JP6519861B2 - スプレー塗布用スラリー - Google Patents
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Description
従って、インターコネクタには中高温での優れた電気導電性、耐酸化性、電解質との熱膨張差が小さいこと、また、低コスト、加工容易性等の特性が求められる。これらのことから、インターコネクタの材質としては、フェライト系ステンレス鋼、例えばFe−Cr系合金からなる金属基材が好適に用いられている。
この問題を解決するために、インターコネクタは、金属基材の表面に耐酸化性と導電性を兼ね備えたコーティング層が設けられたものが用いられている。
コーティング層の表面粗さが大きいと、インターコネクタと、それに隣接する空気極や燃料極との電気的な接触抵抗が増大し、インターコネクタの集電特性が悪くなるという問題がある。
このバインダとしてはエチルセルロース(EC)を用いることができる。
この乾燥塗膜に脱バインダ処理と焼結を施すことで、コーティング層の表面粗さも小さくなり、インターコネクタと、それに隣接する空気極や燃料極との電気的な接触抵抗を小さくすることができる。そのため、集電特性の改善が図れ、発電効率の良いSOFCを提供することができる。
スラリーに用いる有機溶媒を、5mass%以上20mass%以下のBCAを含むエタノールを用いることで、乾燥塗膜の表面粗さを小さくできるので、これを焼結した後のコーティング層の表面粗さも小さくできる。
図6はSOFC用のインターコネクタ(以下、インターコネクタという)1の断面模式図であり、金属基材1aとコーティング層1bの関係を示すものである。図7はセルスタック10の一例を示す斜視図である。
このセルスタック10は、それぞれが板状の、インターコネクタ1、空気極3、固体電解質層4、燃料極5により主に構成される。
インターコネクタ1は、空気極3と燃料極5の間に配置され、かつ、両者を電気的に接合する。インターコネクタ1は、その両面に溝が形成されており、空気極3側の溝は空気6の流路として使用され、燃料極5側の溝は燃料ガス7の流路として使用される。燃料ガスとして、例えば水素H2が用いられる。
空気極3と燃料極5の間は、固体電解質層4を介して酸素イオン(O2−)が伝達可能である。また、燃料極5と空気極3は、外部の導体(図示せず)を介して電気的に接合される。
このように、インターコネクタ1、空気極3、固体電解質層4、燃料極5が積層されたものを単位セルとし、この単位セルを板厚方向に積層して、セルスタック10となる。
セルスタックが稼動する際において、空気極3側と燃料極5側では、次の反応が同時に起こる。
燃料極5側では、水素が燃料極5と触れる事で電子を奪われ、燃料極5はその電子を出す。水素は水素イオンに変化する。つまり燃料極5側において、(H2→2H++2e−)の反応が起こる。燃料極5から出された電子は、燃料極5と空気極3の間に配置される固体電解質層4を通過できないため、外部の導体を介して空気極3に流れる。
一方、空気極3側では、燃料極5側で電子を奪われた水素イオンが、電気的に安定するために、電子を受け取れる空気極3側に固体電解質層4を介して移動してくる。水素イオンは、電子を受け取ると同時に酸素と結合し、水になる。つまり空気極3側において、(2H+2e−+1/2O2→H2O)の反応が起こる。
以上のように、SOFCは、水素と酸素の化学反応で水ができる過程から電気を産むことができる。
コーティング層を金属基材を覆うように形成することで、金属基材中のCrがカソード(空気極)側で揮発してCr蒸気となることを抑制でき、これにより、隣接するカソード(空気極)の性能を徐々に低下させる、いわゆるクロム被毒の問題を抑制できる。
金属基材1aの材質は、例えば、電気導電性、耐酸化性、電解質との熱膨張差が小さいこと、低コスト、加工容易性等から、Fe−Cr系合金が採用できる。
バインダは、0.5mass%以上であれば、金属基材1aの表面にセラミック粉末を保持することができるが、0.5mass%未満であると、セラミック粉末を保持する力が不十分で焼成前のコーティング膜が剥がれる可能性がある。そのため、本発明ではバインダはセラミック粉末に対して0.5mass%以上とした。但し、バインダが10mass%を超えると、有機溶媒乾燥時に塗膜の降伏応力を超えて割れが発生しやすくなり、また形成した塗膜の表面粗さが1μmを超えて大きくなる。そのため、本発明ではバインダの上限を10mass%とした。より好ましいバインダの量は、1mass%以上7.5mass%以下である。
エタノールは、乾燥速度が比較的速く、また他の溶剤(トルエン、キシレン等)と比べて人体に与える悪影響が小さい。そのため、本発明に用いるスラリーの有機溶媒として採用した。BCAは、エタノールと共に用いることで、塗布塗膜の乾燥速度を制御できる。また、塗膜中のセラミック粉末が均質に分散されたまま乾燥されるので表面粗さの小さい乾燥塗膜が得られる。
