以下、本発明の実施の形態を図面に従い説明する。
〜第1の実施の形態〜
〜構成〜
<作業機械(油圧ショベル)>
図1は本発明の第1の実施の形態に係る作業機械の外観を示す図である。本実施の形態では作業機械は油圧ショベルである。また、本明細書中では、運転席に着いたオペレータを基準として前、後、左、右という。
図1において、本実施の形態に係わる油圧ショベルは、車体110及び作業装置120を備えている。車体110は、下部走行体111及び上部旋回体112を備えている。
下部走行体111は、本実施形態では無限軌道履帯を有する左右のクローラ(走行駆動体)113a,113bを備えており、左右の走行モータ3e,3fにより左右のクローラ113a,113bをそれぞれ駆動することで走行する。走行モータ3e,3fは油圧モータである。
上部旋回体112は、下部走行体111上に旋回装置(不図示)を介して旋回可能に搭載されている。上部旋回体112の前部左側には、オペレータが搭乗するキャビン114が設けられ、キャビン114の後側には、エンジンや油圧駆動源(後述するメインの油圧ポンプ2,パイロットポンプ7)等の動力機器を収容した動力室115が、最後部には油圧ショベル全体の前後方向のバランスを調整するカウンタウェイト116が搭載されている。上部旋回体112は旋回装置(不図示)に設けられた旋回モータ3d(図2)によって下部走行体111に対して旋回駆動される。旋回モータ3dは油圧モータである。
作業装置120は土砂の掘削等の作業を行なうための装置であり、上部旋回体112の前部(本実施の形態ではキャビン114の右側)に設けられている。この作業装置120は、ブーム121、アーム122及びバケット123を備えた多関節型の作業装置である。ブーム121は、左右に延びるピン(不図示)によって上部旋回体112の基礎フレームに連結され、ブームシリンダ3aの伸縮によって上下に回動する。アーム122は、左右に延びるピン(不図示)によってブーム121の先端に連結され、アームシリンダ3bの伸縮によってブーム121に対して回動する。バケット123は、水平左右に延びるピン(不図示)によってアーム122の先端に連結され、バケットシリンダ3cの伸縮によってアーム122に対して回動する。ブームシリンダ3a、アームシリンダ3b及びバケットシリンダ3cはそれぞれ油圧シリンダである。
また、油圧ショベルは、位置や姿勢に関する情報を検出する各種検出器を備えている。例えば、ブーム121、アーム122及びバケット123の各回動支点にはそれぞれ角度検出器8a〜8cが設けられ、それぞれブーム121、アーム122及びバケット123の回動角を検出する。上部旋回体112には傾斜検出器8dが備えられている。傾斜検出器8dは上部旋回体112の前後方向及び左右方向の少なくとも一方の傾斜を検出する。角度検出器8a〜8c及び傾斜検出器8dは、作業装置120の位置と姿勢に関する情報を検出する作業装置姿勢検出装置8(図2及び図3)を構成する。
<油圧駆動装置>
図2は本実施の形態に係わる油圧ショベルの油圧駆動装置と領域制限掘削制御装置を示す図である。
図2において、本実施の形態に係わる油圧ショベルの油圧駆動装置は、エンジン(不図示)により駆動される油圧ポンプ2と、この油圧ポンプ2から吐出される圧油により駆動される上記ブームシリンダ3a、アームシリンダ3b、バケットシリンダ3c、旋回モータ3d及び左右の走行モータ3e,3fを含む複数の油圧アクチュエータと、これら複数の油圧アクチュエータ3a〜3fに対応して設けられ、ブームの動作を指示するブーム用操作装置4a、アームの動作を指示するアーム用操作装置4b、バケットの動作を指示するバケット用操作装置4c、旋回用操作装置4d,左右のクローラ13,13の動作を指示する左右走行用の操作装置4e,4fを含む複数の操作装置と、油圧ポンプ2と複数の油圧アクチュエータ3a〜3f間に接続された複数の流量制御弁であって、ブーム用操作装置4aの操作に応じて駆動され、ブームシリンダ3aに供給される圧油の流れを制御するブーム用流量制御弁5a、アーム用操作装置4bの操作に応じて駆動され、アームシリンダ3bに供給される圧油の流れを制御するアーム用流量制御弁5b、バケット用操作装置4cの操作に応じて駆動され、バケットシリンダ3cに供給される圧油の流れを制御するバケット用流量制御弁5c、旋回用操作装置4dの操作に応じて駆動され、旋回モータ3dに供給される圧油の流れを制御する旋回用の流量制御弁5d、左右走行用の操作装置4e,4fの操作に応じて駆動され、左右の走行モータ3e,3fに供給される圧油の流れを制御する左右走行用の流量制御弁5e,5fを含む複数の流量制御弁と、油圧ポンプ2と流量制御弁5a〜5fの間の圧力が設定値以上になった場合に開くリリーフ弁6と、パイロットポンプ7とを有している。
操作装置4a〜4fは、それぞれ、オペレータにより操作される操作レバー4a1〜4f1を有し、パイロットポンプ7の吐出圧に基づいて、操作レバー4a1〜4f1の操作量と操作方向に応じた操作パイロット圧を生成する。流量制御弁5a〜5fはそれぞれ受圧部5a1,5a2〜5f1,5f2を有する油圧パイロット式であり、操作装置4a〜4fによって生成された操作パイロット圧はパイロットライン11a,11b〜16a,16bを介して流量制御弁5a〜5fの受圧部5a1,5a2〜5f1,5f2に導かれ、流量制御弁5a〜5fはそのパイロット圧によって切り換えられる。
ブームシリンダ3aのボトム側室3a1及びロッド側室3a2はそれぞれ1対の第1及び第2油圧管路(油圧ホース)21a,21bを介してブーム用流量制御弁5aに接続されている。ブームシリンダ3aの筒体外面上のボトム側室3a1部分にはブーム用の配管破断制御弁22が取り付けられ、第1油圧管路21aは配管破断制御弁22を介してブームシリンダ3aのボトム側室3a1に接続されている。
同様に、アームシリンダ3bのボトム側室3b1及びロッド側室3b2はそれぞれ1対の第3及び第4油圧管路(油圧ホース)23a,23bを介してアーム用流量制御弁5bに接続されている。アームシリンダ3bの筒体外面上のロッド側室3b2部分にはアーム用の配管破断制御弁24が取り付けられ、第4油圧管路23bは配管破断制御弁24を介してアームシリンダ3bのロッド側室3b2に接続されている。
ブームシリンダ3aのボトム側室3a1には作業装置120が地面に接していないとき作業装置120の自重による負荷圧が作用し、そのとき第1油圧管路21aにも作業装置120の自重による負荷圧が作用する。アームシリンダ3bのロッド側室3b2には作業装置120がアーム122を伸ばした姿勢にあるとき作業装置120のアーム122から先側部分の自重による負荷圧が作用し、そのとき第4油圧管路23bにも作業装置120の自重による負荷圧が作用する。第1及び第4油圧管路21a,23bがそのような状態にあるときに万一第1油圧管路21a/第4油圧管路23bが破断したとき、配管破断制御弁22,24が閉じ、作業装置120の落下を防止する。
<配管破断制御弁>
図14はブーム用の配管破断制御弁22の詳細を示す図である。
ブーム用の配管破断制御弁22は、ブームシリンダ3aの筒体外面上に取り付けられ、第1油圧管路21aは配管破断制御弁22を介してブームシリンダ3aのボトム側室3a1に接続されている。第1油圧管路21aからバイパスライン201が分岐し、バイパスライン201に開閉弁202が接続されている。バイパスライン201の下流側はタンクに接続されている。図中、図2に示した電磁比例弁54a,54b及びシャトル弁33は図示を省略している。
流量制御弁5aのブーム上げ側のアクチュエータポートは第1油圧管路21a及び配管破断制御弁22を介してブームシリンダ3aのボトム側室3a1に接続され、ブーム下げ側のアクチュエータポートは第2油圧管路21bを介してブームシリンダ3aのロッド側室3a2に接続されている。
配管破断制御弁22は、主弁としてのポペット弁211と、操作装置4aからの操作パイロット圧によって作動しポペット弁211を作動させるパイロット弁としてのスプール弁212とを備えている。
ポペット弁211は、ポペット弁体211aと、第1油圧管路21aに接続された配管接続室211bと、ブームシリンダ3aのボトム側室3a1に接続されたシリンダ接続室211cと、背圧室211dとを有し、ポペット弁体211aは背圧室211dの圧力を背面で受け、シリンダ接続室211cと配管接続室211bとの間を遮断及び連通させるようハウジング内に摺動自在に配置されている。ポペット弁体211aには、シリンダ接続室211cと背圧室211dとを連通させる通路211eと、この通路211eに設けられた絞り要素(固定絞り要素)211fが設けられている。背圧室211d内にはポペット弁体211aを図示の遮断位置に保持する軽いバネ(図示せず)が配設されている。
