JP6515968B2 - 空調室内機 - Google Patents

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Description

本発明は、空調室内機に関する。
従来、風向調整羽根に結露が発生することを防止するため、吹出空気の温度に応じて風向調整羽根の角度を調整する方法が採られている。例えば、特許文献1(特開2009−97755号公報)に開示されている空調室内機では、吹出口を通過する空気温度を検出し、風向調整羽根に結露を生じると判断した場合には所定の吹出方向に対して小さな角度である露付き安全角度をなす位置に回動し、結露を生じないと判断した場合には所定の吹出方向に対して露付き安全角度よりも大きな角度をなす位置に回動している。
そのため、上記のような空調室内機では、吹出空気温度が低いときは風向調整羽根による吹出空気の風向調整範囲が狭められていた。
そこで、本発明の課題は、吹出空気温度が低いときでも、風向調整羽根による吹出空気の風向調整範囲を従来よりも広くすることができる空調室内機を提供することにある。
本発明の第1観点に係る空調室内機は、吹出空気の風向を上下方向に調整する風向調整羽根を備える壁掛け式の空調室内機であって、風向調整羽根が、長手方向の端部側に吹出空気の一部を厚み方向に通過させる少なくとも1つの貫通穴を有している。貫通穴は、風向調整羽根の先端に近づくほど下方に進むように傾斜している。
冷房運転時、風向調整羽根の下面に沿って流れている吹出空気は、下面の湾曲部あたりで剥離するので、そこに室内の暖気が進入し暖気と冷たい吹出空気とが合流する地点に結露が生じる。特に、風向調整羽根の端部側に結露が生じやすい。
しかし、この空調室内機では、吹出空気の一部を厚み方向に通過させる貫通穴を設けることによって、貫通穴を通過した空気は下面の下流側に向かって流れるので、上流側から下面に沿って流れてくる吹出空気を引き寄せ、下面から剥離することを防止する。その結果、暖気が進入せず、結露の発生が抑制される。
本発明の第2観点に係る空調室内機は、第1観点に係る空調室内機であって、貫通穴が風向調整羽根の長手方向に平行な長穴である。
この空調室内機では、貫通穴を、風向調整羽根の長手方向に平行な長穴とすることによって、その分、貫通穴を通過して下面の下流側に向かって流れる空気が増加するので、上流側から下面に沿って流れてくる吹出空気を引き寄せる効果が増し、さらに下面から剥離し難くなる。
本発明の第3観点に係る空調室内機は、第1観点又は第2観点に係る空調室内機であって、冷房運転時、貫通穴が吹出空気の一部を前方下向きに導く。
この空調室内機では、貫通穴を介して吹出空気の一部が前方下向きに導かれることによって、貫通穴を通過した空気が下面の下流側に向かって流れ易くなる。
本発明の第観点に係る空調室内機は、第1観点から第観点のいずれか1つに係る空調室内機であって、風向調整羽根のうち、吹出空気の流れ方向の中央より下流側に位置する。
本発明の第観点に係る空調室内機は、第1観点から第観点のいずれか1つに係る空調室内機であって、垂直羽根をさらに備えている。垂直羽根は、鉛直面を左右に振ることによって、風向調整羽根に向かって流れる空気の風向を左右方向に調整する。垂直羽根が最大振れ位置にあるときにおいて、振れ方向と反対方向の最も端に在る垂直羽根の鉛直面を含む仮想平面と風向調整羽根とが交差する領域から、当該領域に最も近い風向調整羽根の端までの区間に貫通穴の少なくとも一部が掛かっている。
例えば、垂直羽根が最大左振れ位置にあるとき、最も右側にある垂直羽根の鉛直面を含む仮想平面と風向調整羽根との交差領域より右側の区間は空気の流れに勢いがなく、風向調整羽根の下面から剥離し易く、室内の暖気の進入が容易であり、結露が生じ易い。
それゆえ、この空調室内機では、当該区間に貫通穴を設けることによって、貫通穴を通過した空気が下面の下流側に向かって流れるので、上流側から下面に沿って流れてくる吹出空気を引き寄せ、下面から剥離することを防止する。その結果、暖気が進入せず、結露の発生が抑制される。
本発明の第観点に係る空調室内機は、第1観点から第観点のいずれか1項に係る空調室内機であって、調和された空気を吹出口まで導くスクロールをさらに備えている。調和された空気の温度(以下、吹出温度という。)が5℃〜15℃の範囲内のとき、スクロールの終端部の接線と風向調整羽根の前方端と後方端とを結ぶ仮想線との角度が0〜35°の範囲内である。
冷房運転時、スクロール方向に対する風向調整羽根の角度は、風向調整羽根に沿った吹出空気が剥離し難くい角度に維持することによって、風向調整羽根への結露発生を抑制しているが、風向調整羽根の姿勢を客先要望により剥離するような角度まで傾けるときは、結露を発生させない、又は発生しても保水できるようにするため、吹出温度を上げなければならなかった。
しかし、この空調室内機では、風向調整羽根の長手方向の端部側に吹出空気の一部を厚み方向に通過させる貫通穴を設けたことによって、冷房運転時に吹出温度を下げても、角度を0〜35°の範囲で傾けることができるので、使い勝手がよい。
本発明の第1観点に係る空調室内機では、吹出空気の一部を厚み方向に通過させる貫通穴を設けることによって、貫通穴を通過した空気は下面の下流側に向かって流れるので、上流側から下面に沿って流れてくる吹出空気を引き寄せ、下面から剥離することを防止する。その結果、暖気が進入せず、結露の発生が抑制される。
本発明の第2観点に係る空調室内機では、貫通穴を、風向調整羽根の長手方向に平行な長穴とすることによって、その分、貫通穴を通過して下面の下流側に向かって流れる空気が増加するので、上流側から下面に沿って流れてくる吹出空気を引き寄せる効果が増し、さらに下面から剥離し難くなる。
本発明の第3観点、又は観点に係る空調室内機では、貫通穴を介して吹出空気の一部が前方下向きに導かれることによって、貫通穴を通過した空気が下面の下流側に向かって流れ易くなる。
本発明の第観点に係る空調室内機では、垂直羽根が最大左振れ位置にあるとき、最も右側にある垂直羽根の鉛直面を含む仮想平面と風向調整羽根との交差領域より右側の区間に貫通穴を設けることによって、貫通穴を通過した空気が下面の下流側に向かって流れるので、上流側から下面に沿って流れてくる吹出空気を引き寄せ、下面から剥離することを防止する。その結果、暖気が進入せず、結露の発生が抑制される。
本発明の第観点に係る空調室内機では、風向調整羽根の長手方向の端部側に吹出空気の一部を厚み方向に通過させる貫通穴を設けたことによって、冷房運転時に吹出温度を15℃以下に下げても、角度を0〜35°の範囲で傾けることができるので、使い勝手がよい。
