JP6519020B2 - 水素製造装置及び水素製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、炭素質原料の熱分解(乾留)で発生するタール含有ガス(タール随伴炭化水素含有ガス)を、触媒を用いて改質することによって、高濃度の水素を安定的に製造する水素製造装置及び方法に関する。特には、反応装置として移動床方式を用いた、水素製造装置及び方法に関する。
バイオマスや廃棄物、汚泥、家畜糞尿、石炭などの固体状の炭素質原料から熱化学的手法によって水素を製造する方法として、一般的に熱分解(乾留)プロセスにより生じた熱分解ガスを再利用する方法の活用が進められている。この熱分解プロセスは、通常、炭素質原料を無酸素雰囲気下で加熱処理するものであるが、そこで発生するタール成分を含有した熱分解ガスの高度な活用が極めて重要であり、従来さまざまな取り組みがなされてきた。
炭素質原料を連続的に処理するためには、気流床方式(噴流床方式)、固定床方式、又は、移動床方式の反応装置により、炭素質原料を熱分解処理した後、生じた熱分解ガスを、酸素や水蒸気等の改質ガスを用いて改質して、軽質な炭化水素ガスや水素を製造することが一般的である。流動床方式は、バッチ式が一般的であり、連続処理の場合は、多段化等が必要であり、コスト高となったり、制御が難しいという問題があった。
気流床方式の反応装置で処理するためには、反応時間が短時間であることから、微粉状の原料を使う必要がある。そのため、上述のような固体状の炭素質原料を用いる場合は、事前に原料を微粉砕する必要があり、エネルギー及びコストを多く要するという問題が生じることから、反応時間を稼ぐことができる固定床方式や移動床方式で処理することが多かった。
しかしながら、炭素質原料の熱分解ガスがタールを多く含有している場合、固定床方式の反応装置で処理すると、次のような問題があった。即ち、熱分解ガスがタール蒸気を含んだウエットなガスであるために、改質炉で熱分解ガスを水素に変換する際、反応を進行させるための触媒を充填した場合であっても、すすや炭素(チャー等)が生成して、各反応装置の圧力損失が上昇して運転を継続できなくなる。このため、一旦反応を停止して、別系統に切り替え、その間にすすや炭素を燃焼除去して圧力損失を回復するなどの操作が必要であった(非特許文献1)。
移動床方式の反応装置の場合は、固定床方式よりは、すすや炭素(チャー等)の生成による圧力損失上昇が原因の操業停止の問題は少ないが、反応装置内でガス流れの偏流の問題が生じることが多い。そのため、原料と一緒に、球状や円筒状の不燃性のペレットを反応装置内に投入し、原料と共に充填層を形成して、ガス流れの偏流を抑制する方法が提案されている(特許文献1)。
更に、ペレット表面に触媒を担持することにより、偏流抑制に加えて、熱分解反応や改質反応を促進させる技術も開示されている(特許文献1)。
更にまた、ペレットを循環させて再利用する方法も開示されている(特許文献2)。この方法では、アルミナの多孔質等の不燃性ペレットにタール分などを吸着させた後、ガス化炉内でアルミナの触媒作用によって当該タール分の分解を促進し、タール分を除去する。
更にまた、ペレットを予熱して熱担持媒体としても利用し、熱分解反応や改質反応をより効率的に行う方法も開示されている(特許文献3)。この方法では、移動床方式の熱分解反応器に、予熱された熱担持媒体を充填し、その中で原料の有機物質を熱分解して熱分解ガスと固体の炭素含有残留物を生成し、熱分解ガスは上方に設けた第2の反応帯域(リフォーマー)で改質して改質ガスとし、固体の炭素含有残留物は下方から熱担持媒体と共に排出する。排出後、固体の炭素含有残留物と熱担持媒体とは分離され、固体の炭素含有残留物は燃焼されて高温の燃焼排ガスを生成し、当該燃焼排ガスの顕熱で、分離後の熱担持媒体を予熱し、予熱された熱担持媒体は、リフォーマーおよび熱分解反応器に循環されて、有効利用される。
加えて、こうした移動床プロセスの水素製造能力を高めるため、熱分解反応装置や改質反応装置の後段に、固定床のシフト反応触媒層を設ける方法も開示されている(特許文献4)。
特開2007−254604号公報 特開2005−255787号公報 特表2003−510403号公報 特開2010−184988号公報
環境調和型製鉄プロセス技術開発に関する研究、平成25年成果報告書、新エネルギー・産業技術総合開発機構発行
しかしながら、特許文献1、2に記載の方法では、炭素質原料と共に不燃性ペレットも加熱する必要があるため、反応温度を保持するためのエネルギーがより多く必要となること、および、不燃性ペレットが大量に必要になるという問題があった。
また、特許文献3に記載の方法では、副生するチャーの燃焼熱で、熱担持媒体を予熱し、反応温度を保持するためのエネルギーを低減しているものの、熱担持媒体とチャーを分離する工程、及び、チャー燃焼ガスで熱担持媒体を予熱する工程が必要で、製造工程を複雑化するという問題があった。また、熱担持媒体の具体的材質については、実施例に鉄球が記載されているだけであり、熱分解反応の促進効果は期待できるものの、改質反応(リフォーミング)での効果は期待できず、そのため、リフォーマーに別途触媒層を設ける必要があった。さらに、熱担持媒体とチャーを分離する工程を経ても分離できなかったチャーや析出炭素が存在し、熱担持媒体の表面に付着したままの状態で、それらが反応帯域に搬送されて再利用されるために、改質反応の促進効果が大きく低減する恐れがあった。更にまた、分離できなかったチャーや析出炭素が、熱担持媒体と共に移動床に搬送されて再利用されるため、移動床内の圧力損失が増加して、改質ガスを投入するためのブロワ等の能力を高める必要が生じる恐れがあった。
