JP6519861B2 - スプレー塗布用スラリー - Google Patents

スプレー塗布用スラリー Download PDF

Info

Publication number
JP6519861B2
JP6519861B2 JP2015071162A JP2015071162A JP6519861B2 JP 6519861 B2 JP6519861 B2 JP 6519861B2 JP 2015071162 A JP2015071162 A JP 2015071162A JP 2015071162 A JP2015071162 A JP 2015071162A JP 6519861 B2 JP6519861 B2 JP 6519861B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
mass
slurry
coating
organic solvent
ceramic powder
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2015071162A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2016192291A (ja
Inventor
欣宏 神谷
欣宏 神谷
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Proterial Ltd
Original Assignee
Hitachi Metals Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hitachi Metals Ltd filed Critical Hitachi Metals Ltd
Priority to JP2015071162A priority Critical patent/JP6519861B2/ja
Publication of JP2016192291A publication Critical patent/JP2016192291A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6519861B2 publication Critical patent/JP6519861B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/30Hydrogen technology
    • Y02E60/50Fuel cells

Landscapes

  • Inorganic Compounds Of Heavy Metals (AREA)
  • Fuel Cell (AREA)

Description

本発明は、固体酸化物電解質型燃料電池用インターコネクタの焼結コーティング層を形成するためのスプレー塗布用スラリーに関する。
固体酸化物電解質型燃料電池(SOFC)は、電解質として安定化ジルコニア等のセラミックスを用いており、近年では700〜800℃と言う中高温で運転する用途も開発されている。このSOFC用のインターコネクタは、セルスタックとなす為に電気的に直列接続する導電板であると共に、燃料ガスと酸化ガスを分離するセパレータ板であり、電解質、燃料極、空気極の三層を支持し、前記ガス流路を形成すると共に電流を流す役目を持っている。
従って、インターコネクタには中高温での優れた電気導電性、耐酸化性、電解質との熱膨張差が小さいこと、また、低コスト、加工容易性等の特性が求められる。これらのことから、インターコネクタの材質としては、フェライト系ステンレス鋼、例えばFe−Cr系合金からなる金属基材が好適に用いられている。
しかしながら、Fe−Cr系合金をインターコネクタに使用した場合、燃料電池の稼動に伴い、高温酸化雰囲気下におかれることで、金属基材のカソード(空気極)側の表面で酸化が進行してCrの酸化皮膜(以下、Cr酸化被膜という)が成長し、これにより集電特性が劣化し、セルスタックの発電性能が劣化する問題がある。またCr酸化被膜からCr蒸気が発生し、カソードの性能を徐々に低下させる、いわゆるクロム被毒の問題がある。
この問題を解決するために、インターコネクタは、金属基材の表面に耐酸化性と導電性を兼ね備えたコーティング層が設けられたものが用いられている。
