JP5960733B2 - 無段変速機構 - Google Patents

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Description

本発明は、回転軸に対して等距離を維持しながら径方向に可動に且つ一体回転(回転軸周りの公転)するように支持されて回転軸の軸心に対して公転する複数のピニオンスプロケットとこれらに巻き掛けられたチェーンとにより動力伝達する無段変速機構に関するものである。
従来、プライマリプーリとセカンダリプーリとに駆動ベルトが巻き掛けられ、各プーリの可動シーブに加える推力により各プーリと駆動ベルトとの間に発生した摩擦力を用いて動力伝達するベルト式無段変速機が、例えば車両用変速機として実用化されている。
かかる無段変速機では、大きな動力を伝達する際に、推力を増大させて摩擦力を確保することが必要である。この際、推力発生用のオイルポンプを駆動する駆動源(エンジン又は電動モータ)の負担が増大し、これにかかる燃料消費量又は電力消費量の増加を招いてしまうおそれがあり、また、各プーリや駆動ベルトなどの耐久性を損ねるおそれがある。
そこで、上記の推力や推力による摩擦力を用いずに、複数のピニオンスプロケットとこれに巻き掛けられたチェーンとにより動力伝達する無段変速機構が開発されている。
このような無段変速機構としては、回転軸に対して等距離を維持しながら径方向に可動に且つ一体回転するように支持されて回転軸に対して公転する複数のピニオンスプロケットがそれぞれ多角形の頂点をなすようにして形成された見かけ上の大スプロケット(ここでは、「複合スプロケット」と呼ぶことにする)が、入力側及び出力側のそれぞれに設けられ、これらの複合スプロケットに巻き掛けられたチェーンによって動力伝達するものが挙げられる。かかる構成のもとでは、各ピニオンスプロケットが回転軸に対して等距離を維持しながら同期して径方向に移動することで、多角形の大きさが相似的に変化することにより、変速比が変化する。
このような無段変速機構における変速時には、ピニオンスプロケット間の距離が変化することにより、ピニオンスプロケット間でチェーン長の過不足が発生し、チェーンの弛み又は突張りが発生してしまう。このようなチェーン長の過不足を回避しなくては、各ピニオンスプロケットを径方向に移動させることができず、変速比を変更することができない。
これに関し、以下の特許文献1及び特許文献2に例示される技術が開発されている。
特許文献1には、複数のピニオンスプロケットの一側に二つディスク(スピンドル)が並設され、それぞれのディスクに放射状溝が設けられ、一方のディスクの放射状溝(以下、「第一放射状溝」という)と他方のディスクの放射状溝(以下、「第二放射状溝」という)とが互いに交差するように配置され、第一放射状溝と第二放射状溝とが交差する箇所に各スプロケットの軸が支持されたものが示されている。一方のディスクと他方のディスクとの相対角度(位相)が変更されると、第一放射状溝と第二放射状溝との交差箇所が径方向に移動するため、かかる交差箇所に軸支された各ピニオンスプロケットは、両ディスクの相対回転により径方向に移動する。
この特許文献1には、チェーンのトルク伝達による力が作用すると係合してピニオンスプロケットをその軸と一体に回転可能にし、チェーンのトルク伝達がなされずかかる力が解除されると係合を遮断してピニオンスプロケットをその軸に対して自由回転可能にする所定の機構(ここでは「所定機構」という)がピニオンスプロケットに内蔵されていることが示されている。所定機構が係合状態であれば動力伝達が可能となり、また、所定機構が遮断状態であれば各ピニオンスプロケットの径方向移動が可能となる。さらに、所定機構を作動させるためのチェーンの張力を与えるチェーンテンショナーが設けられている。
特許文献2には、各ピニオンスプロケットが取り付けられたスライドフレームに雌ネジが設けられ、この雌ネジに取り付けられる各雄ネジを回転させる動力分配機構が設けられたものが示されている。この動力分配機構により各雄ネジを同時に同数回転させることで、各スプロケットを径方向に移動させている。
この特許文献2には、一方向の回転を許容し他方向の回転を禁止する所謂ワンウェイクラッチのような逆転防止装置が各ピニオンスプロケットに設けられることが示されている。この逆転防止装置により、各ピニオンスプロケットの径方向の位置が変更されるときのチェーン長の過不足分を調整することができるとしている。
米国特許第7713154号 特開2002−250420号
ところで、上記のような複合スプロケットに巻き掛けられたチェーンによって動力伝達する無段変速機構の場合、ピニオンスプロケットは、回転軸に対して公転するので、チェーンと噛み合う状態とチェーンから離隔する状態とを繰り返す。しかも、変速比を変更する際には、ピニオンスプロケットの歯とチェーンのリンク溝との位相がずれてしまう。この位相ずれが大きくなると、ピニオンスプロケットがチェーンとの噛み合いを開始する際に、ピニオンスプロケットの歯がチェーンのリンクに当たって歯飛びするおそれがある。
つまり、上述の特許文献1,2の技術のように、変速比を変更する際にチェーン長の過不足を回避しようとするには、チェーンの過不足に追従するようにピニオンスプロケットを自転させることが必要になるが、ピニオンスプロケットがチェーンから離隔すると、ピニオンスプロケットをチェーンの過不足に追従させることができない。このため、ピニオンスプロケットの歯とチェーンのリンク溝との位相ずれが生じて、噛み合い開始時に、歯飛びするおそれがある。
本発明は、上記の課題に鑑み創案されたもので、複合スプロケットに巻き掛けられたチェーンによって動力伝達する無段変速機構において、ピニオンスプロケットがチェーンとの噛み合いを開始する際に、ピニオンスプロケットの歯とチェーンのリンク溝との位相ずれによる歯飛びが発生しないようした、無段変速機構を提供することを目的とする。
(1)本発明の無段変速機構は、動力が入力又は出力される回転軸と、前記回転軸に対して径方向に可動に且つ一体に公転するように支持された複数のピニオンスプロケットと、前記複数のピニオンスプロケットを前記回転軸の軸心から等距離を維持させながら径方向に同期させて移動させるスプロケット移動機構とを有する複合スプロケットを二組と、前記二組の複合スプロケットに巻き掛けられたチェーンとを備え、前記複数のピニオンスプロケットの何れも囲み且つ前記複数のピニオンスプロケットの何れにも接する円の半径である接円半径の変更によって変速比を変更する無段変速機構であって、前記ピニオンスプロケットが前記公転によって前記チェーンとの噛み合いを開始する噛合点に達する直前で、前記ピニオンスプロケットの歯を前記チェーンの内周のリンク溝と位相合わせする事前歯合わせ機構を備え、前記事前歯合わせ機構は、前記チェーンと係合して位相同期して回転する第1同期回転部材と、前記第1同期回転部材と位相同期して回転すると共に前記噛合点に達する直前で前記ピニオンスプロケットと係合して同ピニオンスプロケットの位相を調整する第2同期回転部材と、を備えていることを特徴としている。
(2)前記第1同期回転部材は、前記チェーンの前記リンク溝に歯が常時噛み合う入力側同期用スプロケットと、前記入力側同期用スプロケットと一体回転する補助スプロケットとを備え、前記第2同期回転部材は、前記ピニオンスプロケットと一体回転する出力側同期用スプロケットと、前記チェーンの前記リンク溝を模した疑似リンク溝を外周に有し、前記疑似リンク溝が前記補助スプロケットの歯と常時噛み合うと共に前記ピニオンスプロケットが前記噛合点の直前に到達したときに、前記疑似リンク溝が前記出力側同期用スプロケットの歯と噛み合う同期用チェーンとを備えていることが好ましい。
(3)前記第1同期回転部材は、前記チェーンの前記リンク溝に歯が常時噛み合う入力側同期用スプロケットを備え、前記第2同期回転部材は、前記ピニオンスプロケットと一体回転する出力側同期用スプロケットと、前記入力側同期用スプロケットの軸に一体回転するように装備され、前記チェーンの前記リンク溝を模した疑似リンク溝を外周に有し、前記ピニオンスプロケットが前記噛合点の直前に到達したときに、前記疑似リンク溝が前記出力側同期用スプロケットの歯と噛み合う同期用チェーンとを備えていることが好ましい。
(4)前記同期用チェーンは、外周に駆動ギヤ部分を有するサイレントチェーンであることが好ましい。
(5)前記疑似リンク溝の溝長は前記チェーンの前記リンクの溝長よりも大きく形成されていることが好ましい。
(6)前記ピニオンスプロケットの径方向への移動に伴う前記チェーンの走行軌道の変
化に追従して前記第1同期回転部材及び前記第2同期回転部材の軸を移動させるチェーン追従移動機構を装備していることが好ましい。
(7)前記チェーン追従移動機構は、前記チェーンの走行軌道の変化に追従して移動するように可動に支持された追従ガイド部材と、前記追従ガイド部材を前記チェーンの外周面に圧接させる弾性部材と、前記追従ガイド部材と一体に移動し前記第1同期回転部材及び前記第2同期回転部材の軸を回転自在に支持する支持部材とを有していることが好ましい。
(8)前記ピニオンスプロケットを支持するピニオンスプロケット軸に対する前記ピニオンスプロケットの微小回転を許容すると共に、前記ピニオンスプロケットを前記ピニオンスプロケット軸に対して回転方向の中立位置に付勢し前記微小回転を弾性的に規制する微小回転許容機構が装備されていることが好ましい。
(9)前記ピニオンスプロケットに許容される微小回転量は、前記ピニオンスプロケットの半歯分であることが好ましい。
(10)前記微小回転許容機構は、前記ピニオンスプロケットの内周側及び前記出力側同期用スプロケットの内周側に一体回転するように装備されたキー部材と、前記ピニオンスプロケット軸の外周側に形成され前記キー部材が前記回転方向に遊びをもって係合するキー溝と、前記キー部材が前記キー溝の前記回転方向の中立位置に位置するように、前記キー部材を前記回転方向の正転方向と逆転方向との双方から付勢する付勢部材と、を備えていることが好ましい。
(11)前記複数のピニオンスプロケットの少なくとも何れかのピニオンスプロケットを自転駆動する機械式自転駆動機構を備え、前記機械式自転駆動機構は、前記スプロケット移動機構による前記複数のピニオンスプロケットの径方向移動に伴って、前記チェーンに対する前記複数のピニオンスプロケットの位相ズレを解消するように前記何れかのピニオンスプロケットを前記スプロケット移動機構と連動して機械的に自転駆動することが好ましい。
(12)前記複数のピニオンスプロケットは、自転しない一つの固定ピニオンスプロケットと自転可能なその他の自転ピニオンスプロケットとを有し、前記機械式自転駆動機構は、前記固定ピニオンスプロケットが自転しないように案内し、前記自転ピニオンスプロケットが自転するように案内することが好ましい。
(13)前記複数のピニオンスプロケットは、等間隔に少なくとも三個設けられていることが好ましい。
