JP6519198B2 - 光学素子 - Google Patents
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Description
一方、光学素子として、無機材料、金属材料等を用いたものも知られている。無機材料等を用いた光学素子は耐候性に優れ、光による劣化等の問題が少ない。無機材料等を用いた光学素子としては、例えば、無機材料等を用いて回折格子を形成し、この回折格子による特定波長の可視光の干渉現象を利用して、特定波長の可視光を透過させるものを挙げることができる。しかしながら、回折格子を用いた光学素子は、光学素子に対する光の照射角度および観察角度によって回折光の波長特性に影響を受ける角度依存性があり、光学素子に照射される光の照射角度および観察角度によっては、所望の波長の可視光を透過させることができない場合があるといった問題がある。
このような問題に対して、非特許文献1では、石英基材と、石英基材上に形成され、貫通孔を有するアルミニウム層と、貫通孔に充填された酸化ケイ素(SiO2)からなる充填剤と、を有するプラズモン共鳴現象を利用した光学素子が開示されている。非特許文献1に開示される光学素子によれば、貫通孔のサイズや間隔を可視光の波長よりも小さくすることにより、回折光の干渉を防止し、0次光のみを透過させることで角度依存性の少ないものとすることができる。また、上記光学素子は、貫通孔のサイズおよび間隔(以下ピッチともいう。)により透過する可視光の波長を自由度高く選択することが可能であり、光学フィルタとしての色特性(以下単に色特性という)に優れたものとすることができる。
以下、本発明の光学素子について説明する。
なお、図1および図2の例は、貫通孔の平面視形状が正方形状である場合を示すものである。また、この例は、貫通孔の平面視形状、開口径およびピッチの種類が1種類である場合を示すものである。
また、図1では、説明の容易のため、ハードマスク層4の記載を省略するものである。
ここで、フィルタ層の構成材料としてモリブデンシリサイド系材料を含むことにより、色特性の実現範囲に優れた光学素子とすることができる理由については以下のように推察される。
一方クロム(Cr)、アルミニウム(Al)を用いて形成されたフィルタ層は紫外〜青の短波長側に透過領域を有するが赤〜近赤外の長波長側に透過領域を有しない透過率波長特性を示す。このため、クロム等を用いて形成されたフィルタ層は、貫通孔のピッチを変化させてフィルタ層の透過率波長特性を変化させても短波長側の可視光(青)の透過率が変化するが、長波長側の可視光(赤)の透過率はほぼ遮光のまま変化しないため、色度座標に顕著な変化を生じさせることができない。
よって、モリブデンシリサイド系材料を用いて形成されたフィルタ層を用いることにより、フィルタ層の貫通孔の開口径とピッチを変化させることで光学素子を透過する可視光の色度図上の色度座標を顕著に変化させることができ、色特性の実現範囲に優れた光学素子とすることができる。
また、上記光学素子は、平面視形状、開口径およびピッチ等の条件の異なる貫通孔を組み合わせることで、波長が大きく異なる可視光を組み合わせて色度図上で広い範囲の色を実現することが容易である。
さらに、貫通孔の開口径およびピッチが可視光の波長以下であることにより、回折光による干渉縞の発生を阻止でき、0次光のみが透過される。これにより、光学素子の透過率波長特性を角度依存性の少ないものとすることができる。
以下、本発明の光学素子の各構成について詳細に説明する。
本発明にけるフィルタ層は、基材の一方の表面上に形成され、複数の貫通孔を有するものである。
フィルタ層の構成材料はモリブデンシリサイド系材料を含むものである。
また、フィルタ層は、照射された光に含まれる可視光のうち特定波長の可視光を選択的に透過させるために用いられるものである。
本発明におけるフィルタ層の構成材料はモリブデンシリサイド系材料を含むものである。
本発明においては、上記構成材料がモリブデンシリサイド系材料を主原料として含むことが好ましく、具体的には、上記構成材料中のモリブデンシリサイド系材料の含有量が、70質量%以上であることが好ましく、なかでも、90質量%以上であることが好ましく、特に100質量%、すなわち、フィルタ層がモリブデンシリサイド系材料からなるものであることが好ましい。上記含有量が上述の範囲であることにより、光学素子を色特性の実現範囲に優れたものとすることができるからである。