例えば、特許文献1は、Fe−Cr系合金からなる金属基材と、化学式AB(ただし、A:Mn,Cuから選択される少なくとも1種類の金属元素、B:Co,Mnから選択される少なくとも1種類の金属元素)で表されるスピネル型結晶構造を有する遷移金属酸化物を含んでなるコーティング層からなり、金属基材の表面をコーティング層で覆ったインターコネクタが開示されている。
特開2011−99159号公報
インターコネクタは、図6、図7に示すように、酸素ガスや燃料ガスの流路となる複数の溝が表面に形成される。そのためコーティング層は、この溝の内面も覆うように形成する必要がある。そのための塗布方法として、本発明者はスプレー塗布を採用した。
スプレー塗布を行うために、用いるスラリーは、セラミック粉末、セラミック粉末を金属基材の表面に固着させるためのバインダの他、塗布の際のスラリーの流動性を高めるための有機溶媒が用いられる。スプレー塗布で形成された塗膜(以後、塗布塗膜という)は、乾燥により有機溶媒が揮発され、セラミックス粉末とバインダから主に形成される塗膜(以後、乾燥塗膜という)となる。この乾燥塗膜を脱バインダ処理後に焼結することで、例えばMnとCoのスピネル化合物等からなる、コーティング層が形成される。
しかしながら、スプレー塗布でコーティング層を形成する場合、スラリー中のセラミック粉末の分散状態が悪いと、塗布塗膜中にセラミック粉末が凝集し、乾燥塗膜の表面粗さが大きくなる。スラリー中の粉末の分散性が良好であっても、流動性が悪いと乾燥時の平坦化(レベリング)が生じず、結果として塗布塗膜中のセラミック粉末が凝集して乾燥塗膜の表面粗さが大きくなる。乾燥塗膜の表面粗さが大きいと、これを焼結した後のコーティング層の表面粗さも大きくなる。
コーティング層の表面粗さが大きいと、インターコネクタと、それに隣接する空気極や燃料極との電気的な接触抵抗が増大し、インターコネクタの集電特性が悪くなるという問題がある。
そこで本発明の課題は、SOFC用インターコネクタのコーティング層を形成するためのスプレー塗布用スラリーとして、乾燥塗膜の表面粗さを小さくできるものを提供することである。
本発明は、固体酸化物電解質型燃料電池用インターコネクタのコーティング層を形成するためのスプレー塗布用スラリーであって、前記スラリーは、セラミック粉末と、前記粉末に対して、0.5mass%以上10mass%以下のバインダと、前記粉末に対して、200mass%以上1000mass%以下の有機溶媒とを混合したものであり、前記有機溶媒は、5mass%以上20mass%以下の酢酸ジエチレングリコールモノブチルエーテル(BCA)を含むエタノールであることを特徴とする。
このバインダとしてはエチルセルロース(EC)を用いることができる。
本発明によれば、SOFC用インターコネクタのコーティング層を形成するためのスプレー塗布用スラリーとして、乾燥塗膜の表面粗さが小さくなるものを提供できた。
この乾燥塗膜に脱バインダ処理と焼結を施すことで、コーティング層の表面粗さも小さくなり、インターコネクタと、それに隣接する空気極や燃料極との電気的な接触抵抗を小さくすることができる。そのため、集電特性の改善が図れ、発電効率の良いSOFCを提供することができる。
スプレー塗布の繰り返し回数と乾燥塗膜の膜厚との関係を、BCAの添加割合毎に示した図である。 乾燥塗膜の膜厚と表面粗さRaとの関係を、BCAの添加割合毎に示した図である。 BCAの添加割合を変えた乾燥塗膜の表面観察写真である。 有機溶媒量を変えた乾燥塗膜の表面観察写真である。 バインダ(エチルセルロース)添加量と乾燥塗膜の表面粗さRaの関係を示す図である。 SOFC用のインターコネクタの断面模式図である。 セルスタックの一例を示す斜視図である。
本発明は、SOFC用インターコネクタのコーティング層を形成するためのスプレー塗布用スラリーであって、前記スラリーは、セラミック粉末と、前記粉末に対して、0.5〜10mass%のバインダと、200〜1000mass%の有機溶媒とを混合したものであり、前記有機溶媒は、5mass%以上20mass%以下の酢酸ジエチレングリコールモノブチルエーテル:分子式C1020(以下、BCAという)を含むエタノールであることを特徴とする。
スラリーに用いる有機溶媒を、5mass%以上20mass%以下のBCAを含むエタノールを用いることで、乾燥塗膜の表面粗さを小さくできるので、これを焼結した後のコーティング層の表面粗さも小さくできる。