炭素質原料から熱化学的手法によって水素を回収する方法として、固定床プロセスでは、触媒反応器内の炭素析出が進行し、圧力損失の上昇や、触媒性能の劣化が生じて、操業が不安定になったり、困難になったりするため、一旦ラインを休止して析出炭素を空気等で燃焼する等で除去して、触媒を再生する必要があった。また、操業を止めずに空気取り込みによる再生作業をオンラインで行うことも可能であるが、触媒反応器を複数設ける必要があり、例えば、1日1回程度、一旦改質反応を停止、別系統の反応器の流路に切り替えるなどの必要があった。そのため、製品ガスが連続的に得られなかったり、複数系統になることにより、システムが複雑となる懸念があった。また、特許文献1に記載のような不燃ペレットを用いる移動床プロセスにおいては、熱媒体としての不燃ペレットが熱分解促進のためにのみ用いられており、水素製造能力を高くすることに限界があった。
なお、水素製造能力を高めるため、熱分解反応装置や改質反応装置の後段に、固定床のシフト反応触媒層を設ける方法が知られているが(特許文献4)、工程が増えると共に、水素製造コストも増加する傾向があった。
また、該触媒層に流入するガス中に、分離工程で除去できなかったチャーやダストなどが含まれると、該触媒層で目詰まりを起こす恐れもあった。
そこで、本発明は、(ア)炭素質原料を熱分解した際に発生する熱分解ガス(タール含有ガス)中のタール及び炭化水素成分を、触媒の存在下で、改質剤により改質反応させて、水素を高い製造能力で製造すると共に、(イ)その際に並行して生じてしまう触媒表面での炭素析出によって、改質ガスの流れが閉塞することを、操業を停止することなく、且つ、触媒反応器の切り替え作業を行うことなく、防止し、(ウ)更に、炭素析出により性能劣化した触媒を再生して、触媒能力の低下を抑えて再利用可能とする、水素製造装置及び水素製造方法を提供することを目的とする。
本発明者が鋭意検討した結果、上記課題に対する以下の解決手段を発明するに至った。
(1)熱分解器と、改質器と、燃焼/再生器と、搬送装置と、熱交換器とを備え、熱輸送媒体を、前記燃焼/再生器、前記改質器、前記熱分解器、前記搬送装置の順に移動させて繰り返し循環使用し、炭素質原料から水素を製造する水素製造装置であって、
前記熱輸送媒体は、触媒固形物からなり、
前記熱分解器は、前記炭素質原料を、前記改質器から前記熱分解器に移動された前記触媒固形物と共に移動させながら、前記触媒固形物の顕熱を用いて前記炭素質原料を熱分解することにより、熱分解ガスを生成し、前記熱分解ガスを前記改質器へと排出すると共に、前記熱分解ガスの生成に伴い発生したチャーと前記触媒固形物とを前記搬送装置へと排出し、
前記改質器は、前記燃焼/再生器から前記改質器に移動された前記触媒固形物を移動させながら、前記熱分解器から前記改質器に排出された前記熱分解ガスと前記触媒固形物とを接触させることにより、少なくとも前記触媒固形物の顕熱を用いて前記熱分解ガスの温度を上昇させると共に、温度が上昇した前記熱分解ガスに改質剤を反応させることにより、水素含有ガスを製造し、
前記搬送装置は、前記熱分解器から排出された前記チャーと前記触媒固形物とを、前記燃焼/再生器へと搬送し、
前記燃焼/再生器は、前記搬送装置から前記燃焼/再生器に搬送された前記チャーと前記触媒固形物とを加熱して、前記チャーを燃焼させ、前記チャーの燃焼により生じた燃焼排ガスを前記熱交換器へと排出すると共に、加熱された前記触媒固形物を前記改質器へと移動させ、
前記熱交換器は、前記燃焼/再生器から排出された前記燃焼排ガスの顕熱を用いて、前記改質剤を間接加熱して、加熱後の前記改質剤を前記改質器へと排出する、
ことを特徴とする、水素製造装置。
(2)前記炭素質原料を乾燥する乾燥器をさらに備え、前記乾燥器により乾燥された前記炭素質原料が前記熱分解器に投入されることを特徴とする、(2)に記載の水素製造装置。
(3)前記触媒固形物が球状粒子であることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の水素製造装置。
(4)前記触媒固形物の各粒子の粒度分布におけるd90/d10が1.0超乃至2.0未満であることを特徴とする、(3)に記載の水素製造装置。
(5)上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の水素製造装置を用いて、炭素質原料から水素を製造することを特徴とする、水素製造方法。
(6)改質剤として、酸素、酸素富化空気、空気、二酸化炭素、及び、水蒸気の群から選ばれる1種又は2種以上を使用することを特徴とする、(5)に記載の水素製造方法。
本発明によって、炭素質原料を乾留した際に発生するタール含有ガス中のタール及び炭化水素成分を、触媒の存在下で、改質剤により改質反応させて、水素を高い製造能力で製造すると共に、その際に並行して生じてしまう触媒表面での炭素析出によって、改質ガスの流れが閉塞することを、操業を停止することなく、且つ、反応器の切り替え作業を行うことなく、防止し、更に、炭素析出により性能劣化した触媒を再生して、触媒能力の低下を抑えて再利用可能とする、水素製造装置及び水素製造方法を提供することが可能となる。
本発明の実施形態における炭素質原料から水素を製造する水素製造装置の模式図である。 本発明の別の実施形態における炭素質原料から水素を製造する水素製造装置の模式図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
まず、本発明の実施形態に係る水素製造装置及び方法の概要について説明する。本実施形態は以下の(1)〜(4)の基本的な特徴を有する。
(1)1つ目は、炭素質原料を反応器で熱分解し、生じた熱分解ガスを改質して水素を製造する際、熱分解、及び改質に必要な反応熱を、触媒固形物からなる熱輸送媒体の顕熱によって賄うことである。これにより、熱分解反応に必要な熱の全部または大部分を賄うことができ、また、改質反応に必要な熱の大部分または一部を賄うことができる。ここで、上記熱分解ガスは、タール及び炭化水素を主な成分とするガスであり、以下では「タール含有ガス」と称する場合もある。なお、タールは常温では液体であるが、高温の熱分解ガス(タール含有ガス)中ではタールはガスとなる。
