本発明の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置について添付図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の構成図である。
磁気共鳴イメージング装置20は、静磁場を形成する筒状の静磁場用磁石21、この静磁場用磁石21の内側に設けられたシムコイル22、傾斜磁場コイル23及びRFコイル24を備えている。
また、磁気共鳴イメージング装置20には、制御系25が備えられる。制御系25は、静磁場電源26、傾斜磁場電源27、シムコイル電源28、送信器29、受信器30、シーケンスコントローラ31及びコンピュータ32を具備している。制御系25の傾斜磁場電源27は、X軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27y及びZ軸傾斜磁場電源27zで構成される。また、コンピュータ32には、入力装置33、表示装置34、演算装置35及び記憶装置36が備えられる。
静磁場用磁石21は静磁場電源26と接続され、静磁場電源26から供給された電流により撮像領域に静磁場を形成させる機能を有する。尚、静磁場用磁石21は超伝導コイルで構成される場合が多く、励磁の際に静磁場電源26と接続されて電流が供給されるが、一旦励磁された後は非接続状態とされるのが一般的である。また、静磁場用磁石21を永久磁石で構成し、静磁場電源26が設けられない場合もある。
また、静磁場用磁石21の内側には、同軸上に筒状のシムコイル22が設けられる。シムコイル22はシムコイル電源28と接続され、シムコイル電源28からシムコイル22に電流が供給されて静磁場が均一化されるように構成される。
傾斜磁場コイル23は、X軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23y及びZ軸傾斜磁場コイル23zで構成され、静磁場用磁石21の内側において筒状に形成される。傾斜磁場コイル23の内側には寝台37が設けられて撮像領域とされ、寝台37には被検体Pがセットされる。RFコイル24にはガントリに内蔵されたRF信号の送受信用の全身用コイル(WBC: whole body coil)や寝台37や被検体P近傍に設けられるRF信号の受信用の局所コイルなどがある。
また、傾斜磁場コイル23は、傾斜磁場電源27と接続される。傾斜磁場コイル23のX軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23y及びZ軸傾斜磁場コイル23zはそれぞれ、傾斜磁場電源27のX軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27y及びZ軸傾斜磁場電源27zと接続される。
そして、X軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27y及びZ軸傾斜磁場電源27zからそれぞれX軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23y及びZ軸傾斜磁場コイル23zに供給された電流により、撮像領域にそれぞれX軸方向の傾斜磁場Gx、Y軸方向の傾斜磁場Gy、Z軸方向の傾斜磁場Gzを形成することができるように構成される。
RFコイル24は、送信器29及び受信器30の少なくとも一方と接続される。送信用のRFコイル24は、送信器29からRF信号を受けて被検体Pに送信する機能を有し、受信用のRFコイル24は、被検体P内部の原子核スピンのRF信号による励起に伴って発生したMR信号を受信して受信器30に与える機能を有する。
一方、制御系25のシーケンスコントローラ31は、傾斜磁場電源27、送信器29及び受信器30と接続される。シーケンスコントローラ31は傾斜磁場電源27、送信器29及び受信器30を駆動させるために必要な制御情報、例えば傾斜磁場電源27に印加すべきパルス電流の強度や印加時間、印加タイミング等の動作制御情報を記述したシーケンス情報を記憶する機能と、記憶した所定のシーケンスに従って傾斜磁場電源27、送信器29及び受信器30を駆動させることによりX軸傾斜磁場Gx、Y軸傾斜磁場Gy,Z軸傾斜磁場Gz及びRF信号を発生させる機能を有する。
また、シーケンスコントローラ31は、受信器30におけるMR信号の検波及びA/D (analog to digital)変換により得られた複素データである生データ(raw data)を受けてコンピュータ32に与えるように構成される。
このため、送信器29には、シーケンスコントローラ31から受けた制御情報に基づいてRF信号をRFコイル24に与える機能が備えられる一方、受信器30には、RFコイル24から受けたMR信号を検波して所要の信号処理を実行するとともにA/D変換することにより、デジタル化された複素データである生データを生成する機能と生成した生データをシーケンスコントローラ31に与える機能とが備えられる。
さらに、磁気共鳴イメージング装置20には、被検体PのECG信号を取得するECGユニット38が備えられる。ECGユニット38により取得されたECG信号はシーケンスコントローラ31を介してコンピュータ32に出力されるように構成される。
尚、拍動を心拍情報として表すECG信号の代わりに拍動を脈波情報として表す脈波同期(PPG: peripheral pulse gating)信号を取得することもできる。PPG信号は、例えば指先の脈波を光信号として検出した信号である。PPG信号を取得する場合には、PPG信号検出ユニットが設けられる。
ECG信号及びPPG信号等の生体信号は、同期イメージング用の同期信号として用いられる。従って、同期信号として用いることが可能であれば、呼吸同期信号や心音信号等のECG信号やPPG信号以外の生体信号を同期信号として用いることができる。以下、ECG信号を同期信号として取得する場合について述べる。
また、コンピュータ32の記憶装置36に保存されたプログラムを演算装置35で実行することにより、コンピュータ32には各種機能が備えられる。ただし、プログラムの少なくとも一部に代えて、各種機能を有する特定の回路を磁気共鳴イメージング装置20に設けてもよい。
図2は、図1に示すコンピュータ32の機能ブロック図である。
コンピュータ32の演算装置35は、記憶装置36に保存されたプログラムを実行することにより撮像条件設定部40及びデータ処理部41として機能する。また、記憶装置36は、k空間データ記憶部42及び画像データ記憶部43として機能する。撮像条件設定部40は、IRパルス設定部40A、飽和(SAT: saturation)パルス設定部40B、シーケンス設定部40C及びタイミング設定部40Dを有する。データ処理部41は、フィッティング部41A、T1分布画像生成部41B、反転/飽和効率補償部41C、反転時間(TI: inversion time)決定部41D、IR画像生成部41E及び表示処理部41Fを有する。尚、コンピュータ32も電子回路によって構成される。従って、コンピュータ32を回路の一種と捉えれば、撮像条件設定部40及びデータ処理部41は、回路によって構成することができると言うこともできる。
撮像条件設定部40は、パルスシーケンスを含む撮像条件を設定し、設定した撮像条件をシーケンスコントローラ31に出力する機能を有する。特に、撮像条件設定部40は、心臓を含む領域におけるT1データ、T1分布画像データ及びMR形態画像データ等のMR検査データを生成するためのMR信号をECG同期で収集するデータ収集条件を設定する機能を有している。MR検査データを生成するためのデータ収集条件としては、ECG信号のR波等の基準波をトリガとしてIRパルス又はSATパルス等のプレパルスの印加を伴ってMR信号の収集を繰返す条件とすることが好適である。