運転停止時の空調室内機の斜視図。 運転準備中の空調室内機の斜視図。 運転停止時の空調室内機の側面図。 運転準備中の空調室内機の側面図。 運転時の空調室内機の斜視図。 運転停止時の空調室内機の縦断面図。 運転準備中の空調室内機の縦断面図。 運転時の空調室内機の縦断面図。 パネル搬送機構の縦断面図。 第1パネルの裏面側の斜視図。 第1パネルと可動リンクとを繋ぐロック機構の拡大斜視図。 図9Aのロック機構の解除状態を示す拡大斜視図。 第1パネルがメンテナンス位置にあるときの空調室内機の部分斜視図、 支持部材の動作前のパネル支持機構の斜視図。 支持部材の動作後のパネル支持機構の斜視図。 支持部材の動作前のパネル支持機構の正面図。 運転停止時の第1風向調整羽根の斜視図。 運転時の第1風向調整羽根の斜視図。 図13AのX−X線における断面図。 第1凹部の拡大断面図。 第2凹部の拡大斜視図。 第2風向調整羽根の傾斜角度を示すための空調室内機の縦断面図。 第2風向調整羽根の斜視図。 図16AのY−Y線における断面図。 変形例に係る空調室内機であって、運転停止時の当該空調室内機の縦断面図。 変形例に係る空調室内機であって、運転開始前におけるパネル搬送機構が動作途中の空調室内機の縦断面図。 変形例に係る空調室内機であって、運転時の空調室内機の縦断面図。
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
(1)空調室内機1の概要
図1Aは、運転停止時の空調室内機1の斜視図である。図1Bは、運転準備中の空調室内機1の斜視図である。また、 図2Aは、運転停止時の空調室内機1の側面図である。図2Bは、運転準備中の空調室内機1の側面図である。さらに、図3は、運転時の空調室内機1の斜視図である。図1A、図1B、図2A、図2B及び図3において、空調室内機1は壁掛けタイプであり、室内機本体10と、室内機本体10の前面を覆う前面パネル11とを備えている。
図1A及び図2Aに示すように、空調室内機1が停止しているときは、吹出口5の前面は第1パネル111によって覆い隠され、吹出口5の下面は第1風向調整羽根30で覆い隠されているので、吹出口5を通して室内機本体10内部が人目に触れることがなく、意匠性がよい。
また、図1B及び図2Bに示すように、空調室内機1では、運転開示前に前面パネル11の第1パネル111が第2パネル112の正面となる前方上方へ移動し、吹出口5の前方を開放する。その後、図3に示すように、室内機本体10の下部に位置する第1風向調整羽根30が時計方向に180°回動し、吹出口5の下部を開放する。
(2)室内機本体10
図4は、運転停止時の空調室内機1の縦断面図である。また、図5は、運転準備中の空調室内機1の縦断面図である。図6は、運転時の空調室内機1の縦断面図である。図4、図5及び図6において、室内機本体10は、外郭を形成する本体ケーシング100、調和空気の吹出方向を調整する第1風向調整羽根30、第2風向調整羽根40及び垂直風向調整羽根50を備えている。また、本体ケーシング100の内部には、室内熱交換器12、ファン13、及びフレーム16が収容されている。
(2−1)本体ケーシング100
本体ケーシング100は、前面部101と上面部102と下面部103とによって略長方形状の立体空間を形成し、その立体空間内に室内熱交換器12、ファン13、フレーム16、及びフィルタ9が収まっている。また、上面部102には、複数のスリットから成る上吸込口4A(図10参照)が設けられている。さらに、前面部101の下部から下面部103の前部にかけて、吹出口5が設けられている。そして、前面部101のうち吹出口5より上側には、前吸込口4Bが設けられている。
室内熱交換器12及びファン13は、フレーム16に取り付けられている。室内熱交換器12は、通過する空気との間で熱交換を行う。ファン13は、上吸込口4A及び前吸込口4Bから取り込んだ空気を、室内熱交換器12に当てて通過させた後、吹出口5に吹き出す。吹出口5には、吹き出される空気を上下方向に案内する第1風向調整羽根30及び第2風向調整羽根40が設けられている。第1風向調整羽根30は、モータ(図示せず)によって駆動し、空気の吹出方向を変更するだけでなく、下面部103側の吹出口5を開閉することもできる。
また、第1風向調整羽根30及び第2風向調整羽根40の上流側には、空気を左右方向に案内する垂直風向調整羽根50が設けられている。
本体ケーシング100の前面部101及び上面部102と、室内熱交換器12との間にはフィルタ9が配置されている。フィルタ9は、室内熱交換器12に向って流入してくる空気に含まれる塵埃を除去する。
室内空気は、ファン13の稼動によって上吸込口4A及び前吸込口4B、フィルタ9、室内熱交換器12を経てファン13に吸い込まれ、ファン13から吹出流路18を経て吹出口5から吹き出される。
(2−2)第1風向調整羽根30
第1風向調整羽根30は、運転停止時は、吹出口5の下面を覆う位置で静止している。その位置を初期位置SP(図4及び図5参照)という。この初期位置SPにおいて、第1風向調整羽根30の下側となる面は、運転停止中は常に人目に触れるので、見栄えの良い面に仕上げられており、ここでは化粧面30aという。
また、初期位置SPにおいて、吹出口5の内側となる面は、運転時には下向きとなって吹出空気が沿って流れるので、ここではコアンダ面30bという。
第1風向調整羽根30は、モータ(図示せず)によって回動する。初期位置SPにおける第1風向調整羽根30の前端から吹出口5の高さ方向寸法の半分程度上方に、第1風向調整羽根30の回動軸(図示せず)が位置している。
それゆえ、第1風向調整羽根30が時計方向に180°回転したときは、図6に示すように、第1風向調整羽根30は化粧面30aを上方に向け、且つコアンダ面30bを下方に向けた状態で、吹出口5の上部から前方に突出する。
なお、第1風向調整羽根30の詳細については、後半の「(5)第1風向調整羽根30の詳細説明」の段で説明する。
(2−3)第2風向調整羽根40
第2風向調整羽根40は、吹出口5よりも上流側で、運転停止時における第1風向調整羽根30の初期位置SPよりも上方に位置している。例えば、冷房運転時では、図6に示すように、第2風向調整羽根40は、断面形状が円弧状であり凸側面40aを下方、凹側面40bを上方に向けている。なお、暖房運転において、気流を下方へ向ける垂直気流を生成するときには、第2風向調整羽根40は凸側面40aを上方、凹側面40bを下方に向ける姿勢を採る場合がある。
第2風向調整羽根40は、モータ(図示せず)によって回動する。第2風向調整羽根40の回動軸(図示せず)は、凹側面40bの上方に位置している。
なお、第2風向調整羽根40の詳細については、後半の「(6)第2風向調整羽根40の詳細説明」の段で説明する。
(2−4)垂直風向調整羽根50
図4、図5及び図6に示すように、垂直風向調整羽根50は、複数の羽根片501と、複数の羽根片501を連結する連結棒503を有している。また、垂直風向調整羽根50は、吹出流路18において、第1風向調整羽根30及び第2風向調整羽根40よりもファン13に近い位置に配置されている。
