ところで、上述のFIX窓においては、枠の内周側に位置する見込み面から見付けヒレ部及び係合突起が突設されている。従って、枠に対して可動面材が面外方向に向けて開閉される開き窓やすべり出し窓(以下においては便宜上、これらの窓を総称して「開き系窓」という)にFIX窓の枠を適用した場合には、可動面材を開閉する際に係合突起に干渉する懸念がある。このため、開き系窓の枠を構成するには、FIX窓の枠を共用することはできず、開き系窓の枠を専用に設計、製造する必要があり、製造コストを考慮した場合、必ずしも好ましいとはいえない。
同様に、FIX窓及び開き系窓を上下に並設した段窓を構成する場合には、縦枠が2つの窓にわたって配置されることになる。従って、例えば開き系窓となる部分に係合突起を覆い隠すための専用の補助枠体を装着して可動面材との干渉を避けなければならず、製造コストが増大する事態を来すおそれがある。
本発明は、上記実情に鑑みて、製造コストを低減すべく、FIX窓と開き系窓との間の枠の共用化を図ることのできる建具を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る建具は、枠の内周側に見付け方向に沿って延在する見付けヒレ部を有し、前記見付けヒレ部との間及び前記枠に装着した押縁との間にそれぞれガスケットを介在させた状態で固定面材を挟持した建具において、前記押縁は、前記固定面材を挟んで前記枠の見付けヒレ部に対向して配置される挟持ヒレ部と、前記挟持ヒレ部の外周側に位置する部分から前記枠の見付けヒレ部に向けて延在するカバーヒレ部と、前記カバーヒレ部から前記枠の内周側に向うに従って前記挟持ヒレ部との相互間隔が漸次増大するように傾斜して延在する傾斜ヒレ部と、前記傾斜ヒレ部から前記枠の内周側に向けて延在する係合ヒレ部とを有して構成され、前記枠の見付けヒレ部には、前記押縁の挟持ヒレ部が前記枠の見付けヒレ部に対向して配置された場合に前記押縁の係合ヒレ部の延在縁部が挿入することによって係合可能となる押縁係合部が設けられ、前記押縁係合部は、前記枠の見付けヒレ部から見込み方向に沿って突出した突出部と、前記突出部から外周側に向けて屈曲した舌片とを有した鉤状を成し、前記係合ヒレ部は、前記舌片に係合された状態において前記枠の見付けヒレ部に当接されていることを特徴とする。
この発明によれば、押縁を枠に係合させるための押縁係合部を見付けヒレ部に設けるようにしているため、枠の内周側に位置する見込み面において固定面材を挟んで見付けヒレ部に対応する部位に突出する部分を設ける必要がない。従って、この枠に開閉機構を介して可動面材を支持させれば、可動面材と枠との干渉を来すおそれがなく、開き系窓を構成することが可能となる。
また本発明は、上述した建具において、前記枠の見付けヒレ部には、内周側の縁部にガスケットを装着するためのガスケット装着溝が形成してあるとともに、前記ガスケット装着溝よりも外周側となる部位に前記押縁係合部を設けたことを特徴とする。
この発明によれば、ガスケットを介して枠の見付けヒレ部を固定面材の表面に当接させることができる。
また本発明は、上述した建具において、前記押縁係合部は、前記枠の見付けヒレ部との間に前記押縁の係合ヒレ部を挿入した状態で前記押縁の挟持ヒレ部と前記固定面材との間にガスケットを挿入した場合に前記ガスケットの弾性力によって前記押縁の係合ヒレ部が圧接されることを特徴とする。
この発明によれば、ガスケットの弾性力によって押縁の係合ヒレ部が枠の押縁係合部に圧接されるため、押縁がガタ付いたり脱落する事態を招来するおそれがない。
また本発明は、上述した建具において、前記ガスケット装着溝は、前記突出部の突出端面に形成したものであり、前記押縁係合部は、前記枠の見付けヒレ部との間に前記押縁の係合ヒレ部を挿入した状態で前記押縁の挟持ヒレ部と前記固定面材との間にガスケットを挿入した場合に前記ガスケットの弾性力によって前記押縁の係合ヒレ部が圧接されることを特徴とする。
この発明によれば、ガスケットを介して枠の見付けヒレ部を固定面材の表面に当接させることができ、かつガスケットの弾性力によって押縁の係合ヒレ部が枠の押縁係合部に圧接されるため、押縁がガタ付いたり脱落する事態を招来するおそれがない。