そのために、撮像条件設定部40には、IRパルスの印加を設定するIRパルス設定部40A、SATパルスの印加を設定するSATパルス設定部40B、IRパルス又はSATパルス等のプレパルスの印加を伴うパルスシーケンスを設定するシーケンス設定部40C及びタイミング設定部40Dが設けられる。
タイミング設定部40Dは、プレパルスの印加タイミング及びMR信号の収集タイミングを設定する機能を有している。プレパルスの印加タイミング及びMR信号の収集タイミングは、ECG同期のトリガからプレパルスの印加タイミングまでの期間(遅延時間)及びプレパルスの印加タイミングからMR信号の収集タイミングまでの期間として設定することができる。
尚、以降では、ECG同期のトリガとして用いられるECG信号の基準波をR波として説明する。もちろん、P波等の他の基準波をトリガとして用いることもできる。
図3は、T1分布画像データを取得するための第1の撮像条件を示すシーケンスチャートである。
図3において各横軸及び縦軸方向は時間を示す。図3に示すように、ECG信号のR波に同期してIRパルス又はSATパルス等のプレパルスを印加した後にMR信号を収集するデータ収集を、プレパルスの印加タイミングからMR信号の収集タイミングまでの期間ΔTを変化させながら複数回実行するデータ収集条件を設定することができる。
図3に示す例では、ECG信号からR波が検出される度に、R波から一定の遅延時間Tdelay後にプレパルスが印加される。従って、隣接するR波間TRRには、プレパルスが1回印加されることになる。そして、プレパルスの印加タイミングからMR信号の収集タイミングまでの期間ΔTを変えながらMR信号が繰返し収集される。
尚、図3に示す例では、1つのプレパルスの印加後に、つまり隣接するR波間TRRにおいて、k空間に充填すべき、必要な領域からの全てのMR信号が収集されているが、k空間を複数のセグメントに分割し、セグメントごとにMR信号を収集するようにしてもよい。尚、k空間を複数のセグメントに分割してMR信号を収集するデータ収集法は、セグメンテッドk−space法(segmented k−space method)と呼ばれる。
セグメンテッドk−space法によりMR信号が収集される場合には、全てのセグメントからのMR信号の収集が完了するまで、プレパルスの印加タイミングからMR信号の収集タイミングまでの期間ΔTが一定に設定されることになる。すなわち、プレパルスの印加タイミングからMR信号の収集タイミングまでの期間ΔTを一定にして、複数のセグメントから順次MR信号が収集される。そして、全てのセグメントからMR信号が収集されると、プレパルスの印加タイミングからMR信号の収集タイミングまでの期間ΔTが変更され、再び複数のセグメントから順次MR信号が収集される。
図3に示すデータ収集条件でMR信号を収集すると、互いに異なる複数の期間ΔTに対応する複数のk空間にそれぞれMR信号が充填されることになる。そして、複数の期間ΔTに対応するk空間データを、T1分布画像データを生成するための元データとして用いることができる。
図4は、図3に示すプレパルスとしてIRパルスを用いた例を示すシーケンスチャートである。
図4において各横軸は時間を、ECGはECG信号のR波の検出タイミングを、RFはIRパルスの印加タイミング及びMR信号のデータ収集タイミングを、最下部のグラフは縦磁化の時間変化を、それぞれ示す。
図4に示すように、繰返し検出される時系列のR波からそれぞれ一定の遅延時間Tdelay後にIRパルスを印加するデータ収集条件を設定することができる。IRパルスが印加されると、縦磁化が180度反転し、負の最小値となる。更に、IRパルスのTIを、異なるR波間TRRの間で互いに異なる値に設定することができる。IRパルスのTIは、例えば、TIの初期値TI1に、TIの変化量ΔTIを順次加算することによってTI2, TI3, TI4, ...に規則的に変化させることができる。各IRパルスの印加タイミングからTI(=TI1, TI2, TI3, ...)が経過すると、MR信号のデータ収集が期間Tacqに亘って実行される。
このため、TIの値に応じて縦磁化が回復したタイミングでMR信号が収集される。すなわち、TIの設定値に応じた強度を有するMR信号が順次収集される。そして、MR信号のデータ収集後から次のR波までの期間Trecovにおいて縦磁化が更に回復する。次のR波が検出されると、再び同様なIRパルスの印加を伴うMR信号のデータ収集が、異なるTIで実行される。このため、縦磁化は反転と回復を繰返すことになる。
図5は、図3に示すプレパルスとしてSATパルスを用いた例を示すシーケンスチャートである。
図5において各横軸は時間を、ECGはECG信号のR波の検出タイミングを、RFはSATパルスの印加タイミング及びMR信号のデータ収集タイミングを、最下部のグラフは縦磁化の時間変化を、それぞれ示す。
図5に示すように、プレパルスとしてSATパルスを用いる場合においても、IRパルスと同様にデータ収集条件を設定することができる。すなわち、R波の検出タイミングから一定の遅延時間Tdelay後にSATパルスを印加するデータ収集条件を設定することができる。SATパルスが印加されると、縦磁化がゼロとなる。更に、SATパルスの印加タイミングからMR信号のデータ収集タイミングまでの期間TSATを、異なるR波間TRRの間で互いに異なる値に設定することができる。期間TSATについても例えば、期間TSATの初期値TSAT1に、期間TSATの変化量ΔTSATを順次加算することによってTSAT2, TSAT3, TSAT4, ...に規則的に変化させることができる。
但し、R波からのIRパルス又はSATパルス等のプレパルスの印加タイミングの遅延時間Tdelayを一定にしつつプレパルスの印加タイミングからMR信号のデータ収集タイミングまでの期間ΔTを変化させると、R波からMR信号のデータ収集タイミングまでの期間が変化する。従って、MR信号のデータ収集タイミングにおける心時相も変化することになる。その結果、厳密には心臓の形状が異なる状態で複数のMR信号が収集されることになる。
一方、T1分布画像データの画素値となるT1値は、同一とみなせる心筋上の位置における信号の強度変化に基づいて算出されることが精度を良好にする観点から理想的である。そこで、ECG信号のR波からIRパルス又はSATパルスまでの遅延時間TdelayをR波間TRRにおけるデータ収集ごとに変えることによって、複数のMR信号を予め決定した同一とみなせる心時相で収集することができる。
図6は、T1分布画像データを取得するための第2の撮像条件を示すシーケンスチャートである。
図6において各横軸及び縦軸方向は時間を示す。図6に示すように、ECG信号のR波に同期してIRパルス又はSATパルス等のプレパルスを印加した後にMR信号を収集するデータ収集を、プレパルスの印加タイミングからMR信号の収集タイミングまでの期間ΔTを変化させながら複数回実行するデータ収集条件を設定することができる。
但し、図3に示す例と異なり、R波からIRパルス又はSATパルスまでの遅延時間Tdelayを、異なるR波間TRRの間で互いに異なる値に設定することができる。そうすると、プレパルスの印加タイミングからMR信号のデータ収集タイミングまでの期間ΔTを変化させても、R波からMR信号のデータ収集タイミングまでの期間を一定にすることができる。その結果、複数のMR信号の収集タイミングにおける心時相が略同じ心時相となり、複数のMR信号を同一とみなせる心筋上の位置から収集することが可能となる。これにより、良好な精度で各空間位置におけるT1値を計算することが可能となる。
図7は、図6に示すプレパルスとしてIRパルスを用いた例を示すシーケンスチャートである。
図7において各横軸は時間を、ECGはECG信号のR波の検出タイミングを、RFはIRパルスの印加タイミング及びMR信号のデータ収集タイミングを、最下部のグラフは縦磁化の時間変化を、それぞれ示す。