ポペット弁211のシリンダ接続室211cは、パイロット通路215、スプール弁212及びパイロット通路216を介して配管接続室211bと接続されており、ポペット弁211の背圧室211dは、パイロット通路217、スプール弁212及びパイロット通路216を介して配管接続室211bと接続されている。
スプール弁212は、パイロット通路215とパイロット通路216との連通を制御する第1可変絞り部212aと、パイロット通路217とパイロット通路216との連通を制御する第2可変絞り部212bとを備えている。スプール弁212の閉弁方向作動端部にはスプール弁212の初期開弁力を設定するバネ212cが設けられ、スプール弁212の開弁方向作動端部には、操作装置4aで生成されたブーム下げの操作パイロット圧が油路204を介して導かれる受圧部212dが設けられている。
開閉弁202は、図示下側の閉位置と図示上側の絞り位置との間で切り換え可能である。また、開閉弁202は開方向作動のバネ202aと閉方向作動の受圧部202bを有し、受圧部202bは通路246を介してパイロットライン11aに接続されている。
操作装置4aの操作レバー4a1をブーム上げ方向に操作すると、ブーム上げのパイロット圧がパイロットライン11aを介して流量制御弁5aの受圧部5a1に導かれ、流量制御弁5aは図示左側の位置に切り換えられる。流量制御弁5aが図示左側の位置に切り換えられると、油圧ポンプ2から吐出された圧油は流量制御弁5aを介して第1油圧管路21aへと供給される。また、このとき、開閉弁202の受圧部202bにもその操作パイロット圧が導かれ、開閉弁202は閉位置に切り換えられ、バイパスライン201は閉じられる。その結果、第1油圧管路21aに供給された圧油は、配管破断制御弁22のポペット弁211のポペット弁体211aを押し開き、ブームシリンダ3aのボトム側室3a1に供給される。ブームシリンダ3aのロッド側室3a2の圧油は第2油圧管路21b、流量制御弁5aを介してタンクへ排出される。これによりブームシリンダ3aは伸長方向に駆動され、ブーム121(図1)は上げ方向に駆動される。
操作装置4aの操作レバー4a1をブーム下げ方向に操作したときは、ブーム下げのパイロット圧が流量制御弁5aの受圧部5a2及び配管破断制御弁22のスプール弁212の受圧部212dに導かれる。流量制御弁5aはそのパイロット圧により図示右側の位置に切り換えられ、油圧ポンプ2から吐出された圧油は、流量制御弁5a及び第2油圧管路21bを介してブームシリンダ3aのロッド側室3a2に供給される。また、配管破断制御弁22のスプール弁212は受圧部212dに与えられたパイロット圧により開弁し、これに伴って配管破断制御弁22のポペット弁211も開弁する。そしてこのときは、開閉弁202はバネ22bの付勢力で図示上側の開位置(絞り開位置)に保持されており、第1油圧管路21aは開閉弁202及び流量制御弁5aの両方を介してタンクに連通し、ブームシリンダ3aのボトム側室3a1の圧油は配管破断制御弁22のポペット弁211、第1油圧管路21a、流量制御弁5a及びバイパスライン201及び開閉弁202を介してタンクへ排出される。これによりブームシリンダ3aは収縮方向に駆動され、ブーム121(図1)は下げ方向に駆動される。
また、バイパスライン201において、開閉弁202が絞り位置に保持され、第1油圧管路21aがバイパスライン201を介してタンクに連通することで、配管破断制御弁22と流量制御弁5a間に開弁タイミングの不整合があり、流量制御弁5aの開弁に先行して配管破断制御弁22が開弁した場合でも、配管破断制御弁22が開弁した瞬間に第1油圧管路21aへと流入した圧油はバイパスライン201からタンクへ流出するため、第1油圧管路21aに流入した圧油は第1油圧管路21a内に閉じ込められることがなく、ブームシリンダ3aのボトム側室3a1からの圧油をスムーズにタンクへ排出することができ、ブームシリンダ3aの動き始めの駆動操作性の低下は生じない。また、第1油圧管路21aがバイパスライン201を介してタンクに連通するため、配管破断制御弁22と流量制御弁5aの開弁タイミングのチューニングが不要となる。
操作装置4aの操作レバー4a1を操作せず、流量制御弁5aを中立位置に維持して負荷を保持する場合は、ブームシリンダ3aのボトム側室3a1に負荷圧が発生して高圧となり、その高圧が絞り要素211fを介して背圧室211dに導かれ、ポペット弁体211aが背圧室211dの高圧により図示下方に付勢されることにより、ポペット弁211は遮断位置に保持される(チェック弁機能)。これによりブームシリンダ3aのボトム側の負荷圧を保持し、油漏れによる作業装置120の落下を防止する。
ブーム下げ動作中(正常時)は、上記のように配管破断制御弁22と流量制御弁5aが開弁し、第1油圧管路21aにブームシリンダ3aのボトム側の圧力(負荷圧)を作用させつつ、流量制御弁5aと配管破断制御弁22とバイパスライン201により排出流量を制御し、速度調整を行う。このような状況下で、万一、第1油圧管路21aが破断した場合は、第1油圧管路21a内の圧力はほぼ大気圧に低下するため、配管破断制御弁22のポペット弁211のポペット弁体211aが背圧室211dの高圧により図示下方に押されて、ポペット弁211は遮断位置に切り換わる。これにより、オペレータが操作装置4aの操作レバー4a1を中立に戻して操作パイロット圧をタンク圧(0)とし、配管破断制御弁22のスプール弁212を図示左側の閉位置に戻すことにより、ブームシリンダ3aのボトム側室3a1からの圧油の流出は阻止され、それ以上のブーム121の落下が防止される。
アーム用の配管破断制御弁24は、図14に示したブーム用の配管破断制御弁22において、ポペット弁211のシリンダ接続室211cをアームシリンダ3bのロッド側室3b2に接続し、第2油圧管路21bを第4油圧管路23bに代えてアームシリンダ3bのボトム側室3b1に接続される。アーム用の配管破断制御弁24のそれ以外の構成は、図14に示したブーム用の配管破断制御弁22と同じである。
なお、本実施の形態は、ブームシリンダ3aの第1油圧管路21aとアームシリンダ3bの第4油圧管路23bの両方に配管破断制御弁22,24を搭載したが、ブームシリンダ3aの第1油圧管路21aとアームシリンダ3bの第4油圧管路23bの一方のみに配管破断制御弁22又は配管破断制御弁24を搭載してもよい。
<領域制限掘削制御装置>
本実施の形態に係わる油圧ショベルの領域制限掘削制御装置は以上のような油圧駆動装置を備えた油圧ショベルに備えられ、作業装置120のバケット123が目標掘削面L(図11参照)の下方に侵入しないように作業装置120の動きを制御する。この領域制限掘削制御装置は、上述した角度検出器8a〜8c及び傾斜検出器8d(作業装置姿勢検出装置8)と、目標掘削面Lの設定を指示する目標掘削面設定装置30と、ブーム用操作装置4aのブーム上げパイロットライン11a及びブーム下げのパイロットライン11bに設けられ、操作装置4aの操作量としてブーム上げの操作パイロット圧とブーム下げの操作パイロット圧を検出する圧力検出器51a,51b(オペレータ操作検出装置31)と、アーム用操作装置4bのアームクラウドのパイロットライン12a及びアームダンプのパイロットライン12bに設けられ、操作装置4bの操作量としてアームクラウドの操作パイロット圧とアームダンプの操作パイロット圧を検出する圧力検出器52a,52b(オペレータ操作検出装置31)と、一次ポート側がパイロットポンプ7に接続され、電気信号に応じてパイロットポンプ7からのパイロット圧を減圧してブーム上げの制御パイロット圧を生成する電磁比例弁54aと、ブーム用操作装置4aのブーム上げ側のパイロットライン11aと電磁比例弁54aの出力ポート側に接続され、ブーム用操作装置4aのブーム上げの操作パイロット圧と電磁比例弁54aが生成するブーム上げの制御パイロット圧の高圧側を選択して流量制御弁5aのブーム上げ側の受圧部5a1に導くシャトル弁33と、ブーム用操作装置4aのブーム下げ側のパイロットライン11bに設置され、電気信号に応じてブーム下げの操作パイロット圧を減圧して出力する電磁比例弁54bと、アーム用操作装置4bのアームクラウド側のパイロットライン12aに設置され、電気信号に応じてアームクラウドの操作パイロット圧を減圧して出力する電磁比例弁55aと、アーム用操作装置4bのアームダンプ側のパイロットライン12bに設置され、電気信号に応じてアームダンプの操作パイロット圧を減圧して出力する電磁比例弁55bと、キャビン114の運転室内に配置され、車体110、作業装置120や目標掘削面L等の領域制限掘削制御に係わる画像/数値情報を表示する表示装置34と、コントロールユニット35とを備えている。
