以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る搬送計量装置としての重量選別機を備える物品搬送システムの概略構成図である。
この実施形態の物品搬送システムは、ボリウム容量式の充填装置1と包装装置2とを有する商品生産装置3を備えている。この商品生産装置3から搬出される商品としての物品Gは、搬送ラインの搬送方向(図の右方向)の下流側に設置されている重量選別機4によって物品G毎に重量が測定され、図示しない振分け装置によって、良品、不良品に選別される。商品生産装置3では、図示しない容器供給装置から供給される容器に対して、充填装置1によって原料が所定体積分だけ充填され、原料が充填された容器が、次段の包装装置2によって商品の形態に包装されて物品Gとして順次搬出される。搬出された物品Gは、搬送コンベヤ5によって、間隔をあけて順次搬送される。商品生産装置3は、充填装置1に代えて、所定重量範囲の物品を組合せ計量して排出する組合せ秤などであってもよい。
重量選別機4は、物品Gの搬送ラインを構成する搬送コンベヤ5からの物品Gを、計量コンベヤ7へ送込む送込みコンベヤ6と、ロードセル等からなる荷重センサ10に支持された前記計量コンベヤ7と、計量コンベヤ7からの物品Gを、図示しない振分け装置へ搬出する送出しコンベヤ8と、計量コンベヤ7に搬入される物品を検知する物品センサ12と、荷重センサ10からの荷重信号及び物品センサ12からの検知出力に基づいて、後述のようにして物品Gの重量値や零点重量値を測定する共に、各部を制御する制御装置11とを備えている。
物品センサ12は、例えばフォトセンサからなり、送込みコンベヤ6と計量コンベヤ7との間に設置されて、計量コンベヤ7に搬入される直前の物品Gを検知する。
制御装置11では、計量コンベヤ7によって搬送される物品Gの重量を測定して、前記振分け装置を制御することにより、重量が所定範囲内の適量品と、所定範囲未満の軽量品と、所定範囲を超える過量品とに振分け選別する。
図2は、図1の制御装置11の要部のブロック図であり、図1に対応する部分には、同一の参照符号を付す。
制御装置11は、荷重センサ10からのアナログ荷重信号を増幅する増幅器15と、増幅器15からのアナログ荷重信号をデジタル荷重信号に変換するA/D変換器16と、A/D変換器16からのデジタル荷重信号に含まれる振動ノイズ等を減衰させるためのフィルタ処理を行なって物品の重量値及び零点重量値等を演算すると共に、各コンベヤ6〜8や振分け装置を含む重量選別機4の全体を制御する演算制御部17と、各種の設定などのために操作される操作キーを有する設定手段としての入力部18と、計量結果等を表示する表示部19とを備えている。入力部18及び表示部19は、それらを一体化したタッチパネルで構成してもよい。
演算制御部17は、CPU、及び、制御プログラム及び重量値等のデータが記憶されるメモリ等を備え、後述のフィルタ処理手段を構成すると共に、計量コンベヤ7の無負荷状態の重量値である零点重量値を取得する零点重量値取得手段、取得した零点重量値に基づいて、後述のように零点調整量を算出する零点調整量算出手段、及び、算出した零点調整量によって計量コンベヤ7の零点調整を行う零点調整手段としての機能を有する。この演算制御部17には、物品センサ12の検知出力が与えられ、この物品センサ12の検知出力に基づいて、先行の物品と後続の物品との時間間隔を測定する。この演算制御部17は、物品センサ12と共に、計量コンベヤ7上に物品が存在しない無負荷状態を検出する無負荷状態検出手段、及び、無負荷状態である時間を、無負荷時間として測定する無負荷時間測定手段を構成する。
重量選別機4において、高精度に物品の重量を測定するためには、周囲の温度や湿度の変化、あるいは、計量コンベヤ7への過大な荷重の印加や付着物などに起因する零点変動を、零点調整を行って補正する必要がある。零点調整を行うためには、計量コンベヤ7上に物品Gが存在しない無負荷状態の重量値である零点重量値を測定する必要がある。
例えば、生産能力の高い生産装置の後段の搬送ラインでは、物品は短い搬送間隔で連続的に搬送されて計量コンベヤ7へ送り込まれるために、滅多に計量コンベヤ7が無負荷状態になる機会はない。このため、複数回の零点重量測定値の平均値を算出して零点調整を行う上記特許文献1では、無負荷状態が生じる時間間隔が長くなって、その間に零点が変動してしまい、精確な零点調整を行えない場合があるという課題がある。
この実施形態では、生産能力の高い生産装置の後段の搬送ラインの場合に、稀に物品の搬送間隔が長くなって計量コンベヤ7の無負荷状態が生じたときには、その機会を捉えて少しずつでも確実に零点調整を行えるようにするものであり、無負荷状態が生じた機会毎に、それより前に生じた無負荷状態にかかわりなく、零点調整を行うものである。
物品の搬送間隔は、様々な要因、例えば、物品の滑走、あるいは、原料の密度変化に追従させるため商品生産装置3の原料充填時間を長短制御することなどによって変動し、このため、計量コンベヤ7が無負荷状態である無負荷時間も変動する。
先行の物品が計量コンベヤ7を離脱するときに生じる計量コンベヤ7の過渡応答振動信号の振幅の収束度合は、時間が経過するにつれて大きくなり、過渡応答振動信号の振幅は、時間が経過するにつれて小さくなる。
したがって、先行の物品が計量コンベヤ7から離脱して無負荷状態となった時点から開始される無負荷時間が長いほど、過渡応答振動信号は収束してその振幅は小さくなり、かつ、振動信号の周期が安定し、波形も規則的になる。
この実施形態では、無負荷時間に応じた時点、すなわち、無負荷時間の長短に応じた時点、具体的には、無負荷時間が終了する時点で零点重量を測定するようにしている。このように無負荷時間の最後のタイミングまで待って零点重量を測定することによって、過渡応答振動信号の影響を受けないようにし、出来るだけ精確な零点重量を測定するようにしている。
計量コンベヤ7の無負荷時間が短いほど、先行の物品の計量コンベヤ7からの離脱による過渡応答振動信号の大きな振幅の影響を大きく受けて、バラツキの大きい零点重量値が測定され、無負荷時間が長いほど、過渡応答振動信号の振幅が小さくなってその影響が少なくなり、バラツキの小さい安定した精確な零点重量値が測定される。
つまり、計量コンベヤ7の無負荷時間が短いほど、測定される零点重量値の信頼性は低く、無負荷時間が長いほど、測定される零点重量値の信頼性は高くなる。
この実施形態では、稀に生じる無負荷の機会を捉えて少しずつでも計量コンベヤ7の最新の零点変動量に応じて確実に零点調整を行えるようにするために、測定される零点重量値そのもので計量コンベヤ7の零点調整を行うのではなく、測定される零点重量値の信頼性に応じて、零点重量値を修正して零点調整量に変換し、この零点調整量によって計量コンベヤ7の零点調整を行うようにしている。
上記のように、測定される零点重量値の信頼性は、計量コンベヤ7の無負荷時間が短いほど低くなり、無負荷時間が長いほど高くなる。そこで、この実施形態では、測定した零点重量値を、計量コンベヤ7の無負荷時間の長さに応じて修正し、修正した零点重量値を、実際に計量コンベヤ7の零点を調整する零点調整量としている。
具体的には、計量コンベヤ7の無負荷時間に応じて、測定した零点重量値を縮小する、すなわち、測定した零点重量値の絶対値を小さくしている。