また、上記含有量の測定方法としては、含有量を精度良く測定できる方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、上記フィルタ層の断面について、XPS表面分析を行う方法を挙げることができる。
ここで、屈折率および消衰係数の測定方法としては、特に限定されないが、分光反射スペクトルから算出する方法、エリプソメーターを用いて測定する方法及びアッベ法を挙げることができる。エリプソメーターとしてはジョバンーイーボン社製UVSELが挙げられる。なお、本件の屈折率および消衰係数はウーラム社製VUV−VASEにて測定した値である。
なお、本発明での屈折率および消衰係数は特に波長の特定に言及が無い場合は550nmの波長における値とする。
本発明における貫通孔は、開口径が可視光の波長以下であるものである。
ここで、可視光の波長以下であるとは、可視光の最短波長側の波長以下であることをいうものであり、具体的には、380nm以下であることをいうものである。
本発明においては、上記開口径が100nm〜380nmの範囲内であることが好ましい。上記開口径が上述の範囲内であることにより、貫通孔のピッチとともに、フィルタ層を透過する波長を自由度高く制御でき、光学素子を色特性の実現範囲に優れたものとすることができるからである。また、光学素子を角度依存性の少ないものとすることができるからである。
なお、上記開口径は、平面視上、貫通孔の全面を含むことができる最小の正方形の1辺の長さをいうものである。
例えば、貫通孔の平面視形状が正方形状である場合には、開口径は貫通孔の1辺の長さである。また、貫通孔の平面視形状が円形状である場合には、開口径は貫通孔の直径の長さである。上記開口径は、具体的には、既に説明した図2中のaで示されるものとすることができる。
なお、微細加工の製造上の観点からは、平面視形状の複雑な貫通孔は加工の難易度が高くなるため、貫通孔の平面形状としては、性能上特段の理由が無ければ、円形や矩形が選択される。
上記ピッチは、より具体的には、100nm〜380nmの範囲内であることが好ましい。上記ピッチが上述の範囲内であることにより、貫通孔の開口径とともに、フィルタ層を透過する波長を自由度高く制御でき、光学素子を色特性の実現範囲に優れたものとすることができるからである。また、光学素子を角度依存性の少ないものとすることができるからである。
なお、上記貫通孔のピッチは、隣接する貫通孔間の距離の最大のものをいうものであり、具体的には、貫通孔の平面視形状が正方形状であれば、図2中のbで示される幅をいうものである。貫通孔の平面視形状が不定形の場合は、その平面視形状の図形の重心位置を中心軸の位置とし、貫通孔と隣接する貫通孔の中心軸間の距離のうち最も大きい距離をピッチとする。例えば貫通孔の平面視形状が円形であれば、円形の中心が貫通孔の中心軸であり、隣接する貫通孔の中心軸との距離のうち最大のものをピッチとする。
なお、上記デューティー比の上限については、光学素子を光透過率の高いものとすることができるとの観点からは、大きいことが好ましいが、安定的に貫通孔を形成するとの観点、より具体的には、隣接する貫通孔を隔てるフィルタ層の形成容易の観点から0.8以下であることが好ましい。0.8以下であることにより、貫通孔間の壁を十分な厚さとすることができ、壁の変形や基材からの剥離等の欠陥の少ないものとすることができるからである。
なお、デューティー比は、貫通孔のピッチが決まれば開口径が決まるように導入した、フィルタ層の形状パラメータである。
上記種類は、フィルタ層を透過させる可視光の波長の種類を少なくし、色の純度(彩度)を上げる観点からは、1種類であることが好ましい。
また、上記種類を2種類以上組み合わせること、より具体的には、第1の種類の貫通孔と第2の種類の貫通孔とを隣接して並べて、第1の種類の貫通孔が透過する第1の波長の可視光と、第2の種類の貫通孔が透過する第2の波長の可視光と、を透過するものとしてもよい。この場合には、第1の種類の貫通孔のみからなるフィルタ層を透過することにより認識される第1の色と、第2の種類の貫通孔のみからなるフィルタ層を透過することにより認識される第2の色とを混ぜた色を認識可能とすることができる。
なお、すでに説明した図1は貫通孔の種類が1種類である例を示すものである。また、図3は、開口径およびピッチがa1およびb1の貫通孔3aと、開口径およびピッチがa2およびb2の貫通孔3bと、の2種類の貫通孔を含む例を示すものである。
また、図3中の符号については、図1のものと同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する。