(2)2つ目は、その触媒固形物上で、炭素質原料の熱分解反応(上記タールを含有する熱分解ガスの生成)、及び、当該熱分解ガスの改質反応を効率よく進行させることができることである。触媒固形物、すなわち触媒自体が、熱分解反応や改質反応の際に使用する反応器中に高温で充填されており、従来技術の触媒機能を有さない単なる熱担持媒体の充填とは異なって、触媒固形物上で反応が効率良く進行する。
(3)3つ目は、熱分解反応によって生成する熱分解ガス中のタールが、熱分解ガスの改質反応により、触媒固形物上に析出炭素(チャー)として副生して付着するが、触媒固形物とチャーとを分離する工程を経ずに、両者をそのまま、空気により燃焼し、触媒固形物の表面のチャーをガス化して清浄化すると共に、触媒固形物を高温化して高い顕熱を付与することである。これにより、触媒固形物とチャーの分離工程を省けると共に、触媒固形物上のチャーを略完全に除去することができ、触媒固形物を再生して、熱分解及び改質反応を長時間安定的に行うことができる。
(4)4つ目は、上記触媒固形物とチャーをそのまま空気で燃焼し、チャーをガス化して生じた燃焼排ガスの顕熱を用いて、タールの改質に用いる改質剤(酸素、酸素富化空気、空気、二酸化炭素、又は水蒸気等の改質ガス)の予熱を行うことである。これにより、発生した熱を有効に利用できるプロセスを提供できる。
このように、本実施形態は、炭素質原料を熱分解する際に導入する、熱輸送媒体且つ水素製造用触媒である触媒固形物を有効に利用することにより、熱分解で発生する熱分解ガス(主に、タール及び炭化水素成分)から効率的に水素を製造することが期待できる。ここで、反応器を移動床反応器とし、また反応器から排出された炭素固形分(チャー)が付着した触媒固形物を分離工程を経ずに、そのまま、燃焼、再生して循環利用すること、さらには燃焼、再生で生じた燃焼排ガスの排熱を、熱交換器を通して有効利用することにより、プロセス全体を簡素化しながら、熱効率並びに水素製造能力を高めることができる。
以下に、本実施形態に係る炭素質原料から水素を製造する水素製造装置及び方法について、より詳細に述べる。
原料となる炭素質原料が廃棄物や汚泥等水分を多量に含んでいる場合は図1の方式の水素製造装置、その他の場合は図2の方式の水素製造装置を用いることができる。以下には、主に図1を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る水素製造装置は、移動床方式の熱分解器7と、触媒固形物6の移動経路上で該熱分解器7の前段に配置される移動床方式の改質器8と、該移動経路上で該改質器8の前段に配置される移動床方式の燃焼/再生器10と、搬送装置9と、熱交換器14と、乾燥器15とを備える。この水素製造装置は、熱輸送媒体及び水素製造用触媒の双方として機能する触媒固形物6を、燃焼/再生器10、改質器8、熱分解器7、搬送装置9の順に移動させて繰り返し循環使用しながら、炭素質原料1から水素(水素含有ガス5)を製造する。
炭素質原料1は、熱分解器7に投入される前に予め乾燥器15で乾燥される。一方で水蒸気や酸素などの改質剤4は、予め熱交換器14で予熱された後、改質器8に導入されて改質反応に供され、さらに、該改質剤4の一部は、熱輸送媒体であり且つ反応を促進させる触媒固形物6と共に熱分解器7に供給される。熱分解器7は、触媒固形物6の顕熱を用いて、炭素質原料1の熱分解を起こして熱分解ガス2を発生させる。このために、熱分解器7の炉内温度を400℃以上、より好ましくは、500℃以上に保持することで、熱分解ガス2をより効率的に製造できる。この場合、熱分解器7の温度の上限は、装置の簡素化、コストの観点から1000℃以下が好ましいが、炭素質原料1に応じて適宜決めることができる。
また、触媒固形物6の顕熱だけでは、所望の熱分解温度の維持が難しい場合は、燃焼/再生器10から排出される燃焼排ガス13を一部導入して、補助熱源としても構わない。このとき熱の与え方としては、熱分解器7の外部から熱を与える(外熱)方法や炉内に配管を通してその内側を通す方法等の間接加熱でもよいが、燃焼排ガス13をダクトにより熱分解器7の内部に導入し、直接熱交換する方法を取ることもできる。
熱分解ガス2は、熱分解器7から排出された後、予熱された改質剤4と共に改質器8へ導かれ、改質器8内で、触媒固形物6の顕熱と熱分解ガス2の一部の燃焼熱を用いて、触媒固形物6上で熱分解ガス2の改質反応が進行し、水素含有ガス5が製造される。ここで、改質剤4は、酸素、酸素富化空気、空気、二酸化炭素、又は水蒸気(スチーム)のうち1種又は2種以上であることが好ましい。これにより、熱分解ガス2の改質反応を効率的に進行させることが可能となる。
一方、熱分解器7で熱分解ガス2の残渣として排出されるチャー3は、触媒固形物6と共に搬送装置9を経由して燃焼/再生器10へ搬送される。燃焼/再生器10内では、外部から導入される空気11を、必要に応じて燃料12を加えて高温にして、チャー3及び触媒固形物6を加熱する。これにより、触媒固形物6上に堆積した固形炭素分やチャー3が燃焼除去され、触媒固形物6の触媒としての機能が回復する。その後、触媒機能が回復した触媒固形物6は、燃焼/再生器10から再び改質器8へ供給されて再利用される。また、燃焼/再生器10では、外部より導入された空気11は、燃焼排ガス13として後段の熱交換器14や乾燥器15へ導かれる。固形炭素が除去された高温の触媒固形物6は熱輸送媒体の機能を有すると共に、該高温の触媒固形物6の顕熱の一部は改質器8で改質反応に用いられる。また、燃焼/再生器10から排出される燃焼排ガス13は、一部は後段の改質器8に導かれ、改質器8内での反応を進行させる熱源として利用される。ここで、燃焼/再生器10は、触媒固形物6上の固形炭素分やチャー3を燃焼除去可能であれば、任意の装置を用いることができるが、固形炭素やチャー3は、約600℃以上の温度で酸素と燃焼反応を起こすことから、燃焼/再生器10としては、炉温を600℃以上、1200℃以下、より好ましくは1000℃以下に保持できるものが望ましい。