図7に示すように、プレパルスとしてIRパルスを用いることができる。また、図4に示す例と同様に、IRパルスのTIを、TIの初期値TI1に、TIの変化量ΔTIを順次加算することによってTI2, TI3, TI4, ...に規則的に変化させることができる。この場合、R波からIRパルスの印加タイミングまでの遅延時間を、遅延時間の初期値TdelayからTIの変化量ΔTIだけ順次減算した期間とすれば良い。つまり、TIの初期値からの変化量を遅延時間の初期値Tdelayから減算した期間を遅延時間とすれば良い。
このようなIRパルスの印加タイミング及びMR信号のデータ収集タイミングの設定により、R波から各MR信号のデータ収集タイミングまでの期間を、遅延時間の初期値TdelayとTIの初期値TI1との和に固定することができる。すなわち、各MR信号を同一の心時相で収集することができる。
図7に示す他の条件については、図4に示す条件と同様である。尚、隣接するIRパルスの間隔TIR_IRは一定となる。
図8は、図6に示すプレパルスとしてSATパルスを用いた例を示すシーケンスチャートである。
図8において各横軸は時間を、ECGはECG信号のR波の検出タイミングを、RFはSATパルスの印加タイミング及びMR信号のデータ収集タイミングを、最下部のグラフは縦磁化の時間変化を、それぞれ示す。
図8に示すように、プレパルスとしてSATパルスを用いる場合においても、IRパルスと同様にデータ収集条件を設定することができる。すなわち、SATパルスの印加タイミングからMR信号のデータ収集タイミングまでの期間TSATの初期値TSAT1からの変化量がキャンセルされるように調整された、R波からの遅延時間後にSATパルスを印加するデータ収集条件を設定することができる。
このようなIRパルスの印加タイミング及びMR信号のデータ収集タイミングの設定により、R波から各MR信号のデータ収集タイミングまでの期間を、遅延時間の初期値Tdelayと期間TSATの初期値TSAT1との和に固定することができる。すなわち、各MR信号を同一の心時相で収集することができる。
図8に示す他の条件については、図5に示す条件と同様である。尚、隣接するSATパルスの間隔TSAT_SATは一定となる。
以上のように、静磁場用磁石21、シムコイル22、傾斜磁場コイル23及びRFコイル24等のハードウェアと、コンピュータ32の撮像条件設定部40が協働することによって、磁気共鳴イメージング装置20には、所望のデータ収集条件に従ってIRパルス又はSATパルスを印加した後に被検体PからMR信号を収集するデータ収集手段としての機能が備えられる。例えば、上述したようにTI等の期間を変えながらIRパルス又はSATパルスを複数回印加することによってT1データ、T1分布画像データ及びMR形態画像データ等のMR検査データの生成用のMR信号を収集することができる。或いは、あるTIでIRパルスを印加することによってIR法による心臓の血流イメージング用のMR信号を収集することもできる。但し、同様なデータ収集手段としての機能が磁気共鳴イメージング装置20に備えられれば、他の構成要素によってデータ収集手段を構成してもよい。
次にデータ処理部41の機能について説明する。
データ処理部41は、シーケンスコントローラ31から出力されたMRデータを取得してk空間データ記憶部42に形成されたk空間にk空間データとして配置する機能、収集されたMRデータに対するフーリエ変換(FT: Fourier transform)を含む画像再構成処理及び画像処理等のデータ処理によって様々な画像データを生成し、生成した画像データを画像データ記憶部43に書き込む機能、画像データ記憶部43から読み込んだ画像データを表示装置34に表示させる機能を有する。
特に、データ処理部41は、ECG信号に同期したプレパルスの印加を伴うMR信号のデータ収集を複数回実行することによって収集された複数のMR信号又は複数のMR信号に対応する複数の画像信号に基づくカーブフィッティングにより得られる曲線の時定数を求めることによってT1データをMR検査データとして生成する機能を有している。特に、T1データを画素位置ごとに求めれば、MR検査データとしてT1分布画像データを生成することができる。更に、データ処理部41は、カーブフィッティングにより得られる曲線に基づいて、IR法による心臓の血流イメージングに適切なTIを決定する機能を有している。
フィッティング部41Aは、複数のMR信号又は複数の画像信号に基づくカーブフィッティングを行うことによりMR信号又は画像信号の時相方向における変化を近似した曲線の式を求める機能を有する。すなわち、カーブフィッティングは、IRパルス又はSATパルスの印加を伴って収集された時相方向における複数のMR信号又は複数フレームのMR画像データを対象データとして実行することができる。
MR画像データを対象データとしてカーブフィッティングを実行する場合には、FTを含む画像再構成処理によってIRパルス又はSATパルスの印加タイミングからMR信号の収集タイミングまでの経過時間ごとにMR画像データが再構成される。その結果、IRパルス又はSATパルスの印加タイミングからMR信号の収集タイミングまでの異なる経過時間に対応する時系列の複数フレームのMR画像データが生成される。そして、時系列の複数フレームのMR画像データの全ての画素位置についてMR画像データを構成する画像信号を用いたカーブフィッティングを実行することができる。或いは、心筋の所望の断面領域等を関心領域(ROI: region of interest)として設定し、時系列の複数フレームのMR画像データのROI内における画素位置についてMR画像データを構成する画像信号を用いたカーブフィッティングを実行することができる。
カーブフィッティングの対象領域となるROIは、時系列の複数フレームのMR画像データのうち任意の1フレーム又は複数フレームのMR画像データを参照画像データとして手動で、又は自動的に設定することができる。カーブフィッティングの対象領域となるROIを手動で設定する場合には、任意の1フレームのMR画像を参照画像として表示装置34に表示させ、入力装置33の操作によって範囲を指定することによりROIを設定することができる。一方、カーブフィッティングの対象領域となるROIを自動的に設定する場合には、任意の1フレーム又は複数フレームのMR画像データの画素値に対する閾値処理等を含む公知の輪郭抽出処理によって心筋が占める領域等の診断対象領域を2次元(2D: two dimensional)又は3次元(3D: three dimensional)のROIとして自動設定することができる。
図9は、カーブフィッティングによって求められる曲線の一例を示す図である。
図9において、縦軸は画像信号の強度を示し、横軸は画像信号を収集するために印加されたIRパルスのTIを示す。ECG信号に同期してTIを変化させながらIRパルスを断続的に繰返し印加することによって収集された複数の画像データの画像信号の強度を、画素位置ごとにプロットすると、実線マークで示すような離散的なプロットデータIabsが得られる。
IRイメージングでは、通常、実部(Real part)と虚部(Imaginary part)からなる複素画像信号の絶対値が画像データとして生成される。また、画像信号の生成に用いられるMR信号は、180°IRパルスの印加後においてT1緩和により回復する縦磁化に応じた強度となる。従って、値が絶対値である画像信号のプロットデータIabsは、縦磁化の回復曲線の絶対値を表す不連続な曲線と同様な曲線に沿うデータとなる。つまり、画像信号のプロットデータIabsは、図9に示すように、あるTIにおいて正の最小値となり、TIが小さい程及び大きい程、大きくなる。