測定した零点重量値の絶対値を小さくする度合(以下「縮小度合」ともいう)は、計量コンベヤ7の無負荷時間の長さに応じたものとし、無負荷時間が短ければ、縮小度合を大きくし、無負荷時間が長ければ、縮小度合を小さくする。なお、後述のように、有効な零点調整を行えない程度に無負荷時間が短い場合には、零点調整を行わず、また、十分安定した零点重量値を測定できる程度に無負荷時間が長い場合には、測定した零点重量値を全く縮小しない。
無負荷時間が短ければ、縮小度合を大きくし、無負荷時間が長ければ、縮小度合を小さくするので、計量コンベヤ7の無負荷時間が短いほど、すなわち、バラツキの大きい零点重量値ほど、測定した零点重量値の絶対値の縮小度合は大きくなり、より小さな絶対値の零点調整量に変換されて零点調整される。したがって、バラツキの大きい精確でない零点重量値による零点の大きな誤調整を避けることができる。
また、計量コンベヤ7の無負荷時間が長いほど、すなわち、バラツキの小さい精確な零点重量値ほど、測定した零点重量値の絶対値の縮小度合は小さくなり、測定した零点重量値により近い値の零点調整量に変換されて零点調整される。したがって、バラツキの小さい精確な零点重量値ほど、その零点重量値に近い値の零点調整量に変換されて零点調整される。
次に、図3に基づいて、計量コンベヤ7の無負荷時間について説明する。
この実施形態では、先行する物品G0を、計量コンベヤ7と送り込みコンベヤ6との間に設置された物品センサ12で検知してから後続の物品G1を物品センサ12で検知するまでの時間を物品間の時間間隔として測定し、この時間間隔から計量コンベヤ7上に物品Gが存在しない無負荷状態の時間である無負荷時間を後述のように算出する。算出される計量コンベヤ7の無負荷時間の長さに応じて、測定した零点重量値を修正して、零点調整量に変換する。
図3において、後続の物品G1が物品センサ12に検知されることなく、先行の物品G0の後端部が計量コンベヤ7から丁度離脱し、その先端部が、位置pに到達したとき、計量コンベヤ7が無負荷状態となり、無負荷時間が開始され、先行の物品G0の先端部が、位置aに到達したときに、計量コンベヤ7に物品が存在しない無負荷時間はTaとなり、先行の物品G0の先端部が、位置bに到達したときに、計量コンベヤ7の無負荷時間はTbとなる。
先行する物品G0の先端部が物品センサ12で検知されてから、この物品G0の後端部が計量コンベヤ7から離脱して無負荷時間が開始されるまでに要する時間を無負荷開始時間tpとすると、測定された物品間の時間間隔がTxであるときには、先行の物品G0の先端部が、位置aに到達したとき(Tx=taのとき)の計量コンベヤ7の無負荷時間Taは、Ta=Tx−tp=ta−tpとなり、先行の物品G0の先端部が、位置bに到達したとき(Tx=tbのとき)の計量コンべヤ7の無負荷時間Tbは、Tb=tb−tpとなる。
計量コンベヤ7の無負荷時間が開始される上記無負荷開始時間tpは、物品の品種(物品の長さ)、計量コンベヤ7の長さ、計量コンベヤ7の搬送速度が規定されると一定値となり、予めこれらの値は、入力部18から設定入力されるので、これらの値に基づいて、無負荷開始時間tpを算出する。すなわち、無負荷開始時間tpは、計量対象である物品の品種(物品の長さ)、計量コンベヤ7の長さ、及び、計量コンベヤ7の搬送速度が設定されると、設定に応じた一定の値が算出される。
計量コンベヤ7の無負荷時間Tx’は、物品間の時間間隔の測定値をTxとすると、上記のように
Tx'=Tx−tp
として算出される。
この実施形態では、上記のように測定した零点重量値の絶対値を、計量コンベヤ7の無負荷時間Tx´の長さに応じて小さくして零点調整量を算出するのであるが、具体的には、計量コンベヤ7の無負荷時間Tx´の長さに応じて、零点重量値を零点調整量に変換するための変換係数kaを定め、測定した零点重量値に変換係数kaを乗じて零点調整量とするようにしている。
この変換係数ka(=0〜1)は、計量コンベヤ7の無負荷時間Tx´が、長くなるにつれて、最小値ka=0から最大値ka=1へと徐々に大きくなるようにしている。
したがって、無負荷時間Tx´が短いほど、変換係数kaが「0」又はそれに近い値とされ、測定した零点重量値に、この「0」又はそれ近い値の変換係数kaが乗算されることによって、縮小度合は大きくなり、より小さな零点調整量に変換されて零点調整される。なお、変換係数kaが「0」、したがって、零点調整量が「0」のときには、零点調整は行わない。
また、負荷時間Tx´が長いほど、変換係数kaが「1」又はそれに近い値とされ、測定した零点重量値に、この「1」又はそれに近い変換係数kaが乗算されることによって、縮小度合は小さくなり、測定した零点重量値又はそれにより近い値の零点調整量に変換されて零点調整される。
計量コンベヤ7の無負荷時間Tx´が短いと、先行する物品の計量コンベヤ7からの離脱による過渡応答振動信号の影響が大きく、測定される零点重量値のバラツキは大きくなるので、無負荷時間Tx´が短いほど、測定した零点重量値に、「0」又はそれに近い変換係数kaを乗じてより小さい零点調整量に変換するようにしており、これによって、バラツキの大きい零点重量値によって、零点の大きな誤調整が行われるのを回避するようにしている。
また、計量コンベヤ7の無負荷時間Tx´が長いと、過渡応答振動信号が収束し、測定される零点重量値のバラツキは小さくなるので、無負荷時間Tx´が長いほど、測定した零点重量値に、「1」又はそれに近い変換係数kaを乗じて、測定した零点重量値、又はそれににより近い値の零点調整量に変換して零点調整を行うようにしている。
このように計量コンベヤ7の無負荷時間Tx´に応じて変換係数kaを定め、測定した零点重量値に変換係数kaを乗算して零点調整量を算出し、この零点調整量によって計量コンベヤ7の零点調整を行うのであるが、更に、この実施形態では、零点重量値を測定するために、種々の応答特性を持つ複数のフィルタを有するフィルタ処理手段によって、零点重量を測定する荷重信号をフィルタ処理するようにしている。
上記特許文献1では、先行の物品が計量コンベヤから離脱し、後続の物品が乗込む迄の短い無負荷時間に、荷重信号をフィルタ処理するために、零点重量の測定には、応答特性の速い高周波成分除去用の低域フィルタのみを使用している。
このため、特許文献1では、変動する計量コンベヤの無負荷時間に応じた最適な特性のフィルタ処理ができない場合があり、例えば、フィルタの応答特性が、計量コンベヤ7の無負荷時間に比べて遅過ぎると、計量コンベヤ上に未だ物品が存在しているときに測定した荷重信号成分がフィルタ演算に含まれてしまい、フィルタ出力が零点重量値を精確に表さないという問題がある。
反対にフィルタの応答特性が、計量コンベヤ7の無負荷時間に比べて速過ぎると、計量コンベヤ7の無負荷時間が長い場合であっても、過渡応答振動信号の振幅を十分に減衰させたバラツキの小さい零点重量値を取得することができないという問題がある。
この実施形態では、計量コンベヤ7が無負荷状態である無負荷時間に応じたフィルタ処理を行えるようにして、安定した精確な零点重量値を取得できるように、次のように構成している。
すなわち、この実施形態では、種々の応答特性を持つ複数のフィルタを有するフィルタ処理手段を備えており、計量コンベヤ7の無負荷時間を測定し、測定した無負荷時間に対応する応答特性のフィルタの出力を選択して零点重量値を取得するようにしている。
フィルタ処理手段の応答特性の異なる複数のフィルタは、複数のフィルタ素子を従属接続して構成し、零点重量値を測定する荷重信号を、フィルタ処理手段の前記複数のフィルタを通過させる。