なお、燃焼/再生器10→改質器8→熱分解器7の間の触媒固形物6の移動、及び、燃焼/再生器10、改質器8、熱分解器7のそれぞれの内部での触媒固形物6の移動は、その方向は問わないが、触媒固形物6の重力による移動とすることが、簡便で好ましい。そのため、図1、図2に示すように、燃焼/再生器10、改質器8、熱分解器7の配置はこの順となっていれば特に問わないが、触媒固形物6の重力による移動がし易いように、燃焼/再生器10を上段、改質器8を中段、熱分解器7を下段に配置して、上下方向に並設することが好ましい。
また、本実施形態に係る炭素質原料1は、熱分解してタールを生成する炭素を含む原料であり、例えば、石炭、バイオマス、又はプラスチックの容器包装類等、構成元素に炭素を含む広範囲なものを含む。炭素質原料1のうち、バイオマスとは、林地残材、間伐材、未利用樹、製材残材、建設廃材、稲わら等の木質系廃棄物、又は、それらを原料とした木質チップ、ペレット等の二次製品、再生紙として再利用できなくなった古紙等の製紙系廃棄物、農業残渣、厨芥類等の食品廃棄物、活性汚泥等を含む。
改質器8は、600℃以上1000℃以下の温度に加熱され、熱分解器7から流入する熱分解ガス2と、燃焼/再生器10から流入する触媒固形物6とが接触し、触媒固形物6が熱分解器7へと円滑に排出され、且つ生じた水素含有ガス5が触媒固形物6と分離して排出される機能を有していれば、特に制限されるものではないが、熱輸送媒体としての高温の触媒固形物6の顕熱を有効に活用でき、且つ、触媒としての触媒固形物6により炭化水素成分の改質反応を促進できるためには、改質器8は移動床炉であることが望ましい。また、改質器8は、その上部から導入される触媒固形物6と、下部から導入される熱分解ガス2とを対向流方式で接触させることが好ましい。そうすることで、触媒固形物6は重力によって改質器8内を下方に移動でき、熱分解ガス2は浮力によって改質器8内を上方に移動できるためである。
また、改質器8は600℃以上1000℃以下程度の温度に曝されるため、その温度に耐え得る材質且つ構造のものを製作することが必要である。改質器8の素材としては、例えば、SUS310S等の耐熱ステンレス、耐熱ニッケル合金、又は、耐熱セラミックスを好適に用いることができる。また、改質反応を進める上で温度が不足した場合には、改質器8内に空気や酸素等の酸化剤を導入してもよい。
搬送装置9は、例えば、ベルトコンベアー、バケットコンベアー等が好適に用いられ、熱輸送媒体及び触媒としての機能を有する触媒固形物6を熱分解器7から燃焼/再生器10に搬送するために使用される。
また、炭素質原料1が多量に水分を含んでいる場合、直接熱分解器7に導入しても炉内で水蒸気の発生が優先的に進行してしまい、炭素質原料1の熱分解反応が進まないため、予め炭素質原料1の水分を除去しておくことが望ましい。そこで、図1に示すように、熱分解器7の前段に乾燥器15を設置し、該乾燥器15により、熱分解器7に投入される前の炭素質原料1を乾燥させて、該炭素質原料1に含まれる水分を除去しておくことが好ましい。これにより、熱分解器7における炭素質原料1の熱分解反応を促進できる。また、乾燥器15の炉内温度は、室温以上、例えば50℃以上、好ましくは80℃以上、300℃以下、より好ましくは200℃以下の範囲で保持できればよい。
なお、炭素質原料1が廃棄物や汚泥等水分を多量に含んでいない場合は、図2に示すように、上記乾燥器15の設置を省略して、炭素質原料1を乾燥させることなく、そのまま熱分解器7に導入してもよい。
また、本実施形態で用いられる触媒固形物6としては、炭化水素の水蒸気改質反応、二酸化炭素改質反応、部分酸化改質反応に用いられるNi系触媒、Co系触媒などの非貴金属系触媒や、Ruなどの貴金属系触媒等を好適に用いることができるが、特にこれらに限定するものではない。また、ここで用いる触媒固形物6は、成型体であることが望ましく、その形状は球状がより好ましい。これは、触媒固形物が、一般に反応装置に適用されているシリンダー状、リング状、ホイール状、タブレット状といった形状を有する場合、該形状の触媒固形物が反応器を含めたシステム全体を移動する過程において、該形状の触媒固形物の突起部分が、触媒固形物同士ならびに管壁等への衝突により粉化して、微粉が発生し、圧力損失上昇の原因になる懸念があるためである。
本実施形態で言う球状とは、固体表面に凹凸部がない形状である。触媒固形物6が転動して移動できることが最も重要であるため、触媒固形物6が、転動しやすい球形の形状を有することが好ましい。このように触媒固形物6を球状粒子で構成することにより、該触媒固形物6の突起部分が存在しない、或いは小さくなる。このため、触媒固形物6が水素製造装置の各反応器(燃焼/再生器10、改質器8、熱分解器7等)を移動する過程において、該触媒固形物6が衝突により粉化して、微粉が発生することを防止でき、各反応器の圧力損失を抑制できる。また、上記触媒固形物6の球状を特定する指標として、例えば、円形度と称される指標などを用いてもよい。円形度は、粒子を画像解析した際の二次元画像における面積と周囲長を元に数値で表現する、形状の複雑さを測る指標である。例えば、この円形度が0.7以上となるような球状の触媒固形物6を用いてもよい。
さらに、球状粒子からなる触媒固形物6の粒度分布に関しては、一般的なレーザー回折式測定法等により測定して得られる体積基準粒度分布において、(d90/d10)が1.0超乃至2.0未満であることが好ましい。ここで、(d90)は、触媒固形物6の球状粒子群の体積基準粒度分布において積算体積率が90%になるときの粒径(90%径)であり、(d10)は、当該粒度分布において積算体積率が10%になるときの粒径(10%径)である。