従って、縦磁化の回復曲線に沿った実線で示すような連続的な画像信号回復曲線Icurveをカーブフィッティングによって求めるためには、絶対値をとることによって正側に反転した画像信号を、元の負側に反転させることが必要である。そこで、複素画像信号の実部の符号によって極性反転の有無を判断することができる。しかし、画像信号の位相がシフトしていると、画像信号の正確な符号及び本来の極性を正確に判定することが困難である。
そこで、フィッティング部41Aにより、T1緩和によって十分に強度が回復し、安定した画像信号の位相φが計算される。例えば、閾値Thを超える強度を有する任意の画像信号を位相φの計算対象とすることができる。但し、位相φの計算精度を向上させるためには、最も長いTIに対応する画像信号を位相φの計算対象とすることが好適である。
そして、フィッティング部41Aにより位相φを用いた画像信号の位相補正が行われる。具体的には、TIごとの画像信号にexp(−iφ)が乗じられる。これにより、位相補正後の画像信号が得られる。次に、位相補正後において実部の符号が負値となる画像信号が負側にプロットされる。そうすると、図9において点線マークで示すような極性が補正された離散的な補正プロットデータIcorが得られる。これにより、極性が反転された補正プロットデータIcor及び極性が反転されなかったプロットデータIabsで構成される特異点のない離散データが極性補正後における複数の画像信号として得られる。
次に、T1値をパラメータとした回復曲線を用いて最小二乗法による離散データのカーブフィッティングが行われる。これにより、離散データから連続データである画像信号回復曲線Icurveの式が算出される。また、カーブフィッティングの結果として、画像信号回復曲線Icurveの時定数に相当するT1値が求められる。尚、画像信号回復曲線Icurveの値がゼロとなるときのTIは、IRイメージング用の最適なTIoptとなる。
以上の図9に示すカーブフィッティングの手法は、IRパルスの印加タイミングからMR信号の収集タイミングまでの期間を変化させながらデータ収集を複数回実行することによって収集された複数のMR信号に対応する複数の複素画像信号に対して位相補正を行い、位相補正後における複数の絶対値画像信号の極性補正によって得られる複数の画像信号を用いてカーブフィッティングを行うものである。但し、不連続な絶対値画像信号の曲線を用いてカーブフィッティングを行うようにしてもよい。この場合、計算式が複雑になるが位相補正処理及び極性の反転処理が不要となる。
また、位相補正処理を行わずに、絶対値画像信号を用いて簡易にカーブフィッティングを実行することもできる。
図10は、カーブフィッティングによって求められる曲線の別の一例を示す図である。
図10において、縦軸は画像信号の強度を示し、横軸は画像信号を収集するために印加されたIRパルスのTIを示す。上述のように、画素位置ごとの複素画像信号の絶対値をプロットすると、実線マークで示す離散的な絶対値のプロットデータIabsが得られる。
次に、離散的なプロットデータIabsの最小値Iminが求められる。そして、最小値Iminに対応するTIよりも短いTIに対応する絶対値のプロットデータIabsの極性を全て負値に反転させて、最小二乗法によるカーブフィッティングが行われる。これにより、連続データとして点線で示す第1の画像信号回復曲線Icurve1の式が算出される。
次に、最小値Iminの極性も負値に反転させて、最小二乗法によるカーブフィッティングが行われる。これにより、連続データとして一点鎖線で示す第2の画像信号回復曲線Icurve2の式が算出される。
そして、第1及び第2の画像信号回復曲線Icurve1 ,Icurve2のうちカーブフィッティングの近似の程度が良好な画像信号回復曲線がカーブフィッティングの結果として選択される。カーブフィッティングの近似の程度を表す指標としては、例えば離散データと回復曲線との間における残差の二乗和を用いることができる。すなわち、第1及び第2の画像信号回復曲線Icurve1 ,Icurve2とこれらの曲線をそれぞれ求めるために用いた各離散データとの間における残差の二乗和が最小となる曲線がイメージング用のTIoptの計算用の画像信号回復曲線Icurveに決定される。
このように、複数のTIに対応する複数の絶対値画像信号の最小値Iminに対応するTIよりも短いTIに対応する絶対値画像信号の各極性を反転させて得られる第1の複数の画像信号を用いたカーブフィッティングにより第1の画像信号回復曲線Icurve1を求める一方、最小値Iminに対応する絶対値画像信号の極性及び最小値Iminに対応するTIよりも短いTIに対応する絶対値画像信号の各極性を反転させて得られる第2の複数の画像信号を用いたカーブフィッティングにより第2の画像信号回復曲線Icurve2を求め、カーブフィッティングの近似の程度が最も良好な画像信号回復曲線を採用する処理方法によって、簡易に画像信号回復曲線Icurve及び画像信号回復曲線Icurveに対応するT1を計算することができる。
更に、離散的なプロットデータIabsの最小値Iminに隣接するTIが長い側の絶対値のプロットデータIabsの極性を負値に反転させたカーブフィッティングを行ってもよい。この場合、図10に示すように、連続データとして二点鎖線で示す第3の画像信号回復曲線Icurve3の式が算出される。そして、第1、第2及び第3の画像信号回復曲線Icurve1 ,Icurve2 ,Icurve3のうちカーブフィッティングの近似の程度が良好な画像信号回復曲線がカーブフィッティングの結果として選択される。第3の画像信号回復曲線Icurve3を求めるようにすれば、拍動などの影響でデータにばらつきが生じたとしてもロバストな処理を行うことができる。
つまり、図9に示す方法は、画像信号回復曲線Icurveの真の最小値が不明であることから位相補正を行うことによって負値に反転すべき絶対値の離散データを決定するものである。これに対して、図10に示す方法は、真の最小値付近となる離散データの最小値及び最小値に隣接する離散データを反転させた場合と反転させない場合におけるカーブフィッティングの誤差を比較することによって負値に反転すべき絶対値の離散データを決定するものである。
図10に示す方法によれば、煩雑な位相補正処理を行うことなく、確からしい信号回復曲線及び信号回復曲線に対応するT1を求めることができる。また、図10に示す方法において、第3の画像信号回復曲線Icurve3の式を算出しない場合には、一層データ処理を簡易にすることができる。
一方、複素画像信号の絶対値ではなく、実部信号を用いてカーブフィッティングを行うこともできる。その場合には、フィッティング部41Aにより、十分にT1が回復した後の複素画像信号の位相φが計算される。そして、計算した複素画像信号の位相φを用いて全てのTIに対応する複素画像信号の位相が補正される。この位相補正の結果、虚部信号がゼロで実部信号のみ値を有する画像信号が得られる。これにより、位相補正後における画像信号の実部信号を用いたカーブフィッティングを行うことが可能となる。
カーブフィッティングの対象領域となるROIは、カーブフィッティングの対象となるMR信号の収集前に所望の参照画像データを参照して予め設定しておくこともできる。そのような場合には、必ずしもカーブフィッティングの対象となる画像信号に基づいてROIを設定するための参照画像を表示させる必要がない。このため、カーブフィッティングの対象領域となるROIが事前に設定されている場合や、全ての画素位置がカーブフィッティングの対象領域となる場合において、画像信号の実部信号を用いたカーブフィッティングが処理の簡易化の観点から有効である。
更に、カーブフィッティングの対象領域となるROIが、カーブフィッティングの対象となるMR信号の収集前に設定されている場合には、ROIの局所励起によって収集されたMR信号を用いてカーブフィッティングを行うこともできる。その場合には、フィッティング部41Aにより、十分にT1が回復した後の複素MR信号の位相φが計算される。そして、計算した複素MR信号の位相φを用いて全てのTIに対応する複素MR信号の位相が補正される。この位相補正の結果、虚部信号がゼロで実部信号のみ値を有するMR信号が得られる。これにより、局所励起によって収集された、位相補正後におけるMR信号の実部信号を用いたカーブフィッティングを行うことが可能となる。