まず、SOFCの一般的な技術から説明する。
図6はSOFC用のインターコネクタ(以下、インターコネクタという)1の断面模式図であり、金属基材1aとコーティング層1bの関係を示すものである。図7はセルスタック10の一例を示す斜視図である。
このセルスタック10は、それぞれが板状の、インターコネクタ1、空気極3、固体電解質層4、燃料極5により主に構成される。
インターコネクタ1は、空気極3と燃料極5の間に配置され、かつ、両者を電気的に接合する。インターコネクタ1は、その両面に溝が形成されており、空気極3側の溝は空気6の流路として使用され、燃料極5側の溝は燃料ガス7の流路として使用される。燃料ガスとして、例えば水素Hが用いられる。
空気極3と燃料極5の間は、固体電解質層4を介して酸素イオン(O2−)が伝達可能である。また、燃料極5と空気極3は、外部の導体(図示せず)を介して電気的に接合される。
このように、インターコネクタ1、空気極3、固体電解質層4、燃料極5が積層されたものを単位セルとし、この単位セルを板厚方向に積層して、セルスタック10となる。
このセルスタックを用いたSOFCの発電の原理について説明する。
セルスタックが稼動する際において、空気極3側と燃料極5側では、次の反応が同時に起こる。
燃料極5側では、水素が燃料極5と触れる事で電子を奪われ、燃料極5はその電子を出す。水素は水素イオンに変化する。つまり燃料極5側において、(H→2H+2e)の反応が起こる。燃料極5から出された電子は、燃料極5と空気極3の間に配置される固体電解質層4を通過できないため、外部の導体を介して空気極3に流れる。
一方、空気極3側では、燃料極5側で電子を奪われた水素イオンが、電気的に安定するために、電子を受け取れる空気極3側に固体電解質層4を介して移動してくる。水素イオンは、電子を受け取ると同時に酸素と結合し、水になる。つまり空気極3側において、(2H+2e+1/2O→HO)の反応が起こる。
以上のように、SOFCは、水素と酸素の化学反応で水ができる過程から電気を産むことができる。
インターコネクタ1は、図6に示すように、金属基材1aとその表面を覆うコーティング層1bからなる。
コーティング層を金属基材を覆うように形成することで、金属基材中のCrがカソード(空気極)側で揮発してCr蒸気となることを抑制でき、これにより、隣接するカソード(空気極)の性能を徐々に低下させる、いわゆるクロム被毒の問題を抑制できる。
金属基材1aの材質は、例えば、電気導電性、耐酸化性、電解質との熱膨張差が小さいこと、低コスト、加工容易性等から、Fe−Cr系合金が採用できる。
本発明では、この金属基材1aの表面に、セラミック粉末を含むスラリーをスプレー塗布し、乾燥、脱バインダ処理後、焼結してコーティング層を形成することを想定し、これに用いるスラリーの検討を行った。
本発明のスラリーは、セラミック粉末に対して、0.5mass%以上10mass%以下のバインダと、同じくセラミック粉末に対して200mass%以上1000mass%以下の有機溶媒とを混合する。
バインダは、0.5mass%以上であれば、金属基材1aの表面にセラミック粉末を保持することができるが、0.5mass%未満であると、セラミック粉末を保持する力が不十分で焼成前のコーティング膜が剥がれる可能性がある。そのため、本発明ではバインダはセラミック粉末に対して0.5mass%以上とした。但し、バインダが10mass%を超えると、有機溶媒乾燥時に塗膜の降伏応力を超えて割れが発生しやすくなり、また形成した塗膜の表面粗さが1μmを超えて大きくなる。そのため、本発明ではバインダの上限を10mass%とした。より好ましいバインダの量は、1mass%以上7.5mass%以下である。
前記バインダとしてエチルセルロース(以下、ECという)を用いることができる。ECは、塗膜の平滑性及び保形性に優れ、BCAへの溶解性が良好であることから、本発明に用いるスラリーのバインダとして好ましい。
次に、有機溶媒は、セラミック粉末に対して、200mass%以上であれば、スプレー塗布によるセラミック粉末の均一塗布が可能になる。200mass%未満では、スラリーの粘性が高くなるので形成した塗膜の表面粗さが大きくなってコーティング層の表面粗さが1μmを超える。そのため、本発明では有機溶媒の下限を200mass%とした。但し、有機溶媒が1000mass%を超えると、有機溶媒を乾燥させる時間が長くなり、量産には適さない。また、スラリーにおけるセラミック粉末が占める割合が小さくなるので、コーティング層の厚さを確保するために、スプレー塗布の回数を増やさねばならず、スプレー塗布の時間も長くなる。そのため、本発明では有機溶媒の上限を1000mass%とした。より好ましい有機溶媒の量は、300mass%以上600mass%以下である。
