[画像形成装置の構成]
実施例1の画像形成装置の構成について、以下に説明する。図1(a)は、本実施例のレーザビームプリンタ100(以下、プリンタ100ともいう)の全体構成を示す概略構成図である。図1(a)において、感光ドラム110は、例えば有機感光体やアモルファスシリコン感光体の像担持体であり、所定の周速度(プロセススピード)で、図中矢印方向(時計回り方向)に回転駆動される。帯電ローラ109は、感光ドラム110の周面を所定の電位で一様に帯電する。スキャナ113では、画像読取装置やコンピュータ等の画像信号発生装置から入力された画像情報に応じて変調されたレーザ光は、回転多面鏡114や反射ミラー112によって偏向される。そして、スキャナ113から出射されたレーザ光は、感光ドラム110の周面を照射する。これにより、感光ドラム110の周面に画像情報に対応した静電潜像が形成される。なお、感光ドラム110の副走査方向(回転方向)の走査開始タイミングは、副走査同期信号により画像形成装置から画像信号発生装置に通知される。感光ドラム110上に形成された静電潜像は、現像ローラ108により供給されるトナー(現像剤)により現像され、可視像化される。上述した感光ドラム110、現像ローラ108、帯電ローラ109はカートリッジ209に内蔵されており、カートリッジ209は交換可能な部材である。
次に、給紙カセット101に載置された記録媒体である用紙(シート、記録材ともいう)は、給紙ローラ102により1枚ずつ、搬送路140へと給紙される。給紙された用紙は、搬送ローラ103、レジストレーションローラ104により搬送路140を搬送され、レジストセンサ105を経て、感光ドラム110と転写ローラ107との当接部へ搬送される。そして、当接部では、感光ドラム110上に形成されたトナー像が、搬送された用紙に転写される。トナー像が転写された用紙は定着器119へ搬送され、ヒータ118、定着フィルム116、加圧ローラ115によって未定着のトナー像が加圧・加熱され、用紙に定着される。
トナー像が定着された用紙は、機外に排出する場合にはFD排紙搬送路141へ搬送され、排紙ローラ122によりFDトレイ160へ排出される。両面印刷の2面目を印字する場合には、1面目が印字された用紙は、用紙を反転させるために両面反転搬送路142へ搬送される。両面反転搬送路142に搬送された用紙は、両面搬送路143に搬送可能な位置まで、排紙ローラ122によって用紙の後端が引き込まれる。図1(a)のFD排紙搬送路141と両面反転搬送路142の分岐部には、FDフラッパ125が具備されており、用紙の搬送先に応じて、FD排紙搬送路141(図中、破線)又は両面反転搬送路142(図中、実線)へ搬送方向が切り替えられる。
排紙ローラ122は、3つのローラから構成された3連構造となっており、3つのローラのうち、隣り合う2つのローラが当接するローラ圧接部が2つある。一方のローラ圧接部が用紙を機外に排出する方向に回転すると、もう一方のローラ圧接部は、逆に用紙を機内へ引き込む方向へ回転するように構成されている。そのため、排紙ローラ122は、正回転時(図中、中央のローラが反時計回り方向に回転時)には、FD排紙口150の用紙は排出する方向へ搬送されると共に、両面反転口151の用紙は両面搬送路143方向へ搬送するように駆動される。一方、排紙ローラ122は、逆回転時(図中、中央のローラが時計回り方向に回転時)は、FD排紙口150の用紙はFD排紙搬送路141方向へ、両面反転口151の用紙は両面反転搬送路142方向へ搬送するように駆動されるように構成されている。排紙ローラ122は、図1(a)のように3連構成ではなく、例えば両面反転の引き込みと反転搬送する専用のローラと、機外排出をする専用のローラと、からなる構成でも良い。両面印刷のために反転される用紙は、排紙ローラ122によって両面搬送路143に搬送され、両面搬送ローラ131、両面センサ132、再給紙ローラ133を経て、再度、搬送路140へと搬送され、2面目の画像形成が行われる。
また、不図示の両面駆動クラッチにより両面搬送ローラ131の駆動をオン/オフすることができ、これにより、両面搬送路143上に、少なくても1枚以上の用紙を待機(停止)させることができる。本実施例のプリンタ100では、両面搬送ローラ131の駆動をオフすることにより、用紙の搬送を停止させている間は、両面搬送ローラ131で停止している用紙とは別の用紙を搬送路140に搬送し、画像形成が行えるようにも構成されている。
図1(a)において、スキャナ113はスキャナモータを有し、後述する光学制御部205はスキャナモータの制御を行い、回転多面鏡114の回転を制御する。図1(b)は、駆動手段であるモータ170の駆動系の構成を示す模式図である。図1(b)に示すように、モータ170は、給紙ローラ102、搬送ローラ103、レジストレーションローラ104の他に、感光ドラム110、転写ローラ107、定着器119の定着フィルム116、加圧ローラ115を駆動する。更に、モータ170は、排紙ローラ122、両面搬送ローラ131、再給紙ローラ133を駆動する。なお、1つのモータ170を駆動源とするため、各種ローラは同時に駆動されるものとするが、駆動系統の機構構成により、モータの駆動伝達にタイムラグが生じてもよいものとする。また、本実施例では、FPOTを短縮するため、スキャナ113を駆動するスキャナモータも同時に駆動されるものとする。また、プリンタ100は、両面搬送ローラ131の駆動制御を行うことにより、用紙を両面搬送路143上に待機させることができる構成が望ましい。
[制御部の構成]
次に、図2を参照して、本実施例の画像形成装置の制御部について説明する。図2は、本実施例のプリンタ100の制御部の構成を示すブロック図である。プリンタ100は、プリンタコントローラ201及びプリンタエンジン203を備えている。プリンタコントローラ201(以下、コントローラ201という)は、ホストコンピュータ等の外部装置200から送信されたコードデータを受信し、印字に必要なビットマップデータ(画像データ)に展開処理する(画像展開ともいう)。また、コントローラ201は、プリンタエンジン203のエンジン制御部202と、例えばシリアル通信により、データの送受信を行ったり、プリンタ100内部の情報を不図示の表示部に表示したりする。
プリンタエンジン203は、エンジン制御部202、用紙搬送制御部204、光学制御部205、定着温度制御部206、高圧制御部207から構成されている。エンジン制御部202は、コントローラ201の指示に応じて、用紙搬送制御部204等の各制御部を介して画像形成部の動作を制御すると共に、画像形成部の各部の状態などの内部情報をコントローラ201に送信する。ここで、画像形成部の動作とは、前述した感光ドラム110への静電潜像形成、トナーによる静電潜像の現像、現像されたトナー像の用紙への転写、未定着トナー像の用紙への定着、用紙の排出を含む用紙搬送からなる動作のことである。また、エンジン制御部202は、時間測定のためのタイマや不揮発性メモリ208を有している。第二の記憶手段である不揮発性メモリ208は、電源がオフされても記憶した内容が保持されるメモリであり、用紙搬送制御部204、光学制御部205、定着温度制御部206の情報が記憶されている。
用紙搬送制御部204は、エンジン制御部202の指示に基づき、給紙カセット101に載置された用紙の搬送を行うため、搬送部を構成する給紙ローラ102、搬送ローラ103等の駆動系統の回転開始、回転停止を制御する。高圧制御部207は、エンジン制御部202の指示に基づき、カートリッジ209の帯電ローラ109、現像ローラ108や転写ローラ107に印加する帯電電圧、現像電圧、転写電圧の高圧(数百〜数千ボルト)の出力制御を行う。光学制御部205は、エンジン制御部202の指示に基づき、スキャナ113に搭載されたスキャナモータの駆動/停止、レーザの点滅などの光学系の制御を行う。定着温度制御部206は、定着器119の定着フィルム116を加熱するヒータ118の温度がエンジン制御部202により指示された目標温度を維持するよう調整し、定着器119の温度制御を行う。カートリッジ209は、エンジン制御部202とシリアル通信により、データの送受信を行う。また、カートリッジ209は第一の記憶手段である不揮発性メモリ210を有し、カートリッジに関する情報を記憶する。
[印字準備動作の制御]
