まず、図1を用いて流速の測定原理について説明する。流体が流れる配管3の内部に送受波器1、2は対向して配置される。上流側に配置された送受波器1から下流側に配置された送受波器2への順方向到達時間t1は、次式で示される。
t1=L/(C+V)・・・(1)
ここで、Cは超音波の流体中の音速、Vは流体の流速、距離Lは送受波器1、2間の距離である。
送受波器2から送受波器1への逆方向到達時間t2は、次式で示される。
t2=L/(C−V)・・・(2)
式(1)、(2)より、流速Vは次式より算出される。
V=(L/2)((1/t1)−(1/t2))・・・(3)
従って、順方向到達時間t1および逆方向到達時間t2を測定すれば、式(3)により、流速Vを算出することができる。また、流量は流速Vに配管3の断面積を乗じて求められる。
また、図1では送受波器1、2の上流に整圧器4が設置された場合を示している。整圧器4は例えばガバナ等であり絞り機構を有するため、音響ノイズを発する場合がある。絞り機構において、流体の流速が速くなるためである。音響ノイズは測定に使用される超音波に混入し、送受波器1、2に受信される場合がある。この場合、音響ノイズが混入した受信波を順方向到達時間t1および逆方向到達時間t2の測定に使用すると、誤った流速Vを算出してしまう。そこで、実施形態では、音響ノイズの影響が少ない受信波を順方向到達時間t1および逆方向到達時間t2の測定に使用する方法について説明する。尚、図1では整圧器4が設置される場合を例示しているが、整圧器4に限らず、バルブなども音響ノイズ源となる場合がある。
実施形態に係る超音波流量計の電気的構成について図2を用いて説明する。送受波器1、2は切替スイッチ5を介して送波器駆動部7に接続される。また、送受波器1、2は切替スイッチ6を介して受信波検出部8に接続される。切替スイッチ5、6、送波器駆動部7、および受信波検出部8は制御部9に接続される。
順方向到達時間t1を測定する場合には、制御部9からの送受切替信号Sig1により切替スイッチ5、6が切替えられ、送受波器1は送波器駆動部7に接続される。また、送受波器2は受信波検出部8に接続される。次に、制御部9から送波器駆動部7にスタート信号Sig2が送信される。送波器駆動部7はスタート信号Sig2を受信すると、送受波器1を駆動する。これにより、送受波器1は超音波を発する。流体中を伝搬した超音波は送受波器2に受信される。受信波検出部8は送受波器2により受信された受信波を受信波検出信号Sig3に変換し、制御部9へ送信する。制御部9はスタート信号Sig2の送信時刻から受信波検出信号Sig3の受信時刻までの時間である順方向測定時間tc1(図3、参照)を測定し、記憶する。
一方、逆方向到達時間t2を測定する場合には、制御部9からの送受切替信号Sig1により切替スイッチ5、6が切替えられ、送受波器2は送波器駆動部7に接続される。また、送受波器1は受信波検出部8に接続される。そして、順方向到達時間t1の場合と同様に、測定が行われる。つまり、送波器駆動部7は送受波器2を駆動し、送受波器2より超音波が発せられる。流体中を伝搬した超音波は送受波器1に受信され、受信波検出部8により受信波検出信号Sig3に変換され、制御部9へ送信される。制御部9は、スタート信号Sig2の送信時刻から受信波検出信号Sig3の受信時刻までの時間である逆方向測定時間tc2を測定し、記憶する。
制御部9は記憶した順方向測定時間tc1および逆方向測定時間tc2に基づき、流速Vおよび流量を算出する。尚、順方向測定時間tc1および逆方向測定時間tc2の算出等の詳細については後述する。
ここで、受信波の特性について説明する。図3にスタート信号Sig2および音響ノイズを含まない正規の受信波形を示す。受信波は第1波W1から第8波W8まで、各波のピークの大きさは次第に大きくなり、その後、次第に小さくなる。各波のピークの大きさを比較すると、正側では、第3波/第1波で最大となり、第5波/第3波、第7波/第5波と小さくなる。負側では、第4波/第2波で最大となり、第6波/第4波、第8波/第6波と小さくなる。ここで、第3波/第1波は、各波のピークの比率を表しており、(第3波W3のピーク)/(第1波W1のピーク)を簡略化して示したもので、他の比率についても同様である。特に第3波/第1波は他の比率に比べ十分大きい。このため、比率の大きさを検出することで、第3波W3を検出することができる。
続いて、第3波W3の検出方法について説明する。第3波W3の検出には、等比数列となる5つの基準電圧Vth1〜Vth5を用いる。具体的に説明すると、例えば、基準電圧Vth1〜Vth5の電圧値を略1.4倍ずつ大きくなるよう設定する。ここでは、基準電圧Vth1の電圧値から順に、100mV、140mV、196mV、274mV、384mVとする。ここで、倍率を略1.4倍とするのは、第3波/第1波の比率が3程度、第5波/第3波の比率が1.5程度となることが実験により確認される場合である。3レベル上の基準電圧として略2.7倍(1.4×1.4×1.4)とすることができ、比率が1.5倍より大きく3倍より小さくなるように設定することができる。これにより、例えば、基準電圧Vth1を超えた波の次の波が、基準電圧Vth1より3レベル上の基準電圧Vth4を超えていれば、その波が第3波W3であると判別することができる。尚、倍率は送受波器1、2の種類などにより変化する値である。
第3波W3を検出することができれば、第3波W3のゼロクロス点であるC点を検出することができる。これにより、スタート信号Sig2の送信時刻から第3波W3のゼロクロス点であるC点までの時間を測定することができる。図3において、順方向到達時間t1の測定の場合を説明する。スタート信号Sig2の送信時刻から第3波W3のゼロクロス点であるC点までの時間が順方向測定時間tc1である。順方向測定時間tc1から時間z1を減じて、順方向到達時間t1とする。時間z1は受信波の1.5周期に相当し、超音波の特性等から予め求めておく。一方、逆方向到達時間t2についても同様に算出する。すなわち、逆方向測定時間tc2から時間z2を減じて、逆方向到達時間t2とする。