また、本実施の形態に係わる油圧ショベルは油圧ショベルの仕様に係わる各種情報を入力し設定する情報管理装置36(情報設定装置)を備えている。情報管理装置36に入力され設定される情報の1つに本油圧ショベルが配管破断制御弁を備える仕様であるかどうかが含まれる。情報管理装置36は配管破断制御弁の搭載有無のフラグ情報を工場出荷時に設定されていてもよいし、工場出荷後にオペレータにより設定されてもよい。本実施の形態では、上述したように油圧ショベルが配管破断制御弁22,24を備えているため、情報管理装置36には配管破断制御弁有りのフラグが設定されている。
コントロールユニット35は、作業装置姿勢検出装置8の検出信号、目標掘削面設定装置30の設定信号、オペレータ操作検出装置31の検出信号と、情報管理装置36の配管破断制御弁の搭載有無のフラグ情報を入力し、所定の演算処理を行い、表示装置34と電磁比例弁54a,54b,55a,55bに表示信号及び制御信号(電気信号)を出力する。情報管理装置36の配管破断制御弁の搭載有無のフラグ情報の入力は、例えばコントロールユニット35の起動時(図示しないキースイッチのオン時)にコントロールユニット35が情報管理装置36から配管破断制御弁の搭載有無のフラグを読み込むことで行われる。一度管破断制御弁の搭載有無のフラグが読み込まれると、キースイッチをオフしてコントロールユニット35の電源を切るまで、同じフラグが保持される。
図3はコントロールユニット35のハードウェア構成を示す図である。
コントロールユニット35は、入力部35aと、プロセッサである中央処理装置(CPU)35bと、記憶装置であるリードオンリーメモリ(ROM)35c及びランダムアクセスメモリ(RAM)35dと、出力部35eとを有している。入力部35aは、作業装置姿勢検出装置8の検出信号、目標掘削面設定装置30の設定信号、オペレータ操作検出装置31の検出信号と、情報管理装置36に設定された配管破断制御弁の搭載有無のフラグ情報を入力し、A/D変換を行うなどコントロールユニット35のインターフェースとして機能する。ROM35cは、コントロールユニット35の後述する機能を実行するための制御プログラムと、その機能の実行に必要な各種データが記憶された記録媒体(記憶装置)であり、CPU35bは、ROM35cに記憶された制御プログラムに従って入力部35aから取り入れた信号に対して所定の演算処理を行う。出力部35eは、CPU35bでの演算結果に応じた出力用の信号を作成し、その信号を表示装置34と電磁比例弁54a,54b,55a,55bに出力する。
なお、図3のコントロールユニット35は、記憶装置としてROM35c及びRAM35dという半導体メモリを備えているが、記憶装置であれば他のものであってもよく、例えばハードディスクドライブ等の磁気記憶装置を備えていてもよい。また、情報管理装置36の代わりに外部パソコンに配管破断制御弁の搭載有無情報を設定し、外部パソコンをコントロールユニット35に接続して配管破断制御弁の搭載有無情報を入力してもよい。
図4はコントロールユニット35の制御機能を示すブロック図である。
コントロールユニット35は、作業装置姿勢演算部41、目標掘削面演算部42、領域制限掘削制御演算部43及び電磁比例弁制御部44の各機能を有している。
作業装置姿勢演算部41は、作業装置姿勢検出装置8(角度検出器8a〜8c及び傾斜検出器8d)で検出したブーム121、アーム122、バケット123の回動角及び上部旋回体112の前後の傾斜角に基づいて作業装置120の位置と姿勢を演算する。
目標掘削面演算部42は、目標掘削面設定装置30からの設定信号に基づいて、目標掘削面Lを演算し、その目標掘削面LをRAM35dに記憶する。目標掘削面L上およびその上方の領域はバケット123の先端が動き得る掘削可能領域であり、目標掘削面Lは掘削可能領域の境界に設定される。本実施の形態において、目標掘削面Lは、例えば、バケット123の先端の位置に応じて適宜自動的に生成される。また、目標掘削面Lは、例えばブームの回動支点を原点としたXY座標系(直行座標系)を設定し、そのXY座標系における直線式で表される。
領域制限掘削制御演算部43は、作業装置姿勢演算部41、目標掘削面演算部42、オペレータ操作検出装置31(圧力検出器51a,51b,52a,52b)及び情報管理装置36からの信号/情報に基づいて、作業装置120のバケット先端が目標掘削面Lの下方に侵入しないように、バケット123が目標掘削面Lに近づくにしたがってバケット123が目標掘削面Lに近づく垂直方向の移動速度を減少させるように作業装置120の動きを制御するため、ブーム用操作装置4a及びアーム用操作装置4bのそれぞれの操作信号の制御値を演算する。また、必要に応じてオペレータによるブーム上げ操作なしにブームを上げるため、ブームシリンダ3aの上げ方向の制御速度を演算し、ブーム用操作装置4aの操作信号の制御値を演算する。電磁比例弁制御部44は、領域制限掘削制御演算部43で演算したブーム用操作装置4a及びアーム用操作装置4bのそれぞれの操作信号の制御値に基づいて、電磁比例弁54a,54b,55a,55bの駆動信号(電気信号)を生成し出力する。表示装置34は、領域制限掘削制御演算部43によって演算された各種情報を画像/数値情報として表示画面に表示する。
図5は、領域制限掘削制御演算部43の演算機能の詳細を示すブロック図である。
領域制限掘削制御演算部43は、シリンダ速度演算部(第1演算部)43a、制限制御演算部(第2演算部)43b及び操作信号制御値演算部(第3演算部)43cの各機能を有している。
シリンダ速度演算部43aは、オペレータのブーム用操作装置4aの操作によるブームシリンダ3aの駆動速度(ブームシリンダ速度)と、アーム用操作装置4bの操作によるアームシリンダ3bの駆動速度(アームシリンダ速度)を演算するものであり、その演算には、ブーム用操作装置4aの操作パイロット圧(操作信号)とブームシリンダ3aの駆動速度とのブーム用の第1相関テーブル(相関関係)と、アーム用操作装置4bの操作パイロット圧(操作信号)とアームシリンダ3bの駆動速度とのアーム用の第1相関テーブル(相関関係)とが用いられる。ブーム用の第1相関テーブルはブーム上げ用の第1相関テーブルとブーム下げ用の第1相関テーブルを含み、ブーム上げ用の第1相関テーブルとブーム下げ用の第1相関テーブルには、ブーム用の配管破断制御弁22の搭載の有無に応じて2種類の第1相関テーブルがROM35cに保存される。同様に、アーム用の第1相関テーブルはアームクラウド用の第1相関テーブルとアームダンプ用の第1相関テーブルを含み、アームクラウド用の第1相関テーブルとアームダンプ用の第1相関テーブルには、アーム用の配管破断制御弁24の搭載の有無に応じて2種類の第1相関テーブルがROM35cに保存される。シリンダ速度演算部43aは、情報管理装置36に設定された配管破断制御弁の搭載有無のフラグ情報に基づいて(配管破断制御弁24の搭載の有無に応じて)ブーム上げ用及びブーム下げ用の2種類の第1相関テーブルとアームクラウド用及びアームダンプ用の2種類の第1相関テーブルのそれぞれから対応する第1相関テーブルを選択し、その第1相関テーブルを用いてブームシリンダ3aの駆動速度及びアームシリンダ3bの駆動速度を演算する。なお、相関テーブルに代えて数式を用いてもよい。
制限制御演算部43bは、作業装置姿勢演算部41で演算した作業装置120の姿勢と目標掘削面演算部42で演算した目標掘削面Lとから作業装置120と目標掘削面Lとの位置関係(バケット先端の目標掘削面Lからの距離D)を演算し、シリンダ速度演算部43aで演算したブームシリンダ3a及びアームシリンダ3bの駆動速度と、作業装置120と目標掘削面Lとの位置関係とに基づいて、作業装置120のバケット先端が目標掘削面Lの下方に侵入しないように制御するためのブームシリンダ3a及びアームシリンダ3bの駆動速度の制御値(制限制御用の目標駆動速度)を演算する。