次に、エンジン制御部202によるファーストプリントアウトタイム(FPOT)を短縮するための画像形成動作の制御について、図3を用いて説明する。図3では、エンジン制御部202による画像形成動作を行うための印字準備動作は、コントローラ201からの起動指示、又は印字指示(印刷指示)に基づいて行われる。ここで、起動指示とは、外部装置200からコードデータを受信したコントローラ201が、画像展開(画像データへの展開処理)を開始した時点でエンジン制御部202へ印字準備の開始を指示する信号である。一方、印字指示(以下、プリント指示という)は、コントローラ201が画像展開(画像データへの展開処理)を完了したことを通知する信号である。なお、本実施例におけるプリント指示は、コントローラ201からエンジン制御部202に対してコマンドを送信することにより実行されるものとする。
(印字準備動作が起動指示により起動される場合(その1))
図3(A)は、コントローラ201から起動指示を受けた時点で、エンジン制御部202が印字準備の開始を指示する場合の各装置の動作を示すタイミングチャートである。図3(A)に示すタイミングチャートは、縦軸の上から順に、外部装置200、コントローラ201、エンジン制御部202、定着器119、スキャナ113、感光ドラム110、用紙搬送制御部204による用紙搬送の状態を示している。また、図3(A)の横軸は時間を示し、t301〜t307はタイミング(時間)を示す。
t301は、外部装置200がプリンタ100に対してプリント開始を指示するタイミングであり、例えばユーザがパーソナルコンピュータ上のアプリケーションソフトで、プリントを指示したタイミングに相当する。t302では、外部装置200でのデータ処理(画像処理)が終了し、外部装置200は、コントローラ201に印字データを送信する。印字データを受信したコントローラ201は、エンジン制御部202へ起動指示を送信する。起動指示を受信したエンジン制御部202は、エンジン制御部202の不揮発性メモリ208と、カートリッジ209の不揮発性メモリ210に記憶された情報(後述する余剰駆動時間情報)に基づいて、印字準備が開始可能かどうか判断する。印字準備の開始が可能と判断した場合には、エンジン制御部202は、用紙搬送制御部204、光学制御部205、定着温度制御部206、高圧制御部207が制御する各装置を立ち上げ、印字準備を開始させる(第二の動作)。また、エンジン制御部202は、印字準備を開始してから完了するまでの時間の計測を行うために、タイマをリセットしてスタートさせる。ここで、用紙搬送制御部204の印字準備では、用紙を搬送するための駆動系統の回転を行うため、モータの駆動を開始し、所定の回転数になるように制御する。光学制御部205の印字準備では、回転多面鏡114を回転させるスキャナモータの駆動を開始し、所定の回転数になるように制御する。また、定着温度制御部206の印字準備では、ヒータ118への電力供給を開始し、ヒータ118が所定の温度になるように定着器119を制御する。高圧制御部207の印字準備では、高圧電源を立ち上げ、所定の帯電電圧、現像電圧、転写電圧の高圧が出力されるように制御する。なお、このとき、高圧電源から感光ドラム110に高圧を印加するため、高圧制御部207の印字準備に連動して、カートリッジ209の感光ドラム110も駆動されるものとする。
t303では、コントローラ201は画像展開処理を完了し、エンジン制御部202にプリント指示を送信する。図3(A)の時間To1は、コントローラ201が画像展開処理に要した時間であり、時間To1=(t303−t302)である。エンジン制御部202は、コントローラ201からプリント指示を受信すると、各制御装置からの印字準備完了の通知有無に基づいて、各装置の印字準備が完了したかどうかを判断する。t304は、エンジン制御部202が各装置における印字準備が完了したと判断したタイミングである。このとき、エンジン制御部202は、タイマを停止し、t302で測定を開始した印字準備完了までの時間計測を終了する。タイマにより測定された時間を時間Tready1(=t304−t302)とする。そして、エンジン制御部202は起動指示に応じて印字準備を行った場合の時間と、印字準備を行わずプリントした場合の時間との時間差、即ち装置を余分に駆動した時間である余剰駆動時間ΔTを以下の式(1)により算出する。
ΔT=Tready1−Tth (1)
ここで、時間Tthは、印字準備に要する時間を実験により予め求めた時間であり、エンジン制御部202の不図示のROMに記憶されている。なお、時間Tthは、図3(C)で後述する、エンジン制御部202がコントローラ201からプリント指示を受信したときに開始する印字準備に要する時間と同じである。
図3(A)の場合には、各装置における印字準備が終了する以前に、コントローラ201での画像展開処理が終了している。そのため、エンジン制御部202では、プリント動作(画像形成動作)を実行するために、コントローラ201による画像展開処理の終了を待つ必要がない(時間To1<時間Tready1)。従って、時間Tready1=時間Tthであるため、式(1)による余剰駆動時間ΔTの算出結果は、ΔT=0となる。エンジン制御部202は、印字準備が開始可能かどうか判断するために、不揮発性メモリ208、210に余剰駆動時間ΔTを積算し、記憶している。算出された余剰駆動時間ΔTの値が0以下(ΔT≦0)の場合には、エンジン制御部202は、過剰稼働時間ΔTを不揮発性メモリ208、210に記憶された積算値に加算しない。
印字準備が完了するt304では、用紙搬送制御部204により、給紙カセット101から用紙の搬送が開始される。そして、t305になると、コントローラ201から展開されたビットマップデータ(画像データ)がスキャナ113に出力され、エンジン制御部202は、搬送された用紙に対して画像形成を開始する。画像形成動作については、図1(a)で説明しているので、ここでの説明は省略する。t306では、転写ローラ107による感光ドラム110上のトナー像の用紙への転写が終了し、t307では、画像形成された用紙の機外への排出が行われ、プリンタ100は画像形成動作を終了する。図3(A)の場合には、エンジン制御部202では、印字準備による余剰駆動時間の発生はない。その結果、外部装置200が画像処理を開始してから、印字された最初の用紙が排出されるまでのファーストプリントアウトタイム(FPOT)は、時間Tout(=t307−t301)となる。
(画像形成動作が起動指示により起動される場合(その2))
図3(B)は、コントローラ201から起動指示を受けた時点で、エンジン制御部202が印字準備の開始を指示する場合の各装置の動作を示すタイミングチャートである。図3(A)のタイミングチャートとの違いは、コントローラ201での画像展開時間が、上述した時間Tthよりも長くなっている点である。図3(B)のタイミングチャートも、図3(A)と同じ構成であるため、縦軸に示す装置等についての説明は省略する。なお、t309〜t313は、タイミング(時間)を示す。また、t301、t302については、図3(A)と同じタイミングである。
t301、t302での各装置の動作は、図3(A)と同様であり、ここでの説明を省略する。t309において、エンジン制御部202は、用紙搬送制御部204、光学制御部205、定着温度制御部206、高圧制御部207における印字準備が完了したと判断する(図3(A)のt304に相当)。このとき、コントローラ201では、画像展開処理が完了していない。そのため、エンジン制御部202は、コントローラ201からプリント指示を受信していないので、用紙搬送制御部204による用紙搬送を開始することができない。t310は、コントローラ201が画像展開処理を完了したタイミングであり、コントローラ201は、画像展開処理が完了したので、エンジン制御部202にプリント指示を送信する。このときの画像展開時間To2は、(t310−t302)により算出される。
エンジン制御部202はプリント指示を受信すると、各制御装置からの印字準備完了の通知有無に基づいて、各装置の印字準備が完了したかどうかを判断する。t310では、既に印字準備が完了しているので、エンジン制御部202は、コントローラ201からプリント指示を受信した時点で印字準備完了と判断する。エンジン制御部202は、印字準備完了と判断するとタイマを停止し、t302で測定を開始した印字準備完了までの時間計測を終了する。タイマにより測定された時間を時間Tready2(=t310−t302)とする。このとき、余剰駆動時間ΔTを前述した式(1)により算出する。図3(B)では、時間Tready2>時間Tthの関係があるため、式(1)により算出された余剰駆動時間ΔT(=Tready2−Tth)は、ΔT>0となる。そして、余剰駆動時間ΔTが0よりも大きい(ΔT>0)場合には、エンジン制御部202は、算出された余剰駆動時間ΔTを、不揮発性メモリ208、210に記憶された積算値に加算する。