複数枚の羽根片501は、連結棒503が吹出口5の長手方向に沿って水平往復移動することによって、その長手方向に対して垂直な状態を中心に左右に揺動する。なお、連結棒503は、モータ(図示せず)によって水平往復移動する。
(3)前面パネル11
図1A、図2A及び図4に示すように、前面パネル11は、室内機本体10の前面を覆う部材である。前面パネル11は、上下に分割されて、下側に位置する第1パネル111と、第1パネル111よりも上側に位置する第2パネル112とを含んでいる。
第1パネル111及び第2パネル112は、共に空調室内機1の意匠面を構成しており、第1パネル111及び第2パネル112は同様の模様、色彩又はそれらの結合で構成されている。
空調室内機1では、運転を停止しているときの第1パネル111の位置と、運転をしているときの第1パネル111の位置とは異なる。
先ず、空調室内機1が運転を停止しているとき、第1パネル111及び第2パネル112の表面は、同一鉛直面上に上下に並んでおり、第1パネル111及び第2パネル112の表面が一体化されたような美感を生じさせるので、見栄えが良い。第1パネル111は、正面視で第2パネル112よりも縦に長く設定されている。第2パネル112の縦長さは、吹出口5の正面の高さ寸法と同寸法に設定されている。
また、第1パネル111の下端及び吹出口5の下端の高さ位置は、正面視で一致していると感じさせるほどに近接している。同様に、第2パネル112の上端及び本体ケーシング100の前面部101の上端の高さ位置は、正面視で一致していると感じさせるほどに近接している。
次に、空調室内機1が運転を開始するときは、パネル搬送機構21が第1パネル111に前進と上昇とを同時に行わせながら、第1パネル111を正面視において第1パネル111の上端と第2パネル112の上端とが揃う高さ位置まで移動させる。これにより、吹出口5の前面は開放され、前吸込口4Bと第1パネル111との間に空気を導入するための空間が形成される。
また、第1パネル111の上端と第2パネル112の上端との高さ位置を揃えることによって、運転時に前面パネル11が室内機本体10の天面よりも上に突出せず、正面視において運転時の製品サイズと停止時の運転サイズは変化しない。
それゆえ、部屋の天井面と空調室内機1の上面との距離に制約がある場合でも、サービスパーソンは運転時の製品高さを気にすることなく据え付けることができる。なお、第1パネル111の上端および第2パネル112の上端との高さ位置が正面視で完全に揃っている必要はなく、それらの高さ位置が正面視で揃っていると感じさせるほどに近接している程度でよい。それゆえ、正面視で第1パネル111の上端が第2パネル112の上端よりも若干飛び出すことも許容される。
なお、図2A及び図2Bに示すように、第1パネル111の側面111aの上端と第2パネル112の側面112aの下端との各対向面は、前方上向きの傾斜面であるので、第1パネル111が前進と上昇とを同時に行っても、第1パネル111の側面111aの上端と第2パネル112の側面112aの下端とが干渉することはない。
(3−1)パネル搬送機構21
第1パネル111は、パネル搬送機構21によって前進と上昇とを同時に行うこと、つまり斜め上方に移動することができる。ここで、説明の便宜上、第1パネル111が吹出口5の正面を閉じる位置を閉位置CP(図2A参照)とよび、第1パネル111が正面視において自己の上端と第2パネル112の上端とが揃う高さ位置へ移動して吹出口5の前面を開放した位置を開位置OP(図2B参照)とよぶ。
図7は、パネル搬送機構21の縦断面図である。また、図11A及び図11Bは、支持部材25の動作前後のパネル支持機構24の斜視図であるが、パネル搬送機構21も記載されているので参照する。図7、図11A及び図11Bにおいて、パネル搬送機構21は、平行クランク機構を応用したものである。パネル搬送機構21は、第1クランク211、第2クランク212、可動リンク213、及び固定リンク214を有している。
(3−1−1)第1クランク211
第1クランク211は、樹脂製部材であり、その両端は回転軸として機能するように円柱状又は円筒状に成形されている。第1パネル111側に位置する第1回転軸211aは、可動リンク213の上端軸受213aに回転可能に保持されている。本実施形態では、図11Aに示すように、第1回転軸211aは円柱状の突起である。
また、室内機本体10側に位置する第2回転軸211bはモータ(図示せず)の出力軸に連結されている。図7に示すように、第2回転軸211bは、第2パネル112の後方に設けられている。本実施形態では、モータの出力軸には断面が四角形の樹脂棒が挿入されており、第2回転軸211bの中心にはその樹脂棒が挿入される四角穴を有している。
また、第1クランク211は、図7に示すように、曲がり部211cを有している。曲がり部211cは、第1回転軸211aと第2回転軸211bとを繋ぐ部位であるが、第1回転軸211aの中心と第2回転軸211bの中心とを最短距離で結ぶ仮想線(2点鎖線KL)から斜め下方へ離れた後に、湾曲してその仮想線に近づく方向に延びている。
第1クランク211は、第1回転軸211aが第2パネル112の正面に来るまで第1パネル111を持ち上げたとき、第1クランク211は第2パネルの下端に近づくが、曲がり部211cが第2パネル112の下端を避けるように湾曲しているので、第1クランク211と第2パネル112の下端との干渉が回避されている。
(3−1−2)第2クランク212
第2クランク212は、樹脂製部材であり、その両端は回転軸として機能するように円柱状又は円筒状に成形されている。第1パネル111側に位置する第1回転軸212aは、可動リンク213の下端軸受213bに回転可能に保持されている。本実施形態では、図11Aに示すように、第1回転軸212aは円柱状の突起である。
また、室内機本体10側に位置する第2回転軸212bは固定リンク214の下端部に回転可能に保持されている。本実施形態では、図7に示すように、第2回転軸212bは円柱状の突起である。
(3−1−3)可動リンク213
可動リンク213は、細長い樹脂製部材であり、第1パネル111の裏面に鉛直姿勢で固定されている。可動リンク213の上下端は軸受となっており、上端は第1クランク211の第1回転軸211aを受ける上端軸受213aであり、下端は第2クランク212の第1回転軸212aを受ける下端軸受213bである。
本実施形態では、図11Aに示すように、上端軸受213aは第1クランク211の第1回転軸211aの円柱状の突起が挿入される軸受穴を有している。また、下端軸受213bは第2クランク212の第1回転軸212aの円柱状の突起が挿入される軸受穴を有している。
(3−1−4)固定リンク214
固定リンク214は、室内機本体10側に存在するが、少なくとも第1クランク211の第2回転軸211bの軸受と、第2クランク212の第2回転軸212bの軸受とが存在すればよく、特定の形状を有する必要はない。