第1実施形態では、前述の第3波W3の検出に追加して、第3波W3の次の正側の波の波高値および各波のゼロクロス点間の時間を用いて、音響ノイズの影響の少ない受信波を判別する構成としている。例えば、第3波W3が基準電圧Vth4を超えた場合、後続の正側の波である第5波W5、第7波W7も基準電圧Vth4を超える。従って、基準電圧Vth4を連続して超える回数をカウントし所定回数となれば、音響ノイズの影響が少ない受信波を検出していると判別できる。さらに、超音波の周期は一定であるので、連続するゼロクロス点間の時間が所定範囲となる回数をカウントし所定回数となれば、音響ノイズの影響が少ない受信波であることがより確実に判別できる。
次に、第1実施形態に係る制御部9の構成について説明する。図4、5は制御部9を構成する回路のブロック図である。尚、図4、5において、一部の回路ブロックについては省略して示している。制御部9は検出部20、波高値判定部30、周期判定部40、第3波確定部50、および確定部60を含む。波高値判定部30は第3波仮確定部31、波高値監視部32を含む。周期判定部40は正周期監視部41、負周期監視部42、周期監視部43を含む。確定部60は到達時間第1計測部61、到達時間第2計測部62、ST生成部63、確定到達時間記憶部64を含む。
続いて、制御部9の動作の概要について説明する。検出部20は受信波の波高値Vwと基準電圧Vth(n)(n=1〜5の整数)とを比較することにより、第3波W3を検出する。また、第3波W3より遅れて到達する波であって、波高値が第3波W3の波高値が超えた基準電圧Vth4またはVth5を超える波を検出する。
波高値判定部30および周期判定部40は検出部20の後段に接続される。波高値判定部30は第3波W3に引き続いて到達する波の波高値が、第3波W3の波高値が超えた基準電圧Vth4またはVth5を連続して超える回数である電圧回数をカウントし、所定回数と一致するか否かを判定する。周期判定部40は隣り合うゼロクロス点間の時間が連続して所定時間の範囲となる回数である周期回数をカウントし、所定回数と一致するか否かを判定する。また、波高値判定部30は、検出部20が第3波W3を検出することに応じて第3波W3が検出されたことを報知する信号である第3波仮確定信号Stを生成する(後述)。
第3波確定部50は波高値判定部30および周期判定部40の後段に接続される。電圧回数が所定回数に達したことを波高値判定部30が判断すること、かつ周期回数が所定回数に達したことを周期判定部40が判断することに応じて、第3波確定信号Sdを生成する(後述)。測定した受信波が音響ノイズの影響が少ない受信波であると判断されるためである。
確定部60は波高値判定部30、周期判定部40、および第3波確定部50の後段に接続される。確定部60はスタート信号Sig2の送信時刻から第3波仮確定信号Stを受け取るまでの時間である仮測定時間TDを測定し、一時的に記憶しておく。第3波確定信号Sdを受け取るまでは、一時的に記憶されている仮測定時間TDが音響ノイズの影響が少ない受信波を測定した時間であるか否かが未定の状態であるためである。次に、第3波確定信号Sdを受け取ると、一時的に記憶されている仮測定時間TDを測定時間として確定して記憶する。測定した時間が音響ノイズの影響が少ない受信波を測定した時間であると判断されるためである。ここで、測定時間とは、順方向測定時間tc1および逆方向測定時間tc2の総称である。
続いて、図4、5に示す制御部9の詳細な動作および構成について受信波形(図3)を用いながら説明する。検出部20には受信波の波高値Vwおよび基準電圧Vth(n)が入力される。また、検出部20は波高値検出信号VEを出力する。ここで、受信波の波高値Vwとは、受信波検出部8(図2)より送信される受信波検出信号Sig3(図2)が不図示の増幅器により増幅された電圧信号である。また、基準電圧Vth(n)は、基準電圧Vth1〜Vth5の総称である。
検出部20は、例えば3つの比較器および各比較器の一方の入力端子に接続される3つのスイッチを有する。各比較器の他方の入力端子には、波高値Vwが入力される。また、制御部9は、基準電圧Vth(n)を出力する不図示の基準レベル発生部を含む。スイッチにより、各比較器の一方の入力端子と基準レベル発生部の出力端子との接続が切替えられる。まず、各比較器の一方の入力端子と基準レベル発生部の基準電圧Vth1〜Vth3を出力する出力端子とがそれぞれ接続される。これにより、受信波の波高値Vwと基準電圧Vth1〜Vth3とが比較される。A点(図3)で第1波W1の波高値Vwは基準電圧Vth1を超える。検出部20では基準電圧Vth1を超えることを検出することに応じて、その後スイッチが切替えられる。具体的には、各比較器の一方の入力端子と基準レベル発生部の基準電圧Vth2〜Vth4を出力する出力端子とがそれぞれ接続される。これにより、第3波W3の波高値Vwと基準電圧Vth2〜Vth4とが比較される準備が整う。B点(図3)で第3波W3の波高値Vwは基準電圧Vth2〜Vth4を一気に超える。検出部20では、B点で第3波W3の波高値Vwが基準電圧Vth2〜Vth4を一気に超えることを検出することに応じて、波高値検出信号VEを出力する。さらに、検出部20は第3波W3に後続する各波の波高値Vwが基準電圧Vth4を超える度に波高値検出信号VEを出力する。
上記の説明では、第1波W1の波高値Vwが基準電圧Vth1を超える場合について説明した。第1波W1の波高値Vwが基準電圧Vth2を超える場合には、第3波W3の波高値Vwと基準電圧Vth3〜Vth5とが比較されるようにスイッチが切替えられる。この場合には、検出部20は第1波W1に後続する各波の波高値Vwが基準電圧Vth5を超える度に波高値検出信号VEを出力する。また、第1波W1の波高値Vwが基準電圧Vth3を超えない程度に受信波の波高値Vwの増幅率は調整される。また、比較器に入力する基準電圧Vth(n)をスイッチにより切替えることにより、3つの比較器を備えていれば3レベルの基準電圧Vth(n)と受信波の波高値Vwとを比較することができる構成としている。