なお、t311は図3(A)のt305に相当するタイミング、t312は図3(A)のt306に相当するタイミング、t313は図3(A)のt307に相当するタイミングである。それぞれのタイミングで実行される装置動作については前述しているので、ここでの説明は省略する。図3(B)の場合には、エンジン制御部202では、(時間Tready2−時間Tth)の時間だけ、印字準備による余剰駆動時間が発生する。その結果、外部装置200が画像処理を開始してから、印字された最初の用紙が排出されるまでのファーストプリントアウトタイム(FPOT)は、(時間Tout+時間Tout1)となる。ここで、時間Tout1は、Tout1=(Tready2−Tth)である。
(画像形成動作がプリント指示により起動される場合)
図3(C)は、エンジン制御部202がコントローラ201から起動指示を受信したときに印字準備を開始しない場合の動作を示すタイミングチャートである。図3(C)のタイミングチャートも、図3(A)と同じ構成であるため、縦軸に示す装置等についての説明は省略する。なお、t308、t314〜t317は、タイミング(時間)を示す。また、t301、t302については、図3(A)、(B)と同じタイミングである。
t301では、各装置の動作は前述した図3(A)と同様であり、説明を省略する。t302では、外部装置200は、画像処理を終了し、コントローラ201に印字データを送信する。印字データを受信したコントローラ201は、エンジン制御部202へ起動指示を送信する。起動指示を受信したエンジン制御部202は、不揮発性メモリ208、210に記憶された余剰駆動時間情報(積算値)に基づいて、印字準備の開始が可能かどうか判断する。図3(C)では、エンジン制御部202は、印字準備開始は不可能と判断し、各装置への印字準備の開始指示を行わない。更に、エンジン制御部202は、印字準備が完了するまでの時間計測を行わない。
コントローラ201は、画像展開処理を完了すると(t314)、エンジン制御部202にプリント指示を送信する。このときの画像展開時間To3は、(t314−t302)により算出される。エンジン制御部202はプリント指示を受信すると、用紙搬送制御部204、光学制御部205、定着温度制御部206、高圧制御部207が制御する各装置を立ち上げ、印字準備を開始させる(第一の動作)。そして、エンジン制御部202は、各制御装置からの印字準備完了の通知有無に基づいて、各装置の印字準備が完了したかどうかを判断する。t315で、エンジン制御部202は印字準備が完了したと判断すると、コントローラ201からプリント指示をt314の時点で受信しているので、給紙カセット101より用紙の搬送を開始するよう、用紙搬送制御部204に指示する。
図3(C)では、コントローラ201からの起動指示に応じた印字準備を行わないので、余剰駆動時間ΔTが発生しないため、余剰駆動時間ΔTの計算は行わない。なお、t316は図3(A)のt305に相当するタイミング、t317は図3(A)のt306に相当するタイミング、t308は図3(A)のt307に相当するタイミングである。それぞれのタイミングで実行される装置動作についての説明は前述しているので、ここでの説明は省略する。図3(C)の場合には、プリント指示の後に印字準備を開始するため、エンジン制御部202では、印字準備による余剰駆動時間は発生しない。その結果、外部装置200が画像処理を開始してから、印字された最初の用紙が排出されるまでのファーストプリントアウトタイム(FPOT)は、(時間Tout+時間Tout2)となる。ここで、時間Tout2は、時間Tthと同じ時間である。
以上説明したように、ファーストプリントアウトタイム(FPOT)は、図3(A)では時間Tout、図3(B)では時間(Tout+Tout1)、図3(C)では時間(Tout+Tout2)(Tout2>Tout1)となっている。その結果、順次、FPOTは長くなっており、余剰駆動時間情報(積算値)に基づいて、印字準備の開始が可能であれば、コントローラ201からの起動指示受信に応じて、印字準備を起動することにより、FPOTを短縮できることがわかる。
なお、図3(A)、(B)、(C)において、エンジン制御部202が不揮発性メモリ208、210に記憶された余剰駆動時間ΔTの積算値を更新するタイミングは、プリントジョブ毎であることが望ましい。また、例えば印字準備を開始してから、印字準備完了前に印字のキャンセルや緊急停止が発生し、印字が行われない場合でも、装置が駆動されているため、印字準備開始から印字準備を停止するまでの時間を余剰駆動時間として積算値に加算することが望ましい。なお、不揮発性メモリ208、210の余剰駆動時間ΔTの積算値は、装置が新品と交換された場合には、初期化(0クリア)される。例えば、カートリッジ209が新品に交換された場合には、交換されたカートリッジ209の不揮発性メモリ210に設けられた余剰駆動時間ΔTの積算値を0に設定する。
[起動指示による印字準備起動の制御シーケンス]
図4は、上述したエンジン制御部202がコントローラ201より起動指示を受信してから、用紙搬送を開始するまでの制御シーケンスを示すフローチャートである。図4は、エンジン制御部202がコントローラ201より起動指示を受信したときに起動され、エンジン制御部202により実行される。図3では、説明を簡単にするために、各制御部における余剰駆動時間についてΔTを用いて説明したが、図4では、2つの余剰駆動時間を用いて、印字準備の可否を判断する制御シーケンスについて説明する。2つの余剰駆動時間のうち、1つは、エンジン制御部202の不揮発性メモリ208に記憶されるエンジン制御部202の余剰駆動時間TEng(第二の時間情報)である。もう1つは、カートリッジ209の不揮発性メモリ210に記憶されるカートリッジ209の余剰駆動時間TCRG(第一の時間情報)である。余剰駆動時間TEngは、第二の画像形成手段である用紙搬送制御部204、光学制御部205、定着温度制御部206が制御する各装置の余剰駆動時間を管理するデータである。本実施例では1つのデータで、用紙搬送制御部204、光学制御部205、定着温度制御部206の余剰駆動時間の管理を行う。一方、余剰駆動時間TCRGは、高圧制御部207の印字準備により駆動される第一の画像形成手段であるカートリッジ209の余剰駆動時間を管理するデータである。
また、余剰駆動時間に対して、起動指示による印字準備の開始が可能かどうかを判断するための閾値が2つある。1つは、後述する余剰駆動時間TEngの許容時間を示す第二の閾値である余剰駆動許容時間TLimEng(以下、許容時間TLimEngともいう)であり、予めエンジン制御部202のROMに記憶されているものとする。余剰駆動時間TEngは、用紙搬送制御部204、光学制御部205、定着温度制御部206の余剰駆動時間を管理するデータである。そのため、許容時間TLimEngは、用紙搬送制御部204、光学制御部205、定着温度制御部206の余剰駆動許容時間のうちの、最も短い余剰駆動許容時間が選択される。もう1つは、後述する余剰駆動時間TCRGの許容時間を示す第一の閾値である余剰駆動許容時間TLimCRG(以下、許容時間TLimCRGともいう)であり、予めエンジン制御部202のROMに記憶されているものとする。なお、余剰駆動許容時間TLimCRGについては、エンジン制御部202のROMではなく、カートリッジ209の不図示のROM等に記憶されている構成でもよい。
ステップ(以下、Sとする)701では、コントローラ201から起動指示を受信したエンジン制御部202は、エンジン制御部202の不揮発性メモリ208から余剰駆動時間TEngの積算値ΣTEngを取得する。S702では、エンジン制御部202は、エンジン制御部202のROMに記憶され、予め実験により算出したエンジン閾値である許容時間TLimEngを読み出し、S701で取得した余剰駆動時間の積算値ΣTEngと比較する。S702で、エンジン制御部202は、積算値ΣTEngは許容時間TLimEngよりも小さい(ΣTEng<TLimEng)と判断した場合には、S703の処理に進む。一方、エンジン制御部202は、積算値ΣTEngは許容時間TLimEng以上の値である(ΣTEng≧TLimEng)と判断した場合には、S706の処理に進む。
S703では、エンジン制御部202は、カートリッジ209の不揮発性メモリ210より余剰駆動時間TCRGの積算値ΣTCRGを取得する。S704では、エンジン制御部202は、エンジン制御部202のROMに記憶され、予め実験により算出した閾値である許容時間TLimCRGを読み出し、S703で取得した余剰駆動時間の積算値ΣTCRGと比較する。S704で、エンジン制御部202は、積算値ΣTCRGは許容時間TLimCRGよりも小さい(ΣTCRG<TLimCRG)と判断した場合には、S705の処理に進む。一方、エンジン制御部202は、積算値ΣTCRGは許容時間TLimCRG以上の値である(ΣTCRG≧TLimCRG)と判断した場合には、印字準備の開始は不可能と判断してS706の処理に進む。S705では、エンジン制御部202は、コントローラ201からの起動指示に応じた印字準備を開始する。即ち、エンジン制御部202は、用紙搬送制御部204、光学制御部205、定着温度制御部206、高圧制御部207に、各制御部が制御する装置を立ち上げ、印字準備を開始するように指示する。また、エンジン制御部202は、印字準備を開始してから完了するまでの時間計測を行うために、タイマをリセットしてスタートさせる。
