JP4220592B2 - Mri装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、被検体内の原子核スピンの磁気共鳴現象を利用した磁気共鳴イメージング(MRI)装置に係り、とくに、反転パルス(inversion pulse )や飽和パルス(saturation pulse)を印加して原子核スピンをT1緩和(縦緩和)させる途中においてRFパルスを印加しながらエコーデ−タを収集するようにしたT1強調イメージングを行うMRI装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気共鳴イメージングは、静磁場中に置かれた被検体の原子核スピンをラーモア周波数の高周波信号で磁気的に励起し、この励起に伴って発生するエコー信号などのMR信号から画像を再構成する手法である。
【0003】
この磁気共鳴イメージングの一つに、反転パルスや飽和パルスを印加して原子核スピンをT1緩和(縦緩和)させる途中において、RFパルスを印加しながらエコーデ−タを収集するようにしたT1強調イメージングが知られている。このT1強調イメージング法は、Time of Flight(TOF)法に基づくMRアンギオグラフィや、IR(反転回復)パルスにより血流それ自体をラベリング(labe- ling)して組織血流を画像化するASL(Arterial Spin Labeling)法に基づくMRアンギオグラフィ(例えば、「MRM 34:878-887 (1995), Kenneth K.Kwong et al., "MR Perfusion Studies with T1-weighted Echo Planar Imaging"」参 照)に用いられている。
【0004】
このようなイメージング法においては、単位時間当たりの空間分解能やSNRを向上させることが非常に重要である。
【0005】
従来、このT1強調イメージングを高速に行うには、高速FE法(turbo Flash 法とも呼ばれる)、EPI(Echo Planar Imaging )法、高速SE法などが用いられている。
【0006】
この内、高速FE法は、それほど強力な傾斜磁場システムを必要としない、比較的普及タイプのMRI装置においても容易に実施できるイメージング法である。この高速FE法によれば、IRパルスを印加した後、スピンをT1回復をさせながら、TI(Inversion Time)時間後に低フリップ角度のRFパルス(フリップパルス)を繰り返し時間TR毎に印加し、この各励起に伴うエコー信号を収集してk空間(周波数空間)に配置することでデ−タ収集される。このため、通常の撮像条件の場合、エコー信号の強度は定常状態になるまで増大または減衰し続ける。極力、一定の信号強度で収集することが望ましいので、ダミーのフリップパルスをいくつか印加する、いわゆる空打ちを行って定常状態に近付けてから、エコー信号収集用のフリップパルスを印加するなどの対策を講じている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した空打ちの手法をもってしても、血液や水のように、比較的、T1値の長い組織の場合、定常状態になるまでに印加するダミーのパルスを多く必要とするのみならず、たとえ定常状態になっても、SNRやT1コントラストが低下することが多かった。つまり、フリップパルスを印加しながら定常状態にするには時間が掛かり、位相エンコードを掛けない状態の場合でも、k空間上で一定の信号強度を得ることが困難で、画像のぼけや空間周波数毎のコントラストの違いを生じていた。
【0008】
本発明は、上述した従来技術の問題に鑑みてなされたもので、TOF−MRAやASL法のように、ほぼ単一のT1値を有する組織イメージング法において、単位時間当たりのT1コントラストおよびSNRを向上させ、かつ、単位時間当たりの画像分解能を向上させたT1強調像を得ることを、その目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明では、その1つの態様として、反転パルスまたは飽和パルスによりT1回復させる途中で印加するフリップパルスの印加直前の縦磁化の大きさMzが、そのフリップパルスを順次印加していっても殆ど不変となるように設定した撮像パラメータを使ってイメージングが行われる。定性的には、T1回復によるスピンの縦磁化Mzとフリップパルスの印加によるその縦磁化Mzの減衰とが常にほぼ均衡するように、パルスシーケンスのパラメータ(撮像パラメータ)を本スキャン前に設定する。この設定法としては、代表的には、与えられた撮像条件(T1値など)から演算による求める手法と、フリップパルスのフリップ角を振りながらプレスキャンを行って、信号強度が時間と伴に一定となるようにフリップ角などの撮像パラメータを決定する手法がある。
【0010】
具体的には、本発明に係るMRI装置は、被検体に印加する反転パルスまたは飽和パルスと、このパルスにより前記被検体のスピンをT1回復させる途中で印加する複数のフリップパルスと、この各フリップパルスに応答して発生するエコー信号を収集するための傾斜磁場パルスとを含むパルスシーケンスを実行するようにしたMRI装置であり、前記各フリップパルスの印加直前における前記スピンの縦磁化の強度がほぼ一定となるように設定された前記フリップパルスのフリップ角に基づき前記パルスシーケンスを実行するシーケンス実行手段を備えたことを特徴とする。
【0011】
一例として、前記パルスシーケンスは、前記反転パルスを含む高速フィールドエコー法に従うパルスシーケンスである。
【0012】
また、前記シーケンス実行手段は、測定部位の組織のT1値に基づき前記フリップパルスのフリップ角を予め演算する手段を備えてもよい。
【0013】