なお、物品の重量値は、従来と同様にフィルタ処理された荷重信号から従来と同様に測定する。
複数のフィルタを従属接続すると、それぞれのフィルタから出力される荷重信号は、異なる応答特性と平滑特性を有し、後段に接続されたフィルタからの出力ほど、応答特性は遅く、すなわち、出力応答時間は長くなり、平滑特性は大きくなって振動成分の減衰量は大きくなる。
反対に前段に接続されたフィルタからの出力ほど、応答特性は速く、すなわち、出力応答時間は短くなり、平滑特性は小さくなって振動成分の減衰量は小さくなる。
この実施形態では、計量コンベヤ7の無負荷時間を測定し、複数のフィルタの各出力点を、計量コンベヤ7の無負荷時間に応じて選択することによって、計量コンベヤ7の無負荷時間に応じた応答特性のフィルタによってフィルタ処理された荷重信号を読み取って零点重量値を取得する。
具体的には、計量コンベヤ7の無負荷時間が短いほど、応答特性の速い、すなわち、応答時間の短いフィルタの出力を選択し、計量コンベヤ7の無負荷時間が長いほど、応答特性の遅い、すなわち、応答時間の長いフィルタの出力を選択する。
このように計量コンベヤ7の無負荷時間に応じた応答特性のフィルタの出力を読み取って零点重量値を取得するので、フィルタの応答時間が無負荷時間に比べて長過ぎて、計量コンベヤ7上に物品が未だ存在している状態のときにサンプリングした荷重信号成分がフィルタ演算に含まれるといったことがなく、荷重信号にレベル上で誤差のない精確な零点重量値を取得することができる。
また、計量コンベヤ7の無負荷時間が長いほど、応答特性の遅い、平滑特性の大きいフィルタの出力を読み取って零点重量値を取得するので、荷重信号に含まれる、物品が計量コンベヤ7から離脱する際の過渡応答信号の平滑度合が大きくなる、言い換えれば過渡応答振動信号の減衰度合が大きくなるので、バラツキのより少ない安定で精確な零点重量値を取得することができる。
計量コンベヤ7の荷重センサ10から出力されるアナログ荷重信号は、上記図2の増幅器15で増幅され、A/D変換器16によって、短いサンプリング間隔Δt、例えば、1msec毎(Δt=1msec)にA/D変換され、デジタル荷重信号として演算制御部17へ読み込まれ、零点重量値を測定するデジタル荷重信号は、後述するフィルタ処理手段によってフィルタ処理される。また、物品の重量値は、従来と同様のフィルタによってフィルタ処理されたデジタル荷重信号によって算出される。
デジタル荷重信号のフィルタ出力値をWa、予め調整段階で記憶させた計量コンベヤ7の無負荷時のデジタル荷重信号のフィルタ出力値(初期荷重)をWi、既知の分銅などの荷重を計量コンベヤ7上に載置して定めたスパン係数をK、稼働運転中に生じる零点変動量の積算値をWzとすると、物品が計量コンベヤ7上に存在するときの物品の重量測定値Wnは、
Wn=K・(Wa−Wi)−Wz ・・・(1)
として算出される。
この(1)式のスパン係数K及び初期荷重Wiを求めるための荷重信号は、例えば、後述のフィルタ処理手段の最も応答特性が遅いフィルタの出力によるものである。
物品が計量コンベヤ7上に存在しない無負荷時に得られ、後述のフィルタ処理手段によって無負荷時間に応じた応答特性のフィルタによってフィルタ処理された出力値Waに基づく重量測定値Wnは、計量コンベヤ7の零点重量値であり、Wn≠0であれば、Wnの値は、零点変動量を意味し、零点調整されるべき値である。
なお、物品が計量コンベヤ7上に存在するときの物品の重量測定値Wnは、上記のように従来と同様のフィルタ処理、すなわち、物品Gが送込みコンベヤ6から離脱し、計量コンベヤ7上に完全に乗り移った図3のcの位置から、物品Gが送出しコンベヤ8に接触する直前の位置dに到達するまでに要する時間を応答特性とするフィルタによるフィルタ出力Waに基づいて、上記(1)式から算出される。
図4は、演算制御部17に構成されるフィルタ処理手段を示す図である。
この実施形態のフィルタ処理手段20には、1msecのサンプリング間隔(Δt=1msec)でアナログ荷重信号をデジタル荷重信号に変換する上記A/D変換器16からのデジタル荷重信号Wa´が読み込まれる。
このフィルタ処理手段20は、A/D変換器16によってA/D変換された1つのA/Dサンプリングデータを記憶できるセルメモリS1(0)〜S1(N1−1)を、直列にN1個接続したシフトレジスタSR1と、各セルメモリS1(0)〜S1(N1−1)の出力の平均値を演算する平均値演算素子1/N1と、平均値演算素子1/N1の出力A1を記憶するセルメモリS2(0)〜S2(N2−1)を、直列にN2個接続したシフトレジスタSR2と、各セルメモリS2(0)〜S2(N2−1)の出力の平均値を演算する平均値演算素子1/N2と、平均値演算素子1/N2の出力A2を記憶するセルメモリS3(0)〜S3(q+r−1)を、直列にN3=q+r個接続したシフトレジスタSR3と、各セルメモリの出力の平均値をそれぞれ演算する複数の平均値演算素子1/q,1/(q+1),・・・,1/(q+r´),・・・,1/(q+r)とを備えている。
このフィルタ処理手段20では、A/D変換器16からのデジタル荷重信号Wa´が、Δt=1msec毎に新たに読み込まれる度に、シフトレジスタSR1のセルメモリS1(0)〜S1(N1−1)の記憶データを図4の右方向へ順次シフトして、左端のセルメモリS1(0)に新たに読み込まれるデジタル荷重信号を記憶する。
平均値演算素子1/N1は、Δt毎にセルメモリS1(0)〜S1(N1−1)の出力の平均値を演算してシフトレジスタSR2に出力する。
シフトレジスタSR2は、平均値演算素子1/N1からの出力A1がΔt毎に入力される度に、セルメモリS2(0)〜S2(N2−1)の記憶データを図4の右方向へ順次シフトして、左端のセルメモリS2(0)に新たな入力を記憶する。
平均値演算素子1/N2は、Δt毎にセルメモリS2(0)〜S2(N2−1)の出力の平均値を演算してシフトレジスタSR3に出力する。
シフトレジスタSR3は、平均値演算素子1/N2からの出力A2がΔt毎に入力される度に、セルメモリS3(0)〜S3(q+r−1)の記憶データを図4の右方向へ順次シフトして、左端のセルメモリS3(0)に新たな入力を記憶する。
複数の各平均値演算素子1/q,1/(q+1),・・・,1/(q+r´),・・・,1/(q+r)は、対応するセルメモリS3(0)〜S3(q−1),S3(0)〜S3(q),・・・,S3(0)〜S3(q+r´−1),・・・,S3(0)〜S3(q+r−1)の出力の平均値を演算して出力する。
ここで、平均値演算素子1/(q+r´)は、図4の左端の平均値演算素子1/qから右端の平均値演算素子1/(q+r)までの各平均値演算素子を代表的に示すものであって、r´=0〜rであり、r´=0のときに、左端の平均値演算素子1/qに相当し、r´=rのときに、右端の平均値演算素子1/(q+r)に相当する。
複数の各平均値演算素子1/q,1/(q+1),・・・,1/(q+r´),・・・,1/(q+r)の、例えば、平均値演算素子1/qは、セルメモリS3(0)〜S3(q−1)のq個の出力の加算値I(0)をqで除算して平均値I(0)/qを算出し、平均値演算素子1/(q+1)は、セルメモリS3(0)〜S3(q)のq+1個の出力の加算値I(1)をq+1で除算して平均値I(1)/(q+1)を算出し、平均値演算素子1/(q+r´)は、セルメモリS3(0)〜S3(q+r´−1)のq+r´個の出力の加算値I(r´)をq+r´で除算して平均値I(r´)/(q+r´)を算出し、平均値演算素子1/(q+1)は、セルメモリS3(0)〜S3(q+r−1)のq+r個の出力の加算値I(r)をq+rで除算して平均値I(r)/(q+r)を算出する。