S706では、エンジン制御部202は、コントローラ201からプリント指示を受信したかどうかを判断し、受信したと判断した場合にはS707の処理に進み、受信していないと判断した場合にはS706の処理を繰り返す。S707では、エンジン制御部202は、コントローラ201からの起動指示受信により、既に印字準備を開始しているか(印字準備開始済み)どうかを判断する。エンジン制御部202は、印字準備を既に開始していると判断した場合にはS709の処理に進み、印字準備をまだ開始していない場合には、S708の処理に進む。S708では、エンジン制御部202は、コントローラ201からのプリント指示に応じた印字準備を開始する。即ち、エンジン制御部202は、用紙搬送制御部204、光学制御部205、定着温度制御部206、高圧制御部207に、各制御部が制御する装置を立ち上げ、印字準備の開始を指示する。なお、このとき、エンジン制御部202は、印字準備が完了するまでの時間計測は行わない。
S709では、エンジン制御部202は、用紙搬送制御部204、光学制御部205、定着温度制御部206、高圧制御部207が制御する各装置での印字準備が完了したかどうかを監視する。ここで、用紙搬送制御部204、光学制御部205、定着温度制御部206、高圧制御部207は、それぞれの制御部が制御する装置の印字準備が完了した場合には、エンジン制御部202に印字準備完了を通知する。エンジン制御部202は、各制御部における印字準備が完了したと判断した場合にはS710の処理に進み、印字準備がまだ完了していないと判断した場合にはS709の処理を繰り返す。S710では、エンジン制御部202は、コントローラ201からの起動指示受信により印字準備を開始したかどうかを判断し、開始したと判断した場合にはS711の処理に進み、開始していないと判断した場合にはS712の処理に進む。S711では、エンジン制御部202は、タイマを停止し、タイマ値を読み出す。エンジン制御部202は、読み出したタイマ値(印字準備時間)と、前述した実験により予め求めた印字準備に要する時間Tthを用いて、前述した式(1)により余剰駆動時間ΔTを算出する。ここで、余剰駆動時間ΔTは、余剰駆動時間TEngでもあり、余剰駆動時間TCRGでもあり、図4においては、余剰駆動時間TEngと余剰駆動時間TCRGは同じ時間値である。そして、エンジン制御部202は、算出された余剰駆動時間ΔTが0以下(ΔT≦0)の場合には、S712の処理に進み、余剰駆動時間ΔTが0よりも大きい(ΔT>0)場合には、次の処理を行う。即ち、エンジン制御部202は、エンジン制御部202の不揮発性メモリ208に記憶された余剰駆動時間の積算値ΣTEngに余剰駆動時間ΔTを加算して、積算値ΣTEngを更新する。更に、エンジン制御部202は、カートリッジ209の不揮発性メモリ210に記憶された余剰駆動時間の積算値ΣTCRGに余剰駆動時間ΔTを加算して、積算値ΣTCRGを更新する。即ち、不揮発性メモリ208、210には、同じ余剰駆動時間Δが加算される。S712では、エンジン制御部202は、用紙への画像形成を行うため、用紙搬送制御部204により、給紙カセット101から用紙の搬送を開始させ、処理を終了する。
[印字準備の開始判断の推移]
図5は、上述した図3、図4の処理に従って、プリンタエンジン203を制御した際の、プリンタエンジン203の寿命に対して、カートリッジ209が交換された場合の印字準備開始の可否判断の推移を示すタイミングチャートである。図5の縦軸は、プリンタエンジン203(図中、Engine)、カートリッジ209のそれぞれの印字準備の開始可否状態、プリンタ100の印字準備の開始可否状態を示す。なお、本実施例では、プリンタエンジン203の寿命は、用紙搬送装置、定着器119、スキャナ113の寿命に対応し、図5ではプリンタエンジン203(図中、Engine)として示している。また、図中、「Enable」は、該当する装置の印字準備を開始可能であることを示している。即ち、プリンタエンジン203については許容時間TLimEng>積算値ΣTEngであり、カートリッジ209については許容時間TLimCRG>積算値ΣTCRGであることを示している。一方、「Disable」は、該当する装置の印字準備を開始できないことを示している。即ち、プリンタエンジン203については許容時間TLimEng≦積算値ΣTEngであり、カートリッジ209については許容時間TLimCRG≦積算値ΣTCRGであることを示す。なお、図中、「交換」は、カートリッジ209が新品に交換されたことを示す。更に、図中、「Yes」は、プリンタ100として、コントローラ201からの起動指示による印字準備が開始可能であることを示している。一方、「No」は、プリンタ100として、コントローラ201からの起動指示による印字準備を開始できないことを示している。横軸は時間を示し、t401〜t407はタイミング(時間)を示す。
図5のt401〜t402の期間では、プリンタエンジン203については許容時間TLimEng>積算値ΣTEngであり、カートリッジ209については許容時間TLimCRG>積算値ΣTCRGである。そのため、エンジン制御部202はコントローラ201から起動指示を受信すると、プリンタ100の印字準備を開始する。t401〜t402の期間での印字準備によりカートリッジ209において余剰駆動が発生し、カートリッジ209の余剰駆動時間の積算値ΣTCRGが、t402で許容時間TLimCRG≦積算値ΣTCRGとなる。すると、t402〜t403の期間では、プリンタエンジン203については許容時間TLimEng>積算値ΣTEngであるが、カートリッジ209については許容時間TLimCRG≦積算値ΣTCRGとなる。その結果、カートリッジ209は余剰駆動ができないため、エンジン制御部202は、コントローラ201から起動指示を受信しても、プリンタ100の印字準備を開始しない。
次に、t403でカートリッジ209が新品に交換される(図中、交換)と、余剰駆動時間TCRGの積算値ΣTCRGは0となる。その結果、t403〜t404の期間では、プリンタエンジン203については許容時間TLimEng>積算値ΣTEngであり、カートリッジ209についても許容時間TLimCRG>積算値ΣTCRGとなる。そのため、エンジン制御部202はコントローラ201から起動指示を受信すると、プリンタ100の印字準備を開始する。
t401〜t405の期間での印字準備により、プリンタエンジン203の用紙搬送装置、定着器119、スキャナ113において余剰駆動が発生する。その結果、プリンタエンジン203の余剰駆動時間TEngの積算値ΣTEngが、許容時間TLimEng≦積算値ΣTEngとなる。すると、t405では、カートリッジ209については許容時間TLimCRG>積算値ΣTCRGであるが、プリンタエンジン203については許容時間TLimEng≦積算値ΣTEngとなり、プリンタエンジン203は余剰駆動ができない。そのため、プリンタエンジン203は、コントローラ201から起動指示を受信しても、プリンタ100は印字準備を開始しない。t405〜t407の期間で、プリンタエンジン203は余剰駆動ができない。そのため、例えばt406で余剰駆動できないカートリッジ209が交換されて余剰駆動ができるようになっても、プリンタエンジン203については、許容時間TLimEng≦積算値ΣTEngである。その結果、エンジン制御部202は、コントローラ201から起動指示を受信しても、プリンタ100の印字準備を開始しない。
以上のような制御により、FPOT短縮のための起動時によって発生した余剰駆動時間を複数の不揮発性メモリに記憶して装置毎に管理することで交換部品が交換された場合においても、部材の寿命に応じて的確にFPOTを短縮することができる。本実施例では、4つの部材、即ち用紙搬送装置、定着器119、スキャナ113、カートリッジ209の余剰駆動時間に応じて、プリンタコントローラ201からの起動指示による印字準備の開始可否を判断している。プリンタコントローラ201からの起動指示による印字準備の開始可否の判断は、上述した4つの部材に限定されるものではない。例えば、他の部材に比べて寿命が短いため、余剰駆動時間も短い定着器119、カートリッジ209の余剰駆動時間に基づいて、プリンタコントローラからの起動指示による印字準備の開始の可否を判断してもよい。また、用紙搬送装置、定着器119、カートリッジ209の余剰駆動時間に基づいて、プリンタコントローラからの起動指示による印字準備の開始の可否を判断してもよい。更に、用紙搬送装置、カートリッジ209の余剰駆動時間に基づいて、プリンタコントローラからの起動指示による印字準備の開始の可否を判断してもよい。また、本実施例においては、1つのモータ170を駆動源としている構成に基づいて説明したが、複数のモータを駆動源とする構成であってもよい。