操作信号制御値演算部43cは、制限制御演算部43bで求めたブームシリンダ3a及びアームシリンダ3bの駆動速度の制御値(制御速度)に基づいてブーム用操作装置4a及びアーム用操作装置4bの操作パイロット圧(操作信号)の制御値(制限制御用の目標パイロット圧(目標操作信号))を演算するものであり、その演算には、ブームシリンダ3aの駆動速度とブーム用操作装置4aの操作パイロット圧(操作信号)とのブーム用の第2相関テーブル(相関関数)と、アームシリンダ3bの駆動速度とアーム用操作装置4bの操作パイロット圧(操作信号)とのアーム用の第2相関テーブル(相関関数)とが用いられる。ブーム用の第2相関テーブルはブーム上げ用の第2相関テーブルとブーム下げ用の第2相関テーブルを含み、ブーム上げ用の第2相関テーブルとブーム下げ用の第2相関テーブルにはブーム用の配管破断制御弁22の搭載の有無に応じて2種類の第2相関テーブルがROM35cに保存される。同様に、アーム用の第2相関テーブルはアームクラウド用の第2相関テーブルとアームダンプ用の第2相関テーブルを含み、アームクラウド用の第2相関テーブルとアームダンプ用の第2相関テーブルにはアーム用の配管破断制御弁24の搭載の有無に応じて2種類の第2相関テーブルがROM35cに保存される。操作信号制御値演算部43cは、情報管理装置36に設定された配管破断制御弁の搭載有無のフラグ情報に基づいて(配管破断制御弁22の搭載の有無に応じて)ブーム上げ用及びブーム下げ用の2種類の第2相関テーブとアームクラウド用及びアームダンプ用の2種類の第2相関テーブルのそれぞれから対応する第2相関テーブルを選択し、その第2相関テーブルを用いてブーム用操作装置4aの操作パイロット圧の制御値及びアーム用操作装置4bの操作パイロット圧の制御値を演算する。ここでも、相関テーブルに代えて数式を用いてもよい。
なお、後述する図15に示す実施の形態と同様、本実施の形態においても、オペレータ操作検出装置31としてバケットクラウド用及びバケットダンプ用のパイロット圧を検出する圧力検出器を設け、補正動作用の電磁比例弁としてバケットクラウド用及びバケットダンプ用の電磁比例弁を設け、シリンダ速度演算部43aにおいて、バケット用操作装置4cの操作パイロット圧(操作信号)とバケットシリンダ3cの駆動速度とのバケット用の第1相関テーブル(相関関係)を用いてオペレータのバケット用操作装置4cの操作によるバケットシリンダ3cの駆動速度(バケットシリンダ速度)を演算し、操作信号制御値演算部43cにおいて、バケットシリンダ3cの駆動速度とバケット用操作装置4cの操作パイロット圧(操作信号)とのバケット用の第2相関テーブル(相関関数)を用いてバケット用操作装置4cの操作パイロット圧(操作信号)の制御値を演算してもよい。
操作信号制御値演算部43cで演算されたブーム用操作装置4a及びアーム用操作装置4bの操作パイロット圧の制御値は制御指令値として電磁比例弁制御部44に出力される。電磁比例弁制御部44は、操作信号制御値演算部43cで演算されたブーム用操作装置4a及びアーム用操作装置4bのそれぞれの操作パイロット圧の制御値に基づいて、電磁比例弁54a,54b,55a,55bの駆動信号(電気信号)を生成し、電磁比例弁54a,54b,55a,55bに出力される。電磁比例弁54a,54b,55a,55bは、ブームシリンダ3a及びアームシリンダ3bの駆動速度が、制限制御演算部43bで演算したブームシリンダ3a及びアームシリンダ3bの制御速度となるようブーム用操作装置4a及びアーム用操作装置4bの操作パイロット圧(操作信号)を補正する。
以上において、シリンダ速度演算部43aは、作業装置120の動作を指示する複数の操作装置4a〜4cのうちの少なくとも一部の複数の特定の操作装置4a,4bの操作信号からそれぞれの第1相関関数を用いて複数の特定の操作装置4a,4bに対応する複数の油圧シリンダ3a,3bの駆動速度を演算する第1演算部を構成する。
制限制御演算部43bは、第1演算部43aで演算した複数の油圧シリンダ3a,3bの駆動速度と、作業装置120と目標掘削面Lとの位置関係とに基づいて、作業装置120が目標掘削面Lの下方に侵入しないよう作業装置120を駆動する複数の油圧シリンダ3a〜3cのうちの少なくとも一部の複数の特定の油圧シリンダ3a,3bの駆動速度の制御値を演算する第2演算部を構成する。
操作信号制御値演算部43cは、第2演算部43bで演算した複数の特定の油圧シリンダ3a,3bの駆動速度の制御値からそれぞれの第2相関関数を用いて複数の特定の油圧シリンダ3a,3bに対応する複数の操作装置4a,4bの操作信号の制御値を演算する第3演算部を構成する。
電磁比例弁制御部44と電磁比例弁54a,54b,55a,55bは、第3演算部43cで演算した複数の操作装置4a,4bの操作信号の制御値に基づいて、作業装置120が目標掘削面Lの下方に侵入しないよう複数の特定の油圧シリンダ3a,3bに対応する複数の操作装置4a,4bの操作信号を補正する操作信号補正装置を構成する。
また、複数の特定の操作装置4a,4bに対応する複数の油圧シリンダ3a,3bは配管破断制御弁22,24に係わる油圧シリンダ3a,3bを含み、かつ第1演算部43aは、第1相関関数として、配管破断制御弁3a,3bに係わる油圧シリンダ用の特定の第1相関関数を含み、複数の特定の油圧シリンダ3a,3bは配管破断制御弁22,24に係わる油圧シリンダ3a,3bを含み、かつ第3演算部43cは、第2相関関数として、配管破断制御弁22,24に係わる油圧シリンダ用の特定の第2相関関数を含み、第1演算部43a及び第3演算部43cは、情報設定装置である情報管理装置36から配管破断制御弁22,24の搭載の有無に係わる情報を入力し、配管破断制御弁22,24の搭載の有無に応じて特定の第1相関関数及び特定の第2相関関数による演算処理を補正し、配管破断制御弁22,24に係わる油圧シリンダ3a,3bの駆動速度及び配管破断制御弁22,24に係わる油圧シリンダ3a,3bに対応する操作装置4a,4bの操作信号の制御値をそれぞれ演算する。
図6は、シリンダ速度演算部43aに設定される2種類の第1相関テーブルの一例を示す図である。図中、実線の特性を有する相関テーブルが配管破断制御弁の搭載有りの場合の第1相関テーブルであり、破線の特性を有する相関テーブルが配管破断制御弁の搭載無しの場合の第1相関テーブルである。
例えば、ブームシリンダ3aを伸長させるブーム上げ動作では、ブームシリンダ3aに配管破断制御弁22を備える場合、ブームシリンダ3aのボトム側室3a1に供給される圧油は配管破断制御弁22のポペット弁211のポペット弁体211aを押し上げた上でブームシリンダ3aのボトム側室3a1に供給される。このようにブーム上げ動作ではポペット弁211が作動するため、配管破断制御弁22を備えた油圧ショベルでは、配管破断制御弁22を備えていない油圧ショベルに対してブーム用操作装置4aの操作パイロット圧(操作信号)とブームシリンダ3aの駆動速度との関係が変化する。このためブーム用の配管破断制御弁22の搭載有りの場合の第1相関テーブルのシリンダ速度特性(実線)は、ブーム用の配管破断制御弁22の搭載無しの場合の第1相関テーブルのシリンダ速度特性(破線)に比べてブームシリンダ3aの駆動速度が小さい値となる。
また、ブームシリンダ3aを収縮させるブーム下げ動作では、ブームシリンダ3aのボトム側室3a1に負荷保持圧が発生し、ブームシリンダ3aに配管破断制御弁22を備える場合、ブーム下げの操作パイロット圧が配管破断制御弁22のスプール弁212に作用し、それに伴いポペット弁211が開き、ブームシリンダ3aのボトム側室3a1から圧油がタンクへと排出される。このようにブーム下げ動作では、スプール弁212やポペット弁211が作動するため、配管破断制御弁22を備えた油圧ショベルでは、配管破断制御弁22を備えていない油圧ショベルに対してブーム用操作装置4aの操作パイロット圧(操作信号)とブームシリンダ3aの駆動速度との関係が変化する。このためこの場合も、ブーム用の配管破断制御弁22の搭載有りの場合の第1相関テーブルのシリンダ速度特性(実線)は、ブーム用の配管破断制御弁22の搭載無しの場合の第1相関テーブルのシリンダ速度特性(破線)に比べてブームシリンダ3aの駆動速度が小さい値となる。
