以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお、説明は以下の順序で行う。
<1.実施の形態>
<2.変形例>
<1.実施の形態>
以下、図を参照して、本発明に係る加熱調理器1について説明する。本発明に係る加熱調理器1は、電磁誘導加熱コイルによる加熱調理(以下、IH(induction heating)加熱調理と称する)を行う機能を備えるものである。さらに、加熱調理器1は、ヒータの熱により被調理材を加熱する調理(以下、グリル調理と称する。)を行う機能も備えるものである。
加熱調理器1は、略箱状の筐体10と、筐体10上に設けられた天板部2とから構成されている。筐体10は、前面部12、側面部13、底面部14および背面部15とから略箱状に構成されている。筐体10は金属板、例えば鉄板により構成されている。天板部2は、フレーム部16と天板20とから構成されている。
筐体10内には、誘導加熱コイル120が設けられたコイル室100、ヒータによる被調理材の加熱を行う加熱室200、加熱調理器1の動作を制御する制御回路が設けられた基板310などを収容する基板室300が設けられている。コイル室100、加熱室200および基板室300の詳細については後述する。
天板20は、鍋、フライパンなどの被加熱調理器具を載置するためのものであり、高耐熱のガラスなどの電磁誘導によって加熱されない材質で構成されている。天板20上には、タッチパネルにより構成された操作パネル21が設けられている。操作パネル21は例えば、静電容量式のタッチパネルで構成されている。ただし、操作パネル21は静電容量式に限られず、他の方式、例えば抵抗巻膜方式のタッチパネルでもよいし、物理ボタンにより構成されてもよい。操作パネル21に対する操作により、使用者は、誘導加熱コイルのオンオフ、グリル用ヒータのオンオフ、火力・温度調節、自動調理メニューの切り替え、焼き加減の調節などを行うことができる。
天板20上には、IHヒータとしての誘導加熱コイルの位置を示す略円状の印である載置範囲部22が設けられている。本実施の形態においては、誘導加熱コイル120は2つ設けられている。使用者は、IH加熱調理を行う際は、載置範囲部22上に被調理材を収容した鍋、フライパンなどの被加熱調理器具を載置する。
前面部12の一方側は、加熱室200を開閉するためのドア500として構成されている。ドアにはガラスなどにより構成された窓部501が設けられている。使用者はグリル調理中に、窓部501から加熱室200内部の様子を確認することができる。
ドア500の下方には、使用者がドア500を開く際に掴むことができる取手部510が設けられている。取手部510は、ドア500の幅と略同等の幅を有し、前方に突出する長尺の突起状に構成されている。図2に示されるように、使用者はドア500を引くことにより、加熱室200を開くことができる。ドア500を閉じる場合には、ドア500を加熱室200方向に押動すればよい。なお、ドア500は後述する受け皿270と一体に接続されている。
前面部12における他方側、ドア500の隣はフロントパネル部50として構成されている。フロントパネル部50には加熱調理器1の電源のオンオフを切り替えるための電源スイッチ51が設けられている。なお、電源スイッチ51は、操作パネル21内に設けてもよい。また、フロントパネル部50の下方には庇部52が設けられている。庇部52はフロントパネル部50の幅と略同等の幅を有し、ドア500の取手部510と同様に、前方に突出する突起状に構成されている。ドア500の取手部510と庇部52とは、ドア500が閉じられている状態において、上面、正面および底面がそれぞれ面一となるように構成されている。
加熱調理器1の上面後端には排気口カバー30が設けられている。排気口カバー30は、横長の細い多数の孔を備え、排気口17からの排気を遮ることなく排気口17をカバーするものである。なお、排気口カバー30は着脱自在のカバーとして構成してもよい。
図3は、加熱調理器1の底面側を示す斜視図である。図3に示されるように、筐体10の底面には、4隅にそれぞれ脚部19が設けられている。筐体10の底面に脚部19が設けられていることにより、筐体10の底面とコンロ台などの加熱調理器1を載置する面との間にはわずかな隙間が形成されることとなる。
また、図3に示されるように、庇部52の下面には複数の穴からなる第1給気口61が設けられている。また、フロントパネル部50の側面から下面にかけて略L字状に構成された、複数の長穴からなる第2給気口62が設けられている。さらに、筐体10の底面部14には、多数の穴からなる第3給気口63が設けられている。これら第1給気口61、第2給気口62および第3給気口63は、基板室300内に外気を供給するためのものである。第1給気口61、第2給気口62および第3給気口63という3つの給気口を設けることにより、基板室300に供給する空気の量を増加させることができる。