本実施形態では、第1クランク211の第2回転軸211bはモータの出力軸によって支持され、第2クランク212の第2回転軸212bは、モータの出力軸から下方に所定長さ離れた位置に形成されている軸受214bに支持されている。
(3−2)運転開始時の第1パネル111の動作
第1パネル111が図4に示す状態のときに、モータが第1クランク211の第2回転軸211bを時計方向に回転させると、第1クランク211が時計方向に回動する。このとき、第1クランク211の第1回転軸211aが第2回転軸211bを中心とする円弧を描きながら可動リンク213を持ち上げる。
第1クランク211は、第1回転軸211aと第2回転軸211bとを結ぶ仮想線が水平に対して5°程度上方に傾いた位置で回動を停止する。この停止位置を、第1クランク211の最大回動位置Rmとする(図5及び図6参照)。
第1クランク211の第1回転軸211aと可動リンク213の上端軸受213aとは回転自在に繋がっている。また、可動リンク213の下端軸受213bと第2クランク212の第1回転軸212aとは回転自在に繋がっている。さらに、固定リンク214の軸受214bと第2クランク212の第2回転軸212bとは回転自在に繋がっている。
それゆえ、可動リンク213が持ち上げられると、可動リンク213は鉛直姿勢を維持した状態で、室内機本体10から離れながら上方に移動する。
このとき、第1クランク211の「第1回転軸211aと第2回転軸211bとを結ぶ仮想線」と、第2クランク212の「第1回転軸212aと第2回転軸212bとを結ぶ仮想線」とは略平行であり、可動リンク213の「上端軸受213aと下端軸受213bとを結ぶ仮想線」と、固定リンク214の「モータの出力軸と軸受214bとを繋ぐ仮想線」とがほぼ平行であり、当該4つの仮想線が略平行四辺形を成す。
つまり、第1クランク211が原動節として回転すると、可動リンク213に固定されている第1パネル111は固定リンク214に対して平行を保ったまま上昇又は下降することができる。
図5及び図6に示すように、第1クランク211が最大回動位置Rmに到達したとき、第1パネル111は第2パネル112の正面に位置し、且つ第1パネル111及び第2パネル112の上端の高さ位置が正面視で揃う。
第1パネル111は正面視で第2パネル112よりも縦に長く設定されているので、第1パネル111が正面視において自己の上端と第2パネル112の上端とが揃う高さ位置まで上昇すると、第1パネル111によって第2パネル112が覆われて一パネルのようになる。
また、第2パネル112の縦長さは吹出口5の正面の高さ寸法と同寸法に設定されているので、図2Bに示すように、第1パネル111が正面視において自己の上端と第2パネル112の上端とが揃う高さ位置(開位置OP)まで上昇することによって、吹出口5の正面が完全に開口する。
なお、第1パネル111を開位置OPから閉位置CPまで搬送する動作は、例えば、図5のパネル搬送機構21の第1クランク211を反時計方向に回動させればよい。
(4)第1パネル111の姿勢を維持する機構
運転時以外でパネル搬送機構21が動作するのは、フィルタ9の清掃などメンテナンスを行うときである。ユーザーは、フィルタ9の清掃などのメンテナンスを行う際には、第1パネル111の下端が室内機本体10から離れる方向に第1パネル111を回動させて、室内機本体10の前面を開放する必要がある。
この場合、第1パネル111を閉位置CPで回動させると、図2Aに示すように、第1パネル111の側面111aの上端と第2パネル112の側面112aの下端とが干渉して、軋み音の発生、第1パネル111及び第2パネル112の傷付きの要因となる。
本実施形態では、そのような不都合を避けるため、ユーザーがフィルタ9のメンテナンス等のために室内機本体10の前面を開放するときは、第1パネル111を開位置OPまで搬送している。この開位置OPでは、図2Bに示すように、第1パネル111の側面111aの上端と第2パネル112の側面112aの下端とは解離しているので、第1パネル111を回動させても第1パネル111の側面111aの上端と第2パネル112の側面112aの下端とが干渉することはなく、軋み音の発生、第1パネル111及び第2パネル112の傷付きは防止される。
なお、ユーザーが手動で第1パネル111を閉位置CPから開位置OPまで搬送することは可能であるが、パネル搬送機構21はモータと繋がっており、ユーザーにとっては負担となるので、パネル搬送機構21で動作させることが好ましい。
パネル搬送機構21は、空調室内機1の遠隔操作装置(図3参照。以下、リモコン80という。)に予め設けられている運転ボタン81、及びメンテナンス準備ボタン83のいずれかをオンにしたときに動作する。
したがって、メンテナンス時にはユーザーは、先ずメンテナンス準備ボタン83をオンにして、パネル搬送機構21によって第1パネル111を開位置OPへ移動させる。
その後、ユーザーは、室内機本体10の前面を開放するために、第1パネル111の下端が室内機本体10から離れる方向に回動させるのであるが、パネル搬送機構21の可動リンク213が第1パネル111の裏面に連結されているので、両者の連結状態を第1パネル111が単独で回動可能な回動許可状態へ切り換える必要がある。
そのために、第1パネル111の裏面とパネル搬送機構21の可動リンク213との間には、ヒンジ機構22、ロック機構23、及びパネル支持機構24が設けられている。
(4−1)ヒンジ機構22
ヒンジ機構22は、室内機本体10の前面を開放する際、第1パネル111を可動リンク213の上端軸受213aを中心として回動させるための機構である(図8参照)。
具体的には、第1パネル111の裏面側に、可動リンク213の上端軸受213aを保持するヒンジ機構22が設けられている。ヒンジ機構22は、可動リンク213の上端軸受213aにスナップフィットで嵌合する軸であってもよい。
このときに、第1パネル111の下端が室内機本体10から離れるように移動させると、第1パネル111が可動リンク213の上端軸受213aを中心として回動する。
(4−2)ロック機構23
図8は、第1パネル111の裏面に配置されたロック機構23の斜視図である。また、図9Aは、第1パネル111と可動リンク213とのロック機構23の拡大斜視図である。さらに、図9Bは、図9Aのロック機構23の解除状態を示す拡大斜視図である。
図8、図9A及び図9Bにおいて、第1パネル111のうち可動リンク213の下端軸受213bと対向する部分には、可動リンク213の下端軸受213bを拘束するロック機構23が設けられている。ロック機構23は、爪部231、バネ部232、及ぶ把手部233を有している。本実施形態では、爪部231、バネ部232、及ぶ把手部233が同一樹脂で一体成型されている。
(4−2−1)爪部231