なお有機溶媒は、5mass%以上20mass%以下のBCAを含むエタノールを用いる。
エタノールは、乾燥速度が比較的速く、また他の溶剤(トルエン、キシレン等)と比べて人体に与える悪影響が小さい。そのため、本発明に用いるスラリーの有機溶媒として採用した。BCAは、エタノールと共に用いることで、塗布塗膜の乾燥速度を制御できる。また、塗膜中のセラミック粉末が均質に分散されたまま乾燥されるので表面粗さの小さい乾燥塗膜が得られる。
エタノールとBCAの2種類の有機溶媒を混合することで分散性が向上する理由は、エタノールのような、相対蒸発速度R(酢酸ブチル:C12の蒸発速度を100とした時の相対的な蒸発速度)が0.01未満であるものと、BCAのような、相対蒸発速度Rが1以上であるものを混合することで、塗膜が完全に乾燥する前にレベリング現象が起きるためと推察される。
有機溶媒中のBCAが5mass%以上であれば、得られるコーティング層の表面粗さRaを1μm以下にすることができるが、5mass%未満であると表面粗さRaが1μmを超えやすくなる。そのため本発明では有機溶媒中のBCAを5mass%以上とした。但し、BCAが20mass%を超えると、セラミック粉末の分散斑が発生し、膜圧の分布がばらつく。また、乾燥塗膜が薄くなるという問題や、スプレー塗布を複数回繰り返しても、塗布塗膜内のセラミック粉末が金属基材上から流れ出て、乾燥塗膜を厚くすることができないという問題が発生する。そのため、本発明ではBCAの上限値は20mass%とした。より好ましい範囲は、7.5mass%以上15mass%以下である。
セラミック粉末の原料としては、Mn、Co、CuOの2種以上を用いることが好ましい。これらの原料を焼結することで、例えばMn(Co・Cu)系のスピネル系からなるコーティング層とすることができる。例えば、Mnと(Co・Cu)の比率を変えることで、Mn(Co・Cu)、Mn1.5(Co・Cu)1.5等のスピネル系のコーティング層とすることができる。
この組成のコーティング層は組成分解温度が高く、高温化で稼動されるSOFCの内部でもスピネル構造を保つことが出来るので、コーティング層としての機能を保持できる。また、金属基材に含まれるCrがコーティング層の外部へ揮発することを抑制する機能にも優れている。
セラミック粉末は、平均粒径が、0.1μm以上2μm以下のものを用いることが好ましい。粒径が0.1μmを下回る粉末は凝集しやすい。一方、また2μmを超えると塗布時のレベリングが起こりにくい。上記の範囲のセラミック粉末を使用することで塗膜中での分散性を向上できる。セラミック粉末は、例えば、Mn(Co・Cu)、Mn1.5(Co・Cu)1.5等のスピネル系のコーティング層とする場合、Mn、Co、CuO等の原料粉末をボールミル等の手法で均一になる様に混合し、その後固溶可能な条件(例えば700℃以上で2時間以上)で熱処理を行うことで得られる。またMn、Co等の塩化物溶液を用い、水酸化ナトリウム溶液を加え、攪拌、洗浄後粉末を得る共沈法により所定の組成の化合物を得る方法もある。
上述したスラリーには、用いる粉末の比表面積により異なるが、セラミック粉末に対して、0.1mass%以上10mass%以下の分散剤を用いることが好ましい。0.1mass%以上を添加することでセラミック粉末の分散性を向上し、スラリーの粘度を低減することができる。但し、10mass%を超えても分散剤としてのさらなる効果は得られず、逆に増粘現象が起こってスプレー塗布の妨げとなる。また塗膜内に有機物が残存しやすい。
分散剤としては、例えば、非水系用途の高分子型ポリカルボン酸系材料や界面活性剤型の多価アルコールエステル系材料などを用いることができる。
またスラリーは、添加したバインダに対して、10mass%以上100mass%以下の可塑剤を用いることが好ましい。10mass%以上を添加することで、塗布塗膜を乾燥する際に、バインダの柔軟性を向上しクラックの発生を抑制できる。また塗膜乾燥時のレベリングを促進する。但し、100mass%を超えると乾燥時ににじみが発生し塗膜の斑が起きることがある。