筐体10の底面に脚部19が設けられ、筐体10の底面と載置面との間に隙間が形成されることにより、第3給気口63からも空気を基板室300内に供給することができる。これによっても、基板室300内への空気の供給量を増加させることができる。
第1給気口61は、筐体10の外方向から内部方向に向けて広がるテーパー状に構成されている。第2給気口62および第3給気口63も同様に筐体10の外方向から内部方向に向けて広がるテーパー状に構成されている。このように構成することにより、冷却ファン330の駆動によって空気が給気口を通過する際の風切り音を抑制することができる。
図4Aに示されるように、フロントパネル部50の内部には、スピーカ71が設けられている。スピーカ71は、図4Bに示されるように、フロントパネル部50の内部に設けられ、庇部52の突出方向に伸びる略筒状のスピーカ設置部72に挿入され、上方と下方でそれぞれ固定されることにより設けられている。スピーカ71は、制御回路に接続され、制御回路の制御の従い所定のガイド用の音声を出力するためのものである。ガイド用音声としては例えば、電源オンオフの通知、調理中における操作内容の通知、設定温度の通知などがある。ガイド用音声の音量は、操作パネル21に対する入力により調整可能とするよい。
スピーカ71は、フロントパネル部50に設けられた庇部52内において、横方向(庇部52が突出する方向)に向けて音を出力するように設けられている。スピーカ71からの音声は、庇部52の下面に設けられた音声出力用孔64を通じて筐体10外に出力される。庇部52の下面に設けられた音声出力用孔64方向に向けてではなく、横方向(庇部52が突出する方向)に向けて音を出力するようにスピーカ71を設けることにより、音は庇部52の内部で共鳴した後に音声出力用孔64から出ることになる。これにより、スピーカ71からの音声をより大きく鮮明な音として出力することができる。
また、庇部52内にスピーカ71を設けたことにより、庇部52がカバーとなり、水、油などがスピーカ71にかかることを防止することができる。このようなスピーカ71の配置は、本実施の形態に係る加熱調理器1に限られず、冷蔵庫、電子レンジ、食器洗い機、食器乾燥器などの家電製品にも応用することも可能である。さらには、家庭内の家電製品に限られず、車載スピーカなどにも応用することも可能である。
図5は、加熱調理器1から天板20を除いた状態を示す図である。筐体10の前面部12、側面部13、背面部15の上端に渡ってロ字状に構成されたフレーム部16が設けられている。フレーム部16は、例えばネジ止めにより固定されている。また、図6に示されるように、フレーム部16の後端辺は、他の辺に比べて幅が広く形成されており、その後端辺には排気口17が形成されている。そして、上述したようにその排気口17上に排気口カバー30が設けられている。排気口17は、フレーム部16の後端辺においてわずかに上方に盛り上がるように構成されている。これにより、側方から排気口17内に水などが入り込むことを防止することができる。
筐体10内の上部にはIH加熱調理を行うための誘導加熱コイル120aおよび誘導加熱コイル120bを収容するコイル室100が形成されている。コイル室100内の底面は、誘導加熱コイル120aおよび誘導加熱コイル120bを載置するためのコイル載置部110として構成されている。コイル載置部110は略平板状に構成されている。本実施の形態においては、コイル載置部110上に2つの誘導加熱コイル120aおよび誘導加熱コイル120bが設けられている。ただし、誘導加熱コイルの数は2つに限られるものではなく、1つでもよいし、2つ以上、例えば3つでもよい。
誘導加熱コイル120aは、輪状のコイルベース130の内部に収納された状態でコイル載置部110上に設けられている。コイルベース130は、外方向に突出した突起状の3つのコイル支持部131を備える。コイルベース130は、コイル支持部131の底面と、コイル載置部110の上面との間にバネなどの弾性体を介在させた状態で、コイル載置部110上に設けられている。
コイル載置部110上には、起立する板状のコイル位置規制部140が設けられている。コイル位置規制部140は、平面視において誘導加熱コイル120方向に開口するコ字状に構成されている。各コイル支持部131を各弾性体上にそれぞれ位置させると、コイル支持部131の外周側面がコイル位置規制部140に当接可能な状態となる。これにより、誘導加熱コイル120aの位置が規制される。
また、誘導加熱コイル120aに通電すると、誘導加熱コイル120は振動することになるが、コイル位置規制部140によりその誘導加熱コイル120aの振動を抑制することができる。よって、誘導加熱コイル120aを安定した状態で支持することができる。なお、誘導加熱コイル120bも同様にして設けられている。コイル支持部131およびコイル位置規制部140の数はあくまで例示であり、その数は3つに限られるものではない。
