の緩み方向の回転を規制しているので、ピストン部材100に繰り返しの外力や振動が作用しても、ピストン部材100が緩まない。結果、内側シール部材82及びピストンリング(外側シール部材)90が離脱することが無い。しかも、従来の緩み止めのように、雄ねじ体のねじ山のフランク面と雌ねじ体のねじ山のフランク面の間等における摩擦力に頼ったものではなく、固定用雌ねじ体30とピストン部材100の動作干渉によって構造的に緩まないようにしているので、必要以上に固定用雌ねじ体30を増し締めする必要が無くなり、締結作業の容易化と同時に、直動ロッド10の疲労も低減できる。また、固定用雌ねじ体30の締結力によって保持されている内側シール部材82及びピストンリング(外側シール部材)90の劣化も低減される。
同様に、相対回転防止機構40が外れたり破壊等が生じたりしない限り、仮にピストン部材100に塑性変形や摩耗等が生じたとしても、ピストン部材100が直動ロッド10から脱落するような事態は確実に防止されることになり、安全性を高めることが可能となる。
また、ピストン部材100が螺合する第一雄ねじ螺旋溝14と、固定用雌ねじ体30が螺合する第二雄ねじ螺旋溝15は、最小直径(谷径)を共通にしていることから、ピストン部材100と固定用雌ねじ体30を密着させれば、ピストン部材100に作用する外力を、ピストン部材100と固定用雌ねじ体30で分散させて、第一雄ねじ螺旋溝14及び第二雄ねじ螺旋溝15に伝達することができる。これによっても、直動ロッド10の耐久性を高めることが可能となる。
更に本実施形態では、相対回転防止機構40によって、ピストン部材100及び固定用雌ねじ体30の相対回転が完全に防止されるので、固定用雌ねじ体30のみが回転して、単独で直動ロッド10から外れることを防いでいる。とりわけ、本相対回転防止機構40では、ピストン部材100及び固定用雌ねじ体30に係合する係合用雄ねじ体110自体も、緩み方向の回転が防止されているので、この係合用雄ねじ体110が外れてしまうことが無い。結果、振動等が生じても、相対回転防止機構40の機能が維持されるので、延いては、ピストン部材100が直動ロッド10から脱落することを防止できる。
また、内側シール部材82及びピストンリング(外側シール部材)90のメンテナンス時等において、ピストン部材100を取り外す必要がある場合は、ワッシャ150と係合用雄ねじ体110の間の第一係合機構A、又はワッシャ150と固定用雌ねじ体30の間の第二係合機構Bのいずれかの係合を破壊して、係合用雄ねじ体110を取り外し、その後、固定用雌ねじ体30を取り外してから、固定用雌ねじ体30を緩める。このように、メンテナンス時の破壊対象をワッシャ150及び係合用雄ねじ体110に限定することにより、ピストン部材100、直動ロッド10、固定用雌ねじ体30を再利用できる。即ち、本実施形態によれば、組立後のピストン部材100の直動ロッド10に対する変位や脱落を完全に防ぎつつも、ピストン部材100、固定用雌ねじ体30、直動ロッド10のメンテナンスを簡易且つ低コストで行うことが可能となる。なお、ワッシャ150又は係合用雄ねじ体110の材質を、ピストン部材100や固定用雌ねじ体30の材質よりも柔らかいものを選定することで、係合用雄ねじ体110を強制的に取り外す際に、ワッシャ150又は係合用雄ねじ体110が優先的に壊れるようにすることも可能である。
次に、図33を参照して、本発明の第五実施形態に係るシール構造について説明する。なお、相対回転防止機構以外は第四実施形態と同様であるため、ここでは相対回転防止機構に限定して説明する。この相対回転防止機構では、係合用雄ねじ体110は第四実施形態と同様であるが、ワッシャ150及び固定用雌ねじ体130の構造が一部異なっているので、異なる部分を中心に説明し、係合用雄ねじ体110に関する説明は省略する。
ワッシャ150は、図34(A)に示すように、第四実施形態と比較して肉薄と成っており、固定用雌ねじ体30と対向する第二受部170側にも、ねじ先方向に凸となる第二ワッシャ側テーパ面176が形成される。