次に、波高値判定部30について説明する。第3波仮確定部31には波高値検出信号VEおよびゼロクロス信号Zcが入力される。第3波仮確定部31は第3波仮確定信号Stを出力する。ここで、ゼロクロス信号Zcとは受信波のゼロクロスのタイミングと同期する信号であり、不図示のゼロクロス検出部により生成される。例えば正側の波のゼロクロス点間でハイレベルとなり、負側の波のゼロクロス点間でローレベルとなる信号である。第3波仮確定部31は波高値検出信号VEおよびゼロクロス信号Zcより、B点(図3)でハイレベルとなり、C点(図3)でローレベルとなる第3波仮確定信号Stを生成し、出力する。
波高値監視部32には第3波仮確定信号St、ゼロクロス信号Zc、波高値検出信号VE、波高値判定値Nvが入力される。また、波高値監視部32は波高値成立信号Svおよび波高値不成立信号NSvを出力する。ここで、波高値判定値Nvとは、電圧回数の判定に使用する基準値である。波高値監視部32は波高値検出信号VEが連続して入力される電圧回数をカウントし、カウント値が波高値判定値Nvに達すると波高値成立信号Svをハイレベルにする。一方、カウント値が波高値判定値Nvに達する前に波高値検出信号VEが途絶えると波高値不成立信号NSvを出力する。具体的には、波高値監視部32は第3波仮確定信号Stが入力されると、不図示のカウンタをリセットするとともにカウントを始める。続いて、波高値検出信号VEが入力される度にカウントアップする。また、カウント値が波高値判定値Nvに達すると、波高値成立信号Svをハイレベルとする。
図3において、B点を検出することにより出力される第3波仮確定信号Stに応じてカウントを始める。続いて、第5波W5、第7波W7の波高値Vwが基準電圧Vth4を超えることに応じて順次カウントアップされカウント値は3となる。例えば、波高値判定値Nvが3と設定されている場合、この時点でカウント値が波高値判定値Nvと一致すると判断されるため、波高値成立信号Svをハイレベルとする。
また、カウント値が波高値判定値Nvに達する前に正側の波の波高値が基準電圧Vth4を超えないと判断されると、波高値監視部32は波高値不成立信号NSvを出力する。例えば、ゼロクロス信号Zcと波高値検出信号VEとを比較することにより、正側の波の波高値が基準電圧Vth4を超えないと判断することができる。すなわち、ゼロクロス信号Zcがハイレベルの期間に波高値検出信号VEが入力されなければ、波高値不成立信号NSvを出力する。
波高値不成立信号NSvが出力される場合について、図6を用いて説明する。図6に示す受信波は第4波W4までは図3に示す正規の受信波と同一であるが、第5波WN5に音響ノイズが混入した場合を示している。B点で発生する第3波仮確定信号Stが入力されることにより、波高値監視部32はカウントを始める。しかし、第5波WN5の波高値Vwが基準電圧Vth4を超えないため、波高値監視部32に波高値検出信号VEは入力されない。これにより、波高値監視部32は波高値不成立信号NSvを出力する。
次に、周期判定部40について説明する。正周期監視部41および負周期監視部42にはゼロクロス信号Zc、周期下限値FL、周期上限値FU、周期クロック信号TCLKが入力される。また、正周期監視部41は正周期成立信号Spおよび正周期不成立信号NSpを出力する。また、負周期監視部42は負周期成立信号Snおよび負周期不成立信号NSnを出力する。ここで、周期下限値FLおよび周期上限値FUは音響ノイズの影響が少ない受信波であるか否かの判断に使用する周期の基準値である。ゼロクロス信号Zcの半周期が周期下限値FLと周期上限値FUとの間にあれば音響ノイズの影響が少ない受信波の周期であると判断される。また、周期クロック信号TCLKは周期の計測に使用する基準クロックである。正周期監視部41および負周期監視部42はそれぞれ正側、負側の波の両端のゼロクロス点間の時間である受信波の半周期T(n)を計測する。ここで、半周期T(n)とは、第n波のゼロクロス点間の時間であり、例えば半周期T1〜T8(図3)である。
正側の波の半周期T(n)が周期下限値FL以上であり周期上限値FU以下であると判断すると、正周期監視部41は正周期成立信号Spをハイレベルとする。また、負側の波の半周期T(n)が周期下限値FL以上であり周期上限値FU以下であると判断すると、負周期監視部42は負周期成立信号Snをハイレベルとする。測定する受信波が音響ノイズの影響が少ない受信波であると判断されるためである。
一方、正側の波の半周期T(n)が周期下限値FL未満であるか、または周期上限値FUより大きいと判断されると、正周期監視部41は正周期不成立信号NSpを出力する。また、負側の波の半周期T(n)が周期下限値FL未満であるか、または周期上限値FUより大きいと判断されると、負周期監視部42は負周期不成立信号NSnを出力する。測定する受信波が音響ノイズの影響が少ない受信波ではないと判断されるためである。
周期監視部43には正周期成立信号Sp、負周期成立信号Sn、および周期判定値Nfが入力される。また、周期監視部43は周期成立信号Sfを出力する。ここで、周期判定値Nfとは周期回数の判定に使用する基準値である。周期監視部43は正周期成立信号Spおよび負周期成立信号Snが連続してハイレベルとなる回数をカウントし、周期回数であるカウント値が周期判定値Nfと一致すると、周期成立信号Sfをハイレベルとする。