アームシリンダ3bを伸長させるアームクラウド動作及びアームシリンダ3bを収縮させるアームダンプ動作の場合も同様であり、アーム用の配管破断制御弁24が流路抵抗となって、配管破断制御弁24を備えた油圧ショベルでは、配管破断制御弁24を備えていない油圧ショベルに対してアーム用操作装置4bの操作パイロット圧(操作信号)とアームシリンダ3bの駆動速度との関係が変化する。このためアーム用の配管破断制御弁24の搭載有りの場合の第1相関テーブルのシリンダ速度特性(実線)は、アーム用の配管破断制御弁24の搭載無しの場合の第1相関テーブルのシリンダ速度特性(破線)に比べてアームシリンダ3bの駆動速度が小さい値となる。
図7はシリンダ速度演算部43aの演算処理の一例を示す図である。
シリンダ速度演算部43aは選択部43a1と演算部43a2を有している。選択部43a1は配管破断制御弁の搭載有無のフラグ情報に基づいて(配管破断制御弁の搭載の有無に応じて)配管破断制御弁の搭載有りの場合の第1相関テーブルF1と配管破断制御弁の搭載無しの場合の第1相関テーブルF2のいずれか一方を選択する。演算部43a2は、その選択した第1相関テーブルを用いてそのときの操作装置の操作パイロット圧に応じたシリンダ駆動速度を演算する。
シリンダ速度演算部43aは、ブーム上げ用及びブーム下げ用の2種類の第1相関テーブルとアームクラウド用及びアームダンプ用の2種類の第1相関テーブルのそれぞれに対して図7に示した選択部43a1と演算部43a2を備え、配管破断制御弁の搭載有無のフラグ情報に基づいて(配管破断制御弁の搭載の有無に応じて)ブームシリンダ3aの駆動速度及びアームシリンダ3bの駆動速度を演算する。
なお、上述した実施の形態では、配管破断制御弁の搭載の有無に応じて2種類の第1相関テーブルをROM35cに保存し、配管破断制御弁の搭載の有無に応じてシリンダ駆動速度を演算したが、一種類の第1相関テーブルをROM35cに保存し、配管破断制御弁の搭載の有無に応じてそのテーブルデータにゲインを乗じる、或いは最大値を制限するなどしてテーブルデータを補正し、シリンダ駆動速度を演算してもよい。また、上記実施の形態では、相関テーブルを用いてシリンダ駆動速度を演算したが、相関テーブルに代え数式を用いるなど他の相関関数を用いてもよい。このようにシリンダ速度演算部43aにおいては、配管破断制御弁の搭載の有無に応じて相関関数による演算処理を補正しシリンダ駆動速度を演算できればよく、その範囲内で種々の変形が可能である。
図8は、操作信号制御値演算部43cに設定される2種類の第2相関テーブルの一例を示す図である。図中、実線の特性を有する相関テーブルが配管破断制御弁の搭載有りの場合の第2相関テーブルであり、破線の特性を有する相関テーブルが配管破断制御弁の搭載無しの場合の第2相関テーブルである。
前述したように、配管破断制御弁22,24が搭載されている場合、ブームシリンダ3aを伸長させるブーム上げ動作及びブームシリンダ3aを収縮させるブーム下げ動作、アームシリンダ3bを伸長させるアームクラウド動作及びアームシリンダ3bを収縮させるアームダンプ動作では、配管破断制御弁22,24が流路抵抗となる。このため配管破断制御弁22,24を備えた油圧ショベルでは、配管破断制御弁22,24を備えていない油圧ショベルに対してブームシリンダ3aの駆動速度とブーム用流量制御弁5aの制御パイロット圧(操作信号)との関係、及びアームシリンダ3bの駆動速度とアーム用流量制御弁5bの制御パイロット圧(操作信号)との関係が変化する。このため配管破断制御弁22,24の搭載有りの場合の第2相関テーブルの制御パイロット圧特性(実線)は、配管破断制御弁22,24の搭載無しの場合の第2相関テーブルの制御パイロット圧特性(破線)に比べて操作装置の操作パイロット圧が大きい値となる。
図9は操作信号制御値演算部43cの演算処理の一例を示す図である。
操作信号制御値演算部43cは選択部43c1と演算部43c2を有している。選択部43c1は配管破断制御弁の搭載有無のフラグ情報に基づいて(配管破断制御弁の搭載の有無に応じて)配管破断制御弁の搭載有りの場合の第2相関テーブルF3と配管破断制御弁の搭載無しの場合の第2相関テーブルF4のいずれか一方を選択する。演算部43c2は、その選択した第2相関テーブルを用いてそのときの制限制御演算部43bで求めたシリンダ駆動速度の制御値に応じた操作装置の操作パイロット圧の制御値を演算する。
操作信号制御値演算部43cは、ブーム上げ用及びブーム下げ用の2種類の第2相関テーブとアームクラウド用及びアームダンプ用の2種類の第2相関テーブルのそれぞれに対して図9に示した選択部43c1と演算部43c2を備え、配管破断制御弁の搭載有無のフラグ情報に基づいて(配管破断制御弁の搭載の有無に応じて)ブーム用操作装置4aの操作パイロット圧の制御値及びアーム用操作装置4bの操作パイロット圧の制御値を演算する。
なお、この場合も、配管破断制御弁の搭載の有無に応じて2種類の第2相関テーブルをROM35cに保存するのではなく、一種類の第2相関テーブルをROM35cに保存し、配管破断制御弁の搭載の有無に応じてそのテーブルデータにゲインを乗じるなどしてテーブルデータを補正し、操作パイロット圧の制御値を演算してもよい。また、相関テーブルを用いるのではなく数式を用いるなど他の相関関数を用いてもよい。このように操作信号制御値演算部43cにおいても、配管破断制御弁の搭載の有無に応じて相関関数による演算処理を補正し操作パイロットの制御値を演算できればよく、その範囲内で種々の変形が可能である。
図10及び図11は制限制御演算部43bの演算処理の一例を示す図である。
制限制御演算部43bは、まず、作業装置姿勢演算部41で演算した作業装置120の姿勢と目標掘削面演算部42で演算した目標掘削面Lとから、作業装置120と目標掘削面Lとの位置関係として、バケット先端の目標掘削面Lからの距離Dを演算し、そのバケット先端の目標掘削面Lからの距離Dに基づいて、バケット先端速度の目標掘削面Lに垂直な成分の制限値aを計算する。これはROM35cに図10に示すような関係を記憶しておき、この関係を読み出して行う。
図10において、横軸はバケット先端の目標掘削面Lからの距離Dを示し、縦軸はバケット先端速度の目標掘削面Lに垂直な成分の制限値aを示し、横軸の距離D及び縦軸の速度制限値aは、目標掘削面L上及びその上方の掘削可能領域を設定領域と呼ぶ場合、それぞれ設定領域外から設定領域内に向かう方向を(+)方向としている。この距離Dと制限値aの関係は、バケット先端が設定領域内にあるときには、その距離Dに比例した(−)方向の速度をバケット先端速度の境界Lに垂直な成分の制限値aとし、バケット先端が領域外にあるときには、その距離Dに比例した(+)方向の速度をバケット先端速度の境界Lに垂直な成分の制限値aとするように定められている。したがって、設定領域内では、バケット先端速度の目標掘削面Lに垂直な成分が(−)方向で制限値aを越えた場合だけ減速され、設定領域外では、バケット先端が(+)方向に増速されるようになる。
次いで、制限制御演算部43bは、シリンダ速度演算部43aで演算したオペレータ操作によるシリンダ駆動速度(ブームシリンダ速度及びアームシリンダ速度)と作業装置姿勢演算部41で求めた作業装置120の位置と姿勢によりオペレータ操作によるバケット先端速度bを演算する。
更に、制限制御演算部43bは、作業装置姿勢演算部41で設定した目標掘削面Lの設定データを用いて、座標変換により、上記のように求めたオペレータ操作によるバケット先端速度bの目標掘削面Lに平行な成分bxと目標掘削面Lに垂直な成分byとを演算し、バケット先端速度の目標掘削面Lに垂直な成分の制限値aとそのオペレータ操作によるバケット先端速度bの目標掘削面Lに垂直な成分byとから補正動作によるバケット先端速度の目標掘削面Lに垂直な成分の制御値cを演算する。これを、図11を用いて説明する。
図11において、バケット先端速度の目標掘削面Lに垂直な成分の制限値aとオペレータ操作によるバケット先端速度bの目標掘削面Lに垂直な成分byの差(a−by)が補正動作によるバケット先端速度の目標掘削面Lに垂直な成分の制御値cであり、制限制御演算部43bはc=a−byの式より制御値cを計算する。
補正動作による制御値cの意味について、バケット先端が設定領域内にある場合、目標掘削面L上にある場合、設定領域外にある場合に分けて説明する。
バケット先端が設定領域内の場合には、バケット先端速度は、バケット先端の目標掘削面Lからの距離Dに比例してバケット先端速度の目標掘削面Lに垂直な成分の制限値aに制限され、オペレータ操作によるバケット先端速度bが制限値aを超えた場合は、速度c(=a−by)の補正動作によって制限値aに減速される。