また、本発明に係る建具は、枠の内周側に見付け方向に沿って延在する見付けヒレ部を有し、前記見付けヒレ部との間及び前記枠に装着した押縁との間にそれぞれバックアップ材及びシーリング材を介在させた状態で固定面材を挟持した建具において、前記押縁は、前記固定面材を挟んで前記枠の見付けヒレ部に対向して配置される挟持ヒレ部と、前記挟持ヒレ部の外周側に位置する部分から前記枠の見付けヒレ部に向けて延在するカバーヒレ部と、前記カバーヒレ部から前記枠の内周側に向うに従って前記挟持ヒレ部との相互間隔が漸次増大するように傾斜して延在する傾斜ヒレ部と、前記傾斜ヒレ部から枠の内周側に向けて延在する係合ヒレ部とを有して構成され、前記枠の見付けヒレ部には、前記押縁の挟持ヒレ部が前記枠の見付けヒレ部に対向して配置された場合に前記押縁の係合ヒレ部の延在縁部が挿入することによって係合可能となる押縁係合部が設けられ、前記押縁係合部は、前記枠の見付けヒレ部から見込み方向に沿って突出した突出部と、前記突出部から外周側に向けて屈曲した舌片とを有した鉤状を成し、前記係合ヒレ部は、前記舌片に係合された状態において前記枠の見付けヒレ部に当接されていることを特徴とする。
この発明によれば、押縁を枠に係合させるための押縁係合部を見付けヒレ部に設けるようにしているため、枠の内周側に位置する見込み面において固定面材を挟んで見付けヒレ部に対応する部位に突出する部分を設ける必要がない。従って、この枠に開閉機構を介して可動面材を支持させれば、可動面材と枠との干渉を来すおそれがなく、開き系窓を構成することが可能となる。
また本発明は、上述した建具において、前記押縁は、前記係合ヒレ部が前記枠の押縁係合部に係合した場合に前記カバーヒレ部が前記枠の内周側に位置する見込み面に当接することを特徴とする。
この発明によれば、カバーヒレ部が枠の内周側に位置する見込み面に当接することにより、押縁の係合ヒレ部が枠の押縁係合部から逸脱する方向の移動が規制されるため、押縁の脱落をより確実に防止することができるようになる。
また本発明は、上述した建具において、左右の縦枠に前記見付けヒレ部及び前記押縁係合部を設けるとともに、前記左右の縦枠の間に無目枠を架設し、前記無目枠と上下の横枠の一方と前記左右の縦枠とによって構成される開口枠においては、前記押縁係合部に押縁を係合させることによって前記見付けヒレ部と前記押縁との間に前記固定面材を挟持させ、かつ前記無目枠と前記上下の横枠の他方と前記左右の縦枠とによって構成される開口枠においては、開閉機構を介して可動面材を開閉可能に支持させたことを特徴とする。
この発明によれば、縦枠に補助枠体を装着することなく、上下にFIX窓及び開き系窓を並設した段窓を構成することができる。
本発明によれば、押縁を枠に係合させるための押縁係合部を見付けヒレ部に設けるようにしているため、枠の内周側に位置する見込み面において固定面材を挟んで見付けヒレ部に対応する部位に突出する部分を設ける必要がない。従って、この枠に開閉機構を介して可動面材を支持させれば、可動面材と枠との干渉を来すおそれがなく、開き系窓を構成することができる。この結果、FIX窓と開き系窓との間で枠を共用化することができ、製造コストを低減することが可能となる。
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る建具の好適な実施の形態について詳細に説明する。
図1〜図4は、本発明の実施の形態である建具を示したものである。ここで例示する建具は、FIX(はめ殺し)窓Aと、室外側に開く縦すべり出し窓Bとが上下に並設された段窓と称されるもので、特にビルの窓用に構成したものである。この建具は、FIX用ガラス(固定面材)10、可動障子(可動面材)20及び枠体30を備えている。FIX用ガラス10は、外形が矩形の複層ガラスである。
可動障子20は、FIX用ガラス10と同様の矩形状を成す複層ガラス21と、複層ガラス21の四周に装着した上框22、下框23及び左右の縦框24とを備えて構成したものである。可動障子20を構成する個々の框22,23,24は、アルミニウム合金等の金属によって成形した押し出し形材であり、それぞれが全長に渡ってほぼ一様な断面形状を有するように構成してある。本実施の形態の可動障子20では、図4に示すように、左右の縦框24として見込み面にガラス収容溝24aを有したものを適用している。それぞれの縦框24には、ガラス収容溝24aの内壁面と複層ガラス21の表面との間にガスケット25を介在させた状態で複層ガラス21の縁部が収容してある。これに対して可動障子20の上框22及び下框23としては、図2に示すように、内周側の見込み面に当接ヒレ部22a,23a及び一対のフックヒレ部22b,23bを有したものを適用している。これらの上框22及び下框23には、当接ヒレ部22a,23aとの間及びフックヒレ部22b,23bに装着した框用押縁26との間にそれぞれガスケット27,28を介在させた状態で複層ガラス21の縁部が収容してある。