爪部231は、第1パネル111の裏面に沿って摺動する。通常、爪部231の爪先端231aは、可動リンク213の下端軸受213bの下部に設けられた孔213hに挿入され、下端軸受213bが第1パネル111の裏面から離れることを阻止している。
(4−2−2)バネ部232
バネ部232は、爪部231の爪先端231aが可動リンク213の下端軸受213bの下部に設けられた孔213hから離れないように爪部231を上方へ付勢している。バネ部232は、樹脂で、円弧梁状に成形されている。バネ部232の一端は第1パネル111の裏面に保持されており、これを自由端232aという。また、バネ部232の他端は爪部231に固定されており、これを固定端232bという。本実施形態において、爪部231とバネ部232とは、ロック機構23のロック機能を担っている。
(4−2−3)把手部233
把手部233は、ユーザーが指を掛ける部分であり、爪部231の下部と繋がっている。第1パネル111が開位置OPに在るときは、第1パネル111の裏面と室内機本体10との間にユーザーの手が入る程の隙間ができるので、ユーザーが把手部233に指を掛けて下方に引くことにより、爪部231が降下し爪先端231aが可動リンク213の下端軸受213bの下部に設けられた孔213hから離脱するので、第1パネル111と可動リンク213の下端軸受213bとが分離可能となる。本実施形態において、把手部233は、ロック機構23のロック解除機能を担っている。
(4−3)パネル支持機構24
図10は、第1パネル111がメンテナンス位置にあるときの空調室内機1の部分斜視図である。図10において、第1パネル111が室内機本体10の前面を開放する位置(以下、「メンテナンス位置MP」という。)まで移動しても、ユーザーが両手で作業を行うためには、第1パネル111をメンテナンス位置MPに保持しておく必要がある。
パネル支持機構24は、第1パネル111をメンテナンス位置MPに保持するための機構である。図10に示すように、パネル支持機構24は、パネル搬送機構21の可動リンク213上に設けられた回動軸24aと、回動軸24aに回動自在に保持される支持部材25を有している。
(4−3−1)回動軸24a
図11Aは、支持部材25の動作前のパネル支持機構24の斜視図である。また、図11Bは、支持部材25の動作後のパネル支持機構24の斜視図である。さらに、図12は、支持部材25の動作前のパネル支持機構24の正面図である。
図11A、11B及び図12において、回動軸24aは、可動リンク213の両側面から外側に突出するピン状の軸である。回動軸24aは、可動リンク213の上端軸受213aと下端軸受213bとを結ぶ区間213c内で、且つ区間213cの中央と下端軸受213bとの間に設けられている。
(4−3−2)支持部材25
支持部材25は、細長い部材であり、長手方向と垂直な断面形状がコの字状に窪んだ形状である。支持部材25の一方の端部には、回動軸24aが挿入される軸孔25aが設けられている。
説明の便宜上、支持部材25の軸孔25aが設けられている端部を第1端部251、反対側の端部を第2端部252とよぶ。第1端部251の軸孔25aに回動軸24aが挿入されることによって、支持部材25は可動リンク213に対して回動可能となる。
支持部材25を可動リンク213に近づける方向に押して回動させると、支持部材25の窪んだ空間に可動リンク213の区間213cの一部が嵌合し、重なり合って、それ以上は押せなくなる。
逆に、支持部材25を可動リンク213に近づける方向に押すことを止めると、支持部材25が可動リンク213から離れる方向に回動する。これは、図11Aに示すように、支持部材25の重心25gは回動軸24aよりも上方、且つ、前方(可動リンク213から離れる方向)に位置するので、支持部材25は拘束されない限り、可動リンク213から離れる方向に自然に回動する。
第1端部251の端面は、軸孔25aの中心に対して中心角100°の円弧面251aと、円弧面251aよりも支持部材25の長手方向に突出する傾斜面251bとを含んでいる。
支持部材25の窪んだ空間に可動リンク213の区間213cの一部が嵌合している状態から、支持部材25が可動リンク213から離れる方向に回動するとき、円弧面251a及び傾斜面251bも同時に回動する。そして、可動リンク213では、傾斜面251bの回動方向に60°進んだ箇所に、傾斜面251bと対向する進行阻止面213dが設けられている。
したがって、支持部材25が可動リンク213から離れる方向に60°回動すると、傾斜面251bが進行阻止面213dに当たるので、支持部材25の回動が停止する。
第1パネル111の開位置OPにおいて、可動リンク213の下端軸受213b側と第1パネル111との連結が維持されている間は、支持部材25は第1パネル111の裏面と可動リンク213の区間213cとに挟まれているので。支持部材25は静止状態である。
(4−3−3)支持部材25の動作
ロック機構23の把手部233が下方に引かれ(図9B参照)、可動リンク213の下端軸受213b側と第1パネル111との連結が解除され、ユーザーの手によって第1パネル111の下端が室内機本体10から離れる方向に引かれると、第1パネル111がヒンジ機構22によって、可動リンク213の上端軸受213a回りに回動する。
第1パネル111が室内機本体10から離れる方向に回動し始めると同時に、支持部材25は第1パネル111に追従するように回動軸24a回りの回動を開始し、第1パネル111がメンテナンス位置MPに到達したときには、支持部材25は可動リンク213から離れる方向に60°回動し、傾斜面251bが進行阻止面213dに当たり、支持部材25の回動が停止する。
このとき、ユーザーが第1パネル111を放しても、支持部材25の第2端部252が第1パネル111の裏面を支えるので、第1パネル111はメンテナンス位置MPで停止して、室内機本体10の前面を開放する。
一方、第1パネル111をメンテナンス時の傾斜姿勢から鉛直姿勢へ戻すときは、支持部材25を上方に一旦上げてから第1パネル111を手で押すことによって、支持部材25の第2端部252が第1パネル111の裏面を滑りながら、パネル搬送機構21の可動リンク213に近づいていくので、最終的に、支持部材25の窪んだ空間に可動リンク213の区間213cの一部が嵌合し、重なり合って、それ以上は押せなくなる。この地点で、第1パネル111は鉛直姿勢に戻る。
図11A、図11B及び図12に示すように、第2端部252は、支持部材25の本体端部25bに在るのではなく、図12正面視で支持部材25の本体端部25bの左側面から奥側に一旦隆起した後に左方へ折り曲がり、紙面と平行(鉛直方向)に延びている。つまり、第2端部252は、本体端部25bよりも室内機本体10に近い。
上記のように、第2端部252が支持部材25の本体端部25bから逸れた位置に設けられた結果、第2端部252の先端から座屈荷重が作用しても、第2端部252が撓んで、その力は本体端部25bを室内機本体10に近づける方向へ作用するので、必然的に支持部材25に室内機本体10の方向へのモーメントが発生する。