なお、第四実施形態と同様に、ワッシャ150の第二受部170の外壁172及び嵌合部184の内壁は、偏心した正円形状となっているので、互いに嵌り合うことで、周方向の回転が規制される。
図33に戻って、固定用雌ねじ体130の嵌合部184の底面には、ねじ先側に凹となる部材側テーパ面186が形成される。結果、ワッシャ150の第二ワッシャ側テーパ面176と当接することにより、ワッシャ150を介して雄ねじ体110の締結力を受け止める。
更に、嵌合部184の内壁の一部には引上げ空間188が形成される。引上げ空間188は、嵌合部184の内壁が半径方向外側に拡張し、且つ、凹部の深さを大きくすることで確保される。この引上げ空間188によって、ワッシャ150の第二受部170の外壁の一部に隙間が形成される。
係合用雄ねじ体110及びワッシャ150を用いて、固定用雌ねじ体30を固定すると、第一係合機構Aとして、係合用雄ねじ体110のねじ体側凹凸124と、ワッシャ150側の第一受部側凹凸164が係合する。更に、第二係合機構Bとして、ワッシャ150の第二受部170の外壁と嵌合部184の内壁が互いに嵌り合うことで、周方向の回転が規制される。結果、係合用雄ねじ体110の逆回転が防止されること、即ち緩まないことになる。
図34(B)には、内側シール部材82及びピストンリング(外側シール部材)90のメンテナンス時等において、係合用雄ねじ体110を強制的に緩める場合の操作について説明する。例えばマイナスドライバDの先端を、引上げ空間188内に挿入することによって、その先端をワッシャ150の背面側に挿入する。この状態で、マイナスドライバDの先端を持ち上げることにより、ワッシャ150の第二受部170を上方に変形させることが出来る。結果、第二受部170と嵌合部184による第二係合機構Bが解放される。この状態で、係合用雄ねじ体110を緩み方向に回転させれば、ワッシャ150も一緒に回転できるので、係合用雄ねじ体110を緩めることが出来る。
なお、この第五実施形態では、固定用雌ねじ体30の嵌合部184に引上げ空間188を形成する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図35(A)に示すように、ワッシャ150の外壁に傾斜面177Aを形成することで、マイナスドライバDの先端を、ワッシャ150の背面側(固定用雌ねじ体30側)に挿入できるようにする。また、図35(B)に示すように、ワッシャ150の周縁に、固定用雌ねじ体30から離れるような挿入用凹部177Bを形成する。この挿入用凹部177Bを介して、マイナスドライバDの先端をワッシャ50の背面側に挿入出来るようにする。この他、ワッシャ150の外径と、嵌合部184の内径との径差を利用して、三日月状の間隙を作出し、この三日月状の間隙(図示省略)を利用してマイナスドライバDの先端をワッシャ150の背面側に挿入可能としても好い。勿論、このような間隙は、三日月状の形状に限定されるものではない。
次に、図36を参照して、本発明の第六実施形態に係るシール構造について説明する。なお、相対回転防止機構以外は第四実施形態と同様であるため、ここでは相対回転防止機構に限定して説明する。図36(B)に示すように、係合用雄ねじ体110のねじ体側座部122は平面形状となっており、そこに鋸刃形状のねじ体側凹凸124が形成される。また、係合雄ねじ体110の軸部130の根本には、ワッシャ150を保持するためのくびれ132が形成される。
図36(A)の通り、ワッシャ150の第一受部160も平面形状となっており、そこに鋸刃形状の第一受部側凹凸164が形成される。ワッシャ150の挿入孔152には、内周側に突出する係合突起152Aが形成され、係合用雄ねじ体110のくびれ132と係合する。結果、予め、係合用雄ねじ体110とワッシャ150を一体化(結合)することが可能となる。
更にワッシャ150の第二受部170には、ねじの軸線方向に延びるワッシャ側段部174が形成される。ここでは、固定用雌ねじ体30側に屈曲する爪によって、ワッシャ側段部174が構成される。