本発明の無段変速機構によれば、第1同期回転部材はチェーンと係合して位相同期して回転し、第1同期回転部材と位相同期して回転する第2同期回転部材はピニオンスプロケットと係合して位相同期して回転するので、ピニオンスプロケットはチェーンと位相同期して回転する。これによって、ピニオンスプロケットがチェーンとの噛み合いを開始する噛合点の直前でピニオンスプロケットの歯がチェーンのリンク溝の位相と合って歯合わせされた状態となり、ピニオンスプロケットが歯飛びすることなくチェーンとの噛み合いを開始する。これにより、無段変速機構が円滑に動作する。
本発明の第1実施形態にかかる無段変速機構の要部を模式的に示す正面図である。 本発明の第1実施形態にかかる無段変速機構のピニオンスプロケット等の径方向移動用の相対回転駆動装置に着目した要部を模式的に示す断面図である。 本発明の第1実施形態にかかる無段変速機構においてピニオンスプロケット等の径方向移動用の固定ディスク及び可動ディスクとこれらによって移動するピニオンスプロケット及びガイドロッドの各支持軸とを示し、スプロケット移動機構及びロッド移動機構を説明する図であり、(a),(b),(c)の順に接円半径が大きくなっている。なお、接円半径が、最小径のものを(a)に示し、最大径のものを(c)に示す。 本発明の第1実施形態にかかる無段変速機構の要部を模式的に示す斜視図である。 本発明の第1実施形態にかかるチェーン及びこれをガイドするガイドロッドの一部を取り出して模式的に示す斜視図である。 本発明の第1実施形態にかかる無段変速機構のチェーンのうち補助リンクプレートを単体で示し、(a)は正面図であり、(b)は底面図である。 本発明の第1実施形態にかかる無段変速機構のチェーンのうちリンクプレート(駆動リンク)を単体で示す斜視図である。 本発明の第1実施形態にかかる事前歯合わせ機構及び微小回転許容機構に着目した無段変速機構の要部の模式的な断面図である。 本発明の第1実施形態にかかるピニオンスプロケットの微小回転許容機構を説明する図であり、(a)はピニオンスプロケットの軸方向から視た模式的な構成図、(b)はその付勢部材の模式的な斜視図である。 本発明の第1実施形態にかかる事前歯合わせ機構の変形例に着目した無段変速機構の要部を模式的に示す正面図である。 本発明の第2実施形態にかかる事前歯合わせ機構に着目した無段変速機構の要部を模式的に示す正面図である。 本発明の第2実施形態にかかる事前歯合わせ機構及び微小回転許容機構に着目した無段変速機構の要部の模式的な断面図である。 本発明の第2実施形態にかかる事前歯合わせ機構の同期用チェーンの模式的な正面図である。 本発明の第2実施形態にかかるチェーンを説明する図であって、(a)はその模式的な正面図、(b)はその模式的上面図である。
以下、図面を参照して、本発明の無段変速機構にかかる実施の形態を説明する。本実施形態の無段変速機構は、車両用変速機に用いて好適である。なお、本実施形態では、無段変速機構における回転軸の軸心に近い側(公転軸側)を内側とし、その反対側を外側として説明する。
〔1.第1実施形態〕
以下、第1実施形態にかかる無段変速機構について説明する。
〔1−1.無段変速機構の構成〕
無段変速機構は、図1に示すように、二組の複合スプロケット5,5と、これらの複合スプロケット5,5に巻き掛けられたチェーン6とを備えている。なお、複合スプロケット5とは、詳細を後述する複数のピニオンスプロケット20及び複数のガイドロッド29が多角形(ここでは十八角形)の頂点をなすようにして形成された見かけ上の大スプロケットを意味する。
二組の複合スプロケット5,5のうち、一方は、入力側の回転軸1(入力軸)と同心に一体回転する一組の複合スプロケット5(図1では右方に示す)であり、他方は、出力側の回転軸1(出力軸)と同心に一体回転する複合スプロケット5(図1では左方に示す)である。これらの複合スプロケット5,5はそれぞれ同様に構成されているため、下記の説明では、出力側の複合スプロケット5に着目し、その構成を説明する。なお、入力軸1は複数の軸1a〜1dが組み合わされて構成されるがこの点は後述する。
複合スプロケット5は、回転軸1と、この回転軸1に対して径方向に可動に支持された複数(ここでは三個)のピニオンスプロケット20及び複数(ここでは十五本)のガイドロッド(第一ガイドロッド)29とを有している。三個のピニオンスプロケット20は、回転軸1の軸心C1を中心にした円周上において周方向に沿って等間隔に配置され、ピニオンスプロケット20の相互間にはそれぞれ五本のガイドロッド29が配置されている。
図1には示さないが、複合スプロケット5は、複数のピニオンスプロケット20を移動させるスプロケット移動機構40Aと、スプロケット移動機構40Aに連動してピニオンスプロケット20に含まれる自転ピニオンスプロケット22,23を自転駆動する機械式自転駆動機構50と、複数のガイドロッド29を移動させるロッド移動機構40Bとを備えている(図2〜図5参照)。これらについては、詳細を後述する。
この無段変速機構は、ピニオンスプロケット20及びガイドロッド29が多角形(ここでは十八角形)の頂点をなすようにして形成された見かけ上の大スプロケットの外径、即ち、複合スプロケット5の外径を変更(拡縮径)することによって変速比を変更するものである。
複合スプロケット5の外径とは、複数のピニオンスプロケット20の何れも囲み、且つ、複数のピニオンスプロケット20の何れにも接する円(接円)の半径(以下、「接円半径」という)に対応するものである。また、複合スプロケット5にはチェーン6が巻き掛けられるため、複合スプロケット5の外径は、複数のピニオンスプロケット20とチェーン6との接触半径に対応するものともいえる。よって、接円半径或いは接触半径が最小径であるときには、複合スプロケット5の外径が最小径であり、また、接円半径或いは接触半径が最大径であるときには、複合スプロケット5の外径が最大径である。
このため、無段変速機構は、接円半径の変更によって変速比を変更するものといえる。
なお、図1には、出力側の接円半径が最大径であり、入力側の接円半径が最小径のものを示している。
以下、無段変速機構の構成を、複合スプロケット5及びこれに巻き掛けられるチェーン6の順に説明する。
〔1−1−1.複合スプロケット〕
以下の複合スプロケット5にかかる構成の説明では、ピニオンスプロケット20,ガイドロッド29,スプロケット移動機構40A,ロッド移動機構40B,機械式自転駆動機構50,回転軸1の順に説明する。
〔1−1−1−1.ピニオンスプロケット〕
三個のピニオンスプロケット20は、それぞれチェーン6と噛合って動力伝達する歯車として構成され、回転軸1の軸心C1周りに公転する。ここでいう「公転」とは、各ピニオンスプロケット20が、回転軸1の軸心C1を中心に回転することを意味する。回転軸1が回転すると、この回転に連動して各ピニオンスプロケット20が公転する。つまり回転軸1の回転数とピニオンスプロケット20の回転数とは等しい。なお、図1には、白抜きの矢印で時計回りの公転方向を示している。
これらのピニオンスプロケット20は、自転しない一つのピニオンスプロケット(以下、「固定ピニオンスプロケット」という)21と、この固定ピニオンスプロケット21を基準に公転の回転位相が遅角側及び進角側のそれぞれに配置され自転可能な二つの自転ピニオンスプロケット22,23とから構成されている。なお、以下の説明では、固定ピニオンスプロケット21を基準に遅角側に設けられたピニオンスプロケット(遅角側自転ピニオンスプロケット)を第一自転ピニオンスプロケット22と呼び、進角側に設けられたピニオンスプロケット(進角側自転ピニオンスプロケット)を第二自転ピニオンスプロケット23と呼んで区別する。
各ピニオンスプロケット21,22,23は、いずれも、その中心に設けられた支持軸(ピニオンスプロケット軸)21a,22a,23aに対して結合されており、ここでいう「自転」とは、各ピニオンスプロケット22,23がその支持軸22a,23aの軸心C3,C4周りに回転する(即ち、支持軸自体が回転する)ことを意味する。なお、各支持軸21a,22a,23aの軸心C2,C3,C4及び回転軸1の軸心C1は、何れも相互に平行である。
固定ピニオンスプロケット21及び自転ピニオンスプロケット22,23は、何れも支持軸21a,22a,23aに結合された本体部21b,22b,23bとこの本体部22b,23bの外周部全周に突出形成された歯21c,22c,23cとを有している。
当然ながら、各ピニオンスプロケット21,22,23に形成される歯の形状寸法及びピッチは同一規格のものとなっている。
詳細は後述するが、第一自転ピニオンスプロケット22は、接円半径の拡径時に時計回りに自転し、接円半径の縮径時に反時計回りに自転する。一方、第二自転ピニオンスプロケット23は、接円半径の拡径時に反時計回りに自転し、接円半径の縮径時に時計回りに自転する。
なお、各ピニオンスプロケット21,22,23を区別しない場合には、ピニオンスプロケットは符号20で示し、ピニオンスプロケット20の支持軸は符号20aで示し、ピニオンスプロケット20の本体部は符号20bで示し、ピニオンスプロケット20の歯は符号20cで示す。
また、各ピニオンスプロケット20とその支持軸20aとの間には、いずれも、各ピニオンスプロケット20の支持軸20aに対する微小回転を許容すると共に、各ピニオンスプロケット20を、この許容される微小回転範囲の中立位置に弾性的に付勢する微小回転許容機構90が介装されている。これについても、後述する。
本実施形態では、図2に示すように、各自転ピニオンスプロケット22,23は、それぞれ軸方向に三列の歯車を備え、図示省略するが、固定ピニオンスプロケット21も軸方向に三列の歯車を備え、これらの各列の歯車に対応してチェーン6も三本巻き掛けられている。このように、各ピニオンスプロケット21,22,23は、軸方向に三列の歯車を有する。ここでは、各ピニオンスプロケット20の三列の歯車は、スペーサを介し互いに間隔をあけて設けられている。
なお、各ピニオンスプロケット21,22,23の歯車の列数は、無段変速機構の伝達トルクの大きさによるが、二列又は四列以上であってもよいし一列であってもよい。また、図2には、理解容易のため模式的に示しており、同断面に第一自転ピニオンスプロケット22,第二自転ピニオンスプロケット23及び後述する相対回転駆動機構30を示している。
〔1−1−1−2.ガイドロッド〕
図1に示すように、複数のガイドロッド29は、チェーン6と回転軸1の軸心C1との距離の変動を小さくするように、つまり、回転軸1周りのチェーン6の軌道を可能な限り円軌道に近づけるように、チェーン6をガイドするものである。このガイドロッド29は、その外側の周面に当接するチェーン6の軌道をガイドする。ピニオンスプロケット21,22,23及び各ガイドロッド29は多角形(略正多角形)の形状をなすので、チェーン6は、その内側のピニオンスプロケット21,22,23及び各ガイドロッド29に当接しガイドされながら多角形の形状に沿って転動する。