例えば、光学素子が顕微鏡で用いられる標準色サンプルとして用いられる場合、1色あたり1mm角程度となるように形成される。この場合、上記貫通孔の数としては、貫通孔のピッチが200nmである場合には、概ね、5000個×5000個=25000000個程度配置されるものとすることができる。
さらに、貫通孔の条件の決定は、シミュレーションにより得られた透過する可視光の波長と色度図上の配置(色度座標x、y)と、に基づいて行われるものであっても良い。
上記フィルタ層の厚みとしては、所望の波長の可視光を透過可能なフィルタ層を形成可能なものであれば特に限定されるものではない。上記厚みは、厚いほど色特性の実現範囲に優れたフィルタ層とすることができるが、可視光の透過率が低くなる。上記厚みは、色特性の実現範囲および透過率のバランスの観点から、例えば、100nm〜200nmの範囲内であることが好ましい。上記厚みは、具体的には、既に説明した図2中のcで示されるものとすることができる。
なお、貫通孔の内部の空洞は、通常空気で満たされるが、屈折率が同程度(n=1.000)の他の気体、例えば窒素、ヘリウムなどの気体でもよく、さらに真空であっても良い。
本発明における基材は、可視光透過性を有するものである。
ここで、可視光透過性を有するとは、フィルタ層を透過した可視光を透過させることができることをいうものである。
上記基材の厚みとしては、本発明の光学素子の用途やサイズ等に応じて適宜選択することができる。
本発明の光学素子は、上記基材およびフィルタ層を有するものであるが、必要に応じて、その他の構成を有するものであってもよい。
このようなその他の構成としては、フィルタ層の貫通孔を形成する際に用いたハードマスク層を挙げることができる。ハードマスク層を用いたエッチングによりフィルタ層の貫通孔を形成することで、光学素子を精度よく形成可能なものとすることができるからである。
クロム系材料としては、クロム、クロム酸化物、クロム窒化物、クロム酸化窒化物等を挙げることができる。
上記ハードマスク層の厚みはフィルタ層形成層のエッチングに耐える厚みであれば良く、フィルタ層形成層の厚みが100nm程度の場合、5nm〜15nmの範囲内程度が好ましい。
上記ハードマスク層の形成方法としては、フィルタ層形成層上にスパッタリング法などで形成する方法とすることができる。
上記ハードマスク層の形成箇所は、フィルタ層上であれば良く、例えば後述する酸化ケイ素膜上に形成されるもの、すなわち、フィルタ層上に酸化ケイ素膜を介して形成されるものであっても良い。
また、クロム酸化物のハードマスク層を表面反射防止層として使用しても良い。表面反射防止層とする場合のハードマスク層の厚さは、25nm〜30nmの範囲内程度が好ましい。
なお、既に説明した図2は、フィルタ層上にハードマスク層4を有する例を示すものである。
上記酸化ケイ素膜に含まれる酸化ケイ素の含有量としては、酸化ケイ素を主成分として含むものであればよく、例えば、50質量%以上とすることができる。
上記酸化ケイ素膜の厚みは、所望の波長の可視光を透過可能なものであれば特に限定されるものではないが、例えば、3nm〜15nmの範囲内とすることができる。
上記製造方法は、フィルタ層を形成可能なフィルタ層形成層上にパターン形成されたハードマスク層をエッチングマスクとして、フィルタ層形成層をエッチングすることで、貫通孔を形成するフィルタ層形成工程を有する方法であることが好ましい。ハードマスク層をエッチングマスクとして用いることにより、フィルタ層の微細なパターン加工がより高精度で可能となるといった利点があるからである。
上記製造方法は、より具体的には、基材1を準備し(図4(a))、上記基材1上にスパッタリング法により、モリブデンシリサイド系材料を含む上記構成材料からなるフィルタ層形成層2´を形成することにより、基材1および基材1上に形成され、モリブデンシリサイド系材料を含有するフィルタ層形成層2´を有する光学素子用基板を形成する(図4(b))。
次いで、フィルタ層形成層2´上に、上記構成材料に応じたハードマスク形成層4´を設ける(図4(c))。
次に、フォトリソグラフィ法によりパターン状レジスト11を上記貫通孔が形成される箇所以外の箇所に形成し、パターン状レジスト11をマスクとしてハードマスク形成層4´をエッチングガスg等を用いてエッチングすることにより(図4(d))、貫通孔が形成される箇所に開口部を有するハードマスク層を形成する。