可塑剤として、例えば、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)等のフタル酸エステル、アジピン酸ジオクチル等のアジピン酸エステル等を用いることができる。
本発明のスラリーを用いて形成するコーティング層は、5μm以上50μm以下の厚さとすることが好ましい。5μm以上であれば、Crがインターコネクタの外部へ揮発することを抑制できる。但し、厚さが50μmを超えるように形成するには、スプレー塗布を繰り返す工数が増えすぎて製造工程が長くなる。また、コーティング層の表面粗さが大きくなる傾向がある。そのため、厚さは50μm以下とすることが好ましい。
スプレー塗布は、エアースプレーを用いたハンドガンやスプレーコーターによる塗布方法、超音波スプレーや静電スプレーによる方法を用いることができる。これらの中でも膜厚を均一にしやすく、量産性に優れるという点からエアースプレー方式によるスプレーコーター塗布が好ましい。
また塗布条件として、100〜300mm/sの条件でスプレーノズルを走査し、数回(2〜5回)程度で5μm〜50μmの膜厚が得られる条件で塗布することが好ましい。塗布回数が多いと量産性に問題があり、かつ、乾燥塗膜の平滑性が悪くなる。
塗布塗膜から有機溶媒を除去することで乾燥塗膜が得られる。
塗布塗膜の乾燥は、有機溶媒が十分に揮発する温度で、加熱することが好ましい。加熱方法はホットプレートによる直接加熱や、熱風吹きつけ、誘導加熱等による乾燥がある。例えば、上述の有機溶媒を用いた場合、70℃〜250℃で乾燥することができる。乾燥時間は用いる有機溶媒の混合量により適宜変化させることが好ましい。
乾燥塗膜に含まれるバインダ等の有機物を焼結前に脱バインダ処理により除去をする。有機物中に含まれる炭素が乾燥塗膜内に残存すると、焼結を阻害する要因となり緻密な膜が得られない。脱バインダ処理は使用するバインダにより分解温度が異なるため、バインダに合わせた温度で処理する。また粉末の酸化を防止する必要がある場合には、窒素等不活性ガス気流中で処理を行う必要がある。ECを使用する場合、熱分解温度は450℃付近であるため、450℃以上650℃以下で1時間以上保持することが好ましい。
脱バインダ処理を行った乾燥塗膜を焼結することでコーティング層となる。
焼結は、セラミックス粉末が分解しない雰囲気および温度で行うことが好ましい。例えば、Mn(Co・Cu)、Mn1.5(Co・Cu)1.5等のスピネル系のコーティング層とする場合、大気雰囲気中で焼結温度は800℃以上1000℃以下とすることが好ましい。大気中での焼結もできるが、密度を向上させるために、還元雰囲気中で焼結した後に、再酸化が可能な酸素を含む雰囲気で加熱処理する2段熱処理でも良い。これにより、コーティング層の密度が向上することで、金属基材中のCrがコーティング層の外部へ揮発することを抑制できる。
次に、金属基材について説明する。
金属基材は、従来のFe−Cr系合金が使用できる。
このFe−Cr系合金は、質量%で、Cr:16.0〜28.0%、Mn:0.05%以上0.4%以下(無添加は含まず)、Ni:1.5%以下(無添加を含む)、REM(Yを含む希土類元素)またはZrの何れか1種以上:合計で1.0%以下(無添加は含まず)、W:1.0%以上3.0%以下、Cu:4.0%以下(無添加を含む)、残部はFe及び不可避的不純物からなるフェライト系金属材料を用いることができる。
この組成のFe−Cr合金は、Crの外方拡散を抑制する目的でWを添加し、更に、Cuを添加することで、耐酸化性を飛躍的に向上させ、燃料電池の性能の低下を抑制することができる。
[表面粗さRa]
本発明において、乾燥塗膜の表面粗さRaは、中心線平均粗さ(粗さ曲線を中心線から折り返し、その粗さ曲線と中心線によって得られた面積を長さLで割った値:単位μm)で測定した。測定機器として接触式表面粗さ計を用いた。
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、これら実施例により本発明が限定されるものではない。
(実施例1)
有機溶媒におけるBCAの添加割合について検討した。
インターコネクタの金属基材として、表面粗さRaが0.1μm以下のFe−Cr合金を用いた。
スラリーは以下のようにして作製した。