各ガイドロッド29は、ロッド支持軸29a(図1では破線で示す)の外周に円筒状のガイド部材29bが嵌着されたものであり、ロッド支持軸29aによって支持され、ガイド部材29bの外周面でチェーン6をガイドする。
なお、ガイドロッド29の本数は、十五本に限らず、これよりも多くてもよいし少なくてもよい。この場合、ガイドロッド29の本数は、ピニオンスプロケット20の相互間の数(ここでは三つ)の倍数であることが好ましい。また、ガイドロッド29を多く設けるほど複合スプロケット5を真円に近づけ、チェーン6と回転軸1の軸心C1との距離の変動を小さくすることができるが、パーツの増加による製造コストや重量の増加を招くため、これらを考慮してガイドロッド29の本数を設定することが好ましい。更に言えば、簡素な構成とするために、ガイドロッド29を省略してもよい。
〔1−1−1−3.スプロケット移動機構,ロッド移動機構及び機械式自転駆動機構〕
次に、スプロケット移動機構40A,ロッド移動機構40B及び機械式自転駆動機構50をそれぞれ説明する。
スプロケット移動機構40Aは、複数のピニオンスプロケット20を移動対象とし、また、ロッド移動機構40Bは、複数のガイドロッド29を移動対象としている。
これらの移動機構40A,40Bは、各移動対象(複数のピニオンスプロケット20,複数のガイドロッド29)を回転軸1の軸心C1から等距離を維持させながら径方向に同期して移動させるものである。
機械式自転駆動機構50は、スプロケット移動機構40Aによる複数のピニオンスプロケット20の径方向移動に伴って、チェーン6に対する複数のピニオンスプロケット20の位相ズレを解消するように自転ピニオンスプロケット22,23をスプロケット移動機構40Aと連動して自転駆動するものである。
〔1−1−1−3−1.前提構成〕
まず、図2を参照して、上記の機構40A,40B,50の前提構成を説明する。ここでは、かかる前提構成として、回転軸1と一体に回転する固定ディスク群10と、この固定ディスク群10に対して同心に配置され且つ相対回転可能な可動ディスク19と、可動ディスク19を固定ディスク群10に対して相対回転駆動する相対回転駆動機構30とのそれぞれを説明する。
なお、固定ディスク群10及び可動ディスク19は、複数のピニオンスプロケット20の両側(回転軸1の軸心C1に沿う方向の一側及び他側)にそれぞれ設けられている。このため、ここでは一側(図2の紙面上方側)に設けられた固定ディスク群10,可動ディスク19に着目し、その構成を説明する。
〔1−1−1−3−1−1.固定ディスク〕
固定ディスク群10は、複数のピニオンスプロケット20側から順に、第一固定ディスク(径方向移動用固定ディスク)11及び第二固定ディスク(自転用固定ディスク)12を有する。これらの固定ディスク11,12は何れも回転軸1と一体に形成されるか、或いは、何れも回転軸1と一体回転するように結合されている。なお、図2では、複数のピニオンスプロケット20側から第一固定ディスク11,後述する可動ディスク19,第二固定ディスク12の順に配置されたもの例示する。
図3に示すように、第一固定ディスク11には、スプロケット用固定放射状溝11aとロッド用固定放射状溝11b(何れも一箇所のみに符号を付す)との二種の放射状溝が形成されている。
スプロケット用固定放射状溝11aは、ピニオンスプロケット20の個数(ここでは三個)に対応した溝数が設けられ、また、ロッド用固定放射状溝11bは、ガイドロッド29の本数(ここでは十五本)に対応した溝数が設けられている。
スプロケット用固定放射状溝11aには、ピニオンスプロケット21,22,23の各支持軸21a,22a,23aが内挿され、また、ロッド用固定放射状溝11bには、各ガイドロッド29のロッド支持軸29a(一箇所のみに符号を付す)が内挿される。
図2及び図4に示すように、第二固定ディスク12には、ピニオンスプロケット21,22,23のそれぞれに対応して案内溝12a,12b,12cが形成されている。具体的には、固定ピニオンスプロケット21の径方向移動を案内する第一案内溝(固定ピニオンスプロケット案内溝)12aと、第一自転ピニオンスプロケット22の径方向移動を案内する第二案内溝12bと、第二自転ピニオンスプロケット23の径方向移動を案内する第三案内溝12cとが形成されている。これら案内溝12a,12b,12cのそれぞれは、対応するピニオンスプロケット21,22,23の径方向移動経路に沿って形成されている。
また、第二固定ディスク12の外周部には、ヘリカルギヤ12Aが設けられている。このヘリカルギヤ12Aが設けられた第二固定ディスク12の外周部は、軸心C1に沿った方向に所定長さを有するように突設され、ヘリカルギヤ12Aは所定長さに亘って設けられている。
なお、ここでいう「所定長さ」とは、後述する第二固定ディスク12と可動ディスク19との位相差に対応する相対回転駆動機構30における入力部材33の進退量に対応する長さをいう。
〔1−1−1−3−1−2.可動ディスク〕
図3に示すように、可動ディスク19(破線で示す)には、スプロケット用可動放射状溝19aとロッド用可動放射状溝19b(何れも一箇所のみに符号を付す)との二種の可動放射状溝が形成されている。なお、可動ディスク19の外形は円形であり、円形である第一固定ディスク11の外形と一致して重合するが、図3では便宜上の可動ディスク19の外形円を縮小して示している。
スプロケット用可動放射状溝19aは、上記のスプロケット用固定放射状溝11aに交差し、その交差箇所にピニオンスプロケット21,22,23の各支持軸21a,22a,23aが位置する。同様に、ロッド用可動放射状溝19bは、上記のロッド用固定放射状溝11bに交差し、その交差箇所の各ロッド支持軸29aが位置する。
また、図2及び図4に示すように、可動ディスク19には、その外周部全周に歯(以下、「外周歯」という)19Aが形成されている。
〔1−1−1−3−1−3.相対回転駆動機構〕
相対回転駆動機構30は、可動ディスク19を固定ディスク群10に対して相対回転駆動するもので、ここでは、図2に示すように、可動ディスク19の外周に形成された外周歯19Aと噛合する回転駆動歯34aを有する出力部材34を回転させて、固定ディスク群10に対して可動ディスク19を相対回転駆動する。
この相対回転駆動機構30は、モータ31と、モータ31の出力軸31aの回転運動を直線運動に切り替える運動変換機構32Aと、運動変換機構32Aで切り替えられた直線運動により軸方向に進退駆動(往復駆動)されるフォーク32と、フォーク32によって軸方向に進退駆動される入力部材33と、入力部材33の軸方向への進退に伴って入力部材33を連動回転させる連動回転機構34Aと、入力部材33と一体回転する出力部材34とを有している。
なお、モータ31としては、例えばステッピングモータを用いることができる。
また、入力部材33は、出力部材34に対して軸方向に可動であって且つ一体に回転するように取り付けられている。例えば、入力部材33と出力部材34とはスプライン嵌合により取り付けられている。
入力部材33は、第二固定ディスク12の外周部に設けられたヘリカルギヤ12Aと常時噛合するヘリカルギヤ33aと、フォーク32を挟み込んで摺動するフォーク溝33bとを有する。また、出力部材34は、可動ディスク19の外周歯19Aと常時噛合する出力歯34aを有する。
運動変換機構32Aは、出力軸31aに形成された雄ネジ部31bと、雄ネジ部31bに螺合する雌ネジ部32aを有しフォーク32が結合された支持体32bと、入力部材33の外周に形成されたフォーク溝33b内に係合してフォーク32の回転を規制するフォーク外周部32cとから構成される。出力軸31aが回転すると、雄ネジ部31bと雌ネジ部32aとの螺合によって、自身の回転を規制されたフォーク32が出力軸31aに対して軸方向に移動して、入力部材33を軸方向に駆動する。
連動回転機構34Aは、第二固定ディスク12の外周部に設けられたヘリカルギヤ12Aと、入力部材33の外周に形成されヘリカルギヤ12Aと噛合するヘリカルギヤ33aと、出力部材34の軸方向への移動を阻止する図示しない軸方向移動規制部材とを備え、入力部材33の軸方向移動に伴って、ヘリカルギヤ12A,33aの噛合を通じて第二固定ディスク12が入力部材33を回転駆動する。
この相対回転駆動機構30によれば、モータ31によりフォーク32が進退駆動されると、各固定ディスク群10に対して可動ディスク19の回転位相が変更される。このように、フォーク32の進退量に対応して、固定ディスク群10と可動ディスク19との回転位相差が調整される。
〔1−1−1−3−2.スプロケット移動機構及びロッド移動機構〕
次に、図2及び図3を参照して、スプロケット移動機構40A及びロッド移動機構40Bを説明する。
スプロケット移動機構40Aは、ピニオンスプロケット21,22,23のそれぞれに設けられた支持軸21a,22a,23aが内挿されるスプロケット用固定放射状溝11aが形成された第一固定ディスク11と、スプロケット用可動放射状溝19aが形成された可動ディスク19と、相対回転駆動機構30とから構成される。
また、ロッド移動機構40Bは、ロッド支持軸29aが内挿されるロッド用固定放射状溝11bが形成された第一固定ディスク11と、ロッド用可動放射状溝19bが形成された可動ディスク19と、相対回転駆動機構30とから構成される。
このように、それぞれの移動機構40A,40Bの構成は、各移動対象の支持軸が異なるだけで、その他の構成は同様である。
次に、図3(a)〜図3(c)を参照して、移動機構40A及び40Bによる移動を説明する。
図3(a)は、放射状溝11a,19aにおけるピニオンスプロケット21,22,23(図2等参照)の支持軸21a,22a,23aと放射状溝11b,19bにおけるロッド支持軸29aとが回転軸1の軸心C1から最も近い位置に位置するものを示す。この場合、相対回転駆動機構30(図2参照)により可動ディスク19の回転位相を第一固定ディスク11に対して変更すると、図3(b),図3(c)の順に、スプロケット用固定放射状溝11aとスプロケット用可動放射状溝19aの交差箇所と、ロッド用固定放射状溝11bとロッド用可動放射状溝19bとの交差位置とが、回転軸1の軸心C1から遠ざかる。すなわち、これらの交差箇所に支持軸21a,22a,23a,29aを支持されたピニオンスプロケット20及びガイドロッド29は、回転軸1の軸心C1から等距離を維持しながら径方向に同期して移動する。
一方、相対回転駆動機構30によって可動ディスク19の回転位相の変更方向を上記の方向と反対にすれば、ピニオンスプロケット20及びガイドロッド29は回転軸1の軸心C1に近づく。
なお、入力側の移動機構40A,40Bが接円半径を拡径させるときには、チェーン6の弛緩や緊張が生じないように出力側の移動機構40A,40Bが接円半径を縮径させる。
スプロケット移動機構40Aにより駆動されてピニオンスプロケット20が移動すると、ピニオンスプロケット20の相互間の距離が変わることにより、チェーン6に対してピニオンスプロケット20の位相ズレが発生してしまう。そこで、かかる位相ズレを解消するために、機械式自転駆動機構50が装備されている。