次いで、ハードマスク層4をエッチングマスクとしてフィルタ層形成層2´をエッチングガスg等を用いてエッチングすることにより(図4(e))、基材1およびフィルタ層2を有する光学素子10を得ることができる(図4(f))。
なお、ハードマスク層については、ハードマスク層を残したままでも光学素子が所望の性能が得られる場合はフィルタ層上に残しても良い。
また、本発明の光学素子は、照射された光に含まれる可視光のうち特定波長の可視光を選択的に透過させるものである。したがって、本発明の光学素子は、透過させる波長の可視光を含む光を照射して用いられるものである。光学素子へ照射される照射光としては、標準の白色光を用いることができ、光源としては、D50、D65等により規定される光源を用いることができる。
光学素子のフィルタ層の材質をMoSi系の材料とし、200nm、220nm、240nm、260nm、280nm、300nmの各ピッチで形成された貫通孔に対して、ピッチに対する貫通孔の開口径の比率であるデューティー比(開口径/ピッチ)を0.5、0.6、0.7、0.8と変化させたときの分光透過率を波動解析によるシミュレーションを行った。波動解析はRCWA(Rigorous Coupled Wave Analysis)法(例えば「回折光学素子の数値解析とその応用」丸善出版、小館香椎子監修に記載)に基づいて行った。得られた透過光の波長スペクトル(すなわち分光透過率)を色度座標に変換した結果を下記表1、図5、図6、図7および図8に示す。
なお、表1は、実施例1で得られた分光透過率をYxy表色系の色度座標(xy)で示すものである。
また、図5は、実施例1および後述の比較例1〜2において得られた各光学素子の色度座標(xy)を重ね合わせて示したものである。
図6は、実施例1で得られた光学素子の各ピッチでの分光透過率を示すグラフであり、横軸が波長(nm)であり、縦軸が分光透過率である。図6の各曲線は、貫通孔のデューティー比を0.8とし、貫通孔のピッチを200nm、220nm、240nm、260nm、280nm、300nmと変化させた場合の分光透過率の変化を示すグラフである。
図7は、図6に示した分光透過率を色度座標(xy)に変換して示したグラフで、光学素子のピッチを変えた場合の色度座標の変化を示すグラフある。
図8は、表1に記載した貫通孔のピッチとデューティー比の全ての組み合わせによる光学素子(実施例1)の色度座標をプロットした図である。
なお、実施例1のシミュレーションにおける光学素子は、基材として合成石英を用い、フィルタ層の構成材料としてモリブデンシリサイド(MoSi、屈折率n=4.6、消衰係数k=1.9)を用いた。貫通孔のピッチ以外の条件としては、平面視形状を正方形とし、デューティー比を、0.5、0.6、0.7および0.8とした。なお、ピッチが200nmでデューティー比が0.5である場合の貫通孔の開口径は、200nm×0.5と計算され、100nmとなる。フィルタ層の厚みは120nmとした。
また、光学素子に照射される光は標準の白色光であるD65の波長スペクトルの光を用いてシミュレーションを行った。
フィルタ層の構成材料をクロム(Cr)(比較例1)およびアルミニウム(Al)(比較例2)とした以外は、フィルタ層の貫通孔のピッチおよびデューティー比を実施例1と同じとしてシミュレーションを行った。その結果を、下記表2(比較例1、比較例2)、図9、図10および図11(比較例1)、ならびに図12、図13および図14(比較例2)に示す。
表2は、比較例1〜2のシミュレーションで得られたフィルタ層の分光透過率をYxy表色系の色度座標(xy)に変換して示すものである。
図9、図10および図11は、フィルタ層の構成材料をクロム(Cr)系とした比較例1に関する図である。
図12、図13および図14は、フィルタ層の構成材料をアルミ(Al)系とした比較例2に関する図である。
図9および図12は実施例1の図6に対応しており、図9および図12の各曲線は、貫通孔のデューティー比を0.8とし、貫通孔のピッチを200nm、220nm、240nm、260nm、280nm、300nmと変化させた場合の分光透過率の変化を示すグラフである。
図10および図13は、実施例1の図7に対応しており、分光透過率を色度座標(xy)に変換して示したグラフで、光学素子のピッチを変えた場合の色度座標の変化を示すグラフある。
図11および図14は、実施例1の図8に対応しており、表2に記載した貫通孔のピッチとデューティー比の全ての組み合わせによる光学素子(比較例1、比較例2)の色度座標をプロットした図である。