セラミック粉末の原料としてMn、Co、CuOを用い、Mn1.5Co1.1Cu9,4の組成比となるようにMn、Co、Cu量を調整した。
混合した原料は、エタノールを溶媒とするボールミルで20h混合してスラリーを得た。その後、ホットプレートでスラリーを乾燥し、解砕後、大気雰囲気中で850℃×4hで仮焼した。
仮焼後の原料に有機溶媒としてエタノールを原料に対し100mass%添加してボールミルで20h混合した。その後、ホットプレートで乾燥し、解砕後、大気雰囲気中で850℃×4hで仮焼し、セラミックス粉末を得た。
また、セラミック粉末に対して、有機溶媒の量を300mass%となる様に追加した。有機溶媒は、エタノールにBCAを添加したものであり、エタノール中のBCAの含有割合を、5%、7.5%、10%、12.5%、15%、20%、25%としたものを用いた。
その他、バインダとしてセラミック粉末に対してECを5mass%、分散剤として、セラミック粉末に対して5mass%のポリカルボン酸アンモニウムを添加した。また、可塑剤として、バインダに対して50mass%のフタル酸ジオクチル(DOP)を添加した。
得られたスラリーを用い、金属基材の表面に、スプレーコーターによる塗布にて、走査速度を300mm/s、塗布幅を7〜8mm、各塗布1mmピッチの条件で金属基材の表面にスラリーを塗布した。このスプレー塗布は、1〜5回繰り返し行った。
塗布塗膜が被覆された金属基材を、大気中100℃×2hで乾燥した。
図1は、BCAの添加割合の上限の根拠を示すための図であって、スプレー塗布の繰り返し回数と乾燥塗膜の膜厚との関係を、BCAの添加割合毎に示した図である。有機溶媒中のBCAの添加割合が少ないほど大きな膜厚が得られている。一方、BCAが多いほど膜厚が薄くなる傾向がある。特に、有機溶媒中のBCAが25mass%のスラリーを用いたものでは、塗布回数が3回目以降も膜厚が厚くならず、20μm以上の厚い塗膜を形成することができなかった。
Cr拡散防止層としてコーティング層は10μm以上の厚さを設けることが好ましく、焼成での収縮率を考慮すると乾燥塗膜の厚さを20μm以上とすべきである。この点から、有機溶媒中のBCAが25mass%のスラリーでは、スプレー塗布・乾燥・スプレー塗布・乾燥・・と、複数回の乾燥工程を入れないと所望の厚さのコーティング層が形成できない。
図2は、乾燥塗膜の膜厚と表面粗さRaとの関係を、BCAの添加割合毎に示した図である。
有機溶媒中のBCAが5mass%以上のスラリーを用いたものは、表面粗さRaが1μm以下に抑えられることが確認できた。
さらに、有機溶媒中のBCAが7.5mass%以上であれば、表面粗さRaが0.6μm以下に抑えられた。
図3は、BCAの添加割合を5%、10%、15%、25%と変えたときの、乾燥塗膜の表面観察写真(倍率2000倍)である。BCAの添加割合が10%、及び15%の乾燥塗膜が最も均質な表面であることがわかった。なお、BCAの添加割合が5%のものは、セラミック粉末が若干凝集している(写真中央部)ものの、均質な表面であることがわかった。対してBCAの添加割合が25%のものは、セラミック粉末が均質に分散しないまま乾燥・固化していた。
これらの乾燥塗膜が形成されたインターコネクタを、500℃×2hで脱バインダ処理した。その後、965℃×15hで焼結し、スピネル型のMn1.5Co1.1Cu0.4の各組成からなるコーティング層が形成されたインターコネクタを作製した。
得られたインターコネクタに板状の空気極を積層した。こうして得られたインターコネクタは、両者の境界部で良好な通電性を保つことが確認できた。
(比較例1)
比較のため、エタノール中のBCAの含有割合を0mass%としたスラリ−を用いて同様の実験を行った。スプレー塗布を2回繰り返して得られた乾燥塗膜は、厚さが33.4μm、表面粗さRaが5.5μmと(図1に記載できず)、表面粗さRaが大きいものであった。
さらに、スプレー塗布を3回繰り返して得られた乾燥塗膜は、厚さが66.4μm、表面粗さRaが14.9μmとなり、4回繰り返して得られた乾燥塗膜は、厚さが79.4μm、表面粗さRaが18.3μmとなり、5回繰り返して得られた乾燥塗膜は、厚さが101.9μm、表面粗さRaが23.7μmとなり、いずれも乾燥塗膜の表面粗さは1μmを大きく超えていた。
これらの乾燥塗膜を同様に焼結して得られたインターコネクタは、実施例で得られたインターコネクタと比較し、空気極との通電性が悪化していた。