それゆえ、ユーザーが誤って支持部材25を上げることなく第1パネル111を押してしまった場合でも、ある程度力がかかると支持部材25の第2端部252が撓み、その後は第2端部252が第1パネル111の裏面を滑るので、破損することはない。
以上のように、パネル支持機構24の支持部材25は、第1パネル111が閉位置CP及び開位置OPにおける鉛直姿勢のときにはパネル搬送機構21の可動リンク213と重なるように収納され、第1パネル111がメンテナンス位置MPにおける傾斜姿勢のときには、支持部材25が自重で下がって第1パネル111を支える。
(4−3−4)他の応用例
なお、このパネル支持機構24は、前面パネルが駆動しないタイプで、前面パネル(前面グリルを含む)を前方に回動させてフィルタをメンテナンスするもの、例えば床置タイプの空調室内機にも適用可能である。
また、本実施形態では、第1パネル111がメンテナンス位置MPにおける傾斜姿勢のときに、支持部材25が可動リンク213側から自重で下がって第1パネル111を支える構成であるが、これに限定されるものではなく、第1パネル111の裏面側に支持部材25が回動自在に保持されていて、第1パネル111を傾斜させたときに、支持部材25が第1パネル111側から自重で下がって可動リンク213に当たって止まる構成であってもよい。
(5)第1風向調整羽根30の詳細説明
図13Aは、運転停止時の第1風向調整羽根30の斜視図である。また、図13Bは、運転時の第1風向調整羽根30の斜視図である。さらに、図14Aは、図13AのX−X線における断面図である。
図13A、図13B及び図14Aにおいて、第1風向調整羽根30は、発泡ポリスチレンから成る断熱部31を、化粧面30aを形成する第1羽根部材321と、コアンダ面30bを形成する第2羽根部材322とで挟むように構成されている。なお、第1羽根部材321及び第2羽根部材322を総称して「羽根部材32」という。
第1風向調整羽根30は、吹出流路18を経て吹出口5から吹き出される吹出空気の風向を調整する部材である。図4に示すように空調室内機1が運転停止状態のとき、第1風向調整羽根30は、化粧面30aを真下に向けた状態で、吹出口5の下面を覆っている。
そして、図6に示すように空調室内機1が運転を開始するとき、第1風向調整羽根30は回動軸30cを中心に180°回転する。このとき、第1風向調整羽根30は吹出口5の上部に到達するので(図14A参照)、第1パネル111との干渉を避けるため、必然的に第1パネル111の動作の後、或いは第1パネル111の動作に遅れて第1風向調整羽根30の回動動作が行われる。
説明の便宜上、第1風向調整羽根30が回動軸を中心に180°回転して到達した位置を最大開位置MOP(図6参照)という。
第1風向調整羽根30は、最大開位置MOPにおいて、化粧面30aを上方に、コアンダ面30bを下方に向けた状態で静止する。冷房運転のとき、化粧面30aより上方には室内機本体10の前吸込口4Bが存在し、室内空気が吸い込まれている。一方、コアンダ面30bより下方は吹出口5が存在し、冷風が吹き出される。
(5−1)第1風向調整羽根30の結露対策
吹出口5の上壁と化粧面30aとの間には僅かに隙間が存在するので、室内空気が進入し易やすい。その上冷房運転時には、コアンダ面30bを形成する第2羽根部材322が冷風によって冷却されているので、伝熱によって化粧面30aを形成する第1羽根部材321も冷却されるので、化粧面30aに結露が生じる。
なお、第1風向調整羽根30の厚み方向に沿った熱移動は、断熱部31の発泡ポリスチレンによって断熱されているので、第1羽根部材321が冷却されるのは、第1羽根部材321及び第2羽根部材322の内部の熱伝導が要因である。
また、冷風は最大開位置MOPにおける第1風向調整羽根30のコアンダ面30bに沿って流れるが、先端部の円弧の曲率が変化するところで冷風は剥離するので、剥離後の渦によって室内空気が引き込まれ、第1風向調整羽根30と接触して結露が生じる。
(5−1−1)凹部33
上記のような結露の発生を防止するために、第1風向調整羽根30には、第2羽根部材322の板厚を減少させることによって形成される凹部33が設けられている。凹部33は、第1風向調整羽根30の両端部に設けられており、一方を第1凹部331、他方を第2凹部332という。
図14Aに示すように、第1凹部331の位置は、第1風向調整羽根30が最大開位置MOPにあるとき、第1風向調整羽根30の吹出空気の流れに対する上流端30upから下流側方向に第1風向調整羽根30の横幅寸法の20%の範囲内となるように設定されている。
また、第2凹部332の位置は、第1風向調整羽根30が最大開位置MOPにあるとき、第1風向調整羽根30の吹出空気の流れに対する下流端30dpから上流側方向に第1風向調整羽根30の横幅寸法の20%の範囲内となるように設けられている。
図14Bは、第1凹部331の拡大断面図である。また、図14Cは、第2凹部332の拡大断面図である。図14B及び図14Cにおいて、第1凹部331及び第2凹部332は、第2羽根部材322の板厚が35〜60%減らされることによって成形されている。つまり、第1凹部331及び第2凹部332の最小厚みtは、第1凹部331及び第2凹部332を除く第2羽根部材322の板厚の40〜65%の範囲内に設定されている。
なお、第1凹部331及び第2凹部332の最小厚みは、薄いほど良いと考えられるが、本実施形態では樹脂射出成形によって第2羽根部材322を制作しているので、金型内に溶融樹脂が確実に流れる厚みとして、第2羽根部材322の板厚の40〜65%の範囲内に設定されている。また、第1凹部331及び第2凹部332の底面は、裏面を断熱部31の発泡ポリスチレンで支持しているので、強度の低下はない。
さらに、第1凹部331及び第2凹部332の窪みの幅は、凹部の底幅w1では第2羽根部材322の板厚の40〜65%に相当する寸法、凹部の入口w2では第2羽根部材322の板厚の100〜200%に相当する寸法に設定されており、0.6〜2.4mmの範囲に設定されることが好ましい。
第2羽根部材322を伝わる熱は第1凹部331及び第2凹部332の最小厚み部分によって流れが阻害されるので、第1凹部331及び第2凹部332それぞれから第1羽根部材321に至る区間の温度低下が抑制される。その結果、暖かい室内空気と接触する部分の温度低下も抑制され、結露の発生が抑制される。
第1凹部331及び第2凹部332の数量に特に制限はないが、吹出空気の流れ方向の上流側が冷却され易いので、2つの第1凹部331、1つの第2凹部332を設けることが好ましい。