一方、固定用雌ねじ体30は、部材側座部182の部材側段部182Aとして平面部31aを有する。この平面部31aは、円筒状の外周面31の一部を切り欠くことによって形成される。この部材側段部182Aは、ねじ先側に落ち込むような段差となる。ワッシャ側段部174と部材側段部182Aのねじの軸心からの距離は、互いに一致している。従って、図36(C)に示すように、係合用雄ねじ体110を締め付ければ、ワッシャ側段部174と部材側段部182Aが係合し、ワッシャ150と固定用雌ねじ体30の相対回転が防止される。
なお、本第六実施形態では、係合用雄ねじ体110のくびれ132とワッシャ150の係合突起152Aによって、予め両者を一体化する場合を例示したが、その手法はこれに限定されない。例えば、少なくとも一方に磁気を持たせることで、係合用雄ねじ体110とワッシャ150を磁力で一体化することもできる。その他にも、接着剤、(スポット)溶接、圧入(摩擦力)によって係合用雄ねじ体110とワッシャ150を予め一体化することもできる。また、Oリング等の補助具を用いて、係合用雄ねじ体110とワッシャ150を一体化することも可能である。
なお、第六実施形態では、固定用雌ねじ体30の外周面31に形成する平面部31aをワッシャ150と係合させて、両者の相対回転を防止するようにしたが、本発明はこれに限定されない。例えば図37(A)に示す応用例のように、ワッシャ150に軸係合部175を形成し、この軸係合部175を、直動ロッド10の雄ねじ部13と係合させることもできる。なお、軸係合部175は、雄ねじ部13を取り囲むリング形状としており、この軸係合部175内に雄ねじ部13を挿入することで、ワッシャ150と雄ねじ部13が係合する。結果、ワッシャ150と固定用雌ねじ体30の相対回転が防止されることになる。なお、軸係合部175の形状はリング形状に限定されず、図37(B)に示す部分円弧形状や、雄ねじ部13を挟み込むようなV字形状などのように、雄ねじ部13と係合し得るあらゆる形状を選択できる。更に図37(C)に示すように、一つのワッシャ150につき二つ以上のボルト挿通穴を有するようにし、二つ以上の係合用雄ねじ体110によって、互いに他方のボルト軸周りの回転を防止するように構成したりすることも可能である。
更に第六実施形態では、ワッシャ150の外周にワッシャ側段部174が形成される場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図37(D)に示すように、ワッシャ150における外縁よりも内側に、ワッシャ側段部(突起)174を形成することも出来る。固定用雌ねじ体30の嵌合部184内に、このワッシャ側段部174を収容する部材側段部(窪み)182Aを形成する。結果、ワッシャ側段部(突起)174と部材側段部(窪み)182Aが係合して、相対回転が防止される。
次に、図38を参照して、本発明の第七実施形態に係るシール構造について説明する。なお、相対回転防止機構以外は第四実施形態と同様であるため、ここでは相対回転防止機構に限定して説明する。図38(A)の通り、ワッシャ150の外形は、ねじの軸心に対して偏心した円形である。ワッシャ150は、所謂皿ばねになっており、係合用雄ねじ体110からの締結力を受けると、軸線方向に弾性変形する。
図38(B)に示すように、ワッシャ150は、固定用雌ねじ体30に形成される偏心円形の嵌合部184に収容される。係合用雄ねじ体110のねじ体側座部122は、中心側にねじ体側凹凸124が形成され、ワッシャ150の第一受部側凹凸164と係合する。また、ねじ体側座部122におけるねじ体側凹凸124の外側には、固定用雌ねじ体30と直接当接する押圧面123が形成される。
更に嵌合部184の底面と、係合用雄ねじ体110のねじ体側凹凸124の間の隙間Lは、ワッシャ150の軸方向寸法と比較して多少小さく設定される。結果、係合用雄ねじ体110を締め付けると、ワッシャ150は、嵌合部184の底面とねじ体側凹凸124に挟み込まれて弾性変形する。しかし、この弾性変形量は、ねじ体側凹凸124と第一受部側凹凸164の相対回転を抑止する程度で十分である。なぜなら、係合用雄ねじ体110の締結力は、押圧面123を介して直接的に固定用雌ねじ体130に伝達されるからである。本実施形態のようにすれば、ワッシャ150自体の強度、剛性を低くすることが出来るので、製造コストを低減することが出来る。