上記の実験の他に、バインダとしてECの変わりにポリビニルブチラール(PVB)を用いて、同様の実験を行った。
表面粗さRaはECを用いたものより10%程度大きくなるものの、BCAの添加量に対して同様の傾向を示した。
(実施例2)
有機溶媒の量について検討した。
実施例1と同様にして、金属基材、及びセラミック粉末を得た。
このセラミック粉末に対して、バインダとしてエチルセルロース(EC)を5mass%添加した。
また、セラミック粉末に対して、有機溶媒を200mass%、300mass%、400mass%添加したものを作製した。有機溶媒を200mass%としたものは、有機溶媒におけるBCAを15mass%とした。有機溶媒を300mass%、400mass%としたものは、有機溶媒におけるBCAを10mass%とした。
その他、分散剤として、セラミック粉末に対して5mass%のポリカルボン酸アンモニウムを添加した。また、可塑剤として、バインダに対して50mass%のフタル酸ジオクチル(DOP)を添加した。
得られたスラリーを用い、金属基材の表面に、スプレーコーターによる塗布にて、走査速度を300mm/s、塗布幅を7〜8mm、各塗布1mmピッチの条件で金属基材の表面にスラリーを塗布した。このスプレー塗布は、3回繰り返した。
塗布塗膜が被覆された金属基材を、大気中100℃×2hで乾燥した。
図4は、得られた乾燥塗膜の表面観察写真である。
セラミック粉末に対して有機溶媒の量を300mass%、400mass%として得られた乾燥塗膜は、均質な表面であることがわかった。200mass%として得られた乾燥塗膜は、若干表面粗さが粗くなっているものの、実用に耐えられるものであった。
表1に、得られた乾燥塗膜の表面粗さRaを示す。
いずれの乾燥塗膜も、表面粗さRaは1μm以下であった。
Figure 0006519861
上記の乾燥塗膜が被覆された金属基材を、大気中600℃×2hで脱バインダ処理後、大気中、965℃×15hで焼結し、スピネル型のMn1.5Co1.1Cu0.4の各組成からなるコーティング層が形成されたインターコネクタを作製した。
実施例1と同様に、インターコネクタに板状の空気極を積層し、両者の境界部で通電性を測定したところ、良好な通電性を保つことが確認できた。
なお、有機溶媒量をさらに減らして実験を行ったところ、乾燥塗膜の表面粗さが1μmを超えた他、クラックの発生が観察された。
(実施例3)
バインダの量について検討した。
実施例1と同様にして、金属基材、及びセラミック粉末を得た。
このセラミック粉末に対して、バインダとしてECを1mass%、2mass%、5mass%、10mass%添加した。
また、セラミック粉末に対して、有機溶媒を300mass%添加したものを作製した。有機溶媒は、エタノールとBCAを用い、エタノール中のBCAの含有割合を10mass%としたものを用いた。
その他、分散剤として、セラミック粉末に対して5mass%のポリカルボン酸アンモニウムを添加した。
また、可塑剤として、バインダに対して50mass%(セラミック粉末に対しては0.5mass%、1mass%、2.5mass%、5mass%)のフタル酸ジオクチル(DOP)を添加した。
得られたスラリーを用い、金属基材の表面に、スプレーコーターによる塗布にて、走査速度を300mm/s、塗布幅を7〜8mm、各塗布1mmピッチの条件で金属基材の表面にスラリーを塗布した。このスプレー塗布は、2回繰り返したものと5回繰り返したものを作製した。
塗布塗膜が被覆された金属基材を、大気中100℃×2hで乾燥した。
乾燥塗膜が被覆された金属基材を脱バインダ処理を600℃×2hで実施後、大気中、965℃×15hで焼結し、スピネル型のMn1.5Co1.1Cu0.4の各組成からなるコーティング層が形成されたインターコネクタを作製した。
図5は、ECの添加量と乾燥塗膜の表面粗さRaの関係を示す図である。
ECの量が10mass%以下の条件において、乾燥塗膜の表面粗さRaは1μm以下であることが確認できた。ECの量が増えると表面粗さRaは大きくなる傾向にあり、10mass%を超えると表面粗さRaが1μmを超えやすく、かつ、塗膜の割れも発生しやすくなる。
1:インターコネクタ、1a:金属基材、1b:コーティング層、3:燃料極、4:固体電解質層、5:燃料極、6:酸素を含むガスの流路6、7:燃料ガスの流路、10:セルスタック