周期成立信号Sfがハイレベルとなる場合について、図3を用いて説明する。正周期監視部41は半周期T1、T3、T5、T7が、周期下限値FL以上であり周期上限値FU以下であるか否かを順次比較する。また、負周期監視部42は半周期T2、T4、T6、T8が、周期下限値FL以上であり周期上限値FU以下であるかを順次比較する。この場合、半周期T1〜T8はすべて周期下限値FL以上であり周期上限値FU以下であるので、正周期成立信号Spおよび負周期成立信号Snはハイレベルとなる。周期監視部43がカウントするカウント値は半周期T8をカウントした時点で8となる。例えば、周期判定値Nfが8と設定されている場合、カウント値が周期判定値Nfと一致すると判断されるため、周期成立信号Sfをハイレベルとする。
一方、図6に示す音響ノイズが混入した受信波を測定した場合には、第5波WN5の周期TN5が周期上限値FUよりも大きいため、正周期監視部41は正周期不成立信号NSpを出力する。
ここで、正周期監視部41の回路構成について具体的に説明する。正周期監視部41は不図示のSRFF(Set Reset flip−flop)回路、カウンタ回路、およびラッチ回路などを含む。カウンタ回路はゼロクロス信号Zcの立ち上がりから立ち下りまでの時間を周期クロック信号TCLKに基づきカウントする。カウンタ回路の後段に例えば比較回路が接続されており、カウンタ回路から出力されるカウント値が、周期下限値FL以上であり周期上限値FU以下である場合になると、SRFF回路のセット端子にパルスを出力する。これにより、SRFF回路の出力はハイレベルとなる。また、カウンタ回路から出力されるカウント値が、周期下限値FL未満であるか、または周期上限値FUより大きくなると、比較回路からSRFF回路のリセット端子にパルスが入力される。これにより、SRFF回路の出力はローレベル出力となる。SRFF回路の後段にはラッチ回路が接続されており、ゼロクロス信号Zcの立下りでSRFF回路の出力はラッチ回路によりラッチされる。ラッチ回路にラッチされている信号がハイレベルであれば、正周期監視部41は正周期成立信号Spをハイレベルとする。一方、ラッチ回路にラッチされている信号がローレベルであれば、正周期不成立信号NSpを出力する。
次に、第3波確定部50について説明する。第3波確定部50には波高値成立信号Svおよび周期成立信号Sfが入力される。また、第3波確定部50は第3波確定信号Sdを出力する。第3波確定部50は波高値成立信号Svおよび周期成立信号Sfがともにハイレベルであると、第3波確定信号Sdをハイレベルとする。
次に、確定部60について図5を用いて説明する。到達時間第2計測部62には第3波仮確定信号St、超音波測定時間TIME、およびクロック信号CLKが入力される。到達時間第2計測部62は超音波を発信した時刻から第3波仮確定信号Stのハイレベルが入力されるまでの仮測定時間TDをクロック信号CLKに基づき計測する。超音波測定時間TIMEはスタート信号Sig2に同期した信号である。到達時間第2計測部62は超音波測定時間TIMEがパルス入力されるとカウントを開始する。また、第3波仮確定信号Stのハイレベルが入力されるとカウントを停止する。
確定到達時間記憶部64は仮測定時間TDおよび第3波確定信号Sdが入力される。第3波確定信号Sdが入力されると仮測定時間TDを測定時間として記憶する。
到達時間第1計測部61は超音波測定時間TIMEおよびクロック信号CLKが入力される。到達時間第1計測部61は超音波測定時間TIMEがパルス入力されるとカウントを開始する。
ST生成部63には波高値不成立信号NSv、正周期不成立信号NSp、および負周期不成立信号NSnが入力され、いずれか1つの信号が活性化されるとST信号STを出力する。
確定部60は第3波仮確定信号Stが入力されると、到達時間第2計測部62において仮測定時間TDを一時的に記憶する。そして、第3波確定信号Sdが入力されると、仮測定時間TDは音響ノイズの影響が少ない受信波を測定した測定時間であると判断し、確定到達時間記憶部64に記憶する。一方、波高値不成立信号NSv、正周期不成立信号NSp、および負周期不成立信号NSnのいずれか1つが入力されると、ST生成部63において仮測定時間TDは音響ノイズが混入した受信波を測定したと判断され、ST信号STが到達時間第2計測部62に入力される。これにより、到達時間第2計測部62では、一時的に記憶していた仮測定時間TDを破棄し、到達時間第1計測部61からカウント値Ctを受け取り、計測を再開する。これにより、音響ノイズが混入した受信波について測定をした場合においても、一時的に記憶した仮測定時間TDを破棄して次の音響ノイズの影響が少ない受信波について測定を継続することができる。
ここで、到達時間第2計測部62は計測部の一例である。また、波高値成立信号Svは波高値判定結果の一例であり、周期成立信号Sfは周期判定結果の一例である。
以上、上記した第1実施形態によれば、以下の効果を奏する。
例えば波高値Vwが基準電圧Vth1を超えた次の波の波高値Vwが、基準電圧Vth1より3レベル上の基準電圧Vth4を超えること、および受信波の隣接するゼロクロス間の時間が所定時間の範囲内であることが、それぞれ所定回数連続することで、確定部60で計測された仮測定時間TDが音響ノイズの影響が少ない受信波の波形を計測したものであるとすることができる。受信波の波高値Vwが基準電圧Vth4を連続して超える回数、および隣接するゼロクロス間の時間が連続して所定時間の範囲内である回数を、それぞれ所定回数とするので、音響ノイズではない音響ノイズの影響が少ない受信波形を確実にとらえることができる。
尚、音響ノイズの影響が少ない受信波とは、音響ノイズが混入していない正規の受信波に対して、音響ノイズが小さい状態において受信された受信波である。音響ノイズが受信波に混入しても、音響ノイズが小さい状態であれば、受信波のC点を検出することができる。これにより、流速Vおよび流量を算出することができる。
