JP6517947B2 - 変速機構 - Google Patents
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Description
そのため、変速機において大きな動力が伝達される際には、推力を増大させて摩擦力を確保することが必要となる。その際、推力を発生させるポンプやモータといった動力源の負荷が上昇することでエネルギー消費の増加を招くおそれがあり、また、構造的に滑りが発生する箇所では摩擦損失が増大するおそれがある。
このような変速機構の一つとして、入力側および出力側のそれぞれに、同一半径位置を保ちながら径方向へ移動可能な複数の小さなスプロケット(以下、「ピニオンスプロケット」という)を配設し、これらの複数のピニオンスプロケットで見かけ上の大きなスプロケット(以下、「複合スプロケット」という)を形成し、これらの複合スプロケットに跨って巻き掛けられたチェーンによって動力を伝達するとともに入出力間の速度比(変速比)を変更する機構が提案されている。この変速機構では、それぞれの複合スプロケットを形成する複数のピニオンスプロケットが、動力の入力される回転軸または動力の出力される回転軸の軸心に対して等距離を維持しながら径方向に可動であって、回転軸と一体に回転するように支持され、回転軸の軸心を中心に回転(公転)する。
具体的には、ピニオンスプロケットにおいて、内周に設けられた支持軸に対して外周に設けられたギヤ歯の回転(自転)を所定の範囲内で許容する回転許容機構が提案されている。この回転許容機構には、ギヤ歯の内周壁(あるいは支持軸の外周壁)と一体に回転するキー部材と、支持軸の外周壁(あるいはギヤ歯の内周壁)に形成されるとともにキー部材が回転方向に遊びをもって係合するキー溝とが設けられる。したがって、キー溝に対するキー部材の遊びの範囲内で支持軸に対するギヤ歯の回転が許容され、チェーンの位相に対してピニオンスプロケットのギヤ歯の位相を合わせることができる。
さらに、支持軸に対する所定の基準位相に向けてギヤ歯を付勢するギヤ付勢機構も提案されている。このギヤ付勢機構には、キー溝の回転方向中立位置に向けてキー部材を付勢するC型リングが設けられる。したがって、ピニオンスプロケットのギヤ歯がチェーンに噛み合っていないときには、進角方向および遅角方向の何れにもギヤ歯の回転代が確保され、チェーンに対するピニオンスプロケットの噛合性を向上させることができる。
しかしながら、セクターギヤ形状のピニオンスプロケットには、上述した回転許容機構やギヤ付勢機構をそのまま適用することができず、チェーンに対する噛合性を向上させるうえで改善の余地がある。
前記ピニオンスプロケットは、前記チェーンと噛み合うギヤ歯を有するセクターギヤ形状のギヤ部と、前記ギヤ部を支持する支持部と、前記複合スプロケットの周方向に沿う所定の範囲内で前記支持部に対して前記ギヤ部が遊動することを許容する遊動許容機構と、前記支持部に対する所定の基準位相に向けて前記ギヤ部を付勢するギヤ付勢部材を有するギヤ付勢機構と、を備える。
(3)前記遊動許容機構には、前記ギヤ部および前記支持部の何れか一方において、前記周方向に沿った一対の内表面を有する溝穴部が設けられ、また、前記ギヤ部および前記支持部の何れか他方において、前記周方向の一方および他方のそれぞれに空間をおいて前記溝穴部の内部に収容され、前記溝穴部に対応する形状に形成され前記内表面と摺接する摺接部が設けられることが好ましい。
(4)さらに、前記ギヤ付勢部材は、前記空間に配置され、前記摺接部を付勢することが好ましい。
(6)または、前記同期移動機構は、前記支持部が挿入されるとともに前記径方向に延びる複数の固定放射状溝が形成され、前記回転軸と一体に回転する固定ディスクと、前記回転軸の軸方向から視て前記固定放射状溝のそれぞれと交差する交差箇所に前記支持部が挿入されるとともに前記径方向に延びる複数の可動放射状溝が形成され、前記固定ディスクに対して同心に配置され且つ相対回転可能な可動ディスクと、を備えることが好ましい。さらに、前記固定ディスクおよび前記可動ディスクそれぞれは、前記ギヤ歯に対して前記軸方向の一方および他方の少なくとも何れかに並設され、前記溝穴部および前記摺接部は、前記ギヤ歯に対して前記複合スプロケットの内周側に設けられ、前記溝穴部は、前記ギヤ部に設けられ、前記摺接部は、前記支持部に設けられることが好ましい。
(8)前記ギヤ付勢機構は、前記ギヤ部および前記支持部の何れか一方に設けられて前記所定の基準位相から進角側または遅角側に離隔するにつれて浅く凹設された凹部と、前記ギヤ部および前記支持部の何れか他方に設けられて前記凹部に突起部を付勢して係止する係止部と、を有することが好ましい。
(9)前記所定の範囲は、前記周方向の一方および他方それぞれに前記ギヤ歯の半歯分の範囲であることが好ましい。
この変速機構は、動力の入力される回転軸(入力軸)を有する一方の複合スプロケットと、動力の出力される回転軸(出力軸)を有する他方の複合スプロケットと、これらの複合スプロケットに巻き掛けられて一方から他方の複合スプロケットに動力を伝達するチェーンと、を備えている。各複合スプロケットは、チェーンと噛み合う複数のピニオンスプロケットを有する。これらのピニオンスプロケットは、回転軸の軸心から等距離を維持しながら径方向に同期して移動し、また、回転軸の軸心まわりに公転する。
軸方向については、チェーンに対して近接する側を軸方向内側と呼び、チェーンに対して離隔する側を軸方向外側と呼ぶ。さらに、動力伝達線を基準として、軸方向の一方(以下、「軸方向一方」という)および他方(以下、「軸方向他方」という)を定める。すなわち、軸方向一方と軸方向他方とがチェーンを挟んで互いに反対側にある。
図面では、軸方向一方を「X1」と示し、軸方向他方を「X2」と示し、径方向内側を「Y1」と示し、径方向外側を「Y2」と示し、遅角側を「Z1」と示し、進角側を「Z2」と示す。
以下、第一実施形態にかかる変速機構について説明する。
[1.構成]
まず、変速機構の構成を説明する。
図1に示すように、変速機構では、二組の複合スプロケット3,3にチェーン4が巻き掛けられている。このチェーン4としては、図1に例示するサイレントチェーンに限らず、ローラチェーンやリーフチェーンといった公知のものを用いることができる。
入力側の複合スプロケット3には、動力の入力される回転軸1が設けられている。また、出力側の複合スプロケット3には、動力の出力される回転軸1が設けられている。これらの複合スプロケット3,3は、動力の伝達方向の違い(即ち、動力の伝達方向が入力側か出力側かの違い)を除いてそれぞれ同様に構成されている。そこで、主に入力側の複合スプロケット3の構成を説明する。
図1のピニオンスプロケット30およびガイドロッド40ならびにチェーン4は、入力側の接円Aが最小であって出力側の接円Aが最大、即ち、変速比が最Lowの状態のものを実線で示し、反対に、入力側の接円Aが最大であって出力側の接円Aが最小、即ち、変速比が最Highの状態のものを二点鎖線で示す。
相対回転駆動機構60には、軸心C1まわりに回転する回転系の構成として二種の回転部19,29が設けられている。回転部19,29のうち一方は、固定ディスク10と一体に回転する固定回転部19であり、他方は、可動ディスク20と一体に回転する可動回転部29である。そのほか、相対回転駆動機構60には、軸方向に力を授受する軸方向力授受系の構成が設けられている。
また、軸方向内側から可動ディスク20,固定ディスク10の順に並設されている。すなわち、軸方向一方および軸方向他方の可動ディスク20が向かい合って設けられている。可動ディスク20の軸方向内側では、チェーン4がピニオンスプロケット30およびガイドロッド40に巻き掛けられている。
以下の説明では、回転系の構成を公転系の構成,可動系の構成,固定系の構成の順に説明した後に、軸方向力授受系の構成を述べる。
上述したように、回転軸1の軸心C1まわりに公転する公転系の構成として、ピニオンスプロケット30およびガイドロッド40が設けられる。なお、説明の便宜のために図2および図3では、ピニオンスプロケット30やガイドロッド40を同断面に示している。
〔1−1−1.ピニオンスプロケット〕
図1に示すように、ここでは六つのピニオンスプロケット30が設けられている。具体的には、第一ピニオンスプロケット301,第二ピニオンスプロケット302,第三ピニオンスプロケット303,第四ピニオンスプロケット304,第五ピニオンスプロケット305,第六ピニオンスプロケット306の順に、ピニオンスプロケット30が間隔をおいて配置される。なお、図1では、チェーン4と噛み合うピニオンスプロケット30のうち最も遅角側に第1ピニオンスプロケット301を示している。
図4に示すように第一ピニオンスプロケット301は、チェーン4と噛み合うギヤ歯311を有するギヤ部310と、ギヤ部310を支持するスプロケット支持部330と、の二つに大別される。これらのギヤ部310とスプロケット支持部330とは別体に設けられている。なお、図4では、軸方向一方の部材や部位に符号を付し、軸方向他方の部材や部位の符号は省略する。
ギヤ部310は、セクターギヤ(扇形歯車)形状に形成されている。このギヤ部310には、チェーン4との噛み合いに必要な複数のギヤ歯311とその基部312とが設けられている。また、ギヤ部310には、これらのギヤ歯311および基部312に対して軸方向外側のそれぞれ(軸方向一方および軸方向他方)に、スプロケット支持部330と周方向に摺接する摺接部320が設けられる。ギヤ歯311および基部312は、可動ディスク20よりも軸方向内側に配置され、摺接部320は、可動ディスク20(図2参照)の位置する軸方向領域のうち軸方向内側に配置される。これらのギヤ歯311,基部312,摺接部320は一体に設けられる。
基部312は、ギヤ歯311に対して径方向内側に設けられる。この基部312は、ギヤ歯311よりも軸方向寸法が長く形成され、軸方向端部のそれぞれがギヤ歯311から突出する。基部312の軸方向端部のそれぞれには、摺接部320が結合されている。
具体的には、遅角側に設けられた遅角側収容部325と進角側に設けられた進角側収容部326との二種の収容部324が凹設されている。図4では、一つの遅角側収容部325と二つの進角側収容部326とが軸方向一方に設けられるものを例示する。ただし、軸方向他方に示すように、二つの遅角側収容部と一つの進角側収容部とが設けられてもよい。
ここでは、後述する溝穴部352の周方向中央に摺接部320が位置した状態において、進角付勢用スプリング391の付勢力と遅角付勢用スプリング392の付勢力とが等しくなるように設定される。そのため、周方向の力(外力)がギヤ部310に働いていなければ、スプリング391,392の付勢力(内力)が打ち消しあって、溝穴部352の周方向中央に摺接部320が位置する。あるいは、ギヤ部310が進角側または遅角側に変位するほど、溝穴部352の周方向中央へ向けて摺接部320を付勢する力が大きくなる。つまり、外力の解放時に、溝穴部352の周方向中央に摺接部320の位置が収束するように、リターンスプリング390が摺接部320を付勢する。
スプロケット支持部330は、軸方向外側から順に、固定スプロケット支持部340,可動スプロケット支持部350,連結部材360の三つに大別される。固定スプロケット支持部340は、固定ディスク10と軸方向位置が重複して配置され、可動スプロケット支持部350は、可動ディスク20と軸方向位置が重複して配置され、連結部材360は、可動ディスク20よりも軸方向内側に配置される。すなわち、固定スプロケット支持部340および可動スプロケット支持部350が軸方向一方および軸方向他方のそれぞれに設けられ、一つの連結部材360が軸方向一方および軸方向他方に跨って設けられる。これらの固定スプロケット支持部340,可動スプロケット支持部350は、連結部材360によって一体に結合される。
この固定スプロケット支持部340では、ギヤ歯311の径方向位置に対して軸部341の径方向位置が重複するように設けられる。更に言えば、図6に例示するように、チェーン4に対してギヤ歯311が噛合する径方向位置と軸部341および軸受け342の軸心C3の径方向位置とが一致していることが好ましい。
この溝穴部352は、軸方向から視て扇形をなす。溝穴部352がなす扇形は、摺接部320がなす扇形に対応する形状に形成され、一方の円弧は径方向内側に配置され、他方の円弧は径方向外側に配置されている。そのため、溝穴部352には、接円Aの周方向に延びる一対の摺接面(内表面)353が形成される。具体的には、溝穴部352において、径方向外側に外側摺接面354が形成され、径方向内側に内側摺接面355が形成される。更に言えば、外側摺接面354の径方向内側に摺接部320の外側摺接面322が摺接し、内側摺接面355の径方向外側に摺接部320の内側摺接面323が摺接することで、溝穴部352において摺接部320が摺動することができるようになっている。
さらに、第一ピニオンスプロケット301には、スプロケット支持部330に対してギヤ部310が遊動することを許容する遊動許容機構370と、スプロケット支持部330に対する所定の基準位相に向けてギヤ部310を付勢するギヤ付勢機構380と、が設けられる。
遊動許容機構370は、可動スプロケット支持部350の溝穴部352と、ギヤ部310の摺接部320と、から構成される。この遊動許容機構370は、所定の基準位相に対してギヤ部310の遊動を所定の範囲内で許容する。
また、所定の範囲とは、所定の基準位相に対して、進角側および遅角側のそれぞれにギヤ歯311の半歯分の範囲である。そのため、最も遅角側または最も進角側にギヤ部310が位置していれば、進角側または遅角側へのギヤ部310の遊動がギヤ歯311の一歯分まで許容される。この所定の範囲は、溝穴部352に配置された摺接部320に対して進角側および遅角側に形成される空間の周方向寸法、即ち、摺接部320の摺接が許容される寸法に対応している。そのため、溝穴部352の周方向中央に配置された摺接部320を基準とすれば、この摺接部320に対して進角側の空間および遅角側の空間のそれぞれが、ギヤ歯311の半歯分に対応する周方向寸法に設定される。
上述したように、リターンスプリング390は、進角付勢用スプリング391で摺接部320を進角側に付勢するとともに遅角付勢用スプリング392で摺接部320を遅角側に付勢することで、所定の基準位相に向けて進角側および遅角側の双方からギヤ部310を付勢する。
図1に示すように、複数のガイドロッド40は、巻き掛けられるチェーン4の軌道を円軌道に近づけて、チェーン4を案内するものである。なお、ガイドロッド40は、チェーン4と噛み合わず、動力を伝達しない。
図3および図5に示すように、ガイドロッド40のそれぞれには、ロッド支持部41の外周に円筒状のガイド部材42が設けられている。このガイドロッド40の軸方向端部40aには、ガイド部材42からロッド支持部41が突出している。この突出したロッド支持部41がディスク10,20に支持される。一方、ガイド部材42の軸方向外側にチェーン4が接触する。
第一ガイドロッド401は、径方向位置によらずチェーン4を常に案内する。第二ガイドロッド402は、接円Aが最も大きいときにチェーン4を案内するものの、接円Aが最も小さいときにチェーン4を案内しない。
なお、ガイドロッド40やピニオンスプロケット30の数は、多くするほどチェーン4の軌道を真円に近づけて巻き掛け半径の変動が抑えられるものの、製造コストや重量の増加を招くおそれがあるため、これらを考慮して設定することが好ましい。
次に、回転軸1に対して相対回転可能な可動系の構成を説明する。この可動系の構成として、可動ディスク20および可動回転部29が設けられる。さらに、軸方向一方および軸方向他方の可動ディスク20および可動回転部29同士を連結する軸状の連結シャフト27が可動系の構成として設けられる。
図7に示すように、可動ディスク20には、径方向に延びる二種の放射状溝21,22と、これらの放射状溝よりも径方向内側の二種の穴25,26とが設けられる。これらの放射状溝21,22および穴25,26は、可動ディスク20を軸方向に貫通して形成されている。
放射状溝21,22のうち一方は、ピニオンスプロケット30のそれぞれに対応して設けられたスプロケット用可動放射状溝21(一箇所のみに符号を付す)であり、他方は、ガイドロッド40のそれぞれに対応して設けられたロッド用可動放射状溝22(一箇所のみに符号を付す)である。
また、穴25,26のうち一方は、連結シャフト27が挿通される貫通穴25(一箇所のみに符号を付す)であり、他方は、回転軸1の挿通される軸穴26である。回転軸1の軸心C1と同心に軸穴26が設けられ、この軸穴26の径方向外側に貫通穴25が設けられる。
まず、可動放射状溝21,22について説明する。
スプロケット用可動放射状溝21には、ピニオンスプロケット30の可動スプロケット支持部350が挿入される。同様に、ロッド用固定放射状溝12には、ガイドロッド40のロッド支持部41が挿入される。
これらの可動放射状溝21,22は、軸方向から視て直線状に設けられている。とりわけ、直線状のスプロケット用可動放射状溝21に幅W1,W2が一定のまま径方向に延びる可動スプロケット支持部350(図4参照)が挿入されることで、ピニオンスプロケット30の回り止め(自転防止)が図られる。
また、突出溝212は、所定の長さ(径方向の寸法)Lに亘って溝幅W2′が一定のまま径方向に延びている。この所定の長さLは、可動スプロケット支持部350における突出部356の所定の長さL(図4参照)とほぼ同一に設定される。突出溝212の形状は、可動スプロケット支持部350の突出部356に対応した形状に形成される。
第一ロッド用可動放射状溝23の内周端部23aは、第二ロッド用可動放射状溝24の内周端部24aよりも、回転軸1の軸心C1に対する距離が遠く、径方向外側に位置する。これに対して、第一ロッド用可動放射状溝23の外周端部23bから回転軸1の軸心C1に対する距離と、第二ロッド用可動放射状溝24の外周端部24bから回転軸1の軸心C1に対する距離と、は等しい。
次に、可動ディスク20の穴25,26について説明する。
貫通穴25には、連結シャフト27が挿通される。そのため、連結シャフト27の本数に合わせた数(ここでは三つ)の貫通穴25(一箇所のみに符号を付す)が設けられる。これらの貫通穴25は、周方向に沿って等間隔に配置されている。
貫通穴25の内径は、連結シャフト27の外径に見合った大きさに設定される。
図3,図5および図10に示すように、可動回転部29は、固定回転部19の外周に配置される円筒状の部材である。この可動回転部29には、軸方向に延びる可動カム溝29aが設けられている。この可動カム溝29aは、図11に示すように、径方向から視て回転軸1の軸心C1と交差するように形成されるとともに円筒壁の内外を連通するように穿設されている。
可動カム溝29aは、周方向に沿って等間隔に複数配置されることが好ましい。たとえば、図10に例示するように三箇所に設けられてもよいし、図3に例示するように回転軸1の軸心C1を挟んで向かい合って二箇所あるいは四箇所に設けられてもよい。
連結シャフト27は、軸方向に延びて設けられる。この連結シャフト27は、図3に示すように、軸方向外側の第一連結部27aと軸方向内側の第二連結部27bとに大別される。
第一連結部27aは、軸方向一方および軸方向他方のそれぞれにおいて、可動ディスク20と可動回転部29とを結ぶ軸方向領域に位置する。そのため、第一連結部27aによって可動ディスク20と可動回転部29とが一体に回転するように連結される。また、第二連結部27bは、軸方向一方および軸方向他方の可動ディスク20を結ぶ軸方向領域に位置する。そのため、第二連結部27bによって一対の可動ディスク20が一体に回転するように連結される。
ここでは、連結シャフト27の軸方向端部のそれぞれがボルト28によって可動回転部29に固定されている。
なお、連結シャフト27は、可動カム溝29aと干渉しない位相に配置されるが(図5および図10参照)、説明の便宜のために図2および図3では、可動カム溝29aならびに連結シャフト27およびボルト28を同断面に示す。
続いて、回転軸1と一体に回転する固定系の構成を説明する。この固定系の構成として、固定ディスク10および固定回転部19が設けられる。
〔1−3−1.固定ディスク〕
図8に示すように、固定ディスク10には、径方向に延びる二種の放射状溝11,12と、これらの放射状溝11,12よりも径方向内側の二種の穴15,16とが設けられる。これらの放射状溝11,12および穴15,16は、固定ディスク10を軸方向に貫通して形成されている。
これらの固定放射状溝11,12は、可動放射状溝21,22と同様に、対応するピニオンスプロケット30,ガイドロッド40を案内するための溝である。したがって、ピニオンスプロケット30,ガイドロッド40の径方向移動経路に沿って固定放射状溝11,12のそれぞれが設けられる。
まず、固定放射状溝11,12について説明する。
図9に示すように、固定放射状溝11,12のそれぞれは、軸方向から視て可動放射状溝21,22のそれぞれと交差するように形成される。たとえば、入力側の複合スプロケット3では、変速比が最Lowのときに、固定放射状溝11,12と可動放射状溝21,22との交差箇所(以下、「ディスク交差箇所」という)CP1が最も径方向内側に位置する。なお、固定ディスク10の外径と可動ディスク20の外径とは軸方向から視て重複するが、説明の便宜のために図9には、固定ディスク10の外径よりも可動ディスク20の外径をやや小さく示す。
支持部340,41の直径に応じて、固定放射状溝11,12の各溝幅が設定されている。詳細には、固定放射状溝11,12の溝幅は、対応する支持部340,41の外径よりもやや大きい。そのため、支持部340,41が固定放射状溝11,12に沿って円滑に移動(摺動)することができる。
これらの固定放射状溝11,12は、固定ディスク10と可動ディスク20の相対回転に応じて交差箇所CP1が径方向へ移動するように、径方向に対して傾斜しており、軸方向から視て曲線状に形成されている。
第一ロッド用固定放射状溝13の内周端部13aは、第二ロッド用固定放射状溝14の内周端部14aよりも、回転軸1の軸心C1に対する距離が遠く、径方向外側に位置する。これに対して、第一ロッド用固定放射状溝13の外周端部13bから回転軸1の軸心C1に対する距離と、第二ロッド用固定放射状溝14の内周端部14bから回転軸1の軸心C1に対する距離と、は等しい。ここでは、回転軸1の軸心C1に対する距離が等しい箇所で比較したときに、第一ロッド用固定放射状溝13よりも第二ロッド用固定放射状溝14のほうが径方向に対して傾斜して設けられている。
次に、固定ディスク10の穴15,16について説明する。
貫通穴15には、連結シャフト27が挿通される。具体的には、連結シャフト27の第一連結部27aが貫通穴15に挿通される。そのため、連結シャフト27の本数に合わせた数の貫通穴15(ここでは三つ)が設けられる。これらの貫通穴15は、周方向に沿って等間隔に配置されている。
図9の(a)に示すように、接円Aが最小(変速比が最Low)のときには、貫通穴15において周方向の一端部15aに連結シャフト27が位置し、反対に、図9の(c)に示すように、接円Aが最大(変速比が最High)のときには、貫通穴15において周方向の他端部15bに連結シャフト27が位置する。このように貫通穴15の内部で連結シャフト27が移動するために、貫通穴15の溝幅(径方向寸法)は、連結シャフト27の第一連結部27aの外径よりも大きく設定される。
図3,図5および図10に示すように、固定回転部19は、回転軸1の一部に設けられている。言い換えれば、回転軸1のうちディスク10,20よりも軸方向外側の一部位が、固定回転部19として機能する。この固定回転部19には、軸方向に延びる固定カム溝19aが設けられている。この固定カム溝19aは、回転軸1の軸心C1と平行に凹設されている。
また、固定カム溝19aは、図11に示すように、径方向から視て可動カム溝29aのそれぞれと交差するように形成される。
なお、固定カム溝29aの形成箇所や形成個数は、可動カム溝29aと同様に、周囲の構成や要求仕様などに応じて設定すればよく、種々の形状や個数のものを採用することができる。
最後に、軸方向に力を授受する軸方向力授受系の構成を説明する。ここでは、二組の複合スプロケット3,3のそれぞれに、軸方向力授受系の構成が独立して設けられる。
図2および図5に示すように、軸方向力授受系の構成として、カム交差箇所CP2に挿入されるカムローラ70(図2参照)と、カムローラ70に対して軸方向の力を伝達する変速用フォーク(軸方向力伝達部材)80と、変速用フォーク80に対して拡縮バイアス方向(後段にて詳述)とは反対方向に初期付勢力を付与するカウンタスプリング(カウンタ付勢部材)99と、変速用フォーク80を軸方向に移動させる軸方向移動機構90と、が設けられる。この軸方向移動機構90は、変速用フォーク80を軸方向に移動させることでカムローラ70を軸方向に移動させるカムローラ移動機構ともいえる。
回転部19,29と軸方向位置が重複してカムローラ70,変速用フォーク80およびナット94が設けられる。これらのカムローラ70,変速用フォーク80およびナット94から軸方向外側に向けて、サポート98,連動ギヤ機構95、電動モータ92の順に設けられる。カムローラ70,変速用フォーク80,サポート98,連動ギヤ機構95は、動力伝達線C2(図2参照)を基準として対称に軸方向一方および軸方向他方のそれぞれに対向して配置される。ただし、電動モータ92は軸方向一方にだけ配置される。
また、カウンタスプリング99の軸心C4と同心のガイドシャフト993(図5参照)が付設されている。ここでは、カウンタスプリング99が径方向一方および径方向他方のそれぞれに配置される。具体的には、軸方向から視て変速用フォーク80の四隅それぞれにカウンタスプリング99およびガイドシャフト993が配置される。なお、図2および図3に示すように、ネジ軸93がカウンタスプリング99のガイドシャフトとして利用(兼用)されてもよい。
具体的には、ピニオンスプロケット30およびガイドロッド40が、軸方向一方および軸方向他方の固定ディスク10を含んでこれらを結ぶ軸方向領域に配置される。また、連結シャフト27が、軸方向一方および軸方向他方の可動回転部29を含んでこれらを結ぶ軸方向領域に配置される。さらに、カウンタスプリング99が、軸方向一方および軸方向他方の変速用フォーク80同士の軸方向内側に配置され、そのガイドシャフト993が、軸方向一方および軸方向他方の変速用フォーク80を含んでこれらを結ぶ軸方向領域に配置される。そして、ネジ軸93が、軸方向一方および軸方向他方の連動ギヤ機構95を含んでこれらを結ぶ軸方向領域に配置される。
以下の説明では、まずカムローラ70および変速用フォーク80について述べ、続いて軸方向移動機構90,カウンタスプリング99の順に述べる。
カムローラ70および変速用フォーク80は、固定系の構成に対して可動系の構成を相対回転させるために、軸方向に変位する。具体的には、軸方向に移動させられる変速用フォーク80によってカムローラ70が押圧され、押圧されたカムローラ70が軸方向に変位する。
図3,図10,図11に示すように、カムローラ70(一箇所のみに符号を付す)は、径方向に延びる軸状部材で構成されている。このカムローラ70は、カム交差箇所CP2において固定カム溝19aおよび可動カム溝29aのそれぞれに挿入される。さらに、カムローラ70の一端部70aは、可動回転部29から径方向外側に突出して配置される。
図3,図5,図10に示すように、変速用フォーク80は、ディスク10,20に対して平行なプレート状の部材である。図5および図10では、軸方向から視て四隅の角が落とされた形状の変速用フォーク80を例示する。
回転部収容穴811の内径は、可動回転部29の外径よりもやや大きく設定されている。そのため、回転部収容穴811の径方向内側で回転部19,29が回転可能である。
この溝部81aには、図3,図10に示すように、カムローラ70と転がり接触する転動体81b(一箇所のみに符号を付す)が設けられている。ここでは、複数の転動体81bが溝部81aの全周に並んで配置されている。これらの転動体81bとしては、図3,図10に例示するニードルベアリングのほか、ボールベアリングを用いることができる。
ネジ機構用穴801は、径方向一方(図5および図10では右上)および径方向他方(図5および図10では左下)のそれぞれに設けられている。また、シャフト用穴802は、カウンタスプリング99の配置に対応しており、ここでは変速用フォーク80の四隅に設けられている。
図3,図5に示すように、軸方向移動機構90には、サポート98によって支持される連動ギヤ機構95を作動させる送りネジ機構91が設けられる。
送りネジ機構91は、電動モータ92によってネジ軸93を回転駆動することで、このネジ軸93に螺合するナット94を軸方向に移動させる。
ネジ軸93は、軸方向一方の部位と軸方向他方の部位とで雄ネジの向きが互いに反対向きに設定されている。このように雄ネジの向きが設定されるのに合わせて、軸方向一方のナット94と軸方向他方のナット94とで雌ネジの向きが反対向きに設定される。たとえば、ネジ軸93における軸方向一方の部位と軸方向一方のナット94とのそれぞれには右ネジが形成され、逆に、ネジ軸93における軸方向他方の部位と軸方向他方のナット94とのそれぞれには左ネジが形成される。
これらのナット94は、上記のネジ機構用穴801内に配置され、変速用フォーク80に結合(固定)される。すなわち、軸方向一方および軸方向他方のそれぞれに対向して配置された変速用フォーク80は、軸方向移動機構90のネジ軸93およびナット84によって連結されている。
連動ギヤ機構95には、二種のギヤ950,959が設けられている。
二種のギヤ950,959の一方は、ネジ軸93の軸心C5と同心に設けられ、ネジ軸93と一体に回転するように結合されたピニオンギヤ950である。具体的には、第一ピニオンギヤ951が、第一ネジ軸931の軸方向端部に結合され、径方向一方に配置される。また、第二ピニオンギヤ952が、第二ネジ軸932の軸方向端部に結合され、径方向他方に配置される。
サポート98は、図示省略する変速機ケースに固定されたプレート状の支持部材である。
このサポート98には、挿通されるネジ軸93のそれぞれを支持する二つのネジ軸用穴980と、挿通される回転軸1を支持する回転軸用穴989とが設けられる。ネジ軸用穴980に対してネジ軸93が回転可能に支持され、同様に、回転軸用穴989に対して回転軸1が回転可能に支持される。
カウンタスプリング99は、上述したように、変速用フォーク80に対して拡縮バイアス方向とは反対方向に初期付勢力を付与する付勢部材である。拡縮バイアス方向とは、動力伝達時に接円Aが自ずから拡縮径する方向を意味する。この拡縮バイアス方向は、入力側の複合スプロケット3では接円Aが縮径する方向であり、反対に、出力側の複合スプロケット3では接円Aが拡径する方向である。その理由は、次の通りである。
したがって、入力側の複合スプロケット3では、縮径力によって接円Aが自ずから縮径しようとし、反対に、出力側の複合スプロケット3では、拡径力によって接円Aが自ずから拡径しようとする。
本実施形態の変速機構は、上述のように構成されるため、以下のような作用および効果を得ることができる。
〔2−1.基本的な作用および効果〕
まず、変速機構における基本的な作用および効果について、変速比を変更する場合,ピニオンスプロケット30およびチェーン4が噛み合って動力伝達する場合,の順に説明する。
変速機構において変速比を変更する場合には、はじめに、電動モータ92を回転駆動することで、第一ネジ軸931を回転させる。このとき、第一ネジ軸931の回転に連動して第一ピニオンギヤ951が回転し、アイドラギヤ959を介して、第二ピニオンギヤ952も回転する。この第二ピニオンギヤ952の回転に連動する第二ネジ軸932も回転する。そして、ネジ軸931,932のそれぞれに螺合する径方向一方および径方向他方のそれぞれに設けられた一対のナット94が軸方向に移動する。具体的には、軸方向一方ならびに軸方向他方のそれぞれにおいて、径方向一方および径方向他方における一対のナット94が軸方向内側または軸方向外側に移動する。
このとき、軸方向一方で変速用フォーク80を移動させる駆動反力と軸方向他方で変速用フォーク80を移動させる駆動反力とは、ネジ軸931,932を介して互いに反対向きに作用することで相殺される。
可動回転部29の回転は、連結シャフト27を介して可動ディスク20に伝達され、固定回転部19の回転は、回転軸1を介して固定ディスク10に伝達される。したがって、回転部19,29が相対回転することで、固定ディスク10に対して可動ディスク20が相対的に回転する。これらのディスク10,20の相対回転により、ディスク交差箇所CP1が径方向に移動する。そして、ディスク交差箇所CP1に支持されるピニオンスプロケット30およびガイドロッド40も径方向に移動する。
このようにピニオンスプロケット30およびガイドロッド40を径方向に移動させることで、複合スプロケット3の外径、即ち、接円Aが拡縮され、変速比が変更される。
つぎに、変速機構において、ピニオンスプロケット30およびチェーン4が噛み合って動力伝達する場合に着目して作用を説明する。
上述のように変速する場合には、周方向に隣接するピニオンスプロケット30間におけるチェーン4の巻掛長が連続的に変動し、複合スプロケット3がなす見かけ上の歯数も連続的に変動する。そのため、ギヤ部310におけるギヤ歯311の位相とチェーン4の位相とが合わないおそれがある。
チェーン4に噛み合う前のギヤ歯311は、ギヤ付勢機構380のリターンスプリング390に付勢されることで、スプロケット支持部330に対して所定の基準位相をなしている。
具体的には、位相のズレているチェーン4によって、進角側または遅角側にギヤ歯311が押圧される。そのため、押圧されるギヤ歯311と一体に設けられる摺接部320も進角側または遅角側に押圧される。押圧された摺接部320は、リターンスプリング390を伸縮させつつ溝穴部352の内部を摺動する。たとえば、ギヤ歯311が進角側に押圧されれば、溝穴部352の内部を摺接部320が進角側に摺動する。このとき、遅角付勢用スプリング392が縮むことで、摺接部320に対する遅角側への付勢力が強まり、進角付勢用スプリング391が伸びることで、摺接部に対する進角側への付勢力が弱まる。つまり、摺接部320に対する所定の基準位相への付勢力が強まる。
このギヤ歯311を有するピニオンスプロケット30が公転して、チェーン4に噛み合うピニオンスプロケット30のうち最も遅角側の公転位相となると、動力伝達をおもに担う。
この第一の入力は、基部312および摺接部320ならびに可動スプロケット支持部330を介して、固定スプロケット支持部340に伝達される。すなわち、第一の入力は、チェーン4およびギヤ歯311の噛合箇所から径方向内側を経たのちに径方向外側に伝達される。このように伝達された第一の入力に対しては、固定スプロケット支持部340を支持するスプロケット用固定放射状溝11の壁面から遅角側へ向かう抗力が働く。
ただし、変速比が最Lowのときに、入力側の複合スプロケット3では、ピニオンスプロケット30の伝達トルクがとりわけ大きくなることから、固定スプロケット支持部340の軸心C3まわりの回転モーメントも大きくなるおそれがある。
このピニオンスプロケット30が更に公転すると、チェーン4からギヤ歯311が外れて噛み合いが解かれる。そして、ギヤ付勢機構380によって付勢されるギヤ歯311は、所定の基準位相をなす。
続いて、第一ピニオンスプロケット301に着目して、本実施形態にかかる変速機構の作用および効果を詳細に説明する。
(1)本実施形態の変速機構によれば、第一ピニオンスプロケット301には、チェーン4に対して径方向内側で噛み合うギヤ歯311を有するギヤ部310がセクターギヤ形状に設けられている。そのため、チェーン4の径方向内側において、第一ピニオンスプロケット301の径方向寸法を、特許文献1のような全外周にギヤ歯が設けられる構造に比べて小さくすることができる。したがって、第一ピニオンスプロケット301の径方向内側への可動領域を充分に確保することができる。よって、充分なレシオカバレッジを確保することができる。
よって、ギヤ歯311に対するチェーン4の乗り上げや歯飛びが抑えられ、チェーン4に対する第一ピニオンスプロケット301の噛合性を向上させることができる。
また、遊動許容機構370の摺接部320および溝穴部352は、可動スプロケット支持部350において突出部356よりも幅広の本体部351に設けられるため、溝穴部352における進角側および遅角側の空間を確保することができる。よって、これらの空間に配置されるリターンスプリング390の大きさや付勢力の設定自由度を向上させることができる。付勢力の大きいリターンスプリング390を用いれば、ギヤ部310を所定の基準位相に更に確実に付勢することができる。
(6)変速用フォーク80および軸方向移動機構90をはじめとした軸方向力授受系の構成が二組の複合スプロケット3,3のそれぞれに独立して設けられている。そのため、複合スプロケット3,3のそれぞれにおいて、独立して軸方向移動力を作用させることができ、軸方向力授受系の各構成に対する負担の軽減,耐久性の向上といった上記の効果を得ることができる。
続いて、図12を参照して、第一実施形態の変形例にかかる変速機構について説明する。
上述した第一実施形態では、変速用フォーク80および軸方向移動機構90が二組の複合スプロケット3,3のそれぞれに対して独立して設けられるが、本変形例では、変速用フォーク800および軸方向移動機構(カムローラ移動機構)900が二組の複合スプロケット300,300のそれぞれに対して共通に設けられる。
なお、ここで説明する点を除いては、上述した第一実施形態と同様の構成となっている。これらの構成については、同様の符号を付し、各部の説明を省略する。
まず、第一実施形態の変形例にかかる変速機構の構成を説明する。
本変形例の変速機構では、変速用フォーク800および軸方向移動機構900が、入力側および出力側の複合スプロケット300,300に跨って設けられている。
変速用フォーク800には、入力側の複合スプロケット300の回転部19,29を収容する入力側回転部収容穴812と、出力側の複合スプロケット300の回転部19,29を収容する出力側回転部収容穴813と、が設けられる。入力側回転部収容穴812は、動力が入力される回転軸100の軸心C10と同心に設けられ、同様に、出力側回転部収容穴813は、動力が入力される回転軸100の軸心C10と同心に設けられる。
図12では、三つのネジ機構用穴820が動力伝達線C20に沿って間隔をおいて設けられるものを例示する。具体的には、入力側の複合スプロケット300において出力側の複合スプロケット300から離隔する側の第一ネジ機構用穴821と、入力側の複合スプロケット300と出力側の複合スプロケット300との間の第二ネジ機構用穴822と、出力側の複合スプロケット300において入力側の複合スプロケット300から離隔する側の第三ネジ機構用穴823と、の三つのネジ機構用穴820が穿設される。
送りネジ機構910では、ネジ軸930のそれぞれが対応するネジ機構用穴820と同心に配置され、同様に、ナット940のそれぞれが対応するネジ機構用穴820と同心に配置される。ここでは、第二ネジ機構用穴822に設けられるネジ軸930の一端部に電動モータ920が設けられる。
具体的には、ピニオンギヤ960として、第一ネジ機構用穴821に挿通されるネジ軸930に結合された第一ピニオンギヤ961と、第二ネジ機構用穴822に挿通されるネジ軸930に結合された第二ピニオンギヤ962と、第三ネジ機構用穴823に挿通されるネジ軸930に結合された第三ピニオンギヤ963と、が設けられる。また、アイドラギヤ965として、第一ピニオンギヤ961および第二ピニオンギヤ962のそれぞれと噛み合う第一アイドラギヤ966と、第二ピニオンギヤ962および第三ピニオンギヤ963のそれぞれと噛み合う第二アイドラギヤ967と、が設けられる。ここでは、動力が入力される回転軸100の軸心C10と同心に第一アイドラギヤ966が配置され、動力が出力される回転軸100の軸心C10と同心に第二アイドラギヤ967が配置されている。
カウンタスプリング990は、変速用フォーク800の間に配置されている。図12では、ネジ機構用穴820と同様に、入力側の複合スプロケット300において出力側の複合スプロケット300から離隔する側と、入力側の複合スプロケット300と出力側の複合スプロケット300との間と、出力側の複合スプロケット300において入力側の複合スプロケット300から離隔する側と、の三箇所にカウンタスプリング990が配置されるものを例示する。
本変形例の変速機構は、上述のように構成されるため、変速用フォーク80および軸方向移動機構90が二組の複合スプロケット3,3のそれぞれに独立して設けられることによる作用および効果を除いて、第一実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
さらに、変速用フォーク800および軸方向移動機構900が二組の複合スプロケット300,300のそれぞれに対して共通に設けられるため、部品点数が抑えられ、構造の複雑化を抑えることができる。
一方で、動力伝達時には、変速用フォーク800の入力側(図12では右側)に縮径力(ここでは軸方向内側に向かう軸方向移動力)が働き、また、変速用フォーク800の出力側(図12では左側)に拡径力(ここでは軸方向内側に向かう軸方向移動力)が働く。
次に、本発明の第二実施形態にかかる変速機構について説明する。
第二実施形態の変速機構は、上述した第一実施形態の変速機構に対して、カウンタスプリングの配置とピニオンスプロケットの構造とが異なる。
なお、ここで説明する点を除いては、上述した第一実施形態と同様の構成となっている。これらの構成については、同様の符号を付し、各部の説明を省略する。
まず、第二実施形態にかかる変速機構について、カウンタスプリング,ピニオンスプロケットの順に各構成を説明する。
〔1−1.カウンタスプリング〕
図13に示すように、カウンタスプリング99′は、変速用フォーク80に対して軸方向外側(チェーン4から離隔する側)に配置されている。また、第一実施形態では、カウンタスプリング99が軸方向一方および軸方向他方に跨って配置されているのに対して、第二実施形態では、変速用フォーク80に対して軸方向外側のカウンタスプリング99′が軸方向一方および軸方向他方のそれぞれに配置されている。具体的には、変速用フォーク80とサポート98との間で軸方向に沿ってカウンタスプリング99′が設けられる。
第一実施形態のピニオンスプロケット30では、ギヤ部310に摺接部320が設けられ、スプロケット支持部330に溝穴部352が設けられるのに対して、図14に示すように、本実施形態のピニオンスプロケット30′では、ギヤ部310′に溝穴部313′が設けられ、この溝穴部313′に挿入される摺接部360′がスプロケット支持部330′に連結されて設けられる。
以下、ピニオンスプロケット30′を詳細に説明する。
続いて、ピニオンスプロケット支持部330′,ギヤ部310′の順に説明する。
ピニオンスプロケット支持部330′は、軸方向外側から順に、固定スプロケット支持部340′,可動スプロケット支持部350′,摺接部360′の三つに大別される。
図14では、幅(周方向寸法)が一定のまま径方向に延びるキー部材状の可動スプロケット支持部350′を例示する。この可動スプロケット支持部350′には、軸方向内側において径方向に並ぶ二つの穴351′,352′が凹設されている。穴351′,352′のうち径方向外側は、摺接部360′の軸方向端部が嵌め込まれる嵌装穴351′であり、径方向内側は、後述するリーフスプリング395′(ギヤ付勢部材)を取り付けるための取付穴352′である。
さらに、摺接部360′には、リターンスプリング(ギヤ付勢部材)390′を収容する収容部365′が周方向に沿って設けられている。ここでは、リターンスプリング390′として圧縮スプリングが用いられている。
なお、摺接部360′は、軸方向端部のそれぞれが軸方向一方および軸方向他方の可動スプロケット支持部350′の嵌装穴351′に嵌め込まれる。すなわち、摺接部360′は、軸方向一方および軸方向他方の可動スプロケット支持部350′を連結している。
ギヤ部310′は、可動ディスク20(図13参照)よりも軸方向内側に配置される。このギヤ部310′には、ギヤ歯311′の径方向内側に基部312′が設けられている。これらのギヤ歯311′と基部312′とは一体に設けられる。
基部312′には、軸方向に貫通する溝穴部313′が設けられる。
なお、第一実施形態と同様に、溝穴部313′がなす扇形のほうが摺接部360′がなす扇形よりも周方向寸法(円弧長)が長く、摺接部360′の進角側および遅角側には空間が形成される。
さらに、ピニオンスプロケット30′には、スプロケット支持部330′に対してギヤ部310′が遊動することを許容する遊動許容機構370′と、スプロケット支持部330′に対する所定の基準位相に向けてギヤ部310′を付勢するギヤ付勢機構380′と、が設けられている。
遊動許容機構370′は、ギヤ部310′の溝穴部313′とスプロケット支持部330′の摺接部360′とから構成される。
突部399′は、ギヤ部310′から径方向内側に向けて突出して設けられる。ここでは、ギヤ部310′の基部312′における径方向内側の凹部にピン状の突部399′が径方向内側端部を突出した状態で装着されている。
この突部399′は、周方向に並んで配置される一対のリーフスプリング395′によって所定の基準位相へ向けて付勢される。具体的には、進角側に配置されたリーフスプリング395′が突部399′を遅角側へ付勢し、遅角側に配置されたリーフスプリング395′が突部399′を進角側へ付勢する。
本実施形態の変速機構は、上述のように構成されるため、カウンタスプリング99′の配置とピニオンスプロケット30′の構造による作用および効果を除いて、第一実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
さらに、遊動許容機構370′には、スプロケット支持部330′およびギヤ部310′のうち、ギヤ部310′に溝穴部313′が設けられ、スプロケット支持部330′に摺接部360′が設けられる。溝穴部313′には、周方向に沿った一対の摺接面314′が設けられ、また、摺接部360′には、溝穴部313′の摺接面314′と摺接する摺接面361′が設けられる。すなわち、摺接部360′が挿入される溝穴部313′は、可動ディスク20よりも軸方向内側に配置される。そのため、スプロケット支持部330′の構造を簡素にすることができる。