〔1−1−1−3−3.機械式自転駆動機構〕
次に、図2及び図4を参照して、機械式自転駆動機構50を説明する。ここでは、機械式自転駆動機構50がピニオンスプロケット20を挟んで対称に構成されるため、ここでは一側(図2の紙面上方側)の構成に着目して説明する。
機械式自転駆動機構50は、上記したように、自転ピニオンスプロケット22,23を回転させ、チェーン6に対するピニオンスプロケット20間の位相ズレを解消するように自転ピニオンスプロケット22,23をスプロケット移動機構40Aと連動して機械的に自転駆動するものである。
一方、機械式自転駆動機構50は、径方向移動時の固定ピニオンスプロケット21を自転させないためのものでもある。
まず、機械式自転駆動機構50について、固定ピニオンスプロケット21を自転させないための構成を説明する。
図4に示すように、固定ピニオンスプロケット21の支持軸21aは、第二固定ディスク12の第一案内溝12aに挿通されている。この固定ピニオンスプロケット21の支持軸21aには、案内部材59が一体的に結合されている。
案内部材59は、第一案内溝12aに内挿されて径方向に案内される。この案内部材59は、径方向の所定長さにわたって第一案内溝12aに接触するように対応する形状に形成されている。このため、固定ピニオンスプロケット21を自転させるような回転力が作用したときには、案内部材59は、第一案内溝12aに対して回転力を伝達するとともに、この回転力の反作用(抗力)で固定ピニオンスプロケット21を固定するものといえる。
すなわち、案内部材59は、第一案内溝12aにおいて径方向に摺動可能であって回り止め機能を有する形状に形成されている。なお、ここでいう所定長さとは、固定ピニオンスプロケット21を自転させるような回転力の抗力が確保可能な長さである。
図4では、第一案内溝12aが径方向に長手方向を有する矩形状に形成されており、この矩形状よりも小さい矩形状に形成された案内部材59を例示している。
また、第一案内溝12aの内壁に接する案内部材59の側壁、特に案内部材59の四隅に、ベアリングを装着すれば、案内部材59のよりスムーズな摺動が確保できる。
次に、機械式自転駆動機構50について、自転ピニオンスプロケット22,23を自転駆動するための構成について説明する。
機械式自転駆動機構50は、自転ピニオンスプロケット22,23の支持軸22a,23aのそれぞれと一体回転するように固設されたピニオン51,52と、ピニオン51,52のそれぞれに対応して噛合するように設けられたラック53,54と、を有する。
ピニオン51,52は、自転ピニオンスプロケット22,23の各支持軸22a,23aにおける軸方向端部にそれぞれ設けられている。かかるピニオン51,52にそれぞれ対応するラック53,54は、第二固定ディスク12に径方向へ向けて固設されている。
なお、以下の説明では、第一自転ピニオンスプロケット22のピニオン(遅角側ピニオン)を第一ピニオン51と呼び、この第一ピニオン51と噛合するラック(遅角側ラック)53を第一ラックと呼んで区別する。同様に、第二ピニオンスプロケット23のピニオン(進角側ピニオン)を第二ピニオン52と呼び、この第二ピニオン52と噛合するラック(進角側ラック)54を第二ラックと呼ぶ。
図4に示すように、第一ラック53は、第一ピニオン51に対して公転方向基準で進角側に配置される。逆に、第二ラック54は、第二ピニオン52に対して公転方向基準で遅角側に配置される。このため、ピニオン51,52が拡径方向又は縮径方向に移動すると、ピニオン51,52はこれに噛合するラック53,54によって互いに逆方向に回転するように配設されている。
すなわち、機械式自転駆動機構50は、スプロケット移動機構40Aにより移動するピニオンスプロケット20の径方向位置に応じて、自転ピニオンスプロケット22,23の自転にかかる回転位相を設定するものである。つまり、機械式自転駆動機構50によって、ピニオンスプロケット20の径方向位置と自転ピニオンスプロケット22,23の自転にかかる回転位相は一対一の対応関係となる。
このように、機械式自転駆動機構50は、固定ピニオンスプロケット21が自転しないように案内し、自転ピニオンスプロケット22,23が自転するように案内する。
なお、ピニオン51,52に対するラック53,54の位置関係が異なる点を除いては、第一ピニオン51と第二ピニオン52とは同様に構成され、また、第一ラック53と第二ラック54とは同様に構成されている。このため、以下の説明では、第一ピニオン51及び第一ラック53に着目して説明する。
第一ピニオン51の外径(ピッチ円直径)は、第一自転ピニオンスプロケット22の外径(ピッチ円直径)の略半分に形成されている。逆に言えば、第一自転ピニオンスプロケット22の外径は、第一ピニオン51の外径の略二倍に形成されている。その理由を以下に示す。
三個のピニオンスプロケット20が周方向に等間隔に配置されているため、第一ピニオンスプロケット22と固定ピニオンスプロケット20との間のチェーン長は、第一自転ピニオンスプロケット22が径方向に距離xだけ移動したときには「2πx/3」だけ変化する。
このため、第一自転ピニオンスプロケット22が、長さが「2πx/3」のチェーン6を第一自転ピニオンスプロケット22と固定ピニオンスプロケット21との間に送り込むか引き出すように回転(自転)すれば、チェーン長が適切に調整される。
したがって、チェーン長を適切に調整するには、第一ピニオン51が距離xだけ回転するときに、第一自転ピニオンスプロケット22は、その周長において2πx/3だけ回転することが必要になる。すなわち、第一自転ピニオンスプロケット22は第一ピニオン71に対して2π/3倍だけ回転することが必要となる。言い換えれば、第一自転ピニオンスプロケット22の外径と第一ピニオン71の外径との比が「2π/3:1」であることが必要となる。
したがって、第一自転ピニオンスプロケット22の外径は、第一ピニオン51の外径の「2π/3」倍(略二倍)に形成されている。
なお、図示省略するが、第一自転ピニオンスプロケット22には、その支持軸22aと自転用ピン22b,22cとの間に皿ばねが介装されている。これは、変速比の変更中に発生しうる第一自転ピニオンスプロケット22とチェーン6との噛合時のショック(衝撃)を吸収するためである。この皿ばねは、固定ピニオンスプロケット21及び第二自転ピニオンスプロケット23にもそれぞれ備えられている。
〔1−1−1−4.回転軸〕
次に、回転軸1について、図1を参照して説明する。なお、回転軸1の説明では、図中左側の出力側の複合スプロケット5に着目し、その構成を説明する。図1には、駆動機構30の駆動により拡縮される接円半径が、最大径のものを実線で示し、最小径のものを一点鎖線で示す。
回転軸1は、は中心部の軸1aとその外周の3本の軸1b〜1dが組み合わされて構成され、軸1a〜1dの隙間には、複数のピニオンスプロケット20を収容しうる収容空間2が形成されている。収容空間2には、接円半径が最小径となった際に複数のピニオンスプロケット20が最も深く収容される。この状態から複数のピニオンスプロケット20の径位置が外側(拡径側)に移動するに連れて、複数のピニオンスプロケット20の収容空間2への収容度合(収容深さ)が小さくなり、更に径位置が外側に移動すると複数のピニオンスプロケット20は収容空間2に収容されなくなる。
〔1−1−2.チェーン〕
次に、チェーン6について、図5を参照して説明する。
図5に示すように、ガイドロッド29にガイドされるチェーン6は、各ピニオンスプロケット21,22,23の歯車の列数(ここでは三列)に対応する本数が設けられている。ここでは、第一チェーン6A,第二チェーン6B及び第三チェーン6Cの三本が設けられている。
これらのチェーン6A,6B,6Cは、互いにピッチをずらして設けられている。ここでは、1/3ピッチだけ互いのピッチをずらしている。これに対応して、各チェーン6A,6B,6Cに噛合するピニオンスプロケット20の各歯20c車の位相もずらして配置さ設けられている。
なお、チェーン6A,6B,6Cは、配設ピッチ以外は同様に構成される。
また、無段変速機構の伝達トルクによっては二本又は四本以上のチェーン6が用いられるが、この場合には「1/チェーンの本数」ピッチだけ各チェーンのピッチをずらして設けられるのが好ましい。
ここで、サイレントチェーンを用いた各チェーン6A,6B,6Cについてさらに説明する。
各チェーン6A,6B,6Cは、それぞれ多数のリンクプレート(駆動リンク)61が動力伝達方向に直列に配列されたリンクプレート列61Sをが、リンクプレート61の厚み方向に複数並列されて、連結ピン62により連結されて構成される。
図7に示すように、リンクプレート61は、チェーン6A,6B,6Cの内周側に突出した歯部61aを動力伝達方向に離隔して一対形成され、一対の歯部61a,61aの形成個所に対応して一対のピン孔61b,61bが所定間隔で形成されている。また、一対の歯部61a,61aの相互間には、ピニオンスプロケット20の歯20cが係合する溝(リンク溝)61cが形成されている。
図5に示すように、このようなリンクプレート61は、互いに動力伝達方向に隣接しながら、これらの隣接するリンクプレート61,61の隣接したピン孔61b,61bが所定間隔となるように配置されて、リンクプレート列61Sが形成される。そして、厚み方向に隣接したリンクプレート列61Sは互いに歯部61aの位相を1歯分だけずらせて配置され、厚み方向に整列した各ピン孔61bを同時に貫通する連結ピン62により環状に連結される。
本実施形態では、各チェーン6A,6B,6Cの厚み方向の両端部のそれぞれに、多数の補助リンクプレート63が動力伝達方向に直列に配列された補助リンクプレート列63Sが装備されている。この補助リンクプレート列63Sは、補助リンクプレート63の内周側に形成されたガイド面63aによってガイドロッド29により案内されるものである。また、補助リンクプレート列63Sは、動力伝達方向に沿って一列に配設された補助リンクプレート63から構成される。
なお、補助リンクプレート63には、樹脂製のものを用いることができる。この場合、ポリアミドやポリエステルといった所謂エンジニアリングプラスチックなどのガイドロッド29との当接に耐えうる強度や剛性を有する樹脂を用いることが好ましい。
つまり、多数のガイドロッド29は、変速比を変更する際に、基本的にはピニオンスプロケット21,22,23と共に多角形をなすように、ピニオンスプロケット21,22,23と同様に径方向に移動して、複合スプロケット5の外径を変更する。各チェーン6A,6B,6Cは、この複合スプロケット5の外径の変更に追従して回動転動経路が変更され、ピニオンスプロケット21,22,23と噛み合う箇所の間では、ガイドロッド29に当接して回動転動経路を案内される。
