JP6514994B2 - インモールド成形体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、射出成形体の表面にインモールド材を一体化した積層体であるインモールド成形体の製造方法、詳しくは、インモールド成形における、射出成形体の冷却速度をコントロールするためのインモールド成形体の製造方法に関する。
射出成形体の表面にインモールド材を一体化した積層体であるインモールド成形体が知られている。インモールド成形体は、フィルムやシート、または、それらに予め賦形したプリフォーム成形体を金型のキャビティに配置し、射出成形するインモールド成形により製造される。キャビティに配置されるインモールド材としては、樹脂フィルム、紙、不織布や織物等の繊維構造体、繊維構造体を含む人工皮革や合成皮革等の皮革様素材が知られている。
インモールド成形においては、インモールド材を積層しない一般的な熱可塑性樹脂の射出成形に比べて、成形体に生じる反りや歪みが大きくなるという問題があった。これは、インモールド材と金型との熱伝導率に大きな差があるために、成形される射出成形体のインモールド材に面する側の面(以下、主面とも称する)と金型に面する側の面(以下、裏面とも称する)で冷却速度に大きな差が生じることによると思われる。
インモールド成形体の反りを抑制したり、インモールド材の剥離強度を向上させたりするために、射出成形金型のキャビティ面に断熱層を形成することが提案されている。例えば、下記特許文献1は、金型のキャビティ面に高温を保持するための断熱層を設けることにより、インモールド成形時に樹脂シートの結晶化を促進する方法を開示する。また、下記特許文献2は、樹脂をインモールド成形する際に金型のキャビティ面に断熱層を形成することにより歪みや反りを低減する方法を開示する。また、インモールド成形において成形される射出成形体の主面側と裏面側の冷却速度を調整する方法としては、主面側の型温と裏面側の型温とを互いに独立して制御したり、1サイクルの射出成形ごとに型温を厳密に制御したりする方法も採用できる。
特開2013−224346号公報 特開2001−225348号公報
インモールド成形体を構成する射出成形体の主面側と裏面側との冷却速度を調整するために、特許文献1や特許文献2に開示されたような金型のキャビティ面に断熱層を設けるような方法を採用する場合、金型のキャビティ面に断熱層を形成することが煩雑であったり、断熱層が熱や圧力で劣化したり、断熱性をコントロールすることが困難であるという問題があった。また、主面側の型温と裏面側の型温とを互いに独立して制御したり、1サイクルの射出成形ごとに型温を厳密に制御したりするような方法を採用した場合には、型の冷却に長い時間を要するために成形サイクルが長くなったり、温度制御に多くのエネルギーを要するという問題があった。
本発明は、金型のキャビティ面に断熱層を設けたり、主面側の型温と裏面側の型温とを互いに独立して制御したりすることなく、インモールド成形体を構成する射出成形体の主面側と裏面側との冷却速度の調整を可能にするインモールド成形体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一局面は、インモールド材を準備する工程と、可動側型と固定側型とを型締めすることによりキャビティを形成する射出成形用金型の該キャビティにインモールド材を収容して型締めし、該キャビティに溶融樹脂を充填することにより、成形される射出成形体の主面に該インモールド材を一体化させる工程と、射出成形体の主面に対する裏面と、該裏面に対面する射出成形用金型の表面との間に隙間を設けた状態で所定の時間保持する工程と、可動側型と固定側型とを型開きして射出成形体を取り出す工程と、を備えるインモールド成形体の製造方法である。このような製造方法によれば、インモールド成形体を構成する射出成形体の、金型のキャビティ面に接する裏面に隙間を形成することにより、金型を形成する金属に比べて著しく熱伝導率の低い空気が断熱層を形成する。その結果、金型のキャビティ面に接する射出成形体の裏面のみが急冷されることが抑制される。また、隙間の間隔を調整して形成される空間の容積を調整することにより、断熱効果を容易に調整することができるために、射出成形体の主面側と裏面側との冷却速度を調整することができる。
また、隙間は、キャビティ内の射出成形体の裏面の温度が、射出成形体を形成する樹脂のガラス転移温度に達する前に形成されることが、樹脂の分子運動が凍結して自由度を失う前であるために内部応力を蓄積しにくく、また、主面側から裏面側への熱がより伝導しやすくなる点から好ましい。