この粒径の比(d90/d10)を2.0未満として、粒度が揃った触媒固形物6を用いることにより、反応器内に触媒固形物6を充填した際の触媒充填密度が上がりにくくなるので、反応器内の触媒充填層の触媒充填密度を低くできる。従って、触媒固形物6の間隙の閉塞の原因となるすすや固形状炭素で、触媒充填層の触媒固形物6の間隙が満たされないので、触媒充填層内部でガスが安定的に流動する状態となる。ここで、触媒充填密度とは、一定容器内容積に占める触媒体積の総和で表され、ここでの触媒体積とは真密度である。触媒固形物6の触媒充填密度は、低いほど望ましく、70%以下、さらに好ましくは60%以下である。(d90/d10)を2.0未満とすることで、触媒固形物6の触媒充填密度を好適に70%以下にすることができ、触媒充填層内部でガスが安定的に流動させることが可能となる。なお、(d90/d10)の下限値は、1.0超であればよい(1.0<(d90/d10)<2.0)。
次に、本実施形態に係る水素製造装置で用いる熱分解ガス2(タール含有ガス)の改質用触媒(触媒固形物6)の製造方法について説明する。
本実施形態に係るタール含有ガスの改質用触媒は、例えば、Ni、Co、Ruなどの金属元素からなるため、各構成成分の水溶液から沈殿操作により金属水酸化物を生成し、当該沈殿物を少なくとも乾燥及び焼成して、所望の触媒を製造することができる。
さらに、本実施形態に係るタール含有ガスの改質用触媒は、前記触媒に、シリカ、アルミナ、ゼオライトから選ばれる少なくとも1種類の酸化物を加えた酸化物であっても良い。前記Ni、Co、Ruなどの元素からなる金属化合物の水溶液に沈殿剤を添加して、金属元素の沈殿物を生成し、当該沈殿時、又は、前記沈殿物の焼成後に、さらにケイ素又はアルミニウム成分を加えて、ニッケル等の金属元素、及び、ケイ素又はアルミニウムを含有した混合物とし、当該混合物を少なくとも乾燥及び焼成して、当該金属元素の金属酸化物、及び、ケイ素又はアルミニウムの酸化物を含有した混合物からなる触媒を製造することができる。
別の方法として、ニッケル等の金属化合物の水溶液に沈殿剤を添加して、ニッケル等の金属元素を含む沈殿物を生成し、その沈殿物を乾燥及びか焼して、当該金属元素の金属酸化物を生成した後、その酸化物に、シリカ粉末と水、又は、シリカゾル、又は、アルミナ粉末と水、又は、アルミナゾル、又は、ゼオライト粉末と水を加えて混合して混合物を生成し、その混合物を少なくとも乾燥及び焼成して、触媒を製造することができる。また、詳しくは、この方法の中で混合物を乾燥、粉砕した後に焼成する、又は、乾燥、か焼、粉砕、成型した後に焼成することができる。
また、別の方法として、ニッケル等の金属化合物の水溶液に沈殿剤を添加して、ニッケル等の金属元素の沈殿物を生成し、その沈殿物に、シリカ粉末と水、又は、シリカゾル、又は、アルミナ粉末と水、又は、アルミナゾル、又は、ゼオライト粉末と水を加えて混合して第1の混合物を生成し、その第1の混合物を少なくとも乾燥及び焼成した後、更にシリカ粉末と水、又は、シリカゾル、又は、アルミナ粉末と水、又は、アルミナゾル、又は、ゼオライト粉末と水を混合して第2の混合物を生成し、その第2の混合物を、少なくとも乾燥及び焼成して、触媒を製造することができる。また、詳しくは、この方法の中で第1又は第2の混合物を乾燥、粉砕した後に焼成する、又は、乾燥、か焼、粉砕、成型した後に焼成することができる。
さらに、別の方法として、ニッケル等の金属化合物、及び、ケイ素又はアルミニウム化合物の混合溶液に沈殿剤を添加して、ニッケル等の金属元素、及び、ケイ素又はアルミニウムを共沈させて沈殿物を生成し、その混合物を少なくとも乾燥及び焼成して、触媒を製造することができる。また、詳しくは、この方法の中で沈殿物を乾燥、粉砕した後に焼成する、又は、乾燥、か焼、粉砕、成型した後に焼成することができる。
また、別の方法として、ニッケル等の金属化合物を含んだ溶液を、成型したシリカ、又は、アルミナ担体上に担持して、触媒を製造することができる。その過程において、担体表面に各化合物をインシピエントウエットネス法、蒸発乾固法等の通常の含浸法により調製できる。また、各元素を担持する方法は、全ての元素を含んだ溶液を一度に担持する同時含浸法であってもよいし、各化合物の一部を含んだ溶液を一旦含浸した後に、それ以外の化合物を含んだ溶液を1回又は複数回に分けて含浸する逐次含浸法であっても良い。
ここで、各製法における沈殿物の乾燥は、特に温度や乾燥方法を問わず、一般的な乾燥方法であればよい。乾燥後の共沈殿物は必要に応じて粗粉砕を行った後、焼成すれば良い。
尚、沈殿物の乾燥の前には、ろ過をしておくことが、乾燥の手間を少なくすることができ、好ましい。更に、ろ過後の沈殿物は、純水等で洗浄しておくことが、不純物量を低減できることからより好ましい。
また、上記混合物の焼成は、空気中で行うことができ、焼成温度は700〜1300℃の範囲であれば良い。焼成温度が高いと混合物の焼結が進行し、強度は上昇するが、一方で比表面積が小さくなるために触媒活性は低下するため、そのバランスを考慮して決定するのが望ましい。焼成後は、得られた触媒を造粒したり、プレス成型等で成型したりすることで、当該触媒の成型物である触媒固形物6を製造して使用することが望ましい。なお、乾燥と焼成の間に、か焼や成型工程も加えることができ、その場合、か焼は空気中で400〜800℃程度で行えば良く、成型は、プレス成型等で行うことができる。