次に第2実施形態について説明する。第2実施形態は、安定周波数和Afwを基準値として、測定した順方向測定時間tc1および逆方向測定時間tc2の中から、音響ノイズの影響が少ない受信波について測定した正しい順方向測定時間tc1および逆方向測定時間tc2を選別する構成である。これにより、流速Vを精度良く求めることができる。
まず、安定周波数和Afwについて説明する。
順方向到達時間t1の逆数である順方向周波数fjと逆方向到達時間t2の逆数である逆方向周波数fgとの和を周波数和fwとする。周波数和fwは式(1)、(2)より次式で示される。
fw=(1/t1)+(1/t2)=2C/L・・・(4)
音速Cは流体の種類および温度などに依存する。換言すれば、流体の種類および温度が一定であれば、音速Cは一定の値となる。また、距離Lが一定であれば、周波数和fwも一定の値となる。第2実施形態では、音響ノイズの影響が少ない受信波についてあらかじめ周波数和fwを測定により求めおき安定周波数和Afwとする。その後、測定した順方向到達時間t1および逆方向到達時間t2より周波数和fwを算出し、安定周波数和Afwと比較する。周波数和fwと安定周波数和Afwとの差が所定値を超える場合は、測定に失敗したと判断し、その時の測定値は流速Vの算出には用いない。安定周波数和Afwを算出してから流速Vを求める測定を終えるまでの時間は短く、温度は略一定であり、音響ノイズを含まず算出される周波数和fwも略一定となる。
次に第2実施形態の電気的構成について説明する。第2実施形態の超音波流量計は図2に示す構成に追加して不図示の第2制御部、操作部、および表示部を有する。第2制御部は制御部9を制御する。また、第2制御部は処理部、記憶部などを有する。第2制御部は記憶部に記憶されている各種のプログラムを実行することによって、後述する安定周波数和算出処理および流量算出処理を行う。制御部9は第2制御部からの指令に基づき、送受切替信号Sig1およびスタート信号Sig2を送信する。第2制御部は制御部9から順方向測定時間tc1および逆方向測定時間tc2を受信すると、記憶部に記憶する。また、処理部において、例えば流速Vなどを算出する。また、第2制御部は操作部および表示部と接続される。操作部は超音波流量計の電源スイッチ、各種設定ボタンを有する。ユーザは操作部を操作することにより、各種設定を行うことができる。また、表示部は例えば液晶パネルを備えており、表示パネルに流量が表示される。
次に、安定周波数和算出処理について図7により説明する。安定周波数和算出処理は超音波流量計の起動時に行われる。まず、n回繰り返して以下の測定行う。すなわち、順方向測定時間tc1(n)を測定し、時間z1を減じることで順方向到達時間t1(n)を算出して記憶する(S2)。次に、逆方向測定時間tc2(n)を測定し、時間z2を減じることで逆方向到達時間t2(n)を算出して記憶する(S4)。順方向測定時間tc1(n)および逆方向測定時間tc2(n)の測定は、第1実施形態の方法を用いて行う。次に、順方向到達時間t1(n)の逆数である順方向周波数fj(n)を算出し、記憶部に格納する(S6)。逆方向到達時間t2(n)の逆数である逆方向周波数fg(n)を算出し、記憶部に格納する(S8)。次に測定を規定回数実施したか否かを判断し(S10)、規定回数実施していると判断することに応じて(S10;yes)、ステップS14へ進む。一方、規定回数実施していないと判断することに応じて(S10;no)、ステップS2へ戻り、測定を続ける。
ここで、ステップS2〜S10について図8を用いて説明する。図8に、第2制御部から制御部9へ送信される制御信号の波形および超音波の受信波形を示す。まず、1番目の測定および算出について図8の拡大図に基づき説明する。J1パルスは1番目の順方向測定時間tc1(1)の測定を行うための信号であることを示す。同様に、J2パルス〜J80パルスは、2番目から80番目の順方向測定時間tc1(2)〜tc1(80)の測定を行うための信号である。また、G1パルスは1番目の逆方向測定時間tc2(1)の測定を行うための信号であることを示す。同様に、G2パルス〜G80パルスは、2番目から80番目の逆方向測定時間tc2(2)〜tc2(80)の測定を行うための信号である。制御部9はJ1パルスを受信すると、送受切替信号Sig1、およびスタート信号Sig2を、それぞれ切替スイッチ5、6、および送波器駆動部7へ送信する。これにより、順方向測定時間tc1(1)が測定される。同様に、制御部9はG1パルスを受信すると、送受切替信号Sig1、およびスタート信号Sig2を、それぞれ切替スイッチ5、6、および送波器駆動部7へ送信する。これにより、逆方向測定時間tc2(1)が測定される。
制御部9は順方向測定時間tc1(1)を第2制御部へ送信する。ここで、順方向到達時間t1(1)は、制御部9により、順方向測定時間tc1(1)から、時間z1を減じて算出される。次に、順方向周波数fj(1)を算出する(S6)。次に制御部9は逆方向測定時間tc2(1)を第2制御部へ送信する。ここで、逆方向到達時間t2(1)は、制御部9により、逆方向測定時間tc2(1)から、時間z2を減じて算出される。次に、第2制御部は逆方向周波数fg(1)を算出する(S8)。尚、図8では、簡単のため、J1パルスの送信時刻からC点までの時間を順方向測定時間tc1(1)と示しているが、実際にはスタート信号Sig2の発信時刻からC点までの時間が順方向測定時間tc1(1)である。また、逆方向測定時間tc2(1)についても同様に、実際にはスタート信号Sig2の発信時刻からC点までの時間が逆方向測定時間tc2(1)である。
測定は順方向到達時間t1(1)の測定と逆方向到達時間t2(1)の測定を1セットとし、1基点目から所定間隔で8回行う。次に1基点目から所定時間経過後の2基点目から次の測定を行う。さらに、同様に、基点10基点目まで測定する。即ち、順方向到達時間t1(n)の測定および逆方向到達時間t2(n)の測定を、それぞれ80回行う(n=1〜80)。そこで、ステップS10では、80回測定したか否かを判断する。