また、隙間は、0.005〜2mmの範囲であることが、隙間に存在する空気が熱を蓄えることにより、温度が下がり過ぎない点から好ましい。
また、インモールド材の熱伝導率は0.05〜0.50W/(m・K)であること、または、インモールド材が繊維構造体を含有する層を含む場合には、インモールド材と金型材との熱伝導率の差が著しく大きいために、隙間を設けることによる冷却速度の調整効果が顕著になる点から好ましい。
本発明によれば、インモールド成形体の製造において、インモールド材が一体化された射出成形体の主面側と裏面側との冷却速度を近づけることができる。その結果、反りや歪の少ないインモールド成形体を製造することができる。
図1は、実施形態のインモールド成形体の製造方法の各工程を説明する説明図である。 図2は、射出成形体の裏面と射出成形用金型表面との間に形成される隙間vの作用を説明するための説明図である。 図3は、通常の冷却工程を用いたときの、インモールド成形体を構成する射出成形体の主面側(インサート側)、裏面側(金型側)、及び厚み方向の中心(中心)、のそれぞれの位置における、温度変化を熱伝導計算によって求めた結果の一例を示すグラフである。 図4は、参考例1の結果を示すグラフである。 図5は、参考例2の結果を示すグラフである。 図6は、参考例3の結果を示すグラフである。 図7は、参考例4の結果を示すグラフである。 図8は、参考例5の結果を示すグラフである。 図9は、参考例6の結果を示すグラフである。 図10は、参考例7の結果を示すグラフである。 図11は、参考例8の結果を示すグラフである。 図12は、参考例9の結果を示すグラフである。 図13は、参考例10の結果を示すグラフである。 図14は、比較参考例1の結果を示すグラフである。 図15は、比較参考例2の結果を示すグラフである。
本実施形態のインモールド成形体の製造方法を、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態のインモールド成形体の製造方法の各工程を説明する説明図である。
図1中、1はインモールド材,2aは可動側型,2bは固定側型,3は射出成形機の射出部本体,3aはノズル,3bはシリンダ,3cはインラインスクリュ,4は充填ゲート,5は射出成形体,5aは溶融樹脂,10はインモールド成形体である。また、可動側型2aと固定側型2bとは一対になってキャビティcを形成する射出成形用金型2を構成する。また、vは隙間である。なお、本実施形態においては、可動側型2aは雌型、固定側型2bは雄型である。
本実施形態のインモールド成形体の製造方法においては、はじめに、図1(a)に示すように、可動側型2aのキャビティcを形成するための凹部にインモールド材1をインサートさせる。なお、インモールド材1は、溶融樹脂の充填時に位置ずれすることを抑制するために、可動側型の凹部に固定してもよい。固定手段の具体例としては、例えば、可動側型表面に両面テープで貼り付けたり、真空吸着させたり、インモールド材自身の表面粘着性を用いて付着させたり、可動側型の凹部に突起を設けてインモールド材をはめ込んだりする方法、等が挙げられる。可動側型の表面にインモールド材を固定することにより、成形されたインモールド成形体が可動側型に引っ張られて、成形された射出成形体の裏面側と固定側型2bとの間に隙間を形成させやすくなる。
可動側型2aのキャビティcを形成する凹部にインモールド材1を収容させた後、図1(b)に示すように、可動側型2aと固定側型2bとを型締めする。そして、図1(c)に示すように、可動側型2aと固定側型2bとが型締めされることにより形成されるキャビティcに溶融樹脂5aを充填する。詳しくは、射出成形機の射出部3を前進させ、ノズル3aを金型2の固定側型2bに形成された充填ゲート4に当接させ、シリンダ3b内で溶融樹脂5aをインラインスクリュ3cで射出することにより、溶融樹脂5aを所定の射出圧でキャビティcに充填する。
射出される樹脂の具体例としては、例えば、ABS系樹脂、PMMA樹脂のようなアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂、各種ポリアミド系樹脂、COP樹脂等の熱可塑性樹脂等が挙げられる。また、これらは、フィラー等を配合したコンパウンド品や、複数種の樹脂をアロイ化またはブレンド化した混合品であってもよい。これらは用途に応じて適宜選択される。例えば、携帯電話、モバイル機器、家電製品等の筐体に用いる樹脂としては、ABS系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂等の耐衝撃性に優れた樹脂が好ましく用いられる。