ここで、造粒については、上記触媒の固形物を湿式粉砕した後、このスラリーに対して噴霧乾燥処理を行うことで、球状成型物を製造することができる。尚、ここでいう該固形物とは、乾燥品、焼成品のいずれであっても良い。噴霧乾燥処理に用いる前記スラリーの固形分濃度については、特に制限されるものではないが、例えば、固形分濃度10〜30質量%となるように調製される。混合温度については、通常は10〜30℃の範囲で混合される。この様なスラリーについて湿式粉砕処理を行う。湿式粉砕とは、強力剪断力を加えることができる粉砕機または分散機を用い、スラリー成分のアグロメレーション(塊状化)を防ぎながら分散または粉砕させる操作を意味する。スラリーに含まれる溶媒成分としては、例えば、水、アルコール、ヘキサン、トルエン、塩化メチレン、シリコーン等を挙げることができる。湿式粉砕に使用する装置としては、特に限定されるものではないが、例えば、バスケットミル等のバッチ式ビーズミル、横型・縦型・アニュラー型の連続式のビーズミル、サンドグラインダーミル、ボールミル等の湿式媒体攪拌ミル(湿式粉砕機)が例示される。湿式媒体攪拌ミルに用いるビーズとしては、ガラス、アルミナ、ジルコニア、スチール、フリント石等を原料としたビーズが使用可能である。前記スラリーの噴霧乾燥処理としては、回転ディスク法、加圧ノズル法、2流体ノズル法など従来公知の方法を採用することができる。特に、2流体ノズル方法は、粒子径分布の均一な球状酸化物微粒子集合体を得ることができ、また平均粒子径をコントロールすることが容易であるので好ましい。このときの乾燥温度は、スラリー濃度、処理速度等によっても異なるが、スプレードライヤーを使用する場合、例えば、スプレードライヤーの入口温度としては100〜300℃、出口温度40〜200℃などの条件が好ましい。噴霧速度については、格別に制限されるものではないが、通常は噴霧速度0.5〜3L/分の範囲で行われる。なお、アトマイザー式噴霧乾燥機を使用する場合は、例えば、10,000〜40,000rpm(回転数/分)で処理されるが、この範囲に限定されるものではない。噴霧乾燥処理により得られた球状粒子を700〜1300℃の焼成温度で焼成することにより、本実施形態に係る触媒固形物6を調製することができる。なお、焼成温度については、好適には900〜1100℃の範囲が推奨される。また、造粒に使用する前記固形物として焼成品を用いた場合には、噴霧乾燥後の焼成を省略することもできる。
以上のような製造方法で製造される触媒固形物6を用いることにより、熱分解ガス2が、炭素質原料1を熱分解した際に発生する多量の硫化水素を含み、炭素析出を起こし易い縮合多環芳香族主体のタール含有ガスであっても、随伴するタール等重質炭化水素を高効率に改質して、水素、一酸化炭素を主体とする軽質炭化水素に変換することができる。また、炭素析出等で触媒性能が劣化した際、燃焼/再生工程で触媒固形物6上の炭素を燃焼除去することにより触媒性能を回復させ、長期間安定した運転が可能になる。
ここで、熱分解ガス2(タール含有ガス)中のタールを接触改質してガス化する改質反応においては、反応経路が複雑で必ずしも明らかではないが、触媒がない場合、あるいは、熱輸送媒体が存在しても触媒機能を有していない場合、式1で示されるタール自体の熱分解反応が進行すると考えられる。また、そこに一部燃焼用に酸素を吹き込んだ場合、式1で示される生成物としての水素が酸素と優先的に反応するために、酸素は生成水素量に比較して少量の導入量とならざるを得ない。従って、そこで生成する一酸化炭素も極少量となるため、熱分解工程後に式3で示されるシフト反応を触媒等で進行させたとしても、水素はごく限られた量しか製造できない。それに対し、タール含有ガスと外部より導入する水蒸気との間では、式3で表されるようなスチームリフォーミング及び水性ガスシフト反応が進行する可能性があり、この工程に本実施形態に係る触媒が適用されれば、本実施形態で得られる水素量(2m+n/2)は、従来公知の式1のみ、あるいは、それに加えて、式2及び式3で生成される水素量(n/2+2α−β)に対し、格段に大きくなる。
→ n/2H +mC (式1)
+αO → (2α−β)CO + βH
但し、α<<m、且つ、α<n/4、α>β (式2)
CO+HO → H +CO (式3)
+2mHO → mCO+(2m+n/2)H (式4)
また、本実施形態に係る触媒固形物6の最大径について説明すると、触媒固形物6の塊状物の全個数のうち95%以上の触媒固形物6の最大径が、3〜20mmの範囲内であることが好ましく、5〜18mmの範囲内であることがより好ましい。塊状物の最大径が前記下限値未満の場合、触媒固形物6から炭素質原料1への熱伝達が効率的でないために、熱分解とそれに続く改質反応が有効に進行しない恐れがある。また、塊状物の最大径が前記上限値を超える場合、触媒固形物6が移動、搬送される機器のサイズを大きくする必要があるため、経済的ではない。ここで、触媒固形物6の最大径とは、触媒固形物6の粒子が真球状と仮定した際の直径を意味する。
上記本実施形態に係る水素製造装置で製造された水素含有ガスは、精製して水素として回収することもでき、その手段としては公知の方法を使用することができるが、例えば、圧力スイング吸着方式(PSA)、膜分離方式、深冷分離方式などが好適に用いられる。製造量の規模にもよるが、ガス濃度を自由に調節でき、かつ、安価な手法としてPSAが適している。PSAでは、例えば、剤への吸着時間、吸着層の高さ等を変更することにより、回収する水素の濃度を適宜調整することができる。このようにして、改質ガスを水素とそれ以外のガスとに分離して、水素を回収する。