枠体30は、図1〜図4に示すように、上枠31、下枠32、左右の縦枠33を四周枠組みすることによって矩形状に構成したものである。図1からも明らかなように、本実施の形態で例示する枠体30は、左右の縦枠33の間に上枠31、下枠32を配置することによって構成した、いわゆる「縦通し枠」と称されるものである。枠体30の内部には、左右の縦枠33の間に上枠31と平行となるように無目枠34を配設することによって上下2つの開口枠30A,30Bが構成してある。すなわち、無目枠34よりも下方となる部位には、可動障子20を装着することのできる下部開口枠30Bが構成してあり、無目枠34よりも上方となる部位には、FIX用ガラス10を装着することのできる上部開口枠30Aが構成してある。枠体30を構成するそれぞれの枠31,32,33,34は、アルミニウム合金等の金属によって成形した押し出し形材であり、それぞれが全長に渡ってほぼ一様な断面形状を有するように構成してある。枠31,32,33,34の見込み方向に沿った寸法は、可動障子20の見込み方向に沿った寸法のほぼ2倍となるように設定してある。
図5及び図6に示すように、枠体30を構成する上枠31、下枠32、左右の縦枠33は、それぞれ見付け方向に沿って延在する見付けヒレ部31a,32a,33aを有したものである。図5に示すように、上枠31及び下枠32では、外方基板部31b,32bと内方基板部31c,32cとの段差となる部分に見付けヒレ部31a,32aが構成してある。すなわち、上枠31及び下枠32には、室外側に位置する部分に見込み方向に沿って外方基板部31b,32bが設けてあるとともに、室内側に位置する部分に見込み方向に沿って内方基板部31c,32cが設けてある。図5に示すように、内方基板部31c,32cは、外方基板部31b,32bに対して各開口枠30A,30Bの内周側に突出しており、互いの段差となる部分を連絡するように見付けヒレ部31a,32aが設けてある。これに対して左右の縦枠33では、図6に示すように、互いに同一の平面上に位置する室外側の外方基板部33bと室内側の内方基板部33cとを仕切る位置に見付け方向に沿って見付けヒレ部33aが突設してある。
図2からも明らかなように、無目枠34は、上枠31に対向する見込み面に下枠32の見込み面と同様の構成を有し、かつ下枠32に対向する見込み面に上枠31の見込み面と同様の構成を有したものである。従って、本実施の形態では、無目枠34において上枠31の見込み面と同様の構成については上枠31と同一の符号を付し、かつ下枠32の見込み面と同様の構成については下枠32と同一の符号を付すことにより、それぞれの詳細説明を省略することとする。
図2〜図4に示すように、下部開口枠30Bは、外方基板部31b,32b,33bによって構成される空間が可動障子20の外形寸法よりも大きな寸法を有し、上部開口枠30Aは、外方基板部31b,32b,33bによって構成される空間がFIX用ガラス10の外形寸法よりも大きな寸法を有するように構成してある。一方、下部開口枠30Bの内周側に突出する見付けヒレ部31a,32a,33aは、四周が同時に可動障子20の各框22,23,24に当接することができ、かつ上部開口枠30Aの内周側に突出する見付けヒレ部31a,32a,33aは、四周が同時にFIX用ガラス10の周縁部表面に当接することができるようにそれぞれの寸法が設定してある。