このため、各チェーン6A,6B,6Cには、ガイドロッド29に当接する補助リンクプレート列63Sが装備されている。すなわち、補助リンクプレート列63Sを構成する各補助リンクプレート63の内周側に直線状又は円弧状に形成されたガイド面63aがガイドロッド29に当接される。
なお、補助リンクプレート63は、図6(a)に示すような一対のピン孔63b,63bのそれぞれに上記の連結ピン62が貫通されて、リンクプレート61と連結されている。
ここでは、ガイド面63aが円弧状に形成されたものに着目して説明する。このガイド面63aは、チェーン6A,6B,6Cの最大の巻き掛け半径(最大の接円半径に対応)に合わせて形成されている。
それぞれの補助リンクプレート63の内周側には、動力伝達方向に隣接する補助リンクプレート63の内周側と厚み方向に重合してガイド面63aを動力伝達方向に連続させる重合部64A,64Bが形成されている。これらの重合部64A,64Bは、補助リンクプレート63において隣接する他の補助リンクプレート63側(即ち、動力伝達方向の上流側及び下流側のそれぞれ)に形成される。
以下の説明では、補助リンクプレート63において、動力伝達方向の一方側に設けられた重合部を第一重合部64Aとし、動力伝達方向の他方側に設けられた重合部を第二重合部64Bとする。
第一重合部64Aは、隣接する他の補助リンクプレート63の第二重合部64Bと隣接しており、これらの第一重合部64Aと第二重合部64Bとが重合する。
図6(a)及び(b)に示すように、重合部64A,64Bのそれぞれは、対応する凹凸形状に形成されている。具体的には、重合部64A,64Bのそれぞれが、補助リンクプレート63が厚み方向に切り欠かれた切欠部(凹部)65bによって薄肉化された肉薄部(凸部)65aで形成されている。第一重合部64Aの切欠部65bが第二重合部64Bの肉薄部65aに対応するとともに、第二重合部64Bの切欠部65bが第一重合部64Aの肉薄部65aに対応して、対応する凹凸形状が構成されている。
ここでは、図6(b)に示すように、重合部64A,64Bそれぞれの肉薄部65aの厚みと切欠部65bの厚みとが等しい又は略等しく設けられている。ただし、肉薄部65及び切欠部65bそれぞれの厚みは、任意に設定することができる。
なお、重合部64A,64Bにかかる凹凸形状は、種々の対応した形状を採用することができる。例えば、図6(b)に二点鎖線で示すように、各重合部64A,64Bが動力伝達方向端部に向かうに連れて切欠部65bの厚み方向長さが大きくなるような凹凸形状を採用してもよい。
チェーン6A,6B,6Cの巻き掛け半径(接円半径)が小さくなるに連れて、これらの重合部65A,65Bの重合領域が大きくなる。なお、重合領域とは、動力伝達方向に直交する方向(ピン軸方向)から視たときの重合面積に対応する。
詳細には、チェーン6A,6B,6Cの巻き掛け半径(接円半径)が小さくなるに連れて、第一重合部65Aの切欠部65bに第二重合部65Bの肉薄部65aが進入するとともに、第二重合部65Bの切欠部65bに第一重合部65Aの肉薄部65aが進入して、両肉薄部65aの重合する領域が大きくなる。
〔1−1−3.事前歯合わせ機構〕
次に、本無段変速機構において特徴的な事前歯合わせ機構を説明する。
ピニオンスプロケット20は、回転軸1に対して公転するので、チェーン6と噛み合う状態とチェーン6から離隔する状態とを繰り返し、しかも、変速比を変更する際には、ピニオンスプロケット20の歯20cとチェーン6のリンク溝61cとの位相がずれるため、ピニオンスプロケット20がチェーン6との噛み合いを開始する際に、ピニオンスプロケット20の歯20cがチェーン6のリンク溝61cに対し位相ずれして歯飛びするおそれがある。
そこで、各複合スプロケット5には、ピニオンスプロケット20の歯20cとチェーン6のリンク溝61cとの噛み合いを開始する噛合点の付近に、噛合点の直前でピニオンスプロケット20の歯20cの位相合わせをする事前歯合わせ機構70が装備されている。
この事前歯合わせ機構70は、図1に示すように、回転軸1と一体回転(公転)するピニオンスプロケット20がチェーン6との噛み合いを開始する噛合点の直前で、ピニオンスプロケット20の歯をチェーンのリンク溝と位相合わせする。かかる事前歯合わせ機構は、チェーンと係合して位相同期して回転する第1同期回転部材71と、この第1同期回転部材71と位相同期して回転すると共に噛合点の直前でピニオンスプロケット20と係合して同ピニオンスプロケット20の位相を調整する第2同期回転部材72と、を備えている。
本実施形態の場合、図8に示すように、第1同期回転部材71は、チェーン6のリンク溝61cに常時噛み合う入力側同期用スプロケット73と、入力側同期用スプロケット73と一体回転する補助スプロケット74とを備えている。なお、ここでは、補助スプロケット74はチェーン6A〜6Cのうち一端側のチェーン6Aの外側に配置されており、入力側同期用スプロケット73は、このチェーン6Aのリンク溝61cに常時噛み合っている。
また、第2同期回転部材72は、ピニオンスプロケット20と一体回転する出力側同期用スプロケット76と、チェーン6のリンク溝61cを模した疑似リンク溝75cを外周に有し、疑似リンク溝75cが補助スプロケット74のいずれかの歯74aと常時噛み合うと共に、ピニオンスプロケット20が噛合点の直前に到達したときに、疑似リンク溝75cが出力側同期用スプロケット76のいずれかの歯76aと噛み合う同期用チェーン75とを備えている。同期用チェーン75及び出力側同期用スプロケット76は、補助スプロケット74と同様に一端側のチェーン6Aの外側に配置され、同期用チェーン75がチェーン6A〜6Cの何れにも干渉しないようになっている。
入力側同期用スプロケット73は、ピニオンスプロケット20とほぼ同様な歯73aを有し、スペース上の制約からピニオンスプロケット20よりも小径のものが用いられるが、滑らかな作動性を確保するには可能な限り径の大きいものが好ましい。
補助スプロケット74は、入力側同期用スプロケット73と同径のものが適用される。また、出力側同期用スプロケット76は、ピニオンスプロケット20と同径のものが適用される。これらの補助スプロケット74の歯74a及び出力側同期用スプロケット76の歯76aは互いに同規格の歯が適用される。
同期用チェーン75は、リンクプレート61を模した疑似リンク75aが連結ピン75bで連結されてなるチェーンであり、チェーン6のリンク溝61cを模した疑似リンク溝75cが外周に形成されている。補助スプロケット74及び出力側同期用スプロケット76の歯74a,76aの噛み込みを容易にするように、チェーン6のリンク溝61cに比べて疑似リンク溝75cは比較的大きく設定されている。
また、出力側同期用スプロケット76が同期用チェーン75と噛み合う状態では、ピニオンスプロケット20の歯20aがチェーン6のリンク溝61cに位相同期するように設定されている。なお、出力側同期用スプロケット76の歯76aはピニオンスプロケット20の歯20aよりも刃先が先鋭に形成され、半歯分の位相ずれがあっても疑似リンク溝75c内に出力側同期用スプロケット76の歯76aが容易に噛み込むようになっている。
これによって、入力側同期用スプロケット73は常時チェーン6Aと噛み合いながらチェーン6A〜6Cと同期して回転する。また、同期用チェーン75は補助スプロケット74を介して入力側同期用スプロケット73と同期して回転するため、チェーン6から離隔したピニオンスプロケット20が公転によりチェーン6との噛み合いを開始する噛合点の直前に来ると、出力側同期用スプロケット76が同期用チェーン75と噛み合い回転するようになって、ピニオンスプロケット20の歯20aがチェーン6のリンク溝61cに位相同期し、その直後に噛合点に達すると、ピニオンスプロケット20の歯20aがチェーン6のリンク溝61c内に円滑に噛み合うようになる。
〔1−1−4.チェーン追従移動機構〕
変速比の切替時にピニオンスプロケット20が径方向に移動して複合スプロケット5の径が変更されると、チェーン6の走行軌道が変化して上記の噛合点の位置も変化するため、図1に示すように、事前歯合わせ機構70の第1同期回転部材71及び第2同期回転部材72も、チェーン6の走行軌道の変化に追従するように移動させる必要がある。そこで、事前歯合わせ機構70には、チェーン追従移動機構80が付設されている。
本実施形態のチェーン追従移動機構80は、チェーン6の走行軌道の変化に追従して移動するように可動に支持された追従ガイド部材81と、この追従ガイド部材81をチェーン6の外周面に圧接させる弾性部材82と、追従ガイド部材81と一体に移動し第1同期回転部材71及び前記第2同期回転部材72の軸71a,72aを回転自在に支持する支持部材83とを有している。なお、支持部材83については、一方の事前歯合わせ機構70のもののみ示すが、他方の事前歯合わせ機構70にも同様に装備される。
追従ガイド部材81は、チェーン6の外周に摺接する摺接面81aを備え、背面を弾性部材82によってチェーン6の外周に向けて押圧され、摺接面81aは常にチェーン6の外周に圧接している。なお、弾性部材82には、コイルバネや板バネ等を適用でき、弾性部材82により追従ガイド部材81に加えられる弾性力は、チェーン6の軌道に悪影響を及ぼさないように且つ追従ガイド部材81がチェーン6の外周から離隔しないように設定されている。このため、追従ガイド部材81はチェーン6が外振れしてピニオンスプロケット20から離脱するのを抑える作用も加えている。
支持部材83は、追従ガイド部材81と結合され、第1同期回転部材71及び前記第2同期回転部材72の軸71a,72aを回転自在に支持する。この支持部材83は、ピニオンスプロケット20及びガイドロッド29の回転軌跡に沿って移動する追従プレート100に連結されており、図示しないガイドレールに沿って追従プレート100と共にチェーン6の走行軌道の変化に追従して移動するようになっている。上記の噛合点の位置は、チェーン6の走行軌道に対応して変化するので、図示しないガイドレールは、この噛合点位置の変化に沿って第1同期回転部材71及び前記第2同期回転部材72が移動するように配置及び形状が設定されている。
〔1−1−5.微小回転許容機構〕
ところで、事前歯合わせ機構70によって、ピニオンスプロケット20の歯20cの位相合わせをするのは、ピニオンスプロケット20の歯20cが位相合わせ方向即ち回転方向に可動でなくては実現させることができない。しかし、ピニオンスプロケット20の歯20cを回転方向に単に可動にしたのでは、ピニオンスプロケット20とチェーン6との間での動力伝達に支障を来す。
つまり、入力側の複合スプロケット5では、回転軸1の回転によりピニオンスプロケット20が回転軸1の軸心C1周りを公転し、この公転と共にチェーン6を回動させる。このとき、ピニオンスプロケット20からチェーン6に動力が伝達されるためには、ピニオンスプロケット20の自転が規制されていることが条件になる。公転時にピニオンスプロケット20が自由に自転してしまうと、ピニオンスプロケット20からチェーン6に動力は伝達されない。