また第四から第七実施形態では、係合用雄ねじ体110の頭部120が、固定用雌ねじ体30から突出する場合を例示したが、固定用雌ねじ体30の嵌合部184の深さを深くすれば、頭部120までも、嵌合部184内に収容することが可能となる。
なお第四から第七実施形態では、ワッシャ150の外形が、円形又は部分円弧となる場合に限って例示したが、それ以外の形状を採用することができる。例えば、ワッシャ150の外形としては、楕円形、長円形、多角形等の形状であっても好い。つまり、嵌合部との嵌め合いによって相対回転を防止する場合は、軸心に対してワッシャ150の外形が「非完全円形(同心の完全円ではない状態)」であれば良いことになる。また第七実施形態では、ワッシャ150が皿ばねとして弾性変形する場合を例示したが、スプリングワッシャのように弾性変形させることも出来る。また更に、金属と弾性変形材料(例えばゴム等)を一体化した複合材料によってワッシャを形成し、弾性変形可能にすることも好ましい。
更に第四から第七実施形態では、固定用雌ねじ体30にワッシャ150を設置し、このワッシャ150bに第一受部側凹凸164を形成して、係合用雄ねじ体110のねじ体側凹凸124と係合させる構造を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図39に示すように、固定用雌ねじ体30の平面に第一受部側凹凸164を直接形成し、ワッシャ150を省略することも可能である。固定用雄ねじ体30の材料強度を、係合用雄ねじ体110よりも強くしておけば、メンテナンス時等において係合用雄ねじ体110を強制的に緩めても、固定用雌ねじ体30の第一受部側凹凸164は損傷しないで済む。
次に、図40を参照して、本発明の第八実施形態に係るシール構造について説明する。なお、相対回転防止機構以外は第四実施形態と同様であるため、ここでは相対回転防止機構に限定して説明する。
図40(A)に示すように、相対回転防止機構40は、ピストン部材100に形成される雌ねじ穴となる第一係合孔191と、固定用雌ねじ体30に形成される第二係合孔181と、係合部材としての係合用ピン111と、付勢手段としてのバネ113と、解放用雄ねじ体115を備えて構成される。第二係合孔181は挿入孔であるが、ピストン部材100側に形成される大径孔181Aと、軸端側に形成されて大径孔181Aよりも小さい小径孔181Bから構成される。小径孔181Bの内周面には、解放用雄ねじ体115と螺合させるための解放用雌ねじ部181Cが形成される。
ピストン部材100に形成される第一係合孔191は非挿入孔であって、大径孔181Aと同一直径、かつ大径孔181Aよりも長く設定される。係合用ピン111は、第一係合孔191及び大径孔181Aの内径と略一致する直径の棒部材であって、かつ大径孔181Aよりも長く、第一係合孔191よりも短い。バネ113は、第一係合孔191の奥側(底部側)に収容されており、第一係合孔191内に収容される係合用ピン111を、固定用雌ねじ体30側に付勢する。
従って、第一係合孔191及び大径孔181Aの軸心が一致していない状態の場合、係合用ピン111は、バネ113の力に抗して第一係合孔191内に完全に収容される。一方、第一係合孔191及び大径孔181Aの軸心が一致すると、バネ113の付勢力によって、係合用ピン111の一部が大径孔181Aに進入して停止する。結果として、係合用ピン111が第一係合孔191と第二係合孔181(大径孔181A)に同時に挿入された状態となり、ピストン部材100と固定用雌ねじ体30の相対回転が規制される。
メンテナンス時等において係合用ピン111による規制を解除する際は、小径孔181Bに対して解放用雄ねじ体115を挿入して、解放用雌ねじ部181Cと螺合させる。解放用雄ねじ体115の軸部の長さは、固定用雌ねじ体30の軸方向長さと略一致していることから、図40(B)に示すように、解放用雄ねじ体115の先端によって係合用ピン111を第一係合孔191側に押し込むことができ、係合用ピン111による相対回転の規制を解除できる。従って、小径孔181Bに解放用雄ねじ体115を螺合させておけば、固定用雌ねじ体30を簡単に緩めることが可能となる。