さらに、前記フリップパルスのフリップ角を制御するために位相エンコード傾斜磁場を印加しない状態でプレスキャンを実行してエコー信号を得るプレスキャン実行手段と、このプレスキャンの実行に伴うエコー信号から前記フリップパルスのフリップ角の最適値を決めるパラメータ最適値決定手段とを備えてもよい。この場合、好適には、前記プレスキャン実行手段は、前記エコー信号の強度を複数の時刻で得る手段であり、前記パラメータ最適値決定手段は、前記複数の時刻における前記エコー信号の大小関係に基づき前記最適値を決める手段である。
【0014】
さらに好適には、前記パルスシーケンスはASL(Arterial Spin Labeling)法のパルスシーケンスとして組み込まれているとともに、前記プレスキャン実行手段および前記パラメータ最適値決定手段のそれぞれは前記ASL法に関わる血液のラベリング前後の差分データに対して実行させることである。
【0015】
また、別の例として、前記パルスシーケンスは、前記反転パルスを含む高速スピンエコー法に従うパルスシーケンスであってもよい。
【0016】
さらに、前記パルスシーケンスは、MRアンギオグラフィまたはASL(Arterial Spin Labeling)法のパルスシーケンスとして組み込まれていてもよい。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0028】
第1の実施の形態
第1の実施形態を図1〜図9を参照して説明する。この実施形態に係るMRI(磁気共鳴イメージング)装置は、撮像対象の組織のT1値が既知の場合に好適に実施できる撮像法を採用しており、装置内部で予め演算によって撮像パラメータを最適に決定することを特徴とする。
【0029】
このMRI装置の概略構成を図1に示す。このMRI装置は、被検体Pを載せる寝台部と、静磁場を発生させる静磁場発生部と、静磁場に位置情報を付加するための傾斜磁場発生部と、高周波信号を送受信する送受信部と、システム全体のコントロール及び画像再構成を担う制御・演算部とを備えている。
【0030】
静磁場発生部は、例えば超電導方式の磁石1と、この磁石1に電流を供給する静磁場電源2とを備え、被検体Pが遊挿される円筒状の開口部(診断用空間)の軸方向(Z軸方向)に静磁場H0 を発生させる。なお、この磁石部にはシムコイル14が設けられている。このシムコイル14には、後述するコントローラの制御下で、シムコイル電源15から静磁場均一化のための電流が供給される。寝台部は、被検体Pを載せた天板を磁石1の開口部に退避可能に挿入できる。
【0031】
傾斜磁場発生部は、磁石1に組み込まれた傾斜磁場コイルユニット3を備える。この傾斜磁場コイルユニット3は、互いに直交するX、Y、Z軸方向の傾斜磁場を発生させるための3組(種類)のx,y,zコイル3x〜3zを備える。傾斜磁場部はさらに、x,y,zコイル3x〜3zに電流を供給する傾斜磁場電源4を備える。この傾斜磁場電源4は、後述するシーケンサ5の制御のもと、x,y,zコイル3x〜3zに傾斜磁場を発生させるためのパルス電流を供給する。
【0032】
傾斜磁場電源4からx,y,zコイル3x〜3zに供給されるパルス電流を制御することにより、物理軸としての3軸であるX,Y,Z方向の傾斜磁場を合成して、論理軸としてのスライス方向傾斜磁場Gs、位相エンコード方向傾斜磁場Ge、および読出し方向(周波数エンコード方向)傾斜磁場Grの各方向を任意に設定・変更することができる。スライス方向、位相エンコード方向、および読出し方向の各傾斜磁場は静磁場H0 に重畳される。
【0033】
送受信部は、磁石1内の撮影空間にて被検体Pの近傍に配設されるRFコイル7と、このコイル7に接続された送信器8T及び受信器8Rとを備える。この送信器8T及び受信器8Rは、後述するシーケンサ5の制御のもとで、磁気共鳴(MR)現象を誘起させるためのラーモア周波数のRF電流パルスをRFコイル7に供給する一方、RFコイル7が受信した高周波のMR信号を受信し、各種の信号処理を施して、対応するデジタル信号を形成するようになっている。
【0034】
さらに、制御・演算部は、シーケンサ(シーケンスコントローラとも呼ばれる)5、ホスト計算機6、演算ユニット10、記憶ユニット11、表示器12、および入力器13を備える。この内、ホスト計算機6は、記憶したソフトウエア手順により、シーケンサ5にスキャンシーケンス情報を指令するとともに、シーケンサ5を含む装置全体の動作を統括する機能を有する。
【0035】
シーケンサ5は、CPUおよびメモリを備えており、ホスト計算機6から送られてきたパルスシーケンス情報を記憶し、この情報にしたがって傾斜磁場電源4、送信器8T、受信器8Rの一連の動作を制御する。ここで、パルスシーケンス情報とは、一連のパルスシーケンスにしたがって傾斜磁場電源4、送信器8Rおよび受信器8Tを動作させるために必要な全ての情報であり、例えばx,y,zコイル3x〜3zに印加するパルス電流の強度、印加時間、印加タイミングなどに関する情報を含む。
【0036】
また、シーケンサ5は、受信器8RからのMR信号のデジタルデータを入力して、再構成処理を行う演算ユニット10にそのデータを転送する。演算ユニット10は、フーリエ空間(k空間または周波数空間とも呼ばれる)への生データ(原データとも呼ばれる)の配置、および、生データを実空間画像に再構成するための2次元または3次元のフーリエ変換処理を行うようになっている。また、演算ユニット10は、3次元画像データから2次元画像を生成するためにMIP(最大値投影)処理なども実施できるようになっている。
【0037】
記憶ユニット11は、生データおよび再構成画像データのみならず、演算処理が施された画像データなどを保管することができる。表示器12は画像を表示する。また、術者は入力器13を介して所望のスキャン条件、スキャンシーケンス、画像処理法などの必要情報をホスト計算機6に入力できるようになっている。