以上説明したように、本実施例によれば、部材の寿命に応じて、ファーストプリントアウトタイムを短縮することができる。プリンタコントローラからの起動指示により、余剰駆動時間に応じて印字準備を開始することにより、FPOTを短縮することができる。更に、FPOT短縮のために発生した余剰駆動時間を部材毎に複数の不揮発性メモリに記憶して管理することにより、部材が新品と交換された場合においても、部材の寿命に応じて、的確にFPOTを短縮することができる。
実施例1では、プリンタコントローラからの起動指示を受信したときに、エンジン制御部は、プリンタエンジン及びカートリッジの余剰駆動時間の積算値に基づいて、印字準備の駆動開始の可否を判断していた。実施例1では、用紙搬送制御部、光学制御部、定着温度制御部の余剰駆動時間は、1つの余剰駆動時間で管理されていた。実施例2では、プリンタエンジンの起動指示による印字準備の駆動開始の可否を、実施例1のように1つのデータでなく、部材毎に設けた余剰駆動時間に基づいて判断することにより、部材毎に印字準備の駆動開始を制御し、FPOTの短縮を図る。更に、実施例1では、プリンタコントローラからの起動指示によってエンジン制御部が印字の準備を開始する際に、駆動源であるモータが1つの構成であるため、印字準備する部材は略同時に駆動される。一方、本実施例では、各部材毎に駆動手段であるモータを有しているため、予め算出しておいた部材毎の準備完了時間に基づいて各部材の印字準備の起動をずらしている。これにより、全ての部材の印字準備が略同じ時間で終了するように制御されるため、余剰駆動時間の増加を抑えることができる。
[制御部の構成]
図6(a)は、本実施例のプリンタ100の制御部の構成を示すブロック図である。図2に示す実施例1の制御部の構成に比べ、図6(a)では次の点が異なる。即ち、図6(a)では、光学制御部205及び定着温度制御部206が、それぞれ不揮発性メモリ220、221を備えている。実施例1では、光学制御部205により制御されるスキャナ113、定着温度制御部206により制御される定着器119における余剰駆動時間の積算値は、エンジン制御部202の不揮発性メモリ208に記憶されていた。本実施例では、スキャナ113、定着器119の余剰駆動時間は、それぞれ光学制御部205の不揮発性メモリ220、定着温度制御部206の不揮発性メモリ221に記憶される点が実施例1と異なる。本実施例でのコントローラ201からの起動指示による印字準備の対象となる部材は、光学制御部205により制御されるスキャナ113、定着温度制御部206により制御される定着器119、カートリッジ209とする。そして、対象となるスキャナ113、定着器119、カートリッジ209の余剰駆動時間の積算値は、それぞれ不揮発性メモリ220、221、210に記憶されるものとする。
また、本実施例においても、スキャナ113はスキャナモータを有し、後述する光学制御部205はスキャナモータの制御を行い、回転多面鏡114の回転を制御する。図6(b)は、駆動手段である複数のモータの駆動系の構成を示す模式図である。実施例1では、搬送路140に配置された各ローラ、感光ドラム110等は、1つのモータ170により駆動されていた。本実施例では、図6(b)に示すように、各部材毎に駆動手段であるモータを有している。即ち、ドラムモータ171は、高圧電源から感光ドラム110に高圧を印加するため、高圧制御部207の印字準備に連動して、カートリッジ209の感光ドラム110を駆動する。また、定着モータ172は、定着温度制御部206の印字準備に連動して、定着器119の定着フィルム116、加圧ローラ115、排紙ローラ122を駆動する。更に、搬送モータ173は、用紙搬送制御部204の制御に応じて、給紙ローラ102、搬送ローラ103、レジストレーションローラ104、転写ローラ107、両面搬送ローラ131、再給紙ローラ133を駆動する。なお、上述した各モータにより駆動されるローラ等は、一例であり、上述した構成に限定されるものではない。その他の構成については、実施例1と同様であり、説明を省略する。
[印字準備動作の制御]
(全ての装置の印字準備動作が起動指示により起動される場合)
図7(A)は、コントローラ201から起動指示を受けた時点で、エンジン制御部202が印字準備の開始を指示する場合の各部材の動作を示すタイミングチャートである。図7(A)に示すタイミングチャートは、縦軸の上から順に、外部装置200、コントローラ201、エンジン制御部202、定着器119、スキャナ113、感光ドラム110、用紙搬送制御部204による用紙搬送の状態を示している。また、図7(A)の横軸は時間を示し、t501、t502a、t503a、t504a、t505〜t507、t512、t513はタイミング(時間)を示す。
t501は、外部装置200がプリンタ100に対してプリント開始を指示するタイミングであり、実施例1の図3のt301と同じタイミングである。t502aでは、外部装置200でのデータ処理(画像処理)が終了し、外部装置200は、コントローラ201に印字データを送信する。印字データを受信したコントローラ201は、エンジン制御部202へ起動指示を送信する。起動指示を受信したエンジン制御部202は、光学制御部205の不揮発性メモリ220、定着温度制御部206の不揮発性メモリ221、カートリッジ209の不揮発性メモリ210に記憶された情報(後述する余剰駆動時間の積算値)を読み出す。そして、エンジン制御部202は、読み出した余剰駆動時間の積算値に基づいて、印字準備が開始可能な装置を選択する。この場合、全ての部材が印字準備可能なので、エンジン制御部202は、定着温度制御部206、高圧制御部207が制御する定着器119や高圧装置を立ち上げ、印字準備を開始させる。また、エンジン制御部202は、定着温度制御部206、高圧制御部207において、印字準備を開始してから完了するまでの時間の計測を行うために、それぞれの時間計測のためのタイマをリセットしてスタートさせる。t503aでは、エンジン制御部202は、光学制御部205が制御するスキャナ113を立ち上げ、印字準備を開始させる。また、エンジン制御部202は、光学制御部205において、印字準備を開始してから印字準備が完了するまでの時間の計測を行うために、タイマをリセットしてスタートさせる。後述するスキャナ113の印字準備に要する時間TthScanは、後述する定着器119、高圧制御部207の印字準備に連動して駆動されるカートリッジ209の印字準備に要する時間TthFuse、TthDrumよりも短い。そのため、3つの装置の印字準備を略同じタイミングで終了させることにより、定着器119、カートリッジ209において余剰駆動時間が生じないよう、スキャナ113の印字準備の開始を遅らせている。
t504aでは、コントローラ201は画像展開処理を完了し、エンジン制御部202にプリント指示を送信する。図7(A)の時間To5は、コントローラ201が画像展開処理に要した時間であり、時間To5=(t504a−t502a)である。エンジン制御部202は、コントローラ201からプリント指示を受信すると、光学制御部205、定着温度制御部206、高圧制御部207からの印字準備完了の通知有無に基づいて、各部材の印字準備が完了したかどうかを判断する。t505は、エンジン制御部202が、各制御部により制御される各部材における印字準備が完了したと判断したタイミングである。このとき、エンジン制御部202は、上述した3つのタイマを停止し、t502a、t503aで測定を開始した印字準備完了までの時間計測を終了する。ここで、タイマで測定された時間のうち、定着温度制御部206が制御する定着器119の印字準備完了時間をTFuseとし、光学制御部205が制御するスキャナ113の印字準備完了時間をTScanとする。同様に、高圧制御部207が、画像形成のためにカートリッジ209の帯電ローラ109、現像ローラ108等に印加する高電圧の出力準備が完了するまでの印字準備完了時間をTDrumとする。また、このときの全ての装置の印字準備が完了するのに要した時間を時間Tready3(=t505−t502a)とする。