次に、図7に戻り、安定周波数和算出処理について説明を続ける。80回の測定から算出された逆方向周波数fg(n)に対して採用データ決定処理を行う(S14)。採用データ決定処理については図9に示す。まず、逆方向周波数fx(n)(この場合、x=g)を5つの領域(Rm(m=1〜5))に振り分け、領域(Rm)毎に周波数の平均値f_AVE(m)を算出する(S30)。次に各領域(Rm)のデータ数でソートする(S32)。次にデータ数を多い順に並べた場合の上位2位の領域(Rm)の平均値f_AVE(m)の大きい方を確定値f_AVEとする(S34)。次に、図7に示すステップS16に戻る。ステップS16では、確定値f_AVEを確定した逆方向周波数であるとして確定逆方向周波数Kfgとする。
ここで、ステップS14〜S16について説明する。
第1実施形態の測定方法を用いても、音響ノイズが混入した受信波に対して順方向測定時間tc1および逆方向測定時間tc2を測定する可能性がある。そこで、順方向測定時間tc1(n)および逆方向測定時間tc2(n)の測定を複数回行い、得られた順方向到達時間t1(n)および逆方向到達時間t2(n)の中から音響ノイズの影響が少ない受信波を用いた順方向到達時間t1および逆方向到達時間t2を抽出して、安定周波数和Afwを求めることが必要となる。
さて、図1を用いて、音響ノイズの混入について説明する。音響ノイズを発する整圧器4は送受波器1、2の上流側に設置されている。このため、逆方向到達時間t2(n)は音響ノイズの影響を受けにくく、順方向到達時間t1(n)は、超音波が音響ノイズの伝搬方向と同方向であるので音響ノイズの影響を受けやすい。逆方向到達時間t2(n)の測定は、整圧器4から発せられる音響ノイズの伝搬方向とは逆方向に超音波が伝搬するのに対して、順方向到達時間t1(n)の測定では、整圧器4から発せられた音響ノイズと同方向に超音波が伝搬するからである。そこで、まず、音響ノイズの影響を受けにくい逆方向到達時間t2(n)について、音響ノイズの影響が少ない受信波について測定した逆方向到達時間t2(n)を求める。
図10はステップS2〜S10に示す処理をさらに複数回行い、得られた逆方向周波数fg(n)のプロット図である。図の横軸は測定番号、縦軸は周波数である。図10に示すように逆方向周波数fg(n)は層状に分布する。ここで、層状に分布する理由について、図3を用いて説明する。順方向測定時間tc1(n)の測定では、波高値Vwが基準電圧Vth4を超える第3波W3のゼロクロス点であるC点までの時間を測定する。しかし、音響ノイズが混入すると、第3波W3の波高値Vwが小さくなり、基準電圧Vth4を超えない場合がある。この場合、第5波W5の波高値VwがBf点で基準電圧Vth4を超えると、制御部9では第5波W5のゼロクロス点であるCf点までの時間である時間tcfが順方向測定時間tc1(n)であると誤測定してしまう。ここで、時間tcfと順方向測定時間tc1(n)との差である時間Tは受信波の1周期に相当する。音響ノイズの影響から波高値Vwを測定できないことを考えると、1周期の時間Tごとに離散的な順方向測定時間tc1(n)が測定されることとなる。従って、順方向測定時間tc1(n)から算出される順方向周波数fj(n)も、時間Tに起因した周波数値ごとに離散的な分布となる。尚、順方向周波数fj(n)について説明したが、逆方向周波数fg(n)についても同様である。
図10に示す周波数f1〜f6は、時間Tに起因した周波数値である。また、周波数f1以上であって周波数f2より小さい値の領域を領域R1とする。領域R2〜R5も同様に隣接する周波数間で定義される領域である。領域R1〜R5がステップS30における5つの領域に相当する。つまり、領域R1〜R5に振り分けることで、得られた逆方向周波数fg(n)が受信波の何番目の波について測定して得られた波かを振り分けることになる。そして、波高値Vwが第1波W1に対して一気に大きくなる第3波W3と第5波W5が、ステップS32においてデータ数でソートした上位2位の領域(Rm)に振り分けられる。ステップS34における平均値f_AVE(m)の大きい方とは、即ち逆方向到達時間t2(n)の小さい方である。ここでは、第5波W5よりも早く到達する第3波W3のゼロクロス点(C点)までの時間が、逆方向到達時間t2と判断される。以上により、確定逆方向周波数Kfgが決定される(S16)。
尚、フローチャートでは示していないが、ステップS2、S4において、測定した順方向測定時間tc1(n)または逆方向測定時間tc2(n)の測定に失敗する場合がある。測定に失敗する場合とは、例えば設定した時間内に受信波を検出できず、所謂タイムアウトとなる状態である。この場合、失敗した測定番号の順方向測定時間tc1(n)または逆方向測定時間tc2(n)はデータとして取得しないで次の測定に移る。従って、ステップS14の採用データ決定処理において処理されるデータ数は、測定に失敗した場合には、測定に失敗した個数分だけ少ないデータとなる。また、80回の測定がすべて失敗の場合には、測定エラーとして安定周波数和算出処理を終了する。この場合は、音響ノイズが定常的に発生している状態であると考えられるため安定周波数和算出処理は困難であると判断される。この場合、音響ノイズが収束するまで所定時間待機して、再び安定周波数和算出処理を行う。
図7に戻り、安定周波数和算出処理について説明を続ける。次に、順方向周波数fj(n)のうち、図1に示す流体の流れを測定する超音波流量計を備えた系において、使用最大流量から算出される最大流量の範囲(H)を超えるものを除外する。この場合の、順方向周波数fj(n)は明らかに音響ノイズの影響を受けていると考えられるからである。具体的に説明する。まず、順方向周波数fj(n)と確定逆方向周波数Kfgとの差の絶対値である周波数差fs(n)を算出する(S18)。次に、周波数差fs(n)が範囲H以下をなる順方向周波数fj(n)を有効順方向周波数fej(n)とする(S20)。次に、確定逆方向周波数Kfgと有効順方向周波数fej(n)との和である有効周波数和few(n)を算出する(S22)。次に、有効周波数和few(n)についてステップS14と同様に採用データ決定処理を行い(S26)、安定周波数和Afwを決定し記憶部に記憶する(S28)。