射出成形条件は、射出される樹脂の熱特性や溶融粘度、成形体の形状、および樹脂厚みに応じて充填可能な条件(樹脂温度、金型温度、射出圧力、射出速度、射出後の保持圧力、冷却時間)が適宜設定される。
成形される射出成形体の厚さも特に限定されず、用途や成形性に応じて適宜選択される。例えば、携帯電話、モバイル機器、家電製品等の筐体に用いる場合には、0.3〜2mm、さらには0.5〜1.5mmが好ましい範囲として選ばれる。
また、インモールド材を形成する素材は樹脂であっても金属であってもよいが、本実施形態の効果は、熱伝導率の低い樹脂の場合にとくに顕著に奏される。このようなインモールド材を形成する樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、変性PET、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリトリエチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、等の芳香族ポリエステル系樹脂;ポリ乳酸、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリヒドロキシブチレート−ポリヒドロキシバリレート共重合体等の脂肪族ポリエステル系樹脂;ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6−12等のポリアミド系樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、塩素系ポリオレフィン、エチレン酢酸ビニル共重合体、スチレンエチレン共重合体、などのポリオレフィン系樹脂;エチレン単位を25〜70モル%含有する変性ポリビニルアルコール等から形成される変性ポリビニルアルコール系樹脂;及び、ポリウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマーなどの結晶性エラストマー等が挙げられる。これらは単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いても良い。
また、インモールド材の形態としては、フィルム,シート,紙,不織布や織物等の繊維構造体,人工皮革や合成皮革等の皮革様素材,または、それらに熱プレス成形や真空成形することにより賦形したプリフォーム成形体が挙げられる。また、インモールド材は、表面に印刷や蒸着が施されて加飾されたものや、耐傷性を有するような層や加飾層を積層したような積層体であってもよい。インモールド材の厚さも特に限定されないが、装飾性を得る、強度を向上させるなどの目的の性能を得るためには、0.1〜2mm、さらには、0.2〜1mm程度であることが好ましい。
なお、本実施形態の効果は、不織布や織物等の繊維構造体,人工皮革や合成皮革等の皮革様素材,紙のような、内部に熱伝導率の低い空気を蓄えるような形態の素材をインモールド材として用いる場合に、とくに顕著に奏される。内部に空気を蓄えるインモールド材は、空気が高い断熱効果を発揮するために熱伝導率が低く、インモールド材が配された射出成形体の主面からの放熱を著しく妨げるためである。
従来の射出成形工程の場合、溶融樹脂をキャビティに充填した後の冷却工程において、射出成形体のヒケや反りを抑制するために、キャビティ内にインラインスクリュの背圧により保圧を掛けた後、または保圧を掛けながら、所定の型温に設定された金型内で所定の時間冷却させて溶融樹脂を固化させる。一方、本実施形態の射出成形工程においては、以下に説明するように、必要に応じて保圧を掛けた後に、キャビティに充填された溶融樹脂の冷却工程において、インモールド成形体を構成する射出成形体の裏面と、その裏面に面する射出成形用金型の表面との間に隙間を形成するように金型の型開き機構を制御する工程を備える。
具体的には、キャビティc内に溶融樹脂5aを充填した後、さらに必要に応じて所定の時間保圧を掛けた後、図1(d)に示すように、冷却工程において、白抜き矢印方向に可動側型2aをわずかに移動させることにより、成形された射出成形体5の裏面と固定側型2bの表面との間に隙間vを形成させるように型開き機構を制御する。
ここで隙間vの作用を図2及び図3を参照して説明する。図2(a)に示すように、成形された直後の射出成形体5の主面はインモールド材1に一体化されており、射出成形体5の他の一面である裏面は固定側型2bの表面に接している。インモールド材1が配された側の射出成形体5の主面では、可動側型2aとの間に熱伝導率の低いインモールド材1が介在しているために冷却速度が遅くなる。一方、射出成形体5の裏面は、熱伝導率が高く放熱性の高い金属製の金型2の固定側型2bに接しているために冷却速度が速い。すなわち、成形した直後の射出成形体5の裏面側は急冷され、主面側は緩やかに冷却される。