このようにシフトレジスタSR3では、セルメモリS3(q−1)以降に接続される1つのセルメモリ毎に順次応答時間が増加する方向に、対応するセルメモリの出力の平均値を出力する複数の平均値演算素子1/q,1/(q+1),・・・1/(q+r´)・・・,1/(q+r)を設け、計量コンベヤ7の無負荷時間Tx’の長さに、従属接続したフィルタの出力の応答時間がΔt刻みで対応することができるようになっている。
この実施形態では、複数の各平均値演算素子1/q,1/(q+1),・・・,1/(q+r´),・・・,1/(q+r)のいずれかの出力を、計量コンベヤ7の無負荷時間Tx´に応じて選択し、フィルタ処理手段20によるフィルタ出力とし、そのフィルタ出力から零点重量値を取得する。
各フィルタの出力をそれぞれ与える、隣合う各平均値演算素子1/q,1/(q+1),・・・,1/(q+r´),・・・,1/(q+r)の間には、各セルメモリS3(q)〜S3(q+r−1)及び各加算素子が、順次それぞれ接続され、各フィルタが従属接続された構成とみなすことができる。
シフトレジスタSR1のN1個のセルメモリS1(0)〜S1(N1−1)に記憶させるデータをサンプリングするのに要する時間は、計量コンベヤ7の固有振動信号の1周期に相当するように設定され、このシフトレジタSR1及び平均値演算素子1/N1によって、物品が計量コンベヤ7を離脱したときに生じる固有振動ノイズ信号を大きい減衰率で除去するようにしている。
また、シフトレジスタSR2のN2個のセルメモリS2(0)〜S2(N2−1)に記憶させるデータをサンプリングするのに要する時間は、交流信号ノイズ(ラインノイズ)の1周期に相当するように設定され、このシフトレジスタSR2と平均値演算素子1/N2によって、交流信号ノイズを大きい減衰率で除去するようにしている。
いずれも零点重量値を測定する上で、除去すべきノイズ信号を大きい減衰率で除去するのに好適なフィルタを構成する。
図5は、図4のフィルタ処理手段20に入力されるデジタル荷重信号Wa´に対する平均値演算素子1/N1,1/N2の出力A1,A2及び平均値演算素子1/q,1/(q+1),・・・,1/(q+r´),・・・,1/(q+r)の出力のタイミングを説明するための図である。図5において、○印は、A/D変換器16からΔt毎に入力されるデジタル荷重信号Wa´であり、このデジタル荷重信号Wa´が、シフトレジスタSR1のN1個のセルメモリS1(0)〜S1(N1−1)に順次入力されるので、各セルメモリS1(0)〜S1(N1−1)の出力となる。
×印は、Δt毎にセルメモリS1(0)〜S1(N1−1)の出力の加算値をN1で除算した平均値演算素子1/N1の演算結果、すなわち、平均値演算素子1/N1の出力のデータ列A1である。この平均値演算素子1/N1の演算結果を得るまでには、デジタル荷重信号Wa´が、シフトレジスタSR1のセルメモリS1(0)に読み込まれた時点T=0から(N1−1)Δtの時間が経過しており、この時間(N1−1)Δtが、上記の計量コンベヤ7の固有振動信号の1周期に相当する。この平均値演算素子1/N1の演算結果は、シフトレジスタSR2のセルメモリS2(0)〜S2(N2−1)に順次記憶される。
△印は、Δt毎に平均値演算素子1/N1の演算結果のデータA1を記憶したセルメモリS2(0)〜S2(N2−1)の出力の加算値をN2で除算した平均値演算素子1/N2の演算結果、すなわち、平均値演算素子1/N2の出力のデータ列A2である。この平均値演算素子1/N2の演算結果を得るまでには、平均値演算素子1/N1の演算結果が得られた時点から(N2−1)Δtの時間が経過しており、この時間(N2−1)Δtが、上記の交流ノイズ信号(ラインノイズ)の1周期に相当する。この平均値演算素子1/N2の演算結果は、シフトレジスタSR3のセルメモリS3(0)〜S3(q+r−1)に順次記憶される。
平均値演算素子1/N2の演算結果は、2つの平均値演算過程を含み、多重移動平均データとなっている.
シフトレジスタSR3のセルメモリS3(0)〜S3(q−1)のq個の出力の加算値I(0)を、qで除算した平均値演算素子1/qの出力I(0)/qが、フィルタ処理手段20から取得する最も応答時間の短いフィルタの出力であって、このフィルタの出力から零点重量値が算出される。この平均値演算素子1/qの出力が得られる時点は、シフトレジスタSR2のセルメモリS2(0)〜S2(N2−1)の平均値、すなわち、平均値演算素子1/N2の出力A2が得られた時点から(q−1)・Δtの時間が経過した時点である。
また、この時点は、デジタル荷重信号Wa´が、シフトレジスタSR1のセルメモリS1(0)に読み込まれた時点T=0からは、{(N1−1)+(N2−1)+(q−1)}・Δtの時間が経過した時点であり、この時間が、セルメモリS3(0)〜S3(q−1)の出力の加算値I(0)に対応するフィルタの出力点である平均値演算素子1/qまでの応答時間である。
この時間{(N1−1)+(N2−1)+(q−1)}・Δtを、計量コンベヤ7の無負荷時における零点重量値を測定できる最短時間とする。この零点重量値を測定できる最短の無負荷時間(以下「第1無負荷時間」ともいう)は、図3におけるTaとして示すことができる。また、デジタル荷重信号Wa´が、シフトレジスタSR1のセルメモリS1(0)に読み込まれた時点T=0は、図3において、先行の物品G0の後端部が計量コンベヤ7から丁度離脱し、その先端部が、位置pに到達する時間である無負荷開始時間tpに対応する。
第1無負荷時間Taを、例えば、計量コンベヤ7の長さ、物品の長さ、計量コンベヤ7の搬送速度によって定まる計量コンベヤ7の無負荷開始時間Tx=tpより、例えば100msec経過した時間とすると、
Ta={(N1−1)+(N2−1)+(q−1)}・Δt
=100(msec)
である。
この例では、上記のようにΔt=1msecであるので、セルメモリを[(N1−1)+(N2−1)+(q−1)]=100個用意する。
シフトレジスタSR3の最も少ないセルメモリS3(0)〜S3(q−1)の平均値の出力点である平均値演算素子1/qから最も多いセルメモリS3(0)〜S3(q+r−1)の平均値の出力点である平均値演算素子1/(q+r)までを代表的に示す平均値演算素子1/(q+r´)は、デジタル荷重信号Wa´が、シフトレジスタSR1のセルメモリS1(0)に読み込まれた時点T=0からは、{(N1−1)+(N2−1)+(q+r’−1)}・Δtの時間が経過した時点のフィルタ出力値であり、r’の値は、測定される計量コンベヤ7の無負荷時間Tx’の値に次のように対応づけられる。
Tx’={(N1−1)+(N2−1)+(q+r’−1)}・Δt
=Ta+r’・Δt
そして、計量コンベヤ7の無負荷時間Tx’の測定値によって、対応する平均値演算素子1/(q+r´)の出力I(r´)/(q+r´)が選択される。
物品が計量コンベヤ7から離脱する際に生じる過渡応答振動信号の振幅が十分小さくなるまで収束し、十分安定なフィルタ出力、したがって、バラツキの小さな精確な零点重量値を取得できる応答時間Tbを定める。この応答時間Tbは、シフトレジスタSR3におけるセルメモリが最も多い場合、すなわち、セルメモリS3(0)〜S3(q+r−1)までの平均値を出力する平均演算素子1/(q+r)までの応答時間に対応する。