ところで、空調室内機によっては、吹出空気ではなく室内空気が当たる部分に複数の溝を設けたものが存在するが、その溝は結露水を保持して風で蒸発させることが目的であり、第1凹部331及び第2凹部332のような、冷気と暖気とが分かれるところで冷気側に、冷気があたる始点側と終点側に伝熱を抑えるものとは、全く異なるものである。
(5−1−2)壁部34
ここまでは、吹出口5の上壁と化粧面30aとの隙間に進入する室内空気、及び第1風向調整羽根30のコアンダ面30bに沿って流れる冷風の剥離後の渦によって引き込まれる室内空気が、冷却されて結露が生じることを前提に説明した。
しかし、上記以外の事象により結露の発生がすることもある。具体的には、垂直風向調整羽根50によって、最大開位置MOP(図6参照)における第1風向調整羽根30のコアンダ面30bに沿って流れる冷風は、吹出口5を形成する壁のうちの側壁に当たり、化粧面30a側に回り込むことがある。
最大開位置MOPにおける第1風向調整羽根30の化粧面30aと吹出口5を形成する壁のうちの上壁との隙間は負圧になっており、その負圧により冷風が化粧面30a側に上がってくると考えられ、かかる場合に結露が生じる。
本実施形態では、図13A及び図13Bに示すように、第2羽根部材322の長手方向の側端部に厚み方向に立ち上がる壁部34が設けられている。垂直風向調整羽根50で左右吹きが行われるとき、第1風向調整羽根30のコアンダ面30bを斜めに横切って流れる冷風が壁部34に当たって、吹出口5の側壁の下方に向うので、第1風向調整羽根30の化粧面30aに回り込む流れは発生しない。これによって、結露の発生が抑制される。
(6)第2風向調整羽根40の詳細説明
図4に示すように、空調室内機1が運転を停止している状態では、第2風向調整羽根40は、閉位置CPの第1パネル111よりも後方で、初期位置SPの第1風向調整羽根30よりも上方に位置しており、人目に触れない。
一方、図6に示すように、空調室内機1が運転をしている状態では、第1パネル111が開位置OPへ移動して吹出口5の前面を開放し、第1風向調整羽根30が回動して第2風向調整羽根40よりも上方に移動して吹出口5の下面を開放するので、第2風向調整羽根40が吹出口5から露出する。
図15は、第2風向調整羽根40の傾斜角度を示すための空調室内機1の縦断面図である。図15において、第2風向調整羽根40は、凸側面40aを下方に、凹側面40bを上方に向けているので、上面である凹側面40bに沿って流れる冷風については、持ち上げられて第1風向調整羽根30へ向う。この凹側面40bに沿った流れを主流という。
一方、下面である凸側面40aに沿って流れる冷風は、第2風向調整羽根40の角度(以下、「傾斜角度θ」という。)が所定角度範囲にあるときは、凸側面40aに沿った流れを維持して主流と同方向に流れる。
ここで、第2風向調整羽根40の傾斜角度θとは、スクロール17の終端における接線TLに対する、第2風向調整羽根40の最先端と最後端とを通過する仮想線BLの角度である。
第2風向調整羽根40の傾斜角度θが所定角度範囲外のときは、冷風は途中まで湾曲面に沿っているが、第1風向調整羽根30に向う方向になる前に剥離するので、主流に対して離れていく。
かかる場合、凸側面40aに沿って流れる冷風は、凸側面40aの頂点を超えた直後、若しくは凸側面40aの頂点と下流側端とを繋ぐ区間の中央で剥離する。それゆえ、冷風が沿わなくなったところへ、その冷風よりも温度の高い室内空気が進入し、結露が発生する。
なお、凹側面40bの最深点から下流側点を繋ぐ区間を凹側後半区間40bb、凸側面40aの頂点と下流側端とを繋ぐ区間を凸側後半区間40abとよぶ。
本実施形態では、垂直風向調整羽根50が左右いずれかに振れているときに、第2風向調整羽根40の両端部における凸側後半区間40abで結露が生じ易いことが、出願人の実験で確認されている。
(6−1)第2風向調整羽根40の結露対策
上記のとおり、第2風向調整羽根40の傾斜角度θが所定角度を超えない限り、冷風が凸側後半区間40abで剥離することはなく、第2風向調整羽根40全体が冷風に包まれている状態となるので、第2風向調整羽根40への結露の発生が抑制される。
(6−1−1)第2風向調整羽根40の姿勢と吹出空気温度との関係
出願人の研究によれば、吹出空気の温度Tbが12℃〜13℃の範囲にあるとき、第2風向調整羽根40の傾斜角度θが0〜5°の範囲内であれば、結露の発生が抑制されている。
一方、ユーザーの都合により冷風が凸側後半区間40abで剥離するような傾斜角度にせざるを得ないとき、すなわち第2風向調整羽根40の傾斜角度θを0〜5°の範囲外にする場合には、吹出空気の温度Tbを14℃〜16℃に上げ、露点温度を上げるような態様で使う必要があり、パラメータの自由度が狭いという問題があった。
出願人としては、結露の発生を抑制しつつ、第2風向調整羽根40の傾斜角度θの範囲を拡大することを課題としており、この課題を解決するためには、凸側面40aに沿って流れる冷風が凸側後半区間40abでも剥離せずに流れるようにする必要がある。
(6−1−2)貫通穴43
そこで、本実施形態では、冷風が凸側面40aの凸側後半区間40abでも剥離せずに流れるようにするため、第2風向調整羽根40の長手方向の端部側に、第2風向調整羽根40の厚み方向に通過する貫通穴43が設けられている。以下、図面を用いて、貫通穴43について説明する。
図16Aは、第2風向調整羽根40の斜視図である。また、図16Bは、図16AのY−Y線における断面図である。図16A及び図16Bにおいて、貫通穴43は、凹側面40bの凹側後半区間40bbに沿って流れる冷風を、凸側面40aの凸側後半区間40abに流す目的で設けられている(図16Bの点線の矢印参照)。
貫通穴43のうち凹側後半区間40bbに形成される開口43bは、凸側後半区間40abに形成される開口43aよりも上流側に位置している。すなわち、貫通穴43は、前方に進むほど下方に進む、斜め下向きの穴である。
貫通穴43が存在することにより、凹側面40bに沿って流れる冷風の一部が貫通穴43を通り、凸側後半区間40abに流出し、下流側端に向かって流れるので、元々、凸側後半区間40abに沿って流れていた冷風を引き付けるので、剥離が抑制される。
また、貫通穴43は第2風向調整羽根40の長手方向に平行な長穴である。貫通穴43は、垂直風向調整羽根50が実使用時の最大振れ位置にあるときにおいて、振れ方向と反対方向の最も端に在る羽根片501の鉛直面50aを含む仮想平面と第2風向調整羽根40とが交差する領域から、当該領域に最も近い第2風向調整羽根40の端までの区間に貫通穴43の少なくとも一部が掛かっていればよい。
本実施形態では、図16Aに示すように、貫通穴43が両端から長手方向全長の20%の範囲に掛かるように形成されている。例えば、垂直風向調整羽根50が最大左振れ位置にあるとき、最も右側にある羽根片501の鉛直面50aを含む仮想平面と第2風向調整羽根40との交差領域より右側の区間(例えば、右端から80mmの範囲など)は空気の流れに勢いがなく、第2風向調整羽根40の凸側面40aから剥離し易く、室内空気の接触が容易であり、結露が生じ易い。