次に記憶した安定周波数和Afwを用いて、図11に示す流量算出処理を行う。まず、順方向測定時間tc1(k)(k=1〜規定回数)を測定し、順方向測定時間tc1(k)から算出される順方向到達時間t1(k)を記憶する(S40)。次に、逆方向測定時間tc2(k)を測定し、逆方向測定時間tc2(k)から算出される逆方向到達時間t2(k)を記憶する(S42)。次に規定回数実施したか否かを判断し(S44)、規定回数実施したと判断することに応じて(S44;yes)、ステップS46へ進む。一方、規定回数実施していないと判断することに応じて(S44;no)、ステップS40へ戻り、規定回数に達するまで測定を行う。
ステップS46では、順方向周波数fj(k)(k=1〜規定回数)および逆方向周波数fg(k)を算出する。次に、算出した順方向周波数fj(k)と逆方向周波数fg(k)との和である周波数和fw(k)を算出する(S48)。次に、算出した周波数和fw(k)と安定周波数和Afwとの差の絶対値が所定範囲K以下であるか否かを判断する(S50)。次に、周波数和fw(k)と安定周波数和Afwとの差の絶対値が所定範囲K以下であると判断することに応じて(S50;yes)、音響ノイズの影響が少ない状態で測定されたと判断されるため、順方向周波数fj(k)および逆方向周波数fg(k)を音響ノイズの影響が少ない測定データとして採用する(S52)。一方、周波数和fw(k)と安定周波数和Afwとの差の絶対値が所定範囲Kより大きいと判断することに応じて(S50;no)、音響ノイズが混入した状態で測定されたと判断されるため、順方向周波数fj(k)および逆方向周波数fg(k)を不採用とする(S54)。
次に、規定回数実施したか否かを判断し(S56)、規定回数実施したと判断することに応じて(S56;yes)、ステップS58へ進む。一方、規定回数実施していないと判断することに応じて(S56;no)、ステップS46へ戻り、格納されたすべての順方向到達時間t1(k)および逆方向到達時間t2(k)について採用・不採用の判断を行う。次に、採用と判断された順方向周波数fj(k)の順方向周波数平均fj_AVEを算出する(S58)。次に、採用と判断された逆方向周波数fg(k)の逆方向周波数平均fg_AVEを算出する(S60)。次に、順方向周波数平均fj_AVEおよび逆方向周波数平均fg_AVEにより、流速Vおよび流量を算出する(S62)。算出した流量は表示部に表示される。
ここで、整圧器4は流れ制御器の一例である。また、逆方向到達時間t2は第1到達時間の一例であり、順方向到達時間t1は第2到達時間の一例である。また、到達時間第2計測部62は測定部の一例である。制御部9および第2制御部は制御部の一例である。また、逆方向周波数fgは第1周波数の一例であり、順方向周波数fjは第2周波数の一例である。また、図7のフローチャートにおいて、ステップS6およびS8は周波数算出処理の一例であり、ステップS22は周波数和算出処理の一例であり、ステップS28は記憶処理の一例である。また、図11のフローチャートにおいて、ステップS48は周波数和算出処理の一例であり、ステップS50およびS54は判断処理の一例である。
また、図7のフローチャートにおいて、ステップS2およびS4は複数測定処理の一例である。また、ステップS14において行うステップS30(図9)は第1領域別平均処理の一例であり、ステップS14において行うステップS32(図9)およびステップS34(図9)、ステップS16は第1周波数確定処理の一例である。また、ステップS18は複数周波数差算出処理の一例であり、ステップS20は、規定外値除外処理の一例であり、ステップS22は複数周波数和算出処理の一例である。また、ステップS26において行うステップS30(図9)は第2領域別平均処理の一例である。また、ステップS26において行うステップS32(図9)およびステップS34(図9)、ステップS28は安定周波数和確定処理の一例である。
以上、上記した第2実施形態によれば、以下の効果を奏する。
起動時、整圧器4に起因して発せられる音響ノイズの影響が少ない状態で、流れの順流方向に向けて発せられる超音波による順方向周波数fj(n)と逆流方向に向けて発せられる超音波による逆方向周波数fg(n)との和である周波数和fw(n)から安定周波数和Afwを決定して記憶しておく。その後、測定時に周波数和fwを算出して安定周波数和Afwと比較する。両者の差が所定値を越えていれば、測定時に算出された順方向周波数fjあるいは逆方向周波数fgの少なくとも一方は、音響ノイズが混入した状態で測定された順方向到達時間t1あるいは逆方向到達時間t2から算出されたと判断される。この場合、測定された順方向到達時間t1あるいは逆方向到達時間t2の少なくとも一方は正しい時間ではなく、流速測定は失敗したと判断することができる。一方、測定時に算出された周波数和fwと安定周波数和Afwとの差が所定値以内にあれば、音響ノイズが少ない状態で順方向到達時間t1あるいは逆方向到達時間t2が測定されたと判断され、流体の流速Vおよび流量を求めることができる。
また、起動時、順方向到達時間t1(n)および逆方向到達時間t2(n)を交互に複数回測定し、複数の順方向周波数fj(n)および複数の逆方向周波数fg(n)を算出する。算出された複数の順方向周波数fj(n)および複数の逆方向周波数fg(n)に基づいて複数の周波数和fw(n)を算出する。算出された複数の周波数和fw(n)から、音響ノイズによる影響が少ない状態の安定周波数和Afwを基準値として記憶する。安定周波数和Afwにより、流速測定時に測定される順方向到達時間t1および逆方向到達時間t2が音響ノイズの影響を受けているか否かの判断を行うことができる。