この十分に安定なフィルタ出力が得られる応答時間Tbは、図3における無負荷時間Tb(=Tx−tp)として示すことができる。ここで、この無負荷時間Tbを、例えば、無負荷開始時間tpと同じ(Tb=tp)とする、すなわち、物品間の時間間隔Txが、無負荷開始時間tpの2倍(Tx=2・tp)となったときに、十分に安定なフィルタ出力を取得できるとする。
この十分安定なフィルタ出力を取得できる無負荷時間Tb(以下「第2無負荷時間」ともいう)は、セルメモリS3(0)〜S3(q+r−1)の出力の加算値I(r)に対応するフィルタの出力点である平均演算素子1/(q+r)までの応答時間であり、図5に示すように、デジタル荷重信号Wa´が、シフトレジスタSR1のセルメモリS1(0)に読み込まれた時点T=0からは、{(N1−1)+(N2−1)+(q+r−1)}・Δtの時間が経過した時点である。したがって、第2無負荷時間Tbを、無負荷開始時間tpと同じとすると、
Tb={(N1−1)+(N2−1)+(q+r−1)}・Δt
=Ta+r・Δt=100+r=tp (∵Δt=1msec)
となるようにセルメモリを、第1無負荷時間Taの100個に加えて、更にr個用意する。
計量コンベヤ7の無負荷時間Tx’が、この第2無負荷時間Tb以上のときには、十分に安定なフィルタ出力、したがって、バラツキの小さい精確な零点重量値を取得できるとして、平均値演算素子1/(q+r)から出カされるデータを選択する。
この実施形態では、計量コンベヤ7の無負荷時間Tx´が、第1無負荷時間Ta未満であるときには、物品の計量コンベヤ7からの離脱による過渡応答振動信号が大きく、有効な零点調整を行うことができないとして零点調整を行わず、無負荷時間Tx´が、第1無負荷時間Ta以上で第2無負荷時間Tb以下であるときには、その無負荷時間Tx´に応じたフィルタの出力を選択して零点調整を行い、無負荷時間Tx´が、第2無負荷時間Tbを超えるときには、十分安定なフィルタ出力が得られるとして、第2無負荷時間Tbに応じたフィルタの出力を選択して零点調整を行うようにしている。
計量コンベヤの無負荷時間Tx’が長いほど、計量コンベヤ7から物品が離脱したときに生じる過渡応答振動信号は収束してその振幅は小さくなり、加えて、計量コンベヤ7の無負荷時間Tx’の長さに応じた応答時間の長いフィルタで処理できるので、過渡応答特性、フィルタの減衰特性のいずれの点からも、よりバラツキの小さい、安定した精確な零点重量値を得ることができる。
この実施形態では、上記のように、計量コンベヤ7の無負荷時間Tx´が短いほど、すなわち、測定される零点重量値のバラツキが大きく信頼性が低いほど、測定される零点重量値に、「0」又はそれに近い変換係数kaを乗じて実際に測定された零点重量値よりも小さな零点調整量に変換して零点調整し、計量コンベヤ7の無負荷時間Tx´が長いほど、すなわち、測定される零点重量値のバラツキが小さく信頼性が高いほど、測定される零点重量値に、「1」又はそれに近い変換係数kaを乗じて実際に測定された零点重量値に近い零点調整量に変換して零点調整する。
ここで、測定される零点重量値の零点調整量への変換による効果について、(a)計量コンベヤ7の無負荷時間が短いため、測定した零点重量値に大きいバラツキ成分が含まれる場合と、(b)計量コンベヤ7の無負荷時間が長いため、測定した零点重量値には小さいバラツキ成分しか含まれない場合とに分けて説明する。
(a)計量コンベヤ7の無負荷時間が短いため、測定した零点重量値に大きいバラツキ成分が含まれる場合
計量コンベヤ7の無負荷時間が短いほど応答特性の速いフィルタで処理するので、零点重量値の測定値には、大きいバラツキ成分が含まれる。
測定した零点重量値が、バラツキ成分を含んでいても、零点重量の測定値の絶対値、すなわち、零点変動量の測定値の絶対値が大きいほど、実際に生じている零点変動の大きさ、プラスまたはマイナス方向についての傾向が明らかに表れる。すなわち、実際の零点変動量が大きいほど、測定される零点重量値には、零点変動の大きさ、プラスまたはマイナス方向の傾向が明らかに表れる。
実際の零点重量の変動量が大きく、大きめの零点重量値が測定されたときであって、計量コンベヤ7の無負荷時間Tx´によってバラツキが大きいと判定される場合、すなわち、計量コンベヤ7の無負荷時間Tx´が短い場合には、測定した零点重量値は、上記のように「0」に近い変換係数kaが乗じられて大きな縮小度合で縮小され、小さな零点調整量に変換されるものの、零点変動の傾向に応じて零点調整量が得られるようにしている。したがって、例えば、生産能力の高い生産装置の後段の搬送ラインのように物品の搬送間隔が狭い搬送ラインであって、計量コンベヤ7の無負荷時間が生じる機会が少ないような場合であっても、無負荷時間が生じる少ない機会を捉えて少しでも現在の実際の零点変動の傾向に応じた零点調整を行うことができる。
反対に、実際の零点重量の変動量が小さい場合は、実際の零点重量値が、例えばプラスの小さい値であるにもかかわらずバラツキが大きいために、零点重量値としてマイナスの値に測定されてしまうことがあるが、計量コンベヤ7の無負荷時間Tx´が短い場合には、測定した零点重量値には、「0」に近い変換係数kaが乗じられて大きな縮小度合で縮小され、極小さな零点調整量に変換されるので、零点調整量が、実際の零点変動の方向と異なる方向、大きさであっても、零点の誤調整の程度を小さく抑制することができる。
(b)計量コンベヤ7の無負荷時間が長いため、測定した零点重量値には小さいバラツキ成分しか含まれない場合
計量コンベヤ7の無負荷時間が長く、荷重信号のバラツキの小さい場合は、安定で精確な零点重量値が測定できるので、物品の搬送間隔が狭い搬送ラインであって、計量コンベヤ7の無負荷時間が生じる機会が少ない場合であっても、計量コンベヤ7が無負荷状態になる機会を得たときに、実際に測定される零点重量値が大きくても小さくても、無負荷の機会を捉え、測定した零点重量値には、「1」又はそれに近い変換係数kaを乗じて、測定される零点重量値又はそれに近い値の零点調整量を算出する。これによって、1回の無負荷の機会であっても現時点の計量コンベヤ7の実際の零点重量値(零点変動量)に近いか等しい方向、大きさの零点調整量によって精確に零点調整することができる。
測定した零点重量値に乗じる変換係数kaは、例えば計量コンベヤ7の無負荷時間Tx´の長さに応じた変換係数の関数を設定し、稼働運転時には、計量コンベヤ7の無負荷時に測定した零点重量値に対して、計量コンベヤ7の無負荷時間Tx´の長さに応じた変換係数kaを選択して乗算することによって零点重量値を小さくした零点調整量を算出する。
図6は、この変換係数の関数を示すグラフであって、無負荷時間Tx’が上記第1無負荷時間Taと第2無負荷時間Tbとの間では、変換係数kaは、計量コンベヤ7の無負荷時間Tx’をパラメータとする1次関数に定めている。なお、本発明の他の実施形態として、高次関数に定めてもよい。この図6では、零点重量値に乗じて零点調整量とする変換係数kaを、無負荷時間Tx´に応じて、次のように規定している。
(1)Tx’<Taのとき
ka=0
計量コンベヤ7の無負荷時間Tx´が、第1無負荷時間Ta未満であるときには、物品の計量コンベヤ7からの離脱による過渡応答振動信号が大きく、有効な零点調整を行うことができないとして、いかなる零点重量値が測定されても零点調整量は「0」になる。つまり零点調整は行わない。
(2)Ta≦Tx’≦Tbのとき
ka={1/(Tb−Ta)}・Tx’−{Ta/(Tb−Ta)}