図9及び図10を参照して説明したカーブフィッティングは、IRパルスの印加を伴って画像信号が収集される場合の例であるが、SATパルスの印加を伴って画像信号が収集される場合においても同様なカーブフィッティングを行うことができる。但し、SATパルスの印加を伴ってMR信号及び画像信号が収集される場合には、複素MR信号及び複素画像信号の実部が時相に依らず正の値となる。このため、位相補正後における絶対値画像信号の極性補正が不要となる。
このように、局所励起によって収集された複数のMR信号又は複数の画像信号に位相補正を行い、局所励起によって収集された位相補正後の複数のMR信号の実部信号、位相補正後における複数の絶対値画像信号又は位相補正後における複数の画像信号の実部信号を用いてカーブフィッティングを行うことができる。換言すれば、カーブフィッティングに先だってカーブフィッティングの対象となるMR信号又は画像信号の位相補正並びに必要な極性の反転処理が実行される。
IRパルスの印加を伴って収集された信号に基づくカーブフィッティングには式(1)を用いることができる。
fIR(t) = AIR{1−2exp(−t/T1)} (1)
但し式(1)においてfIR(t)は曲線を表す関数を、AIRはIRパルスの印加直後における縦磁化の絶対値を、tは時間又は時相を、T1は時定数であるT1を、それぞれ示す。
但し、図4又は図7に示すようにIRパルスが繰返し印加される場合には、2回目以降に印加されるIRパルスの印加直前において縦磁化が完全に回復しない場合が多い。その場合、厳密には、2回目以降に印加されるIRパルスの印加直後における初期の縦磁化は、最初に印加されるIRパルスの印加直後における初期の縦磁化よりも小さくなる。IRパルスの印加直後における初期の縦磁化の減少量は、隣接するR波間TRRの長さが短い程大きくなると考えられる。
そこで、隣接するR波間TRRの長さが短いことに起因して生じる初期の縦磁化の減少が考慮されるように、例えば式(2)を用いてカーブフィッティングを行うことが精度の向上に繋がる。
fIR(t)
= AIR{1−2exp(−t/T1)+exp(−TRR/T1)} (2)
但し式(2)においてfIR(t)は曲線を表す関数を、AIRはIRパルスの印加直後における縦磁化の絶対値を、tは時間又は時相を、T1は時定数であるT1を、TRRは隣接するR波の間隔を、それぞれ示す。
更に、IRパルスの印加による縦磁化の反転効率(インバージョンエフィシェンシー)は、厳密には100%ではない。すなわち、IRパルスを印加すると、180度に反転効率を乗じた角度だけ縦磁化が傾斜する。このため、IRパルスの反転効率に依存して、初期の縦磁化が減少することになる。そこで、IRパルスの反転効率に起因して生じる初期の縦磁化の減少が考慮されるように、例えば式(3)を用いてカーブフィッティングを行うことが一層の精度の向上に繋がる。
fIR(t)
= AIR{1−2exp(−t/T1)+BIRexp(−TRR/T1)} (3)
但し式(3)においてfIR(t)は曲線を表す関数を、AIRはIRパルスの印加直後における縦磁化の絶対値を、tは時間又は時相を、T1は時定数であるT1を、BIRはIRパルスの反転効率を、TRRは隣接するR波の間隔を、それぞれ示す。
つまり、T1の他、初期の縦磁化を表す第1のパラメータAIRに加えて、IRパルスの反転効率を表す第2のパラメータBIRを含む式を用いてカーブフィッティングを実行することができる。式(2)は式(3)における第2のパラメータBIRの値を1とした場合の式に相当する。式(3)を用いてカーブフィッティングを行えば、より高精度にT1を算出することが可能となる。
尚、隣接するR波の間隔TRRは、ECGユニット38により取得されるECG信号から検出される複数のR波間の間隔TRRの平均値として予め取得しておくことができる。経験的には、隣接するR波間の間隔TRRを20回程度測定して平均値を求めれば典型値として隣接するR波間の間隔TRRを求めることができる。
また、カーブフィッティングの対象となるMR信号のデータ収集に先だって、ECG信号の隣接するR波間TRRにおける縦磁化の回復量の変動を低減させるための所定回数のIRパルスの印加を実行することが縦磁化の回復量の安定化に繋がる。このため、イメージングシーケンスに先立つ所定回数のIRパルスの印加をIRパルス設定部40A、シーケンス設定部40C及びタイミング設定部40Dにおいて設定することができる。
一方、SATパルスの印加を伴って収集された信号に基づくカーブフィッティングには式(4)を用いることができる。
fSAT(t) = ASAT{1−exp(−t/T1)} (4)
但し式(4)においてfSAT(t)は曲線を表す関数を、ASATはSATパルスの印加後における縦磁化の回復による漸近値を、tは時間又は時相を、T1は時定数であるT1を、それぞれ示す。
SATパルスにも飽和効率(サチュレーションエフィシェンシー)が存在する。すなわち、SATパルスを印加すると、縦磁化は厳密にはゼロとならず、飽和効率に応じた値となる。このため、SATパルスの飽和効率に依存して、初期の縦磁化が変化することになる。そこで、SATパルスの飽和効率に起因して生じる初期の縦磁化の変化が考慮されるように、例えば式(5)を用いてカーブフィッティングを行うことが一層の精度の向上に繋がる。
fSAT(t) = ASAT{1−BSATexp(−t/T1)} (5)
但し式(5)においてfSAT(t)は曲線を表す関数を、ASATはSATパルスの印加後における縦磁化の回復による漸近値を、BSATはSATパルスの飽和効率を、tは時間又は時相を、T1は時定数であるT1を、それぞれ示す。つまり、T1の他、縦磁化の漸近値を表す第1のパラメータASATに加えて、SATパルスの飽和効率を表す第2のパラメータBSATを含む式を用いてカーブフィッティングを実行することができる。式(4)は式(5)における第2のパラメータBSATの値を1とした場合の式に相当する。式(5)を用いてカーブフィッティングを行えば、より高精度にT1を算出することが可能となる。
尚、IRパルス又はSATパルスの印加を伴って収集された信号に基づくカーブフィッティングの式としては、上述の式に限らず様々なバリエーションが考えられる。例えば、IRパルスの印加を伴って収集された信号に基づくカーブフィッティングの式として式(1)の代わりに式(6)を用いることができる。また、式(2)又は式(3)の代わりに式(7)、式(8)、式(9)又は式(10)を用いることができる。
fIR(t) = A1−B1exp(−t/T1 *) (6)
fIR(t) = A1−B1exp(−t/T1 *)+exp(−TRR/T1 *)
(7)
fIR(t) = A1{1−B1exp(−t/T1 *)+exp(−TRR/T1 *)}
(8)
fIR(t) = A1{1−B1exp(−t/T1)}+exp(−TRR/T1)
(9)
fIR(t) = A1−B1exp(−t/T1)+C1exp(−TRR/T1)
(10)
但し、式(6)、式(7)及び式(8)におけるT1 *は、式(11)を満たす時定数であり、A1、B1及びC1はそれぞれフィッティングによって求められる係数である。
T1 = T1 *(B1/A1−1) (11)
式(6)から式(10)は、それぞれ式(1)、式(2)又は式(3)に含まれる指数関数の項に係数を乗じることによってフィッティング式の任意性を向上させた式に相当する。
一方、SATパルスの印加を伴って収集された信号に基づくカーブフィッティングの式についても同様に様々なバリエーションが考えられる。例えば、隣接するR波間TRRの長さをパラメータとする補正を式(12)によって行うことができる。
