JP5266983B2 - 熱可塑性樹脂成形体の製造方法 - Google Patents
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また、一対の雌金型と雄金型キャビティ面の間に所定量の溶融状熱可塑性樹脂を供給し、前記雌雄金型を相対的に接近させ、さらに前記雌雄金型により加圧する熱可塑性樹脂の成形において、雌雄金型を接近させる際の両金型の相対速度は最大値Vmaxになるまで加速され、その後、相対速度がVmaxからゼロになるまで減速され、Vmaxは30mm/秒以上、300mm/秒以下であり、かつ、前記相対速度をVmaxの50%からVmaxの10%まで減速する期間の減速度が100mm/sec2以上である熱可塑性樹脂成形品の製造方法が開示されている(特許文献2参照)。
以上の課題に鑑み、本発明は、リングマークの発生を抑制し、外観良好な熱可塑性樹脂成形体を製造する方法を提供することを目的とする。
即ち、本発明はキャビティを形成するキャビティ面を有する一対の金型を、型締め方向のキャビティクリアランスが所定位置となるまで型締めを行う第一型締め工程と、前記金型を、型締め方向のキャビティクリアランスが所定位置となるまで開きながら前記キャビティへ熱可塑性樹脂の充填を開始する供給工程と、前記熱可塑性樹脂の供給が完了するまでに、前記金型の型締めを行う第二型締め工程を有する成形体の製造方法であって、前記金型の開閉を行う駆動装置の駆動源は、電動機であり、前記供給工程において、型開き状態から型開きを停止するまでの前記金型の型開き速度の減速度は、25mm/sec2以下であることを特徴とする熱可塑性樹脂成形体の製造方法を提供するものである。
ここで、本明細書における「型締め」とは、所定寸法のキャビティが各金型のキャビティ面により形成されるまで一対の金型を相対的に接近させること、又は、形成されたキャビティの寸法が変化しないように金型を保持することをいう。そして「型開き」とは、一対の金型を相対的に離隔させることをいう。
まず、本発明に係る成形体の製造方法において使用する金型について説明する。金型は、通常の射出成形やプレス成形に用いられる金型であれば、その形状は特に限定されるものではない。
次いで、本発明に係る成形体の製造方法について説明する。第一型締め工程は、この金型を型締め方向のキャビティクリアランスが所定位置まで型締めを行う工程である。ここで、本発明でいう所定位置とは、図3のC1又は図4のC7に示すように、後述する供給工程開始時の金型キャビティクリアランス(C2又はC8)と同等か、それよりも小さいクリアランスであれば、特に制限はない。図1において、雄型30はプレス装置(図示せず)の固定盤に固定され、他方が可動盤に固定され、駆動装置により可動盤が固定盤方向に移動して型締めを行う。
次いで、型締めされた金型を開きながらキャビティに溶融状の熱可塑性樹脂を供給する。熱可塑性樹脂の供給方法は、通常行われている供給方法を用いてもよい。例えば、図2に示されるように、雌雄一対の金型10で形成するキャビティ40内に、雄型30に形成された樹脂供給通路32を介して、樹脂供給ゲート320から溶融状の熱可塑性樹脂51を供給していく方法が挙げられる。
特にその表面にシボ等の凹凸形状を有しており、その溝深さが50μm以下の成形体ではリングマーク抑制の効果が大きく、シボ等の凹凸形状のない成形体ではリングマーク抑制効果がより大きい。
本発明における型開き速度とは、プレス装置の可動盤の位置を連続的に監視し、その移動量と移動に要する時間から、単位時間当りの変化量を算出した値を用いている。
型開き速度を0.5mm/sec以上とすることにより、型開きに要する時間が長くなりすぎて必要な位置(図3のC4又は図4のC10)まで型開きするまでに樹脂供給が終了してしまうことを防止することが可能となる。また、型開き速度を10mm/sec以下とすることにより、型開きが停止した時の流動速度の変化が大きくなって光沢ムラや転写ムラが発生してしまうことを防止することが可能となる。
減速度は、型開き速度を、減速開始した時点(図3のC3又は図4のC9)から停止位置(図3のC4又は図4のC10)で停止し、速度が0になるまでに要した時間で除した値とする。
なお、第一型締め工程と供給工程の間の時間は、特に制限はないが、成形サイクルの関係上できるだけ短い時間であることが好ましい。
本発明における溶融状熱可塑性樹脂の「供給速度」とは、射出装置から射出される樹脂容量と、その射出時間から、算出された単位時間当りの射出容量をいう。
金型キャビティクリアランスの最大値(C4)に達した後は型開きを停止し、熱可塑性樹脂の供給を継続する(図3参照)。その後、溶融状熱可塑性樹脂の供給が完了する前に、型締めを開始し、溶融状熱可塑性樹脂の供給が完了した(C5)後に型締めを完了する(C6)。
熱可塑性樹脂の供給が完了する前に型締めを開始することで、溶融状熱可塑性樹脂の流動を停止させることなく、賦形を行うことができ、リングマークの発生を防止できる。また、溶融状熱可塑性樹脂の供給が完了後に型締めを完了することで、低圧での樹脂供給が可能となる。型締めを開始するタイミングは溶融状熱可塑性樹脂の供給が完了する前であれば特に制限はない。
雌雄金型を型締めする時の型締め速度は、特に制限はないが、その最大値が30mm/sec以上、300mm/sec以下であることが好ましい。30mm/secとすることにより、型締めに要する力を小さくすることが可能となる。また、300mm/sec以下とすることにより型締め時に金型に係る衝撃を小さくすることが可能となる。
このときの加速度は、型締め速度を、停止状態から所定の型締め速度に達するまでに要した時間で除した値とする。