そこで、ピニオンスプロケット20と、ピニオンスプロケット20を支持する軸20aとが別体に形成され、軸20aに対するピニオンスプロケット20の微小回転を許容すると共に、ピニオンスプロケット20を軸20aに対して回転方向の中立位置に付勢し微小回転を弾性的に規制する微小回転許容機構90が装備されている。
この微小回転許容機構90は、図8,図9に示すように、ピニオンスプロケット20の内周側及び出力側同期用スプロケット76の内周側に一体回転するように装備されたキー部材91と、ピニオンスプロケット20の軸20aの外周側に形成されてキー部材91が回転方向に遊びをもって係合するキー溝92と、キー部材91がキー溝92の回転方向の中立位置に位置するように、キー部材91を回転方向の正転と逆転方向との双方から付勢する付勢部材93とを備えている。
前述のように、各チェーン6A,6B,6Cと対応して3つのピニオンスプロケット20が直列に配置され、各チェーン6A,6B,6Cのピッチが互いに1/3ピッチだけずらされているので、直列に配置された各ピニオンスプロケット20の歯20cも、これに対応して1/3ピッチずつずらした状態で配置されている。また、出力側同期用スプロケット76も、これらの各ピニオンスプロケット20に対して所定の位相に合わせて、直列のピニオンスプロケット20の一端に配置される。
各ピニオンスプロケット20及び出力側同期用スプロケット76において軸20aが貫通する穴の周面には、キー部材91が隙間なく嵌合するキー溝20dが形成され、上記のように各ピニオンスプロケット20が1/3ピッチずつ位相をずらした状態で且つ出力側同期用スプロケット76も所定の位相状態で、各ピニオンスプロケット20及び出力側同期用スプロケット76のキー溝20dにキー部材91が同時に貫通している。これにより、出力側同期用スプロケット76及び各ピニオンスプロケット20は常に同様な位相関係で軸20aの軸心C2,C3,C4の周りに回転する。
軸20aの外周には、キー溝92が形成されるが、このキー溝92は周方向へのスパンがキー部材91の幅よりも大きく形成されるので、キー部材91がキー溝92内に装入されると、このキー部材91とキー溝92の内壁面との隙間d分だけ、キー部材91はキー溝92内で移動可能になっている。この隙間dは、ピニオンスプロケット20の歯20cの半歯分に対応して設定されている。したがって、キー部材91及びキー部材91を通じて一体回転する出力側同期用スプロケット76及び各ピニオンスプロケット20は、軸20aに対して歯20cの半歯分だけ回転可能になっている。
ただし、ピニオンスプロケット20の穴の周面と、軸20aの外周面との間には、キー部材91をキー溝92に対して周方向中立位置に付勢する付勢部材93が設けられ、外力が加わらない限りキー部材91はキー溝92内の周方向中立位置に保持される。この付勢部材93は、環状の一部が破断されたC型プレートを厚み方向に複数重ねたもので、破断部分の合口93aは互いに平行な平面状に形成される。この対向する合口93a,93の相互間にキー部材91が隙間なく嵌合する。
付勢部材93は、その合口93aのある破断箇所の逆側(180度反対側)に、半円筒状の凹所94bが形成され、ピニオンスプロケット20及び出力側同期用スプロケット76の穴の周面のキー溝20dの逆側(180度反対側)にも、半円筒状の凹所94aが形成されている。付勢部材93は、ピニオンスプロケット20及び出力側同期用スプロケット76の穴の周面と軸20aの外周面との間に形成される隙間に介装され、凹所94a,94bによって形成された円筒状空間内にはピン94が介装される。
付勢部材93は、ピン94と軸20aの外周面との間に挟着されて、外力が加わらなければ図9(a)に実線で示すようにキー部材91がキー溝92内の周方向中立位置に位置する状態を保持する。ピニオンスプロケット20を自転させるような外力が加われば、付勢部材93が弾性変形しながら、図9(a)に破線で示すようにピニオンスプロケット20の自転を許容し、この自転を許容と共に、キー部材91がキー溝92内の周方向中立位置となるような弾性力をピニオンスプロケット20に加える。もちろん、キー部材91がキー溝92内壁面の何れかに当接したらピニオンスプロケット20の更なる自転は完全に規制される。
〔1−2.作用及び効果〕
本発明の第1実施形態にかかる無段変速機構は、上述のように構成されるため、以下のような作用及び効果を得ることができる。
〔1−2−1.事前歯合わせ機構による作用及び効果〕
ピニオンスプロケット20が回転軸1に対して公転してチェーン6との噛み合いを開始する際に、事前歯合わせ機構70が噛合点の直前でピニオンスプロケット20の歯20cの位相合わせをする。つまり、ピニオンスプロケット20が噛合点の直前に達すると、出力側同期用スプロケット76が同期用チェーン75の疑似リンク溝75cと噛み合う。なお、出力側同期用スプロケット76の歯76aはピニオンスプロケット20の歯20aよりも刃先が先鋭に形成され、半歯分の位相ずれがあっても疑似リンク溝75c内に出力側同期用スプロケット76の歯76aが容易に噛みこむ。
同期用チェーン75は、第1同期回転部材71と常時噛み合って、チェーン6と位相が合致した状態で回転しているので、出力側同期用スプロケット76も同期用チェーン75と噛み合うとチェーン6と位相が同期する。ただし、この出力側同期用スプロケット76も同期用チェーン75と微小の位相差を含んで噛み合うので、その分だけ出力側同期用スプロケット76とチェーン6との間に位相差が生じるが、この位相差は僅かである。
したがって、出力側同期用スプロケット76と常に対応した位相関係(一定の位相差)を有するピニオンスプロケット20の歯20aも、チェーン6のリンク溝61cと僅かな位相差内に位相調整され、噛合点では、ピニオンスプロケット20の歯20aはチェーン6のリンク溝61cに確実に噛み合う。これにより、ピニオンスプロケット20の歯20aがチェーン6のリンクプレート61に当たって歯飛びするおそれが解消され、無段変速機構が円滑に作動する。
〔1−2−2.チェーン追従移動機構による作用及び効果〕
また、変速比の切替時にピニオンスプロケット20が径方向に移動して複合スプロケット5の径が変更されると、チェーン6の走行軌道が変化して上記の噛合点の位置も変化するが、チェーン追従移動機構80によって、事前歯合わせ機構70の第1同期回転部材71及び第2同期回転部材72も、チェーン6の走行軌道の変化に追従するように移動するので、変速比の切替時や切替後にも事前歯合わせを支障なく実施することができる。また、追従ガイド部材81はチェーン6が外振れしてピニオンスプロケット20から離脱するのを抑える作用もある。
〔1−2−3.微小回転許容機構による作用及び効果〕
また、事前歯合わせ機構70によってピニオンスプロケット20の歯20cの位相合わせをするには、ピニオンスプロケット20の歯20cが回転方向に可動でなくてはならないが、単に可動にしたのでは、ピニオンスプロケット20とチェーン6との間での動力伝達に支障を来すが、ピニオンスプロケット20の軸20aに対する微小回転を許容すると共に、ピニオンスプロケット20を軸20aに対して回転方向の中立位置に付勢し微小回転を弾性的に規制する微小回転許容機構90が装備されているので、ピニオンスプロケット20とチェーン6との間での動力伝達を実現しながら、ピニオンスプロケット20を回転方向に可動とし、歯合わせを実現することができる。
〔1−2−4.相対回転駆動機構,機械式自転駆動機構による作用及び効果〕
相対回転駆動機構30により固定ディスク群10に対する可動ディスク19の回転位相を変化させると、スプロケット移動機構40A及びロッド移動機構40Bが稼働して、回転軸1の軸心C1に対するピニオンスプロケット20及びガイドロッド29の径方向位置が等距離を維持されながら同期して変更される。これにより、接円半径が変更される。この場合、ピニオンスプロケットが自転しなければ、チェーンに対するピニオンスプロケットの位相ズレが発生してしまうが、かかる位相ズレは、機械式自転駆動機構50による自転ピニオンスプロケット22,23の自転により解消される。
固定ピニオンスプロケット21と第一自転ピニオンスプロケット22又は第二自転ピニオンスプロケット23にチェーン6が巻き掛けられている場合に、接円半径が拡径する際には、固定ピニオンスプロケット21と第一自転ピニオンスプロケット22又は第二自転ピニオンスプロケット23との間の最適なチェーン長が長くなり、機械式自転駆動機構50が設けられていなければチェーン長不足を招いてしまう。このとき、第一自転ピニオンスプロケット22又は第二自転ピニオンスプロケット23が機械式自転駆動機構50により自転されることにより、固定ピニオンスプロケット21と第一自転ピニオンスプロケット22又は第二自転ピニオンスプロケット23との間にはチェーン長の不足分だけが送り込まれる。
一方、固定ピニオンスプロケット21と第一自転ピニオンスプロケット22又は第二自転ピニオンスプロケット23にチェーン6が巻き掛けられている場合に、接円半径が縮径する際には、固定ピニオンスプロケット21と第一自転ピニオンスプロケット22又は第二自転ピニオンスプロケット23との間の最適なチェーン長が短くなり、機械式自転駆動機構50が設けられていなければチェーンの弛みを招いてしまう。このとき、第一自転ピニオンスプロケット22又は第二自転ピニオンスプロケット23が機械式自転駆動機構50により自転されることにより、固定ピニオンスプロケット21と第一自転ピニオンスプロケット22又は第二自転ピニオンスプロケット23との間からチェーン長の余り分(弛み分)だけが引き出される。
接円半径が拡縮径する際に自転する自転ピニオンスプロケット22,23は、機械式自転駆動機構50によって、ピニオンスプロケット20の径方向位置と自転ピニオンスプロケット22,23の自転にかかる回転位相は一対一の対応関係となっている。つまり、自転ピニオンスプロケット22,23は、接円半径の拡縮径による変速比の変更時に、チェーン6の過不足分を調整しながら動力伝達することができる。
このように、機械式自転駆動機構50が、スプロケット移動機構40Aによる複数のピニオンスプロケット20の径方向移動に伴って、チェーン6に対する複数のピニオンスプロケット20の位相ズレを解消するように自転ピニオンスプロケット22,23をスプロケット移動機構40と連動して自転駆動するため、複数のピニオンスプロケット20の径方向移動時、即ち、変速比の変更時に、ピニオンスプロケット間のチェーン長が適切に調整されることにより、動力伝達しながら変速比を変更することができる。