(3)Tx’>Tbのとき
ka=1
計量コンベヤ7の無負荷時間Tx´が、第2無負荷時間Tbを超えるときには、物品の計量コンベヤ7からの離脱による過渡応答振動信号が十分に収束し、十分安定した精確な零点重量値が測定できるとして、測定した零点重量値そのものを零点調整量とする。
このように無負荷時間Tx´が、第1無負荷時間Ta〜第2無負荷時間Tbにおいて、変換係数kaは、無負荷時間Tx´が短いほど、零点重量値を、それより絶対値が小さな零点調整量に変換するように定められる。
次に、零点重量値を算出するためのデータの取得までの処理を、図7のフローチャートに基づいて説明する。
この図7の処理は、演算制御部17に内蔵のクロック生成回路の、例えば1msec毎のクロックパルスによって、1msec間隔で起動し、他の処理によりも優先して処理される。すなわち、1msec毎に最優先で実行される。
演算制御部17がA/D変換器16からデジタル荷重信号を読み込み(ステップn1)、上記図4に示すフィルタ処理手段20によってフィルタ演算処理を実施する(ステップn2)。但し、平均値演算素子による演算は、平均値演算素子1/N1と、平均値演算素子1/N2による多重平均演算処理のみを行う。平均値演算素子1/q,1/(q+1),・・・1/(q+r´)・・・,1/(q+r)による平均値演算は、別の処理プログラムで実行する。
次に、フラグFoが「1」にセットされているか否かを判断し(ステップn3)、「1」にセットされていないときには、フラグFaが「1」にセットされているか否かを判断し(ステップn4)、「1」にセットされていないときには、物品センサ12が物品を検知したか否かを判断し(ステップn5)、検知していないときには終了する。すなわち、フラグFo及びフラグFaが、共に「0」である状態では、物品が物品センサ12で検知されないときには、計量コンベヤ7の無負荷時間Tx´を算出するための物品間の時間間隔Txはカウントしない。
ステップn5で物品を検知したときには、フラグFo及びフラグFaに「1」をそれぞれセットし、次の処理サイクルより計量コンベヤ7の無負荷時間Tx´を算出するための物品間の時間間隔Txをカウントできる状態にして終了する(ステップn6,n7)。
ステップn3において、フラグFoが「1」にセットされているときには、物品を物品センサ12で検知し、物品が、物品センサ12の検知領域を通過中であるとして、物品が検知領域を完全に通過するまでの時間を計測する通過時間計測用カウンタCoをインクリメントし(ステップn9)、通過時間計測用カウンタCoのカウント値が、物品が物品センサ12の検知領域を完全に通過し終える時間To以上になったか否かを判断する(ステップn10)。
通過時間計測用カウンタCoのカウント値が、物品が物品センサ12の検知領域を完全に通過し終えるまでの時間To以上になっていないときには、ステップn13に移り、検知領域を完全に通過し終える時間To以上になったときには、物品センサ12で検知された物品が、物品センサ12の検知領域を完全に通過したとして、フラグFo及び通過時間計測用カウンタCoをそれぞれリセットしてステップn13に移る(ステップn11,n12)。
ステップn13では、先行する物品と後続の物品との時間間隔Txを計測する時間間隔計測用カウンタCaをインクリメントして終了する。物品が物品センサ12の検知領域を通過し終える時間Toが経過しても、時間間隔計測用カウンタCaのカウントを継続する。
ステップn3において、フラグFoが「1」にセットされておらず、ステップn4において、フラグFaが「1」にセットされているときには、フラグFoが「1」にセットされているか否かを判断する(ステップn8)。
ステップn8において、フラグFoが「1」にセットされているときには、物品が物品センサ12の検知領域を通過中であるとして、上記のステップn9に移り、「1」にセットされていないときには、ステップn14に移る。ステップn14では、物品間の時間間隔Txを計測する時間間隔計測用カウンタCaをインクリメントし、ステップn15に移る。すなわち、フラグFo=0であってもフラグFa=1であれば、次の物品が、物品センサ12に未だ到達していないので、時間間隔計測用カウンタCaによって物品間の時間間隔Txをカウントする。
ステップn15では、物品センサ12で物品を検知したか否かを判断し、物品を検知していないときには、時間間隔計測用カウンタCaのカウント値Txから計量コンベヤ7の無負荷時間Tx´(=Txーtp)を算出し、算出した無負荷時間Tx´が、上記第2無負荷時間Tb以上であるか否かを判断し(ステップn16)、第2無負荷時間Tb以上でないときには、終了する。
ステップn15において、物品を検知したときには、無負荷時間Tx’が第2無負荷時間Tbに到達する前に、次の物品が物品センサ12で検知されて無負荷時間が終了するとして、フラグFaを「0」にリセットし(ステップn17)、そのときの無負荷時間Tx´をメモリMtにストアし(ステップn18)、零点調整を実施するための零点調整起動用フラグFzを「1」にセットし(ステップn19)、時間間隔計測用カウンタCaをリセットし(ステップn20)、この時点の零点重量値(零点変動量)を求めるために、無負荷時間Tx´に応じたセルメモリS3(0)〜S3(q+r´−1)の出力を、メモリMRへストアして終了する(ステップn21)。後述のように、別のプログラムで零点重量値、零点調整量を求め、零点調整する。最優先プログラムが実行されるとすぐに零点調整起動用フラグFz=1に基づくプログラムが実行されるので、零点調整の実施のタイミングに遅れが生じない。
上記ステップn16で、無負荷時間Tx´が、上記第2無負荷間Tb以上になると、すなわち、次の物品の到来がないまま、無負荷時間Tx´が、第2負荷時間Tb以上になると、その時の無負荷時間Tx´をメモリMtにストアし(ステップn18)、零点調整起動用フラグFzを「1」にセットし(ステップn19)、時間間隔計測用カウンタCaをリセットする(ステップn20)。
このときには、零点重量値(零点変動量)を求めるために、第2無負荷時間Tbに応じたセルメモリS3(0)〜S3(q+r−1)の出力を、メモリMRへストアして終了する(ステップn21)。
この場合、すなわち、次の物品の到来がないまま、無負荷時間Tx´が、第2負荷時間Tb以上になったときには、フラグFaは「1」のままにしている。フラグFa=1であると、次の処理サイクルから上記のステップn4,n8,n14へと進み、次の物品が物品センサ12で検知されるまでは、再び、時間間隔計測用カウンタCaで物品間の時間間隔Txのカウントを開始する。
なお、コンベヤ運転スイッチをオンすると、強制的にフラグFaを「1」にセットして最初の処理サイクルから上記のステップn4,n8,n14へと進み、次の物品が物品センサ12で検知されるまでは、再び、時間間隔計測用カウンタCaで物品間の時間間隔Txのカウントを開始する。
図8は、零点調整処理を示すフローチャートであり、この図8は、図7より優先度の低いプログラム処理にて、計量コンベヤ7の無負荷時間Tx´とフィルタ出カデータとによって変換係数ka、零点重量値(零点変動量)Wnz、零点調整量Wnzaを算出し、零点調整を実施する処理を示す。
先ず、零点調整起動フラグFzが「1」にセットされているか否かを判断し(ステップn101)、「1」にセットされているときには、零点調整起動フラグFzを「0」にリセットし(ステップn102)、メモリMtにストアされている計量コンベヤ7の無負荷時間Tx´の値を読み出す(ステップn103)。