fSAT(t) = A2{1−exp(−t/T1)}+B2exp(−TRR/T1)
(12)
このように、IRパルスの反転効率に起因する不完全な縦磁化の反転を補償するための式又はSATパルスの飽和効率に起因する不完全な縦磁化の飽和を補償するための式を用いたカーブフィッティングを行うことができる。加えて、ECG信号の周期の変化に起因してIRパルス又はSATパルスの印加間隔にも変化が生じることから、IRパルス又はSATパルスの印加間隔に応じて回復する縦磁化の程度に起因する、IRパルス又はSATパルスの印加直後における縦磁化の変化を補正するための式を用いてカーブフィッティングを実行することもできる。
尚、SATパルスの印加直後には、縦磁化がゼロとなるため、SATパルスを印加する場合には、縦磁化の不完全な回復に起因するカーブフィッティングの誤差を小さくすることができる。このため、R波の間隔TRRの変動等によるカーブフィッティングの精度の低下を回避することができる。一方、IRパルスを印加する場合には、カーブフィッティングに用いられるプロット点が正極側のみならず負極側にも存在することになる。このため、カーブフィッティングにより安定的に曲線を求めることができる。
カーブフィッティングにより高精度かつ安定的に曲線を求めるためには、MR信号のサンプリング数を十分に確保することも重要である。しかしながら、縦磁化の回復が遅い場合には、隣接するR波の間隔TRR内において収集されたMR信号のみでは精度良くカーブフィッティングを行うことが困難となる恐れがある。そこで、ECG信号の連続した複数心拍ごとにデータ収集を実行するようにしても良い。
図11は、連続する2心拍の期間にデータ収集を行う場合のデータ収集条件を示すシーケンスチャートである。
図11において各横軸は時間を、ECGはECG信号のR波の検出タイミングを、RFはIRパルスの印加タイミング及びMR信号のデータ収集タイミングを、最下部のグラフは縦磁化の時間変化を、それぞれ示す。
図11のグラフに一点鎖線で表示されたT1緩和曲線のように回復時間が長い場合には、2RR間でIRパルスの印加とMR信号の収集を行うようにすることができる。換言すれば、IRパルスのTIの可変設定範囲を隣接するR波の間隔TRRよりも長く設定することができる。これにより、T1値に応じたカーブフィッティングのための十分なサンプリング点を確保することができる。尚、息止め期間を考慮すれば、TIの可変設定範囲を2心拍(2TRR)以内とすることが現実的である。
図12は、カーブフィッティング用のMR信号のサンプリング間隔を不等間隔とした例を示す図である。
図12において各横軸は時間を、ECGはECG信号のR波の検出タイミングを、RFはIRパルスの印加タイミングを、最下部のグラフは縦磁化の時間変化及びMR信号のサンプリング点を、それぞれ示す。
T1緩和曲線は、上述したような指数関数で表される。従って、縦磁化の変化量は次第に減少する。そこで、カーブフィッティング用のMR信号のサンプリング間隔を不等間隔とすれば、カーブフィッティングの精度を維持しつつデータのサンプリング数を低減することができる。具体的には、IRパルスの印加タイミングからMR信号の収集タイミングまでの期間を変化させながら複数回データ収集を実行し、かつIRパルスの印加タイミングからMR信号の収集タイミングまでの期間が長くなる程、当該期間の変化の間隔が長くなるようにデータ収集条件を設定することができる。
カーブフィッティング用のMR信号のサンプリング間隔、すなわちIRパルスの印加タイミングからMR信号の収集タイミングまでの期間の変化の間隔は、撮像対象に応じて設定することができる。MR信号の適切なサンプリング間隔は、撮像対象となる物質に応じた間隔となる。そこで、心臓や腹部等の撮像部位或いは正常心筋組織や異常心筋組織等の撮像対象となる組織に応じて適切なサンプリング間隔を設定することができる。
MR信号のサンプリング間隔は、入力装置33の操作によってマニュアルで指定しても良いし、予め撮像対象ごとに適切なサンプリング間隔を決定しておき、データ収集時に選択できるようにプリセットしてもよい。すなわち、撮像対象ごとに適切なサンプリング間隔をテーブルとして記憶装置に記憶しておくことができる。また、全てのMR信号のサンプリング間隔を不等間隔とせずに、複数のMR信号で構成されるMR信号列間でサンプリング間隔が不等間隔となるようにサンプリング間隔を設定してもよい。その場合、サンプリング間隔が段階的に長くなるように設定されることになる。
図11に示す複数心拍に亘るデータ収集及び図12に示すサンプリング間隔を可変とするデータ収集は、SATパルスをプレパルスとして用いる場合においても同様に実行することができる。また、図11及び図12に示す例では、図3に示す例と同様に、R波からIRパルスの印加タイミングまでの遅延時間Tdelayを一定としているが、図6に示すように、遅延時間Tdelayを可変としてデータ収集時相を一定としてもよい。尚、データ収集時相を一定とする場合には、データ収集タイミングが同一の心時相となり、IRパルスの印加タイミングからデータ収集タイミングまでの期間が変化することになる。
図11及び図12に示すようなプレパルスの印加タイミング及びMR信号の収集タイミングについてもタイミング設定部40Dにおいて設定することができる。従って、タイミング設定部40Dには、IRパルスの印加タイミングからMR信号の収集タイミングまでの期間の変化の間隔を撮像対象に応じて設定する間隔設定手段としての機能も備えられる。
T1分布画像生成部41Bは、カーブフィッティングにより算出される画素位置ごとのT1を画素値とするT1分布画像データを生成する機能を有する。つまり、T1分布画像生成部41Bは、T1データを各画素位置にマッピングすることによってT1分布画像データを生成する機能を有している。生成されたT1分布画像データは、診断用のMR画像データとして表示装置34に表示させることができる。T1マップとして表示されるT1分布画像は、T1値に対応するカラースケールを用いてカラーで表示させることが効果的である。T1分布画像を参照すれば、T1値が小さい部位として梗塞部位を視認することが可能である。
反転/飽和効率補償部41Cは、上述したIRパルスの反転効率又はSATパルスの飽和効率に起因する誤差を補償する機能を有する。IRパルスの反転効率又はSATパルスの飽和効率に起因する誤差の補償は、カーブフィッティングによってT1データ等の時定数データを求める場合であれば、上述したようにIRパルスの反転効率又はSATパルスの飽和効率に相当する係数を設定することによって行うことができる。すなわち、IRパルスの反転効率又はSATパルスの飽和効率を補償する式を用いたカーブフィッティングによって、補償された時定数データを求めることができる。
また、MR検査データとしてT1分布画像データ等のMR画像データを生成する場合であれば、IRパルスの反転効率又はSATパルスの飽和効率をパラメータとして含む式に基づいて求められた画素値を用いることによってコントラストが調整されたMR画像データを生成することができる。例えば、T1分布画像データを生成する場合であれば、IRパルスの反転効率に起因する不完全な縦磁化の反転を補償するフィッティング式に基づいて求められた画素位置ごとのT1データを画素値とすることによって、補償されたT1分布画像データを生成することができる。また、ある特定の時相におけるMR形態画像データを生成する場合であれば、当該時相における画素位置ごとの画像信号を求めるための式として、IRパルスの反転効率又はSATパルスの飽和効率をパラメータとして含む式を用いればよい。