【0038】
また制御・演算部の要素として、音声発生器16、および、ECGセンサ17、ECGユニット18が設けられている。音声発生器16は、シーケンサ5またはホスト計算機6からの指示に応答して、患者(被検体)に息止めのための音声メッセージを発生する。また、ECGセンサ17およびECGユニット18は患者の心電図信号を検出してシーケンサ5に出力するようになっており、これにより心電同期スキャンを行うことができる。
【0039】
ここで、本発明に係る撮像パラメータの演算による最適化手法の原理を説明する。IRパルスを用いる高速FE法を一例として説明する。
【0040】
図2(a),(b)に、IRパルスを用いるT1強調の高速FE法のパルスシーケンスのRFパルス部分と、RFパルスの印加に対応した縦磁化の強度Mzの時間変化曲線とを模式的に示す。同図に示す如く、被検体の原子核スピンは時刻t=0でIRパルスを印加した後からT1回復し初め、t=TIでフリップ角=αの最初のRFパルス(以下、フリップパルスと呼ぶ)が印加される。このフリップパルスの印加に応答してエコー時間TE後に所定の位相エンコード量でエコー信号が収集される。最初のフリップパルスの印加から繰り返し時間TR後には第2番目のフリップパルスが同じく印加され、エコー時間TE後に位相エンコード量を変えてエコー信号が収集される。以下、同様にフリップパルスの印加およびエコー信号の収集が繰り返され、画像再構成用のk空間全体がエコーデ−タで埋められる。
【0041】
このフリップパルスの断続的な印加に伴う縦磁化強度Mzは定性的には同図
(b)ように変化する。フリップパルスのフリップ角度は、ある値α(通常、α<90゜)に設定されるため、フリップパルスの印加直後もMz=0にはならない。この後も、次のフリップパルスの印加直前までT1回復が続けられ、縦磁化Mzがある強度になった時点で次のフリップパルスが印加される。
【0042】
第k番目のフリップパルスが印加されるときの印加直前および印加直後の縦磁化強度Mzは、定量的には以下のように表される。
【0043】
初期磁化Mz=M0 =1、IRパルスのフリップ角=180゜、IRパルス印加直前の縦磁化をai (i=1,2,…)(180°パルスにより磁化は完全に反転するものとする)、第k番目のフリップパルスの印加直前の縦磁化Mz=Ck-、その印加直後の縦磁化Mz=Ck+とする。
【0044】
第1番目(第1ショット)のIRパルスの印加後における第1番目のフリップパルスの印加直前の縦磁化Mz=C1-は、
【数1】
C1-=1−(1+a1 )exp (−TI/T1)
となり(ここでは、第1番目なのでa1 =1となる)、第1番目のフリップパルスの印加直後の縦磁化Mz=C1+は、
【数2】
C1+=C1-・cosα
となる。第2番目のフリップパルスの印加直前の縦磁化Mz=C2-は、
【数3】
C2-=1−(1−C1+)exp (−TI/T1)
となり、第1番目のフリップパルスの印加直後の縦磁化Mz=C2+は、
【数4】
C2+=C2-・cosα
となる。これを繰り返し、第n番目のフリップパルスの印加直前の縦磁化Mz=Cn-は、
【数5】
Cn-=1−{1−C(n-1)+}exp (−TI/T1)
となり、第n番目のフリップパルスの印加直後の縦磁化Mz=Cn+は、
【数6】
Cn+=Cn-・cosα
となる。第2番目(第2ショット)のIRパルスを印加する直前の縦磁化Mz=a2 は、
【数7】
のように順次表される。
【0045】
したがって、第k番目(k=1,2,…,n)のフリップパルスの印加直前の縦磁化Mzおよびその印加直後の横磁化Mxyは、
【数8】
と表される。
【0046】
図3〜図6に、a1 =1および静磁場1.5Tまたは0.5Tにおける血液のT1値を仮定して与えた撮像パラメータの下でのフリップパルスの縦磁化Mzおよび横磁化Mxyの変化のシミュレーション結果を示す。なお、これらの図における縦軸は任意単位である。
【0047】
撮像パラメータを適当に与える従来の撮像法のもとでは、例えば、図3または図4に示すように、縦磁化Mzの強度はフリップパルスの印加が進むにつれて変化する。
【0048】
そこで、高速FE法において、フリップパルスを印加し続けても縦磁化Mzの強度が一定となる条件を考える。
【0049】
この条件は、フリップパルスを印加する直前の縦磁化Mz=Ck-がその1つ前のフリップパルスを印加する直前の縦磁化Mzと同じになる条件、すなわち、
【数9】
Ck-=C(k-1)- ……(3)
を満たせばよい。
【0050】
すなわち、
【数10】
C1-=C2-=C ……(4)
となるFA(=α)の条件を求めればよい。
【0051】
【数11】
ゆえに、
【数12】
(6)式に(4)式を代入して、
【数13】
となるから、
【数14】
この式に、C=(5)式を代入して、
【数15】
が得られる。ここで、ai はi番目のIRパルスの印加直前の縦磁化Mzである。ただし、この式は、0≦α≦90°の範囲のαに対してのみ成立する。
【0052】
なお、上記(7)式において、縦磁化Mzの縦緩和時間T1に対する変化が最大となる条件TI=T1では、
【数16】
となる。ここで、eは自然対数の底である。
【0053】
上記(7)式が、フリップパルスを印加し続けた場合でも、縦磁化Mzが変動しない条件を与える。つまり、cosαは、IRパルス印加直前の縦磁化Mz=a,反転時間t,T1,TRの関数
【数17】
cosα=f(a,t,T1,TR)
となる。
【0054】
そこで、縦磁化Mzがフリップパルス毎に一定となる条件、つまり上記(7)式を満たすようにフリップ角度を決めると、図5で表すように、縦磁化Mzが一定になる。定性的には、T1回復に因る縦磁化Mzの増加と各フリップパルス印加に因るその磁化Mzの減衰とを釣り合う条件に設定できる。