図5及び図6に示すように、それぞれの枠31,32,33,34の見付けヒレ部31a,32a,33aには、室外に臨む見付け面にガスケット装着溝31d,32d,33d及び押縁係合部31e,32e,33eが設けてある。ガスケット装着溝31d,32d,33dは、見付けヒレ部31a,32a,33aの延在縁部に設けた溝状の凹部であり、個々の枠31,32,33,34の長手方向に沿って形成してある。本実施の形態では、見付けヒレ部31a,32a,33aの延在縁部に室外側に向けて突出部31f,32f,33fを形成し、この突出部31f,32f,33fの突出端面に開口するようにガスケット装着溝31d,32d,33dが設けてある。押縁係合部31e,32e,33eは、図7に示す押縁40を枠31,32,33,34に係合させるためのものである。本実施の形態では、図5及び図6に示すように、見付けヒレ部31a,32a,33aに設けた突出部31f,32f,33fと、突出部31f,32f,33fから屈曲するように設けた舌片31g,32g,33gとによって押縁係合部31e,32e,33eが構成してある。舌片31g,32g,33gは、突出部31f,32f,33fにおいて各開口枠30A,30Bの外周側に位置する見込み面から外周側に向けて突出したものである。押縁40は、図7に示すように、カバーヒレ部40a、挟持ヒレ部40b、傾斜ヒレ部40c及び係合ヒレ部40dを有したもので、アルミニウム合金等の金属によって成形した押し出し形材である。
押縁40のカバーヒレ部40aは、図2及び図3に示すように、平板状を成し、個々の枠31,32,33,34の外方基板部31b,32b,33bに対向して配置される薄板状部分である。カバーヒレ部40aには、当接リブ40eが設けてある。当接リブ40eは、カバーヒレ部40aから枠31,32,33,34の見込み面に向けて突出したものである。本実施の形態では、カバーヒレ部40aの室外側に位置する縁部から枠31,32,33,34の見込み面に向けて突出するように当接リブ40eが設けてある。
押縁40の挟持ヒレ部40bは、カバーヒレ部40aを外方基板部31b,32b,33bの内周側に位置する見込み面に対向して配置した場合に、カバーヒレ部40aの室外側に位置する縁部から見付け方向に沿って内周側に延在する薄板状部分である。挟持ヒレ部40bの延在縁部には、ガスケット係止突条40fが設けてある。ガスケット係止突条40fは、挟持ヒレ部40bの室内に臨む見付け面から室内に向けて突出した直方体状を成すものである。図からも明らかなように、カバーヒレ部40aからの挟持ヒレ部40bの延在長さは、当接リブ40eを外方基板部31b,32b,33bの見込み面に当接させた場合に、ガスケット係止突条40fが見付けヒレ部31a,32a,33aのガスケット装着溝31d,32d,33dに対向した位置となるように設定してある。
押縁40の傾斜ヒレ部40cは、図2、図3、図7に示すように、カバーヒレ部40aの室内側に位置する縁部から内周側に向けて延在した薄板状部分である。この傾斜ヒレ部40cは、内周側に向かうに従って挟持ヒレ部40bとの相互間隔が漸次増大するように傾斜して設けてある。
押縁40の係合ヒレ部40dは、傾斜ヒレ部40cの延在縁部から挟持ヒレ部40bとほぼ平行となるように延在した部分である。係合ヒレ部40dの延在長さは、当接リブ40eを外方基板部31b,32b,33bの見込み面に当接させた場合に枠31,32,33,34の見付けヒレ部31a,32a,33aに設けた押縁係合部31e,32e,33eの舌片31g,32g,33gに係合することのできる寸法に設定してある。係合ヒレ部40dの延在縁部には、係合突条40gが設けてある。係合突条40gは、係合ヒレ部40dの室外に臨む見付け面から挟持ヒレ部40bに向けて突出した部分である。本実施の形態では、係合ヒレ部40dの延在縁部に向けて漸次突出量が小さくなるように係合突条40gが設けてある。係合突条40gにおいて最も突出した部分の見込み方向に沿った厚さは、枠31,32,33,34の見付けヒレ部31a,32a,33aと押縁係合部31e,32e,33eの舌片31g,32g,33gとの相互間隔とほぼ等しくなるように設定してある。
上記のように構成した枠体30に対しては、それぞれの見付けヒレ部31a,32a,33aのガスケット装着溝31d,32d,33dにガスケット35を装着する。その後、上部開口枠30Aに対しては、外方基板部31b,32b,33bに囲まれる部分に室外側からFIX用ガラス10を配置し、図8の(a)〜(d)に順次示すように、FIX用ガラス10の周縁部表面に見付けヒレ部31a,32a,33aのガスケット35を当接させた状態で見付けヒレ部31a,32a,33aに押縁40を装着すれば、FIX窓Aを構成することができる。