この時、逆方向周波数fg(n)は音響ノイズの影響を受けにくく、順方向周波数fj(n)は、超音波が音響ノイズの伝搬方向と同方向であるので音響ノイズの影響を受けやすい。逆方向周波数fg(n)の測定は、整圧器4から発せられる音響ノイズの伝搬方向とは逆方向に超音波が伝搬するのに対して、順方向周波数fj(n)の測定では、整圧器4から発せられた音響ノイズと同方向に超音波が伝搬するからである。そこで、まず、逆方向周波数fg(n)について、複数の逆方向周波数fg(n)を所定の周波数幅に層別された複数の領域(Rm)に振り分けられた分布から測定数の多い領域(Rm)に属する逆方向周波数fg(n)の平均値を選択して確定逆方向周波数Kfgとする。これにより、音響ノイズの影響が排除された確定逆方向周波数Kfgを求めることができる。次に順方向周波数fj(n)から音響ノイズの影響を受けたものを2段階で除外する。第1段階として、複数の順方向周波数fj(n)から確定逆方向周波数Kfgを減じた絶対値として算出される複数の周波数差fs(n)から流体に許容されている最大流量を越える流量に対応する周波数差fs(n)を選び出し、それに対応する順方向周波数fj(n)を除外する。これにより、明らかにノイズの影響を受けている順方向周波数fj(n)を除外することができる。更に、第2段階として、所定の周波数幅に層別された複数の領域(Rm)に振り分けられた分布から数の多い領域(Rm)に属する周波数和fw(n)を選択する。これにより、更に音響ノイズの影響が排除された順方向周波数fj(n)を得ることができる。2段階で音響ノイズの影響を除去することにより、音響ノイズの影響を受けやすい順方向周波数fj(n)から確実に影響を排除することができる。
また、複数の領域(Rm)に振り分けられた順方向周波数fj(n)あるいは周波数和fw(n)の分布から数が多い上位2つの領域に属する順方向周波数fj(n)あるいは周波数和fw(n)の平均値を選び出し、そのうちの大きな平均値の方を選択する。これにより、受信された超音波の各周期の波のうち先に到着する波のゼロクロスする時間を逆方向測定時間tc2あるいは順方向測定時間tc1とする。波高値Vwの小さい第1波W1は逆方向測定時間tc2あるいは順方向測定時間tc1と測定されることは極めて少ない。上位2位の領域(Rm)は第3波W3を測定した領域と第5波W5を測定した領域と考えられる。そして第3波W3の領域と第5波W5の領域では、第3波W3の領域の逆方向周波数fg(n)あるいは順方向周波数fj(n)の平均値が大きいので、上位2位の領域(Rm)のうち大きな平均値を選択するのが合理的である。
また、周期が超音波の1周期の時間Tの差を有する周波数の差を所定の周波数幅とする。音響ノイズの影響が少ない受信波は、超音波の1周期ごとに同じ振幅方向に繰り返されてゼロクロスする。逆方向周波数fg(n)および順方向周波数fj(n)を算出する逆方向到達時間t2(n)および順方向到達時間t1(n)は、超音波の1周期ごとに同じ振幅方向に繰り返されたゼロクロスの時間を測定する。このため、逆方向周波数fg(n)、および順方向周波数fj(n)と確定逆方向周波数Kfgとの周波数和fw(n)は、所定の周波数幅ごとに分布することとなる。所定の周波数幅に基づき層別すれば、ゼロクロスの時間ごとに測定された逆方向到達時間t2(n)および順方向到達時間t1(n)に基づいた逆方向周波数fg(n)および周波数和fw(n)を層別することができる。これにより、音響ノイズの影響が少ない逆方向周波数fgおよび安定周波数和Afwを確実に求めることができる。
尚、音響ノイズの影響が少ない受信波とは、音響ノイズが混入していない正規の受信波に対して、音響ノイズが小さい状態で受信された受信波である。安定周波数和算出処理および流量算出処理において、測定時間の測定を複数回行う。複数回測定することにより、音響ノイズの影響が少ない受信波について測定する確率を上げることができる。音響ノイズの大きさは常に一定ではないため、所定期間において複数回の測定を行う事により、音響ノイズが小さい状態での測定時間を複数取得することができる。さらに、複数の測定時間から算出した複数の順方向周波数fjおよび逆方向周波数fgの平均値を流速Vの算出に使用する。これにより、音響ノイズによる測定時間の測定誤差の影響を小さくすることができ、正確な流速Vおよび流量を算出することができる。
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内での種々の改良、変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、第2実施形態において、安定周波数和算出処理および流量算出処理は、記憶部に記憶されたプログラムに従い第2制御部において行われると説明したが、これに限定されるものではない。安定周波数和算出処理および流量算出処理の各ステップを行う回路を複数組み合わせ、構成しても良い。
また、第2実施形態において、整圧器4が送受波器1、2の上流側に設置されている場合について説明したが、これに限定されるものではない。整圧器4が送受波器1、2の下流側に設置されている場合については、図7に示すフローチャートのステップS14、16を逆方向周波数fg(n)に替えて、順方向周波数fj(n)について行えば良い。その後、ステップS20、22を順方向周波数fj(n)に替えて、逆方向周波数fg(n)について行えば良い。また、超音波流量計を配管3に設置する際に、整圧器4が送受波器1、2の上流または下流のどちら側に設置されているかを操作部により設定することができる。これにより、ステップS14、16、20、22において、順方向周波数fj(n)および逆方向周波数fg(n)のどちらについて行うかが設定される。