図3は、通常の冷却工程を用いたときの、インモールド成形体を構成する射出成形体の主面側(以下、インサート側とも称する)、裏面側(以下、金型側とも称する)、及び厚み方向の中心付近(以下、単に中心とも称する)、のそれぞれの位置における、温度変化を熱伝導計算によって求めた結果の一例を示すグラフである。
図3に示すように、射出成形体の各位置の温度変化においては、射出成形体の金型に面する裏面側(金型側)の温度が急激に低下し、インモールド材に一体化された主面側(インサート側)及び厚さ方向の中心の温度は緩やかに低下する。すなわち、射出成形体の裏面側は、主面側及び中心に比べて急冷される。そして、このように裏面側が急冷され、他の個所が緩やかに冷却される場合には、裏面側と他の部分の冷却速度に大きな差が生じることにより内部応力が蓄積され、型開き後の内部応力の開放に伴い、歪みや反りを生じさせたり、寸法安定性を低下させたりする原因になる。
本実施形態においては、冷却工程において、図2(b)に示すように、成形された射出成形体5の裏面と固定側型2bの表面との間に隙間vを形成させることにより、隙間vが熱伝導率の低い空気からなる断熱層となる。隙間vが形成する空気からなる断熱層は、成形された射出成形体5の裏面の冷却速度を緩やかにする。その結果、主面側と裏面側との冷却速度の差が小さくなって、得られるインモールド成形体に歪みや反りを生じさせたり、寸法安定性を低下させたりする原因を除去することができる。
成形温度付近である100〜200℃における熱伝導率は、樹脂からなるインモールド材では、例えば、0.05〜0.5W/(m・K)程度である。さらに具体的には、例えば、ABS系樹脂は0.19〜0.36W/(m・K)、ポリスチレン系樹脂は0.1〜0.14W/(m・K)、ポリカーボネート系樹脂は0.19W/(m・K)、PMMA樹脂は0.17〜0.25W/(m・K)程度である。また、内部に空気を蓄えるような形態の素材の場合には空気を含むためにさらに低くなる。一方、例えば、代表的な金型材料であるステンレスでは、24〜40W/(m・K)程度である。また、空気の熱伝導率は、0.027W/(m・K)程度である。なお、熱伝導率は、温度傾斜法(定常法)やレーザーフラッシュ法(非定常法)により測定できる。
成形された射出成形体5の裏面と固定側型2bの表面との間に隙間vを形成させる方法は、可動側型2aと固定側型2bとの型締状態から可動側型2aを所定の距離だけ後退させる方法や、コアバック方式の金型の場合には、型締状態でコアのみを所定の距離だけ後退させるような方法が挙げられる。後退距離の制御は、一般的な射出成形機の型締プロセスの設定により設定できる。
隙間vを形成させるタイミングは、得られるインモールド成形体の、歪み、反り、寸法安定性等の目的とする改善項目の評価結果からフィードバックして最適なタイミングを選択することができる。例えば、充填時を基準時t0(t=0(秒))とし、所定の時間経過後のタイミング(t1)で可動側型またはコアを後退させることにより、隙間を形成する工程を実行させる。一般的には、t1が短すぎる場合には、隙間vを形成するときの金型やコアの移動による物理的な衝撃によってインモールド成形体が変形したり、全体の冷却時間が長くなりすぎることにより成形サイクルが長くなったりする傾向がある。一方、キャビティ内の射出成形体の裏面の温度が、射出成形体を形成する樹脂のガラス転移温度に達する前に隙間を形成した場合には、樹脂の分子運動が凍結して自由度を失う前であるために内部応力を蓄積しにくく、また、主面側から裏面側への熱がより伝導しやすくなる点から好ましい。樹脂の熱特性、射出成形体の厚み、インモールド材の種類にもよるが、例えば、インモールド材として人工皮革を用い、射出される樹脂としてABS樹脂を用いるような場合においては、成形サイクルと熱伝導性とのバランスを考慮すれば、t1は4秒以下、さらには、0.3〜2秒、とくには0.4〜1.5秒程度であることが好ましい。
また、隙間vは成形された直後の射出成形体5と固定側型2bとの間に形成される。空気による断熱効果は隙間vの間隔によって調整される。隙間vの間隔も、得られるインモールド成形体の歪み、反り、寸法安定性等目的とする改善項目の評価結果からフィードバックして最適な間隔を選択することができる。隙間vの間隔が大きすぎる場合には、冷却に要する時間が長くなり、成形サイクルが長くなる傾向がある。また、隙間vの間隔が小さすぎる場合には、金型と樹脂の距離が小さくなり、熱伝導を充分阻害できず、コアバックの効果が充分に発揮されなくなる傾向がある。さらに空隙vを形成するための制御も困難になる傾向がある。隙間vの好ましい範囲としては、例えば、0.005〜2mm、さらには0.005〜1mm、とくには、0.01〜0.5mmが挙げられる。