すなわち、図8の(a)に示すように、押縁40の係合ヒレ部40dを見付けヒレ部31a,32a,33aと押縁係合部31e,32e,33eの舌片31g,32g,33gとの間に挿入する。このとき、本実施の形態で適用する押縁40においては、カバーヒレ部40aと係合ヒレ部40dとの間に傾斜ヒレ部40cが設けてあるため、また係合ヒレ部40dに設けた係合突条40gが先端部の板厚を小さく構成しているため、係合ヒレ部40dを見付けヒレ部31a,32a,33aと舌片31g,32g,33gとの間に挿入する作業を容易に行うことが可能である。
係合ヒレ部40dを見付けヒレ部31a,32a,33aと舌片31g,32g,33gとの間に挿入した状態で、図8の(b)から(c)に示すように、カバーヒレ部40aが順次枠31,32,33,34の見込み面に近接するように押縁40を回転させ、当接リブ40eを枠31,32,33,34の見込み面に当接させる。当接リブ40eが枠31,32,33,34の見込み面に当接した状態においては、係合ヒレ部40d及び挟持ヒレ部40bがそれぞれ枠31,32,33,34の見付けヒレ部31a,32a,33aと平行となるように配置され、係合ヒレ部40dの係合突条40gが舌片31g,32g,33gに当接するとともに、ガスケット係止突条40fが見付けヒレ部31a,32a,33aのガスケット35と対向した位置に配置される。
最後に、図8の(d)に示すように、FIX用ガラス10の表面と挟持ヒレ部40bとの間にガスケット36を押し込んで装着すれば、FIX用ガラス10が見付けヒレ部31a,32a,33aとの間及び押縁40との間にそれぞれガスケット35,36を介在させた状態で見付けヒレ部31a,32a,33aと押縁40との間に挟持されることになる。この状態においては、図2及び図3に示すように、ガスケット35、36の弾性力により、押縁40の挟持ヒレ部40bが室外側に押圧されるため、押縁40の係合ヒレ部40dが押縁係合部31e,32e,33eの舌片31g,32g,33gに圧接され、見付けヒレ部31a,32a,33aからの押縁40の脱落が防止される。
上枠31に対しては、押縁40を装着した後に押縁40を介して上枠31にネジSを螺合させることによって押縁40の脱落を防止することが好ましい。また、無目枠34の外方基板部31b,32bにセッティングブロックSBを配置する場合には、押縁40の係合ヒレ部40d及びカバーヒレ部40aにおいてセッティングブロックSBに対応する部分を予め切除しておけば良い。縦枠33に装着する押縁40と上枠31及び無目枠34に装着する押縁40との接合部は、図1に示すように、上枠31及び無目枠34に装着する押縁40の端部間に縦枠33に装着する押縁40を配置するようにしても良いし、逆に縦枠33に装着する押縁40の端部間に上枠31及び無目枠34に装着する押縁40を配置するようにしても構わない。また、それぞれの押縁40の端部を45°の傾斜面を持つように形成し、互いに傾斜面を接合するように配置しても良い。
一方、枠体30の下部開口枠30Bに対しては、図2に示すように、無目枠34と可動障子20の上框22との間及び下枠32と可動障子20の下框23との間にそれぞれ開閉機構50を介在させた状態で、外方基板部31b,32b,33bに囲まれる部分に室外側から可動障子20を配置すれば、室外側に開く縦すべり出し窓Bを構成することができる。このとき、下部開口枠30Bを構成する無目枠34、下枠32及び左右の縦枠33は、FIX窓Aを構成する枠31,32,33,34と同じ構成を有したものである。換言すれば、下部開口枠30Bを構成する無目枠34、下枠32及び左右の縦枠33は、上述したようにFIX用ガラス10を挟持するための押縁40が装着されるものである。しかしながら、各枠31,32,33,34の外方基板部31b,32b,33bには、見込み面に押縁40を装着するための構成が何等も存在しない。従って、補助枠体を装着して可動障子20と枠31,32,33,34との干渉を防止する必要がなく、そのまま縦すべり出し窓Bを構成することができる。これにより、取り扱い部品点数が増大したり、製造コストが増大する事態を招来することなく、FIX窓Aと縦すべり出し窓Bとが上下に並設された段窓を提供することが可能となる。