バケット先端が目標掘削面L上にある場合には、バケット先端速度の目標掘削面Lに垂直な成分の制限値aは0となり、設定領域外に向かうオペレータ操作によるバケット先端速度bは速度cの補正動作によってキャンセルされ、バケット先端速度も0となる。
バケット先端が設定領域外の場合には、バケット先端速度の目標掘削面Lに垂直な成分はバケット先端の目標掘削面Lからの距離Dに比例した上向きの速度aに制限されることにより、常に設定領域内に復元するように速度cの補正動作が行われる。
ここで、オペレータ操作がアームクラウド操作である場合の補正動作には例えば以下の2つがある。
(a)ブーム上げ
(b)ブーム上げとアームクラウドの減速との併用
オペレータ操作がブーム下げである場合の補正動作には例えば、
(c)ブーム下げの減速
である。
制限制御演算部43bは、補正動作によるバケット先端速度の目標掘削面Lに垂直な成分の制御値cと作業装置姿勢演算部41で設定した目標掘削面Lの設定データを用いて、座標変換により、制御値cの補正動作を行い作業装置120のバケット123の先端が目標掘削面Lの下方に侵入しないように制御するためのブームシリンダ3a及びアームシリンダ3bの駆動速度の制御値(制限制御用の目標駆動速度)を演算する。
〜動作〜
以上のように構成した本実施の形態の動作を説明する。
<アームクラウド動作>
図12は、手前方向に掘削しようとしてアーム用操作装置4bの操作レバー4b1をアームクラウド方向に操作したときであって、バケット先端が目標掘削面Lの上方(設定領域内)にあるときの補正動作軌跡の一例を示す図であり、図13はバケット先端が目標掘削面Lから(設定領域外に)はみ出したときの補正動作軌跡の一例を示す図である。まず、補正動作を上記(a)のブーム上げで行う場合について説明する。
手前方向に掘削しようとしてアーム用操作装置4bの操作レバー4b1をアームクラウド方向に操作するとき、その操作装置4bの操作パイロット圧が流量制御弁5bのアームクラウド側の受圧部5b1に与えられ、アーム122は手前方向に下がるよう動かされる。一方、これと同時に、操作装置4bの操作パイロット圧が圧力検出器52aで検出され、シリンダ速度演算部43aに入力されてアームシリンダ3bの駆動速度が計算される。このとき、操作装置4bの操作パイロット圧はアームクラウドの操作パイロット圧であるため、アームシリンダ3bの駆動速度の演算にはアームクラウド用の第1相関テーブルが用いられる。また、本実施の形態ではアーム用の配管破断制御弁24を備えているため、アームクラウド用の第1相関テーブルとしてアーム用の配管破断制御弁24の搭載有りの場合の第1相関テーブルF1が選択され、シリンダ速度演算部43aではその第1相関テーブルF1を用いてアームシリンダ3bの駆動速度が計算される。
制限制御演算部43bではそのアームシリンダ3bの駆動速度に基づいてアームによるバケット先端速度bが演算される。また、制限制御演算部43bでは図10に示す関係からケット先端の目標掘削面Lからの距離Dに比例したバケット先端速度の制限値a(<0)が計算され、更にブーム上げの補正動作によるバケット先端速度の制御値c=a−byが計算される。このとき、バケット先端が目標掘削面Lから遠く、a<by(|a|>|by|)のときは制御値cは負の値として計算される。
操作信号制御値演算部43cでは、制御値cが負の値であるため、ブーム下げ用の第2相関テーブルを用いてブーム下げの操作パイロット圧の制御値(目標パイロット圧)が演算される。
電磁比例弁制御部44は、そのブーム下げの操作パイロット圧の制御値に基づいて、ブーム下げ側の流量制御弁5aの受圧部5a2のパイロット圧を制限するように電磁比例弁54bの駆動信号(電気信号)を生成し出力する。また、ブーム上げ側の電磁比例弁54aには駆動信号を出力せず、流量制御弁5aの受圧部5a1のパイロット圧を0にする。このとき、操作装置4aは操作されていないので、流量制御弁5aの受圧部5a1,5a2のいずれにも操作装置4aからパイロット圧は出力されない。これにより操作装置4bの操作パイロット圧に応じてアーム122が手前方向に動かされる。
上記のようにアーム122が手前方向に動かされ、バケット先端が目標掘削面Lに近づくにつれて制限制御演算部43bで計算されるバケット先端速度の制限値aは大きくなり(|a|は小さくなり)、この制限値aがアームによるバケット先端速度bの目標掘削面Lに垂直な成分byよりも大きくなると、バケット先端速度の制御値c=a−byは正の値となる。
操作信号制御値演算部43cでは、制御値cが正の値であるため、ブーム上げ用の第2相関テーブルを用いて、制限制御演算部43bで計算したブームシリンダ3aの駆動速度の制御値を変換し、ブーム上げの操作パイロット圧の制御値が演算される。また、本実施の形態ではブーム用の配管破断制御弁22を備えているため、ブーム上げ用の第2相関テーブルとしてブーム用の配管破断制御弁22の搭載有りの場合の第2相関テーブルF3が選択され、操作信号制御値演算部43cではその第2相関テーブルF3を用いてブーム上げの操作パイロット圧の制御値が計算される。
電磁比例弁制御部44は、そのブーム上げの操作パイロット圧の制御値に基づいて、ブーム上げ側の流量制御弁5aの受圧部5a1のパイロット圧を生成するよう電磁比例弁54aの駆動信号(電気信号)を生成し出力する。また、ブーム下げ側の電磁比例弁54bには、オペレータ操作によるパイロット圧があってもそれを遮断するよう電磁比例弁54bを閉じる駆動信号を出力し、流量制御弁5aの受圧部5a2のパイロット圧を0にする。これにより、バケット先端速度の目標掘削面Lに垂直な成分がケット先端と目標掘削面Lからの距離Dに比例して徐々に制限されるように、ブーム上げによる補正動作が行われ、アームによるバケット先端速度の補正されていない目標掘削面Lに平行な成分bxと制御値cによる補正された速度により、図12に示すような方向変換制御が行われ、目標掘削面Lに沿った掘削が行える。また、このとき、シリンダ速度演算部43aでは、アーム用の配管破断制御弁24の搭載有りの場合の第1相関テーブルF1を用いてアームシリンダ3bの駆動速度が計算され、操作信号制御値演算部43cでは、ブーム用の配管破断制御弁22の搭載有りの場合の第2相関テーブルF3を用いてブーム上げの操作パイロット圧の制御値が計算されるため、配管破断制御弁の搭載の有無によらず、領域制限掘削制御によって目標掘削面を整形する際の制御精度を確保することができ、バケット123が目標掘削面下方に侵入する、もしくは目標掘削面に十分に近づけないといった事象の発生を回避することができる。
また、バケット先端が目標掘削面Lからはみ出した場合は、制限制御演算部43bでは図10に示す関係から、バケット先端の目標掘削面Lからの距離Dに比例したバケット先端速度の制限値aが正の値として計算され、ブーム上げの補正動作によるバケット先端速度の制御値c=a−by(>0)は制限値aに比例して大きくなり、操作信号制御値演算部43cでは、ブーム用の配管破断制御弁22の搭載有りの場合の第2相関テーブルF3を用いて制御値cに応じて大きくなるブーム上げの操作パイロット圧の制御値が計算される。
電磁比例弁制御部44は、そのブーム上げの操作パイロット圧の制御値に基づいて、制御値cに応じて増大する電磁比例弁54aの駆動信号(電気信号)を生成し出力する。これにより、設定領域外では距離Dに比例したバケット先端速度で領域内に復元するように、ブーム上げによる補正動作が行われ、アームによるバケット先端速度の補正されていない目標掘削面Lに並行な成分bxと、この制御値cにより補正された目標掘削面Lに垂直な速度により、図13に示すように目標掘削面Lに沿って徐々に戻りながらの掘削が行える。したがって、アームをクラウドするだけで滑らかに目標掘削面Lに沿った掘削が行える。また、この場合も、シリンダ速度演算部43aでは、アーム用の配管破断制御弁24の搭載有りの場合の第1相関テーブルF1を用いてアームシリンダ3bの駆動速度が計算され、操作信号制御値演算部43cでは、ブーム用の配管破断制御弁22の搭載有りの場合の第2相関テーブルF3を用いてブーム上げの操作パイロット圧の制御値が計算されるため、配管破断制御弁の搭載の有無によらず、領域制限掘削制御によって目標掘削面を整形する際の制御精度を確保することができ、バケット123が目標掘削面下方に侵入する、もしくは目標掘削面に十分に近づけないといった事象の発生を回避することができる。