エタノールとBCAの2種類の有機溶媒を混合することで分散性が向上する理由は、エタノールのような、相対蒸発速度R(酢酸ブチル:C6H12O2の蒸発速度を100とした時の相対的な蒸発速度)が0.01未満であるものと、BCAのような、相対蒸発速度Rが1以上であるものを混合することで、塗膜が完全に乾燥する前にレベリング現象が起きるためと推察される。
この組成のコーティング層は組成分解温度が高く、高温化で稼動されるSOFCの内部でもスピネル構造を保つことが出来るので、コーティング層としての機能を保持できる。また、金属基材に含まれるCrがコーティング層の外部へ揮発することを抑制する機能にも優れている。
分散剤としては、例えば、非水系用途の高分子型ポリカルボン酸系材料や界面活性剤型の多価アルコールエステル系材料などを用いることができる。
可塑剤として、例えば、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)等のフタル酸エステル、アジピン酸ジオクチル等のアジピン酸エステル等を用いることができる。
また塗布条件として、100〜300mm/sの条件でスプレーノズルを走査し、数回(2〜5回)程度で5μm〜50μmの膜厚が得られる条件で塗布することが好ましい。塗布回数が多いと量産性に問題があり、かつ、乾燥塗膜の平滑性が悪くなる。
塗布塗膜の乾燥は、有機溶媒が十分に揮発する温度で、加熱することが好ましい。加熱方法はホットプレートによる直接加熱や、熱風吹きつけ、誘導加熱等による乾燥がある。例えば、上述の有機溶媒を用いた場合、70℃〜250℃で乾燥することができる。乾燥時間は用いる有機溶媒の混合量により適宜変化させることが好ましい。
焼結は、セラミックス粉末が分解しない雰囲気および温度で行うことが好ましい。例えば、Mn(Co・Cu)2O4、Mn1.5(Co・Cu)1.5O4等のスピネル系のコーティング層とする場合、大気雰囲気中で焼結温度は800℃以上1000℃以下とすることが好ましい。大気中での焼結もできるが、密度を向上させるために、還元雰囲気中で焼結した後に、再酸化が可能な酸素を含む雰囲気で加熱処理する2段熱処理でも良い。これにより、コーティング層の密度が向上することで、金属基材中のCrがコーティング層の外部へ揮発することを抑制できる。
金属基材は、従来のFe−Cr系合金が使用できる。
このFe−Cr系合金は、質量%で、Cr:16.0〜28.0%、Mn:0.05%以上0.4%以下(無添加は含まず)、Ni:1.5%以下(無添加を含む)、REM(Yを含む希土類元素)またはZrの何れか1種以上:合計で1.0%以下(無添加は含まず)、W:1.0%以上3.0%以下、Cu:4.0%以下(無添加を含む)、残部はFe及び不可避的不純物からなるフェライト系金属材料を用いることができる。
この組成のFe−Cr合金は、Crの外方拡散を抑制する目的でWを添加し、更に、Cuを添加することで、耐酸化性を飛躍的に向上させ、燃料電池の性能の低下を抑制することができる。
本発明において、乾燥塗膜の表面粗さRaは、中心線平均粗さ(粗さ曲線を中心線から折り返し、その粗さ曲線と中心線によって得られた面積を長さLで割った値:単位μm)で測定した。測定機器として接触式表面粗さ計を用いた。
有機溶媒におけるBCAの添加割合について検討した。
インターコネクタの金属基材として、表面粗さRaが0.1μm以下のFe−Cr合金を用いた。
スラリーは以下のようにして作製した。
セラミック粉末の原料としてMn3O4、Co3O4、CuOを用い、Mn1.5Co1.1Cu9,4O4の組成比となるようにMn、Co、Cu量を調整した。
混合した原料は、エタノールを溶媒とするボールミルで20h混合してスラリーを得た。その後、ホットプレートでスラリーを乾燥し、解砕後、大気雰囲気中で850℃×4hで仮焼した。
仮焼後の原料に有機溶媒としてエタノールを原料に対し100mass%添加してボールミルで20h混合した。その後、ホットプレートで乾燥し、解砕後、大気雰囲気中で850℃×4hで仮焼し、セラミックス粉末を得た。
また、セラミック粉末に対して、有機溶媒の量を300mass%となる様に追加した。有機溶媒は、エタノールにBCAを添加したものであり、エタノール中のBCAの含有割合を、5%、7.5%、10%、12.5%、15%、20%、25%としたものを用いた。
その他、バインダとしてセラミック粉末に対してECを5mass%、分散剤として、セラミック粉末に対して5mass%のポリカルボン酸アンモニウムを添加した。また、可塑剤として、バインダに対して50mass%のフタル酸ジオクチル(DOP)を添加した。
塗布塗膜が被覆された金属基材を、大気中100℃×2hで乾燥した。
Cr拡散防止層としてコーティング層は10μm以上の厚さを設けることが好ましく、焼成での収縮率を考慮すると乾燥塗膜の厚さを20μm以上とすべきである。この点から、有機溶媒中のBCAが25mass%のスラリーでは、スプレー塗布・乾燥・スプレー塗布・乾燥・・と、複数回の乾燥工程を入れないと所望の厚さのコーティング層が形成できない。