詳細には、複数のピニオンスプロケット20が径方向に移動するとき、即ち、変速比を変更するときには、ピニオン51,52がラック53,54と噛合しながら回転する。この回転によって自転ピニオンスプロケット22,23が自転駆動される。この自転駆動は、チェーン6に対する複数のピニオンスプロケット20間の位相ズレを解消するようにスプロケット移動機構40Aと連動してされるため、複数のピニオンスプロケット20間のチェーン長が適切に調整される。このとき、ラック53,54に対してピニオン51,52が噛合しているため、ピニオン51,52及びこれと一体に回転する自転ピニオンスプロケット22,23が空転しない。したがって、動力伝達しながら変速比を変更することができる。さらに、本無段変速機構が、エンジンを搭載した車両用の変速機に用いられる場合には、エンジンブレーキをきかせることもできる。
具体的な構造で言えば、第一自転ピニオンスプロケット22の第一ピニオン51に対して第一ラック53が進角側に配置され、また、第二自転ピニオンスプロケット23の第二ピニオン52に対して第二ラック54が遅角側に配置されるため、固定ピニオンスプロケット21と第一自転ピニオンスプロケット22又は第二自転ピニオンスプロケット23との間において、接円半径が拡径する際にチェーン長の不足分が送り込まれ、また、接円半径が縮径する際にチェーン長の余り分(弛み分)が引き出される。つまり、弛もうとするチェーン6は引き出され、チェーン6が突っ張ろうとするとチェーン6が送り込まれるため、チェーン長を適切に調整することができる。
複数のピニオンスプロケット20が等間隔に三個設けられているため、複数のピニオンスプロケット20が何れの回転位相に位置していても、チェーン6とピニオンスプロケット20の何れかとの動力伝達が途切れない。したがって、確実な動力伝達に寄与する。
さらに、自転ピニオンスプロケット22,23の外周がピニオン51,52の外周の略二倍に形成されているため、ピニオンスプロケット20間にチェーン6を過不足なく送り込み又は引き込んで、チェーン長を適切に調整することができる。
固定ピニオンスプロケット21の支持軸21aに一体的に結合された案内部材59は、径方向の所定長さにわたって第一案内溝12aに接触するように対応した形状に形成されているため、固定ピニオンスプロケット21を自転させるような回転力が作用したとしても、回転力により案内部材59が第一案内溝12aに接触して回転(自転)することがない。よって、固定ピニオンスプロケット21を自転しないようにすることができる。
固定ピニオンスプロケット21の自転が阻止されることにより、変速比が変更される際に、固定ピニオンスプロケット21と各自転ピニオンスプロケット22,23との間で過不足するチェーン長が各ピニオンスプロケット21,22,23の径方向移動距離に応じて一定となることにより、安定したチェーン長の調整に寄与する。
また、スプロケット移動機構40Aにおいて、相対回転駆動機構30により可動ディスク19が第一固定ディスク11に対して相対回転駆動されると、第一固定ディスク11のスプロケット用固定放射状溝11aと可動ディスク19のスプロケット用可動放射状溝19aとの交差箇所が径方向に移動し、この交差箇所の支持軸21a,22a,23aとこれに支持されるピニオンスプロケット21,22,23が径方向に移動する。このようにして、三つのピニオンスプロケット20を回転軸1の軸心C1から等距離を維持させながら径方向に同期させて移動させることができ、変速比を変更することができる。
〔1−3.事前歯合わせ機構の変形例〕
第1実施形態にかかる事前歯合わせ機構70は、同期用チェーン75がチェーン6の最大回転軌道の外に突出する配置としているが、図10に示すように、事前歯合わせ機構70の各部が何れも、チェーン6の最大回転軌道の外に突出しないように配置しても良い。つまり、同期用チェーン75を入力側同期用スプロケット73よりも各複合スプロケット5の軸心寄りに配置し、噛合点でのピニオンスプロケット20と入力側同期用スプロケット73との間に同期用チェーン75が位置するように配置する。これにより、無段変速機構をコンパクトに構成することができる。なお、この変形例では、事前歯合わせ機構70の各部の配置以外は第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
〔2.第2実施形態〕
以下、図11〜図14を参照して、第2実施形態にかかる無段変速機構について説明する。第2実施形態は、事前歯合わせ機構170が第1実施形態の事前歯合わせ機構70と異なっているが、他の構成は第1実施形態と同様であるので、同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
〔2−1.事前歯合わせ機構〕
図11に示すように、本実施形態の事前歯合わせ機構170は、第1実施形態の事前歯合わせ機構70と同様に、チェーン6と係合して位相同期して回転する第1同期回転部材171と、第1同期回転部材171と位相同期して回転すると共に噛合点直前でピニオンスプロケット20と係合して同ピニオンスプロケット20の位相を調整する第2同期回転部材172とを備えている。
第1同期回転部材171は、チェーン106の外側リンク溝161eに歯173aが常時噛み合う入力側同期用スプロケット173を備えている。
また、第2同期回転部材172は、ピニオンスプロケット20と一体回転する出力側同期用スプロケット176と、出力側同期用スプロケット176と噛み合う同期用チェーン175とを備えている。
同期用チェーン175は、入力側同期用スプロケット173の軸173bに一体回転するように装備され、チェーン6のリンクプレート61を模した疑似リンク175aが連結ピン175bで連結されてなるチェーンである。同期用チェーン175の外周には、リンク溝61cを模した疑似リンク溝175cが形成される。この疑似リンク溝175cは、ピニオンスプロケット20が噛合点の直前に到達したときに、この疑似リンク溝175cが出力側同期用スプロケット176の歯176aと噛み合う。
これらの同期用チェーン175及び出力側同期用スプロケット176は、一端側のチェーン6Aよりも軸方向外側に配置され、同期用チェーン175がチェーン106A〜106Cの何れにも干渉しないようになっている。
入力側同期用スプロケット173の歯173aを、チェーン106の外側に噛み合わせるため、図14(a)に示すように、チェーン106には、リンクプレート161の内周側に相互間にリンク溝161cを形成する一対の歯161aに加えて、リンクプレート161の外周側にも一対の歯161eが形成され、一対の歯161eの相互間が外側リンク溝161eになっている。このチェーン106も、図14(a),(b)に示すように、サイレントチェーンが適用され、第1実施形態のものと同様に、補助リンクプレート163が連結ピン162で連結されて装備される。
なお、外側リンク溝161eが形成されたリンクプレート161は、入力側同期用スプロケット173が係合するチェーン106の同スプロケット173の厚みに相当する部分にのみ配設すれば良く、その他のリンクプレートは内側のリンク溝のみを備えたもので良い。また、場合によっては、入力側同期用スプロケット173が係合するリンクプレートを外側リンク溝のみが形成されたものを用いても良い。
この実施形態では、図13に示すように、同期用チェーン175にサイレントチェーンが適用され同期用チェーン175は、比較的小径であるため、疑似リンク175aの数が少なくなり、疑似リンク175a同士の連結角度も大きくなる。このため、疑似リンク175aの疑似リンク溝175cを比較的広角に形成しても、疑似リンク溝175cの角度は十分に大きくなる。そこで、隣接する疑似リンク175aは疑似リンク溝175cを形成する歯を完全に重合させずにややずらせた角度にして、実質的な疑似リンク溝175cの開口角度を抑えている。ただし、これでも、実質的な疑似リンク溝175cの角度は十分に大きく、出力側同期用スプロケット176は疑似リンク溝175cに容易に噛み合うようになっている。
また、事前歯合わせ機構170は、各複合スプロケット5に設けられるが、入力側同期用スプロケット173及び同期用チェーン175の軸173bは、図示しない支持部材に支持され、この支持部材は、図示しない弾性力付与機構によって、図11に矢印で示すように、一点鎖線上を互いに接近する方向に付勢されている。この弾性力付与機構は、第1実施形態のチェーン追従移動機構と同様な作用をし、入力側同期用スプロケット173をチェーン106の外周に押し付けて、ピニオンスプロケット20の径方向への移動に伴うチェーン106の走行軌道の変化に追従して入力側同期用スプロケット173及び同期用チェーン175の軸173bを移動させる。
また、図12に示すように、本実施形態でも、第1実施形態と同様の微小回転許容機構90(図9参照)が装備され、ピニオンスプロケット20の軸20aに対する微小回転を許容すると共に、ピニオンスプロケット20を軸20aに対して回転方向の中立位置に付勢している。
〔2−2.事前歯合わせ機構による作用及び効果〕
本実施形態の事前歯合わせ機構170によっても、ピニオンスプロケット20の歯20aが、チェーン106のリンク溝161cと僅かな位相差内に位相調整され、噛合点では、ピニオンスプロケット20の歯20aはチェーン106のリンク溝161cに確実に噛み合う。これにより、ピニオンスプロケット20の歯20aがチェーン106のリンク161に当たって歯飛びするおそれが解消され、無段変速機構が円滑に作動する。
また、チェーン追従移動機構に相当する弾性力付与機構が、事前歯合わせ機構170の第1同期回転部材171及び第2同期回転部材172を、チェーン106の走行軌道の変化に追従するように移動するので、変速比の切替時や切替後にも事前歯合わせを支障なく実施することができる。また、弾性力付与機構はチェーン106が外振れしてピニオンスプロケット20から離脱するのを抑える作用もある。
〔3.その他〕
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。上述した一実施形態の各構成は、必要に応じて取捨選択することができ、適宜組み合わせてもよい。
上述の各実施形態では、複数のピニオンスプロケット20側から第一固定ディスク11,可動ディスク19,第二固定ディスク12の順に配置されたもの例示したが、ディスクの配置はこれに限られず、複数のピニオンスプロケット20側から可動ディスク19,第一固定ディスク11,第二固定ディスク12としてもよい。さらには、第一固定ディスク11と第二固定ディスク12とを一体に構成してもよい。すなわち、第一固定ディスク11が第二固定ディスク12と兼用されてもよい。
この場合、兼用される固定ディスクには、スプロケット用固定放射状溝11a及びロッド用固定放射状溝11bが形成されるとともに、ラック81,82が固設される。このとき、スプロケット用固定放射状溝11aは、スプロケットピニオン21,22,23の支持軸21a,22a,23aを案内する案内溝としても機能する。かかる構成によれば、第一固定ディスク11と第二固定ディスク12とをそれぞれ設けるのに比較して、簡素な構成とすることができる。延いては、コストを抑制することができ、重量の軽減を図ることができる。