筐体10内におけるコイル載置部110の後方には、連通口400が設けられている。連通口400は、コイル室100と基板室300とを連通させるように構成されており、冷却ファン330の吸引力により第1給気口61、第2給気口62および第3給気口63から基板室300内に供給された空気が上昇してコイル室100内に流入するためのものである。
図7および図8に示されるように、コイル載置部110上には、平面視略L字型に構成された板状の空気案内部150が設けられている。空気案内部150は、一端側が筐体10後方の連通口400側に位置し、その一端側の端部が筐体10の背面部15に接するように設けられている。また、空気案内部150は、他端側が誘導加熱コイル120b側に位置し、その他端側の端部と側面部13との間にある程度の空間が形成されるように設けられている。その他端側の端部と側面部13との間にある程度の空間の幅は略10cm〜略50cm、望ましくは略40cm程度がよい。また、空気案内部150の上端と天板20との間の隙間は略1.5mm以下程度となるように構成するとよい。空気案内部150の上端と天板20との間の隙間が小さい方が空気を漏れなく案内することができる。
このように空気案内部150を配置することにより、連通口400から上昇してきた空気を漏れなく誘導加熱コイル120aおよび誘導加熱コイル120b側へと案内し、誘導加熱コイルの冷却を効率よく行うことができる。さらに、空気案内部150は、他端側の端と側面部13との間にある程度の空間が形成されるように設けられているため、誘導加熱コイル120の周囲を流動した空気を確実に排気口17へと案内することができる。これにより、適切に誘導加熱コイル120aおよび誘導加熱コイル120bの冷却を行う空気の流動径路が形成されることになる。
筐体10内のコイル室100の前方には、操作基板40が設けられている。操作基板40は、操作パネル21の直下に設けられている。操作基板40は、基板室300内に設けられた基板310上の制御回路に接続されており、使用者からの操作パネル21への入力に応じて制御指令を基板310に設けられた制御回路に出力する。
図9に示されるように、コイル室100の下には、加熱室200が設けられている。加熱室200は、ヒータの熱により食材のグリル調理を行うためのものである。加熱室200は、前面が開口部210となっている略箱状に構成されている。開口部210はドア500によって開閉される。加熱室200は天井壁201、底壁202、左側壁203、右側壁204および奥壁205によって区画された空間である。天井壁201、底壁202、左側壁203、右側壁204および奥壁205は、アルミメッキ鋼板、ステンレスなどの光線反射性に優れた金属により構成し、ヒータの熱を反射する反射板として機能させてもよい。ただし、構成する金属はそれらに限られるものではなく、光線反射性が良い金属材料であればどのようなものを用いてもよい。
図2、図9、図10に示されるように、加熱室200内の下方には受け皿270が設けられている。受け皿270は、琺瑯塗装された鉄板などにより構成されている。受け皿270上には、被調理材を載置するための載置用網を設けてもよい。
受け皿270は前方端がドア500に接続されており、ドア500の開閉に連動して前後に移動するように構成されている。これにより、ドア500を引き出すと、それに連動して受け皿270が加熱室200外に引き出されるため、被調理材を載置網上に載置するのが容易となる。また、ドア500を閉じようとすると受け皿270がそれに連動して加熱室200内に収納されることとなる。ただし、受け皿270はドア500と切り離して加熱室200から出し入れ可能に構成してもよい。
加熱室200内の上方には、上側ヒータ230が設けられている。また、加熱室200内の下方には、下側ヒータ240が設けられている。上側ヒータ230および下側ヒータ240は、例えばシーズヒータにより構成されている。ただし、上側ヒータ230および下側ヒータ240はシーズヒータ以外のヒータ、例えば、石英管ヒータで構成されてもよい。
加熱室200内における上側ヒータ230と略同等の高さの位置には、棒状の上側ヒータ支持部250が左側壁203と右側壁204間に渡設するように設けられている。ヒータ支持部には、長手方向に沿った横長状の穴が3つ設けられている。その穴に上側ヒータ230の三叉のそれぞれを挿入することにより、上側ヒータ230は安定した状態で支持されている。なお、下側ヒータ240も上側ヒータ支持部250と同様に構成された下側ヒータ支持部260により支持されている。
図10および図11に示されるように、上側ヒータ230および下側ヒータ240は、3つの略U字状の湾曲部231が形成されることにより2本を一組とした三叉状に構成されている。上側ヒータ230および下側ヒータ240を三叉状に構成することにより、例えば、魚をグリル調理する場合、魚の頭、腹、尻尾という3つの位置の下方に三叉のそれぞれが位置することになるため、魚を適切に加熱することができる。