次に、図6に基づく上記(1)〜(3)に従って無負荷時間Tx´に応じた変換係数kaを決定する(ステップn104)。
次に、メモリMRにストアされているセルメモリの値を読み出し、無負荷時間Tx´の値に応じて、複数の平均値演算素子1/q,1/(q+1),・・・1/(q+r´)・・・,1/(q+r)のいずれかの平均値を算出し、Waとし、上記(1)式より、計量コンベヤ7の無負荷時の重量値である零点重量値Wn=Wnzを求める(ステップn105)。
このとき、無負荷時間Tx´が、第1無負荷時間Ta未満では、フィルタ出力は得られず、零点重量値は取得できない(Wnz=0)。また、無負荷時間Tx´が、平均値演算素子1/(q+r´)に対応するとすると、
Tx´<Taのときは、 Wnz=0
Tx´≧Taのときは、 Wa=I(r´)/(q+r´)
となる。
次に、決定した変換係数kaを用いて零点調整量Wnzaを、
Wnza=ka・Wnzによって算出する(ステップn106)。
次に、積算変動レジスタの値Wzに
Wz+Wnza→Wzと加算して零点調整を実行する。
以上のように本実施形態によれば、取得される零点重量値を、その零点重量値が取得される無負荷時間とは別の無負荷時間において取得された他の零点重量値を用いることなく、零点調整起動用フラグFzが「1」にセットされると、つまり、零点重量値が測定されればすぐに、その信頼性に応じて修正して零点調整量とし、この零点調整量によって零点調整を行うので、零点重量値を取得する度に、現在の計量コンベヤ7の零点変動量に応じて、且つ、その信頼性に応じた零点調整を行うことができる。
これによって、従来例のように零点重量値を複数回に亘って取得し、その複数回の零点重量値の平均値を算出するといった必要がなく、計量コンベヤの無負荷状態が稀にしか生じないような搬送ラインにおいて、零点重量値を取得できる時間間隔が長くなって、その間に零点が変動してしまい、過去に取得した古い零点重量値と、最新の零点重量値とを含む複数回の零点重量値で平均値を算出して零点調整を行うために、算出した平均値が最新の零点重量値を表さず、精確な零点調整が行えないといったことがない。
更に、計量コンベヤ7の無負荷時間に応じた応答特性のフィルタの出力を選択して零点重量値を取得するので、先行する物品と後続の物品との搬送間隔が変動し、計量コンベヤ7が無負荷状態となる無負荷時間が変動しても、その無負荷時間に応じた応答特性のフィルタによって適切にフィルタ処理された荷重信号から零点重量値を取得することが可能となる。
これによって、例えば、計量コンベヤ7の無負荷時間に比べて、フィルタの応答特性が遅過ぎて、計量コンベヤ7上に未だ物品が存在する状態のときに測定した荷重信号成分がフィルタ処理されて精確な零点重量値を取得できなかったり、逆に、計量コンベヤ7の無負荷時間に比べて、フィルタの応答特性が速過ぎて、無負荷時間が長いにもかかわらず、過渡応答振動信号の振幅を十分に減衰させることができず、安定した零点重量値を取得することができないといったことがない。
上記実施形態では、変換係数kaによって零点重量値を修正して零点調整量としたけれども、本発明の他の実施形態として、例えば、計量コンベヤ7の無負荷時間Tx´の長さに応じた大きさの零点調整量の飽和値を設定し、稼働運転時において、計量コンベヤ7の無負荷時に測定した零点重量値(零点変動量)を、そのときに測定した計量コンベヤ7の無負荷時間Tx´の長さに応じた飽和値と比較し、測定した零点重量値が、飽和値以上であれば飽和値を零点調整量とし、飽和値未満であればそのとき測定した零点重量値でもって零点調整を行うようにしてもよい。
図9は、計量コンベヤ7の無負荷時間Tx’に応じて、零点調整量の飽和値である飽和零点調整量を、段階的に定めた例を示したものであり、縦軸の飽和零点調整量は、A/D変換器16の出力をフィルタ処理したA/Dカウント値に対応する。
飽和零点調整量は、零点重量値を修正して零点調整量を算出する際に、零点調整量の絶対値を規制するものであり、計量コンベヤ7の無負荷時間Tx´の長さに応じて、零点調整量の絶対値を段階的に規制するようにしている。
図9に示すように、上記の第1無負荷時間Taと第2無負荷時間Tbとの間に、無負荷時間Tx’の複数の境界値T1〜T4を定めて複数の区間(1)〜(7)に区分すると共に、区間(1)〜(7)毎に飽和零点調整量を定める。
ここで、上記(1)式のWn=K・(Wa−Wi)−Wzにおいて、重量値Wnは、A/D変換器16の出力Waに基づいて求められるが、A/D変換器16のデジタル分解能レベルは高く、A/Dカウント値であるWa、Wnは、実際に表示する表示重量値よりも分解能が高く、例えば、4倍以上の分解能を持つように構成される。
Wa、Wnが表示重量値の4倍の分解能を持つ場合で、表示重量値の最小表示量をwdとすると、wdとは、A/Dカウント値であるWnでは、カウント値4であり、0.5wdとは、Wnではカウント値2である。飽和零点調整量は、絶対値であり、符号は測定した零点重量値の符号と同じにする。計量コンベヤ7の無負荷時間Tx´の各区間(1)〜(7)において、零点調整量は、次のようになる。
(1)Tx’<Taのとき
零点調整量=0
すなわち、零点調整を行わない。
(2)Ta≦Tx’<T1のとき
飽和零点調整量=0.5wd=2カウントとする。
測定した零点重量値が2カウント以上であれば、零点調整量=2とし(符号は測定通り)2カウント未満(1〜0のいずれか)であれば、測定した零点重量値を零点調整量とする。
(3)T1≦Tx’<T2のとき
飽和零点調整量=wd=4カウントとする。
測定した零点重量値が4カウント以上であれば、零点調整量=4とし(符号は測定通り)4カウント未満(3〜0のいずれか)であれば、測定した零点重量値を零点調整量とする。
(4)T2≦Tx’<T3のとき
飽和零点調整量=1.5wd=6カウントとする。
測定した零点重量値が6カウント以上であれば、零点調整量=6とし(符号は測定通り)6カウント未満(5〜0のいずれか)であれば、測定した零点重量値を零点調整量とする。
(5)T3≦Tx’<T4のとき
飽和零点調整量=2.0wd=8カウントとする。
測定した零点重量値が8カウント以上であれば、零点調整量=8とし(符号は測定通り)8カウント未満(7〜0のいずれか)であれば、測定した零点重量値を零点調整量とする。
(6)T4≦Tx´<Tbのとき
飽和零点調整量=2.5wd=10カウントとする。
測定した零点重量値が10カウント以上であれば、零点調整量=10とし(符号は測定通り)10カウント未満 (9〜0のいずれか)であれば、測定した零点重量値を零点調整量とする。
(7)Tx’≧Tbのとき
飽和零点調整量を設けず、測定された零点重量値を、そのままの零点調整量とする。
次に、この飽和値を定めて零点調整量を求める図9に好適なフィルタ処理手段について図10(a),(b)に基づいて説明する。
図10(a)に示すフィルタ処理手段におけるフィルタFa、F1〜F4、Fbは、この順に応答特性が遅くなる性質のフィルタである。各フィルタFa、F1〜F4、Fbの持つ応答時間は、計量コンベヤ7の無負荷時間Tx’の長さに応じた値となるように各フィルタのフィルタ定数や次数、形式を設定する。
フィルタFa、F1〜F4、Fbの出カをそれぞれfa、f1、f2、f3、f4、fbとし、それら出力から取得される零点重量値をそれぞれWaa、Wa1、Wa2、Wa3、Wa4、Wabとする.