そして、隙間vを所定の時間保持する図1(d)に示したような冷却工程の終了後、図1(e)に示すように、可動側型2aを後退させて、可動側型2aと固定側型2bとを型開きすることにより、射出成形体5の主面にインモールド材1が一体化されてなるインモールド成形体10が取り出される。
型開きのタイミングまでの時間、すなわち冷却完了時間(t2)は、射出成形体の厚さ方向の中心が充分に固化した状態、例えば射出成形体の厚さ方向の中心がガラス転移温度以下に達する時間等を目安にして、また、得られるインモールド成形体の、歪み、反り、寸法安定性等の目的とする改善項目の評価結果からフィードバックして最適な時間が適宜選択される。また、隙間vを保持する時間、すなわち、隙間vを形成したタイミング(t1)から冷却完了時間(t2)までの時間(t2−t1)もインモールド成形体の、歪み、反り、寸法安定性等の目的とする改善項目の評価結果からフィードバックして最適な時間が適宜選択される。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
[実施例1]
厚さ0.5mmの銀面調の表面を有する人工皮革((株)クラレ製のクラリーノ EPFW1−45)を100×40mmの長方形形状に切り抜いてインモールド材Aを製造した。インモールド材Aを、銀面調の表面が可動型金型の金型表面に接触するように固定した。具体的には、射出成形機((株)名機製作所のM−100C)に搭載された100×40mm、厚さ1.5mmの角板形状のキャビティを有する金型のキャビティ表面にインモールド材をテープで貼り付けて固定した後、型締めした。そして、樹脂温度270℃、金型温度35℃、射出圧60MPaの条件でABS樹脂(ガラス転移温度(Tg):87℃)を射出してキャビティ内に充填した。ABS樹脂がキャビティ内に充填されたタイミングをt0=0(秒)とした。そして、充填後、保圧30MPaを付与し、厚み方向の中心の温度がガラス転移温度(Tg)に達する前の、t1=1(秒)で可動型金型を10mm/秒の型開速度で0.1mm後退させることにより、可動型金型と成形されたABS射出成形体の間に0.1mmの隙間を形成した。そして、その状態でt2=5.9(秒)まで保持した後、可動型金型をさらに30mm/秒の型開速度で250mm後退させて型開きした。そして、ABS射出成形体の主面に人工皮革が一体化されたインモールド成形体を得た。得られたインモールド成形体は反りが小さい成形体であった。
[比較例1]
実施例1と同様にして、射出成形機の金型のキャビティ内にインモールド材Aを固定した後、型締めし、ABS樹脂を射出してキャビティ内に充填した。そして、ABS樹脂がキャビティ内に充填されたタイミングをt0=0(秒)とし、充填後、保圧30MPaを付与した状態でt2=3.8(秒)まで保持した後、可動型金型を10mm/秒の型開速度で250mm後退させて型開きした。そして、ABS射出成形体の主面に人工皮革が一体化されたインモールド成形体を得た。得られたインモールド成形体は実施例1で得られたインモールド成形体よりも反りが大きい成形体になった。
[参考例1、比較参考例1]
実施例1及び比較例1の結果を分析するために、構造解析ソフトウェア(エムエスシーソフトウェア(株)製の「MARC」)を用いた有限要素法による熱伝導解析により、ABS射出成形体のインモールド材に一体化された主面側(インサート側)、主面側に対する裏面側(金型側)、ABS射出成形体の厚み方向の中心(中心)、のそれぞれの部位の型内での温度変化を解析した。それぞれ、参考例1及び比較参考例1とする。
なお、上記有限要素法による熱伝導解析には、下記式(1)の1次元の熱伝導計算式が採用されている。
Figure 0006514994
また、上記有限要素法による熱伝導解析に一例として用いた各材料の特性を下記表1に示す。
Figure 0006514994
参考例1及び比較参考例1のそれぞれの結果を図4及び図14に示す。なお、図中、インサート側は射出成形体の主面から0.1mmの内側の温度、金型側は射出成形体の裏面から0.1mmの内側の温度、中心は、射出成形体の厚み方向の中心の温度を示している。また、図4及び図14から、中心の温度がABS樹脂のTgである87℃に達した時の時間を冷却完了時間t2(秒)、冷却完了時間t2におけるインサート側と金型側のABS樹脂の温度差をΔTとして特定した。結果を下記表2に示す。