なお、本第四乃至第八実施形態では、ピストン部材100が直動ロッド10の中央側、固定用雌ねじ体30が直動ロッド10の端部側に配置される構造を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図41に示すように、ピストン部材100が直動ロッド10の端部側、固定用雌ねじ体30が直動ロッド10の中央側に配置されていても良い。この場合、固定用雌ねじ体30の内側に、直径の大きい第一挿入孔(内側シール収容孔)35a1と、直径の小さい第二挿入孔(基本孔)35a2を同軸状に有するようにし、第二挿入孔35a2の内周面に第二雌ねじ部33を形成する。結果、第一挿入孔35a1と第二挿入孔35a2の境界の段部を、内側シール部材82の端面に当接させることで、作動流体のシール及び固定用雄ねじ体30の軸方向の位置決めが可能となる。なお、相対回転防止部40は、固定用雌ねじ体30側からピストン部材100に向かって、係合用雄ねじ体110を挿入することで行えば良いが、これとは反対に、ピストン部材100から固定用雌ねじ体30に向かって係合用雄ねじ体110を挿入する構造であっても良い。
更に本第四乃至第八実施形態では、直動ロッド10の雄ねじ部13の軸方向全体に亘って、第一雄ねじ螺旋溝14及び第二雄ねじ螺旋溝15が重畳して形成される場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。図42に示すように、例えば直動ロッド10の中央側にピストン部材100、端部側に固定用雌ねじ体30が配置される場合、ピストン部材100と螺合する第一雄ねじ螺旋溝14は雄ねじ部13の軸方向全域に必要となるが、固定用雌ねじ体30と螺合する第二雄ねじ螺旋溝15は、雄ねじ部13の軸端から開始して、固定用雌ねじ体30が螺合する領域近傍まで形成されていれば良い。即ち、本発明の雄ねじ部13は、第一雄ねじ螺旋溝14及び第二雄ねじ螺旋溝15が、一部領域に限定して重畳形成されている場合も含むものである。
また更に本第四乃至第八実施形態では、第一雄ねじ螺旋溝14と第二雄ねじ螺旋溝15のリード方向が異なる(右ねじ、左ねじとなる)場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図43に拡大して示すように、第一雄ねじ螺旋溝14及び第二雄ねじ螺旋溝15は、互いにねじ方向(リード方向)が同一で、互いにリード(リード角)が異なるものであってもよい。この場合、同図に示すように、第一雄ねじ螺旋溝14によって構成される螺旋状のねじ山13aにさらに螺旋溝を形成することにより、リードがL1(リード角がθ1)の第一雄ねじ螺旋溝14及びリードがL2(リード角がθ2)の第二雄ねじ螺旋溝15を、ねじ方向を揃えて形成することが出来る。
更にまた、直動ロッド10の雄ねじ部13は、第一雄ねじ螺旋溝14及び第二雄ねじ螺旋溝15が重複して形成されなくてもよい。例えば図44に示す雄ねじ部13のように、第一雄ねじ螺旋溝14を大径とし、第二雄ねじ螺旋溝15を小径とすることで、大径側の第一雄ねじ螺旋溝14を中央側、第二雄ねじ螺旋溝15を端部側に重ならない状態で配置することもできる。この場合、第一雄ねじ螺旋溝14にピストン部材10を螺合させる際に、第二雄ねじ螺旋溝15が直径方向に干渉しないようにし、第二雄ねじ螺旋溝15に固定用雌ねじ体30を螺合させる際に、第一雄ねじ螺旋溝14が軸方向に干渉しないようにすれば良い。
次に、図45を参照して、本発明の第九実施形態に係るシール構造について説明する。なお、相対回転防止機構は第四実施形態と同様であるため、ここでは相対回転防止機構の説明を省略しつつ、第四実施形態と異なる部分に限定して説明する。
本実施形態では、直動ロッド10の第一軸側段部11aに対して、熱可塑性樹脂或いは熱硬化性樹脂等の化学材料で形成される内側シール部材82が、金属製の拡張リング11を介して係合しており、この内側シール部材82自体が、ピストン部材100を軸方向に位置決めするストッパの役割を兼ねている。なお、内側シール部材82を第一軸側段部11aに直接係合させても良いが、その場合は、第一軸側段部11aの段差を大きくする必要がある。そこで本実施形態のように、直動ロッド10に直接形成される第一軸側段部11aの段差は小さくしておき、そこに金属製の拡張リング11を係合させることで、実質的な段差を大きくする。