フィルタFaは、例えば、「1」の大きさのステップ信号の入カに対して、出カが「O.999」まで応答するに要する時間(=応答時間)が第1無負荷時間Taである応答特性を有する。出カfaは、無負荷時間Tx’が、上記図9の区間(1)または区間(2)のときに選択され、出力faによって零点重量値Waaを求める。但し、計量コンベヤ7の無負荷時間Tx’が区間(1)の場合は、零点重量値を求めることは不要で、上記のように零点調整量は強制的に0にする。
フィルタF1は、前記応答時間が図9のT1であり、出カf1は、無負荷時間Tx´が区間(3)のときに選択される。
フィルタF2は、前記応答時間が図9のT2であり、出カf2は、無負荷時間Tx´が区間(4)のときに選択される。
フィルタF3は、前記応答時間が図9のT3であり、出カf3は、無負荷時間Tx´が区間(5)のときに選択される。
フィルタF4は、前記応答時間が図9のT4であり、出力f4は、無負荷時間Tx´が区間(6)のときに選択される。
フィルタFbは、前記応答時間が第2無負荷時間Tbであり、出カfbは、無負荷時間Tx´が区間(7)のときに選択される。
図10(b)のフィルタ処理手段は、フィルタFa、F1´、F2´、F3´、F4´、Fb´を従属接続したフィルタ列で構成されている。
フィルタFaとフィルタF1´との従属フィルタの出カf1の応答時間が、図10(a)の上記フィルタF1と同じになるように、フィルタFaとフィルタF1´とフィルタF2´との従属フィルタの出カf2の応答時間が、図10(a)の上記フィルタF2と同じになるように、フィルタFaとフィルタF1´とフィルタF2´とフィルタF3´との従属フィルタの出カf3の応答時間が、図10(a)の上記フィルタF3と同じになるように、フィルタFaとフィルタF1´とフィルタF2´とフィルタF3´とフィルタF4´との従属フィルタの出カf4の応答時間が、図10(a)の上記フィルタF4と同じになるように、フィルタFaとフィルタF1´とフィルタF2´とフィルタF3´とフィルタF4´とフィルタFb´との従属フィルタの出力fbの応答時間が、図10(a)の上記フィルタFbと同じになるように、各フィルタFa、F1´、F2´、F3´、F4´、Fb´の特性が、それぞれ決められている。
応答時間に応じていずれのフィルタFa、F1´、F2´、F3´、F4´、Fb´の出力を選択して零点重量値を求めるかについては上記実施形態と同じである。
上記実施形態では、図6に示すように、変換係数kaを、計量コンベヤ7の無負荷時間Tx´の一次関数として規定したけれど、他の関数で規定するようにしてもよい。
上記のように、Txを物品間の時間間隔、零点調整が可能な零点重量値の測定可能な最短時間である第1無負荷時間Taを、例えば、Ta=100(msec)とし、Tx´を計量コンベヤ7の無負荷時間、tpを無負荷開始時間、十分安定な零点重量値を測定できる第2無負荷時間Tbを、Tb=tpとし、更に、無負荷時間Tcを、Ta<Tc<Tbに選ぶ。
この無負荷時間Tcのタイミングを、図5において、平均値演算素子1/(q+r´)に対応する加算値I(r´)に対応するタイミングであるとする。
無負荷時間Tx´=Taのタイミングは、図5において、平均値演算素子1/qに対応する加算値I(0)に対応するタイミングである。
予め、調整段階で繰り返し物品を流し、無負荷時間Tx´=Ta,Tcにおけるフィルタ出力に対応する加算値I(0)、I(r´)の値をそれぞれ測定してメモリに記憶させ、n回の試行の後に演算指令を行うと、無負荷時間Tx´=Taにおける、図5における加算値I(0)迄の平均値I(0)/q、加算値I(r´)迄の平均値I(r´)/(q+r´)を算出する。テスト終了時点で無負荷時間Tx´=Taに対応するフィルタ出力I(0)/qと、無負荷時間Tx´=Tcに対応するフィルタ出力I(r´)/(q+r´)のそれぞれのn回分の値から標準偏差σa、σcを求める。
これらの値から、任意の負荷時間Tx´における標準偏差σ(Tx´)の推定値を求めるための式を、
σ(Tx´)=B・A(Tx´-Ta) Tx´≧Ta ・・・(2)
と定義し、無負荷時間Tx´と標準偏差σa、σcより(2)式におけるA,Bの値を定める。
但し、Tx´<Taの場合は、σ(Tx´)=Bと規定する。(零点調整量=0となるように)
無負荷時間Tx´が増加するほど零点重量測定値のバラツキ量は小さくなり、ある値に安定するので、標準偏差の時間関数σ(Tx´)は、次第にBより小さいある値Cに収束する。したがって、A<1に求まる。
無負荷時間Tx´における零点重量測定値Wnzから零点調整量Wnzaを求める式として、上記のように下記の式を適用する。
Wnza=ka・Wnz ・・・(3)
kaを、零点重量測定値に応じた変換係数であるとすると、稼働運転時に計量コンベヤ7の無負荷時間Tx´を測定したときに
変換係数kaを定めるために(2)式に対して
k=σ(Tx´)/B ・・・(4)
ka=1−k ・・・(5)
式を定義する。
すなわち、零点重量値の測定タイミングがTx´=Taであったときにおいては
A(Tx´-Ta)=1
であるから、上記(2)式より
σ(Tx´)=σ(Ta)=B
したがって、上記(4)式より
k=σ(Ta)/B=1
また、上記(5)式より
ka=0
である。
また、
Tx´>Taにおいては、σ(Tx´)<σ(Ta)=Bに求まるので、kの値は、
k=σ(Tx´)/B<1
∴ 1>ka≧0
の間で求まり、無負荷時間Tx´が大きいほど1に近い値に求まる。
すなわち、無負荷時間Tx´が長いほど、零点調整量Wnzaは、零点重量測定値Wnzに近い値に求まるので、無負荷時間Tx´が長いほど、零点調整量Wnzaは零点重量測定値Wnzに近い値になる。
調整段階の物品計量試行テストによって(2)式が定められる。また、予め(4)、(5)式が用意される。
稼働運転の手順は、次のようにする。
計量コンベヤ7の無負荷時間Tx´を、Tx´=Tx−tpとして測定する。
Tx´の値を(2)式に入れてσ(Tx´)を求める。
求めたσ(Tx´)から(4)、(5)式より変換係数kaを求める。
無負荷時間Tx´における零点重量値を測定する。
Tx´=Tx−tp<Taであるときはσ(Tx´)=Bと規定する。(ka=0にする。)
その際、零点重量値を測定するために用意する、フィルタ用におけるシフトレジスタの従属列となるセルメモリ個数には限界があるので、図5におけるI(r)出力を取得するメモリを最大とすると、無負荷時間Tx´が、
Tx´=Tb={(N1−1)+(N2−1)+(q+r−1)}・Δt
以上であるときには、常に、零点重量値の測定値を、I(r)/(q+r)によって算出するものとする。
求めた変換係数kaによって(3)式より零点調整量を求め、零点調整する。
上記各実施形態では、測定した零点重量値を修正して零点調整量を算出する際の修正の度合を、計量コンベヤ7の無負荷時間Tx´に応じて異ならせたけれども、本発明の他の実施形態として、例えば、計量コンベヤ7が無負荷状態となる場合があっても、殆どの場合に無負荷時間が短い搬送ラインなどにおいては、無負荷時間Tx´に関係なく一律に零点重量値を縮小するようにしてもよい。
この場合、零点重量値が測定された場合には、無負荷時間Tx´の長さに関係なく、一律に零点重量値を縮小して零点調整量を求める。
例えば、変換係数ka(≦1)を、設定手段としての入力部18を操作して一つ設定し、常に測定された零点重量値に、設定された変換係数kaを乗じて零点調整量を算出する。
あるいは、零点重量値が測定された場合には、無負荷時間Tx´の長さに関係なく、一律に零点調整量を、飽和零点調整量に規制する。
例えば、飽和零点調整量を、入力部18を操作して一つ設定し、測定された零点重量値が、設定された飽和零点調整量以上であるときには、飽和零点調整量を零点調整量とし、測定された零点重量値が、飽和零点調整量未満であるときには、零点重量値をそのまま零点調整量として零点調整するようにしてもよい。
零点重量値を測定するには、計量コンベヤ7が無負荷状態であることを検出することが必要になるが、上記実施形態と同様に、物品間の時間間隔Txの測定において、無負荷時間Tx´に
Tx´=Tx−tp>0
が成立すれば、計量コンベヤ7に無負荷状態が生じたことがわかる、すなわち、計量コンベヤ7の無負荷状態を検出できる。
また、上記実施形態の図7と同様の手法で、後続の物品が、物品センサ12で検知されることによって、無負荷時間が終了するとして、零点重量値を測定すればよい。この場合、無負荷時間は利用する必要がない。
上記実施形態では、送込みコンベヤ6と計量コンベヤ7との間に、物品センサ12として、発光素子、受光素子からなるフォトセンサを設置し、搬送される先行の物品の先端部がフォトセンサの光を遮断すると、物品が計量コンベヤ7の入り口に到達したとし、このタイミングから時間のカウントを開始し、後続の物品の先端部がフォトセンサの光を遮断するまでの時間、すなわち、物品間の時間間隔を測定したが、本発明の他の実施形態として、例えば、撮像装置によって計量コンベヤ7上の物品の搬送状態を監視する方法や、荷重信号のレベルを検出して物品の時間間隔を測定するようにしてもよい。
上記実施形態では、零点重量値を測定するために、種々の応答特性を持つ複数のフィルタを有するフィルタ処理手段によって、零点重量を測定する荷重信号をフィルタ処理するようにしたけれども、本発明の他の実施形態として、零点重量を測定する荷重信号を、1種類のフィルタによってフィルタ処理するようにしてもよい。この場合も、無負荷時間の終了する最後のタイミングまで待って零点重量値を取得すればよい。