Claims (2)

  1. 固体酸化物電解質型燃料電池用インターコネクタのコーティング層を形成するためのスプレー塗布用スラリーであって、
    前記スラリーは、セラミック粉末と、前記粉末に対して、0.5mass%以上10mass%以下のバインダと、前記粉末に対して、200mass%以上1000mass%以下の有機溶媒とを混合したものであり、
    前記有機溶媒は、5mass%以上20mass%以下の酢酸ジエチレングリコールモノブチルエーテル(BCA)を含むエタノールであることを特徴とするスプレー塗布用スラリー。
  2. 前記バインダとしてエチルセルロース(EC)を用いることを特徴とする請求項1に記載のスプレー塗布用スラリー。

JP2015071162A 2015-03-31 2015-03-31 スプレー塗布用スラリー Expired - Fee Related JP6519861B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015071162A JP6519861B2 (ja) 2015-03-31 2015-03-31 スプレー塗布用スラリー

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015071162A JP6519861B2 (ja) 2015-03-31 2015-03-31 スプレー塗布用スラリー

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016192291A JP2016192291A (ja) 2016-11-10
JP6519861B2 true JP6519861B2 (ja) 2019-05-29

Family

ID=57245658

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015071162A Expired - Fee Related JP6519861B2 (ja) 2015-03-31 2015-03-31 スプレー塗布用スラリー

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6519861B2 (ja)

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001297781A (ja) * 2000-04-11 2001-10-26 Toto Ltd 成膜方法
DE102004013791B4 (de) * 2004-03-20 2009-09-24 Forschungszentrum Jülich GmbH Elektrisch leitfähiger Stahl-Keramik-Verbund sowie dessen Herstellung und Verwendung
JP2010157387A (ja) * 2008-12-26 2010-07-15 Nissan Motor Co Ltd 固体電解質形燃料電池用インターコネクタ
US9054348B2 (en) * 2011-04-13 2015-06-09 NextTech Materials, Ltd. Protective coatings for metal alloys and methods incorporating the same
JP2013093150A (ja) * 2011-10-25 2013-05-16 Hitachi Metals Ltd 固体酸化物形燃料電池用部材
JP6205822B2 (ja) * 2013-04-26 2017-10-04 日産自動車株式会社 燃料電池

Also Published As

Publication number Publication date
JP2016192291A (ja) 2016-11-10

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR101892909B1 (ko) 프로톤 전도성 산화물 연료전지의 제조방법
WO2023089978A1 (ja) 固体酸化物型燃料電池およびその製造方法
JP7484048B2 (ja) 固体酸化物型燃料電池およびその製造方法
WO2018230248A1 (ja) 固体電解質部材、固体酸化物型燃料電池、水電解装置、水素ポンプ及び固体電解質部材の製造方法
WO2018230247A1 (ja) 固体電解質部材、固体酸化物型燃料電池、水電解装置、水素ポンプ及び固体電解質部材の製造方法
JP6664132B2 (ja) 多孔質構造体とその製造方法、及びそれを用いた電気化学セルとその製造方法
JP2016189243A (ja) 燃料電池用インターコネクタ及びこれを用いたセルスタック
KR102680851B1 (ko) 산화물 보호층을 포함하는 인터커넥터 및 상기 인터커넥터를 포함하는 연료전지 스택
KR101657242B1 (ko) 반응방지막을 포함하는 고온 고체산화물 셀, 이의 제조방법
JP6519861B2 (ja) スプレー塗布用スラリー
KR100960270B1 (ko) 치밀한 구조를 갖는 스피넬계 전도성 박막, 이의 제조방법및 이를 이용한 금속 접속자
JP6897930B2 (ja) 固体電解質部材の製造方法
JP2013069666A (ja) 固体酸化物形燃料電池
JP2007311060A (ja) 固体酸化物形燃料電池用の酸化ニッケル粉末の組成物、その製造方法及びそれを用いた燃料極材料
JP6947297B2 (ja) 固体酸化物燃料電池用連結材、その製造方法および固体酸化物燃料電池
KR101727457B1 (ko) 고체산화물 연료전지 금속분리판 보호막의 제조방법 및 그로부터 제조된 고체산화물 연료전지 금속분리판 보호막
JP2018139182A (ja) 固体電解質部材、固体酸化物型燃料電池、水電解装置、水素ポンプ及び固体電解質部材の製造方法
JP2021144795A (ja) 固体酸化物型燃料電池およびその製造方法
KR20120127848A (ko) 고체산화물 연료전지와 전해셀의 공기극 및 그 제조방법
JP2007012498A (ja) 固体酸化物形燃料電池用燃料電極の製造方法及び燃料電池
JP6524756B2 (ja) 固体酸化物形燃料電池セルスタック
JP5397894B2 (ja) 固体酸化物形電気化学セルの製造方法
JP7504375B2 (ja) 固体酸化物型燃料電池およびその製造方法
JP5412534B2 (ja) 複合基板の製造方法および固体酸化物形燃料電池セルの製造方法
JP2018139183A (ja) 固体電解質部材、固体酸化物型燃料電池、水電解装置、水素ポンプ及び固体電解質部材の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20180213

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20190208

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20190329

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20190411

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6519861

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees