JP5960733B2 - 無段変速機構 - Google Patents
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Description
かかる無段変速機では、大きな動力を伝達する際に、推力を増大させて摩擦力を確保することが必要である。この際、推力発生用のオイルポンプを駆動する駆動源(エンジン又は電動モータ)の負担が増大し、これにかかる燃料消費量又は電力消費量の増加を招いてしまうおそれがあり、また、各プーリや駆動ベルトなどの耐久性を損ねるおそれがある。
このような無段変速機構としては、回転軸に対して等距離を維持しながら径方向に可動に且つ一体回転するように支持されて回転軸に対して公転する複数のピニオンスプロケットがそれぞれ多角形の頂点をなすようにして形成された見かけ上の大スプロケット(ここでは、「複合スプロケット」と呼ぶことにする)が、入力側及び出力側のそれぞれに設けられ、これらの複合スプロケットに巻き掛けられたチェーンによって動力伝達するものが挙げられる。かかる構成のもとでは、各ピニオンスプロケットが回転軸に対して等距離を維持しながら同期して径方向に移動することで、多角形の大きさが相似的に変化することにより、変速比が変化する。
これに関し、以下の特許文献1及び特許文献2に例示される技術が開発されている。
この特許文献2には、一方向の回転を許容し他方向の回転を禁止する所謂ワンウェイクラッチのような逆転防止装置が各ピニオンスプロケットに設けられることが示されている。この逆転防止装置により、各ピニオンスプロケットの径方向の位置が変更されるときのチェーン長の過不足分を調整することができるとしている。
(5)前記疑似リンク溝の溝長は前記チェーンの前記リンク溝の溝長よりも大きく形成されていることが好ましい。
化に追従して前記第1同期回転部材及び前記第2同期回転部材の軸を移動させるチェーン追従移動機構を装備していることが好ましい。
(7)前記チェーン追従移動機構は、前記チェーンの走行軌道の変化に追従して移動するように可動に支持された追従ガイド部材と、前記追従ガイド部材を前記チェーンの外周面に圧接させる弾性部材と、前記追従ガイド部材と一体に移動し前記第1同期回転部材及び前記第2同期回転部材の軸を回転自在に支持する支持部材とを有していることが好ましい。
(9)前記ピニオンスプロケットに許容される微小回転量は、前記ピニオンスプロケットの半歯分であることが好ましい。
(13)前記複数のピニオンスプロケットは、等間隔に少なくとも三個設けられていることが好ましい。
以下、第1実施形態にかかる無段変速機構について説明する。
〔1−1.無段変速機構の構成〕
無段変速機構は、図1に示すように、二組の複合スプロケット5,5と、これらの複合スプロケット5,5に巻き掛けられたチェーン6とを備えている。なお、複合スプロケット5とは、詳細を後述する複数のピニオンスプロケット20及び複数のガイドロッド29が多角形(ここでは十八角形)の頂点をなすようにして形成された見かけ上の大スプロケットを意味する。
なお、図1には、出力側の接円半径が最大径であり、入力側の接円半径が最小径のものを示している。
以下、無段変速機構の構成を、複合スプロケット5及びこれに巻き掛けられるチェーン6の順に説明する。
以下の複合スプロケット5にかかる構成の説明では、ピニオンスプロケット20,ガイドロッド29,スプロケット移動機構40A,ロッド移動機構40B,機械式自転駆動機構50,回転軸1の順に説明する。
三個のピニオンスプロケット20は、それぞれチェーン6と噛合って動力伝達する歯車として構成され、回転軸1の軸心C1周りに公転する。ここでいう「公転」とは、各ピニオンスプロケット20が、回転軸1の軸心C1を中心に回転することを意味する。回転軸1が回転すると、この回転に連動して各ピニオンスプロケット20が公転する。つまり回転軸1の回転数とピニオンスプロケット20の回転数とは等しい。なお、図1には、白抜きの矢印で時計回りの公転方向を示している。
当然ながら、各ピニオンスプロケット21,22,23に形成される歯の形状寸法及びピッチは同一規格のものとなっている。
図1に示すように、複数のガイドロッド29は、チェーン6と回転軸1の軸心C1との距離の変動を小さくするように、つまり、回転軸1周りのチェーン6の軌道を可能な限り円軌道に近づけるように、チェーン6をガイドするものである。このガイドロッド29は、その外側の周面に当接するチェーン6の軌道をガイドする。ピニオンスプロケット21,22,23及び各ガイドロッド29は多角形(略正多角形)の形状をなすので、チェーン6は、その内側のピニオンスプロケット21,22,23及び各ガイドロッド29に当接しガイドされながら多角形の形状に沿って転動する。
なお、ガイドロッド29の本数は、十五本に限らず、これよりも多くてもよいし少なくてもよい。この場合、ガイドロッド29の本数は、ピニオンスプロケット20の相互間の数(ここでは三つ)の倍数であることが好ましい。また、ガイドロッド29を多く設けるほど複合スプロケット5を真円に近づけ、チェーン6と回転軸1の軸心C1との距離の変動を小さくすることができるが、パーツの増加による製造コストや重量の増加を招くため、これらを考慮してガイドロッド29の本数を設定することが好ましい。更に言えば、簡素な構成とするために、ガイドロッド29を省略してもよい。
次に、スプロケット移動機構40A,ロッド移動機構40B及び機械式自転駆動機構50をそれぞれ説明する。
スプロケット移動機構40Aは、複数のピニオンスプロケット20を移動対象とし、また、ロッド移動機構40Bは、複数のガイドロッド29を移動対象としている。
機械式自転駆動機構50は、スプロケット移動機構40Aによる複数のピニオンスプロケット20の径方向移動に伴って、チェーン6に対する複数のピニオンスプロケット20の位相ズレを解消するように自転ピニオンスプロケット22,23をスプロケット移動機構40Aと連動して自転駆動するものである。
まず、図2を参照して、上記の機構40A,40B,50の前提構成を説明する。ここでは、かかる前提構成として、回転軸1と一体に回転する固定ディスク群10と、この固定ディスク群10に対して同心に配置され且つ相対回転可能な可動ディスク19と、可動ディスク19を固定ディスク群10に対して相対回転駆動する相対回転駆動機構30とのそれぞれを説明する。
固定ディスク群10は、複数のピニオンスプロケット20側から順に、第一固定ディスク(径方向移動用固定ディスク)11及び第二固定ディスク(自転用固定ディスク)12を有する。これらの固定ディスク11,12は何れも回転軸1と一体に形成されるか、或いは、何れも回転軸1と一体回転するように結合されている。なお、図2では、複数のピニオンスプロケット20側から第一固定ディスク11,後述する可動ディスク19,第二固定ディスク12の順に配置されたもの例示する。
スプロケット用固定放射状溝11aは、ピニオンスプロケット20の個数(ここでは三個)に対応した溝数が設けられ、また、ロッド用固定放射状溝11bは、ガイドロッド29の本数(ここでは十五本)に対応した溝数が設けられている。
なお、ここでいう「所定長さ」とは、後述する第二固定ディスク12と可動ディスク19との位相差に対応する相対回転駆動機構30における入力部材33の進退量に対応する長さをいう。
図3に示すように、可動ディスク19(破線で示す)には、スプロケット用可動放射状溝19aとロッド用可動放射状溝19b(何れも一箇所のみに符号を付す)との二種の可動放射状溝が形成されている。なお、可動ディスク19の外形は円形であり、円形である第一固定ディスク11の外形と一致して重合するが、図3では便宜上の可動ディスク19の外形円を縮小して示している。
また、図2及び図4に示すように、可動ディスク19には、その外周部全周に歯(以下、「外周歯」という)19Aが形成されている。
相対回転駆動機構30は、可動ディスク19を固定ディスク群10に対して相対回転駆動するもので、ここでは、図2に示すように、可動ディスク19の外周に形成された外周歯19Aと噛合する回転駆動歯34aを有する出力部材34を回転させて、固定ディスク群10に対して可動ディスク19を相対回転駆動する。
また、入力部材33は、出力部材34に対して軸方向に可動であって且つ一体に回転するように取り付けられている。例えば、入力部材33と出力部材34とはスプライン嵌合により取り付けられている。
次に、図2及び図3を参照して、スプロケット移動機構40A及びロッド移動機構40Bを説明する。
スプロケット移動機構40Aは、ピニオンスプロケット21,22,23のそれぞれに設けられた支持軸21a,22a,23aが内挿されるスプロケット用固定放射状溝11aが形成された第一固定ディスク11と、スプロケット用可動放射状溝19aが形成された可動ディスク19と、相対回転駆動機構30とから構成される。
このように、それぞれの移動機構40A,40Bの構成は、各移動対象の支持軸が異なるだけで、その他の構成は同様である。
図3(a)は、放射状溝11a,19aにおけるピニオンスプロケット21,22,23(図2等参照)の支持軸21a,22a,23aと放射状溝11b,19bにおけるロッド支持軸29aとが回転軸1の軸心C1から最も近い位置に位置するものを示す。この場合、相対回転駆動機構30(図2参照)により可動ディスク19の回転位相を第一固定ディスク11に対して変更すると、図3(b),図3(c)の順に、スプロケット用固定放射状溝11aとスプロケット用可動放射状溝19aの交差箇所と、ロッド用固定放射状溝11bとロッド用可動放射状溝19bとの交差位置とが、回転軸1の軸心C1から遠ざかる。すなわち、これらの交差箇所に支持軸21a,22a,23a,29aを支持されたピニオンスプロケット20及びガイドロッド29は、回転軸1の軸心C1から等距離を維持しながら径方向に同期して移動する。
なお、入力側の移動機構40A,40Bが接円半径を拡径させるときには、チェーン6の弛緩や緊張が生じないように出力側の移動機構40A,40Bが接円半径を縮径させる。
次に、図2及び図4を参照して、機械式自転駆動機構50を説明する。ここでは、機械式自転駆動機構50がピニオンスプロケット20を挟んで対称に構成されるため、ここでは一側(図2の紙面上方側)の構成に着目して説明する。
機械式自転駆動機構50は、上記したように、自転ピニオンスプロケット22,23を回転させ、チェーン6に対するピニオンスプロケット20間の位相ズレを解消するように自転ピニオンスプロケット22,23をスプロケット移動機構40Aと連動して機械的に自転駆動するものである。
まず、機械式自転駆動機構50について、固定ピニオンスプロケット21を自転させないための構成を説明する。
案内部材59は、第一案内溝12aに内挿されて径方向に案内される。この案内部材59は、径方向の所定長さにわたって第一案内溝12aに接触するように対応する形状に形成されている。このため、固定ピニオンスプロケット21を自転させるような回転力が作用したときには、案内部材59は、第一案内溝12aに対して回転力を伝達するとともに、この回転力の反作用(抗力)で固定ピニオンスプロケット21を固定するものといえる。
図4では、第一案内溝12aが径方向に長手方向を有する矩形状に形成されており、この矩形状よりも小さい矩形状に形成された案内部材59を例示している。
また、第一案内溝12aの内壁に接する案内部材59の側壁、特に案内部材59の四隅に、ベアリングを装着すれば、案内部材59のよりスムーズな摺動が確保できる。
機械式自転駆動機構50は、自転ピニオンスプロケット22,23の支持軸22a,23aのそれぞれと一体回転するように固設されたピニオン51,52と、ピニオン51,52のそれぞれに対応して噛合するように設けられたラック53,54と、を有する。
なお、以下の説明では、第一自転ピニオンスプロケット22のピニオン(遅角側ピニオン)を第一ピニオン51と呼び、この第一ピニオン51と噛合するラック(遅角側ラック)53を第一ラックと呼んで区別する。同様に、第二ピニオンスプロケット23のピニオン(進角側ピニオン)を第二ピニオン52と呼び、この第二ピニオン52と噛合するラック(進角側ラック)54を第二ラックと呼ぶ。
なお、ピニオン51,52に対するラック53,54の位置関係が異なる点を除いては、第一ピニオン51と第二ピニオン52とは同様に構成され、また、第一ラック53と第二ラック54とは同様に構成されている。このため、以下の説明では、第一ピニオン51及び第一ラック53に着目して説明する。
このため、第一自転ピニオンスプロケット22が、長さが「2πx/3」のチェーン6を第一自転ピニオンスプロケット22と固定ピニオンスプロケット21との間に送り込むか引き出すように回転(自転)すれば、チェーン長が適切に調整される。
なお、図示省略するが、第一自転ピニオンスプロケット22には、その支持軸22aと自転用ピン22b,22cとの間に皿ばねが介装されている。これは、変速比の変更中に発生しうる第一自転ピニオンスプロケット22とチェーン6との噛合時のショック(衝撃)を吸収するためである。この皿ばねは、固定ピニオンスプロケット21及び第二自転ピニオンスプロケット23にもそれぞれ備えられている。
次に、回転軸1について、図1を参照して説明する。なお、回転軸1の説明では、図中左側の出力側の複合スプロケット5に着目し、その構成を説明する。図1には、駆動機構30の駆動により拡縮される接円半径が、最大径のものを実線で示し、最小径のものを一点鎖線で示す。
次に、チェーン6について、図5を参照して説明する。
図5に示すように、ガイドロッド29にガイドされるチェーン6は、各ピニオンスプロケット21,22,23の歯車の列数(ここでは三列)に対応する本数が設けられている。ここでは、第一チェーン6A,第二チェーン6B及び第三チェーン6Cの三本が設けられている。
また、無段変速機構の伝達トルクによっては二本又は四本以上のチェーン6が用いられるが、この場合には「1/チェーンの本数」ピッチだけ各チェーンのピッチをずらして設けられるのが好ましい。
各チェーン6A,6B,6Cは、それぞれ多数のリンクプレート(駆動リンク)61が動力伝達方向に直列に配列されたリンクプレート列61Sをが、リンクプレート61の厚み方向に複数並列されて、連結ピン62により連結されて構成される。
ここでは、ガイド面63aが円弧状に形成されたものに着目して説明する。このガイド面63aは、チェーン6A,6B,6Cの最大の巻き掛け半径(最大の接円半径に対応)に合わせて形成されている。
第一重合部64Aは、隣接する他の補助リンクプレート63の第二重合部64Bと隣接しており、これらの第一重合部64Aと第二重合部64Bとが重合する。
なお、重合部64A,64Bにかかる凹凸形状は、種々の対応した形状を採用することができる。例えば、図6(b)に二点鎖線で示すように、各重合部64A,64Bが動力伝達方向端部に向かうに連れて切欠部65bの厚み方向長さが大きくなるような凹凸形状を採用してもよい。
詳細には、チェーン6A,6B,6Cの巻き掛け半径(接円半径)が小さくなるに連れて、第一重合部65Aの切欠部65bに第二重合部65Bの肉薄部65aが進入するとともに、第二重合部65Bの切欠部65bに第一重合部65Aの肉薄部65aが進入して、両肉薄部65aの重合する領域が大きくなる。
次に、本無段変速機構において特徴的な事前歯合わせ機構を説明する。
ピニオンスプロケット20は、回転軸1に対して公転するので、チェーン6と噛み合う状態とチェーン6から離隔する状態とを繰り返し、しかも、変速比を変更する際には、ピニオンスプロケット20の歯20cとチェーン6のリンク溝61cとの位相がずれるため、ピニオンスプロケット20がチェーン6との噛み合いを開始する際に、ピニオンスプロケット20の歯20cがチェーン6のリンク溝61cに対し位相ずれして歯飛びするおそれがある。
補助スプロケット74は、入力側同期用スプロケット73と同径のものが適用される。また、出力側同期用スプロケット76は、ピニオンスプロケット20と同径のものが適用される。これらの補助スプロケット74の歯74a及び出力側同期用スプロケット76の歯76aは互いに同規格の歯が適用される。
変速比の切替時にピニオンスプロケット20が径方向に移動して複合スプロケット5の径が変更されると、チェーン6の走行軌道が変化して上記の噛合点の位置も変化するため、図1に示すように、事前歯合わせ機構70の第1同期回転部材71及び第2同期回転部材72も、チェーン6の走行軌道の変化に追従するように移動させる必要がある。そこで、事前歯合わせ機構70には、チェーン追従移動機構80が付設されている。
ところで、事前歯合わせ機構70によって、ピニオンスプロケット20の歯20cの位相合わせをするのは、ピニオンスプロケット20の歯20cが位相合わせ方向即ち回転方向に可動でなくては実現させることができない。しかし、ピニオンスプロケット20の歯20cを回転方向に単に可動にしたのでは、ピニオンスプロケット20とチェーン6との間での動力伝達に支障を来す。
本発明の第1実施形態にかかる無段変速機構は、上述のように構成されるため、以下のような作用及び効果を得ることができる。
ピニオンスプロケット20が回転軸1に対して公転してチェーン6との噛み合いを開始する際に、事前歯合わせ機構70が噛合点の直前でピニオンスプロケット20の歯20cの位相合わせをする。つまり、ピニオンスプロケット20が噛合点の直前に達すると、出力側同期用スプロケット76が同期用チェーン75の疑似リンク溝75cと噛み合う。なお、出力側同期用スプロケット76の歯76aはピニオンスプロケット20の歯20aよりも刃先が先鋭に形成され、半歯分の位相ずれがあっても疑似リンク溝75c内に出力側同期用スプロケット76の歯76aが容易に噛みこむ。
また、変速比の切替時にピニオンスプロケット20が径方向に移動して複合スプロケット5の径が変更されると、チェーン6の走行軌道が変化して上記の噛合点の位置も変化するが、チェーン追従移動機構80によって、事前歯合わせ機構70の第1同期回転部材71及び第2同期回転部材72も、チェーン6の走行軌道の変化に追従するように移動するので、変速比の切替時や切替後にも事前歯合わせを支障なく実施することができる。また、追従ガイド部材81はチェーン6が外振れしてピニオンスプロケット20から離脱するのを抑える作用もある。
また、事前歯合わせ機構70によってピニオンスプロケット20の歯20cの位相合わせをするには、ピニオンスプロケット20の歯20cが回転方向に可動でなくてはならないが、単に可動にしたのでは、ピニオンスプロケット20とチェーン6との間での動力伝達に支障を来すが、ピニオンスプロケット20の軸20aに対する微小回転を許容すると共に、ピニオンスプロケット20を軸20aに対して回転方向の中立位置に付勢し微小回転を弾性的に規制する微小回転許容機構90が装備されているので、ピニオンスプロケット20とチェーン6との間での動力伝達を実現しながら、ピニオンスプロケット20を回転方向に可動とし、歯合わせを実現することができる。
相対回転駆動機構30により固定ディスク群10に対する可動ディスク19の回転位相を変化させると、スプロケット移動機構40A及びロッド移動機構40Bが稼働して、回転軸1の軸心C1に対するピニオンスプロケット20及びガイドロッド29の径方向位置が等距離を維持されながら同期して変更される。これにより、接円半径が変更される。この場合、ピニオンスプロケットが自転しなければ、チェーンに対するピニオンスプロケットの位相ズレが発生してしまうが、かかる位相ズレは、機械式自転駆動機構50による自転ピニオンスプロケット22,23の自転により解消される。
さらに、自転ピニオンスプロケット22,23の外周がピニオン51,52の外周の略二倍に形成されているため、ピニオンスプロケット20間にチェーン6を過不足なく送り込み又は引き込んで、チェーン長を適切に調整することができる。
第1実施形態にかかる事前歯合わせ機構70は、同期用チェーン75がチェーン6の最大回転軌道の外に突出する配置としているが、図10に示すように、事前歯合わせ機構70の各部が何れも、チェーン6の最大回転軌道の外に突出しないように配置しても良い。つまり、同期用チェーン75を入力側同期用スプロケット73よりも各複合スプロケット5の軸心寄りに配置し、噛合点でのピニオンスプロケット20と入力側同期用スプロケット73との間に同期用チェーン75が位置するように配置する。これにより、無段変速機構をコンパクトに構成することができる。なお、この変形例では、事前歯合わせ機構70の各部の配置以外は第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
以下、図11〜図14を参照して、第2実施形態にかかる無段変速機構について説明する。第2実施形態は、事前歯合わせ機構170が第1実施形態の事前歯合わせ機構70と異なっているが、他の構成は第1実施形態と同様であるので、同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
図11に示すように、本実施形態の事前歯合わせ機構170は、第1実施形態の事前歯合わせ機構70と同様に、チェーン6と係合して位相同期して回転する第1同期回転部材171と、第1同期回転部材171と位相同期して回転すると共に噛合点直前でピニオンスプロケット20と係合して同ピニオンスプロケット20の位相を調整する第2同期回転部材172とを備えている。
また、第2同期回転部材172は、ピニオンスプロケット20と一体回転する出力側同期用スプロケット176と、出力側同期用スプロケット176と噛み合う同期用チェーン175とを備えている。
本実施形態の事前歯合わせ機構170によっても、ピニオンスプロケット20の歯20aが、チェーン106のリンク溝161cと僅かな位相差内に位相調整され、噛合点では、ピニオンスプロケット20の歯20aはチェーン106のリンク溝161cに確実に噛み合う。これにより、ピニオンスプロケット20の歯20aがチェーン106のリンク161に当たって歯飛びするおそれが解消され、無段変速機構が円滑に作動する。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。上述した一実施形態の各構成は、必要に応じて取捨選択することができ、適宜組み合わせてもよい。
2 収容空間
5 複合スプロケット
6,6A〜6C,106,106A〜106C チェーン
10 固定ディスク群
11 第一固定ディスク(径方向移動用固定ディスク)
11a スプロケット用固定放射状溝
11b ロッド用固定放射状溝
12 第二固定ディスク(自転用固定ディスク)
12a 第一案内溝(固定ピニオンスプロケット案内溝)
12b 第二案内溝
12c 第三案内溝
12A ヘリカルギヤ
19 可動ディスク(径方向移動用可動ディスク)
19a スプロケット用可動放射状溝
19b ロッド用可動放射状溝
19A 外周歯
20 ピニオンスプロケット
21 固定ピニオンスプロケット
21a 支持軸
22 第一自転ピニオンスプロケット(進角側自転ピニオンスプロケット)
22a 支持軸
23 第二自転ピニオンスプロケット(遅角側自転ピニオンスプロケット)
23a 支持軸
29 ガイドロッド
29a ロッド支持軸
29b ガイド部材
30 相対回転駆動機構
31 モータ
31a 出力軸
31b 雄ネジ部
32 フォーク
32a 雌ネジ部
32b 支持体
32c フォーク外周部
32A 運動変換機構
33 入力部材
33a ヘリカルギヤ
33b フォーク溝
34A 連動回転機構
34 出力部材
34a 回転駆動歯
40A スプロケット移動機構
40B ロッド移動機構
50 機械式自転駆動機構
51 第一ピニオン(進角側ピニオン)
52 第二ピニオン(遅角側ピニオン)
53 第一ラック(進角側ラック)
54 第二ラック(遅角側ラック)
59 案内部材
61 リンクプレート(駆動リンク)
61S リンクプレート列
61a リンクプレート61の歯部
61b ピン穴
61c リンク溝
62 連結ピン
63 補助リンク
63S 補助リンク列
63a ガイド面
63b ピン穴
64A,64B 重合部
65a 肉薄部
65b 切欠部
70,170 事前歯合わせ機構
71,171 第1同期回転部材
71a,171a 第1同期回転部材71,171の軸
72,172 第2同期回転部材
72a,172a 第2同期回転部材72,172の軸
73,173 入力側同期用スプロケット
73a,173a 前記入力側同期用スプロケット73,173の歯
173b 入力側同期用スプロケット173の軸
74 補助スプロケット
74a 補助スプロケット74の歯
75 同期用チェーン
75a,175a 疑似リンク
75b,175a 連結ピン
75c,175c 疑似リンク溝
76,176 出力側同期用スプロケット
76a,176a 出力側同期用スプロケット76,176の歯
80 チェーン追従移動機構
81 追従ガイド部材
82 弾性部材
83 支持部材
90 微小回転許容機構
91 キー部材
92 キー溝
93 付勢部材
C1,C2,C3,C4 軸心
Claims (13)
- 動力が入力又は出力される回転軸と、前記回転軸に対して径方向に可動に且つ一体に公転するように支持された複数のピニオンスプロケットと、前記複数のピニオンスプロケットを前記回転軸の軸心から等距離を維持させながら径方向に同期させて移動させるスプロケット移動機構とを有する複合スプロケットを二組と、前記二組の複合スプロケットに巻き掛けられたチェーンとを備え、前記複数のピニオンスプロケットの何れも囲み且つ前記複数のピニオンスプロケットの何れにも接する円の半径である接円半径の変更によって変速比を変更する無段変速機構であって、
前記ピニオンスプロケットが前記公転によって前記チェーンとの噛み合いを開始する噛合点に達する直前で、前記ピニオンスプロケットの歯を前記チェーンの内周のリンク溝と位相合わせする事前歯合わせ機構を備え、
前記事前歯合わせ機構は、前記チェーンと係合して位相同期して回転する第1同期回転部材と、前記第1同期回転部材と位相同期して回転すると共に前記噛合点に達する直前で前記ピニオンスプロケットと係合して同ピニオンスプロケットの位相を調整する第2同期回転部材と、を備えている
ことを特徴とする、無段変速機構。 - 前記第1同期回転部材は、前記チェーンの前記リンク溝に歯が常時噛み合う入力側同期用スプロケットと、前記入力側同期用スプロケットと一体回転する補助スプロケットとを備え、
前記第2同期回転部材は、前記ピニオンスプロケットと一体回転する出力側同期用スプロケットと、前記チェーンの前記リンク溝を模した疑似リンク溝を外周に有し、前記疑似リンク溝が前記補助スプロケットの歯と常時噛み合うと共に前記ピニオンスプロケットが前記噛合点の直前に到達したときに、前記疑似リンク溝が前記出力側同期用スプロケットの歯と噛み合う同期用チェーンとを備えている
ことを特徴とする、請求項1記載の無段変速機構。 - 前記第1同期回転部材は、前記チェーンの前記リンク溝に歯が常時噛み合う入力側同期用スプロケットを備え
前記第2同期回転部材は、前記ピニオンスプロケットと一体回転する出力側同期用スプロケットと、前記入力側同期用スプロケットの軸に一体回転するように装備され、前記チェーンの前記リンク溝を模した疑似リンク溝を外周に有し、前記ピニオンスプロケットが前記噛合点の直前に到達したときに、前記疑似リンク溝が前記出力側同期用スプロケットの歯と噛み合う同期用チェーンとを備えている
ことを特徴とする、請求項1記載の無段変速機構。 - 前記同期用チェーンは、外周に駆動ギヤ部分を有するサイレントチェーンである
ことを特徴とする、請求項2又は3記載の無段変速機構。 - 前記疑似リンク溝の溝長は前記チェーンの前記リンク溝の溝長よりも大きく形成されている
ことを特徴とする、請求項2〜4の何れか1項に記載の無段変速機構。 - 前記ピニオンスプロケットの径方向への移動に伴う前記チェーンの走行軌道の変化に追従して前記第1同期回転部材及び前記第2同期回転部材の軸を移動させるチェーン追従移動機構を装備している
ことを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載の無段変速機構。 - 前記チェーン追従移動機構は、
前記チェーンの走行軌道の変化に追従して移動するように可動に支持された追従ガイド部材と、
前記追従ガイド部材を前記チェーンの外周面に圧接させる弾性部材と、
前記追従ガイド部材と一体に移動し前記第1同期回転部材及び前記第2同期回転部材の軸を回転自在に支持する支持部材とを有している
ことを特徴とする、請求項6記載の無段変速機構。 - 前記ピニオンスプロケットを支持するピニオンスプロケット軸に対する前記ピニオンスプロケットの微小回転を許容すると共に、前記ピニオンスプロケットを前記ピニオンスプロケット軸に対して回転方向の中立位置に付勢し前記微小回転を弾性的に規制する微小回転許容機構が装備されている
ことを特徴とする、請求項1〜7の何れか1項に記載の無段変速機構。 - 前記ピニオンスプロケットに許容される微小回転量は、前記ピニオンスプロケットの半歯分である
ことを特徴とする、請求項8記載の無段変速機構。 - 前記微小回転許容機構は、
前記ピニオンスプロケットの内周側及び前記出力側同期用スプロケットの内周側に一体回転するように装備されたキー部材と、
前記ピニオンスプロケット軸の外周側に形成され前記キー部材が前記回転方向に遊びをもって係合するキー溝と、
前記キー部材が前記キー溝の前記回転方向の中立位置に位置するように、前記キー部材を前記回転方向の正転と逆転方向との双方から付勢する付勢部材と、を備えている
ことを特徴とする、請求項2又は3を引用する請求項8又は9記載の無段変速機構。 - 前記複数のピニオンスプロケットの少なくとも何れかのピニオンスプロケットを自転駆動する機械式自転駆動機構を備え、
前記機械式自転駆動機構は、前記スプロケット移動機構による前記複数のピニオンスプロケットの径方向移動に伴って、前記チェーンに対する前記複数のピニオンスプロケットの位相ズレを解消するように前記何れかのピニオンスプロケットを前記スプロケット移動機構と連動して機械的に自転駆動する
ことを特徴とする、請求項1〜10の何れか1項に記載の無段変速機構。 - 前記複数のピニオンスプロケットは、自転しない一つの固定ピニオンスプロケットと自転可能なその他の自転ピニオンスプロケットとを有し、
前記機械式自転駆動機構は、前記固定ピニオンスプロケットが自転しないように案内し、前記自転ピニオンスプロケットが自転するように案内する
ことを特徴とする、請求項11記載の無段変速機構。 - 前記複数のピニオンスプロケットは、等間隔に少なくとも三個設けられていることを特徴とする、請求項1〜12の何れか1項に記載の無段変速機構。
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