Figure 0006514994
実施例1の熱伝導解析を行った参考例1の結果を示す図4と、比較例1の熱伝導解析を行った比較参考例1の結果を示す図14とを比較する。図4に示す参考例1において、冷却初期の段階では裏面側(金型側)の温度が急激に低下しているが、t1=1秒で隙間vを形成させた以降は、中心からの熱伝導により裏面側(金型側)の温度が上昇し、主面側及び中心の温度がガラス転移温度に到達する前に、主面側、裏面側、中心の全ての温度が近付いていることがわかる。一方、図14に示す比較参考例1では冷却初期の段階では、裏面側(金型側)のみの温度が急激に低下し、主面側及び中心では緩やかに温度が低下するため、ガラス転移温度に達した後に、裏面側(金型側)の温度が主面側および中心の温度に近付いていることがわかる。
表2の結果を参照すれば、実施例1の熱伝導解析を行った参考例1では、冷却完了時間t2は5.9(秒)であり、冷却完了時間t2におけるインサート側と金型側のABS樹脂の温度差△Tは0.2℃であった。一方、比較例1の熱伝導解析を行った比較参考例1では、冷却完了時間t2は3.8(秒)であったが、冷却完了時間t2におけるインサート側と金型側のABS樹脂の温度差△Tは28℃と非常に大きかった。これらの結果から、実施例1においては、空隙vを形成させたことにより、主面側と裏面側の冷却速度が近くなったために、比較例1よりも反りが小さくなったものと思われる。
[参考例2〜10]
上記表2に示したように、隙間vの間隔(mm)、隙間vを形成するタイミングt1(秒)、インモールド材の熱伝導率、インモールド材,射出成形体の厚さ、を変更したときの熱伝導解析を参考例1と同様に行った。参考例2〜10の結果を図5〜図13に示す。
隙間vの間隔を変更した以外は同条件の参考例1〜4の結果を示す図4〜図7を参照すれば、隙間vの間隔を変化させることにより、射出成形体の裏面側(金型側)の冷却速度が変化していることがわかる。また、隙間vを形成するタイミングt1を変更した以外は同条件の参考例1、5,6,10の結果を示す図4、図8、図9、図13を参照すれば、隙間vを形成するタイミングt1を変化させることによっても、射出成形体の裏面側(金型側)の冷却速度が変化していることがわかる。なお、参考例10の図13を参照すれば、ガラス転移温度に到達した3.8秒以降の5.0秒のタイミングで隙間を形成した場合には、反り等の改良効果は低いと思われる。
[比較参考例2]
両面にインモールド材を設けた以外は、参考例1と同様の条件で解析した。結果を図15に示す。
本発明によれば、反りや歪みを抑制したインモールド成形体が得られる。このような製造方法により得られたインモールド成形体は、家電、車両、各種アクセサリー等の筐体やカバー等として用いられる。
1 インモールド材
2 射出成形用金型
2a 可動側型
2b 固定側型
3 射出成形機の射出部本体
3a ノズル
3b シリンダ
3c インラインスクリュ
4 充填ゲート
5 射出成形体
5a 溶融樹脂
10 インモールド成形体
c キャビティ
v 隙間

Claims (5)

  1. インモールド材を準備する工程と、
    可動側型と固定側型とを型締めすることによりキャビティを形成する射出成形用金型の該キャビティに前記インモールド材を収容して型締めし、該キャビティに溶融樹脂を充填することにより、成形される射出成形体の主面と前記インモールド材を一体化させる工程と、
    前記射出成形体の主面に対する裏面と、該裏面に対面する前記射出成形用金型の表面との間に隙間を設けた状態で所定の時間保持する工程と、
    前記可動側型と前記固定側型とを型開きして前記射出成形体を取り出す工程と、
    を備えることを特徴とするインモールド成形体の製造方法。
  2. 前記キャビティ内の前記射出成形体の前記裏面の温度が、前記射出成形体を形成する樹脂のガラス転移温度に達する前に、前記隙間を形成する請求項1に記載のインモールド成形体の製造方法。
  3. 前記隙間は、0.005〜2mmの範囲である請求項1または2に記載のインモールド成形体の製造方法。
  4. 前記インモールド材の熱伝導率が0.05〜0.50W/(m・K)である請求項1〜3の何れか1項に記載のインモールド成形体の製造方法。
  5. 前記インモールド材が繊維構造体を含有する層を含む請求項1〜4の何れか1項に記載のインモールド成形体の製造方法。
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