補正動作を上記(b)のブーム上げとアームクラウドの減速との併用で行う場合は、バケット先端速度の制御値cが正の値となったときに、制御値cをブーム上げによる補正動作とアームクラウドの減速による補正動作に振り分け、それぞれで垂直成分byを減じればよい。
例えば、ブーム上げの補正動作に振り分けられた制御値をc1とし、アームクラウドの減速の補正動作に振り分けられた制御値をc2とすると(c=c1+c2)、制御値c1については、ブーム上げの補正動作による制御値cの場合と同様に、操作信号制御値演算部43cにおいてブーム用の配管破断制御弁22の搭載有りの場合の第2相関テーブルF3を用いてブーム上げの操作パイロット圧の制御値を計算し、電磁比例弁制御部44において電磁比例弁54aの駆動信号(電気信号)を生成し出力すればよい。制御値c2については、操作信号制御値演算部43cにおいてアーム用の配管破断制御弁24の搭載有りの場合の第2相関テーブルF3を用いてアームクラウドの操作パイロット圧の制御値を計算し、電磁比例弁制御部44において電磁比例弁55aの駆動信号(電気信号)を生成し出力すればよい。これにより電磁比例弁54aはブーム上げ側の流量制御弁5aの受圧部5a1に与えられるパイロット圧を生成し、このパイロット圧を制御値c1に応じて徐々に制限する。また、電磁比例弁55aは操作装置4bのアームクラウドのパイロット圧を減圧して出力し、流量制御弁5bのアームクラウド側の受圧部5b1に与えられるパイロット圧を制御値c2に応じて徐々に制限する。これにより、目標掘削面Lに近づくにつれてアームクラウド速度が徐々に制限され、ブーム上げとアームクラウドの減速を併用してアームによるバケット先端速度bの目標掘削面Lに垂直な成分byを減じることができる。
<ブーム下げ動作>
バケット先端の位置決めを行おうとしてブーム用操作装置4aの操作レバー4a1をブーム下げ方向に操作するとき、その操作装置4aの操作パイロット圧がパイロットライン11bを介して流量制御弁5aのブーム下げ側の受圧部5a2に与えられ、ブーム121は下方に動かされる。一方、これと同時に、操作装置4aの操作パイロット圧が圧力検出器51bで検出され、シリンダ速度演算部43aに入力されてブームシリンダ3aの駆動速度が計算される。このとき、操作装置4aの操作パイロット圧はブーム下げの操作パイロット圧であるため、ブームシリンダ3aの駆動速度の演算にはブーム下げ用の第1相関テーブルが用いられる。また、本実施の形態ではブーム用の配管破断制御弁22を備えているため、ブーム下げ用の第1相関テーブルとしてブーム用の配管破断制御弁22の搭載有りの場合の第1相関テーブルF1が選択され、シリンダ速度演算部43aではその第1相関テーブルF1を用いてブームシリンダ3aの駆動速度が計算される。
制限制御演算部43bではそのブームシリンダ3aの駆動速度に基づいてブーム下げの補正動作によるバケット先端速度bが演算される。また、制限制御演算部43bでは図10に示す関係からケット先端の目標掘削面Lからの距離Dに比例したバケット先端速度の制限値a(<0)が計算され、更にバケット先端速度の制御値c=a−byが計算される。このとき、バケット先端が目標掘削面Lから遠く、a<by(|a|>|by|)のときは制御値cは負の値として計算される。
操作信号制御値演算部43cでは、制御値cが負の値であるため、ブーム下げ用の第2相関テーブルを用いて、制限制御演算部43bで計算したブームシリンダ3aの駆動速度の制御値を変換し、ブーム下げの操作パイロット圧の制御値が演算される。また、本実施の形態ではブーム用の配管破断制御弁22を備えているため、ブーム下げ用の第2相関テーブルとしてブーム用の配管破断制御弁22の搭載有りの場合の第2相関テーブルF3が選択され、操作信号制御値演算部43cではその第2相関テーブルF3を用いてブーム下げの操作パイロット圧の制御値が計算される。
電磁比例弁制御部44は、そのブーム下げの操作パイロット圧の制御値に基づいて、ブーム下げ側の流量制御弁5aの受圧部5a2のパイロット圧を制限するように電磁比例弁54bの駆動信号(電気信号)を生成し出力する。また、ブーム上げ側の電磁比例弁54aには駆動信号を出力せず、流量制御弁5aの受圧部5a1のパイロット圧を0にする。このとき、バケット先端が目標掘削面Lから遠いときは、制限制御演算部43bで計算されるブーム下げの補正動作によるバケット先端速度の制御値cの絶対値は大きく、操作信号制御値演算部43cで求めたブーム下げの操作パイロット圧の制御値よりも操作装置4aのパイロット圧の方が小さいので、電磁比例弁54bは操作装置4aのパイロット圧をそのまま出力し、これにより操作装置4aのパイロット圧に応じてブームが下がって行く。
上記のようにブームが下がり、バケット先端が目標掘削面Lに近づくにつれて制限制御演算部43bで計算されるブームによるバケット先端速度の制御値c=a(<0)は大きくなり(|a|又|c|は小さくなり)、操作信号制御値演算部43cで求めた対応するブーム下げの操作パイロット圧(<0)の制御値の絶対値は小さくなる。そして、この制御値の絶対値が操作装置4aの操作パイロット圧よりも小さくなり、電磁比例弁制御部44から電磁比例弁54bに出力される駆動信号がそれに応じて小さくなると、電磁比例弁54bは操作装置4aのパイロット圧を減圧して出力し、流量制御弁5aのブーム下げ側の受圧部5a2に与えられるパイロット圧を制御値cに応じて徐々に制限する。これにより、目標掘削面Lに近づくにつれてブーム下げ速度が徐々に制限され、バケット先端が目標掘削面Lに到達するとブームは停止する。したがって、バケット先端の位置決めが簡単に滑らかにできる。また、このとき、シリンダ速度演算部43aでは、ブーム下げ用の第1相関テーブルとしてブーム用の配管破断制御弁22の搭載有りの場合の第1相関テーブルF1を用いてブームシリンダ3aの駆動速度が計算され、操作信号制御値演算部43cでは、ブーム下げ用の第2相関テーブルとしてブーム用の配管破断制御弁22の搭載有りの場合の第2相関テーブルF3を用いてブーム下げの操作パイロット圧の制御値が計算されるため、配管破断制御弁の搭載の有無によらず、領域制限掘削制御によって目標掘削面を整形する際の制御精度を確保することができ、バケット123が目標掘削面下方に侵入する、もしくは目標掘削面に十分に近づけないといった事象の発生を回避することができる。
また、バケット先端が目標掘削面Lからはみ出した場合は、制限制御演算部43bでは図10に示す関係から、バケット先端と目標掘削面Lからの距離Dに比例したバケット先端速度の制限値aが正の値として計算され、補正動作によるバケット先端速度の制御値c=a−by(>0)も制限値aに比例して大きくなる正の値として計算される。操作信号制御値演算部43cでは、制御値cが正の値であるため、ブーム上げ用の第2相関テーブルを用いて、制御値cに応じて大きくなるブーム上げの操作パイロット圧の制御値が演算されるとともに、ブーム下げ用の操作パイロット圧の制御値としてゼロが演算される。また、本実施の形態ではブーム用の配管破断制御弁22を備えているため、ブーム上げ用の第2相関テーブルとしてブーム用の配管破断制御弁22の搭載有りの場合の第2相関テーブルF3を用いて制御値cに応じて大きくなるブーム上げの操作パイロット圧の制御値が計算される。
電磁比例弁制御部44は、そのブーム上げの操作パイロット圧の制御値に基づいて、制御値cに応じて増大する電磁比例弁54aの駆動信号(電気信号)を生成し出力し、ブーム上げ側の流量制御弁5aの受圧部5a1に制限値aに応じたパイロット圧を与える。また、電磁比例弁制御部44は、そのブーム下げのゼロの操作パイロット圧の制御値に基づいて電磁比例弁54aの駆動信号(電気信号)を生成し出力し、ブーム下げ側の流量制御弁5aの受圧部5a2に与えるパイロット圧をタンク圧に減圧する。これにより、ブームは距離Dに比例した速度で領域内に復元するように上げ方向に動かされ、バケット先端が目標掘削面Lまで戻ると停止する。したがって、バケット先端の位置決めが更に滑らかに行える。また、このときも、シリンダ速度演算部43aでは、ブーム下げ用の第1相関テーブルとしてブーム用の配管破断制御弁22の搭載有りの場合の第1相関テーブルF1を用いてブームシリンダ3aの駆動速度が計算され、操作信号制御値演算部43cでは、ブーム上げ用の第2相関テーブルとしてブーム用の配管破断制御弁22の搭載有りの場合の第2相関テーブルF3を用いてブーム上げの操作パイロット圧の制御値が計算されるため、配管破断制御弁の搭載の有無によらず、領域制限掘削制御によって目標掘削面を整形する際の制御精度を確保することができ、バケット123が目標掘削面下方に侵入する、もしくは目標掘削面に十分に近づけないといった事象の発生を回避することができる。