以上、本実施形態に係る移動床方式の水素製造装置及び水素製造方法について詳細に説明した。本実施形態によれば、触媒及び熱輸送媒体の双方として機能する触媒固形物6を、燃焼/再生器10、改質器8、熱分解器7の順で移動させて循環利用する。燃焼/再生器10で再生された高温の触媒固形物6は、熱分解器7や改質器8内に充填されて、触媒及び熱輸送媒体として機能する。これにより、熱分解器7による炭素質原料1の熱分解と、改質器8による熱分解ガス2(タール含有ガス)の改質に必要な反応熱を、熱輸送媒体である触媒固形物6の顕熱によって賄うことできる。さらに、従来技術の触媒機能を有さない単なる熱担持媒体とは異なり、触媒機能を有する触媒固形物6上で炭素質原料1の熱分解反応や、熱分解ガス2(タール含有ガス)の改質反応を効率良く進行させることができる。従って、熱分解器7においてタール含有ガスを高効率で生成できるとともに、改質器8において、該タール含有ガス中のタール及び炭化水素成分を、触媒の存在下で改質剤により高効率で改質できるので、水素を高い製造能力で製造できる。
また、改質反応により副生する析出炭素(チャー)が触媒固形物6の表面に付着したとしても、触媒固形物6とチャーとを分離する工程を経ることなく、燃焼/再生器10において、触媒固形物6とチャーをそのまま燃焼させ、触媒固形物6の表面のチャーをガス化させると共に、触媒固形物6を加熱して高い顕熱を付与できる。これにより、触媒固形物6とチャーの分離工程を省略できると共に、触媒固形物6上のチャーを略完全に除去して、触媒固形物6を再生できる。よって、炭素析出により性能劣化した触媒固形物6を効率的に再生して、触媒能力の低下を抑えて再利用できるので、触媒固形物6を用いた熱分解及び改質反応を長時間安定的に行うことができる。
さらに、上記触媒固形物6の再生により、改質器8や熱分解器7において、触媒充填層を形成する触媒固形物6相互の間隙が、析出炭素(チャー)で閉塞されることがないので、触媒充填層内を流通する熱分解ガスや改質ガスの流れが阻害されることを防止できる。従って、熱分解器7や改質器8等の反応器の操業を停止することなく、且つ、該反応器を複数設けて切り替え作業を行うことなく、水素製造装置を安定的かつ連続的に稼働できるので、水素の製造能力と生産性を向上できる。
加えて、燃焼/再生器10において、触媒固形物6の表面のチャーを燃焼、ガス化させることにより生じた燃焼排ガス13を熱交換器14に排出し、該熱交換器14の顕熱を用いて、改質剤を予熱する。また、乾燥器15において、燃焼排ガス13の顕熱を用いて、炭素質原料1を乾燥させることもできる。このように、本実施形態では、発生した排熱を有効利用することもできる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
一連の実施例において使用した炭素質原料1は、以下の通りである。
<下水汚泥>
水分 72質量%
揮発分 41質量%
固定炭素 41質量%
灰分 17質量%
総発熱量 18MJ/kg−dry
元素分析(乾燥基準)
炭素 42質量%
水素 7質量%
窒素 5質量%
酸素 28質量%
硫黄 1質量%未満
また、実施例で使用した触媒固形物6の粒度分布測定方法を以下に記す。
[粒度分布測定方法]
レーザー回折/散乱方式粒度分布測定装置(マルバーン製、マスターサイザー2000)の試料分散ユニットに水350ccを満たした中に、触媒固形物6の測定試料0.2gを加えた。分散ユニットで撹拌した後、ユニットから本体へ混合溶液を移送し、測定セルへ透過させることによって、触媒固形物6の平均粒子径、及び、積算体積率で90%となった時の触媒固形物6の粒径(d90)と、積算体積率が10%となった時の触媒固形物6の粒径(d10)の比(d90/d10)を計測した。
(実施例1)
硝酸ニッケルと硝酸マグネシウムを各金属元素のモル比が1:9になるように精秤して、60℃の加温で混合水溶液を調製したものに、60℃に加温した炭酸カリウム水溶液を加えて、ニッケルとマグネシウムを水酸化物として共沈させ、スターラーで十分に攪拌した。その後、該水溶液を60℃に保持したまま一定時間攪拌を続けて熟成を行った後、沈殿物の吸引ろ過を行い、80℃の純水で十分に洗浄を行った。洗浄後に得られた沈殿物を120℃で乾燥し粗粉砕した後、空気中600℃で焼成(か焼)したものをビーカーに入れ、アルミナゾルを加えて、攪拌羽を取り付けた混合器で十分混合した。この混合物を、なすフラスコに移してロータリーエバポレーターに取り付け、攪拌しながら吸引することで、水分を蒸発させた。なすフラスコ壁面に付着したニッケルとマグネシウムとアルミナの混合物を蒸発皿に移して120℃で乾燥、600℃でか焼後、粉末を金型を用いて、外径約20mmφ、内径約5mmφで高さが約20mmの一穴リング状にプレス成型し、リング成型体を得た。その成型体を空気中1100℃で焼成を行い、Ni0.1Mg0.9Oにアルミナが50質量%混合した触媒成型体を調製した。
図1に示した水素製造装置において、炭素質原料1としての下水汚泥をフィーダーにより88kg/hrの量で乾燥器15に投入し、120℃に保持した乾燥器15で下水汚泥の水分を除去した後、改質器8に供給した。また、触媒固形物6として、前記触媒成型体1.0kgを改質器8に導入した。ここで、改質器8は950℃、常圧に保持した。ここで、改質器8での下水汚泥の見かけの滞留時間は約1時間であった。また、この改質器8には、改質剤4として、熱交換器14により過熱されたスチーム(約180℃)が、20kg/hrの量で導入された。
その結果、改質器8の下部から生じた水素含有ガス5は19kg/hrの量で得られた。該ガス中に含まれる水素濃度は58.6質量%であった。本水素製造装置の水素製造能力は従来技術よりも高く、特許文献3の方法で得られた水素ガスの約1.5倍のモル比で水素製造することができたと考えられる。尚、本装置は1年間、圧力損失の上昇等のトラブルを起こすことなく、安定的に運転することができた。1年後の定修期にラインを開放したところ、触媒固形物6である前記触媒成型体の約25質量%が割れ欠けを起こしていることがわかった。
(実施例2)