また、自転しない固定ピニオンスプロケット21と自転する自転ピニオンスプロケット22,23を示したが、ピニオンスプロケット21,22,23の何れもが自転可能に構成されていてもよい。この場合、少なくとも何れか隣接するピニオンスプロケット対の自転方向が互いに逆方向に設定される。
また、三個のピニオンスプロケット20を示したが、ピニオンスプロケット20の個数はこれに限らず、四つ以上であってもよいし、常時、何れかのピニオンスプロケット20がチェーン6に噛合うのであれば、その個数は二つでもよい。何れの場合も、隣り合うピニオンスプロケット20の少なくとも何れかは自転するピニオンスプロケット20として構成され、また、ピニオンスプロケット20の個数に応じた放射状溝11a,19aが設けられる。
また、ヘリカルギヤ12Aは、第二固定ディスク12の外周部に限らず、少なくとも固定ディスク群10の何れかに設けられていればよい。この場合、ヘリカルギヤ12Aと噛合する駆動機構30のヘリカルギヤ33aの箇所が変更される。
なお、上記の各実施形態では、チェーン6A,6B,6Cに所謂サイレントチェーンを用いたものを示したが、これに替えて、ローラチェーンやブッシュチェーンなどその他の形式のチェーンを用いながら、同様の機能を有するように構成しても良い。
また、事前歯合わせ機構は、チェーンと係合して位相同期して回転する第1同期回転部材と、第1同期回転部材と位相同期して回転すると共に噛合点の直前でピニオンスプロケットと係合してピニオンスプロケットの位相を調整する第2同期回転部材と、を備えていればよく、上記の各実施形態のものに限定されない。
チェーン追従移動機構について、ピニオンスプロケットの径方向への移動に伴うチェーンの走行軌道の変化に追従して第1同期回転部材及び第2同期回転部材の軸を移動させるものであれば、その構成は上記の各実施形態のものに限定されない。
さらに、微小回転許容機構も、ピニオンスプロケットを支持する軸に対するピニオンスプロケットの微小回転を許容し、且つ、ピニオンスプロケットをピニオンスプロケット軸に対して回転方向の中立位置に付勢し微小回転を弾性的に規制するものであればよく、その構成は上記の各実施形態のものに限定されない。
1 回転軸
2 収容空間
5 複合スプロケット
6,6A〜6C,106,106A〜106C チェーン
10 固定ディスク群
11 第一固定ディスク(径方向移動用固定ディスク)
11a スプロケット用固定放射状溝
11b ロッド用固定放射状溝
12 第二固定ディスク(自転用固定ディスク)
12a 第一案内溝(固定ピニオンスプロケット案内溝)
12b 第二案内溝
12c 第三案内溝
12A ヘリカルギヤ
19 可動ディスク(径方向移動用可動ディスク)
19a スプロケット用可動放射状溝
19b ロッド用可動放射状溝
19A 外周歯
20 ピニオンスプロケット
21 固定ピニオンスプロケット
21a 支持軸
22 第一自転ピニオンスプロケット(進角側自転ピニオンスプロケット)
22a 支持軸
23 第二自転ピニオンスプロケット(遅角側自転ピニオンスプロケット)
23a 支持軸
29 ガイドロッド
29a ロッド支持軸
29b ガイド部材
30 相対回転駆動機構
31 モータ
31a 出力軸
31b 雄ネジ部
32 フォーク
32a 雌ネジ部
32b 支持体
32c フォーク外周部
32A 運動変換機構
33 入力部材
33a ヘリカルギヤ
33b フォーク溝
34A 連動回転機構
34 出力部材
34a 回転駆動歯
40A スプロケット移動機構
40B ロッド移動機構
50 機械式自転駆動機構
51 第一ピニオン(進角側ピニオン)
52 第二ピニオン(遅角側ピニオン)
53 第一ラック(進角側ラック)
54 第二ラック(遅角側ラック)
59 案内部材
61 リンクプレート(駆動リンク)
61S リンクプレート列
61a リンクプレート61の歯部
61b ピン穴
61c リンク溝
62 連結ピン
63 補助リンク
63S 補助リンク列
63a ガイド面
63b ピン穴
64A,64B 重合部
65a 肉薄部
65b 切欠部
70,170 事前歯合わせ機構
71,171 第1同期回転部材
71a,171a 第1同期回転部材71,171の軸
72,172 第2同期回転部材
72a,172a 第2同期回転部材72,172の軸
73,173 入力側同期用スプロケット
73a,173a 前記入力側同期用スプロケット73,173の歯
173b 入力側同期用スプロケット173の軸
74 補助スプロケット
74a 補助スプロケット74の歯
75 同期用チェーン
75a,175a 疑似リンク
75b,175a 連結ピン
75c,175c 疑似リンク溝
76,176 出力側同期用スプロケット
76a,176a 出力側同期用スプロケット76,176の歯
80 チェーン追従移動機構
81 追従ガイド部材
82 弾性部材
83 支持部材
90 微小回転許容機構
91 キー部材
92 キー溝
93 付勢部材
1,C2,C3,C4 軸心

Claims (13)

  1. 動力が入力又は出力される回転軸と、前記回転軸に対して径方向に可動に且つ一体に公転するように支持された複数のピニオンスプロケットと、前記複数のピニオンスプロケットを前記回転軸の軸心から等距離を維持させながら径方向に同期させて移動させるスプロケット移動機構とを有する複合スプロケットを二組と、前記二組の複合スプロケットに巻き掛けられたチェーンとを備え、前記複数のピニオンスプロケットの何れも囲み且つ前記複数のピニオンスプロケットの何れにも接する円の半径である接円半径の変更によって変速比を変更する無段変速機構であって、
    前記ピニオンスプロケットが前記公転によって前記チェーンとの噛み合いを開始する噛合点に達する直前で、前記ピニオンスプロケットの歯を前記チェーンの内周のリンク溝と位相合わせする事前歯合わせ機構を備え、
    前記事前歯合わせ機構は、前記チェーンと係合して位相同期して回転する第1同期回転部材と、前記第1同期回転部材と位相同期して回転すると共に前記噛合点に達する直前で前記ピニオンスプロケットと係合して同ピニオンスプロケットの位相を調整する第2同期回転部材と、を備えている
    ことを特徴とする、無段変速機構。
  2. 前記第1同期回転部材は、前記チェーンの前記リンク溝に歯が常時噛み合う入力側同期用スプロケットと、前記入力側同期用スプロケットと一体回転する補助スプロケットとを備え、
    前記第2同期回転部材は、前記ピニオンスプロケットと一体回転する出力側同期用スプロケットと、前記チェーンの前記リンク溝を模した疑似リンク溝を外周に有し、前記疑似リンク溝が前記補助スプロケットの歯と常時噛み合うと共に前記ピニオンスプロケットが前記噛合点の直前に到達したときに、前記疑似リンク溝が前記出力側同期用スプロケットの歯と噛み合う同期用チェーンとを備えている
    ことを特徴とする、請求項1記載の無段変速機構。
  3. 前記第1同期回転部材は、前記チェーンの前記リンク溝に歯が常時噛み合う入力側同期用スプロケットを備え
    前記第2同期回転部材は、前記ピニオンスプロケットと一体回転する出力側同期用スプロケットと、前記入力側同期用スプロケットの軸に一体回転するように装備され、前記チェーンの前記リンク溝を模した疑似リンク溝を外周に有し、前記ピニオンスプロケットが前記噛合点の直前に到達したときに、前記疑似リンク溝が前記出力側同期用スプロケットの歯と噛み合う同期用チェーンとを備えている
    ことを特徴とする、請求項1記載の無段変速機構。
  4. 前記同期用チェーンは、外周に駆動ギヤ部分を有するサイレントチェーンである
    ことを特徴とする、請求項2又は3記載の無段変速機構。
  5. 前記疑似リンク溝の溝長は前記チェーンの前記リンクの溝長よりも大きく形成されている
    ことを特徴とする、請求項2〜4の何れか1項に記載の無段変速機構。
  6. 前記ピニオンスプロケットの径方向への移動に伴う前記チェーンの走行軌道の変化に追従して前記第1同期回転部材及び前記第2同期回転部材の軸を移動させるチェーン追従移動機構を装備している
    ことを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載の無段変速機構。
  7. 前記チェーン追従移動機構は、
    前記チェーンの走行軌道の変化に追従して移動するように可動に支持された追従ガイド部材と、
    前記追従ガイド部材を前記チェーンの外周面に圧接させる弾性部材と、
    前記追従ガイド部材と一体に移動し前記第1同期回転部材及び前記第2同期回転部材の軸を回転自在に支持する支持部材とを有している
    ことを特徴とする、請求項6記載の無段変速機構。
  8. 前記ピニオンスプロケットを支持するピニオンスプロケット軸に対する前記ピニオンスプロケットの微小回転を許容すると共に、前記ピニオンスプロケットを前記ピニオンスプロケット軸に対して回転方向の中立位置に付勢し前記微小回転を弾性的に規制する微小回転許容機構が装備されている
    ことを特徴とする、請求項1〜7の何れか1項に記載の無段変速機構。
  9. 前記ピニオンスプロケットに許容される微小回転量は、前記ピニオンスプロケットの半歯分である
    ことを特徴とする、請求項8記載の無段変速機構。
  10. 前記微小回転許容機構は、
    前記ピニオンスプロケットの内周側及び前記出力側同期用スプロケットの内周側に一体回転するように装備されたキー部材と、
    前記ピニオンスプロケット軸の外周側に形成され前記キー部材が前記回転方向に遊びをもって係合するキー溝と、
    前記キー部材が前記キー溝の前記回転方向の中立位置に位置するように、前記キー部材を前記回転方向の正転と逆転方向との双方から付勢する付勢部材と、を備えている
    ことを特徴とする、請求項2又は3を引用する請求項8又は9記載の無段変速機構。
  11. 前記複数のピニオンスプロケットの少なくとも何れかのピニオンスプロケットを自転駆動する機械式自転駆動機構を備え、
    前記機械式自転駆動機構は、前記スプロケット移動機構による前記複数のピニオンスプロケットの径方向移動に伴って、前記チェーンに対する前記複数のピニオンスプロケットの位相ズレを解消するように前記何れかのピニオンスプロケットを前記スプロケット移動機構と連動して機械的に自転駆動する
    ことを特徴とする、請求項1〜10の何れか1項に記載の無段変速機構。
  12. 前記複数のピニオンスプロケットは、自転しない一つの固定ピニオンスプロケットと自転可能なその他の自転ピニオンスプロケットとを有し、
    前記機械式自転駆動機構は、前記固定ピニオンスプロケットが自転しないように案内し、前記自転ピニオンスプロケットが自転するように案内する
    ことを特徴とする、請求項11記載の無段変速機構。
  13. 前記複数のピニオンスプロケットは、等間隔に少なくとも三個設けられていることを特徴とする、請求項1〜12の何れか1項に記載の無段変速機構。
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