このように、IRパルスの反転効率に起因する不完全な縦磁化の反転を補償するための処理又はSATパルスの飽和効率に起因する不完全な縦磁化の飽和を補償するための処理を含むデータ処理によってMR信号に基づくMR検査データを生成することができる。具体的には、IRパルスの反転効率に起因する不完全な縦磁化の反転を補償するための処理又はSATパルスの飽和効率に起因する不完全な縦磁化の飽和を補償するための処理として、コントラストを調整する処理を実行することができる。これにより、補償されたMR画像データをMR検査データとして生成することができる。
或いは、IRパルスの反転効率に起因する不完全な縦磁化の反転を補償するための式又はSATパルスの飽和効率に起因する不完全な縦磁化の飽和を補償するための式を用いたカーブフィッティングを実行することができる。これにより、補償された時定数データをMR検査データとして生成することができる。尚、補償された画素位置ごとの時定数データを用いて時定数分布画像データを生成すれば、コントラストが調整された補償後のMR画像データとなる。
TI決定部41Dは、カーブフィッティングにより算出される画素位置ごとの曲線に基づいてIRイメージング用のTIを決定する機能を有する。具体的には、カーブフィッティングにより求められる曲線の値がゼロとなるときのIRパルスの印加タイミングからMR信号の収集タイミングまでの期間に相当するTIを、IR法による心臓の血流イメージング用のTIとして設定することができる。設定されたIRイメージング用のTIは、TI決定部41Dからタイミング設定部40Dに通知される。そして、タイミング設定部40Dにおいて、TI決定部41Dにより決定されたTIが、IR法による心臓の血流イメージング用の撮像パラメータとして設定される。
TIを変化させながらIRパルスを印加して異なるTIに対応するMR信号の収集を行った後に別途、適切なTIを設定してIRイメージングを行う場合には、異なるTIに対応するMR信号の収集を行うスキャンが、IRイメージング用の適切なTIを決定するためのプレスキャンを兼ねることになる。
IRイメージング用の適切なTIは、IR法による画像化領域に対して設定される代表的な1つの値となる。これに対して、カーブフィッティングにより多数の画素位置における曲線が求められる。このため、IRイメージング用のTIの決定に用いる曲線を選択するための単一又は複数の画素位置が決定される。
IRイメージング用のTIを決定するための画素位置は、任意の参照画像データを用いてROIとして指定することができる。カーブフィッティング用のTIごとのMR信号が収集された後にIRイメージング用のTIの決定用のROIを設定する場合には、任意のTIに対応するMR画像データを参照画像データとして、IRイメージング用のTIの決定用のROIを設定することができる。
図13はIRイメージング用のTIの決定用のROIを設定した例を示す図である。
図13に示すように、あるTIに対応する心臓の短軸画像データを参照画像データとして用いることができる。心臓の短軸断面は、心筋で囲まれた領域に左室及び右室が形成される構造となる。
そして、ユーザが表示装置34に表示された心臓の短軸画像を参照しつつ入力装置33を操作することによって心筋断面上の任意の位置に単一又は複数のROIを設定することができる。IRイメージングスキャン用の最適なTIを精度良く求めるためにはROIの数が多い方が好適である。図13は、4つのROIを設定した例を示している。
設定されたROIに複数の画素位置が含まれている場合には、平均値等の画素位置を代表する曲線に基づいて曲線の値がゼロとなるときのTIを算出することができる。一方、点としてROIが設定された場合には、対応する画素位置における曲線の値がゼロとなるときのTIを算出することができる。
また、図13に例示されるように複数のROIが設定された場合には、各ROIに対応するTIに基づいてIRイメージングスキャン用のTIを決定することが必要となる。そこで、例えば、複数のROIに対応する複数のTIの平均値をIRイメージングスキャン用のTIに決定することができる。
また、心筋組織に対応する曲線のゼロクロス点に相当するTIよりも短いTIで遅延造影(DE: Delayed Enhancement)イメージングを行うと、心筋上に黒い線上のアーチファクトが現れることが知られている。そこで、DEイメージングを行う場合には、複数のROIに対応する複数のTIのうち最も長いTIをIRイメージングスキャン用のTIに決定するようにしても良い。これにより、TIの長さが不十分であることに起因するアーチファクトを抑制することができる。
IR画像生成部41Eは、撮像条件設定部40において設定されたTIでIRパルスを印加することによって収集されたMR信号に基づいて、IR画像データを生成する機能を有する。IR画像データとしては、DE画像データの他、非造影血流画像データが挙げられる。DE画像データを生成する場合には、IRイメージングスキャンに先だって被検体Pに造影剤が注入される。尚、造影剤としてガドリニウムを用いたDE画像データは、LGE(Late Gadolinium Enhancement)画像データとも呼ばれる。
表示処理部41Fは、データ処理部41の各構成要素において取得された画像データ等の検査情報に、必要な表示処理を施して表示装置34に表示させる機能を有する。
図14は、T1分布画像の表示例を示す図である。
図14に示すように心筋の断面を含むROIを、輪郭抽出処理によって自動的に、或いは入力装置33の操作によって手動で、設定することができる。図14に示す例では、右室(RV: right ventricle)と左室(LV: left ventricle)を形成する心筋断面のうちLVを形成する心筋断面がROIとして設定されている。尚、ROIを設定するためのMR画像には、あるTIで収集されたIR画像を用いることができる。
そして、心筋を含むROI内における画素位置ごとに曲線の時定数を求めることによって生成されたROIのT1分布画像データを表示装置34に表示させることができる。また、入力装置33の操作によってROI内における画素位置が指定された場合には、指定された画素位置におけるT1を求めるための曲線を表示装置34に表示させることもできる。図14に示す例では、カーソルで指定された画素位置に対応する、IRパルスの印加後における縦磁化の回復曲線が表示されている。このため、安定的なカーブに基づいてT1が算出されたか否かを容易に視認することができる。
また、図14に示すようにT1を求めるためのカーブフィッティングに用いる数式を選択できるようにすることもできる。このようなグラフィカル・ユーザー・インターフェース(GUI: graphical user interface)によってカーブフィッティングに用いられる曲線の安定性に応じた精度でカーブフィッティングを実行することができる。また、容易にT1分布の再計算を行うこともできる。図14に示す例では、IRパルスが印加された場合におけるカーブフィッティングに用いられる式(3)が選択されている。
表示装置34には、上述したようなデータ解析結果に加えて、対応する撮像条件や撮像条件の設定画面を表示させることもできる。撮像条件については、撮像条件設定部40から表示装置34に出力させることができる。図14に示す例では、プレパルスとしてIRパルス又はSATパルスを選択するためのラジオボタンと、TIの初期値TI1又は期間TSATの初期値TSAT1、TIの変化量ΔTI又は期間TSATの変化量ΔTSAT、TIの変化量ΔTI又は期間TSATの変化量ΔTSATのインクリメント数Nを設定する欄が表示されている。
次に磁気共鳴イメージング装置20の動作及び作用について説明する。ここでは、プレパルスとしてIRパルスを印加する場合を例に説明する。
図15は、図1に示す磁気共鳴イメージング装置20の動作の一例を示すフローチャートである。
まず予め寝台37に被検体Pがセットされ、静磁場電源26により励磁された静磁場用磁石21(超伝導磁石)の撮像領域に静磁場が形成される。また、シムコイル電源28からシムコイル22に電流が供給されて撮像領域に形成された静磁場が均一化される。