それゆえ、貫通穴43が両端から長手方向全長の20%の範囲に掛かるように、貫通穴43を設けることによって、貫通穴43を通過した冷風が凸側面40aの凸側後半区間40abに沿って流れるので、上流側から凸側後半区間40ab向かって流れてくる冷風を引き寄せ、凸側後半区間40abから剥離することを防止する。その結果、室内空気が第2風向調整羽根40に接触せず、結露の発生が抑制される。
上記のように貫通穴43が設けられ、結露の発生が抑制された結果、吹出空気の温度Tbが12℃〜13℃の範囲にあるとき、第2風向調整羽根40の傾斜角度θが0〜32°の範囲内であれば、結露の発生が抑制されることが、出願人の研究により確認された。
なお、貫通穴43は、必ずしも長穴である必要はなく、例えば、一方向に連続する複数の丸穴、或いは一方向に連続する複数の「上記実施形態の長穴よりも短い長穴」であってもよい。
(7)変形例
上記実施形態では、前面パネル11の第2パネル112は固定であり、第1パネル111のみが第2パネル112の正面に移動して室内機本体10の前面を開放する構成であるが、これに限定されるものではなく、第1パネル111及び第2パネル112の双方が移動して室内機本体10の前面を開放してもよい。
図17は、変形例に係る空調室内機1Bであって、運転停止時の当該空調室内機1Bの縦断面図である。また、図18は、運転開始前におけるパネル搬送機構が動作途中の空調室内機1Bの縦断面図である。さらに、図19は、運転時の空調室内機1Bの縦断面図である。図17、図18及び図19において、上記実施形態と変形例に係る空調室内機1Bとの違いは、第1パネル111及び第2パネル112の双方を搬送するパネル搬送機構21Bを備えている点である。
パネル搬送機構21Bは、第1パネル111を搬送するパネル搬送機構21に第2パネル112の搬送機構を付加したものである。図18に示すように、パネル搬送機構21Bは、先に第1パネル111を前方且つ上方に移動させ、第1パネル111が室内機本体10から所定距離だけ離れたとき、第2パネル112を室内機本体10から離れる方向へ水平移動させる。
最終的に、図19に示すように、第1パネル111は、室内機本体10から水平方向に距離D1、鉛直方向にH1を移動して停止する。第2パネル112は、室内機本体10から水平方向に距離D1より短い距離D2を移動して停止する。
空調室内機1Bでは、運転時に第2パネル112が室内機本体10の上部前面を開放するので、空気が室内機本体10の上部前面と第2パネル112との間を通過して室内機本体10の前面に至るので、室内機本体10の前面からの空気吸込み経路が短くなり、空気抵抗の低減を図ることができる。
(8)特徴
(8−1)
空調室内機1では、吹出空気の一部を第2風向調整羽根40の厚み方向に通過させる貫通穴43を設けることによって、冷房運転時、貫通穴43を通過した空気は凸側面40aの下流側に向かって流れるので、上流側から凸側面40aに沿って流れてくる吹出空気を引き寄せ、凸側面40aから剥離することを防止する。その結果、暖気が進入せず、結露の発生が抑制される。
(8−2)
貫通穴43を、第2風向調整羽根40の長手方向に平行な長穴とすることによって、その分、貫通穴43を通過して凸側面40aの下流側に向かって流れる空気が増加するので、上流側から凸側面40aに沿って流れてくる吹出空気を引き寄せる効果が増し、さらに下面から剥離し難くなる。
(8−3)
貫通穴43を介して吹出空気の一部が前方下向きに導かれることによって、貫通穴43を通過した空気が凸側面40aの下流側に向かって流れ易くなる。
(8−4)
空調室内機1では、貫通穴43は、垂直風向調整羽根50が実使用時の最大振れ位置にあるときにおいて、振れ方向と反対方向の最も端に在る羽根片501の鉛直面50aを含む仮想平面と第2風向調整羽根40とが交差する領域から、当該領域に最も近い第2風向調整羽根40の端までの区間に貫通穴43の少なくとも一部が掛かっていればよい。これによって、貫通穴43を通過した冷風が凸側面40aの凸側後半区間40abに沿って流れるので、上流側から凸側後半区間40ab向かって流れてくる冷風を引き寄せ、凸側後半区間40abから剥離することを防止する。その結果、室内空気が第2風向調整羽根40に接触せず、結露の発生が抑制される。
(8−5)
空調室内機1では、第2風向調整羽根40の長手方向の端部側に吹出空気の一部を厚み方向に通過させる貫通穴43を設けたことによって、5℃〜15℃の範囲内ならば、角度を0〜35°の範囲で傾けることができるので、使い勝手がよい。
本発明は、壁掛け式の空調室内機に限らず、床置式の空調室内機にも有用である。
1 空調室内機
1B 空調室内機
40 第2風向調整羽根
43 貫通穴
50 垂直羽根(垂直風向調整羽根)
50a 鉛直面
特開2009−97755号公報

Claims (6)

  1. 吹出空気の風向を上下方向に調整する風向調整羽根(40)を備える壁掛け式の空調室内機であって、
    前記風向調整羽根(40)は、長手方向の端部側に前記吹出空気の一部を厚み方向に通過させる少なくとも1つの貫通穴(43)を有し、
    前記貫通穴(43)は、前記風向調整羽根(40)の先端に近づくほど下方に進むように傾斜している、
    空調室内機。
  2. 前記貫通穴(43)は、前記風向調整羽根(40)の長手方向に平行な長穴である、
    請求項1に記載の空調室内機。
  3. 冷房運転時、前記貫通穴(43)は前記吹出空気の一部を前方下向きに導く、
    請求項1又は請求項2に記載の空調室内機。
  4. 前記貫通穴(43)は、前記風向調整羽根(40)のうち、前記吹出空気の流れ方向の中央より下流側に位置する、
    請求項1から請求項のいずれか1項に記載の空調室内機。
  5. 鉛直面(50a)を左右に振ることによって、前記風向調整羽根(40)に向かって流れる空気の風向を左右方向に調整する垂直羽根(50)をさらに備え、
    前記垂直羽根(50)が最大振れ位置にあるときにおいて、振れ方向と反対方向の最も端に在る前記垂直羽根(50)の前記鉛直面(50a)を含む仮想平面と前記風向調整羽根(40)とが交差する領域から、前記領域に最も近い前記風向調整羽根(40)の端までの区間に前記貫通穴(43)の少なくとも一部が掛かっている、
    請求項1から請求項のいずれか1項に記載の空調室内機。
  6. 調和された空気を吹出口まで導くスクロールをさらに備え、
    調和された前記空気の温度が5℃〜15℃の範囲内のとき、前記スクロールの終端部の接線と前記風向調整羽根の前方端と後方端とを結ぶ仮想線との角度が0〜35°の範囲内である、
    請求項1から請求項のいずれか1項に記載の空調室内機。
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