図11に示されるように、上側ヒータ230および下側ヒータ240は、加熱室200の左側壁203、右側壁204および奥壁205および加熱室200の前壁としても機能するドア500の内面のいずれからもほぼ等距離となるように構成されている。図11において、奥壁205との距離L1、左側壁203との距離L2、ドア500の内面との距離L3、右側壁204との距離L4がほぼ同等の距離となるように構成されている。このように構成することにより、加熱室200内において熱の偏りが無くなり、被調理材を均一に加熱することができる。
加熱室200の奥壁205にはグリルダクト220が接続されている。グリルダクト220は側面視略L字状に形成され、一端側は加熱室200内において開口し、他端側は、排気口17側に開口するように構成されている。加熱室200内の空気はグリルダクト220を通じて排気口17から筐体10外へ排出される。
図12Aおよび図12Bに示されるように、ドア500の内部には、窓部501を構成するガラス板502に当接するようにパッキン520が設けられている。パッキン520は例えばシリコンなどの弾性体を用いて構成されている。本実施の形態においては、パッキン520は図12Aに示されるように、側面視略T字状に構成されており、平面側がガラス板502に当接し、突起側がガラスとは逆方向に設けられたプラスチックなどで構成された樹脂板503側に向くように設けられている。
また、図12Bに示されるように、パッキン520は平面視において下側に向けて開口する略コ字状に構成され、ドア500の窓部501の周囲、上方および左右の3辺を囲うように設けられている。パッキン520をガラス板502と樹脂板503との間に設けることにより、ガラス板502と樹脂板503との間に隙間504が形成されることになる。この隙間504が断熱層として機能することにより加熱室200内の熱が遮断され、ドア500の表面が高温になることを防ぐことができる。
また、図13Aに示されるように、ドア500の両側面下方には、ドアロック機構を構成する係合突起530が設けられている。係合突起530は、略中央から前方および後方に向けて斜めに形成される前方摺動面531および後方摺動面532を有するように構成されている。そして、一端側においてドア500の側面に固定されている。他端側はドア500の側面に固定されておらず、わずかな隙間が形成されるように構成されていることにより、係合突起530は、固定されている一端側を軸として、押圧されるとドア500内部に引っ込むように構成されている。なお、係合突起530は、バネなどの弾性体を介してドア500の側面に設けられることにより、押圧に応じてドア500内部に引っ込むように構成されてもよい。
一方、図13Bに示されるように、フロントパネル部50の側面にはドアロック機構を構成する凹み状の係合受け部540が設けられている。なお、筐体10の側面にも同様の係合受け部540が設けられている。すなわち、ドア500の左右に係合受け部540がそれぞれ存在することとなる。係合受け部540にドア500に設けられた係合突起530が入り込んで係合することにより、ドア500が閉じられた状態でロックされる。これにより、ドア500と筐体10との密着性を高めて、加熱室200内の熱気がドア500と筐体10の隙間から漏れることを防ぐことができる。
開かれているドア500を閉じようとすると係合突起530の後方摺動面532が筐体10に接触して摺動し、さらに筐体10に押圧されて係合突起530がドア500内部に引っ込むことになる。そして、係合突起530が係合受け部540内に入り込むと、係合突起530は元の状態に戻る。このようにして、係合突起530が係合受け部540に引っ掛かり、ドア500が閉じた状態でロックされる。
本件発明に係る加熱調理器1においては、図11に示されるように、加熱室200の幅方向は奥行き方向よりも大きく構成されている。よって、加熱室200の幅方向の寸法に対応してドア500の幅方向の寸法も大きくする必要がある。その幅の大きいドア500のロックを確実にするために、ドア500の長手方向である両側面にドアロック機構が設けられている。
一方、閉じられているドア500を開こうとすると、係合突起530の前方摺動面531が係合受け部540の側面に接触して摺動し、さらに筐体10に押圧されて係合突起530がドア500内部に引っ込むことになる。そして、係合突起530が筐体10から離間すると、係合突起530は元の状態に戻る。このようにして、ドア500のロック状態が解除される。
加熱室200は、奥行き方向(縦方向)の寸法よりも幅方向(横方向)の寸法が大きくなるように構成されている。このように構成することにより、例えば、魚などの長尺の被調理材を加熱室200内おいて横方向に向けて複数並べて配置することができる。これにより、同時に多くの被調理材を加熱することが可能となる。