とりわけ、第一実施形態のように溝穴部352が可動スプロケット支持部350に設けられる構造に比較して、簡素な構造の可動スプロケット支持部350′が挿入されるスプロケット可動放射状溝の溝幅を抑えることができる。よって、可動ディスク20における溝同士の間隔を確実に確保することができる。
ところで、本実施形態における変速機構では、変速用フォーク80に対して軸方向内側のほうが軸方向外側よりも構造が複雑となる。そのため、比較的構造が簡素な変速用フォーク80の軸方向外側にカウンタスプリング99′を配置することによって、製造過程における組み立て工程が煩雑化せず、製造コスト低減の一助となる。
続いて、図15を参照して、第二実施形態の変形例にかかる変速機構について説明する。
本変形例では、第二実施形態における突部399′とリーフスプリング395′に代えて、摺接部360″の内側摺接面363″に凹部364″が形成され、この凹部364″に係脱するボール(突起部)369″を有するプランジャ(係止部)368″がギヤ部310″に設けられる点が上述した第二実施形態の構成と異なる。
なお、ここで説明する点を除いては、上述した第二実施形態と同様の構成となっている。これらの構成については、同様の符号を付し、各部の説明を省略する。
まず、第二実施形態の変形例にかかる変速機構の構成を説明する。
プランジャ368″は、内側摺接面316″からボール369″が出没するように、溝穴部313″に取り付けられている。このボール369″は、プランジャ368″において径方向外側へ向けて付勢される。詳細に言えば、プランジャ368″は、ギヤ部310″が所定の基準位相をなす状態で、凹部364″において最も凹んだ箇所(最も径方向外側の箇所)にボール369″が係合する箇所に配設される。
凹部364″は、所定の基準位相から進角側または遅角側に離隔するにつれて浅く凹設されている。ここでいう「凹部364″の浅さ」とは、第二実施形態で上述した内側摺接面363′に対して凹部364″が径方向外側に離隔する距離を意味する。
本変形例の変速機構は、上述のように構成されるため、第二実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
また、第二実施形態で上述したリーフスプリング395′が省略されるので、ギヤ部310″の径方向内側における構造を簡素化でき、レシオカバレッジを確保することができる。
さらに、摺接部360″の内側摺接面363″に形成された凹部364″と、この凹部364″にボール(突起部)369″が係脱するプランジャ368″がギヤ部310″に設けられるため、チェーン4に対して噛み合っていないときのギヤ部310″を確実に所定の基準位相に位置させることができる。よって、ギヤ部310″とチェーン4との噛合性を確実に向上させることができる。
以上、実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。上述した実施形態の各構成は、必要に応じて取捨選択することができ、適宜組み合わせてもよい。
たとえば、リターンスプリング390に加えてまたは替えて、たとえばゴムや樹脂を用いた他の弾性体(ギヤ付勢部材)を用いてもよい。
なお、本変速機構は、変速比が連続的(無段階)に変更される無段変速機構として構成されてもよいし、ピニオンスプロケット30,30′の径方向位置を段階的に変位させることにより変速比が段階的に変速される有段変速機として構成されてもよい。
Claims (6)
- 動力が入力または出力される回転軸と、前記回転軸の径方向に可動に支持される複数のピニオンスプロケットと、前記回転軸の軸心から等距離を維持させながら前記複数のピニオンスプロケットを前記径方向に同期させて移動させる同期移動機構と、を有する複合スプロケットを二組と、
前記二組の複合スプロケットに巻き掛けられたチェーンと、
を備え、
前記複数のピニオンスプロケットの何れもを囲み且つ前記複数のピニオンスプロケットの何れにも接する接円の半径を変更することによって変速比を変更する変速機構であって、
前記ピニオンスプロケットは、
前記チェーンと噛み合うギヤ歯を有するセクターギヤ形状のギヤ部と、
前記ギヤ部を支持する支持部と、
前記複合スプロケットの周方向に沿う所定の範囲内で前記支持部に対して前記ギヤ部が遊動することを許容する遊動許容機構と、
前記支持部に対する所定の基準位相に向けて前記ギヤ部を付勢するギヤ付勢部材を有するギヤ付勢機構と、
を備えており、
前記遊動許容機構には、
前記支持部に、前記周方向に沿った一対の内表面を有する溝穴部が設けられ、
前記ギヤ部に、前記周方向の一方および他方のそれぞれに空間をおいて前記溝穴部の内部に収容され、前記溝穴部に対応する形状に形成され前記内表面と摺接する摺接部が設けられており、
前記同期移動機構は、
前記支持部が挿入されるとともに前記径方向に延びる複数の固定放射状溝が形成され、前記回転軸と一体に回転する固定ディスクと、
前記回転軸の軸方向から視て前記固定放射状溝のそれぞれと交差する交差箇所に前記支持部が挿入されるとともに前記径方向に延びる複数の可動放射状溝が形成され、前記固定ディスクに対して同心に配置され且つ相対回転可能な可動ディスクと、
を備えており、
前記溝穴部および前記摺接部は、前記固定ディスクおよび前記可動ディスクのうち前記チェーンに近い側のディスクにおける前記固定放射状溝または前記可動放射状溝の内部に配置されている、
変速機構。 - 前記ギヤ付勢部材は、
前記周方向のうち一方に前記ギヤ部を付勢する第一ギヤ付勢部材と、
前記周方向のうち他方に前記ギヤ部を付勢する第二ギヤ付勢部材と、
を有する、請求項1に記載の変速機構。 - 前記ギヤ付勢部材は、前記空間に配置され、前記摺接部を付勢する、
請求項1または2に記載の変速機構。 - 前記ギヤ部は、前記複合スプロケットの内周側に向けて突出した突部を有し、
前記ギヤ付勢部材は、前記突部を付勢する、
請求項1または2に記載の変速機構。 - 前記ギヤ付勢機構は、
前記ギヤ部および前記支持部の何れか一方に設けられ、前記所定の基準位相から進角側または遅角側に離隔するにつれて浅く凹設された凹部と、
前記ギヤ部および前記支持部の何れか他方に設けられ、前記凹部に突起部を付勢して係止する係止部と、
を有する、請求項1〜4の何れか1項に記載の変速機構。 - 前記所定の範囲は、前記周方向の一方および他方それぞれに前記ギヤ歯の半歯分の範囲である、
請求項1〜5の何れか1項に記載の変速機構。
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