〜効果〜
以上のように本実施例によれば、特定の第1及び第2相関関数である第1及び第2相関テーブルとして、それぞれ、配管破断制御弁の搭載の有無に応じた2種類の第1及び第2相関テーブルF1,F2,F3,F4をROM(記憶装置)35cに保存し、配管破断制御弁22,24の搭載の有無に応じて第1及び第2相関テーブルを選択してアームシリンダ3bの駆動速度やブーム用流量制御弁5aに対する操作信号の制御値を演算するため、配管破断制御弁22,24の搭載の有無によらず、領域制限掘削制御によって目標掘削面を整形する際の制御精度を確保することができ、バケット123が目標掘削面下方に侵入する、もしくは目標掘削面に十分に近づけないといった事象の発生を回避することができる。
〜第2の実施の形態〜
図15は、本発明の第2の実施の形態に係わる油圧ショベルの油圧駆動装置と領域制限掘削制御装置を示す図である。
上記実施の形態では、配管破断制御弁としてブーム用の配管制御弁22とアーム用の配管制御弁24を設けたが、配管破断制御弁としてブーム用の配管制御弁22のみを備えていてもよい。また、オペレータ操作検出装置31として、バケットクラウド及びバケットダンプの操作パイロット圧を検出する圧力検出器を備え、補正動作用の電磁比例弁としてバケットクラウド及びバケットダンプの操作パイロット圧を補正する電磁比例弁を備えていてもよい。図15はそのような実施の形態を示すものである。
すなわち、図15に示す実施の形態において、領域制限制御装置はアーム用の配管制御弁24を備えていない。また、バケット用のパイロットライン13a,13bには、バケットクラウド及びバケットダンプの操作パイロット圧を検出する圧力検出器57a,57bと、バケットクラウド及びバケットダンプの操作パイロット圧を補正する電磁比例弁58a,58bが設けられている。
この実施の形態では、コントロールユニット35のシリンダ速度演算部43a(第1演算部)は、ブーム上げ用の第1相関テーブルとブーム下げ用の第1相関テーブルに対してだけ、ブーム用の配管破断制御弁22の搭載の有無に応じて2種類の第1相関テーブルをROM35cに保存し、情報管理装置36に設定された配管破断制御弁22の搭載有無のフラグ情報に応じてブーム用の配管破断制御弁22の搭載有りの場合の第1相関テーブルF1を選択することで、第1相関テーブルによる演算処理を補正し、ブームシリンダ3aの駆動速度を演算する。
また、操作信号制御値演算部43c(第3演算部)は、ブーム上げ用の第2相関テーブルとブーム下げ用の第2相関テーブルに対してだけ、ブーム用の配管破断制御弁22の搭載の有無に応じて2種類の第2相関テーブルをROM35cに保存し、情報管理装置36に設定された配管破断制御弁22の搭載有無のフラグ情報に応じてブーム用の配管破断制御弁22の搭載有りの場合の第2相関テーブルF3を選択することで、第2相関テーブルによる演算処理を補正し、ブーム上げ或いはブーム下げの操作パイロット圧の制御値を演算する。
コントロールユニット35のシリンダ速度演算部43aは、圧力検出器57aによって検出されるバケットクラウドの操作パイロット圧(操作信号)とバケットシリンダ3cのバケットクラウドの駆動速度との第1相関テーブル(相関関係)及び圧力検出器57bによって検出されるバケットダンプの操作パイロット圧(操作信号)とバケットシリンダ3cのバケットダンプの駆動速度との第1相関テーブル(相関関係)とを有し、オペレータのバケット用操作装置4cの操作によるバケットシリンダ3cの駆動速度(バケットシリンダ速度)を演算する。操作信号制御値演算部43cは、バケットシリンダ3cのバケットクラウドの駆動速度とバケットクラウドの操作パイロット圧(操作信号)との第2相関テーブル(相関関数)及びバケットシリンダ3cのバケットダンプの駆動速度とバケットダンプの操作パイロット圧(操作信号)との第2相関テーブル(相関関数)とを有し、バケットクラウド及びバケットダンプの操作パイロット圧(操作信号)の制御値を演算する。ただし、バケットシリンダ3cに配管破断制御弁は取り付けられていないため、第1及び第2相関テーブルとしては1種類の相関テーブルがROM35cに保存される。
上記以外の構成及び機能は第1の実施の形態と同じである。
このように構成した本実施の形態においても、アームクラウド動作では、ブーム上げによる補正動作でバケット先端速度の減速が行われるとき、操作信号制御値演算部43cにおいて配管破断制御弁22の搭載有無のフラグ情報に応じて第2相関テーブルによる演算処理を補正してブーム上げの操作パイロット圧の制御値を演算することで、配管破断制御弁の搭載の有無によらず、領域制限掘削制御によって目標掘削面を整形する際の制御精度を確保することができる。
る。
また、ブーム下げ動作では、シリンダ速度演算部43aにおいて配管破断制御弁22の搭載有無のフラグ情報に応じて第1相関テーブルによる演算処理を補正してブームシリンダ3aの駆動速度を計算し、かつ操作信号制御値演算部43cにおいて配管破断制御弁22の搭載有無のフラグ情報に応じて第2相関テーブルによる演算処理を補正してブーム下げの操作パイロット圧の制御値を演算することで、同様に、配管破断制御弁の搭載の有無によらず、領域制限掘削制御によって目標掘削面を整形する際の制御精度を確保することができる。
更に、バケットクラウド及びバケットダンプの操作パイロット圧を検出する圧力検出器57a,57bと、バケットクラウド及びバケットダンプの操作パイロット圧を補正する電磁比例弁58a,58bが設けられているため、更に精度の高い領域制限掘削制御が可能となる。
〜その他〜
1.上記の実施の形態では、油圧パイロット方式の操作装置と流量制御弁を有する油圧ショベルに本発明を適用したが、操作装置は電気信号を生成し流量制御弁は電気信号で切り換えられる電気方式であってもよい。この場合は電磁比例弁制御部44に代え、ブーム用操作装置で生成したブーム下げの操作信号(電気信号)と操作信号制御値演算部43cで演算したブーム用操作装置4aの操作信号(電気信号)の制御値の大きい方を選択し、選択した値を電気信号に変換し出力すればよい。
2.上記の実施の形態では、領域制限掘削制御のシリンダ速度制御値の生成方法として、図10に示すように、目標掘削面からの距離Dに基づいてバケット先端速度の目標掘削面Lに垂直な成分の制限値aを計算し、この制限値aを用いて制御用のシリンダ速度の制御値を演算したが、これは一例である。例えば、距離Dを変数とする関数を用い、距離Dに応じてバケット先端速度の目標掘削面に垂直な成分を減少させ、シリンダ速度の制御値を演算するなど、他の方法により領域制限掘削制御のシリンダ速度制御値を演算してもよい。
3.上記の実施の形態では、適用される油圧駆動装置はクローズドセンタタイプの流量制御弁5a〜5fを有するクローズドセンタシステムとしたが、オープンセンタータイプの流量制御弁を用いたオープンセンターシステムであってもよい。
4.上記の実施の形態では、図15に示した配管破断制御弁22,24を備える油圧ショベル(作業機械)に本発明を適用したが、配管破断制御弁にも種々の種類があり、流路抵抗となる部材を備えた配管制御弁であれば、図15に示した配管破断制御弁を備えた油圧ショベルに本発明を適用してもよい。
5.上記実施の形態は、作業機械が油圧ショベルである場合について説明したが、多関節型の作業装置を備えた作業機械で領域制限掘削制御を行うものであれば、油圧ショベル以外作業機械に本発明を適用してもよい。
6.衛星通信アンテナを備えた構成であって、油圧ショベルのグローバル座標系における位置を演算して、領域制限掘削制御を行う構成としてもよい。
7.作業装置120の位置を検出するために、回動支点に角度センサを備えた構成としたが、これに代えて油圧シリンダのストローク量を検出する複数のストローク検出器や、ブーム、アーム、バケットの傾斜角をそれぞれ検出する傾斜角検出器を用いてもよい。また、制御対象をバケットの先端として説明したが、これはあくまで一例であり、作業装置120において最も目標掘削面との距離が短い部分を制御対象としてもよい。