【0055】
なお、上記(7)式でa=1とすれば、最初のIRパルス(第1ショット)に拠るT1回復過程における場合であるが、回復時間Trecov を十分長くとると、2番目以降のIRパルスに拠るT1回復過程においても同様に成立する。
【0056】
また、回復時間Trecov を十分大きく採らない場合でも、前記(1)式で表される縦磁化Mz=a2をa1に代入して順次、a3,a4,…とほぼ定常状態になるまで求め、その縦磁化Mz=aの値を(7)式に代入して新たなαを求めればよい。必要ならば、この新たなαを用いて再度、1ショット目からa2,a3,…を計算し、定常になったaの値を(7)式に代入して、αを求め直すようにしてもよい。
【0057】
本発明者が行ったシミュレーションに拠ると、縦磁化Mxy(つまり上述のai)は第2〜3ショット目のIRパルスでほぼ定常になることが分かった。つまり、図5の撮影条件の元で回復時間Trecov =1.5secとしてショット#(=i)に対してIRパルス印加直前の縦磁化Mzの大きさaiを図12に示す。これによると、aiは第2ショット目以降、ほぼ一定になることが分かる。このaの大きさを0.8として再び(7)式に代入してαを求めると、α=9.7、すなわち約10°となる。
【0058】
なお、フリップ角αの値は厳密に(7)式を満たす必要はなく、その許容範囲は±10%程度である。
【0059】
図3〜図5は静磁場強度が1.5Tのときを示すが、これよりも静磁場強度が低い0.5Tの条件で縦磁化Mzを一定にするシミュレーション例を図6に示す。このように、静磁場強度=1.5Tのときには、TR=9ms、フリップ角FA(=α)=11.6゜、TI=1200ms(TI=T1の条件とする):静磁場強度=0.5Tのときには、TR=9ms、フリップ角FA=12.7゜、TI=1000ms(TI=T1の条件とする)と、現実的な撮像パラメータで縦磁場強度を一定にできることが分かる。エコー時間TEは、縦磁化Mzには無関係で、横磁化Mxyでも無視しているが、通常のMRI装置の場合、TE=3msec前後と短く設定できるので、T2(T2*)減衰は最小にすることができる。
【0060】
次に、この実施形態の動作を説明する。
【0061】
いま、IRパルスを用いた高速FE法に基づくASL法により組織血流をイメージングする場合であって、診断(測定)部位の組織のT1値が既知の場合を説明する。
【0062】
シーケンサ5は、イメージング前に、ホスト計算機6から反転時間TI,繰り返し時間TR,回復時間Trecov の情報を少なくとも含む撮像条件を読み込む(図7ステップS1)。シーケンサ5は次いで、その撮像条件を用いて前述した(7)式に基づく演算を行って、フリップパルスのフリップ角度FA(α)の最適値を求める。これにより、撮像パラメータの最適値が取り込まれる(ステップS2)。このように準備が済むと、シーケンサ5は、その撮像パラメータのパルスシーケンスに基づきエコーデータの収集(本スキャン)を実行する(ステップS3)。
【0063】
いま、一例として、図8に示すように、IR(反転)パルス付きの高速FE法のパルスシーケンスでASL法に基づく組織血流(組織内血流)のイメージングが指令されたとする。なお、このパルスシーケンスに伴う撮像パラメータ:反転時間TI、繰り返し時間TR、フリップパルスのフリップ角FA(α)、回復時間Trecov は前述した(7)式に基づく演算により、各フリップパルス印加直前の縦磁化Mzが一定値になるように、予め最適値に設定されている。
【0064】
シーケンサ5は、1回目はスライス方向の傾斜磁場Gsを掛けない状態でIRパルス(180°RFパルス)を印加して、被検体の撮像部位の原子核スピンに縦緩和(T1緩和)を起こさせる。このT1緩和による磁化回復が行われている間、最適値の反転時間TIだけ待機する。
【0065】
この後、反転時間TIが経過すると、最適値に設定されている低フリップ角度αの最初のフリップパルスがスライス方向傾斜磁場Gsと共に印加される。このスライス方向傾斜磁場Gsはその後、スピンリフェーズのために極性反転されて印加される一方で、これに並行して読出し方向傾斜磁場Grが所定方向に印加される。この読出し方向傾斜磁場Grはその後、エコー信号読出しのために極性反転され、所定期間の間、周波数エンコード用として印加される。最初のフリップパルス印加のときには、ここでは、位相エンコード方向傾斜磁場Ge=0に設定されている。
【0066】
最初のフリップパルスP1から最適値のエコー時間TEに近付くにつれて、撮像部位から最初のエコー信号が発生してくる。このエコー信号はRFコイル7で検出され後、受信器8Rに送られる。受信器8Rにて、エコー信号は増幅、中間周波変換、位相検波、低周波増幅などの所定の受信処理に付された後、A/D変換される。このデジタル量のエコーデータはシーケンサ5を通して演算ユニット10に転送され、仮想的に形成されたk空間の、その位相エンコード量に対応した列位置に沿って配置される(図9参照)。
【0067】
なお、この実施形態では、零エンコードを境に低周波のエンコードからデータを収集・配置する“centric phase encoding”法を例に採っているが、必ずしもそのような収集・配置法に限定されるものではない。
【0068】
この最初のエコー信号の収集が終わる時刻になると、読出し方向傾斜磁場Grの印加も終わる。
【0069】