フィルタ層の平面視形状を、実施例1のアレー状に配置された貫通孔の代わりにラインアンドスペース(ストライプパターンとも言う)とした場合の光学素子の分光透過率を波動解析によるシミュレーションを行って求めた。光学素子のフィルタ層の構成材料は、比較例3としてモリブデンシリサイド(MoSi)系、比較例4としてクロム(Cr)系、比較例5としてアルミ(Al)系の3種類についてシミュレーションを実施した。
フィルタ層の平面視形状を図15、B−B線に沿った断面形状を図16に示す。基材21上に細線22が所定の開口幅dの開口部23を介して所定のピッチeで平行に配置されたものとし、ピッチを200nm、220nm、240nm、260nm、280nmおよび300nmとし、厚みfを120nmとし、デューティー比を0.3〜0.7とした。フィルタ層の平面視形状をラインアンドスペースとした以外は、実施例1と同様にしてシミュレーションを行った。ここで、例としてピッチeが200nm、デュ-ティー比が0.4であれば、開口幅dは80nm(ピッチ200nm×デューティー比0.4)となる。
このシミュレーションの結果を、下記表3および図17に示す。
表3は比較例3〜5について波動解析によるシミュレーションで得られた分光透過率をYxy表色系の色度座標(xy)で記載したものである。
また、図17は、比較例3〜5のシミュレーションで得られた各光学素子の色度座標(xy)を重ね合わせて示したものであり、図5(実施例1、比較例2〜3)に対応している。
図5は、フィルタ層の構成材料をモリブデンシリサイド系材料とした実施例1(△印)と、クロム系材料とした比較例1(×印)、アルミ系材料とした比較例2(○印)の各シミュレーション結果を1つの色度図上に配置して比較したものである。この図から実施例1(図5の△印)のフィルタの色特性が最も広い範囲を実現していることが確認できた。
表1に記載の通り実施例1のサンプル4の色度座標は(0.359、0.165)でマゼンダの色に近く、サンプル8の色度座標は(0.263、0.137)で紫色であり、サンプル16の色度座標は(0.240、1.888)でブルーに近く、サンプル24の色度座標は(0.259、0.259)で緑がかったブルーとなっており、その軌跡は図7に示す様に半円状の弧となっており、フィルタの色特性の実現範囲が広いことが確認できた。
一方、表2に記載の通り、比較例1(図5の×印)のサンプル4の色度座標は(0・262、0.217)でブルーであり、サンプル24の色度座標は(0.288、0.300)でブルーグレーの色を呈している。他のサンプル8、16などの色度座標は、図10に示すようにサンプル4とサンプル24を結ぶ直線にほぼ乗っており、フィルタの色特性の実現範囲が狭いことが確認できた。さらに比較例2(図5の○印)の色度座標の分布も、図13に示すように直線状に分布しておりフィルタの色特性の実現範囲が狭いことが確認できた。
表3に記載した比較例3〜5は、光学素子のフィルタ層の平面視形状をラインアンドスペースとした以外は実施例1、比較例1、比較例2と同じ構成であるが、そのシミュレーション結果を色度図上に配置した図17を見ると、全ての色度座標が(0.330、0,330)から(0.360、0.370)の範囲に集中しており、色としては白から黄色の範囲に集中しており、フィルタの色特性の実現範囲が極端に狭いことが確認できた。つまり光学素子のフィルタ層の平面視形状としてラインアンドスペースは適さないことが示された。
6インチ角の合成石英板に、モリブデンシリサイド膜が120nm厚で成膜され、表層にハードマスク層としてクロム膜が6nmで成膜された積層板を準備した。
電子線レジストとして、富士フィルム製FEP−101をクロム膜上に300nm塗布した。
次いで、電子線描画装置として、日本電子製JBX9000を使用し、貫通孔とする部分に電子線を照射し、現像した。
次いで、ハードマスク層であるクロム膜をドライエッチングし、その後、電子線レジストを剥離しハードマスクをパターニングした。
その後、モリブデンシリサイド膜をハードマスク層を介してドライエッチングしたのち、ハードマスク層としてのクロム膜を剥離して、光学素子を得た。
なお、貫通孔のピッチは200nm〜400nmの間で20nm毎とし、デューティー比を0.4〜0.9までの間で0.1毎とし、合計66サンプルを作成した。
実施例2で得られた光学素子のモリブデンシリサイド膜について組成分析、電子顕微鏡観察およびフィルタの色特性の評価を行った。色特性については目視でも判断した。
モリブデンシリサイド膜の構成材料について下記分析条件にて組成分析を行った。