実施例1で得られたNi0.1Mg0.9Oの乾燥後の粉末と、同一質量のベーマイト粉末を25℃のイオン交換水で混合してスラリーを調製した。得られたスラリーを、ビーズ径0.5mmのジルコニアビーズを充填した循環式湿式粉砕機(アシザワ・ファインテック株式会社製、スターミルLMZ)を用いて、回転数2500rpm、循環量1L/minの条件で、スラリー中の固形物の平均粒子径が0.5μm以下になるまで粉砕した。その後、上記粉砕機からスラリーを回収し、スラリー中の固形物が沈降しないように撹拌機で撹拌しながらチューブポンプでスラリーをスプレードライヤー(大河原化工機株式会社製、L−8i)に供し、入口温度230℃、出口温度110℃、回転数20,000rpmの条件で噴霧乾燥を行い、その後、最終的にボックス炉で1000℃で焼成して、平均粒子径が18μm、d90/d10が約2.2の球状粒子を得た。この場合の粒子充填密度は68%であった。
実施例2においては、こうして得られた球状粒子からなる触媒成型物を触媒固形物6として用いるほかは、全て実施例1と同様にして水素製造装置を運転した。その結果、水素の製造量はほぼ同等であった。また、触媒投入後1年間、圧力損失の上昇は低く抑えられて、安定に運転することができた。1年後の定修期にラインを開放したところ、触媒成型物の約8質量%が割れ欠けを起こすにとどまっていた。
(実施例3)
実施例3においては、上記スプレードライヤーの回転数を30,000rpmで噴霧乾燥するほかは、全て実施例2と同様にして球状の触媒粒子を調製した結果、平均粒子径が約16μm、d90/d10が約1.8の球状粒子を得た。この場合の粒子充填密度は60%であった。
こうして得られた球状粒子からなる触媒成型物を触媒固形物6として用いて、実施例1と同様にして水素製造装置を運転した。その結果、水素の製造量は実施例1や2とほぼ同等であった。一方、触媒投入後1年間、圧力損失はほとんど上昇することなく、安定に運転することができた。1年後の定修期にラインを開放したところ、触媒成型物の約2質量%が割れ欠けを起こすにとどまっていた。
(実施例4)
実施例4においては、改質剤4として、前記実施例1のスチームに替えて、スチーム15kg/h、二酸化炭素3kg/h、及び酸素2kg/hの混合ガスを用いること以外は、全て実施例1と同様に行った。その結果、改質器8の下部から生じた水素含有ガス5は18kg/hの量で得られた。該ガス中に含まれる水素濃度は53.4質量%であった。この場合には、改質剤4として用いた酸素により、熱分解ガス2中の水素が燃焼するために、得られる水素含有ガス5中の水素濃度が上がりにくい傾向にはあったが、そこでの酸化発熱により改質器8の温度を維持する上では外部から投入するエネルギーを下げることが可能となった。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1・・・炭素質原料
2・・・熱分解ガス
3・・・チャー
4・・・改質剤
5・・・水素含有ガス
6・・・触媒固形物
7・・・熱分解器
8・・・改質器
9・・・搬送装置
10・・・燃焼/再生器
11・・・空気
12・・・燃料
13・・・燃焼排ガス
14・・・熱交換器
15・・・乾燥器

Claims (6)

  1. 熱分解器と、改質器と、燃焼/再生器と、搬送装置と、熱交換器とを備え、熱輸送媒体を、前記燃焼/再生器、前記改質器、前記熱分解器、前記搬送装置の順に移動させて繰り返し循環使用し、炭素質原料から水素を製造する水素製造装置であって、
    前記熱輸送媒体は、触媒固形物からなり、
    前記熱分解器は、前記炭素質原料を、前記改質器から前記熱分解器に移動された前記触媒固形物と共に移動させながら、前記触媒固形物の顕熱を用いて前記炭素質原料を熱分解することにより、熱分解ガスを生成し、前記熱分解ガスを前記改質器へと排出すると共に、前記熱分解ガスの生成に伴い発生したチャーと前記触媒固形物とを前記搬送装置へと排出し、
    前記改質器は、前記燃焼/再生器から前記改質器に移動された前記触媒固形物を移動させながら、前記熱分解器から前記改質器に排出された前記熱分解ガスと前記触媒固形物とを接触させることにより、少なくとも前記触媒固形物の顕熱を用いて前記熱分解ガスの温度を上昇させると共に、温度が上昇した前記熱分解ガスに改質剤を反応させることにより、水素含有ガスを製造し、
    前記搬送装置は、前記熱分解器から排出された前記チャーと前記触媒固形物とを、前記燃焼/再生器へと搬送し、
    前記燃焼/再生器は、前記搬送装置から前記燃焼/再生器に搬送された前記チャーと前記触媒固形物とを加熱して、前記チャーを燃焼させ、前記チャーの燃焼により生じた燃焼排ガスを前記熱交換器へと排出すると共に、加熱された前記触媒固形物を前記改質器へと移動させ、
    前記熱交換器は、前記燃焼/再生器から排出された前記燃焼排ガスの顕熱を用いて、前記改質剤を間接加熱して、加熱後の前記改質剤を前記改質器へと排出する、
    ことを特徴とする、水素製造装置。
  2. 前記炭素質原料を乾燥する乾燥器をさらに備え、前記乾燥器により乾燥された前記炭素質原料が前記熱分解器に投入されることを特徴とする、請求項1に記載の水素製造装置。
  3. 前記触媒固形物が球状粒子であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の水素製造装置。
  4. 前記触媒固形物の球状粒子群の粒度分布におけるd90/d10が1.0超乃至2.0未満であることを特徴とする、請求項3に記載の水素製造装置。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の水素製造装置を用いて、炭素質原料から水素を製造することを特徴とする、水素製造方法。
  6. 改質剤として、酸素、酸素富化空気、空気、二酸化炭素、及び、水蒸気の群から選ばれる1種又は2種以上を使用することを特徴とする、請求項5に記載の水素製造方法。
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