有機溶媒中のBCAが5mass%以上のスラリーを用いたものは、表面粗さRaが1μm以下に抑えられることが確認できた。
さらに、有機溶媒中のBCAが7.5mass%以上であれば、表面粗さRaが0.6μm以下に抑えられた。
得られたインターコネクタに板状の空気極を積層した。こうして得られたインターコネクタは、両者の境界部で良好な通電性を保つことが確認できた。
比較のため、エタノール中のBCAの含有割合を0mass%としたスラリ−を用いて同様の実験を行った。スプレー塗布を2回繰り返して得られた乾燥塗膜は、厚さが33.4μm、表面粗さRaが5.5μmと(図1に記載できず)、表面粗さRaが大きいものであった。
さらに、スプレー塗布を3回繰り返して得られた乾燥塗膜は、厚さが66.4μm、表面粗さRaが14.9μmとなり、4回繰り返して得られた乾燥塗膜は、厚さが79.4μm、表面粗さRaが18.3μmとなり、5回繰り返して得られた乾燥塗膜は、厚さが101.9μm、表面粗さRaが23.7μmとなり、いずれも乾燥塗膜の表面粗さは1μmを大きく超えていた。
これらの乾燥塗膜を同様に焼結して得られたインターコネクタは、実施例で得られたインターコネクタと比較し、空気極との通電性が悪化していた。
表面粗さRaはECを用いたものより10%程度大きくなるものの、BCAの添加量に対して同様の傾向を示した。
有機溶媒の量について検討した。
実施例1と同様にして、金属基材、及びセラミック粉末を得た。
このセラミック粉末に対して、バインダとしてエチルセルロース(EC)を5mass%添加した。
また、セラミック粉末に対して、有機溶媒を200mass%、300mass%、400mass%添加したものを作製した。有機溶媒を200mass%としたものは、有機溶媒におけるBCAを15mass%とした。有機溶媒を300mass%、400mass%としたものは、有機溶媒におけるBCAを10mass%とした。
その他、分散剤として、セラミック粉末に対して5mass%のポリカルボン酸アンモニウムを添加した。また、可塑剤として、バインダに対して50mass%のフタル酸ジオクチル(DOP)を添加した。
塗布塗膜が被覆された金属基材を、大気中100℃×2hで乾燥した。
セラミック粉末に対して有機溶媒の量を300mass%、400mass%として得られた乾燥塗膜は、均質な表面であることがわかった。200mass%として得られた乾燥塗膜は、若干表面粗さが粗くなっているものの、実用に耐えられるものであった。
いずれの乾燥塗膜も、表面粗さRaは1μm以下であった。
実施例1と同様に、インターコネクタに板状の空気極を積層し、両者の境界部で通電性を測定したところ、良好な通電性を保つことが確認できた。
バインダの量について検討した。
実施例1と同様にして、金属基材、及びセラミック粉末を得た。
このセラミック粉末に対して、バインダとしてECを1mass%、2mass%、5mass%、10mass%添加した。
また、セラミック粉末に対して、有機溶媒を300mass%添加したものを作製した。有機溶媒は、エタノールとBCAを用い、エタノール中のBCAの含有割合を10mass%としたものを用いた。
その他、分散剤として、セラミック粉末に対して5mass%のポリカルボン酸アンモニウムを添加した。
また、可塑剤として、バインダに対して50mass%(セラミック粉末に対しては0.5mass%、1mass%、2.5mass%、5mass%)のフタル酸ジオクチル(DOP)を添加した。
塗布塗膜が被覆された金属基材を、大気中100℃×2hで乾燥した。
乾燥塗膜が被覆された金属基材を脱バインダ処理を600℃×2hで実施後、大気中、965℃×15hで焼結し、スピネル型のMn1.5Co1.1Cu0.4O4の各組成からなるコーティング層が形成されたインターコネクタを作製した。
ECの量が10mass%以下の条件において、乾燥塗膜の表面粗さRaは1μm以下であることが確認できた。ECの量が増えると表面粗さRaは大きくなる傾向にあり、10mass%を超えると表面粗さRaが1μmを超えやすく、かつ、塗膜の割れも発生しやすくなる。
Claims (2)
- 固体酸化物電解質型燃料電池用インターコネクタのコーティング層を形成するためのスプレー塗布用スラリーであって、
前記スラリーは、セラミック粉末と、前記粉末に対して、0.5mass%以上10mass%以下のバインダと、前記粉末に対して、200mass%以上1000mass%以下の有機溶媒とを混合したものであり、
前記有機溶媒は、5mass%以上20mass%以下の酢酸ジエチレングリコールモノブチルエーテル(BCA)を含むエタノールであることを特徴とするスプレー塗布用スラリー。 - 前記バインダとしてエチルセルロース(EC)を用いることを特徴とする請求項1に記載のスプレー塗布用スラリー。
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