次にステップS1において、ECG信号に同期してTIを変えながら繰返しIRパルスを印加するイメージングスキャンが実行される。より具体的には、撮影条件設定部40において、図3から図8に例示されるようなIRシーケンスがデータ収集条件として設定される。尚、図11に示すサンプリング条件や図12に示すサンプリング条件を設定することもできる。
そして、撮像条件設定部40は、IRシーケンスを含む撮像条件をシーケンスコントローラ31に出力する。そうすると、シーケンスコントローラ31は、撮像条件に従って傾斜磁場電源27、送信器29及び受信器30を駆動させることにより被検体Pがセットされた撮像領域に傾斜磁場を形成させるとともに、RFコイル24からRF信号を発生させる。
このため、被検体Pの内部における磁気共鳴により生じたMR信号が、RFコイル24により受信されて受信器30に与えられる。受信器30は、RFコイル24からMR信号を受けて、デジタルデータのMR信号である生データを生成する。受信器30は、生成したMRデータをシーケンスコントローラ31に与え、シーケンスコントローラ31は、MRデータをデータ処理部41に出力する。そうすると、データ処理部41は、MRデータをk空間データ記憶部42に形成されたk空間にk空間データとして配置する。
その結果、k空間データ記憶部42には、異なる複数のTIに対応するk空間データセットが保存される。
次にステップS2において、T1分布画像データの生成対象となるROIが設定される。そのために、IR画像生成部41Eは、指定されたTIに対応するk空間データセットにFTを含む画像再構成処理を施す。これにより、ROIを設定するための心筋断面等の形態が描出された参照画像データが生成される。
そして、フィッティング部41Aは、参照画像データに基づく輪郭抽出処理によって自動的に抽出された心筋の断面等の領域を自動的にROIとして設定する。或いは、参照画像データを参照した入力装置33の操作によって手動でROIを設定することもできる。尚、ROIを設定せずに画像化領域全体をT1分布画像データの生成対象としても良い。換言すれば、画像化領域全体をT1分布画像データの生成対象となるROIとして設定しても良い。
次にステップS3において、フィッティング部41Aは、ROI内の各画素位置における複数のTIに対応する画像信号に基づいてカーブフィッティングを行う。IRパルスを印加して画像信号を収集した場合におけるカーブフィッティングには、式(1)、式(2)又は式(3)等を用いることができる。この結果、ROI内の各画素位置における曲線の時定数としてT1を求めることができる。
特に、IRパルスの反転効率をパラメータとして含む式を用いてカーブフィッティングを行えば、IRパルスの反転効率に起因する不完全な縦磁化の反転の影響が補償されたT1を求めることができる。また、隣接するR波間の間隔TRRをパラメータとして含む式を用いてカーブフィッティングを行えば、IRパルスの印加直前における縦磁化の不完全な回復による影響が補償されたT1を求めることができる。
次にステップS4において、T1分布画像生成部41Bは、ROI内の各画素位置におけるT1を画素値とするT1分布画像データを生成する。T1分布画像データは、T1に対応する輝度値を割当てた画像データの他、T1に対応するカラースケールを用いたカラーコーディングによって生成することもできる。T1分布画像データをカラー画像データとして生成すれば、疾患部位の観察を容易にすることができる。
T1分布画像生成部41Bにおいて生成されたT1分布画像データは、図14に例示されるように表示装置34に表示される。このため、ユーザは、表示装置34に表示された心筋組織のT1分布画像を観察して診断を行うことができる。T1分布画像の観察によって十分な診断を行うことができる場合には、検査を終了することができる。
一方、続いて心臓のDEイメージングスキャンを実行することもできる。その場合には、入力装置33からDEイメージングスキャンの実行指示が撮像条件設定部40に入力される。このため、ステップS5の判定において撮像条件設定部40は、DEイメージングスキャンが実行されると判定する。
そして、ステップS6において、TI決定部41Dにより、DEイメージングスキャン用の撮像パラメータとして設定すべきTIの決定用の単一又は複数のROIが設定される。TIの決定用のROIも、図13に例示されるように心筋断面が描出された任意の画像データを参照画像データとして設定することができる。具体例として、T1分布画像データの生成用に収集された複数のTIに対応する複数フレームのIR画像データから任意の1フレームのIR画像データを参照画像データとして選択することができる。
次にステップS7において、TI決定部41Dは、カーブフィッティングにより得られた、ROI内の画素位置を代表する位置における曲線の値がゼロとなる時のTIを算出する。このため、複数のROIが設定されている場合には、複数のROIに対応する複数のTIが算出される。その場合には、複数のTIに基づいてDEイメージングスキャン用の1つのTIが決定される。例えば、複数のTIの平均値や複数のTIのうちの最も長いTIを、DEイメージングスキャン用のTIとして決定することができる。そして、TI決定部41Dにおいて決定されたTIは、撮像条件設定部40のタイミング設定部40Dに通知される。
次にステップS8において、TI決定部41Dにおいて決定されたTIを撮像パラメータとするDEイメージングスキャンがECG信号に同期して実行される。DEイメージングスキャンによって収集されたMR信号は、k空間データ記憶部42に形成されたk空間にk空間データとして配置される。
次にステップS9において、IR画像生成部41Eは、k空間データ記憶部42に保存されたk空間データに基づく画像再構成処理によってDE画像データを生成する。生成されたDE画像データは、表示装置34に表示される。このため、ユーザは、心臓のT1分布画像に加え、DE画像を観察して診断を行うことができる。
尚、図15には、プレパルスとしてIRパルスが印加される場合が示されているがプレパルスとしてSATパルスを印加することもできる。また、T1分布画像データの生成用のROI及びTI決定用のROIの少なくとも一方を、ステップS1におけるIRイメージングスキャンに先だって設定しておくこともできる。
つまり以上のような磁気共鳴イメージング装置20は、カーブフィッティングによりT1を求めるための時系列のMR信号を、単一のプレパルスの印加後に連続収集せずに、ECG信号に同期して繰返し印加される複数のプレパルスの印加後に、すなわち異なるR波間TRRに順次収集するようにしたものである。また、プレパルスの効率やプレパルスの印加直前における縦磁化の不完全な回復による誤差を補償できるようにしたものである。更に、複数のプレパルスの印加後にそれぞれ収集されるMR信号を、同一とみなせる心時相で収集できるようにしたものである。
このため、磁気共鳴イメージング装置20によれば、カーブフィッティング用の時系列のMR信号を、適切な条件で収集することができる。その結果、より高精度かつ安定的な曲線を取得することができる。そして、より良好な精度で心臓のT1分布像を取得することができる。また、IR遅延造影イメージングに適切なTIを精度良く求めることもできる。
以上、特定の実施形態について記載したが、記載された実施形態は一例に過ぎず、発明の範囲を限定するものではない。ここに記載された新規な方法及び装置は、様々な他の様式で具現化することができる。また、ここに記載された方法及び装置の様式において、発明の要旨から逸脱しない範囲で、種々の省略、置換及び変更を行うことができる。添付された請求の範囲及びその均等物は、発明の範囲及び要旨に包含されているものとして、そのような種々の様式及び変形例を含んでいる。