そして、エンジン制御部202は、起動指示に応じて定着器119の印字準備を行った場合と、印字準備を行わずプリントした場合と比較して、定着器119を余分に駆動した時間である余剰駆動時間ΔTFuseを、以下の式(2)により算出する。
ΔTFuse=TFuse−TthFuse (2)
TthFuseは予め実験により求めた定着温度制御部206が印字準備完了となるまでの時間であり、定着温度制御部206の不図示のROMに記憶されているものとする。エンジン制御部202は、ΔTFuse>0ならば、定着温度制御部206の不揮発性メモリ221に記憶された余剰駆動時間ΔTFuseの積算値に、式(2)により算出した余剰駆動時間ΔTFuseを加算する。一方、余剰駆動時間ΔTFuse≦0であれば、エンジン制御部202は、不揮発性メモリ221に記憶された余剰駆動時間ΔTFuseの積算値への加算を行わない。
同様に、エンジン制御部202は、起動指示に応じて光学制御部205、高圧制御部207に印字準備を指示した場合と、印字準備を行わずプリントした場合と比較して、過剰駆動時間ΔTScan、ΔTDrumを以下の式(3)、(4)により算出する。
ΔTScan=TScan−TthScan (3)
ΔTDrum=TDrum−TthDrum (4)
ここで、TthScanは、予め実験により求めたスキャナ113が印字準備完了となるまでの時間であり、光学制御部205の不図示のROMに記憶されているものとする。また、TthDrumは、高圧制御部207により制御される高電圧部がカートリッジ209に対して印字準備完了となるまでの時間であり、カートリッジ209のROMに記憶されているものとする。エンジン制御部202は、余剰駆動時間ΔTScan>0ならば、光学制御部205の不揮発性メモリ220に記憶された余剰駆動時間ΔTScanの積算値に加算し、余剰駆動時間ΔTScan≦0であれば、加算をしない。同様に、エンジン制御部202は、余剰駆動時間ΔTDrum>0ならば、カートリッジ209の不揮発性メモリ210の余剰駆動時間ΔTDrumの積算値に加算し、余剰駆動時間ΔTDrum≦0ならば、加算をしない。
エンジン制御部202は、各装置の余剰駆動時間の更新処理を終了したら、用紙の搬送(図中、給紙)を開始する。t506、t507は、それぞれ実施例1の図3のt305、t306と同じタイミングであり、ここでの動作説明は省略する。t512は、画像形成された用紙の機外排出が行われ、プリンタ100は画像形成動作を終了する。図7(A)の場合には、起動指示による印字準備での余剰駆動時間は発生していない。その結果、外部装置200が画像処理を開始してから、印字された最初の用紙が排出されるまでのファーストプリントアウトタイム(FPOT)は、時間Tout3(=t512−t501)となる。
(印字準備の駆動を開始できない装置がある場合)
図7(B)は、コントローラ201から起動指示が来た場合に、スキャナ113の余剰駆動時間ΔTScanの積算値が後述する余剰駆動許容時間を超え、印字準備を開始できない場合のタイミングチャートの例である。
t501は、図7(A)と同じタイミングであるため説明を省略する。t502bでは、外部装置200でのデータ処理(画像処理)が終了し、外部装置200は、コントローラ201に印字データを送信する。印字データを受信したコントローラ201は、エンジン制御部202へ起動指示を送信する。起動指示を受信したエンジン制御部202は、光学制御部205の不揮発性メモリ220、定着温度制御部206の不揮発性メモリ221、カートリッジ209の不揮発性メモリ210に記憶された情報(後述する余剰駆動時間の積算値)を読み出す。そして、エンジン制御部202は、読み出した余剰駆動時間の積算値に基づいて、起動指示により印字準備の開始が可能な装置を決定する。図7(B)では、エンジン制御部202は、t502bのタイミングで、定着温度制御部206、高圧制御部207に印字準備の開始を指示する。エンジン制御部202は、定着温度制御部206、高圧制御部207での印字準備を開始してから完了するまでの時間の計測を行うために、それぞれの時間計測のためのタイマをリセットしてスタートさせる。t503bは、図7(A)のt503aと同じタイミングであるが、スキャナ113の余剰駆動時間の積算値が余剰駆動許容時間を超えているため、エンジン制御部202は、t503bでは光学制御部205の印字準備を開始しない。
t504bでは、コントローラ201は画像展開処理を完了し、エンジン制御部202にプリント指示を送信する。エンジン制御部202はプリント指示を受信したら、定着温度制御部206、高圧制御部207からの印字準備完了の通知有無に基づいて、各部材の印字準備が完了したかどうかを判断する。更に、エンジン制御部202は、光学制御部205、定着温度制御部206、高圧制御部207のうち、まだ印字準備を開始をしていない部材の印字準備を開始する。図7(B)では、エンジン制御部202は光学制御部205の印字準備の開始を指示し、光学制御部205の印字準備開始から印字準備が完了するまでの時間を計測するため、タイマをリセットし、スタートさせる。t508では、定着温度制御部206と高圧制御部207での印字準備動作は完了しているが、光学制御部205の印字準備が完了していないため、タイマによる時間の計測を継続する。t509で、t504bで起動を開始した光学制御部205の印字準備が完了する。
t509では、エンジン制御部202が、各制御部により制御される各部材における印字準備が完了したと判断する。このとき、エンジン制御部202は、上述した3つのタイマを停止し、t502b、t504bで測定を開始した印字準備完了までの時間計測を終了する。また、このときの全ての部材の印字準備が完了するのに要した時間を時間Tready4(=t509−t502b)とする。
エンジン制御部202は、定着温度制御部206、光学制御部205、高圧制御部207における余剰駆動時間を、上述した式(2)、(3)、(4)により算出する。図7(B)では、スキャナ113の印字準備の起動が遅れたことにより、定着温度制御部206、高圧制御部207において余剰駆動時間が発生している。その結果、余剰駆動時間ΔTFuse>0、及び余剰駆動時間ΔTDrum>0であるため、不揮発性メモリ221の余剰駆動時間ΔTFuse、及び不揮発性メモリ210の余剰駆動時間ΔTDrumの積算値が更新される。t510、t511、t513は、それぞれ図7(A)のt506、507、t512と同様のタイミングであるため説明を省略する。
以上より、図7(B)の場合には、外部装置200が画像処理を開始してから、印字された最初の用紙が排出されるまでのファーストプリントアウトタイム(FPOT)は、時間Tout4(=t513−t501=Tout3+Tout5)となる。その結果、図7(B)では、ファーストプリントアウトタイムが、図7(A)に対して、時間Tout5だけ遅れた時間となる。時間Tout5は、余剰駆動時間ΔTFuse又は余剰駆動時間ΔTDrumのうち、余剰駆動時間が長い方の時間となる。しかしながら、コントローラ201による画像展開処理が完了したタイミング(t504b)で定着器119、スキャナ113、カートリッジ209の印字準備を開始する従来の制御よりもFPOTを短縮することができる。その理由は、図7(A)に記載されている通り、印字準備にかかる時間はスキャナ113よりも定着器119、カートリッジ209の方が長い。そのため、t504bよりも早いタイミング(t502b)で定着器119とカートリッジ209だけでも印字準備を開始させておくことで、全体として印字準備が完了するまでの時間は短くすることができる。図7(B)の場合には、寿命に余裕のない部材(この場合、スキャナ113)に関しては余分に駆動されることなく、FPOTを制御することができる。また、プリンタ100が設置されている環境において、例えば電源電圧が変動し、印字準備に要する時間が所定の時間よりも遅延する場合がある。このような場合でも、本実施例では、コントローラ201からの起動指示により印字準備を開始するため、プリント指示により印字準備を行う場合に比べ、印字準備の遅延ばらつきにより生じるFPOTの遅れを軽減することができる。
[起動指示による印字準備起動の制御シーケンス]