なお、型締め速度は途中で変更してもよいが、増速する場合は加速度が35mm/sec2以下、減速する場合は減速度が25mm/sec2以下とすることが好ましい。このようにすることにより、金型キャビティ表面を流動する流動速度の急激な変化をできるだけ小さくし、リングマークの発生を抑制することができる。
本発明では、上記第二型締め工程後に供給された熱可塑性樹脂を冷却する冷却工程を有していてもよい。
各キャビティ面21,31の具体的な冷却方法としては、図1に記載の雌型20内に設けられた温度調節通路220及び雄型30内に形成された温度調節通路310内に、例えば水のような冷却媒体を流通させて、キャビティ面21,31をそれぞれ冷却する方法が挙げられる。
なお、冷却時間としては、成形体を取り出したときに、変形しない温度となっていることが好ましい。具体的には、1秒〜60秒であることが好ましく、1秒〜40秒であることがより好ましい。冷却時間を上記の範囲とすることにより生産性の低下を防止することが可能となる。
以上の工程により本発明に係る成形体を得ることが可能となる。
なお、図では1、2では縦方向に型締めする例を示しているが、型締め方向は縦方向であっても横方向であってもよい。
合成樹脂のシートやフィルムとしては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂やポリオレフィン系熱可塑性エラストマーのシートやフィルムが挙げられ、基材樹脂として使用される熱可塑性樹脂との融着性が良好なものが好ましく使用される。
発泡層としては、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン発泡体、ポリ塩化ビニル発泡体、軟質又は半硬質のポリウレタン発泡体等が挙げられる。また、裏打ち層としては、例えば、不織布、合成樹脂シートやフィルム等が挙げられる。
なお、これらの多層表皮材は、熱可塑性樹脂からなる基材部分との接着性の観点から、熱可塑性樹脂との熱融着性が良好なものや表皮材裏面に溶融状熱可塑性樹脂が含浸して基材樹脂との接着が可能なもの等が好ましく使用される。
成形装置として商品名SLIM1016(佐藤鉄工所製、型締め力980kN、射出容量1600cc)を、熱可塑性樹脂として商品名住友ノーブレン(住友化学社製、MFR=30g/10分)を用いて、400×600mm、厚み2.5mmの寸法の成形体を成形した。得られた成形体のリングマーク発生状況を目視で確認し、その結果を表1に示す。表中、○は、リングマークの発生が目視で確認できなかったことを示し、×はリングマークの発生が目視で確認できたことを示す。
<成形条件>
樹脂温度:230℃
金型温度:50℃
第一型締め工程での型締め完了時のキャビティクリアランス:0mm
型開き速度:10mm/sec
溶融状熱可塑性樹脂を供給開始するキャビティクリアランス:5mm
型開きを停止するキャビティクリアランス:10mm
型締め速度:30mm/sec
溶融状熱可塑性樹脂を供給完了するキャビティクリアランス:5mm
型開きを停止する時の減速時間設定値:7sec
型締めを開始する時の加速時間設定値:5sec
加圧面圧:4MPa
冷却時間:30sec
型開き速度:5mm/sec
型締め速度:50mm/sec
型開きを停止する時の減速時間設定値:5sec
型締めを開始する時の加速時間設定値:5sec
とした以外は実施例1と同様に成形した。
型開きを停止する時の減速時間設定値:5sec
型締めを開始する時の加速時間設定値:3sec
とした以外は実施例1と同様に成形した。
型開きを停止する時の減速時間設定値:1sec
型締めを開始する時の加速時間設定値:3sec
とした以外は実施例2と同様に成形した。
20 雌型
21、31 キャビティ面
30 雄型
32 樹脂供給通路
220、310 温度調節通路
320 樹脂供給ゲート
40 キャビティ
50 射出装置
51 熱可塑性樹脂
Claims (5)
- キャビティを形成するキャビティ面を有する一対の金型を、型締め方向のキャビティクリアランスが所定位置となるまで型締めを行う第一型締め工程と、
前記金型を、型締め方向のキャビティクリアランスが所定位置となるまで開きながら前記キャビティへ熱可塑性樹脂の充填を開始する供給工程と、
前記熱可塑性樹脂の供給が完了するまでに、前記金型の型締めを行う第二型締め工程を有する成形体の製造方法であって、
前記金型の開閉を行う駆動装置の駆動源は、電動機であり、
前記供給工程において、型開き状態から型開きを停止するまでの前記金型の型開き速度の減速度は、25mm/sec2以下であることを特徴とする熱可塑性樹脂成形体の製造方法。 - 前記供給工程開始時における前記金型の型開き速度は、0.5mm/sec以上10mm/sec以下である請求項1に記載の熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
- 前記第二型締め工程開始時における前記金型の型締め速度の加速度は、35mm/sec2以下である請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
- 前記第二型締め工程における前記金型の型締め速度の最大値は、30mm/sec以上300mm/sec以下である請求項1から3いずれかに記載の熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
- 前記供給工程における熱可塑性樹脂の供給速度は、600cc/sec以上である請求項1から4いずれかに記載の熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
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