最初のフリップパルスP1の印加から、最適値に設定されて繰返し時間TRが経過すると、2番目のフリップパルスP2がスライス方向傾斜磁場Gsと共に印加される。このフリップパルスP2の印加についても、上述と同様にしてエコー信号が収集される。この一連のフリップパルスの印加およびエコーデータ収集は、位相エンコード回数分(例えば128回)繰り返して実行される。この2回目以降のフリップパルス印加時には、エコー信号収集前に、各回毎に変えた波形面積の位相エンコード方向傾斜磁場Geのパルスを印加する。また、エコー信号の収集後には、その位相エンコードパルスのスピンに対する位相の影響を打ち消すために、逆向き極性の傾斜磁場Geのパルスが印加される。
【0070】
なお、このような巻き戻し用の傾斜磁場を必要に応じて読出し方向、および/または、スライス方向に印加するように構成してもよい。
【0071】
この結果、k空間全部にエコーデータ(生データ)が配置される。このk空間へのエコーデータの配置が完了した時点で、演算ユニット10により、その1組のエコーデータが2次元フーリエ変換により実空間の画像データに再構成される。このようにして生成された、1回目のスキャンに係る画像のデータは演算ユニット10の内蔵メモリまたは記憶ユニット11に一時保管される。
【0072】
さらに、上述と同様にして2回目のスキャンが実行され、エコーデータが収集された後、画像が再構成される。このときには、最初のIRパルスを印加するときに、スライス方向傾斜磁場Gs=Gs(IR)が並行して印加される。
【0073】
演算ユニット10は、例えば、この2回のスキャンに係る画像データの差分などからASL法に拠る画像データを得る。
【0074】
このように本実施形態によれば、IRパルスを用いるT1強調の高速FE法のイメージングにおいて、フリップパルス印加直前の縦磁化Mzがk空間にて位相エンコードの無い状態で一定となるように、撮像パラメータTI,TR,TE,αを予め演算し最適化させている。つまり、k空間上で空間周波数の成分の変動が少なく、位相エンコードが無い状態で各位相エンコード毎にほぼ一定の信号強度になる。これゆえ、従来のように空打ちのダミーパルスを用いなくても、画像の単位時間当たり(すなわちスキャン時間が同じとき)のSNR、T1コントラスト、および空間分解能が共に向上したものになる。同時に、T1値の計算、したがって、ASL法による組織血流の定量化が容易になるという利点がある。
【0075】
なお、この第1の実施形態では、1つのインバージョンパルスで1画像分全てのエコーデータを収集するパルスシーケンスを採用する例を説明したが、これに代えて、複数のインバージョンパルスで1画像分のエコーデータを収集する、いわゆる、セグメンテッド高速FE法を採用することもできる。
【0076】
第2の実施形態
本発明の第2の実施形態を図10、11に基づき説明する。この実施形態以降の実施形態において、上述した第1の実施形態の構成要素と同一または同等の要素には同一符号を用いて、その説明を省略または簡略化する。
【0077】
この第2の実施形態は、測定対象の組織のT1値が未知の場合に好適に実施できるMRI装置を提供する。
【0078】
測定対象の組織のT1値が未知の場合、本スキャンの前に、プレスキャン(テンプレートスキャン)を行って最適な撮像パラメータをその都度決めればよい。このプレスキャンはシーケンサ5により指令される。プレスキャンでは、位相エンコードを掛けずに、フリップパルスのフリップ角FA(α)を振りながら、エコーデータが収集される。シーケンサ5、ホスト計算機6、または演算ユニット10は、このプレスキャンに対応して、例えば図10の処理を実行する。
【0079】
同図の処理がシーケンサ5によって実行されるとすると、シーケンサ5はホスト計算機6からフリップパルスP1〜Pn(図11参照)のフリップ角FAの初期値を読み込み、初期設定する(ステップS11)。次いで、シーケンサ5は、IRパルスを用いた高速FE法のプレスキャン(位相エンコード無し)の実行を指令する(ステップ12)。
【0080】
シーケンサ5は、このプレスキャンの実行と並行して、図10のステップS13〜S21に示す処理を行う。具体的には、図11にも模式的に示してあるが、反転時間TI以降で時刻t=t1になったときのエコー信号の強度S(t1)を測定し(ステップS13,S14)、さらに、時刻t=t2になったときのエコー信号の強度S(t2)を測定する(ステップS15,S16)。
【0081】
このように時間軸上の2点t1,t2のみを測定すれば足りる理由は、フリップ角の変化に応じた信号の変化は単調であることが分かっているので、最低2点t1,t2の時間の信号強度を知ることができれば、その大小関係に基づき最適フリップ角FAを探すことができるからである。2点t1,t2での測定でも足りるが、当然に3点以上の時刻で測定しても勿論よい。
【0082】
シーケンサ5は、測定した2点t1,t2の信号強度S(t1)、S(t2)から、|S(t1)−S(t2)|<Sthd か否かを判断する(ステップS17)。しきい値Sthd は信号Sの変動を収束させるための値である。この判断でYESとなるときは、信号値が不変と見做せるほど十分に収束した場合であるから(図11の曲線A参照)、フリップ角の最適値FAopt =現在値FAに設定して処理を終わる(ステップS18)。
【0083】
反対に、ステップS17の判断=NOとなるときは、さらに、|S(t1)|<|S(t2)|か否かを判断する(ステップS19)。この判断は、信号曲線が時間経過と伴に、すなわちフリップパルスを掛けていくにしたがって、信号Sの強度が上がるか下がるかを見極めるためのものである。
【0084】
図中の曲線Bのように|S(t1)|<|S(t2)|となるときは(ステップS14でYES)、フリップパルスP1〜Pnのフリップ角FA<フリップ角の最適値FAopt の状態である。このため、フリップ角FAを上げるべく、FA=FA+ΔFAの演算を行って(ステップS20)、その処理をステップS12に戻し、プレスキャンを再指令する。ΔFAはフリップ角の微小ステップ値である。これにより、今度はフリップ角が微小値分増加された状態で、プレスキャンが実行される。
【0085】
ステップS19の判断でNOとなるときは|S(t1)|>|S(t2)|であり、信号の時間変化曲線は図11中の曲線Cで表される。このときは、フリップパルスP1〜Pnのフリップ角FA>フリップ角の最適値FAopt の状態である。このため、フリップ角FAを下げるべく、FA=FA−ΔFAの演算を行って(ステップS21)、その処理をステップS12に戻し、プレスキャンの再指令する。これにより、今度はフリップ角を微小値分減少させた状態で、プレスキャンが実行される。
【0086】
この図10の処理を行うことで、フリップ角FAをその大小の方向に振りながらプレスキャンが実行され、信号強度の収束条件を満足したときにフリップ角FAの最適値FAopt が自動的に設定される。
【0087】
このようにフリップ角FAが最適設定されると、このフリップ角をその1つとして取り込んだ撮像パラメータを使い、前述したと同様に本スキャンを実施できる。したがって、本実施形態のMRI装置によれば、測定部位のT1が未知の場合であっても、最適な撮像パラメータを自動的に設定でき、前述の実施形態と同等の作用効果を得ることができる。
【0088】
第3の実施形態
本発明の第3の実施形態を図13〜15に基づき説明する。この第3の実施形態は、収集されたk空間データを適宜な補正関数で補正することにより、後処理として、横磁化Mxyの特性をフラットにする手法に関する。
【0089】
前述した第1、第2の実施形態の手法は、フリップパルス印加直前の縦磁化Mz、同時にフリップパルス印加直後の横磁化Mxyが一定になるように撮像パラメータを事前に決めるものであったが、横磁化Mxyが一定でない場合、とくに、フリップパルスのフリップ角FAを前述した第1の実施形態で求めた最適条件よりも深め(大きく)にした場合、磁化Mz(横磁化Mxy)はフリップパルスの印加につれて徐々に低下するが、フリップパルスの印加数nが小さい範囲、すなわちフリップパルスの印加がそれほど進んでいない範囲(零エンコードを境に低周波のエンコードから収集する"centric phase encoding"では低周波成分となる)の縦磁化Mzは多少とも大きめの値になる(図4参照)。この大きめの縦磁化Mzの部分を収集すれば、SNRを向上させることができる。
【0090】
しかし、このようにフリップパルスのフリップ角FAを第1の実施形態で決めた最適条件よりも深めにした場合、横磁化Mxyは、ローパスフィルタを掛けて高周波成分を低減させたような特性になる。この低減の程度が大きければ、空間分解能の劣化も大きくなる。このため、従来のように単に収集して再構成するだけでは、有効な画像は得られない。
【0091】
この第3の実施形態によるT1強調イメージング法は、このような状況に着目したもので、データ収集後の後処理により、かかる事態を回避するものであり、第1および第2の実施形態によるT1強調イメージング法のように本スキャン前に計算またはプレスキャンにより事前に最適な撮像パラメータを設定しておく手法とはアプローチが異なる。
【0092】
具体的には、第3の実施形態では、空間分解能の劣化を補正するため、横磁化Mxyの特性Hdecay を、与えられた撮像パラメータから計算するか、位相エンコード量を零にしたプレスキャンで測定して求める。この特性Hdecay に基づき補正関数Hcを演算し、この補正関数Hcで横磁化Mxyの特性Hdecay をフラットに補正する。この補正は、好適な例として、k空間のデータと逆フィルタ(inverse filter)またはウィナー・フィルタ(Wiener filter )との積をとることによりなされる。
【0093】
ここで、逆フィルタおよびウィナー・フィルタ(Wiener filter )による補正関数を説明する。
【0094】
図13に、k空間での横磁化Mxyの変化の特性Hdecay とその逆フィルタの特性Hcとの一例を示す。このフィルタ特性Hcは、
【数18】
である。逆フィルタは、横磁化Mxyの特性Hdecay がローパス特性であることを前提として高周波成分のSNRをあまり低下させないように、補正を所定の有限のエンコード量Klimit までに限定したフィルタであるが、必要に応じて、さらに別のローパスフィルタを掛けるようにしてもよい。
【0095】
また、本実施形態で適用するウィナー・フィルタ(Wiener filter )は、逆フィルタとSNRのコントロールとを組み合わせたフィルタである。このフィルタ特性Hc(kx,ky)は、
【数19】
に設定される。ここで、
【外1】
である。パワースペクトラムPs、PN は実際のk空間では次のように演算される。
【0096】
【数20】
ノイズパワー計算用のROIは、図14に示すように、k空間において信号成分がほとんど零と見做せる例えば4隅の局所的な矩形状ROI(例えば、20×20ピクセル)内の平均値として求める。
【0097】
このように、ここでのウィナー・フィルタ(Wiener filter )は逆フィルタとSNRのコントロールとを組み合わせており、パワースペクトラムPs,PN に実際のデータを用いることから、本来のWiener filter とは趣が多少異なるが、これもWiener filter の範疇に含めることにする。なお、これに限らず、Wiener filter として適宜な変形が可能である。
【0098】
図15に、ホスト計算機6により実行される準備用のプレスキャンからイメージング用の本スキャンまでの処理の流れを示す。ホスト計算機6は、入力器13などから撮像用のパルスシーケンスの種類およびそれに沿った適宜な撮像パラメータ(繰り返し時間TR,エコー時間TE,回復時間Trecov ,フリップ角FAなど)を入力して、プレスキャンを実行をシーケンサ5に指令する(ステップS31,S32)。このプレスキャンは、位相エンコード用の傾斜磁場を掛けないで実行される。