図8は、本実施例のエンジン制御部202がコントローラ201より起動指示を受信してから、用紙搬送を開始するまでの制御シーケンスを示すフローチャートである。図8は、エンジン制御部202がコントローラ201より起動指示を受信したときに起動され、エンジン制御部202により実行される。また、余剰駆動時間ΔTFuse、ΔTScan、ΔTDrumに対して、起動指示による印字準備の開始が可能かどうかを判断するための閾値である余剰駆動許容時間TLimFuse、TLimScan、TLimDrumが設けられている。余剰駆動許容時間TLimTFuse、TLimScan、TLimDrumは、ここではエンジン制御部202のROMに記憶されているものとする。なお、余剰駆動許容時間TLimFuse、TLimScan、TLimDrumが記憶されているメモリは、例えば、それぞれ定着温度制御部206、光学制御部205、カートリッジ209のROMでもよい。以下では、余剰駆動許容時間TLimFuseを許容時間TLimFuse、余剰駆動許容時間TLimScanを許容時間TLimScan、余剰駆動許容時間LimDrumを許容時間LimDrumともいう。
S801では、コントローラ201から起動指示を受信したエンジン制御部202は、定着温度制御部206の不揮発性メモリ221から余剰駆動時間TFuseの積算値ΣTFuseを取得する。S802では、エンジン制御部202は、エンジン制御部202のROMに記憶され、予め実験により算出した定着器閾値である許容時間TLimFuseを読み出し、S801で取得した余剰駆動時間の積算値ΣTFuseと比較する。S802で、エンジン制御部202は、積算値ΣTFuseは許容時間TLimFuseよりも小さい(ΣTFuse<TLimFuse)と判断した場合には、S803の処理に進む。一方、エンジン制御部202は、積算値ΣTFuseは許容時間TLimFuse以上の値である(ΣTFuse≧TLimFuse)と判断した場合には、S804の処理に進む。S803では、エンジン制御部202は、定着温度制御部206が制御する定着器119を起動指示によって印字の準備を開始する対象に設定する。
S804では、コントローラ201から起動指示を受信したエンジン制御部202は、光学制御部205の不揮発性メモリ220から余剰駆動時間TScanの積算値ΣTScanを取得する。S805では、エンジン制御部202は、エンジン制御部202のROMに記憶され、予め実験により算出したスキャナ閾値である許容時間TLimScanを読み出し、S804で取得した余剰駆動時間の積算値ΣTScanと比較する。S805で、エンジン制御部202は、積算値ΣTScanは許容時間TLimScanよりも小さい(ΣTScan<TLimScan)と判断した場合には、S806の処理に進む。一方、エンジン制御部202は、積算値ΣTScanは許容時間TLimScan以上の値である(ΣTScan≧TLimScan)と判断した場合には、S807の処理に進む。S806では、エンジン制御部202は、光学制御部205が制御するスキャナ113を起動指示によって印字の準備を開始する対象に設定する。
S807では、コントローラ201から起動指示を受信したエンジン制御部202は、カートリッジ209の不揮発性メモリ210から余剰駆動時間TDrumの積算値ΣTDrumを取得する。S808では、エンジン制御部202は、エンジン制御部202のROMに記憶され、予め実験により算出した閾値である許容時間TLimDrumを読み出し、S807で取得した余剰駆動時間の積算値ΣTDrumと比較する。エンジン制御部202は、積算値ΣTDrumは許容時間TLimDrumよりも小さい(ΣTDrum<TLimDrum)と判断した場合には、S809の処理に進む。一方、エンジン制御部202は、積算値ΣTDrumは許容時間TLimDrum以上の値である(ΣTDrum≧TLimDrum)と判断した場合には、S810の処理に進む。S809では、エンジン制御部202は、高圧制御部207が制御する高圧部(カートリッジ209ともいえる)を起動指示によって印字の準備を開始する対象に設定する。
S810では、エンジン制御部202は、起動指示による印字準備の対象となる部材があるかどうかを判断し、対象となる部材があればS811の処理に進み、対象となる部材がなければS812の処理に進む。S811では、エンジン制御部202は、コントローラ201からの起動指示に応じた印字準備を開始する。即ち、エンジン制御部202は、光学制御部205、定着温度制御部206、高圧制御部207のうち、印字準備の対象となる部材を制御する制御部に、印字準備を開始するように指示する。また、エンジン制御部202は、印字準備を開始してから完了するまでの時間計測を行うために、印字準備を指示した制御部に対応したタイマをリセットしてスタートさせる。
S812では、エンジン制御部202は、コントローラ201からプリント指示を受信したかどうかを判断し、受信したと判断した場合にはS813の処理に進み、受信していないと判断した場合にはS812の処理を繰り返す。S813では、エンジン制御部202は、印字準備していない部材、即ち起動指示による印字準備の対象ではない部材があるかどうかを判断し、該当する部材があればS814の処理に進み、該当する部材がなければS815に進む。S814では、エンジン制御部202は、コントローラ201からのプリント指示に応じた印字準備を開始する。即ち、エンジン制御部202は、光学制御部205、定着温度制御部206、高圧制御部207のうち、起動指示による印字準備の対象でなかった制御部に、部材を立ち上げ、印字準備の開始を指示する。なお、このとき、エンジン制御部202は、印字準備を開始してから完了するまでの時間計測を行うために、印字準備を指示した制御部に対応したタイマをリセットしてスタートさせる。
S815では、エンジン制御部202は、光学制御部205、定着温度制御部206、高圧制御部207が制御する各部材での印字準備が完了したかどうかを監視する。ここで、光学制御部205、定着温度制御部206、高圧制御部207は、それぞれの制御部が制御する部材の印字準備が完了した場合には、エンジン制御部202に印字準備完了を通知する。エンジン制御部202は、各制御部における印字準備が完了したと判断した場合にはS816の処理に進み、印字準備がまだ完了していないと判断した場合にはS815の処理を繰り返す。S816では、エンジン制御部202は、コントローラ201からの起動指示受信による印字準備の対象の部材があるかどうか判断する。そして、エンジン制御部202は、印字対象の部材があると判断した場合にはS817の処理に進み、部材がないと判断した場合には、タイマを停止させて、S818の処理に進む。S817では、エンジン制御部202は、タイマを停止し、各部材対応のタイマ値を読み出す。エンジン制御部202は、各部材対応に読み出したタイマ値と、前述した実験により予め求めた印字準備に要する時間TthFuse、TthScan、TthDrumを用いて、前述した式(2)〜(4)により、各部材の余剰駆動時間を算出する。ここで、算出された余剰駆動時間が0よりも大きい場合には、該当部材の余剰駆動時間の積算値を記憶している不揮発性メモリを更新する。一方、算出された余剰駆動時間が0以下の場合には、該当部材の不揮発性メモリに記憶された積算値の更新は行わない。S818では、エンジン制御部202は、用紙への画像形成を行うため、用紙搬送制御部204により、給紙カセット101から用紙の搬送を開始させ、処理を終了する。
また、図8のフローチャートでは、定着器119、スキャナ113、カートリッジ209全ての部材について起動指示による印字準備を実行するか判断をしていたが、これに限定されない。例えば、印字準備にかかる時間が長い部材から順番に起動指示による印字準備の実行が可能か判断を行い、その判断が否となった時点で以降の部材についてはプリント指示による印字準備に切り換えてもよい。具体的には、印字準備にかかる時間が長い定着器119とカートリッジ209から起動指示による印字準備の実行が可能か判断を行う。そして、そのいずれの判断も可となった場合に、スキャナ113について起動指示による印字準備の実行が可能か判断を行う。定着器119又はカートリッジ209のいずれかの判断が否となった場合、スキャナ113についてはプリント指示による印字準備の実行に切り替える。これによって、FPOTを短縮できる見込みがない場合については、不要な余剰回転時間を発生させないように制御することができる。
[印字準備開始の可否判断の推移]
図9は、上述した図7、図8の処理に従って、プリンタエンジン203を制御した際の、定着器119とカートリッジ209が交換された場合の、起動指示による印字準備開始の可否判断の推移を示すタイミングチャートである。図9の縦軸は、上から順に定着器119、スキャナ113、カートリッジ209のそれぞれの余剰駆動時間状態、印字準備開始の可否状態を示す。また、図中、「Enable」は、該当する部材の余剰駆動時間の積算値が余剰駆動許容時間よりも小さい状態を示し、「Disable」は、該当する部材の余剰駆動時間の積算値が余剰駆動許容時間以上である状態を示している。更に、「Yes」は、該当部材が、起動指示による印字準備が開始可能であることを示し、「No」は、起動指示による印字準備を開始できないことを示している。図中、「定着器交換」、「カートリッジ交換」は、定着器119、カートリッジ209が新品に交換されたことを示す。図9の横軸は時間を示し、t601〜t609はタイミング(時間)を示す。
図9のt601〜t602の期間では、定着器119については許容時間TLimFuse>積算値ΣTFuseであり、スキャナ113については許容時間TLimScan>積算値ΣTScanである。更に、カートリッジ209についても許容時間TLimDrum>積算値ΣTDrumである。エンジン制御部202は、コントローラ201から起動指示を受信すると、定着器119、スキャナ113、カートリッジ209に高電圧を印加する高圧制御部207に、起動指示に従って印字準備を開始するように指示する。
t601〜t602の期間でのプリントジョブにおける起動指示によって余剰駆動が発生して、カートリッジ209の余剰駆動時間Tdrumの積算値ΣTDrumが、t602で許容時間TLimDrum≦積算値ΣTDrumとなる。t602〜t603の期間では、定着器119については許容時間TLimFuse>ΣTFuseであり、スキャナ113については許容時間TLimScan>ΣTScanである。ところが、カートリッジ209については許容時間TLimDrum≦ΣTDrumである。そのため、エンジン制御部202は、コントローラ201から起動指示を受信すると、定着器119とスキャナ113に起動指示に従って印字準備を開始するよう指示する。一方、高圧制御部207に対しては、エンジン制御部202は、コントローラ201からプリント指示を受信すると、プリント指示に従って印字の準備を開始するよう指示する。
t603でカートリッジ209が新品に交換されると(図中、カートリッジ交換)、余剰駆動時間TDrumの積算値ΣTDrumは0となる。その結果、t603〜t604の期間では、定着器119については許容時間TLimFuse>積算値ΣTFuseであり、スキャナ113についても許容時間TLimScan>積算値ΣTScanである。更に、カートリッジ209についても、許容時間TLimDrum>積算値ΣTDrumとなる。そのため、t603〜t604の期間では、エンジン制御部202は、上述したt601〜t602の期間と同じ条件で、コントローラ201からの起動指示を受信すると、印字準備の開始を指示する。
t603〜t604の期間のプリントジョブで起動指示によって余剰駆動が発生して、t604で、カートリッジ209について許容時間TLimDrum≦積算値ΣTDrumとなる。その結果、t604〜t605の期間では、定着器119については許容時間TLimFuse>ΣTFuseであり、スキャナ113については許容時間TLimScan>ΣTScanである。ところが、カートリッジ209については許容時間TLimDrum≦ΣTDrumである。そのため、t604〜t605の期間では、エンジン制御部202は、定着器119とスキャナ113をコントローラ201からの起動指示に従って印字準備を開始させる。一方、高圧制御部207については、コントローラ201からのプリント指示を受信すると、印字の準備を開始する。
t605では、スキャナ113の余剰駆動時間TScanの積算値ΣTScanが許容時間TLimScan≦積算値ΣTScanとなる。その結果、t606でカートリッジ209が交換されるまでのt605〜t606の区間では、定着器119については許容時間TLimFuse>ΣTFuseであり、スキャナ113については許容時間TLimScan≦積算値ΣTScanである。更に、カートリッジ209についても許容時間TLimDrum≦積算値ΣTDrumであるため、エンジン制御部202は、定着器119だけをコントローラ201からの起動指示によって印字準備を開始させる。一方、スキャナ113、高圧制御部207については、エンジン制御部202はコントローラ201からのプリント指示を受信すると、印字の準備を開始するよう指示する。
t606でカートリッジ209が新品に交換されると(図中、カートリッジ交換)、余剰駆動時間TDrumの積算値ΣTDrumは0となる。その結果、t606〜t607の期間では、定着器119については許容時間TLimFuse>積算値ΣTFuseであり、スキャナ113については許容時間TLimScan≦積算値ΣTScanである。また、カートリッジ209は、許容時間TLimDrum>積算値ΣTDrumとなる。そのため、エンジン制御部202は、コントローラ201からの起動指示を受信すると、定着器119と高圧制御部207に印字準備を開始するよう指示する。一方、スキャナ113については、エンジン制御部202はコントローラ201からのプリント指示を受信すると、印字の準備を開始するよう指示する。
t607では、定着器119の余剰駆動時間TFuseの積算値ΣTFuseが、許容時間TLimFuse≦積算値ΣTFuseとなる。その結果、t607〜t608の期間では、定着器119については許容時間TLimFuse≦ΣTFuseとなり、スキャナ113についても許容時間TLimScan≦ΣTScanである。一方、カートリッジ209については、許容時間TLimDrum>ΣTDrumである。その結果、エンジン制御部202は、コントローラ201からの起動指示を受信すると、高圧制御部207に印字準備を開始するよう指示する。一方、定着器119とスキャナ113については、エンジン制御部202はコントローラ201からのプリント指示を受信すると、印字の準備を開始するよう指示する。
t608で定着器119が新品に交換されると(図中、定着器交換)、余剰駆動時間TFuseの積算値ΣTFuseは0となる。その結果、t608〜t609の期間では、定着器119については許容時間TLimFuse>積算値ΣTFuseであり、スキャナ113については許容時間TLimScan≦ΣTScanである。一方、カートリッジ209については、許容時間TLimDrum>ΣTDrumである。その結果、エンジン制御部202は、コントローラ201からの起動指示を受信すると、定着器119と高圧制御部207に印字準備を開始するよう指示する。一方、スキャナ113については、エンジン制御部202はコントローラ201からのプリント指示を受信すると、印字の準備を開始するよう指示する。
本実施例では、3つの部材、即ち定着器119、スキャナ113、カートリッジ209の余剰駆動時間に応じて、プリンタコントローラ201からの起動指示による印字準備の開始可否を判断している。プリンタコントローラ201からの起動指示による印字準備の開始可否の判断は、上述した3つの部材に限定されるものではない。例えば、他の部材に比べて寿命が短いため、余剰駆動時間も短い定着器119、カートリッジ209の余剰駆動時間に基づいて、プリンタコントローラからの起動指示による印字準備の開始の可否を判断してもよい。更に、用紙搬送装置を加えて、4つの部材の余剰駆動時間に基づいて、プリンタコントローラからの起動指示による印字準備の開始の可否を判断してもよい。また、本実施例は各部材毎に部材を駆動するモータを備えた構成であるが、例えば1つのモータを駆動源とする構成でも、各部材への駆動伝達又は切断を行うクラッチを設けることで、本実施例と同様に各部材毎に印字準備の開始を制御することができる。
また、上記の実施例1、2では、装置を余分に駆動した時間である余剰駆動時間を式(1)〜(4)によって算出し、余剰駆動許容時間と比較することによって、起動指示による印字準備を実施してよいか否かを判断していた。しかしながら、例えば式(1)における時間Tthは固定値であるため、時間Tready1に基づいて、起動指示による印字準備を実施してよいか否かを判断してもよい。その場合、制御部は算出した時間Tready1を毎回積算し、寿命を考慮したより大きな閾値と比較して実施の可否を判断する。
実施例1、2では、感光ドラム110が1つの構成のレーザビームプリンタの適用例について説明した。例えば、カラープリンタのように、トナーの色に合わせて複数のカートリッジを備えた画像形成装置がある。この場合でも、それぞれのカートリッジに、余剰駆動時間の積算値を記憶させる不揮発性メモリを設ける構成とすることにより、上述した実施例のFPOTの制御を適用することができる。
以上説明したように、本実施例によれば、部材の寿命に応じて、ファーストプリントアウトタイムを短縮することができる。印字準備の対象となる部材毎に、余剰駆動時間に応じて印字準備を開始することにより、更にFPOTを短縮することができる。また、部材毎の印字準備完了までに要する時間に基づいて、印字準備の開始タイミングを決定することにより、各部材における余剰駆動時間の増加を抑えることができる。