筐体10全体の幅を変更せずに加熱室200の幅方向の寸法を大きくしようとすると、相対的に基板室300側の幅が狭くなり、基板室300側に設けられている給気口の幅も狭くなってしまい、空気の供給量が少なくなってしまう。基板室300の幅を変更することなく、加熱室200の幅を大きくしようとすると、加熱調理器1自体の幅が大きくなってしまう。加熱調理器1の幅が大きくなると、加熱調理器1を設けるコンロ台などに載置できないという問題が生じるおそれもある。
そこで、基板室300側に第1給気口61、第2給気口62および第3給気口63という3つの給気口を設けることにより、基板室300内に供給する空気の量を減らすことなく、さらに、不必要に筐体10の幅を大きくすることなく、加熱室200の幅を大きくすることを実現できる。
コイル載置部110の下、加熱室200の隣には基板310を収容する基板室300が設けられている。本実施の形態においては、基板室300内には、制御回路が設けられた2つの基板310が設けられている。2つの基板310は2つの誘導加熱コイル120のそれぞれに対応するものである。誘導加熱コイル120は、制御回路により制御され、各々の誘導加熱コイルに対応してトッププレート面上に設置される調理器の大きさや調理材料の量等に合わせ、出力調整される。誘導加熱コイル120は、制御回路により制御され、制御回路へは操作パネル21への使用者の入力に応じた制御指令が入力される。制御回路は、操作パネル21からの制御指令に従い加熱調理器1の各部の制御を行う。
図9に示されるように、基板室300の前方には冷却ファン330が設けられている。本実施の形態においては、冷却ファン330として軸流ファンが用いられている。冷却ファン330のファンは2重構成となっていて、片側が固定渦となっている。冷却ファン330を動作させると、第1給気口61、第2給気口62および第3給気口63から基板室300内に外気が供給される。供給された外気は冷却ファン330の作用により基板室300内を流動する。これにより、基板310を冷却することができる。なお、冷却ファン330としては軸流ファン以外のファン、例えば、遠心ファンを用いてもよい。
冷却ファン330は、加熱室200前方端からある程度の距離を開けて加熱室200内に設けられている。すなわち、冷却ファン330は、加熱室200内の前方端に設けられているのではなく、加熱室200内の前方端からある程度の距離を開けた加熱室200内部に位置するように設けられている。このように設けることにより、冷却ファン330の動作音が筐体10外へ漏れることを抑制することができる。
庇部52の下面に第1給気口61を設け、庇部52の下方であるフロントパネル部50の下端に第2給気口62を設けることにより、第1給気口61および第2給気口62から基板室300内に水、油、よごれなどが入り込んでしまうことを防止することができる。また、第3給気口63は、筐体10の下面に設けられているため、第3給気口63から水、油、よごれなどが基板室300内に入り込むことはない。
基板室300の後端上方は、コイル室100と連通するように、連通口400が設けられている。連通口400は、第1乃至第3給気口63から基板室300内を流れた空気が上昇してコイル室100内に流入するためのものである。
なお、基板室300内に水、油、汚れなどが入り込まないようにするために、コイル室100、加熱室200、基板室300は、連通口400以外の箇所において連通しないように構成されている。
ここで、図14を参照して、筐体10内における空気の流れについて説明する。まず、冷却ファン330の吸引力によって第1給気口61、第2給気口62および第3給気口63から基板室300に空気が供給される(矢印A)。その供給された空気は基板310を冷却しながら基板室300の奥へと流れる(矢印B)。そして、空気は、基板室300の後部壁面に沿って上昇し(矢印C)、連通口400を通過してコイル室100に流入する(矢印D)。
コイル室100に流入した空気は、コイル載置部110上を通過して2つの誘導加熱コイル120aおよび誘導加熱コイル120bを冷却する(矢印E)。空気はコイル載置部110上を流れる際、空気案内部150に案内されて、連通口400から出た後、誘導加熱コイル120a方向へ案内されて流れていく。空気案内部150の一端側は、隙間なく背面部15に接するように設けられているため、連通口400からコイル室100に流入した空気は漏れることなく全て誘導加熱コイル120aへ流れていく。次に、空気は空気案内部150に沿って誘導加熱コイル120b方向に案内される。空気案内部150と側面部13との間にはある程度の空間が形成されているため、空気は誘導加熱コイル120bを冷却した後、空気案内部150と側面部13との間の空間から筐体10後方の排気口17へ流れて、最終的に上方外部へ排出される(矢印F)。