【0099】
このプレスキャンが完了すると、ホスト計算機6は演算ユニット10に、k空間での横磁化Mxyの変化の特性Hdecay (ky)の演算を指令する(ステップS33)。この演算は、位相エンコードkyの全体をとって行ってもよいし、位相エンコードkyの数点(例えば5、6点)をとってカーブフィッティングにより行ってもよい。次いで、ホスト計算機6は、演算ユニット10に、横磁化Mxyの変化の特性Hdecay (ky)に基づいて、前述したように例えば逆フィルタ(inverse filter)またはウィナー・フィルタ(Wiener filter )の補正関数Hc(kx,ky)を演算するように指令する(ステップS34)。
【0100】
このように準備が済むと、ホスト計算機6はイメージング用の本スキャンに移行する(ステップS35,S36)。この本スキャンは、例えば、IRパルスを用いた高速FE法に基づきASL法によって2回行われる。
【0101】
本スキャンによって得た各スキャンのk空間のデータ(信号値)S(kx,ky)は、演算ユニット10により、補正関数Hc(kx,ky)を使って、画素毎に、
【数21】
の乗算が実行され、補正データSc(kx,ky)が演算される(ステップS37)。この補正データSc(kx,ky)はその後、演算ユニット10よる再構成処理及び差分処理(ASL法)、表示器12による画像表示、記憶ユニット11へのデータ格納処理などに処せられる(ステップS38,S39)。
【0102】
このように、低周波側の信号強度が大きくなるように設定したフリップ角FAを含むパルスシーケンス条件の元に、k空間での横磁化Mxyの変化特性Hdecay (ky)をプレスキャンで計測し、k空間データを逆フィルタまたはウィナー・フィルタにより補正する。これにより、後処理として、k空間データをほぼフラットな特性に補正することができる。したがって、"centric phase encoding"に基づくT1 強調イメージングにおいて、高いSNRを確保でき、かつ、空間分解能の劣化を防止できる。
【0103】
なお、この第3の実施形態において、横磁化Hxyの変化の特性Hdecay をプレスキャンによる計測で求めたが、第1の実施形態のときと同じように、最初から計算によって求めるようにしてもよい。
【0104】
また、この第3の実施形態に係る図15の処理において、ステップS33,S34,S37などの演算ユニット10に任せていた演算をホスト計算機6自ら実行するように構成してもよい。
【0105】
さらに、上述した第3の実施形態において、フリップパルスを印加直前の縦磁化Mz、すなわちk空間での横磁化Mxyがほぼ一定にならない場合に、エコー信号をk空間に配置した後の後処理としての各種のフィルタによりほぼ一定にするようにした。しかし、必ずしもそのような後処理を使用しなくても済む場合もある。それは、縦磁化Mzの変動がそれほど大きくない場合、例えば前述した図3の場合、信号値がほかの部分より高くなるn=大、すなわち時間的に後ろの領域で印加するフリップパルスに応答して発生するエコー信号がk空間の低周波側(位相エンコード量=0)に配置されるように、パルスシーケンスの位相エンコード用傾斜磁場パルスを割り振ればよい。反対に、図4の場合は、信号値がほかの部分よりも高いくなるn=小、すなわち時間的に初めの領域で印加するフリップパルスに応答して発生するエコー信号がk空間の低周波側に配置されるように位相エンコード用傾斜磁場パルスを割り振ればよい。このように、高強度のエコー信号をk空間の低周波側に優先的に配置するという位相エンコード量の振り方を一種のパラメータと捉えることで、後処理を不要にしたT1強調イメージングができる。
【0106】
さらにまた、この第3の実施形態では、縦磁化の変動が大きい場合を例として説明したが、縦磁化の変動がそれほど大きくない場合や、その変動が極めて微細な場合にも適用することにより、画像の空間分解能をさらに高めることができる。また、前述した第1、第2の実施形態により適切な撮影パラメータを設定することができた場合であっても、この第3の実施形態に拠る後処理を追加実施することができ、それにより、診断上、一層、有効な画像を提供することができる。
【0107】
なお、本発明では上述した実施形態以外にも種々の変形形態が可能である。
【0108】
その1つとして、測定対象とする組織が様々なT1値を有する複数の組織から形成されている場合のイメージングがある。例えば頭部の場合、灰白質、白質、CSF(脳脊髄液)、脂肪などから成る。静磁場が0.5Tの場合、灰白質および白質がT1=600〜800ms程度、CSFがT1=5000ms程度、さらに、脂肪がT1=200ms程度である。そのままではT1値の異なる信号が混在し、T1値に依存して撮像条件が変化するので、撮像条件を1つに決めることは難しいと思われがちだが、本発明のイメージング法が主に目指しているのは、MRアンギオグラフィである血管内の血液、または、ASL法に拠る毛細血管内や組織内の血液であるので、T1値はほぼ均一と見做すことができ、そのT1値に応じた撮像条件を決めることができ、イメージングが可能になる。
【0109】
また、この他にも、測定対象のT1値がほぼ単一の組織であれば、当然に、上述のイメージング法を適用できる。
【0110】
さらに、ASL法は血液のラベリング前後の差分に基づき、流れている血液のみの成分を抽出するが、このASL法の実施において、前述のように撮像パラメータをプレスキャンで設定する場合は、ラベリング前後の差分の信号に対して撮像パラメータの最適化を行えばよい。
【0111】