一方、ピストン部材100の第一挿入孔100a1は、この内側シール部材82を収容する内側シール収容孔250となる。内側シール部材82は、外周面において軸端側に細くなるテーパ面82aが形成されており、ピストン部材100の内側シール収容孔250の内周面が、これに対向するテーパ面となっている。従って、直動ロッド10に対してピストン部材100を螺合させることで、内側シール部材82と内側シール収容孔250が互いに押し付け合う結果、高い密閉性を確保できる。なお、ここではピストン部材100側をテーパ面にする場合を例示したが、直動ロッド10側にテーパ面を形成するようにしても良い。
更に本実施形態では、ピストン部材100の外周面において、その途中から固定用雌ねじ体30側の端面まで連続する環状の外側シール嵌合部210が形成される。この外側シール嵌合部210は、その周面において、固定用雄ねじ体30側の端面まで連続する小径面201が形成される。小径面201は、同外周面よりも小径となり、そこにピストンリング90が設置される。ピストンリング90の軸方向寸法は、小径面201の軸方向寸法より多少大きく設定されており、ピストン部材100から固定用雌ねじ体30に突出する。固定用雌ねじ体30は、直径が小径面201よりも大きく設定されると共に、その外径が円形となっている。従って、固定用雌ねじ体30をピストン部材100側に締め付けると、固定用雌ねじ体30端面がピストンリング90に当接し、ピストンリング90が固定される。即ち、ピストンリング90はピストン部材100と固定用雌ねじ体30によって挟持される。
以上の結果、従来のようにシール材料を弾性変形させながら嵌合させる場合と比較して、内側シール部材82やピストンリング90を簡単に組み立てることが可能となる。それに伴い、内側シール部材82やピストンリング90の弾性変形を考慮する必要が無くなるので、高剛性、高耐摩耗性の材料を選定することが可能となる。なお、ここでは内側シール部材82をテーパ構造とした場合を例示したが、図46に示す応用例のように、ピストンリング90の内周面をテーパ面90a、90bにして、密封性能を高めることもできる。この場合は、ピストン部材100及び/又は固定用雌ねじ体30の外周面に、外側シール嵌合部210、39を形成し、それぞれの周面に、ピストンリング90の内周面をテーパ90a、90bと対向するテーパ面203、39aを形成すれば良い。ピストン部材100と固定用雌ねじ体30の挟持力を利用して、ピストンリング90のテーパ面90a、90bと、ピストン部材100及び/又は固定用雌ねじ体30のテーパ面203、39aを密着させることができる。
なお、第四乃至第九実施形態では、相対回転防止機構40において、係合用雄ねじ体110を固定用雌ねじ体30側からピストン部材100側に向かって挿入する場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、ピストン部材100側から係合用雄ねじ体110側に向かって挿入するようにしても良い。また、第四乃至第九実施形態では、相対回転防止機構40が、周方向に一か所配置される場合を例示したが、周方向の複数個所に配置されていても良い。
更にまた、上記実施形態では、ピストンの連結構造を油圧シリンダに適用する事例を紹介したが、本発明はこれに限定されず、水圧シリンダ、エアシリンダ、各種ダンパなど、ピストンに適宜の流体の圧力を付与したり、受圧させたりすることで所望の運動を得るあらゆる直動システムにも適用可能である。
また、本発明の実施例は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、本発明のピストン部材には、表裏面に貫通した小孔を設けてオリフィスとし、外部からの直動ロッドへの入力を、チューブ内部に収容した粘性流体の小孔通過流動によって減衰させるように作用させる構成とすることも出来る。