次に、基板室300内に設けられた基板310について説明する。基板310上には、放熱部340と、制御回路を構成する多数の回路素子が設けられている。放熱部340は、上方へ立ち上がる平板状の複数のフィン341を備える。また、図15A乃至図15Cに示されるように、放熱部340の裏面(フィン341が設けられている側とは逆側の面)には、正負のスイッチング素子(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)の対にて構成された2つのインバータ350が設けられている。また、放熱部340の裏面には整流器351が設けられている。
インバータ350は、誘導加熱コイル120に高周波電流を供給するためのものであり、インバータ350を効率的に冷却するために、インバータ350は放熱部340に取り付けられている。冷却ファン330によって外部より取り込んだ空気を冷却風として基板室300内に送ることにより、インバータ350が取付けられた放熱板を冷却するようにしている。インバータ350および整流器351は、例えば、ネジ止めにより放熱部340に取り付けられている。
放熱部340は、フィン341の長手方向が、空気が冷却ファン330から基板室300奥へと基板室300内を流れる方向と略同一方向になるように設けられている。このように設けることにより、冷却ファン330により基板室300内に供給された空気が放熱部340のおけるフィン341とフィン341の間をスムーズに流れるようになり、放熱部340、インバータ350および整流器351の冷却効果を高めることができる。
インバータ350は、インバータ350の幅と略同等の範囲内により多くのフィン341が含まれるように配置されている。これによっても放熱部340による冷却効果を高めることができる。整流器351も同様にして配置されている。
また、図16に示されるように、基板310上に設けられている回路素子のうち、コンデンサなどの発熱しやすい部品(以下、発熱部品360と称する。)は、放熱部340のフィン341間を通過した空気が接触しない位置(放熱部340のフィン341の延長線上以外の位置)に設けられている。
このような位置に発熱部品360を設けることにより、放熱部340を通過して温められた空気で発熱部品360が冷却されることがなく、冷却効果を高めることができる。発熱部品360を放熱部340のフィン341の長手方向の延長線上の位置に設けた場合、放熱部340を通過して温められた空気が発熱部品360に接触し、効率よく発熱部品360の冷却を行うことができない。
筐体10内に設けられたコイル室100、加熱室200および基板室300は以上のように構成されている。
図17に示されるように、矩形状に構成されている筐体10の角部600は、筐体10内側へわずかに突出するように折り返されている。筐体10内側への突出幅は例えば略2mmである。ただし、突出幅はこの寸法に限られるものではない。このように構成することにより、筐体10の強度を高めることができる。
また、図18に示されるように、筐体10の底面部14には、凹み部700が設けられている。凹み部700は、筐体10後方に設けられている排気口17の略直下の位置に設けられている。また、凹み部700には、複数の穴部701が設けられている。このような凹み部700を設けることにより、排気口17から水などが筐体10内に入り込んでもその水は全て凹み部700に落ちることになり、凹み部700の穴部701から筐体10外に排出される。これにより、排気口17から入り込んだ水などが筐体10内に溜まることがない。
天板20は、接着剤を用いてフレーム部16上に固定されている。これにより、ネジ止めや嵌め込みなどの工程方法とは異なり、天板20の表面上に段差や隙間などが形成されることがなく、天板20上面をフラットに形成することができる。これにより、段差や隙間などに汚れが溜まることがなく、また、天板20の清掃が容易となる。
天板部2を構成するフレーム部16は、略コ字状の2つの板状部材である前方フレーム801と後方フレーム802とを溶接などの手法でつなぎ合わせることにより構成されている。このように構成すると、図19に示されるように、フレーム部16の側面における板状部材と板状部材の接続部803には段差が形成されることとなる。天板20は、その接続部803を覆うことができるサイズに構成されている。天板20をそのようなサイズに構成することにより、天板20がその接続部803をカバーすることになり、段差となっている接続部803によごれなどが溜まることを防止することができる。また、その接続部803から液体が浸入することにより加熱調理器1の耐久性が劣化することを防止できる。また、フレーム部16の強度を高めることができる。
<2.変形例> 以上、本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。本件発明は、加熱室を備えていない、例えば、加熱室のないいわゆるIH調理器にも適用可能である。