さらにまた、上述した実施形態は、IRパルスを用いた高速FE法を実施するMRI装置およびMRイメージング方法を説明したが、本発明で実施可能なパルスシーケンスはこれに限定されない。IRパルス(180°RFパルス)または飽和パルス(90°RFパルス)を用い、T1回復過程にてk空間を充足する生データを収集できるパルスシーケンスであれば同様に実施できる。例えば、IRパルスを用いた高速SE法の場合、1つのフリップパルスと複数のリフォーカスパルスの印加によりk空間充足用データを収集するが、フリップパルスとリフォーカスパルスのフリップ角度を適切に設定することで、T2減衰による信号減衰を抑制し、T1回復とT2減衰が均衡する条件が存在するので、このパルスシーケンスにも同様に適用できる。
【0112】
またなお、本発明は、代表的に例示した上述の実施の形態に限定されるものではなく、当業者であれば、特許請求の範囲の記載内容に基づき、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の態様に変形、変更することができ、それらも本発明の権利範囲に属するものである。
【0113】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るMRI装置によれば、TOF−MRAやASL法のように、ほぼ単一のT1値を有する組織イメージング法において、単位時間当たりのT1コントラストおよびSNRを向上させ、かつ、単位時間当たりの画像分解能を向上させた、高品位のT1強調像を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るMRI装置の一例を示すブロック図。
【図2】本発明の原理を説明するためのフリップパルスの印加に対応して変化する縦磁化の強度を模式的に示すグラフ。
【図3】シミュレーションの一例を示す図(縦磁化が変化する場合)。
【図4】シミュレーションの別の例を示す図(縦磁化が変化する場合)。
【図5】シミュレーションのさらに別の例を示す図(縦磁化がほぼ一定の場合)。
【図6】シミュレーションのさらに別の例を示す図(縦磁化がほぼ一定の場合)。
【図7】シーケンサにより実行される撮像パラメータ演算のためのフローチャート。
【図8】第1の実施形態に係るパルスシーケンスの一例を示す図。
【図9】k空間のデータ配置を説明する図。
【図10】第2の実施形態に係るプレスキャンおよび信号処理の概要を示すフローチャート。
【図11】プレスキャンに係るフリップ角の振りに伴う信号変化を説明する図。
【図12】IRパルスのショット回数と縦磁化Mzの強度との関係を示すシミュレーションに拠るグラフ。
【図13】第3の実施形態で使用可能な逆フィルタの特性の一例を説明する図。
【図14】第3の実施形態でウィナー・フィルタを使用するときのノイズパワー計算のためのROIの採り方を説明する図。
【図15】第3の実施形態においてホスト計算機により実行される、プレスキャンにより得たデータに基づく補正関数の生成および本スキャンに得たデータに基づく補正処理の流れを説明するフローチャート。
【符号の説明】
1 磁石
2 静磁場電源
3 傾斜磁場コイルユニット
4 傾斜磁場電源
5 シーケンサ
6 ホスト計算機
7 RFコイル
8T 送信器
8R 受信器
10 演算ユニット
11 記憶ユニット
12 表示器
13 入力器
Claims (8)
- 被検体に印加する反転パルスまたは飽和パルスと、このパルスにより前記被検体のスピンをT1回復させる過程で印加する複数のフリップパルスと、この各フリップパルスに応答して発生するエコー信号を収集するための傾斜磁場パルスとを含むパルスシーケンスを実行するようにしたMRI装置において、
前記各フリップパルスの印加直前における前記スピンの縦磁化の強度がほぼ一定となるように設定された前記フリップパルスのフリップ角に基づき前記パルスシーケンスを実行するシーケンス実行手段を備えたことを特徴とするMRI装置。 - 請求項1記載の発明において、前記パルスシーケンスは、前記反転パルスを含む高速フィールドエコー法に従うパルスシーケンスであるMRI装置。
- 請求項1記載の発明において、前記シーケンス実行手段は、測定部位の組織のT1値に基づき前記フリップパルスのフリップ角を予め演算する手段を備えるMRI装置。
- 請求項1記載の発明において、前記フリップパルスのフリップ角を制御するために位相エンコード傾斜磁場を印加しない状態でプレスキャンを実行してエコー信号を得るプレスキャン実行手段と、このプレスキャンの実行に伴って得るエコー信号から前記フリップパルスのフリップ角の最適値を決めるパラメータ最適値決定手段とを備えたMRI装置。
- 請求項4記載の発明において、前記プレスキャン実行手段は、前記エコー信号の強度を複数の時刻で得る手段であり、前記パラメータ最適値決定手段は、前記複数の時刻における前記エコー信号の大小関係に基づき前記最適値を決める手段であるMRI装置。
- 請求項4記載の発明において、前記パルスシーケンスはASL(Arterial Spin Labeling)法のパルスシーケンスとして組み込まれているとともに、前記プレスキャン実行手段および前記パラメータ最適値決定手段のそれぞれは前記ASL法に関わる血液のラベリング前後の差分データに対して実行するようにしたMRI装置。
- 請求項1記載の発明において、前記パルスシーケンスは、前記反転パルスを含む高速スピンエコー法に従うパルスシーケンスであるMRI装置。
- 請求項1記載の発明において、前記パルスシーケンスは、MRアンギオグラフィまたはASL(Arterial Spin Labeling)法のパルスシーケンスとして組み込まれているMRI装置。
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