尚、上述した実施の形態では、上部開口枠30AにFIX窓Aを構成し、かつ下部開口枠30Bに縦すべり出し窓Bを構成した段窓を例示しているが、本発明は上部開口枠30Aに縦すべり出し窓Bを構成し、かつ下部開口枠30BにFIX窓Aを構成するようにしてももちろん良い。また、開き系窓としては、必ずしも縦すべり出し窓Bである必要はなく、横すべり出し窓や開き窓を構成するようにしても良い。さらに、FIX窓と開き系窓との組み合わせである必要はなく、図9及び図10に示す変形例1のように、上下にFIX窓Aを構成した段窓を構成することも可能である。図9及び図10に示す変形例1の建具では、実施の形態の枠体30をそのまま適用し、下部開口枠30Bに対しても上部開口枠30Aと同じFIX用ガラス10を支持させたものである。
また、上述した実施の形態及び変形例1では、建具として段窓を例示しているが、必ずしも段窓である必要はなく、枠体30に方立を設けて連窓を構成するようにしても良い。さらに、図11及び図12に示す変形例2のように、枠体30に可動障子20′のみを支持させた建具と、図13及び図14の変形例3に示すように、枠体30にFIX用ガラス10′のみを支持させた建具との間で枠体30を共用することも可能である。すなわち、図11及び図12に示す変形例2では、図5及び図6に示した枠体30の上枠31と可動障子20′の上框22との間及び枠体30の下枠32と可動障子20′の下框23との間にそれぞれ開閉機構50を介在させた状態で、外方基板部31b,32b,33bに囲まれる部分に室外側から可動障子20′を配置して単層の縦すべり出し窓B′を構成している。図13及び図14に示す変形例3では、図5及び図6に示した枠体30の外方基板部31b,32b,33bに囲まれる部分に室外側からFIX用ガラス10′を配置し、FIX用ガラス10′の周縁部表面に見付けヒレ部31a,32a,33aのガスケット35を当接させた状態で上枠31、下枠32及び左右の縦枠33の各見付けヒレ部31a,32a,33aに押縁40を装着して単層のFIX窓A′を構成している。
尚、変形例1〜変形例3を示す図9〜図14においては、実施の形態1と同一の構成に同一の符号を付し、かつ実施の形態1に対応する構成には同一の符号に「′」を付してそれぞれの詳細説明を省略している。
さらに、上述した枠体30においては、図には明示していないが、外方基板部31b,32b,33bの見込み方向に沿った寸法を拡大し、見込み方向に沿って複数の面材を支持させれば、複層窓や三層窓を構成することも可能である。
またさらに、上述した実施の形態及び変形例1〜変形例3では、枠31,32,33,34の見付けヒレ部31a,32a,33aとFIX用ガラス10,10′との間及び押縁40の挟持ヒレ部40bとFIX用ガラス10,10′との間にそれぞれ定形状を成すガスケット35,36を介在させるようにしているが、本発明は必ずしもこれに限定されない。例えば、図15の変形例4に示すように、枠31,32,33,34の見付けヒレ部31a,32a,33aとFIX用ガラス10との間及び押縁140の挟持ヒレ部140bとFIX用ガラス10との間にそれぞれバックアップ材135a及びシーリング材135bを介在させるようにしても良い。
すなわち、図15の(a)に示すように、FIX用ガラス10の周縁部両表面にそれぞれバックアップ材135aを貼り付けた状態で一方のバックアップ材135aを枠31,32,33,34の見付けヒレ部31a,32a,33aに当接させる。次いで、枠31,32,33,34の見付けヒレ部31a,32a,33aに押縁140を装着し、押縁140の挟持ヒレ部140bをもう一方のバックアップ材135aに圧接させる。適用する押縁140としては、実施の形態1と同様のものでも良いが、変形例4では、挟持ヒレ部140bにガスケット係止突条を有していないものを適用している。押縁140を見付けヒレ部31a,32a,33aに装着する方法は、実施の形態1と同様、係合ヒレ部140dを見付けヒレ部31a,32a,33aと舌片31g,32g,33gとの間に挿入した状態で、カバーヒレ部が順次枠31,32,33,34の見込み面に近接するように押縁140を回転させ、当接リブ140eを枠31,32,33,34の見込み面に当接させれば良い。この状態から図15の(b)に示すように、FIX用ガラス10と見付けヒレ部31a,32a,33aとの間及びFIX用ガラス10と押縁140の挟持ヒレ部140bとの間にそれぞれ気密及び水密用のシーリング材135bを充填して硬化させれば、FIX窓A″を構成することができる。