分析は、モリブデンシリサイド膜の最表面およびモリブデンシリサイド膜の内部の2か所について行った。なお、分析対象の光学素子は、貫通孔ピッチが200nmであり、デューティー比が0.4の光学素子を用いた。結果を下記表4(モリブデンシリサイド膜の最表面の分析結果)および表5(モリブデンシリサイド膜の内部の分析結果)に示す。
なお、表4、および表5は、検出され元素の合計を100とした場合の各元素の割合を示すものである。
表4および表5より、内部にはモリブデンシリサイド系材料からなるフィルタ層が形成され、フィルタ層上に酸化ケイ素を主成分とする酸化ケイ素膜が形成されていることが確認できた。
また、モリブデンシリサイド系材料を構成材料の主成分として含むフィルタ層の厚みは120nmであり、酸化ケイ素を主成分として含む酸化ケイ素膜の厚みは、9nmであった。
装置:Quantum2000
X線条件:Al mono 200μmφ× 30.3 15kV
X線取込角度:45°
中和条件:Ion/Electron 20μA
Etching条件:2kv Raster 2×2(SiO2換算=6.08nm/min) 0.25min/回×20Level、0.5min/回×20 Level
実施例2で得られた光学素子をViSTEC社製電子顕微鏡LWM9000により観察したところ、デューティー比が0.4〜0.8のものについては、精度よく貫通孔が形成されていることが確認できた。
しかしながら、デューティー比が0.9のものについてはフィルタ層全体がほぼ剥離していることが確認できた。
実施例2で得られた66種類の光学素子のうち、デューティー比が0.4〜0.8であり、ピッチが200nm〜380nmである50種類の光学素子に対してD65光源から照射した光を透過させ、透過した可視光の観察結果を確認した。可視光の観察結果を図18に示す。
実施例2の可視光の観察結果より、デューティー比が大きいほど光透過率が大きくなり、また、ピッチを大きくすることにより、透過率波長特性が、赤系の光を透過する特性から青系の光を透過する特性に変化することが確認でき、実施例1のシミュレーションと同様の傾向を示すことが確認できた。
表1、表2、図5、図8、図11および図14より、光学素子のフィルタ層の構成材料としてモリブデンシリサイド系材料を用いることで色特性の実現範囲に優れたフィルタ層とすることができることが確認できた。また、アルミニウム層またはクロム層に単に貫通孔を設けただけの場合、貫通孔のサイズおよびピッチを変化させても、透過する可視光の波長の選択の自由度が低く、色特性の実現範囲が狭いことが確認できた。
図6、図9および図12より、モリブデンシリサイド系材料を用いてフィルタ層を形成すると、可視光領域の短波長側と長波長側との両側に透過領域を有し、中間波長を遮光する透過率波長特性を示すことが確認できた。一方クロム(Cr)、アルミニウム(Al)を用いてフィルタ層を形成すると紫外〜青の短波長側に透過領域を有するが赤〜近赤外の長波長側に透過領域を有しない透過率波長特性を示すことが確認できた。
表1、表2および図5(実施例1および比較例1〜2)と、表3および図17(比較例3〜5)との比較より、フィルタ層が複数の貫通孔を有するものであることにより色特性の実現範囲に優れたものとすることができ、ラインアンドスペースでは色特性の実現範囲が大きく狭まることが確認できた。
表1、図5および図7(実施例1)と、図18(実施例2)との比較より、形成した光学素子が、シミュレーションと同様の傾向を示すことが確認できた。
2 … フィルタ層
3 … 貫通孔
4 … ハードマスク層
10… 光学素子
11… レジスト
21 … 基材
22 … 細線
23 … 開口部
Claims (2)
- 可視光透過性を有する基材と、前記基材の一方の表面上に形成され、複数の貫通孔を有し、照射された光に含まれる可視光のうち特定波長の可視光を選択的に透過させるフィルタ層と、を有し、
前記貫通孔の開口径が100nm〜380nmの範囲内であり、
前記フィルタ層の構成材料がモリブデンシリサイド系材料を含み、
前記フィルタ層の構成材料中のモリブデンシリサイド系材料の含有量が、70質量%以上であり、
さらに、前記貫通孔のピッチが可視光の波長以下であることを特徴とする光学素子。 - 前記貫通孔の内部が空洞であることを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
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